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【デッキガイド】攻めも守りも自由自在!エスパーピクシー

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2025.03.17

Akira Kobayashi

 皆さん、こんにちは! 「へいか」こと 小林 輝(@enzyutuheika)です。    今回はプロツアー『霊気紛争』で使用したエスパーピクシーの記事になります。    サイドボーディングガイドなどもあるので、エスパーピクシーを使用している方はぜひ参考にしてみてください! ▼プロツアーに向けた調整~構築編~  リミテッドについては前回上げた記事に記載されている通りこなしてきましたが、問題となるのはスタンダード。  プロツアーでのリミテッドは1日に3ラウンドですが、スタンダードは5ラウンドと比率が大きいものになっています。    これについては機会に恵まれ、にいはちさんこと小林遼平さんと愛するシュタインズ・ゲートについて6時間ほど語り合った事があります。  その際に同じプロツアーに行くという事で調整を一緒にやらないかという話になり、マスとんのディスコードサーバーにPT調整チャンネルのみという制限付きでご招待いただきました。    まずメタゲームとしてはグルールアグロ・エスパーピクシー・ドメインの三強と読み、その上でグルールアグロが最多勢力であると考えました。  新しいデッキを考える事も考慮しましたが、さすがにリソース不足により断念。この三つのデッキを使っていきながら選んでいくことに。  グルールアグロについては流石の安定感ですが、新戦力がほぼなし。  また、《不気味なガラクタ》《勢い挫き》という新戦力を得たエスパーピクシーに対してより不利になっている点も気になりました。  最多勢力でもありながら、ミラーに対して《叫ぶ宿敵》4枚や《塔の点火》を多めに取るぐらいのアプローチしか取れなかったため断念。  最終的にはグルールアグロに対して新戦力である《不気味なガラクタ》《勢い挫き》でより優位に立てつつ、他のデッキに対しても《呑気な物漁り》が絡んだ100点のブン回りをすれば蹴散らす事もできるエスパーピクシーを選択しました。    もちろん三色デッキ故の土地周りの事故要素などはありますが、それ以上にブン回ってしまえば抗いようのないムーブはそれ以上のメリットがあると判断。  何より調整相手の小林遼平さんがエスパーピクシーを好み、これで行くという話もあり同じ方向性で見ていった方がいいだろうという事情もありました。  ちなみにデッキサブミット期日2日前、夢の中でチャンピオンズカップファイナル覇者のjgさんから「ドメインランプを使え」と迫真顔で言われました。  境界ランドによってマナベースが改善され、《全損事故》によって赤系アグロに対してある程度抗えるようになったこれも感触が非常によく、最後の最後まで悩んだデッキでした。    実際プロツアー優勝も果たし、勝率的にも勝ち組デッキでした。さすがjgさん、天啓に従わず申し訳ありませんでした。  最終的なリストとしては上記の通り。   ▼メインボード  プロツアー前時点でメインボードに関しては個人的に土地含む56枚がほぼ固定枠だと考えていました。  このフリースロット4枚は下記の通りに選択しました。   3枚目の《悪意ある呪詛術士》  《呑気な物漁り》《養育するピクシー》《嵐追いの才能》と組み合わせることで1/3/2かつエンチャントによる誘発トリガーとして機能します。  他にも1ターン目《悪意ある呪詛術士》から《孤立への恐怖》や《養育するピクシー》で呪われし者・役割・トークンを外すパターンもあり、ほぼ3点クロックとして計算できます。    もちろん他に役割トークンのつけ先がなかったり、バウンスパーツがなかったり等で1/1になってしまったり、後手でのアグロ系には弱いなどサイドでは抜けるカードの筆頭である弱さもありますが……  ドメインランプを筆頭に1マナのテンポを押し付ける展開を大いに貢献するため3枚目を採択しました。   《不気味なガラクタ》  《逃げ場なし》に次ぐ《養育するピクシー》《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》で使いまわせる除去。    グルールアグロやミラーで効果的な一枚で、特にグルールアグロの先手《心火の英雄》から《多様な鼠》という黄金のムーブに対して《不気味なガラクタ》から《養育するピクシー》で回収して再度《不気味なガラクタ》で綺麗に返せるようになったのは非常に大きいです。    もともと有利なグルールアグロですが、これを落としたくないという気持ちでメインに1枚入れました。  実際大活躍してくれ、プロツアー本戦でもvsグルールアグロの成績は4-1でした。   《荒らされた地下室/解剖室》  主にエスパーピクシーミラーを見た一枚です。  ミラーにおける《解剖室》は影響度が大きく、《養育するピクシー》《孤立への恐怖》を回収しつつこれをバウンスすることで半永久的に使いまわせることができます。 《荒らされた地下室》も《嵐追いの才能》レベル2で回収しても誘発し、出てくるトークンも実はエンチャントなので《呑気な物漁り》も誘発します。    元々は《不気味なガラクタ》をメインに2枚、《荒らされた地下室/解剖室》はサイドに入れていたのですがミラーも見るためにメインに入れたという経緯があります。  結局ミラーマッチは1回しかなく、これを有効に使えた場面もありませんでした。  《不気味なガラクタ》もミラーである程度有効なのでメイン2枚のままにするべきだったなと感じました。   《保安官を撃て》  《喉首狙い》《逃げ場なし》で対処できない《輝晶の機械巨人》《油浸の機械巨人》《激浪の機械巨人》などのアーティファクトかつタフネス4以上のクリーチャーを見て採用。    ……が、これは《喉首狙い》の方が明らかによかったです。  グルールアグロの《雇われ爪》が傭兵なため、これを対処できないデメリットの方が大きく感じました。   ▼サイドボード   《精体の追跡者》2枚  グルールアグロに対しては除去を使いまわしていくコントロールプランを取っていくわけですが、《脚当ての補充兵》《多様な鼠》の新生・《熾火心の挑戦者》の雄姿や《探検するドルイド》などによってこちらにアドバンテージエンジンがないとリソース負けしてしまいがち。    そこに対して《精体の追跡者》でリソース部分をカバーしていくという戦略を調整相手の小林遼平さんから教えていただき、実際にやってみるとかなり好感触。  《逃げ場なし》との両構えをしつつ、相手が《亭主の才能》や《探検するドルイド》でずらしてきたところに《精体の追跡者》を出すという流れが綺麗でした。  特に《一時的封鎖》は相手だけを一方的に追放し、《精体の追跡者》のみが残るという構図は非常に強力。   《喝破》2枚  主にドメインランプに対する一枚ですが、ディミーアミッドレンジなど様々なデッキにも幅広く入る器用な枠です。  ドメインランプの《永遠の策謀家、ズアー》《ミストムーアの大主》《審判の日》をまとめて見られるだけでなく、既に出てしまったパーマネントにも《この町は狭すぎる》で戻して出し直してきた所に《喝破》でカウンターもできます。   《否認》1枚  《嵐追いの才能》で回収出来る確定カウンターが欲しかったため、《喝破》と散らしました。  ドメインランプの《害獣駆除》が軽く《喝破》ケアが容易であるため、これに対してリスクを負わせたいというのもあります。   《邪悪を打ち砕く》2枚  ドメインランプ、エスパーピクシーミラーだけでなく《分派の説教者》などエスパーピクシーの《逃げ場なし》を意識したタフネス4以上のクリーチャーに対する回答でもあります。    《嵐追いの才能》で回収するシチュエーションもありますので覚えておきたいところです。   《不気味なガラクタ》1枚  主にグルールアグロへの一枚ですが、ミラーでも有効です。  次回があればメインの《荒らされた地下室/解剖室》と入れ替えたいところです。  《養育するピクシー》《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》といったセルフバウンスで使いまわせる除去でもあり、起動能力によってマナフラッド受けにもなります。    特に諜報でスペルを落としておいて《嵐追いの才能》で回収するという動きは占術である《望み無き悪夢》に出来ない部分です。   《一時的封鎖》2枚  グルールアグロおよび召集に対する全体除去。  こちらの《望み無き悪夢》《不気味なガラクタ》《逃げ場なし》ごと閉じ込めておくとセルフバウンスで使いまわせるのは覚えておくべき点ですね。    《脚当ての陣形》《邪悪を打ち砕く》による裏目も強く、ミラーにも入る《害獣駆除》と枠を争う形ですが、《精体の追跡者》との組み合わせがとにかく強いためセットでの採用になりました。   《勢い挫き》1枚  《不気味なガラクタ》と同じく霊気走破での新戦力。使いまわせる布告が最大の魅力。  《名もなき都市の歩哨》《分派の説教者》といったタフネス4以上クリーチャーに対するアンサーでもあります。  エンジン始動も《望み無き悪夢》でのライフロスト、《養育するピクシー》《孤立への恐怖》の飛行クロックによって上昇しやすくライフゲインもダメージランドを多用するこのデッキにおいては沁みます。    主にグルールアグロに入れますが、《分派の説教者》を擁するゴルガリや青黒ミッドレンジなどにも入ります。   《ゴバカーンへの侵攻》2枚  ドメインランプへの対応策を探していたところ、小林遼平さんが発見した一枚。  《魂の洞窟》絡みの《ミストムーアの大主》と《審判の日》に両方対応できつつ、実は裏面がエンチャントにもなります。  《強情なベイロス》に対するアンサーの一つでもあり、これで前方確認した後に《望み無き悪夢》を出していくという動きもできます。    ドメインランプにしか入りませんが、感触の良い一枚でした。   《安らかなる眠り》2枚  各種眼魔、アゾリウス全知など墓地利用全般への対応策。  《嵐追いの才能》で《この町は狭すぎる》を回収するコントロールプランが出来なくなるのが最大の欠点であり、《除霊用掃除機》も検討しましたが消したいカードが複数あっても問答無用で追放するこれに落ち着きました。    地味にエンチャントでもあるので《呑気な物漁り》が誘発するのもポイント。   ▼Tips 適切なアクションを考える  こちらが先手、相手のデッキは不明。初手は1回マリガンした後の6枚としましょう。  ぱっと見ると違和感による誘発を最大限に活かすために《呑気な物漁り》から出したくなりますが、これは《嵐追いの才能》が正解であることが大半です。    なぜならば《呑気な物漁り》スタートだと2ターン目で《孤立への恐怖》は戻すものがないため唱えられないからです。  ファストランドを戻すこともできますが、その場合だと3枚目の土地を引いた時の《嵐追いの才能》《喉首狙い》のダブルアクションができなくなるデメリットの方が大きくなります。    後手の相手が1マナクリーチャーを出して来たら《喉首狙い》で除去はできますが、赤系アグロでない限りは出してこないケースが大半です。  そうすると消去法的に《嵐追いの才能》になるわけですが、そうすると1マナ余ってしまいテンポが悪いですし盤面もやや弱めです。  さらに3枚目の土地を引けなかった場合、《孤立への恐怖》で《嵐追いの才能》を戻してそのままダブルアクションも出来ない恐れがあります。  《嵐追いの才能》からスタートすることで《孤立への恐怖》へと繋がりつつも、3ターン目には《呑気な物漁り》+《嵐追いの才能》のダブルアクションが確定します。  また、3枚目の土地が引けているならば《呑気な物漁り》+《喉首狙い》でブロッカーをどかしつつライフを詰めていくのもよしと選択肢の幅が広がります。    ちゃんとマナを使い切る・ダブルアクションをしていくことを意識するだけでも大きく違うので意識していきましょう。   ファストランドの受け入れを考える    このエスパーピクシーではファストランドが3種4枚ずつの合計12枚が入っています。土地の総数としては23枚であり、半数以上を占めている割合です。  テキストを読み上げるようですが、このファストランドは「4枚目以降の土地」として置くとタップインします。これを意識してあえて3枚目の土地を置かないという行動が肯定される場面があります。    例として、相手はグルールアグロで戦場にはこの4枚があるとしましょう。相手の盤面は更地です。  手札には下記の4枚。  《コイロスの洞窟》を置いてしまいがちですが、私は置きません。  前提として、この手札では《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》の青いカードが2枚浮いており、青マナの土地を引くとダブルアクションが取れる状態です。    《コイロスの洞窟》を置いてしまうと青絡みのファストランドである《闇滑りの岸》《金属海の沿岸》がタップインになってしまうため、《アダーカー荒原》《地底の大河》の2種類のみしかダブルアクションが取れなくなります。  このリストでは《アダーカー荒原》2枚、《地底の大河》3枚の合計5枚で受け入れ枚数が非常に少なくなってしまいます。  一方で置かなかった場合、ファストランドがアンタップインになるため、《闇滑りの岸》《金属海の沿岸》の合計8枚も受け入れとして考えられるようになります。ダメージランドの5枚と合わせると合計13枚ですね。    先述した2+2のダブルアクション、つまり《孤立への恐怖》や《この町は狭すぎる》から《逃げ場なし》は出来なくなりますが、《不気味なガラクタ》はプレイできます。 さらに次のターンでは手札の《コイロスの洞窟》を置くことで2+2のダブルアクションができるようになります。    これらを考え、アンタップインの青マナ土地を置ける確立を大幅に上げるために3枚目の土地として《コイロスの洞窟》は置かない……というわけです。    細かく動けるデッキであるため、このように土地の置き方によって勝率が大きく変わってきます。  土地は毎ターン置かねばならないということはもはや常識ですが、その常識を一旦疑ってみるのも大事です。   ▼マッチアップガイド vsグルールアグロ  《不気味なガラクタ》《逃げ場なし》の除去を使いまわせることから有利マッチですが、《多様な鼠》+《巨怪の怒り》が絡むと一瞬で負けうるので慎重にやらねばなりません。    キープ基準としては当然ながら《不気味なガラクタ》《逃げ場なし》といった除去になりますが、先手で《呑気な物漁り》《悪意ある呪詛術士》《養育するピクシー》《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》というような初手であればダメージレースで勝ちうるためキープできます。  後手だとダメージレースを制するのは難しいためマリガンで考えますが……  ゲームプランとしては基本的に除去を使いまわしてコントロールしていきますが、除去ばかりしていては《脚当ての補充兵》《多様な鼠》の新生によっていずれリソース負けしてしまいます。  ですので、除去しつつも《嵐追いの才能》のカワウソトークンや《養育するピクシー》などでクロックを刻んでいき、ダメージレースしていくという方向性になります。  《巨怪の怒り》だけ気を付けて細かく除去していきながら、盤面有利を作り出して押し切るという流れを作るといいでしょう。   ▼サイドアウト-3《悪意ある呪詛術士》-1《荒らされた地下室/解剖室》-2《悪夢滅ぼし、魁渡》   ▼サイドイン+2《精体の追跡者》+1《不気味なガラクタ》+2《一時的封鎖》+1《勢い挫き》    サイド後でも依然として除去を使いまわすコントロールプランになります。  相手は《脚当ての陣形》《探検するドルイド》を増量してくることから土地を立たせてターンを返し、こちらの除去をかわそうとしてきます。    それを逆手に取って《精体の追跡者》を出し、そのまま《望み無き悪夢》《嵐追いの才能》《孤立への恐怖》などによってリソースを稼いでいけば勝利は目前です。  《一時的封鎖》についても2マナ立っているところには極力出さないようにすることを心掛けておきましょう。    ただし、最近は《陽背骨のオオヤマネコ》プランを取ってくる事が多く、ライフを詰められると明確な時間制限が発生するため以前ほど有利ではなくなってきます。  要所要所でちゃんと相手のライフをコツコツと削り、ライフレースを制していく意識が必要です。   vsドメインランプ  微不利マッチです。  とにかく《呑気な物漁り》《嵐追いの才能》《悪意ある呪詛術士》などの1マナクリーチャーを繰り出し、《望み無き悪夢》も絡めて早期決着を目指していく形となります。    これに対する《害獣駆除》が致命的な敗着になってしまいますが、デッキのマナベース的に2~3ターン目に《害獣駆除》をされる確率は低いため割り切ってしまった方がよいです。    キープ基準については上記にも記載した通り1マナのクリーチャー群。クロックがなければ始まりません。  《呑気な物漁り》+エンチャント類がとにかくキー。どんどんクロックを重ねていきましょう。   ▼サイドアウト-4《逃げ場なし》-1《荒らされた地下室/解剖室》-1《不気味なガラクタ》-1《悪意ある呪詛術士》   ▼サイドイン+2《喝破》+1《否認》+2《邪悪を打ち砕く》+2《ゴバカーンへの侵攻》    サイドではカウンターと《邪悪を打ち砕く》によってある程度ゲームを急がなくても良くなります。  それでも攻める立場である事に変わりはなく、クロックを用意した上でカウンター類と《邪悪を打ち砕く》で相手のアクションに対応していきたいところです。    2マナ浮きで《永遠の策謀家、ズアー》を唱えられた際、《ホーントウッドの大主》等がある場合は解決前に《邪悪を打ち砕く》で先に破壊しておくことを勧めます。  《永遠の策謀家、ズアー》の起動にスタックで《邪悪を打ち砕く》をできればよいのですが、相手もそれは織り込み済であることを忘れてはいけません。    とはいえ先に《永遠の策謀家、ズアー》に対して《邪悪を打ち砕く》で処理してしまうパターンもあるので、ケースバイケースではあるのですが……   vsエスパーピクシー  どの程度ミラーを意識しているかで変わってきます。  相手が《分派の説教者》まで採用しているとやや不利です。    お互いに除去し続けるため、長期戦になりがち。  先に《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》パッケージが揃った方が勝ちになりがちですが、この動きをするためには6マナ必要で大振りなので先に揃われたとしてもこの隙を突く事で勝ちをもぎ取れる時もあります。  《嵐追いの才能》レベル2に合わせて《この町は狭すぎる》で大きくテンポを取れますが、その逆も然りなので覚えておきましょう。    《逃げ場なし》が主な除去になるため、《呑気な物漁り》で《孤立への恐怖》に+1/+1を乗せ、タフネス4を作ることは意識しておきたいポイントです。  《養育するピクシー》《悪意ある呪詛術士》に+2/+2を載せていくのも良いです。もちろん《逃げ場なし》に気を付けながらやっていきましょう。   ▼サイドアウト-2《悪夢滅ぼし、魁渡》-1《保安官を撃て》-1《喉首狙い》-1《悪意ある呪詛術士》 ▼サイドイン+2《邪悪を打ち砕く》+1《不気味なガラクタ》+1《喝破》+1《精体の追跡者》    相手の構成やサイドプランによって変わってきます。  《悪夢滅ぼし、魁渡》については忍術先が定着しづらく、《逃げ場なし》もあり《邪悪を打ち砕く》で対処されがちなため基本的に抜いています。  後手であれば《悪意ある呪詛術士》をもう少し減らしますし、ケースバイケースといったところです。    サイド後でも方針は変わりませんが、お互いに《邪悪を打ち砕く》がある点については留意すべき事項です。  《嵐追いの才能》レベル2に合わせて《邪悪を打ち砕く》をされるのが最悪のパターンなので、ここは必ずケアしましょう。    上記の内容はマスとんの皆様との指名対戦を重ね、調整相手である小林遼平さんと話し合ってゲームの争点やゲームプランなどを確立させていったものです。    その成果もあり、本戦の結果としては5-3の勝ち越し!  特に得意なマッチアップとするグルールアグロで4-1できたのが非常に大きく、練習の成果を感じました。(逆に言えばそれ以外のマッチは1-2ですが……)    この場を借りてマスとんの皆様に感謝を申し上げます。  本当にありがとうございました。   ▼今後のエスパーピクシーについて  ここまではプロツアー前のエスパーピクシーの話。  現在はコンボマスターことcftsoc3さんが3月2日にメイン《食糧補充》《分派の説教者》《ベイルマークの大主》を採用してスタンダードチャレンジで優勝したことをきっかけに変化が訪れています。    大きな相違点としては《呑気な物漁り》および《悪意ある呪詛術士》の不採用ですね。  これによってアグロプランが取りづらくなった代わりにミッドレンジとしての太さが備わり、《嵐追いの才能》+《この町は狭すぎる》による長期戦の強さが際立っています。  抜けたこの2枚もグルールアグロやエスパーピクシーミラーではサイドアウト候補であり、その分これらに対して優位に立てる構成となっています。  ここから発展してオータム・バーチェットさんは《悪夢滅ぼし、魁渡》をサイドボードに移した上でメインから《食糧補充》4枚・《鋼と油の夢》3枚、果てには《ギックスの命令》まで採用したエスパーピクシー・コントロールと呼んでも差し支えない構成を作り上げています。  1マナ域が減り《害獣駆除》や同型に対してより強くなっている一方、ドメインランプに対してライフを詰め切るというプランが取りづらくなっており相性が悪化しているように思います。  その一方で従来の《呑気な物漁り》《悪意ある呪詛術士》を採用した型もスタンダードチャレンジなどで上位につけています。  どの構成にもメリットとデメリットがあり、メタに応じて使い分けていくことになるでしょう。    以上がプロツアー旅行記から始まり4本の記事と長くなってしまいましたが、私が初プロツアーにおいて調整してきた過程になります。  これが皆様のマジック道において一つのご参考にでもなれば幸いです。    これほどまでに真剣に調整をしてきたのは初めてで、体力的にも精神的にも大変でしたがコツは掴めたような気がするので今後の機会に活かしていきたいところです。  こうした調整も含め、プロツアーという大会を通してマジック:ザ・ギャザリングを心の底から楽しめたと思えました。    「Let's Enjoy Magic」を胸にこれからも楽しんでいきます!!

【今週のピックアップデッキ】ディミーアコントロール/エスパーレジェンズ/純鋼ストーム

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.03.14

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ ディミーアコントロール エスパーレジェンズ 純鋼ストーム   ディミーアコントロール スタンダードチャレンジ : 7位 By TheSandwichKing MTGアリーナ用インポートデータ 現在のスタンダード環境は、エスパーピクシーに各種赤アグロとアグロ全盛期。 とはいっても、ミッドレンジとしてはズアーやゴルガリ、コンボならアゾリウス全知と、どのアーキタイプもメタ上位に存在しています。 一方コントロールデッキはというと、一時は死んでいるとまで思われていたのですが、プロツアー『霊気走破』で活躍し、今ではメタの一角にまで上り詰めました。   それがアゾリウスコントロール。リソース源として《食糧補充》を採用し、打ち消しを少し入れ、除去は《審判の日》、フィニッシャーには《完成化した精神、ジェイス》と、古典的なドロー・全体除去・フィニッシャーのアゾリウスコントロールです。 ここまで読んでお気づきになった方もいるのではないでしょうか?   実はこの青で打ち消してドローして、白で全体除去を打ち、フィニッシャーを叩きつける。この動きは青白だけでなく、青黒でもできてしまうのです!   というか、除去に関しては白より黒の方が良質です。白の2マナの除去は《全損事故》と、タップ状態のクリーチャーにしか使用できませんが、黒ならば問答無用で破壊する《喉首狙い》に《悪夢滅ぼし、魁渡》にも触れる《シェオルドレッドの勅令》、更に1マナの《切り崩し》とよりどりみどり。 《全損事故》はやはりタップ状態のクリーチャーにしか打てないのはかなりのデメリットです。構えていることが見え見えなので、相手はケアして攻撃しないことが容易ですし、《逸失への恐怖》などのシステムクリーチャーにも触りづらい。《喉首狙い》なら先手2ターン目に構えて、相手が出してきた2マナクリーチャーを破壊し、自分のターンで安全に《食糧補充》を打てますからね。 《審判の日》こそ青黒にはありませんが、その代わりに《死人に口無し》を採用できるのはむしろ良いことかもしれません。ただの全体除去である《審判の日》と違い、《死人に口無し》は証拠収集で墓地のカードをライブラリーからすべて抜けるので、アゾリウス全知から《全知》をすべて抜くなど、本来全体除去が効かないマッチでも機能する、素晴らしい全体除去なのです。 打ち消しは少し青白には劣ります。何せ青白には《喝破》がありますからね。コントロールフリークが十年以上も再録を待っている《マナ漏出》の上位互換を青白に与えるなんてずるいですよね。 とはいえないものは仕方ないので、《否認》《三歩先》でなんとか打ち消し枠を埋めています。   《強迫》は青黒だけの強み。事前に《豆の木をのぼれ》を抜いてしまえば実質打ち消しのようなものですし、赤アグロに対しても《巨怪の怒り》などを抜きつつ、手札を見ることでプレイがしやすくなるので、使いやすいカードです。 そしてなんといっても《油浸の機械巨人》!このカードはディミーアコントロールを語る上で欠かせません。 コントロールが求めるサイズの大きな絆魂。エスパーピクシーの《逃げ場なし》に耐えつつ、《この町は狭すぎる》で戻されても、出し直して手札破壊として使用できるので、特に青黒バウンス系のデッキに強いカードです。 もちろん、赤アグロに対しても強力です。手札を見て1枚を抜けるので、《巨怪の怒り》などがないかをチェックしつつ、《魔女跡追いの激情》を抜いて安心してブロッカーとして立たせられます。   青白の《激浪の機械巨人》はコントロールに採用しづらい能力ですが、《油浸の機械巨人》はぴったり。4枚目も検討したくなりますね。   《油浸の機械巨人》が入ったとはいえ、フィニッシャーが《完成化した精神、ジェイス》である点は変わりません。青白も青黒もフィニッシャーが《完成化した精神、ジェイス》になったのは、決してズアーを意識した結果ではありません。 現在のスタンダードにはコントロールで採用できる絶対的なフィニッシャーがいないため、《完成化した精神、ジェイス》を大量に採用しているのです。   絶対的なフィニッシャーとは、生き残るだけでゲームに自動的に勝ったり、速やかにゲームを終わらせられる性能を持つ重いカードです。たとえば《ドミナリアの英雄、テフェリー》は、出してカードを引いているだけでゲームに勝利しますし、《船砕きの怪物》は呪文がすべて通らなくなり、ブロッカーはバウンスされ、7/8がすぐにライフを削り切ります。他には《夢さらい》などでしょうか。 今のスタンダードには、このレベルの強さのフィニッシャーはいません。そこで2枚引けば大体の状況でゲームに勝てて、相手の除去も受けることのない《完成化した精神、ジェイス》が採用されることとなったのです。   エスパーピクシーや赤アグロ相手にもコントロール側は《完成化した精神、ジェイス》をフィニッシャーとします。適当に重いフィニッシャーを出して4回殴るより、《完成化した精神、ジェイス》を複数枚出して相手のライブラリーを削りきる方が簡単なのです。   コントロールデッキを調整する時、まず減らしがちなのが《完成化した精神、ジェイス》だと思いますが、少なくともメインでは4枚の《完成化した精神、ジェイス》を使った方が良いと思います! アゾリウスコントロールに続いてディミーアコントロールも登場し、いよいよスタンダードのコントロールにもバリエーションが生まれました。   環境が成熟していくほど強くなるコントロール、ここからの成長に期待です。     エスパーレジェンズ パイオニアリーグ : 5-0 By  Heilagur MTGアリーナ用インポートデータ 長きにわたってスタンダードで活躍し続けた《策謀の予見者、ラフィーン》。パイオニアでその力を見せつける時がついにやってきました。 エスパーパルへリオンなど、ディスカード手段として採用されることはあったものの、《策謀の予見者、ラフィーン》がメインになるデッキはこれまでパイオニアには存在しませんでしたが、このデッキはエスパーレジェンズ!主役はもちろん《策謀の予見者、ラフィーン》です。   さて、このデッキはレジェンズの名の通り、エスパーカラーの伝説のクリーチャーで構成されています。   1マナ域は良質なサイズの《アクロスの英雄、キテオン》と、クリーチャーを守る《離反ダニ、スクレルヴ》。どちらも定番の強力な伝説たち。 2マナ域の2種はどちらも青黒で、少し珍しいカードが並んでいます。   スタンダードでも使用可能な《闇の中の研究者、ナシ》はリソースを獲得するクリーチャー。こちらは攻撃が通った際に伝説のカードやエンチャントを切削した中から加えられます。このデッキには伝説のパーマネントとエンチャントがたっぷり入っているので、攻撃が通るだけで一気に2~3枚のカードを得られることも。 《顔を繕う者、ラザーヴ》は攻撃するたびに墓地を追放して手がかりを生み出す、こちらもリソースが取れるクリーチャーです。更に手がかりを生け贄に捧げることで、《顔を繕う者、ラザーヴ》を追放したクリーチャー・カードのコピーにできるので、墓地に落ちた《策謀の予見者、ラフィーン》などになることができます。 ただ、それだけでは《顔を繕う者、ラザーヴ》の力は半分しか引き出せていません。《老いざるメドマイ》によってその真価を発揮します。 《老いざるメドマイ》は初めて見た方も多いかもしれません。プレイヤーに戦闘ダメージを与えると追加ターンを獲得し、追加ターン中には攻撃できないこのカード。6マナと通常プレイは重いこの伝説のスフィンクスが、《顔を繕う者、ラザーヴ》と組み合わさってコンボになります。   《顔を繕う者、ラザーヴ》で《老いざるメドマイ》を追放し、手がかりを生成してそれを生け贄にして《顔を繕う者、ラザーヴ》が《老いざるメドマイ》になると追加ターンを得ます。   そして追加ターン中は《顔を繕う者、ラザーヴ》は当然攻撃可能となり、再び墓地を追放して手がかりを出し、それを生け贄にして再び《老いざるメドマイ》になり、また追加ターンを獲得。つまり、墓地にカードがある限り、追加ターンがずっと続くことになります。 さて、そもそもエスパーレジェンズで組む意義はなんでしょうか?スタンダードでは3色をすべてアンタップインで出すために《英雄の公有地》を採用する必要があり、そのためにレジェンズでした。しかしパイオニアでは《闇滑りの岸》などのファストランドと《神無き祭殿》をはじめとしたショックランドが使えるため、《英雄の公有地》頼りではありません。 ならばなぜレジェンズにこだわるのか?それは《モックス・アンバー》です。掟破りの0マナファクトによる爆発的な展開が可能になるのが、エスパーレジェンズ最大の魅力!《アクロスの英雄、キテオン》から2ターン目に《策謀の予見者、ラフィーン》なんてことも容易にできてしまうのです。 《戦闘研究》も忘れてはいけません。普通に使うだけで《好奇心》ですが、エンチャント先が伝説なら+1/+1に護法(1)と超破格! 加えて呪禁付与の《破片魔道士の救出》に対赤アグロの最終兵器《幽霊による庇護》と、クリーチャーを守ることに徹底しているのがこのエスパーレジェンズ。《離反ダニ、スクレルヴ》も合わせると《策謀の予見者、ラフィーン》を倒すのは至難の業でしょう。 《策謀の予見者、ラフィーン》を再び輝かせたい方はこのデッキに決まり!     純鋼ストーム モダンリーグ : 5-0 By SoggyCheerios ストーム。コンボの代名詞とも言えるこのアーキタイプは、かつてのスタンダードにも存在し、レガシーやモダンでは黎明期からずっとメタゲームを脅かしています。 現在ストームと呼ばれて真っ先に思い浮かぶのはルビーストームですが、一昔前に一世風靡したストームデッキがモダンにはありました。   それが純鋼ストームです。   今でこそ《死の国からの脱出》《研磨基地》で実現可能な脱出基地がいるため、珍しくなくなってしまった2ターンキルですが、当時は「2ターンキルできるすごいデッキが出てきた!」と世のコンボ好きは純鋼ストームに注目していました。   その後、長い間すっかり名前を見なくなってしまった純鋼ストームでしたが、最大の相棒……というよりコンボパーツである《オパールのモックス》が解禁されたことで、モダンについに帰ってきました。 デッキ名を冠する《純鋼の聖騎士》が当然キーカード。装備品が戦場に出るたびに1ドローするハンマータイムでもお馴染みのクリーチャー。あちらでは《巨像の鎚》を0マナで装備するのがメインの仕事でしたが、純鋼ストームではドローの方が重要となってきます。 このデッキのアーティファクトを見てください。名前も能力も知らない装備品たちがあります。これらの能力は一旦無視して、マナコストだけを見ましょう。   0マナです。《純鋼の聖騎士》がいればタダで1ドローできるのです。こうして0マナ装備品を大量に出してドローしていき、《撤収》《ハーキルの召還術》で手札に戻し、再び出し直す。こうして大量にカードを引いていき、最終的に《ぶどう弾》で相手のライフを一撃で削りきる。これが純鋼ストームの基本の動きです。 《オパールのモックス》解禁前は《撤収》を打つためのマナを捻出するのがとにかく大変でした。《極楽のマントル》を《純鋼の聖騎士》に0マナで装備してマナを出しても1マナしか増えないので、《羽ばたき飛行機械》と合わせて採用する必要があり、不純物が大量に入ってしまっていました。マナの問題を《オパールのモックス》が解決してくれたので、2ターンキルがかなり現実的に可能なラインになっています。 《河童の砲手》の採用は目から鱗でした。0マナのアーティファクトを並べれば《河童の砲手》の着地は用意ですし、《河童の砲手》を出してから0マナ連打で一瞬でゲームも終わります。 《撤収》《ハーキルの召還術》では《河童の砲手》も手札に戻ってしまいますが、《河童の砲手》を唱える→スタックで《撤収》《ハーキルの召還術》で0マナアーティファクトを戻せば、即席で使用した0マナ装備品を回収しつつ、《河童の砲手》を戦場に送り出せます。 以前までの純鋼ストームは一度コンボをスタートさせた後は、《ぶどう弾》で相手のライフを削りきるまでコンボが途切れないのを祈るしかありませんでした。《撤収》《ハーキルの召還術》で装備品を出し直すループは、カードは引けますがマナは増えないので、最終的に《ぶどう弾》とそれを打つマナ(追加の《オパールのモックス》など)をしっかり引き込む必要があり、止まるリスクもそこそこあったのです。 しかし、《河童の砲手》によってその憂いはなくなりました。コンボが止まってしまいそうでも《河童の砲手》さえ途中で出しておけば、コンボが途切れた時には致死量に近いサイズの《河童の砲手》が戦場にいるはずです。《溶岩拍車のブーツ》で速攻をつけて攻撃することもでき、勝利に必要な条件がかなり緩くなったのです。 これまで0マナの装備品たちを活かす手段がなかった純鋼ストームにとって、《河童の砲手》は最高の相棒です。   2ターンキルするデッキが更に環境に増え、モダンはますます恐ろしくなっていきますね。

【週刊メタゲーム通信】アメリカでは脱出基地が大暴れ!一方シドニーでは…無色エルドラージ!?

2025.03.13

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   先週末はアメリカとオーストラリアでそれぞれ地域CSが開催!   早速最新メタゲームを分析していきます!   目次 メタゲーム 脱出基地 ホロウワン 無色エルドラージ メタゲーム アメリカ 優勝:脱出基地2位:脱出基地3位:ボロスエネルギー4位:脱出基地5位:脱出基地6位:アミュレットタイタン7位:脱出基地8位:脱出基地 アメリカ 優勝:無色エルドラージ2位:ホロウワン3位:脱出基地4位:脱出基地5位:ディミーアマークタイド6位:無色エルドラージ7位:エルドラージランプ8位:ディミーアマークタイド   まずは圧倒的な脱出基地の勝率! 参加者1000人超えの大型大会となったアメリカではトップ8に6人の脱出基地が残り、オーストラリアでも2人。最強のデッキと言われ、メタられる立場となり続けても、高い勝率を誇っています。   特に脱出基地はアーティファクト・エンチャント破壊、墓地対策など、あらゆる対策カードが突き刺さるデッキ。ボロスエネルギーと違い、アンチカードが大量に存在するデッキであるにも関わらず、ここまで勝ち続けられるのは、脱出基地が本物のデッキであるという証明に他なりません。   そんな最強のデッキの対抗馬となっているのは、モダン最強の一角と言われていたボロスエネルギー。 本大会でトップ8にも入賞しているボロスエネルギーは、全体の勝率で見ても脱出基地に勝ち越している他、このトップ8入賞プレイヤーも対脱出基地に6勝2敗となっております。   早いクロックと対策カード、更にメインからの《イーオスのレインジャー長》によって脱出基地には有利なデッキとなっているボロスエネルギーは、今注目のデッキの1つです。 脱出基地とエネルギー、そしてアミュレットタイタンと言わずと知れた強デッキたちがトップ8を独占したアメリカとは対照的に、興味深い結果となったのがオーストラリアの地域CS。   トップ8に2人が残り、更に1人が優勝した無色エルドラージは、これまでに見たことがないデッキで、本大会で誕生したデッキです。 更にたびたび地域CSには登場するものの、勝ちきれなかった印象のあるホロウワンも準優勝を収めており、そのポテンシャルを世に知らしめました。   ボロスエネルギー SCG CON Charlotte : 3位  By Joe Leo 脱出基地の海を泳いで勝ち進んだボロスエネルギー。最後は脱出基地に敗北してしまい、夢潰える形となってしまいましたが、十分な成果と言えるでしょう。   『モダンホライゾン3』発売後のモダンの歴史を語る上で、このボロスエネルギーは欠かせません。   《魂の導き手》《オセロットの群れ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》《色めき立つ猛竜》《火の怒りのタイタン、フレージ》の『モダンホライゾン3』5人衆で突如モダン環境に現れた怪物。しかし、《有翼の叡智、ナドゥ》という真の化物に最強の座を奪われてしまいました。 その後、《有翼の叡智、ナドゥ》が禁止となり、ボロスエネルギーはモダン環境を大暴れします。その結果、《湧き出る源、ジェガンサ》《色めき立つ猛竜》《一つの指輪》の3種の禁止を出す結果となりました。 しかし、これで止まらないのがエネルギーの恐ろしさ。そもそもエネルギーの強さの根幹を支える部分は、デッキ外リソースの《湧き出る源、ジェガンサ》でもなければ、リソースを大量に稼ぐ《一つの指輪》でもなかったのです。 《オセロットの群れ》《魂の導き手》《ナカティルの最下層民、アジャニ》による最序盤からの上質なクリーチャーたちによるビートダウン、そして諜報ランドと《火の怒りのタイタン、フレージ》による中盤からの打点。これらの展開が非常に早く、かつ安定していることこそが、ボロスエネルギーの強みだったのです。 この部分にメスが入っていないボロスエネルギーは、禁止改訂後も活躍を続け、長くトップメタに君臨していました。   そのメタゲーム事情が変わったのがここ数週間。脱出基地がだんだんとその数を増やして勝ち続け、エネルギーは減る一方に。   しかし、これで終わるわけではないのがボロスエネルギー。何せデッキの根幹が強力なため、残りの自由なスロットでメタゲームに応じてデッキを組み換えられるのです。   このリストは脱出基地を強く意識した作りとなっています。それが顕著なのが、メイン4枚の《イーオスのレインジャー長》です。 脱出基地相手に盤面で有利を取るのは容易なので、《オセロットの群れ》《魂の導き手》をさっさと並べて《イーオスのレインジャー長》で蓋をする。これが主な勝ち手段となります。 サイド後も《石のような静寂》《オアリムの詠唱》《摩耗+損耗》と大量の対策カードが入ります。 これらの対策カードを見て気づく点としては、サイドから入ってくるであろう《アノールの焔》をしっかりと警戒していることでしょうか。《ドラニスの判事》をサイドボードに入れたくなってしまうところですが、クリーチャーによる対策は《アノールの焔》で2ドローされながら焼かれるので、あまり頼れないのです。 一方、《石のような静寂》は《自然の要求》でしか対処できませんし、《損耗+摩耗》は《ウルザの物語》《研磨基地》《死の国からの脱出》を破壊できる強力な置物破壊。いずれも相手のサイドボード後に影響なく力を発揮できます。 脱出基地のサイド後は《紅蓮地獄》などの全体除去が入ってくることもありますが、ボロスエネルギー側はそこも織り込み済み。サイド後は《オセロットの群れ》などの軽く横並びするクリーチャーを減らし、《火の怒りのタイタン、フレージ》《栄光の闘技場》で相手のライフを一撃で削るゲームプランを取ります。 大量の対策カードを入れて、諜報ランドでそれらを探しながら墓地を肥やし、相手が対処不能の《火の怒りのタイタン、フレージ》で勝利。このボロスエネルギーのサイドプランに対し、やはり脱出基地側は対策カードを用意していません。   サイド後に脱出基地がどんなカードをサイドボードと入れ替えて、どんなゲームを展開してくるのか。それを的確に予想し、効果のないサイドボードプランを取ることが可能となっているのです。   脱出基地キラーとして見事トップ4まで勝ち進んだ、素晴らしいボロスエネルギーです。   ホロウワン ANZ Super Series Cycle 8 : 2位 By Nicholas Talbot そのデッキ名の通り、《虚ろな者》を主軸に据えたラクドスカラーのビートダウンデッキ、ホロウワン。   カードを1枚捨てるごとに2マナ軽くなる《虚ろな者》は、カードを3枚捨てると0マナでキャストできるようになります。そのため、1ターン目に《燃え立つ調査》を唱えれば《虚ろな者》を複数体並べることも可能です。 そんな《虚ろな者》は禁止改訂によって《信仰無き物あさり》を手に入れて、大幅に強化されました。《燃え立つ調査》は0マナで《虚ろな者》を出せる代わりに、捨てるカードはランダムですからね。《虚ろな者》が捨てられて悲しむ展開もありません。 そして最新セットでホロウワンは更に《略奪するアオザメ》を手に入れました。カードを捨てるたびにそれと同じ数の+1/+1カウンターが乗る凄まじい能力を持っています。以前はこのスロットに《炎刃の達人》が入っていたことを考えると、ものすごい進化です。エンド時までプラス修正だったものが、そのままカウンターとなるのですから。 《探偵のフェニックス》はホロウワンで最も輝くカード。《虚ろな者》《通りの悪霊》は5マナと重くどちらも墓地に落ちやすいので、証拠収集6という重い条件をあっさりクリアできるのです。 《虚ろな者》《略奪するアオザメ》《ネザーゴイフ》とこのデッキのクリーチャーはスタッツは優れている一方、回避能力はありません。そのため《探偵のフェニックス》による飛行付与は非常に強力で、突然致死量の打点を出してくれるのです。 面白いのは《オークの弓使い》。実は《新たな夜明け、ケトラモーズ》の影響により需要が上がっているカードですが、ホロウワンではプチコンボも内蔵されています。 そう、《燃え立つ調査》です。《オークの弓使い》を出している状態で相手に3枚引かせて3点……と望まないオークを誘発させることができます。 以前からホロウワンは存在していましたが、《信仰無き物あさり》によってランダム要素が少なくなり、爆発的な展開を毎ゲーム起こしやすくなりました。《逸失への恐怖》の昂揚、《探偵のフェニックス》の墓地からの証拠収集など、噛み合わないと弱いカードが多いホロウワンをまとめ上げたのは、やはり《信仰無き物あさり》。このカードの解禁は大きすぎますね。 かつて強すぎて次世代のマジックと呼ばれていたホロウワンは、『モダンホライゾン3』でも置いていかれることはなく、現代モダンの最前線でも活躍しています。   無色エルドラージ ANZ Super Series Cycle 8 : 優勝 By Thomas Bot オーストラリアの台風の目となったのがこの無色エルドラージ!なんと会場に2人でトップ8に2人!そして1人が優勝と、素晴らしい戦果をあげています。   このデッキの一番の強みは脱出基地に強い点でしょう。《虚空の杯》《大いなる創造者、カーン》の8枚によって脱出基地のコンボを防ぐことができます。 これまではエルドラージは緑型のランプが主流でした。《楽園の拡散》《まき散らす菌糸生物》でマナを伸ばし、《邪悪鳴らし》で墓地を肥やし、最終的には《約束された終末、エムラクール》でゲームエンドというのが緑型のエルドラージランプ。 一方、無色エルドラージは全く違うゲーム展開となります。4枚の《オパールのモックス》から2ターン目に4マナを生み出して《大いなる創造者、カーン》を出したり、《ウルザの物語》の2ターン目起動など、マナを伸ばすというよりは、早いターンで少し多いマナを出して脅威を展開するのが無色エルドラージです。 《まばゆい肉掻き》はレガシーのエルドラージではお馴染みのクリーチャー。無色の呪文を唱えるたびに落とし子を生み出し、無色のクリーチャーが出ると1点のダメージを与えるエルドラージ。このカードは、大量に0マナのカードを採用する理由になります。 《エルドラージの寺院》《ウギンの迷宮》から2ターン目に《まばゆい肉掻き》を出して《オパールのモックス》《ミシュラのガラクタ》と展開すれば、落とし子が2体出て2点、更に次のターンにはセットランド+《コジレックの命令》X=4以上と、3ターン目にして凄まじい展開を作り出せます。 《オパールのモックス》《ミシュラのガラクタ》など大量の軽いアーティファクトが入っているので、《神秘の炉》が運用しやすいのも魅力的です。緑型のエルドラージランプはマナを伸ばして重いカードを出すデッキなため、《神秘の炉》で大量にカードをめくるのは難しいですが、この無色エルドラージなら容易です。 《まばゆい肉掻き》も《神秘の炉》と組み合わせることでより強力となります。《神秘の炉》でカードをプレイし、《まばゆい肉掻き》でトークンを出しつつダメージを与え、その落とし子トークンでマナを出してライブラリートップのカードを唱え続けます。そうしていくうちに《まばゆい肉掻き》が増え、そのまま相手のライフを削りきれるのです。 ランプに比べてコンボ要素が強く、また重いカードがさほど入っていないため、《溶鉄の雨》が効きにくいのも特徴です。 同じエルドラージではあるものの、無色エルドラージとエルドラージランプは別のデッキです。脱出基地により強いのは間違いなくこの無色エルドラージで、反面エネルギーなどには少し弱いので、今のメタゲームに適したデッキと言えます。   その力を存分に発揮してオーストラリアを制しました!これからメタデッキの一角となるのか、注目ですね。

