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禁止改訂後に活躍しているスタンダードのデッキたち
こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 紹介デッキ 白単トークンコントロール ゴルガリミッドレンジ グルールハツカネズミ 白単トークンコントロール スタンダードチャレンジ : 1位 By gazmon48 MTGアリーナ用インポートデータ コントロールにとって大事なアドバンテージ源だった《豆の木をのぼれ》が禁止になり、個人的には《食糧補充》と《マラング川の執政》を使える青系コントロールが台頭すると予想していたのですが、そういえば今のスタンダード環境には他にもドローできるカードが存在していました。 そう、《世話人の才能》です。 かつては《ウラブラスクの溶鉱炉》と一緒に自動ドロー装置となっていたり、様々な白系ミッドレンジ・コントロールで活躍していたこのカード。いつしか忘れ去られていましたが、禁止改訂と共にスタンダードに戻ってきました。 白単コントロールはトークンを活用したデッキで、どちらかと言えばミッドレンジぐらいの速度。《勝利の楽士》《ミストムーアの大主》で出したトークンで殴っていくので、アゾリウスコントロールのようなどっしりとしたコントロールデッキではありません。 《世話人の才能》《永劫の無垢》はいずれも様々なトークンにトリガーしてカードが引けるカード。《勝利の楽士》や《ミストムーアの大主》、《人参ケーキ》、《噴水港》とたっぷり入っているので、戦場に出ればドロー装置として機能します。 どちらも1ターンに1度の制限付きではありますが、自分のターン以外でも誘発するのがミソ。自ターンで《勝利の楽士》でカードを引き、相手のターンで《噴水港》を起動してドローもできます。《人参ケーキ》も相手のターンに生け贄にすればカードを引けるので、1枚ですぐに2ドローできる優秀なカードです。 《世話人の才能》は優れたドローカードであるだけでなく、フィニッシャーの役割も兼ねます。レベルを3まで引き上げればトークンが大幅強化されるので、《ミストムーアの大主》が出すトークンが4/3飛行と凶暴なサイズに。蛾というか実質天使です。 白単で構成されていることから優秀な専用カードである《軍備放棄》を4枚採用できるのも魅力です。《失せろ》との8枚体制でビートダウンをシャットアウトしつつ、遅いデッキには圧倒的なドロー量とトークンによる物量で押し込みます。非常にシンプルかつ強力なデッキ。 白単であるもう1つの魅力は土地。ドローに繋がる《噴水港》は当然4枚採用できますし、土地の起動を楽にする《沈んだ城塞》も4枚入れることができます。このデッキは《噴水港》を同時に2枚起動するのも容易く、土地がとにかく強いのが素晴らしいですね。 チャレンジでも早速トップ8に3人が入賞し、今勝ちまくっている白単トークンコントロール。まずはここから新スタンダードを始めてみてはいかがでしょうか。 ゴルガリミッドレンジ スタンダードチャレンジ : 2位 By Desert_24 MTGアリーナ用インポートデータ 赤単アグロ・イゼット果敢と速い2つのデッキが消え、中速殺しのアゾリウス全知も禁止改訂の影響を受け、スタンダードはミッドレンジ天国になると予想されていましたが、やはりそれは間違っていなかったようです。 久しぶりにゴルガリミッドレンジの姿をスタンダードで見かけたような気がします。 ディミーアミッドレンジが1マナクリーチャーから《悪夢滅ぼし、魁渡》に繋げて《永劫の好奇心》で攻めながら引くアグロ気味のミッドレンジなのに対し、ゴルガリはどちらかと言えばマナを伸ばしてどっしりと除去とアドバンテージで勝っていく、王道ミッドレンジです。 とはいえ時にはスピードを出すことができ、それを可能にしているのが《ラノワールのエルフ》です。この唯一無二の3マナへのジャンプアップを可能にするマナクリーチャーは、ゴルガリミッドレンジの最大の魅力と言って良いでしょう。 《ラノワールのエルフ》から繋げる先の3マナ域はどれも強力。アドバンテージエンジンの《不浄な別室》に攻防一体の《名もなき都市の歩哨》、そしてなんといっても《重厚な世界踏破車》です。 《重厚な世界踏破車》は土地を伸ばしつつ攻撃できる強力な機体で、環境にある除去の多くが当たらないのも魅力の1つ。《ラノワールのエルフ》から2ターン目に《重厚な世界踏破車》と回った時のゴルガリは手が付けられません。 面白いのが《不浄な別室》絡みのデーモンシナジーです。デーモンがいることで2点ドレインになる《不浄な別室》のために、これまで様々なデーモンが試されてきましたが、ファイナルファンタジーから《デモンズウォール》が加入しました。2マナ3/3と守りには優秀なサイズで、カウンターさえあれば攻撃もできるため、《カルシの帰還者》や《名もなき都市の歩哨》の地図起動などでカウンターが乗れば、攻撃することも可能です。 《腐れ呪いのラクシャーサ》と合わせて《不浄な別室》のデーモン条件を満たしながら、攻防に渡って活躍してくれます。デーモンは4マナが定番だったので、これが軽くなったのは非常に大きいですね。3ターン目の《不浄な別室》がドレインになってくれるのは思いの外大きいです。 《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》擁するディミーア、《ラノワールのエルフ》から《不浄な別室》《重厚な世界踏破車》に繋げてくるゴルガリ、どちらも同じミッドレンジですが全く戦い方が異なるデッキたちが台頭してきて、スタンダードは難しくなりそうですね。 グルールハツカネズミ スタンダードチャレンジ : 3位 By Grogore MTGアリーナ用インポートデータ 禁止改訂で大きな弱体化を受けることとなってしまった赤系アグロ。それも仕方ありません。デッキに入っているほとんどのカードがスタンダードと同じ赤単がパイオニアでも一線級の活躍をしてしまうほど、カードパワーが飛びぬけていたのですから。 そんなハツカネズミ軍団の先陣を切っていた《心火の英雄》、そして《巨怪の怒り》が禁止になりました。 《心火の英雄》は2ターン目に《多様な鼠》を出してお手軽4点、放置したら次のターンには7点が飛び、除去でもダメージが入る、凄まじい1マナ域のクリーチャーでした。1ターン目にドロップできる赤いハツカネズミというだけで《多様な鼠》と相性が良いのに、その能力が強すぎました。 《巨怪の怒り》も《多様な鼠》と組み合わせることで意味不明なダメージを叩き出すカードでした。《心火の英雄》に2ターン目につけて5点で殴りつつ、次のターンからチャンプブロックを許さないのも、1マナのカードがやってはいけない強さ。 この2枚が禁止となり、正直ハツカネズミは終わったと思っていましたが、このようにまだ生き残っています。 《心火の英雄》がなくなったスロットには《脚当ての補充兵》を採用しています。《多様な鼠》で強くなることはありませんが、1ターン目に出せるパワー2なだけでなく、新生でばらまくこともでき、単体除去に対して非常に強いカードです。 《巨怪の怒り》の代わりは《過剰防衛》。+3/+3トランプルを付与するので《多様な鼠》と合わせての二段攻撃大ダメージは健在……と言いたいところですが、2マナと重く、更にトランプルもこのターンしか付与できません。《巨怪の怒り》の凄まじさがわかりますね。 とはいえ、《過剰防衛》は呪禁を付与するので、《巨怪の怒り》と違い単体除去を避けるために使うことも可能です。黒いデッキには《巨怪の怒り》より便利になる場合もありますね。 もちろん《心火の英雄》《巨怪の怒り》を失ったことでデッキパワーが大幅に低下したのは否めません。しかし、勝てなくなるかというとそれはまた別の話。 なぜなら赤単が当たり前のように意識されていた時代は終わったからです。むしろ今は赤アグロが消え、除去が減ってきているかもしれません。そうなればハツカネズミは大チャンスです。《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》のラインは残っていますし、《雇われ爪》もまだ元気ですからね。《岩面村》《多様な鼠》《熾火心の挑戦者》で粘り強く戦うグルールの持ち味はまだ死んでいません。 週末は赤対策を完全に捨てても良いと思っているなら、甘いですよ!l
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スポットライトシリーズで使用したアゾリウスコントロールができるまで
こんにちは! ゆうやん(@yuyan_mtg)です。 先週末はスポットライトシリーズ千葉に参加してきました! 結果は11勝4敗で、上位プロモの《ミッドガルの傭兵、クラウド》フォイルを獲得。トップ8入賞こそ果たせなかったものの、プロツアー・アトランタの権利を幸運にもラスベガスで得ていた僕としては、この結果でも万々歳です。 本当はこの時使用したアゾリウスコントロールの詳細な解説を書こうと思っていたのですが、皆さんご存じの通り、7月1日の禁止改訂で大量にカードが禁止になってしまいました。 そこで今回はアゾリウスコントロールの使用に至った経緯とデッキリストについて簡単な解説をした後、禁止改訂後のスタンダード環境におけるアゾリウスコントロールについてご紹介していきたいと思います。 アゾリウスコントロールは今回の禁止改訂で無傷だったデッキですからね。これからも使えるデッキなので、まあ一応この記事にも意味はあるだろうと自分を慰めながら、今タイピングをしています。 目次 赤まみれのスタンダード 赤に強いのは白 全知死すともアゾリウスは死せず 使用したリストについて 本戦結果 新環境のアゾリウスコントロール 赤まみれのスタンダード スタンダードは《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》の『ブルームバロウ』が誇るハツカネズミ軍団を主軸に据えた赤単アグロ、そして《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》《迷える黒魔道士、ビビ》《食糧補充》で様々なプランによって相手を粉砕するイゼット果敢、この2種のデッキがとにかく強力でした。 赤単とイゼット果敢の次はアゾリウス全知でしたが、その数は赤単の半分程度。イゼット果敢と赤単を合わせればフィールドの60%近くになるレベルだと予想していました。 実際はスポットライトシリーズはオープンイベントかつ2000人を超えるため、ここまで偏ったメタゲームにはならない予想でしたが、それでも50%近くに上ると読んでいました。 ただ、どちらのデッキも個人的に使用したくない理由が何点かありました。 まずイゼット果敢は、当たり前のようにメインから3~4枚採用されている《魔道士封じのトカゲ》があまりにも厳しい。前週の行弘プロの《自爆》による劇的な幕引きを見て、赤単に決めたプレイヤーも多いでしょう。赤単を使うプレイヤーは全員《魔道士封じのトカゲ》をメインに入れてくるはずです。 赤単はというと、個人的に僕が苦手というのもあるのですが、その《魔道士封じのトカゲ》が曲者でした。イゼット果敢に強い一方、ミラーマッチやその他の相手、たとえば全知にすら弱く、ほぼ対イゼット専用カードです。 そんな専用カードが入っている状態で、リスト非公開性のトーナメントを戦うのは非常にリスクが高いと判断しました。相手がイゼット果敢なら《魔道士封じのトカゲ》を探しにいくマリガンもできますが、相手がわからない状態ではそれもできません。逆に除去と《魔道士封じのトカゲ》だけの手札をキープできるでしょうか? 《光砕く者、テルサ》や《フェニックスのドミナント、ジョシュア》など、不要牌を捨てられるカードが採用されていれば良いですが、赤単には入っていても《光砕く者、テルサ》1枚。こうしたデッキではマッチによって不要となるカードを、リスト非公開のトーナメントで採用したくありません。 上位2つは使いたくない。というわけで今回は、いや……今回もこの上位2つに強いデッキを選ぶことにしたのです。 赤に強いのは白 イゼット果敢と赤単。この2つに、とりわけイゼット果敢に強いカードが《一時的封鎖》です。 イゼット果敢が除去に強いのは繰り返しトークンが沸く《コーリ鋼の短刀》とリソースを回復する《食糧補充》です。《コーリ鋼の短刀》そのものが触られてしまうとクロックが出てこないので、イゼット果敢の攻め手をシャットアウトできます。キャントリップのついでにトークンが出てくるのが厳しいのであって、ただドローされ続けるだけではコントロール側には何もダメージがありません。 《一時的封鎖》は出ているトークンや《ドレイクの孵卵者》、《嵐追いの才能》に《コーリ鋼の短刀》とほとんどのカードをシャットアウトでき、イゼット果敢と戦うなら欠かせない1枚となっているのです。これが赤に対して白が強い理由です。 その《一時的封鎖》を使うデッキとしてメタゲームの三番手に位置しているのがアゾリウス全知。しかも《魔道士封じのトカゲ》でイゼット果敢を攻略した赤単には全知は強いという触れ込みなので、これはいけると思い、早速全知を使い始めました。 その感触は……想像よりかなり悪い! まず赤単に思ったより勝てませんでした。《一時的封鎖》《エファラの分散》で盤面に触りつつ6ターンキルぐらいすれば余裕かと思っていましたが、そもそも《アブエロの覚醒》《全知》の2枚コンボが揃っていなければ負けなので、メイン戦をまあまあ落とします。 かといってサイド後に大きく有利になるわけでもありません。赤単相手に全知側はミッドレンジプランで勝利することはできないので、除去を追加して減速を狙うだけ。一方相手はクリティカルなサイドカードとして《除霊用掃除機》を入れてきますし、《陽背骨のオオヤマネコ》もそれなりに厳しい。 トータルで五分以上の勝率が出せる気がしませんでした。 イゼット果敢は《迷える黒魔道士、ビビ》が入ったことで相性が明確に悪くなりました。これまでは《一時的封鎖》でクロックをすべてシャットアウトできました。そのためサイド後は《ミストムーアの大主》などを入れてミッドレンジ戦略が取れたのですが、《迷える黒魔道士、ビビ》のせいで多少の盤面の不利なら余裕で覆してくるようになってしまいました。 そのため、対イゼット果敢でも《全知》をサイドアウトできなくなり、コンボによる勝利を目指すのが基本のゲームプランとなってしまいました。当然相手の墓地対策は効きますし、《呪文貫き》は刺さります。 トップ2に対してあまりに不安要素が大きく、アゾリウス全知は脱落。 全知死すともアゾリウスは死せず イゼット果敢・赤単の両者に《一時的封鎖》が強いのは間違いありません。しかし《全知》によるコンボ部分が足を引っ張っていると感じた僕は、それならばアゾリウスコントロールで良いのでは?と考えました。 メインから《跳ねる春、ベーザ》を大量に採用して対赤単への意識を高めつつ、《迷える黒魔道士、ビビ》にも4枚の《失せろ》に加えて大量の打ち消しがあるので、対応札としては申し分ありません。 特に《一時的封鎖》が効かないビビはアゾリウスコントロールとしてはさほどきついカードではありません。3マナのソーサリーアクションカードは強いものの、そのインパクトは《轟く機知、ラル》よりは少し低い程度。《轟く機知、ラル》と違って《失せろ》で除去した際にカワウソが出てこない分マシと言えるでしょう。 3マナ域が増えたことで打ち消し呪文も以前よりイゼット果敢に効くようになりました。そこでアゾリウスコントロールの強みである打ち消し呪文の枚数を増やしつつ、イゼット果敢に勝率が出るようなリストを作ることに成功したのです。 本来、アゾリウスコントロールがアグロに強くなるためには、除去を大量に入れなければなりません。そうなると打ち消し呪文を減らさざるを得なくなり、「せっかく青いコントロールにも関わらずカウンターをほとんど入れられなくなり、アグロ以外にメイン戦を落とす」といった状況が多発してしまいます。 イゼット果敢の《精鋭射手団の目立ちたがり》《僧院の速槍》が《迷える黒魔道士、ビビ》になり、打ち消しが効きやすくなったことが、アゾリウスコントロール側としてはあまりにも大きいのです。心置きなく打ち消しを増やせるようになりましたからね。今なら《喝破》を4枚入れられると確信しました。 リストの調整 というわけでアゾリウスコントロールの具体的な構築に。今回はイゼット果敢・赤単に重点を置くことになります。 ■単体除去 単体除去は《失せろ》以外に選択肢がほぼありません。 《魂の仕切り》も《エルズペスの強打》も5枚目以降の除去としては入りますが、《失せろ》を押しのけることはありません。対赤単では雄姿を誘発させてしまう地図を相手には渡したくないですが、それでも《魂の仕切り》は根本的解決にならず、《エルズペスの強打》は除去として弱いので、《失せろ》を使う他ありません。 ■全体除去 《一時的封鎖》は3枚採用にとどめました。赤単が《叫ぶ宿敵》と1~2マナを並べて《一時的封鎖》をケアしてきますし、イゼット果敢も《迷える黒魔道士、ビビ》があるためです。 そこで追加の除去として入ったのが《古代魔法「アルテマ」》。ボーダーレス版のイラストがあまりにもかっこよかったわけではなく、非常に強い全体除去なので採用しました。 これまでの全体除去《別行動》や《審判の日》は《コーリ鋼の短刀》に触れませんでしたが、《古代魔法「アルテマ」》はその点もバッチリ。《心火の英雄》の死亡誘発もありませんし、5マナと少し重いですが、《一時的封鎖》をケアする盤面を破壊しつつ、《コーリ鋼の短刀》に対処できる素晴らしいカードです。 ■ライフ回復 《跳ねる春、ベーザ》《領事の権限》は赤単を強く意識したカード。 特に《領事の権限》は赤単に勝つなら必須と思い、メインに2枚、サイドに1枚入れることにしました。《フラッドファームの境界》が単体で白を出せるため、1ターン目に置きやすいのも嬉しい。《叫ぶ宿敵》《栄光荒野のオオヤマネコ》でライフゲインが封じられても、速攻を消せるので《岩面村》や各種速攻クリーチャーをシャットアウトできて便利です。 イゼット果敢に対しても《コーリ鋼の短刀》の威力を半減できますし、非常に強いカードでした。 《一時的封鎖》と《領事の権限》は一見相性が悪いカードですが、対イゼット果敢においては実は重要です。《領事の権限》を《一時的封鎖》で巻き込んで追放しておくと、相手が《洪水の大口へ》で《一時的封鎖》を戻した時に、一緒に戦場に戻ってきてくれます。 そうすれば《コーリ鋼の短刀》によるダメージを抑えられるので、返しのターンでバウンスされた《一時的封鎖》を再び使えば良いのです。《洪水の大口へ》をケアするためにあえて《領事の権限》を《一時的封鎖》で巻き込んでおくのが、対イゼット果敢では重要となる場合もあります。 