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【週刊メタゲーム通信】エネルギーとブリーチの二強を狙う、最近活躍中のデッキたち!

週刊 Modern ピックアップ

2025.02.04

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週もボロスエネルギーとブリーチは絶好調! しかし、その二強状態を許してくれるほどモダン環境は甘くありません。 今回はエネルギーとブリーチに次いで活躍しているデッキたちをご紹介していきます。 紹介デッキ オルゾフブリンク グリクシス御霊 エスパー眼魔 オルゾフブリンク モダンチャレンジ : 優勝  By Omegauo クリーチャーを一時的に追放して戦場に戻すブリンク能力を駆使してアドバンテージを稼いでいくデッキ、それがオルゾフブリンク。   ブリンクを引き起こす中で最も強力なのが《溌剌の牧羊犬、フィリア》です。自分のクリーチャーをブリンクすれば自身にカウンターが乗り、相手のクリーチャーを一時的に追放してダメージを通したり、トークンを対象に取ればそのまま追放でき、攻守に渡って優秀なクリーチャーです。 《ちらつき鬼火》は白系ではお馴染みのクリーチャー。3/1飛行という優秀なサイズだけでなく、《溌剌の牧羊犬、フィリア》と違って土地を追放できるので、自分や相手の土地を追放することができます。 自分の土地を追放すればエンド前にアンタップ状態で帰ってくるので、3ターン目に《ちらつき鬼火》を出して自分の土地を追放し、終了時にアンタップ状態で戻ってきて《儚い存在》を構える、なんてことも。 《溌剌の牧羊犬、フィリア》の能力で《ちらつき鬼火》を追放すると、エンド前に《ちらつき鬼火》が戻ってきます。そしてここで《ちらつき鬼火》によって追放したカードは相手のターン終了時に戻ってくるので、このタイミングで相手の土地を対象に取ることで、一時的に相手が使用できるマナを1マナ減らせます。 また、《ボガートの獲物さらい》や《魔女の結界師》を裏面土地で置いておき、そこに対して《ちらつき鬼火》を使うと、戻ってくる時は表の状態になります。《ちらつき鬼火》と《溌剌の牧羊犬、フィリア》は似ているカードですが、《ちらつき鬼火》の方が重い代わりにユーティリティに富んだカードなのです。 ブリンクカードたちと相性が良いのが《ベイルマークの大主》。このカードがオルゾフブリンクの心臓といって差し支えないでしょう。兆候で2ターン目に出しておき、それを明滅することで、《ベイルマークの大主》が早ければ4ターン目から攻撃できます。しかも兆候で出して明滅して2枚のクリーチャーを回収できているので、全く手札が減りません。 《溌剌の牧羊犬、フィリア》《ベイルマークの大主》と並んだ時は圧巻。圧倒的なアドバンテージ量の前にはどのデッキも屈することになるでしょう。   《ベイルマークの大主》で使い回すカードをサーチする手段として便利なのが《護衛募集員》。《エイヴンの阻む者》や《白蘭の幻影》など、特定のマッチアップで役に立つカードをサーチし、それを《ベイルマークの大主》や各種明滅カードで使い回します。 《エイヴンの阻む者》は特に研磨ブリーチに強く、《死の国からの脱出》と《湖に潜む者、エムリー》に大きな制限をかけます。数少ない除去も《儚い存在》で避けてしまえば問題ありません。 一方の《白蘭の幻影》も青単ベルチャーに強いのはもちろん、研磨ブリーチにも効果的な1枚。基本土地は1~2枚程度なので、明滅していくとすぐに基本土地が枯れ、ただの土地破壊と化します。《ウルザの物語》を積極的に割っていきたいですね。 《護衛募集員》は《ベイルマークの大主》には残念ながらアクセスできません。が、《ベイルマークの大主》が墓地に落ちていれば《骨の皇帝》で釣り上げることは可能です。《ベイルマークの大主》が出て速攻がついて攻撃するので、《骨の皇帝》を起動するだけで2枚のクリーチャーを回収でき、明滅で《骨の皇帝》をリフレッシュすると、再度能力が使用可能となります。 ギミック満載のオルゾフブリンク、回していてとても楽しいデッキです。ボロスエネルギーとの相性は決してよくありませんが、研磨ブリーチや眼魔に強く、無視できないデッキの1つです。 グリクシス御霊 モダンチャレンジ : 3位 By  TrueHero 最近は少し元気のなかった御霊。その名の通り、《御霊の復讐》で墓地からクリーチャーを吊り上げて戦うリアニメイトデッキです。 《御霊の復讐》は伝説のクリーチャーしかリアニメイトできないので、《残虐の執政官》こそ使えませんが、《偉大なる統一者、アトラクサ》《グリセルブランド》の超強力な面々をたった2マナで釣り上げることができます。 これまでの御霊はエスパーカラーが基本でした。青の大事な要素は《超能力蛙》。手札から《偉大なる統一者、アトラクサ》を捨てたり、サイド後は相手が墓地対策を貼ってきても無視してそのまま《超能力蛙》1枚で勝利できるのです。メインから戦術に絡みながら、単体でゲームプランになる。《超能力蛙》は今のモダンのトップ3に入るパワーカードです。 3色目として白が定番だった理由は《儚い存在》です。   《御霊の復讐》は釣ったクリーチャーを終了ステップ開始時に追放するという大きなデメリットがあります。《偉大なる統一者、アトラクサ》でカードを4~5枚手に入れても、《偉大なる統一者、アトラクサ》自体が戦場からいなくなっては、エネルギーなどライフを詰めてくる相手に勝つことはできません。 そこで《儚い存在》です。《御霊の復讐》で釣った《偉大なる統一者、アトラクサ》を対象に唱えると、更に《偉大なる統一者、アトラクサ》でカードを手札に加えつつ、リフレッシュされるので、終了ステップに追放されなくなるのです。 そんな《儚い存在》を犠牲にしてまで入れたカードは《信仰無き物あさり》。2ドロー2ディスカードを行う禁止解禁組の1マナソーサリーによって、2ターン目の《御霊の復讐》が安定するようになりました。 《信仰無き物あさり》の解禁は非常に大きい!これまでの2ターン目《御霊の復讐》には重宝ランドで《偉大なる統一者、アトラクサ》《グリセルブランド》を落とすしかありませんでした。それが手札にある《偉大なる統一者、アトラクサ》を捨てつつ、2ドローで《御霊の復讐》を引きにいけるようになったのですから、凄まじい進化です。   とはいえ、《信仰無き物あさり》では《儚い存在》の代わりにはなりません。釣ったクリーチャーをそのまま戦場に残す方法はあるのでしょうか? 実はありました。《記憶への放逐》です。 エルドラージに強い打ち消しとして青いデッキたちが4枚採用するこのカードを、このデッキではメインから4枚入れています。しかし、それはエルドラージを意識してではありません。《記憶への放逐》が打ち消すのは自分の誘発型能力。すなわち、《御霊の復讐》の遅延誘発型能力を《記憶への放逐》で打ち消すのです。 《儚い存在》のように《偉大なる統一者、アトラクサ》を2回誘発させることはできませんが、それでも戦場に《御霊の復讐》で釣ったクリーチャーを残せるのならば問題ありません。もちろんエルドラージに対してはカウンターとしても機能します。 3色目を赤にしたことで、サイドボードにも変化が見られるようになりました。エネルギーに強い《紅蓮地獄》や手札からクリーチャーを出す《裂け目の突破》です。 《御霊の復讐》をケアして墓地対策を置いても《裂け目の突破》を避けることはできません。このデッキと戦う時は、サイド後は《裂け目の突破》も警戒していかなければならないのです。   急に勝ち始めた御霊デッキ、果たしてチャンピオンズカップファイナル千葉の台風の目となるのでしょうか。 エスパー眼魔 モダンチャレンジ : 4位 By Dazai 地域CSで大敗を喫したディミーア眼魔。 エネルギー・研磨ブリーチと並んでモダンの三強と言われながら、2つの地域CSでエネルギーと研磨ブリーチが優勝する中、一人負け組となってしまったのがディミーア眼魔でした。   そんなディミーア眼魔が、とある白いカードをメインから投入し、エスパー眼魔として現在復権してきています。   エスパーになってもデッキの構造自体は変わっていません。除去と打ち消しで序盤を凌ぎながら《超能力蛙》で勝利するコントロールのようなプランと、《忌まわしき眼魔》を《発掘》で釣って早期決着を目指すリアニプラン。この2つを併せ持つデッキです。 青黒というカラーコンビネーション、かつディミーア眼魔の性質上、デッキに全体除去をなかなか入れることができず、パーマネントの横並び展開を非常に苦手としていました。《滅び》は重くて間に合わず、《毒の濁流》はコストが痛く、クリーチャー以外には効果がない。サイドボードに《仕組まれた爆薬》が2枚ほど入っていましたが、逆に言えばそれぐらいしかカードがありませんでした。 そのため、エネルギーの《オセロットの群れ》展開や研磨ブリーチのモックスからなる手数の多さに苦戦を強いられていたのです。 そんな問題を解決したのが《害獣駆除》。このカードのためにディミーア眼魔に白がタッチされることとなりました。 《害獣駆除》の効果はすさまじく、エネルギーの1マナ域のクリーチャーから《岩への繋ぎ止め》まで薙ぎ払ったり、研磨ブリーチをモックスごと《知りたがりの学徒、タミヨウ》も叩き割るなど、とにかく苦手としているカードたちに強いのです。 エルドラージなどの不要なマッチではサイクリングで他のカードに代えられます。特定のマッチアップでクリティカルなカードに関わらず、メインから採用して腐る展開がほとんどないのです。   この《害獣駆除》にアクセスする工夫も凝らされています。このリストは《思考掃き》が0枚で、《錠前破りのいたずら屋》が採用されています。《思考掃き》は1マナでカードを2枚(+自身で1枚)墓地に送り込めるキャントリップですが、逆に言えばただ墓地を肥やすだけの1ドローカードです。《忌まわしき眼魔》を釣ったり手札から出す手段ではありますが、強いカードではありません。 一方の《錠前破りのいたずら屋》は少し重いですが、4枚を切削し、しかもスペルを1枚手札に加えられます。2ターン目の《忌まわしき眼魔》リアニメイトこそできないものの、《忌まわしき眼魔》を墓地に落としつつ《発掘》を手札に加えることのできるカードで、非常に優秀です。 《害獣駆除》という一発逆転のカードをメインから採用できるようになったので、《錠前破りのいたずら屋》のようにデッキを掘り進められるカードの価値は上がりました。もし僕がこのデッキを使うなら、間違いなく《思考掃き》ではなく《錠前破りのいたずら屋》を使うでしょう。 メインから《呪文嵌め》が4枚なのも、《害獣駆除》との相性を考えると納得です。1マナ域はどうせ《害獣駆除》で吹き飛ばせるので、後手では確実に2マナを打ち消しておきたい。相手が《呪文嵌め》を喰らわない1マナ連打の展開なら《害獣駆除》してしまえば良いのです。 エルドラージに腐ってしまいますが、《呪文嵌め》はエネルギーと研磨ブリーチのどちらにも非常に強いカードです。前者は《ナカティルの最下層民、アジャニ》《ゴブリンの砲撃》、後者は《邪悪鳴らし》《研磨基地》《死の国からの脱出》と、デッキのキーカードたちをたった1マナで打ち消せます。 悩みの種だった後手番で構えた時の1マナ連打を《害獣駆除》で処理可能になり、心置きなく環境的に強い《呪文嵌め》をフル投入できるようになったというわけですね。   環境2トップに対して強くなったエスパー眼魔。チャンピオンズカップファイナル千葉では勝ち組となるのか?今から注目ですね!

【今週のピックアップデッキ】ジェスカイ眼魔/オボシュバーン/ラクドスリアニメイト

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.01.31

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ ジェスカイ眼魔 オボシュバーン ラクドスリアニメイト ジェスカイ眼魔 スタンダードリーグ : 5-0 By SaltyXD スタンダードからレガシーまで幅広い環境で使われているクリーチャーと言えば。   そう、《忌まわしき眼魔》。 3マナ5/5飛行脅威的なスペックに加えて、相手のアップキープに戦慄予示を行い、放置しておくとクリーチャーがどんどん横並びになっていく、モダンホライゾン産と言われても疑わないパワーを持っています。 デメリットとして唱える際に墓地を6枚要求するので、モダンでは《発掘》、スタンダードでは《救いの手》など、リアニメイトでデメリットを打ち消す使い方が基本です。 そんな《忌まわしき眼魔》をリアニメイトすることに全力を注ぐデッキがアゾリウス眼魔。昨年の世界選手権から今も活躍を続けています。   本日紹介するジェスカイ眼魔は、《救いの手》《再稼働》で《忌まわしき眼魔》を吊り上げるコンセプトはアゾリウス眼魔と同じなものの、似て非なるデッキ。 最も異なるのは《忌まわしき眼魔》を墓地に落とす手段です。アゾリウス眼魔が《錠前破りのいたずら屋》や《第三の道の創設》でライブラリーから直接《忌忌まわしき眼魔》を落とすのに対し、このデッキでは手札からのディスカードしていきます。 《逸失への恐怖》はパイオニアやモダンでもお馴染みのクリーチャー。カードを捨てて引く能力で損をせず、昂揚した状態で攻撃することで追加の戦闘フェイズを獲得できる、便利な2マナ域。 同じ2マナ域の《太陽の執事長、インティ》もディスカード手段。こちらはリソースを稼ぎつつクリーチャーを強化してくれます。《逸失への恐怖》と相性が良く、昂揚を達成していると2回攻撃できるので、《太陽の執事長、インティ》も2回誘発するのです。 《蒸気核の学者》は面白いチョイスです。2ドローした後にインスタントかソーサリーか飛行を持つクリーチャーを捨てるかカードを2枚捨てるかのいずれかを選ぶので、《忌まわしき眼魔》を捨てれば2ドロー1ディスカードとかなりお得なカード。《遠眼鏡のセイレーン》を捨てても良いのでかなり使いやすいですね。もちろんこのディスカードにも《太陽の執事長、インティ》は反応します。 1枚だけ採用されている《上げ潮、キオーラ》も2枚引いて2枚捨てるクリーチャー。こちらはスレッショルド状態で攻撃するとタコが出るオマケつきなので、墓地が肥えてきた中盤以降は脅威となります。 《忌まわしき眼魔》をライブラリーからではなく手札から墓地に送り込むことで何が変わったのかというと、それはクリーチャーを多く採用できる点です。   従来のアゾリウス眼魔は《錠前破りのいたずら屋》《傲慢なジン》《忌まわしき眼魔》のクリーチャー12枚体制がデフォルトでした。《錠前破りのいたずら屋》はただの1/3警戒なので、戦慄予示による当たりは2種類しかなく、大体の場合はただの2/2クリーチャーです。 しかし、ジェスカイ眼魔は違います。《遠眼鏡のセイレーン》は外れとしても、《太陽の執事長、インティ》《逸失への恐怖》《上げ潮、キオーラ》は当たりの部類に入るので、《忌まわしき眼魔》を合わせて12枚は戦慄予示による当たりがあるのです。《遠眼鏡のセイレーン》《蒸気核の学者》も飛行を持っているので、戦慄予示で場に出す外れというわけでもありません。 また、《逸失への恐怖》《蒸気核の学者》《上げ潮、キオーラ》とドローできるカードがたくさん入っているので、《プロフトの映像記憶》も採用しています。《プロフトの映像記憶》はどんなクリーチャーもフィニッシャークラスに成長させるエンチャントなので、サイド後に《安らかなる眠り》を置かれた際には凄まじい活躍を見せるでしょう。 アゾリウス眼魔はアタッカーである《傲慢なジン》と《忌まわしき眼魔》がいずれも墓地依存のカードなので、墓地対策がとても苦手でしたが、このジェスカイ眼魔は墓地対策にかなり耐性のあるデッキです。 赤を使えるのでサイドには墓地を使わないダメージソースとして《ウラブラスクの溶鉱炉》も採用しており、墓地対策を無視しようとする姿勢が伝わってきます。 スタンダードで《忌まわしき眼魔》を出したい方、選択肢はアゾリウスだけではありませんよ! オボシュバーン パイオニアチャレンジ : 5位 By  KO_Mak パイオニアで長きにわたって親しまれていた相棒、《湧き出る源、ジェガンサ》が禁止され、最近は《空を放浪するもの、ヨーリオン》以外の相棒をすっかり見なくなりました。 そんな中、すい星のごとく現れたのがこのオボシュバーン。   奇数のカードしかデッキに入れられないという強力な制限がある《獲物貫き、オボシュ》。その分ボーナスは破格で、戦場に《獲獲物貫き、オボシュ》がいると、奇数のカードによりダメージがすべて倍になります。 《ギトゥの溶岩走り》は2マナ4点になり、《批判家刺殺》は6点火力になる。そんな夢のような相棒です。 奇数しか採用できない点も、バーンなら難しくありません。火力のほとんどは1マナで、《舞台照らし》《批判家刺殺》は3マナながら、絢爛コストは1マナなので実質1マナ。 そう、よく見るとこのオボシュバーンは、デッキ内に入っているカードがすべて1マナなのです。   それゆえに回った時には凄まじい速度です。《僧院の速槍》《損魂魔道士》の果敢持ちクリーチャーを非常に強く使えるデッキでもあります。何せデッキに入っているカードはすべて1マナですから、3連打してパワー4で殴ることもしばしばあるのです。絢爛と相性が悪いのはご愛嬌。 以前までは火力が弱かったため、《ボロスの魔除け》など2マナの火力呪文に頼る必要があり、《獲物貫き、オボシュ》を採用できませんでした。しかし、『ファウンデーションズ』で登場した《稲妻波》により、赤単でデッキが成立するようになったのです。 面白いのはサイドボードの偶数カードたち。   《解き放たれた狂戦士》はプロテクション白を持つので、天敵である《跳ねる春、ベーザ》を無視して殴り、《力線の束縛》をはじめとした白い除去も受け付けません。 そして4枚採用されている《碑出告の第二の儀式》は、相手のライフがちょうど10なら10点を与えるド派手な火力スペル。 これらの偶数のカードをサイドインする時は《獲物貫き、オボシュ》を相棒に指定できませんが、そのデメリットを補ってあまりある力が、この2種にはあります。   赤単バーンは相手のライフを20点削る設計のデッキです。なぜならデッキには1マナ2点や1マナ3点など、ただダメージを与えることしかできないカードが大量に入っているからです。クリーチャーが多いタイプの赤単は火力を除去として使い、クリーチャーでライフを削っていきます。そのため、ライフゲインを苦にしません。 スタンダードのグルール果敢などはその典型ですね。相手が《跳ねる春、ベーザ》を連打してライフが20になっていようと、《心火の英雄》《多様な鼠》《巨怪の怒り》などが絡めばあっという間にライフは消し飛びます。 そのクリーチャーによるダメージをあまり期待できない赤単にとって、ライフゲインカードは非常に厳しい。《跳ねる春、ベーザ》1枚で《火遊び》2枚分と考えると恐ろしいですよね。   だからこそ、サイド後はライフゲインを意識したカードチョイス。ライフを回復するカードは白が多いので、プロテクション白を持つ《解き放たれた狂戦士》、そして1枚で10点を出す《碑出告の第二の儀式》なのです。 赤好きにはたまらないオボシュバーン、ぜひお試しください。 ラクドスリアニメイト Ultimate Guard Open : 7-1 By Christian Rothen モダンでリアニメイトと言えば《御霊の復讐》。 モダンで《残虐の執政官》を出すなら《不屈の独創力》。 その常識を覆すのが、このラクドスリアニメイト。《御霊の復讐》ではなく《頑強》をリアニメイト手段とし、《残虐の執政官》を吊り上げます。 《頑強》は伝説のクリーチャーを釣れないので、強力なリアニ先の《偉大なる統一者、アトラクサ》《穢すもの、ウラモグ》は採用できません。 しかし、伝説以外でも強力な釣り先は存在します。それが《カザド=ドゥームのトロール》です。 スーパー威迫などと呼ばれている《カザド=ドゥームのトロール》。3体以上でしかブロックできないのでほとんどの場面でダメージを通すことができ、非常に早くクロックを刻んでいきます。1ターン目にサイクリングして土地をサーチして2ターン目に《頑強》で場に戻す動きは強力。   《カザド=ドゥームのトロール》はリアニメイトパーツでありながら、1マナで土地に変えられるので、腐ることがほぼないカード。実はリアニメイト要素はこのデッキには《残虐の執政官》と《頑強》しか入っていません。 残るパーツは殴るカードで構成されています。   《ドラゴンの怒りの媒介者》《ネザーゴイフ》は墓地が豪華になると強くなるカードたち。リアニメイトするためには墓地にカードを送る必要があるので、相性が良いですね。 《逸失への恐怖》は自身が墓地にある時は昂揚達成を助け、戦場に出てもカードを捨てて引くので、2つの意味で昂揚に貢献してくれます。もちろん昂揚達成時の2回攻撃のボーナスも強力。 《残虐の執政官》《カザド=ドゥームのトロール》と重いクリーチャーたちを採用しているので、《探偵のフェニックス》は非常に相性が良いカード。証拠収集6は非常に重いコストですが、このデッキなら達成は容易です。 そして《探偵のフェニックス》のバリューも非常に高いのがストロングポイント。《カザド=ドゥームのトロール》につけば《頑強》のパワーマイナス修正を受けても7点あり、しかも飛行3体を用意するのは現実的に不可能なので、事実上のアンブロッカブル。しかも《頑強》で釣り上げたターンに速攻をつけて攻撃もできます。 もちろん、《残虐の執政官》に《探偵のフェニックス》を授与して攻撃すれば大体勝ちですね。   《カザド=ドゥームのトロール》と《残虐の執政官》による一撃の打点が高いので、《逸失への恐怖》による2回攻撃も活きやすく、かなり早いデッキです。 《信仰無き物あさり》でリアニメイトが強化されたとは言われていたものの、これまでは良いデッキがまだ見つかっていませんでした。 このラクドスリアニメイトは《信仰無き物あさり》を再び輝かせるのか、今後の活躍に注目したいですね。

【週刊メタゲーム通信】2つの地域CSの結果から最新のモダン環境をご紹介!

週刊 Modern ピックアップ

2025.01.29

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 いよいよ2週間後に迫った、モダンで行われるチャンピオンズカップファイナル。 そのメタゲームに大きな影響を与える大型大会、地域チャンピオンシップが、ヨーロッパとカナダで行われました。 今回は2つの地域チャンピオンシップの結果から、最新のモダン環境を分析していきます! 紹介デッキ ボロスエネルギー 研磨ブリーチ エルドラージランプ 三強から二強へ 2つの地域チャンピオンシップで圧倒的に勝ち組だったのは、ボロスエネルギーと研磨ブリーチの2つ。事前に最大勢力と予想されていた3つの内、2つのデッキがトップ8にそれぞれ複数入賞し、しかも優勝を収めました。 仮想敵としてしっかり想定されていたにも関わらず優勝。これはボロスエネルギーと研磨ブリーチの自力の高さを証明したことに他なりません。 一方、三強の一角だったディミーア眼魔はトップ8に0……それどころかトップ16にも姿を見かけることはなく、先週の負け組となりました。 ティムールブリーチとボロスエネルギーの両方に負けただけでなく、新たに出てきたオルゾフブリンクにも相性が悪く、ディミーア眼魔は最前線から脱落したと言って良いでしょう。 その代わりに先週の活躍が目立ったのがエルドラージランプ。 トップ8にはヨーロッパに1人のみだったものの、ヨーロッパのトップ16ライン、更にプロツアー権利獲得ラインまで見てみると、研磨ブリーチと並んで最多突破を果たしています。   エルドラージランプは今回あまり意識されておらず、その結果大躍進でした。今週からは青いデッキは《記憶への放逐》4枚から始まることになりそうですが、その上でまだ生き残れるようなら、いよいよエルドラージは本物。エネルギー・ブリーチと並んで三強となるかもしれません。 カナダの地域チャンピオンシップではオルゾフブリンクやドメインカスケード、アミュレットに青単ベルチャーと、様々なデッキが活躍しており、エネルギーとブリーチが座る玉座を虎視眈々と狙っています。 トップメタを意識するだけでは決して勝てない。いろいろなデッキが牙を隠し持ち、そして鋭いのがモダンの特徴。千葉ではどのようなメタゲームが展開されるのか、今から楽しみですね。 ボロスエネルギー カナダ地域チャンピオンシップ :  By Simon Piché カナダの地域チャンピオンシップを制したのはボロスエネルギーでした。   MOCSでは《鏡割りの寓話》を採用したリストが優勝しましたが、こちらは《歴戦の紅蓮術士》。 《鏡割りの寓話》は出すだけで相手に1対2交換を半ば強要させつつ手札を入れ替える、わかりやすい強カード。 一方の《歴戦の紅蓮術士》は、手札を入れ替える能力こそ一緒ですが、クリーチャーそのものは脅威ではないため、相手から除去を引き出すことはできません。その代わり、トークンを生成して横並びさせたり、自身を墓地から追放することでトークンを生み出せるので、《ゴブリンの砲撃》と相性が良いカードです。 更に手札が1枚や0枚の状態でも2ドローはできるので、後半にトップデッキした際にはリソースを稼ぐカードにもなってくれます。遅いターンでは明確に《鏡割りの寓話》より強く、特に消耗戦になりやすいミラーマッチでは重宝します。   除去は《岩への繋ぎ止め》ではなく、《電気放出》と《静牢》のエネルギー絡み除去。 以前の記事では、《色めき立つ猛竜》がいなくなったことで、エネルギーを稼ぐ理由が薄くなったため、逆にエネルギーに依存しない構成も出てきたとお話ししましたが、このリストはエネルギーを全力で活用します。 なんだかんだ《電気放出》はエネルギーさえ余っていれば1マナの万能除去で、《静牢》も同じくどんなカードも対処可能。《魂の導き手》が残りさえすればエネルギーには困らないので、除去がエネルギーに寄ると《魂の導き手》が非常に重要になります。 そんな事情を解決してくれるのが《イーオスのレインジャー長》です。これにより他のリストに比べて《魂の導き手》が出しやすくなっているので、納得のチューンです。研磨ブリーチにも強いですし、《イーオスのレインジャー長》は素晴らしいチョイスですね。 ボロスでは定番だった《血染めの月》が不採用だったり、《スレイベンの魔除け》がしっかりと2枚採用されているなど、メタゲームに合わせてしっかりと作りこまれています。 サイドボードも対エルドラージ用の《黒曜石の焦がし口》に、研磨ブリーチ対策の《石のような静寂》、《オアリムの詠唱》など、2色だけでも十分各デッキに対するサイドボードが揃っており、リストから死角のなさがうかがえます。 千葉でも数多くのエネルギーが生み出されては消費されていく。それは間違いないでしょう。 研磨ブリーチ ヨーロッパ地域チャンピオンシップ : 優勝 By  Alexander Rohan プラハの地で優勝を収めたのは研磨ブリーチ。カナダでは白を加えた4色の研磨ブリーチがトップ8に2人残りましたが、こちらは純正のティムールカラーのブリーチです。   《邪悪な熱気》を1枚まで減らし、相手への干渉手段を様々なカードに代えた独特な構成です。 《呪文嵌め》はミラーマッチやディミーア眼魔に強く、《白鳥の歌》もコンボデッキ全般に強く、全体的に同型を意識していると言えます。 サイドボードと合わせて合計で3枚入っている《アノールの焔》は、ウィザードが8枚入っているティムールブリーチと相性の良い1枚。特に《知りたがりの学徒、タミヨウ》は相性抜群で、《アノールの焔》で5点と2ドローしつつ、即変身と美しい流れ。 サイド後は《ドラニスの判事》《減衰球》などを対処しながらカードを引けるので、サイドボードに2枚採用されています。 《アノールの焔》は今後ブリーチのサイドボードに増えそうなので、ブリーチ対策の際にはクリーチャーかアーティファクト以外を採用したいところですね。《石のような静寂》の枚数が増えそうです。 4色であれば《損耗+摩耗》が使えたり、メインでも《ポータブル・ホール》があるなど、相手の対策カードに触りやすいのですが、ティムールカラーにも大きな利点があります。 それは《変容する森林》を使える点です。 以前までは《一つの指輪》が入った上でマナソースが25枚ほどだったこのティムールブリーチは、禁止改訂で《一つの指輪》を失い、2種のモックスを合わせて26枚のマナソースになりました。どう考えても以前のブリーチよりもマナフラッドしやすくなっています。 そこでこの《変容する森林》です。昂揚することで墓地のパーマネントに変容できるので、《湖に潜む者、エムリー》や《研磨基地》で《死の国からの脱出》を墓地に落とし、《変容する森林》でコピーすることが可能です。 4色は相手への干渉手段が豊富で、3色では《変容する森林》が使える。どちらにもメリットがあり、一概に一方が優れているとは言えません。   3色と4色、これから活躍していくのは果たしてどちらになるのでしょうか。ブリーチが流行るのならば、ミラーマッチでより多くのキラーカードを使えて、かつ増えるであろう対策カードを割れる4色が優れていると、個人的には思います。 ただ、《変容する森林》を使えるメリットは大きく、マナベースの安定も長丁場では重要です。どちらを使うべきか迷ってしまいますね。 エルドラージランプ ヨーロッパ地域チャンピオンシップ : 2位 By FerMTG 惜しくも準優勝だったものの、世界選手権の権利を勝ち取るに至ったエルドラージランプ。   モダンでは掟破りの2マナランド《ウギンの迷宮》《エルドラージの寺院》によって2ターン目に《まき散らす菌糸生物》を唱えて更にマナ加速。 3ターン目には更なる《まき散らす菌糸生物》を今度はキッカーで唱え、相手の土地を割りながら更なるマナ加速をしたり、《世界を壊すもの》や《大いなる創造者、カーン》に繋げてゲームに勝利するデッキです。 《一つの指輪》を失って大打撃を受けたのは間違いありませんが、《コジレックの命令》というエルドラージ専用の超強力なスペルはまだ健在。適当に大量のマナから《コジレックの命令》を打ち、落とし子を生成しながら《約束された終末、エムラクール》を探して次のターンに唱えるだけで勝利できるすごいインスタントです。 相手の墓地に触れたり、クリーチャーを除去したりなど、《コジレックの命令》はすべてのモードが超強力。さすが『モダンホライゾン3』産といったところでしょうか。   《約束された終末、エムラクール》はこのデッキのフィニッシャー。《邪悪鳴らし》で墓地が肥え、《コジレックの命令》がインスタントと同族で2カウントとなるので、8~9マナほどで唱えることができます。更に《エルドラージの寺院》《ウギンの迷宮》が並べば1枚の土地から2マナが出るので、驚くほど早く戦場に出てきます。 序盤は《ウギンの迷宮》で刻印し、マナが揃ったら回収して唱えます。そのため、3枚と多めに採用されています。 そしてこのリストの最大の特徴はなんといっても《のたうつ蛹》でしょう!『モダンホライゾン3』リミテッドではコモンなのにレア級と言われ、パウパーでも大活躍するカードですが、ついにモダンでも採用されました。 落とし子を2つ生成するのでマナ加速になるだけでなく、その落とし子を生け贄にすれば4/5になるので、エネルギーに対しても強力なブロッカーになってくれます。到達もあるので《魂の導き手》で飛ばれても心配ありません。同じ4マナの《まき散らす菌糸生物》は《火の怒りのタイタン、フレージ》で焼かれたり、飛行に対して無力なことを考えると、《のたうつ蛹》の強さがわかりますね。 《のたうつ蛹》によってボロスエネルギー耐性は確実に上がっていることでしょう。実際、今大会ではボロスエネルギーに5回当たり、4回勝利しています。   このエルドラージランプは2色にまとめられていますが、ネックとなるのが《記憶への放逐》を使えない点。そこでミラーマッチ最強の《記憶への放逐》の代わりに採用しているのが《石の雨》です。 《楽園の拡散》と《ウギンの迷宮》があるので2ターン目から《石の雨》を打てるのがエルドラージランプの魅力。ティムールエルドラージも青マナを安定して供給できるわけではないので、1枚割ってしまえば《記憶への放逐》をそのまま腐らせられる場合も。 《記憶への放逐》が強力であることに異論はありませんが、《石の雨》にも利点があります。2色にまとめて《のたうつ蛹》を採用してボロスエネルギーに強くなっているのも大きく、これまでエルドラージランプと言えばティムール一択でしたが、今はグルールとティムール、どちらも素晴らしいデッキだと思うようになりました。   特にこのグルール型はすごく理にかなっており、今後流行のリストになっていくかもしれません。