へいかの『霊気走破』ドラフト攻略ガイド

2025.03.11

Akira Kobayashi

 皆さん、こんにちは! 「へいか」こと 小林 輝(@enzyutuheika)です。    今回は『霊気走破』ドラフトの記事になります!    初プロツアーに出場する上で重要なのはこのプロツアーに向けてどう調整していくかです。  プロツアー「霊気走破」のフォーマットはスタンダードに加えてドラフト。  特にプロツアーという舞台での卓ドラフトは未知の領域で、そもそも卓ドラフトの経験も数えるほどしかありませんでした。    そんなある時、私の友人であり、リミテッドにおいて屈指の実力を持つ道民さん(@doumin0)が私の白単コントロールの記事をご拝見いただき、12月末に開催された蒼紅杯で同デッキを使用し見事優勝。  その会話の流れで1月からプロツアー「霊気走破」に向けてリミテッドのいろはを教えていただくことになりました。  教えていただいた内容は極めて有益で、私自身のMTGに関する実力の底上げにも繋がりました。    というわけで今回は、今回のプロツアー調整で得た、リミテッドの基礎から『霊気走破』ドラフトの戦略などを記事にいたしました!   リミテッドの学び方   リミテッドに関する基礎講座   ・リミテッドでのアーキ分類・ピック方針の考え方・カード単体のバリュー評価について・リミテッドにおける強いデッキとは   大きく分けて上記の4つに関して、まず道民さんから叩きこんでいただいた。    特筆すべき点は、デッキに対する考え方だろうか。構築でも同じことが言えることだが、リミテッドにも「アグロ」「ミッドレンジ」「コントロール」といった大まかな分類が存在する。  かの名著「Who's The Beatdown?」にも記載されている通り、必ずどちらかが攻める側・守る側になり、リミテッドではそれがより変動しやすい。    もちろんクリーチャーが存在しないガチガチのコントロールが組めることはほぼないが、ゲームプランの立て方・考え方としてコントロール戦略は成立する。    そしてこれらは色の組み合わせ方によって影響する部分であり、ピック時の指針にも繋がってくる。    そして霊気走破のコモン・アンコモン含めた全カードを一枚ずつ見て評価し、アウトプットしていった。  このように一枚ずつ評価することで自然とカードを覚えることができ、ピック時に「このカードは何だっけ?」とテキストを確認する手間を無くすようにした。    また、霊気走破における色/アーキごとの評価などもまとめた。これから順番に解説していくので、リミテッドの参考になれば幸い。    なお、これは2月中旬頃の環境初期にまとめたものであり、現在では評価が変わっている可能性があることに注意。   練習方法    単色デッキ5種、二色アーキデッキ10種のサンプルデッキで対戦。主にコモン・アンコを中心に構築。  レアの強さは言うまでもなく、ピックの大半がコモン/アンコであるためここの評価を改めて洗い直す意味で構築。(これに関しては全て道民さんに実施していただいた。大変感謝!)  また、度々言及される勝率についてはリミテッド統計ツール「17lands」より引用している。(2025年2月14日現在)  勝率自体は17landsユーザーの統計であり、全体的な勝率としては55.9%となっておりこれがボーダーラインとなっている。  これより下の勝率については平均以下であることを認識するとわかりやすい。  以上をふまえ、各色について解説していく。   白  シナジーとしてはマルドゥのエンジン始動、エスパーのアーティファクト、ナヤの機体/乗騎。    例年ならばあるチャージこと全体+2/+1、リングこと3マナ追放除去置物がコモンに存在しない。追放除去置物は一応アンコモンに6/5/5機体である《拘留戦車》が存在しているが、除去としては重すぎる。  コンバットトリックも+2/+2の《光盾での受け流し》しかない。  除去もクリーチャー/機体の数参照である使いづらい除去《免れぬ激突》、タップ状態で2マナになる5マナ追放除去《全損事故》、タフ4以上除去の《勇敢な一撃》の3点でいずれも使いづらさを感じる。    また、エンジン始動の関係で飛行の価値が上がったことによるものなのか、例年より多いプレイアブルな到達(特に4/4/4到達トランプルの《砂丘の危険》)によって飛行ビートも厳しい。  マルドゥカラーのエンジン/機体を軸とした攻めっ気のあるカードと、エスパーカラーのアーティファクトを軸とした受け身なカードが存在しておりこれが相反するのもマイナス点。    上記の理由から、白を軸としたアグロ戦術が成立しづらい点を留意する必要がある。    優秀なコモンも少なく、コモンが流れているからと言って白に入るべきではないと言える色だろう。  ボムレアであったり、優秀な白絡みのマルチアンコモンが複数流れてきた時にようやく検討するぐらいの位置であると思われる。   ポイント:緑に対する対抗策  まず生半可なアグロ戦術だと緑のレンジに辿り着いた時点でほぼ敗北する。4/4/4到達トランプル、5/9/7、6/6/6到達4点ゲインと普通にポン置きされるだけで白は終わる。    よって到達が出てくる4マナまでにはある程度ライフを削っておきたい。が、シンプルな2マナ域ですら相打ちになることが多く乗り越えづらい。2/3/3に関しても2/2/1接死、2/3/2バニラなどで相打ちになってしまう。    白を軸にしたアグロ戦術の場合、緑に対して残された時間は少なく、到達クリーチャーを除去/バットリでどかして飛行で攻めるプランぐらいしかないと言えるだろう。  安定な選択肢として乗騎/機体に飛行付与できる《峡谷の跳躍者》はもちろんだが……  2点飛行クロックになれる《煌々野の滑空騎》、3/2/2飛行に加えて絆魂/破壊不能で乗騎のメリット能力を活かせる《睡蓮守りの信奉者》は可能性を感じた。  到達さえいなければ継続的な2点クロックを刻んでくれる。特に3/2/2の《睡蓮守りの信奉者》はエンジン速度上昇の役割を担いつつも絆魂+破壊不能によるライフレースにも貢献するため見た目以上に強い。    4/3/3飛行である《速翼の襲撃者》も場合によっては渋々採用せざるを得ないかもしれない。  アンコモンになってしまうが、白を使わざるを得なくなった場合は到達持ちクリーチャーに対してほぼ対応可能な《勇敢な一撃》は是非ピックしたい。(2/3/3到達レアの《網撃の精鋭》以外は全てタフ4以上)  《移動放送機》は白コモンの中では追放除去の《全損事故》に次ぐ勝率2位(56.2%)で評価が高い一枚。  出す1/1が飛行機械なのもありがたく、白青アーティファクトであれば1枚で2枚アーティファクトを出す点も評価できる。  本体も5/4と攻めっ気のある性能で突破力もあり、《峡谷の跳躍者》で飛行を付与したい。   緑  次はそんな最強色の緑のお話。  間違いなく環境を定義する色。  シナジーとしてはバニラ、ゴルガリの墓地利用、ティムールの消尽、ナヤの機体/乗騎。    まずコモンでのアンプレイアブルなカードが存在しない。  コモンの中で一番評価が低いのが最低限の3/3/3である《ロクソドンの偵察員》の時点で察するに余りある。  2/3/2バニラの《雑食のジビリック》ですらバニラシナジーがあり、緑単色のコモン・アンコモンでは唯一の2マナパワー3であることから壁役および搭乗役になれることで普段より評価が高い。    そして環境を定義するクリーチャーこと《砂丘の危険》。  444到達トランプル、そして7/7になる7マナの消尽能力。 信じられないでしょうが、これがコモンです。  非緑デッキはまずこの一枚を乗り越えられる方法を用意したい。下手なデッキであればこれ1枚でビタ止まりしてしまう。  そして勝率60.5%のガチトップコモンである《渡りをするケトラドン》。  6/6/6到達に加えて4点ゲイン。序盤に引いても2マナサイクリングのオマケつき。繰り返しますがこれがコモンです。  なんとかライフを残り1桁まで削ったところに出てくるこれは悪夢の一言。    このように、コモンだけでも十分にサイズという暴力である程度デッキになる色であるため、これらのコモンが流れてきたら緑を触る動機になれるだろう。  これはコモンが弱くコモンから入れない白と大きく違う点。    先述した通り白軸のアグロ戦術が取りづらく、かつサイズに優れる緑が非常に優位な環境であるということは中速環境の証左にもなり、膠着しやすい環境である事は留意したい。  膠着しがちな中で重要なのはやはり「システム」であろう。 《獣乗りの先兵》はコモンながら膠着したらアドバンテージを取れるシステムクリーチャーでありながら2/2/2と及第点な2マナ域でもあるため、流れてきたら拾っておきたい一枚。    また、1/1/1である《突進する小走り足》は6/6/6到達4点ゲインこと《渡りをするケトラドン》の勝率60.5%に次ぐ60.2%の強さを誇るので覚えておきたい。  合計5マナで2/2+3/3の5/5と悪くなく、消尽シナジーも絡むのも◎。  特に消尽の一回制限を撤廃する《エルフの補給者》と組み合わせることで延々と3/3を産み出すシステムクリーチャーにもなり得る。    さて、ここまで語りつくしたかに見えるが……まだコモンである。  2/2/2の最低限のスタッツを持ち、1マナのトランプル付与によって先述してきた緑のサイズを最大限に活かすことができる《緑地帯の守護者》。  4マナ消尽も+3/+3と破格の性能を誇り、2マナながら5/5にもなれるトップアンコモンの一つ。  消尽の1回制限を撤廃する消尽シナジーの中核となる《エルフの補給者》。除去されなければ延々と消尽能力起動によって差がついていくことになるだろう。  自身も2マナで+1/+1を乗せ続けるため自己完結している点が素晴らしい。  《牙ドルイドの召喚士》もまた4/2/4到達と非常に守備的なスペックでバニラクリーチャーを山札だけでなく墓地からもサーチしアドバンテージも得るいぶし銀な一枚。  そして上記の《牙ドルイドの召喚士》の4マナから綺麗に繋がる5マナであり9/7というただただ暴力を体現するサイズを押し付ける《大地の暴君、テリアン》。  6マナで5/5+3/3の盤面支配力に加えて騎乗して殴るとさらに3/3を産み出すシステムクリーチャーでもある《僭王マンモス》。    このようにアンコモンも十二分に恐ろしいラインナップであり、まさしく「王」を名乗れるだけの色であると言えるだろう。  事実17landsの指標においては緑絡みの二色が勝率TOP4を独占している。    卓に3人いても許容されるため、霊気走破のドラフトにおいては「緑に入れそうなら入る」が基本方針となるだろう。 赤  シナジーとしてはティムールの消尽、マルドゥのエンジン始動、ナヤの機体/乗騎。    アグロしきれないことで苦戦している白とは異なり、こちらは4種の除去がありいずれもプレイアブル。  ただし攻めの線はやや細め。コンバットトリックが+X/+0の先制攻撃である《アクセルべた踏み》、+2/+0トランプルを付与する機体の《燃焼ロケット》ぐらいと貧弱。全体+2/+0ことラッパもなし。    テンポカラーだが3マナ域が弱めで速度が足りずに押し切れないことも多い。  意識すべき点としては序盤にいかにライフを詰められる状態にするかどうか、そして最終的に機体のサイズなども活かして詰め切る事が出来るかどうかの二点。    総じて白に次いで弱い色と言える。  緑と絡むと一気に強くなるが、それは緑(とマルチ)が強いだけとも言える。  トップアンコモンとしてはこの《グリスレンチのゴブリン》。勝率58.7%。  1/2/1と攻撃的なスタッツに加え、消尽シナジーおよびディスカードシナジーと噛むのが強み。3マナと軽く2枚もルーティングできるため事故回避にも貢献し味がかなりする一枚。  次点で勝率が高いのは57.9%の《雷頭の砲手》。  4/5到達の頼もしいスタッツに加え、自ターンに1回とはいえ0マナのルーティングは破格の一言。コモンとは思えない一枚。    緑の項で先述した通り、膠着しやすい環境であることからシステムクリーチャーの価値が大きく上がっているため、その一種でありながら4/5到達というスペックを持つ《雷頭の砲手》は環境に噛み合っていると言えよう。  一方で《稲妻の一撃》は例年であれば高い評価が今環境ではやや低い点には留意すべき事項。(17lands勝率55.1%、平均が大体55.5%程度)  従来ならば2マナ3点で3-4マナ域を討ち取れるテンポ面で非常に優秀なカードだが、環境を定義する4/4/4到達トランプルの《砂丘の危険》であったり、黒のアーティファクト軸のキーカードである《契約人形の恐怖》もまた4/3/4とタフネス4~が多いのも難点。    緑が中心となるこの環境において、3点に従来ほどの信頼感がなく場合によっては《稲妻の一撃》より優先すべきカードが多いことは気を付けておくべきだろう。    が、もちろん序盤を攻め切る事を目的とするアグロデッキにおいては有力な選択肢であることは忘れないようにしたい。 青  シナジーとしてはティムールの消尽、エスパーのアーティファクト、イゼットのディスカード。    一言で言えば無難な色。  消尽によるアドバンテージ、十八番の飛行、テンポを取れるバウンスの《跳ね弾き》《道路脇の爆発》などがある。  生物/ファクトに4マナ要求する2マナカウンターもあり、総じて青の良さが詰まっている。    だが、カード単体で見るとややパワーが物足りず、青を中核を据えるというよりも他の色とのシナジー前提な色という印象が強い。  消尽、アーティファクト、ディスカードシナジーはいずれも単体で強いわけではなくシナジー前提である。(消尽に関しては緑自体が強いのだが)    青黒は緑が絡まないアーキタイプでは上位の強さであり、ほぼ卓一前提な青赤に関しては専用カードが多いものの青は汎用パーツで賄える。  そういった意味でも緑には入れなかった場合の選択肢として青軸は次善の選択肢と言えるだろう。  勝率トップは61.5%の《レインジャーズの給油機》。  消尽シナジーカードでありながら自身も消尽能力を持ち、4/4のアーティファクトクリーチャーになりつつ誘発による1ドローと自己完結しているのが強み。  3/2/3警戒の2マナ消尽で+1/+1とルーティングを行う《機敏な海賊》は先にこの《レインジャーズの給油機》の誘発能力によるドローを行ってから消尽のルーティングを解決するため、相性がよい点も見逃せない。  消尽軸の緑青は暫定的なTier1アーキの一つであり、これを見かけたら是非ピックしたい。  5/4/4のボディにバウンスがついており、オマケに相手の速度を下げる効果も持つ勝率61.3%の《棘甲羅の追い立て屋》もまた有力な一枚。  アーティファクトシナジーがあるのも嬉しく、長期戦思考の白青や青黒のアーティファクトデッキに必要な全てが詰まっており噛み合っている。  次いで勝率が高いのが59.1%の《運送の魔道士》。上記の5マナファクトである《棘甲羅の追い立て屋》との相性はもちろん、青黒アーティファクトでキーとなる《契約人形の恐怖》をサーチできる。  3マナのこれから4-5マナのアーティファクトに繋がるのもマナカーブの観点でも素晴らしく、トップアンコモンの一つ。  3マナタップ除去である《エンジン水没》は例年であればやや評価が低めな傾向にあったが、今環境ではエンチャント破壊もコモン・アンコモンでは《壊れた翼》のみで裏目が同じ青のバウンスぐらいであるため勝率58.0%と優秀。  特に緑のサイズに対して対抗できる手段であるため、後半でこれが流れてくるようであればピックしておきたい。 黒  シナジーとしてはマルドゥのエンジン始動、エスパーのアーティファクト、ゴルガリの墓地肥やし。    ピック方針としては最優先である緑軸、次善の青軸に次ぐか並んで黒軸が重要と考えられる。  というのも、黒のエンジン始動およびアーティファクト関連のカードはいずれも優秀でデッキの中核になり得るためである。  その筆頭がこの《残骸の木人》。  一見すると2/1/3飛行の諜報2と普通の優秀なコモンに見えるが、シナジーという観点から見ると……   ・エンジン始動 2/1/3飛行クロックによる最高速度への貢献   ・アーティファクト 2マナドロップできるアーティファクトクリーチャーであり、長引かせたいファクトシナジーにおけるタフネス3飛行のブロック力   ・墓地利用 諜報2による墓地肥やし    と、いずれのシナジーとも全て噛み合う良コモンであることがわかるだろう。序盤はもちろん中盤以降に引いても諜報2が非常に嬉しく、間違いなく黒のトップコモンであると言える。  またリミテッドでよくある1/1/1接死もこの環境では評価が高く、勝率も58.7%とトップコモンの一角として君臨している。    攻撃したとしても所詮1点。通常の環境であればスルーが定石だ。しかし最高速度が絡むなら話は別。    例えばエンジン速度3の状況で4/4/4到達トランプルの《砂丘の危険》が立っているとしよう。  ネズミの横には最高速度に達すると2/2ゾンビを終了ステップに出す《甦りし屍執政》がいる状態で《エンジンのネズミ》で攻撃したらどうするだろうか?  普段ならばスルーだが、このケースだと通してしまうと最高速度になり2/2が出てしまうし、他のエンジン始動持ちカードが最高速度というバリューを得てしまう。  そのため4/4/4到達トランプルの《砂丘の危険》でブロックして1/1/1接死の《エンジンのネズミ》と相打ちをするという通常ならばあり得ないはずの選択が産まれる。接死というキーワード能力に大きな価値が産まれるのである。    また、何度も言及した通りサイズに優れる緑最強環境において接死は非常に有用であることは言うまでもない。  膠着した時にはやや重めだが6マナで2点というシステムクリーチャーとしての飛び道具まで持ち合わせている。    環境に恵まれた良コモンの一枚であると言えよう。これだからリミテッドは面白いのだ。  エンジン始動が絡むことで価値が産まれるカードとしては《限界突破出力》もまたその一枚。  この手のコンバットトリックにしては57.7%と高勝率を叩き出している。    相手が下手なブロックをすれば接死+破壊不能によって一方的に討ち取ることができる。かと言ってこれをケアして通してしまえばエンジンの速度が上がってしまう。  緑の優秀なサイズを押し付ける緑黒においても強いカードの一つで、例えば5/9/7の《大地の暴君、テリアン》をコンバットで討ち取るためには複数のブロックが必要になる。そこに対して破壊不能が強く刺さるというわけだ。    こういったブロック側が抱えるジレンマを強く押し付けられるのも環境的に強いと言えるだろう。  そして忘れてはいけないのがこの《契約人形の恐怖》。  青黒、白青タッチ黒のエスパーカラーにおけるアーティファクトシナジーで重要となる一枚。《ネットワーク呪詛》ほどではないが、これあるなしでは完成度が違ってくる。    レアや強アンコモンなどが取られていく6~8手目辺りでこれが流れてくればアーティファクト関連の席は空いていると見ていいだろう。  エンジン始動絡みでもドレインによって確実に速度上昇に貢献するため、黒を軸にするのであればこれのピックの優先度は上げておきたい。 10種アーキタイプ評価 白青アーティファクト  鍵となるのは《帰還航路》と各種アーティファクトシナジー。    意外と重要なのは2マナでドローする3マナアーティファクトの《霊気吸引機》と5/3/2飛行機体でETB2ドローの《船体漂い》。  というのも、親和やコスト低減などでテンポよくアーティファクトを並べることによって盤面を掌握するわけだが、サイズ自体はそこまで大きくないため膠着しがちなアーキタイプだからだ。    そうすると膠着した時に必要なのは打破するための回答を探し出すドローエンジンおよび強いレア。  そこの役割を担うのが3ドローの《帰還航路》、2ドローかつクロックとなる3/2飛行である《船体漂い》、そして継続的なドロー手段であり最高速度に達するとフィニッシャーへと変貌する《霊気吸引機》の三点。これらが必要となる。  ただし、アーキタイプとしての強度ははっきり言って下の部類と言える。  要求されるアンコモンが多い割にはシナジーに寄っていてカードパワーも低く、ちゃんと組み立てられたとしても速やかにゲームを畳めるほどの速さもない。  膠着するということは《ルクサの体現、サブ=スネン》などのボムを引かれやすくなってしまうという事にも繋がる、などと弱点の多いアーキタイプ。  基本的には《帰還航路》が後の順位で流れてくる、白青の強いレアを引けた時ぐらいしか入らないと思われるが、そうなった場合はこの三点について特に意識しておくとよいだろう。   緑黒リアニメイト  緑の優れたサイズにそれをサポートする黒。Tier1候補。《ブルードハート・エンジン》《軌道修正》でサイクリングしたコモンの《渡りをするケトラドン》をリアニメイトするだけでも強力。  中盤以降になればサイズの大きいクリーチャーを連打するだけでも脅威であるし、相手が除去してきたら先述したリアニメイトでお代わりして圧殺……という非常に太いプランを取れるのが最大の強み。  特に《轟雷のブルードワゴン》は下手なレアよりも強力でありながら、クアドラシンボルによってほぼ緑黒専用となっているため卓の状況によっては流れてきやすいのがポイント。  6/5威迫の攻め筋に加えて到達の守り、そしてETBで4マナ以下のパーマネント破壊の攻防一体な除去。  極めつけにはリアニメイトと相性のいいサイクリングまでついていて隙が一切ない。  リアニメイトもしくは回収手段をピック出来たならば、墓地を肥やしつつ素キャストのための土地を確実に伸ばす手段でもある《道穴のモグラ》は是非欲しい一枚。    同じくリアニメイトがテーマであったダスクモーンの白黒とは異なり、「デカブツが素キャストでも普通にプレイアブルである」「リアニメイト手段も1/1操縦士というオマケがついており強い」「そもそもリアニメイトに頼らずとも強い」などと強い要素が詰まっている。    正直リアニメイト要素がなくとも、緑主軸に黒の《スピン・アウト》といった除去を入れるだけでも普通にサイズに優れるミッドレンジとして強い。まさにTier1と言える強さである。   青赤ディスカード  ディスカードシナジーを中核に据えたアーキ。    ただ単体のカードパワーはいずれも低く、シナジー前提。  特にディスカードすることで恒久的に強化される《略奪するアオザメ》《たかり空エイ》はほぼ必須と言ってよい。  次点で明らかにディスカードシナジー以外ではアンプレイアブルなカードの《溶岩族の砲兵》も複数重ねるとシステムクリーチャーとして有効になってくる。  このようにディスカードが前提となっているカードに加え、ディスカードするために各種サイクリングやルーティング手段を集めねばならない。  その中でもカード単体のパワーが高い《雷頭の砲手》は是非確保したい一枚。  その結果引きムラに左右され、先述したシステムクリーチャーを引けなければただ手札を捨てるだけで特にアドバンテージも得られないという弱い動きになってしまう。  もちろんシステムクリーチャーを出せたとしても除去されてしまえば同じ結末になりがち。  しかし、ディスカード前提となるクリーチャーをしっかり集め、その周りをディスカード関連のカードで固められると急に構築のような動きで圧倒することができる。  その力は緑絡みのTier1群を凌ぐほど。    ただこれができるためにはアンコモンを多数要求されるなどハードルも高く、卓内で競合相手が1人でもいると瞬く間に紙束デッキが出来上がる。    ディスカード関連のカードはほぼ他のアーキには入らないことで専用カードとなっているため、遅めの順目に《たかり空エイ》などのキーカード流れてきたら拾っておき、マルチなども複数流れるなどの卓一のサインを見逃さないようにしたい。   緑白乗騎/機体  サイズに優れる緑に白の乗騎シナジーが入った形。  白軸のピックはしたくないため、緑軸から《アラクリアの魂、ラゴリン》や《歴戦の獣騎兵》らマルチや白のレアをピックして自然と緑白になる形が望ましい。  特にマルチのパワーは非常に高く、17landsでも《歴戦の獣騎兵》は勝率61%台を叩き出している。また、これらのマルチはタッチされづらいのも評価点の一つ。  アタックすることでリターンを得られる乗騎を飛行でサポートできる《峡谷の跳躍者》はぜひ欲しい一枚。    乗騎によるコンバットも多く、そう言った意味では+4/+4トランプルの《偉大なる贈り物》であったり、+2/+2を付与する生物である《牙の守護者》などのコンバットトリックをうまく使うことが鍵の一つと言える。    総括すると緑のサイズを押し付ける戦略をさらに後押しするアーキタイプ。とにかく攻勢を緩めないのが大事。  万が一白を主軸としたピックの場合、マルチ頼りになる部分が大きい。 《睡蓮守りの信奉者》や《峡谷の跳躍者》+《煌々野の野生馬》など、白内で完結するシナジーの組み合わせは意識すべし。  サンプルとして2/15に行われたドラキチ合宿で組んで2-1した緑白を。  1-1《危険な罠》、1-2《アラクリアの魂、ラゴリン》、1-3と1-4が《栄光荒野のオオヤマネコ》で白軸にピック。  2-1が《激浪の機械巨人》だが、アーティファクトシナジーをあまり拾えなかったため1マナ格闘である《進路開通》などを拾っていった。  3パック目で《歴戦の獣騎兵》が2枚流れ、果てには《輝晶の機械巨人》まで流れてきたため白に緑白マルチを入れた形。    やっていって分かったことだが、2枚目の《免れぬ激突》より2枚目の《光盾での受け流し》の方がよかった。  あくまでもコンバットをメインとするアーキであり、+2/+2のコンバットトリックを強く使える場面が多いためである。   青黒アーティファクト  緑に次ぐTier2候補。  鍵となるのはやはりアーティファクトシナジーのゴールである《ネットワーク呪詛》。  アーティファクトが3枚あるだけで5点ドレインとライフレースにおいて破格の力を持つ。  また自身含めたアーティファクトが出ると1点ドレインする《契約人形の恐怖》もアーティファクトシナジーを後押しする。  上記の《ネットワーク呪詛》と組み合わせることでコンバットに頼らないダメージ源になり、特に緑に対して有効な飛び道具になる。  そう言った意味ではアーティファクトカウントであり序盤を支える3/3でもある《真夜中の圧搾車》は同じくファクトシナジーである白青と同様に強く使える一枚だろう。  上記の《不気味なガラクタ》《残骸の木人》は他のカラーでも採用されるカードのため、ピックできる時はしておきたい。  黒軸でこういった優秀なカードを集める中で、キーである《ネットワーク呪詛》《契約人形の恐怖》が流れてきたら青黒に参入……という流れが自然だろう。  青白の3点ゲイン3ドロー《帰還航路》や《ガイドライトの道拓き》などタッチ白も検討できるため、白黒/青白土地があったら拾っておきたいところ。    どのカードも強い緑とは異なり、良くも悪くも《ネットワーク呪詛》ありきの色であるが、《契約人形の恐怖》を重ね引きしていればなくても何とかなったりする。  ドラキチ合宿で組んだ青黒で2-1。  レンジが遅い相手にはゴルガリのレアとリアニメイトを入れる想定。    1パック目は1-1《レインジャーズの給油機》1-2に《悪魔の破砕機》、1-3には《ブルードハート・エンジン》。  スゥルタイカラーでピックしていったところ、2パック目で《ネットワーク呪詛》と《運送の魔道士》。《契約人形の恐怖》もピックできたこともあり、そのまま青黒に入った流れ。  負けは2-0で迎えた最終戦で2ターン目《アラクリアの魂、ラゴリン》×2回によって敗北。理不尽。   緑青消尽  緑黒と並ぶTier1のひとつ。  とにかく緑のサイズに加えて青の消尽によるアドバンテージで圧殺していくアーキタイプ。  飛行接死で盤面を睨みつつ、4マナの消尽で+1/+1と土地2枚を増やす《探し求める空蛇》によって多色化しやすい。  その場合は消尽自体もティムール軸であるため、大半は赤絡みのマルチを入れたティムールになることだろう。《竜航技師》はよき相方。  もちろんタッチ先は白・黒でもいい。強いマルチやレアなどを入れよう。  各種消尽クリーチャーを集めつつ、これら消尽をアドバンテージに変えていくシステム機体である《レインジャーズの給油機》《レインジャーズの霊気蜂巣》があるとより盤石な強さとなる。  消尽の1回制限を撤廃する《エルフの補給者》も突き放すために欲しい一枚。    総じて緑のサイズに加えて消尽でさらに大きくなっていき、システム生物によってアドバンテージまで獲得するためアグロが弱い中速環境においてはTier1の強さを誇る。  このように先述してきた通り消尽によって中盤以降の強さは随一であり、序盤を乗り切ってしまえば大きく勝ちに近づくためこういった低マナ域はしっかり確保しておきたい。   白赤機体/乗騎  17landsでは平均勝率55.9%の中ドベの52%と最弱の組み合わせとされている赤白。事実弱いの一言。可能であれば入りたくはない。    変に丸く組もうとしないことが重要。「ミッドレンジ」は意識してはいけない罠の一つ。  白や赤の項でも記載した通り、緑のサイズに対して乗り越える手段が少ないため「アグロ」にとにかく寄らせることが大事。    具体的には1-2マナ域を多めに採用してテンポよくライフを詰めていき、減ったライフを中盤以降に詰め切れるような組み合わせを考えたい。  《無謀なヴェロシタウルス》はプレミアドラフトにおいて勝率50.1%とドベの数字だが、+2/+0とトランプル付与は最後の一押しとして欲しい性能。  特に《流浪者の刃》と《無謀なヴェロシタウルス》は両方ともアンコモンの組み合わせだが、安めの巡目で拾えつつ4/2二段攻撃トランプルと強力なシナジーを持つ。  これも勝率50.3%とかなり低めだが、強さの上限がある程度決まっている卓ドラフトではこういったカードのシナジーも駆使していく必要がある。    しかし、ここまで苦慮したところで緑の優秀な到達やサイズの前に止まってしまうことも多々ある。  ボムレアである《危険な罠》、《竜航技師》、《灯を追う者、チャンドラ》などをピックできていて、かつ流れ的にも赤白をやらざるを得ない場合に備えて引き出しとして覚えておく程度でいいだろう。 赤緑消尽  やや防御的な緑青とは異なり、こちらは攻撃的な消尽。  マルチアンコモンの《ロケッティアの爆走バギー》はクリーチャー化かつ攻撃誘発で宝物形成、《起爆学者》はトランプル付与といずれも攻撃に関わるもの。  《起爆学者》によってマナコストが減った消尽でテンポよくサイズアップし、そのままサイズ差を活かして押し切るというアーキタイプ。  その特徴上、3マナながら+4/+4にトランプルがつく《偉大なる賜物》は見た目以上に強く使える重要なコンバットトリック。  先制攻撃がつく《アクセルべた踏み》も同様で、他のアーキタイプよりもコンバットトリックを強く使えるアーキタイプであることは意識したい。    だが、赤の弱さもあり緑絡みのアーキタイプでは緑黒・緑青と比べると劣るのも事実。ちゃんとマルチアンコモンが回ってくるなどのサインを見て入りたいところ。   白黒エンジン始動  当初は白赤と並んで避けたいカラーの一つとして考えていたが、実際の勝率としては青黒・黒赤に次ぐ真ん中程度。    マルチアンコモンの《不朽の高位僧》を中心としたエンジン始動シナジーで、方向性がいずれもエンジンの最高速度に向かっているのも要因の一つであろうか。  また、白の欠点である緑のサイズの前には止まるという点についても黒の確定除去などでカバーできるという事もありそうだ。    ピック方針としてはやはり白軸ではなく、黒軸のピックをしていく最中でマルチアンコモンが複数流れてくる・赤黒/青黒の流れがないなどの理由で参入するという流れになるだろう。  事実、17landsのトロフィーデッキを見ても黒の優秀なカードが中心であることが大半だった。  毎ターン2/2のゾンビを産み出し続ける《甦りし屍執政》、5/3/3飛行速攻絆魂によってダメージレースを破壊してしまえる《駆け抜ける油吸い》、強力なシステムクリーチャーと化する《不朽の高位僧》がおり最高速度というゴールが明確なのも〇。  その一方でこれらの最高速度というゴールがないと中途半端になりがちなため、意識してピックしたい。  優秀な黒の除去で道を開いていき、エンジンの速度を上げていくことで相手に対して不自由な選択を押し付ける事を意識するといいだろう。  また、エンジンの速度上昇に貢献する《契約人形の恐怖》も強く使える。黒軸であればピックしたい一枚。   黒赤エンジン始動  青黒と並ぶTier2の一つ。  とにかく前のめりに行きたいアーキタイプ。  出た時点で速度上昇が確定するマルチアンコモンの《ガスタルのスリル探し》がとにかく強く、個人的に構築級レベルであると考えている。  赤と黒の豊富な除去で相手のクリーチャーをどかしながら最高速度に達し、そのまま最高速度のバリューを押し付けていくという撹乱アグロのお手本のようなアーキタイプ。    特に緑のサイズに対して破壊不能と接死を付与する《限界突破出力》、確定除去である《スピン・アウト》の存在によって赤に不足していた突破力をカバーできる点も〇。  パワー2以下をブロックされないだけでなく絆魂もつけられるシステム機体である《黙示録の爆走車》もダメージレースに勝ちつつ最高速度を目指す事が出来ることからアーキタイプの方向性と合致している。  本体も6/5とそこそこ大きく、本体で攻めていくプランも取れるのも評価点。  もちろん白黒と同じくエンジン始動がテーマである黒赤にもこの《契約人形の恐怖》が強く使えることも留意したい。  どんどん攻め立てていく以上、2マナで+1/+1のパンプによって安易にブロックさせない《ミュータントの偵察員》もピックする価値が上がると言える。   まとめ  と、各色とアーキタイプについて理解を深めたところで、実際の戦略を交えながらまとめてみよう。 ▼色の強さ  緑>黒≒青>赤>白   ▼ピックの方針 主軸は緑か青。 1.ティムール消尽、緑黒リアニメイト2.青黒アーティファクト 時点で黒。 1.黒赤エンジン2.青黒アーティファクト ・白をやらなければならない時は 1.緑白2.白黒3.赤白/白青(ちゃんとマルチ/方向性通りにピックすることを意識)   ▼全体の雑感 ・カード単体のパワーは低めなアーキタイプ環境・緑のサイズへの対抗手段は必要・マルチアンコモンがレア級の強さなのでサインを見逃さないようにする・ただしエンジン始動絡みで2マナドロップはかなり重要   ▼主に勉強したこと ・全カード/色の事前評価および把握・全コンバットトリックの暗記・各アーキタイプの評価・各アーキタイプにおける優先順位の把握・ピック方針の策定 知識を詰め込んでいざ実戦   ……と、以上のようにリミテッドに関する知識を詰め込みました。  これが2月14日までの話ですね。ちなみに2月11日がアリーナ・マジックオンライン先行実装日、2月14日が紙の販売日です。  これを毎回やっているプロプレイヤー、プロツアー常連の方々の凄さを身をもって知りました。    2月15日、16日の週末にはBIGsもりしょーさんやはまさんの繋がりでBIGs加茂さんが主催されている「ドラキチ合宿」に泊まり込みで参加しました。  メンバーもアリーナの王である齋藤慎也さん、リミテッド巧者の松本友樹さんを筆頭とした実力者揃い。プロツアーに向けた卓ドラフトの練習の場としては申し分ありません。    その結果としては2-1を7回、1-2を1回、0-3を1回と3-0は勝ち取れなかったものの通算で15-12と勝ち越しはでき、手応えを感じました。  卓ドラフトをしていく中で気づいたのは緑がそこまで強くないこと。  もちろん色単体で見れば緑は最強カラーと言って差し支えませんが、これが共通認識となっている卓だと緑が常に3-4人いるという状態になります。  そうすると混んでいる緑は必然的に弱体化し、非緑で卓一のアーキタイプが生まれやすくなるという状態になります。    事実、卓ドラフト13回中3-0したのは緑が3回、非緑が10回という結果になりました。特に非緑の10回中青が絡んでいるのがなんと8回。  しかし、2-1には緑の姿も多く、この辺りはやはり緑の地力の強さを感じる結果となっています。   卓一緑>卓一非緑>卓2人-4人の緑>卓2人の非緑    構図としてはこうなっているという認識で、プロツアーとなれば緑は間違いなく競合するため卓一の緑はあり得ません。  そうなると実質的に最強である卓一の非緑に座るという事が重要になってきます。    まず基本方針として緑の有力なカードを複数拾えるなど入れそうなら緑。  その上でマルチアンコモンや各種アーキタイプで優先度の高いカードが流れてくるサインを見逃さないことが重要だという結論に辿り着けたのが最大の収穫でした。    ドラキチ合宿後は17landsでの勝率を確認し、プレイアブル/アンプレイアブルのカードを把握しつつ、特に絶妙なラインにいるカード群を覚えていきました。  また環境に存在するコンバットトリックも全て暗記しました。  結果としては一日目1-2、二日目2-1の3-3で勝ち越しとはなりませんでしたが、ドラフトの内容としては上出来だったかなと感じています。  この経験は代え難いもので、今後のMTG人生において大いに役に立つ財産になると確信しています。   『霊気走破』のドラフトはもちろん、リミテッドの奥深さ、そして何より面白さを知る良い機会にもなりました!  次回はプロツアーで使用したエスパーピクシーのお話になります!

