【週刊メタゲーム通信】アメリカでは脱出基地が大暴れ!一方シドニーでは…無色エルドラージ!?

【週刊メタゲーム通信】アメリカでは脱出基地が大暴れ!一方シドニーでは…無色エルドラージ!?

    こんにちは。

     

    細川 侑也(@yuyan_mtg)です。

     

    先週末はアメリカとオーストラリアでそれぞれ地域CSが開催!

     

    早速最新メタゲームを分析していきます!

     

      メタゲーム

      アメリカ

      優勝:脱出基地
      2位:脱出基地
      3位:ボロスエネルギー
      4位:脱出基地
      5位:脱出基地
      6位:アミュレットタイタン
      7位:脱出基地
      8位:脱出基地

      アメリカ

      優勝:無色エルドラージ
      2位:ホロウワン
      3位:脱出基地
      4位:脱出基地
      5位:ディミーアマークタイド
      6位:無色エルドラージ
      7位:エルドラージランプ
      8位:ディミーアマークタイド

       

      まずは圧倒的な脱出基地の勝率!

      参加者1000人超えの大型大会となったアメリカではトップ8に6人の脱出基地が残り、オーストラリアでも2人。最強のデッキと言われ、メタられる立場となり続けても、高い勝率を誇っています。

       

      特に脱出基地はアーティファクト・エンチャント破壊、墓地対策など、あらゆる対策カードが突き刺さるデッキ。ボロスエネルギーと違い、アンチカードが大量に存在するデッキであるにも関わらず、ここまで勝ち続けられるのは、脱出基地が本物のデッキであるという証明に他なりません。

       

      そんな最強のデッキの対抗馬となっているのは、モダン最強の一角と言われていたボロスエネルギー。

      本大会でトップ8にも入賞しているボロスエネルギーは、全体の勝率で見ても脱出基地に勝ち越している他、このトップ8入賞プレイヤーも対脱出基地に6勝2敗となっております。

       

      早いクロックと対策カード、更にメインからの《イーオスのレインジャー長》によって脱出基地には有利なデッキとなっているボロスエネルギーは、今注目のデッキの1つです。

      脱出基地とエネルギー、そしてアミュレットタイタンと言わずと知れた強デッキたちがトップ8を独占したアメリカとは対照的に、興味深い結果となったのがオーストラリアの地域CS。

       

      トップ8に2人が残り、更に1人が優勝した無色エルドラージは、これまでに見たことがないデッキで、本大会で誕生したデッキです。

      更にたびたび地域CSには登場するものの、勝ちきれなかった印象のあるホロウワンも準優勝を収めており、そのポテンシャルを世に知らしめました。

       

      ボロスエネルギー

      SCG CON Charlotte : 3位  By Joe Leo

      脱出基地の海を泳いで勝ち進んだボロスエネルギー。最後は脱出基地に敗北してしまい、夢潰える形となってしまいましたが、十分な成果と言えるでしょう。

       

      『モダンホライゾン3』発売後のモダンの歴史を語る上で、このボロスエネルギーは欠かせません。

       

      《魂の導き手》《オセロットの群れ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》《色めき立つ猛竜》《火の怒りのタイタン、フレージ》の『モダンホライゾン3』5人衆で突如モダン環境に現れた怪物。しかし、《有翼の叡智、ナドゥ》という真の化物に最強の座を奪われてしまいました。

      その後、《有翼の叡智、ナドゥ》が禁止となり、ボロスエネルギーはモダン環境を大暴れします。その結果、《湧き出る源、ジェガンサ》《色めき立つ猛竜》《一つの指輪》の3種の禁止を出す結果となりました。

      しかし、これで止まらないのがエネルギーの恐ろしさ。そもそもエネルギーの強さの根幹を支える部分は、デッキ外リソースの《湧き出る源、ジェガンサ》でもなければ、リソースを大量に稼ぐ《一つの指輪》でもなかったのです。

      《オセロットの群れ》《魂の導き手》《ナカティルの最下層民、アジャニ》による最序盤からの上質なクリーチャーたちによるビートダウン、そして諜報ランドと《火の怒りのタイタン、フレージ》による中盤からの打点。これらの展開が非常に早く、かつ安定していることこそが、ボロスエネルギーの強みだったのです。