【今週のピックアップデッキ】ラクドスサクリファイス/ディミーアバウンス/ライフネクロ

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.01.24

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ ラクドスサクリファイス ディミーアバウンス ライフネクロ ラクドスサクリファイス スタンダードリーグ : 5-0 By Tomemoc 最近のスタンダードでは《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》のバウンスギミックが大流行していますが、サクリファイスもスタンダードでは定番のギミックでした。 その名の通り、生け贄(サクリファイス)を有効活用するのがラクドスサクリファイス。まずは生け贄にする手段からご紹介しましょう。   《塔の点火》《最後の復讐》は生け贄にして対象を除去するカードたち。《塔の点火》は生け贄にせずとも2点火力なのでそもそも及第点で、今のスタンダードでは引っ張りだこのカードですね。 《最後の復讐》はサクリファイス専用の除去。クリーチャーかエンチャントを生け贄に捧げることで使える1マナの除去で、好きなクリーチャーを追放できます。生け贄という大きな追加コストな分、強力な除去です。 この2種類はいずれも追放除去なので《心火の英雄》を後腐れなく除去できます。 近頃のサクリファイスで欠かせないのが《不穏な笑い》。他のエンチャントかクリーチャーを生け贄に捧げることで2ドローでき、更にこの《不穏な笑い》が生け贄に捧げられた時に戦慄予示を行えます。能動的な生け贄手段になるだけでなく、自身も生け贄時にボーナスがある、まさにサクリファイスのためのカード。 そして忘れてはならないのが《甦りし悪夢、ブレイズ》。終了ステップにカードを生け贄にし、それと同じタイプのパーマネントを生け贄に捧げさせます。その生け贄を拒否すると2点のライフルーズをさせながら自分が1ドロー。基本は相手がコントロールしていないカードタイプを生け贄にするので、ライフを失わせつつリソースを稼ぐスーパーカードです。 強力な生け贄軍団の次は、その供物たちをご紹介しましょう。   《機械仕掛けの打楽器奏者》は1ターン目から攻撃しつつ、生け贄にするとライブラリーのトップをプレイできるカード。生け贄はリソースを失う行為ですが、《機械仕掛けの打楽器奏者》はカードを失うことのない生け贄素材なので、非常に使い勝手が良いですね。 最近ではバウンスギミックのデッキでも大活躍中の《悪意ある呪詛術士》もサクリファイスで活躍します。戦場に出た時に生成される呪われし者の役割はエンチャントなので、実は《最後の復讐》や《塔の点火》で生け贄にできます。本来デメリットであるはずの呪われし者がサクリファイスではメリットに働くというわけですね。 《望み無き悪夢》もバウンスデッキで活躍するエンチャント。バウンスでは何度も使いまわして手札とライフを奪いますが、サクリファイスでは生け贄先として使います。墓地に置かれた時に占術2ができるのはかなり便利です。 サクリファイスは戦場のパーマネントを生け贄に捧げることが多いので、落魄しやすいデッキです。というわけで強力な落魄カードも採用されています。   《鍾乳石の追跡者》は落魄でどんどん成長していくクリーチャー。威迫があるのでブロックされず、生け贄にすることで除去も行える便利な1マナ域です。1ターン目に出した《鍾乳石の追跡者》を毎ターン《甦りし悪夢、ブレイズ》なので強化していくのが理想の流れとなっています。 落魄カードでもあり、エンチャントなので生け贄にもできるのが《迷いし者の骸》。落魄すれば何度も使い回せるので、こちらがライフを詰めにいく展開ではどんどん手札に戻していくことになります。 落魄手段は決して戦場から墓地に送るだけではありません。《逸失への恐怖》のディスカードで墓地にパーマネント・カードを送っても落魄してくれるのは覚えておいて損はないです。 説明不要の強カード、《ウラブラスクの溶鉱炉》は出たトークンを生け贄に捧げてもよし、ターンが経てばフィニッシャーとしてもよしですが、あくまで生成されるのはトークンなので、落魄しない点には注意。それでも十二分に活躍できます。 様々なシナジー満載のラクドスサクリファイス、この手のデッキがお好きな方にはたまらないはず! ディミーアバウンス パイオニアチャレンジ : 4位 By  rasvd スタンダードですっかり一大勢力となっているバウンス系デッキ。先ほども話にあがりましたが、今のスタンダード環境を語るなら欠かせないギミックです。 《嵐追いの才能》を出し、その《嵐追いの才能》と相手のパーマネントを《この町は狭すぎる》で戻し、《嵐追いの才能》を再びキャスト。レベル2になった時の能力で《この町は狭すぎる》を回収することで、マナはかかりますが無限に《この町は狭すぎる》で妨害を行いつつ、カワウソを生成できるようになります。 そんなバウンスタッグがなんとパイオニアでも活躍しています!   パイオニアでも動きに大きな違いはありません。《逃げ場なし》を戻して除去の使い回しを行ったり、《望み無き悪夢》で相手の手札とライフを同時に攻めていきます。 《食肉鉤虐殺事件》は使い回せる全体除去で、置いておくと相手のクリーチャーを除去するだけでライフを得られるので、コントロールにとって嬉しい1枚。 実は《覆いを割く者、ナーセット》もバウンスカードと相性が良いプレインズウォーカー。『灯争大戦』の一部のプレインズウォーカーは強力な常在能力がある代わりにプラス能力が存在しないため、忠誠度がなくなった後は常在型能力を持った置物になってしまいます。《覆いを割く者、ナーセット》もその内の1枚。 しかし、《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》で手札に戻せば《覆いを割く者、ナーセット》を再び再利用できるのです。 手札に戻すことでリソースを獲得できるカードとして《稲妻罠の教練者》も採用されており、《逃げ場なし》を戻す必要のない対コントロールなどでは、《稲妻罠の教練者》と《覆いを割く者、ナーセット》を何度も使い回していきます。 そしてなんといってもスタンダードとの一番の違いはライブラリーの枚数です!ご覧の通り、このディミーアバウンスはメインが80枚。   そう、《空を放浪するもの、ヨーリオン》が相棒なのです。 ディミーアバウンスは、戦場に出た時に効果を発揮するパーマネントをバウンスで何度も出し直して勝利するデッキ。それならば、戦場のパーマネントを一斉に明滅させてくれる《空を放浪するもの、ヨーリオン》との相性は抜群です。   《稲妻罠の教練者》《望み無き悪夢》《嵐追いの才能》《チビボネの加入》《逃げ場なし》は《空を放浪するもの、ヨーリオン》で一時追放するだけで恩恵がありますし、《覆いを割く者、ナーセット》もリフレッシュできます。 更にこの《空を放浪するもの、ヨーリオン》を《この町は狭すぎる》で回収してもう一度使用することができるので、相棒を徹底的に使い倒すことができるのです。今存在しているデッキの中で最も相棒と相性の良いデッキがこのディミーアバウンスなのです。 相棒は必ず手札に加えられるカードなので、戦略に組み込んだ時の強さは恐ろしいものです。ランダム要素の強いマジックというゲームにおいて非常に高い再現性を生み出すのが相棒システムです。   相棒界の王、《夢の巣のルールス》が入ったデッキは、軽いアクションで相手の除去と交換を続け、除去が尽きたところで《夢の巣のルールス》を出して勝利という動きが定番でした。必ずゲーム中に引けるカードは戦略として実に組み込みやすいのです。 パイオニアのディミーアバウンスは《空を放浪するもの、ヨーリオン》によって非常にデッキパワーが高く、これからどんどん活躍していくデッキになると個人的には思っています。 ライフネクロ モダンリーグ : 5-0 By PeanutBrittle ライフをドローに置換することのできる《ネクロポーテンス》。そのリメイク版として『モダンホライゾン3』で登場したのが《ネクロドミナンス》です。 元祖よろしく1点のライフを支払ってカードを引けるエンチャントで、手札の上限枚数が5枚になるなど、デメリットこそありますが、その性能は基本的には《ネクロポーテンス》です。 この《ネクロドミナンス》を活用したデッキが黒単ネクロ。《一つの指輪》《ネクロドミナンス》で大量の手札を確保し、《魂の撃ち込み》を相手に打ち続けて勝利します。 《一つの指輪》の禁止によってリソース確保手段は減ってしまいましたが、それでも《ネクロドミナンス》の強さは健在。今回は形を大きく変えた《ネクロドミナンス》デッキとして、このライフネクロを紹介します。 《ネクロドミナンス》で大量ドローするためにはライフが必要になりますが、その回復手段として黒単でも定番だった《魂の撃ち込み》と《不憫な悲哀の行進》に加えて、《滋養の群れ》も採用されています。 《滋養の群れ》は手札から緑のカードを追放することで、その追放したカードのマナ総量分のライフを獲得できます。《土着のワーム》を追放して15点ゲインできるので、《ネクロドミナンス》15ドロー分を0マナで確保できるのです。 《滋養の群れ》で回復するために《土着のワーム》の上から採用されているのが《一なる否命》です。手札からプレイした際にライブラリーからスピリットを場に出し、死亡時に墓地からスピリットを吊り上げる……なんて能力を使うことは一度もありません。 このカードの価値はそのマナ総量と色にあります。   《滋養の群れ》のコストに使えば12点のライフを得られる他、黒なので《魂の撃ち込み》でも追放できます。要するに黒でもあり緑でもあるカードの中で最も重いカードだから採用されているのです。 ライフゲインカードを大量にデッキに入れたことで《マルコフ家のソリン》を活用できるようになったのもポイント。3点以上のライフを得ることで変身でき、プレインズウォーカーになると、このターンに得たライフの分だけ好きな対象にダメージを与えられるので、《滋養の群れ》で《土着のワーム》を追放すると15点ダメージになります。 《薄暮薔薇の棘、ヴィト》も回復したライフ分、相手のライフを失わせるカードなので、このデッキの《滋養の群れ》は0マナ15点火力となる瞬間が多々あります。 そして《オルサンクのパランティール》。終了ステップの開始時にカードを引くか、切削を相手が選び、切削したカードの中のマナ総量分だけ相手にダメージが入ります。 通常は切削を選ばれますが、このデッキは《滋養の群れ》のために6枚の超高コスト呪文を採用できるようになったので、《オルサンクのパランティール》による切削は時に一撃必殺となるのです。 ギミック満載のアブザンネクロ、その破壊力をぜひ味わってみてください。

【週刊メタゲーム通信】MOCSの結果から最新のモダン三強リストをチェック!

週刊 Modern ピックアップ

2025.01.22

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今回は、マジックオンラインの結果やモダンの大型大会から、最新のモダンのデッキをご紹介していきます! 紹介デッキ 4色ブリーチ ボロスエネルギー ディミーア眼魔 メタゲーム マジックオンラインの中で最高峰のトーナメント、Magic Online Champions Showcase。 厳しい予選を勝ち抜いて出られる大会に優勝したプレイヤーたちと、マジックオンラインのリーダーボード上位2名の計8人だけが参加できるのがMOCSです。 フォーマットはキューブドラフトとモダン。 2度の予選を突破しなければ参加できない狭き門に加え、高額賞金と世界選手権の権利もかかっている大会なため、とても競技性の高いトーナメントとなっています。 8名のプレイヤーがここで選択するデッキは、モダン環境で最も強いデッキたちに違いありません。 研磨ブリーチ(3名) 最も人気のアーキタイプは、《研磨基地》と《死の国からの脱出》による即死コンボを擁する研磨ブリーチ。   有名ストリーマーにしてプロプレイヤーのkanisterことPiotr Głogowski選手はオーソドックスなティムールカラーのブリーチ。   そしてハンドシェイクのチームメンバーであるKarl Sarap選手とDavid Inglis選手は4色のブリーチを選択しました。   ブリーチの魅力は圧倒的な速度。2種のモックスによる圧倒的な速度によって2ターンキルすら可能で、コンボにクリーチャーが絡まないため、エネルギーデッキにメイン戦での勝率が高いのが特徴です。 ディミーア眼魔にも《ウルザの物語》によるプレッシャーで《死の国からの脱出》を通すことができ、上位2つのデッキに対してメインボードで比較的有利に戦えるのが、ブリーチが最大勢力となった理由でしょう。 コンボデッキゆえにサイドボード後の勝率は落ちてしまいますが、それでもメイン戦での優位は魅力的です。 ボロスエネルギー(2名) 今大会で優勝を収めたボロスエネルギー。近頃日本では黒をタッチしたマルドゥエネルギーが主流ですが、マジックオンラインでは相変わらず純正のボロスエネルギーが活躍しています。 エネルギーの立ち位置は絶対王者。メタゲームというよりかは、そのデッキパワーの高さで環境を牽引しています。 《湧き出る源、ジェガンサ》《一つの指輪》《色めき立つ猛竜》を失ってもエネルギーは環境随一のパワーを誇ります。《魂の導き手》《オセロットの群れ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》《火の怒りのタイタン、フレージ》、この4種の『モダンホライゾン3』産カードたちは圧倒的な強さです。 今後モダンのメタゲームがどのように変化しても、エネルギーは不動の存在でしょう。環境の中心に常にエネルギーは鎮座し続けます。 ディミーア眼魔(2名) エネルギーと同じく2名のプレイヤーが選択したのはディミーア眼魔。 強力カード揃いの『モダンホライゾン3』でも一、二を争うパワーを持つ《超能力蛙》を主軸に据えたデッキで、その強さはボロスエネルギーと比べても遜色ありません。 ディミーア眼魔はボロスエネルギーと違い、青いデッキゆえに対コンボ性能が高いのが特徴。研磨ブリーチはもちろん、Tier2のアミュレットタイタンやベルチャーなど、モダン環境にはコンボデッキも多く、どのコンボデッキとも戦えるのがディミーア眼魔の強みです。 エルドラージランプ(1名) 研磨ブリーチ・エネルギー・ディミーア眼魔。この現モダンの三強以外を選んだのは1人のみ。John Ramos選手はティムールカラーのエルドラージランプを選択しました。   《エルドラージの寺院》《ウギンの迷宮》によりエルドラージは、モダンで唯一2マナランドを使えるデッキ。それを活かして早いターンから大きな《コジレックの命令》を唱えたり、《まき散らす菌糸生物》で更なるマナ加速&土地破壊を行っていきます。 《まき散らす菌糸生物》から《世界を壊すもの》で徹底的に土地を攻める動きはほとんどデッキに強く、《コジレックの命令》でメインから墓地対策が可能だったり、《コジレックの帰還》でエネルギーのクリーチャーたちを根こそぎ焼き払うなど、環境の上位デッキに対してしっかり戦えるのがエルドラージです。 特に複数枚の2マナランドが初手にある際の動きはレガシーと見まごうほど。   一昔前のエルドラージはウルザ土地を入れた重いデッキだったため、《血染めの月》《海の先駆け》を苦手としていましたが、現代のエルドラージランプは《まき散らす菌糸生物》《コジレックの命令》によるマナ加速ができ、デッキも比較的軽くなっているため、さほどこれらの対策カードが機能しません。 《記憶への放逐》というキラーカードは存在するものの、それ以外に有効なサイドカードはさほどありません。《一つの指輪》の禁止によって弱体化を余儀なくされたものの、研磨ブリーチ・エネルギー・ディミーア眼魔と戦う力はしっかりとあります。 4色ブリーチ Magic Online Champions Showcase : 4位 By David Inglis チームハンドシェイクの2名が選択した4色研磨ブリーチ。4色とは言っても青単に緑と白と赤をタッチした、実質トリプルタッチ。何を言っているかわからないと思いますが、3色をそれぞれ少しずつ入れています。   赤は《死の国からの脱出》を使うので当然入っていますが、《邪悪な熱気》が1枚しか入っておらず、ほぼ《死の国からの脱出》のためだけに赤が採用されています。除去である《邪悪な熱気》は早いターンから打ちたいので、1~2ターン目に赤マナをサーチする必要がありますが、《死の国からの脱出》はもう少し遅くに必要となるので、《オパールのモックス》から捻出してもOKです。《邪悪な熱気》の枚数をおさえることにより、色マナの要求を軽減しています。 緑は定番の《邪悪鳴らし》。墓地を肥やしつつ、《研磨基地》《死の国からの脱出》のコンボパーツにアクセスできる強力なスペルです。落とし子も出るので、2ターン目に《邪悪鳴らし》を唱えて3ターン目に4マナから《死の国からの脱出》+《研磨基地》で即勝ちが可能です。 従来はこのティムールカラーにまとめられていたブリーチ。《邪悪な熱気》を4枚採用して赤が濃くなっていましたが、4色ではこの《邪悪な熱気》の代わりに《ポータブル・ホール》が採用されています。 《ポータブル・ホール》は《邪悪な熱気》と違ってクリーチャー以外のパーマネントにも触れられるのが強み。サイド後は《虚無の呪文爆弾》《減衰球》《ドラニスの判事》(これは《邪悪な熱気》でも触れますが)などの対策カードを置かれるので、それらを退けるのにも活用できます。 そしてなんといっても、《邪悪な熱気》と違い《超能力蛙》を除去できるのがポイントです。これは《ポータブル・ホール》を採用する一番の理由と言って良いかもしれませんね。 《ポータブル・ホール》はアーティファクトなので《オパールのモックス》の金属術に貢献するのもポイントです。 最初は4色のブリーチに疑問でしたが、《ポータブル・ホール》の強さに納得し、今ではこのリストが最も良いと思うようになりました。   禁止改訂から時間が経過して研究が進んでいき、研磨ブリーチもいよいよ完成に近づいています。   エネルギー・ディミーア眼魔・研磨ブリーチの三強時代は、当分続くかもしれません。 ボロスエネルギー Magic Online Champions Showcase : 優勝 By  Charalampos Kikidis 環境の王者、ボロスエネルギー。   《色めき立つ猛竜》《一つの指輪》とアドバンテージ源を失ったため、《ベイルマークの大主》《溌剌の牧羊犬、フィリア》を採用するマルドゥ型が日本では流行の兆しを見せていました。 ボロスエネルギーは新たなアドバンテージ源を採用することなく、よりアグロ方面に舵を切っており、1マナ域として《敏捷なこそ泥、ラガバン》が追加されています。 《オークの弓使い》が環境からいなくなったことで、《敏捷なこそ泥、ラガバン》は以前よりも強いカードとなりました。《魂の導き手》で強化してしまえば、中盤以降もダメージを通すことが可能なので、エネルギーに入っている《敏捷なこそ泥、ラガバン》は強力です。 MOCSに持ち込まれたボロスエネルギーで最も特徴的だったのは、メインから採用されている《スレイベンの魔除け》でしょう。除去枠に入っているこのカードは、除去として使うには2マナと少し重いですが、重要なのは墓地対策である点。 研磨ブリーチ・ディミーア眼魔、そしてボロスエネルギーにはそれぞれ墓地対策が有効なので、このカードのメイン採用は納得です。Andrei Klepatch選手に至っては《外科的摘出》まで採用しており、墓地に対する意識の高さがうかがえますね。 エネルギー同型でも一方的に《火の怒りのタイタン、フレージ》を抜いてしまえば勝てる可能性は非常に高く、腐るマッチはさほどありません。とはいえ、能動的なアクションではなく、デッキに決してあっているとは言えないので、メインに入れるには1枚が限界な気がしますが。 先ほどアドバンテージ源は採用していないと言ったものの、手札を入れ替える3マナ域のカードは入っています。《鏡割りの寓話》と《歴戦の紅蓮術士》で今回は分かれました。   《歴戦の紅蓮術士》は《ゴブリンの砲撃》と特に相性が良いカードで、手札が0枚の時は2ドローできるので手札がしっかり増えてくれます。これは《鏡割りの寓話》にはない魅力ですね。 一方の《鏡割りの寓話》は……最早説明不要ですね。第一章のトークンも強く、二章で手札を入れ替え、変身後も放置できない。相手に2枚の除去を強要させた上で不要なカードを有効牌に変えられる、1枚でアドバンテージを取れるカードです。 《歴戦の紅蓮術士》《鏡割りの寓話》のどちらが優れているか、結論を出すのは難しいでしょう。MOCSに出場するプレイヤーたちの中でも考えがまとまっていないほどですからね。   今回優勝したのは《鏡割りの寓話》を採用したリストでしたが、強いのは果たしてどちらなのか、これからのボロスエネルギーの進化にも注目ですね。 ディミーア眼魔 Magic Online Champions Showcase : 2位 By Matthew Wright 三強の最後の一つ、ディミーア眼魔。リストはほぼ固定化されてきており、《超能力蛙》《忌まわしき眼魔》は4枚固定、《濁浪の執政》は2枚~3枚、《海の先駆け》が2枚。ここまではほぼ固定です。 ……のはずですが、今回ご紹介しているMatthew Wright選手のリストは《忌まわしき眼魔》が3枚に押さえられており、とても独創的なリストとなっています。   その代わりに《オークの弓使い》が3枚採用されており、ボロスエネルギーの《オセロットの群れ》《敏捷なこそ泥、ラガバン》を除去しつつ、研磨ブリーチの《定業》《ミシュラのガラクタ》を使いにくくします。 《一つの指輪》の禁止によりドローするデッキが減り、《オークの弓使い》は少し弱くなりましたが、タフネス1のクリーチャー、とりわけ《敏捷なこそ泥、ラガバン》が増えるのであれば、再び《オークの弓使い》の出番というわけでしょう。 スペル枠はほぼ固定されており、1マナの打ち消し枠の《呪文嵌め》を2~3枚採用するリストがほとんどです。エネルギーの《ナカティルの最下層民、アジャニ》《ゴブリンの砲撃》、眼魔ミラーの《対抗呪文》《超能力蛙》、研磨ブリーチの《死の国からの脱出》《研磨基地》と、それぞれのデッキの強力なカードを消せることから、《呪文嵌め》は今重宝されています。 エネルギーの《火の怒りのタイタン、フレージ》が厳しいため、墓地対策がメインから採用されることも多く、《虚無の呪文爆弾》が入っている場合がほとんどです。《外科的摘出》を採用するリストもあり、この辺りの事情はエネルギーの墓地対策と同じですね。 墓地対策が増えてきていることを意識したのがMatthew Wright選手のディミーア眼魔です。   墓地がないと手札から唱えられない《忌まわしき眼魔》、そして墓地から吊り上げる《発掘》がいずれも3枚に押さえられており、それらの枠が《オークの弓使い》になっているので、墓地依存度が下がっています。 とはいえ、2ターン目に《発掘》で《忌まわしき眼魔》を釣るのはこのデッキ最大のブン回り。不利マッチも2ターン目の《忌まわしき眼魔》+《否定の力》などで勝ててしまうのもディミーア眼魔の強みなので、そこを犠牲にするべきかは悩みどころです。 墓地依存をどれだけ下げるか、そしてメインから墓地対策をどれぐらい採用するか、この辺りはディミーア眼魔の調整をする上で重要となるでしょう。

【今週のピックアップデッキ】グルール昂揚/シミック眼魔/焼却者バーン

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.01.18

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ グルール昂揚 シミック眼魔 焼却者バーン グルール昂揚 スタンダードリーグ : 5-0 By Edel スタンダードでグルールと言えば《心火の英雄》《多様な鼠》《熾火心の挑戦者》の強力な赤のハツカネズミたちを主軸に据えた赤アグロ。 このグルールもアグロデッキではありますが、《心火の英雄》《多様な鼠》《熾火心の挑戦者》の3種のハツカネズミはいずれも採用されていません。 このグルールは、その名の通り"昂揚"によって戦うデッキです。 マジックオンライン以外でも、関西でのリアルトーナメントでも活躍しており、プレミアム予選も突破している、今ホットなデッキ。 昂揚は、4種のカードタイプを墓地に揃えることで達成できます。条件が非常に厳しいため、昂揚になった際のボーナスは強力な場合が多く、このデッキには多くの昂揚ボーナスを持つカードたちが採用されています。 まずは1マナ3/3と破格のスタッツを持つ《継ぎ接ぎのけだもの》。昂揚状態でしか戦闘に参加できませんが、アップキープに切削を行えるので、昂揚を助けてくれます。自身がアーティファクトクリーチャーなので墓地に落ちた際の昂揚カウントにも便利。 下フォーマットでもお馴染みの《逸失への恐怖》は、昂揚で追加の戦闘フェイズを発生させる凄まじいカード。戦場に出た時にカードを捨てて引き、更にクリーチャー・エンチャントなので、昂揚の達成にも貢献します。 《野火の木人》は普通に出しても2マナ3/2速攻で、昂揚時は4/3トランプル。2マナ4/3速攻トランプルは下環境でも通用するスペックです。カカシなのでアーティファクトクリーチャーです。 そして《雑食性ハエトリグサ》。昂揚していると、戦場に出た時や攻撃時に+1/+1カウンターを2個割り振り、更に6種のカードタイプがある状態では乗せている+1/+1カウンターが倍になる、非常に攻撃的な植物です。 昂揚達成時の恐ろしさについてわかってもらえたところで、肝心の昂揚の満たし方についてもお話しましょう。   前述のようにエンチャントやアーティファクトでもあるクリーチャーたちがデッキには大量に入っているので、それらのクリーチャーを《陥没穴の偵察》の探検や《瓦礫帯の異端者》の諜報、《逸失への恐怖》のディスカードで墓地に落としていきます。 《脱走》はこのデッキだからこそ使える強力なスペル。2マナ以下の強力なクリーチャーが多いので、《脱走》で状況に応じて上6枚から選択して戦場に出すことができます。速攻のオマケがつくので、昂揚達成時に《逸失への恐怖》を出して、速攻を付けて他のクリーチャーをアンタップして再アタック、なんてことも。 昂揚さえ満たせればスタンダードとは思えない性能のクリーチャーたちで襲い掛かるこのグルール昂揚。普通のグルールに食傷気味の方はぜひお試しください。 シミック眼魔 パイオニアチャレンジ : 優勝 By  Tunaktunak 原根 健太さんが配信で開発し、直後にパイオニアチャレンジで入賞したのを皮切りに優勝・準優勝ととにかく勝ちまくっている、今激アツなデッキ。   その名の通り、このデッキは《忌まわしき眼魔》に特化している、眼魔による眼魔のための眼魔デッキです。《忌まわしき眼魔》を出す手段と《忌まわしき眼魔》を守るカードばかりでデッキは構成されています。 《忌まわしき眼魔》を出す手段は大きく2つ。1つは墓地を肥やして手札から出す。《ファラジの考古学者》《サテュロスの道探し》で墓地を肥やせますが、それ以外の切削カードは採用されていません。あくまで合法的に《忌まわしき眼魔》を召喚するのはサブプランです。 メインとなるのは、《新生化》によってデッキから直接場に出す方法です。   《新生化》は生け贄に捧げたクリーチャーよりマナ総量が1高いクリーチャーをデッキから場に出すことができます。 これにより、2マナクリーチャーを生け贄に捧げることで《忌まわしき眼魔》を場に出せるのです。 生け贄に捧げる2マナクリーチャーは《新生化》を手札に加える手段が3種採用されています。《ボーラスの占い師》《ファラジの考古学者》《稲妻罠の教練者》はすべて2マナでライブラリーの上3~4枚からインスタント・ソーサリーを1枚手札に加えられます。 2ターン目に《ボーラスの占い師》《ファラジの考古学者》《稲妻罠の教練者》で《新生化》を手札に加え、3ターン目に《新生化》で《忌まわしき眼魔》を呼び出しつつ、1マナを構えるのがシミック眼魔の勝ちパターンです。 《新生化》を防ぐために相手が2マナクリーチャーを除去してきても、2マナクリーチャーは14体も入っているので、次の2マナクリーチャーを用意すればいいだけです。こちらとしてはさほど痛手にはなりません。   《新生化》で《忌まわしき眼魔》を呼び出した後は、今度はこの《忌まわしき眼魔》を守るフェイズに突入します。   パワー4以上のクリーチャーをコントロールしていると《否認》になる強力な打ち消し、《頑固な否認》。《忌まわしき眼魔》を出す前提なら《否認》の上位互換です。 《タイヴァーの抵抗》は1マナで使えば呪禁と破壊不能を付与するインスタント。マナをつぎ込むことでパワーとタフネスにも修正を加えるので、フィニッシュ手段としても優秀です。 モダンの御霊でも採用実績のある《本質の変転》も《忌まわしき眼魔》を逃がせる1枚です。クリーチャーを追放して戦場に戻すので、たとえば戦慄予示で伏せてある《ファラジの考古学者》に《本質の変転》を打つと、表のまま戦場に出るので《ファラジの考古学者》の能力を誘発させられます。 このように3種の《忌まわしき眼魔》を守る手段はそれぞれ違うメリットを持っています。   《消えゆく希望》は優秀なバウンス呪文です。シミックカラーでは除去手段がほとんどないため、《消えゆく希望》による妨害は必須です。 バウンスを自分のクリーチャーに使えるのは《忌まわしき眼魔》のメリットです。戦慄予示で伏せた裏向きクリーチャーにバウンスを打つと自分の手札に戻るので、たとえば《頑固な否認》や《タイヴァーの抵抗》、必要であれば《新生化》を手札に戻せば、使用できるようになります。 戦慄予示で昂揚を達成すれば《ウルヴェンワルド横断》で《忌まわしき眼魔》をサーチしたりなど、様々な手段で《忌まわしき眼魔》を呼び出す、極限まで《忌まわしき眼魔》に特化したデッキ。《忌まわしき眼魔》をとにかく使い倒したいならこのデッキに決まりです! 焼却者バーン モダンリーグ : 5-0 By antonSN5 『ファウンデーションズ』で登場した《稲妻波》により、ついに《溶岩の撃ち込み》8枚体制となったバーン。 しかし、《火の怒りのタイタン、フレージ》《魂の導き手》の強力なライフゲインカードの存在でどうしても活躍できていないのが現状です。 そんなバーンファンの皆様に朗報!今回は新たな形のバーンがモダンリーグで5-0しました!! モダンの定番だったボロスカラーではなくなったのが今回の新たなバーン。2マナ4点の《ボロスの魔除け》すら排除し、デッキ内に入っている本体火力はすべて1マナになっています。 《稲妻波》《溶岩の撃ち込み》《稲妻》《裂け目の稲妻》《批判家刺殺》はすべて1マナの3点火力呪文で、ダメージ効率で言えば最高です。 唯一1マナ2点の《炎の印章》が入っている理由は……この後明らかになります。 2マナの火力は厳選されており、《焼尽の猛火》のみとなっています。上陸しているとクリーチャーとプレイヤーに3点ずつを与えられる火力なので、2マナ6点相当とすさまじい性能です。クリーチャーとのダメージレースになりやすいバーンデッキでは、クリーチャーを焼きつつプレイヤーにもダメージを与えられる《焼尽の猛火》は貴重で、2マナを支払う価値があります。 《乱動する渦》は直接火力ではありませんが、アップキープにプレイヤーに1点のダメージを与えるエンチャント。それだけでなく、呪文を唱える際にマナが支払われていなかった場合に、そのプレイヤーに5点を与えます。《モックス・アンバー》や《ミシュラのガラクタ》のような0マナのカードを唱えても5点を与えられますし、《否定の力》などのピッチ呪文、続唱でめくれた呪文、《孤独》などにも反応して5点のダメージを与えてくれます。 さて、クリーチャーたちも見ていきましょう。まずは《玉虫色の蔦打ち》です。 上陸するたびに対戦相手に1点のダメージを与えるトカゲ。フェッチランドで2点のダメージを与えられ、新生していると2体になるのでフェッチランドが4点火力になってくれます。   これだけでは《ゴブリンの先達》《僧院の速槍》といったバーン定番の1マナ域より弱そうですが、もう1体のクリーチャーがこの《玉虫色の蔦打ち》と噛み合うカード。 それこそが焼却者バーンの主役、《チャンドラの焼却者》です! 6マナ6/6とバーンにとても入るとは思えない重さのクリーチャーですが、安心してください。このクリーチャーは実質1マナ6/6です!   このターンに対戦相手が受けた戦闘以外のダメージ1点につきコストが(1)軽くなるので、たとえば相手が《稲妻》で3点を受けていた場合は3マナになります。 ここで《炎の印章》がなぜデッキに入っているかが明らかとなりましたね。《炎の印章》を1ターン目に置き、2ターン目に《稲妻》を本体に打ち、その後《炎の印章》を生け贄にすると、このターンに相手が5点のダメージを受けているので、《チャンドラの焼却者》が1マナになります。《チャンドラの焼却者》のコストを軽くするには1ターンで相手がたくさんのダメージを受けなければならないので、《炎の印章》は相性が良いのです。 《裂け目の稲妻》もマナを払った次のターンに待機が明けてダメージが入るので、《チャンドラの焼却者》と相性が良いカードです。 先ほど紹介した《玉虫色の蔦打ち》もまた、《チャンドラの焼却者》の2ターン目キャストに貢献します。1ターン目に出しておき、2ターン目にフェッチランドを起動すれば2点が入るので、後3点を与えれば2ターン目に6/6を出せるというわけです。 しかも《チャンドラの焼却者》はただサイズが大きいだけではありません。《チャンドラの焼却者》が戦場にいると、プレイヤーに非戦闘ダメージが入った時に、そのプレイヤーがコントロールしているクリーチャーやプレインズウォーカーに同じ点数のダメージを与えられます。《稲妻》はもちろん、クリーチャーに打てない《溶岩の撃ち込み》なども《焼尽の猛火》になってくれるのです。 2ターン目《チャンドラの焼却者》のブン回りは病みつきになるかもしれませんよ。

【ゆうやんのデッキメモリー】青黒ネズミ

ピックアップ

2025.01.16

mtg Yuyan

皆さんこんにちは。 ゆうやんのデッキメモリーは、今年でマジックを初めて21年目になる僕が、思い出に残っているデッキを紹介していく記事です。 昔を知っている方は一緒に懐かしんで、知らない方は昔話にお付き合いください! マジックインビテーショナル 『神河物語』が発売された頃、僕にとってはマジックのカードを買うことは最早当たり前になっていた。 3000円で《金属モックス》を4枚揃えたのをきっかけに、バイト代やお小遣いをすべてカードにつぎ込むことになんら違和感がなくなっていた僕は、とあるデッキリストを見つけて衝撃を受けた。   それは、インビテーショナル05の大会結果だった。   インビテーショナルとは、かつて存在していたマジックのトーナメントの1つ。   プロツアーチャンピオンや人気投票で選ばれたプレイヤーなどのみが参加できる大会で、お祭りゆえに変わったフォーマットが採用されている。   デッキを初期ライフと手札枚数で競り落とす「デッキオークション」や、まったく同じカードプールでシールド戦を戦う「デュプリケートシールド」など、ユニークなフォーマットで著名プレイヤーたちが戦うのがインビテーショナルだ。   そして本大会の優勝者には、カードを1枚デザインする機会が与えられる。かの有名なボブこと《闇の腹心》や、ナドゥで活躍した《森を護る者》、フィンケルこと《影魔道士の浸透者》などはすべてインビテーショナルカードだ。 そのインビテーショナルに招待された構築の天才、ローリーさんこと藤田 剛史さん。日本人初の殿堂プレイヤーであるローリーさんが作り、インビテーショナルのスタンダードラウンドで勝ち越しをあげて準優勝に貢献したのが青黒ネズミ。 青黒ネズミ このデッキは一言で言えばディミーアカラーのコントロールデッキ。《貪欲なるネズミ》と《騒がしいネズミ》で相手のリソースを奪い、クリーチャーを除去や打ち消しでいなしていく。 8枚のネズミたちを使い回すべく採用されているのが《ヴィダルケンの黒幕》。《騒がしいネズミ》と《ヴィダルケンの黒幕》が揃うとロックコンボが決まる。相手の手札をライブラリーの一番上に戻させて、その後《ヴィダルケンの黒幕》で《騒がしいネズミ》を回収して使い直せるのだ。これによって相手は永遠に新しいカードを引けなくなるので、盤面で勝っていなければ詰みとなる。 もちろん相手が手札を使い切ってしまった場合にはこのハンドロックは成立しない。そのためにカードを相手の手札に返す手段として《上天の呪文爆弾》《残響する真実》などのバウンスも採用されている。 とはいっても、通常このロックは《ヴィダルケンの黒幕》《騒がしいネズミ》だけでは成立しない。相手の最後の1枚が土地ならば置くだけだし、それ以外なら使うだけ。その手札のカードが唱えられない状況のみ決まる、不確実なコンボだ。 しかし、ここに《霊気の薬瓶》が加わることでロックは強固となる。相手のドロー後に《騒がしいネズミ》をインスタントタイミングで出すことで、相手の手札がインスタントでない限りは、ロックが決まるようになるのだ。 コンボパーツの一つにもなる《霊気の薬瓶》も4枚採用されており、更にそれをサーチする手段として《粗石の魔道士》もあり、しっかりとコンボが決まるようになっている。《粗石の魔道士》は《霊気の薬瓶》が不要なタイミングでは《師範の占い独楽》をサーチできるので、この頃はスタンダードのみならず、様々なフォーマットで《粗石の魔道士》は採用されていた。 《上天の呪文爆弾》《残響する真実》のバウンスがネズミたちによって実質的に除去のような機能を果たしたり、ネズミを回収して使い回すこともできるのが美しく、シナジーが非常に美しかった。 が、それ以上に衝撃を受けたことがあった。   それは、このデッキがコモンとアンコモンだけで構築されているという事実。ローリーさんの作った青黒ネズミにはただ1枚のレアすらも採用されていなかったのだ。   マジックに触れて20年。パウパー以外のフォーマットで僕はレアが0枚のデッキを見たことは、この青黒ネズミを除いてただの一度もなかった。   どれだけ安いとされているデッキでも、土地かスペルのどちらかにレアは入っている。《嵐追いの才能》が安かった頃はエスパーピクシーがほぼアンコモンだけで構成されて安かったが、それでも《悪意ある呪詛術士》と《嵐追いの才能》、そして土地すべてがレアだ。 レア0枚のデッキなんてありえない。20年以上経った今でも、最初にコモンとアンコモンだけで構成されていると気づいた時の衝撃はまだ記憶に残っている。それも奥底に眠っている記憶ではなく、新鮮なものとして。   ローリーさんはどんなことを考えてこのデッキを作ったのだろうか?僕ならば、レア0枚のデッキを組んだら楽しくて仕方がなくなる。本当は一種ぐらい入れたいレアがあったとしても、それがアンコモンで代用できそうなら、少し妥協してしまいそうだ。   僕はマジックにおいて勝利至上主義であることは確かだが、同時に遊び心も重視している。自分が楽しいと思えないデッキは回していても楽しくない。楽しくないデッキを使っても僕は勝てない。 だから僕は、楽しさを見出したデッキしかトーナメントに持ち込まない。   このマインドを持つようになったのは、ローリーさんがきっかけだ。 マジック公式サイトより引用 常に環境で最も強いデッキを練習して勝つのは、僕にとってはストレスであり、もしそれしかトーナメントに勝つ方法がないのなら、既にマジックをやめていただろう。   最前線でプロプレイヤーとして戦いながら、常に遊び心を持っていたローリーさんが「楽しさと強さは両立する」ということを教えてくれた。だから僕はマジックを今も楽しくプレイし続けることができている。   青黒ネズミと出会ってちょうど今年で20年。ありがたいことに、今の僕は多くの皆さんに認知してもらっている。   競技マジック駆け出しの細川少年のマジック観に影響を与えた憧れのプロプレイヤー、藤田 剛史さん。誰かにとっての僕もそんな存在になれたら嬉しいと思う。今の僕の実力と実績ではおこがましい願望に過ぎないが。   僕に楽しさと強さの両立を教えてくれて、今ではマジックの最終目標となっている藤田 剛史さん。その名前を知るきっかけとなった青黒ネズミは、生涯忘れることのないデッキだ。

【週刊メタゲーム通信】最新のモダンは眼魔・ブリーチ・エネルギーの三強時代に突入!

