前回までのあらすじ。
スポットライトシリーズ・ユトレヒトで負け散らかしたゆうやんは、他のプレイヤーたちから1週間遅れて、ようやくエリア予選に参戦するのであった。
スタンダードを学び直す
ユトレヒトのためにモダンをプレイしていたため、スタンダードはプロツアー『霊気走破』直後から追えていませんでした。
プロツアー『霊気走破』と言えばドメインのワンツーフィニッシュ、そして優勝者のマット・ナスの美しいマナベースのドメインが話題となり、直後はMTGアリーナのラダーでほぼドメインに当たるほどだったのですが、どうやら今は数が少なくなっているようでした。
その理由は赤アグロの増加とアゾリウス全知です。
赤アグロ、とりわけ赤単アグロの数がどんどん増えていったのはドメインにとって向かい風。いくら最速《永遠の策謀家、ズアー》からの大主or《力線の束縛》パンチがあるとはいえ、後手番では《心火の英雄》《多様な鼠》の4点パンチの返しに《豆の木をのぼれ》を出さなければならないので、当然有利なはずがありません。
そしてドメインキラーのアゾリウス全知もどうやら数を増やしており、この2点がドメイン現象の要因となっています。
ここでトップメタの赤系アグロを使うのが普通のトーナメントプレイヤーなのですが、僕は赤アグロが極端に苦手な人間です。
特に今の赤アグロは選択肢が非常に多く、プレイ難易度が歴代でもかなり高いデッキ。相手が除去を構えていそうなだけで《巨怪の怒り》を絶対に打たない僕には、赤アグロで抜けているビジョンがどうしても見えませんでした。
コントロールを模索する
そんな中、まず目を付けたのはアゾリウスコントロール。プロツアー『霊気走破』で9勝1敗の成績を上げ、その後もマジックオンラインで好成績を残しているデッキです。
アグロには大量の除去とライフゲイン、遅いデッキには打ち消しと《完成化した精神、ジェイス》。理論上は最強のデッキ……なのですが。
感触は非常に悪かったです。
まずビートダウンに対して本当にそこまで有利なのか疑問でした。赤アグロには《一時的封鎖》から《跳ねる春、ベーザ》と回れば勝てるものの、逆に《完成化した精神、ジェイス》や《食糧補充》を固め引くだけで一瞬で負け、サイド後は《陽背骨のオオヤマネコ》《探索するドルイド》で長期戦でも敗北してしまいます。
ディミーアミッドレンジやエスパーピクシーは、共に《一時的封鎖》が効かないアグロデッキで、ただただ不利。
アゾリウス全知にはさすがに勝てると思いきや、普通にメインのカウンターが少なすぎて《アブエロの覚醒》が通って負けたり、サイド後は《魂の洞窟》+《堂々たる撤廃者》で余裕で突破されます。
アゾリウスコントロールはダメ。しかし、《食糧補充》と《完成化した精神、ジェイス》だけは強いと感じました。
そこで次に挙がったのがディミーアコントロール。
不器用な白と違い、黒は1マナの《切り崩し》。2マナは《苦痛ある選定》をはじめよりどりみどり。《油浸の機械巨人》というアグロキラーも存在しています。
全体除去として採用している《死人に口無し》は証拠収集込みで打てば墓地の《全知》を抜いてそのままゲームに勝利できますし、アゾリウスコントロールよりも優れていると感じました。
が、やはりコントロールデッキゆえの弱点は感じました。《食糧補充》《完成化した精神、ジェイス》を引いてアグロに負けたり、除去だけ引いて全知やドメインに負けるのは防ぎようがありません。特に対ビートダウン全般に対して勝率が安定しませんでした。
エリア前日の金曜日、ようやくコントロールを諦める決心がついたのです。
困った時の神頼み
もう時間がありません。さすがにここから新デッキに着手するのは難しいので、既存のデッキからチョイスすることになります。
ユトレヒトでお遊びで回していたジェスカイ眼魔を使おうかな……とぼんやり考えていて、その時に一人の人物に連絡を取ることに。