Let's Enjoy Magic! - Pro Tour Aetherdrift in Chicago(プロツアー旅行記後編)

2025.03.07

Akira Kobayashi

 皆さん、こんにちは! 「へいか」こと 小林 輝(@enzyutuheika)です。 前回までのあらすじ  チャンピオンズカップファイナルシーズン2ラウンド3でプロツアー『霊気走破』の権利を得たへいかは、プロツアー前日から大はしゃぎ!    デカすぎるピザに敗北したり(美味しかったです!)、有名プレイヤーたちと写真を撮影して……    いよいよ金曜日!プロツアー初日のドラフトを迎えたのでした。   プロツアー1stドラフト  いよいよ運命の卓ドラフトが始まることになります。  高橋優太さんが加入したことで話題になったハビエル・ドミンゲスさんを筆頭とするドリームチーム「チームコスモス」の方が二人もおり、非常に厳しそうなテーブルです。  同じ日本人である井上さんの姿もありましたが、席が離れていたため声はかけられず……    さて、一日目の卓ドラフトで運命の1-1は……《エンドの首領、ファー・フォーチュン》!  攻撃するたびに1点のダメージを与えることで速度上昇に貢献しつつも、最高速度では「自分がコントロールしている発生源がダメージを与えるならさらに1点足す」という《朱地洞の族長、トーブラン》を思い起こさせるボムレアの一つです。  黒赤のカラーも緑が絡まないアーキでは青黒と並んで良く、まずこれを主軸としたピックになるだろうと考えました。    1-2で《記録の守護者》と《浚渫機の洞察》の二択。  カードの強さとしては緑なのもあり《浚渫機の洞察》の方が優勢。Tier1である緑黒に赤をタッチした形も考えられますし、緑への渡りをつけるべくこちらの方をピック。    1パック目は非常に流れが悪く、マルチのアンコモンが流れてくるどころか強いカードすらろくに回ってきません。  これがプロツアーのドラフトか……と戦慄しながら黒や緑を中心にピック。  途中で搭乗5であるものの3/6/5の機体で基本土地をサーチできる《マーシャルの路航車》が流れてきたので拾っていきます。  これも優良アンコモンの一つで、《エンドの首領、ファー・フォーチュン》のためのタッチ手段にもなります。    途中で《記憶の守護者》に思いを馳せながら《ガイドライトの最適化技師》を流したところ、2枚目の《ガイドライトの最適化技師》が流れてくるなど青黒の線もギリギリあったのではないか……? とやや後悔したところに2-1では《ネットワーク呪詛》の姿が!!  泣く泣く流して《屍肉戦闘車》をピック。  その後も《牙の守護者》やトップコモンである《突進する小走り足》など緑のカードを拾っていきます。  が、4/4/4到達トランプルと優れたサイズと能力で環境を定義するクリーチャー《砂丘の危険》や切削しつつ土地を回収する《道穴のモグラ》などは一切流れてこず、一番欲しい除去である《轢殺》もなし。  ピック順が逆になった2パック目でも緑の流れは芳しくありません。苦しみながらなんとか緑黒のカードをピック。    3-1で色の合ったレア《翠色のラジアン、アーチック》! これもマルチレアの中では優秀な一枚で報われた形となりました。  しかし、依然としてリアニメイトである《ブルードハート・エンジン》《軌道修正》も来ない中、流れてくる2枚目の《ネットワーク呪詛》。  カットしたいところですが2/1/3飛行で諜報2を持つ優良コモンである《残骸の木人》もあったため、血の涙を流しながら流します。  当たらないかもしれない対戦相手よりも自分のデッキの完成度を上げるのが先決です。  こうして完成したデッキがこちら。  《スピン・アウト》《轢殺》が無いのは痛いですが、ちゃんと1-2マナ域を確保しつつ《エンドの首領、ファー・フォーチュン》《緑色のラジアン、アーチック》といった強力なレアも控えています。    他の方に見てもらったところ、3-0は難しいかもしれないけど2-1はできそうだねという話になりました。    そして記念すべき初戦へ! テーブル番号を確認すべくMeleeを……あれ、Meleeが表示されない?  友人から「Meleeが落ちているから紙でのペアリングになったらしい」という情報が。そんなことある??   Round1 vsグルールタッチ黒    懐かしい気持ちになりつつテーブル番号を確認した上で該当のテーブルに行き対戦相手とまず握手。  お互いに健闘を祈り合います。  え、あの……20点あったライフが……一瞬で……    まさかのとんでもないデッキに遭遇し一瞬で轢き殺されてしまいました。  これがプロツアーの洗礼というわけですね。   Round2 vsディミーア    気を取り直して2戦目へ。    気さくな方なので楽しめるだろうな~!!  え……あの……流した《ネットワーク呪詛》……全部拾ったんですね……しかも3枚目まで……    卓が生み出してしまった《契約人形の恐怖》2枚《ネットワーク呪詛》3枚という化け物卓一ディミーアに文字通り《壮大な玉突き衝突》され一瞬で0-2。  まさか0-1ラインでこれをされるとは。これがプロツアーの洗礼(二回目)   Round3 vsイゼット    続く3戦目ではもうどうにでもなれ! と挑むと前回の世界選手権出場者でもあるチームコスモスの方で《灯を追う者、チャンドラ》を出してくるイゼットでした。  が、それ以上にこちらの《エンドの首領、ファー・フォーチュン》が大暴れし無事、念願のプロツアー初勝利をもぎ取りました。あまりにも苦しい戦いだった。    最低限の1-2でドラフトラウンドを乗り切り、スタンダードラウンドが始まります。   スタンダードラウンド プロツアーにおけるデッキ選択  スタンダードのデッキですが、私はエスパーピクシーを選択しました!  まずメタゲームとしてはグルールアグロ・エスパーピクシー・ドメインの三強と読み、その上でグルールアグロが最多勢力であると考えました。  MOで顔を出してきたジェスカイ眼魔を筆頭に新しいデッキを考える事も考慮しましたが、さすがにリソース不足により断念。この三つのデッキを使っていきながら選んでいくことに。  最終的にはグルールアグロに対して新戦力である《不気味なガラクタ》《勢い挫き》でより優位に立てつつ、他のデッキに対しても《呑気な物漁り》が絡んだ100点のブン回りをすれば蹴散らす事もできるエスパーピクシーを選択することとなりました。    もちろん三色デッキ故の土地周りの事故要素などはありますが、それ以上にブン回ってしまえば抗いようのないムーブはそれ以上のメリットがあると判断しました。    構築およびドラフトに関する詳細な調整については予想以上に長くなってしまったため、分割して後日投稿予定となっています。    お楽しみに!   Round4 vsエスパーピクシー    早速ミラーマッチ! 《ベイルマークの大主》《分派の説教者》、サイドに《ギックスの命令》などミラーを意識していそうな構成です。  メインボードではお互いにライフ1まで行く死闘を繰り広げ、土地以外であれば勝ちな盤面で《不気味なガラクタ》起動で土地を2枚墓地に落とした上で3ターン連続土地という悲しみで敗北。  続く2ゲーム目では先ほどの死闘がウソかのようにスペル3土地10という引きをしてしまいボロ負け……    早速1-3と初日抜けすら危うくなってきます。初プロツアーと言えども、やはりシカゴまで来たのですからせめて二日目までは行きたいものです。   Round5 vsアゾリウス眼魔    さて、次の対戦相手は……  ん……?Calcano, Christian……んん??  1-3卓なのにまさかの前日パーティでツーショットをお願いしたクリスティアン・カルカノさんとマッチング! こ、これがプロツアー。とんでもない。    しかもデッキはアゾリウス眼魔……    まずい、不利マッチだ!  こちらの《望み無き悪夢》で手札の《忌まわしき眼魔》や《傲慢なジン》を落とされてそのままリアニメイトという友情コンボ成立の恐れがあります。  1ゲーム目で祈りながら《望み無き悪夢》を打つと《忌まわしき眼魔》の姿が。あっ……そしてそのままリアニメイト。ありがとうございました。    しかし、《望み無き悪夢》はエスパーピクシーにおけるクロックの一つであり、抜き切ってしまうと削りきれなくなります。  《邪悪を打ち砕く》《喉首狙い》《安らかなる眠り》などのバックアップの下、《望み無き悪夢》をクロック源とするプランを遂行すべくサイドボーディングで減らす枚数は1枚に留めました。  2ゲーム目、クリスティアン・カルカノさんが早速2ターン目《錠前破りのいたずら屋》。……が、不発!  その後も《航路の作成》《決定的瞬間》を唱えますが、《忌まわしき眼魔》の姿は現れず。その隙に押し切った形で勝利をもぎ取りました。    運命の3ゲーム目でも2ターン目《錠前破りのいたずら屋》。これは……と思いきや、これもまた不発!! 思わず目を合わせ、苦笑いをし合います。  《僧院の導師》を出されるも、《逃げ場なし》で対処すると後が続かず。しかしこちらも土地を引きまくり、お互いに絶不調な構図でグダグダの末に《精体の追跡者》《呑気な物漁り》が並んでそのまま完走。    凄まじい事故に見舞われているところにもぎ取った勝ちですが、勝ちは勝ち。クリスティアン・カルカノさんでもこういうことがあるんだな……と気持ちが少し楽になった瞬間でした。  感想戦と共にサインをお願いしたところ、ご快諾いただきました。生涯の宝物とさせていただきます。   Round6 vsグルールアグロ    ここで仮想敵のグルールアグロ! ミラーを強く意識したメイン4枚の《叫ぶ宿敵》が目につきます。  当然ながら《逃げ場なし》擁するエスパーピクシーにとっては有利な相手。  2ゲーム共に《不気味なガラクタ》《逃げ場なし》をガンガン使いまわし、相手の脅威を綺麗に対処した完勝。  これで3勝目、あと1勝で二日目進出です。 Round7 vsグルールアグロ  続いてまたもやグルールアグロ。こちらは《噴出の稲妻》4枚型です。  1ゲーム目で順調に裁きながら《呑気な物漁り》で押し付けていったところ、《探索するドルイド》から《多様な鼠》《巨怪の怒り》がめくれ、そのままライフが18点から5点に。  返しでライフを1点まで詰めるも、再度の《巨怪の怒り》に除去を合わせられず敗北。    2ゲーム目では《精体の追跡者》を絡めたコントロールプランが的中し危なげなく勝利。    3ゲーム目では1ゲームと同じくライフを1点まで詰めるも、《巨怪の怒り》込みでピッタリ足りてしまい敗北。《巨怪の怒り》に泣かされるゲームでしたね。    これで3-4、もう後がありません。  今回敗北してしまったとは言え、依然としてグルールアグロには有利。次回もグルールアグロでお願いしたい……と祈りながらマッチング。   Round8 vsグルールアグロ    祈り、届く!! が、メインから《名もなき都市の歩哨》が2枚ありエスパーピクシーにややガードを上げている形。  1ゲーム目では危惧していた《名もなき都市の歩哨》を強く使われ、成す術もなく敗北。崖っぷちに追い込まれてしまいました。    2ゲーム目ではしっかり捌いて順当に勝利。    運命の3ゲーム目、お互いにマリガン。  ワンマリガン後の後手で《不気味なガラクタ》《嵐追いの才能》《勢い挫き》《精体の追跡者》《この町は狭すぎる》《孤立への恐怖》《一時的封鎖》《闇滑りの岸》。土地1枚、通常ならばマリガンを考える手札ですが……    相手はワンマリガンでキープ。ダブルマリガンしてしまうとリソースが足りなくなってしまうおそれがあります。  土地1枚とはいえ、2枚ドローで土地を引かない確率は約3割ほど。《不気味なガラクタ》で除去自体は可能で《嵐追いの才能》もありギリギリゲームはできそうです。    長考の末、これまでの経験を信じてキープ。    すると次のドローが白黒ファストランドの《秘密の中庭》!最高のドローです。その次のドローもファストランドで《精体の追跡者》を唱えられる目処までつきました。    相手の攻め手を《不気味なガラクタ》《勢い挫き》で捌きつつ、《精体の追跡者》が着地してそのままコントロールプランにシフト。  ライフが1桁になることもなく、そのまま完勝。  勇気のキープで二日目進出を掴み取りました! やったー!  ちなみにこの際、当時の革新的なデッキであったラクドス吸血鬼を手にプロツアー「カルロフ邸殺人事件」優勝を果たした殿堂プレイヤーセス・マンフィールドさんや世界選手権23で優勝を果たしたジャン=エマニュエル・ドゥプラさんと遭遇し、サインおよびツーショットをお願いしていました。    その勢いのまま、シカゴの夜へ繰り広げPizano's Pizza & Pastaというお店で心行くまでピザを楽しんできました。  また、このお店ではホワイトソックスのユニフォームや写真などがあり、野球ファンである私と小林遼平さん二人で興奮しながら眺めていました。 プロツアー2ndドラフト  そして迎えた二日目の朝。  二日目の卓ドラフト、4-4なのでここでは2-1以上取りたい! という気持ちでテーブルについたら……10人!?  なんと二日目で二卓しかない10人ドラフトになってしまいました。これが吉と出るか凶と出るか。    1-1は……《竜航技師》!  唯一消尽能力を2つ持ち、いずれも強力な構築級の効果。間違いなくボムレアです。シングルシンボルのため、タッチカラーで使えるのも◎。    プロツアー「カルロフ邸殺人事件」に出場する友人のために英語トークンセットに加え、ボムレアの一つ《蜘蛛網の頭、アイゾーニ》の蜘蛛トークンだけ多めに渡したことがあります。  すると一日目ドラフトの3-1で見事《蜘蛛網の頭、アイゾーニ》を引き当て、これが大活躍で3-0発進と好スタート。    そんな友人からお返しとばかりに霊気走破の英語トークンセットをいただいたところ、ボムレアである《竜航技師》の4/4飛行恐竜・ドラゴントークンだけ3枚と多めになっていました。  その友人の顔が脳裏に思い浮かびました。本当にありがとう……    1-2のパックを見ていったところ、《網撃の精鋭》の姿が。  他にもめぼしいカードもなく、アンコモンも3枚残っていたことからおそらくレア以上が二枚出たパックでこの二択になったと予想。緑への渡りをつけるべくピック。  続く1-3では……  ん!? なんと2枚目の《網撃の精鋭》。  アンコモンが2枚だったためこれよりも強いアンコモンを優先していそうです。上家は緑をやらない方針であろうと考え、棲み分けが出来そうだとピック。  その過程で緑のトップコモンである《突進する小走り足》を2枚ピックできたため緑はほぼ確定。  が、《竜航技師》に絡む赤の流れは無く、上は赤をやっていそうな気配。青や黒の流れもあまりない中で《クラウドスパイアの隊長》などの白のカード群が流れてきたためつまんでおきます。    1パック目としては緑+白+《竜航技師》といった具合の内容。  緑はほぼ確定であることから緑赤か、あるいは緑Xタッチ赤か……と考えていました。    続く2パック目の1手目はレアが弱く、《突進する小走り足》と《レインジャーズの給油機》の二択。  《突進する小走り足》は既に2枚あり、緑青タッチ《竜航技師》の消尽デッキが恐らく目指すべきデッキだろうと考え《レインジャーズの給油機》をピック。  2-2で消尽の1回制限を撤廃する《エルフの補給者》もピックでき、今度はいいデッキができそうな予感。    1パック目で青や赤の流れが悪いということは、逆回りとなる2パック目ではこの流れが良くなるのは必然。  2/1/3飛行の消尽持ちである《飛空跡の技師》、2マナカウンターの《幽体の干渉》など青の良コモンが流れ込み、その流れに乗っていきます。  そして2-5で流れてきたのは……  緑青のボムレアの一つである《仮面のレーサー、シータ・ヴァルマ》!  これが5手目で流れてくるならば間違いなく下に緑青をやっている人は存在しないと言ってもいいでしょう。当然ながらピック。    その過程でタッチ赤するために緑赤の土地である《岩だらけの高地》、マナリス機体である《輪心のバイク》をピックし緑青タッチ赤への視界は良好。    そして一周する最後のパックである2-10で《レインジャーズの霊気蜂巣》!! これが一周するイコール卓一の席に座れたことを確信した瞬間です。  総じて2パック目では青を中心にピックしつつ緑青マルチもきちんと取れており、タッチ赤のためのカードも取れていることから完成度の高いデッキに仕上がりそうだぞとワクワクしっぱなし。    そうして迎えた最後の3-1は……  霊気走破の顔である《灯を追う者、チャンドラ》!!  もともと《竜航技師》のためにタッチ赤を進めていたところにこれは朗報以外の何者でもありません。    こうしてできたデッキがこちら。  《轢殺》や《砂丘の危険》などは流れてきませんでしたが、それ以外はかなり良い感じです。  霊気走破における緑青は序盤を凌いでしまえば中盤以降は消尽で差をつけていけるため、1-2マナ域が非常に厚いのは追い風です。  ボムもしっかり複数あり、3-0まで見えてくるよいデッキを組めたと確信。プロツアー二日目という場所でしっかり基本に従ったドラフトが出来たのは大きな自信になりました。  ちなみにドラフトデッキの構築テーブルの目の前にあのジェイソン・イーがいらっしゃったのでこちらもツーショットをお願いしました。カワウソトークンにサインもいただけました!!   Round9 vsラクドス  こうして迎えた9戦目、初手が弱い。  ここは「デッキが強いならマリガン」というドラフトにおける鉄則に従いダブルマリガンを敢行します。  ここで《山》《森》《島》と3色出るハンドかつ《突進する小走り足》《幽体の干渉》もあったことからキープ。  ラクドスでしたが、《仮面のレーサー、シータ・ヴァルマ》から《竜航技師》を見せると対戦相手が「は??」という顔をされ、そのまま圧勝。  2ゲーム目も同じく《竜航技師》が大暴れし、危なげなく勝利。  感想戦で「《網撃の精鋭》を流しただろ? あれ、《求道神、ハゾレト》との二択だったんだよ」と教えてもらいました。確かに上家の方でしたね、それなら仕方ない…… 「そのデッキ見せてくれるか?」と言われたので見せるとだんだん怪訝そうな顔になり、「チャンドラまであるのか!? ハァ~! 3-0おめでとう」という言葉までいただきました。   Round10 vsゴルガリ  続く10戦目。  1ゲーム目は《仮面のレーサー、シータ・ヴァルマ》で圧勝。  続く2ゲーム目ではこちらのデッキの回りが芳しくないところに《重厚な世界踏破車》から《屑転がし》! とんでもないデッキだった!!  圧倒的パワーの前に成す術もなく敗北。    3ゲーム目では……マリガン、マリガン! そして土地詰まり。  そうこうしているうちに2ターン目《ブルードハート・エンジン》から諜報で《轟雷のブルードワゴン》が落ちてしまいます。ヒエエ~~~~あの卓、3-0デッキを2つ作り出していたのか……!!    いいところもなく敗北。まさかこのデッキで負けてしまうとは……対戦相手の方から「Sorry for manascrew(マナスクリューなのにごめんね)」と気遣われてしまうレベルでした。    感想戦でお互いにデッキを交換して「あのテーブル、3-0デッキを二つ作ってたね」という話で対戦相手の方も強く同意しており、「We truly both had 3-0 decks!(本当に二人とも3-0デッキだったね!)」というのが対戦相手の言でした。  「絶対に3-0してね! こっちは2-1しとくから!」と伝えると、笑いながら「OK! サイコロを交換していい?」と申し出が。快く応え、ツーショットした後に固く握手を交わしました。  この出会いもまたマジックのいいところです。   Round11 vsvsセレズニアタッチ赤    そしてドラフトラウンド最後の11戦目では……    Hareruya Prosの松浦さんとの日本人対決!  セレズニアタッチ赤で、《ボヤージャーの滑空車》の姿が。  しかし1ゲーム目では《突進する小走り足》から《仮面のレーサー、シータ・ヴァルマ》で押し切り勝利。  続く2ゲーム目で《幽体の干渉》を構えるも、しっかり土地を伸ばしてきて7マナで《重厚な世界踏破車》。  こちらの土地が止まってしまったところにちゃんと《幽体の干渉》をケアしてくる動きにやられ敗北。    3ゲーム目では《エルフの補給者》から《竜航技師》。つまり……  そういうことです。  延々と産み出される4/4恐竜・ドラゴンの前には流石の松浦さんでも膝を屈し、勝利をもぎ取りました。    3-0とはなりませんでしたが、プロツアー二日目ドラフトラウンドで2-1の勝ち越しは大きな財産!    この時点で6-5。プロツアーチェインをするためにはここからスタンダードラウンドで4-1しなければなりません。  この時点ではチェインのことは考えておらず、ただひたすらプロツアーという場を楽しむ事しか考えていませんでした。   Round12 vsグルールアグロ  グルールアグロ4連戦! 《叫ぶ宿敵》メイン4枚で有利ですが、なんとサイドに《強情なベイロス》の姿が。グルールアグロでこれを入れた型は初めて見ましたが、どうなることやら……  1ゲーム目、先手。 1ターン目《呑気な物漁り》 2ターン目《呑気な物漁り》《嵐追いの才能》 3ターン目《望み無き悪夢》《養育するピクシー》《嵐追いの才能》 4ターン目《この町は狭すぎる》でブロッカーをどかしてリーサル    2ゲーム目、後手。 1ターン目《呑気な物漁り》 2ターン目《呑気な物漁り》《呑気な物漁り》 3ターン目《不気味なガラクタ》《逃げ場なし》 4ターン目《養育するピクシー》《逃げ場なし》    これまでも経験したことのないブン回りによって20分で勝利。対戦相手も釈然としない顔でした。   Round13 vsグルールアグロ  なんとドリームチーム「チーム・コスモス」のリーダーであるアンソニー・リーさん!  非常に気さくな方で、アンソニー・リーさんがコレクションしているプロプレイヤートークンをきっかけに話も盛り上がっていました。  私も様々な方からいただいたサインをもらったカワウソトークンを見せると、「同じテーブルにドミンゲスがいるよ、サインが欲しいなら声掛けるよ」と仰っていただきました。  そのご厚意に甘えることにしながらいざ勝負!    1ゲーム目では後手、《心火の英雄》に《不気味なガラクタ》、《多様な鼠》に《養育するピクシー》から再度《不気味なガラクタ》で綺麗に対処。  その後も《逃げ場なし》を《孤立への恐怖》で使いまわすなどで対処し続け、息切れしたところに詰め切って勝利。    続く2ゲーム目では《カープルーザンの森》2枚と《魂石の聖域》という土地の内訳で行動するたびに1点を受けていくアンソニー・リーさん。  それに対して捌き続ける私という構図で、最終的には《精体の追跡者》からの《望み無き悪夢》《勢い挫き》のコントロールプランが刺さり勝利。  試合後にハビエル・ドミンゲスさんがたまたま横を通ったところにアンソニー・リーさんが呼び止めていただき、サインをしていただけました。  その際にアンソニー・リーさんにもサインをお願いし、ツーショットも撮らせていただきました。本当にありがとうございます。  非常に丁寧かつにこやかにプレイされる方で、やっててとても楽しかったです。   Round14 vsジェスカイ眼魔  今大会で森山ジャパンおよびガブリエル・ナシフなどがチームデッキとして持ち込まれた台風の目であるジェスカイ眼魔。正直言って不利です。    1ゲーム目、祈りながらこっそり《望み無き悪夢》をすると、それに対して首を小さく振りながら笑顔で捨てられます。そこには……  はい。もちろんそのまま流れるようにリアニメイトされ瞬く間に敗北。    続く2ゲーム目ですが、引きがピリッとしません。引くは土地ばかり。  《プロフトの映像記憶》から《蒸気核の学者》で膨れ上がるクロックの前に敗北してしまいます。   Round15 vsドメインランプ  仮想敵の一つ、ドメインランプがここで立ち塞がります!    まず確認するのは《害獣駆除》の枚数。メインに1枚、サイドに……3枚!? マジかよ~~~とサイドの《害獣駆除》3枚に指差すと「ヘヘヘ」と憎めない笑顔を返されました。  ダイスに勝利しまず先手。  《呑気な物漁り》から《嵐追いの才能》《悪意ある呪詛術士》とロケットスタート。《害獣駆除》も1枚しかありませんし、裏目は気にしていられません。  3ターン目で《養育するピクシー》《嵐追いの才能》でライフを9点まで詰め、何らかの除去がなければ負けの盤面を作り出しそのまま勝利。  2ゲーム目では《悪意ある呪詛術士》スタート。  そのまま《孤立への恐怖》へと繋ぐも、相手も《ホーントウッドの大主》。こちらの引きも負けておらず、《邪悪を打ち砕く》《喝破》の二段構え。  《魂の洞窟》から《永遠の策謀家、ズアー》! 《ホーントウッドの大主》に《邪悪を打ち砕く》でなんとか凌ぎます。  ライフを残り5点まで詰めたところで《害獣駆除》、そこに《否認》。2枚目の《永遠の策謀家、ズアー》には《喉首狙い》と完璧な回答をし続け、完勝。    気付けば9-6、プロツアーチェインまで目前に迫ってきました。対戦相手も「次でチェインだね、グッドラック!」と声をかけてくれます。   Round15 vsジェスカイ召集  最後に立ち塞がるのはHareruya Prosのマッティ・クイスマさん。紛う事なき強豪の一人です。  試合前にも関わらず快く記念撮影に応えていただいたマッティ・クイスマさんに感謝を。    1ゲーム目では《孤立への恐怖》のブロッカーで上手く足を止めつつ、《養育するピクシー》でクロックを刻んでいきます。  ライフ1まで詰められたところに《この町は狭すぎる》で相手のブロッカーを排除し、なんとか勝利! プロツアーチェインまであと一歩のところまで迫ります。    2ゲーム目、《内なる空の管理人》の占術を数回された後に《喉首狙い》で何とか対処。《望み無き悪夢》で手札を0にした後のトップは……  最も引かれたくないカード、《イーオスの遍歴の騎士》。  仕方なく通し、コンバットを絡めた《逃げ場なし》で何とか対処。  そして次のドローは……  《イーオスの遍歴の騎士》。さすがにどうにもならず、敗北。    続く3ゲーム目、マリガン。  《一時的封鎖》《一時的封鎖》《養育するピクシー》《精体の追跡者》《呑気な物漁り》《闇滑りの岸》《金属海の海岸》。  悩んだ末に何らかのエンチャントを引いた時のバリューとの兼ね合いを考えて《一時的封鎖》をボトムに。    結論から言うとこの《一時的封鎖》ボトム送りが敗着でした。  《一時的封鎖》に対して《邪悪を打ち砕く》によって対処され、唱えられた《イーオスの遍歴の騎士》からは……  《萎れ葉のしもべ》。  《イモデーンの徴募兵》。    そして唱えられる2枚目の《イーオスの遍歴の騎士》。そこまで引かれたらもうどうにもなりません。  次ターンに唱えられた《イモデーンの徴募兵》と共に全軍突撃してくるマッティ・クイスマさんに対して「プロツアーチェインおめでとうございます」と手を差し出しました。    こうして私の初めてのプロツアーは最後のプロツアーチェインバブルマッチに敗北し、9-7という結果になりました。   初プロツアーを終えて  ちなみに結果としては9-7ですが、同じ9-7の方々を軽く見てみたら卒倒しました。  説明不要の日本人殿堂プレイヤー中村修平さんおよび八十岡翔太さん、2021年世界選手権優勝の高橋優太さん、2023年世界選手権優勝のジャン=エマニュエル・ドゥプラさん、プロツアーモダンホライゾン3準優勝を筆頭に幾多の実績を残しているサム・パーディさん、パイオニアのラクドス吸血鬼を持ち込みプロツアーカルロフ邸殺人事件優勝のセス・マンフィールドさんなどなど……「錚々たる」という言葉でも足りないほどの方々が揃っています。  もちろんこれに書き切れなかったプレイヤーもたくさんいます。これがプロツアー、凄まじいの一言です。    あと一歩のところでプロツアーチェインを逃した形でしたが、不思議と清々しい気持ちでした。    というのも、私が競技マジックをする上で「レベルの高いプレイヤーと対戦し、切磋琢磨して楽しみたい」が大きな理由となっています。  これを実現できるのは上手い方が集う競技の世界であり、そこに飛び込むのは必然でした。そうして気が付けばプロツアー権利まで得ていました。    そして、このプロツアーはまさしく私にとって理想とする場所でした。    対戦相手はいずれもとても上手く、ミスと思える動きが一つもありませんでした。完璧な動きをずっとしてきます。  常にお互いに最善手を打つという前提の下、生まれるゲームとドラマ。これをいつまでも味わいたい……とプロツアー中にずっと考えていました。    最終試合で負けた瞬間、悔しさよりも真っ先に「ああ……もう終わっちゃったのか、寂しいな。もっとやっていたいな」という寂寥感がありました。  二日間で合計16回戦もやったのにも関わらず! それほどまでに楽しかったのです。  ちなみに野生のマローことマーク・ローズウォーターさんに遭遇! もちろんツーショットをお願いしてきました。本物だ……!!!  そして忘れていけないのはジャッジの方々。  耳が聞こえない私が楽しくプレイできるのは対戦相手のみならずジャッジの方々のおかげでもあります。ジャッジステーションへ向かい、お礼の言葉を伝えて記念写真もご快諾いただきました。  本当にありがとうございました。  その後はホテルの横にあった火鍋のお店に行き、久しぶりの茹でた野菜や豆腐が心の中から安心するような味に舌鼓を打ちました。   プロツアー最終日  そして翌日、実はプロツアーはまだ終わっていません。  今回のプロツアー出場者で権利を得ていないプレイヤーのみが出場できるPTQがあります。世界一レベルの高いPTQとも言われていますね。  が、初戦で赤単に対して《コイロスの洞窟》から10点ほど食らう、を2回繰り返して即敗北。こんなもんですよね。  ちなみに右手にジョジョの「ゴゴゴ」のタトゥーを入れており、「誰が好きなの?」と聞くと「モハメド・アブドゥル!」と返ってきて風貌も相まって納得の一言でした。 私はワムウが好きで、それを伝えると「オオ~グッドガイ!」と大喜びでした。まさかシカゴの地でジョジョ談義をできるとは……  そして10戦目のドラフトラウンドで笑い合ったBassel NasriさんがなんとこのPTQで6-0して突破! 思わず声を掛けに行くと、力強いハグをしてくれました。  この地で仲良くなれた戦友の勝利は嬉しいものですね。    これで私の初プロツアーは終わりました。長くも短い三日間でした。  本当に最高の場所でした。また来るぞ、プロツアー!  その後は時間が出来たのでマジックコンを見学していきました。  凄まじい人!!  完成度の高いサルカンのコスプレイヤーさんもいらっしゃいました。とんでもない眼力にタジタジ。  調整仲間である小林遼平さんと共に新カードとして発表されていた《龍へと昇る者、サルカン》との記念撮影。  霊気走破のレースを体験できるコーナーもありました!その後に表彰台に乗れるようで見てて面白かったです。  ちなみに私と小林遼平さんはアゾリウスコントロークフリーク。そんな中で見つけたフルアートのプロモ版《対抗呪文》。1枚……7ドル!? 安い!  思わず二人とも4枚買った時の写真です。カンスペはなんぼあってもいいですからね。  イラストレーターブースもかなり熱く、《ライオンの瞳のダイアモンド》を描かれたMargaret Organ-Keanさんもいらっしゃいました。  他にも《黙示録、シェオルドレッド》《熾火心の挑戦者》のChris Rahnさんなど、サインをお願いしたくなるような方々もたくさん。    次回があればちゃんとイラストレーターの情報も収集してサインをもらいに行きたいところです。  帰路につこうとしたところに《星界を呼ぶ者、ゾラリーネ》のセクシーなコスプレをされた方も見つけ、写真をお願いしました! アメリカすごい!    アメリカ最後の晩餐ははまさんに連れていただいたオイスターハウス!     焼き牡蠣はこの世のものと思えぬほどの美味でしたが、これでなんと42ドル(約6,300円)。  リブロースステーキも非常に美味。79ドル(約11,800円)ですがこの際値段は気にしないことにします。  ロブスターも初めて食べましたが天国に昇るような味でした。ええ、値段は気にしません。  デザートも大変豪華で、GODIVAを使ったケーキもありました。  はまツアーの参加者たちと記念撮影。 一人130ドル(約2万円)と高額でしたが、とてもいい時間でした。    そして帰国する最後の日。  まずホテルでパシャリ。  シカゴ空港も時間さえあればゆっくり見て回りたいほど魅力的な場所でしたが、時間がなく断念。  約14時間のフライトを経て無事帰国!     これが私の初プロツアーの道程です。とても楽しい一週間でした。  旅行記を通して皆様にもお楽しみいただけたら幸いです。    次は5月に開催されるチャンピオンズカップファイナル。  プロツアー二日目に進出したことでファイナル権利を得たため、次はこの大会に向けて楽しみながら腕を磨いていこうと思います。    また行くぞ、プロツアー    Let's Enjoy Magic!

Let's Enjoy Magic! - Pro Tour Aetherdrift in Chicago(プロツアー旅行記前編)

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2025.03.06

Akira Kobayashi

 皆さん、こんにちは! 「へいか」こと 小林 輝(@enzyutuheika)です。    記事タイトルの通り、チャンピオンズカップファイナルシーズン2ラウンド3で9-3の13位という成績を残したことで得たプロツアー権利でシカゴのプロツアー「霊気走破」に出場してきました!    結論から申し上げますとプロツアー本戦では4-4でギリギリ二日目進出し、二日目では9-6で迎えたプロツアーチェインバブルマッチ(10勝以上だと次回のプロツアー権利を獲得できます)でHreruya Prosのマッティ・クイスマさんに敗北し9-7の113位でした。    そして翌日に行われたPT出場者限定の世界一レベル高いPTQことセカンドチャンスPTQでは初戦敗退という結果でした……が、このプロツアーでは本当に何事にも代えがたい経験をさせていただきました。  というわけで、プロツアーの準備から帰国に至るまでの道程を、前後編で書かさせていただこうと思います。長くなってしまいますが、お付き合いいただけると幸いです。    なお、今回はマジックの記事というより、プロツアー旅行記がメインとなります。   ・はじまり~プロツアー「霊気走破」に出場した経緯~  まずは本プロツアー霊気走破に出場するに至った理由であるチャンピオンズカップファイナルシーズン2ラウンド3。  この詳しい内容については私のNoteで恐縮ですがこの記事に記載されています。是非ご覧ください。  このチャンピオンズカップファイナルシーズン2ラウンド3で愛機のアゾリウスコントロールを手に9勝3敗という成績を残し、13位になったことでプロツアーの権利を得ました。  が、この時に得られた権利は翌月の6月末に行われるプロツアー「モダンホライゾン3」。    仕事面やパスポートの問題など様々な理由によって断念し繰り越しをお願いしたところ、世界選手権を挟んだ事もあり権利を獲得した2024年5月からかなり間の置いた2025年2月のプロツアー「霊気走破」出場となりました。 旅行前準備編  これについてははまさん(@ziguyan)主催のはまツアーに参加させていただき、羽田空港~シカゴの直行便およびホテルを確保していただきました。  感謝してもしきれません。ちなみに金額としては合計24万ほど。激痛。    それに伴いGoogleスプレッドシートのToDoテンプレートを使って必要なものをリスト化し、一つずつ潰していきました。  海外でのネット環境についてはソフトバンクユーザーであったため、アメリカ放題というサービスがあり特に手続きの必要もなくできました。  防寒着に関してはこの時期のシカゴはなんとマイナス15度。恐ろしい寒さです。手持ちはコートなどでダウンジャケットのような防寒着がなかったためこれも用意していく必要がありました。  ワークマンに寄ってみたもののよさげなものがなく仕方なくGUに寄ったところ、「ヒートパデッドブルゾン」というよさげなものを発見。かなりモフモフしています。  これが予想以上に暖かく、-15度という地獄のようなシカゴの寒さにも適応できる優れものでした。  今後の冬で愛用していくことになりそうです。値段も4,990円と安価でおすすめです!   ▼あってよかったもの ・延長コード  当然ながらホテルは備え付けのコンセントのみ。今回は5人で1部屋を使う事もあり、延長コードは必要だろうと持ち込みましたがこれが大正解。  1人1部屋であれば不要だとは思いますが、複数人で利用する場合は延長コードは強くお勧めします。     ・アイマスク  とにかく板です。  約14時間の長期フライトにおいてアイマスクの有無で睡眠の質が変わってきますし、同様に複数人で1部屋を利用する際も灯りに影響されず寝られるのは◎。   ・ウェットティッシュ  地味ながらMVP。日本とは異なり海外ではおしぼりのようなものは出てきません。予め手を拭いておくことができるウェットティッシュはかなりストレスが軽減されました。  特にシカゴではピザなどの手づかみのものが多く手が汚れたりするので結構活躍してくれました。   ▼持って行った方がよかったもの ・スリッパ  ホテルの部屋は土足可ですが、靴を履きっぱなしも疲れますのでスリッパは欲しかったです。(アメリカのホテルはスリッパなしが一般的らしい)  飛行機内でも靴からスリッパに履き替えられるとかなり楽そうだったので次回があればスリッパは是非持ち込みたいと感じました。   ・リップクリーム  普段使っているのですが、今回に限って忘れてしまい……  寒さも相まって本当に乾燥します。最終日には唇が切れてしまいちょっと大変でした。必ず用意しておきましょう。   プロツアーシカゴ旅行記  そうして迎えた2月19日、羽田空港へ朝9時前に到着。  はまさんを筆頭にはまツアーに参加される方々と合流し、そのまま10:50のフライトへ。  フライト時間は約14時間。13時頃に機内食を食べると暗くなりそのまま仮眠。そこから約5-6時間後に再度機内食を食べて暗くなり仮眠……の繰り返しでした。  機内食は結構美味しく、味噌汁も出てきたのが◎。さすがJAL。  この時やはりお尻がやや痛くなったりしたので、余裕があれば座布団などを持って行くといいかもしれません。  そうしていよいよ着陸!シカゴの上空から眺める光景は素晴らしく、思わず感動してしまうほどでした。  が、シカゴの気温はマイナス15度。外に出た瞬間凍り付くかと思いました。  よく一緒にMTGをしているいわきさんと記念すべきアメリカでの初マック。ホットチョコレートにしましたが、とんでもない甘さの暴力でザ・アメリカを味わいました。  第3ターミナルから第2ターミナルに電車で移動し、そこからUberで車を呼びホテルまで40分ほど揺られると……  目的地であるヒルトン・ガーデン・イン・シカゴ・マコーミックプレイスに到着。とにかくスケールがデカい!  ホテルの前にはマジックコンの広告もあり、ここでプロツアーに出るんだという実感が今更ながら湧いてきました。  とはいえプロツアーまであと二日、それまではシカゴを堪能することに……と言いたいところですが、さすがに長時間のフライトで疲れたのでUberを利用して部屋でいざシカゴピザ!  で、でかい!! チーズもたっぷり!! 暴力的!!  意気揚々とかぶりつきますが……  あまりにも重すぎてなんと2ピースで満腹、撃沈。即落ち2コマです。  この流れで同室の方とフリプなどをして就寝。  すがすがしい朝を迎え、早速ホテルの前にあるサブウェイへ! 何を選べばいいのか分からなかったため、店員さんにオススメを聞くと「それならビーフね!」とのことだったのでそれを注文。非常に美味でした。  また、ここで行弘さん・松浦さん達と遭遇! ああ、シカゴの地に集結しているんだな~と少し感動してしまいました。  ハーフを頼んだのですが、それでも非常に大きい! これで約8ドル(1,200円)。太さもペットボトル以上で満足感◎。  ちなみに他の部屋の方がフルサイズで頼んだ時の画像はこちら。500mlペットボトルと比較しても分かる通りデカすぎる……  ホテルの中にあるスタバでカフェラテも購入したところ、今度は井川さん・中村さんが!  この際に井川さんから「30回以上来てるけどこの寒さは初めて」「耳当ては特にいいのでオススメ」という言葉をいただきました。プロツアー先輩だ!!    優雅な朝食をとったら……そう、次は昼食ですね!  Il Culaccinoというお店が先ほどのサブウェイの横にあり、Google Mapの評価も高かったためはまツアーの参加組で突撃。  ここでも伝家の宝刀「店員さんのオススメ」を聞き、いただくことに。  このチーズがかかった物体はなんとフライドチキン。デカすぎる。  マジか……という顔をしながら頬張ると美味!! とにかくカロリーの暴力が襲い掛かってきます。  なんとか食べた後はプロツアー参加者たちで卓ドラフトの練習。  1-1《悪魔の破砕機》から1-2に《ロケッティアの技師、ダレッティ》の姿が。普段ならスルーですが、今回は《悪魔の破砕機》使いまわしが見えるためピック。  リアニメイトの《軌道修正》や確定除去の《スピン・アウト》など黒を中心にピックしていったところ、2パック目で《ブルードハート・エンジン》《轟雷のブルードワゴン》が流れてきたため綺麗に緑黒の席に座れた形となりました。    3パック目では《アラクリアの心、カラドーラ》が流れてきたためこれをカットしつつ白黒土地の《磨かれたやせ地》も拾えたためタッチ白で完成度の高いデッキが完成。    結果はマリガンとマナフラッドに屈し2-1となりましたが、除去もありデカブツもありリアニメイトもありと非常によい緑黒に出来上がったと感じました。プロツアーに向けて視界良好!    そして午後5時頃から開催されるプロツアー出場者用の前日パーティに参加すべくマコーミックプレイスへ。  このヒルトン・ガーデン・イン・シカゴ・マコーミックプレイスホテルはマコーミックプレイスに直通となっているためスムーズに行ける……かと思いきや、デカすぎて迷子に!!    プロツアー参加者らしき人を見つけ、パーティ会場はどこ? と拙い英語で筆談すると案内してくれ事なきを得ました。ありがとうございます。  そうして辿り着いたパーティ会場。ここでプロツアー出場者を証明するバッジと参加賞のバッグ・プレイマット・パックなどを受け取りました。    プレイヤー・オブ・ザ・イヤーのハビエル・ドミンゲスさんを筆頭に「錚々たる」という言葉ですら足りないほどの方々がそこら中に歩いています。  衝撃のあまり立ち尽くしてしまいましたがこうしてはいられません! ガンガン突撃を仕掛けていきます。  まずはYellowhatこと殿堂プレイヤーのガブリエル・ナシフさん。コントロールマスターであり、配信でよく勉強させていただいている方の一人です。  この方には持ち込んできた《喝破》《否認》にサインをいただき、ツーショット! 本当に目の前にあのナシフがいるんだ、と感動しきりでした。  そしてプロツアー・ファイレクシアで優勝を果たした殿堂プレイヤーリード・デュークさん! 日本の中でも特にファンの多いお方。  本当に聖人という言葉が似合う方で、溢れ出る色気とにこやかな笑顔に悩殺されてしまいました。サインをいただいている時にスタッフの方が「写真を撮るよ!」と仰っていただき、こうした写真も……  サインを書くリード・デュークさんの美しさのあまりに興奮してしまう私を見事に激写していただきました。  見てください、このリード・デュークの御顔を。これで惚れない男はいません。  そしてアゾリウスコントロールといえばこの方を忘れてはいけません。パイオニアでアゾリウスロータスというデッキを全世界に知らしめたパトリック・ウーさんです!  あなたの大ファンです! と伝えた時の照れくさそうな顔は忘れられません。  同じ2月に行われたチャンピオンズカップファイナルで見事優勝を果たしたマ・ノアさんも。  プロツアー権利を獲得したチャンピオンズカップファイナルシーズン2ラウンド3のフィーチャーマッチでとても楽しい時間を過ごしたということもあり、顔を合わせると声を掛け合う仲になりました。    それは今回でも変わらず、この場でも出会うと「オオ~!」と駆け寄ってくれました。お互いに明日の健闘を祈り肩を組みながらパシャリ!  イタリアのスターことアンドレア・メングッチさんも配信をよく見ており、私が憧れとしている一人です。  配信と変わらないハイテンションで快くツーショットとサインに応えていただきました!  世に大きな衝撃をもたらしたハンドシェイク謹製緑トロンを手にプロツアー・指輪物語で準優勝を果たしたクリスティアン・カルカノさんも!  非常に優しい方で、わざわざスマホのメモ帳に日本語で「ありがとう!頑張って」と書いてくださりました。    そうしているとハビエル・ドミンゲスさんのプレイヤー・オブ・ザ・イヤーの式が始まり、スピーチが始まりました。  英語なので話している内容はわかりませんでしたが、感無量の面持ちをされていたのがとても印象に残りました。おめでとうございます!  式が終わった後は解散したり、プロツアーの参加賞パックでドラフトしたりする中で同じく日本人の大川さんより「南米の人たちとドラフトしない?」というお誘いを受けドラフト! これも醍醐味の一つですね。  3マナ域で見えていないものは4枚目の《溶岩族の砲兵》です。  1パック目の時点でマルチアンコモンの《推進力強化帆船》《舷側砲の一斉射撃》を確保していたこともあり青赤に突撃した形。  とにかく《溶岩族の砲兵》が流れてくる卓で、こうなったら心中してやろう! と青赤一直線に向かうもののディスカードで強化する《たかり空エイ》《略奪するアオザメ》、最強コモンこと《雷頭の砲手》も流れてこない始末……  ただひたすら《溶岩族の砲兵》が流れてくるのでありがたくピックしつつ、迎えた3パック目では。  《灯を追う者、チャンドラ》!! これで報われた形となりました。    1戦目を危なげなく勝利したところで会場が閉まると連絡を受け、最後に記念撮影してから解散。とてもいい時間でした。  そして迎えたプロツアーの朝! 清々しい天気です。  ホテルの22階にあるというレストランに向かい、「Breakfast Sandwich」という文字があり朝だしサンドイッチはいいね! と注文。すると……  どう見てもハンバーガーじゃねえか!!と思わず突っ込んでしまいました。朝から食べるものではない気もしますが、非常に美味で完食。    後から知ったのですが、アメリカでは牛肉100%のパティを挟んだ料理だけがハンバーガーと名乗るのが許されるらしく、これは法律で定められている事なのだそうです。  つまり牛肉100%のパティではなくベーコンなどが挟まれている上記の料理はサンドイッチが正しいということになります。すげえやアメリカ。  同室の友人たちと共にバッジを掲げていざ出陣!  念願のプロツアー、不安よりも楽しみの方が勝っていました。  プロツアーのラウンジブースではベーグルやバナナ、ヨーグルト、各種ドリンクなど豊富で食べるものに困りませんでした。  ウォーターサーバーもあったため、参加賞としていただいたウォーターボトルに入れて飲んでいました。  ハビエル・ドミンゲスさんの姿もあったため、昨日ではお願いできなかったツーショットをパシャリ。見ても分かる通り、非常に大柄な方でした。   プロツアー本戦レポート…は次回  そして9:00、いよいよ運命の卓ドラフトが始まることになるのですが、あまりにプロツアーを前日から満喫してしまったため、記事が長くなりすぎました。    続きは明日の記事後編で!