週刊 ピックアップ

2025.01.14

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今回は、マジックオンラインの結果やモダンの大型大会から、最新のモダンのデッキをご紹介していきます!         紹介デッキ ディミーア眼魔 ティムールブリーチ マルドゥエネルギー ディミーア眼魔 モダンチャレンジ : 2位 By TSPJendrek 今やエネルギーと並んでモダンにおける二強の一角となったディミーア眼魔。 《致命的な一押し》《対抗呪文》で相手の攻め手を妨害しながら、《超能力蛙》《忌まわしき眼魔》を展開し、速やかに相手のライフを削りきるデッキです。 リソースを稼ぐカードは《超能力蛙》しか入っていないため、コントロールというよりはクロックパーミッションに近いデッキです。 レガシーでは禁止されてしまった《超能力蛙》。当然モダンでもその力は脅威的で、今モダンで一番強いカードと言っても過言ではありません。手札からカードを捨てるだけで強くなり、攻撃が通れば1ドロー。更には飛行を付与するオマケと、《サイカトグ》のリメイクにしてはやりすぎです。 そんな《超能力蛙》と相性の良いクリーチャーが《忌まわしき眼魔》。スタンダードやパイオニア、そしてレガシーでも姿を見かけるカードですが、最初に注目されたのはモダンでした。《忌まわしき眼魔》を墓地に送って《発掘》で釣り上げるのがこのディミーア眼魔の勝ちムーブの1つであり、《超能力蛙》で手札から墓地に送り込むことができます。 《忌まわしき眼魔》を直接ライブラリーから墓地に送る手段として《思考掃き》と《考慮》も採用されています。これらの墓地を肥やすキャントリップ呪文で手札から《忌まわしき眼魔》を出すためのコストを支払うことも可能ですし、《濁浪の執政》のキャストにもつなげられます。 探査で召喚する《濁浪の執政》と《忌まわしき眼魔》、一見すると相性の悪い2枚ですが、実はそんなことはありません。 《忌まわしき眼魔》の戦慄予示で1枚が墓地に送られ、もう1枚が場に出ます。そのカードが除去られれば墓地は増えていきますし、《忌まわしき眼魔》が生き残れば毎ターン墓地が勝手に肥えていきます。《忌まわしき眼魔》で墓地が0枚になっても瞬く間に《濁浪の執政》が出てくるのです。 《濁浪の執政》を出した後に《忌まわしき眼魔》を唱えるのは少し大変ですが。 非常に速いデッキなので、手札を増やす手段が《超能力蛙》しかないにも関わらず、《否定の力》が大量に採用されています。《超能力蛙》《忌まわしき眼魔》《濁浪の執政》は打点が非常に高く、これらを展開して次のターンに勝てるようにしつつ、《否定の力》を構えることが多いためです。 《知りたがりの学徒、タミヨウ》の採用は珍しいですが、これは追加のリソース獲得手段なのでしょう。《思考掃き》《考慮》があるので《知りたがりの学徒、タミヨウ》の変身は比較的容易です。 《発掘》が手札に余る展開もあるので、なるべく釣れる対象は多い方が良いと考えての採用なのかもしれません。《知りたがりの学徒、タミヨウ》は攻める時は強いカードではありませんが、生き残るだけで手がかりを作っていき、変身すれば大きなプレッシャーになるので、単純なパワーカードです。 以前まではエネルギーに少し不利なデッキでしたが、《湧き出る源、ジェガンサ》《一つの指輪》《色めき立つ猛竜》の3種が禁止されたことによる弱体化で、今は良い戦いができるようになりました。その上でコンボデッキにめっぽう強いため、ディミーア眼魔は今モダンで最強のデッキの一角と言われています。 《超能力蛙》から《忌まわしき眼魔》を出して《対抗呪文》を構えたり、2ターン目に《忌まわしき眼魔》を出してそこから妨害連打など、青黒とは思えない速度でゲームに勝利することもあり、回っている時のディミーア眼魔は最強という言葉が実に相応しい。 モダンの大会に出るならば必ず意識しなければならない相手です! ティムールブリーチ モダンチャレンジ : 優勝 By  Slasher21 禁止改訂によって解禁された4枚の中で最も今活躍しているのは《オパールのモックス》でしょう!ティムールブリーチをトップメタまで押し上げてくれました。 ティムールブリーチは《死の国からの脱出》と《研磨基地》を使用したコンボデッキです。 《研磨基地》はアーティファクトを生け贄にすることで、自分か相手どちらかを3枚切削できるカード。これを使って0マナのアーティファクトを生け贄にし、自分に切削3を行います。 その後、《死の国からの脱出》を唱えて、墓地から今生け贄に捧げた0マナのアーティファクトを脱出コストでキャストします。これにより《研磨基地》がアンタップし、再度そのアーティファクトを生け贄に自分に切削し、その切削した3枚を超すとにアーティファクトを再び戦場に戻し……これで自分のライブラリーを0枚にできます。 最終的にはライブラリーが0枚になり、《タッサの神託者》を脱出で唱えて勝利となります。 生け贄にするアーティファクトが《モックス・アンバー》か《オパールのモックス》であればマナがどんどん増えていくので、フルタップで《研磨基地》と《死の国からの脱出》を唱えた場合でも瞬殺コンボに移ることができ、2マナと2マナによるコンボで、《研磨基地》側は事前に先に設置しておけるので、3ターンキル可能な非常に速いコンボデッキとなっています。 3ターンキル可能…どころか3ターンキル自体は割と安定しています。《邪悪鳴らし》は《死の国からの脱出》《研磨基地》にアクセスしつつ、落とし子を用意できるので、3ターン目に4マナの状況を簡単に作ってくれるのです。 それだけでなく、《死の国からの脱出》さえあれば《研磨基地》側は墓地から脱出で唱えても問題ありません。他にも墓地を肥やす手段はあり、《研磨基地》を墓地に送るのはさほど難しくないため、実質《死の国からの脱出》1枚コンボになっているのです。 《オパールのモックス》の登場によってこのデッキは2ターンキルも現実的となりました。1ターン目に《知りたがりの学徒、タミヨウ》をキャストして《モックス・アンバー》、《オパールのモックス》と置いて2ターン目に《知りたがりの学徒、タミヨウ》が殴って手がかりを出せば、《オパールのモックス》が金属術を達成するので4マナが用意でき、《死の国からの脱出》《研磨基地》で2ターンキルです。 ティムールブリーチの軸となっている《知りたがりの学徒、タミヨウ》《湖に潜む者、エムリー》は、《モックス・アンバー》と非常に相性の良いカード。いずれも1マナで唱えられる伝説のクリーチャーなので、早いターンから《モックス・アンバー》が《Mox Sapphire》になってくれるのです。 《知りたがりの学徒、タミヨウ》は攻撃して手がかりを出すため、《オパールのモックス》の金属術も助ける素晴らしいカード。コンボパーツを集めるために手がかりを生み出し続けても良いですし、変身して大マイナスを狙う展開も可能です。サイド後は墓地対策などヘイトカードを喰らうので、変身する機会は非常に多いです。 《湖に潜む者、エムリー》も器用なカード。墓地を4枚肥やしつつ、《ミシュラのガラクタ》などを戻して手札を増やしたり、《仕組まれた爆薬》《魂標ランタン》《上天の呪文爆弾》を使いまわして相手を妨害していきます。 この2種は絶対に放置できないクリーチャーなので、相手は除去を抜くことができません。それがこのデッキと戦いづらいポイント。《死の国からの脱出》《研磨基地》のコンボにクリーチャーは絡まないので、除去を抱えてキープして、始まったコンボを指を咥えてただ見ている…なんてことも。 コンボパーツを探せる《ウルザの物語》から出るトークンがとにかく大きいのもティムールブリーチの魅力。しかも2種のモックスによって2ターン目の起動も可能ですからね。サイド後は墓地対策を無視して構築物トークンで殴っていくことも多いです。 高速コンボにも関わらず複数のゲームプランが取れるティムールブリーチ。対策必須の強デッキです。 マルドゥエネルギー モダン神挑戦者決定戦 : 優勝 By 高橋 太朗 あれ?エネルギーは禁止改訂によって消えたはずでは…? 《湧き出る源、ジェガンサ》《一つの指輪》《色めき立つ猛竜》の3種を失ってもまだ強いエネルギー!そう、展開力とリソース確保、そして相棒を失っても、エネルギーの根幹は生き残っています。『モダンホライゾン3』がいかに恐ろしいセットだったかわかりますね。 エネルギーを稼ぎながらライフを得て、最終的には自軍クリーチャーに飛行と修正を与える《魂の導き手》。 その《魂の導き手》と相性の良い、トークンをどんどん生成していく《オセロットの群れ》。 1枚で2面展開するだけでなく、《ゴブリンの砲撃》との組み合わせで一撃でライフを削り取ることもある《ナカティルの最下層民、アジャニ》。 そして《栄光の闘技場》との組み合わせも強力な《火の怒りのタイタン、フレージ》。 この4種が使える以上、エネルギーというデッキが消えることはありません。 とはいえ、《色めき立つ猛竜》の禁止により、エネルギー要素はかなり減っています。デッキリストをよく見ると《魂の導き手》以外にエネルギーと書かれたカードは1枚も採用されていません。 以前までは4枚確定だった《電気放出》。1ターン目に除去しつつ、エネルギーを少し残せるので、2ターン目に《色めき立つ猛竜》を出した時に、3マナ以上のカードを唱えることが可能でした。 《色めき立つ猛竜》がなくなった今、エネルギーを使うことそのものが減ってしまったため、エネルギーを貯めることのバリューが減ったのです。《電気放出》は1マナで《濁浪の執政》を除去できる可能性のあるカードでしたが、《超能力蛙》を倒しづらい欠点もありました。決して1マナの万能除去というわけではなく、《色めき立つ猛竜》との相性などを加味して採用されていたのです。 《電気放出》が抜けたことで、エネルギーの維持が難しく、《静牢》も自然とデッキから抜けていきました。そこで最近では《岩への繋ぎ止め》の採用率が非常に上がっています。マルドゥでは《致命的な一押し》が使えますが、ボロスでは良い1マナ除去がないので、《岩への繋ぎ止め》が4枚投入されていることも。これによりディミーア眼魔のすべてのクリーチャーに触れるようになりました。 さて、今回モダン神挑戦者決定戦を制したリストで最も特徴的なのが《ベイルマークの大主》です。 大主サイクルの中ではスタンダードで最も姿を見ない《ベイルマークの大主》ですが、このデッキでは凄まじいリソース源となります。切削しながら墓地からカードを拾う2マナのカードと、モダンレベルではないように思えますが、その2マナのカードに5/5のサイズと、攻撃時の誘発のオマケもついてきたら話は別です。 それを可能にしているのが《溌剌の牧羊犬、フィリア》。攻撃時に兆候状態の《ベイルマークの大主》を追放すると、戻ってきた時には兆候が解けています。しかも追放領域から戻ってきた時にも切削と回収を行うので、攻撃もできれば3枚のカードを回収でき、《一つの指輪》級のリソースを獲得できます。 切削が嬉しいのもデッキと噛み合う部分。《火の怒りのタイタン、フレージ》が4枚採用されていますからね。《ベイルマークの大主》でクリーチャーを拾いつつ、《火の怒りのタイタン、フレージ》まで落ちれば、もうその時点で勝ったも同然です。 《ベイルマークの大主》と《溌剌の牧羊犬、フィリア》の組み合わせはマルドゥエネルギー以外でも、オルゾフブリンクなどで活躍しており、今後もよく見かけることになるでしょう。 《一つの指輪》を失ってからのエネルギーは、《スカルドの決戦》や《歴戦の紅蓮術士》など、様々なカードでリソースを稼ぐ努力をしてきましたが、マルドゥでは《ベイルマークの大主》が定番となるかもしれませんね。

【今週のピックアップデッキ】アゾリウス全知/マーフォーク/悟ブリンク

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.01.10

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 アゾリウス全知(スタンダード) MOリーグ:5-0 By KidWar 『ファウンデーションズ』では《ラノワールのエルフ》をはじめ、様々な往年の名カードが再録されていますが、実はレガシーやパイオニアで現在も現役バリバリで稼働しているあのカードも収録され、スタンダードに帰ってきています。 そう、《全知》です。 手札から呪文をタダで唱えられるというエンチャント。そのマナコストは10マナと重いですが、マジックを遊戯王に変えるぐらいの能力なので当然です。 この《全知》を《アブエロの覚醒》で墓地から吊り上げるのがアゾリウス全知。最速4ターンキルも可能なデッキとなっています。 デッキのコンセプトは至って単純。《全知》を墓地に落とし、《アブエロの覚醒》で戦場に戻す。ただこれだけです。 墓地に落とす手段は実に豊富です。《ファラジの考古学者》《錠前破りのいたずら屋》はそれぞれカードを切削して《アブエロの覚醒》を手札に加えられるカードたち。その過程で《全知》を落とせます。 《決定的瞬間》《困惑の謎掛け》も同じく、《全知》を墓地に送りつつ《アブエロの覚醒》を手札に入れられるカード。《困惑の謎掛け》は打ち消し呪文としても運用できるので、相手の動きを見てモードを選択できて嬉しいですね。 手札に《全知》が来た場合も問題はありません。《航路の作成》で手札から直接墓地に落とせます。このデッキではリソースはさほど重要ではないため、強襲を達成してから《航路の作成》を打つと、後で引いてきた《全知》を捨てられずに困る場合があります。 《エファラの分散》はクリーチャーをバウンスしつつ、諜報2で《全知》を切削できるので、デッキと噛み合ったカードです。 これらのカードで《全知》を落とし、《アブエロの覚醒》で戦場に戻し、そこからどうやって勝利するのか。その手順をご紹介します。 1.《アブエロの覚醒》で《全知》を墓地から戦場に戻す。1/1の《全知》が戦場に出る。 2.《アルケヴィオスへの侵攻》を戦場に出してサイドボードから《機織りの季節》をサーチ。 3.《機織りの季節》を、1/1の《全知》をコピーしながら、トークンと土地以外をすべて手札に戻すモードで使用。 4.コピーの《全知》以外のすべての非土地パーマネントが手札に戻るので、先ほど唱えた《アルケヴィオスへの侵攻》を再キャスト。サイドボードから《肝冷やしの手》を手札に加える。 5.《肝冷やしの手》で《アルケヴィオスへの侵攻》を手札に戻して戦慄予示を行い、再び《アルケヴィオスへの侵攻》を出して墓地から《肝冷やしの手》を回収する。 6.《アルケヴィオスへの侵攻》が戦慄予示によって戦場に裏向きで出るまで、5を何度も繰り返す。 7.《肝冷やしの手》で2枚目の《アルケヴィオスへの侵攻》が戦慄予示で戦場に出たら、手札から《アルケヴィオスへの侵攻》を出し、墓地から《機織りの季節》を手札に。 8.《機織りの季節》を唱えて、戦慄予示の2/2をコピーしながら全バウンスモードを使用。コピーの2/2と《全知》以外のすべてのパーマネント(《アルケヴィオスへの侵攻》2枚を含む)が手札に戻る。 9.《機織りの季節》で2/2をコピーしながら全バウンスで《アルケヴィオスへの侵攻》が2枚手札に戻り、1枚目で好きなインスタント・ソーサリーを手札に加えつつ、2枚目で《機織りの季節》を回収して再度8を行うことで、無限に2/2を増やしながら、ライブラリー・墓地・サイドボードから任意のインスタント・ソーサリーを手札に加えられるようになる。 10.最終的に無限体の2/2を出して手札を4枚の《困惑の謎掛け》《否認》《失せろ》《エファラの分散》にしてターンエンド。相手のターンで7回の妨害を行い、無限体のトークンで攻撃して終了。 少し長いですが、このような手順で勝利となります。 《アブエロの覚醒》で釣った《全知》が1/1のクリーチャーになるので、《機織りの季節》でコピーを作り出せるというのがミソですね。最初は僕も全然コンボの方法がわからずに、MTGアリーナで画面と格闘していました。《機織りの季節》のテキストを2回読み直してようやく気付くことができましたが。 《全知》を遊戯王と表現しましたが、実際に《全知》が着地してからの勝利手順はまさに遊戯王と言わんばかり!マジックで遊戯王を楽しんでみたいならこのデッキで決まりです! マーフォーク(パイオニア) パイオニアチャレンジ:優勝 By claudioh マジック界随一の人気を誇る種族、マーフォーク。その歴史は非常に古く、黎明期から《アトランティスの王》は活躍していました。 レガシーではかつて最強と言われていて、モダンにおいても度々強化が入って騒がれているマーフォーク。美しいその容姿とは裏腹に、戦術は肉弾戦を得意としています。このギャップもマーフォークの魅力かもしれませんね。 すべてのマーフォークを+1/+1する《アトランティスの王》《ヴォーデイリアの呪詛抑え》《真珠三叉矛の達人》たちで盤面を強化し続けて相手のライフを一瞬で削りきる。これが下環境におけるマーフォークの戦略でしたが、パイオニアでのマーフォークは一味違います。 カラーリングはシミック。緑のカードは3種で、その内2枚はいずれも1マナ。 1マナ2/2の《クメーナの語り部》と、戦場に出た時に探検を行える《陥没穴の偵察》。いずれも非常に優秀なマーフォークなので納得です。 もう1種となるのが《キオーラの追随者》。他のパーマネントをアンタップできるので、一時的なマナ加速が可能なマーフォークなのですが、殴りに向いたクリーチャーではありません。 それならなぜこのカードが入っているのかというと、答えはクリーチャー以外の部分にあります。そう、《深根の巡礼》です。 トークンでないマーフォークがタップするたびに呪禁を持つマーフォークを生成するエンチャント。攻撃するたびにマーフォークを生成していくデザインのカードですが、これが《キオーラの追随者》と組み合わさることで恐ろしいコンボになります。 《キオーラの追随者》を2体出し、Aの能力でBをアンタップし、次にBでAを起こすと……無限にマーフォークをタップできるので、《深根の巡礼》で無限体のトークンを生成できるのです。 とはいっても《キオーラの追随者》が2体並ぶことなど稀。そこで採用されているのが《アガサの魂の大釜》です。 《アガサの魂の大釜》で《キオーラの追随者》を追放すると、+1/+1カウンターが乗ったすべてのクリーチャーが《キオーラの追随者》になるので、非常に簡単にコンボが決められるようになります。 《陥没穴の偵察》は探検でカウンターが乗れば能力が使えますし、《オラーズカの暴君、クメーナ》はすべてのマーフォークにカウンターを乗せられるので、《アガサの魂の大釜》との相性抜群です。 コンボを揃えるためのカードたちも優秀なメンバー揃いです。かつて禁止カードだった《密輸人の回転翼機》は《キオーラの追随者》を墓地に送りながら《アガサの魂の大釜》を引き込めるカードで、搭乗によってクリーチャーをタップできるので、《深根の巡礼》との相性も単純に良いですね。搭乗コストは1ですが、クリーチャー化した《密輸人の回転翼機》に更に搭乗することができるので、攻撃せずに毎ターン、トークンでないマーフォークの数だけ1/1の呪禁を生成可能です。 そして《上げ潮、キオーラ》。こちらは2枚引いて2枚捨てるので効率よくコンボパーツを揃えられますし、《密輸人の回転翼機》《陥没穴の偵察》の探検と組み合わせてスレッショルドを達成すれば、破格のボーナスも得られます。 《上げ潮、キオーラ》による攻撃や《深根の巡礼》+《密輸人の回転翼機》のトークン生成からの《オラーズカの暴君、クメーナ》全体強化と、決してコンボ一辺倒ではないのがパイオニアのマーフォークの魅力。コンボを揃えるカードが非常に強力なのが頼もしいですね。 美しい魚たちが織り成す無限コンボをぜひ一度体感してみてください。 悟ブリンク(モダン) モダンリーグ:5-0 By DB_DackFayden7 クリーチャーを一時的に追放して戦場に戻す能力のことを、マジックでは「ブリンク」と呼ばれています。 《一瞬の瞬き》の英語名、Momentary Blinkに由来し、同じような能力のカード、たとえばこのデッキに採用されている《儚い存在》がブリンクと呼ばれることもあれば、ブリンクカードを駆使したデッキをブリンクと名付けることもあります。 クリーチャーを一瞬だけ追放して戦場に戻す。この一見意味のない能力は、相手が打ってきた除去を回避する役目もありますが、一番の目的はなんといっても、戦場に出た時の能力をブリンクによって何度も誘発させることです。 この悟ブリンクも、実に様々な方法でブリンクを起こし、活用していきます。 まずデッキ名になっている《潜入者、悟》。自身や他のトークンでないクリーチャーが唱えられずに戦場に出た時にドローできる能力を持っています。クリーチャーがブリンクすると1枚引ける、このデッキにとっては凄まじいドローエンジンなのです。さすがデッキ名を冠するだけあります。 ブリンクする方法は様々ですが、まずは先ほども少し名前の出た《儚い存在》。反復がついているので1枚で2回のブリンクを起こすことができ、《潜入者、悟》でお手軽2ドローです。しかもブリンクするクリーチャーも何かしらのアドバンテージをもたらすので、1枚で4枚分の得ができる、アンリコ超えの性能! 《溌剌の牧羊犬、フィリア》は最近ではボロスエネルギーにも入り始めているブリンク犬。相手のパーマネントを選ぶこともできますが、自分のパーマネントをブリンクすると《溌剌の牧羊犬、フィリア》自身が強くなるオマケつき。一時的に相手のブロッカーを排除して攻撃を通すなど、器用なブリンククリーチャー。 元祖ブリンククリーチャーである《ちらつき鬼火》も採用されています。《溌剌の牧羊犬、フィリア》と違い、戦場に出た時のみなので使い切りではありますが、自身が3/1飛行とまずまずのスタッツ。《溌剌の牧羊犬、フィリア》で《ちらつき鬼火》を追放して、《ちらつき鬼火》で他のカードを追放して……と追放リレーをしていくと、《潜入者、悟》で毎ターン大量のカードをドローできます。 ブリンク先となるカードもどれも強力。《ベイルマークの大主》は兆候で唱えてブリンクすることでただのクリーチャーとして戦場に戻ってくるので、ブリンクとの相性が非常に良いカードです。戦場に出て1枚、ブリンクして1枚なので、2枚を回収しながら次のターンから早速攻撃し、更にクリーチャーを回収します。 想起+ブリンクの恐ろしさは《悲嘆》で皆さんご存じですよね。《孤独》を想起で唱えてブリンクすることで、2体のクリーチャーを除去しながら、《孤独》を戦場に着地させられます。《溌剌の牧羊犬、フィリア》では想起状態の孤独をブリンクできませんが、《儚い存在》か、《霊気の薬瓶》から出す《ちらつき鬼火》であれば、想起で唱えた《孤独》を即ブリンクしてクリーチャーとして戦場に出せます。 面白いのが《骨の皇帝》。エスパー御霊などでもおなじみのリアニメイトクリーチャーですが、このデッキでは順応して釣り上げたクリーチャーをブリンクしたり、順応済みの《骨の皇帝》をブリンクしてもう一度順応し直すなど、いろいろな使い道があります。 《骨の皇帝》で《溌剌の牧羊犬、フィリア》をリアニメイトして即攻撃し、順応した《骨の皇帝》を元に戻す、なんてことも。 本来であればリアニメイトしたクリーチャーは終了ステップに生け贄に捧げなければなりませんが、このデッキには大量のブリンクカードが入っているので、最終カウンターもなくなり、墓地から蘇ったクリーチャーは完全にリフレッシュして戦場に戻ってきます。 墓地を肥やす手段としては《ベイルマークの大主》があるため、吊り上げには困らないでしょう。《ベイルマークの大主》を墓地から吊り上げて即攻撃して2回の切削&回収を行い、そこにブリンククリーチャーを見つければ、無限のリソースとなります。 この手のブリンクデッキは攻撃手段に乏しかったのですが、悟ブリンクは《溌剌の牧羊犬、フィリア》《骨の皇帝》など、それなりの攻撃を仕掛けながら、《潜入者、悟》《ベイルマークの大主》でアドバンテージを取っていくので、ただ手札が肥えていくだけのデッキではありません。悠長に構えているとあっという間にゲームに敗北してしまうでしょう。 《霊気の薬瓶》が1ターン目に出てきた時のスピードと展開力は目を見張るものがあります。ブリンクがお好きな方にピッタリのデッキです!