赤単に対しては当然《領事の権限》は場に残ってほしいですが、たまに《マラング川の執政》で《一時的封鎖》を回収し、《領事の権限》を出し直すことがあります。同時に帰ってきてライフゲインできるので、《失せろ》で《一時的封鎖》を割ることもありますね。手札に《一時的封鎖》が余った場合によくやるプレイです。 ■打ち消し呪文 前述のようにイゼット果敢に打ち消しが腐りにくくなったので、《喝破》は4枚投入することにしました。先手ならば赤単に対してもしっかり機能しますし、初手に持っている状態でゲームを始めたいので、この枚数に納得しています。以前までのイゼット果敢には《僧院の速槍》《精鋭射手団の目立ちたがり》が入っていたので、《喝破》は中々4枚採用できませんでした。それが歯がゆかったのです。 追加の打ち消しとして採用している《方程式の改変》。これはイゼット果敢・赤単の二大巨頭を倒すためにはサイド合わせて4枚にすべきだと思いました。 イゼット果敢は《迷える黒魔道士、ビビ》と《嵐の伝導者、ラル》でサイド後に重いカードが増えてきますし、赤単側も《陽背骨のオオヤマネコ》が4枚入ります。《叫ぶ宿敵》もそうですが、できる限りこれらのカードを除去ではなく打ち消しで対処したいところ。しかし、《三歩先》は重すぎてどちらのデッキに対してもサイドアウトします。 相手は打ち消しに弱いが重くて強いカードを入れているのに、こちらは打ち消しを抜かなければならない。そこでサイドボードには軽い万能カウンターを入れるべきだと考えました。そこで《方程式の改変》4枚体制となったのです。 イゼット果敢に対しては《食糧補充》を打ち消せない以外はほぼ完ぺきなカードで、最終的に《一時的封鎖》に向けられた《洪水の大口へ》を打ち消してゲームセットとなります。 《三歩先》と《否認》は上位2つ以外の相手を意識した結果です。特に《三歩先》はサイド後はクリーチャーをコピーすることも多く、イゼット果敢・赤単以外の相手にはかなり強いカードです。 ■ドロースペル 《食糧補充》はもう当然4枚入りますし、ここに文字数を使うのももったいないレベル。 僕が声を大にして言いたいのは、《マラング川の執政》は絶対に4枚にしてくださいということです!! 《マラング川の執政》はアゾリウスコントロールの要になるカードです。ある程度盤面をコントロールした後は、《マラング川の執政》を連打して速やかにライブラリーを掘りきってフィニッシャーである《完成化した精神、ジェイス》を2枚見つけにいくことになります。 《マラング川の執政》は3枚引いてデッキに戻っていくので、必然的に段々とライブラリーが《マラング川の執政》で濃くなります。毎ターン、《マラング川の執政》で3枚引きながら相手の場に対応していくのが理想の流れです。 そして対イゼット果敢・赤単では戦場でも活躍します。《領事の権限》を貼った状態で《マラング川の執政》でクリーチャーをバウンスすると、一気に攻守が入れ替わります。ライフが7~8ぐらいある状態で《マラング川の執政》を出してバウンス、返しで相手は《領事の権限》が置いてあるので速攻で殴れず、返しで《マラング川の執政》の2体目で勝利となるのです。 ドローとしてもクリーチャーとしても超一流で、どのマッチでも4枚欲しいし、サイドアウトもしません。これからどんな環境になり、アゾリウスコントロールのリストが変化していこうとも、《マラング川の執政》と《食糧補充》だけは絶対に4枚採用します。 ■フィニッシャー 今回はメインに《完成化した精神、ジェイス》を入れました。対アグロに腐ってしまうことから最近では《完成化した精神、ジェイス》は抜ける傾向にありましたが、アグロ以外の相手を見るのであれば、《完成化した精神、ジェイス》は必要だと思いました。 いくら盤面をコントロールしきっても相手の除去は余っているので、《ミストムーアの大主》を入れたところでゲームに勝てませんし、《跳ねる春、ベーザ》と《マラング川の執政》だけではあまりに心もとない。《嵐の討伐者、エルズペス》はそもそもカードが強いと思えませんでした。《世話人の才能》と一緒に使って初めて強いカードだと思っています。 そこでスロットを最小限に抑えつつ、確実にフィニッシャーになってくれる《完成化した精神、ジェイス》をチョイスしました。《マラング川の執政》でライブラリーを全部掘れるので2枚の《完成化した精神、ジェイス》はしっかり見つかります。 ドメインオーバーロードやジェスカイコントロール相手には《完成化した精神、ジェイス》を入れているかどうかでメイン勝率が大きく変わる一方、イゼット果敢・赤単に対して《完成化した精神、ジェイス》を引いたせいで負けるかと言えばそうではありません。 2枚しか入っていない《完成化した精神、ジェイス》は当然引かずにゲームが終わることもありますし、引いたとしても軽い妨害やドローにはなります。決して赤い相手に腐るわけではないのです。 一方、コントロール相手には非常に長期戦となるため、《完成化した精神、ジェイス》は高確率でドローしますし、ゲームにも絡んでいます。なので《完成化した精神、ジェイス》のメイン投入はローリスクハイリターンと言えるでしょう。 ■サイドボード 今回のサイドで特筆すべきはなんといっても《永劫の好奇心》です。 元々は対ミラーマッチを想定して《冷静なスフィンクス》を入れようとしていました。 今の青いコントロールミラーは、実は相手のデッキに打ち消したいカードがほとんどありません。《ミストムーアの大主》も《完成化した精神、ジェイス》もすべて《失せろ》で対処できますし、通すことで致命的になってしまうスペルが存在していないのです。 《ドミナリアの英雄、テフェリー》を通されて2マナでカウンターを構えられたら負ける。こういった状況が今のスタンダードのコントロールには存在しないので、青対決ではお互いにタップアウトが肯定されます。だからこそ《喝破》をケアした6マナからの《食糧補充》など、相手の次の展開に対する打ち消しを構えるのではなく、《食糧補充》自体が打ち消されないためにマナを立たせるだけにとどめて、どんどんメインで動き合います。 最もタップアウトの隙を突けるのは《ミストムーアの大主》でしょうが、それでも劇的とは言い難い。 この状況を逆手に取れないかと僕は考えました。タップアウトの隙をなんとか突きたいと思い、導き出した答えが前述の《冷静なスフィンクス》でした。 一度戦場に出てそのターンさえ無事に終えれば、《冷静なスフィンクス》は決して対処されない飛行クリーチャーです。ミラーマッチはもちろん、全知相手にカウンターを構えながら相手のエンドに出す動きも強力なはず。 そう思ってデッキについて話し合っていたユンさんに《冷静なスフィンクス》を提案したところ、思いのほか渋い返事。 「《ミストムーアの大主》のトークンで止まるのが許せない」 ぐうの音も出ませんでした。そして《冷静なスフィンクス》ではなく、《永劫の好奇心》ではどうだろうか?と代案が来たのです。 この《永劫の好奇心》がとんでもなく素晴らしいカードでした。全知に対しては仕掛けやすく、《失せろ》されてもエンチャントとして場に残るので、《噴水港》などのトークンが脅威になります。サイド後に《ティシャーナの潮縛り》とセットで入れることも多く、全くケアされずに無双する展開が何度もありました。 特に《不浄な別室》を使う黒系ミッドレンジには《永劫の好奇心》1枚で勝ってしまうほどで、当初は1枚だったのですが、強すぎて2枚に増えました。最終的には赤単アグロにも《永劫の好奇心》をサイドインすることになり、ほぼ全マッチで投入していたと思います。 禁止改訂後の新環境では黒系ミッドレンジが復権していますし、今後も確実にサイドボードに椅子を用意しますね。スポットライトでのMVPは《永劫の好奇心》でした。 本戦結果 ■初日 〇赤単アグロ×アゾリウス眼魔×イゼット果敢(フィーチャー)〇赤単アグロ〇赤単アグロ〇赤単アグロ〇赤単アグロ×赤単アグロ〇赤単アグロ〇ユウナオーバーロード 初日の2回戦で3ゲーム目、相手の先手2ターン目《忌まわしき眼魔》で負け、続くフィーチャーはメインで3枚目の土地を引けば《一時的封鎖》で勝てる状況で2ターン引かず負け。完全にツキに見放されていましたが、そこからは赤単に勝ち続けました。 途中でパーフェクトな赤単に負けるものの、最後は相性の良いオーバーロードに当たり、《永劫の好奇心》で無事勝利。 7勝3敗で2日目へ。 ■2日目 ×ドメインオーバーロード〇ラクドスアグロ〇イゼット果敢〇赤単アグロ〇赤単アグロ 初戦のドメインオーバーロードは1ゲーム目を土地引きまくって落とし、3ゲーム目で《豆の木をのぼれ》→《ホーントウッドの大主》→《ミストムーアの大主》を先手でやられ、手札に《否認》しかなかったので即投了。 その後はアグロデッキ4連戦で、気づけばトータル4敗で《ミッドガルの傭兵、クラウド》フォイルゲット! 予想よりも赤単に当たりすぎましたが、このいくつかがディミーアミッドレンジだったらおそらく4敗にはおさめられなかったと思うので、当たり運は少しツいていましたね。 新環境のアゾリウスコントロール 最後に、禁止改訂後にまず試したいアゾリウスコントロールのリストを貼って、本記事の締めといたします。 赤単が消えたことで《領事の権限》が不要になったり、環境が遅くなったので《三歩先》を増やしてみました。 コントロール好きな方はぜひ参考にしてみてください。 それではまた!
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スタンダード大激震!衝撃の7枚禁止の雑感と禁止改訂の影響を受けなかったデッキたちの紹介
こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 昨夜、スタンダードに大激震が走りました。 《コーリ鋼の短刀》《アブエロの覚醒》《巨怪の怒り》《心火の英雄》《豆の木をのぼれ》《望み無き悪夢》《この町は狭すぎる》 以上7枚がスタンダードで禁止となりました。 近年のスタンダードでは赤単アグロとイゼット果敢があまりにも強すぎました。 赤単アグロは『ブルームバロウ』産のハツカネズミたちが暴れ回るデッキで、《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》の3匹が、序盤から終盤まで常に強く、速やかに相手を倒し、かつリソースを稼ぐという、ビートダウンが持つべきすべてを兼ね備えた完璧な布陣でした。 そんな超パイオニア級の赤単と肩を並べる存在として君臨していたのがイゼット果敢。令和最強の装備品である《コーリ鋼の短刀》の登場により一気にスタンダードの頂点に君臨。1マナのキャントリップ呪文などで《コーリ鋼の短刀》を毎ターン誘発させ、《嵐追いの才能》のカワウソと一緒に速やかに相手のライフを削ります。 失ったリソースを回復する《食糧補充》、それを回収する《嵐追いの才能》2章と、こちらも長期戦に強いアグロデッキで、《迷える黒魔道士、ビビ》が加入してからはコンボデッキのような立ち回りも可能となりました。 これらの赤いデッキは圧倒的な支配率を誇り、またいずれのデッキも非常に速いことから、スタンダードの多くのカードを環境から締め出すこととなってしまいました。 《アブエロの覚醒》はアゾリウス全知のキーパーツ。 4ターンキルも可能な純粋なコンボデッキも今回の禁止改訂の影響を受けることとなりました。赤アグロとイゼット果敢の禁止によって環境は以前より遅くなることは確かで、全知が最速となる可能性があります。4ターン目にフルタップできない状況は、スタンダードでは好ましくないのでしょう。 様々なフォーマットやデッキで活躍した《豆の木をのぼれ》が、ついにモダンに続いてスタンダードでも禁止となりました。 マナ総量が5以上の呪文を唱えることで1ドローできる2マナのエンチャント。普通に使えば重い呪文にドローがついてくる並のカードですが、今のスタンダードにはコストが軽くなる5マナ以上の呪文が多すぎました。 《力線の束縛》はもちろん、各種大主の兆候にも1ドローがついてくる《豆の木をのぼれ》は、禁止改訂後のスタンダードを支配する恐れがあります。そしてその状況はおそらく『エルドレインの森』がローテーション落ちする時まで続くと危惧したのでしょう。 個人的にはゴルガリ切削やシミックテラーなど、マイナーな豆の木デッキたちが可哀想に思いましたが、まあやむなしと言ったところです。《ホーントウッドの大主》を禁止にするよりはマシという判断だったのかもしれません。 《望み無き悪夢》は昨年から急激に使われ出したカード。自分のパーマネントを戻す《養育するピクシー》や《孤立への恐怖》で何度も再利用するセルフバウンス系デッキで活躍しました。 《望み無き悪夢》はライフと手札を同時に刈り取り、《逃げ場なし》は除去。これらのカードを何度も使い回せるので、時にはビートダウン、またある時はコントロールになるなど、様々なゲームプランが取れるデッキでした。一時は赤単アグロを駆逐し、環境最強のデッキとなっていました。 しかし、天敵である《コーリ鋼の短刀》が出現してからはセルフバウンス系デッキはほぼ消滅し、唯一残ったのがコントロール要素の強いオルゾフピクシーでした。 禁止にするほど環境を支配したデッキではないものの、今回の禁止改訂で多くのデッキが消滅すると、必然的にセルフバウンス系デッキが最強になってしまいますので、未来を見据えた禁止ですね。 そして《この町は狭すぎる》。こちらもセルフバウンス系デッキの要で、特に《嵐追いの才能》とのコンボが強力でした。 相手の盤面に触りながら自分の《嵐追いの才能》を戻してカワウソを生み出し、レベルアップ時に《この町は狭すぎる》を回収。再び《嵐追いの才能》を戻すことで、何度も《この町は狭すぎる》を使いながらカワウソを増やすことができます。 疑似的なロックに加えてカワウソがどんどん沸いてくるこのコンボはスタンダードのほとんどのデッキを駆逐してしまう可能性があります。加えて《この町は狭すぎる》がスタンダードにある限り、戦場に出た時に何も影響を及ぼさないクリーチャーはすべて価値がなくなってしまいます。色々なカードに可能性を見出してもらうためにも、必要な禁止だったのでしょう。 さて、今回の禁止改訂で環境の多くのデッキは姿を消すこととなりました。その中で無傷で生き残っているデッキたちがあるので、簡単に紹介していきましょう。 ディミーアミッドレンジ 《遠眼鏡のセイレーン》から始まり、《大洞窟のコウモリ》による手札破壊、《フラッドピットの溺れさせ》による盤面干渉を経て、3ターン目には《悪夢滅ぼし、魁渡》で忍術。そして《永劫の好奇心》による大量ドローで勝利します。 これらの動きを、優秀な黒い除去と打ち消しでバックアップしていきます。 特に《悪夢滅ぼし、魁渡》と《永劫の好奇心》はこのディミーアミッドレンジのキーパーツ。素早いクロックとドローを兼ね備えたこの2枚は、様々なパワーカードが禁止になった新環境においてはとんでもないパワーカードです。これらを一緒に使えるディミーアミッドレンジは、最強のデッキである可能性が高い。 しかもこのディミーアミッドレンジは、スタンダードのローテーションを迎えた後もその大部分が残ります。 1マナ除去である《切り崩し》と《闇滑りの岸》以外は残るので、《悪夢滅ぼし、魁渡》《永劫の好奇心》の並びはローテーション後も健在です。 これからのスタンダード、長い付き合いとなること間違いなしです。 ジェスカイ眼魔 墓地に《忌まわしき眼魔》を落として《救いの手》で釣り上げるコンボを搭載したジェスカイ眼魔もまた、今回の禁止改訂の影響を受けなかったデッキ。 かつては赤アグロキラーとして人気を博していたジェスカイ眼魔ですが、イゼット果敢が《一時的封鎖》を意識して《洪水の大口へ》を3枚以上採用するのがデフォルトとなり、ビートダウン相手のプランである高速眼魔リアニメイトをナチュラルに対策されてしまったため、環境から去っていました。 ジェスカイ眼魔は単に《忌まわしき眼魔》をリアニメイトするだけのデッキではありません。《逸失への恐怖》《蒸気核の学者》《光砕く者、テルサ》は《忌まわしき眼魔》を墓地に送り込みつつ、カードを引ける便利なクリーチャーたち。そのドロー軍団と《プロフトの映像記憶》を組み合わせて高い打点を作り続けることができます。 むしろ眼魔はオマケで《プロフトの映像記憶》デッキと言われていたほど。《忌まわしき眼魔》を使ったデッキは墓地対策に弱いのが大きな欠点でしたが、ジェスカイ眼魔は《プロフトの映像記憶》と各種ドロークリーチャーによって墓地を追放されてもさほど痛くはありません。 意外と対策のしづらいデッキであるジェスカイ眼魔は再びスタンダードを脅かす存在となるでしょう。しかも《フェニックスのドミナント、ジョシュア》によって強化されたという噂もあります。 《忌まわしき眼魔》を再び使いたい方、その機会がやってきました。 イゼット大釜 イゼット果敢のために《迷える黒魔道士、ビビ》を購入して泣いているプレイヤーの皆様にオススメなのがこのイゼット大釜。 デッキの構造はジェスカイ眼魔と少し似ていて、《光砕く者、テルサ》や《逸失への恐怖》といったルータークリーチャーでデッキを回し、《プロフトの映像記憶》で巨大クリーチャーを作ったり、《略奪するアオザメ》を育てていきます。 大きく違うのは《忌まわしき眼魔》を吊り上げる代わりに、《アガサの魂の大釜》を使っている点です。 この《アガサの魂の大釜》で煮込むクリーチャーこそが《迷える黒魔道士、ビビ》。イゼット果敢では戦場で暴れていたビビは、イゼット大釜においては追放領域で真価を発揮します。 《アガサの魂の大釜》でビビを追放することにより、+1/+1カウンターが置かれている各クリーチャーは、自身のパワー分のマナを生み出すことができます。これで大量のマナを生み出して《冬夜の物語》を連打し、大量ドローの後に《プロフトの映像記憶》が誘発。クリーチャー1体を超強化し、更にそのクリーチャーでビビの能力を使い、再び大量のマナを作り、更にデッキを回し、最終的には《ヴォルダーレンの興奮探し》でフィニッシュというデッキ。 ジェスカイ眼魔と比べてコンボ要素が強く、初見でこのデッキの正体を見破ることは困難。いわゆるわからん殺しデッキですね。 《プロフトの映像記憶》《光砕く者、テルサ》《逸失への恐怖》の並びはやはり強力で、これだけでデッキを回転させる動きとビートダウンを兼ね備えており、コンボ一辺倒の脆さを解消しています。相手がアグロ展開をさばいている間に《アガサの魂の大釜》《迷える黒魔道士、ビビ》のコンボを仕込んでいき、2つの軸で攻められます。 とても回していて楽しいデッキなので、新環境の勉強がてら、触ってみてはいかがでしょうか。 ゴルガリ《陰湿な根》 墓地からクリーチャー・カードが離れるたびに植物を生成しつつ植物全体を強化していくエンチャント、《陰湿な根》。以前僕もパイオニアの《陰湿な根》デッキを紹介したことがありましたが、最近ではスタンダードでも活躍していました。 《陰湿な根》はどのフォーマットでも《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》とズッ友です。《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》のマイナスで墓地からクリーチャーをリアニメイトする際に《陰湿な根》が誘発するのはもちろん、《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》の常在型能力によって、《陰湿な根》から生まれる植物トークンが、出たターンにマナを生み出せるようになるからです。 この2枚が揃うと《陰湿な根》は爆発的な展開を作ります。たとえば《漁る軟泥》がいれば、自分の墓地のクリーチャーを追放すると植物が出て、その植物が《漁る軟泥》の起動マナを捻出するので、自分の墓地のクリーチャーの数だけ《漁る軟泥》を起動し続けることができ、その数だけ植物が出て強化されていきます。 《骨術師の達人》が加われば一気にフィニッシュまで到達します。墓地のクリーチャーが給餌によって戦場に戻れるようになるこのカード。給餌、つまり食物の生け贄か墓地の追放が必要となるわけですが、その際の墓地追放にも《陰湿な根》が反応するので、給餌+墓地からクリーチャーが帰ってくる際の、計2回《陰湿な根》が誘発してくれます。要するに1回墓地からクリーチャーが戻るごとに2マナが帰ってくるというわけですね。 どんな劣勢な場でも墓地が大量に肥えていれば、《骨術師の達人》1枚で一気に盤面をまくり返せますし、《陰湿な根》への依存度こそやや高いものの、決して無視できないデッキです。特に《陰湿な根》に直接触る手段のないディミーアミッドレンジに対しては相性が良く、ディミーアの猛攻に待ったをかけるデッキとなるかもしれません。