【今週のピックアップデッキ】ゴルガリ陰湿な根/エスパー人間/アブザンケトラモーズ

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.03.05

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ ゴルガリ陰湿な根 エスパー人間 アブザンケトラモーズ   ゴルガリ陰湿な根 スタンダードリーグ : 5-0 By Depian MTGアリーナ用インポートデータ 『カルロフ邸殺人事件』で登場した《陰湿な根》。 墓地からクリーチャー・カードが離れるたびに植物を生成し、その後植物すべてが強化され、更にクリーチャー・トークンからマナが出せるようになると、様々な能力が付いたエンチャント。   この《陰湿な根》を主軸に据えたデッキはパイオニアでも活躍実績があり、スタンダードでもたびたびチャレンジャーは現れるものの、まださほど活躍は見せていません。   ですが、『霊気走破』で登場したとある1枚のカードが、《陰湿な根》に革命をもたらし、ついにデッキが完成しようとしています。   それが《脱皮の世話人》。カードを切削する能力はもちろん、墓地のカードを追放することでマナを出せるので、クリーチャー・カードを追放して植物を出しつつマナが出せるようになりました。墓地を肥やしつつ、《陰湿な根》も誘発させ、更に自身がクリーチャーと、《陰湿な根》と非常に噛み合った1枚です。 このデッキは墓地を必要とするため、他にも墓地肥やしが多数採用されています。   モダンでもお馴染みの《ベイルマークの大主》はクリーチャーを回収できる優れもの。切削してその中からクリーチャー・カードを回収できるので、《陰湿な根》もしっかり誘発してくれます。《陰湿な根》こそ拾えませんが、後述の《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》も拾えるので、強力な切削カード。 《蓄え放題》は《陰湿な根》を回収できる便利な切削カード。自身がクリーチャーでないため、墓地に落ちた後は役割を持ちませんが、それでもデッキのキーカードである《陰湿な根》にアクセスできれば十分です。 切削はオマケですが、《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》も一応切削を持つカードです。マナ総量が2以下のクリーチャーを吊り上げられるので、デッキ内の多くのクリーチャーをリアニメイトできるのですが、このカードは常在型能力が《陰湿な根》と噛み合うカードで、むしろそっちが目的で採用されていると言っても過言ではありません。 速攻を持つかのように起動型能力を起動できるようになるので、《陰湿な根》から出たトークンから即マナが出せるようになり、1ターンで《陰湿な根》を何回も誘発させられるようになるのです。   《陰湿な根》はトークンが増えた後に各植物を強化するため、5回誘発すれば5/6, 4/5, 3/4, 2/3, 1/2のトークンが場に並ぶことになります。《陰湿な根》をただ誘発させ続けるだけでも勝ててしまうのです。《陰湿な根》、すごいカード! 切削だけがライブラリーを削る手段ではありません。そう、諜報です。必要なカードをライブラリーに置けるので切削の超上位互換とも言えるこの能力をたった1マナで持つ《瓦礫帯の異端者》は、いぶし銀の存在。墓地から追放してクリーチャーを強化すると《陰湿な根》も誘発するので、引いて美味しい、落ちて美味しい1枚。いぶし銀どころではないかもしれません。 そして《うなる大殺犬》はパワーが2以下のクリーチャーが戦場に出るたびに諜報を行います。デッキ内の多くのカードがパワー2以下なのに加え、《陰湿な根》から出る植物でも諜報できるのです。《うなる大殺犬》を用いたコンボもあります。 そのコンボを説明するために先に紹介しておかなければならないのが《骨術師の達人》。このターン、墓地のクリーチャー・カードを給餌コストを追加で支払って唱えることができるようになります。 給餌は、墓地から3枚のカードを追放するか食物を生け贄に捧げることを指すのですが、このデッキではもちろん墓地を3枚追放して使用します。そう、この給餌でも《陰湿な根》が誘発するのです。 この《骨術師の達人》《うなる大殺犬》《陰湿な根》《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》が揃うとゲームに勝てます。   まず《骨術師の達人》の能力を起動。給餌でカードを3枚追放して墓地のクリーチャーを唱え、《陰湿な根》からトークンが出ます。そしてトークンが出たので《うなる大殺犬》の諜報が解決。その後、墓地からクリーチャーが帰ってくる際に、もう1度《陰湿な根》が誘発するので、《うなる大殺犬》で再び諜報。 その後、クリーチャーが戦場に出るので、それがパワー2以下ならまた諜報が発生します。このすべての諜報でカードを墓地に送っていれば、それがそっくりそのまま給餌コストになるので、再び別のクリーチャーを唱えられます。マナは先ほど《陰湿な根》でトークンが2体出たのでそこからまかなえます。 《瓦礫帯の異端者》を墓地から唱えれば更に諜報2のオマケがついてきますし、《脱皮の世話人》でも切削が可能なので、繰り返していくことで、プラスマイナス0ではなく、墓地が増えていきます。   諜報で2枚目の《うなる大殺犬》が落ちれば、そこからは各諜報量が倍になるので、ライブラリーをすべて掘ることができるでしょう。最終的には墓地に落ちた《ヴォルダーレンの興奮探し》で相手の致死量のパワーを持つ植物トークンを投げてゲームエンドというわけです。 もちろんクリーチャーがまったく落ちずに《陰湿な根》の誘発ができなくなり、コンボが止まってしまうことはあります。そのため揃った瞬間に確実に勝利できるというわけではありませんが、仮に止まったとしても全体除去以外では対処できない場になります。   緑黒で墓地も場も使ってガチャガチャやりたい……そんな方には超オススメ!     エスパー人間 パイオニアリーグ : 5-0 By  Catervus MTGアリーナ用インポートデータ 一昔前から強化され続けている種族と言えば人間。   人間が作っているカードゲームだからなのか、単にどのエキスパンションにも出しやすいからなのかは定かではありませんが、人間はやたら強化されています。かつてモダン5色人間が暴れ回っていたほどですからね。 そんな人間がパイオニアでも登場しました。もちろん白単アグロを人間と呼んでいるわけではありません。エスパーカラーの人間デッキです。   デッキ自体は言うまでもなくビートダウンデッキ。人間クリーチャーの1マナ域には高スタッツかつ優秀な能力を持つ人間が集まっています。   《徴兵士官》は1マナ2/1な上にマナフラッドした際にはクリーチャーを供給する《サバンナ・ライオン》が裸足で逃げるレベルのハイスペッククリーチャー。《有望な信徒》と一緒に白単人間でも活躍していますね。 《アクロスの英雄、キテオン》も1マナ2/1で、こちらはプレインズウォーカーに変身できますが、伝説なので1枚のみの採用となっています。 あまり見ないのは《古参の生存者》でしょうか。こちらも当然1マナ2/1でメリット付き。《サバンナ・ライオン》だけでなく、昔《サバンナ・ライオン》をお年玉で買った経験のある僕も泣いています。 生存していると墓地を追放できるオマケ付きで、このデッキでは《古参の生存者》を強化して生き残らせることが可能なので、墓地対策にしっかりなってくれます。面白いチョイスですね。   1マナ域はすべて白でしたが、2マナが急にカラフルになります。   まずは《不屈の将軍、ジリーナ》。戦場に出た時に墓地を追放しつつ、自身を生け贄に自分の全人間に呪禁と破壊不能を付ける能力を持ちます。墓地対策と全体除去対策を兼ねる良将軍。 そして一見するとなぜ入っているか理解できない《潜入者、悟》!もちろんこのカードも人間。なのですが、ドローするためにはクリーチャーを唱えずに戦場から出す必要があります。なぜ入っているのかはクリーチャーを見ていても答えは出ません。 スペル欄を見ましょう。そう、《英雄たちの送り火》です!このカードを使って《潜入者、悟》を誘発させることができるのです。 クリーチャーを生け贄に捧げることで、そのクリーチャーよりマナ総量が1多く、共通のクリーチャータイプを持つクリーチャーをデッキから出す。要するに《出産の殻》ですね。1マナの人間を生け贄に2マナの人間をサーチして場に出せるのです。 《英雄たちの送り火》から出たクリーチャーは当然唱えたわけではないので1ドローでき、《潜入者、悟》との相性抜群です。   特に《サリアの副官》はクリーチャーを強化しつつ、自身を《英雄たちの送り火》で生け贄に3マナ域の人間を呼び出せるので、サーチ先筆頭となることでしょう。 《英雄たちの送り火》によって場に出る3マナ域、《輝かしい聖戦士、エーデリン》は白単人間でも活躍する超強力な人間。生成したトークンも人間なので《英雄たちの送り火》で1マナの人間に代わります。 《救出専門家》は《英雄たちの送り火》との相性が抜群。生け贄に捧げたばかりのクリーチャーをそのまま場に戻すので、《サリアの副官》ならカウンターが更に乗り、《魅力的な王子》なら《救出専門家》をブリンクし、更に他のクリーチャーを墓地から復活させます。 そしてマナカーブの頂点となる4には《刃の歴史家》も控えています。《英雄たちの送り火》がひとたび動き出せば、盤面にクリーチャーを並べ、強化し、時にはカードを引き、最終的には二段攻撃と、1枚で完結してしまいます。 人間は干渉手段に乏しいのが弱点ですが、《英雄たちの送り火》から《反射魔道士》《帆凧の窃盗犯》をサーチでき、非常に器用なデッキとなっています。 ただの人間には興味がない。そんなあなたにはエスパー人間が良いでしょう!     アブザンケトラモーズ モダンリーグ : 5-0 By Gavin5499 『霊気走破』のトップレア《新たな夜明け、ケトラモーズ》! 既にモダンではオルゾフブリンクに組み込まれ、《溌剌の牧羊犬、フィリア》や《ちらつき鬼火》で気軽にカードをもたらしてくれますが、今回はそんな《新たな夜明け、ケトラモーズ》を更にフィーチャーしたデッキ、アブザンケトラモーズを紹介します。 どのぐらいこのデッキが《新たな夜明け、ケトラモーズ》に命を懸けているかというと、《テーロスへの侵攻》を採用しているほどです。 このカードを初めて見たという方も多いでしょう。戦場に出た時にライブラリーからオーラや紙や亜神をサーチできるバトルです。そう、当然ながら主なサーチ先は神、すなわち《新たな夜明け、ケトラモーズ》になります。 ここで《新たな夜明け、ケトラモーズ》の能力についておさらいしましょう。あなたのターンに戦場や墓地から1枚以上のカードが追放されるたびに1ドローできる能力です。   最も相性が良いとされているのが《大祖始の遺産》です。オルゾフブリンクにも採用されるようになりましたが、まず上の能力で自分の墓地を1枚追放して1ドロー、その後《大祖始の遺産》の下の能力を使うと、《大祖始の遺産》が自身の能力で追放されて1ドロー、その後墓地が追放されるので1ドロー、最後に《大祖始の遺産》の効果で1ドローと、《大祖始の遺産》1枚で4枚のカードが引けるのです。 しかも墓地対策を兼ねるため、《火の怒りのタイタン、フレージ》も安心。 また相手のクリーチャーを追放するカードとの相性も良好です。《孤独》は当然として、更にその上から《薄氷の上》《骨化》と大量の追放カードが採用されています。 面白いのが《輝晶の機械巨人》の採用です。マナ総量が1以下のアーティファクト・エンチャント・クリーチャーをサーチできるこの機械巨人は、《大祖始の遺産》《薄氷の上》にアクセスできるので、《新たな夜明け、ケトラモーズ》で大量ドローする準備をしてくれます。 《新たな夜明け、ケトラモーズ》が墓地落ちた場合は《死者の神のお告げ》を持ってくるなど、器用なカードです。 そしてここまでカードを見ていて「戦場に出た時に~」と書かれたものがやたら多いことに気が付いたのではないでしょうか?   そんなカードを更に強化するのが《機械の母、エリシュ・ノーン》。 こちらの戦場に出た時の誘発を倍にしつつ、相手の誘発を止めてしまうので、特に同じ《新たな夜明け、ケトラモーズ》を使うオルゾフブリンクに強く、これ1枚でゲームに勝てるほどです。 もちろん誘発が倍になるだけでも脅威で、《孤独》をはじめとした各種除去が複数回誘発し、個々で《新たな夜明け、ケトラモーズ》で更に引けるので、《機械の母、エリシュ・ノーン》が生き残ればゲームセットでしょう。 《新たな夜明け、ケトラモーズ》でもっと気持ちよくなりたいならこのデッキ!!

【週刊メタゲーム通信】エスパーピクシー大活躍!赤単などのアグロ勢の活躍とアゾリウス全知

2025.03.04

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今回はマジックオンライン上の競技性の高いイベント、スタンダードショーケースチャレンジの結果から、最新のスタンダード環境を分析していきます。         紹介デッキ エスパーピクシー 赤単アグロ アゾリウス全知 エスパーピクシー スタンダードショーケースチャレンジ : 優勝 By cftsoc3 MTGアリーナ用インポートデータ ショーケースチャレンジの優勝はエスパーピクシー!しかもその使用者はcftsoc3選手。   プロツアー『霊気走破』にもエスパーピクシーを持ち込んだcftsoc3選手が見事マジックオンラインのトーナメントを制しました。   そのリストは他のエスパーピクシーと一線を画すものです。   《養育するピクシー》《孤立への恐怖》のセルフバウンス要素以外に採用されているクリーチャーは、《呑気な物漁り》や《悪意ある呪詛術士》が一般的でした。 特に《呑気な物漁り》は早いターンから大きなダメージを与えるカードで、入っていないリストはほぼないレベル。   しかし、cftsoc3選手はそれらを採用せず、《分派の説教者》と《ベイルマークの大主》を入れています。   《分派の説教者》は3マナと重いクリーチャーですが、2/4のサイズがビートダウンに強く、殴るだけでリソースを回復できるのが魅力です。 ライフが一緒の状態で《分派の説教者》が攻撃すると、トークンとドローをどちらも誘発させることができます。《望み無き悪夢》などで相手のライフを削りつつ、自分のライフは大量に入っているダメージランドで調整可能なので、狙っていけそうです。 そして《ベイルマークの大主》。モダンでも人気のカードで、もちろんこのデッキでも主な使い方は兆候になります。しかし、ブリンクや《永遠の策謀家、ズアー》で兆候状態の大主を無理やり起こすことはできません。 その代わりに、各種バウンスカードで《ベイルマークの大主》を使い回すことができます。調候で出して墓地の《養育するピクシー》《孤立への恐怖》を回収し、今度は《ベイルマークの大主》を回収する。またそれらのクリーチャーが死亡したら《ベイルマークの大主》で拾えるので、永久機関が完成します。 このスロットには《荒らされた地下室+解剖室》が入っていることが多く、こちらも用途は同じですが、《ベイルマークの大主》は5マナで通常キャストもできるのは魅力です。 エスパーピクシーのミラーマッチでは《ベイルマークの大主》はなかなか倒しにくいですし、攻撃されるたびにクリーチャーを回収され続けたら溜まったものではありません。   《呑気な物漁り》《悪意ある呪詛術士》を抜いて《分派の説教者》《ベイルマークの大主》を入れることで、このリストは相手のライフを減らすビートダウンではなくなり、エスパーミッドレンジと呼ぶべきデッキとなりました。   スペル欄を見ればそれがはっきりするかもしれません。そう、《食糧補充》です。 3マナで5枚から2枚を選んで手札に加える。《予言》を大真面目にプレイしていた時代から考えるとすさまじい強さのソーサリーですが、これがエスパーピクシーに採用されているというのにも驚きです。 ですが、このエスパーピクシーをミッドレンジとして見てみれば、《食糧補充》の採用も納得できます。《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》のセット、あるいは火力でライフを詰められそうな時は《望み無き悪夢》とバウンスなど、状況次第で様々な組み合わせを拾える《食糧補充》はこのデッキには合っています。 《呑気な物漁り》から2ターン目にクリーチャーを展開して3ターン目に《食糧補充》を打つのは少々気持ち悪いと感じるかもしれません。クリーチャーで攻撃して圧力をかけたいのに3ターン目にドロースペルを打ちたくはありませんからね。 しかし、ミッドレンジならば序盤にライフを詰める必要はありません。《望み無き悪夢》や各種除去を序盤は使い、3ターン目に《食糧補充》を打って中盤戦に唱える。これならプレイしていてなんら違和感ありません。 ビートダウンだったエスパーピクシーをミッドレンジにしたcftsoc3選手、その構築力にはいつも舌を巻きますね。     赤単アグロ スタンダードショーケースチャレンジ : 2位 By  megavenusaur MTGアリーナ用インポートデータ 歴代でも最強と言われている今の赤アグロ。   サイズがどんどん上がっていくだけでなく、死亡時にもダメージを与えるパイオニア級の1マナ域、《心火の英雄》。 果敢で瞬間的な打点を上げつつ、リソースを獲得する《熾火心の挑戦者》。 そしてハツカネズミたちに二段攻撃やトランプルを付与する攻撃性と、4マナで唱えてトークンを生成することでリソース勝負にも強い《多様な鼠》。 この3種のハツカネズミパッケージはパイオニアにそのまま出張するほどの強さで、これがすべて赤のカードなので、スタンダード環境にも様々なカラーリングの赤アグロが存在しています。   《亭主の才能》と《探索するドルイド》を入れたグルールは定番で、プロツアー『霊気走破』では一番人気のアーキタイプになりました。 クリーチャーが1体でも生き残れば致死量のサイズまで育てられる《亭主の才能》、リソース確保の《探索するドルイド》、そして除去に強い《脚当ての補充兵》で、特に黒いデッキに強いのがこのカラー。 《花足の剣豪》《岩山炎の後継者、メイブル》を採用するボロスも存在します。こちらは最早ボロスハツカネズミと言えるほど、大量のハツカネズミが入ったデッキ。そのため《多様な鼠》のバリューが他の赤アグロよりも高く、どのクリーチャーにも二段攻撃を付与できます。 このように赤アグロの中で更に選択肢が生まれているのが今のスタンダードの赤事情。今回ショーケースチャレンジで結果を残したのは、赤単色でした。   赤単の良い点はもちろんその土地事情。《銅線の地溝》は4ターン目以降にタップインして《多様な鼠》の新生を遅らせてしまう可能性があり、《カープルーザンの森》はダメージが痛い。今のスタンダードの2色アグロは確定タップインがなく、ストレスフリーではあるものの、決して2色がデメリット0というわけではありません。 そもそも緑のカードが手札にあって緑マナが出ない色事故もありますからね。   《岩面村》を4枚採用できる点も赤単の魅力です。《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》を強化して雄姿を誘発させたり、《雇われ爪》《多様な鼠》に速攻を付与するなど、アンタップインで赤マナが出る土地とは思えない強さのこの土地。ただ、2色デッキではあまり4枚採用されていません。 《ソーンスパイアの境界》などの境界土地から2色を出すためには《山》がそれなりに必要だからです。赤単ならば2色土地がすべて《山》になるので、問題なく《岩面村》を4枚採用できるのです。 赤単は特に赤アグロのミラーマッチとドメインに強いデッキです。対赤アグロでは2色目の差はほとんどなく、赤い部分の勝負。そうなると必然的にタップインもなく、土地からダメージも受けず、《岩面村》を4枚入れている赤単に軍配が上がります。   ドメインに対してはグルールのサイドから採用されている《脚当ての陣形》は強力ではあるものの、サイド後は必殺の《陽背骨のオオヤマネコ》が4枚あるので、さほど差はありません。メインでは《亭主の才能》のような不純物が入っておらず、クリーチャーと火力だけである赤単の方がドメインに勝ちやすく、結果として赤単の方が勝率が出るのです。 このリストはサイドボードに《探索するドルイド》を入れていますが、クリーチャーとして唱えるための緑マナは《ソーンスパイアの境界》しか入っていません。 《ソーンスパイアの境界》はダメージも受けず、タップインにもならない土地で、基本的には《山》です。デッキの動きを一切阻害することなく、たまに緑マナも出せるので入れ得カード。その4枚からしか《探索するドルイド》は出ませんが、このカードを入れるマッチはリソースが欲しい相手であり、そういったゲームは大体の場合、長引きます。 ゲームが長くなればそれだけ《ソーンスパイアの境界》を引く確率は上がるため、実際は4枚しか入っていない緑マナをそれなりに引けているでしょう。仮にクリーチャーとして出せなかったとしても、出来事で2枚のカードを追放して使用できるだけで仕事はしっかりしています。   赤単には《探索するドルイド》は採用できないという固定観念を打ち破った素晴らしいリスト!     アゾリウス全知 スタンダードショーケースチャレンジ : 8位 By J_tekt MTGアリーナ用インポートデータ プロツアー『霊気走破』でも活躍した《全知》によるコンボデッキ。スタンダードでこの手の純粋なコンボは珍しいですね。 デッキの動きは非常に単純で、各種カードで《全知》を墓地に落として《アブエロの覚醒》で釣り上げる。これで準備が完了します。 1.《アブエロの覚醒》で《全知》を戦場に戻す。《全知》は1/1のクリーチャーになる。 2.《アルケヴィオスへの侵攻》をキャストし、サイドから《機織りの季節》を持ってくる。 3.《機織りの季節》のクリーチャーコピーモードで、1/1の《全知》をコピーしつつ、バウンスモードを使用。コピーの《全知》以外のすべてのカードが手札に戻る。4.《アルケヴィオスへの侵攻》を唱えて墓地から《機織りの季節》を回収して、今度はバウンスと2ドロー。これを、2枚目の《アルケヴィオスへの侵攻》を引くまで繰り返す。 5.《アルケヴィオスへの侵攻》が2枚揃うと、1枚目の《アルケヴィオスへの侵攻》で好きなカードをデッキやサイドボードからサーチしつつ、2枚目の《アルケヴィオスへの侵攻》で《機織りの季節》を拾って全バウンスを繰り返せるようになり、好きなだけインスタントやソーサリーを手札に加えられるようになる。 6.サイドボードから《ネットワーク呪詛》をサーチして無限に唱えて勝利。   とこのようなルートで即死になります。   このデッキが登場してすぐの頃は、相手がコンボターンの前にフルタップしてくるケースがよくありましたが、1/1の《全知》をスタックで除去されてしまうとコンボが決まらなくなることがバレた今では、除去を構えられつつ動かれてしまい、コンボが決めづらくなりました。 そこで、プロツアー『霊気走破』以降のリストでは1/1の《全知》を除去された場合を想定したカードがサイドボードに入っています。   それが《ジョハンの一時凌ぎ》。 相手が1/1の《全知》を除去できるカードを持っていた場合、手札に2枚目の《全知》を用意しておくことで、除去をケアできるようになります。 1.《アブエロの覚醒》で1/1の《全知》が戦場に。 2.手札から《全知》をキャスト。スタックで1/1の《全知》に除去が飛ぶ。 3.《アルケヴィオスへの侵攻》をキャストし、《ジョハンの一時凌ぎ》をサーチ。 4.《ジョハンの一時凌ぎ》で《アルケヴィオスへの侵攻》を戻してドロー。 5.《アルケヴィオスへの侵攻》を出して《ジョハンの一時凌ぎ》を回収し、《アルケヴィオスへの侵攻》を戻してドロー。これを繰り返して好きな枚数だけドロー。 5で無限ドローが完成するので、後は《全知》を再び墓地に落として《アブエロの覚醒》で釣り上げ、通常の無限ルートに移行となります。 『霊気走破』からの新カードは《食糧補充》。《アブエロの覚醒》を引かなければ始まらなかったこのデッキにとって、5枚見て好きなカードを2枚加える《食糧補充》は喉から手が出るほど欲しかったカードです。 3ターン目に《食糧補充》で《アブエロの覚醒》を探す時は、2ターン目に《全知》を墓地に落としておく必要があります。そうでないと4ターン目に《全知》を釣れませんからね。そのため、《アブエロの覚醒》を探しながら《全知》を墓地に落とせる《困惑の謎掛け》と散らして3枚ずつの採用となっていますが、確実に《食糧補充》のおかげでデッキは強くなりました。 特にサイド後は相手の妨害をくぐり抜けながらコンボを決めるため、《堂々たる撤廃者》と《否認》を探したりなど、《食糧補充》が輝きます。《困惑の謎掛け》は手札が増えませんからね。 今のスタンダード環境はアグロ全盛期であり、どのデッキも除去を大量に入れています。除去が手札で腐るようなマッチは相性が良く、具体的にはエスパーピクシー・ドメインには有利です。 アグロとドメインばかりに気を取られていると、アゾリウス全知になすすべなく敗北します。サイドボードでの対策をお忘れなく。

【今週のピックアップデッキ】イゼットアーティファクト/エスパー記念碑パルへリオン/シミック眼魔

週刊 Modern news Pioneer Standard

2025.02.28

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ イゼットアーティファクト エスパー記念碑パルへリオン シミック眼魔 イゼットアーティファクト プロツアー『霊気走破』 : 7-3 By Rémi Roudier 『霊気走破』で登場したアーティファクト版《出産の殻》こと《再利用隔室》。 このカードによってスタンダードで再注目されたカードと言えば《身代わり合成機》。マナ総量3以上のアーティファクトが戦場に出るたびに、アーティファクトの数分のパワータフネスのトークンを生成するという強力な能力を持っていますが、戦場に出た時に何もしないカードを出すことを3マナで出すことはスタンダードでは許されず、これまではほとんど使われませんでした。 パイオニアやモダンでは0~1マナでマナ総量が3以上のアーティファクトを出すことが可能だったため、《身代わり合成機》を出したターンの隙を埋めることが可能で、それゆえに下環境向けのカードだったのです。   しかし、《再利用隔室》の登場で《身代わり合成機》はスタンダードでも日の目を見ることになりました。《身代わり合成機》を置いたターンに《再利用隔室》を起動し、2マナのカードを生け贄にして3マナのアーティファクトに変えれば、《身代わり合成機》のターンを隙なく終えられるのです。 2マナのカードを《身代わり合成機》にもできるため、実質8枚体制で臨むことができるのも大きく、《再利用隔室》と《身代わり合成機》の組み合わせはスタンダードで息の長い活躍をしてくれそうです。   さて、このプロツアー『霊気走破』のスタンダードラウンドを7勝3敗で終えたイゼットアーティファクトは《身代わり合成機》の相方として赤を選んでいます。   赤と言えば《塔の点火》。アグロの多い今の環境では欠かせない除去です。アーティファクトが大量に出るので協約の達成が容易なのも魅力ですね。 《軍団の成形機械》と《チェーンソー》は共に2マナで戦場に出た時にダメージを与えるアーティファクト。どちらも《再利用隔室》で《身代わり合成機》になる除去です。 3マナのアーティファクトは次のターンに除去にもなります。《爆弾車》は《再利用隔室》から出すと非常にお得なアーティファクト。戦場に出た時に4マナが出るので、3点以上はまず飛ぶでしょう。 《記録の守護者》は《再利用隔室》から出すカードというよりは、むしろ手札から連打するもの。1マナで出して《身代わり合成機》が誘発してくれるので、あっという間に戦場が有利になるでしょう。1マナで出せるマナ総量が5のクリーチャーなので、《再利用隔室》によって《光輝の睡蓮》を場に出せます。 《身代わり合成機》を使うデッキとしては《不気味なガラクタ》《税血の刃》を採用したディミーアや、《帰還航路》を使うアゾリウスなどがありますが、やはり《塔の点火》を採用できるイゼットが一番対アグロ耐性があります。 赤アグロのポジションがまた一段と良くなった現環境、イゼットアーティファクトは今がチャンスかもしれませんね!     エスパー記念碑パルへリオン パイオニアチャレンジ : 3位 By  Kaberb 墓地から機体を吊り上げる《大牙勢団の総長、脂牙》で《パルヘリオンⅡ》を3ターン目に出して攻撃する白黒ベースのデッキ。 かつては《忌まわしい回収》などを採用したアブザン、最近では《税血の収穫者》《逸失への恐怖》《鏡割りの寓話》でミッドレンジプランも取れるマルドゥと様々なカラーのパルへリオンデッキが活躍していますが、今回紹介するのはエスパーカラー。 青が入ることで加わるのはドロースペル。引いて捨てることが得意な青の力は大きく、《信仰の繕い》《染みついた耽溺》はいずれも2ドローして《パルヘリオンⅡ》をディスカードできる優秀なドロー。赤いドローは捨てて引くなので、有効牌を捨てて《パルヘリオンⅡ》を引いてしまうこともありますが、引いて捨てる《信仰の繕い》ならその心配はいりません。 《上げ潮、キオーラ》も2ドロー2ディスカードするクリーチャー。しかも墓地を肥やすデッキなので、スレッショルドも目指せます。 そしてなんと言ってもこのデッキの最大の特徴は《忍耐の記念碑》の採用です。 このデッキには実に様々なディスカード手段が用意されているということで、このカードを捨てるたびに恩恵をもたらすアーティファクトが採用されているのです。《上げ潮、キオーラ》を出すだけで2つモードを選べるので、ドロー&3ライフルーズなど、やりたい放題です。   《忍耐の記念碑》はサイドボード後にその真価を発揮します。   《パルヘリオンⅡ》を《大牙勢団の総長、脂牙》で釣るコンボはサイドボードは防がれてしまうことがほとんどです、墓地を対策されるか、《大牙勢団の総長、脂牙》を除去されるか。いずれにせよほとんど成立しません。 《忍耐の記念碑》は墓地対策と除去がどちらも効かない勝ち手段なのです。特にフラッシュバックがあり2回使える《信仰の繕い》は《忍耐の記念碑》との相性抜群。《忍耐の記念碑》の能力もあり、《信仰の繕い》1枚で6枚のカードが引けるので、そこから次のディスカード手段に辿り着くのは容易でしょう。 そうしてドロー・ディスカードするカードをチェインさせていくだけで、気づけば相手のライフは0になります。サイド後は《忍耐の記念碑》で勝つことが多くなるでしょう。 サイドボード後のサブプランが強いコンボデッキは本物であるパターンが多いです!エスパーパルへリオンがこれから活躍するのか注目です。     シミック眼魔 モダンリーグ : 5-0 By singto12 スタンダードからモダンまで色んなフォーマットで暴れる《忌まわしき眼魔》。 先日のプロツアー『霊気走破』でも《救いの手》で《忌まわしき眼魔》を吊り上げるジェスカイ眼魔がトップ8に残り、モダンでも《発掘》で《忌まわしき眼魔》を場に戻すコンボを搭載したディミーアマークタイドはメタデッキの内の1つです。 そんな《忌まわしき眼魔》デッキがまたモダンで登場しました!   《忌まわしき眼魔》を戦場に出す方法は2種。まず1つ目は《新生化》。これを使った《忌まわしき眼魔》デッキはパイオニアにも存在しますね。 クリーチャーを生け贄にしてそれよりマナ総量が1大きいクリーチャーを出す《新生化》。《とぐろ巻きの巫女》や《氷牙のコアトル》が《忌まわしき眼魔》に生まれ変わります。カードを引くクリーチャーたちが《忌まわしき眼魔》になるのはパイオニアと同様。 もう1つの手段、《出産の儀》はモダンでしか使えません。こちらも2マナのクリーチャーを生け贄にすることで《忌まわしき眼魔》が出るエンチャントですが、3マナのクリーチャーからも《忌まわしき眼魔》を出せるのがミソです。 なぜなら《断片無き工作員》を生け贄にするシチュエーションがそこそこ訪れるからです。2マナでリソースを獲得できるクリーチャーがたくさん入ってるこのデッキに《断片無き工作員》はぴったり。《出産の儀》を続唱でめくって、そのまま終了時に《忌まわしき眼魔》に変わるのは美しい展開。 入っているクリーチャーがすべて青いので《拒絶の閃光》を使えるのは素晴らしい。パイオニアでは1マナを構える必要がありましたが、モダンは0マナでOKです。 《出産の儀》や《新生化》で持ってくる《海の先駆け》も奇襲性が高く、特に《出産の儀》は解決を見た後でフェッチランドを起動しようとするプレイヤーも多いはずなので、フェッチランドを《島》に変えるチャンス! 9枚のピッチスペルにフィニッシャーはほぼ《忌まわしき眼魔》のみと思い切った構成!《忌まわしき眼魔》を守り《忌まわしき眼魔》で勝ちたい。そんな方にオススメのデッキです!

【パイオニア】ディミーアバウンス徹底解説!