モダンで解禁された4枚のカードのその後に迫る!禁止解除組たちの現在の居場所

Modern ピックアップ

2025.01.08

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こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 モダンの衝撃の禁止改訂から20日ほどが経過。激動の環境も少し落ち着きつつあり、ようやく最近のメタがうっすらとではありますが可視化されてきました。 さて、禁止改訂では《一つの指輪》《色めき立つ猛竜》《湧き出る源、ジェガンサ》の3枚が禁止になりましたが、それ以上に4枚のカードが世に放たれました。 今回の記事では、その禁止解除組たちのその後の行方について迫っていきます。 《オパールのモックス》 解禁組の中で最も使われているカードは《オパールのモックス》でしょう。 《死の国からの脱出》《研磨基地》によって自分のライブラリーをすべて削るコンボデッキ、ティムールブリーチでは《モックス・アンバー》と合わせて8枚のモックスで、時にはレガシーとみまごう動きをすることもあります。 ハンマータイムも《オパールのモックス》で復権したデッキの1つ。《純鋼の聖騎士》の金属術の達成に一役買う他、《巨像の鎚》も1マナなので、今までにはできなかった動きが《オパールのモックス》で実現できます。更に《ウルザの物語》を2ターン目に起動してのビートダウンも可能になりました。 そんな《オパールのモックス》を使うデッキの中から今回ご紹介するのがこちらの8cast。   モダンリーグ: 5-0 By Anaip90 8castの名前の由来は《物読み》の英語名、Thoughtcast。その名の通り、《思考の監視者》《物読み》と《思考の監視者》の8枚の2ドロースペルが採用されていることから、そう呼ばれるようになりました。 デッキはアーティファクトを主体としたビートダウンデッキ。《オパールのモックス》《モックス・アンバー》《ミシュラのガラクタ》と0マナアーティファクトを連打し、それらを使って《湖に潜む者、エムリー》《河童の砲手》を出していきます。 そして失った手札を《思考の監視者》《物読み》で回復し、再展開しながら《金属の叱責》《否定の力》で相手の妨害を行い、そのままライフを削り切ります。 《モックス・アンバー》を使うデッキでは《知りたがりの学徒、タミヨウ》《湖に潜む者、エムリー》の伝説8枚体制が定番になってきましたね。どちらも1マナで出せる伝説のクリーチャーなので、《モックス・アンバー》の運用がしやすく便利です。《知りたがりの学徒、タミヨウ》は攻撃することでアーティファクトである手がかりを生成できるので、《オパールのモックス》の金属術も満たしてくれます。 レガシーで大活躍の《河童の砲手》はモダンでも当然猛威を振るいます。アーティファクトをタップすることでマナコストが軽くなるので、1マナ6/6となることもしばしばあり、成長速度もすさまじいので、あっという間に相手のライフを削りきってくれます。 この手のデッキでは《否定の力》は運用しづらいですが、8Castは8枚の2ドロースぺルが入っているので、手札の枯渇もそこまで問題にはなりません。 0~1マナのアーティファクトが多いので、この8 Castも2ターン目に《ウルザの物語》を起動しやすいデッキの1つ。1ターン目に《ウルザの物語》を置いて《影槍》をはじめとした1マナのアーティファクトを出し、《オパールのモックス》と他の0マナのアーティファクト、または《ダークスティールの城塞》を置くだけで2ターン目に構築物を生成できます。しかもそのサイズは4/4ですからね。それだけで勝てるマッチもあるぐらいです。 青単色で構成されているので《ダークスティールの城塞》が使えるのも8Castの魅力。《オパールのモックス》の金属術に《思考の監視者》《物読み》のコスト軽減、《河童の砲手》のパンプアップなど、ただの土地とは思えない性能です。 一見すると《溶融》に弱そうに見えるデッキですが、《思考の監視者》《河童の砲手》は《溶融》で対処することはほぼ不可能ですし、2種のモックス以外のアーティファクトはカードが引けるものばかりなので、さほどクリティカルには刺さりません。 青単ゆえに除去は入っていないので、《オークの弓使い》に泣くのはご愛嬌。あまり使われていないのも、8Castの躍進の要因かもしれませんね。 《緑の太陽の頂点》 レガシーの緑と言えば《緑の太陽の頂点》と《ガイアの揺籃の地》。それぐらいのパワーカードは当然ながらモダンでも存在感を示しています。 《ドライアドの東屋》をX=0でサーチすれば《緑の太陽の頂点》は実質《ラノワールのエルフ》。《ラノワールのエルフ》はゲーム中盤に引けば土地より弱いカードですが、《緑の太陽の頂点》は途中でドローすれば2~3マナ域の緑のクリーチャーになれます。《緑の太陽の頂点》のおかげで緑のデッキたちは確実に強くなりました。 さて、最も《緑の太陽の頂点》の恩恵を受けたデッキはやはりゴルガリヨーグモスでしょう!   モダンリーグ : 5-0 By  triosk クリーチャーを生け贄に捧げることでカードを引きながら-1/-1カウンターを置く強力なクリーチャー、《スランの医師、ヨーグモス》。このカードを中心に構成されたクリーチャーデッキがこのゴルガリヨーグモスです。 不死クリーチャーである《若き狼》は、死亡時に+1/+1カウンターが乗った状態で戦場に戻ってきます。その《若き狼》に《スランの医師、ヨーグモス》の能力を起動すると+1/+1カウンターと-1/-1カウンターが相殺し、その後《若き狼》が死亡すると再び不死で蘇ることができます。 つまり、《若き狼》が2体戦場にいると、ライフの数だけカードを引くことができるようになります。 《スランの医師、ヨーグモス》の能力で《若き狼》Aを生け贄にし、不死で場に戻ってきたAに対して、《若き狼》Bを生け贄に《スランの医師、ヨーグモス》の能力を起動します。すると《若き狼》Aの上にあるカウンターが相殺され、きれいな状態になります。きれいになった《若き狼》Aを生け贄に今度は不死で戻ってきた《若き狼》Bに《スランの医師、ヨーグモス》の能力を起動し……これでループが発生します。 後は大量に引いたカードの中から《召喚の調べ》を見つけて、《血の芸術家》をサーチするだけです。死亡時に《血の芸術家》はライフを1点ドレインできるので、《若き狼》のAとBが墓地と場を行き来している間に、相手のライフは0になります。 このコンボパーツである《若き狼》を《緑の太陽の頂点》でサーチできるようになったのは大きな進化です。以前まではこの《緑の太陽の頂点》のスロットは《下賤の教主》などのただのマナクリーチャーでしたからね。1ターン目に使えば《下賤の教主》相当でありながら、中盤以降は《若き狼》になるのですから、劇的な変化ですよね。 《緑の太陽の頂点》でのサーチ先として《毒物の侍臣、ハパチラ》も優秀です。《毒物の侍臣、ハパチラ》は以前から採用されていたカードで、《スランの医師、ヨーグモス》と強力なシナジーを形成します。 《毒物の侍臣、ハパチラ》はクリーチャーの上に-1/-1カウンターを置くたびに蛇を生成する能力を持つので、《スランの医師、ヨーグモス》の能力で-1/-1カウンターを置く→蛇を生成→その蛇を生け贄にして更に-1/-1カウンターを置くことができ、大量にカードを引けます。相手の場が全滅するまでこのループを続けられるので、相手の戦場のクリーチャーのタフネスの合計分、カードを引けると思ってください。 《若き狼》と《毒物の侍臣、ハパチラ》が揃うだけでも、先ほどの狼ループが発生します。 《若き狼》を生け贄に捧げて適当なクリーチャーに-1/-1カウンターを置き、これにより蛇が生成。《若き狼》は不死で戻り、その蛇を生け贄に《若き狼》の上に-1/-1カウンターを置くと、再び蛇が生成されつつ、《若き狼》がリフレッシュされます。 その蛇を生け贄にリフレッシュした《若き狼》にカウンターを置くと、再び蛇が出ながら《若き狼》が不死で場に戻り……また蛇を生け贄に《若き狼》がきれいな状態になるので、これでループ。ライフの分だけカードが引けるので、《血の芸術家》に繋げてゲームセットです。 《裕福な亭主》も《緑の太陽の頂点》でサーチできる1枚。《若き狼》ループ中に《裕福な亭主》があると、1回の生け贄時に必ずクリーチャーが出るので、ライフを気にせずに好きなだけカードを引けるようになります。 このようにマナ加速とコンボに起因する《緑の太陽の頂点》ですが、使い道はそれだけに留まりません。 《飢餓の潮流、グリスト》はゴルガリヨーグモスのもう1つの勝ち手段と言われるほど強力なプレインズウォーカー。ライブラリーにある時は《飢餓の潮流、グリスト》はクリーチャーなので、《緑の太陽の頂点》で場に出すことができます。ひとたび戦場に出れば、除去やクリーチャーの生成で盤面に大きな影響を与えます。 《アガサの魂の大釜》とのコンボもありますし、毎回《飢餓の潮流、グリスト》が安定して着地させられるようになったのも、《緑の太陽の頂点》を採用する大きなメリットです。 このデッキを使っていると「《スランの医師、ヨーグモス》が緑のクリーチャーだったら……」と思わずにはいられませんが、それは高望みしすぎというものですね。《緑の太陽の頂点》の強さを味わいたいならゴルガリヨーグモスで決まりです! 《信仰無き物あさり》 イゼットフェニックスやドレッジ、ホガークヴァインなどの墓地デッキを強くしすぎてしまうことから禁止されていた《信仰無き物あさり》。 解禁されてから墓地デッキの躍進が期待されていましたが、想像より元気がありません。やはり現代のモダンのデッキパワーの前には、《信仰無き物あさり》が帰ってきたとはいえ他の重要なパーツが禁止された墓地デッキは少し物足りない印象を受けます。 現段階で最も《信仰無き物あさり》が強く使えるデッキはこのジャンド独創力かもしれません。《不屈の独創力》を打ち、ライブラリーに入っている唯一のクリーチャー・カードである《残虐の執政官》を戦場に出すコンボデッキ、それがジャンド独創力です。 $5K RCQ - Modern: 6-2 By  Michael Aquino 《不屈の独創力》の対象にするクリーチャーとしてドワーフを生成する《ドワーフの鉱山》を採用し、その《ドワーフの鉱山》はフェッチランドでサーチできるので、実質《不屈の独創力》1枚コンボです。 そんなジャンド独創力に《信仰無き物あさり》が組み込まれたことで、新たなブン回りパターンが誕生しました。それが1ターン目に《信仰無き物あさり》から2ターン目に《頑強》で《残虐の執政官》を吊り上げる、実質2ターンキルの動きです。 高速リアニメイトに起因するだけではないのが《信仰無き物あさり》の魅力。《レンと六番》で手札に溜まった土地を強い他のカードに変えてしまえば実質《レンと六番》はプラスで手札を増やす強力なプレインズウォーカーになり、墓地に《残虐の執政官》がない時に手札で余っている《頑強》を捨てたり、2枚目以降の《レンと六番》や《不屈の独創力》といった不必要なカードを有効牌に変えられます。 《鏡割りの寓話》と合わせて2枚捨てて2枚引くカードが8枚体制になり、かなり手札を整える力が強くなりましたね。手札破壊と除去をどちらも採用しており、相手によって不要なカードを捨てられるので、安定してどの相手とも戦うことができるようになりました。 《不屈の独創力》《頑強》で《残虐の執政官》を出すという派手なコンセプトのデッキに見えますが、どこかパイオニアのラクドスミッドレンジっぽさもあるジャンド独創力。《信仰無き物あさり》の強さを体感するにはぴったりかもしれませんね。 《欠片の双子》 モダンリーグ : 5-0 By  ForThoseWhoHaveHeart モダンで行われた最初のプロツアーを制し、その後もモダンの顔として環境を牽引し続けていた《欠片の双子》。 『モダンホライゾン』など強力なカードによって激変した現モダン環境では《欠片の双子》は最早時代遅れ……だと筆者は思っていましたが、現代でもその力は通用しています。とはいっても、環境を双子一色に染めるまでには至りませんが。 双子コンボにおいて重要なのは、《欠片の双子》の使い道です。《詐欺師の総督》につけて瞬殺コンボの《欠片の双子》ですが、《詐欺師の総督》を引いていない状態では手札で浮き続けてしまいます。 この《欠片の双子》をコンボ以外でも有効活用できるかどうかは重要です。 まずは《瞬唱の魔道士》。これはかつての双子コンボにも採用されていましたが、《欠片の双子》をつけることで毎ターンタダで墓地のカードをフラッシュバックできるようになります。 《稲妻罠の教練者》は新顔。ライブラリーの上4枚から土地かクリーチャー以外のカードを手札に加えられるようになるので、《瞬唱の魔道士》と同じく、《欠片の双子》がついてしまえば相手は放置することができなくなるでしょう。 そして《瞬唱の魔道士》《稲妻罠の教練者》《知りたがりの学徒、タミヨウ》とウィザードが3種入っているので、相性の良い《アノールの焔》もフル投入。ウィザードをコントロールしていれば5点のダメージ+2ドローの素晴らしいカードです。 この《アノールの焔》を《稲妻罠の教練者》で探し、《瞬唱の魔道士》でフラッシュバックする動きは強力で、イゼットコントロールのように立ち回れるのがこの双子コンボです。以前は《やっかい児》で殴ったり《瞬唱の魔道士》+《稲妻》でライフを詰めるのが双子の定番でしたが、現代の双子はむしろコントロールデッキになっているのです。 《対抗呪文》《呪文貫き》《拒絶の閃光》《否定の力》と大量の打ち消しで相手を妨害しつつ、失ったリソースを《アノールの焔》で回復し、隙を見て《詐欺師の総督》《欠片の双子》コンボを決める。あるいは《欠片の双子》+《稲妻罠の教練者》or《瞬唱の魔道士》で無限のリソースを獲得して勝利。この2つが現代の双子コンボの主なゲームプラン。 コントロールとコンボが一体となったデッキは今のモダンでは珍しいかもしれませんね。筆者の大好物のアーキタイプなので、早く回したくて仕方ありません!

【週刊メタゲーム通信】グルール力線が1453名の頂点に立つ!ディミーアも新たに進化

週刊 Standard ピックアップ

2025.01.07

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 新年、あけましておめでとうございます!今年もGOOD GAME メディアをよろしくお願いいたします。 今回は新年から早速行われたMagic Spotlight: Foundationsの結果から、最新のスタンダードのデッキをご紹介していきます! グルール力線 Magic Spotlight: Foundations : 優勝 By Nicholas Odenheimer 新たに2025年から始まったトーナメント、Magic Spotlight。トップ8進出者にプロツアーの権利が付与される、誰でも参加できる賞金制トーナメントと、かつてのグランプリを彷彿とさせる本大会。その記念すべき第1回目を制したのはグルールアグロ……ですが、ただのグルールではありません。《残響の力線》を採用したタイプのグルールです。《残響の力線》について改めておさらいしましょう。この力線は、1体だけを対象とするインスタントやソーサリーを自分が唱えた時に、それをコピーすることができます。《巨怪の怒り》や《裏の裏まで》が倍になるという、単純明快で強力なカードですね。力線サイクルは《神聖の力線》や《虚空の力線》など、特定のデッキの対策としてサイドボードに入るものが多かったですが、《残響の力線》はデッキの軸となる力線で、しかも複数枚並べた時にしっかりと意味がある優れもの。2枚貼ればコピーも追加で1つ発生するので、初手に2枚あると片方が腐り、実質手札が1枚減ってしまう状態になりがちな他の力線とは一味違います。しかも《残響の力線》はカードをコピーできる能力なので、自分のクリーチャーを対象に取るカードの性能が倍になります。つまり初手に《巨怪の怒り》と《裏の裏まで》を持っていれば、それが《残響の力線》によってカード4枚分の価値となるので、《残響の力線》は"リソースを失わない力線"であり、マリガンで積極的に《残響の力線》を探しにいく行為も肯定されるのです。この強力な《残響の力線》を主軸に据えるのが、グルール力線。クリーチャーのラインナップも通常のグルールと異なっています。まずは《騒音の悪獣》。自身の死亡時にパワー分のダメージを与えられるクリーチャーで、《心火の英雄》と違いプレイヤー以外にも飛ばせます。その代わりに雄姿で成長しないという可愛いヤツなのですが、《残響の力線》で《裏の裏まで》や《巨怪の怒り》をコピーするこのデッキでは恐ろしい1マナ域に変貌します。《残響の力線》を着地させれば最速2ターンキルも狙えるこのデッキにとって《騒音の悪獣》は重要なパーツ。《心火の英雄》と違い能動的に生け贄にできるので、《残響の力線》を置いて1ターン目に《騒音の悪獣》、2ターン目に攻撃して《裏の裏まで》+《巨怪の怒り》で3+3+2+2+1修正が入り、パワー12+死亡時の12点で2ターンキルできます。これは《心火の英雄》にはないメリットです。《無感情の売剣》はパイオニアではお馴染みですが、スタンダードの赤アグロからは抜けたカード。しかし《残響の力線》でクリーチャーを強化するこのデッキではしっかり活躍してくれます。《残響の力線》を置いて《心火の英雄》、2ターン目に《裏の裏まで》+出来事の《合同火葬》で24点ダメージで、《心火の英雄》による2ターンキルに貢献します。グルール力線では《巨怪の怒り》を超えるカードになる《裏の裏まで》。修正値が高いのはもちろんのこと、魅力的なのは死亡時に戦慄予示する能力です。《残響の力線》はここまでしっかりコピーしてくれるので、《心火の英雄》や《騒音の悪獣》をとりあえず突っ込ませて《裏の裏まで》で相打ちを取り、追加のクリーチャーを2体並べられます。珍しい採用カードは《過剰防衛》でしょうか。2マナと他のパンプアップスペルより重いですが、その効果は強力で、+3/+3修正にトランプル・呪禁・破壊不能とほしい能力全盛り!強い《蛇皮のヴェール》としても使えますし、《巨怪の怒り》のようにダメージを通す目的でも打てる、便利なスペルですね。赤アグロ自体はかなり意識されており、どのデッキもメインから大量に除去を採用しているのが現在のスタンダード環境。除去の多いメタゲームではグルール力線は苦戦を強いられることが予想されますが、それでも圧倒的な強さを見せつけて見事Magic Spotlight: Foundationsの初代チャンピオンに輝きました。グルール力線、そのポテンシャルを見誤っていたのかもしれません。アグロが対策されている環境でも回ってしまえばすべてを粉砕する、それほどの強さがこのグルール力線にはあるのでしょうか。そう思わざるを得ないパフォーマンスでした。 ディミーアセルフバウンス Magic Spotlight: Foundations : 2位 By  Scott McNamara 今大会で台風の目となったのはこのディミーアセルフバウンス。最近急激にその勢力を伸ばしてきているエスパーピクシーのようにバウンスシナジーを用いることからこの名前が付きました。《孤立への恐怖》と《この町は狭すぎる》の8枚のバウンスで《嵐追いの才能》《望み無き悪夢》《逃げ場なし》を戻してアドバンテージを稼いでいくこのデッキ。エスパーカラーにすることで《養育するピクシー》《呑気な物漁り》が加わり、更にシナジーが強くなりますが、その分マナベースに大きな負担をかけてしまいます。ディミーアなら《地底の大河》4枚で痛い土地は済みますし、《魂石の聖域》《不穏な浅瀬》とクリーチャーになる土地たちを採用でき、マナフラッドに対して耐性を作れます。色を減らしたからといってデッキパワーが落ちるわけではなありません。エスパーとディミーアの違いでもう1つ特筆すべき点があるとすれば、《永劫の好奇心》の採用です。 エスパーは《金属海の沿岸》《闇滑りの岸》《秘密の中庭》3種のファストランドがフル投入されているため、4ターン目以降にタップインが続きがちです。しかし、ディミーアは《闇滑りの岸》のみなので、4マナ目が4ターン目に出る確率が高い。そこで《永劫の好奇心》を採用できるようになりました。バウンスシナジーが弱くなった代わりに単体のカードパワーが高くなったのがこのディミーアセルフバウンス、という見方もできますね。《悪夢滅ぼし、魁渡》も実はセルフバウンスカード。《孤立への恐怖》《フラッドピットの溺れさせ》《遠眼鏡のセイレーン》はどれを戻しても得をするカードで、実に忍術しがいがあります。《呑気な物漁り》と《養育するピクシー》がないことで、戦場に出た時に効果を発揮するエンチャントのバリューは少し下がっています。そのため、《望み無き悪夢》は3枚採用にとどめられており、今後はもしかするともっと減っていったり、あるいは0枚になるかもしれません。エスパーピクシーは《悪意ある呪詛術士》《呑気な物漁り》《養育するピクシー》によって1ターン目から殴り、《望み無き悪夢》を何度も戻してライフを削りきるビートダウンデッキでした。一方のディミーアセルフバウンスは序盤から大量のライフを削る手段はさほどなく、除去を何度も使いまわして盤面を掌握し、《永劫の好奇心》でアドバンテージを稼いでいく、ミッドレンジ系のデッキです。そのため、《望み無き悪夢》はあまりデッキとは合っていないカードなのです。しかも最近はエスパーピクシーの隆盛で《萎れ葉のしもべ》や《強情なベイロス》が流行り始めています。ちなみに僕も先日《望み無き悪夢》を1ターン目に出したら《萎れ葉のしもべ》を出されて卒倒しました。ディミーアセルフバウンス自体はかなり強いデッキで、今後トーナメントで活躍していくことはほぼ間違いないと思われます。軽いカードで構成されたミッドレンジは難しい傾向にあるので、今の内から練習してみてはいかがでしょうか? アゾリウスアグロ Magic Spotlight: Foundations : 6位 By Zhao Li これまでのアゾリウスアグロの定番は《生命ある象形》を採用したアーティファクト型でしたが、今回のアゾリウスアグロは純粋にクリーチャーで殴るシンプルな構成。ですが、この形が最も赤アグロとディミーアミッドレンジに強いと僕は考えています。デッキの主軸となるのはどのアゾリウスでも共通で《威厳あるバニコーン》。土地でないパーマネントの数だけサイズが上がるので、手がかりや地図でも大きくなり、3ターン目に5/5や6/6で攻撃していくことができます。《ひよっこ捜査員》は手がかりを、《遠眼鏡のセイレーン》は地図をせっせと作り、《マネドリ》がそれらをコピーして更にトークンを生み、《威厳あるバニコーン》を大きくしたり、《内なる空の管理人》の成長にあてていきます。個々で強いカードたちが織り成すシナジーは見ていて美しいものがありますね。このアーティファクトたちに《生命ある象形》をつけていくのがこれまでのアゾリウスアグロでしたが、このリストでは《永劫の好奇心》を4枚採用しており、これがディミーアミッドレンジを食い続けた理由になっています。除去を打ち続けて《永劫の好奇心》でアドバンテージを取って勝利するのがでぃミーアミッドレンジなので、相手の《永劫の好奇心》がとにかく重く、除去を上回る物量を展開されてしまうとなすすべがありません。3マナ域に採用しているクリーチャー群は《永劫の好奇心》と相性の良い、横に並べるクリーチャー。《血滾りの福音者》は自身が攻撃すると全体強化を行い、《フェイ花のいたずら》は妨害しながら飛行を2体並べられるインスタント。いずれも《永劫の好奇心》の前のターンに出すには最高のカードです。《鋼の熾天使》は最近少し評価が落ちたカード。このリストでも2枚に押さえられています。なぜそうなってしまったかというと、現環境の黒除去が《喉首狙い》から《逃げ場なし》になったからです。本来であれば最も強いのは《喉首狙い》で、実際これまでは最も優先されていましたが、エスパーピクシーとディミーアセルフバウンスではエンチャントを使いまわせるため、《逃げ場なし》がまず4枚、その上から《喉首狙い》が少し入るようになりました。《喉首狙い》が当たらないという除去耐性が魅力の1つだった《鋼の熾天使》は黒系に対してその価値を落としてしまったのです。とはいえ、《威厳あるバニコーン》に絆魂をつけて攻撃する動きは対赤アグロでは強力。2枚に減りはしましたが、まだまだ活躍できます。アゾリウスアグロは《威厳あるバニコーン》+《幽霊による庇護》というわかりやすいゴールが対赤アグロにある他、クリーチャーを並べて《永劫の好奇心》でディミーアミッドレンジにも強く、流行のデッキたちに対してある程度有利に立ち回れます。一方、アゾリウス眼魔やジェスカイ召集などのデッキたちには不利なので、フィールドに適していればとことん勝ち、そうでなければトーナメントから早々撤退することになるでしょう。これから数が増えていってもなんら不思議ではない、強力なデッキだと思います!《幽霊による庇護》を一番強く使うならこのデッキですね。

エターナルチャンピオンシップに向けたチームレガシーへの取り組み

Legacy ピックアップ

2024.12.31

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今年も残すところ後数時間!皆さんのマジック納めは何日でしたか?僕のマジック納めは昨日晴れる屋トーナメントセンターで行われたエターナルチャンピオンシップでした!結果はというと……トップ8に残ったものの、準々決勝で敗北でした。 画像はカバレージページより引用 エターナルチャンピオンシップのフォーマットはなんとチームレガシー。ルールは今夏に行われたチームモダンと同じ、同名カードをチームメンバー内で共有できないルールのチーム戦です。というわけで今回は、チームのデッキ選択の経緯と、使用したナドゥの構築のポイントについてお話していきたいと思います。 レガシーの三強 チームを結成したのは11月ごろ。当時最強だったのは《超能力蛙》を擁するディミーアリアニメイトでした。《超能力蛙》は除去されないだけで無限のアドバンテージを生み出すだけでなく、手札から《偉大なる統一者、アトラクサ》や《残虐の執政官》を捨てて《再活性》で釣るのにも役立ち、獅子奮迅の活躍を見せていました。リアニメイトと言えば《暗黒の儀式》でマナ加速をして《納墓》でクリーチャーを落とし、《再活性》で釣り上げるコンボデッキでしたが、ディミーアリアニメイトは青いドロースペルで手札を整えつつ《意志の力》で妨害し、黒の除去で盤面をさばき、《超能力蛙》がゲームを終わらせてくれます。《偉大なる統一者、アトラクサ》を高速でリアニメイトすることもあれば、コントロールとしても立ち振るまえる、非常に器用なデッキなのです。《超能力蛙》と《再活性》を使用したデッキを使うのは確定し、残りの2つのデッキを考えていた時、1000人規模のレガシーイベントのトップ8に3人が入賞するという、モンスターデッキが目に入ってきました。それがカーンフォージです。その名の通り、《大いなる創造者、カーン》と《神秘の炉》でリソースを獲得していくアーティファクトデッキで、以前から存在していたアーキタイプだったのですが、新カードの《次元の結節点》によってマナ加速が更に安定するようになりました。すべての非基本土地タイプを持つ《次元の結節点》により、《ウルザの鉱山》と《ウルザの魔力炉》がなくとも《ウルザの塔》から3マナが出る恐ろしい土地になり、《厳かなモノリス》などを使わずとも、序盤からセットランドだけで《一つの指輪》《大いなる創造者、カーン》《神秘の炉》をキャストできるすごいデッキに生まれ変わったのです。そしてヴィンテージでは制限となった《苛立たしいガラクタ》もカーンフォージの躍進に貢献しました。《意志の力》をはじめとしたピッチスペル(0マナ呪文)を封殺する《苛立たしいガラクタ》を《ウルザの物語》でサーチできるのは大きく、これらの強化によってカーンフォージは飛躍的にデッキパワーが上昇しました。《超能力蛙》《意志の力》《渦まく知識》を使うディミーアリアニメイト。《古えの墳墓》《大いなる創造者、カーン》《一つの指輪》《ウルザの物語》を使うカーンフォージ。この2つのエースデッキをチームに組み込むとなると、サードデッキの選択は自ずと限られます。以前のチームモダンの記事でも話しましたが、チーム戦はいかに強いカードを使えるかが重要。そこで今回も、レガシーで強いカードを上から順番に考えていくことになりました。《超能力蛙》や《意志の力》、《渦まく知識》。《一つの指輪》や《古えの墳墓》。それらと肩を並べるほど強いカードはあまり多くありませんが……『モダンホライゾン3』でなんとそれは登場していまました。そう、悪名高き鳥《有翼の叡智、ナドゥ》です。モダンでは強すぎて禁止されてしまったこの鳥はレガシーでもトーナメントを制するほど。ディミーアともカーンフォージともほとんどかぶることがなく使用できます。こうして、ディミーアリアニメイト・カーンフォージ・ナドゥの3デッキを持ち込むことを決め、細かいリストについては12月に入ってから詰めることになったのです。 衝撃の禁止改訂 ……と非常に早い段階でデッキが決まっていたはずだったのですが、皆さんご存じの通り、レガシーで禁止改訂が実施されました。《超能力蛙》と《苛立たしいガラクタ》が禁止されてしまったのです。これによってディミーアリアニメイトはただ墓地から《偉大なる統一者、アトラクサ》や《残虐の執政官》を吊り上げるだけの昔のコンボデッキに逆戻りしてしまいました。カーンフォージも《苛立たしいガラクタ》を失い、《虚空の杯》を代わりに投入することになりました。《虚空の杯》にも長所はありますが、《ウルザの物語》から《苛立たしいガラクタ》をサーチして《意志の力》を封じることができなくなったのは大きく、弱体化は否めません。こうして11月の話し合いは白紙に。一からデッキを考えることになりました。カーンフォージはともかく、《超能力蛙》はかなりの痛手でした。ディミーアを使用する価値を見出せなくなるほどに。《渦まく知識》と《意志の力》はレガシーの顔とも呼ぶべきカードたち。青は常にエースデッキの位置づけなので、ここを弱いデッキにするわけにはいきません。墓地対策が刺さるだけで負けてしまうようなディミーアリアニメイトにはしたくなかったのです。もちろん《知りたがりの学徒、タミヨウ》でフェアなプランを維持することはできますが、フィニッシャー性能を持ちつつコンボにも寄与していた《超能力蛙》と比べると雲泥の差。これならば新たな青いデッキを模索するべきだと思いました。 突如現れる最強のデッキ と、そんなある日、《苛立たしいガラクタ》の禁止によって強くなったデッキの存在がチーム内で話題となりました。それがスパイです。土地を0枚にすることで《欄干のスパイ》《地底街の密告人》を使って自分のライブラリーを0枚にし、《ナルコメーバ》《ポクスウォーカー》を場に戻し、《戦慄の復活》で《タッサの神託者》を吊り上げて勝利するコンボデッキ、スパイ。フィニッシャーである《戦慄の復活》を打ち消す《苛立たしいガラクタ》は天敵でしたが、禁止改訂によって消えてくれたため、単純に立ち位置がよくなりました。そもそもスパイは『モダンホライゾン3』で大量のアンタップイン両面ランドを獲得し、非常にデッキが強化されています。それに加えて《苛立たしいガラクタ》が禁止になったわけですから、水を得た魚状態です。加茂くんが早速スパイを回したところ、その強さに驚いていました。 いわく「1ターンキルばかりする」「2ターンキルより1ターンキルの方が多い」。そんなことあるのか?と疑問に思いましたが、実際に回っているところを見ると納得します。本当にこのデッキは1キルハンドがよく来ますし、《意志の力》1枚ぐらいなら平気で乗り越えてきます。しかもスパイは墓地対策1枚ですべてを失うデッキと思われがちですが、実際にはそんなことはありません。《ナルコメーバ》しか入っていなかった頃のスパイは、《欄干のスパイ》ですべてのカードが墓地に落ちた後、《ナルコメーバ》の能力の誘発にスタックして墓地対策を使うだけでゲームセットでしたが、今は1マナさえあればケアが可能です。それを可能にしているのが《ポクスウォーカー》。手札以外から呪文を唱えると墓地から帰ってくる《ポクスウォーカー》と《記憶の旅》を使うことで、墓地対策をある程度かいくぐることができます。墓地を追放されるのにスタックして《記憶の旅》を打つと、《ポクスウォーカー》が墓地からすべて場に戻ります。その上で《記憶の旅》でカードを3枚までライブラリーに戻せるので、ゲームに勝利する《タッサの神託者》を戻しつつ、盤面に高いクロックを残せるようになったのです。《記憶の旅》はフラッシュバックに緑マナを必要とする一方、スパイというデッキは緑マナが余るとは限らないのですが、それも《ジャック・オー・ランタン》でケアできています。墓地から《ジャック・オー・ランタン》を追放することで好きな色マナに変えられるので、マナが浮いていれば《記憶の旅》が打てるのです。生半可な墓地対策では止まらず、1キル率も高いスパイ。しかも《意志の力》を使うデッキはチーム戦では3人に1人。これはもう絶対にチームに組み込むべきエースデッキだと確信しました。 ナドゥ選び さて、スパイがまずチームに内定したところで、次に席を確約したのがナドゥでした。元々《超能力蛙》《苛立たしいガラクタ》とバチバチやりあっていたデッキなのですから、その強さは折り紙付きです。レガシーでは《有翼の叡智、ナドゥ》は3つのタイプが存在します。まず、《渦まく知識識》《意志の力》の強い青のカードを採用したタイプ。次に《セファリッドの幻術師》《手甲》とハイブリッドしたセファリッドナドゥ。ヨーリオン型もここに含まれます。最後に、《ガイアの揺籃の地》で爆発的なマナを生み出す緑主体の形。この中でチーム戦に適しているのは《ガイアの揺籃の地》型のナドゥでした。《意志の力》《渦まく知識》は別の強い青いデッキで使いたいですし、セファリッドナドゥはスパイと共存できません。《戦慄の復活》と《タッサの神託者》がかぶってしまいますからね。《ガイアの揺籃の地》型の緑ナドゥは、当初は消極的な選択ではありましたが、回していく内に《渦まく知識》《意志の力》の青型よりも優れたデッキかもしれないと思うようになりました。青型のナドゥは《コーの遊牧民》《有翼の叡智、ナドゥ》と揃えてもなかなかゲームに勝つことはできません。アドバンテージを大量に獲得し、《意志の力》と《剣を鍬に》を手札に抱え続ける実質詰み状態を作ることは可能ですが、簡単にコンボも決まりません。サーチ手段が少ないので、打ち消しや除去で場を凌ぎつつ、隙を見つけてドロー呪文で揃えていくのが青型なのです。一方、緑型は大量のマナクリーチャーと10枚ほどのサーチ呪文からなるデッキ。コンボを揃えるスピードは速いですし、一度《コーの遊牧民》《有翼の叡智、ナドゥ》が揃えばそのままゲームを終わらせてくれます。これは《ガイアの揺籃の地》《春心のナントゥーコ》が使える大きなメリットです。《ガイアの揺籃の地》《春心のナントゥーコ》からトークンを並べつつマナを出して《孔蹄のビヒモス》による一撃が可能だったり、《召喚の調べ》でヘイトベアをサーチするなど、速度面以外でも器用な立ち回りが可能で、非常に好感触でした。直接対決でも緑型に分があり、僕は緑型のナドゥこそがナドゥで最も強いと感じました。 《超能力蛙》、見つかる さあ2つ目のデッキも決まり、残りは最後の一枠。もちろん余った《渦まく知識》《意志の力》を使えるデッキです。とはいえ、デルバー系統はイマイチ。昨年は活躍していた《豆の木をのぼれ》デッキも最近は元気がない。このサードデッキの選択にはかなり時間を使いました。きっかけはマジックオンラインの結果でした。《渦まく知識》を使った殺意のあるデッキがその目に飛び込んできて、木原くんに回してもらうことになったのです。それがスタイフルノートでした。戦場に出た時にパワーが12以上になるようにクリーチャーを生け贄に捧げる必要がある代わりに、1マナ12/12トランプルという破格の性能を持つ《ファイレクシアン・ドレッドノート》。そのデメリットを《もみ消し》で打ち消して相手を圧殺するのがスタイフルノートです。《ファイレクシアン・ドレッドノート》の能力を打ち消す役割も持つ《記憶への放逐》はエルドラージやコンボ系に対してはカウンターとしても機能し、《不毛の大地》とフェッチランドへの《もみ消し》による土地嵌めなど、青白ながら非常に攻撃的な青いデッキとなっています。最初は《門衛のスラル》や《虚構漂い》が入ったリストを回していた木原くんですが、主に《門衛のスラル》の弱さに絶望していました。《門衛のスラル》がいる状態で《ファイレクシアン・ドレッドノート》を出そうとすると、スタックで《門衛のスラル》を除去され、《ファイレクシアン・ドレッドノート》も失っい、簡単に1対2交換を取られてしまうのです。リストの弱さに絶望していた木原くんですが、ここで奇跡の出会いを果たします。そう、禁止になったはずの《超能力蛙》……。を彷彿とさせる性能、《思慮深き人工知能、キュリー》!プレイヤーに戦闘ダメージを与えるたびにカードを引くという能力は《超能力蛙》と同じ。カードを捨ててサイズが上がったり飛行がつかない代わりに、《思慮深き人工知能、キュリー》にはもう1つの能力があります。それがアーティファクト・クリーチャーのコピーになる能力。しかもプレイヤーにダメージを与えた時に基本のパワー分だけドローできる能力は付与されてコピーされるので、《ファイレクシアン・ドレッドノート》をコピーすれば12枚カードが引けてしまうのです。《もみ消し》や《記憶への放逐》がなくとも《ファイレクシアン・ドレッドノート》を出して生け贄にする前に《思慮深き人工知能、キュリー》でコピーしてしまえば、12/12トランプルが爆誕してくれるので、《思慮深き人工知能、キュリー》によって《ファイレクシアン・ドレッドノート》は更に使いやすくなりました。《ファイレクシアン・ドレッドノート》とのコンボがなくとも《思慮深き人工知能、キュリー》は単体で優秀なのが素晴らしく、《門衛のスラル》のような《ファイレクシアン・ドレッドノート》着地専用カードとは使い勝手が段違いでした。これにてスパイ・ナドゥ・スタイフルノートの3デッキに決定! 使用したバントナドゥについて 《ドライアドの東屋》1枚 ほとんどのリストが2枚の中、僕は1枚に抑えました。《ドライアドの東屋》が2枚である理由は、《有翼の叡智、ナドゥ》のコンボ中にフェッチランドから持ってこれるクリーチャーだからです。《コーの遊牧民》と《有翼の叡智、ナドゥ》を揃えた後、《春心のナントゥーコ》が戦場にいないと途中でコンボが途切れてしまいます。それを防ぐための《ドライアドの東屋》……なのですが。そのあまり大きくないメリットに対し、デメリットが目立ちました。《ドライアドの東屋》はクリーチャーなので出したターンにはマナを出せません。実質タップインランドです。このデッキには《ガイアの揺籃の地》が4枚入っており、それに《ドライアドの東屋》が2枚になると、1ターン目の緑マナはたった14枚しかありません。1ターン目から常に動きたいバントナドゥからしてみれば、これは目を瞑れないデメリットです。 《春心のナントゥーコ》4枚 2~3枚のリストが多いものの、個人的には4枚から動かしたくありません。負けパターンの1つとしてよくあるのが、盤面を処理され続けて手札に《召喚の調べ》が溜まるケース。《春心のナントゥーコ》ならばフェッチランドを起動するだけでトークンがわらわら出てくるので、すぐに《召喚の調べ》を打てるようになります。《春心のナントゥーコ》からの《孔蹄のビヒモス》によるイージーウィンもあり、もちろん《有翼の叡智、ナドゥ》のメイン勝ち筋にも絡んでくるカードでした。1ターン目にクリーチャーを出して2ターン目に授与すると数ターン生き残ってくれて、《ガイアの揺籃の地》がクリーチャー不足で機能不全に陥ることもなくなります。サイド後は《溜め込み屋のアウフ》や《疫病を仕組むもの》を増やすことで相手を詰み状態にでき、用途も様々でとにかく便利でした。 《アロサウルス飼い》4枚 青い相手にはとにかく初手に欲しいので4枚。3枚のリストが多かったですが、4枚目を入れて本当に良かったと思いました。《意志の力》はもちろん、《虚空の杯》X=1に対しても強いのが《アロサウルス飼い》。青いデッキと《虚空の杯》デッキに強いなら、環境のほとんどのデッキに対して強いことになりませんか?上記のデッキに対して《緑の太陽の頂点》や《召喚の調べ》で《アロサウルス飼い》をサーチするのは嫌でした。このデッキは8枚のマナクリーチャーが入っているので、マナフラッドも気になります。《緑の太陽の頂点》は《アロサウルス飼い》をサーチするのではなく、《有翼の叡智、ナドゥ》や《棘を播く者、逆棘のビル》などのコンボに関わるカードをなるべくなら探したいのです。青くなく《虚空の杯》も入っていないデッキには《アロサウルス飼い》は当然弱いですが、このデッキの1マナ1/1は能力がなくても最低保証があるのです。《ガイアの揺籃の地》でマナが出ますし、《召喚の調べ》の召集コストにあてられ、《有翼の叡智、ナドゥ》の誘発先にもなり、《孔蹄のビヒモス》の打点も上がります。特定のマッチアップでのみ強いカードではあるものの、リスクが低くリターンが大きく、メインに4枚入れる価値は十分にありました。 メインの《溜め込み屋のアウフ》 ANTやカーンフォージなど、アーティファクト主体のデッキが環境に多く、一部のデッキにはこちらの最速である3ターンキルでは間に合わない場合があるので、ささやかな妨害手段として投入。緑のヘイトベアーは《緑の太陽の頂点》からでも場に出せるので非常に便利です。2ターン目にサーチして少しの間足止めをし、こちらがコンボを決めて勝利します。純粋なスピード勝負ではセファリッドに比べて1ターン遅いのが緑ナドゥですが、こうしてヘイトベアーを採用することで早いコンボに無理やり間に合わせています。 《忍耐》 ほとんどのリストは2枚採用されていましたが、《有翼の叡智、ナドゥ》が決まった後のループには1枚あれば良いので、2枚から削りました。《忍耐》をピッチで唱えて先に生け贄に捧げてから《忍耐》の能力を解決することで、《忍耐》自身がライブラリーに戻ってくれます。もしくは《忍耐》に《春心のナントゥーコ》を授与すれば無限に《忍耐》を回せます。スパイに対しての勝率が少しだけ変わりますが、どうせ1マナ浮いている状態で《欄干のスパイ》を出してきたら《忍耐》では止まりません。それならば、序盤の動きがもたつく可能性のある《忍耐》より、軽いマナ域のカードを充実させたいと思いました。 《疫病を仕組むもの》 ナドゥミラーにおいて最も良いカードを探した結果、《疫病を仕組むもの》に行き着きました。昆虫を指定して《春心のナントゥーコ》を封殺すればコンボは止まる可能性がありますし、コーを指定すれば《有翼の叡智、ナドゥ》自体の誘発を抑えられます。序盤に出せる状況なら、《貴族の教主》や《極楽鳥》が複数枚いる場ならそのどちらかを指定してマナを潰すのも有効です。そして《春心のナントゥーコ》でそれらをコピーすることでゲームを終わらせられます。最初に即死を防ぐべくコーを指定し、次のコピーで植物と順番にコンボを潰していけば、相手を詰み状態にできるのです。《森》を2枚にして《Bayou》を入れても良いかなと思いました。今回は《疫病を仕組むもの》を思いついたのがチーム戦当日だったので、持っていない《Bayou》を入れられませんでした。チーム事情的に僕が《活性の力》を使えなかったので、赤単プリズンに当たった際に《血染めの月》だけで負けてしまうのを防ぐため、《森》は1枚でも多く入れたくはありました。なので《Bayou》が手元にあったところでデッキに入れていたかは微妙なラインですね。 《四肢切断》 チームメイトが《剣を鍬に》を使うので《四肢切断》を大量に入れることになりましたが、個人戦なら2枚2枚でスプリットすると思います。《剣を鍬に》は無条件の除去ではあるものの、《月の大魔術師》を1ターン目に置かれると打てないのがネックに感じました。とはいえ《四肢切断》を入れすぎるとダメージがとんでもないことになるので、2枚ずつぐらいがちょうど良いですね。白マナを2枚サーチするのは7枚のフェッチでは難しいので、《剣を鍬に》を2連打するのは容易ではありませんが、《剣を鍬に》と《四肢切断》なら両方同一ターンに唱えることもできます。ミラーマッチではどちらのカードもほとんど変わらず、この点でもスプリットに価値があると思います。《四肢切断》は想像より使用感がよく、一応痛くせずに打つために《Bayou》を足したくなりました。とはいえ痛さが気になる赤単プリズン相手には《Bayou》はあまりサーチしませんが。 大会結果 The Spy ×〇×(チーム勝ち)エルドラージ ×〇×(チーム負け)グリクシステンポ 〇〇(チーム勝ち)赤単プリズン 〇×〇(チーム勝ち)青ナドゥ 〇〇(チーム勝ち)緑ナドゥ ×〇〇(チーム勝ち)5勝1敗でトップ8に。 The Spy ××(チーム負け)スパイには手も足も出ず負け。初戦の相手がレガシーをよくやっているチームで、横の木原くんが「多分ゆうやんさんの相手は青いですよ!」と言ってきたので意気揚々と《アロサウルス飼い》2枚の初手をキープしたら、1ターン目に《欄干のスパイ》が出てきて1キルされました。これもチーム戦の醍醐味。相性の良いエルドラージにも負けましたが、そこからはサブマリンして勝利に貢献し続けることができました。最後の2戦はしっかりと構成勝ちできて、今回の調整の手応えを感じましたね。とはいえ、リストの反省点もあります。それはもちろんスパイを軽視しすぎていたことです。僕らが最強と結論付けているデッキを他のチームが持ち込んでこないはずがない!もう少しスパイに対してしっかりとしたカードを取るべきでした。具体的には《虚空の力線》です。《フェアリーの忌み者》程度ではスパイは止まりません。《虚空の力線》を4枚取って祈るべきでした。もし明日僕がレガシーの大型大会に出るならこんなリストにするでしょう。 最後に トップ8で負けと悔しいマジック納めでしたが、みっちりレガシーと向き合えて非常に楽しいチーム戦でした。やっぱりチーム戦は楽しいですね。チームならではの構築やデッキ選択ができるので、個人戦とは違った楽しみがあります。もちろんプレイ中に友人からのアドバイスを受けられるのも頼もしいですし、僕はチーム戦の大きなイベントがもっと増えてほしいと思っています。競技マジックを中心に遊んでいるのでレガシーをやる機会はさほどなく、毎年大きなレガシーイベントの際に短期集中でレガシーに向き合うようにしているのですが、そのたびにこのフォーマットの奥深さを体感しています。レガシーはやればやるほど面白い!来年はもっとレガシーも遊んでみようかなと思うほど、今回のチーム戦は楽しかったです。ナドゥも好きですしね。そこまで特筆した成績をあげられなかった2024年でしたが、充実したマジックライフは送れていました。2025年もたくさんマジックを遊んで、そこで得た知見や面白いデッキを記事でお届けして、マジックを満喫していきたいと思いますので、よろしくお願いします!それでは皆様、良いお年を!