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禁止改訂後に活躍しているスタンダードのデッキたち
こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 紹介デッキ 白単トークンコントロール ゴルガリミッドレンジ グルールハツカネズミ 白単トークンコントロール スタンダードチャレンジ : 1位 By gazmon48 MTGアリーナ用インポートデータ コントロールにとって大事なアドバンテージ源だった《豆の木をのぼれ》が禁止になり、個人的には《食糧補充》と《マラング川の執政》を使える青系コントロールが台頭すると予想していたのですが、そういえば今のスタンダード環境には他にもドローできるカードが存在していました。 そう、《世話人の才能》です。 かつては《ウラブラスクの溶鉱炉》と一緒に自動ドロー装置となっていたり、様々な白系ミッドレンジ・コントロールで活躍していたこのカード。いつしか忘れ去られていましたが、禁止改訂と共にスタンダードに戻ってきました。 白単コントロールはトークンを活用したデッキで、どちらかと言えばミッドレンジぐらいの速度。《勝利の楽士》《ミストムーアの大主》で出したトークンで殴っていくので、アゾリウスコントロールのようなどっしりとしたコントロールデッキではありません。 《世話人の才能》《永劫の無垢》はいずれも様々なトークンにトリガーしてカードが引けるカード。《勝利の楽士》や《ミストムーアの大主》、《人参ケーキ》、《噴水港》とたっぷり入っているので、戦場に出ればドロー装置として機能します。 どちらも1ターンに1度の制限付きではありますが、自分のターン以外でも誘発するのがミソ。自ターンで《勝利の楽士》でカードを引き、相手のターンで《噴水港》を起動してドローもできます。《人参ケーキ》も相手のターンに生け贄にすればカードを引けるので、1枚ですぐに2ドローできる優秀なカードです。 《世話人の才能》は優れたドローカードであるだけでなく、フィニッシャーの役割も兼ねます。レベルを3まで引き上げればトークンが大幅強化されるので、《ミストムーアの大主》が出すトークンが4/3飛行と凶暴なサイズに。蛾というか実質天使です。 白単で構成されていることから優秀な専用カードである《軍備放棄》を4枚採用できるのも魅力です。《失せろ》との8枚体制でビートダウンをシャットアウトしつつ、遅いデッキには圧倒的なドロー量とトークンによる物量で押し込みます。非常にシンプルかつ強力なデッキ。 白単であるもう1つの魅力は土地。ドローに繋がる《噴水港》は当然4枚採用できますし、土地の起動を楽にする《沈んだ城塞》も4枚入れることができます。このデッキは《噴水港》を同時に2枚起動するのも容易く、土地がとにかく強いのが素晴らしいですね。 チャレンジでも早速トップ8に3人が入賞し、今勝ちまくっている白単トークンコントロール。まずはここから新スタンダードを始めてみてはいかがでしょうか。 ゴルガリミッドレンジ スタンダードチャレンジ : 2位 By Desert_24 MTGアリーナ用インポートデータ 赤単アグロ・イゼット果敢と速い2つのデッキが消え、中速殺しのアゾリウス全知も禁止改訂の影響を受け、スタンダードはミッドレンジ天国になると予想されていましたが、やはりそれは間違っていなかったようです。 久しぶりにゴルガリミッドレンジの姿をスタンダードで見かけたような気がします。 ディミーアミッドレンジが1マナクリーチャーから《悪夢滅ぼし、魁渡》に繋げて《永劫の好奇心》で攻めながら引くアグロ気味のミッドレンジなのに対し、ゴルガリはどちらかと言えばマナを伸ばしてどっしりと除去とアドバンテージで勝っていく、王道ミッドレンジです。 とはいえ時にはスピードを出すことができ、それを可能にしているのが《ラノワールのエルフ》です。この唯一無二の3マナへのジャンプアップを可能にするマナクリーチャーは、ゴルガリミッドレンジの最大の魅力と言って良いでしょう。 《ラノワールのエルフ》から繋げる先の3マナ域はどれも強力。アドバンテージエンジンの《不浄な別室》に攻防一体の《名もなき都市の歩哨》、そしてなんといっても《重厚な世界踏破車》です。 《重厚な世界踏破車》は土地を伸ばしつつ攻撃できる強力な機体で、環境にある除去の多くが当たらないのも魅力の1つ。《ラノワールのエルフ》から2ターン目に《重厚な世界踏破車》と回った時のゴルガリは手が付けられません。 面白いのが《不浄な別室》絡みのデーモンシナジーです。デーモンがいることで2点ドレインになる《不浄な別室》のために、これまで様々なデーモンが試されてきましたが、ファイナルファンタジーから《デモンズウォール》が加入しました。2マナ3/3と守りには優秀なサイズで、カウンターさえあれば攻撃もできるため、《カルシの帰還者》や《名もなき都市の歩哨》の地図起動などでカウンターが乗れば、攻撃することも可能です。 《腐れ呪いのラクシャーサ》と合わせて《不浄な別室》のデーモン条件を満たしながら、攻防に渡って活躍してくれます。デーモンは4マナが定番だったので、これが軽くなったのは非常に大きいですね。3ターン目の《不浄な別室》がドレインになってくれるのは思いの外大きいです。 《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》擁するディミーア、《ラノワールのエルフ》から《不浄な別室》《重厚な世界踏破車》に繋げてくるゴルガリ、どちらも同じミッドレンジですが全く戦い方が異なるデッキたちが台頭してきて、スタンダードは難しくなりそうですね。 グルールハツカネズミ スタンダードチャレンジ : 3位 By Grogore MTGアリーナ用インポートデータ 禁止改訂で大きな弱体化を受けることとなってしまった赤系アグロ。それも仕方ありません。デッキに入っているほとんどのカードがスタンダードと同じ赤単がパイオニアでも一線級の活躍をしてしまうほど、カードパワーが飛びぬけていたのですから。 そんなハツカネズミ軍団の先陣を切っていた《心火の英雄》、そして《巨怪の怒り》が禁止になりました。 《心火の英雄》は2ターン目に《多様な鼠》を出してお手軽4点、放置したら次のターンには7点が飛び、除去でもダメージが入る、凄まじい1マナ域のクリーチャーでした。1ターン目にドロップできる赤いハツカネズミというだけで《多様な鼠》と相性が良いのに、その能力が強すぎました。 《巨怪の怒り》も《多様な鼠》と組み合わせることで意味不明なダメージを叩き出すカードでした。《心火の英雄》に2ターン目につけて5点で殴りつつ、次のターンからチャンプブロックを許さないのも、1マナのカードがやってはいけない強さ。 この2枚が禁止となり、正直ハツカネズミは終わったと思っていましたが、このようにまだ生き残っています。 《心火の英雄》がなくなったスロットには《脚当ての補充兵》を採用しています。《多様な鼠》で強くなることはありませんが、1ターン目に出せるパワー2なだけでなく、新生でばらまくこともでき、単体除去に対して非常に強いカードです。 《巨怪の怒り》の代わりは《過剰防衛》。+3/+3トランプルを付与するので《多様な鼠》と合わせての二段攻撃大ダメージは健在……と言いたいところですが、2マナと重く、更にトランプルもこのターンしか付与できません。《巨怪の怒り》の凄まじさがわかりますね。 とはいえ、《過剰防衛》は呪禁を付与するので、《巨怪の怒り》と違い単体除去を避けるために使うことも可能です。黒いデッキには《巨怪の怒り》より便利になる場合もありますね。 もちろん《心火の英雄》《巨怪の怒り》を失ったことでデッキパワーが大幅に低下したのは否めません。しかし、勝てなくなるかというとそれはまた別の話。 なぜなら赤単が当たり前のように意識されていた時代は終わったからです。むしろ今は赤アグロが消え、除去が減ってきているかもしれません。そうなればハツカネズミは大チャンスです。《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》のラインは残っていますし、《雇われ爪》もまだ元気ですからね。《岩面村》《多様な鼠》《熾火心の挑戦者》で粘り強く戦うグルールの持ち味はまだ死んでいません。 週末は赤対策を完全に捨てても良いと思っているなら、甘いですよ!l
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スポットライトシリーズで使用したアゾリウスコントロールができるまで
こんにちは! ゆうやん(@yuyan_mtg)です。 先週末はスポットライトシリーズ千葉に参加してきました! 結果は11勝4敗で、上位プロモの《ミッドガルの傭兵、クラウド》フォイルを獲得。トップ8入賞こそ果たせなかったものの、プロツアー・アトランタの権利を幸運にもラスベガスで得ていた僕としては、この結果でも万々歳です。 本当はこの時使用したアゾリウスコントロールの詳細な解説を書こうと思っていたのですが、皆さんご存じの通り、7月1日の禁止改訂で大量にカードが禁止になってしまいました。 そこで今回はアゾリウスコントロールの使用に至った経緯とデッキリストについて簡単な解説をした後、禁止改訂後のスタンダード環境におけるアゾリウスコントロールについてご紹介していきたいと思います。 アゾリウスコントロールは今回の禁止改訂で無傷だったデッキですからね。これからも使えるデッキなので、まあ一応この記事にも意味はあるだろうと自分を慰めながら、今タイピングをしています。 目次 赤まみれのスタンダード 赤に強いのは白 全知死すともアゾリウスは死せず 使用したリストについて 本戦結果 新環境のアゾリウスコントロール 赤まみれのスタンダード スタンダードは《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》の『ブルームバロウ』が誇るハツカネズミ軍団を主軸に据えた赤単アグロ、そして《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》《迷える黒魔道士、ビビ》《食糧補充》で様々なプランによって相手を粉砕するイゼット果敢、この2種のデッキがとにかく強力でした。 赤単とイゼット果敢の次はアゾリウス全知でしたが、その数は赤単の半分程度。イゼット果敢と赤単を合わせればフィールドの60%近くになるレベルだと予想していました。 実際はスポットライトシリーズはオープンイベントかつ2000人を超えるため、ここまで偏ったメタゲームにはならない予想でしたが、それでも50%近くに上ると読んでいました。 ただ、どちらのデッキも個人的に使用したくない理由が何点かありました。 まずイゼット果敢は、当たり前のようにメインから3~4枚採用されている《魔道士封じのトカゲ》があまりにも厳しい。前週の行弘プロの《自爆》による劇的な幕引きを見て、赤単に決めたプレイヤーも多いでしょう。赤単を使うプレイヤーは全員《魔道士封じのトカゲ》をメインに入れてくるはずです。 赤単はというと、個人的に僕が苦手というのもあるのですが、その《魔道士封じのトカゲ》が曲者でした。イゼット果敢に強い一方、ミラーマッチやその他の相手、たとえば全知にすら弱く、ほぼ対イゼット専用カードです。 そんな専用カードが入っている状態で、リスト非公開性のトーナメントを戦うのは非常にリスクが高いと判断しました。相手がイゼット果敢なら《魔道士封じのトカゲ》を探しにいくマリガンもできますが、相手がわからない状態ではそれもできません。逆に除去と《魔道士封じのトカゲ》だけの手札をキープできるでしょうか? 《光砕く者、テルサ》や《フェニックスのドミナント、ジョシュア》など、不要牌を捨てられるカードが採用されていれば良いですが、赤単には入っていても《光砕く者、テルサ》1枚。こうしたデッキではマッチによって不要となるカードを、リスト非公開のトーナメントで採用したくありません。 上位2つは使いたくない。というわけで今回は、いや……今回もこの上位2つに強いデッキを選ぶことにしたのです。 赤に強いのは白 イゼット果敢と赤単。この2つに、とりわけイゼット果敢に強いカードが《一時的封鎖》です。 イゼット果敢が除去に強いのは繰り返しトークンが沸く《コーリ鋼の短刀》とリソースを回復する《食糧補充》です。《コーリ鋼の短刀》そのものが触られてしまうとクロックが出てこないので、イゼット果敢の攻め手をシャットアウトできます。キャントリップのついでにトークンが出てくるのが厳しいのであって、ただドローされ続けるだけではコントロール側には何もダメージがありません。 《一時的封鎖》は出ているトークンや《ドレイクの孵卵者》、《嵐追いの才能》に《コーリ鋼の短刀》とほとんどのカードをシャットアウトでき、イゼット果敢と戦うなら欠かせない1枚となっているのです。これが赤に対して白が強い理由です。 その《一時的封鎖》を使うデッキとしてメタゲームの三番手に位置しているのがアゾリウス全知。しかも《魔道士封じのトカゲ》でイゼット果敢を攻略した赤単には全知は強いという触れ込みなので、これはいけると思い、早速全知を使い始めました。 その感触は……想像よりかなり悪い! まず赤単に思ったより勝てませんでした。《一時的封鎖》《エファラの分散》で盤面に触りつつ6ターンキルぐらいすれば余裕かと思っていましたが、そもそも《アブエロの覚醒》《全知》の2枚コンボが揃っていなければ負けなので、メイン戦をまあまあ落とします。 かといってサイド後に大きく有利になるわけでもありません。赤単相手に全知側はミッドレンジプランで勝利することはできないので、除去を追加して減速を狙うだけ。一方相手はクリティカルなサイドカードとして《除霊用掃除機》を入れてきますし、《陽背骨のオオヤマネコ》もそれなりに厳しい。 トータルで五分以上の勝率が出せる気がしませんでした。 イゼット果敢は《迷える黒魔道士、ビビ》が入ったことで相性が明確に悪くなりました。これまでは《一時的封鎖》でクロックをすべてシャットアウトできました。そのためサイド後は《ミストムーアの大主》などを入れてミッドレンジ戦略が取れたのですが、《迷える黒魔道士、ビビ》のせいで多少の盤面の不利なら余裕で覆してくるようになってしまいました。 そのため、対イゼット果敢でも《全知》をサイドアウトできなくなり、コンボによる勝利を目指すのが基本のゲームプランとなってしまいました。当然相手の墓地対策は効きますし、《呪文貫き》は刺さります。 トップ2に対してあまりに不安要素が大きく、アゾリウス全知は脱落。 全知死すともアゾリウスは死せず イゼット果敢・赤単の両者に《一時的封鎖》が強いのは間違いありません。しかし《全知》によるコンボ部分が足を引っ張っていると感じた僕は、それならばアゾリウスコントロールで良いのでは?と考えました。 メインから《跳ねる春、ベーザ》を大量に採用して対赤単への意識を高めつつ、《迷える黒魔道士、ビビ》にも4枚の《失せろ》に加えて大量の打ち消しがあるので、対応札としては申し分ありません。 特に《一時的封鎖》が効かないビビはアゾリウスコントロールとしてはさほどきついカードではありません。3マナのソーサリーアクションカードは強いものの、そのインパクトは《轟く機知、ラル》よりは少し低い程度。《轟く機知、ラル》と違って《失せろ》で除去した際にカワウソが出てこない分マシと言えるでしょう。 3マナ域が増えたことで打ち消し呪文も以前よりイゼット果敢に効くようになりました。そこでアゾリウスコントロールの強みである打ち消し呪文の枚数を増やしつつ、イゼット果敢に勝率が出るようなリストを作ることに成功したのです。 本来、アゾリウスコントロールがアグロに強くなるためには、除去を大量に入れなければなりません。そうなると打ち消し呪文を減らさざるを得なくなり、「せっかく青いコントロールにも関わらずカウンターをほとんど入れられなくなり、アグロ以外にメイン戦を落とす」といった状況が多発してしまいます。 イゼット果敢の《精鋭射手団の目立ちたがり》《僧院の速槍》が《迷える黒魔道士、ビビ》になり、打ち消しが効きやすくなったことが、アゾリウスコントロール側としてはあまりにも大きいのです。心置きなく打ち消しを増やせるようになりましたからね。今なら《喝破》を4枚入れられると確信しました。 リストの調整 というわけでアゾリウスコントロールの具体的な構築に。今回はイゼット果敢・赤単に重点を置くことになります。 ■単体除去 単体除去は《失せろ》以外に選択肢がほぼありません。 《魂の仕切り》も《エルズペスの強打》も5枚目以降の除去としては入りますが、《失せろ》を押しのけることはありません。対赤単では雄姿を誘発させてしまう地図を相手には渡したくないですが、それでも《魂の仕切り》は根本的解決にならず、《エルズペスの強打》は除去として弱いので、《失せろ》を使う他ありません。 ■全体除去 《一時的封鎖》は3枚採用にとどめました。赤単が《叫ぶ宿敵》と1~2マナを並べて《一時的封鎖》をケアしてきますし、イゼット果敢も《迷える黒魔道士、ビビ》があるためです。 