Pioneer ピックアップ

2025.02.27

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 先週末は晴れる屋さんで行われた第17期パイオニア神挑戦者決定戦に参加していました。   結果はトップ4。とんでもないミスにより準決勝で負けてしまったわけですが、今回は珍しく大会前から自信がありました。   それは使用したデッキ、ディミーアバウンスが余りに強いデッキだったからです。   というわけで今回はディミーアバウンスの記事となります。         目次 ディミーアバウンスとは デッキリストとカード解説 採用を検討した/見送ったカード デッキの回し方 プレイ指南 TIPS サイドボーディング 終わりに ディミーアバウンスとは 《この町は狭すぎる》《孤立への恐怖》で《稲妻罠の教練者》《海の神のお告げ》を戻してアドバンテージを獲得したり、《逃げ場なし》《勢い挫き》を使い回して相手のクリーチャーを殲滅させていくのが基本戦術となるコントロールデッキです。 《嵐追いの才能》も入っており、レベル2で回収した《この町は狭すぎる》で再度戻すことで、何度もカワウソを生成しながら無限に妨害し続けることができます。   そう、スタンダードでも大人気のアーキタイプのパイオニア版なのです。   というか、このデッキはほぼスタンダードです。   リストをよく見てみてください。《致命的な一押し》《思考囲い》《海の神のお告げ》《食肉鉤虐殺事件》《覆いを割く者、ナーセット》以外のメインの呪文はすべてスタンダードのカードなのです。 いや、それは正確ではありませんでしたね。ディミーアバウンスには、スタンダードでは採用できない大きな……いや、大きすぎる1枚が採用されています。   そう、《空を放浪するもの、ヨーリオン》です。このカードがあるからこそこのディミーアバウンスは成立していると言って良い。《湧き出る源、ジェガンサ》はアグロデッキでたまに活躍する1枚ですが、このデッキにとっての《空を放浪するもの、ヨーリオン》はメイン戦略です。 かつて、《夢の巣のルールス》を採用していた数多くのアグロデッキは、《夢の巣のルールス》が出るまでの間に相手にすべての除去を使わせ、最終的に《夢の巣のルールス》が生き残って勝っていました。これはアグロのメイン戦略の1つとして組み込まれていました。 ディミーアバウンスにとっての《空を放浪するもの、ヨーリオン》も全く同じです。盤面に様々な置物を並べて《空を放浪するもの、ヨーリオン》でアドバンテージを取って勝利する。これを最初から目指しています。   相棒をただの追加リソースではなく、メインプランの1つとして据えることができるのは、それだけでデッキの強みになります。   相棒により再現性の高いゲーム展開を作れるのがディミーアバウンスの魅力なのです。   デッキリストとカード解説 《致命的な一押し》   今更解説することもない、パイオニア最強の1マナ域。黒を使い理由になる1枚。   ラクドスでは血や宝物といったトークンで紛争を達成しやすい一方、従来のディミーアコントロールでは紛争達成が難しいのが悩みどころでした。《廃墟の地》を4枚にしたり、《推理》を採用して手がかりで紛争を行うなど、様々な工夫がほどこされていました。   しかし、このデッキは紛争の達成が容易です。《この町は狭すぎる》によるバウンスでも紛争しますし、《望み無き悪夢》《海の神のお告げ》《勢い挫き》《不気味なガラクタ》はすべて能動的に生け贄に捧げられるパーマネントです。   ほぼ万能除去と言って差し支えません。   《思考囲い》 パイオニア最強の1マナ域、その2。《致命的な一押し》と《思考囲い》を使えるのが黒の最大の魅力と言っても過言ではありません。パイオニアで一番強いカードはこの2枚です。   序盤に相手の攻め札を奪ってしまえば盤面のコントロールは容易になります。《思考囲い》は決して攻めるデッキだけが使うカードではありません。守るデッキが使う《思考囲い》も十分強力なのです。   《嵐追いの才能》 スタンダードではティムールカワウソに始まり、エスパーピクシー、ディミーアバウンスと今では色々なデッキで使われています。   前述のように《この町は狭すぎる》との相性は抜群。レベル2にして《この町は狭すぎる》を拾い、その後《嵐追いの才能》をバウンスすることで、何回でも《この町は狭すぎる》を打てるようになります。   戦場に出た時のカワウソも馬鹿にならない打点を持っており、初手に《嵐追いの才能》が複数枚あればそれだけでビートダウンを完遂させることも可能です。   《嵐追いの才能》はレベル2が強いことからこのデッキで採用されていますが、出てくるカワウソが相手のプレインズウォーカーをけん制したり、ビートダウンを敢行してくれます。相手は本来コントロール相手にプレインズウォーカーを入れたり、リソースを取る手段をサイドインし、除去を抜きます。そんな相手に対してカワウソによる攻めはかなり効果的です。   《嵐追いの才能》というカードの存在が、このデッキを多角的なデッキにしている要因です。出てくるカワウソが相手にプレイやサイドボーディングを難しくさせています。   《この町は狭すぎる》 スタンダードでも《嵐追いの才能》とセットで採用されているバウンス呪文。自分のコントロールしているパーマネントを対象に取っていると2マナで打てるので、使い終わった自分の置物と相手のパーマネントを戻すのが基本的な使い方になります。   自分のパーマネントを2枚戻すこともよくあり、《望み無き悪夢》を戻して一気にライフと手札を奪ったり、《海の神のお告げ》《稲妻罠の教練者》を戻して手札を増やすことも。   《空を放浪するもの、ヨーリオン》を戻したら凄まじいアドバンテージを稼いでくれます。   攻めでも守りでも使えるスーパーカードです。このカードを毎ゲーム引くのが目標です。   《孤立への恐怖》 追加コストとして自分のパーマネントをバウンスする2マナ2/3飛行。本来はデメリットであるはずの追加コストですが、このデッキではメリットに働きます。   先手で《嵐追いの才能》から《孤立への恐怖》と回った時はビートダウンプランも取れます。アグロにもコントロールにも使える良カード。   《望み無き悪夢》 手札破壊と2点ルーズのエンチャント。ライフも手札破壊も1枚程度では効きませんが、このデッキは何度も《望み無き悪夢》を出し入れするので、段々と傷口が広がっていきます。   特に《嵐追いの才能》からカワウソを出している時はビートダウンもできるので、《望み無き悪夢》とカワウソによるダメージで意外とライフが削れてる場合があり、《この町は狭すぎる》で《嵐追いの才能》《望み無き悪夢》を戻して大量の果敢を稼いでのフィニッシュなどもあります。   突然相手のライフをごっそり削れるので、このディミーアバウンスを使う際は殴りを意識しましょう。他のコントロールデッキよりも相手のライフを削る速度は速いです。殴れる時にしっかり殴る。コントロールを普段使っている方は軽視しがちですが、ディミーアバウンスでは重要です。   《逃げ場なし》 スタンダードでもお馴染みのエンチャント除去。《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》で回収して使い回します。   呪禁を剝がせるので《タミヨウの保管》を無意味にしたり、《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》や《墓地の侵入者》の護法を無視できて便利です。   ビートダウン相手にはうんざりするほど何度も出し入れしましょう。《空を放浪するもの、ヨーリオン》を含めて何回か使い回せばすぐにゲームセットです。   《勢い挫き》 『霊気走破』からの新カード。このエンチャントの強さには感動しました。   クリーチャーか機体を生け贄に捧げさせる、いわゆる布告能力は、サイズを問わない除去。このデッキは《致命的な一押し》《逃げ場なし》で除去できないクリーチャーの対処を《この町は狭すぎる》に一任していたので、《勢い挫き》はちょうどいい1枚でした。   生け贄に捧げた際は速度の数値だけライフゲインが可能で、これは赤アグロに対して重宝します。   しかもこのカード、相手がクリーチャーや機体を生け贄に捧げなかった場合は手札破壊になります。先手2ターン目にとりあえずハンデス目的で出せますし、コントロール相手のサイド後でも手札破壊として機能でするので、サイドアウトしません。   コントロールミラーは《金属の徒党の種子鮫》など、除去を抜かれることを前提にクリーチャーをサイドインしてきます。《致命的な一押し》《逃げ場なし》は除去以外に使い道がないので当然サイドアウトすることになりますが、《勢い挫き》ならば、除去すべきクリーチャーが出てこなければハンデスを選べば良いのです。   除去を残して相手がクリーチャーを出してこなかった時に手札で腐るのが許せない。かといって除去をすべて抜いて《金属の徒党の種子鮫》に好き勝手されたくない。   そんな事情をバッチリ解決してくれるのが《勢い挫き》です。2枚程度のリストが多いですが、僕はこのカードを絶対に4枚にすべきだと思います!   ちなみに《望み無き悪夢》の2点ルーズで速度を進められます。   《海の神のお告げ》/《稲妻罠の教練者》 《海の神のお告げ》は《空を放浪するもの、ヨーリオン》のズッ友。青系コントロールのライブラリーが80枚になる時にはいつも採用されていましたね。   出た時に占術2を行ってから1ドローと少し重い定業ですが、戦場に残ってくれるので《空を放浪するもの、ヨーリオン》《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》で回収できるのが魅力。   《稲妻罠の教練者》と比べて見れる枚数は少ないものの、確実に1ドローできる点、更に土地が欲しい場合はこちらの方がより強力です。   甲乙つけがたいので《稲妻罠の教練者》と3・3といったバランスで採用されていることが多いですが、個人的には《海の神のお告げ》の方が強いと考えています。   まず土地が欲しい場面がそこそこあること。土地2枚の初手と《稲妻罠の教練者》でキープして土地が手札に入らないのはそれなりにストレス。《稲妻罠の教練者》のために《ジュワー島の攪乱》や《アガディームの覚醒》を入れようと思ったこともあったほどです。   ほぼ確実に《この町は狭すぎる》《孤立への恐怖》《空を放浪するもの、ヨーリオン》で回収できるのも、《海の神のお告げ》の評価を上げるポイントになりました。《稲妻罠の教練者》はクリーチャーなので除去されてしまいます。特にメイン戦では余った除去を投げつけられてしまうので、《稲妻罠の教練者》は生き残りづらく、バウンスしての再利用がしにくいのです。   《覆いを割く者、ナーセット》 このデッキで唯一の3マナ以上のカード。少し重いですが、それだけの価値があるカードです。   《不浄な別室》に対する回答として一番強く、デッキが軽い妨害で構成されているので、プレインズウォーカーを直接破壊するカード以外で落ちにくいのがポイント。   他のデッキでは2回マイナスを使ったら後は置物ですが、ディミーアバウンスは自分のパーマネントを戻せるデッキ。《覆いを割く者、ナーセット》をリフレッシュして再び使用可能です。   除去除去ナーセットはこのデッキの勝ちパターン。最終的には《空を放浪するもの、ヨーリオン》で《覆いを割く者、ナーセット》をブリンクして相手の心を折ることになります。   《不気味なガラクタ》 《見栄え損ない》ですが、置物なので各種バウンスで使い直せます。   1マナの置物除去はこれまで存在していなかったので使用感が未知数でしたが、使ってみるとその強さに驚き。特に後手番でアグロを相手にした時は強すぎて驚きました。   《孤立への恐怖》を2ターン目に出してブロッカーとして立てるためには1ターン目にアクションをする必要がありますが、《嵐追いの才能》はアクションとしては弱め。カワウソはブロッカーとしては心もとないですからね。   その点、盤面除去をしながら《孤立への恐怖》を出せる《不気味なガラクタ》は素晴らしいカード。回収し直して3ターン目に出しながら2マナのドロースペルに繋げれば勝利目前です。   《食肉鉤虐殺事件》 それなりにゲームが長期戦になるので、何かしらのライフゲイン手段が欲しいとは思っていましたが、良く採用されている《黙示録、シェオルドレッド》はあまり好きではありませんでした。   クリーチャーデッキ相手に欲しいはずなのに重く、強い瞬間は限られます。しかもメインでは相手の腐る除去が当たります。ラクドスデーモン相手に《黙示録、シェオルドレッド》が生き残ることはまずありません。   もちろん、相手の手札が空になってしまえば生き残る確率は上がり、それを目指せるデッキではあるものの、限られた状況でのみ強いカードはなるべく減らしたいと考えました。   そしてライフゲイン手段として白羽の矢が立ったのが《食肉鉤虐殺事件》でした。ラクドスにはX=2で《税血の収穫者》や《鏡割りの寓話》を流せますし、全体除去をメインに採用したいと考えていたので、2つの希望を同時に叶えてくれるカードだったのです。   各種バウンスで使い回せる全体除去というのもポイント。   《神秘の論争》 ここからはサイドボード。   青いデッキにサイドインする……のは当然ですが、特に重く見たのはイゼットフェニックスです。   イゼットフェニックスとの戦いはとにかく軽いことが重要。相手の致命的なスペルを打ち消す場面より、《覆いを割く者、ナーセット》を通すためにカウンターを使うことが多いので、《否認》では重いのです。   《美術家の才能》は消したいカード筆頭ではあるものの、結局後手では《否認》は間に合わずに通ってしまいます。《呪文貫き》は悪くないと考えましたが、今度は《宝船の巡航》に対して弱い。   《神秘の論争》であれば《宝船の巡航》に打つと相手は嫌な顔をします。フルタップになってしまいますからね。《呪文貫き》は割と払われてしまいます。これは《宝船の巡航》を打たれるターンが4ターン目、もしくは4枚の土地が並んでからというケースが多いためですね。   そんな事情でカウンターは《神秘の論争》のみにしました。ちなみにミラーマッチで一番強いのも《神秘の論争》です。《空を放浪するもの、ヨーリオン》に当たるのがとにかく大きい!   《未認可霊柩車》 3枚と多めですが、こちらもイゼットフェニックスを意識しています。   結局《宝船の巡航》さえ封じてしまえば最終的にはこちらが勝てます。アドバンテージ獲得手段が《宝船の巡航》以外にないので、《望み無き悪夢》《勢い挫き》ですぐに手札を枯らせられますからね。   《覆いを割く者、ナーセット》が着地すれば話は早いのですが、相手も《呪文貫き》《神秘の論争》《否認》と様々な打ち消しをサイドインしてくるので、着地は容易ではありません。それなら墓地対策は必須です。   その中で最も優秀なのが《未認可霊柩車》。《除霊用掃除機》は1マナと軽いですが、たった1枚しか墓地を削れないので、《宝船の巡航》のスピードに追い付けません。《未認可霊柩車》は毎ターンキャントリップを打たれ続けても、それに追いつけます。   《未認可霊柩車》でも相手に《宝船の巡航》を打たれてしまいますが、そのタイミングを制限できるのが重要です。土地をひたすら並べられ、《神秘の論争》が当たらない範囲で《宝船の巡航》を仕掛けられるのが嫌な展開なので、それを《未認可霊柩車》で防ぐのが狙いです。   多めに3枚入っているのは、早いターンで引き込んでおきたいからです。   《夢を引き裂く者、アショク》 こちらも《未認可霊柩車》と同じ墓地対策。   メリットはロータスコンボにも採用できる点。今回は《減衰球》を採用していないので、ロータスコンボがとにかく不利マッチです。《夢を引き裂く者、アショク》を入れた程度で有利になることはありませんが、一応の抵抗にはなります。   もちろんイゼットフェニックスにもサイドインします。先ほど《未認可霊柩車》が対策になると話したばかりですが、ゲーム序盤で引き込めなかった場合、《未認可霊柩車》の効力は激減してしまいます。大量の墓地を一度に追放する手段も必要だと考えました。   《夢を引き裂く者、アショク》は墓地をすべて追放した上で、そのまま相手のライブラリーアウトも狙えるので、イゼットフェニックス相手はフィニッシャーになる場合もあります。《宝船の巡航》で大量に引かれてる時もワンチャンス狙えますね。   デメリットはその重さと色。《神秘の論争》が引っかかってしまうのでとにかく通りづらい。《覆いを割く者、ナーセット》が通らないのですから《夢を引き裂く者、アショク》を通すのも大変です。   しかも通した結果がただの墓地追放なので、ゲーム序盤では《未認可霊柩車》以下の活躍です。たくさんの《未認可霊柩車》と少しの《夢を引き裂く者、アショク》がちょうどよいバランスだと考え、この配分になりました。   《悪夢の詩神、アショク》 またアショクの登場です。   こちらはミッドレンジやコントロールに強い1枚。プレインズウォーカー除去があまり使われていない環境なので、特に黒系ミッドレンジ全般には非常に強く、出すとそのまま勝ててしまうほどです。   元々、ミラーマッチで良いカードを探していて見つけたのが《悪夢の詩神、アショク》でした。ミラーで強いカードの条件は「《この町は狭すぎる》で戻されて何もしないカードはダメ」「除去耐性がある」「盤面に干渉するカード」でした。   《悪夢の詩神、アショク》はバウンスされても戦場に2/3のトークンを残せますし、プレインズウォーカーなので除去耐性もあります。2/3が盤面に影響を与えるので、すべての条件を満たしています。2/3というサイズもカワウソに2回の果敢を付けさせる必要があるので、ミラーマッチでは及第点です。   ラクドスミッドレンジにもそこそこ強く、《不浄な別室+祭儀室》から出てきたデーモンをバウンスしつつ、1枚ハンデスする展開が多かったです。もちろんプラスも強力でした。   《絶滅の契機》 主に緑単に対して入れるカード。緑単は《老樹林のトロール》《茨の騎兵》と死亡時に能力を持っているクリーチャーが多く、また《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》などほとんどすべてのカードが奇数なので、《絶滅の契機》が一番刺さります。   単体除去は多いディミーアバウンスですが、後手で除去が追い付かない展開もあるので、少しだけサイドに入れておくと便利です。緑単相手には《食肉鉤虐殺事件》は抜いてしまいますが、他の対アグロでは《食肉鉤虐殺事件》《絶滅の契機》の4枚の全体除去で臨むことになります。   《霊気の疾風》 アグロに対して《思考囲い》4枚を抜く関係上、《絶滅の契機》以外に2枚ほど何かカードを入れたかったのですが、単なる除去の水増しよりは、除去の役割がありながらも違う使い方もできるカードが良いと考えました。   そんな便利なカードが《霊気の疾風》です。疑似的な打ち消し呪文として使えるだけでなく、盤面にも干渉できる強力なスペル。   《逃げ場なし》などの置物エンチャントが主体となっているので、《嵐追いの才能》の2章で拾える除去が少ないのは実は課題でした。《致命的な一押し》《この町は狭すぎる》だけでは少し少なかったのです。《霊気の疾風》はそんな事情も解決してくれるので、かなり好みです。   採用を検討した/見送ったカード 《無駄省き》 パイオニア神挑戦者決定戦前日に突然思いついたのですが、試す時間がなくて断念。   2ターン目に設置して何もしないカードなのでアグロには弱いですが、それ以外のマッチではすべて活躍しそうなので、サイドから《強迫》2枚を追加してディミーア無駄省きになります。   《望み無き悪夢》《思考囲い》《勢い挫き》と手札破壊は大量にあるので、誘発には問題ありません。   イゼットフェニックスの《美術家の才能》がきついので、《無駄省き》を置けばとりあえずルーターを制限できますし、ミラーマッチではお互いの手札破壊に、こちらだけオマケがつくので、アドバンテージ面で勝利できるでしょう。   ラクドスミッドレンジに対しても同プランを採用する予定ですが、ここがどうなるかがカギかなと思います。   僕の想像では結構イケてる気がするので、興味を持った方はぜひサイドボードに4枚入れてみてほしいです。   《最後の望み、リリアナ》 こちらはミラーマッチの最終兵器として投入を検討していました。当初は《悪夢の詩神、アショク》ではなく《最後の望み、リリアナ》を入れる予定でした。   ディミーアバウンスミラーマッチは《空を放浪するもの、ヨーリオン》がカギとなります。盤面にクリーチャーがそこそこ並び、手札も搾り合うので、《空を放浪するもの、ヨーリオン》で《望み無き悪夢》や《逃げ場なし》を使い回してアドバンテージを稼いだ方が勝利します。   ですが、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を拾うタイミングが非常に難しい。《思考囲い》はお互いに温存して、相手が《空を放浪するもの、ヨーリオン》を回収したタイミングで狙います。   だからこそ、《空を放浪するもの、ヨーリオン》は《思考囲い》で相手の手札から《思考囲い》を抜いたタイミングや、8マナ溜めて回収→キャストのいずれかになります。《神秘の論争》がミラーで強いと言ったのはこのためですね。   《最後の望み、リリアナ》があれば、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を《思考囲い》で落とされても回収できるため、プレイがかなり簡単になります。適当な時に回収しておいて《思考囲い》を打たれても、《最後の望み、リリアナ》で拾ってしまえば良いのです。   《最後の望み、リリアナ》自体の場持ちがミラーでかなり良いのもポイント。《孤立への恐怖》はパワーが0になりますし、カワウソトークンはプラスで除去できますからね。黒いので《神秘の論争》を1マナで打たれませんし、3マナという軽さも素晴らしい。   ただ、《悪夢の詩神、アショク》に比べてラクドスミッドレンジには少しイマイチかもしれません。《鏡割りの寓話》に弱いのが致命的ですね。   当日入れなかった理由はフルアート版が晴れる屋に売ってなかったからです。前日に思い付いたせいでこんなことに…。   メインの《空を放浪するもの、ヨーリオン》 ディミーアバウンスの良いところはとにかくデッキが軽く構成されていて、相棒領域に《空を放浪するもの、ヨーリオン》が用意されていることだと思います。   もちろん《空を放浪するもの、ヨーリオン》はデッキの多くのカードと噛み合って強いのですが、軽いアクションで相手の展開を凌ぎ、確定している《空を放浪するもの、ヨーリオン》でマウントを取るのがディミーアバウンスです。   その細かい動きに5マナのカードは合わないですし、そもそも確実に3マナで手札に持ってこれるので、それ以上に必要ないと感じました。1回《空を放浪するもの、ヨーリオン》が出れば大体勝ちますからね。   オーバーキルかつ事故の要因となってしまう《空を放浪するもの、ヨーリオン》はデッキに入れないことにしました。   《悪夢滅ぼし、魁渡》 《孤立への恐怖》を戻して出すと強いですよね。うん、もちろん強いです。でもコントロールデッキなのであんまりデッキに合っていませんでした。たまたま引いた時はオーバーキルか、そもそも役に立たないかのどちらか。   カワウソを忍術して出してもちょっとがっかりしちゃいますし、《稲妻罠の教練者》はそもそも忍術条件を満たすのも難しい。   使っていて全然強いと感じず、すぐに抜けました。アゾリウスコントロールなどにも《失せろ》ですぐ対処されてしまいます。 デッキの回し方 ディミーアバウンスは基本的にはコントロールデッキです。スタンダードの同デッキはアグロ寄りのミッドレンジでしたが、パイオニアのディミーアバウンスはコントロール。これを念頭に置いておきましょう。   コントロールとして立ち回る時の動きは簡単です。《逃げ場なし》や《勢い挫き》で盤面をすべてさばき、隙を見て《空を放浪するもの、ヨーリオン》を回収。出し直せばそれだけでゲームが決まります。 手札破壊カードは他のアクションがあればそちらからにしましょう。手札が少なくなってきてからの方が1枚ハンデスは効果的です。《思考囲い》と《望み無き悪夢》がどちらもあれば当然《思考囲い》から打ちましょう。 もちろん、2ターン目に《孤立への恐怖》を唱えたい場合は《望み無き悪夢》からになりますが。 除去を最優先し、相手の手札が3枚ぐらいになったら《望み無き悪夢》と《勢い挫き》で手札破壊していくことが多いです。 他のコントロールデッキと違うのは、ライフを詰めるスピードが速い点です。   《望み無き悪夢》の2点ルーズは最初はオマケ程度ですが、《孤立への恐怖》などで出し直すと徐々に重くのしかかってきます。 カワウソ、《孤立への恐怖》と合わせて突然攻撃に回れる展開もあるので、細かいダメージはしっかり刻むようにしましょう。相手のライフを削る意識をしっかり持つことが大事です。 《望み無き悪夢》を1回《孤立への恐怖》で拾うと4点。《空を放浪するもの、ヨーリオン》で出し直すと6点。《空を放浪するもの、ヨーリオン》と《孤立への恐怖》で6点とこれだけで12点削れるので、相手がショックランドや《思考囲い》で少しダメージを負っていると、守っている側のはずのディミーアバウンスが相手とほぼライフが一緒なこともしばしば。 守りを基本としつつ、攻める瞬間も意識してください。果敢が乗ったカワウソをブロッカーとして立たせるのは損です!常に殴りましょう!   プレイ指南 手札破壊の順番 《思考囲い》《望み無き悪夢》をどちらも唱える場合、先に使うべきなのは《望み無き悪夢》です。   わかりやすい例を挙げましょう。場には4枚の寝ている土地。手札には1枚の土地と《ドミナリアの英雄、テフェリー》、《放浪皇》。ここで先に《思考囲い》を受け、《ドミナリアの英雄、テフェリー》を抜かれたとします。そうすれば当然《望み無き悪夢》で土地を捨てますよね。 これが先に《望み無き悪夢》だったらどうでしょうか?《放浪皇》を捨てて、次のターンの土地+《ドミナリアの英雄、テフェリー》を確定させるかもしれません。もちろん土地を捨てて土地引きに賭ける選択肢もありますがね。   このように、《思考囲い》を後から打った方が相手の《望み無き悪夢》のディスカードで裏目を引かせやすくなります。   先に《望み無き悪夢》でスペルを捨てられて《思考囲い》で土地しかなくてスカる……なんてこともなくはないですが、《望み無き悪夢》で捨てるカードは大体土地でスペルは手札に残ります。《思考囲い》の対象はあることがほとんどです。   《勢い挫き》を上手く使おう 手札破壊も除去もできる《勢い挫き》ですが、2ターン目に《逃げ場なし》《勢い挫き》と持っていた時にどちらから使うか悩ましいですよね。   インスタントである《逃げ場なし》を温存したいでしょうが、僕は《勢い挫き》を手札に残しておきます。 手札の除去がなくなれば《勢い挫き》で除去すれば良いですし、頃合いを見て手札破壊ができるのは便利です。   ただし、相手の手札が5枚ほどある状況でとりあえず手札破壊として使うのはオススメしません。次のターンに《不浄な別室+祭儀室》を開けられてデーモンが出てきて困ったりしますからね。除去が余っていれば良いですが、《勢い挫き》しか除去がないならば、手札破壊はやめましょう。相手が出してきたクリーチャーを除去するのは、実質手札破壊でクリーチャーを落とすのと同じです。手札破壊にこだわる必要はありません。 相手の手札が2枚ぐらいになってきたら、手札破壊で1枚を落としつつ、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を拾って次のターンにブリンクするようにしましょう。   《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》の受け入れ 《望み無き悪夢》と《致命的な一押し》ならばまず除去を優先してその後に手札破壊。先ほどはそう言ったものの、このデッキには《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》が入っています。   これらのカードは自分の場にパーマネントがないと使えないカードなので、2ターン目から唱えることを想定してプレイする必要があります。   手札にそれらのカードがない場合でも、「次のターンに引いたらどうしよう?」と考えましょう。   例えば相手がアグロデッキで、手札に《逃げ場なし》があるなら、2ターン目のアクションはまず《逃げ場なし》になるでしょう。もし《孤立への恐怖》を引いたとしても出す必要はありません。それならば1ターン目に《望み無き悪夢》を置く必要はないので、《湿った墓》や《難破船の湿地》をタップインできます。 しかし、手札に2マナのカードがなく《覆いを割く者、ナーセット》が次の展開になりそうなら、2ターン目に《孤立への恐怖》か《この町は狭すぎる》を打つことは全然ありえます。それならば1ターン目には《望み無き悪夢》を置いた方が良いのです。 初手を開いてある程度ゲームがどう展開されるかを予想しながら1~2ターン目のアクションを決めましょう!アゾリウスコントロールよりこの辺りのプレイは少し難しいです。   《空を放浪するもの、ヨーリオン》を拾うタイミング 《思考囲い》が入っている相手にはかなり慎重に回収しましょう。やることがないからと適当に回収するのはNGです。特にラクドスが1ターン目から《思考囲い》を打ってこない時は、特に注意してください。 回収した次のターンに出してアドバンテージを稼ぐことが多いので、4ターン目に拾いながら1マナアクション、5ターン目に《空を放浪するもの、ヨーリオン》で一斉ブリンクが理想の流れです。   1マナの妨害カードである《致命的な一押し》や《思考囲い》は4ターン目に使うと、《空を放浪するもの、ヨーリオン》の隙を埋めてくれます。2~3ターン目は、4ターン目に3マナ払って回収することを念頭に置いてプレイしたいところ。 とはいえ、《空を放浪するもの、ヨーリオン》が出た時に《逃げ場なし》《勢い挫き》など2種が追放されれば、それだけで盤面は一気に有利になります。なので多少盤面が不利になっても問題はないと言えばないです。 下手なアクションをするよりは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を回収しておいた方が良い場合が多く、たとえば《海の神のお告げ》を出すなら先に《空を放浪するもの、ヨーリオン》です。《海の神のお告げ》で探したいカードが除去なら《空を放浪するもの、ヨーリオン》でも同じことができますからね(《逃げ場なし》などが戦場にあれば)   《空を放浪するもの、ヨーリオン》を拾っておき、相手の動き次第で次のターンに出すかを決めれば良いのです。《空を放浪するもの、ヨーリオン》自体は時間が経つとどんどん強くなっていくカードで、一気に不利な盤面も返せるので、ここぞという時に出せるよう、手札に早めに控えていてもらいましょう。   TIPS 《孤立への恐怖》で土地を回収 《孤立への恐怖》は他のカードと違い、珍しくどのパーマネントも戻せるので、セットランドした《天上都市、大田原》《見捨てられたぬかるみ、竹沼》を回収できます。地味ですが意外と起きることなので、見落とさないようにしましょう。   特に《見捨てられたぬかるみ、竹沼》は《空を放浪するもの、ヨーリオン》を回収できるので、魂力する機会はまあまあ多いです。   ディミーアバウンス相手に《廃墟の地》を使う時は、意外と2色ランドよりも《見捨てられたぬかるみ、竹沼》を狙った方が良いです。   《霊気の疾風》《ガイアー岬の療養所》 《霊気の疾風》でライブラリートップに積まれたカードは、相手の手札が0枚なら《ガイアー岬の療養所》で引かせてそのまま捨てさせることができます。   これは本当に見落としやすいので覚えておきましょう!   《孤立への恐怖》は追加コスト 《この町は狭すぎる》と違い、《孤立への恐怖》のバウンスは追加コストです。戻す対象を選ぶわけではないので、相手が除去を挟む余地はありません。   《覆いを割く者、ナーセット》のマイナスを起動して、そのスタックで《塔の点火》を打たれなければ、《孤立への恐怖》で回収して逃げることができます。逆にディミーアバウンスを相手にする時は、しっかり自分のメインフェイズや相手のアップキープ中、起動にスタックして《覆いを割く者、ナーセット》を処理しておくこと!   サイドボーディング VSラクドスデーモン +2《悪夢の詩神、アショク》-2《不気味なガラクタ》 基本的には有利なマッチアップ。お互いにリソースを削り合いますが、こちらには《空を放浪するもの、ヨーリオン》が控えているので、戦場に出れば終わりです。 《思考囲い》で落とされてしまうのは負け筋なので、そこだけ気を付けてください。 《不浄な別室+祭儀室》で出たデーモンは即処理する必要がありますが、《致命的な一押し》《この町は狭すぎる》でしか対処できません。《逃げ場なし》《勢い挫き》を先に使っておき、《致命的な一押し》は温存しましょう。 手札破壊に対するケアは《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》にも言えます。特に《この町は狭すぎる》を拾って打てないタイミングで《思考囲い》で捨てさせられるのが最悪です。《思考囲い》を打たれた時にスタックで《嵐追いの才能》と《海の神のお告げ》など、リソースになるカードを回収できるようにしておきましょう。   《覆いを割く者、ナーセット》の着地もかなり重要です。一度場に残れば部屋だけで勝手に相手が死んでいきます。   VSイゼットフェニックス +3《神秘の論争》+3《未認可霊柩車》+2《夢を引き裂く者、アショク》-4《致命的な一押し》-2《不気味なガラクタ》-2《勢い挫き》 とにかく《覆いを割く者、ナーセット》が生き残るかどうかにすべてがかかっています。メイン戦では特に重要で、《呪文貫き》で打ち消されるなんて愚行は絶対にNGです! 《弧光のフェニックス》を相手が返してきたターンはマナが寝るのでチャンスです。エンド前に《弧光のフェニックス》をしっかり落として、返しで《覆いを割く者、ナーセット》を着地させて除去を構えましょう。この時に手札からの《弧光のフェニックス》で落ちないように、《覆いを割く者、ナーセット》のマイナスは使わないでください。 一度《覆いを割く者、ナーセット》が出れば相手は《弧光のフェニックス》を返すことさえ一苦労です。《手練》《錠前破りのいたずら屋》以外のドロースペルを打てば手札が減るので、仮に《弧光のフェニックス》を返したとしても、手札がすっからかんになります。   意識したいのが無駄なクリーチャーを展開しないことです。《焦熱の衝動》で《弧光のフェニックス》を返すカウントを貯められてしまうのは損です。ブロッカーとして出すぐらいなら手札に持っておきましょう。クリーチャーを無駄に出すのは相手にとって得しかありません。 サイド後も《覆いを割く者、ナーセット》ハメを意識しつつ、墓地対策を大量に入れましょう。 相手が《若き紅蓮術士》などを入れている可能性があるので《食肉鉤虐殺事件》を残していますが、ゲーム2の長期戦で1枚も見なかった場合は、《致命的な一押し》の方が強いので戻しましょう。 《宝船の巡航》を解決させないことが最も重要です。《宝船の巡航》を何度も打たれないためにも、手札破壊では《美術家の才能》を抜きたいですね。   VSグルール/ラクドス果敢 +2《絶滅の契機》+2《霊気の疾風》-4《思考囲い》 基本は除去していくだけで自動で勝てる相手です。除去3枚でキープして《空を放浪するもの、ヨーリオン》を回収して出し直せばゲームセット。 逆にドローばかり引いてると負けてしまいますが、ゲーム1では相手のデッキがわからないのでやむなし。   サイド後も特にゲームプランを変えてくることはないので、こちらも《思考囲い》を抜いて除去を入れるだけです。 ちなみにグルールブリッツやグルール力線などと当たった際は《思考囲い》は少し残すようにしています。これは相手がコンボデッキのような動きをしてくることがあるためです。こういった相手には《思考囲い》で出鼻をくじくのが重要なので、《覆いを割く者、ナーセット》を少し減らします。   VS緑単ニクソス +2《絶滅の契機》+2《霊気の疾風》-2《食肉鉤虐殺事件》-2《逃げ場なし》 《覆いを割く者、ナーセット》がかなり効果的なマッチアップ。《ラノワールのエルフ》から順番に除去していって《覆いを割く者、ナーセット》が勝ちパターンです。 メインは後手を取ってしまい、《ラノワールのエルフ》を打ち漏らして手札破壊もできなければすぐに好き放題されます。サイド後は《絶滅の契機》もあるのでそこまで悲観していません。   VSセレズニアカンパニー +2《霊気の疾風》+2《悪夢の詩神、アショク》-4《望み無き悪夢》 《永劫の無垢》でたくさん引かれるとすぐ負けるのでやはり《覆いを割く者、ナーセット》が重要なマッチ。 2/2クリーチャーが多いので《悪夢の詩神、アショク》のトークンはかなり強いです。   《思考囲い》は《集合した中隊》を抜けるのでそこそこ強いですが、《望み無き悪夢》はほとんど意味がなかったのですべて抜きます。《永劫の無垢》でそこそこ引いてきますし、1枚ハンデスは効果がありませんでした。   VSアゾリウスコントロール +3《神秘の論争》+3《未認可霊柩車》+2《悪夢の詩神、アショク》-2《食肉鉤虐殺事件》-2《不気味なガラクタ》-4《逃げ場なし》 お察しの通り抜くカードが多すぎて、入れる必要がほとんどない《未認可霊柩車》もサイドインしています。一応《記憶の氾濫》がきついマッチなので墓地対策自体に意味はありますが。 《致命的な一押し》は《サメ台風》や《放浪皇》のトークンから《覆いを割く者、ナーセット》を守るために渋々残しています。   とはいえ、相性自体はそこまで悪くありません。というか相手が《告別》を採用していなければディミーア側が有利だと感じました。 多少不利な盤面でも《空を放浪するもの、ヨーリオン》が一瞬でまくってくれるので、エンチャントをとりあえず並べ続けて除去とハンデスを繰り返しているだけで、気づいたら勝っている場合が多いです。《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》が強く、《ドミナリアの英雄、テフェリー》の定着を許さないのも大きいですね。   抜くカードが多すぎるメイン戦も結局除去があればゲームが長引き、ゲームが長引くと《空を放浪するもの、ヨーリオン》で勝ててしまいます。   サイド後に《致命的な一押し》は残ってしまいますが、それでも勝つことが多いです。《告別》がたくさん入ってたら厳しそうですが。アゾリウスコントロールが流行るなら《否認》などが必要かもしれませんが、そこまで頻繁に当たることはないと思っています。   VSジャンドサクリファイス +3《未認可霊柩車》+2《霊気の疾風》+2《悪夢の詩神、アショク》-2《不気味なガラクタ》-4《勢い挫き》-1《致命的な一押し》 めちゃくちゃキツいです。《清掃人の才能》はほぼ1キルですし、《大釜の使い魔》《魔女のかまど》だけで普通に20点削られます。 このマッチはテンポプレイが重要で、《嵐追いの才能》《孤立への恐怖》と相手のライフを詰める展開が求められます。《空を放浪するもの、ヨーリオン》を5ターン目に出しつつさっさと殴り勝てるのが理想。《悪夢の詩神、アショク》を入れているのもさっさと殴り勝ちたいからです。 まあそんなことは現実にはなかなか起きないですが。   《清掃人の才能》のレベル3は3マナかかるので、そこを狙って《この町は狭すぎる》でバウンスし、その隙に勝つなど、とにかく相手の大きなアクションの隙を狙いましょう。 《全てを喰らうもの、イグラ》の護法は《逃げ場なし》で剥がせるので実は大丈夫です。   VSロータスコンボ +3《神秘の論争》+3《未認可霊柩車》+2《夢を引き裂く者、アショク》+2《悪夢の詩神、アショク》+2《霊気の疾風》-2《食肉鉤虐殺事件》-2《不気味なガラクタ》-4《逃げ場なし》-4《致命的な一押し》 当然ですがありえないぐらいきついです。メインは必敗です。   サイド後も入れるカードがないので《悪夢の詩神、アショク》をサイドインする始末。   イゼットロータスには《覆いを割く者、ナーセット》や墓地対策が非常に効くので実はまだワンチャンスありますが、バントロータスは絶望的です。《厳しい試験官》が残っているタイプには《致命的な一押し》を4枚とも残すようにしてください。 ロータスが多そうなら《減衰球》を入れてもいいです。   VSマルドゥパルへリオン +3《未認可霊柩車》+1《夢を引き裂く者、アショク》-2《不気味なガラクタ》-2《食肉鉤虐殺事件》 除去が多すぎて《パルヘリオンⅡ》が着地することはあんまりないので基本は有利なマッチアップです。 手札破壊で《パルヘリオンⅡ》を捨てられても、《大牙勢団の総長、脂牙》さえ倒せばOKです。   他のデッキでは《大牙勢団の総長、脂牙》が出てきた時、《パルヘリオンⅡ》を対象に取らせた後に《大牙勢団の総長、脂牙》を除去して《パルヘリオンⅡ》を手札に戻させることが多いですが、このデッキでは《望み無き悪夢》などで捨てられてしまうので、《大牙勢団の総長、脂牙》をすぐに除去し、《パルヘリオンⅡ》を拾わせない方が良いです。さっさと手札を0枚にさせましょう。   VS5色ニヴ +3《神秘の論争》+2《夢を引き裂く者、アショク》+2《悪夢の詩神、アショク》+2《霊気の疾風》-2《食肉鉤虐殺事件》-2《不気味なガラクタ》-1《逃げ場なし》-4《致命的な一押し》 《逃げ場なし》が抜ききれないぐらい入れるものが少ないのですが、それでもまあ有利です。お互いに回るとこちらの方が《空を放浪するもの、ヨーリオン》によるリソースで上回れるので、勝手に勝ちます。 サイド後は相手の《白日の下に》や《ニヴ=ミゼット再誕》を許さなくなるので更に勝ちやすくなります。《逃げ場なし》が手札で腐っても許せます。 《森の女人像》を実は殺せます。どうせ使い道などないのでぜひ《森の女人像》を出していただきたい。《勢い挫き》は手札破壊で使いたいですね。   VSミラーマッチ +3《神秘の論争》+3《未認可霊柩車》+2《悪夢の織り手、アショク》-2《食肉鉤虐殺事件》-2《不気味なガラクタ》-4《逃げ場なし》 重要なのはとにかく《空を放浪するもの、ヨーリオン》。着地できた方が膨大なアドバンテージを獲得してそのまま勝ちます。 《思考囲い》は打たずに必ず《空を放浪するもの、ヨーリオン》を拾われた時まで温存しましょう。2枚持っている場合は1枚を先に打っておくと、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を回収してくれるので、そこで抜いていきます。 サイド後は除去を減らして打ち消しと《悪夢の詩神、アショク》、《未認可霊柩車》をサイドインします。《未認可霊柩車》は《嵐追いの才能》のレベル2を止める役割しかありませんが、それでも十分です。《勢い挫き》にやられてしまう点に注意してください。 《神秘の論争》は《空を放浪するもの、ヨーリオン》に温存したいところですが、《覆いを割く者、ナーセット》などにもバンバン打っていきましょう。通ったら結局《思考囲い》などを手札に加えられたりするので、打たない意味がありません。   終わりに ディミーアバウンスは非常に強いデッキで、クリーチャー主体の今のパイオニア環境にとても合ったデッキです! 今のリストには非常に満足していて、もし明日パイオニアのプロツアーがあったらこのまま持ち込みたいと思うほど。パイオニアの競技イベントがないのが悔やまれます。   興味を持った方はぜひ回してみてください。ちなみに僕はこのデッキをMTGアリーナのエクスプローラーで調整していたので、エクスプローラーで回すのもオススメですよ!   それではまた!

【週刊メタゲーム通信】プロツアー『霊気走破』の結果から最新スタンダード環境を分析!

2025.02.25

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   プロツアー『霊気走破』が終わり、スタンダードのメタゲームもようやく完璧に固まってきました。   今回はプロツアーの結果から、最新のスタンダード環境を分析していきます。   目次 プロツアー『霊気走破』の勝ち組と負け組 ズアードメイン ジェスカイ眼魔 ゴルガリ切削 プロツアー『霊気走破』の勝ち組と負け組 今回一番の勝ち組となったのは、もちろん優勝を収めたズアードメインでしょう。 トップ8に3名が駒を進めただけでなく、優勝、準優勝、トップ4と上位を総ナメ。使用率3位にも関わらず56%近い勝率が出ています。   勝率上は赤単アグロの56.5%が最高に見えますが、赤単の使用者は11名なのに対し、ズアードメインは53名が使用しています。5倍近い使用率にもかかわらずほぼ同等のウィンレートが出ているので、本トーナメント一番の勝ち組はズアードメインで間違いありません。   一番人気だったグルールアグロはトップ8入賞こそ1人でしたが、その勝率は50.8%とそこそこ。赤アグロが意識されていたのは間違いなかったので、これでも健闘した方かもしれません。 一方、使用率トップ3の中で唯一勝率50%を割ってしまったのはエスパーピクシー。トップ8に一人も進むことができず、プロツアー『霊気走破』では負け組となってしまいました。 《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》のコンボを擁するデッキはトップ8に1つも入賞しておらず、これは意外な結果です。 勝率25.9%と悲惨な数字となってしまったディミーアミッドレンジ。スタンダードでは長く存在するアーキタイプでしたが、上位デッキたちのほぼすべてに狩られる存在となってしまっていたのでしょう。 プロツアー前にはそこそこ遭遇率の高いデッキでしたが、今後は淘汰されていくことになるでしょう。プロツアーの前と後では環境はまるで変わるのです。   おそらく今週末には、ズアードメインはトップメタとなるでしょう。そのズアードメインに比較的相性の良いグルールアグロが二番手となり、エスパーピクシーが続く。そのすぐ下にジェスカイ眼魔とこのようなメタゲームが展開されていくのではないでしょうか。 もちろんこのメタはすぐに変動することになります。トップメタのズアードメインを倒すためにどんどん赤アグロが増えていき、やがて赤アグロが最多数となり、その赤アグロを倒すデッキが現れ……生き物のように変化していきます。   ズアードメインは《陽背骨のオオヤマネコ》に対するプランが現状ほぼないに等しく、これからすべての赤アグロが2枚以上採用することになるでしょう。今回トップ8に残った力線以外の2つの赤アグロは《陽背骨のオオヤマネコ》を入れています。 特に赤単は《陽背骨のオオヤマネコ》のダメージをほとんど受けないため、グルールよりもズアードメインに対して強いデッキです。グルールだと自分もダメージを喰らうので、そのせいでダメージレースに負けてしまうこともありますからね。   グルールVS赤単は、緑のメリットよりも、2色ゆえのタップイン・ダメージなどといったデメリットの方が目立ってしまうため、こちらも赤単に分があります。 というわけでズアードメインがトップメタになった後は、赤単アグロが活躍しそうな気がします。もし今週末に大きなスタンダードの大会に出るならば、赤単アグロがオススメですね。   さて、ここからはトップ8に入賞したデッキから、気になるものをピックアップして解説していきます。 ズアードメイン プロツアー『霊気走破』 : 優勝  By Matt Nass 今大会で最も勝ち組だったズアードメインですが、リストはそれぞれ微妙に異なっています。   見事プロツアーを制したマット・ナス選手のリストはまずマナベースが特徴的です。   ズアードメインは当然《永遠の策謀家、ズアー》を採用するため、白青黒の3色を使います。その上でリソースを稼ぐ《豆の木をのぼれ》と《ホーントウッドの大主》がほぼ必須となるので4色となります。 4色ともなればタップインばかりとなり、引き次第ではまともにカードをプレイできるのが3ターン目以降となってしまい、あっという間に負けてしまうのがドメイン系のあるある。特定の色マナが出ないことも多々あります。   とにかく土地関連のトラブルに見舞われがちなドメインですが、このマット・ナス選手のリストは、ほぼ白緑の2色に《永遠の策謀家、ズアー》のための青と黒が加わった、いわば白緑タッチ青黒です。そのため、10枚の諜報土地以外はすべてがアンタップインとなっています。 《魂の洞窟》が0枚のリストは、プロツアー参加者でマット・ナス選手ただ一人だったようです。徹底的にマナベースの安定に努めた結果の優勝なのです。 さて、『霊気走破』でズアードメインが得たカードは《全損事故》。ただのコモンと侮るなかれ。このカードによってズアードメインは確実に強化されました。 対象がタップ状態だと2マナになる追放除去、《全損事故》。元のマナ総量は5なので、なんと2マナで唱えて《豆の木をのぼれ》で1ドローできるのです。脱法豆の木がまた増えました。 しかも《力線の束縛》と違い、使った後は墓地に落ちてくれるので、《花粉の分析》の証拠収集を達成するのにも役立ちます。このデッキには大主をたくさん並べた後の《永遠の策謀家、ズアー》か、もしくはフィニッシャーの《ミストムーアの大主》が欲しい瞬間が多々あります。 従来のズアードメインは《花粉の分析》の証拠収集のために《群れの渡り》などを入れていましたが、《全損事故》によって無駄なスロットを割く必要がなくなりました。   《全損事故》は追放除去なので、苦手なマッチアップだった赤系アグロに対して強力です。《心火の英雄》を除去した時にダメージを受けなくて済みますからね。《エルズペスの強打》は3点で《熾火心の挑戦者》や《心火の英雄》を倒せないケースもあり、安定した除去札とは言えません。その点も《全損事故》は完璧なのです。 白緑の2色におさめることで序盤からの動きを安定させ、苦手な赤アグロとの相性を改善させたのは、さすがの一言!   ジェスカイ眼魔 プロツアー『霊気走破』 : 6位 By 原根 健太 日本勢で唯一トップ8に駒を進めた原根選手が使用していたのがジェスカイ眼魔。75枚同じリストを使用していた行弘選手も10位入賞を果たしており、そのデッキの強さは折り紙つきです。 様々なフォーマットで活躍する《忌まわしき眼魔》を墓地に落とし、《救いの手》《再稼働》で釣り上げるのがこのデッキ。アゾリウス眼魔とコンセプトは似ていますが、大きく違うのは墓地に落とす手段です。 アゾリウスが《錠前破りのいたずら屋》や《航路の作成》などの呪文で《忌まわしき眼魔》を墓地に送り込むのに対し、ジェスカイ眼魔は《逸失への恐怖》《太陽の執事長、インティ》《蒸気核の学者》などのクリーチャーたちで《忌まわしき眼魔》を落とします。 これが何を意味するかというと、ジェスカイ眼魔の方がより攻撃的なデッキなのです。墓地に落とす手段のカードたちも対戦相手視点では放置できませんからね。《忌まわしき眼魔》を出す前からプレッシャーを与えられるのです。   しかもデッキにクリーチャーが大量に入っていることで、戦慄予示の当たりが多いのも魅力。《逸失への恐怖》を突然表にして想定外のダメージを与えられることも。 また、《救いの手》《再稼働》の対象が単純に増えているので、手札で腐ることがなくなりました。   《蒸気核の学者》《逸失への恐怖》はカードを引く能力を持っているので、相性の良い《プロフトの映像記憶》も採用されています。 特に《逸失への恐怖》との組み合わせはすさまじく、昂揚時は《プロフトの映像記憶》が2回誘発するので、一気に致死量級のダメージを与えることも可能です。   サイドボードには『霊気走破』からの新戦力、《灯を追う者、チャンドラ》を採用。 機体を生み出す能力は全体除去に強く、プラス能力でのドローとディスカードも、《忌まわしき眼魔》を捨てる手段として活用できます。 ジェスカイ眼魔はどこまで行ってもクリーチャーデッキ。後続を供給しやすいデッキとはいえ、全体除去が厳しくないわけではありません。《灯を追う者、チャンドラ》は全体除去の返しに攻撃しながら、最終的には大マイナスで勝利を目指せる、このデッキにとってぴったりの攻めるプレインズウォーカーです。   こうしてリストを見ているだけで、ジェスカイ眼魔はとても多角的な攻めを持っているデッキであることが伝わってきます。アゾリウス眼魔は墓地対策を非常に苦手としていましたが、このデッキはリアニメイトスペルの6枚以外が墓地となんら関わりがありません。《安らかなる眠り》を置かれても涼しい顔をして《プロフトの映像記憶》と《蒸気核の学者》で巨大クロックを作ってしまえるのです。 かといって墓地対策されなければ、3ターン目に《忌まわしき眼魔》+《逸失への恐怖》など、圧倒的な盤面を作られることになります。相手には対策を強要しつつ、こちらは様々なプランで戦っていけるので、サイドボード後も強いのが素晴らしいですね。   これから確実にトーナメントで見る機会が増えるデッキでしょう!   ゴルガリ切削 プロツアー『霊気走破』 : 5位 By Zevin Faust 今回のトップ8で唯一"その他"のデッキだったのがこちらのゴルガリ切削。   その名の通り、《ベイルマークの大主》《かじりつく害獣》《脱皮の世話人》でライブラリーを切削していき、墓地にカードを貯めていきます。 墓地にカードを貯めるとどんなボーナスがあるのか。その答えはクリーチャー陣にあります。   《鞘破りの群れ》《虚ろなる匪賊》《キチン質の墓地歩き》の3種はすべて、墓地にあるクリーチャー・カード1枚につきコストが1軽くなるクリーチャーたち。これらを1~2マナで展開し続けて勝利を目指します。 《やり場のない悔恨》はクリーチャーではなく除去ですが、これも同じく墓地のクリーチャーの数だけマナが軽くなり、最終的には1マナに。 そしてマナコストが軽くなるカードと相性の良いカードと言えば?もうお分かりですね、《豆の木をのぼれ》です。 《豆の木をのぼれ》がある状態でこれらの重いカードを連打していき、圧倒的な物量で相手を圧し潰すのがこのデッキなのです。   一度墓地が肥えだすとこのデッキは止まりません。1マナ6/6や1マナ5/4がドローしながら出てくるので、あの《忌まわしき眼魔》すら無視して盤面を有利にしてしまうこともあるほど。 《迷いし者の魂》はゴルガリ切削のもう一人の主役となるカード。墓地のパーマネントの数だけサイズが上がるので、このデッキでは2マナ10/11ぐらいのサイズになります。まさにぶっ壊れカード。 手札のクリーチャーを捨てて墓地を肥やしたり、兆候した《ベイルマークの大主》を生け贄にしたりなど、墓地肥やしを兼ねて出てくることが多く、序盤から活躍してくれます。《かじりつく害獣》を生け贄にして相手の《心火の英雄》を倒す、なんて場合も。 全体除去以外ではほとんど止まらないため、《審判の日》などが使える白以外のデッキにはゴルガリ切削を止めることはまずできません。墓地対策も《除霊用掃除機》のような生半可なものでは止まらない場合もあり、《安らかなる眠り》が求められます。 《審判の日》擁するズアードメインだけは少し苦手ですが、その他のデッキに対しては比較的強く、メタゲーム次第では今後暴れ回ることもありそうです。 特にエスパーピクシーなどの《この町は狭すぎる》に強いのが大きいですね。戻す対象はすべて軽いですし、フィニッシャーたちは1マナですからね。しかも《豆の木をのぼれ》でまたカードを引かれるので、本当に一瞬の足止めにしかなりません。 「グルールに対して間に合うのか?」と疑問に思う方もいるでしょうが、とにかく速いターンからサイズの大きいクリーチャーを展開してくるので、二段攻撃+《巨怪の怒り》ですら突破できなくなってしまうのです。《迷いし者の魂》の前ではトランプル・二段攻撃を付与した《心火の英雄》でも本体にほとんどダメージが入りません。 回していてとても楽しいですし、しっかり強いので、面白いデッキがお好きな方はぜひ一度試してみてください。ちなみに僕はハマりました。

プロツアー『霊気走破』のメタゲームブレイクダウンを分析!