2025年もGOOD GAMEの初売りがアツい!バリエーション豊富な福袋を販売!!

ピックアップ

2024.12.27

mtg Yuyan

こんにちは!GOOD GAMEです!クリスマスも終わり、あっという間に年末!もういくつか寝るとお正月になりますね!GOOD GAMEも2回目のお正月を迎えることになります。これもひとえに、日頃ご愛好いただいているお客様のご愛顧のおかげでございます。そしてお正月と言えば…そう福袋!プレイヤーズコンベンションなどでも大好評のGOOD GAMEのガシャポンやくじですが、福袋もお客様にご満足いただけるよう、多種多様なラインナップをご用意いたしました!今回は ・当店で1ポイント1円で使用できるポイントにサプライが付いたお得な【ポイント福袋】・超高額商品や希少価値の高いカードが封入されている【ハイエンド福袋】・統率者戦で有用なカードが入った【EDH福袋】・各種フォーマットで人気のカードたち多数の【フォーマット別福袋】とバリエーション豊富!お客様のご予算と目的に応じて自由にお選びください!各福袋には、シングルカードに加えてサプライや未開封品などがついてきますので、一粒で二度美味しい福袋です!……福袋の中身、やっぱり気になりますよね?今回は特別に、その一部を公開!お見せできるのは一部のみですが、わかる人にはわかるかも…!? ハイエンド福袋(30万円) EDH福袋(10万円) レガシー福袋(10万円) レガシー福袋(5万円) (レガシー3万円と記載がありましたが正しくは5万円となります) モダン福袋(3万円) スタンダード福袋(1万円) モダン福袋(5000円)   販売方法ですが、通販と店舗にて予約販売となります!ご予約は本日12月27日20時より開始!店舗受け取りは元旦から、発送は1月3日より順次発送となります。もちろん元旦に店舗でもお買い求めいただけますが、売り切れる可能性もございますので、ご予約でのご購入をオススメいたします!そしてそして!最後になりますが、今回はGOOD GAMEオーナーであるゴードンがお客様の要望にお応えする"オーダー福袋"も受け付けます!オーダー福袋は、その名の通りお客様のオーダーを聞き、それに相応しい内容をご用意する、お客様ひとりひとりのためだけの特別な福袋!お客様からいただいた「金額」と「ふんわりした内容の希望」の2点をもとに、オーナー・ゴードンが福袋を作成いたします!たとえば「緑の統率者カード詰め合わせで10万円」など、ざっくりしたご要望にお応えします!具体的なカードの指定などはできかねますので、その点ご了承くださいませ。オーダー福袋のご相談は店頭もしくは当店のXアカウント(@GoodGameMTG)のダイレクトメッセージにて承ります。お気軽にご連絡ください!GOOD GAMEの福袋で最高の2025年を迎えてみませんか?皆様のご予約とご来店、心よりお待ちしております。

統率者:《万物の姿、オルヴァール》紹介!"宝石"をコピーしてリソースの王になれ!!!!

Commander ピックアップ

2024.12.25

Ryo Hakoda

はじめまして!このたびご縁がありGOOD GAMEメディアで記事を書かせていただくことになりました、箱田 諒(@fritz_xq)です。 普段は関東の競技イベントに出ることが多く、最近はプレミアム予選を突破し、来年のチャンピオンズカップファイナルの権利を獲得しています。ルビーストームがお気に入りなので、いつかはそのことも記事にできたら嬉しいですね。 競技マジックを遊ぶ一方、友人と統率者を遊ぶのも大好きだったりします。 というわけで、僕が今回執筆するのは統率者の記事です! 《万物の姿、オルヴァール》とは 《万物の姿、オルヴァール》は爆発的なリソース増加が魅力のデッキです!《万物の姿、オルヴァール》はざっくり言うと、呪文で対象に取ったパーマネントのコピーを生成できるカード。 《ぐるぐる》をはじめとする、”対象に取る”呪文でどんなパーマネントでもコピーできます。 例えば《リスティックの研究》や《神秘の聖域》、果ては《船砕きの怪物》まで、強力なカードたちがたったの1マナで増えていきます。 ”対象に取る”呪文が軽いため、動き出すと一気に莫大なリソースを稼ぐことが可能です。 こんな方にオススメ! ・大量の手札やマナが好きな方(嫌いな方、いませんよね!)・他ではあまり見かけないユニークなカードを使いたい方・比較的安価にコンボ入り統率者で遊んでみたい方ここからはデッキリストをもとに、より詳しく《万物の姿、オルヴァール》デッキの採用カードやデッキの動きについて解説していきます。 デッキリスト 現在僕が使用しているリストはこちらです。 普段から統率者戦で遊んでいる方でも見慣れないカードが多いのではないでしょうか? 他のデッキでは採用優先度が低いカードも《万物の姿、オルヴァール》がいれば最高のカードに化けます。ここからは採用カードの役割について、類似カードをまとめてご紹介していきます。 採用カードの役割 ■パーマネントを”対象に取る”呪文 マナ加速ができる”対象に取る”呪文です。 例えば《島》を対象に唱えると、《万物の姿、オルヴァール》の効果で《島》のコピーを生成できます。元々対象に取っていた《島》はアンタップするので、1マナがその場で増えます。 「バイバック」能力を持ち、マナさえあれば手札を減らさず何回でも使うことができます。つまり無限コンボのお供です。 《ヴォルラスの気まぐれ》はバイバックコスト込みで3マナなので、3マナを生み出せる《金粉の水蓮》や《切望の宝石》と無限コンボになります。(詳しくは続くコンボ紹介の項目でご説明します。)《ヴォルラスの気まぐれ》や《時計回し》はそれぞれやたら長いテキストを持っていますが、カードの色を変えたりカウンターを増減させる効果を目的に唱えることはあまり多くありません。 このデッキでの本質は”対象に取る”こと。 対象に取れるパーマネントのカードタイプの幅広さや、複数回唱えることができるなどの特徴を優先し、効果は二の次、というカードはこの他にもデッキに採用されています。 回顧やフラッシュバック、暗号などで複数回唱えられることを重視して採用しています。 ゲーム中盤までは《島》などをコピーしてロングゲームを目指しつつ、ゲーム後半に墓地から使えるリソースとして活用する、という使い方ができます。 土地しか対象に取れませんが、1ドローのオマケ付き。 《水大工の意思》の効果には”マーフォークをコントロールしている場合、カードを1枚引く”とありますが、《万物の姿、オルヴァール》は多相なので立派なマーフォークです。 1マナで《島》のコピーを生成し、1枚ドロー。マナも手札も減らない真の無料!すごい! とても珍しい、青のマナ加速カード。 自身のアンタップ状態のクリーチャーをタップし、そのマナ総量に等しい数の無色マナを生成することができます。 よって時には《暗黒の儀式》以上のマナ加速になります。 クリーチャーのコピーを生成するために唱えたり、《万物の姿、オルヴァール》を出すためのマナ加速としても使います。 ■増やしたいパーマネント 本記事のタイトルはここから取った、最も増やしたいパーマネント。 6マナと重たいですが、戦場に出た時に3枚ドローでき、タップすると好きな色のマナが3マナ出ます。 そんな《切望の宝石》を”対象に取る”呪文でコピーすると、たったの1マナで3ドロー+3マナ! これにより都合手札2枚と2マナを増やすことができます。 仮に《ぐるぐる》を唱えると、加えて《切望の宝石》をアンタップできるので、3+3=6マナが出て3枚引けます。 《ぐるぐる》が《Ancestral Recall》+《Black Lotus》を超える瞬間です。とんでもない。デッキには”対象に取る”呪文が多数採用されているので、《切望の宝石》をコピーして大量ドローとマナ加速を行い、その他のアクションにつなげるのが目標です。ただし《切望の宝石》を大量にコピーして、”対象に取る”呪文が尽きてしまった場合は大変。 《切望の宝石》にはデメリットとして下記の効果があります。 ”対戦相手1人がコントロールしているクリーチャー1体以上があなたを攻撃してブロックされないたび、そのプレイヤーはカードを3枚引いて《切望の宝石》のコントロールを得る。これをアンタップする。”途中でストップした場合には次のターンから全員での《切望の宝石》の奪い合いが始まります。皆が切望する宝石、カード名の通りですね。 僕はこれで対戦相手に15ドロー+15マナを渡して負けたことがあります。 《切望の宝石》を出すと、自分か奪った人が概ね勝つほどの影響があるため、プレイする際には細心の注意を払いましょう。戦場に出た際に墓地のインスタント、ソーサリー、アーティファクトから1枚を、マナを払わずに唱えることができます。 《万物の姿、オルヴァール》が戦場にいれば、”対象に取る”呪文を自身を対象に唱えることで自身のコピーを生成。よって墓地の”対象に取る”呪文の数だけ《失われた宝物庫の学者》のコピーを生成できます。 自身が5/5飛行と十分なサイズを持っており、複数体並ぶことで戦闘を有利に進められます。 8体の5/5飛行が出てそのまま殴り勝ったことも。 ゲームが長引いて墓地に呪文が溜まった際には《失われた宝物庫の学者》で強力な盤面を作ることを目指します。また、この手のカードとしては珍しく、墓地のアーティファクトも唱えることができるため、《切望の宝石》も0マナで唱えられます。 インスタントやソーサリー呪文を唱えるたびにカードを1枚引かせてくれるすごいウィザードたち。 1体いるだけでも多くのドローをもたらす彼らですが、コピーして増えようものならすぐに手札が尽きなくなります。 なお、ドロー効果は強制なので、楽しくカードを引きすぎてライブラリーアウトで負けないように気を付けましょう。《ルーンの大魔導師》はインスタントやソーサリー呪文のコストも軽減してくれるため、先に挙げた《ヴォルラスの気まぐれ》《時計回し》《理性のゲーム》のようなバイバック能力を持つカードとの相性もばっちりです。 『ファウンデーションズ』の新規収録カードとして彼を見つけたときは心躍りました。 マナ軽減、ドロー効果と最高の2つの能力を併せ持つ、新加入のエースです。 ■コピー効率を上げるカード 選んだタイプのクリーチャーの誘発型能力を追加で1回誘発させます。 《万物の姿、オルヴァール》は多相の戦士なのでどのクリーチャー・タイプを選んでもいいのですが、デッキの他のカードも考慮してウィザードを選ぶことが多いです。 《両生類の神童》や《呪文探求者》、《大魔導師の名誉教授》など優秀なウィザードたちの誘発もついでに増やしましょう。 《万物の姿、オルヴァール》と《うろつく玉座》がいる場合、コピー能力の誘発回数は《万物の姿、オルヴァール》と《うろつく玉座》の合計数になります。よって《うろつく玉座》のコピーを増やす場合、1→3→7→15体のように2倍+1体に増えていきます。《うろつく玉座》は護法2の除去耐性が頼もしく、場に出しやすいことも強みです。アーティファクトやクリーチャーのうち、自身がコントロールしている1つだけを対象とする呪文を唱えるたび、そのコピーを非伝説で生成するエンチャント。 《万物の姿、オルヴァール》と異なり、コピーできるパーマネントのタイプが限られたり、1つを対象に取る呪文でしか誘発しないですが、生成するコピーが非伝説であるため《万物の姿、オルヴァール》のコピーも生成することができます。《万物の姿、オルヴァール》がいなくてもコピーを作ることができ、エンチャントであるためクリーチャーに比べて除去されづらい点が優秀です。 主なコンボ 1.《切望の宝石》無限ドロー ”対象に取る”呪文として《ヴォルラスの気まぐれ》を使用する無限ドローのルート。 《ヴォルラスの気まぐれ》は1マナでパーマネントをなんでも対象に取ることができ、追加2マナを支払うとバイバックで手札に戻せるため、3マナで何度も唱えることができます。 よって、《切望の宝石》のコピーから生み出す3マナを使って《ヴォルラスの気まぐれ》をバイバックし続けられるので、これで無限に3ドローできます。1.《切望の宝石》を対象に《ヴォルラスの気まぐれ》をバイバックコスト込みの3マナで唱える。2.《万物の姿、オルヴァール》が誘発し、《切望の宝石》のコピーを生成する。3.《切望の宝石》のコピーにより3枚ドローして3マナを出す。1~3の手順を繰り返すとマナがかからず3ドローし続けられるため、無限ドローになります。 なお、これだけだと手札が増えるだけでマナは増えません。 そのため、道中で引いた《ぐるぐる》などで《切望の宝石》をコピーしてマナを増やし、引いた勝ち手段を使えるようにする必要があります。なお、《ヴォルラスの気まぐれ》は《時計回し》や《理性のゲーム》でも代用可能な場合があります。 《時計回し》と《理性のゲーム》はバイバックのコスト込みで4コストですが、《サファイアの大メダル》などで3マナに軽減することで、《切望の宝石》が生み出す3マナで何回でも唱えられるようになります。 ※《時計回し》はカウンターが置かれていないパーマネントでも対象に取ることができます。 2.《流浪のドレイク》無限マナ 戦場に出た際に土地を最大5枚アンタップできる《流浪のドレイク》をバイバック持ち呪文で無限にコピーし、無限マナとするルート。 《流浪のドレイク》でアンタップする土地から5マナ以上が出る場合、4マナ以下でコピーし続ければ無限マナ。その場合には《ヴォルラスの気まぐれ》《時計回し》《理性のゲーム》どれでも無限マナコンボが可能です。無限マナから《歩行バリスタ》で無限ダメージを飛ばして勝つほか、無限マナの過程で無限ストームとし、《思考停止》を対戦相手に唱えて勝つこともできます。 3.《万物の姿、オルヴァール》なし無限ドロー こちらは《万物の姿、オルヴァール》を使用しない無限ドローのコンボ。 《ドラニスの判事》などで《万物の姿、オルヴァール》を出せない場合にはこのルートを目指します。 《幽霊のゆらめき》はアーティファクトやクリーチャーや土地を合わせて2つ対象にし、対象のカードを一度追放した後すぐに戦場に戻す、いわゆる”ブリンク”能力を持っています。 《幽霊のゆらめき》で《切望の宝石》と《古術師》をブリンクすることで、3枚ドローと3マナを得て、墓地の《幽霊のゆらめき》を回収することができます。1.《切望の宝石》と《古術師》を対象に《幽霊のゆらめき》を唱える。2.《切望の宝石》と《古術師》をブリンクし、3枚ドローして墓地の《幽霊のゆらめき》を回収する。3.《切望の宝石》から3マナを出す。1~3の手順を繰り返すと消費マナなしで3枚ドローすることができるため、無限ドローになります。 4.《渦巻く空、開璃》無限 伝説のクリーチャーである《渦巻く空、開璃》をコピーし、レジェンド・ルールによって墓地に送られる際の能力誘発を利用した、無限マナかつ無限呪文回収のコンボです。 《渦巻く空、開璃》は死亡時にカード6枚を切削した後、墓地のインスタントかソーサリー呪文を最大2枚回収することができます。 マナを増やす役割のカードとして《ぐるぐる》を、《渦巻く空、開璃》をコピーする役割のカードとして《時計回し》を使用し、そでぞれを回収して再利用することで、ライブラリーをすべて切削することができます。※《島》を対象に《ぐるぐる》を唱えると、《島》のコピーとアンタップにより2マナが出るので1マナ増えます。その1マナを使って《時計回し》を唱えます。 今回は例として《ぐるぐる》と《時計回し》を用いていますが、《ぐるぐる》は似た効果の《夢の掌握》や《見えざる糸》で代用可能です。 また、《時計回し》も1マナの”対象に取る”呪文であれば何でもOKです。具体的なコンボ手順は下記の通りです。 コンボ途中で回収する呪文が変わるため、やや複雑な手順になっています。1.《島》を対象に《ぐるぐる》を唱える。2.《島》のコピーを生成し、対象にした《島》をアンタップする。(これで青2マナが出ます。)3.《渦巻く空、開璃》を対象に《時計回し》を唱える。4.《渦巻く空、開璃》のコピーを生成し、レジェンドルールにより《渦巻く空、開璃》の死亡時効果が誘発する。5.ライブラリーを6枚切削し、墓地の《ぐるぐる》と《時計回し》を回収する。1~5の手順を繰り返すと消費マナなしでライブラリーをすべて切削することができます。 その後、5で回収する呪文を変更するところから再開します。 6.《ぐるぐる》と《満潮》を回収する。7.《島》を対象に《ぐるぐる》を唱える。8.《島》のコピーを生成し、対象にした《島》をアンタップする。9.《満潮》を唱える。(これで《島》1枚から2マナが出ます。)10.《渦巻く空、開璃》を対象に、墓地から《反重力》をフラッシュバックコストで唱える。11.《渦巻く空、開璃》の死亡時効果で墓地の《ぐるぐる》と《時計回し》を回収する。12.《島》を対象に《ぐるぐる》を唱える。13.《島》のコピーを生成し、対象にした《島》をアンタップする。《満潮》の効果で《島》2枚から青4マナが出るようになるため、1~5の手順で繰り返した《ぐるぐる》と《時計回し》を唱える1ループで2マナずつ浮きます。 これで青無限マナになります。 無限マナにした後は、マナを増やすために使用していた《ぐるぐる》が不要になるため、《渦巻く空、開璃》のコピーを出すための”対象に取る”呪文1枚と自由枠1枚を回収することができます。 よって墓地のすべてのインスタント呪文とソーサリー呪文を回収することができます。無限マナかつ墓地のインスタントもソーサリーも使い放題な状態になったら速やかに勝つだけです。 道中で十分なストームカウントを稼ぎ、《思考停止》ですべての対戦相手のライブラリーを切削します。その後ターンを終了し、対戦相手のドローステップを迎えて勝利となるわけですね。 5.《神秘の聖域》無限コピー 《神秘の聖域》を無限にコピーし、無限マナにするルートです。 《水大工の意思》と《ゆらめく蜃気楼》は土地を対象に取りつつ1枚ドローすることができます。 《神秘の聖域》は墓地の呪文をライブラリートップに置くことができるので、《神秘の聖域》を対象に《水大工の意思》と《ゆらめく蜃気楼》を交互に唱えることで、《神秘の聖域》のコピーを増やしながらそれぞれをライブラリートップに置き、ドローし続けてループします。なお、これだと《水大工の意思》と《ゆらめく蜃気楼》の合計3マナが必要なことに対して、コピーで増える《神秘の聖域》2枚の2マナしか供給されないため、なにかでサポートする必要があります。 この時《満潮》を唱えていれば、コピーで増える《神秘の聖域》2枚から青4マナが出るようになり、《水大工の意思》と《ゆらめく蜃気楼》を交互に唱える1ループにつき青1マナが浮くので青無限マナになります。1.《満潮》を唱える。2.《神秘の聖域》を対象に《水大工の意思》を唱える。3.《万物の姿、オルヴァール》が誘発し、《神秘の聖域》のコピーを生成する。4.《水大工の意思》により1枚ドローする。5.コピーした《神秘の聖域》から青2マナを出し、《神秘の聖域》を対象に《ゆらめく蜃気楼》を唱える。6.《万物の姿、オルヴァール》が誘発し、《神秘の聖域》のコピーを生成する。この時、墓地の《水大工の意思》をライブラリートップに置く。7.《ゆらめく蜃気楼》により1枚ドローする。(これが《水大工の意思》なので、2に戻る。)2~7の手順を無限に繰り返せるので、無限マナとなります。 なお、《満潮》の代わりに《サファイアの大メダル》がある場合には、マナは増えないものの、無限《神秘の聖域》にすることはできます。無限《神秘の聖域》なので要するに次のアンタップを迎えれば無限マナですね。 また、《ルーンの大魔導師》がある場合には追加でドローができるようになるため、無限《神秘の聖域》+無限ドロー。ドローしたカードでさらに《神秘の聖域》をコピーし、《満潮》を回収することでマナも増やせるようになります。※《ルーンの大魔導師》は強制ドローなので、厳密にはコピーできる《神秘の聖域》の数は残りライブラリー枚数です。 プレイガイド+Tips ■《万物の姿、オルヴァール》を守ろう このデッキがやりたい動きには大抵《万物の姿、オルヴァール》が関わってくるため、彼(?)を戦場に維持することには大きな価値があります。 ゆえに対戦相手から見た時の除去の優先度は高いため、様々な手段で彼を守りましょう。除去呪文に対してはカウンター呪文で対処することもできますが、ゲームの展開上、いつも豊富にカウンター呪文が余っているわけではありません。 そこで、呪文の枠を取らない土地で除去から守れるカードを優先して採用しています。まず《群がりの庭》は昆虫などを再生することができるため、多相の戦士であり昆虫の《万物の姿、オルヴァール》を守ることができます。 能力の起動にマナが必要無いのが他4枚と比較して最も優れているポイントです。スタンダードでもお馴染みの《英雄の公有地》は呪禁と破壊不能を付与できるので、以後安全にコンボを進行できます。起動コストは少し重たいのですが、青マナを出せる点が優れています。戦場に出た際にクリーチャーをフェイズアウトできる《マダラの鉤爪門》。4マナ支払うと手札から戦場に出せるため除去をかわせます。 また、相手の《ドラニスの判事》などを一時的に退かす役割としても使える器用なカードでもあります。土地を置くだけで除去となるため、実質0マナの除去として活用できます。《ウルザの洞窟》は、ライブラリーから土地を直接戦場に出すことができます。タップ状態で戦場に出るため《群がりの庭》や《英雄の公有地》は起動できませんが、《マダラの鉤爪門》を出すことで《万物の姿、オルヴァール》を守ることができます。モダンでも大活躍の《水力発電の検体》は、戦場に出た際に単一の対象を取るインスタントやソーサリー呪文の対象を自身に変更することができます。《水力発電の検体》を身代わりに除去を回避しましょう。 ■時には割り切りも大事 ”除去から守る”という前の項目に反してしまいますが、《万物の姿、オルヴァール》が除去されてもOKと考えてプレイする場合もあります。 すぐに除去されたとしても、コピーして残るパーマネントが手札やマナの供給面で優れていればOK。次のターン以降にまた仕掛けなおすことができます。 除去から《万物の姿、オルヴァール》を守るカードがない場合には、除去のスタック上で複数のコピーを生成することを目指しましょう。《万物の姿、オルヴァール》が除去されると次にまた唱えるときに2マナ重くなってしまいますが、例えば《金粉の水蓮》をコピーできる場合だと3マナ増えるため、次のターン以降で実質的に使えるマナは増えます。 このような場合には《万物の姿、オルヴァール》を除去される前提でプレイすることもあります。 ■《大魔導師の名誉教授》《ルーンの大魔導師》のご利用は計画的に 「インスタントやソーサリー呪文を唱えるたびカードを1枚引く」という強力な効果を持つ《大魔導師の名誉教授》と《ルーンの大魔導師》ですが、強制ドローが自分の首を絞めることがあります。 無限コンボに入り、無限ドローだ!と楽しくドローしていると、強制ドローの彼らによりセルフライブラリーアウトとなることも。そんな場合には引いたカードの中から《渦巻く霧の行進》で全員をフェイズアウトさせることで負けを回避できます。 《大魔導師の名誉教授》や《ルーンの大魔導師》をコピーしている場合でも、手札の青のカードをコストとして複数体をたった1マナで退かすことができます。《渦巻く霧の行進》の他にも、《蒸気の連鎖》で全員を手札に戻す場合もあります。 《蒸気の連鎖》は自分の土地を生け贄に捧げることで呪文のコピーが生まれるため、複数体の《大魔導師の名誉教授》や《ルーンの大魔導師》をコピーした場合でも、それが土地の数以下なら手札に戻し切ることができます。なお、《大魔導師の名誉教授》は「魔技」により呪文をコピーすることでもドロー効果が誘発してしまいます。《蒸気の連鎖》のコピーでもドロー効果が誘発してしまうため、残りのライブラリーの枚数に気を付けてプレイする必要があります。 ■実は使い道多数の《水流破》 《水流破》は対赤の呪文とパーマネントに非常に有効なカードですが、このデッキでは対すべての色のカウンターや除去となることがあります。 《ヴォルラスの気まぐれ》や《現実の修正》は対象の呪文やパーマネントの色を変更する効果を持つので、そのカードの色を赤にすることで《水流破》が万能カードに化けます。また、《水流破》は《ヴォルラスの気まぐれ》などが無くても、赤でないパーマネントを”対象に取る”ことができます。よってコピー生成のために使用することもできるため、対戦相手に赤いデッキがいない場合も使い道があります。 ■《時計回し》をうまく使おう 一見地味なカウンターを増減させる効果は、時に自身のパーマネントの強化や相手の妨害を行うことができます。 例えば《両生類の神童》の+1/+1カウンターを増やしてドローしやすくしたり、《神秘的負荷》の経年カウンターを取り除いて次のターンに維持しやすくしたりなど。 相手のパーマネントに対しては逆の増減を行うことで妨害も可能です。 その他にも自分の《一つの指輪》の重荷カウンターを増やしてドローを増やしたり、地味な使い方がたくさん! ”対象に取る”呪文の採用優先度 ”対象に取る”呪文はマジック30年の歴史の中で数えきれないくらい登場しています。 今回ご紹介したリストに採用されている各カードたちには、優先するだけの理由が存在しています。 というわけで、ここでは僕が採用する上で優先していることをまとめました。 今後”対象に取る”呪文が新規収録された際に、採用するかの判断基準にもなりますので、ぜひ参考にしてみてください。 【優先度高】マナを増やせるカード 《ぐるぐる》《夢の掌握》《見えざる糸》など。《万物の姿、オルヴァール》がいれば土地のコピーを増やしながら土地を起こせるため、マナを増やせるのが強みです。 各種コンボルートでも頻出の彼らは”対象に取る”呪文界のエース。 現在はこの3枚しかないので、似たカードがもっと増えてほしい!《魔力のタップ》も無色マナのみですが一時的に大幅なマナ加速が可能です。 【優先度高】コンボルートに含まれるカード 《ヴォルラスの気まぐれ》《時計回し》《理性のゲーム》《反重力》など。 バイバックや1マナのフラッシュバックなど、無限コンボのルートに含まれる呪文です。 これらの呪文はバイバックコストを払わない場合、1マナで唱えられることも優秀です。 【優先度中】複数回使えるカード 《幻色染め》《現実の修正》《特質改竄》など。 回顧・フラッシュバック・暗号など、カード1枚で2回以上使えるカードは、”対象に取る”呪文不足で動けなくなることを防ぎます。 フラッシュバックなどは単純に強力な効果なので、他の”対象に取る”呪文よりもマナ・コストが重たくなりますが、複数回使えるメリットの方が大きいです。 【優先度中】手札が減らないカード 《水大工の意思》《ゆらめく蜃気楼》《熱風の変転》《ひきつり》など。 1枚ドロー付きで”対象に取る”ことができるため、ゲーム中盤に手札を減らさず《島》などをコピーし、盤面のリソースを増やす動きが可能です。 《万物の姿、オルヴァール》がいない場面でも最低限キャントリップ呪文として働きます。 【優先度中】インスタントであること 《万物の姿、オルヴァール》が除去の対象になった際に、スタック上で複数のコピーを生成することができるため、インスタント呪文であることが優先されます。 【優先度低】対象に取れる範囲が狭い 《たなびく紺碧》《ミジウムの外皮》《本質の変転》など。 《万物の姿、オルヴァール》は状況に応じて土地やアーティファクトをコピーしたい場合も多いため、クリーチャーしか対象に取れないカードの優先度はあまり高くありません。 一方で、《ミジウムの外皮》や《本質の変転》など《万物の姿、オルヴァール》や《大魔導師の名誉教授》といった、強力なクリーチャーを守れるカードについては数枚採用することもあります。今回のリストでは《本質の変転》だけを採用しています。 《本質の変転》は《万物の姿、オルヴァール》でコピーできない状況でも《呪文探求者》や《粗石の魔道士》をブリンクし、必要なカードをサーチできるため、優先して採用しています。 採用候補カード 最後に、今回のリストでは採用していないものの、過去に採用していたり、今後環境の変化などで採用する可能性のあるカードをご紹介します。自身に影響が少ない、対戦相手への妨害カードです。 《基本に帰れ》を採用する場合は《アカデミーの廃墟》や《水辺の学舎、水面院》などが影響を受けてしまうため、有効に使えるタイミングが限られており、優先度がやや低い土地は《島》に変更します。 《水辺の学舎、水面院》は《一つの指輪》をアンタップできることが強みですが、現在のリストではそれ以外にアンタップするカードはありません。 ちなみに自身のパーマネント以外もアンタップできるため、ごくまれに対戦相手の《一つの指輪》をアンタップして妨害手段を引いてもらうこともあります。《呪われたトーテム像》や《墓掘りの檻》は自身の《歩行バリスタ》や《失われた宝物庫の学者》に影響するため今回採用していませんが、友人との対戦などで明確に対策が必要な場合には採用することもあります。 インスタントやソーサリー呪文のコスト軽減が優秀なカード。 特に《遵法長、バラル》は呪文を打ち消した際のルーティング能力も高頻度で誘発するため優秀です。 《研究所荒らしの事件》は事件を解明することでドロー効果を持ちますが、この条件達成がなかなか難しい! こちらは事件解明後の効果をはじめから持つ、《ルーンの大魔導師》の登場により席を譲ることになりました。《両生類の豪雨》という一度に複数体の対処が可能な強力な除去を得たため枠を譲っています。 現在は1マナの除去として《蒸気の連鎖》や《渦巻く霧の行進》を採用していますが、対戦環境によって早いターンでの除去が必要な場合には増量する場合もあります。 ライブラリーが無い状態での最も簡単な勝ち手段。 このデッキでは《切望の宝石》や《渦巻く空、開璃》を用いたコンボルートでライブラリーを空にした際には、ドローや回収したカードで無限マナとすることができるため、《歩行バリスタ》や《思考停止》で勝つことができます。《歩行バリスタ》は《流浪のドレイク》などを用いた他の無限マナコンボでも有効です。また、《思考停止》は《渦巻く空、開璃》で回収できる勝ち手段であり、対戦相手が「教示者」カードでライブラリーの上に置いたカードを切削させるなどの妨害としても使用できます。よって《タッサの神託者》に比べて他の場面での使い道が多い《歩行バリスタ》と《思考停止》を優先しています。《万物の姿、オルヴァール》によりコピーすると1マナで呪文や能力をカウンターできるようになります。 《万物の姿、オルヴァール》をプレイする際にも、彼らが既に戦場に出ていれば”対象に取る”呪文がカウンターとして働くため、《万物の姿、オルヴァール》が生き残りやすくなります。 現在のリストでは元のマナ・コストが重たいことを懸念して不採用としています。対戦相手が呪文を唱えるコストが2マナ多くなるため、除去やカウンターが飛んでくる枚数が少なくなりコンボを決めやすくなります。 無限コンボまで行かずとも、《王神の立像》を複数コピーすれば対戦相手が1枚も呪文を唱えられない状況になることもあります。 このように強いカードではあるものの、6マナという重さかつ出したターンの盤面に影響を及ぼさないことが弱点。 このカードはヘイトが高く、場に出すと攻められる展開となり、このデッキは攻撃された際に盤面を止められるクリーチャーが少ないため、不採用としています。 おわりに 《万物の姿、オルヴァール》の統率者デッキをご紹介しました! 「変わった面白いデッキだな~」と少しでも思っていただけていたら幸いです! 無限コンボを抜きにしても、強力なパーマネントのコピーが増えていく楽しさは他のデッキでは味わえません!”対象に取る”呪文は今後の新セットでも高頻度で登場すると思います。 「もしかしたらこれ、《万物の姿、オルヴァール》で使えるかも?」と毎回新セットごとに胸をときめかせられるのも、この統率者の魅力です!