      この部分にメスが入っていないボロスエネルギーは、禁止改訂後も活躍を続け、長くトップメタに君臨していました。

       

      そのメタゲーム事情が変わったのがここ数週間。脱出基地がだんだんとその数を増やして勝ち続け、エネルギーは減る一方に。

       

      しかし、これで終わるわけではないのがボロスエネルギー。何せデッキの根幹が強力なため、残りの自由なスロットでメタゲームに応じてデッキを組み換えられるのです。

       

      このリストは脱出基地を強く意識した作りとなっています。それが顕著なのが、メイン4枚の《イーオスのレインジャー長》です。

      脱出基地相手に盤面で有利を取るのは容易なので、《オセロットの群れ》《魂の導き手》をさっさと並べて《イーオスのレインジャー長》で蓋をする。これが主な勝ち手段となります。

      サイド後も《石のような静寂》《オアリムの詠唱》《摩耗+損耗》と大量の対策カードが入ります。

      これらの対策カードを見て気づく点としては、サイドから入ってくるであろう《アノールの焔》をしっかりと警戒していることでしょうか。《ドラニスの判事》をサイドボードに入れたくなってしまうところですが、クリーチャーによる対策は《アノールの焔》で2ドローされながら焼かれるので、あまり頼れないのです。

      一方、《石のような静寂》は《自然の要求》でしか対処できませんし、《損耗+摩耗》は《ウルザの物語》《研磨基地》《死の国からの脱出》を破壊できる強力な置物破壊。いずれも相手のサイドボード後に影響なく力を発揮できます。

      脱出基地のサイド後は《紅蓮地獄》などの全体除去が入ってくることもありますが、ボロスエネルギー側はそこも織り込み済み。サイド後は《オセロットの群れ》などの軽く横並びするクリーチャーを減らし、《火の怒りのタイタン、フレージ》《栄光の闘技場》で相手のライフを一撃で削るゲームプランを取ります。

      大量の対策カードを入れて、諜報ランドでそれらを探しながら墓地を肥やし、相手が対処不能の《火の怒りのタイタン、フレージ》で勝利。このボロスエネルギーのサイドプランに対し、やはり脱出基地側は対策カードを用意していません。

       

      サイド後に脱出基地がどんなカードをサイドボードと入れ替えて、どんなゲームを展開してくるのか。それを的確に予想し、効果のないサイドボードプランを取ることが可能となっているのです。

       

      脱出基地キラーとして見事トップ4まで勝ち進んだ、素晴らしいボロスエネルギーです。

       

      ホロウワン

      ANZ Super Series Cycle 8 : 2位 By Nicholas Talbot

      そのデッキ名の通り、《虚ろな者》を主軸に据えたラクドスカラーのビートダウンデッキ、ホロウワン。

       

      カードを1枚捨てるごとに2マナ軽くなる《虚ろな者》は、カードを3枚捨てると0マナでキャストできるようになります。そのため、1ターン目に《燃え立つ調査》を唱えれば《虚ろな者》を複数体並べることも可能です。

      そんな《虚ろな者》は禁止改訂によって《信仰無き物あさり》を手に入れて、大幅に強化されました。《燃え立つ調査》は0マナで《虚ろな者》を出せる代わりに、捨てるカードはランダムですからね。《虚ろな者》が捨てられて悲しむ展開もありません。

      そして最新セットでホロウワンは更に《略奪するアオザメ》を手に入れました。カードを捨てるたびにそれと同じ数の+1/+1カウンターが乗る凄まじい能力を持っています。以前はこのスロットに《炎刃の達人》が入っていたことを考えると、ものすごい進化です。エンド時までプラス修正だったものが、そのままカウンターとなるのですから。

      《探偵のフェニックス》はホロウワンで最も輝くカード。《虚ろな者》《通りの悪霊》は5マナと重くどちらも墓地に落ちやすいので、証拠収集6という重い条件をあっさりクリアできるのです。