Standard ピックアップ

2025.02.21

mtg Yuyan

いよいよ今夜から行われるプロツアー『霊気走破』。   『霊気走破』加入後のスタンダード、そにメタゲームブレイクダウンが公式から発表されました。   今回はそのデータをもとに、プロツアーでのメタゲームを分析していきます!   グルールアグロ(66名/18.9%) 最大勢力となったのは、前環境の王者にして歴代最強の赤アグロとの声も名高いグルールでした。 《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》は早いクロック・継続的なリソースを稼ぎ出す、赤アグロの三種の神器。特に《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》のタッグはパイオニアでも大活躍しています。 早いだけならこれまで同速度の赤アグロは存在しましたが、今のスタンダードのグルールアグロはなんといっても粘り強い。ただ除去を大量に入れるだけでは勝利することはできません。   《多様な鼠》は2ターン目に出しても良し、4ターン目に新生で唱えれば横にトークンが並ぶので、単体除去に耐性があります。 緑を入れる理由でもある《探索するドルイド》も、ライブラリーの上2枚を追放して使用しつつ、自身も馬鹿にならないクロック。2枚のスペルが出来事でめくれれば、1枚で3枚分の活躍を見せてくれます。 《岩面村》《不穏な尾根》というマナフラッド受けも存在し、逆に土地が3枚止まっても《心火の英雄》《多様な鼠》《巨怪の怒り》だけで勝ててしまいます。 最序盤からアクションを起こしつつ、中盤・終盤まで攻め続けられる。そしてマナフラッド・マナスクリューの両方に強い。   夢のようなデッキです。   そんなグルールですが、『霊気走破』加入後のスタンダードでは少しその姿を減らしていました。   『霊気走破』で加入した《不気味なガラクタ》《勢い挫き》によって、2番手だったエスパーピクシーのアグロ耐性が上がったことが、まずは挙げられるでしょう。 グルール対エスパーピクシーは、お互いが特に意識していなければ、五分程度の相性でした。『霊気走破』が入り、グルール側にはアップデートがなかったのに対し、エスパーピクシー側は置物除去を手に入れたことで、エスパーピクシーがグルールに強いリストになっていると考えられます。   しかし、グルールも黒いデッキに強い《脚当ての補充兵》を大量に採用することにより、単体除去耐性を向上させられます。今回グルールを持ち込んだプレイヤーはグルール同型、エスパーピクシー、そしてズアードメインの3つを仮想敵としているでしょうから、ミラーマッチとエスパーピクシーに強い《脚当ての補充兵》をメインボードに採用しているプレイヤーは多いはずです。 もしかしたら『霊気走破』で加入した、知られざる新戦力もあるかもしれませんね。   エスパーピクシー(58名/16.6%) グルールに次いで多かったのがエスパーピクシー。 《養育するピクシー》《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》の3種のバウンスを駆使し、アドバンテージを稼ぎながら相手のライフを速やかに0にするデッキです。 《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》ループを軸にしているデッキの中で最も攻撃的で、2ターン目にパワー3のクリーチャーで攻撃していく、《野生のナカティル》が活躍していたズーを想起させてくれます。 《望み無き悪夢》をバウンスして手札破壊とダメージを稼いだり、《逃げ場なし》を回収して除去を使い回したりと、アグロにも関わらず非常に器用なデッキです。 グルールアグロはリソース勝負はかなり得意なデッキですが、実は守りの面では少し心もとないデッキ。エスパーピクシーはその弱点を突き、グルール相手に短期決戦を挑んでいるのです。《逃げ場なし》などの除去で盤面をコントロールしていくのではなく、ダメージレースに使っているというわけです。 そんなエスパーピクシーに『霊気走破』から加わったのが《不気味なガラクタ》。1マナで-2/-2修正を与える《見栄え損ない》が置物になったことで、グルールへの耐性が上がりました。 これまでは後手で1マナで使える除去は《切り崩し》しかなく、《切り崩し》から入ると2ターン目に《孤立への恐怖》や《この町は狭すぎる》を構えられませんでした。 しかし、1マナの置物除去である《不気味なガラクタ》のおかげで世界は変わりました。1ターン目に除去しつつ、2ターン目に《孤立への恐怖》を立てつつ《不気味なガラクタ》を回収するムーブは、赤アグロにとっては溜まったものではありません。   『霊気走破』後のスタンダードでエスパーピクシーがグルールを圧倒しているのは、ひとえにこの《不気味なガラクタ》のおかげと言っても過言ではないでしょう。 エスパーピクシーが今回負け組になるとしたら、それはグルール側に攻略された時だと思います。グルールを選択したプレイヤーがエスパーピクシーにどんなプランを用意したのかがカギです。   エスパーピクシー側はグルールに対し、除去を増やしてダメージレースを優位に進めて勝利するのが基本戦略で、それはおそらく今回のプロツアーでも同様になると思われます。   一方のグルールは、《不気味なガラクタ》によってこれまでの戦い方ではより勝ちづらくなっています。それならゲームプランをそもそも変えるしかないのですが、単に除去を増やして長期戦を挑むのは、対エスパーピクシーでは得策と言えません。《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》《望み無き悪夢》などでエスパー側もロングゲームができるのです。 だからこそエスパーピクシーは攻略しにくいデッキと言われています。プロプレイヤーたちのグルールが果たしてどのような形でこの難敵を攻略するのか、楽しみですね。     ズアードメイン(53名/15.2%) グルール、エスパーピクシーとアグロデッキが続く中、3番手につけたのはコントロールデッキのズアードメイン。3番手とは言ったものの、エスパーピクシーと使用者はほとんど変わりません。 《永遠の策謀家、ズアー》によって兆候状態の大主たちを起こして攻めるデッキ、ズアードメイン。その名の通り基本はドメインなので、《力線の束縛》《太陽降下》で盤面を掌握しつつ、《豆の木をのぼれ》でリソースを稼いでいきます。 《豆の木をのぼれ》のトリガーとしても優秀なのが《ミストムーアの大主》《ホーントウッドの大主》。兆候で唱えてカードを引き、《永遠の策謀家、ズアー》で無理やり動かす、2つのインチキ要素がデッキに入っています。 『霊気走破』の影響を特別受けたわけではありませんが、グルールアグロとティムールカワウソを苦手とし、その他のデッキには五分以上あることから、近頃頭角を現してきました。   特にティムールカワウソがエスパーピクシーやディミーアバウンスになったことが大きく、これらのデッキに対しては比較的有利に立ち回れるため、事実上敵はグルールアグロ。グルールをしっかりと意識した構築さえできれば、環境のほとんどのデッキに対して有利に立ち回れるでしょう。   先ほど『霊気走破』の影響を受けなかったと言いましたが、それは少し誤りで、実は《全損事故》が加わっています。 タップ状態のパーマネントに対しては2マナになる、クリーチャー・機体を追放するインスタント。そう、本来5マナのカードが2マナになるので、《豆の木をのぼれ》でドローできるのです。しかも追放なので《心火の英雄》も後腐れなく除去することができ、対赤アグロへの耐性が上がりました。 従来のドメインと違い大主からの《永遠の策謀家、ズアー》によるビートダウンが可能なので、不利マッチを無理やり取る力もあり、デッキパワーはかなり高め。   リストの自由度がそれなりに高いことから、緑白青に黒をタッチ(ズアーのみ)したリストから、緑白黒に青(ズアーのみ)を採用するなど、様々なチューンが可能です。グルールアグロ・エスパーピクシーに強いリストに仕上げたプレイヤーが有利なフィールドですが、果たしてどのようなリストが持ち込まれたのか、早く見てみたいですね。   個人的には《フラッドピットの大主》を抜き、青を《永遠の策謀家、ズアー》だけにした緑白黒タッチ青の形がグルールアグロ・エスパーピクシーに強いと思っていますが、果たして。 ズアードメインまでの3デッキのみが使用者10%以上となっており、グルールアグロ・エスパーピクシー・ズアードメインが現スタンダードの三強と言って差し支えないでしょう。   ジェスカイ眼魔(21名/6%) 21名のプレイヤーが選択したデッキは……ジェスカイ眼魔!? 正直驚きました。   リストはまだ上がっていませんが、最近のトーナメントで勝っていたのは、《逸失への恐怖》で《忌まわしき眼魔》を墓地に落とし、《救いの手》《再稼働》で釣り上げるデッキでした。 《忌まわしき眼魔》を捨てる手段として《蒸気核の学者》を採用していることから、相性の良い《プロフトの映像記憶》も入れ、《忌まわしき眼魔》を吊り上げる以外の勝ち手段もしっかりと入っています。 《灯を追う者、チャンドラ》は『霊気走破』で加入した新たなディスカード手段。機体を作る能力は全体除去と墓地対策に強く、ルーター能力以外にも使い道があるのが魅力です。 ジェスカイ眼魔のようにサイドからキラーカードを入れられてしまうデッキにおいて、《灯を追う者、チャンドラ》のようなサイドカードは最も欲しいカードです。単に《安らかなる眠り》や《除霊用掃除機》を割れるだけのカードではなく、《灯を追う者、チャンドラ》のようにコンボに寄与(ルーター能力)しつつ、相手のサイドボードを無視する(墓地対策が刺さらない)カードが望ましいのです。 《安らかなる眠り》や《除霊用掃除機》は多くのデッキに採用されていそうですが、果たして墓地対策の海を泳ぎ切ることはできるのでしょうか。   霊気走破の影響 今回のプロツアーで使用されている『霊気走破』のカード一覧も公開されています。   1位《全損事故》(166枚) メインに161枚、サイドボードに5枚。これは大半がズアードメインだと思いますが、7人が使用しているアゾリウスコントロールにも採用されているかもしれませんね。   《全損事故》はズアードメインのマスターピースとなるのでしょうか。   2位《呪文貫き》(160枚) エスパーピクシーやジェスカイ眼魔、ディミーアミッドレンジなどに採用されているのでしょう。4枚採用されることはほとんどありませんが、メインとサイドに1枚ずつなど、リスト公開制トーナメントでは、少ない枚数を採用して相手にプレイさせにくくする戦術が取れます。   1マナであればグルール相手にも構えやすく、《探索するドルイド》、《亭主の才能》など打ち消したいカードもそれなりに多い。メインに入れてもそれなりに活躍の機会がありそうですね。   3位《ウェイストウッドの境界》(141枚) 対抗色の境界ランドが今回5種収録されましたが、その中で圧倒的な枚数となったのが緑黒。ゴルガリミッドレンジ・ゴルガリ《陰湿な根》は当然として、他にはどのようなデッキに入っているのでしょうか。   2つのゴルガリは合わせて12人。4枚ずつ使ったとして48枚なので、100枚近くが浮いていることになります。ドメインが53人いることを考えると、ここに組み込まれている可能性が高いですね。   ゴルガリミッドレンジはグルール・エスパーピクシーに強く、ズアードメインに弱いデッキ。今回のメタゲームでは優れた選択で、もしズアードメインに対して強いリストになっていれば、トップ8が見えてくるデッキですね。   ゴルガリ《陰湿な根》を持ち込んだ4名はチームデッキでしょうか?今回《脱皮の世話人》で強化されたデッキであり、注目のアーキタイプです。   4・5位《不気味なガラクタ》(130枚)/《勢い挫き》(107枚) 戦場に出た時に除去を行うコンビが4位・5位となりました。トータル枚数は《不気味なガラクタ》の方が多いものの、メインに入っている枚数は《勢い挫き》の方が圧倒的に多いのが面白いところ。   メインから入れる除去としては《勢い挫き》の方が強力なのは言うまでもありません。倒すクリーチャーのサイズに制限はなく、除去できなかったとしても手札破壊が可能ですからね。   ただ、サイドから除去を追加したい時には《勢い挫き》は心もとない。入れたい相手はアグロであり、それならば1ターン目から除去できる《不気味なガラクタ》に軍配が上がります。   ほぼすべてのエスパーピクシー・ディミーアバウンスにこれらのカードは採用されているでしょう。今回トップメタであるグルールがしっかり意識されているのがわかりますね。   6位《輝晶の機械巨人》(58枚) 『霊気走破』の目玉でもある機械巨人サイクルから、緑白の《輝晶の機械巨人》がトップ10入り。   戦場に出た時に1マナ以下のクリーチャー・アーティファクト・エンチャントを2枚サーチするカードで、今回8名が選択しているセレズニア檻、バント檻、そしてバントギアハルクで採用されているのでしょう。   セレズニア・バントの檻デッキは、《収集家の檻》を活用したトークンデッキのことでしょう。クリーチャーにカウンターを置く置物でありながら、秘匿能力を持ち、カードを1枚タダで唱えることができます。 バントの方は《マネドリ》を採用しているのでしょうか。《輝晶の機械巨人》で《マネドリ》をサーチし、《輝晶の機械巨人》をコピーする動きは強烈。 圧倒的な展開量とサイズでクリーチャーデッキ全般に強く、グルールアグロ・エスパーピクシーには優位に立ち回れそうですが、ズアードメインに対しては厳しいデッキです。   とはいえ、それはこれまでの常識。プロツアーで持ち込まれたリスト次第ではズアードメインを圧倒してしまうかもしれません。そうなれば三強すべてに強いということになりますね。   7位《食糧補充》(45枚) レガシーでも話題になっている3マナのドロースペルが7位にランクイン。41枚がメインで使用されています。   3マナのドローと言えば2ドローが普通でしたが、《食糧補充》は5枚見て好きな2枚を選べる破格の性能。コンボデッキはもちろん、コントロールでも採用されそうです。 今回の上位デッキたちのどれにも入っていなそうですが、アゾリウス全知とアゾリウスコントロールあたりでは入るかもしれませんね。アゾリウスコントロールは《全損事故》と《食糧補充》と、『霊気走破』で地味に強化されたアーキタイプですね。 《放浪皇》があった頃のスタンダードではアゾリウスコントロールは環境最強のデッキで意識される側でしたが、今回はメタ外。そういう時に怖いデッキなので、アゾリウスコントロールには少しばかり期待してしまいますね。 終わりに  というわけで今回はプロツアー・シカゴのメタゲームブレイクダウンを元に、スタンダード環境をお届けしました!   ちなみに僕の優勝予想はズアードメインです! プロツアー・シカゴは日本語公式配信もあります。最高峰のプレイヤーたちの戦いを目に焼き付けましょう!日本時間の今日深夜2時からです!(配信ページはこちら)   それではまた!

【今週のピックアップデッキ】ディミーアアーティファクト/4c眼魔パルへリオン/オボシュケトラモーズエネルギー

週刊 Modern Pioneer Standard

2025.02.20

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ ディミーアアーティファクト 4c眼魔パルへリオン オボシュケトラモーズエネルギー ディミーアアーティファクト スタンダードリーグ : 5-0 By Melicard 『サンダー・ジャンクションの無法者』のビッグスコアで登場した《身代わり合成機》というカードは、様々なフォーマットでアーティファクト愛好家に親しまれる一方、スタンダードではこれまでさほど活躍できませんでした。 マナ総量が3以上のアーティファクトが戦場に出るたびに、アーティファクト分の修正を持つトークンを生成。このトークンは《ウルザの物語》などから出るものと同じで、非常に大きなサイズで相手を押し潰します。 《身代わり合成機》がスタンダードで今一つな理由は、なんといっても出したターンの隙です。マナ総量が3以上のカードは、ほとんどの場合で《身代わり合成機》を置いたターンには出すことはできません。そのため、《身代わり合成機》を置いてエンドするターンを作ることになり、この1ターンを丸々無駄にする行動が命取りとなってしまうのです。   モダンでは《身代わり合成機》を出してそのまま《金属ガエル》を唱えるなど、この《身代わり合成機》のターンにもう1アクションする工夫がなされています。パイオニアでも《金属製の巨像》を0マナで出せますからね。 そんな事情でなかなかスタンダードで見かけなかった《身代わり合成機》ですが、『霊気走破』でそのデメリットを補うカードが登場しました。   それが《再利用隔室》です。 アーティファクトを生け贄に捧げ、それよりマナ総量の1大きいアーティファクトを場に出せる、アーティファクト版の《出産の殻》です。これが《身代わり合成機》のポテンシャルを引き出してくれます。 まず、2マナのカードを生け贄にすればデッキから《身代わり合成機》を場に出せますし、《身代わり合成機》を出したターンに2マナがあれば、そのまま3以上のカードをサーチして即座にトークンを生成できます。   起動に2マナがかかってしまいますが、そこで役立つのが《奇怪な宝石》。起動型能力に使える2マナを生み出してくれるので、実質《再利用隔室》を0マナで起動できるようになります。 《再利用隔室》のおかげで《身代わり合成機》を置くターンの隙はかなり少なくなります。2マナのカードを生け贄にして《身代わり合成機》を出しつつ、《税血の刃》で除去。この動きは4マナででき、更にターンが帰ってくれば《税血の刃》を生け贄にして更なる《身代わり合成機》を戦場に出しつつ、とりあえず1体目のトークンが生成できます。 《再利用隔室》を採用するにあたって最も考えなければならないのが、生け贄に捧げるアーティファクトについてです。 まずは1マナの《不気味なガラクタ》。こちらは戦場に出た時に-2/-2修正を与える便利なカードで、置けば役割がなくなるので、《再利用隔室》の生け贄に最適です。 2マナは選択肢が多く、除去が欲しければ《税血の刃》、リソースを稼ぐための《蒐集家の保管庫》、更にドローに特化した《毒気の薬》と用意されています。特に《毒気の薬》は出た時にカードを引き、《再利用隔室》で墓地に送ってもドローできるので、非常に便利です。 主役となる3マナ域は《再利用隔室》《身代わり合成機》の他には《スランの蜘蛛》が1枚採用されるのみです。《スランの蜘蛛》は4マナへの繋ぎになりますが、パワーストーンを生み出してくれるので、それが今度は1マナのアーティファクト、すなわち《不気味なガラクタ》《奇怪な宝石》に変わります。 4マナは《力線の斧》。これは《身代わり合成機》から生成したトークンに装備して一撃必殺を狙います。 そのもう1つの主なつけ先となるのが同じ4マナの《油浸の機械巨人》。相手の手札の最も強いカードを抜いてくれて、《身代わり合成機》も誘発するナイスガイ。《力線の斧》の装備先としても申し分ないですね。 その2つから出てくるのは《解剖道具》と《マイトストーンとウィークストーン》。ライフゲインしたいなら《解剖道具》、リソースか除去なら《マイトストーンとウィークストーン》と状況に応じて使い分けることができます。 面白いのが《悪魔の破砕機》の採用です。戦場に出た時にクリーチャーを破壊する機体ですが、親和がついているため、軽くプレイできます。もちろん《身代わり合成機》も誘発するので、手札に複数枚あるとどんどん軽くなっていきますね。この《悪魔の破砕機》は親和で軽くなってもマナ総量は7なので、《再利用隔室》で生け贄にすることで8マナを場に出せます。 そのために《街並みの地ならし屋》が採用されており、早いターンの《街並みの地ならし屋》はマッチアップによっては相手を詰ませられます。 《身代わり合成機》《再利用隔室》の組み合わせは非常に強力で、これからアーティファクトを主体としたデッキがスタンダードで活躍していくなら、この2種に《奇怪な宝石》を合わせた3種は必須となるでしょう!     4c眼魔パルへリオン パイオニアリーグ : 5-0 By  IofTiger 《大牙勢団の総長、脂牙》で《パルヘリオンⅡ》を墓地から吊り上げて勝利するパルへリオンデッキ。 《大牙勢団の総長、脂牙》が登場してすぐにパイオニアで登場し、日々アップデートが続いているアーキタイプ。 《忌まわしい回収》《サテュロスの道探し》で墓地を肥やし、強力な機体である《エシカの戦車》を入れたアブザン。 《逸失への恐怖》《鏡割りの寓話》で手札から《パルヘリオンⅡ》を落としつつ、ミッドレンジとしても戦えるマルドゥ。 様々なバージョンがトーナメントでは勝ってきましたが、今回は4色。しかもなんと《大牙勢団の総長、脂牙》《パルヘリオンⅡ》以外に強烈なコンボを採用しています。   それが《忌まわしき眼魔》《再稼働》。スタンダードのアゾリウス眼魔でもお馴染みの、2ターン目に《忌まわしき眼魔》を吊り上げるコンボです。 《再稼働》は《忌まわしき眼魔》だけでなく《大牙勢団の総長、脂牙》をリアニメイトすることができ、その《大牙勢団の総長、脂牙》が今度は《パルヘリオンⅡ》を連れてきます。 《再稼働》《大牙勢団の総長、脂牙》《忌まわしき眼魔》ととにかく墓地を利用するデッキなので、墓地肥やしとして様々なカードが採用されています。   《錠前破りのいたずら屋》はアゾリウス眼魔にも採用されているカードで、墓地にカードを送り込みつつ、《再稼働》にアクセスできます。 2ターン目に《再稼働》を打つためには1ターン目から墓地を肥やす必要があります。そこで採用されているのが《異世界の凝視》と《秘本掃き》。《秘本掃き》は枚数だけなら破格の5枚切削。一方の《異世界の凝視》は3枚の内好きな数を残せる上、フラッシュバックもついていて、1枚で2度お得なカード。 《信仰の繕い》と《染みついた耽溺》はいずれもカードを引いて捨てるインスタントで、切削と違って手札のコンボパーツを捨てられます。いずれも2ドローでき、引いてから捨てるカードを選べるので便利ですね。 このデッキには3マナ以下のアーティファクトがないため、一見すると《再稼働》より《救いの手》の方が良いのではないか?と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は僕も最初はそう思っていましたが、よく考えると《救いの手》はタップインでクリーチャーが出てくるので、《大牙勢団の総長、脂牙》を吊り上げた時に《パルヘリオンⅡ》に搭乗できませんでした。絶対に《再稼働》です! 普通のパルへリオンに飽きてしまった方はぜひ一度、眼魔パルへリオンを手に取ってみてください!     オボシュケトラモーズエネルギー モダンリーグ : 5-0 By NicolasGEM カードを戦場や墓地から追放するたびにドローする《新たな夜明け、ケトラモーズ》。既にモダンでは《溌剌の牧羊犬、フィリア》《孤独》でたくさんカードを引くオルゾフブリンク、そして《超能力蛙》との瞬殺コンボを搭載したエスパー眼魔と、様々なデッキで活躍しています。 そんな《新たな夜明け、ケトラモーズ》の新たな活躍場所はなんとエネルギー!『モダンホライゾン3』の問題児が『霊気走破』のトップレアとタッグを組みました。 まずなんといっても《新たな夜明け、ケトラモーズ》と相性の良い《火の怒りのタイタン、フレージ》。脱出するだけで《新たな夜明け、ケトラモーズ》でカードが引けるなんて夢のようですね。そして引いたカードを使っていくだけで墓地が溜まるので、また《火の怒りのタイタン、フレージ》がすぐ脱出できるようになります。 これまでのエネルギーは一度脱出した後に再び脱出するのは大変でしたが、《新たな夜明け、ケトラモーズ》のおかげで比較的容易になりました。   《ボガートの獲物さらい》《虚無の呪文爆弾》は墓地を追放し、《虹色の終焉》《静牢》はパーマネントを追放し、《鋼と油の夢》も手札と墓地のカードを追放してくれるので、すべて《新たな夜明け、ケトラモーズ》によりドローのオマケがついてきます。このデッキは実に簡単にカードが引けるのです。《新たな夜明け、ケトラモーズ》、すごすぎる! エネルギーに《新たな夜明け、ケトラモーズ》が入るだけでもスパイシーですが、このデッキは更に相棒として《獲物貫き、オボシュ》を採用しています。 デッキに奇数のカードを入れられないという強烈な構築制限を課す《獲物貫き、オボシュ》。エネルギーに入っている偶数のカードと言えば……そう、《ナカティルの最下層民、アジャニ》と《ゴブリンの砲撃》です。 この2つを失ったことでエネルギーデッキは速度を失いました。《ナカティルの最下層民、アジャニ》《ゴブリンの砲撃》《火の怒りのタイタン、フレージ》による直接火力でライフを削りきるのが従来のエネルギーでした。 それができない分、このリストは《新たな夜明け、ケトラモーズ》と除去で盤面をさばきながらリソースを取っていく、コントロール的勝ち方が可能となっています。   《獲物貫き、オボシュ》自体は非常に攻撃的な相棒です。奇数のパーマネントが与えるダメージが2倍になるので、《火の怒りのタイタン、フレージ》が6点火力になってくれます。《栄光の闘技場》から《火の怒りのタイタン、フレージ》が走れば6点×2と12点で一撃24点も可能です。 ただでさえ強いエネルギーが、《新たな夜明け、ケトラモーズ》という新たなリソースカードを手に入れたことで更に強くなる予感がしています。 今後《新たな夜明け、ケトラモーズ》はエネルギーの定番となるのでしょうか?

【週刊メタゲーム通信】エスパーピクシーとズアーが新スタンを牽引!ゴブリンにも注目!

週刊 Standard

2025.02.18

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   『霊気走破』がオンライン上でもリリースされ、早速様々な大会が行われている最新スタンダード環境。   今回は現段階で結果を残しているデッキたちを紹介していきます!   目次 エスパーピクシー ズアードメイン ゴブリン エスパーピクシー スタンダードチャレンジ : 優勝  By RubyXillia 《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》コンボは今やパイオニアでも活躍するほど。当然ながらスタンダードでもその力を見せつけています。 ティムールカワウソの必殺技だったこの組み合わせはそのまま他のデッキに派生していき、今ではディミーアバウンス、そしてこのエスパーピクシーと、メタゲームを牽引するようになりました。   《嵐追いの才能》でトークンを生み出し、《この町は狭すぎる》で《嵐追いの才能》を手札に戻しつつ相手の展開を妨害。その後、《嵐追いの才能》のレベルを2に引き上げて《この町は狭すぎる》を回収し、再び《嵐追いの才能》を戻すことで、永久機関を作り上げます。 このコンボをアグロデッキに取り入れたのがエスパーピクシー。《養育するピクシー》《孤立への恐怖》は共にパーマネントを手札に戻せるので、《嵐追いの才能》を再利用して大量のカワウソを並べ、一気にクロックを作っていきます。 《養育するピクシー》《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》の3種のバウンスが入っているので、これを最大限に活かすべく、戦場に出た時に効果を発揮するパーマネントが《嵐追いの才能》の他にも入っています。   《望み無き悪夢》は1枚ハンデスと2点ルーズ。手札とライフを同時に攻めるカードで、エスパーピクシーのブン回りに寄与します。《この町は狭すぎる》で2枚とも戻して4点ダメージを叩き出すのはよくあるリーサルパターン。 《逃げ場なし》を回収すれば除去を2度使えて美味しく、特にアグロデッキ相手には重宝します。 入っているカードは前のめりですが、《逃げ場なし》《不気味なガラクタ》を何度も出し直して盤面を殲滅する動きはコントロールデッキそのもので、アグロ耐性のあるアグロデッキです。   クリーチャーの質も決して低いわけではありません。   《悪意ある呪詛術士》はエスパーピクシーに合った1枚。戦場に出た時に呪われし者の役割をクリーチャーにつける必要がある代わりに1マナ3/2とハイスペック。この役割を《嵐追いの才能》から出るカワウソにつければ、デメリットがなくなり、ただの1マナ3/2になります。 呪われし者の役割はエンチャントなので、《呑気な物漁り》の違和感が誘発してカウンターが乗ったり、《孤立への恐怖》《養育するピクシー》で戻すことも可能です。《望み無き悪夢》などを戻してアドバンテージを獲得することこそできませんが、それでも《悪意ある呪詛術士》が1マナ3/2になるので、悪い展開ではありません。 単にクリーチャー除去を入れても《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》で妨害しながらカワウソを生み出したり、《望み無き悪夢》を出し入れされ続けてダメージと手札を失い続ける。 かといって《否認》などの打ち消しを入れればクリーチャーに殴られる。 このように完璧に対応するのが非常に難しいデッキで、今のスタンダードの最強候補の1つです。   その証拠に、相手に《望み無き悪夢》を出された時に手札から捨ててその場で場に出せる《萎れ葉のしもべ》《強情なベイロス》が、実際に緑のデッキに採用されているのです。《強情なベイロス》は赤いデッキにも入れられますが、《萎れ葉のしもべ》はほぼエスパーピクシー専用カードなので、驚きですよね。 早いターンに墓地から《忌まわしき眼魔》を吊り上げるアゾリウス眼魔もエスパーピクシーは苦手としています。そのため、サイドボードには《安らかなる眠り》を3枚忍ばせています。 自分も《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》ループをできなくなってしまうため、《安らかなる眠り》の採用はアンチシナジーに見えるかもしれませんが、逆に言えばそれだけ警戒しているということでしょう。《アフターバーナーの専門家》の影響で墓地デッキが増えつつあるので、それらをまとめて意識するのならば、《安らかなる眠り》が一番です。 今週末に行われるプロツアーシカゴでも一大勢力となることでしょう!   ズアードメイン スタンダードチャレンジ : 3位 By jps_17 兆候で唱えることで軽く出せる代わりに、クリーチャー化するのに数ターンかかる大主サイクル。 モダンでは兆候した《ベイルマークの大主》を《溌剌の牧羊犬、フィリア》《ちらつき鬼火》で追放してクリーチャーとして場に出すズルをするオルゾフブリンクが活躍していますが、このズアードメインは、スタンダードで大主を使ってズルをするカード。   兆候状態の大主を《永遠の策謀家、ズアー》でクリーチャー化し、兆候のまま攻撃してしまおうというのがこのデッキです。 《ホーントウッドの大主》はドメインには欠かせない1枚。出てくる土地トークンはすべてのクリーチャータイプを持っているので、マナトラブルから解放されるだけでなく、《力線の束縛》が1マナになってくれます。 攻める大主は白の《ミストムーアの大主》。こちらは2/1飛行を2体生成するので、飛行クロックで攻めてくるエスパーピクシーに頼もしく、兆候で攻撃すれば攻防一体です。 これらの大主は兆候コストで出す時もマナ総量は5以上なので、《豆の木をのぼれ》との相性が最高。僕は軽いカードで《豆の木をのぼれ》を誘発させることを脱法豆の木と呼んでいますが、このデッキは脱法手段が《力線の束縛》《ミストムーアの大主》《ホーントウッドの大主》と3種あります。 さて、このズアードメインはご覧のように大主によって完成した『ダスクモーン:戦慄の館』デッキ。決して『霊気走破』で強化されたわけではありません。   にもかかわらず、今ここまで活躍し、注目されているのはなぜか。その理由の1つは、苦手としているグルールアグロの減少にあるでしょう。 『霊気走破』はグルールアグロを強化することがありませんでした。その一方で《不気味なガラクタ》はエスパーピクシーをはじめとしたバウンス系デッキに入り、他にもグルールに勝ちやすいデッキたちが現れ始めたのです。 もう1つは、最も苦手としていたティムールカワウソが環境からいなくなったことです。   《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》を使うデッキの中で最も厳しかったのがティムールカワウソ。大ぶりなアクションのデッキに加え、コンボを妨害する手段も少なかったため、すぐに無限コンボを決められていました。 その後、スタンダードは研究が進み、《嵐追いの才能》はエスパーピクシー・ディミーアバンスに受け継がれました。この2つのデッキは純粋なアグロなので、ズアードメインは決して相性が悪くありません。《望み無き悪夢》連打にも《豆の木をのぼれ》を引いているだけでリソースは追いつきます。 相性の悪かった2つのデッキが減ったことで、ズアードメインは前環境よりも遥かに戦いやすい環境となっています。   エスパーピクシーに対しても《害獣駆除》の枚数を増やすことで更に戦いやすくなりますし、様々な色のカードを使えるので、ガードを上げたいところにしっかり強くなれるのも、このデッキの魅力と言えますね。   ゴブリン スタンダードチャレンジ : 5位 By SaddlebackLagac 最後は『霊気走破』以前には存在していなかったアーキタイプのご紹介です。   そう、ゴブリンです!スタンダードにゴブリンが帰ってきました!   マジック黎明期から存在し、人気の高い種族であるゴブリン。最近のスタンダードではちょくちょく刷られていましたが、これまでは強いカードが少なく、デッキになるには至りませんでした。   まずは《焼き切る非行士》。エンジン始動と威迫を持つので、速度を4にさせやすく、最高速度で二段攻撃を持つので打点も高い優秀なクリーチャー。最高速度に到達するのはこのデッキでは重要なので、貴重な1マナ域です。 同じ1マナ域の《グリスレンチのゴブリン》は脅威の1マナ2/1。消尽能力で+1/+1カウンターを置きつつ、手札を2枚まで入れ替えることができます。1マナとしては十分なスペックで、能力もオマケにしては強力。 グルール昂揚などで活躍する《竜航技師》も実はゴブリン。消尽で他のクリーチャーに速攻を付けられるので、《群衆の親分、クレンコ》で出たトークンたちに速攻を付与させて攻撃できます。《群衆の親分、クレンコ》は『ファウンデーションズ』で帰ってきてくれましたね。 これだけでは少しデッキパワーに難があるように思えますが、最後の『霊気走破』ゴブリンである《咆吼部隊の重量級》を見ればその考えは変わるかもしれません。それぐらいインパクトのあるカードです。 自分のゴブリンすべてが速攻を持ち、戦闘開始時にゴブリンを生成。《軍勢の戦親分》や《ゴブリンの熟練扇動者》と似た能力を持つゴブリンですが、ゴブリン全体が速攻を持つのは非常に強力。《群衆の親分、クレンコ》を出したターンに起動できるのはあまりにも大きい! しかも能力はそれだけではありません。最高速度状態の場合、タップすることでゴブリンの数だけマナを生み出せるのです。《群衆の親分、クレンコ》でトークンを並べて《咆吼部隊の重量級》でマナを出して更に展開と、最高速度状態では凄まじい動きを見せてくれます。   《焼き切る非行士》の時に「最高速度に到達するのは重要」と言ったのはこのためです。 速度を得るために《アモンケット・サーキット》を採用しているのもポイント。2ターン目にセットするだけで速度を持ち、1ターン目に出していた1マナ域で攻撃すれば速度2になります。1ターン目に《焼き切る非行士》を出して2ターン目にダメージが通った時と同じ速度なのです。 最高速度後に《アモンケット・サーキット》を引いた場合は、クリーチャーに速攻を付与できるので、後半引いても十分にバリューを出せる土地です。   ベテランのゴブリンたちも『霊気走破』の新人組たちに負けていません。   《ランドヴェルトの大群率い》は全体強化を行いながら、リソースも稼げる最強のロード。《審判の日》を喰らっても《ランドヴェルトの大群率い》さえいれば怖くありません。《太陽降下》は泣きましょう。 強襲能力でトークンを生成する《焦がし切りのゴブリン》も、とにかく数を並べたいゴブリンにとっては嬉しいカードです。 このゴブリンはただのアグロデッキではなく、《アガサの魂の大釜》によるコンボも内蔵しています。 《群衆の親分、クレンコ》を追放すれば自軍クリーチャーたちが《群衆の親分、クレンコ》になるので、+1/+1カウンターが乗っているクリーチャーが複数体いるだけで一気に致死量になります。《グリスレンチのゴブリン》の消尽能力でカウンターを乗せても《アガサの魂の大釜》で追放したクリーチャーの能力が使えることを忘れないでください。 2つの消尽能力を持つ《竜航技師》も《アガサの魂の大釜》に入れる価値がありますね。クリーチャーに速攻をつけられるので、《群衆の親分、クレンコ》《竜航技師》と追放していれば、トークン生成→速攻まで行えます。こちらも自身の能力で+1/+1カウンターが乗るので、《アガサの魂の大釜》の恩恵を受けやすい1枚です。 《咆吼部隊の重量級》は《アガサの魂の大釜》で追放しても、最高速度時の起動型能力をコピーすることはできませんので、ご注意ください。それでも《アガサの魂の大釜》は十分活躍してくれます。   《群衆の親分、クレンコ》は絶対に残すことのできないカードなので、相手はまず見たら除去してくるでしょう。そこを《アガサの魂の大釜》で追放して自軍クリーチャーが《群衆の親分、クレンコ》になれば勝利目前です。 《狂信的扇動者》を《アガサの魂の大釜》に突っ込むことで、能動的にクリーチャーを墓地に送り込めます。《群衆の親分、クレンコ》で《狂信的扇動者》の能力を使って墓地に落とし、その後《アガサの魂の大釜》に入るという芸当も。 即死の動きを持つゴブリンはかつてのゴブリン召集を見ているようで非常に楽しい!しっかり強いデッキでトーナメントでもじわじわ入賞してきているので、これからの大爆発に期待したいですね!