そこで追加の除去として入ったのが《古代魔法「アルテマ」》。ボーダーレス版のイラストがあまりにもかっこよかったわけではなく、非常に強い全体除去なので採用しました。 これまでの全体除去《別行動》や《審判の日》は《コーリ鋼の短刀》に触れませんでしたが、《古代魔法「アルテマ」》はその点もバッチリ。《心火の英雄》の死亡誘発もありませんし、5マナと少し重いですが、《一時的封鎖》をケアする盤面を破壊しつつ、《コーリ鋼の短刀》に対処できる素晴らしいカードです。 ■ライフ回復 《跳ねる春、ベーザ》《領事の権限》は赤単を強く意識したカード。 特に《領事の権限》は赤単に勝つなら必須と思い、メインに2枚、サイドに1枚入れることにしました。《フラッドファームの境界》が単体で白を出せるため、1ターン目に置きやすいのも嬉しい。《叫ぶ宿敵》《栄光荒野のオオヤマネコ》でライフゲインが封じられても、速攻を消せるので《岩面村》や各種速攻クリーチャーをシャットアウトできて便利です。 イゼット果敢に対しても《コーリ鋼の短刀》の威力を半減できますし、非常に強いカードでした。 《一時的封鎖》と《領事の権限》は一見相性が悪いカードですが、対イゼット果敢においては実は重要です。《領事の権限》を《一時的封鎖》で巻き込んで追放しておくと、相手が《洪水の大口へ》で《一時的封鎖》を戻した時に、一緒に戦場に戻ってきてくれます。 そうすれば《コーリ鋼の短刀》によるダメージを抑えられるので、返しのターンでバウンスされた《一時的封鎖》を再び使えば良いのです。《洪水の大口へ》をケアするためにあえて《領事の権限》を《一時的封鎖》で巻き込んでおくのが、対イゼット果敢では重要となる場合もあります。 赤単に対しては当然《領事の権限》は場に残ってほしいですが、たまに《マラング川の執政》で《一時的封鎖》を回収し、《領事の権限》を出し直すことがあります。同時に帰ってきてライフゲインできるので、《失せろ》で《一時的封鎖》を割ることもありますね。手札に《一時的封鎖》が余った場合によくやるプレイです。 ■打ち消し呪文 前述のようにイゼット果敢に打ち消しが腐りにくくなったので、《喝破》は4枚投入することにしました。先手ならば赤単に対してもしっかり機能しますし、初手に持っている状態でゲームを始めたいので、この枚数に納得しています。以前までのイゼット果敢には《僧院の速槍》《精鋭射手団の目立ちたがり》が入っていたので、《喝破》は中々4枚採用できませんでした。それが歯がゆかったのです。 追加の打ち消しとして採用している《方程式の改変》。これはイゼット果敢・赤単の二大巨頭を倒すためにはサイド合わせて4枚にすべきだと思いました。 イゼット果敢は《迷える黒魔道士、ビビ》と《嵐の伝導者、ラル》でサイド後に重いカードが増えてきますし、赤単側も《陽背骨のオオヤマネコ》が4枚入ります。《叫ぶ宿敵》もそうですが、できる限りこれらのカードを除去ではなく打ち消しで対処したいところ。しかし、《三歩先》は重すぎてどちらのデッキに対してもサイドアウトします。 相手は打ち消しに弱いが重くて強いカードを入れているのに、こちらは打ち消しを抜かなければならない。そこでサイドボードには軽い万能カウンターを入れるべきだと考えました。そこで《方程式の改変》4枚体制となったのです。 イゼット果敢に対しては《食糧補充》を打ち消せない以外はほぼ完ぺきなカードで、最終的に《一時的封鎖》に向けられた《洪水の大口へ》を打ち消してゲームセットとなります。 《三歩先》と《否認》は上位2つ以外の相手を意識した結果です。特に《三歩先》はサイド後はクリーチャーをコピーすることも多く、イゼット果敢・赤単以外の相手にはかなり強いカードです。 ■ドロースペル 《食糧補充》はもう当然4枚入りますし、ここに文字数を使うのももったいないレベル。 僕が声を大にして言いたいのは、《マラング川の執政》は絶対に4枚にしてくださいということです!! 《マラング川の執政》はアゾリウスコントロールの要になるカードです。ある程度盤面をコントロールした後は、《マラング川の執政》を連打して速やかにライブラリーを掘りきってフィニッシャーである《完成化した精神、ジェイス》を2枚見つけにいくことになります。 《マラング川の執政》は3枚引いてデッキに戻っていくので、必然的に段々とライブラリーが《マラング川の執政》で濃くなります。毎ターン、《マラング川の執政》で3枚引きながら相手の場に対応していくのが理想の流れです。 そして対イゼット果敢・赤単では戦場でも活躍します。《領事の権限》を貼った状態で《マラング川の執政》でクリーチャーをバウンスすると、一気に攻守が入れ替わります。ライフが7~8ぐらいある状態で《マラング川の執政》を出してバウンス、返しで相手は《領事の権限》が置いてあるので速攻で殴れず、返しで《マラング川の執政》の2体目で勝利となるのです。 ドローとしてもクリーチャーとしても超一流で、どのマッチでも4枚欲しいし、サイドアウトもしません。これからどんな環境になり、アゾリウスコントロールのリストが変化していこうとも、《マラング川の執政》と《食糧補充》だけは絶対に4枚採用します。 ■フィニッシャー 今回はメインに《完成化した精神、ジェイス》を入れました。対アグロに腐ってしまうことから最近では《完成化した精神、ジェイス》は抜ける傾向にありましたが、アグロ以外の相手を見るのであれば、《完成化した精神、ジェイス》は必要だと思いました。 いくら盤面をコントロールしきっても相手の除去は余っているので、《ミストムーアの大主》を入れたところでゲームに勝てませんし、《跳ねる春、ベーザ》と《マラング川の執政》だけではあまりに心もとない。《嵐の討伐者、エルズペス》はそもそもカードが強いと思えませんでした。《世話人の才能》と一緒に使って初めて強いカードだと思っています。 そこでスロットを最小限に抑えつつ、確実にフィニッシャーになってくれる《完成化した精神、ジェイス》をチョイスしました。《マラング川の執政》でライブラリーを全部掘れるので2枚の《完成化した精神、ジェイス》はしっかり見つかります。 ドメインオーバーロードやジェスカイコントロール相手には《完成化した精神、ジェイス》を入れているかどうかでメイン勝率が大きく変わる一方、イゼット果敢・赤単に対して《完成化した精神、ジェイス》を引いたせいで負けるかと言えばそうではありません。 2枚しか入っていない《完成化した精神、ジェイス》は当然引かずにゲームが終わることもありますし、引いたとしても軽い妨害やドローにはなります。決して赤い相手に腐るわけではないのです。 一方、コントロール相手には非常に長期戦となるため、《完成化した精神、ジェイス》は高確率でドローしますし、ゲームにも絡んでいます。なので《完成化した精神、ジェイス》のメイン投入はローリスクハイリターンと言えるでしょう。 ■サイドボード 今回のサイドで特筆すべきはなんといっても《永劫の好奇心》です。 元々は対ミラーマッチを想定して《冷静なスフィンクス》を入れようとしていました。 今の青いコントロールミラーは、実は相手のデッキに打ち消したいカードがほとんどありません。《ミストムーアの大主》も《完成化した精神、ジェイス》もすべて《失せろ》で対処できますし、通すことで致命的になってしまうスペルが存在していないのです。 《ドミナリアの英雄、テフェリー》を通されて2マナでカウンターを構えられたら負ける。こういった状況が今のスタンダードのコントロールには存在しないので、青対決ではお互いにタップアウトが肯定されます。だからこそ《喝破》をケアした6マナからの《食糧補充》など、相手の次の展開に対する打ち消しを構えるのではなく、《食糧補充》自体が打ち消されないためにマナを立たせるだけにとどめて、どんどんメインで動き合います。 最もタップアウトの隙を突けるのは《ミストムーアの大主》でしょうが、それでも劇的とは言い難い。 この状況を逆手に取れないかと僕は考えました。タップアウトの隙をなんとか突きたいと思い、導き出した答えが前述の《冷静なスフィンクス》でした。 一度戦場に出てそのターンさえ無事に終えれば、《冷静なスフィンクス》は決して対処されない飛行クリーチャーです。ミラーマッチはもちろん、全知相手にカウンターを構えながら相手のエンドに出す動きも強力なはず。 そう思ってデッキについて話し合っていたユンさんに《冷静なスフィンクス》を提案したところ、思いのほか渋い返事。 「《ミストムーアの大主》のトークンで止まるのが許せない」 ぐうの音も出ませんでした。そして《冷静なスフィンクス》ではなく、《永劫の好奇心》ではどうだろうか?と代案が来たのです。 この《永劫の好奇心》がとんでもなく素晴らしいカードでした。全知に対しては仕掛けやすく、《失せろ》されてもエンチャントとして場に残るので、《噴水港》などのトークンが脅威になります。サイド後に《ティシャーナの潮縛り》とセットで入れることも多く、全くケアされずに無双する展開が何度もありました。 特に《不浄な別室》を使う黒系ミッドレンジには《永劫の好奇心》1枚で勝ってしまうほどで、当初は1枚だったのですが、強すぎて2枚に増えました。最終的には赤単アグロにも《永劫の好奇心》をサイドインすることになり、ほぼ全マッチで投入していたと思います。 禁止改訂後の新環境では黒系ミッドレンジが復権していますし、今後も確実にサイドボードに椅子を用意しますね。スポットライトでのMVPは《永劫の好奇心》でした。 本戦結果 ■初日 〇赤単アグロ×アゾリウス眼魔×イゼット果敢(フィーチャー)〇赤単アグロ〇赤単アグロ〇赤単アグロ〇赤単アグロ×赤単アグロ〇赤単アグロ〇ユウナオーバーロード 初日の2回戦で3ゲーム目、相手の先手2ターン目《忌まわしき眼魔》で負け、続くフィーチャーはメインで3枚目の土地を引けば《一時的封鎖》で勝てる状況で2ターン引かず負け。完全にツキに見放されていましたが、そこからは赤単に勝ち続けました。 途中でパーフェクトな赤単に負けるものの、最後は相性の良いオーバーロードに当たり、《永劫の好奇心》で無事勝利。 7勝3敗で2日目へ。 ■2日目 ×ドメインオーバーロード〇ラクドスアグロ〇イゼット果敢〇赤単アグロ〇赤単アグロ 初戦のドメインオーバーロードは1ゲーム目を土地引きまくって落とし、3ゲーム目で《豆の木をのぼれ》→《ホーントウッドの大主》→《ミストムーアの大主》を先手でやられ、手札に《否認》しかなかったので即投了。 その後はアグロデッキ4連戦で、気づけばトータル4敗で《ミッドガルの傭兵、クラウド》フォイルゲット! 予想よりも赤単に当たりすぎましたが、このいくつかがディミーアミッドレンジだったらおそらく4敗にはおさめられなかったと思うので、当たり運は少しツいていましたね。 新環境のアゾリウスコントロール 最後に、禁止改訂後にまず試したいアゾリウスコントロールのリストを貼って、本記事の締めといたします。 赤単が消えたことで《領事の権限》が不要になったり、環境が遅くなったので《三歩先》を増やしてみました。 コントロール好きな方はぜひ参考にしてみてください。 それではまた!
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スタンダード大激震!衝撃の7枚禁止の雑感と禁止改訂の影響を受けなかったデッキたちの紹介
こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 昨夜、スタンダードに大激震が走りました。 《コーリ鋼の短刀》《アブエロの覚醒》《巨怪の怒り》《心火の英雄》《豆の木をのぼれ》《望み無き悪夢》《この町は狭すぎる》 以上7枚がスタンダードで禁止となりました。 近年のスタンダードでは赤単アグロとイゼット果敢があまりにも強すぎました。 赤単アグロは『ブルームバロウ』産のハツカネズミたちが暴れ回るデッキで、《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》の3匹が、序盤から終盤まで常に強く、速やかに相手を倒し、かつリソースを稼ぐという、ビートダウンが持つべきすべてを兼ね備えた完璧な布陣でした。 そんな超パイオニア級の赤単と肩を並べる存在として君臨していたのがイゼット果敢。令和最強の装備品である《コーリ鋼の短刀》の登場により一気にスタンダードの頂点に君臨。1マナのキャントリップ呪文などで《コーリ鋼の短刀》を毎ターン誘発させ、《嵐追いの才能》のカワウソと一緒に速やかに相手のライフを削ります。 失ったリソースを回復する《食糧補充》、それを回収する《嵐追いの才能》2章と、こちらも長期戦に強いアグロデッキで、《迷える黒魔道士、ビビ》が加入してからはコンボデッキのような立ち回りも可能となりました。 これらの赤いデッキは圧倒的な支配率を誇り、またいずれのデッキも非常に速いことから、スタンダードの多くのカードを環境から締め出すこととなってしまいました。 《アブエロの覚醒》はアゾリウス全知のキーパーツ。 4ターンキルも可能な純粋なコンボデッキも今回の禁止改訂の影響を受けることとなりました。赤アグロとイゼット果敢の禁止によって環境は以前より遅くなることは確かで、全知が最速となる可能性があります。4ターン目にフルタップできない状況は、スタンダードでは好ましくないのでしょう。 様々なフォーマットやデッキで活躍した《豆の木をのぼれ》が、ついにモダンに続いてスタンダードでも禁止となりました。 マナ総量が5以上の呪文を唱えることで1ドローできる2マナのエンチャント。普通に使えば重い呪文にドローがついてくる並のカードですが、今のスタンダードにはコストが軽くなる5マナ以上の呪文が多すぎました。 《力線の束縛》はもちろん、各種大主の兆候にも1ドローがついてくる《豆の木をのぼれ》は、禁止改訂後のスタンダードを支配する恐れがあります。そしてその状況はおそらく『エルドレインの森』がローテーション落ちする時まで続くと危惧したのでしょう。 個人的にはゴルガリ切削やシミックテラーなど、マイナーな豆の木デッキたちが可哀想に思いましたが、まあやむなしと言ったところです。《ホーントウッドの大主》を禁止にするよりはマシという判断だったのかもしれません。 《望み無き悪夢》は昨年から急激に使われ出したカード。自分のパーマネントを戻す《養育するピクシー》や《孤立への恐怖》で何度も再利用するセルフバウンス系デッキで活躍しました。 《望み無き悪夢》はライフと手札を同時に刈り取り、《逃げ場なし》は除去。これらのカードを何度も使い回せるので、時にはビートダウン、またある時はコントロールになるなど、様々なゲームプランが取れるデッキでした。一時は赤単アグロを駆逐し、環境最強のデッキとなっていました。 しかし、天敵である《コーリ鋼の短刀》が出現してからはセルフバウンス系デッキはほぼ消滅し、唯一残ったのがコントロール要素の強いオルゾフピクシーでした。 禁止にするほど環境を支配したデッキではないものの、今回の禁止改訂で多くのデッキが消滅すると、必然的にセルフバウンス系デッキが最強になってしまいますので、未来を見据えた禁止ですね。 そして《この町は狭すぎる》。こちらもセルフバウンス系デッキの要で、特に《嵐追いの才能》とのコンボが強力でした。 相手の盤面に触りながら自分の《嵐追いの才能》を戻してカワウソを生み出し、レベルアップ時に《この町は狭すぎる》を回収。再び《嵐追いの才能》を戻すことで、何度も《この町は狭すぎる》を使いながらカワウソを増やすことができます。 疑似的なロックに加えてカワウソがどんどん沸いてくるこのコンボはスタンダードのほとんどのデッキを駆逐してしまう可能性があります。加えて《この町は狭すぎる》がスタンダードにある限り、戦場に出た時に何も影響を及ぼさないクリーチャーはすべて価値がなくなってしまいます。色々なカードに可能性を見出してもらうためにも、必要な禁止だったのでしょう。 さて、今回の禁止改訂で環境の多くのデッキは姿を消すこととなりました。その中で無傷で生き残っているデッキたちがあるので、簡単に紹介していきましょう。 ディミーアミッドレンジ 《遠眼鏡のセイレーン》から始まり、《大洞窟のコウモリ》による手札破壊、《フラッドピットの溺れさせ》による盤面干渉を経て、3ターン目には《悪夢滅ぼし、魁渡》で忍術。そして《永劫の好奇心》による大量ドローで勝利します。 これらの動きを、優秀な黒い除去と打ち消しでバックアップしていきます。 特に《悪夢滅ぼし、魁渡》と《永劫の好奇心》はこのディミーアミッドレンジのキーパーツ。素早いクロックとドローを兼ね備えたこの2枚は、様々なパワーカードが禁止になった新環境においてはとんでもないパワーカードです。これらを一緒に使えるディミーアミッドレンジは、最強のデッキである可能性が高い。 しかもこのディミーアミッドレンジは、スタンダードのローテーションを迎えた後もその大部分が残ります。 1マナ除去である《切り崩し》と《闇滑りの岸》以外は残るので、《悪夢滅ぼし、魁渡》《永劫の好奇心》の並びはローテーション後も健在です。 これからのスタンダード、長い付き合いとなること間違いなしです。 ジェスカイ眼魔 墓地に《忌まわしき眼魔》を落として《救いの手》で釣り上げるコンボを搭載したジェスカイ眼魔もまた、今回の禁止改訂の影響を受けなかったデッキ。 かつては赤アグロキラーとして人気を博していたジェスカイ眼魔ですが、イゼット果敢が《一時的封鎖》を意識して《洪水の大口へ》を3枚以上採用するのがデフォルトとなり、ビートダウン相手のプランである高速眼魔リアニメイトをナチュラルに対策されてしまったため、環境から去っていました。 ジェスカイ眼魔は単に《忌まわしき眼魔》をリアニメイトするだけのデッキではありません。《逸失への恐怖》《蒸気核の学者》《光砕く者、テルサ》は《忌まわしき眼魔》を墓地に送り込みつつ、カードを引ける便利なクリーチャーたち。そのドロー軍団と《プロフトの映像記憶》を組み合わせて高い打点を作り続けることができます。 むしろ眼魔はオマケで《プロフトの映像記憶》デッキと言われていたほど。《忌まわしき眼魔》を使ったデッキは墓地対策に弱いのが大きな欠点でしたが、ジェスカイ眼魔は《プロフトの映像記憶》と各種ドロークリーチャーによって墓地を追放されてもさほど痛くはありません。 意外と対策のしづらいデッキであるジェスカイ眼魔は再びスタンダードを脅かす存在となるでしょう。しかも《フェニックスのドミナント、ジョシュア》によって強化されたという噂もあります。 《忌まわしき眼魔》を再び使いたい方、その機会がやってきました。 イゼット大釜 イゼット果敢のために《迷える黒魔道士、ビビ》を購入して泣いているプレイヤーの皆様にオススメなのがこのイゼット大釜。 デッキの構造はジェスカイ眼魔と少し似ていて、《光砕く者、テルサ》や《逸失への恐怖》といったルータークリーチャーでデッキを回し、《プロフトの映像記憶》で巨大クリーチャーを作ったり、《略奪するアオザメ》を育てていきます。 