それがあの森山ジャパンのリーダー、森山くんです。
今回チームメンバーでもある原根さんがプロツアー『霊気走破』でトップ8に入賞したジェスカイ眼魔。チーム内でこのジェスカイ眼魔を回していたのが森山くんなので、誰よりもこのデッキに詳しいはず。
ちなみに記事も書いているので、ジェスカイ眼魔について知りたい方はぜひ読んでみてください。僕ももちろん読みました。(記事はこちら)
さて、そんな森山くんもMTGアリーナ上の大会、予選ウィークエンドに出るためにスタンダードをバリバリやっているはず。プロツアー調整組かつ今もスタンダードを研究している森山くんに最強のジェスカイ眼魔を教えてもらおうと思い、連絡しました。
ゆうやん「スタンダードのデッキに困っている」と相談。
森山くん「赤系アグロ、ジェスカイ眼魔、エスパーピクシーの3択です」
ただ、そこからジェスカイ眼魔はあまりオススメしないと言われました。赤系アグロがすべて赤単になっており、グルールほど有利ではないこと、ドメインに相変わらず不利、最近多めの全知にも不利と、ポジティブな要素が少なくなっているのが主な理由のようです。
そう言われると、ジェスカイ眼魔もあまり使いたくはありませんでした。ジェスカイ眼魔はプレイが非常に難しく、まだ完璧に回せるとは言い難い。練度が高ければ、メタゲーム上多少きつくとも選びますが、今回は見送ることに。
一方、森山くんのオススメはエスパーピクシーでした。赤アグロへの勝率の高さ、そして何よりサイドボード後のゲームで強いのも魅力的とのこと。
確かにエスパーピクシーは《嵐追いの才能》《望み無き悪夢》による短期決戦から、《この町は狭すぎる》《逃げ場なし》で盤面をコントロールするなど、様々なゲームプランが取れます。サイド後は更にその戦略が徹底し、相手によって自在に形を変えて戦うことができるのです。
《食糧補充》の衝撃
エスパーピクシーを回し始めたのが20時。そこから4時間ほどして、TLにMOの強豪にしてプロツアーでも活躍している@McWinSauceことTom Whiteのプレイイン抜けのポストが現れます。
R1: GB Obliterator Fight ✅✅
— Tom White (@McWinSauce) March 21, 2025
R2: GB Mid ✅✅
R3: UB Mid ❌✅✅
R4: Mono Red ✅❌✅
First try. Went much better than losing die rolls to mono red in bo1 last week. pic.twitter.com/lrOEUDfonj
《養育するピクシー》《孤立への恐怖》以外のクリーチャーは《ベイルマークの大主》と《分派の説教者》1枚ずつのみ。《呑気な物漁り》も《悪意ある呪詛術士》も採用していないので、相手のライフを削る力こそ低いですが、その代わりに《食糧補充》でリソースを取りやすくなっています。
このリストを試してみたところ、《食糧補充》の強さに驚きました。これまでエスパーピクシーは盤面をコントロールしようにも《逃げ場なし》と《この町は狭すぎる》が揃わず、《呑気な物漁り》や《悪意ある呪詛術士》が腐る展開がよくありました。
《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》を揃えたり、《望み無き悪夢》と《養育するピクシー》を同時に手札に加えたり、除去2枚をかき集めたりなど、《食糧補充》は獅子奮迅の活躍を見せました。
花粉症で眠れなかったので朝5時まで結局デッキを回し、2時間ほど寝てエリア予選の会場である柏に向かうことに。
1時間半ほど電車に乗らなければならないので、その中でサイドボーディングと各相手へのゲームプランをじっくり考えます。
そこで《食糧補充》を抜くマッチがほとんどないことに気が付き、急遽4枚目を入れることに。箱田くん、持ってきてくれてありがとう!