【今週のピックアップデッキ】オルゾフサクリファイス/ボロスイクイップメント/アスモニュメント

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.02.14

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ オルゾフサクリファイス ボロスイクイップメント アスモニュメント オルゾフサクリファイス スタンダードチャレンジ : 6位 By Folero カードを生け贄にして様々な恩恵を得るデッキ、サクリファイス。   《大釜の使い魔》《魔女のかまど》《波乱の悪魔》によって大量のダメージを与えて勝利するラクドスサクリファイスは今もパイオニアで現役のデッキで、スタンダード時代もこのサクリファイスエンジンは大暴れしていました。 そんなサクリファイスデッキが、今回はオルゾフカラーで登場しました。   まずこのデッキはサクリファイスによって何を起こすのか。それは大量に入っているクリーチャー陣をじっくりと見ればわかります。   《復讐に燃えた血術師》《残忍な巡礼者、コー追われのエラス》は共に自分のコントロールするクリーチャーが死亡した時に相手のライフを失わせるカード。つまり、このデッキはサクリファイスにより相手のライフを削っていくデッキなのです。 サクリファイス手段として採用されているのは《バルトロメ・デル・プレシディオ》。最近あまりいない、起動にマナがかからないサクり台で、能力も自身に+1/+1カウンターを置くという優秀なもの。サクリファイスデッキには、このマナのいらないサクり手段は必須です。 そして肝心なのは生け贄に捧げるものたちです。ただカードを生け贄に捧げてもどんどん損をしていってしまうので、供物には工夫が必要です。   《永劫の無垢》は生け贄にするカードとして最上級。死亡するとエンチャントとして戻ってくるだけでなく、クリーチャーを自分がプレイすればカードを引けるので、後続を供給し続けてくれます。 《寄生の賢者》と《入れ子ボット》は共に死亡時に1/1のクリーチャーを戦場に残していくクリーチャーたち。前述の《永劫の無垢》とも相性が良いですね。自分のターンに《入れ子ボット》を出してカードを引き、相手のターンで生け贄にしてトークンを出せばまたカードを引けます。 環境には赤アグロをはじめ、1ターン目からクリーチャーを展開してくるデッキも多々あるため、《かじりつく害獣》は重宝します。ブロックして死亡時に-1/-1すればタフネス2までのクリーチャーを倒せますし、《バルトロメ・デル・プレシディオ》で生け贄にして能動的にクリーチャーにマイナス修正を与えることも可能です。 《うなる大殺犬》は生け贄に捧げた時のボーナスを持っていませんが、パワー2以下のクリーチャーが戦場に出た時に諜報を行い、クリーチャーを墓地に送り込んだり、引き込みたいカードにアクセスしやすくしてくれます。 墓地にクリーチャーを送る手段として《ベイルマークの大主》も用意されています。こちらは切削と同時に回収も行えるカードですね。 なぜ墓地にカードを送りたいのか?その答えはスペル欄にあります。このデッキに入っている唯一のクリーチャー以外の呪文が《過去立たせ》です。 墓地のパワー2以下のクリーチャー・カードをすべて戦場に戻すので、《ベイルマークの大主》以外のクリーチャーがすべて戦場に戻ってきます。そしてそれらのクリーチャーを生け贄にして、相手のライフを失わせて勝利と、コンボチックな動きができるのです!   更に『霊気走破』からの新人にも注目です。その名は《去りし栄光、ザフール》。 他のクリーチャーを生け贄に捧げることで諜報1が行え、最高速度を持っていると、トークンでないクリーチャーが死亡するたびに2/2のゾンビを生成してくれます。つまり《寄生の賢者》が死亡すると1/1と2/2が出てくるわけですね。そこに《過去立たせ》が絡めば1ターンで20点のライフを奪うことも容易です。 ここで問題となるのが、最高速度に到達できるのかという点ですが、それも解決しています。速度を上げるにはクリーチャーで攻撃するしかないわけではありません。相手のライフを失わせれば速度が上がります。つまり、《復讐に燃えた血術師》などの能力でも構わないのです。 かつてスタンダードで活躍していたラリーコンボを思わせる動きのできるオルゾフサクリファイス、好きな方にはたまらないデッキではないでしょうか?   ボロスイクイップメント パイオニアリーグ : 5-0 By  CrusherBotBG 装備品を主軸に据えたデッキと言えば、モダンのハンマータイムがまず頭に思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか? 今回はパイオニアで装備品主体のデッキが生まれました!   まずこのデッキには装備品が合計18枚!恐ろしい数採用されています。いまだかつてここまで装備品を採用したデッキを見たことがありません。   初手にあると戦場に出した状態からゲームを始められる《力線の斧》、モダンでもよく見る《影槍》。この辺りは構築フォーマットでもよく使われるので、お馴染みでしょう。 モダンで《ウルザの物語》からのサーチ用として採用されることもある《溶岩拍車のブーツ》は、パワー修正の他に速攻と護法も付与できる便利な装備品。キャストと装備コストがどちらも軽いので使いやすいですね。 《スランの魔力鎧》は正直僕も初めて見たレベルのカードです。装備先のクリーチャーについているオーラや装備品の数だけ+1/+1修正を与える装備品なので、1体につければつけるほどサイズが上がっていく、面白い性能です。こちらも護法がつきます。 装備品でありながら3点除去になるのが《チェーンソー》。クリーチャーが死亡するたびにカウンターが乗っていき、そのカウンター分がパワーに乗るので、どんどんうなりを上げて成長していってくれます。たくさん装備品を採用したいデッキなので、除去を兼ねてくれるのは非常に嬉しいですね。 そして《刃砦の戦鞭》はクリーチャーについた状態で出てくる装備品。実質3マナのクリーチャーですね。装備先が二段攻撃を持つ他、これ以外の装備コストを1つ下げてくれます。《溶岩拍車のブーツ》が0マナになり、《スランの魔力鎧》も1マナと、この辺りの装備品は非常に使いやすくなりますね。 そんな装備品たちをサーチするのが《フェイの血筋のケラン》。装備品をサーチするのが主な役割ですが、装備先としても優秀です。自身が二段攻撃を持つだけでなく、ついた装備品の数だけ他のクリーチャーのサイズも上げてくれるので、みんなで強くなれます。 装備品はアーティファクトなので、実は相性が良いのが《継ぎ接ぎ自動機械》。装備品を唱えるだけで成長してくれて、護法2を持っているのでなかなか除去されません。装備先が除去されてしまうのがこの手のデッキの一番の負け筋ですからね。《スランの魔力鎧》や《溶岩拍車のブーツ》で護法が重なれば実質呪禁です。 そろそろこのデッキの主役をご紹介しましょうか。それはもちろん《熱烈な勇者》!赤単で活躍したカードですが、実は《熱烈な勇者》に装備品をつける際、そのコストが3下がるのです。 《力線の斧》も《スランの魔力鎧》も《影槍》も《チェーンソー》も全部つけ放題なのです!まさにこのデッキのためのカード!というか《熱烈な勇者》がいなかったらこのデッキを組もうと思わなかったかもしれませんね。   1体のクリーチャーに装備品をつけまくる!そんなロマン溢れる戦いができるのがこのボロスイクイップメントの魅力。一撃必殺を決めてみませんか?   アスモニュメント モダンリーグ : 5-0 By DB_InspiringTimmy カードを捨てるたびに様々な効果をもたらす《忍耐の記念碑》。カードを引いたり宝物を出したり3点ルーズさせたりとどの能力も強く、発売前から期待されているカードです。 この手のカードを使う上で重要なのは、《忍耐の記念碑》を出したターンの隙をどう埋めるかです。3マナで何も盤面に影響を与えないカードを出してターンをパスするのは、スタンダードすら危険な行為です。   それは、3ターンキルが横行するモダンにおいてはタブーと言って良いでしょう。だからこそ、このカードの使い方は非常に難しい。   今回ご紹介するデッキは、そんな《忍耐の記念碑》を実にうまく使ったデッキです。   《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》をご存じでしょうか?カードを捨てたターンにのみ唱えることができ、戦場に出た時に《地獄料理書》をサーチしてきます。 その《地獄料理書》は、手札を捨てることで食物を生成します。この食物を2つ生け贄に捧げると、《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》がクリーチャーを除去してくれるようになります。 《地獄料理書》はタップするだけでカードを捨てられるので、《忍耐の記念碑》と相性が良いですね。   この《地獄料理書》とセットで採用されるのが《楕円競走の無謀者》。アーティファクトが戦場に出るたびに墓地から手札に戻ってくるこのカードは、《地獄料理書》のコストで手札から捨てると、食物生成にトリガーして手札に帰ってきてくれるので、無から料理を作れるのです。 ここに《忍耐の記念碑》が加わると、手札から《楕円競走の無謀者》を捨てて食物を作りながら1ドローしたりと、凄まじいアドバンテージを生み出します。   《信仰無き物あさり》は2枚のカードを捨てられるので《忍耐の記念碑》を2回誘発させてくれたり、《太陽の執事長、インティ》も手札を捨てながらリソースを稼げるので、マナが不自由な時は《忍耐の記念碑》で宝物を作って《太陽の執事長、インティ》で追放したカードをプレイ、なんてことも。 更に『霊気走破』で登場した《略奪するアオザメ》も、手札を大量に捨てるこのデッキにはぴったり。1ターン目に出して2ターン目には3/3以上となり、あっという間に手をつけられないサイズに成長します。 これまで《地獄料理書》《楕円競走の無謀者》のコンボは、《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》が生き残って食物を投げ続けたり、《太陽の執事長、インティ》を複数回誘発させたり、《ウルザの物語》のトークンのサイズを上げたりなど、活躍の機会自体はあったものの、物足りなさがあったのは否めませんでした。 そこに新たに加わった《忍耐の記念碑》と《略奪するアオザメ》は、どちらも単体でゲームプランとして成立するレベルに強力で、間違いなくこのデッキは『霊気走破』で大幅にアップデートされました。 従来のアスモデッキに比べてかなりデッキが速く、粘り強くなりました。《忍耐の記念碑》を使ってみたいならまずこのデッキです!

『霊気走破』後のスタンダードに迫る!ジャパンスタンダードカップから注目デッキを紹介

Standard ピックアップ

2025.02.13

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 『霊気走破』のプレリリースから僅か2日後に行われたジャパンスタンダードカップ:『霊気走破』! スタンダードの大型トーナメントで『霊気走破』のカードは活躍したのでしょうか? 今回は注目デッキをピックアップしてご紹介していきます!       紹介デッキ アゾリウス眼魔 グルール昂揚 ディミーアミッドレンジ アゾリウス眼魔 ジャパンスタンダードカップ : 優勝 By MatsumotoTatsunori 『霊気走破』環境一発目を制したのはアゾリウス眼魔! スタンダードではすっかりお馴染みのデッキが、新環境を見事に制覇。その名の通り、様々なフォーマットで使われている《忌まわしき眼魔》を主軸に据えたアゾリウスカラーのアグロデッキです。   手札から唱える際に6枚の墓地を要求する《忌まわしき眼魔》。それなら墓地から吊り上げてしまえばいいじゃないというわけで、《救いの手》《再稼働》の6枚のリアニメイトスペルで《忌まわしき眼魔》を吊り上げます。 1ターン目に《行き届いた書庫》などの諜報ランドを置いて《忌まわしき眼魔》を落として2ターン目に《救いの手》で釣り上げてしまうモダン級の動きも可能です。墓地に《忌まわしき眼魔》をとにかく落としたいデッキなので、《行き届いた書庫》に加えて《地底街の下水道》まで採用されています。黒いカードはデッキに入っていないので、本当に目的だけです。 《忌まわしき眼魔》を墓地に落とす手段はいろいろとあります。《航路の作成》《決定的瞬間》《錠前破りのいたずら屋》で、手札を減らすことなく《忌まわしき眼魔》を落としながら《救いの手》にアクセスします。 《第三の道の創設》は切削で《忌まわしき眼魔》を墓地に落としつつ、最終章で墓地の《救いの手》を使えるので、1枚で切削とリアニメイトの両方を行えます。第一章から入って上記のスペルたちを使用したり、切削から入ることもできるなど、とにかく場面によって色々な動きが取れる器用なカードです。 《救いの手》《再稼働》の対象が《忌まわしき眼魔》だけでは、肝心のキーカードが墓地に落ちなかった時に手札で腐ってしまいます。そこで採用されているのが《傲慢なジン》です。 《航路の作成》《決定的瞬間》《錠前破りのいたずら屋》といったカードたちが1マナになるので連打できるようになりますし、そもそも墓地を肥やしていくデッキなので、《傲慢なジン》自体のサイズも馬鹿になりません。《忌まわしき眼魔》の代わりにフィニッシャーを務めることもしばしばあります。 『霊気走破』からの加入は2種類。その内の《跳ね弾き》は、これまでのリストに入っていた《送還》が抜けてそのスロットに採用されています。機体が『霊気走破』で大量に収録されたので、機体を戻す場面もあるでしょう。完全上位互換なので《跳ね弾き》にしない理由がありません。 そしてもう1枚は《呪文貫き》。こちらは再録カードですが、アゾリウス眼魔にとにかく合っています。2ターン目に《忌まわしき眼魔》を《救いの手》で釣る際はもちろん、デッキが軽いのでゲーム中盤で1マナを立ててターンを返すことが多いデッキなので、1マナの妨害である《呪文貫き》はこのデッキが望んでいた打ち消し呪文。《送還》と合わせてクリーチャーとクリーチャー以外のどちらにも対処できるようになりました。 アゾリウス眼魔を意識するなら、赤いデッキは《石術の連射》を採用することになるでしょう。回った時の眼魔はグルールすら凌ぐ速度で盤面を作りながらライフを削ってきます。 新環境、墓地対策や《忌まわしき眼魔》対策はぬかりなく!   グルール昂揚 ジャパンスタンダードカップ : 2位 By  DAISUKE IWABUCHI 4種のカードタイプを墓地に揃えることで達成する昂揚。厳しい条件ゆえに昂揚を達成した時のご褒美は大きく、それを目指すデッキがこのグルール昂揚。 1マナ3/3の《継ぎ接ぎのけだもの》、そしてクリーチャーに2回攻撃を付与する《逸失への恐怖》と強力な昂揚クリーチャーたちが入っており、前環境からもトーナメントで活躍していました。 そんなグルール昂揚が今セットで素晴らしい進化を遂げました!   これまでは墓地にカードを落とす行為が昂揚のためだけでしたが、『霊気走破』で加入したとある1枚が、切削やディスカードに新たなバリューをもたらしました。   《アフターバーナーの専門家》です。 消尽能力を起動するたびに墓地から戻ってくる3マナ4/2。巷では《復讐蔦》と呼ばれているこのカードですが、墓地から帰ってくる条件はむしろ《復讐蔦》より軽いかもしれません。 《復讐蔦》はクリーチャーを2回唱えて墓地から戦場に蘇るカードなので、すぐに手札が枯渇していました。リソースを取れないビートダウンではそう何度も返すのは難しい。   一方、《アフターバーナーの専門家》は消尽能力。手札に消尽を持つクリーチャーを1枚温存していれば良いだけですし、自身が消尽を持っているため、複数体の《アフターバーナーの専門家》が帰ってきた時には、片方が除去されてももう一方が《アフターバーナーの専門家》を墓地から呼び戻すことができます。 肝心の消尽能力を持つクリーチャー、《竜航技師》も単体で非常に強力な1枚。2つの消尽能力を持っているので、これ1枚で《アフターバーナーの専門家》を2回蘇らせられます。 更に1つ目の能力は自身に+1/+1カウンターを置きながら、他のクリーチャーに速攻を付与させるので、《アフターバーナーの専門家》が墓地から帰ってきてそのまま殴れます!まさに《復讐蔦》! その《アフターバーナーの専門家》が相打ちで墓地に落ち、次のターンにもう1つの消尽でドラゴンを生み出しつつ、《アフターバーナーの専門家》を再び戻す。ここまで《竜航技師》は1枚で行えてしまうのです。   切削カードも強力な1枚が『霊気走破』で加入しました。《浚渫機の洞察》です。 《蓄え放題》が好きなパーマネントを拾える一方、こちらはアーティファクト・クリーチャー・土地のみ。しかしこのデッキで拾うのはクリーチャーか土地なので、回収範囲に問題はありません。 《浚渫機の洞察》はエンチャントなので、インスタントに比べて墓地に落ちた時に昂揚しやすい点がまず強く、更に回収や《アフターバーナーの専門家》が墓地から戻った際にライフを得られるのも強力。今のスタンダードは苛烈なダメージレースが多く、ライフゲイン手段は貴重です。他の『霊気走破』組と比べて少し地味に見えますが、しっかりとデッキの強化に寄与しています。   《竜航技師》《アフターバーナーの専門家》が加わったことにより、グルール昂揚は粘り強いタフな攻めが可能な骨太ビートダウンに仕上がりました。 切削次第で時に凄まじい回りを見せてくれるので、とても楽しいデッキです。『霊気走破』のカードを使いたいならこのデッキでしょう!   ディミーアミッドレンジ ジャパンスタンダードカップ : 7位 By Hiroaki Itou 良質な青と黒のクリーチャーで攻めつつ、盤面を除去していく、スタンダードライクなミッドレンジです。 スタンダードではすっかり見慣れたデッキですが……『霊気走破』から新加入した神話レアが目に入ります!そう、《油浸の機械巨人》です。 青黒の機械巨人は戦場に出た時にプレイヤーの手札からカードを捨てさせ、そのプレイヤーがドローするというもの。《ヴェンディリオン三人衆》に似た能力とでも言いましょうか。 手札で最も危険なカードを落としてランダムな1枚に変える能力なので、決して弱いわけではありませんが、青と黒のダブルシンボルを持つのであれば、もう少し派手な能力にしてほしかった。個人的にはそんな思いを抱いていたのですが、間違っていたのかもしれません。   特徴的なのは、《油浸の機械巨人》の手札破壊能力を活かすべく、《大洞窟のコウモリ》を採用している点。 最近では赤いデッキの隆盛、それに伴ってほとんどのデッキが1マナ除去を採用していることから、ただ手札を見るだけで終わるカードになってしまうという理由で採用が見送られていた《大洞窟のコウモリ》。その割に《大洞窟のコウモリ》が生き残った時のバリューも決して高くはありません。   しかし、《油浸の機械巨人》によって手札破壊を8枚体制にできるのなら話は別。 《大洞窟のコウモリ》で最初の脅威を抜き、《油浸の機械巨人》で更に手札破壊を重ねていく、新しい攻めパターンが生まれました。   《油浸の機械巨人》自体は4/4絆魂と非常に優秀な能力で、しかも護法もあり、何よりアーティファクトクリーチャーなのでとても除去するのが大変です。《この町は狭すぎる》を活用したエスパーピクシーやディミーアバウンスは《逃げ場なし》と《この町は狭すぎる》に盤面除去を一任しており、そのどちらにも強いのが《油浸の機械巨人》なのです。 《油浸の機械巨人》をコピーする《マネドリ》を4枚採用しているのも非常に面白く、とにかくこのディミーアミッドレンジは《油浸の機械巨人》に寄せた構築で、それが見事に理にかなっています。 考えてみれば、《油浸の機械巨人》は現環境の多くのデッキに対して強いカードです。   赤アグロには安全確認をしながら4/4絆魂を着地させることができ、《この町は狭すぎる》デッキに対しては対処が難しいカード。《喉首狙い》が当たらないので黒系ミッドレンジ全般にも攻守で頼もしい存在です。 事前評価が決して高いとは言えなかった《油浸の機械巨人》の強さに気付く見事な隻眼とデッキ構築です!

【週刊メタゲーム通信】日本とアメリカの地域CSではエネルギーとブリーチが大暴れ!

週刊 Modern

2025.02.12

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   先週末は日本とアメリカでそれぞれ地域CSが開催!   プロツアー、そして世界選手権の権利がかかった今大会から、メタゲームを分析していきます! 目次 メタゲーム ボロスエネルギー 研磨ブリーチ アミュレットタイタン メタゲーム 日本 優勝:ボロスエネルギー2位:オルゾフブリンク3位:研磨ブリーチ4位:青単ベルチャー5位:研磨ブリーチ6位:エルドラージランプ7位:ジェスカイコントロール8位:オルゾフブリンク アメリカ 優勝:アミュレットタイタン2位:研磨ブリーチ3位:エルドラージランプ4位:ボロスエネルギー5位:研磨ブリーチ6位:エルドラージランプ7位:オルゾフブリンク8位:研磨ブリーチ   ボロスエネルギーは日本・アメリカのどちらでも人気が高く、また最も意識されているデッキの1つでした。日本では優勝、アメリカでも4位に入賞していますが、共に1つずつのみ。 安定感・速度・サイド後の強度と強さに必要なあらゆる条件を兼ね備えているボロスエネルギーも、意識されれば支配的ではないことが明らかとなったと思います。   一方、そんなボロスエネルギーと同じぐらい意識されていたはずの研磨ブリーチは大暴れ!日本では2人、アメリカでは3人がトップ8に入賞しています。 研磨ブリーチはボロスエネルギーと違い、サイドボード後にあらゆる妨害を受けるデッキ。メイン戦の勝率は高く、サイドボード後は落としがち。しかも今回はトップメタの一角と予想されており、対策は更に苛烈になっているはずでした。 にもかかわらずの今回の圧倒的勝率。研磨ブリーチというデッキが最強のデッキの一つであると言わざるを得ないでしょう。   そして今回もディミーア眼魔は入賞することはありませんでした。《害獣駆除》でボロスエネルギーと研磨ブリーチに強くなったエスパー眼魔は今大会での活躍が期待されましたが、トップ8に駒を進めることはできず。 今のモダンは、ボロスエネルギーと研磨ブリーチにエルドラージランプとオルゾフブリンクを加えた4強となりましたね。 ボロスエネルギー チャンピオンズカップファイナル : 優勝  By Ma Noah チャンピオンズカップファイナルを制したのは前述のようにボロスエネルギー。 もう何度説明したかわかりませんが、《魂の導き手》《オセロットの群れ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》の『モダンホライゾン3』が誇る低マナ高スペックのクリーチャーを連打するビートダウンの動き。 こちらも『モダンホライゾン3』の問題児、《火の怒りのタイタン、フレージ》《栄光の闘技場》の必殺を加えた、まさに『モダンホライゾン3』そのものと言って差し支えないデッキ。 《色めき立つ猛竜》が禁止になりましたが、デッキの根幹部分は丸ごと残ったので、前環境からモダンを牽引し続けているデッキです。   1マナ域を普通に引くだけで4ターンキルしてしまう速度を持ちながら、諜報ランドと《火の怒りのタイタン、フレージ》によって中盤戦も強く、クリティカルなサイドボードも存在しない。速い・強い・安定のデッキです。   ボロスエネルギーと言えば3マナ域問題。《歴戦の紅蓮術士》と《鏡割りの寓話》のどちらを採用するか、人によって異なっていましたが、このリストはそのいずれも少しずつ採用し、代わりに別の3マナが入っています。 それが《イーオスのレインジャー長》です。 戦場に出た時に1マナ以下のクリーチャーをサーチし、自身を生け贄にすることで対戦相手がそのターンだけクリーチャーでない呪文を唱えられなくなる。後者の能力は研磨ブリーチに強く、ライフを詰めて《イーオスのレインジャー長》でラストターンを潰すのが基本的な使い方です。 ミラーマッチこそ《歴戦の紅蓮術士》《鏡割りの寓話》に劣りますが、Ma Noah氏は同型よりも研磨ブリーチを意識したのでしょう。サイドボードには大量のカードを用意しているとはいえ、メイン戦を落としてしまうと、残り2戦を必ず勝たなければなりません。研磨ブリーチは時々2種のモックスからとんでもない動きをするデッキなので、どれだけサイド後に相性が良くなったとしても、片方は負けてしまうこともあります。   そこで、メインで勝ちやすいように、《イーオスのレインジャー長》を厚めに採用したのでしょう。   先ほど少し触れましたが、サイドボードには《オアリムの詠唱》《石のような静寂》《空の怒り》《損耗+摩耗》《外科的摘出》と、研磨ブリーチ対策が大量に入っています。 この対策量、そしてメインからの《イーオスのレインジャー長》と、研磨ブリーチに対するリスペクトが、今回の勝利に繋がったのでしょう。   事実、日本では研磨ブリーチはエネルギーに続いて二番手でした。お見事な構築!   研磨ブリーチ Regional Championship SCG CON Portland : 2位 By jackson knorr 優勝こそしなかったものの、週末に圧倒的パフォーマンスを見せつけた研磨ブリーチ。   《死の国からの脱出》《研磨基地》0マナアーティファクトが揃った瞬間に勝利する恐ろしいコンボデッキで、《研磨基地》は《死の国からの脱出》で墓地から唱えられるので、このデッキは実質《死の国からの脱出》1枚コンボです。 前環境から存在していたデッキでしたが、《オパールのモックス》解禁によって速度に磨きがかかり、2ターンキルも可能となりました。 様々な構成が試されてきましたが、環境の成熟に伴い、研磨ブリーチもほとんどのパーツが固定されるようになっています。   除去枠として採用されているのは《邪悪な熱気》《稲妻》。この1マナ除去が散らされているのは、天敵《大いなる創造者、カーン》を意識した結果です。 地域チャンピオンシップはリスト公開性なので、ゲーム開始時に対戦相手はデッキに入っている火力が何かを知ることができます。この時、《邪悪な熱気》しか入っていなかったとしましょう。すると対戦相手はマイナス能力を使い、《トーモッドの墓所》をサーチしてしまえば、昂揚しない《邪悪な熱気》では2点しか入らないため、返しのターンで《大いなる創造者、カーン》が落とされなくなるのです。 《稲妻》だけの場合は、《大いなる創造者、カーン》がプラスから入ればやはり落とされなくなります。 しかし、1枚ずつ採用されていた場合、相手のプレイを難しくさせることができます。プラスして《邪悪な熱気》で落とされたり、マイナスして《稲妻》と、プラスとマイナスに裏目を発生させることができるのです。   《白鳥の歌》もデッキに1枚入れておくのが重要です。このカードがないと、《オアリムの詠唱》をメインに採用しているデッキに対して無力なのです。 たとえば《白鳥の歌》が相手のデッキに入っていないなら、《死の国からの脱出》《研磨基地》が決まっても、こちらは《オアリムの詠唱》を温存できます。ライブラリーをある程度掘られ、《タッサの神託者》や《ぶどう弾》で敗北しないぎりぎりのタイミングを見計って《オアリムの詠唱》を打つことができるのです。 しかし、《白鳥の歌》が入っていた場合は、途中で落ちてしまうと、《オアリムの詠唱》に《白鳥の歌》を(脱出によって)打たれてしまいます。そのため、おとなしく《死の国からの脱出》のキャストのスタックで打つしかないのです。 研磨ブリーチはライブラリーをすべて掘って最終的に勝利し、しかも墓地のカードにアクセスできるため、1枚差しにも深い意味がある場合があります。とりあえず抜いてしまわないように注意しましょう!   フィニッシャー枠として、このリストは《ぶどう弾》を採用しています。正直、個人的には《タッサの神託者》である必要はないと思っているので、《ぶどう弾》で納得です。 以前の《モックス・アンバー》しかない研磨ブリーチでは、コンボが決まった際に増えるマナは青マナだけでした。そのため《タッサの神託者》が採用されていましたが、今は《オパールのモックス》で好きな色マナが出るので、フィニッシュの色はなんでも良いのです。 《ぶどう弾》はサイドボード後の《溜め込み屋のアウフ》《ドラニスの判事》を除去したりと、途中でドローしても強いカードなので、僕が使うなら《ぶどう弾》にするでしょう。   《神秘を操る者、ジェイス》をメインに採用したリストがチャンピオンズカップファイナルのトップ4に入賞していますが、このカードも強く、個人的には《タッサの神託者》よりもオススメです。 《タッサの神託者》は《記憶への放逐》で誘発型能力を打ち消されてしまいますが、《神秘を操る者、ジェイス》には無意味です。また、コンボ途中に落ちてしまった場合に先に場に出しておけるので、たとえば《外科的摘出》を構えられている時でも、切削で落ちた直後に唱えて戦場に逃がしてしまえば、そのままコンボ達成が可能です。これは《タッサの神託者》にはできない大きなメリットです。 最近ではメインから墓地対策が入っていることも多く、《敏捷なこそ泥、ラガバン》など、不慮の事故で1枚のフィニッシャーが追放されてしまうケースがしばしばあります。《ぶどう弾》《神秘を操る者、ジェイス》の2枚採用を僕は推します!   アミュレットタイタン Regional Championship SCG CON Portland : 優勝 By Peter Husisian アメリカ地域CSを制したのはまさかのアミュレットタイタン!   アミュレットタイタンの歴史は非常に古く、今年でなんと10年目。当時は《花盛りの夏》から2ターン目に《原始のタイタン》を出すデッキでした。 10年間も2ターン目に《原始のタイタン》を出し続けながら、禁止改定の影響を受けたのはたった2回という奇跡のデッキ。それがアミュレットタイタンです。ちなみに1度目は《花盛りの夏》で、2度目は《一つの指輪》です。 《一つの指輪》が禁止されてしまったアミュレットタイタンですが、この時に解禁された《緑の太陽の頂点》が組み込まれています。 序盤は土地や《樹上の草食獣》などマナ加速になりつつ、マナが余った状態では《原始のタイタン》をサーチできるため、《緑の太陽の頂点》はデッキ内の実を増やしつつ、序盤のアクションにも寄与する便利なカードです。 デッキについて簡単に説明しましょう。キーカードはそのデッキ名の通り、アミュレット=《精力の護符》です。 このアーティファクトがあるとタップ状態で戦場に出るパーマネントがアンタップで出るので、《シミックの成長室》などの2マナが出る土地がアンタップ状態となります。《精力の護符》が2枚あればアンタップが2回誘発するので、《シミックの成長室》を置くと4マナが生まれます。 《原始のタイタン》から出てくる土地もアンタップ状態となり、そこから様々なコンボに繋がっていきます。   以前までは《原始のタイタン》から《ハンウィアーの要塞》を出して攻撃するデッキでしたが、近頃は攻撃せずとも勝利できるようになりました。 《事件現場の分析者》と《鏡の池》や《変容する森林》によって無限切削や無限マナが可能となり、最終的には《イリーシア木立のドライアド》《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が揃うのです。 そのため、以前までは4枚採用されていた《イリーシア木立のドライアド》は最近では1枚のみに押さえられ、よりデッキが安定するようになっています。 特徴的なのは《邪悪鳴らし》でしょうか。《精力の護符》《洞窟探検》《原始のタイタン》とコンボの肝となる部分にアクセスできます。一度《原始のタイタン》が出ればそこからコンボが始まるので、一時的なマナ加速も絶大な効果を持ちます。 今回の勝利の要因としては、苦手な対策カードが環境的に少なかったことが挙げられるでしょう。   ずばり、《血染めの月》と《海の先駆け》です。 《ウルザの物語》が割られるだけでなく土地から色マナも出なくなり、能力すらなくなってしまうため、この特殊地形対策たちがとにかく苦手でした。 以前までの環境トップはボロスエネルギーとディミーア眼魔で、そのどちらもが《血染めの月》《海の先駆け》を採用していました。そのため、トップメタにとにかく弱いデッキだったのです。   しかし、昨今のメタゲームを鑑みてボロスエネルギーから《血染めの月》は抜けていきました。入っていてもメインは1枚、サイドに2枚目があるか程度です。研磨ブリーチに対して効果が薄く、エルドラージにも実はあまり効かない《血染めの月》は、最近では《溶鉄の雨》になっている場合もあります。 《溶鉄の雨》は逆にアミュレットにはあまり効果のないカードです。するとボロスエネルギーにもある程度強いデッキとなり、元々持っていた「回れば2ターンキル」という特性も生き、アメリカの地域CSで優勝を果たしたのでした。   研磨ブリーチに対してもサイドボードの《溜め込み屋のアウフ》を《緑の太陽の頂点》でサーチできるのが魅力です。他の《緑の太陽の頂点》デッキは少し悠長なため、《溜め込み屋のアウフ》を除去するカードを引くチャンスがありますが、アミュレットは妨害がなければ3~4ターンキルしてくるデッキ。そんなデッキが置いてくる対策カードは、研磨ブリーチ視点では溜まったものではありません。 更に流行のエルドラージランプにはそもそも相性が良く、環境的にキラーカードがアンプレイアブル気味になったこともあって、今非常に立ち位置が良いデッキと言えるでしょう。   アミュレットタイタンは動きがとにかく複雑で、相手をしていて難しいデッキでもあります。何をどこで止めれば良いのか?それを勉強するために、一度デッキを回しておくのもオススメです。

ゆうやんの選ぶ『霊気走破』各色トップ3!

ピックアップ

2025.02.07

mtg Yuyan

こんにちは! ゆうやん(@yuyan_mtg)です。 最新セット『霊気走破』がいよいよ2月14日に発売! 今回も注目カードを各色ランキング形式でお届けします! 目次 白 青 黒 赤 緑 マルチカラー 無色 土地     白 3位:《危険な罠》 "エンジン始動!"持ちの《忘却の輪》。最高速度の際のボーナスはタップすることでクリーチャーを強化できるという些細なもの。   "エンジン始動!"については、未達成時のカードの強さと、軽さが重要だと考えています。   "エンジン始動"のカードをざっと見ると、未達成時でもそれなりの強さのカードが多いですね。元々プレイアブルなカードに"エンジン始動"をつけたような印象を受けます。   軽さもかなり重要です。1ターン目に"エンジン始動"で速度を持てば、2ターン目からの攻撃によって、4ターン目には最高速度に到達できます。最高速度になれば、デッキ内に入っている"エンジン始動"カードたちのバリューは跳ね上がるので、最高速度に達するのは非常に大きく、早くそこに行き着くために、"エンジン始動"カードは早ければ早いほどいいのです。   さて、その観点でいくと《危険な罠》はなかなか強いカード。最高速度未達成時でも、《忘却の輪》なので十分構築級の性能。戦場に出た時にブロッカーをどけながら速度を持ち、攻撃が通ってエンド前に速度は2になり、5ターン目には最高速度に到達できることになる。   そして最高速度時のボーナスも、マナを使わずにクリーチャーを強化できるといぶし銀の能力。重ね引いた場合の恩恵も大きく、除去枠としてこのカードに4枚割くのも悪くないように見えます。   2位:《入れ子ボット》 つ、つよ~い!!   《危険な罠》で話したように"エンジン始動"はその軽さが重要。1マナ1/1のエンジン始動は、まさしく最高速度への特急券。   最高速度時のボーナスは+1/+0と些細なものの、死亡時に霊気装置を生成し、自身がアーティファクト・クリーチャーというのは、ボロス召集が最も求めていたカード。これまでは《上機嫌の解体》の対象にするアーティファクトに困り、《遠眼鏡のセイレーン》を採用していたのだが、《入れ子ロボット》のおかげでボロスで組めるようになっりました。   境界ランドも今回登場したし、いよいよボロス召集が本気を出す時が来たのかも。   1位:《武勇の旗艦》 飛行・先制攻撃・絆魂の7/7機体!   《パルヘリオンⅡ》の亜種かと思いきや、他に特に能力はなく、《大牙勢団の総長、脂牙》で釣り上げる価値はありません。   その代わり、このカードにはサイクリングがついています。サイクリングした時にXを支払い、その数だけ操縦士を生成……   この能力、どこかで見覚えがありませんか?そう、《正義の命令》です!! 『スカージ』で登場し、白系コントロールを支えた1枚。当時お金がなくて白コントロールを組めなかった僕にとっては憧れのカードでした。   そんな《正義の命令》がスタンダードに帰ってきた!歓喜せざるを得ません。   とはいえ、当時よりカードパワーが跳ね上がっているスタンダードでは、《武勇の旗艦》が活躍できるかはわかりません。それでも白系コントロールに入りうるカードだとは思います。   《世話人の才能》の最終レベルでトークンたちを強化し、エンド前に《武勇の旗艦》をサイクリングして一撃必殺!なんてこともできるかもしれません。   インスタントタイミングでカードを引きつつ、トークンを生成する。その強さは《サメ台風》で皆さんも体験しているでしょう。   《サメ台風》と違ってサイズは1/1ですが、複数体をばらまけるので、決して下位互換というわけではありません。《武勇の旗艦》には新たなコントロールのフィニッシャーになってほしいですね。   そんな期待を込めて1位です!     青 3位《食糧補充》 5枚見て好きな2枚を加える……いや普通に強くないですか?   かつてイゼットフェニックスには《パズルの欠片》が入っていましたが、あちらはインスタント・ソーサリーのみに対し、《食糧補充》は好きなカードが手に入ります。カードが墓地に落ちればアゾリウス全知に入ったでしょうね。   とはいえ、墓地シナジーが特にないデッキでは《パズルの欠片》の上位互換です。5枚見て2枚加える能力は、3マナ3ドローより強いカードだと思っています。   《予言》、どこまで強くなるんだ…!   2位《牽制機》 ちょっと弱くなった《心悪しき隠遁者》。こちらは2/1飛行なので序盤から殴れる点は優秀ですが、打ち消せる範囲が狭くなっています。 その上、降霊もついていないので、どうしても見劣りしてしまいます。まあレアリティの違いということで納得しましょう。   ただし、《心悪しき隠遁者》と《牽制機》で大きく異なる点があります。それは今のスタンダードには《アガサの魂の大釜》があることです。   《アガサの魂の大釜》でこのクリーチャーを追放すると、自軍生物が全部《牽制機》になるので、かなり相手の動きを制限できます。   今回は《開拓者、おたから》もあり、《アガサの魂の大釜》にくべるクリーチャーがたくさん出た印象があります。 ぜひ一緒に使いたいですね。   1位《思考の泉のマーフォーク》 その名の通り、《思考の泉》を内蔵したマーフォークです。(ちなみに今スタンダードで《思考の泉》が使えるって知ってました?僕は今初めて知りました) カードをX枚引く能力は単純に強く、1ターン目から出せるマーフォークが持っている能力としては破格です。後半引いて腐らない1マナクリーチャーは素晴らしい。   しかもカードを引けるだけでなく、マーフォーク全部に+1/+1カウンターを置くことができるのも強力。3マナで1枚引いてマーフォーク全体強化でも十分です。Xが0でもカウンターは置けるので、実は攻撃的な性能のマーフォークです。   更にこれは起動型能力なので、《アガサの魂の大釜》で他のクリーチャーに能力を付与させることができます。しかもマーフォークにカウンターが乗れば全員が《アガサの魂の大釜》の恩恵を受けられるので、相性抜群。   スタンダードでもマーフォークが組めるようになったのではないでしょうか?今すぐマーフォークで検索しましょう!   黒 3位《勢い挫き》 戦場に出た時にクリーチャーか機体を生け贄に捧げさせるエンチャント。生け贄にできない場合は手札を捨てさせることができるので、似た能力を持つ《税血の刃》より便利。   更に自身を生け贄にすることで速度分のライフを得られるので、最低でも1点のライフを獲得できます。   スタンダードで活躍しているエスパーピクシーで使えば最高速度到達も現実的。赤アグロとのライフレースにおいてライフゲインは重要ですし、最初は盤面のクリーチャーを生け贄に捧げさせつつ、手札も攻められるので、非常にデッキに合っています。かなりの強化になるのではないでしょうか。   少し話はそれますが、エスパーピクシーは《地底の大河》などダメージランドを大量に採用しているデッキです。相手のターンに土地からダメージを受けると相手の速度は上がってしまうので気を付けましょう。 パイオニアでも《空を放浪するもの、ヨーリオン》型のディミーアバウンスに組み込まれると思われるので、かなりの頻度でこれから目にすることになりそうです。 2位《恐血鬼》 おかえり!!!   実に16年ぶりにスタンダードセットで再録されました。僕が初めてプロツアー予選を突破した時の相棒なので、とても《恐血鬼》には思い入れがあります。   土地を置くことで墓地から戻ってきて、相手のライフが10以下だと速攻を持つ。攻撃的なデッキで使いたい性能ですが、特にクリーチャーを生け贄にすることで恩恵を得られるサクリファイス系デッキで真価を発揮します。   それは墓地から蘇る条件がとにかく軽いからです。墓地から戦場に戻る際にマナを要求するカードが多い中、《恐血鬼》はただセットランドするだけで墓地から戻ってこれるので、気軽に生け贄にすることができます。   個人的には《陰湿な根》と一緒に使いたいところ。生け贄にしてカードを引きつつ、セットランドで戻したいですね。   今回登場した《ガス喰らい》との相性もなかなかのもの。   1位《沼地の晩餐会》 カードを切削しつつ、クリーチャー・プレインズウォーカー・機体を除去できる便利なソーサリー。2枚切削できるのでマナ総量が2以下のカードであれば特に下準備せずに除去できます。   こちらも《陰湿な根》で使いたい1枚。墓地を肥やす能力は嬉しいですからね。ただの除去にメリットがつくのはそれだけで素晴らしい。しかもほぼ万能除去です。   プレインズウォーカーを除去できるのは今のスタンダードでは重要です。《悪夢滅ぼし、魁渡》がかなり使われていますからね。   パイオニアの《陰湿な根》デッキにも入れてみたい1枚。   赤 3位《グリスレンチのゴブリン》 《ジャッカルの仔》……お前どこまで強くなるんだ?   昔の下環境の赤単ではエースだった《ジャッカルの仔》。今ではその上位互換がバンバンアンコモンで収録されていますが、《グリスレンチのゴブリン》には驚かされました。 序盤は2/1、中盤に手札を入れ替えながら自身を強化と申し分ない能力に加え、更にシナジー豊富なゴブリン!   1ターン目から展開できるゴブリンが登場したことで、いよいよゴブリンデッキがスタンダードでも現実味を帯びてきたかもしれません。   2位《略奪するアオザメ》 《繁栄の狐》はかつてスタンダードで大活躍したクリーチャーでしたが、《略奪するアオザメ》はそれに近い性能……というかサイクリングコストが重いことを除けば上位互換です。 サイクリングに限らず、カードを捨てればなんでも誘発するので、モダンで《信仰無き物あさり》を打てば2つのカウンターが乗ります。   モダンのホロウワンでは《炎刃の達人》が採用されていますが、あちらがターン終了時までの強化なのに対し、こちらはカウンター。恐ろしいです。威迫を持っていたり、タフネスが2あるので必ずしも上位互換とは言い切れませんが、《略奪するアオザメ》の方が基本は強力でしょう。《通りの悪霊》をサイクリングするだけでもう1マナ2/2です。   《炎刃の達人》《略奪するアオザメ》で8枚体制となったホロウワンをモダンで回してみたいですね。もちろんスタンダードでも活躍する可能性は十分にあるでしょう。   1位《咆吼部隊の重量級》 先に紹介した《グリスレンチのゴブリン》はゴブリンの期待の1マナ域ですが、この《咆吼部隊の重量級》はデッキの中核を担います。   自身以外のゴブリンに速攻を付与し、戦闘開始時にトークンを生成。更に最高速度に達していると、タップでゴブリンの数だけ赤マナを生み出すことができます。   今のスタンダードには実は《群衆の親分、クレンコ》がいるので、《咆吼部隊の重量級》と《群衆の親分、クレンコ》で大量にトークンを生成し、最大速度でマナを出して更に展開。しかも《群衆の親分、クレンコ》は《咆吼部隊の重量級》で速攻を持つ。こう書いているとゴブリンがかなり強く思えてきました。 下環境のゴブリンでも使われる可能性があるほどの強さだと思います。最高速度を活かすために、1ターン目から"エンジン始動"できるゴブリンを入れたいところですね。   緑 3位《浚渫機の洞察》 最近よくある切削したカードを手札に加えるシリーズ。《浚渫機の洞察》は《蓄え放題》などと違ってエンチャントなので場に残ります。   更にアーティファクトやクリーチャーが墓地を離れるとライフを得られるので、とりあえず《浚渫機の洞察》で土地以外を拾った場合は1点ゲインできます。   2枚目を引いて拾えれば2点ゲインになるので、赤いデッキ相手には馬鹿にならない回復量ですね。   《浚渫機の洞察》で《浚渫機の洞察》を拾えないのは残念ですが、アーティファクトとクリーチャーが主体のデッキならば選択肢にあがりそうです。   エンチャントなので昂揚を達成したいデッキでもチャンスがあるかもしれません。《蓄え放題》と違って自身が墓地に落ちないのは少し残念ですが、カードタイプを散らすことで昂揚しやすくなります。   2位《威厳ある放漫トカゲ》 3マナ域のクリーチャーはどんどん強くなっていきますね。ダブルシンボルの3マナ5/4で恐竜ロード??さすがに強すぎてびっくりしました。   伝説ではないので連打すれば4ターン目に6/5が並びますし、恐竜デッキもだんだん強くなってきましたね。   《好戦的な一年仔》から《威厳ある放漫》で6点パンチとかやってみたくないですか?   1位《轟音の速百足》 マナ総量3以下のクリーチャー・機体は+1/+1カウンターが1個乗り、4以上なら3個乗る、3マナ5/5トランプルの機体です。   何を言っているのかわかりませんが、そう書いてあります。   戦場に出したターンこそ何もしないものの、後続がすべて強化されますし、4以上のクリーチャーならば一気にサイズが3つアップします。   マナ総量が4以上なので、《トレイリアの恐怖》のように、コストが軽くなるクリーチャーと相性が良いですね。1マナ8/8はまさに恐怖。 アーティファクトなので親和とも相性が良いですね。下環境にはなりますが、《金属ガエル》は0マナ5/5、《マイアの処罰者》は0マナ7/7と壊れたスタッツです。   スタンダードでも《記録の守護者》は相性が良いカード。食物もアーティファクトなのでコスト軽減に寄与しますし、シミック親和、イケそうです。   マルチカラー 3位《呪われし運転手、ウィンター》 自身と他のアーティファクトがライフを2点支払わせる護法を持ちます。2点のライフは護法1より弱く見えますが、ライフを攻めるデッキで使うなら話は別。攻撃的なデッキなら2点のライフは重くのしかかります。   消尽能力である全体除去も、デッキがアーティファクト主体なら、被害は相手だけという恐ろしい能力。   同じ青黒の《ネットワーク呪詛》もアーティファクトデッキなら強力なフィニッシャーになりうるので、まずは青黒でアーティファクトアグロが組めないか、カードを並べてみたいですね。   2位《ガイドライト、雲水族》 アーティファクト分のパワーを持ち、最高速度を持っていると……アーティファクト呪文をコピー?ヤバいですね。   最初は4マナぐらいだと思ってましたが、よく右上を見てみたらこのカードは2マナでした。2マナならめちゃくちゃ強いカードです。2ターン目に出して最低で1/3、アーティファクトデッキなら2/3になっているでしょうし、次のターンにはもうパワー4になっています。   最高速度になった時には後続がすべて倍になるようなもの。《記録の守護者》をコピーするだけでも凄まじい。   《呪われし運転手、ウィンター》まで入れてエスパーカラーの親和を組みたいところ。   1位《新たな夜明け、ケトラモーズ》 珍しく追放領域を参照するカード。カードが墓地や戦場から追放領域にいくとドローするので、《剣を鍬に》でクリーチャーを追放したらドロー。《儚い存在》で自分のクリーチャーを一時的に追放するだけでもドローできます。   《安らかなる眠り》を貼っているとカードが追放されるので、ドローし放題になります。   神ゆえに破壊不能を持っているので対処は難しく、威迫・絆魂と、動き出したら攻守で活躍します。   更にモダンでは《超能力蛙》とのコンボも注目を集めています。 《超能力蛙》《新たな夜明け、ケトラモーズ》が揃っている状態で《超能力蛙》で《暗黒破》を捨て、墓地のカード3枚を《超能力蛙》で追放すると、《新たな夜明け、ケトラモーズ》の能力で1ドロー。そのドローを《暗黒破》の発掘で置換して3枚切削。拾った《暗黒破》を《超能力蛙》で捨て、先ほど切削した3枚をそのまま《超能力蛙》で追放……とループしていきます。 1ループごとに《超能力蛙》が1つ大きくなるので、先手なら(マリガンしていないなら)3ターン目にライブラリーが51枚=17ループでき、《超能力蛙》のパワーが18になり、手札2枚を追加で捨てれば一撃20点となります。   単体で強いのはもちろん、コンボも早速発見されており、今最も期待を集めているカードです。   《儚い存在》《溌剌の牧羊犬、フィリア》《ちらつき鬼火》でカードを引けるので、モダンのオルゾフブリンクにも入るかもしれませんね。 無色 3位《生体生成エンジン》 選んだクリーチャータイプが+1/+1修正を受ける機体。更に機体がそのクリーチャータイプに変わるので、《生体生成エンジン》自身もそのタイプを持ちます。   今回はマーフォークやゴブリンが強化されたので、それらのデッキではまず活躍するでしょう。特にゴブリンはトークン生成手段が豊富で、それらのトークンが強化されるのは非常に強力。   クリーチャーを全体強化するロードは除去されやすかったり、逆にただ強化するだけのエンチャントだと攻撃の手を緩めることになります。   《生体生成エンジン》は除去されづらく、4/4が場に出るのでプレッシャーも十分です。   2位《光輝の睡蓮》 今回の睡蓮は、アーティファクトを生け贄に捧げた数だけ3マナを生み出すというド派手な能力。自分のアーティファクトが全部《Black Lotus》になります。   最近の睡蓮は悪用しづらいようにタップインなことが多かったですが、《光輝の睡蓮》はアンタップ状態で出てくるので、戦場に出したターンに早速マナが使えます。   ただし、起動にはタップを要するので簡単には悪さができないようになっています。   《屑鉄さらい》と非常に相性がよく、生け贄に捧げたアーティファクトよりマナ総量が小さいカードを回収でき、出たマナから拾ったアーティファクトを出し直し……なんてことができるかもしれません。 《光輝の睡蓮》自身を生け贄にできるので、《屑鉄さらい》《光輝の睡蓮》と生け贄にすると、《光輝の睡蓮》で《屑鉄さらい》を拾えます。   《光輝の睡蓮》をアンタップでき、《屑鉄さらい》を生け贄にした際に拾える《通路の監視者》なんかは面白いかも?《通路の監視者》《屑鉄さらい》《光輝の睡蓮》と揃えば何かが起きそうです。 アーティファクト版《出産の殻》こと《再利用隔室》もあるので、パイオニアでデッキを組んでみたいですね。   1位《忍耐の記念碑》 強すぎる!初見時に目を疑いました。   カードを捨てるたびに宝物かドローか3点ルーズ。どのモードも強力で、1ターンに1つずつしか選べないというデメリットなんて気になりません。   問題の捨てる手段ですが、《美術家の才能》は相性ぴったり。この2枚が揃えば、後はただスペルをプレイしているだけで勝手にゲームに勝利するのではないでしょうか。非クリーチャー呪文をプレイすればカードを1枚捨てて2枚引き、次にカードをプレイすれば3点ルーズですからね。自分と相手のターンでこれを繰り返していくだけです。 《侵攻の伝令、ローナ》のようにマナを払わずにカードを捨てられる手段とも相性が良いですね。2ターン目に《侵攻の伝令、ローナ》、3ターン目の《忍耐の記念碑》でとりあえずドローです。 もちろん相手にカードを捨てさせられた際にも能力が誘発するので、置いておくだけで《思考囲い》対策になります。手札破壊の後に必ずドローがついてきたら、最早打つ気が起きません。   《美術家の才能》を4枚採用しているイゼットフェニックスのサイドボードには最適かもしれません。イゼットフェニックスは墓地対策を受けるデッキですが、《忍耐の記念碑》はこれを完全に無視できます。相手が《虚空の力線》を置いてきたら、涼しい顔で《美術家の才能》と《忍耐の記念碑》で勝ちましょう。   1枚捨てるたびに誘発するので、同時に2枚捨てた場合はモードを2つ選ぶことができます。《上げ潮、キオーラ》でドローしつつ宝物生成なんかも面白いですね。   様々な使い道があるアーティファクトで、デッキ創作意欲が沸いてきますね!   土地 対抗色境界ランド ついに境界ランドが10種揃いました!!   対抗色デッキとしては、ボロスハツカネズミやゴルガリミッドレンジは現環境でもいました。これらのデッキは純粋に強化されることになります。   特に《ウェイストウッドの境界》は最初から緑が出るので、《ラノワールのエルフ》を出すことができ、ゴルガリとしてはこれ以上に嬉しい強化はないでしょう。 境界ランドで色マナが安定するようになったので、今まではできなかった無茶も可能になりました。緑と黒のそれぞれのダブルシンボルのカードを採用しやすくなったのです。   そして忘れてはならないのがスゥルタイテラー。《ウィローラッシュの境界》によってこちらも色マナが更に安定。3色とは思えないほど快適にゲームを進められるマナベースを手に入れました。  おわりに 総合トップ3は 《忍耐の記念碑》《新たな夜明け、ケトラモーズ》《ガイドライト、雲水核》 の3つです!(境界ランドは殿堂入り)   今回の記事で気になったカードや試してみたいカードが出てきたら、ぜひGOOD GAMEでシングルカードをお買い求めください!!   ご購入はこちらから それではまた!