大きく違うのは《忌まわしき眼魔》を吊り上げる代わりに、《アガサの魂の大釜》を使っている点です。 この《アガサの魂の大釜》で煮込むクリーチャーこそが《迷える黒魔道士、ビビ》。イゼット果敢では戦場で暴れていたビビは、イゼット大釜においては追放領域で真価を発揮します。 《アガサの魂の大釜》でビビを追放することにより、+1/+1カウンターが置かれている各クリーチャーは、自身のパワー分のマナを生み出すことができます。これで大量のマナを生み出して《冬夜の物語》を連打し、大量ドローの後に《プロフトの映像記憶》が誘発。クリーチャー1体を超強化し、更にそのクリーチャーでビビの能力を使い、再び大量のマナを作り、更にデッキを回し、最終的には《ヴォルダーレンの興奮探し》でフィニッシュというデッキ。 ジェスカイ眼魔と比べてコンボ要素が強く、初見でこのデッキの正体を見破ることは困難。いわゆるわからん殺しデッキですね。 《プロフトの映像記憶》《光砕く者、テルサ》《逸失への恐怖》の並びはやはり強力で、これだけでデッキを回転させる動きとビートダウンを兼ね備えており、コンボ一辺倒の脆さを解消しています。相手がアグロ展開をさばいている間に《アガサの魂の大釜》《迷える黒魔道士、ビビ》のコンボを仕込んでいき、2つの軸で攻められます。 とても回していて楽しいデッキなので、新環境の勉強がてら、触ってみてはいかがでしょうか。 ゴルガリ《陰湿な根》 墓地からクリーチャー・カードが離れるたびに植物を生成しつつ植物全体を強化していくエンチャント、《陰湿な根》。以前僕もパイオニアの《陰湿な根》デッキを紹介したことがありましたが、最近ではスタンダードでも活躍していました。 《陰湿な根》はどのフォーマットでも《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》とズッ友です。《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》のマイナスで墓地からクリーチャーをリアニメイトする際に《陰湿な根》が誘発するのはもちろん、《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》の常在型能力によって、《陰湿な根》から生まれる植物トークンが、出たターンにマナを生み出せるようになるからです。 この2枚が揃うと《陰湿な根》は爆発的な展開を作ります。たとえば《漁る軟泥》がいれば、自分の墓地のクリーチャーを追放すると植物が出て、その植物が《漁る軟泥》の起動マナを捻出するので、自分の墓地のクリーチャーの数だけ《漁る軟泥》を起動し続けることができ、その数だけ植物が出て強化されていきます。 《骨術師の達人》が加われば一気にフィニッシュまで到達します。墓地のクリーチャーが給餌によって戦場に戻れるようになるこのカード。給餌、つまり食物の生け贄か墓地の追放が必要となるわけですが、その際の墓地追放にも《陰湿な根》が反応するので、給餌+墓地からクリーチャーが帰ってくる際の、計2回《陰湿な根》が誘発してくれます。要するに1回墓地からクリーチャーが戻るごとに2マナが帰ってくるというわけですね。 どんな劣勢な場でも墓地が大量に肥えていれば、《骨術師の達人》1枚で一気に盤面をまくり返せますし、《陰湿な根》への依存度こそやや高いものの、決して無視できないデッキです。特に《陰湿な根》に直接触る手段のないディミーアミッドレンジに対しては相性が良く、ディミーアの猛攻に待ったをかけるデッキとなるかもしれません。
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「マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY」ドラフト・アルティマニア
こんにちは! へいか(@enzyutuheika)です。 今回の新セットである「マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY」ですが、ドラフトが非常に楽しい環境です! アーキタイプ毎の特色も分かりやすいだけでなく各々のカードの役割も明確で、これに加えてファイナルファンタジーというフレーバー満点なセット。個人的に最も好きな環境と断言できるほどです。 主にアリーナで楽しんでいますが、終わってしまってもおそらく紙で楽しみ続けることになりそうです。それぐらいには好きになってしまいました。 たびたび言及する勝率については17landsという統計サイトを参考にしています。(リンク) なお、本記事はMTGアリーナにおけるドラフトの攻略記事となります。卓内のプレイヤーと対戦するテーブルトップのドラフトは想定しておりませんので、ご注意ください。(とはいってもまったく紙のドラフトで参考にならないわけではありません!) 目次 環境理解 - アーキタイプ環境 ピックの方針 アーキタイプごとに点数が上がるカード・ゲームプランの立て方 Tips ▼環境理解 - アーキタイプ環境 まず大前提として、この環境のコモン・アンコモンはシナジーやアーキタイプごとの戦略を意識したカードが多く、アーキタイプ環境です。 霊気走破の緑のように突出した色もなく、総じて色のバランスがいい環境と言えるでしょう。 改めてアーキタイプごとにまとめていきましょう。 青白:アーティファクト/工匠(シド) 青黒:コントロール/アーティファクト 青赤:4マナ以上非クリーチャー呪文 青緑:街ランプ 白黒:サクリファイス/アーティファクト 赤白:装備品アグロ 緑白:横並べ/英雄譚/チョコボ 赤緑:上陸/チョコボ 黒赤:黒魔術士バーン 黒緑:墓地利用/ランプ 上記の通り、一つのアーキの中でもいくつかのシナジーがあることが分かるかと思います。 これらのシナジーによってカード毎の点数が大きく変わる事はこの環境で非常に重要な部分ですので、これは必ず意識する必要があります。 ▶環境のサイズ・速度感 まずこの環境において2マナパワー3はレア含めてもなんと《コーネリアの騎士、ガーランド》のみ。後は上陸込みのチョコボトークンぐらいしかいません。 2マナのジョブ選択装備品はいずれもパワー2であり、《サハギン族》《ガードスコーピオン》《パシュハウ沼のグゥーブー》などの2マナタフネス3に価値が生じることにも繋がります。 こういったタフネスが高い2マナ域から3ターン目《チュートリアルバトル》に繋げるとアドバンテージを得つつ、非常に硬くなれるので鉄板の組み合わせとなっています。 また先手が強い環境でもあります。 17landsによるデータでも表れており、先手勝率は53%に近い数値。これに加えてこれまでの環境の中ではやや早めな速度感となっています。 この理由としてはやはりジョブ選択装備品が挙げられます。 英雄トークンを生み出しつつ装備させる装備品ですが、この装備品を重ねることで打点を縦に伸ばしやすく、ブロッカーを突破するのが容易になっています。 そうすると先に動ける先手側が優位に立ちやすく、結果的に先手環境になっていると推測できます。 環境の速度感としても歴史を見てもだいぶ早く、17landsでは決着ターンが平均8.9ターンとなっており、これまでの環境の中でも速くなっています。これらの要因から押し付けが強い環境であると言えそうです。 ドラフトにおける2マナ域は重要と古事記にも書いてありますが、今回は先述した通り先手が強いことに加えてジョブ選択の装備品が2マナに集中しているのも大きく、攻めるにしても受けるにしても特に2マナが重要になっています。 上記の理由からピック・構築時は2マナアクションの数を意識した方がよい、という話に繋がります。 ▶FF環境における飛行 さて、基本サイズの話をしたところで、ここでこの環境の飛行について言及せねばなりません。 まず飛行を阻む到達持ちが非常に少ないという特徴が挙げられます。コモンで到達を持つカードは《東アルテバ砂漠のサボテンダー》《「吟遊詩人」の弓》《岩巨人》の三枚しかありません。 さらに言えば《「吟遊詩人」の弓》以外の2枚はいわゆるアンプレイアブルなため、実質1枚しかないとも言えます。 ではアンコモンはどうかというと、《バレット・ウォーレス》《グ・ラハ・ティア》《ダイヤウェポン》とこれもまた3枚しかありません。 《ダイヤウェポン》はどちらかというとフィニッシャーであるため、序盤~中盤の飛行に対するブロッカーとしては期待できません。 《バレット・ウォーレス》もただの4/4到達になりやすく、カードパワーが低いのもマイナス点。実際17landsでも52.2%と非常に低い数値です。 《グ・ラハ・ティア》は5マナとやや重く、同じくブロッカーとしての運用はどうかと言われると……サクリファイスシナジーのある白黒以外のアーキタイプだと弱めなのも厳しいところですね。 このようにアンコモン含めても序盤で使用に耐えうる到達持ちは《「吟遊詩人」の弓》1枚しかないということになります。 一方で飛行クリーチャーは3/2/1飛行でありながら1/1英雄トークンを出す青のトップコモンである《竜騎士の飛竜》、2/2/1飛行で攻撃時に諜報1と凄まじいカードパワーを持つ《イル・メグのピクシー族》。 裏返る必要があるとはいえ、一回裏返ってしまえば搭乗1かつ4/4飛行の機体となる《サブクエスト:カードコレクション》も強いですね。 白にもアーティファクトが2枚あるだけで3/3飛行警戒と素晴らしいカードになる《ゲイラキャット》、実質2/2/1飛行であり装備することで+1/+0と飛行も付与してしまうトップアンコモン《「竜騎士」の両手槍》もいます。 この《「竜騎士」の両手槍》含めた装備品を持ってこれながらパワー3の飛行でもある《レターモーグリ》、2-3章で飛行を付与する《召喚:蛮神ガルーダ》と粒揃いです。 これに加えてジョブ選択の装備品も多いため、これらの飛行に装備しパワーを上げて殴る飛行ビートが成立しやすい環境でもあります。 このように飛行を持つ青と白はテンポよくライフを削るというプランを立てやすく、色自体が強い理由の一つです。 ▶レアに対する対抗策は用意すべし どのリミテッドでも言える事ではあるのですが、今回はボーナスシートである継承史カードも含めて試合を動かすレアが多くなっています。 17landsでも勝率60%前後であるレアの数は多く、数字的にも証明されていると言えるでしょう。 こんなレアへの対抗策としては下記の通りになると考えます。 1.《中略》《リバイアサンの腹のなか》といったカウンター レアをそもそも解決させないカウンターがまず思い浮かびますね。 これは数字にも表れており、17landsでは《中略》が57.5%、《リバイアサンの腹のなか》が59.9%と高い勝率を記録しています。 もちろんボーナスシート(継承史カード)のカンスペこと《対抗呪文》も58.6%と高い勝率を記録しています。 これはレアが強い環境であるからこそ、これへの完全回答になり得るカウンターの価値が上がっているのはもちろんですが、同時に構えるインスタントが強いのも一因になっていると思われます。 青単色だけでも《ラグナの記憶》や3マナ瞬速のタップオーラである《祈り子の間での捕縛》、バウンスの《氷魔法》や《緊急脱出》も同時に構える選択肢が豊富ですね。 黒でも《ヴェインの鬼謀》《オーバーキル》《セフィロスの介入》と優秀な各種除去、赤では《雷魔法》《火魔法》……といった具合で、いわゆる構え損になりづらいというのもこれらカウンターの強さを支えていると推察できます。 2.デッキ自体のゲームレンジを短くする ゲームが延びれば延びるほどボムレアを出される確率は高くなっていくため、速やかにゲームを畳めるような構築を意識せねばなりません。 赤白アグロなどはその筆頭で、2マナを中心とした軽量クリーチャーを次々と展開していきながら6-7ターン辺りの決着を狙っていく構築が17landsでの7勝デッキでちらほらと見かけます。 ここまで極端ではないにしろ、強いレアがないデッキではちゃんと飛行+装備の組み合わせなどゲームを畳む手段を用意していることが多いですね。 逆に除去が多くてもフィニッシャーが少ないデッキだと結果的に相手のボムレアによって敗北してしまうというケースが多見されました。 もちろんこちらがボムレアを複数あるのであれば逆にゲームを長引かせ、ボムレアを引き込んで連打していくという構築の方が勝率高くなるというケースもあるでしょう。 攻める側、受ける側。アーキタイプも含めてどの立場に立った方がいいのかをよく考えて構築していく必要があります。 ▶英雄譚・クリーチャーについて 一時的に力を貸してくれる召喚獣を最終章まで行ったら墓地に落ちる英雄譚・クリーチャーとして表現したのは見事以外の何ものでもありません。 正直この発想はなく、MTGにはまだまだデザインの幅はあるのだと思い知らされましたね。 さて、そんな英雄譚・クリーチャーですが、最終章まで行ったら墓地に落ちる関係上、3章の英雄譚・クリーチャーは1回しか殴れない点には留意したいところです。(1章では召喚酔い、2章では攻撃できるものの3章で墓地に落ちるため) ただ、ブロック面で言えば1章、2章の2ターンはブロッカーとして運用できるため、受ける側のデッキとしてはありがたいと言えます。 3章までしかない英雄譚クリーチャーは英雄譚側の効果を目当てにしつつ、ブロッカーの運用として考えたほうがよいでしょう。 これについてはデザイナーチームも意識しているのか、《召喚:シヴァ》《召喚:蛮神ガルーダ》など3章の英雄譚は盤面に干渉する効果を持つ事が多くなっています。 一方で4章まである《召喚:モーグリ&チョコボ》《召喚:デブチョコボ》《召喚:G.F.イフリート》は攻撃するクリーチャーとしての運用ができるということにもなりますね。 特に《召喚:デブチョコボ》は1賞で2/2チョコボトークンを出すことで1枚で2枚になりつつ、2~4章は全体にトランプル付与と緑とかなり噛み合う性能となっています。緑の強コモンですね。 攻める側も受ける側もこの英雄譚クリーチャーの特性をきちんと理解しておきたいところです。 ▼ピックの方針 前半はカードパワー重視 これはシンプルですね。 空いている色に座る事は非常に重要です。「どの色にも入れるようにする」ために前半ではそのパックの中で一番強いカードをピックする事になります。 そのためには各色ごとの強いカードは覚えておく必要があります。 色単体の強さは青≧白>黒>緑≧赤 これはあくまでも色単体での強さとしての個人的な評価です。 また、先述した通り色の強さにそこまで差はありませんが、緑に関してはレアが絡まないと弱いと感じます。 ただレアは強く、他の色のレアもマナサポートによって強く使えるため「色単体での強さ」としては4番手としています。 コモン・アンコモン限定で見れば緑は最下位と言っても差し支えないと考えています。 最下位である赤も攻めるカードと受けるカードが二極化している上、またいわゆるボムレアが《燃え上がるニブルヘイム》《サイファー・アルマシー》《親衛隊長、ギルガメッシュ》ぐらいしかないのも「色単体での強さ」で最下位としている理由の一つでもあります。 その一方で特定アーキタイプでは強くなるカードも多々あり、アーキタイプとしての完成度を高くできる点は評価できます。 先述した通り、アーキタイプとしての完成度が重要になってくるというわけですね。 その上でカードパワーの高いアンコモンやコモンを色ごとに簡単にまとめていきます。 パックの前半~中盤辺りに流れてきたら取るカードTOP5 前半はアンコモンを中心に、このアンコモンが枯れてくる中盤でコモンをTOP5形式で見ていきます。 左から点数および優先度が高い順となっています。 ▶白 いずれもまっすぐ殴っていくという方向性で統一感があり、これによってデッキの完成度が高くなりやすい利点があります。 先手環境でもあるためテンポよく攻めていける白が一番強いという見方もありますね。 《白聖石》はパーマネントを追放しつつもアーティファクトシナジーを満たし、さらにマナも産み出すトップコモン。 《「白魔術士」の杖》も2マナながら+1/+1修正とタフネスも上がるため、1/1に止められない点が素晴らしいですね。 《「竜騎士」の両手槍》は全アンコモンでもトップクラスの強さ。17landsではなんと61.6%とレア並の勝率が出ています。 2/2/1飛行でありながら後から出たクリーチャーにも+1/+0と飛行をつけることでフィニッシャーに様変わり。先述してきたように飛行が強い環境であるため、この装備品の価値も大きく上がっています。 ▶青 《サハギン族》と4マナ以上の非スペル、クリーチャー+《チュートリアルバトル》との組み合わせなど青単色内で完結する流れが多いため完成度が高くなりやすいのが利点です。 個人的に生物の質が環境に合っている上にアドバンテージも取れ、カウンターもありと器用に対応できるのもあってかなり好きな色です。 青の2/1/3はリミテでよく見かけて大体弱い傾向にありますが、今回の《サハギン族》は別格。17landsでは58.4%と非常に高い勝率を誇っています。 先述した通り2マナ域のクリーチャーはほぼ受け止められるため、2/1/3というスタッツが環境的に良いというのがまず挙げられますね。 《サハギン族》を複数拾えている場合、4マナ以上の非クリーチャー呪文の点数は大きく上がるのでここの繋がりは是非意識しておきたいところですね。 《迷惑なタコ、オルトロス》は《氷魔法》の4マナモードと組み合わせることで2枚ブロッカーをどかせる押し付け最強カードです。 デッキの中核としても働くので見かけたらピックしておきたい一枚ですね。 ▶黒 除去が強く、アンプレイアブルなカードが他の色と比べて少なく安定しているのが特徴と言えます。 ちなみにコモン・アンコモンの勝率TOP5が《サブクエスト:モブハント》《セフィロスの介入》《ビッグブリッジの死闘/致命的な一押し》《ヴェインの鬼謀》《黒魔道士の襲撃》と全て除去となっています。 《ヘクトアイズ》については《「黒魔術士」の杖》・《隠された真実》・《神羅の援軍》などと悩みましたが、ディスカードによる安定したパフォーマンスと生贄に捧げやすい点で5番手としました。 《サブクエスト:モブハント》は特に強力で、確定除去のオマケに宝物トークンを産み出しつつ、3個になると5/6のフィニッシャーに様変わり。1-1でも強いレアがなければピックするレベルです。 ▶緑 上で紹介したような単色内で完結するシナジーや強力な動きがないため、コモン・アンコモンだけで入るような色ではありません。 緑の強い動きとしてはマナサポートで補助しつつランプ先を用意するようなイメージです。ですのでレアから入るのがよいように思います。 そういう意味では戦略と噛み合っている青緑、緑黒は割と強めな印象がありますね。 