エリア予選:バトロコ柏
柏で使用したリストはこちら。

先ほどのMcWinSauceのリストを少しいじりました。
《鋼と油の夢》がとにかく強く、《食糧補充》を入れる関係上、1マナを増やしたかったので、多めの3枚に。3ターン目に《食糧補充》を打つのは隙になるため、1~2ターン目に複数回のアクションを取ることを意識しました。相手の手札を枯らせて《食糧補充》を打ち、こちらは《嵐追いの才能》で《食糧補充》を再び拾って勝利。コントロールの動きに《鋼と油の夢》は合っています。
ドメインにも強く、今のスタンダードで本当に効かないのはアゾリウス全知ぐらいではないでしょうか。今のスタンダードで《鋼と油の夢》は強いカードだと思っています。
結果は
アゾリウス眼魔 ×〇〇
ディミーアミッドレンジ 〇〇
ゴルガリミッドレンジ 〇〇
ゴルガリミッドレンジ ××
ディミーアコントロール 〇〇
エスパーピクシー 〇××
赤単 ×〇〇
バブルマッチで土地に嫌われ続けて5勝2敗の13位。権利獲得者は12名。無念。
ただデッキの手応えはかなり感じたので、急遽翌日の高崎のエリア予選に行くことに。
「チケット譲りますよ!」と声をかけてもらえなかったら間違いなく行っていなかったので、本当に感謝しています。
エリア予選:コミかる高崎
リストはこちら。

サイドボードからは《一時的封鎖》を抜きました。赤単に勝つために必要なのは《一時的封鎖》ではなく《不気味なガラクタ》です。1ターン目からのダメージをちゃんと抑えれば《陽背骨のオオヤマネコ》で負けなくなります。《一時的封鎖》で1対3交換を取っても、クリーチャーたちからダメージを受けてしまうと《陽背骨のオオヤマネコ》が重くなりますからね。
《陽背骨のオオヤマネコ》は相手もダメージを受けるので、ある程度ライフを削っておけば、相手も連打できないようになります。《一時的封鎖》はこちらがライフを削る際にも邪魔となるカードで、必要ないと判断しました。
赤単タッチ青力線 〇〇
赤単 〇×〇
オルゾフピクシー 〇×〇
赤単 〇〇
オルゾフトークン ××
グルール 〇〇
ID
5勝1敗1分でエリア予選突破。バブルで土地2枚と《食糧補充》でどっちも2枚のまま止まって負けた時は「今日も終わりか」と思いましたが、最後に有利マッチで助かりました。
《不気味なガラクタ》をしっかりと引けたのが大きく、3枚にした甲斐がありました。
クリーチャーの少ない《食糧補充》型のエスパーピクシーは、アグロよりむしろコントロールで、パイオニアのディミーアヨーリオンを回している時の感覚に近かったです。
《食糧補充》の評価は、ラウンドを重ねるごとにうなぎ上りでした。序盤は相手によって除去かプレッシャー、最終的にはライフを削るためのコンボを揃えてくれる、いつ引いても強いスーパーカード!