      《虚ろな者》《略奪するアオザメ》《ネザーゴイフ》とこのデッキのクリーチャーはスタッツは優れている一方、回避能力はありません。そのため《探偵のフェニックス》による飛行付与は非常に強力で、突然致死量の打点を出してくれるのです。

      面白いのは《オークの弓使い》。実は《新たな夜明け、ケトラモーズ》の影響により需要が上がっているカードですが、ホロウワンではプチコンボも内蔵されています。

      そう、《燃え立つ調査》です。《オークの弓使い》を出している状態で相手に3枚引かせて3点……と望まないオークを誘発させることができます。

      以前からホロウワンは存在していましたが、《信仰無き物あさり》によってランダム要素が少なくなり、爆発的な展開を毎ゲーム起こしやすくなりました。《逸失への恐怖》の昂揚、《探偵のフェニックス》の墓地からの証拠収集など、噛み合わないと弱いカードが多いホロウワンをまとめ上げたのは、やはり《信仰無き物あさり》。このカードの解禁は大きすぎますね。

      かつて強すぎて次世代のマジックと呼ばれていたホロウワンは、『モダンホライゾン3』でも置いていかれることはなく、現代モダンの最前線でも活躍しています。

       

      無色エルドラージ

      ANZ Super Series Cycle 8 : 優勝 By Thomas Bot

      オーストラリアの台風の目となったのがこの無色エルドラージ!なんと会場に2人でトップ8に2人!そして1人が優勝と、素晴らしい戦果をあげています。

       

      このデッキの一番の強みは脱出基地に強い点でしょう。《虚空の杯》《大いなる創造者、カーン》の8枚によって脱出基地のコンボを防ぐことができます。

      これまではエルドラージは緑型のランプが主流でした。《楽園の拡散》《まき散らす菌糸生物》でマナを伸ばし、《邪悪鳴らし》で墓地を肥やし、最終的には《約束された終末、エムラクール》でゲームエンドというのが緑型のエルドラージランプ。

      一方、無色エルドラージは全く違うゲーム展開となります。4枚の《オパールのモックス》から2ターン目に4マナを生み出して《大いなる創造者、カーン》を出したり、《ウルザの物語》の2ターン目起動など、マナを伸ばすというよりは、早いターンで少し多いマナを出して脅威を展開するのが無色エルドラージです。

      《まばゆい肉掻き》はレガシーのエルドラージではお馴染みのクリーチャー。無色の呪文を唱えるたびに落とし子を生み出し、無色のクリーチャーが出ると1点のダメージを与えるエルドラージ。このカードは、大量に0マナのカードを採用する理由になります。

      《エルドラージの寺院》《ウギンの迷宮》から2ターン目に《まばゆい肉掻き》を出して《オパールのモックス》《ミシュラのガラクタ》と展開すれば、落とし子が2体出て2点、更に次のターンにはセットランド+《コジレックの命令》X=4以上と、3ターン目にして凄まじい展開を作り出せます。

      《オパールのモックス》《ミシュラのガラクタ》など大量の軽いアーティファクトが入っているので、《神秘の炉》が運用しやすいのも魅力的です。緑型のエルドラージランプはマナを伸ばして重いカードを出すデッキなため、《神秘の炉》で大量にカードをめくるのは難しいですが、この無色エルドラージなら容易です。

      《まばゆい肉掻き》も《神秘の炉》と組み合わせることでより強力となります。《神秘の炉》でカードをプレイし、《まばゆい肉掻き》でトークンを出しつつダメージを与え、その落とし子トークンでマナを出してライブラリートップのカードを唱え続けます。そうしていくうちに《まばゆい肉掻き》が増え、そのまま相手のライフを削りきれるのです。

      ランプに比べてコンボ要素が強く、また重いカードがさほど入っていないため、《溶鉄の雨》が効きにくいのも特徴です。

      同じエルドラージではあるものの、無色エルドラージとエルドラージランプは別のデッキです。脱出基地により強いのは間違いなくこの無色エルドラージで、反面エネルギーなどには少し弱いので、今のメタゲームに適したデッキと言えます。

       

      その力を存分に発揮してオーストラリアを制しました!これからメタデッキの一角となるのか、注目ですね。