《チョコボキック》はキッカーで二倍のダメージを与えられる点、上陸シナジーとも噛むなどの複数の要因によってトップコモンとなっています。 《町の歓迎者》は黒緑や青緑では是非欲しい一枚ですね。 先述した通り緑はコモンやアンコモンから中核を据えるにはあまりしたくない色ではありますが、構築級の強さを持つ《召喚:フェンリル》であれば話は別です。 これが早くない巡目に流れてくるなら上は間違いなく緑をやっていないというサインになりますし、多色化によってレアの受けも広くなるためです。 ▶赤 カード単体で見ると強いカードは少なく、シナジーによって強さを発揮する事が多いです。 このシナジーを発揮してしまえば他の色のコモンよりも強い動きをする事が多く、色の相方としてはよき相棒になれる色と言えます。 《猛火のボム》に関しては青赤専用カードです。青赤では勝率59.1%と高勝率を誇りますが他の色では最高でも黒赤の53.3%と非常に極端な数字を残しています。 よってパックの後半などでこれが流れてくる時点で青赤をやっている人は少ないという情報を得る事が出来ます。(もちろん他のカードとの兼ね合いで取らなかった可能性もありますが) 逆に青赤の席に座っているのであれば、これが流れてきやすくなるのでより完成度が高くなるという好循環が産まれることになりますね。 《チョコメット》と《「侍」の刀》の2枚がかなり抜けており、これらは是非ピックしたいところです。 5番手の《魔女の野望》に関しては《猛火のボム》と同じように青赤・黒赤専用カードとなっており入るデッキは少ないのですが、これらのデッキで1枚あるだけでも太さが違うので評価をやや上げています。 ▶マルチ ほぼ全てのマルチアンコモンはアーキタイプを大きく支える性能であるため、どれも前半に流れてきたらピックしたいですね。 中でも《過激な淑女、シャントット》はレア級で別格の性能です。 1-1で普通以下のレアであればこれを取って青赤への布石を打つことも検討するレベルです。 各色の強カードについてはここまでにして、次から具体的なピック指針に移ります。 エスパーカラーを少し意識 エスパーカラーは色の強さで言えばいずれもTOP3に入ると考えており、かつこれらはアーティファクトシナジーが少しだけ繋がっている点は留意したいところです。 例えば黒ですと《ヴェインの鬼謀》《魔列車》などはクリーチャーだけでなく、アーティファクトも生贄に捧げることでボーナスがかかります。 クリーチャーとアーティファクトが両方出る装備品との相性が良いのは見逃せません。そういう意味では無色の《「モンク」の拳》は悪くないカードです。 《アルベド族のサルベージャー》もアーティファクトが墓地に行くと1点ドレインであり、サクリファイスシナジーとの相性がよい一枚です。 アーティファクト(親和)の《ヘリガンナー》を擁する青はもちろんですが、4/3/3飛行で他のアーティファクトが出るたびにルーティングをする《オートタレット・ルーク》はややカードパワーが低めなのは注意。 また、《「白魔導士」の杖》《「竜騎士」の槍》《「ナイト」の盾》といずれも強力な装備品が白には多く、意識せずともアーティファクトが集まっているというパターンが多々あります。 これらの装備品をサーチしてくる《レターモーグリ》も強力ですね。白が分かりやすく強いとされている理由もここです。 いずれのカードも「殴っていく」という一貫性があり、カードパワーに従ってもアーキタイプ毎に求められているカードが自然と集まるためです。 赤緑はボムレアを複数拾えた時以外は極力入らない 理由はシンプル、デッドカラーだからです。 17landsの統計でもダントツの勝率最下位となっています。 弱い色同士の組み合わせになり、赤緑というカラーは攻めていきたいのですが攻めるのに不向きなカードが多いというのも一つの理由でしょうか。 上陸シナジーもこれといった強力なものがなく、ただただシンプルにアーキタイプとしてのパワーが低いという悲しい理由です。 ただ《燃え上がるニブルヘイム》《原始のタイタン》といった強力なボムを複数ピックできており、かつ《チョコメット》《召喚:フェンリル》といった強アンコモンが流れてくるなど赤緑が空いているのであれば話は別。 これらのボムを強く使えるように構築していきましょう。 (大半のケースで緑青タッチ赤の方が強いという悲しい現実もありますが) 青赤は入れるなら入りたい。マルチアンコが流れてくるならピック 一方で青赤は17landsの統計でも勝率最上位となっており、入れるなら入りたい組み合わせになります。 《猛火のボム》《「戦士」の剣》など青赤では強力なものの、他のアーキタイプでは点数が落ちるカードが多いのも特徴です。 青赤・黒赤専用カード筆頭 また、赤は単体で見るとパワーが低いように見えるカードも多く、特に《狂気の嘲笑》《ラグナの記憶》《魔女の野望》といったコントロール寄りのカードは敬遠されがちな傾向にあります。(《チョコメット》《「侍」の刀》といったパワーカードは例外ですが) そうすると必要なカードが集まりやすく、結果的にアーキタイプとしての完成度が高くなりやすいのも勝率最上位である理由と言えます。 とんでもないやつら マルチアンコモンである《パラメキア皇帝》《過激な淑女、シャントット》は相当なパワーカードであり、これあるなしでは青赤としての完成度が桁違い。 1パック目の前半で流れてきたら是非ピックしたいところです。 空いている色に座るのが重要 ここで意識しておきたい事としては、アーキタイプ毎に点数が大きく変わるカードが多いということです。 先述してきた通り、今回の環境はアーキタイプ環境。 霊気走破の緑ほど突出している色もなく、いかに競合せずに完成度の高いアーキを作り上げられるかどうかが重要になってきます。 例えば1-5辺りから流れてきたパックの中で唯一の青である《チュートリアルバトル》などを取っていき、下家に対して青がないという情報を渡し続けて「俺は青をやるぞ」と色を主張することも効果的と考えられます。 もちろんこれは上家も同じことが言えます。 ここで「このカードが流れてくるなら上はこのアーキタイプはやっていない可能性が高い」と判断できるように、カード単体でアーキタイプごとの評価・点数を覚えておく必要があります。 具体的な例としては、《コヨコヨのUFO?》が挙げられます。 2/0/4飛行のタップ起動で手札の土地を出しつつ、3マナ起動で街の数と同等のパワーになるというカードです。 一見するとただの2/0/4飛行ですが、街をかき集め土地を伸ばしていって《キキルンの商人たち》《世界をめぐる旅》《心を持たぬもの、オメガ》といった街を参照する街ランプ・コントロールデッキでは点数が高いカードとなります。 2/0/4飛行の防御的なスタッツで序盤を支え、マナなしの起動能力で手札から土地をセットすることでマナ加速に貢献し、最終的には3マナの起動能力で戦力にもなる……と、街ランプ・コントロールにとってほしい要素が全て詰まっており80点~90点のカードと言えるでしょう。 一方で街参照シナジーがなく、街自体もないとなると本当にただの2/0/4飛行になってしまいます。 例えば赤白などの攻めっ気の強いデッキではほぼ0点、いわゆるアンプレイアブルなカードに成り下がります。 このようにアーキタイプ毎に点数が大きく変わる事はご理解いただけたかと思います。 ではこの《コヨコヨのUFO?》が1-8辺りで流れてきたらどうでしょうか。 街ランプ/コントロールでは評価の高いこのカードがこの巡目になっても流れてくるということは、このアーキタイプに参入している人が卓にいない可能性が高くなりますね。 これが「空いている席を見極める」ということになります。このように流れてくるカードには卓の状況という情報が詰まっていますので、意識しましょう。 よって空いた色に座りつつ、かつピックしたカードを強く使えるような構築をする事が重要という方針にも繋がると考えます。 ▼アーキタイプごとに点数が上がるカード・ゲームプランの立て方 ここではアーキタイプごとに点数が上がる、つまり評価が高くなるカード群とゲームプランの立て方をまとめていきます。 前提として、マルチアンコモンはそもそも入るので例外とします。 また、デッキリストについては基本的にミシック帯かつ7勝です。 青白 - アーティファクト・飛行ビート/高速~中速 ▶点数↑ 各種ジョブ選択装備品(特に白) 《ゲイラキャット》 《ガードスコーピオン》 《竜騎士の飛竜》 《武器屋》 ゲームプランとしては赤白ほど早くはないため中速寄りですが、主に飛行ビートによって早めにゲームをたたむ事を意識することになるでしょう。 そのため飛行系統およびアーティファクトシナジーも満たす各種ジョブ装備品の点数は高めになってきます。 《ガードスコーピオン》も地上を止めつつ、アーティファクトシナジーも満たすので《ゲイラキャット》との相性は〇。 そういった意味でも継承史カードですが《帝都アルケイディス/前兆の壁》も地上の壁として相性がいいとも言えます。 《武器屋》もこのアーキタイプとは相性がよく、上記の装備品を1マナで飛行につけて殴っていくというプランを取ることができます。 《独創的な革新者、シド》をピック出来ている場合、常在効果を活かすために対象となる英雄トークンを出すカードやアーティファクトクリーチャーの点数が高くなりますね。 これも各種ジョブ装備品で英雄トークンが出るため、やはり装備品を集めていきたいという話になってきます。 また、《武器屋》は《独創的な革新者、シド》との工匠シナジーも存在するので忘れないようにしたいところです。 ちなみに継承史の《第三の道のロラン》《最高工匠卿、ウルザ》も実は工匠だったりします。 再現性は皆無に近いですが、万が一揃ったなら紙で気づく方は皆無と言ってもよいです。ドシャクりましょう。 青黒 - コントロール/中速~低速 ▶点数↑ カードパワーが高いカード全般 身も蓋もないかもしれませんが、事実です。 青黒に関しては明確なシナジーはなく、青と黒の強カードをかき集めた結果強い青黒が出来上がるという印象が強いです。 下記にミシック帯7勝リストを並べると共に、シナジーも記載します。 ★テンポ型・《サハギン族》《迷惑なタコ、オルトロス》+4マナ以上非クリーチャー呪文・《サハギン族》《イル・メグのピクシー族》+《チュートリアルバトル》 ★低速寄りの中速型・《「黒魔術士」の杖》が重なった上で優秀なスペル群が揃う ★低速型・カウンター・除去と街を集めて《世界を巡る旅》のコントロール+ボム このように強いカードをかき集めるだけでなくシナジーを発揮させつつ、どういった速度感やゲームレンジで行くのかを意識しながら構築されているのが分かるかと思います。 ピックしていく上でアーキタイプが目指すゴールが定まっていない分、ある意味では腕が一番問われるアーキタイプなのかもしれませんね。 青赤 - 4マナ以上非クリーチャー呪文/中速~低速 ▶点数↑ 《猛火のボム》 《サハギン族》 《戦士の剣》 《幻獣を奪取せよ》 《山チョコボで冒険》 《ラグナの記憶》 《狂気の嘲笑》 《魔女の野望》 《緊急脱出》 青赤は4マナ以上非クリーチャー呪文によって強化する《猛火のボム》《サハギン族》が欲しくなってきます。特に青赤濃厚時の《サハギン族》は早めの巡目でもピックを検討するレベル。 2/1/4で相手を止めやすい《ガードスコーピオン》も個人的には評価が高いカードです。 それから4マナ以上非クリーチャー呪文の要件を満たしつつクリーチャー枠にもなれる《戦士の剣》《幻獣を奪取せよ》《山チョコボで冒険》も青赤では点数が高くなりますね。 特に《幻獣を奪取せよ》《山チョコボで冒険》はフラッシュバックもあり、1枚で2枚分のクリーチャーかつ4マナ以上の誘発を2回させることができ、青赤で使った時の強さはコモンとは思えない性能です。《山チョコボで冒険》についてはそもそもカードが強いですが。 使いやすいドローソースである《ラグナの記憶》はもちろん、他のデッキではあまり入らない《狂気の嘲笑》もフラッシュバックで4マナ以上の要件を満たします。 ルーティングも青赤に多いフラッシュバックを持つカードを捨てるとアドバンテージにも繋がるので他のアーキタイプよりも強く使う事ができます。 《魔女の野望》は青赤以外だと黒赤しか使わないカードですが、フラッシュバック持ちであれば追放されたソーサリー・インスタント呪文も回収することができます。 自身もフラッシュバックを持つためこれで得られるリソースは凄まじく、中盤~長期戦にかけて4マナ以上の非クリーチャー呪文を連打していけるため青赤とかなり噛み合っています。 ブチヂレると普通にパワー7とかで殴る ゲームプランとしてはまず《猛火のボム》《サハギン族》《パラメキア皇帝》《過激な淑女、シャントット》などの4マナ以上の非クリーチャー呪文でボーナスのかかるクリーチャーを展開していく事になります。 そこから《緊急脱出》《氷魔法》《雷魔法》といった4マナ以上の除去でボーナスを達成しつつ殴っていくという流れが多くなりますね。 この動きを補助するリソースカードも欲しく、先述した《ラグナの記憶》《狂気の嘲笑》の他にも3マナですが《猛火のボム》《サハギン族》などとの相性がいい《チュートリアルバトル》もあるとなおいいですね。 これらの動きをしていくためには土地が4枚以上であることは必須であり、その点《山チョコボで冒険》は山サーチによって確実に土地を伸ばせるので青赤が最も強く使えるカードと言っても過言ではありません。 クリーチャー・スペルの質もさることながらフラッシュバックも多いためマナフラッド・長期戦にも強く、総じてアーキタイプとしての完成度が高い色と言えるでしょう。 個人的にはこの青赤がトップティアと考えています。 青緑 - 街ランプ/低速 ▶点数↑ 各種街土地 《キキルンの商人たち》 《世界をめぐる旅》 《パシュハウ沼のグゥーブー》 《コヨコヨのUFO?》 《地平線への到達》 《光曜の指輪》 各種除去 《ガードスコーピオン》 《バラムのアルケオダイノス》 《闘技場のベヒーモス》 各種ボムレア 街土地および街シナジーカードは当然ながら、序盤を支えるカード群および土地を伸ばした先のゴールは必須と言えます。 特にゴール部分がないと画竜点睛を欠くと言っても過言ではありません。少なくとも3枚ほどのゴールがあるとよいでしょう。 街土地によって多色化は容易なため、流れてきたボムレアたちをありがたく拾っていきましょう。色が合わなくてもライブラリーをサーチするマナ加速などで必要な色を揃えればいい話なので拾いましょう。 また、他のアーキタイプでは点数が低くなる《天晶堂に向かうプリッシュ》《地平線への到達》《光曜の指輪》は青緑であればゲームプランを成立させるマナ加速になります。《ブリッツボール》もいいですね。 《光曜の指輪》は1点支払う必要があるとはいえ、タップさせて確実に時間を稼いでくれる点も◎。 ただ、出る色も無色でカード単体としては弱めなカードではあるので23枚目の候補として考えた方がいいでしょう。 ゲームプランとしては序盤を支えるカード群、マナ加速でフィニッシャーに繋げてスケール差で勝つというシンプルなアーキタイプです。 よって《中略》といった実質除去になれるカウンターは重要ですし、《ガードスコーピオン》《キキルンの商人たち》といったタフネス4による肉壁も必要になるというわけですね。 とにかく序盤を凌いでマナを伸ばす事を意識します。マナさえ伸びてしまえば後はこちらのものです。 フィニッシャーも多種多様で、緑であれば《闘技場のベヒーモス》《心を持たぬもの、オメガ》の他にも《古代の災厄、ジェノバ》《グラディオラス・アミシティア》《スピラの罰、『シン』》《召喚:バハムート》…… 他の色ではちゃんとマナサポートがあるのであれば《イフリートのドミナント、クライヴ》《ナイツオブラウンド》あたりもいいですね。 とにかく卓にあるフィニッシャーたちをガメていきましょう。 白黒 - サクリファイス/中速 ▶点数↑ 各種ジョブ選択装備品 《魔列車》 《アルベド族のサルベージャー》 こちらはサクリファイスというシナジーが存在します。 《魔列車》や《アルベド族のサルベージャー》両方ともアーティファクトも適用されるため、1枚で2枚になる各種ジョブ選択装備品の点数が高くなります。 比較的安く流れてくる《モンクの拳》はその筆頭で、上記のミシック7勝デッキでも3枚入っています。 ただ他のサクリファイスを行うカードである《アーリマン》《ナマズオ族の商人》に関してはカード単体のパワーが低く、勝率自体も平凡です。 よって、サクリファイスに絡まず強いカードをかき集めたグッドスタッフ的なデッキになる場合も多々あります。 この場合は《プルート隊隊長、スタイナー》や《ゲイラキャット》+ジョブ選択装備品など、白単色内でも完結するシナジーを優秀な黒の除去で補助していくという動きになる事が多いです。 そういう意味では青黒と同じくアーキタイプに囚われず、柔軟にその都度のシナジーを考えていく必要があると言えます。 赤白:装備品アグロ/高速 ▶点数↑ 各種ジョブ選択装備品 《ゲイラキャット》 《さんごの剣》 《光の一閃》 《ブルメシアの竜騎士、フライヤ》 こちらはとにかく速度が命。1~2マナアクションを詰め込みつつ、《雷魔法》《白聖石》などの除去でどかしていくゲームプランを狙います。 そのため1~2マナアクションは非常に重要で、装備コストが軽く縦の打点を伸ばしやすい《モンクの拳》も立派な戦力になります。 マルチアンコモンである《ドワーフの王、ジオット》も装備品が出ることでルーティングする能力に加え、装備品自体と相性のいい二段攻撃で一点突破を狙っていくことになります。 先述してきた通り、赤のカードは攻めるカードと受けるカードで二極化になっているため、赤よりもカードパワーの高い白のカードを集めていくケースが多くなります。 そうすると優秀な白のカードをかき集めた上で、《雷魔法》《「侍」の刀》など赤の強いカードをつまんだタッチ赤のような形になりやすいアーキタイプでもあります。 上記の7勝デッキなどはほぼ白のカードになっているのでわかりやすいですね。 特に白のジョブ選択装備品は優秀なものが多く、ピックすることが多くなることから自然とアーティファクトの数が増えるため、《ゲイラキャット》の点数も同様に上がっていきます。 速めの決着を目指すゲームプランとも合致していますが、赤白に限らず白中心にピックを進めている時は《ゲイラキャット》も拾っておく意識をしておくとよいでしょう。 緑白:横並べ/高速~中速 ▶点数↑ 《アーロンの鼓舞》 《召喚:チョコボ&モーグリ》 《魔導兵器の歩兵》 マルチアンコモンへの依存度がかなり高いように感じます。7勝デッキを見てもいずれもマルチアンコモンがほぼ入っていました。 逆に言ってしまえばマルチアンコモンが無いとあまり勝たないアーキタイプとも言えそうです。 《魔導兵器の歩兵》《エアリス救出作戦》などで展開しつつ、《リノア・ハーティリー》や《召喚:チョコボ&モーグリ》で横並べ戦術を後押しする形ができるとよいでしょう。 