【週刊メタゲーム通信】禁止改訂後の地域CS予選を制したのはまさかのエネルギー!?

週刊 Modern

2024.12.24

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週は禁止改訂後、初となるモダンによる地域チャンピオンシップ予選の結果から、最新のモダン環境のデッキを紹介していきます。 ボロスエネルギー Modern Qualifier : 優勝 By A_Turtle 4枚のカードが解禁され、エネルギーに大きなメスの入った禁止改訂。その後に初めて行われたモダンによるチャンピオンシップ予選を見事制したのは……なんとボロスエネルギーでした!当然、解禁された4種のカードは採用されていません。《色めき立つ猛竜》《一つの指輪》《湧き出る源、ジェガンサ》の3種の必須カードを失っても競技トーナメントで優勝してしまうとは……恐ろしい。《色めき立つ猛竜》を失ったスロットに採用されているのは《溌剌の牧羊犬、フィリア》。攻撃時の能力で相手のブロッカーを排除したり、自分のクリーチャーを追放することで能力を再誘発させるのにも便利です。《ナカティルの最下層民、アジャニ》のトークンが増えるだけでも強力ですね。そしてその《溌剌の牧羊犬、フィリア》と噛み合うのが《歴戦の紅蓮術士》。《一つの指輪》《色めき立つ猛竜》と2種のリソースカードが禁止になったことで、実は今、密かに話題となっているカードです。手札の《火の怒りのタイタン、フレージ》を捨てつつカードを引けるので、脱出に貢献しながらカードを引ける素晴らしいカード。《溌剌の牧羊犬、フィリア》で追放するとかなりお得です。《静牢》が0枚で代わりに《岩への繋ぎ止め》が採用されているのは、《色めき立つ猛竜》が禁止なった影響かもしれません。現在のボロスエネルギーはエネルギーを貯める方法が《魂の導き手》《電気放出》のみとなっており、《静牢》に支払うエネルギーが重く感じる場面も増えるでしょう。先手2ターン目の《超能力蛙》に対して《静牢》を置き、こちらの《魂の導き手》が除去され、エネルギーを支払えない……なんてシチュエーションが目に浮かびます。サイドボードは禁止改訂後をしっかりと見据えて《溶融》が採用されています。《オパールのモックス》を採用したデッキに対して突き刺さるので、赤いデッキのサイドボードの定番になりましたね。ディミーア眼魔が赤をタッチしている場合もあるほどです。《魔道士封じのトカゲ》はストーム対策の定番。これまでティムールブリーチには、《一つの指輪》を置かれてプロテクションで無効化されてコンボを決められたり、《一つの指輪》で引いたカードで除去を喰らい、まともな対策カードとして機能しませんでしたが、《一つの指輪》の禁止により価値が上がりました。ルビーストームとブリーチコンボはどちらもエネルギーが苦手としているデッキなので、4枚採用も納得です。禁止改訂によってエネルギーは大幅な弱体化を強いられましたが、《一つの指輪》の禁止はむしろエネルギーにとっては追い風でした。エネルギーは自分で《一つの指輪》を使ってはいましたが、相手の《一つの指輪》に対してほとんど無抵抗だったのは、大きな弱点でした。《一つの指輪》禁止によって多くのデッキとの相性が改善されたため、むしろ《一つの指輪》の禁止はエネルギーにとってプラスに作用しているのです。禁止改訂ですべてを失ったかのように思われたボロスエネルギーが、見事予選を勝ち抜いたのでした。 ジェスカイコントロール Modern Qualifier : 8位 By  Viatt 《一つの指輪》を失ったデッキはモダンに数多くありますが、その中でも最も致命的だと思われていたのがコントロールデッキ。《孤独》や《否定の力》などのピッチスペルでモダンの理不尽な攻めをさばき、《一つの指輪》で延命しながらリソースを回復するのが最近のコントロールデッキでした。その中核を担う《一つの指輪》の禁止で、最早モダンにおいてコントロールデッキは成立しないのでは?と言われていたほどです。しかし、ジェスカイコントロールが本トーナメントで入賞し、コントロール使いたちを安心させました。《一つの指輪》によって無限のリソースを得ることができなくなったので、ピッチ呪文は《否定の力》のみになりました。ズルいことができなくなったので、まっとうにマナを支払って盤面をコントロールするようになったのです。アドバンテージ源は《アノールの焔》。ウィザードがいることで除去しつつ2ドローできる便利なインスタントで、肝心のウィザードは《瞬唱の魔道士》《知りたがりの学徒、タミヨウ》です。《瞬唱の魔道士》は《アノールの焔》をそのまま使い回すのが強力。もちろん《対抗呪文》になって打ち消すなど、その役割は無限大。このデッキのキーカードと言って良いでしょう。もう1人のウィザードである《知りたがりの学徒、タミヨウ》も《アノールの焔》と抜群の相性。3ターン目に《アノールの焔》を除去+2ドローで打ってそのまま《老練の学匠、タミヨウ》に変身させればウィンコンディションです。どちらのウィザードもアドバンテージを獲得できるので、《アノールの焔》とあわせて、《一つの指輪》を失った穴を埋めています。デッキが非常に軽いので《表現の反復》を採用できるのも面白いですね。コントロールで使う《表現の反復》は、土地を追放しつつ手札にスペルを入れるだけで、実質土地を並べながら手札を1枚増やすことしかできない場合が多く、あまり採用されていませんでした。このデッキならば強いカードを手札に入れながら《知りたがりの学徒、タミヨウ》展開や1マナ除去と動くことができます。これまではアドバンテージ獲得手段を《一つの指輪》に頼り切っていたので、打ち消しが入ったデッキを実は苦手としていました。その筆頭がディミーア眼魔です。除去で1対1交換を繰り返すのですが、最終的にこちらの手札を増やす手段である《一つの指輪》を狙い撃ちされ、《火の怒りのタイタン、フレージ》以外での勝ち目がない状態でした。しかし、現在は《知りたがりの学徒、タミヨウ》《瞬唱の魔道士》《アノールの焔》《表現の反復》と様々な手段で手札を増やせるので、《超能力蛙》《忌まわしき眼魔》を除去しながら、手札をしっかり補充できるようになりました。個人的にはこの形のジェスカイコントロールはディミーア眼魔に有利だと思っています。ディミーア眼魔側がジェスカイを意識し始めて《オークの弓使い》をメインに4枚採用することになったら、また話は変わってきそうですが。細かくアドバンテージを稼ぎながら、最終的に大量に溜まった墓地を喰らって何度も蘇る《火の怒りのタイタン、フレージ》がゲームを終わらせる動きは強力無比。モダンのコントロールはまだ死んでいません。それを結果が証明してくれました。 ティムールブリーチ Modern Qualifier : 7位 By Ale_Mtg ここまで禁止組の躍進を紹介してきたので、最後は解禁組の中で一番勢いのあるティムールブリーチを取り上げましょう。《死の国からの脱出》と《研磨基地》による無限コンボで勝利するティムールブリーチ。《知りたがりの学徒、タミヨウ》《湖に潜む者、エムリー》と強力な伝説クリーチャーを8枚使えるので、《モックス・アンバー》を採用することができ、爆発的な展開が可能でした。当然、《オパールのモックス》もデッキに加わります。《ミシュラのガラクタ》《モックス・アンバー》など0マナのアーティファクトが大量に入っているので、《オパールのモックス》が強く使えるデッキの1つです。《湖に潜む者、エムリー》で墓地から戻したり、《知りたがりの学徒、タミヨウ》で攻撃した際に出る手がかりもアーティファクトなので、金属術には事欠きません。《モックス・アンバー》《オパールのモックス》でモックス8枚体制となっているため、回った時の凄まじさはレガシーやヴィンテージに近いものがあります。1ターン目に《知りたがりの学徒、タミヨウ》から《モックス・アンバー》と《ミシュラのガラクタ》と《オパールのモックス》。2マナで《邪悪鳴らし》を打ち、次のターンに《死の国からの脱出》と《研磨基地》で2ターンキルなんてことも可能です。元々は《一つの指輪》が採用されていたデッキなので、禁止改訂による弱体化はしているのですが、《オパールのモックス》はそれを補って余りあるパフォーマンスを発揮してくれます。さて、コンボについて簡単におさらいしましょう。《研磨基地》はタップすることでカードを3枚切削できるアーティファクト。戦場にアーティファクトが出ることによりアンタップできます。そこに《死の国からの脱出》と0マナのアーティファクトが加わるとどうなるかというと……1.《研磨基地》で0マナアーティファクトを生け贄に捧げる。カードを3枚切削。2.《死の国からの脱出》で0マナアーティファクトを脱出で唱える。3.0マナアーティファクトが場に出たので《研磨基地》がアンタップする。4.再び《研磨基地》で0マナアーティファクトを生け贄に捧げ、1~3がループ。これによって自分のライブラリーが0枚になる。5.最終的にライブラリーが0枚の状態で《タッサの神託者》が出てきて勝利となります。従来のブリーチコンボは、《死の国からの脱出》と《研磨基地》によるコンボを決めた最後のフィニッシャーは《タッサの神託者》でした。これはコンボ時に浮くマナが青マナなため、最終的に青いカードでフィニッシュする必要があったからです。(0マナアーティファクトが《モックス・アンバー》だと、《知りたがりの学徒、タミヨウ》か《湖に潜む者、エムリー》がいる状態で青マナが出るので、1回《モックス・アンバー》を脱出するごとに青マナが浮きます)しかし、《オパールのモックス》が加わったことで、好きな色マナを出せるようになりました。そこでこのリストでは、コンボ以外に役に立たない《タッサの神託者》が抜け、《ぶどう弾》が採用されています。《ぶどう弾》ではストームが足りない可能性がある、と不安になる方もいるかもしれませんが、実際は墓地に落ちた《ぶどう弾》をもう1度脱出して唱えることができるため、相手が無限ライフなどでない限りは《ぶどう弾》で削れます。エネルギーなどに対しては除去としても優秀なので、《タッサの神託者》から《ぶどう弾》への変更は素晴らしいですね。このティムールブリーチコンボは《オパールのモックス》を使うデッキの中でも随一の爆発力を誇るデッキで、それゆえに《溶融》が流行してしまうほど。今後はサイドボード後の《溶融》といかにして戦うかが、ティムールブリーチの課題となりそうですね。

【今週のピックアップデッキ】エスパーピクシー/スゥルタイ眼魔/ディミーアアスモフード

週刊 Modern Pioneer Standard

2024.12.20

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 エスパーピクシー(スタンダード) MOリーグ:5-0 By Trellon 『ダスクモーン:戦慄の館』はエンチャントがメインのセット。そこで生まれたアゾリウスエンチャントは環境初期に活躍し、今でもその姿をトーナメント上位で見かけます。そんなアゾリウスエンチャントとは一線を画した新たなエンチャントデッキが、このエスパーピクシー。デッキ名になっている《養育するピクシー》はもちろんエスパーピクシーの主役。土地かフェアリーでないパーマネントを戻すことで1マナ2/2飛行になるピクシーを活かしたデッキです。どう活かすのか。それはもちろん戦場に出た時に恩恵をもたらすエンチャントとの組み合わせです。《望み無き悪夢》や《嵐追いの才能》、《チビボネの加入》などを使い回し、アドバンテージを得ていきます。エンチャントを出し直すので、違和感を持つカードとの相性は抜群です。《呑気な物漁り》を何度も誘発させることができ、序盤に出していた《養育するピクシー》がどんどん大きくなり、あっという間に対戦相手のライフを削り取ります。《孤立への恐怖》はこのデッキに欠かせない存在です。自身がエンチャントなので違和感を誘発させつつ、先ほど紹介した、戦場に出た時に効果を発揮するカードを戻します。戻すカードと言えばもちろん《この町は狭すぎる》も採用されています。もはや《嵐追いの才能》と《この町は狭すぎる》はセットになりましたね。レベル2で《この町は狭すぎる》を回収して《嵐追いの才能》に打ち、再び唱え直してレベル2にで《この町は狭すぎる》……とこのようにループを形成できます。《この町は狭すぎる》は自分のパーマネントも2枚戻すことができますが、このデッキでは特にその使い方が多そうです。《望み無き悪夢》と《チビボネの加入》を戻して出し直すだけで相手は嫌な顔をすること間違いなし。赤アグロに必殺の《幽霊による庇護》もメインから4枚採用されており、殺意を感じます。普通のエンチャントデッキに飽きてしまった方には特におすすめです! スゥルタイ眼魔(パイオニア) MOリーグ:5-0 By sloth_thopterist 《叫ぶ宿敵》や《悪夢滅ぼし、魁渡》に《ホーントウッドの大主》など、スタンダードやパイオニアで大活躍するカードが多数収録されている『ダスクモーン:戦慄の館』。その中でも最も広い環境で使われているカードと言えば《忌まわしき眼魔》ではないでしょうか。モダンでは《濁浪の執政》より優先して採用されるようになり、ディミーア眼魔というアーキタイプが生まれ、スタンダードでは《僧院の導師》を押しのけてアゾリウスメンターをアゾリウス眼魔に改名させました。そんな《忌まわしき眼魔》が主役となるスゥルタイ眼魔。他のデッキが《忌まわしき眼魔》を《救いの手》や《発掘》でリアニメイトするのに対し、このデッキでは手札から普通に唱えるのが基本です。《忌まわしき眼魔》は6枚の墓地を必要とするので、切削カードが大量に入っています。《サテュロスの道探し》、《アーボーグのルアゴイフ》で墓地を肥やし、《忌まわしき眼魔》へと繋げていきます。《上げ潮、キオーラ》は墓地を肥やしながらスレッショルド達成時には大きな恩恵を受けられるクリーチャー。《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》のマナクリ8枚体制なので、後半これらのカードが不要になり、その際にも《上げ潮、キオーラ》は役に立ちます。もちろん《忌まわしき眼魔》を踏み倒す手段もきちんとあります。まずは《集合した中隊》。デッキに入っているクリーチャーカードはすべて3マナ以下なので32枚のカードがヒットします。《集合した中隊》を強く使うためには「いかに強い3マナクリーチャーをたくさん採用するか」がカギとなりますが、《忌まわしき眼魔》《上げ潮、キオーラ》はいずれも申し分ない性能です。《ホーントウッドの金切り魔》もターン終了時に出てきた際は脅威ですね。そしてもう1つの踏み倒し手段が《異界の進化》。生け贄にしたクリーチャーのマナ総量+2までのクリーチャーをサーチできるソーサリーで、《ラノワールのエルフ》が《忌まわしき眼魔》に進化します。1ターン目に《ラノワールのエルフ》から2ターン目に《異界の進化》で《忌まわしき眼魔》と、2ターン目《忌まわしき眼魔》着地も容易です。かなりの脅威となること間違いなし。墓地を活用するデッキに見えますが、サイドから《安らかなる眠り》などを置かれても特に問題ないのがこのデッキの魅力。《異界の進化》と《集合した中隊》は関係ありませんからね。《墓掘りの檻》はこの2つが止まってヤバいですが、逆に墓地を肥やして手札から《忌まわしき眼魔》を出す分には関係ありません。様々な角度から攻められるデッキで、とても楽しそう!《忌まわしき眼魔》をパイオニアで使い倒したいならスゥルタイ眼魔で決まり! ディミーアアスモフード(モダン) モダンリーグ:5-0 By TBagTom モダンで解禁された4枚の禁止カードたち。その中でも最もインパクトがあるのは、やはり0マナで置けるマナ加速・モックスの1つ、《オパールのモックス》。アーティファクトが3つ戦場にあれば好きな色マナが出せる《オパールのモックス》は、レガシーやヴィンテージでも採用されることがあるほど強力なモックスです。そんな《オパールのモックス》は鱗親和やハンマータイムなど、アーティファクトを主体とするデッキに早速組み込まれ、モダンのトーナメントで活躍し始めています。本日ご紹介するのは《オパールのモックス》を使うデッキの中でも異質な存在、アスモフード。アスモフードの主役となるのは《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》。名前を覚えるのが最も困難なこの伝説のクリーチャーは、戦場に出た時に《地獄料理書》をサーチします。その《地獄料理書》は手札を捨てると食物トークンを生むアーティファクトで、その食物を2つ生け贄に捧げることで、《アスモラノマルディカダイスティナカルダカールル》の能力でクリーチャーに6点のダメージを飛ばすことができます。手札を失って食物を出す《地獄料理書》は単体ではさほど機能しませんが、《楕円競走の無謀者》とすさまじいシナジーを発揮します。《楕円競走の無謀者》はアーティファクトが戦場に出るたびに墓地から手札に戻ってくるカードなので、《地獄料理書》で《楕円競走の無謀者》を捨てると食物が出て、《楕円競走の無謀者》がそのまま手札に戻ってくるのです。つまり、《地獄料理書》で何も失うことなく食物を生成し続けられます。タダで食物を得られるエンジンが出来上がるとアスモフードの本番は始まります。《地獄料理書》が2枚あれば《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》で毎ターンクリーチャーを除去できますし、アーティファクトがたくさんあれば《河童の砲手》を1マナで出しつつ、毎ターン《地獄料理書》を起動するだけで《河童の砲手》が強くなっていきます。《地獄料理書》は《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》と《ウルザの物語》の2枚でサーチできるため、場に複数枚並べるのは難しくありません。《バシム・イブン・イスハーク》もアスモフードを支える1枚。歴史的な呪文、つまりアーティファクトか伝説のクリーチャーか英雄譚を唱えると、1ターンに1回1ドローできるので、デッキ内のほとんどのカードに反応してくれます。というか《バシム・イブン・イスハーク》でカードを引けないのは《楕円競走の無謀者》と《通りの悪霊》だけ。その他のすべてのスペルでドローできてしまうのです。《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》《楕円競走の無謀者》を引かないとリソースが削られていってしまうだけのデッキだったので、《バシム・イブン・イスハーク》の加入は大きく、これでデッキがグッと引き締まっています。先ほどご紹介した《河童の砲手》もアスモフードを強化してくれました。盤面では強いデッキである一方、早いクロックは《ウルザの物語》しかなかったので、それなりにゲームが長引いてしまうのが弱点でした。《河童の砲手》は超強力なアタッカーで、しかも《溶融》に巻き込まれないので、サイド後は特に活躍します。《湖に潜む者、エムリー》と《河童の砲手》は《溶融》に強いですし、《地獄料理書》は壊れてしまうものの、《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》《バシム・イブン・イスハーク》も《溶融》に巻き込まれないので、《オパールのモックス》を使うデッキの中で最も《溶融》耐性があるデッキかもしれません。アスモフードは一度手にすれば病みつきになるデッキ。もちろん僕もアスモフードファンの一人。このディミーアアスモフードも大好物です。ガチャガチャとカードを動かして勝つのが好きならたまらないデッキです。ピンと来た過多はぜひ回してみてください。

赤アグロをやっつけろ!"アグロキラー"の異名を持つ白単コントロールを徹底解説!