へいかの選ぶ!『霊気走破』各色トップ3

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2025.02.06

Akira Kobayashi

皆さん、こんにちは! 「へいか」こと 小林 輝(@enzyutuheika)です。 2月14日に販売される最新セット「霊気走破」がとうとう全カード公開されましたね! 私の注目カードを色ごとに紹介していこうと思います。 目次 白 青 黒 赤 緑 マルチカラー 無色 土地     白 3位:《壮大な玉突き衝突》 《太陽降下》に次ぐ破壊不能を無視する全体除去であるだけでなく、なんと全体除去への対策でもあった機体ごと破壊してしまいます。   パイオニアであの憎き《勢団の銀行破り》がラクドスミッドレンジなどで幅を利かせていた頃に出してほしかった……という思いはありますが、全体除去としては相当な性能です。   そして……真価はやはりサイクリング2でしょう!   こういった全体除去カードは有効な相手とそうでない相手によって価値に雲泥の差があります。   クリーチャーデッキに全体除去は効果的なのは皆さんもご存知の通り。   しかしながら、例えばビートダウンに頼らないコンボで勝つアブエロ全知相手に《太陽降下》を引いて喜ぶ人はいないと言っていいでしょう。   引いてしまうと実質的に手札が1枚減るのと同様です。サイドボードならサイドアウトできますが、メインボードではそうもいきません。   そんな状況においてサイクリングすることで不要牌が有効牌になる可能性が産まれるというだけでも他の全体除去にない価値があります。   5マナ域の全体除去としては《太陽降下》という強力なライバルこそいますが、それでも採用に値する一枚と言えるでしょう。   2位:《入れ子ボット》 こちらはスタンダードの《イーオスの遍歴の騎士》を活用したジェスカイ召集デッキで、青をタッチしてでも採用せざるを得なかった《遠眼鏡のセイレーン》の枠に収まると予想しています。   死亡時に1/1の霊気装置・アーティファクト・クリーチャートークンを生成する効果も《上機嫌の解体》との相性が非常に良いのも◎。   アーティファクトでありながら1マナのエンジン始動カードでもあるため、最高速度になると「たった1マナでアーティファクト・呪文をコピーする」という凄まじい効果を持つ《ガイドライト、雲水核》を中核としたアゾリウスアーティファクトデッキも考えられそうです。   他の最高速度をキーとしたデッキのエンジンを始動する切り込み隊長としての役割を担えます。   1マナの軽さにしては非常に多様な仕事をするこの一枚、アンコモンながら活躍に注目しています。   1位:《ボヤージャーの滑空車》 白の1位はこの機体!   クリーチャーを3枚タップすることで+1/+1が乗り、飛行がつく効果はスタンダードのジェスカイ召集やアゾリウスアグロなどで活躍している《内なる空の管理人》を彷彿させる性能ですね。   アーティファクトもタップ対象出来る《内なる空の管理人》とは異なり、クリーチャーのみで3枚はなかなか難しそうに見えます。   が……1マナクリーチャーをばらまき、《上機嫌の解体》《毅然たる援軍》といった1枚で2枚以上のクリーチャーを出すカードも採用している召集デッキではこの条件は楽にクリアします。   パワー1が多いこのデッキで搭乗1も嬉しく、《イーオスの遍歴の騎士》《上機嫌の解体》《イモデーンの徴募兵》などキーカードを引きたい召集にとって占術1もありがたい効果です。   そしてソーサリータイミングでタップせねばならない《内なる空の管理人》とは異なり、こちらはインスタントタイミングでタップ可能です。   相手の攻め手に備えてクリーチャーを立たせ、相手が攻めあぐねた結果ターン終了時に起動して+1/+1を乗せていくのもよし。   ある程度育った後は搭乗1でアタックしていき、下手なブロックをすれば起動で+1/+1を乗せて一方的に討ち取る事も出来るぞ、と圧をかけていくこともできます。   何より1マナで2/3というスタッツも非常に頼もしい!   アーティファクトなので《喉首狙い》が効かないだけでなく、+1/+1がひとたび乗ってしまえば3/4となり現環境の代表的な除去である《切り崩し》《逃げ場無し》から逃れる事が出来ます。   この機体と2位にも上げた《入れ子ボット》、ボロスカラーの境界ランドこと《サンビロウの境界》の存在によってようやくジェスカイからボロスに回帰することになるでしょう。   強力な新戦力を得たボロス召集は次期環境での要注目デッキの一つになりそうです!   今のうちにGOODGAMEでパーツを買い揃えちゃいましょう!!(ダイマ)     青 3位《記録の守護者》 5マナで3/4飛行、スタッツだけで見ればただの平凡なリミテカードと言えるでしょう。   真価は親和(アーティファクト)! アーティファクトが4枚あればなんと1マナで3/4飛行と《秘密を掘り下げる者》もびっくりな性能です。   ミラディンの《厳粛な空護り》が同じ親和持ちの飛行で6マナ3/2飛行であり、これの上位互換となっています。 スタンダードでは《身代わり合成機》、そして同じく霊気走破からの最大値で2マナ3点ゲイン3ドローの《帰還航路》を擁するアゾリウスアーティファクトとの組み合わせがまず思い浮かびますね。   アーティファクトクリーチャーかつ3/4のスタッツも非常に嬉しく、環境を定義する黒の除去である《切り崩し》《喉首狙い》《逃げ場無し》が通用しません。   今や時代の中心になりつつあるエスパーピクシーやディミーアミッドレンジの飛行群も飛行によって受け止める事が出来ます。環境に適したスペックですね。   モダン等の下環境でも《稲妻》《致命的な一押し》といった代表的な除去を回避できることから検討に値するかもしれません。   これを採用したデッキを考えたくなってきますね!   2位《たかり空エイ》 サメに続いてとうとうエイも空を……   2/1/2飛行とスタッツだけ見れば貧弱ですが、1枚以上のカードを捨てるたび、その枚数に等しい個数の+1/+1カウンターが乗るというディスカードシナジー効果を持ち合わせています。   枚数に等しい枚数というのもミソで、《上げ潮、キオーラ》の2枚ルーティングにであれば一気に+2/+2カウンターが乗り、3/4飛行と明確な脅威へと変貌します。   同じく3マナで2枚ルーティングをする《蒸気核の学者》もいますし、何よりも同じく霊気走破で出た1マナで同様の効果を持つ《略奪するアオザメ》が存在します。 MTGで古より伝わる「同じ能力のカードが2種(8枚)あればデッキになる法則」がここでも発動しそうです。   スタンダードには《逸失への恐怖》、《太陽の執事長、インティ》と非常に優秀なディスカード要員もたくさんいますので、ディスカードギミックデッキにはかなり可能性を感じています。   1位《思考の泉のマーフォーク》 青の1位はこのマーフォーク!   1マナながらマナフラッド受けかつ全体強化も兼ねる消尽能力が非常に強力です。   X=3であれば3ドローしつつ各マーフォークに+1/+1が乗りますし、何より「ソーサリータイミング限定」ではありません。   瞬速持ちのロードである《ヴォーデイリアの呪詛抑え》といったインスタントタイミングの選択肢が増えるだけでも非常に嬉しいものです。   特筆すべきはX=0の2マナでも各マーフォークに+1/+1が乗る点。Xの値はあくまでもドローの枚数であり、+1/+1を乗せる効果には影響がありません。   先述した《ヴォーデイリアの呪詛抑え》と合わせることで4マナで急に+2/+2になり、そのままリーサル……なんてことも考えられそうですね!   スタンダードでも《フラッドピットの溺れさせ》《名もなき都市の歩哨》といった優れたマーフォークが存在し、《深根の巡礼》というマーフォークサポートの置物もありますから遂に環境に出てくる日が来たのかもしれません。   召集に続いてマーフォークもまた要注目デッキです!   黒 3位《勢い挫き》 エンジン始動カードにしては珍しい除去で、相手のブロッカーをどかしながら攻撃を通すことでエンジン速度上昇の手助けにもなります。   やはりエスパーピクシーでアーティファクトであった《税血の刃》と入れ替えることになりそうです。《呑気な物漁り》が誘発するエンチャントなのも非常に嬉しい。   ライフを詰めていくエスパーピクシーとエンジン始動もマッチしており、《コイロスの洞窟》などのダメージランドを多数採用するため、生贄によるライフゲイン効果とも噛み合っています。   まるでエスパーピクシーのために作られたかのような一枚ですね。アゾリウスコントロールにもそんな一枚を……   もちろんエンジン始動を中核としたデッキの除去枠としても採用を検討できるでしょう。 2位《悪魔の破砕機》 親和であり除去も兼ね備えている機体です。   現在のデッキで黒絡みでアーティファクトにフィーチャーしているデッキはなく、既存のデッキには当然ながら入りません。   それはすなわち、新デッキが産まれる事に他ならないのです! ワクワクしてきますね。   最大値ではアーティファクトを6枚要求するとはいえ、1マナ4/3かつ除去もこなすスーパー機体と凄まじいコストパフォーマンスを誇ります。   自分の死亡誘発持ちクリーチャーがあればそれを破壊した上で6/5機体と見た目以上に活用の幅が広いのも◎。   また、親和全般に言えることですが、マナ総量が7マナと高いカードを安く出せる点を悪用したりと可能性は無限大です。   親和の手助けとなる1枚でアーティファクトを複数出す《スランの蜘蛛》などは今のうちに買い揃えておいた方がいいかもしれませんね。   1位《ガス喰らい》 1位はこの1マナエンジン始動! 1マナでエンジン始動はそれでも強力なのに2/1と打点が高めなのも嬉しい点ですね。   最高速度になると機体やクリーチャーのサクリ台にもなり、中盤以降に引いても役割を担えるのは◎。   ラクドスサクリファイスなど飛び道具が多いデッキであれば速度も上げやすく、起動能力のシナジーによってさらなるアドバンテージに繋がるという動きが考えられます。   今回は白黒の境界ランドである《ブリーチボーンの境界》もありますし、同じくエンジン始動の《去りし栄光、ザフール》と組み合わせてオルゾフエンジンサクリファイスといった新しいデッキのキーになりそうです。   赤 3位《竜航技師》 なんと消尽能力が2つ! ゴブリンのエースになりうるポテンシャルを秘めています。   速攻付与能力はたった1マナで《群衆の親分、クレンコ》など起動能力の手助けにもなりますし、本体にも+1/+1が乗るのも非常に嬉しいポイントです。   4マナの消尽も4/4飛行とシンプルかつ強力で、-3/-3である《逃げ場無し》を擁するエスパーピクシーに強いのも◎。   1マナの速攻付与と組み合わせて4/4飛行速攻としても運用できますし、序盤・中盤・後半どの時間帯でも引いて嬉しい一枚はアグロにとっての福音ですね。   現在赤系アグロの2マナ域は《多様な鼠》《熾火心の挑戦者》《探索するドルイド》《亭主の才能》と鉄壁のレギュラー陣が揃い踏みしていますが、これらに食い込むだけのパワーは間違いなくあります。   それこそゴブリンデッキの2マナ域としても相当な活躍を見込める一枚です。   2位《焼き切る非行士》 《竜航技師》と同じゴブリンであり切り込み隊長であるこれが2位となりました。ゴブリン推しです。   1マナでエンジン始動の強さはもちろん、威迫なのも非常に偉いです。   1ターン目に《焼き切る非行士》から2ターン目に威迫アタックでエンジン速度を2にしつつ《焦がし切りのゴブリン》で強襲達成、1/1ゴブリントークンを産み出すという動きは現在のスタンダード環境でも通用します。   最高速度になると「威迫+二段攻撃」という非常に攻撃的な能力になり、マナ効率こそは悪めですが+1/+0の起動能力とも噛み合っています。   ゴブリンデッキであればエンジン速度を上げる事は容易で、最高速度もあっという間に達成することでしょう。   これら新ゴブリン2種の新戦力により、ゴブリン最高のロードである《ランドヴェルトの大群率い》、もう片方のロードこと《画家の仕事場/汚された画廊》を中核としたゴブリンデッキがスタンダードで成立すると確信しています。   1位《灯を追う者、チャンドラ》 これを見た瞬間、白単トークン使いの私は悪い意味で鳥肌が立ちました。   同じ4マナ域のプレインズウォーカーである《焦熱の交渉人、ヤヤ》《レジスタンスの火、コス》《免れ得ぬ破滅、ルーカ》とは異なり、奥義以外の除去手段すら持たずひたすら攻めに特化した性能を持ちます。   0能力は常在能力の戦闘開始時に機体をクリーチャー化+速攻によって実質3/2速攻として機能します。   生贄に捧げることもなく、機体として残り続けるのもミソ。この3/2機体が2枚ある状態で《脚当ての補充兵》《多様な鼠》を新生で唱えるとあら不思議!   新生1枚で2枚の機体に搭乗して3/2二体が殴ります。この世の地獄か?   赤系アグロへの有効なサイドカードである《領事の権限》も機体として出るため誘発しません。   +2によって余った機体や地図などを生贄にすることでアドバンテージを得られますし、不要な土地を捨ててルーティングも可能。   このように攻めに関しては恐らく随一でしょう。とにかくコントロール系統を倒すために産まれてきたかのようなプレインズウォーカーです。   この手のプレインズウォーカーにしてはシングルシンボルなのも非常にグッド。   その一方で自衛手段はなく、守りには不向きです。主に白単トークン、ドメインランプなどへの強烈な攻め手としての運用になるでしょう。   緑 3位《アフターバーナーの専門家》 消尽能力を起動すると墓地から戦場に戻る効果はかつて一時代を築いた《死霧の猛禽》を彷彿とさせるもの。   接死を持たなないものの、こちらはパワー4と攻撃的なスタッツ。自身も消尽能力を持ち、他の《アフターバーナーの専門家》を戻らせる事も可能としています。   《竜航技師》との相性は非常によく、1マナの消尽を起動した時点で《アフターバーナーの専門家》が戦場に戻り、その後に効果が解決されるため速攻が付与されることになります。   2ターン目に《逸失への恐怖》でこれを捨てた後、3ターン目に《竜航技師》から1マナの起動能力でリアニメイト+速攻でかなり強い盤面を構築できるのは想像に難しくありません。   欠点はやはり追放除去である《塔の点火》が刺さるタフネス2な点。   それでも消尽能力で戦場に戻る効果は唯一無二であり、《竜航技師》との組み合わせで活躍する日はそう遠くはないように感じます。   2位《威厳ある放漫トカゲ》 とうとう出てきた3マナで5/4……に、なんと恐竜のロード能力まで!!   しかも伝説でもありません。緑もここまで来ましたか。   恐竜限定ですが《イクサーリの伝承守り》によって《ラノワールのエルフ》8枚体制であり、そのジャンプ先である3マナ域もこの《威厳ある放漫トカゲ》と脅威の3/6/6である《好戦的な槌頭》で8枚です。   これも勿論「8枚あればデッキになる法則」が発動しそうに見えます。   今の恐竜には置物および墓地を対策しつつもライフゲインもこなす《温厚な襞背》、強烈なフィニッシャーである《骨集めのドラコサウルス》、《嘶くカルノサウルス》と粒揃い。   《逃げ場無し》が環境を定義している今タフネスが4なのも嬉しく、これで活躍できなかったら恐竜をメインとしたデッキはもう無理と言わんばかりのヤケクソさを感じます。   1位《重厚な世界踏破者》 緑の1位はこちらの機体。   3マナでいわゆるランパンと呼ばれるマナ加速を担いつつ、土地の数に等しいパワーとタフネス4の機体と非常に良質なスペックです。   マナ加速は得てして中盤以降に引くと腐りがちという欠点がありますが、これは土地が伸びれば伸びるほどパワーが上がっていくため中盤以降に引いても嬉しいのも高評価点。   搭乗4は重いものの、マナ加速をするデッキは、得てしてパワー4を優に超えるファッティを連打することができます。   シンプルに3ターン目にこれを出しつつ、4ターン目に《ホーントウッドの大主》を出しそのまま搭乗からアタックするとさらに土地サーチが誘発して土地が7枚になり、7/4と非常にインパクトのある動きになります。   機体であることから《喉首狙い》が刺さらず、タフネスも4で《逃げ場無し》にも刺さらないので見た目以上の脅威として暴れる事になりそうと予想しています。   土地をガンガン伸ばしてパワー10でアタックしちゃいましょう!   マルチカラー 3位《ガイドライト、雲水族》 2マナでエンジンの起爆剤になりつつ、最高速度まで達するとアーティファクト・呪文をたった1マナでコピーするという凄まじい効果を持ちます。   特に《薄墓薔薇の聖遺》は追加コストとして要求されるアーティファクトやクリーチャーの生贄は「唱えるための追加コスト」であるため、コピーでは追加コストを支払う必要がなくなり、相性が良いと言えるでしょう。   何よりもインパクトのある《激浪の機械巨人》をコピーするとこの世の終わりが訪れます。 この機械巨人については惜しくも選考外となりましたが、3位にしようかと悩んでいたぐらいのパワーはあります。   本体の性能もアーティファクトの数によってパワーがどんどん上がっていくため、親和との相性もよくアーティファクトデッキを組む動機の一つにもなりますね。   2位《帰還航路》 令和の《物読み》。マナも相応に重くなっていますが、こちらはなんと3ドローと3点ゲインと強くなっています。   2マナで唱えられたらブーンズである《Ancestral Recall》と《治癒の軟膏》を合わせた1枚になります。凄まじい。   親和もスタンダードには実質3マナ低減である《スランの蜘蛛》(本体、パワーストーン、パワーストーンから出るマナで合計3マナ)もいますし、同じく親和である《記録の守護者》もいます。   除去枠としても《薄墓薔薇の聖遺》《ガラスの棺》もあり、プレイアブルなアーティファクトは十分。   このように新戦力を多く得たアゾリウスアーティファクトは台風の目になる可能性も。ぜひ期待したいところですね!   1位《輝晶の機械巨人》 マルチカラーは1位はこの機械巨人!   4/4/4先制攻撃トランプルはブロッカーとしてもアタッカーとしても頼もしく、何よりも「1枚で2枚のアドバンテージを得られる点」が白眉。   マナ総量1以下とはいえ2枚も持ってくる効果は《イーオスのレインジャー》を彷彿とさせます。   しかもこちらはクリーチャーだけでなくアーティファクトやエンチャントまで対象となります!   サーチ対象となるカードでクリーチャーだと《養育するピクシー》は《輝晶の機械巨人》を再利用可能ですし、《脚当ての補充兵》も実質3マナのクリーチャーとして活用できます。《機能不全ダニ》もアーティファクト/エンチャント対策として持ってこれますね。   何より《金脈のハイドラ》も(X)(緑)、つまり1マナ扱いなのでなんとサーチ可能です! 後続の脅威を持ってこれるのです。   バントにして《マネドリ》を持ってきてもかなり面白いかもしれません。   エンチャントでは《破片魔道士の救出》で自衛することも可能。アーティファクトだと除去枠にもなる《薄墓薔薇の聖遺》、墓地対策である《除霊用掃除機》もありますね。   ファウンデーションズで再録された《バジリスクの首輪》も対象の一つで、この《輝晶の機械巨人》につけると先制攻撃・トランプル・接死・絆魂のスーパークリーチャーが爆誕します。   このように夢が広がる一枚です。カード単体のパワーは間違いなくあり、これを中核とした新しいデッキが産まれるかもしれませんね。   無色 3位《霊気灯》 3位は伝説のアーティファクト・プレインズウォーカー・装備品と史上初の組み合わせである《霊気灯》!   無色のプレインズウォーカーであるだけでなく、アーティファクトかつ装備品なことからこれらのシナジーと発揮するのが非常に面白い試みだと感じています。   性能自体は攻めっ気が強く、コントロールよりもアグロもしくはミッドレンジで+1/+1を乗せつつ2ドローと継続的に攻めていく性能に見えます。   奥義は正直飾りと言ってもよく、+1で装備した後に-5、-5と繋げられたら強そうです。   注意点としては装備したとしても火力やプレインズウォーカーへの除去の対象にはなるため、+1でつけて攻撃されなくなっても過信は禁物。《削剥》が最大の敵になりそうですね。   2位《生体生成エンジン》 部族を強化する置物としてはカルドハイムの《兵員の結集》がまず思い浮かびますね。   これは当時使われませんでしたが、こちらは4/4機体がついている点、また本体自身も選ばれたクリーチャータイプになることでシナジーの恩恵を受けられる点は他にないメリット。   例えばハツカネズミを指定するとこの機体もハツカネズミになるため、《多様な鼠》によってこの機体に二段攻撃やトランプルを付与する事もできます。   修正値によって搭乗3が実質搭乗2である点も嬉しく、継続的な攻めを支えるよい一枚になるやもしれません。   個人的には赤編で言及してきたゴブリンでこの機体を使ってみたいです。   1位《忍耐の記念碑》 無色の1位はやはりこれ!   《身代わり合成機》が証明している通り、3マナアーティファクトでありながらこれだけでは何もしないのが最大の欠点。   が、ひとたび効果を誘発してしまえばとんでもないアドバンテージを得られる可能性を秘めている一枚でもあります。   「カード1枚を捨てるたび」というテキストなので、例えば《上げ潮、キオーラ》だと2枚引き2枚捨てた場合、その後に1枚引いて宝物を生成するというとんでもない性能に。   2マナの《侵攻の伝令、ローナ》など継続的なルーティング能力を持つクリーチャーで3マナアーティファクトである欠点をカバーしたいところ。   他にも《たかり空エイ》などディスカードで強くなるカードも増えており、これのサブプランとしてサイドに忍ばせておくのも効果的に見えますね。   それから《美術家の才能》も凄まじい速度でルーティングするため、コンボチックなデッキを考えてみても面白いかもしれません。   ディスカード手段はルーティングであることが多く、キーとなるこのカードを探す事にも繋がり一貫性も生じます。   もしかしたらディスカードデッキこそが真の台風の目なのかもしれません……!   土地 対抗色境界ランド 『ダスクモーン:戦慄の館』の前例からもはや説明不要と言ってもよいでしょう。   今回は対抗色だからか、ダスクモーンの境界ランドとは反対の色が出ます。(ダスクモーンでは左の色から出るのですが、今回は右の色から出ます。わかりやすいですね)   《サンビロウの境界》は白が中心であるボロス召集、《ウェイストウッドの境界》は《ラノワールのエルフ》を擁するゴルガリミッドレンジの強化に直結します。   境界ランドが無かった事で貧弱なマナベースになり、成立しなかった対抗色のデッキがいよいよ出てくる事になるかもしれません。   これまでは見向きもされなかったマルチカラーのレア・神話レアたちを改めて見直してみてはいかがでしょうか?   もしかしたらそこに環境で頭角を現す一枚があるかもしれません……!   おわりに 以上が私の選ぶ各色トップ3でした。こうしてみると新デッキが産まれそうなカードも多く、大変ワクワクしますね!   私自身もプロツアー・シカゴに向けて新しいデッキを模索していきます。   GOOD GAMEでも『霊気走破』のシングルカード予約が既に始まっています。 今回はなんと2月8日(土)~2月9日(日)に開催されるプレイヤーズコンベンション千葉のGOOD GAMEブースにて予約販売カードの受取が可能となっています。   スタンオープンなどに向けてぜひご予約ください!   シングルカードご予約はこちらから ボックスご予約はこちらから

新弾レビュー『霊気走破』:統率者目線の注目カード30選!

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2025.02.05

Ryo Hakoda

こんにちは!箱田 諒(fritz_xq)です。   2/14(金)発売の最新セット『霊気走破』の全収録カードが公開されましたね! 『カラデシュ』~『アモンケット』期にマジックを始めた身としては、「機械巨人」や「神」など懐かしいカードも多く、発売が待ち遠しい!   今回はそんな『霊気走破』の収録カードを統率者目線でレビューしていきます。 既存デッキの強化や新デッキの軸になりそうな面白いカードがないか、ぜひチェックしてみてください! 目次 白 青 黒 赤 緑 マルチカラー 無色 土地 統率者収録 白 《守護の陽馬》 コンボパーツを探す他、状況に応じて《リスティックの研究》などのアドバンテージ源や墓地対策などにもアクセスできます。 直接戦場に出せるため、カウンターされない《イーオスのレインジャー長》からコンボを開始することも可能。護法2で除去耐性も持つのもいいですね。 5マナと重たいことがネックではあるものの、攻撃できた時のバリューはかなり高いです。 青 《珊瑚の暴君、ケローナ》 どう見てもパワー0の見た目をしていない伝説のタコ。 11マナの《育殻組の誉れ》もこれ1枚で8マナ軽減されるので相性良し。   《思考の泉のマーフォーク》 インスタントタイミングで起動できるため、カウンターを構えつつ、相手ターンの終了時に余ったマナでドローできます。   《うねる魂のハクバル》は探検でマナを伸ばせるため相性バッチリ。   1マナのマーフォークなのも探検の誘発要員として最高です。   《思考の泉のマーフォーク》で+1/+1カウンターが各マーフォークに乗るため、《アガサの魂の大釜》で《思考の泉のマーフォーク》を追放し、毎ターン余ったマナでドローと全体強化をするという動きも可能です。   《再利用隔室》 アーティファクト版の《出産の殻》。 青い《オズワルド・フィドルベンダー》でもあります。 彼らと違って起動に2マナはかかるものの、能力の強さは折り紙付き。 仮に《思考の監視者》→《隔離するタイタン》→《ファイレクシアへの門》と動けば相手の盤面は壊滅。 デッキをアーティファクトで染めて、《神秘の炉》や《クラーク族の鉄工所》など強力なカードにアクセスする手段としても使ってみたいカードです。 《通電式キー》や《多用途の鍵》でアンタップして1ターンに複数回起動したいですね。 起動コストの重さは《奇怪な宝石》や《お告げの行商人》などが助けてくれます。   《運送の魔道士》 〇マナのアーティファクトをサーチする魔道士シリーズ。   《粗石の魔道士》《捧げ物の魔道士》《戦利品の魔道士》《運送の魔道士》《宝物の魔道士》の5人で0~6マナまでが遂に揃いました!   一番先輩の《粗石の魔道士》が登場したのが2004年発売の『フィフス・ドーン』なので、21年で1サイクルが完成したことになります。すごい。 サーチ対象の4~5マナには《一つの指輪》や《ファイレクシアの変形者》、《クラーク族の鉄工所》など強力な布陣が揃っており、《加工》に追加して入るので、よりコンボが達成しやすくなるでしょう。   《加工》と異なりクリーチャーなので、《出産の殻》から場に出して《ファイレクシアの変形者》や《クラーク族の鉄工所》をサーチできるのは便利ですね。   また、《精霊の魂、アニマー》との相性もバッチリ。 《運送の魔道士》で《祖先の像》をサーチし、《祖先の像》を0マナで出して自身をバウンスすることを繰り返すことで、《精霊の魂、アニマー》が無限パワーになります。《運送の魔道士》は《帝国の徴募兵》でサーチできるので、アクセスしやすいコンボとなりました。   《止められない計画》 《荒野の再生》が土地を起こすのに対し、こちらは土地以外のすべてのパーマネントをアンタップします。   青らしく、マナを生むアーティファクトを起こして相手ターンに構える動きができます。   アンタップするパーマネントは多ければ多いほど嬉しいので、アーティファクトを大量に起こせそうな《開闢機関、勝利械》《最高工匠卿、ウルザ》《眷者の神童、キナン》などで使ってみたいカードです。 統率者戦では各対戦相手のターンにアンタップする《巻き戻しの時計》が使われていますが、クリーチャーがアンタップする恩恵を活かせるデッキではこちらが優先されそうです。 黒 《墓所呼びの戦車》 《エシカの戦車》を想起させる4マナの機体。 猫・ゾンビトークンでないのは猫好きへの配慮かな…?   《滝の賢者》がいる際に手札を捨てると《墓所呼びの戦車》によりゾンビトークンが生成され、それにより《滝の賢者》が誘発するため、無限コンボになります。   残りライブラリーの枚数と同じ数のトークンを生成し、山札を削り切ることができるため、《戦慄の復活》で《タッサの神託者》を復活させて勝利できます。 《悪魔の破砕機》 各対戦相手のクリーチャーを除去でき、「親和」で最小1マナで唱えられるという破格のマナ効率を持ちます。 戦場に出た時の効果なので、ブリンクしたり墓地から戻したりなど利用方法は様々。   《夜の大臣、ゴンティ》 《トレストの密偵長、エドリック》と同じく、自分以外を攻撃することにメリットを与える効果。 全員が攻撃によりアドバンテージを得られるようになるため、より自分が多くのアドバンテージを得られるようなシナジーや盤面を用意したい。 赤 《咆吼部隊の重量級》 ゴブリンデッキの特性上、速度上昇はさほど難しくありません。 早いターンに「エンジン始動!」できるカードを他にも複数枚採用すれば、《ゴブリンの戦長》など速攻付与手段はあるので、《咆吼部隊の重量級》を出して即大量のマナ!なんて展開も。   《暗黒のマントル》を装備すれば、《咆吼部隊の重量級》から出したマナを用いて自身をアンタップすることも可能。   ゴブリンが3体以上なら無限パワー、4体以上なら無限パワー+無限マナになります。   《溶岩族の砲兵》 《鋭い目の航海士、マルコム》《鸚鵡の匪賊、フランシスコ》《鉄面連合の略取者、ブリーチェス》など共闘持ちの海賊サイクルと相性バッチリ。 例えば《鋭い目の航海士、マルコム》がいる状態でサイクリングすると、各対戦相手にダメージを与えることで宝物が3個生成されます。 サイクリングコストは2マナなので、次ターンに持ち越せるマナ加速が可能です。 緑 《轟音の速百足》 後続のクリーチャーをサイズアップしてくれるだけでなく、自身のサイズも申し分ありません。 基本のパワーから育っているとボーナスがある、《マラメトの模範、クチル》《君主のオキネク・アハウ》などと一緒に使いたい。   《網撃の精鋭》 《堂々たる撤廃者》を相手がコントロールしていても《死の国からの脱出》を破壊できます。   《耐え抜くもの、母聖樹》が優先されますが、《適者生存》や《俗世の教示者》からアクセスできることが役立つ場面があるかも。 マルチカラー 《輝晶の機械巨人》 サーチできる対象が幅広く、状況に応じて必要なカードを持ってこられます。 対戦相手への妨害カードと自分の展開に寄与するカードを持ってくることで、相手を減速させつつ自分は加速するような動きも可能です。 4/4先制攻撃というのも戦闘で頼もしいサイズと能力ですね。   《新たな夜明け、ケトラモーズ》 カードが墓地や戦場から追放領域に移動するとドローできるものすごい神様。 自ターン限定ではあるものの、よくある「毎ターン1回しか誘発しない」などの制限もありません。 《剣を鍬に》や《致命的なはしゃぎ回り》で除去しても1ドロー。 《儚い存在》でブリンクしても1ドロー。   《安らかなる眠り》を置いておくと、パーマネントが戦場から追放領域に移動するため1ドロー。似た効果の《次元の狭間》は一度墓地を経由するため、呪文も墓地から追放領域に移動し1ドロー。   自身が絆魂と破壊不能を持っており、ブロッカーとしてライフを守りつつ場持ちもいいと至れり尽くせり。   除去でカードを引けるため、除去コントロールのようなデッキも組めそうです。   《開拓者、おたから》 強力な起動型能力を見るとつい《アガサの魂の大釜》で煮込みたくなりますね。 クリーチャーを多く並べられ、+1/+1カウンターを撒けるデッキで消尽能力を多用したいです。   《ガイドライト、雲水核》 1マナでどんなアーティファクトもコピーできる、すごい技術を持ったロボット。   自身が2マナと軽いため、2ターン目に「エンジン始動!」できるのは高評価。   序盤に出したい飛行持ちなどダメージを与えられるクリーチャーと、後半にコピーしたいアーティファクトの採用バランスが難しそうですが、最高速度での出力は凄まじそうなので試してみたい1枚です。 無色 《ピットストップの自動機械》 《育殻組の誉れ》加入カード2枚目。 こちらは《育殻組の誉れ》のコストを4マナ軽減しつつ、無色2マナ生成が《育殻組の誉れ》の能力起動を助けます。   《光輝の睡蓮》 生け贄に捧げるアーティファクト1つあたり3マナを生成し、実質《Black Lotus》とする新しい睡蓮。   自身が6マナと重いながらも、爆発的なマナ加速が可能です。   生成したマナは対象にしたプレイヤーに加えられるため、《偏向はたき》で奪われることに要注意です。 土地 対抗色境界ランド 対抗色の境界土地サイクル。 既存の境界土地同様に、2色~3色のデッキに内定しそうです。 統率者デッキ収録 《世界魂の代弁者、ニッサ》 エネルギーを得る手段と払った際の効果のどちらもが強力で自己完結しています。   エネルギーを軸にしたデッキでなくとも、上陸シナジーを活かしたデッキにも活躍の場がありそうです。   《風景の変容》や《森林の目覚め》で大量に上陸して増やしたエネルギーから大暴れする動きは一度やってみたいですね。   《森林の目覚め》で稼いだエネルギーから《孔蹄のビヒモス》を出せば大体勝ち!   《歩行格納庫の自動機械》 《巣穴の魂商人》でクリーチャーを生け贄に宝物を生成すればコンボスタート。   宝物が出る際に飛行機械トークンも併せて生成されるため、飛行機械トークンを生け贄にし続けることでライフ分の宝物トークンを生成できます。   同じ要領で、《無慈悲な略奪者》と《アシュノッドの供犠台》などマナの要らないサクリ台を用意すれば無限宝物トークンになります。 《改良式鋳造所》《前兆の時計》と合わせれば無限トークンのコンボにもなります。手順は下記の通りです。 1.《改良式鋳造所》から霊気装置トークンを生成する。2.《歩行格納庫の自動機械》が誘発し、飛行機械トークンを生成する。3.《前兆の時計》で霊気装置トークンと飛行機械トークンをタップして、《改良式鋳造所》をアンタップする。4.《改良式鋳造所》で飛行機械トークンを生け贄に捧げ、構築物トークンを生成する。5.《歩行格納庫の自動機械》が誘発し、飛行機械トークンを生成する。6.《前兆の時計》で構築物トークンと飛行機械トークンをタップして、《改良式鋳造所》をアンタップする。   以降は4~6を繰り返せるので無限にトークンを生成できます。   《ナクタムンの意志、テムメト》 各ターンにドローした枚数分、自陣のゾンビに+1/+1修正を与えるゾンビロード。   この手のカードには珍しく、自身も強化対象に含まれています。   ドローステップのドローと、自身の攻撃時のルーティング能力で攻撃時には最低+2/+2の修正を付与できるため、かなりのサイズアップを期待できます。   相手ターンにもドローすると強化されるため、防御面も堅く、うかつに攻撃しづらい印象。   《渦まく知識》で+3/+3修正…⁉   《スカラベの拳、ハシャトン》 ディスカード手段は必要なものの、3マナでどんなクリーチャーのコピーでも生成できます。   《拷問生活》はディスカード手段になりつつ、捨てたカードを回収して再度ディスカードすることもできるため相性バッチリ。   《呪われし砂の庭》 《群がりの庭》の亜種。   起動にマナがかかるようになったのは惜しいものの、マナベースに無理なく採用できるゾンビ軸などのデッキでは見かけることがあるかも。   《腐敗の巨体》 ※既存カードです。   収録セットの関係で《Rot Hulk》という英語名および英語版カードしか存在しませんでしたが、この度ついに日本語版が収録!   初めて《Rot Hulk》が収録されたのは2018年発売の『Magic:Game Night』。新規プレイヤー向けの多人数戦構築済みセットで、英語版のみの発売でした。   昨年発売の『Mystery Booster 2』で再録されたものの、こちらも英語版のみの商品だったため、日本語版での収録を長年待ち望んでいた方もいらっしゃるのではないでしょうか。   まとめ 各色の注目カードを紹介してきましたが、気になるカードはありましたか? 既存デッキを強化するもの、統率者としてデッキの軸になるカードなど様々あったかと思います。 特に《再利用隔室》などは動きが好きな方も多く、今後多く試されるのではないでしょうか。 個人的に組もうとしているのは《新たな夜明け、ケトラモーズ》。 他のカードに無いアドバンテージの取り方をするのでどんな動きができるか楽しみです。 広大なカードプールから《次元の狭間》などこれまで知らなかった相性の良いカードを発見するのがとても楽しい! 情報収集しつつ、できるだけ多くのカードを試してみようと思います。 そして! GOOD GAMEでは現在『霊気走破』のシングルカード・各種ブースターボックスの予約販売を受付中!   通販でご予約いただいた『霊気走破』のシングルカードは、なんと2月8日(土)ー2月9日(日)に開催するプレイヤーズコンベンション千葉の会場内GOOD GAMEのブースにて受け取ることができます! 千葉の会場で『霊気走破』のカードをイチ早く試したい方は、ぜひご利用ください!   しかも『霊気走破』のボックスをご予約の上、『霊気走破』シングルカードを予約すると、当店で1ポイント1円で使用できるポイントがなんと通常の5倍付与!   『霊気走破』の各種商品をゲットするなら予約時がおトクですよ!!   シングルカードご予約はこちらから ボックスご予約はこちらから