そこに《アレクサンドリアの王女、ガーネット》で《召喚:チョコボ&モーグリ》《召喚:デブチョコボ》を使いまわすコンボも組み合わせると完成度が高くなりますね。 例にもれず、白を中心に集めていく中で緑の強い所だけ入れるという形になりがちです。白の優秀さがよくわかりますね。 赤緑:上陸/中速 正直組んだことがないので何とも言えません……申し訳ございません。 上陸シナジーカードは正直弱く、赤と緑がガラ空きで強いカードを集められた結果勝てるというようなデッキが多いように見受けられます。 7勝デッキを見てみてもアーキタイプとしての完成度はそこまで高くなく、レアのカードパワーで押し切っているというような印象が強いです。 上記にも記載した通り、複数のボムレアを引いて空いているなら仕方なく入るぐらいの立ち位置と考えます。 その場合はちゃんと強いカードをかき集め、グッドスタッフ的にするか街を集めて街ランプといった形になるかと思います。 黒赤:黒魔導士バーン/中速 ▶点数↑ 《「黒魔術士」の杖》 《黒魔道士の襲撃》 《黒魔紋の力》 《ミシディアの長老》 《魔女の野望》 黒赤は独特な組み方となっており、ウィザード・トークンを中核としたバーンチックな構築にすると勝率がよくなる傾向にあります。 ウィザード・トークンによるバーンダメージによって試合を速やかに終わらせることができるのが大きな理由と考えられます。 上記のミシック帯トロフィーデッキでも《「黒魔術士」の杖》4枚、《ミシディアの長老》3枚、《黒魔道士の襲撃》1枚で8枚もあります。 これに加えて屈指のボムである《ジェノムの魔術師、クジャ》もあり優秀な除去も山ほどあるため黒赤の到達点と言えるでしょう。 このウィザード・トークンを出す《「黒魔術士」の杖》、《黒魔道士の襲撃》《ミシディアの長老》などはいずれもコモンであり、黒の席に座れると自然と集まりやすいです。 《黒魔道士の襲撃》でダブルシンボルが多くなるので黒を中心にピックしつつ、赤の強いカードをつまんで黒タッチ赤というような流れが理想的と言えそうですね。上記のミシック帯トロフィーデッキはほぼ黒単ですね。 サクリファイスが多いため、通常であればアンプレイアブルな《予想外のお願い》が強く使えるデッキとなっています。 ゲームプランとしてはやはり《「黒魔術士」の杖》や《黒魔道士の襲撃》などから出てくるウィザード・トークンによるバーンダメージを活かしたダメージレース。 重なれば重なるほど強くなるため、これらウィザード・トークンを出すカードの点数は高くなっていきます。 もちろん誘発させるためのスペルも重要で、そういう意味では後続のスペルを引き込みつつウィザード・トークンも出す《黒魔紋の力》も黒赤にピッタリな一枚です。このターン限定とはいえ絆魂もつくためダメージレースに貢献するのも◎。 ほぼ青赤・黒赤専用カードである《魔女の野望》も《黒魔道士の襲撃》や《黒魔紋の力》などを使いまわしたりと強く使える一枚となっています。 ウィザード・トークンを出しつつ、相手の脅威を優秀な除去で対応しながらバーンダメージでダメージレースを制しましょう! 黒緑:墓地利用/中速~低速 ▶点数↑ 《町の歓迎者》 《神羅の援軍》 《戦うものたち》 《邪悪の再覚醒》 《ダイヤウェポン》 こちらは墓地を肥やしつつ、回収やリアニメイトもこなす墓地利用デッキでグッドスタッフ的な面もあります。いつもの黒緑ですね。 特にマルチアンコモンの墓地にあるパーマネント分-X/-Xの除去を内蔵している3/3飛行の《暗闇の雲》はアンコモンの中でもトップクラスの勝率で下手なレアより高い60.2%を記録しています。 《「無」の暗黒魔道士、エクスデス》も墓地のパーマネントを参照する変身持ちであり、変身も終了ステップの開始時と即効性があります。3点のライフゲインも非常に頼もしく、勝率58%と高めの勝率です。 これらマルチアンコモンとの兼ね合いもあり墓地を肥やすカード全般の評価が高くなり、これに伴い墓地を回収したり利用するカードの評価も同時に高くなっているというわけですね。 黒緑の理想形としては《町の歓迎者》《神羅の援軍》の墓地肥やしに加えて《召喚:フェンリル》といったマナ加速がありつつ、《簒奪者、アーデン》といったド級クリーチャーを安定して唱えることもできるデッキでしょう。 墓地に落ちてしまってもリアニメイトの《邪悪の再覚醒》、墓地回収の《戦うものたち》で利用できると隙が無くなります。 《簒奪者、アーデン》ほどのボムがなくとも《闘技場のベヒーモス》《モルボル》でもいいわけですし、優秀な除去で脇を固めるとより盤石なものになります。 黒が誇る質の高い除去で相手の攻めを挫きつつ、デカブツで押し切る。まさしくグッドスタッフです。 ▼Tips 《ゼル・ディン》《チョコボキック》《ロザリアの心、アンブロシア》の土地を戻す効果で再利用 《ゼル・ディン》《チョコボキック》《ロザリアの心、アンブロシア》は土地を戻す効果を持ちます。通常ならばデメリットとなる効果ですが、各種出来事土地および《冒険者の宿》を戻すことで再利用することができます。 特に緑の《古の大都市、ザナルカンド》は6/6以上が確約されており、強力な組み合わせとなっています。レア同士ですが《ゼル・ディン》で毎ターン唱えたら勝ちますね。 《ゼル・ディン》によって《冒険者の宿》で毎ターン2点ゲインするのも強力です。 《グルメなク族、クイナ》のトークンは他の効果で育つ 《グルメなク族、クイナ》によって出るカエルトークンは《古の大都市、ザナルカンド》《幻獣を奪取せよ》によって+1/+1乗る効果が適用されます。 《古の大都市、ザナルカンド》《幻獣を奪取せよ》は「クリーチャー・トークン1体を生成する。それの上に+1/+1カウンターを置く」という説明文になっています。 《グルメなク族、クイナ》による置換効果により、「トークン1体と1/1のカエル・クリーチャー・トークン1体を生成する。それの上に+1/+1カウンターを置く」という効果になり、カエルトークンにも+1/+1が置かれるというわけですね。 特に《古の大都市、ザナルカンド》とは緑単色での組み合わせになるため、覚えておいて損はないです。 《モーグリの商人、スティルツキン》のあれこれ 自分がコントロールしていてこれでないパーマネントを相手に押し付けることで1ドローする効果を持ちます。 これについて直感的でない結果になる事もあるので下記に記載します。 1.戦闘時、ブロッカーを対象に起動 →戦闘自体がなかったことになり、そのまま相手のコントロールになります。 例えば4/4に対して1/1でチャンプブロックした後に対象にすると、その1/1は倒されずに相手の盤面に移ります。 2.対戦相手がコントロールしているものを対象とする除去に対応して起動 例えば《白聖石》でこちらのクリーチャーを対象にされ、それにスタックで起動するとそのクリーチャーは相手のコントロール下へ移ることになります。 その後《白聖石》の誘発を解決することになるのですが、この時点で「対戦相手がコントロールしているパーマネント」ではなくなり、対象不適正になるため追放されません。 《召喚:蛮神ガルーダ》も「対戦相手がコントロールしていてタップ状態であるクリーチャー」なので同じ結果になります。 強いクリーチャーだとそのまま敗北に直結することもあるので、その際は大人しく除去された方が正解なパターンもあります。気を付けましょう。 《シーンドライブ、ライトニング》の2倍ダメージは次ターンまで持続する 実はこのターン中ではなく次のターンまでです。 なので相手のターンでこちらがブロックしてもダメージが二倍になります。とんでもない強さ、さすがライトニングさんだぜ! ちなみにこれに二段攻撃を付与して2回ダメージが通ると2倍の誘発が2回発生し4倍になります。 《マザークリスタル、ハイデリン》の破壊不能付与効果は次ターンまで持続する 《星の意思、ヴェーネス》が裏返った《マザークリスタル、ハイデリン》は+1/+1を乗せつつ破壊不能を一時的に付与する効果を持ちます。 こういった効果は「ターン終了時まで」であることが多いのですが、実は次のターンまで持続します。なので破壊不能のブロッカーとして立たせておくことも可能になります。 私はこれに気付かず破壊不能のブロッカーにやられた経験があります。テキストはちゃんと読みましょう。 《ザックス・フェア》はカウンターだけでなく装備品もつける 例えばこちらのクリーチャーの数が多く、かつ+6/+6ほどになっている《「機工士」の装備》があるといったパターン。 この時に《ザックス・フェア》に装備させ、全員で攻撃した後に《ザックス・フェア》を生贄に捧げる事でブロックされなかった方に《「機工士」の装備》を付け替えてリーサルというケースがあります。 これもテキストを読めば済む話ではあるのですが、こういったテクニックは覚えておいて損はないでしょう。 《キスティス・トゥリープ》はインスタントタイミングでも墓地からソーサリーを唱えられる 《リミットブレイク:ヴィセント》などでインスタントタイミングでETB能力を発動させると、インスタントタイミングであってもソーサリーを唱える事が出来ます。 《ヤ・シュトラ・ルル》によるブリンク効果でも同様ですね。 《光の召喚獣、バハムート》3章の破壊効果を対象不適正にすると戦場に戻らない 3章の効果は「パーマネント1つを対象とする。それを破壊する。これを追放し、その後、これを戦場に戻す」。 対象となったパーマネントを破壊などで対象不適正にすると追放する効果まで解決されず、戦場に戻りません。 その後に《光の召喚獣、バハムート》は3章になったことから英雄譚の状況起因処理によって生け贄に捧げられ墓地に行くことになります。 変身されて3章まで行っている時点でほぼ負けのようなものですが、3章を対象不適正にすることで勝ちそうな場面もあるかもしれないので覚えておいて損はありません。 《SeeDの傭兵、スコール》と《ブリッツボール》 《SeeDの傭兵、スコール》に二段攻撃を付与し、1回目の戦闘ダメージを与えた際の誘発にスタックで《ブリッツボール》を生贄に捧げる事で誘発解決時に《ブリッツボール》を戦場に戻す事が出来ます。 その後二段攻撃による2回目の戦闘ダメージを与えた際も同様に生け贄に捧げる事で再度戻り、0マナ4ドローというとんでもない動きをします。 ここからさらに生け贄に捧げれば6ドローになります。 スコール、ビサイド・オーラカに入らないか? 《「黒魔術士」の杖》を絆魂クリーチャーにつける 「あなたがクリーチャーでない呪文1つを唱えるたび、このクリーチャーは各対戦相手にそれぞれ1点のダメージを与える」という効果を持つため、絆魂クリーチャーに装備すると1点飛ばしつつ絆魂によって1点回復します。 《エアリス・ゲインズプール》《白魔導師、ミンウ》などの組み合わせは意識しておきたいところですね。 おわりに 長くなってしまいましたが、以上となります。 本当に楽しい環境なので本記事をご参考にいただき、ドラフトをお楽しみいただけると嬉しいです!
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『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』リミテッド簡易ガイド&PTQレポート
こんにちは! ゆうやん(@yuyan_mtg)です。 先週末はラスベガスで行われていたMagic Con ラスベガスに遊びに行っていました! ファイナルファンタジーでいまだかつてない盛り上がりを見せたMagic Con。今回の目的は何と言ってもプロツアー予選です。 通常、プロツアーに参加するためにはチャンピオンズカップファイナルで上位入賞するか、もしくはスポットライトシリーズでのトップ8入賞しかありませんが、Magic Conで行われる予選は、突破すればそのままプロツアーの権利を獲得できます。 そしてプロツアー予選のフォーマットはファイナルファンタジーによるシールド&ドラフトというわけで、プレリリースから全力でファイナルファンタジーリミテッドに取り組んできました。 というわけで今回は、ファイナルファンタジーのシールド、そして本戦のお話となります。 目次 シールドあれこれ 本番:シールド ドラフト方針 本番:トップ8ドラフト おわりに シールドあれこれ ■除去が最重要 ファイナルファンタジーにおけるシールドで最も重要なのは除去です。 一部のアンコモン・レアにとんでもないカードが複数存在し、それを除去できなかった瞬間に即敗北となってしまうので、除去が少ないデッキはそれだけで勝ちぬくのが難しくなってしまいます。 例外として、非常に速い白系デッキが組めた場合のみ、除去ではなく《独りじゃない》といったコンバットトリックスペルのみで乗り切ることは可能ですが、シールドでそこまで極端な速いデッキを組むことはまず難しく、現実的ではありません。 コモンで最も強い除去は《雷魔法》、次に《セフィロスの介入》です。 《雷魔法》は4マナで唱えた時の4点で5マナ域ぐらいまでのクリーチャーをほぼ対処できつつ、序盤に出てきたクリーチャーにも使えるので、最強の除去です。 赤は《メテオストライク》《世界を引き裂く光》とプレイアブルな除去が3種あるのが嬉しい。どれもシングルシンボルなので赤をタッチすることもしばしば。 《セフィロスの介入》は《バラムのアルケオダイノス》といったタフネス5以上の強力なカードを倒せるので、決して《雷魔法》と比べて見劣りするわけではありません。万能除去はいつでも正義。ただ次点の《ヴェインの鬼謀》が少し使いにくいのが難点です。 アンコモンまでいくとただただ強い《サブクエスト:モブハント》が使えます。《セフィロスの介入》もやはりシングルシンボルなのでタッチしやすい。《オーバーキル》もぜひタッチしたい1枚。 今回は白の除去も充実しています。白の《白聖石》は万能除去だけでなくマナ加速にもなり、これが地味にうっとうしい。《白聖石》を出した後の1マナで《独りじゃない》などを構えれば、除去+コンバットトリックで2アクションを取ることができ、不利な状況をまくれます。 攻撃クリーチャーには3マナで使える《天陽の繭の最期》も殴り合いでは3マナの除去、普通に使っても5マナの万能除去と及第点。そして最近よくあるクリーチャー分ダメージを与える系の除去ですが、《光の一閃》は装備品もカウントするので、明らかにこれまでとは一線を画した強さ。ジョブ選択で2点分を稼げるので想像よりずっと使いやすいカードです。白が強い所以は除去の豊富さにあります。 緑は唯一コモンに除去が《チョコボキック》しかありません。性能としては申し分なく、チョコボたちが土地を置くたびにパワーが上がる上陸能力を持っているので、キッカーがメリットに働くこともしばしばあります。シールドの緑は他の色で除去を水増しして戦うのが基本となります。 そして今回は青に除去が多い!《祈り子の間での捕縛》はインスタントかつほぼ万能除去。《過激な淑女、シャントット》や《SeeDの傭兵、スコール》など、一部タップ除去ではダメなカードもありますが、大体のクリーチャーを無力化してくれます。 今セットはジョブ選択の英雄トークンを出し合うことが多いので、バウンスの価値が非常に高い。そのため《氷魔法》は割と2マナの除去として機能します。 ジョブ選択の装備品は2マナ2/1、3マナ3/2といった標準サイズで出てきて、その代わりに装備コストが重く設定されています。序盤にバウンスで英雄トークンさえ対処すれば、中盤以降まで装備品は何もしないので、実質除去なのです。 このように緑意外はコモンに2種以上除去が用意されているので、まずは最も除去の使える2色、ないし3色を組むのが基本です。 ■色のタッチ 《要衝の村》や各種コモン土地、そしてアーティファクトの《ブリッツボール》《ワールドマップ》で3色目まではそれなりにタッチ可能です。 緑ならば《天晶堂に向かうプリッシュ》がコモンにあるので4色なども一応検討可能。青緑に赤い除去をタッチしながら、爆弾レアである《スピラの罰、『シン』》を入れるといった場合に4色になりますね。 とはいえ、基本は2色か3色目をタッチ程度で済ませるのが無難です。前述の通り除去自体はかなり重要なので、2色で綺麗に組めたとしても、除去が少ないと感じたらタッチを検討しましょう。今回は本当に除去が大事です。 ■環境の速度 シールドは環境によっては1ドロー分のオマケがつく後手を取ることもありますが、今回は先手を取った方が良いです。速度が速い…というより、それなりに速いデッキを組むことができるためです。 白系はコモンのジョブ選択で序盤から圧力をかけてきて、2種のコモン除去でバックアップしてきます。相手が白ければそれなりの速度で攻めてくるので、後手を取る余裕はありません。 2ターン目からクリーチャーが出てくることが多く、ブロッカーを出しておきたいので、2マナ域は少し厚めに確保したいところ。5枚は欲しいですね。ジョブ選択のサイズが2/1か2/2なので、1/3や1/4の価値は高く、《サハギン族》や《ガードスコーピオン》は序盤を支えてくれます。 これらのクリーチャーは後半にサイズが上がるので、ジョブ選択の装備品たちが後半に1体のクリーチャーについた時でも相打ちやブロックが行えます。そういう意味で強いのであって、サイズが上がらない1/3や2/3にはさほど価値はありません。ここは勘違いしないでください。 序盤戦をクリーチャー同士の相打ちでとどめ、相手のアンコモン・レアを除去で対処しつつ、こちらのアンコモン・レアで勝利しましょう。 ■飛行対策 今回はとにかく飛行が止まりません。コモンに《東アルテパ砂漠のサボテンダー》《「吟遊詩人」の弓》しか到達がないので、上が本当によく通ります。 《イル・メグのピクシー族》は出てきたらすぐに除去したいクリーチャーで、《ゲイラキャット》は3マナ3/3飛行とかなり強く、《竜騎士の飛竜》も十分強い。《ゲイラキャット》《竜騎士の飛竜》に装備品をつけて殴ってるだけでゲームが終わることもしばしば。 なので《「吟遊詩人」の弓》は強力で、《劇場艇の墜落》もメインに入れましょう。《メテオストライク》もそうですが、アーティファクト破壊は《白聖石》も割れるので、白相手には特に強いです。 青は除去2種に、飛行も《竜騎士の飛竜》《オートタレット・ルーク》とコモンだけでしっかりと強く、攻守に渡って優れた強カラーです。下を《サハギン族》《ガードスコーピオン》で止めつつ飛行で殴り、高マナ域を除去してくる、お手本のような飛行ビートを展開してきます。 飛行があまりにも止まらず、緑に《「吟遊詩人」の弓》や《劇場艇の墜落》が複数枚あるのであれば、サイド後に色変えも検討しましょう。 本番:シールド めぼしいレアは《バハムートのドミナント、ディオン》のみで、除去は多少あるものの、プール自体は弱め。 こういう時に取る戦略はとにかく早く殴りきること。