Standard ピックアップ

2024.12.19

Akira Kobayashi

 皆さん、こんにちは! 「へいか」こと 小林 輝(@enzyutuheika)です。 記念すべき第一弾であるパイオニアのイゼットフェニックス記事についてご好評いただきありがとうございました。 今回はスタンダードのプレミアム予選で使用してきた白単トークンについて解説していきます! 白単トークンってどんなデッキ?  まずこの白単トークンについて簡単に紹介します。 ソーサリーの《剣を鍬に》こと《軍備放棄》を筆頭に、《失せろ》《魂の仕切り》《太陽降下》といった優秀な各種除去で相手の脅威に対して対応。  ついでに《人参ケーキ》《跳ねる春、ベーザ》でライフもゲインしてゲームをとにかく引き延ばします。  そして《人参ケーキ》《噴水港》などの各種トークン生成手段で《永劫の無垢》《世話人の才能》のドローエンジンを動かし、引き込んだ除去で相手の脅威を延々と対処し続けます。  そのまま相手が息切れしたところにアドバンテージ差をつけて圧し潰す……というボードコントロールデッキですね。 利点としては、やはり白単色で色事故とは無縁なところ、そして現在スタンダード環境で大きな存在感を示している赤アグロデッキに強い点が挙げられます。 特に4枚積みされている《跳ねる春、ベーザ》は1枚で4/5、1/1、1/1が並ぶだけでなく4点もゲインすることから、赤アグロには一つのゴールになり得る一枚です。 一方で欠点は、固定枠が多すぎることと、白単色による幅の狭さによってゲームプランが固定されてしまっているところ。そして物理的に時間が足りない点です。 デッキとしてのゲームレンジは非常に低速で、クリーチャーも1/1のトークンや2/1の《永劫の無垢》などの低パワーが中心のため、速やかに終わらせるようなプランを取ることもほとんどできません。 《世話人の才能》レベル3による+2/+2もトークンがある程度数揃っている必要があり、レベル3まで5マナかかるなど相応にお膳立てが必要です。《血滾りの福音者》やタッチ赤で《イモデーンの徴募兵》を入れ、ゲームを畳みに行くプランを取ったリストも考えられますが、中核となる「耐え忍んで後から勝つ」というプランとマッチしておらずデッキ全体の完成度が落ちてしまいます。 このように軸をずらすという器用なことがしづらい不器用なデッキです。大変かわいいですね。  そのため不利な相手にはとことん不利で、具体的にはスケール負けする4cズアーや、コンボを止めづらいティムールカワウソなどを苦手としています。 メインボードのリストおよび解説  プレミアム予選で使用したリストは下記の通りになります。  メインに《エルズペスの強打》2枚、《別行動》1枚で赤アグロおよびディミーアミッドレンジへのガードを上げている形です。 採用しているカードを一つ一つ解説していきましょう。 《エルズペスの強打》  1マナで3点かつ追放するいわゆるレンジストライク。 《心火の英雄》《永劫の好奇心》を1マナで追放できるのは素晴らしいの一言です。 一般的に白単トークンのメインボードでは1マナインスタント除去を採用していないため、赤アグロが《巨怪の怒り》をリスクなく唱えられてしまう点がどうしても気になりました。  特に後手を取ってしまうといかに有利と言えども1マナ除去がない時にブン回られてしまうと押し切られてしまう事もしばしば。 そこでサイドボードから2枚メインボードに移しました。同じく最多勢力の一角であるディミーアミッドレンジに対しても強い一枚ですしね。(《永劫の好奇心》を追放できるのがえらい!) 競合先としてはファウンデージョンズで追加された1点ゲインのおまけがついている《突き通し》ですが、先述した通り、追放できる点を考えるとやはりこちらの方に軍配が上がりそうです。 《軍備放棄》  白単にする最大の理由です。このデッキでは《噴水港》《沈んだ城塞》以外は全て平地であるため、ほぼ1マナの追放除去として機能します。  育ってしまった《心火の英雄》に対する最高の回答と言えます。 3点を回復させるデメリットも、ボードをコントロールしてから捲り返すこのデッキではほとんど気になりません。 動きがもっさりしがちなこのデッキにおいて、3ターン目に《軍備放棄》で対処しつつ《失せろ》《魂の仕切り》《人参ケーキ》などのダブルアクションに繋げられるのも高評価点です。  赤アグロはもちろん、勝ち手段をクリーチャーに依存しているミッドレンジ系にも有効な一枚。これが4枚から動くことはほぼないでしょう。 《失せろ》  アーティファクトがほとんど採用されない現環境においてはほぼ万能除去として機能します。(厳密に言えば《除霊用掃除機》などは存在しますが、白単トークンには入れてこないので考慮しないものとしています)  対処できなくて困るのは《ウラブラスクの溶鉱炉》ぐらいいでしょうか。 地図トークンを与えるデメリットはあれど、サイズに関係なく対処できる除去ばかりなのでそこまで気にならない……と言いたいのですが…… 赤アグロには《心火の英雄》と《熾火心の挑戦者》の雄姿を誘発させてしまいます!! これは小さくないマイナス点です。 とはいえこれより強い除去もないですし、《叫ぶ宿敵》や《悪夢滅ぼし、魁渡》などに対する貴重な対処手段でもあるので、これも同じようにほぼ4枚固定と言ってもよいです。 《魂の仕切り》  追加の《失せろ》として2枚ほど入っています。  赤アグロの《ウラブラスクの溶鉱炉》を対処できる数少ないカードでもあります。  2マナ多くなる代わりに再度唱えられてしまうのですが、白単トークンとマッチしていることから採用されています。 というのも、この白単トークンは序盤さえ乗り切ってしまえば後から《永劫の無垢》《世話人の才能》でいくらでもアドバンテージを稼ぐことができます。  2マナインスタントでテンポも取れる《失せろ》《魂の仕切り》は序盤を凌ぐのにうってつけな一枚であるため、この部分が評価されているというわけですね。 自分のパーマネントも対象に取れるため《跳ねる春、ベーザ》を対象にして再利用したり、相手の除去に合わせて実質バウンスのような用途としても利用できます。 《人参ケーキ》  ブルームバロウのリミテッドではトップコモンの一つとして数えられており、構築でもこの白単トークンで重宝されています。《世話人の才能》および《永劫の無垢》との相性が最高によく、1/1兎トークンは先述した2枚とも誘発のトリガーにもなり、占術でこの2枚や除去などその時に欲しいカードを探し出すことができます。※トークン生成と占術は一連の流れであるため、《世話人の才能》《永劫の無垢》がいる時は先に占術で確認してからドローすることになります。 起動能力ではインスタントで同じ効果を誘発させつつ、序盤を乗り切るための3点ゲインも行います。  このようにデッキとしての方向性・シナジー共に全て噛み合っている一枚です。デッキの基幹となるため、4枚から動きません。 《世話人の才能》  白系トークンというアーキタイプを成立させたカード。もちろん4枚です。 1ターンに1回の制限があるとはいえ、トークンを出す全ての効果に「1枚ドローする」という一文がつく強さは皆さんもおわかりでしょう。  これらに加えてレベル3の+2/+2によってフィニッシャーとしての役割も兼ね備えています。 ただし、3ターン目に出すと盤面に影響を与えることなくターンが終わってしまうため、4ターン目でレベル2も解決してトークンをコピーしつつ、1ドローまでするという形が望ましいです。  そのため3ターン目のアクションとしては《沈んだ城塞》のタップイン処理or《軍備放棄》+《人参ケーキ》、もしくは《永劫の無垢》などでお膳立てするとよいでしょう。 ちなみにレベル3にするとトークンが3/3になってしまい、パワー2以下が条件である《永劫の無垢》でドローできなくなる点は留意したいところです。 《永劫の無垢》  出すトークンがいずれもパワー2以下であるため、《世話人の才能》と合わせて8枚のドローソースになります。  《世話人の才能》と異なるのは本体が2/1絆魂のスタッツを持つところで、壁にもなりつつ除去耐性を持ち合わせているため3ターン目のアクションとしても最適です。 ティムールカワウソには追放除去である《塔の点火》があるため、エンチャント破壊がないメインボードではチャンプブロックになってでもエンチャントにしておくことをお勧めします。 《別行動》  主に赤アグロを見て《太陽降下》1枚をサイドボードに移して投入。  赤アグロには《太陽降下》が間に合っていないのが最大の理由で、《一時的封鎖》ではこちらのトークンごと巻き添えになってしまったり《叫ぶ宿敵》が倒せなかったりしたのでこちらを採用しました。 ディミーアミッドレンジに対して《幻影の干渉》をケアしつつ唱えられる点も評価しています。 《大天使エルズペス》 《世話人の才能》《永劫の無垢》の下で継続的にトークンを出せる手段として採用しています。  +1からスタートすれば忠誠度が5とそこそこ硬く、出てくるトークンも絆魂を持つためゲームを長引かせるという目的にフィットしています。 ただ《世話人の才能》《永劫の無垢》ありきであり、この2枚が絡まないと弱いと感じることが多く、元々は2枚だったのですが1枚に減らしました。 ディミーアミッドレンジに対してブロッカーとして機能する2/1飛行を二体出せる《ミストムーアの大主》に枠を譲った方がいいかなと感じています。 《跳ねる春、ベーザ》  赤アグロに対する一つのゴールであり、ゲームプランの中核として働きます。  4点ゲインする上に4/5のサイズは《巨怪の怒り》込みでないと突破できず、何らかの手段がない限りは相打ちに持って行くことができるためアクションを強要させることが出来ます。 手札に《跳ねる春、ベーザ》がある場合、《人参ケーキ》から出る兎トークンをチャンプブロックさせるなどクリーチャーの数を調整することを常に考えていく必要があります。 また《軍備放棄》で相手をゲインできるため、先に《軍備放棄》でライフやハンドを調整するなどで最大限バリューを取っていく動きを心掛けていきましょう。 土地が相手より少ない時に出る宝物トークンを忘れやすいので、まず土地の枚数を確認する癖を身につけておくと良いです(戒め) ミッドレンジに対しても強いため4枚採用としていますが、最近は《跳ねる春、ベーザ》が強いマッチが赤アグロとゴルガリミッドレンジぐらいになっているため、サイドに1枚散らしているリストも散見されます。 《ミストムーアの大主》  2/1飛行トークンを二体出す効果はシンプルながら強力。壁役として活用してもよし、《世話人の才能》レベル2でコピーしてもよし、レベル3で4/3飛行にしてもよし。  兆候4もとにかく長引かせるこのデッキにはフィットしており、《太陽降下》で荒地にした後に顕現させるとほぼゲームが終わります。 上記のリストでは採用枚数が1枚となっていますが、飛行が多いディミーアミッドレンジに対して強く、このデッキがトップメタになりつつある現在では2-3枚に増量すべきでしょう。 《太陽降下》  スタンダード最強の全体除去。  追放と同時に「培養トークン」を出すため、なんと《世話人の才能》でドローします!  盤面除去とアドバンテージを両取りできるためミッドレンジ系に対して非常に強いカードです。培養トークンはアーティファクトなので《喉首狙い》が刺さらないのも嬉しい点。 その一方で赤アグロには5マナの重さで間に合っていないため、私がプレミアム予選に参加した際は、赤アグロが多いと読んでメインに3枚・サイド1枚としています。 追放のため《永劫の無垢》との相性がやや悪く、《太陽降下》を打ちそうな時はチャンプブロックしてでもエンチャント化させるなどの工夫が必要になります。 《忠義の徳目》 《アーデンベイルの忠義》で出てくる2/2騎士トークンは《世話人の才能》でコピーしても嬉しいですし、インスタントタイミングでトークンを出せるのも他にない価値があります。《世話人の才能》は相手のターンでも誘発するので美味しいです。 また、マナフラ受けおよび蓋としても機能する《忠義の徳目》はトークンを並べるこのデッキにとってもマッチしており、ゲームを畳む役割も担います。 が、クリーチャーを並べられないと+1/+1を乗せる効果も薄く、その点では《世話人の才能》のレベル3と被ります。  よって、これを採用していないリストも多々あります。フリースロットの一つですね。 《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》  個人的なイチオシです! 2マナの《人形作家の店》では攻撃すると1/1の玩具・アーティファクトトークンを生成し、《永劫の無垢》《世話人の才能》とシナジーがあります。実質0マナでトークンを生成できる手段はかなり貴重。 《人参ケーキ》《噴水港》などで生成した1/1トークンを無視して殴ってくるのがほとんどで、それに対して裏目を作らせることができます。  それ以降もアタックするならどんどん生成していくぞ、と圧を作り出すことも出来ますし、ドローに変換できる《噴水港》との相性も非常によいです。 6マナの《陶磁器ギャラリー》はこちらのクリーチャーが《穴ぐら守りの導師》のようにパワー・タフネスがクリーチャーの数と等しくなります。  例えば1/1が4体いる時に《陶磁器ギャラリー》を解放すると4/4が4体になり、そのままアタックすると《人形作家の店》が誘発し玩具トークンが生成。5/5が5体……と、雪だるま式に膨れ上がっていきます。 もちろん欠点もあります。《人形作家の店》は「玩具でない」クリーチャーであるため、これで生成した玩具トークンで攻撃しても誘発しません。  攻撃誘発も《陶磁器ギャラリー》もクリーチャーがいる事が前提であるため、これ単体では仕事しない点もマイナス点ですね。 よって入れたとしても2枚までで、1枚ぐらいが適正ではないかと感じています。《陶磁器ギャラリー》による奇襲性は高いので私は好きです。 ちなみに《陶磁器ギャラリー》を解放している状態で《跳ねる春、ベーザ》を出した際、盤面に《永劫の無垢》しかいなければ2/2として出るためドローが誘発します。覚えておきましょう。 《噴水港》  白単トークンを大きく支える土地です。  トークン生成手段が豊富なため、《世話人の才能》《永劫の無垢》や除去などを求めてトークンを生贄に捧げてドローが容易ですし、1点ダメージを受けるとはいえ3マナの軽さで1/1のトークンを出せるのも素晴らしい。 《世話人の才能》《永劫の無垢》のドローはターンに1回の制限がありますが、この《噴水港》によって相手のターンにも引くことができます。 4マナで宝物トークンを出せるのも《世話人の才能》とフィットしていますし、ダブルアクションがしやすくなる点も◎。 無色土地と言えども文句なしの4枚です。 《沈んだ城塞》  確定タップインであり平地を参照する《軍備放棄》とも相性が悪いのですが、それ以上に土地の起動能力限定で2マナ出る唯一無二の能力のメリットは大きい。 《噴水港》をひたすら酷使させるこのデッキにとって1枚で2マナが出る《沈んだ城塞》はかなり相性がよく、これによって余った1マナで《軍備放棄》《失せろ》などとダブルアクションを可能としています。 が、序盤で重ね引きしてしまうと先述した通りタップインかつ《軍備放棄》が強く使えなくなるデメリットがメリットより上回ってしまうため、採用枚数は3枚になっています。 サイドボード解説 《エルズペスの強打》  上でも解説した通り、主にアグロ系およびディミーアミッドレンジへのサイドボードになります。 サイドボード後では1マナ除去が《軍備放棄》と合わせて8枚体制になることでより有利になる認識です。 《領事の権限》  赤アグロ狙い撃ちのサイドカードです。 白単トークンは除去が多いものの、《軍備放棄》《別行動》を筆頭に《永劫の無垢》《人参ケーキ》などソーサリータイミングカードばかりなのが短所です。  その隙を狙ってくる《熾火心の挑戦者》といった速攻クリーチャーを無効化できることに大きな価値があります。《別行動》とも相性がよく、この《領事の権限》によってタップ状態で出てくる《多様な鼠》を攻撃してきたクリーチャーもろとも《別行動》でまとめて除去することができます。 また、対処しづらい《ウラブラスクの溶鉱炉》もこれ1枚で完封できるのも◎。一生1点ゲインしてくれるかわいい置物になります。 《救済の波濤》 《エルズペスの強打》をメインボードに2枚移動したことで空いた枠ですが、赤アグロへのアウトに対してイン枚数が足りなかったので試験的に入れた枠です。《噴出の稲妻》および《叫ぶ宿敵》のダメージ無効化・《跳ねる春、ベーザ》絡みのコンバットなどを補助する1枚で、奇襲性は非常に高いですがその分使い処がかなり限定されます。《叫ぶ宿敵》でゲインを禁止されるのが赤アグロへの大きな敗着になり得るので採用する価値は感じつつも、今後入れ続けたいかと言われるとそうでもないかな……というのが所見です。  ボロスアグロ・アゾリウスアーティファクトのようにクリーチャーを呪禁で守る用途で効果的な場面がこのデッキではあまり起こらないというのもあります。 ここは素直に追加の《領事の権限》でよさそうです。 《悪魔祓い》  ゴルガリミッドレンジの《不浄な別室》、カワウソの《豆の木をのぼれ》《永劫の活力》、ミラーマッチでの《世話人の才能》《永劫の無垢》など幅広く当たる対策です。  アゾリウス眼魔の《忌まわしき眼魔》やスペルカウント4以上の《傲慢なジン》にも当たったりします。 ソーサリータイミングと言えども範囲の広さおよび追放は魅力。 白単色なのでこういったいわゆる「丸い」カードを入れざるを得ない、とも言えてしまいますが…… 《やらせはしない》  追加の《エルズペスの強打》枠。《突き通し》との選択になりますが、こちらは2マナの代わりにどんなにサイズが大きくても関係なく追放します。 《永劫の好奇心》《叫ぶ宿敵》にも効果的であることからこちらにしました。 アグロ系、各種ミッドレンジに加えてアゾリウス眼魔、シミックテラーなどにも。  《安らかなる眠り》  スタンダードの白が誇る屈指の墓地対策。  シミックテラー、アゾリウス眼魔、もがく出現など墓地を利用するデッキ全般に対して完全にシャットアウトします。ティムールカワウソにも効果は薄いですが一応……  とはいえ《世話人の才能》と同じエンチャントで、この対策カードがまとめて刺さってしまうため過信は禁物です。 《石の脳》  不利マッチであるティムールカワウソへの対応策として採用しました。  対戦してて一番嫌だったのがエンジンの中核およびこちらの《失せろ》などをかわされる《この町は狭すぎる》で、これを抜くと結構楽になったことから採用しました。 テンポおよびアドバンテージ損をしてしまうデメリットはあれど、もともとアドバンテージを獲得するのが得意なデッキですのである程度補えると考えています。 ティムールカワウソ以外だとミラーマッチやシミックテラー等の特定のカードに体重が乗っているデッキに対して入れます。  ミラーマッチでは基本的に《世話人の才能》指定ですが、タッチ青であればどうしょうもない負け筋である《完成化した精神、ジェイス》を指定します。 シミックテラーの場合、ティムールカワウソと同じくエンジンである《この町は狭すぎる》を指定します。  このカードがあるだけで《世話人の才能》レベル3で攻めようとしてもバウンスで大きくテンポロスしますし、《太陽降下》も《渦泥の蟹》《トレイリアの恐怖》を戻されてされてしまうからです。 《別行動》  メインボード解説でも先述した通り、赤アグロに対して間に合っていない《太陽降下》の代わりに入れる軽量の全体除去枠です。  ディミーアミッドレンジやシミックテラーなどのクリーチャーでのビートダウンをメインとするデッキにも入れますが、ティムールカワウソには入れないようにしましょう。 なぜならば《永劫の活力》によってタップされてしまい、アンタップ指定が絶対通らないからです。入れて痛い目を合うのは私だけで十分です。 《ウルザの酒杯》  ティムールカワウソに対してまとめて吹き飛ばせる《告別》がとても欲しく、何かないかな……と探したら見つけたのがこれです。こちらの《世話人の才能》もまとめて吹き飛ぶ諸刃の剣ですが。 しかもこれも《この町は狭すぎる》でかわされる危険性があるため、《失せろ》などで打たせておく必要もあります。 X=2を指定することでこちらの《世話人の才能》を残したまま一掃できる《カーンの酒杯》も選択肢として上がりましたが、こちらはタップインによるラグが難点。 このようにティムールカワウソへのろくな有効策がなく、こうして頭を悩ませています。  いっそ元々不利なティムールカワウソのことは割り切ってしまうという選択肢もありなのかもしれませんね…… 《太陽降下》  上記でも記載した通り、《別行動》と入れ替えた4枚目の枠ですね。  各種ミッドレンジなどにサイドインします。 検討したカード群 《一時的封鎖》  《心火の英雄》の死亡誘発をさせない点は優秀なものの、サイドインされる《脚当ての陣形》に《世話人の才能》と一緒に刺さってしまうので不採用としています。 とはいえメインボードであればエンチャント破壊は少ないため、1-2枚ほど採用する価値はあるのかもしれません。 直近だとアゾリウスアーティファクトがスタンダード神決定戦を優勝されており、これに対して非常に効果的な一枚なのでこちらを入れる理由にもなります。 《加護をもたらす戦乙女》  飛行・先制攻撃・絆魂とコンバットに全振りしたカードですが、入れたい赤アグロに対してはやはり《脚当ての陣形》が刺さってしまうため《一時的封鎖》と同じような理由で入れていません。 ディミーアミッドレンジに対しても《フラッドピットの溺れさせ》《悪夢滅ぼし、魁渡》の麻痺カウンターで寝かされてしまいますし、《跳ねる春、ベーザ》に対して《喉首狙い》をある程度残すでしょうから定着もしません。 総じて一番入れたい赤アグロに対しては回答をしっかり用意されており、他のデッキにはあまり入らないことで候補から外れました。 《完成化した精神、ジェイス》 《行き届いた書庫》4枚をタッチし、《沈んだ城塞》と《噴水港》の宝物トークンで青を用意して《完成化した精神、ジェイス》を連打して勝つという別角度の勝ち筋を用意できるのが利点です。 白単トークンvs白単t青トークンのミラーマッチはこの《完成化した精神、ジェイス》を入れているタッチ青の方が冗談抜きで9割勝ちます。 が、テーブルトップでは後述する様々な理由によって白単トークンを使う方はあまりおらず、ミラーマッチは考慮しなくて良いと考えたため、不採用としています。 《行き届いた書庫》のタップインもかなり痛く、これによって有利である赤アグロに落としてしまうマッチがいくつかあったのも一つの理由です。 キープ基準 《人参ケーキ》は2回の占術によってその都度欲しいカードを探し出しつつ、壁役としての1/1を出してくれるので即キープ。  また、この環境において赤アグロとディミーアミッドレンジに対する軽量除去は欠かせません。《軍備放棄》《失せろ》といった除去も同様にキープに繋がるカードです。 《跳ねる春、ベーザ》もクリーチャーデッキに対して強いため、これも同様にキープ判断で大きな助けになるでしょう。  土地3枚ほどで《人参ケーキ》+各種除去であればまずキープと考えて差し支えありません。これに加えて《永劫の無垢》《世話人の才能》などがあれば100%キープです。 キーカードである《世話人の才能》が絶対的なキープ基準になるかと言えばそうでなく、トークン生成手段がないとただ何もしない置物になってしまいがちです。  先述した《人参ケーキ》、もしくは《噴水港》《跳ねる春、ベーザ》などのトークン生成手段があれば是非キープしたい一枚です。 とはいえ《軍備放棄》《失せろ》《世話人の才能》《太陽降下》《平地》×3といった、干渉手段が多い初手であれば、除去で対応できつつ、合計14枚あるトークン生成手段か《太陽降下》のための土地2枚を引ければ良いのでキープに値します。 その一方で《永劫の無垢》は単体でも2/1絆魂という最低限のスペックを持ち合わせているため、《世話人の才能》とは異なり単体でもキープする要因になります。   実は《太陽降下》はキープ基準になり得ません。  今のスタンダード環境において序盤に干渉できるかどうかが大事で、5マナのソーサリーである《太陽降下》はその要件に満たさないためです。  よってこの《太陽降下》が複数枚ある初手は大体マリガンしてしまいます。《別行動》は3マナの軽さもあり逆にキープしやすい一枚であるため、この面も含めて1枚《別行動》と《太陽降下》をメイン・サイドで入れ替えているというわけですね。 最大の欠点  さて、ここまで白単トークンのカードなどを解説してきましたが、ここからが本題です。  赤アグロに対して強いという明確な利点を持っているにも関わらず、テーブルトップで使う方が少ない最大の理由が……時間が足りないからです!! なぜ時間が足りないのかというと、既に何度も説明のように、このデッキが相手の脅威を全て除去し続けることによる勝利を目指すだからです。  除去、ドロー、ライフゲイン。この三点が白単トークンの主な内訳で、ゲームを終わらせるフィニッシャーがほとんど入っていない状態です。 つまり……物理的にゲームが終わりません。  相手の心が折れて投了してくれるならまだしも、粘り強いミッドレンジやティムールカワウソなどとの戦いはひたすら泥沼のような戦いを繰り広げることになります。 これは紛れもない事実で、アゾリウスコントロールで慣れているはずなのに最初に参加したプレミアム予選では3-1からそのまま3-1-3というおぞましい結果を残してしまいました。(引き分けの内訳は4cズアー、ティムールカワウソ×2) 最後はジャッジの方が20分ほど横に座ってご見学されていましたが、そこでも引き分けに終わってしまいました。  その時にジャッジの方に確認した際、「プレイ速度はまったく問題なかったですね……」とやや悲しげな顔をされていたのがとても印象的でした。 が、さすがに3回の引き分けはいただけません。同じことを繰り返さないためにも対策を講じることにしました。 時間切れにならないために  これは白単コントロールに限った話ではありませんが、自分のターンにかける時間を出来る限り短くすることに尽きます。 これまで説明してきた通り、このデッキはひたすらゲームを引き延ばす性質上、物理的に時間がかかります。そうすると必然的にターン数も多くなりますね。  これらのターンにかかる時間を少しでも短くしていくことで、トータルで短縮した時間も多くなるという考え方です。いわゆる「塵も積もれば山となる」ですね。 このかかる時間を短くする工夫についてまとめていきます。 トークン関連  まず着手したのはトークン関連。  デッキ名を冠するだけあり、トークンの種類は非常に多様です。 ・《噴水港》《跳ねる春、ベーザ》の魚トークン ・《噴水港》《跳ねる春、ベーザ》の宝物トークン ・《人参ケーキ》の兎トークン ・《忠義の徳目》の騎士トークン ・《太陽降下》の培養トークン ・《失せろ》の地図トークン ・《大天使エルズペス》の兵士トークン ・《ミストムーアの大主》の昆虫トークン ・《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》の玩具トークン  ……なんと9種類!!  同じくトークンを多用するジェスカイ召集ですら7種類ほどなので、これがどれだけ多いかおわかりでしょう。トークンを探すだけでも一苦労です。  たださえトークンを出す機会が多いデッキなのに、トークンを出す際に時間を取られてしまっては時間も切れてしまうもの。 そこでこのトークンに関する時間を以下に短縮できるかを検討し、色つきスリーブで分けることを思いつきました。  当初は各トークンごとに透明スリーブにまとめていましたが、これを色付きスリーブで分けることにしました。(培養トークンは両面のため従来通りの透明スリーブ) 手持ちスリーブの関係で昆虫トークン・騎士トークン・宝物トークンは同じ赤色ですが、この3種は比較的使用頻度が低いためひとまとめにしています。 この効果はてきめんで、出す際に色がついていることで目的のトークンをすぐ探し出すことができ、除去されて片付ける際にもすぐまとめられるようになりました。  試合終了後にまとめ直す時も非常にやりやすくなり、ストレスが大きく軽減されました。 何よりスリーブがついていることで裸のカードよりも取り扱いやすくなるメリットもあり、今後も他のデッキでもトークンをスリーブに入れていこうと思えるほどでした。 優先権を先に渡してからトークンを出す  例えば《跳ねる春、ベーザ》で魚トークンを出す際、 1.トークンカードから魚トークンを探す2.盤面に魚トークンを出す  という動作が発生します。 《太陽降下》でも 1.培養トークンを探す2.盤面に培養トークンを出す3.除去した枚数を数えてサイコロを乗せる の動作がありますね。 丁寧にやるならば全ての効果を解決してから優先権を渡すわけですが、フルタップもしくは他にすることが無い場合、カードの効果を解決した時点で先に相手へ優先権を渡し、その間にトークンを出すように心掛けています。 相手が考える・アクションをするまでの間にトークンを出すことで、その分だけ時間短縮になります。 もちろん何らかのスタックで介入することが考えられる盤面であったり、《世話人の才能》《永劫の無垢》のドロー誘発が絡む場合はトークンをしっかり出してから優先権を渡すなど、臨機応変に対応する必要もあります。 《世話人の才能》《永劫の無垢》のドローを一連の流れにする  スタンダード環境でこれらの誘発効果に対してスタックで動くカードとしては打ち消せる《ティシャーナの潮縛り》、ドローを咎める《フェアリーの黒幕》ぐらいでしょうか。 これらが入らないデッキではトークンが出た時点でドローは確定するため、トークンを生成した時点で「《世話人の才能》《永劫の無垢》が誘発します」という確認を省略することが出来ると考えられます。 ただし、このドローによって回答を引かれる前に誘発スタックで動いてくるケースがあるため、相手がフルタップなどで介入手段がない時に限り省略するようにしています。 この動作の省略を行う際は対戦相手としっかり確認を取り、合意を取るようにしましょう。ちゃんと解決までやってほしい、と言われたらそれに従いましょう。  マジック:ザ・ギャザリングは対戦相手とのコミュニケーションによって成り立つカードゲームですからね。 上記の工夫をしてきたことで、これ以降のプレミアム予選ではなんと引き分けが0回と改善しました! 大成功です!!  1回の動作がたかが数秒でも、これらの積み重ねでトータルの短縮した時間は数分以上にもなります。 コントロールデッキは己との戦いの一面もあります。少しずつこれらの精度を上げていくのも楽しみ方の一つですね。 サイドボーディング解説 VS赤アグロ  メイン・サイド共に有利なマッチアップです。  ただしメインでは後手かつキープした初手によってはブン回られると負けてしまうこともしばしばあり、油断できない相手です。 有利と言えどもライフを詰められたところに《叫ぶ宿敵》に《噴出の稲妻》を合わせられてゲインを禁止されると、そのまま挽回する前に削り切られてしまうことも。  場合によっては1マナが浮いている《叫ぶ宿敵》に対して《軍備放棄》で《噴出の稲妻》を誘い、その上から《失せろ》《魂の仕切り》を合わせることを意識しましょう。 ▼キーカード - 《軍備放棄》《跳ねる春、ベーザ》  とにかくライフを高く保つように除去しつつ、《失せろ》《魂の仕切り》を構えて《巨怪の怒り》を効果的に打たせないように立ち回っていくのが大事なのですが、これを後押しするのが1マナの《軍備放棄》。  先述してきた通り《心火の英雄》に対する最高の回答であり、3点受けてしまうとはいえ3ターン目に唱えてきた《叫ぶ宿敵》にも有効な除去でもあります。 こうして序盤を凌いだ後は《巨怪の怒り》でないと突破できない《跳ねる春、ベーザ》でライフゲインしつつ突き放すのが赤アグロに対するゲームプランとなります。 ▼サイドアウト -3《太陽降下》-3《世話人の才能》-1《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》 ▼サイドイン +2《領事の権限》+2《エルズペスの強打》+1《救済の波濤》+1《やらせはしない》+1《別行動》  間に合っていない《太陽降下》、攻撃しないといけない《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》を抜きます。  単体では何もしない《世話人の才能》も同様に抜きますが、除去した後に捲っていく手段として1枚だけ残す形としています。 サイド後では不要牌が全て効果的なカードになるため、元々有利な相性がさらに有利へ傾きます。 《救済の波濤》はダメージ軽減のみならずパーマネントにも呪禁を付与するため、《領事の権限》への《脚当ての陣形》を回避できる点を覚えておきましょう。 VSディミーアミッドレンジ  メイン微有利、サイドでは微不利という印象です。 メインでは打ち消しの枚数が少なく、こちらのアクションの通りがよい点と除去で攻め手を捌ける点などから微有利としています。 《フェアリーの黒幕》で《永劫の無垢》《世話人の才能》のドローをただ乗りされてしまうため、マスト除去の一つとなっています。  とはいえ除去手段も限られるため、割り切って《フェアリーの黒幕》を出させてから《軍備放棄》で対処するなど後手に回ってでも対処していきます。 《悪夢滅ぼし、魁渡》は定着してしまうと非常に危険。《失せろ》《魂の仕切り》は絶対これに合わせたいところです。 ▼キーカード - 《世話人の才能》  エンチャントである《世話人の才能》は一度定着してしまえば対処不可であるため、じっくりと除去しつつアドバンテージ差をつけていくプランの中核になります。 最近は同型意識で《ティシャーナの潮縛り》がメインから採用されているケースが多いため、《世話人の才能》レベル3を打ち消されて大きくテンポロスをさせられないように気を付けましょう。   ▼サイドアウト -1《太陽降下》-1《大天使エルズペス》-2《跳ねる春、ベーザ》 ▼サイドイン +2《エルズペスの強打》+1《やらせはしない》+1《別行動》  一方でサイドでは相手が《否認》《ティシャーナの潮縛り》《強迫》など効果的なカードが入ってきてクロックパーミッションとしての完成度が上がったのに対し、こちらは特にこれといったカードが入りません。  白単色の弱みであり、このデッキそのものの弱みでもありますね。もちろんゲームプランも変わっていません。 インスタントタイミングでの仕掛けおよびハンデス・カウンターでの撹乱アグロが通りやすくなってしまい、こちらはより窮屈な動きを強要されてしまいます。 的確に脅威に対して除去を合わせつつ、どこか隙を見て《世話人の才能》を通してアドバンテージを地道に取っていくしかありません。 ただ《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》はディミーアミッドレンジに対して有効な一枚で、2マナの軽さからカウンターを掻い潜って着地させやすいです。 《陶磁器ギャラリー》の解放は《祭儀室》などとは異なり誘発が発生しないため《ティシャーナの潮縛り》すらも無視します。 地道にトークンを産み出しながら《陶磁器ギャラリー》で一気に決着をつけるという動きが再現性の高い勝ち方でしたので、このデッキを意識するなら2枚採用するとよいかもしれません。 VSティムールカワウソ  はっきり言って不利です。 《嵐追いの才能》《豆の木をのぼれ》《この町は狭すぎる》の組み合わせて延々とアドバンテージ・テンポ両方を取ってくる上、《永劫の活力》《渓間の洪水呼び》による無限コンボもあるためこちらは攻める側にならねばなりません。  しかし白単トークンはこれまでに何回も言及してきた通り、ゲームレンジを後半に寄せており攻めていく手段に乏しいデッキです。 悠々とコンボパーツを集められ、こちらの《世話人の才能》レベル3による攻めは《この町は狭すぎる》でかわされてしまい、《永劫の無垢》も《塔の点火》で追放……と、最悪のマッチの一つと言ってもよいでしょう。 ▼キーカード - 《失せろ》 《失せろ》は《嵐追いの才能》《渓間の洪水呼び》をインスタントタイミングで対処できる貴重な手段。 《この町は狭すぎる》を回収するための《嵐追いの才能》レベル2に合わせて《失せろ》でテンポロスさせるなどを狙っていきましょう。 相手の勝ち手段を的確に潰しつつ、アドバンテージを獲得しながらチャンスを伺っていきましょう。 ▼サイドアウト -1《軍備放棄》-2《跳ねる春、ベーザ》-2《エルズペスの強打》-1《大天使エルズペス》-1《太陽降下》 ▼サイドイン +2《石の脳》+2《悪魔祓い》+1《ウルザの酒杯》+2《安らかなる眠り》  サイド後も依然として不利の認識です。  どうにかして《石の脳》を通し、《この町は狭すぎる》を抜いてしまえば《世話人の才能》《永劫の無垢》によるスケール勝負に持ち込むことができます。 《安らかなる眠り》は正直言って効果があまりないものの、敗着の一つである《嵐追いの才能》レベル2を無効化できるだけでも《エルズペスの強打》よりはマシです。  この際、《永劫の無垢》も追放されてしまうため戦場から戻らない点は注意です。《悪魔祓い》は《永劫の活力》《豆の木をのぼれ》《嵐追いの才能》《蒸気サウナ》などターゲットが多いものの、《この町は狭すぎる》によってかわされるリスクは念頭に置くべきでしょう。 VSアゾリウス眼魔  メイン・サイド共に有利と認識しています。 ただ飛行クリーチャーが《ミストムーアの大主》によって出てくる昆虫トークンしか存在しないため、得意とするトークンによるチャンプブロックができません。  そのため早期に《傲慢なジン》《忌まわしき眼魔》が出てきた場合、捌き切れずに殴り切られてしまうパターンも存在しますが、やはりここは1マナの追放除去である《軍備放棄》が非常に効果的です。 ▼キーカード - 《軍備放棄》《太陽降下》 《救いの手》《再稼働》による再利用を許さない追放除去は的確に当てたいところです。  あちらも《魂の仕切り》《送還》でかわすことを意識しますが、総枚数としてはこちらの方が上です。 2マナ重くさせる《魂の仕切り》もアゾリウス眼魔は土地を切り詰めており、5マナ出すにも一苦労なのでほぼ追放除去として機能します。  再度唱えてきたところに《軍備放棄》《太陽降下》をお見舞いしてやりましょう。 このようにクリティカルな対応手段が多いため、構造的に有利と言えるでしょう。 ▼サイドアウト -3《跳ねる春、ベーザ》-2《エルズペスの強打》-1《大天使エルズペス》 ▼サイドイン +2《悪魔祓い》+1《やらせはしない》+2《安らかなる眠り》+1《別行動》  このアゾリウス眼魔には《安らかなる眠り》が強烈に突き刺さる上、《悪魔祓い》《やらせはしない》など追放除去が増えることでより有利になります。 サイドでは《僧院の導師》が入ってきますが、これもやはり《軍備放棄》で対応可能。 《否認》《軽蔑的な一撃》のカウンターが入ってくるとはいえ、こちらの追放除去の量を乗り越えるほどではありません。 どんどん追放してあげましょう。 最後に  白単トークンについて紹介させていただきました。  白が誇る除去、ドロー、ゲイン。これらを余すことなく堪能できるよいデッキです。ただ何度も言及してきた通り、時間が最大の敵です……  時間短縮のコツをいろいろと書きましたが、それでもやはり引き分けは発生してしまうでしょう。当たり前ですが、引き分けないために最も必要なのはデッキに慣れることですね! 持ち時間制であるアリーナやMOであればこの時間はそこまで気にならなくなるので、是非デジタルで一度回してみてはいかがでしょうか?  そして目指せ《時間の名人》!  ここまで読んでいただきありがとうございました。  またお会いしましょう!

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2024.12.17

mtg Yuyan

日本時間の 12月17日深夜、禁止改定が行われました。モダンで暴れ回っていた《一つの指輪》とエネルギーにメスが入るのは誰の目にも明らかで、そのエネルギーから何が禁止されるのかを全員が焦点にしていました。結果は、《湧き出る源、ジェガンサ》《一つの指輪》《色めき立つ猛竜》の3枚の禁止。 エネルギーは《湧き出る源、ジェガンサ》と《色めき立つ猛竜》を失いましたが、《魂の導き手》《オセロットの群れ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》《火の怒りのタイタン、フレージ》は残り、デッキの形はかろうじて保つこととなりました。《一つの指輪》の禁止も仕方のないことでしょう。アグロ・ミッドレンジ・コントロール・コンボのすべてのデッキに採用された奇跡のカードであり、昨年印刷されて以降、何度も禁止が検討されていました。《一つの指輪》が使われない環境は、すなわち《有翼の叡智、ナドゥ》のような強すぎるコンボデッキが隆盛しているということで、それもまた規制対象なのです。しかも強いコンボデッキに《一つの指輪》が組み込まれることもあり、どう考えても禁止にする以外の手立てはありませんでした。《湧き出る源、ジェガンサ》はエネルギーで活躍していたのも要因の1つですが、大きかったのは構築の幅を狭める点でした。 相棒に指定するためにはダブルシンボルのデッキを採用できなくなるため、必然的にシングルシンボルのカードばかりが使われることになり、それが構築の自由を奪うことになってしまっていました。 「構築に制限をかける代わりにデッキ外のリソースを確保できる」のが相棒なので、それを言ってしまうと「相棒を全否定しているのと変わらないのでは?」と思いましたが、《湧き出る源、ジェガンサ》はちょっと使われすぎましたね。 そして、ニュースはそれだけにはとどまりませんでした。《欠片の双子》《緑の太陽の頂点》《オパールのモックス》《信仰無き物あさり》解禁!!!!!!!!!!正直、今回解禁が行われるとは思わなかったのでびっくりしました。 僕はモダンの禁止改訂でカードをどんどん解禁していく動きがすごく大好きです。《定業》はしっかりとディミーア眼魔やイゼットマークタイドなどを強化しましたし、《弱者の剣》や《精神を刻む者、ジェイス》《血編み髪のエルフ》も今のモダンでは適正な強さです。『モダンホライゾン』などの特殊セットの加入でモダンのカードパワーは飛躍的に上昇しており、モダンで今禁止されているカードの大半は解禁しても問題ないと思っています。とはいえ、今回はその中でもまあまあギリギリなラインのカードたちが帰ってきました。「もしかしたらこのカードは再び禁止になるのでは?」と思うほど強いカードが戻ってきて驚いています。というわけで今回は、禁止解除された4枚のカードを早速使用して結果を残したデッキたちをご紹介していきましょう! 欠片の双子 モダンが制定されて最初に行われたモダンプロツアー。《ギタクシア派の調査》を打ちながら《猛火の群れ》で2ターンキルしてくる感染や《雲上の座》と《ヴェズーヴァ》で大量のマナを出す12ポスト、《炎の儀式》から《紅蓮術士の昇天》を1ターン目に置いてくるイゼット昇天など、右も左も現代では禁止されているカードばかりのプロツアー・フィラデルフィアを制したのが《欠片の双子》でした。 モダンと言えば《欠片の双子》。それぐらいこのカードはモダンのコンボの代名詞でした。《詐欺師の総督》と《欠片の双子》の2枚が揃うと瞬殺とわかりやすく、そのコンボパーツ以外を自由にチューンできることから、非常に構築力が問われるデッキでした。青のドロー・打ち消し、赤の火力を使えるイゼットカラーでコントロールしながらのらりくらりとコンボを決める構成が基本でしたが、緑を加えて《タルモゴイフ》を採用したタルモツインなども後に登場し、活躍しました。メタゲームに応じて様々な構成で5年間モダンで活躍し続け、2016年の1月22日に禁止。そして8年ぶりに本日、モダンに帰ってきました。「現代のモダンのパワーではもはや《欠片の双子》は通用しないのでは?」そんな声も聞こえていましたが、早速モダンリーグで5-0を収めました! デッキのベースはイゼットコントロール。《対抗呪文》《瞬唱の魔道士》《アノールの焔》《稲妻》と少し前のモダンで見たことのあるイゼットウィザードの構成です。そこに《詐欺師の総督》と《欠片の双子》の2枚コンボを採用し、瞬殺を可能としました。双子デッキで重要なのは《欠片の双子》を腐らせないことです。《詐欺師の総督》はエンド前に相手のアタッカーを寝かせて1/4で場を固めたり、《欠片の双子》のプレッシャーを相手にかけることができるカードである一方、《欠片の双子》は手札に残り続けることになります。そのため、《欠片の双子》のつけ先が重要です。以前までは《詐欺師の総督》と同じく無限コンボになる《やっかい児》が採用されていましたが、このリストでは《瞬唱の魔道士》に加えて《稲妻罠の教練者》が採用されており、《欠片の双子》のエンチャント先が12枚に増えています。《瞬唱の魔道士》に《欠片の双子》がつくと毎ターン墓地から無料でカードを1枚フラッシュバックできるようになりますし、《稲妻罠の教練者》もリソースを供給し続けてくれるので、このリストなら《欠片の双子》の処理に困ることはなさそうですね。《拒絶の閃光》は《詐欺師の総督》が余った時に生け贄に捧げて0マナで打てて便利です。『モダンホライゾン3』の《知りたがりの学徒、タミヨウ》はデッキと噛み合うカードではありませんが、タダ強枠として採用されています。《アノールの焔》との相性は抜群。3ターン目に5点と2ドローで打てば変身しながら相手のクリーチャーを除去し、カードまで引けてしまうのです。《欠片の双子》が1ターン目から脅威を展開してくる時代になりました。今から戦うのが恐ろしい。モダン黎明期から活躍し続けたコンボ、果たして令和に生き抜くことはできるのか?今後に注目ですね。 信仰無き物あさり カードを2枚引いて2枚捨てる1マナのソーサリー。元祖となる《入念な研究》はリアニメイトやマッドネスなど様々なデッキで暴れ回りました。 その赤バージョンが登場した時には驚きました。フラッシュバックというおまけにしては強すぎる能力も手に入れましたからね。 そして《信仰無き物あさり》はしっかりモダンでも暴れます。特に好きなカードを墓地に送りこめる点を評価され、イゼットフェニックスやドレッジ、ブリッジヴァインなどのアンフェアな墓地デッキを支えました。結果、すべてのデッキに4枚以上の墓地対策が必須となってしまい、2019年に禁止。5年ぶりにモダンに戻ってきました。 今回は最新型のホロウワンに組み込まれました。カードを1枚捨てるごとに2マナ軽くなる4/4クリーチャー、《虚ろな者》。その英語名のホロウワンがそのままデッキ名になったのがこちらのホロウワン。その名の通り、《虚ろな者》が主役です。《燃え立つ調査》《信仰無き物あさり》でカードを捨てて《虚ろな者》を1マナや0マナで召喚して殴るビートダウンデッキ。以前は《燃え立つ調査》しかなく、3枚ディスカードで《虚ろな者》が捨てられてしまうこともありましたが、《信仰無き物あさり》は自分で選んで2枚を捨てられるのでその心配はありません。《虚ろな者》と相性の良いカードが《探偵のフェニックス》です。証拠収集6で授与することができ、装備先に飛行と+2/+2速攻を付与してくれるので、《虚ろな者》を強化して殴るも良し、墓地に落ちた《虚ろな者》が証拠収集6のうち5を満たすので、《虚ろな者》が場と墓地どちらにいても活躍するのです。1マナ圏も優秀なカード揃い。墓地を貯めつつ3/3飛行になる《ドラゴンの怒りの媒介者》に加え、《ネザーゴイフ》も強力です。アーティファクト・エンチャントが採用されているため、早いターンから4/5になりやすく、《虚ろな者》と並んであっという間に相手のライフを消し飛ばしてくれます。《信仰無き物あさり》の解禁で墓地デッキがまた生き生きし始めました。僕も個人的に思い入れのあるカードなので、また使い倒していきたいと思います。 緑の太陽の頂点 ライブラリーから緑のクリーチャーカードを直接場に出す1マナのソーサリー。レガシーの緑を支えるカードであり、1ターン目に《ドライアドの東屋》をサーチできるため、実質《ラノワールのエルフ》としても機能します。序盤に引けば《ラノワールのエルフ》、中盤に引けば3~4マナの最も強いクリーチャー、後半はフィニッシャーと、状況に応じてなんでもできるすさまじいカード。緑のすべてのデッキに入ってしまうことから、2011年に禁止されました。なんとモダンでは13年ぶりの解禁!このカードをモダンで再び使えるようになる日が来るとは思いませんでした。前述のように、どのターンに引いても強いのが《緑の太陽の頂点》。《ラノワールのエルフ》は1ターン目には引きたいが後半引いたら腐るカードですし、《孔蹄のビヒモス》は初手には必要ありませんが、最終的には引き込みたいフィニッシャー。《緑の太陽の頂点》は、そんなワガママを叶えてしまうカードです。《ラノワールのエルフ》と《飢餓の潮流、グリスト》と《孔蹄のビヒモス》の3つのモードから選べるカードだと考えるとその凄さがわかるでしょう。実際はそれよりも強く、《緑の太陽の頂点》にはデッキ内のすべての緑のクリーチャーのテキストがついているようなものなのです。さて、ここまで強い《緑の太陽の頂点》。入賞数も非常に多く、早速このカードがモダンでも現役であることを示しましたね。その中からピックアップするのがこちら。 ゴルガリヨーグモスです。《スランの医師、ヨーグモス》自身は残念ながらサーチできませんが、逆に言えばそれ以外のすべてをサーチできる《緑の太陽の頂点》。1ターン目のマナ加速として《喜ぶハーフリング》の追加で採用されていた《極楽鳥》《下賤の教主》は抜け、《緑の太陽の頂点》に統一されました。中盤に引いた際は《飢餓の潮流、グリスト》にまずなります。除去とトークン生成を兼ねるプレインズウォーカーにアクセスする手段が大幅に増えましたし、《召喚の調べ》でのサーチを《スランの医師、ヨーグモス》に絞ることができますね。《スランの医師、ヨーグモス》と揃うことでコンボになる《毒物の侍臣、ハパチラ》も《緑の太陽の頂点》でアクセスできるカード。相手のクリーチャーに《スランの医師、ヨーグモス》でマイナスカウンターを乗せると蛇が出てきて、その蛇を《スランの医師、ヨーグモス》で生け贄にできるため、ライフが続く限り、相手のクリーチャーにマイナスを置き続けてドローできます。大体の場合は盤面を全部除去して7ドローぐらいできるので、実質勝ちです。元々強力なデッキだったヨーグモスが1ターン目のマナ加速を安定させるだけでなく、中盤・終盤にも腐らないカードを手に入れてしまいました。マナ加速から《飢餓の潮流、グリスト》の流れも前より安定するようになり、再現性が更に上がることに。《緑の太陽の頂点》、その名の通り頂点を取ってしまうのでは? オパールのモックス 最後にご紹介するのが今回の解禁組の中でも一番の問題児。というか僕はこのカードだけは絶対に解禁されないと思いました。アーティファクトを3枚コントロールしていると好きなマナを出せるモックス。自身がアーティファクトなので、他に2枚あれば達成と、一見難しそうに見える条件ですが、アーティファクトにデッキを寄せれば、このカードはパワー9級の性能を発揮してくれます。あらゆるアーティファクトデッキに4枚採用され、《最高工匠卿、ウルザ》《クラーク族の鉄工所》などと組み合わせて暴れ回ったり、黎明期から親和にも重宝され続けていましたが、2020年にモダンで禁止となりました。《信仰無き物あさり》もそうですが、近年モダンで禁止になったカードが解禁されるのは意外でした。ある程度カードパワーが高くなったモダンで禁止になったカードなので、解禁するにはまだ早いと考えるのが普通だからです。《オパールのモックス》はかなり危険なカードです。これまではほとんどのデッキで不可能だった《ウルザの物語》の2ターン目起動を簡単に行えるようになってしまったのです。1ターン目に《ウルザの物語》から1マナのアーティファクト、2ターン目に《ダークスティールの城塞》と《オパールのモックス》、これだけで2・3ターン目に《ウルザの物語》を起動できてしまえます。レガシーやヴィンテージをプレイされている方なら、この恐ろしさがわかるのではないでしょうか。単純にゲームスピードも変わることになります。モダンでは《金属モックス》《炎の儀式》と、軽いマナ加速カードは禁止傾向にありました。一瞬だけ2マナを3マナに増やす《捨て身の儀式》がギリギリで、3マナを5マナに増やす《煮えたぎる歌》すら今は禁止されていますからね。特に0マナで1マナを増やせるモックスは、早いターンにはマナを出せないように調整されており、デッキ構築を大幅に伝説に寄せた《モックス・アンバー》ですら、使えるデッキでは獅子奮迅の活躍をしています。《オパールのモックス》はただアーティファクトを大量にデッキに入れるだけでよく、《モックス・アンバー》ほどデッキ構築段階で意識する必要はありません。早速リーグの結果を見てみると、《オパールのモックス》は2種のデッキに組み込まれていました。まず1つ目は《硬化した鱗》を使用したコンボアグロ、鱗親和です。《電結の荒廃者》と《硬化した鱗》の組み合わせで瞬殺するデッキで、2マナのカードがとにかく多いので、3ターン目に《オパールのモックス》を絡めた2アクションが非常に強力で、デッキはすさまじく強化されました。そしてもう1つ、リーグで複数入賞しているのがこちらのデッキ。 そう、装備コストの重い《巨像の鎚》を《シガルダの助け》で無理やり装備するハンマータイムです。 《巨像の鎚》《シガルダの助け》とキーパーツがどちらも1マナ、しかもアーティファクトを大量に採用しているので、ハンマータイムと《オパールのモックス》の相性は最高です!基本が白単のビートダウンなので2ターン目の《ウルザの物語》起動だけでも十分です。というかこの動きだけで勝てるマッチ、結構ありませんか?おそろしい。《メムナイト》《羽ばたき飛行機械》と0マナのアーティファクトが大量に入っているので、《オパールのモックス》さえ引けば2ターン目の《ウルザの物語》起動はそう難しくありません。《メムナイト》《羽ばたき飛行機械》は《オパールのモックス》と相性が良い反面、少しカードパワー面で不安のあるカード。しかしハンマータイムならこれらのクリーチャーが《巨像の鎚》の装備先となるので、採用しても問題ないというわけです。ハンマータイムが《オパールのモックス》を一番強く使えるかもしれませんね。《オパールのモックス》は先ほどご紹介した鱗親和以外にも、アーティファクトを並べて《思考の監視者》《河童の砲手》で暴れ回る8 Castなどにも採用されており、モダンでアーティファクト旋風が吹き荒れつつあります。《溶融》がモダンに標準搭載される日も近いかもしれませんね!

【今週のピックアップデッキ】セレズニアアーティファクト/セレズニアオーラ/4cエレメンタル

週刊 Modern Pioneer Standard

2024.12.13

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 セレズニアアーティファクト(スタンダード) MOリーグ:5-0 By AgrusKos93 スタンダード神挑戦者決定戦で驚くべきパフォーマンスを見せたアゾリウスアーティファクトアグロ。特にデッキのキーカードの1つだった《威厳あるバニコーン》は、その巨大なサイズで攻守に渡って戦場を支配する存在で、今の赤アグロの多いスタンダード環境における回答とも言えるカードでした。そんな《威厳あるバニコーン》が主役となるのが、こちらのセレズニアアーティファクトアグロ。デッキコンセプトはアゾリウスに近く、《ひよっこ捜査員》《内なる空の管理人》《威厳あるバニコーン》と、パーマネントを戦場に出し、それらをタップして強化し、サイズの大きいクリーチャーたちで殴る構成です。緑によって強化されたのはパーマネントの生成能力。《堅いクッキー》はその名の通り(?)非常に手堅いクリーチャー。戦場に出た時に食物を生成するので、パーマネント2枚分になり、更に3マナ支払うとアーティファクトを4/4のクリーチャーにできます。後半引いても4/4のクリーチャーを生成して殴れる、便利なカードですね。《名もなき都市の歩哨》は様々なミッドレンジで採用実績のある強カード。戦場に出るか攻撃するたびに地図を生成するので、出して地図を起動して攻撃するだけで、サイズを上げつつライブラリートップの質を上げられます。警戒もついているので赤アグロにも強いですね。3マナ3/4とそもそものスタッツも優秀。リソースを稼ぐ手段として《勇敢な旅人、ケラン》も優秀です。出来事として唱えれば地図を1つか2つ生成し、クリーチャー面では手札を増やしてくれる可能性があり、両方が活きるセレズニアアーティファクトにぴったりです。もう1つの緑のメリットが《生歯の子ワーム》。アーティファクトが戦場に出るたびに成長していくので、このデッキなら毎ターン大きくなっていきます。《ひよっこ捜査員》《勇敢な旅人、ケラン》《堅いクッキー》《名もなき都市の歩哨》《鋼の熾天使》《薄暮薔薇の聖遺》《未確認浮遊船》とアーティファクトはたっぷり入っています。《鋼の熾天使》は《威厳あるバニコーン》に飛行を付与するもよし、絆魂で赤アグロに悪夢を見せるもよしと、このデッキに噛み合った1枚。《幽霊による庇護》と合わせて《威厳あるバニコーン》に絆魂を付ける手段が6枚もあります。今スタンダードで激熱の《威厳あるバニコーン》を使い倒したい方、このセレズニアもおすすめですよ! セレズニアオーラ(パイオニア) MOリーグ:5-0 By T1_Tinker 《幽霊による庇護》《天上の鎧》と強力なオーラカードが登場したことでスタンダードでもオーラデッキは活躍していますが、元々オーラと言えばパイオニアやモダンのデッキでした。スタンダードと最も違う点はやはりそのクリーチャーたち。 まずは《上級建設官、スラム》。オーラデッキの弱点である「オーラを唱えて手札がなくなる」を克服する能力を持っており、オーラを唱えてオーラを引くオーラ連鎖が発生すると一瞬でゲームが壊れます。特に《天上の鎧》はオーラをつけるほど強化値が上がっていくので、《上級建設官、スラム》が生き残ってターンが帰ってくればあっという間に手をつけられないサイズのクリーチャーが爆誕します。《皇の声、軽脚》も、《上級建設官、スラム》とは違った形でオーラを供給し続けるクリーチャー。こちらはオーラを唱えて戦場に出した時に、そのマナ総量以下の、戦場に同名カードがないオーラをデッキからサーチして《皇の声、軽脚》につけることができます。たとえば《幽霊による庇護》を手札から唱えると、戦場に《天上の鎧》がある場合、《幽霊による庇護》と《天上の鎧》以外の2マナ以下のオーラをデッキから場に出して《皇の声、軽脚》につけられます。好きな1マナオーラからそのまま《天上の鎧》につなげたり、《幽霊による庇護》から《きらきらするすべて》をサーチしたりと、《皇の声、軽脚》が出てオーラを唱えることさえできれば、《皇の声、軽脚》のサイズがすぐに上がっていく寸法です。サイズを上げた後は、トランプルを付与する《無鉄砲》や飛行をつける《グリフの加護》だったり、《ケイヤ式幽体化》を持ってきて《皇の声、軽脚》を除去から守るも良し、《歩哨の目》を持ってくれば、後に墓地に落ちた時に《上級建設官、スラム》や次の《皇の声、軽脚》に再利用できて便利です。こういった「修正値は並だが回避能力を付与するエンチャント」は4枚採用しづらいカードですが、《皇の声、軽脚》のおかげで好きな時にサーチできます。以前までは相手への干渉手段が少なかったオーラですが、《幽霊による庇護》の登場で一気にデッキパワーが上昇しました。《幽霊による庇護》を引かなくとも《皇の声、軽脚》によってサーチできるため、しっかりと相手の盤面に触れるようになったのです。《破片魔道士の救出》はこれまでになかったインスタントのオーラ。《皇の声、軽脚》でもちろんサーチできるので、インスタントタイミングで《天上の鎧》が降ってきたり、《ケイヤ式幽体化》で《皇の声、軽脚》の定着を大きく安定させられるようになりました。除去を一度《破片魔道士の救出》で避けた上で《ケイヤ式幽体化》がつくので、《皇の声、軽脚》を除去するのは至難の業です。《離反ダニ、スクレルヴ》《皇の声、軽脚》《上級建設官、スラム》と12枚の伝説のクリーチャーを採用しているので《モックス・アンバー》を4枚使えるのもポイント。1マナで《破片魔道士の救出》を構えられるので、2ターン目に《上級建設官、スラム》か《皇の声、軽脚》+《モックス・アンバー》で《破片魔道士の救出》を構える動きは強烈。以前はここが《ケイラメトラの恩恵》だったので、デッキはすさまじく強化されていますね。《皇の声、軽脚》に《きらきらするすべて》をつけてデッキから《幽霊による庇護》をサーチする動きは非常に強力!アグロデッキにはこの動きだけで勝ててしまうほどです。正直「オーラデッキは過小評価されているのでは?」と感じています!それぐらいこのデッキは強そう! 4cエレメンタル(モダン) モダンリーグ:5-0 By Traumatismes モダンでも息の長く人気のある種族、エレメンタル。《創造の座、オムナス》や《孤独》など、モダン級のカードはエレメンタルであることが多いので、よくアップデートされるのも魅力ですね。そんなエレメンタルの最新事情を今回はご紹介していきましょう。まずエレメンタルの心臓ともいえる部分を担う《発現する浅瀬》。エレメンタルが戦場に出るたびにライブラリーの上を見て、それが土地ならタップインで場に出て、それ以外なら手札に加わる。要するにエレメンタルを出すとリソースを供給する恐ろしいカードです。《孤独》を想起で唱えても1枚めくれるのであまり損をしません。そしてデッキのカードすべてと噛み合う《発現する浅瀬》と最も相性が良いエレメンタルが《雷族の呼び覚まし》。攻撃するたびに、墓地から《雷族の呼び覚まし》のタフネスよりタフネスが小さいクリーチャー、つまりタフネス1のクリーチャーを攻撃状態で釣り上げます。終了ステップにそのクリーチャーは生け贄になりますが、釣った時点で《発現する浅瀬》が誘発してくれます。そんな《雷族の呼び覚まし》は他にもシナジー盛りだくさん。エレメンタルをデッキからサーチしてライブラリーの上に積む《炎族の先触れ》を釣って常にエレメンタルを積み込み続けたり、《ちらつき鬼火》を釣れば他のクリーチャーを明滅させてアドバンテージを稼げます。ちなみに相棒の《孤児護り、カヒーラ》でタフネスが上がるとタフネス2以下のクリーチャーも場に戻せるので、《孤独》も墓地から場に戻せます。《雷族の呼び覚まし》との相性なら《夕暮れヒバリ》が最高かもしれません。場を離れた時にパワーが1以下のクリーチャーを戦場に戻してくれるので、墓地から《発現する浅瀬》や《炎族の先触れ》を復活できるのです。《炎族の先触れ》によってエレメンタルをライブラリーに積めるので、1枚差しも大量に入っています。置物に触れたければ《仮面の蛮人》か《基盤砕き》。土地が欲しいなら《絡みつく花面晶体》。除去耐性が欲しかったら《不確定な船乗り》。《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》も特定のマッチでは非常に効果的です。フェッチランドがとりあえず使えなくなったり、宝物を生け贄にできなくなります。そうそう、『モダンホライゾン3』で登場した《出産の儀》についても触れなければなりませんね!終了ステップの開始時に、ライブラリーの上7枚を見て、その後にクリーチャーを生け贄にできます。その生け贄に捧げたクリーチャーのマナ総量+1以下のカードを、7枚の中から場に出せます。つまり《復活の声》を生け贄に捧げた場合、マナ総量3以下のカードを場に出せるのです。《雷族の呼び覚まし》で釣ったカードや《復活の声》など、《出産の儀》で生け贄に捧げたいクリーチャーはたくさんいますし、3マナ以下のカードが多いので当たりも比較的多い。更に《炎族の先触れ》でエレメンタルを積めるので、あらかじめ積み込みしておき、《出産の儀》でめくるなんて荒業も可能です。《炎族の先触れ》以外にデッキ内のエレメンタルにアクセスしやすくなるため、この《出産の儀》でデッキがかなり強化されたのではないかと思います。アドバンテージ獲得手段の《発現する浅瀬》《雷族の呼び覚まし》とそれをサーチする《炎族の先触れ》《出産の儀》。攻守に渡って優れる《復活の声》に、持っているだけで安心の《孤独》と、その派手な見た目に反して非常に堅実的な動きができるデッキです。エレメンタルが並べば場も手札もすごいことになるので、面白さ間違いなし!ぜひ回してみてください。

【リアニメイトディガー!】《もがく出現》反省記&マリガンノート

週刊 Standard

2024.12.12

Kyle Hitachi

皆さんこんにちは!Kyle Hitachiです。 今週も「リアニメイトディガー!」も、スタンダードの『もがく出現』をディグしていきます! 先週末はプレミアム予選がお休みということで『第29期スタンダード神挑戦者決定戦』に参加してきました。 優勝は岡井さん謹製の青白アグロ。オリジナルなデッキが勝っていく様子はいつ見てもワクワクしますね!神との対戦も見ていて非常に面白かったです。 スタンダード神挑戦者決定戦に向けた調整 さて、私が『スタンダード神決定戦』に挑むに当たって意識した点は以下の三点です。 1.アグロデッキ対策 Magic Online上でジェスカイ召集が好成績をあげていることを踏まえて《苦難の収穫者》を増量。 アグロ対策を重く見るという方針は今まで通りで、そこに召集が加わりました。 2.デッキの安定性の上昇 《ゾンビ化》を2枚採用してデッキの安定性向上を目指しました。 追加のリアニメイトスペルを用意することにより、今までよりも安定して《偉大なる統一者、アトラクサ》《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を着地させられます。 3.青黒ミッドレンジ攻略の糸口を模索 そろそろ紙のメタゲーム上でも青黒ミッドレンジが大流行するはずだと考え、サイドボードプランを準備しました。 《忌まわしき眼魔》《好奇心の神童、ケラン》による飛行ブロッカーの増量です。 サイドボード後、相手が《除霊用掃除機》など墓地対策ハンドをキープした際にイニシアチブを取れるようなプランを意識しました。  『スタンダード神挑戦者決定戦』デッキリスト 今回使用したデッキリストはこちら。 大会結果 ボロスバーン〇白単コントロール〇白単コントロール〇グルールアグロ×セレズニアオーラ×ティムールカワウソ   成績は3-0から0-3してしまい、3-3でドロップ。悔しい結果になってしまいました。 1〜3戦目は比較的簡単なゲームでした。ボロスバーンは《脚当ての陣形》がないため、《偉大なる統一者、アトラクサ》《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》が対処されず、リアニメイトさえ決めれば試合がだいぶ有利になります。 白単コントロールは《完成化した精神、ジェイス》を相手が採用していなければ、サイドボード後に《安らかなる眠り》を貼られることを前提に考えても、負ける要素がありません。 そして問題のグルールアグロです。《多様な鼠》《叫ぶ宿敵》《巨怪の怒り》が絡んだブン回りを2回連続で食らってしまい、あえなく敗北してしまいました。トーナメント中一度は受け入れなければならない負け方ですが、ここでティルト状態に入ってしまいます。セレズニアオーラ、ティムールカワウソ相手はある程度こちらも好き勝手に動くことができ、その時間を与えてくれるので、キーカードさえ揃っていれば怖くない相手なのですが、日和って微妙なハンドをキープし続けてしまい敗北。 「運がなかった」と言えばそこまでですが、パフォーマンスは良くなかったです。 反省 さて、負けたときこそ成長のチャンス、ということで反省したいポイントを纏めてみます。 まずメタゲームを読み違えていました。 《苦難の収穫者》はジェスカイ召集にも強い除去である反面、《叫ぶ宿敵》を除去できない欠点がありました。 赤アグロミラーのミラーでは絶対的な《叫ぶ宿敵》は、黒いデッキやシミックテラーなどにはさほど強くなく、それらのデッキの流行に伴い、採用数が減少すると予想していましたが、その読みが外れてしまいました。 もう一つは厳しいマリガンを徹底することができなかったことです。 グルールアグロに理不尽な負け方をしたのは事実ですが、そのメンタルを次の試合に持ち込んでいいわけがありません。マリガンを恐れてはいけないアーキタイプを使っていることもあり、ここは妥協してはいけないポイントでしたね。とはいえ、妥協キープなどのマリガン失敗は改善できるポイントでもあります。 このデッキを使って勝率が出ない人の中にはマリガンで躓いてる人も多いのではないでしょうか。 自戒の意味を込めて、マリガンについて掘り下げていきます。 マリガンについて考える マリガンを嫌がるプレイヤーは多いです。 手札が対戦相手よりも少ない状態でゲームをスタートするのには勇気が必要ですからね。 ですが、マリガンは明確にプレイングの一部です。 初手でゲーム展開の8割が決まると思って、時には積極的に6枚の手札を選びましょう。 キープ基準となるカードはあるにはあるのですが、サイドボーディングの仕方やゲームプランによってカードの価値は変化してしまうので、一概には言えません。 それではいくつか例題を挙げて解説していきましょう。   1.VSグルールアグロ     私の答えはマリガンです。 とてもキープしたくなるハンドですね! ですが黒マナが見当たらず、《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》がこちらを見守っています。今後の展開がどうなるか、3枚引いてみましょう。 黒マナを引くことができませんでしたね。16枚入っているので引いても良さそうなものですが、仕方ありません。 2枚目の《錠前破りのいたずら屋》《完成化した精神、ジェイス》は引きこめましたが、グルールアグロ相手ではとても間に合わなそうです。 また《第三の道の創設》がないので、仮に黒マナを引けたとしても墓地が足りず、《もがく出現》を上手く使えないかもしれません。 対グルールアグロではリソースは必要ないので、厳しくマリガンしていくことになります。 というわけでマリガンしてみて配られた6枚です。これはキープ。 またしても難しいハンドが来てしまいました…が、今度はキープしても良さそうですね。このデッキ、緑マナを要求するカードが《もがく出現》《森の轟き、ルムラ》のみなので、青マナと黒マナさえあればとりあえず動き続けることができます。 戻すカードとしては《島》《ゾンビ化》のどちらかでしょうか。 《島》を戻すとマナスクリューの恐怖に怯えることになります。一方《ゾンビ化》を戻すと、《もがく出現》と緑マナの両方を引かなければゲームに勝つことができません。私は《切り崩し》でゲームが長引くことも考えて《島》を戻しそうです。   2.VSディミーアミッドレンジ マリガンです。惜しい、グルール戦でこの初手が来ていれば…! グルールアグロにならこれでキープしてしまいそうですが、相手はディミーアミッドレンジです。このマッチでは土地を伸ばしたいので2枚は少なく感じてしまいます。《完成化した精神、ジェイス》も、アグロには良いカードですが、ディミーアには使い勝手が悪いです。 このデッキはこういった「アクションはできるけれどゴールがない」ハンドがたくさん来るのが問題ですね。 これはキープします! 一度マリガンした、ということを考慮すれば良いハンドでしょう。諜報ランドで《錠前破りのいたずら屋》《蓄え放題》が見つかれば最高のハンドかもしれません。 1ターン目に諜報ランドをセットランドしたいので、同じくタップインである《不穏な浅瀬》を戻す……と思ってしまいそうになりますが、相手は青黒ミッドレンジで、手札には《切り崩し》があります。闇雲に動いてもしょうがないので、最初のターンは《不穏な浅瀬》をセットランド、2ターン目は《切り崩し》を構えながら諜報、そして3ターン目から《第三の道の創設》で動き始められそうです。 というわけで《ハッシュウッドの境界》か《沼》を戻すのが良いでしょう。 3.VS白単コントロール   マリガンです。 非常に有利なマッチアップですが、流石にリアニメイト先が2枚のハンドはまずいです。もしも《執念の徳目》あたりが《第三の道の創設》であれば、《忘れられた者たちの嘆き》で土地も探せそうなのでキープできますが、この手札は無理せずにマリガンという判断になります。    これはキープできます。 《苦々しい勝利》、もしくは《偉大なる統一者、アトラクサ》を戻してキープとなりそうなハンドです。ポイントとしては《第三の道の創設》があること、《忘れられた者たちの嘆き》で3枚目の土地を探せること。相手が白単コントロールなので《苦々しい勝利》を戻して問題ないでしょう。 4.VSティムールカワウソ     パーフェクトハンド。キープです。 非常に理想的なハンドです!色マナがすべて揃っており、《第三の道の創設》で素早く墓地を肥やすことができ、3ターン目までの行動が見えています。後は《偉大なる統一者、アトラクサ》《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》《もがく出現》がめくれるかどうかの勝負になりますね。  さて、今度は少し応用編で、サイドボード後のマリガンについても触れましょう。 インアウトは ー2《執念の徳目》ー2《忘れられた者たちの嘆き》ー2《切り崩し》+2《除霊用掃除機》+2《羅利骨灰》+2《強迫》 です。 マリガンです。 出ましたね、こういうハンドをキープすると負けてしまいます。 特にティムールカワウソのような準備をコツコツと整えていくデッキに対して、こういったハンドで始めてしまうことはかなりリスキー。最低限ゴールが見える手札をキープしましょう。 キープです。 黒マナこそないですが諜報ランドが複数枚あり、リアニメイトというゴールも見えている手札です。 なおかつ《羅利骨灰》もあることから《永劫の活力》などに対処することができます。この程度のハンドならばキープしてもよいでしょう。 5.VSディミーアミッドレンジ ディミーアミッドレンジとのサイドボード後について。 インアウトは以下の通り。 ー2《森の轟き、ルムラ》ー2《執念の徳目》ー2《忘れられた者たちの嘆き》+3《強迫》+2《温厚な襞背》+1《忌まわしき眼魔》+1《好奇心の神童、ケラン》 キープ。 土地に少し不自由がありますが、《強迫》を《第三の道の創設》で使い回す展開が見えているのは非常に良いことです。 一見邪魔に見える《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》も《苦々しい勝利》で墓地に落とすことができますし、《切り崩し》で早期のクロックに対処することもできます。 ただしこちが後手で、相手が1ターン目に《除霊用掃除機》をプレイしてきたときは非常に辛そうです。 キープ。 初手としては《好奇心の神童、ケラン》で土地を伸ばしつつ飛行ブロッカーを立て、《第三の道の創設》でライブラリーを掘り進められるなど、悪くない手札。《迷路庭園》の諜報と《不穏な浅瀬》2枚も頼もしいですね。土地は初手に5枚もありますが問題ありません。 《除霊用掃除機》を置かれても《好奇心の神童、ケラン》で割れるので安心です。 6.VS不明 《切り崩し》があるので早い相手には対応できそうですし、遅い相手に対しては《ゾンビ化》という仕掛けが2枚ある上に《第三の道の創設》での上振れも期待できます。どんな相手にでもキープしても良いでしょう。 このように除去・切削・リアニメイトなど、序盤を遅らせるカードからゴールまですべて揃っている手札は、どんな相手でも文句なくキープできる初手です。 このデッキにとってはゴールが重要なので、切削とリアニメイトを兼ねる《第三の道の創設》は非常に大事なカードで、いつでも初手に欲しいですね。 今後の課題 今週はマリガンに焦点を当ててみました。私が普段どのように考えて初手をキープしているか、少しでも伝わったのなら幸いです。 もちろん初手だけではなく「これから何を引きたいか」を考えることも重要です。麻雀で言うところの面子を揃えるようなものなので、受けが広くなるようプレイしていきましょう。 今後の課題ですが、まだ「マナベースの最大化」という地味ながらも大事な作業が残っています。 現在のマナベースはファストランドを抑えて《グルームレイクの境界》にフィーチャーした形を取っていますが、このマナベースがベストとは限りません。だいぶ長いこと使ってしまったのでそろそろ計算し直そうと思います。 また果敢クリーチャーに対してブレやすくて嫌いだった《切り崩し》を再評価し、4枚まで採用することを検討しそうです。やはり初手にあるとタップインランドを処理しやすいですからね。それに合わせて本当に諜報ランドが《迷路庭園》で良いのか、検討し直します。「それではまた来週……!」と言いたいところですが、今週末は特にイベントがありません。 店舗予選に出ることができればその様子をレポート、もしくは「The Last Sun」用モダンデッキの叩き台を作る様子を記事にしようと思います!禁止改定も12/16に控えていますからね。 それではまた次回、お楽しみに。