ゲームが長引けば相手のレアと付き合わされることになるので、そうしないために速いデッキを組んで相手を倒してしまうのです。 メインボードは赤白に行くことに決めて、除去デッキに当たった時のために、《更に闘う者達》や《黒魔紋の力》をタッチして長期戦で戦えるようにしました。 また、爆弾レアを複数枚持つ重めの相手に当たった時用の青赤も用意することにしました。2マナ域に不安のあるカラーリングでメインでは選ばなかったのですが、遅い相手に対しては高いパフォーマンスを発揮できると判断しました。 結果は6勝1敗1分で翌日の決勝ドラフトに進めることに。 プールは強くなく、5勝3敗が関の山でしたが、長期戦を見越した重い構築をしていた相手を警戒にビートで倒せました。2ターン目3ターン目としっかり動ける手札をキープしたくてマリガンをよくして、それが功を奏しました。 1敗は《バハムートのドミナント、ディオン》《バスターソード》でなすすべなく負けました。 ドラフト方針 色の強弱については赤>白>青>黒>緑で考えていて、赤が最も強く、やりたい色です。 組めたら最強の青赤、安定ビートダウンの赤白と強いアーキタイプのいずれにも赤が絡んでおり、赤黒ウィザードバーンも卓の人気度合いによっては独占できるので、PTQ突破に必要な3勝0敗を達成できる可能性が高いのが赤です。 白はコモンの2マナ域で最強格の《「白魔術士」の杖》があったり、除去が優秀で、白さえ取っておけば白青・白黒のどちらにでもいける柔軟性が魅力。もちろん赤白がやれれば最高です。 純粋な強さで言えば青は2番手におきたいところなのですが、青赤か青白以外の逃げ道があまりなく、しかもその2つのデッキでほしいカードが絶妙に違うことから、青赤を目指したピックから青白に逃げるのが難しく、それが少しネガティブな理由。《サハギン族》は青赤のカードですし、《祈り子の間での捕縛》は青白で使いたいカードです。 黒はコモンが弱いので4番手。《「黒魔術士」の杖》以外の2マナ域があまりに弱く、《セフィロスの介入》は強いですが《ヴェインの鬼謀》がイマイチなので、中盤以降に取りたいコモンがありません。 とはいえ赤黒専用パーツである《黒魔道士の襲撃》がダダ流れするような卓なら独占してすごいデッキが出来上がりますし、《簒奪者、アーデン》などの最強格のレアもあるので、やれないわけではありません。《ジェノムの魔術師、クジャ》は黒をやっていなくてもタッチで使います。 緑はコモンで取りたいカードがほとんどなく、町コントロールは成立に運が絡み、緑黒は黒側の除去がメインとなるカラーリング。積極的に緑からピックしていって参入するビジョンはあまり見えません。 と、ここまで色の好みを語りましたが、実際には流れてくる色をしっかりとやる戦略を取りました。決め打ちはせずに各色の強いカードをつまみ、そこから流れてくるであろう色に合わせていきます。 本番:トップ8ドラフト 初手で取ったのは《ブラネ女王》。非常に弱いパックで他にまともなアンコモンやレア、除去がなく、《バラムのアルケオダイノス》か《ブラネ女王》の選択でした。青赤や赤黒で使えることから《ブラネ女王》をピック。 2手目は非常に悩みました。実は今回のドラフト、両面カードは事前に卓の全員に公開されます。そして僕の上上家が《サブクエスト:モブハント》を引き、それをピックせずに流していたのです。 この状況で2手目で取れるカードがほぼ《セフィロスの介入》しかありませんでした。横には《サハギン族》。《セフィロスの介入》をもちろん取りたいが、しかし《サブクエスト:モブハント》を上家が取れば僕が黒をやれる可能性は低くなる。 かなり悩んで出した結論は《セフィロスの介入》ピックでした。上家が黒をやったとしても、逆順で黒いカードを取りつつ、それ以外ではもう1色を取り続ければ良いと判断。もし《サブクエスト:モブハント》が流れてきたら僥倖。 しかし当然のことながら《サブクエスト:モブハント》は取られ、そしてパックはひどい有様に。本当にひどいパックで、ここでは《バラムのアルケオダイノス》をピックしました。 そんなこんなで1パック目が終わった時点でピックしたカードはこの13枚(+基本土地)。友達に見せたら「これは剥いたパックですか?」と言われました。それぐらい悲惨な状況。 ただ、この時にある程度の指針は出来上がっていました。実は10手目に《ゲイラキャット》が流れてきたり、8手目で《「吟遊詩人」の弓》が拾えたりと、赤黒青に人気が集まっている傾向が見えたのです。 2パック目では《召喚:フェンリル》が登場し、喜んでこれをピック。この時に《ギサールの野菜》があり、他に緑のカードがほとんどないのを見て、これが返ってくるのを祈りながら、2パック目をスタートしました。 《白聖石》を取りつつ、《召喚:チョコボ&モーグリ》《ギサールの野菜》とピックしていき、《レポリット族の斥候》が返ってくるのを確信しつつ、白緑に突き進みました。結局《ギサールの野菜》も《レポリット族の斥候》は無事1周し、これをピック。およそ10枚のデッキに入るカードをピック出来て一安心。 そして迎えた3パック目では《バッツとボコ》が4手目と7手目で取れる幸運。元々強いカードではないので、流れてきてもおかしくないのですが、そもそも2枚出てくれたことに感謝ですね。これで不安だった除去不足が多少解消されました。 2マナ域が足りず《パシュハウ沼のグゥーブー》やほとんど誘発しない《上級建設官、スラム》を入れることになってしまったのが不安ですが、一応はデッキになった形。《雷魔法》が途中からダダ流れになっていたため、不安で仕方なかったですが。 実は1パック目で何かあるかもしれないと取っておいた《桃源郷の探求者、チョコ》も《召喚:フェンリル》のおかげで入れることができました。頭の片隅にチョコボを入れておいて本当に良かったです。 デッキはこちら。 結果は…3勝0敗でプロツアー・アトランタの権利を獲得!! 1パック目終了時点では全勝なんて夢のまた夢。デッキが完成した後も不満だらけだったので、この結果は望外。マリガンで2ターン目のアクションを求めにいって、土地のない不安のあるハンドをキープして無事引き込むなど、全体的にツイてました。 とはいえ、シールドもドラフトも練習の成果がしっかり出せての勝利で、とても嬉しいです。 しかも翌日はSecret Lair Spectacularに参加して5勝1敗で《稲妻》と《稲妻》フォイルもゲット! ラスベガス、最高でした! ■おわりに そしてファイナルファンタジーでシールドをやる機会はまだあります! 7月6日はシングルスター杯!今回はありがたいことにシングルスターさんよりご招待いただきまして、シングルスター杯に参加します! シールドを皆さんと楽しむのはもちろん、デッキ構築のアドバイスなどもしますので、当日ご参加される方はぜひお声がけください! それではまた!
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【週刊メタゲーム通信】トップ8には赤単とイゼット果敢のみ!圧倒的な強さを見せる赤たち!
こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 ラスベガスで行われたプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』! 日本のプロ、行弘 賢選手の赤単アグロさばきに感動し、そして優勝時の嬉し泣きには、見ている側ももらい泣きするなど、様々な感情をプレゼントしてくれたプロツアーサンデーでした。 今回は週末に千葉で行われるマジックスポットライトのフォーマットでもあるスタンダードの結果を、プロツアーから分析していきます! プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』 優勝:赤単アグロ2位:イゼット果敢3位:赤単アグロ4位:イゼット果敢5位:イゼット果敢6位:赤単アグロ7位:イゼット果敢8位:赤単アグロ なんとトップ8には赤単アグロ4人、イゼット果敢4人! アゾリウス全知やゴルガリ陰湿な根などの姿は一切なく、トップ8は2つのデッキタイプだけとなりました。 赤単アグロ 見事優勝を収めた行弘 賢選手の赤単アグロ。特徴的なのはメインから4枚採用されている《双つ口の嵐孵り》でしょうか。 前兆で使用することで飛行を持たないクリーチャーに5点のダメージを与えることができるドラゴン。《焙り焼き》を思い出す方もいるでしょう。 飛行に対して使用できないデメリットを除けば、2マナ5点火力となるので、非常に広い範囲のクリーチャーに対処できます。赤単が処理しづらい《ドレイクの孵卵者》や《迷える黒魔道士、ビビ》、ドメインの《ホーントウッドの大主》、《分派の説教者》に《黙示録、シェオルドレッド》などなど対象は様々です。 しかも前兆で唱えた後はライブラリーに戻ってくれるので、またドローできるチャンスもあります。 同型でもタフネス3以上のクリーチャーは処理しづらいため、相手がフルタップの隙に《心火の英雄》に《巨怪の怒り》を唱えて3/3にしておくのが定番のプレイでしたが、《双つ口の嵐孵り》の前では無力です。 他のトップ8のデッキリストを見ていると《魔女跡追いの激情》がよく採用されています。こちらも5点を与えるカードですが、攻撃クリーチャーの数だけマナが下がるカードなので使いにくいことも多く、より安定して役割を果たせるのは《双つ口の嵐孵り》だと思われます。 この部分は行弘選手のリストの大きなポイントです。今後は《双つ口の嵐孵り》がメインに4枚採用されるのが当たり前となるでしょう。 全赤単に共通しているのは、メインから《魔道士封じのトカゲ》が入っている点でしょう。 今大会ではイゼット果敢の使用率は40%を超えており、《魔道士封じのトカゲ》メインが当たり前になったのも頷けます。これまで五分程度だった相性は、《魔道士封じのトカゲ》のメイン投入で完全に赤単側に傾きました。 トップ8のブラケットが赤単4人とイゼット果敢が綺麗に分かれたため、決勝で初めて赤単とイゼット果敢が相対することとなったのですが、もしイゼット果敢と赤単が準々決勝からマッチングしているトーナメント表だった場合、上位は赤単が総なめしていたかもしれません。 イゼット果敢の人気は相変わらずでしょうが、赤単はイゼット果敢を倒す力を持っています。しかも他のマッチにおいても有利な相手が多く、赤単は非常に今強いデッキです。 本来赤単がきついはずだったミッドレンジたちが、イゼット果敢の使う《コーリ鋼の短刀》に駆逐されてしまっていることが、赤単の立ち位置を良くしているのでしょう。 今週末も赤単はベストデッキです! イゼット果敢 そんな赤単に負けてしまったものの、メタゲームに40%超えと圧倒的な使用率にしてトップ8に4人を送り込んだデッキ、イゼット果敢。 《迷える黒魔道士、ビビ》によって強化されたと言われたり、ビビ不要論も飛び出すなど、ベストなリストはどんなものになるのか多くのプレイヤーが注目していましたが、今回の結果を見て明らかなことは1つあるでしょう。 ビビはやはりイゼット果敢に必要だったのです。 2位:4枚4位:3枚5位:2枚7位:2枚 と少なくとも2枚のビビをすべてのイゼット果敢が採用しており、イアン・ロブ選手はメインに4枚採用し、デッキの軸としています。 イゼット果敢はビビを採用したことで白系デッキへの耐性、とりわけ《一時的封鎖》に対して非常に強くなりました。 《巻物変容》で《一時的封鎖》を使い回す動きをしてくるアゾリウス全知にはこれまで苦しめられていましたが、ビビの登場により《一時的封鎖》は以前より強力ではありません。《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》を止めても勝てないデッキになったのです。 また、ビビを投入することでイゼット果敢は果敢ビートダウンの一面だけでなく、コンボデッキにもなってくれます。生半可なライフゲインではビビの前では無力です。総じてイゼット果敢のデッキパワー向上の役割を果たしたのです。 《迷える黒魔道士、ビビ》以外のカードはというと、それぞれのプレイヤーは異なるカード選択をしています。《ドレイクの孵卵者》のみから、《僧院の速槍》《迷える黒魔道士、ビビ》のコンビ、更にはビビオンリーのリストも。 《僧院の速槍》を入れれば速度が上がりますし、《ドレイクの孵卵者》はミラーマッチを見据えた選択肢。ビビだけのリストには新たな装備品の《「占星術師」の天球儀》が入っており、こちらも強力。 2ターン目に置いてターンが帰ってくれば、あっという間に5/5にサイズアップしますし、ビビにつければ、呪文を唱えるたびに《「占星術師」の天球儀》とビビ自身の能力でカウンターが2つ乗るので、ビビ自体のバリューがアップします。ビビとセットで採用することになるでしょうが、爆発力はかなりのものでしょう。装備コストが軽いのも強いですね。 イゼット果敢はこれまで勝っているリストも多種多様でした。プロツアーである程度リストが固まると思われたのですが、採用カードはそれぞれバラバラです。流行している最強のデッキのリストがここまで固まっていないのは非常に珍しいですね。 その理由はひとえに《嵐追いの才能》《コーリ鋼の短刀》《食糧補充》のベースラインが強すぎることにあると思われます。これらのカード、そして果敢を引き起こすキャントリップと除去。ここが強すぎてクリーチャーの細かい採択がゲームに影響しないことも多いのです。 とはいえ、前述の通りビビはトップ8のすべてのデッキリストが採用しており、イゼット果敢に必要であることはほぼ確定したと言って良いかもしれません。 《ドレイクの孵卵者》も主にミラーマッチで強く、《巨怪の怒り》によるお手軽ドレイク生成コンボがあり、イゼット果敢がこれだけ多い状況なら3枚以上採用したいカードでしょう。 ただ、それはあくまで今週末のメタが今のままであるなら、です。 イゼット果敢と赤単の使用率はプロツアーとスポットライト千葉で変わると思っています。イゼット果敢が減り、赤単が増え、もしかすると同じぐらいになるかもしれません。それぐらい赤単はイゼット果敢に強いことがプロツアーで証明されましたからね。 そしてスポットライト千葉がオープンイベントであることも特筆すべき点です。誰でも参加することができ、参加者は1000人を超えます。プロツアーのように偏ったメタゲームになることはありません。イゼット果敢、あるいは赤単が40%になることは決してないでしょう。 それならばデッキリストにもいわゆるマイルドさが求められてくるかもしれません。《ドレイクの孵卵者》があまり効かないアゾリウス全知をはじめ、コントロールデッキへの意識を高める必要もありそうです。 そうなると再び採用されるのが《精鋭射手団の目立ちたがり》です。《ドレイクの孵卵者》と《精鋭射手団の目立ちたがり》をスプリットするリストなどは、こういった参加者の多いオープンイベントの大会で向いています。 イゼット果敢のリストを作るだけで無限に悩めてしまいますね!どんなリストが週末に勝ち上がってくるのか楽しみです。 アゾリウス全知 トップ8からは漏れてしまったものの、スタンダードラウンドを9勝1敗の成績で終えたのがハビエル・ドミンゲス選手のアゾリウス全知。 これまでのアゾリウス全知と比べてかなりリストが洗練されており、全知の完成形と言って差し支えないでしょう。 クリーチャー枠にはフィニッシャーにもなる《マラング川の執政》に加えて《フラッドピットの大主》が4枚採用されています。カードを2枚捨てて1枚捨てる能力は《全知》を捨てつつ《アブエロの覚醒》を探すのに便利ですが、3マナの重さが気になる点から、これまでは《決定的瞬間》などが優先して採用されていました。 しかし、《一時的封鎖》との相性の良さから《巻物変容》を複数枚採用するようになったことで、その《巻物変容》の対象としても選べる《フラッドピットの大主》が4枚採用されるようになったのでしょう。 《巻物変容》の強さには目を見張るものがあります。《一時的封鎖》は対イゼット果敢において完璧なカードですが、唯一の欠点は《洪水の大口へ》で手札に戻されてしまうことでした。 それを解決してくれるのが《巻物変容》です。バウンスされそうな《一時的封鎖》を《巻物変容》でちらつかせれば、《洪水の大口へ》を無効にできるのです。もちろん相手が《一時的封鎖》後に再展開してきたところに《巻物変容》を打って更に追放するのも良いでしょう。 インスタントの干渉手段が多く用意されているのも特徴的です。《エファラの分散》4枚程度にとどめるリストが多い中、《魂の仕切り》に、《喝破》《呪文貫き》と打ち消しも多めに採用しています。 《魂の仕切り》は《迷える黒魔道士、ビビ》に対処できる貴重なカードですね。全知相手に2マナ多くビビを唱えるのは死を意味するので、実質ただの確定除去なのです。 フィニッシャーにも言及しておきましょう。全知のフィニッシュ手段と言えば様々なものがありますが、このリストは《不穏な変換》になっています。 2マナの瞬速エンチャントで、そのプレイヤーの墓地の分だけクリーチャーのパワーを下げる、疑似的な除去となるエンチャント。戦場に出た時に各プレイヤーが切削を行うので、これが勝ち手段になります。 《全知》を出して《マラング川の執政》2枚と《乱動するドラゴンの嵐》が揃うと、このデッキは無限ドローになります。《乱動するドラゴンの嵐》を出す→《マラング川の執政》Aを出して《乱動するドラゴンの嵐》を戻して出し直す。《マラング川の執政》Bを出して《マラング川の執政》Aを戻すと無限無限にライブラリーを掘り進められます。 最終的に《不穏な変換》に辿り着いたら、《マラング川の執政》で《不穏な変換》を戻し続ければ相手のライブラリーは0になり、ターンを返せば勝ちというわけです。 フィニッシャー枠として、《アルケヴィオスへの侵攻》から始まり、《第三の道の創設》など段々コンボ以外での使い道があるカードが発見されてきたアゾリウス全知。ついには無限コンボ不採用のリストまで出始めましたが、今回の《不穏な変換》はかなり使いやすくてオススメです。よくこんなカードを見つけてきましたね…! 序盤に引いても除去として機能しますし、ビビのパワーを下げてマナを出させないなんてことも可能です。 《フラッドピットの大主》の採用でコントロールプランもより強固ものとなり、いよいよスタンダード三強の一角となりました。 イゼット果敢と赤単だけを意識すればよいわけではないのがマジックの難しいところですね! 週末は墓地対策もお忘れなく!
WRITER
ライター
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細川 侑也
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Akira Kobayashi
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Ryo Hakoda