自分のプレイスタイルに合ったデッキだったので、2日通して上手くプレイできたかなと思いますね。
攻めるカードを2枚取って突然マウントを取ったり、除去2枚をピックして場をコントロールしたりと、《食糧補充》を打って選んだ2枚が勝敗を決すると言っても過言ではありません。《食糧補充》で取るカードの選択はこのデッキの最も難しい部分の1つです。
サイドボーディングガイド
エリア予選で使用したリストのサイドボーディングガイドです。
VS 赤単、赤単タッチドルイド、グルール
基本的には除去を繰り返していくだけで相手がガス欠になり、こちらが勝利します。
サイド後は《探索するドルイド》でリソースを取って《陽背骨のオオヤマネコ》モードになってきます。ただ除去っていくだけではゲームに勝てません。
《鋼と油の夢》は《探索するドルイド》か《陽背骨のオオヤマネコ》を狙いましょう。とはいえ3ターン目まで温存して《陽背骨のオオヤマネコ》狙い撃ちといったプレイはしないでください。打てる時にしっかり打って相手のクリーチャーと交換すればOKです。
《陽背骨のオオヤマネコ》はお互いにダメージを受けるので、特殊地形が多いグルールなどは相手もまあまあ痛いです。《嵐追いの才能》《孤立への恐怖》でしっかりライフを削っていると、2枚目はともかく3枚目はほぼ出せなくなります。
また、《陽背骨のオオヤマネコ》のダメージを押さえるためにセットランドをしないプレイも重要です。が、基本は《食糧補充》を打ってそのターンにアクションをしたり、《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》ループのために、土地は置き続けたいです。あまりケアに躍起になるのも考え物です。
VS エスパーピクシー
・《呑気な物漁り》型の場合
+1《ベイルマークの大主》
+2《害獣駆除》
+2《不気味なガラクタ》
・(クリーチャーの少ない)ミラー型の場合
+1《ベイルマークの大主》
+1《邪悪を打ち砕く》
+2《害獣駆除》
+2《強迫》
+2《悪夢滅ぼし、魁渡》
-3《鋼と油の夢》
-2《勢い挫き》
-1《分派の説教者》
-1《喉首狙い》
-1《逃げ場なし》
《呑気な物漁り》型は初速が凄まじいので《不気味なガラクタ》をサイドインしてそれを殺しにいきます。序盤が落ち着いて進行すれば《食糧補充》分でこちらが有利なのは明白。
対ディミーアもそうですが、《逃げ場なし》で《悪夢滅ぼし、魁渡》の呪禁は解除されるので、普通に除去れます。
負けパターンはカワウソや1マナ域の横並びなので《害獣駆除》は有用です。
VS ドメイン
メインは除去が腐るのでどうしても落としやすく、サイド後2本を取ることになりますが、まあ難儀ですね。
ただ、《食糧補充》型になってから、ドメインのリソースを枯らせて勝つプランも可能になりました。
《豆の木をのぼれ》を《邪悪を打ち砕く》で割ったり《強迫》で落とし、《食糧補充》《嵐追いの才能》でアドバンテージを取りながら相手のリソースを枯らせにいく作戦です。
頻発はしませんが、このプランがあることを知っているかどうかだけで大きく変わるので、頭の片隅に入れておいてください。
VS ディミーアミッドレンジ
+1《ベイルマークの大主》
+2《邪悪を打ち砕く》
+1《強迫》
負け筋は《分派の説教者》が生き残った時、後は《悪夢滅ぼし、魁渡》と《永劫の好奇心》だけです。
《悪夢滅ぼし、魁渡》は《逃げ場なし》で呪禁を消して倒して、《永劫の好奇心》は各種除去を当てたり《この町は狭すぎる》でお手玉に取りましょう。
かなりの有利マッチ。
VS ジェスカイ眼魔
+2《安らかなる眠り》
+2《悪夢滅ぼし、魁渡》
+1《分派の説教者》
+1《邪悪を打ち砕く》
多分どちらもプレイが完璧だったならジェスカイ眼魔側が有利になりそうだな……となんとなく対戦してて感じるマッチアップ。1ターン目に《望み無き悪夢》で《忌まわしき眼魔》を捨てられて返しで釣られたら負けです。対戦ありがとうございました。
基本的にはこちらがコントロール側になるのですが、《灯を追う者、チャンドラ》が結構重いので、継続的に攻める手段として《悪夢滅ぼし、魁渡》を入れています。
《安らかなる眠り》を引くと楽。
VS アゾリウス/ディミーアコントロール
+2《悪夢滅ぼし、魁渡》
+2《強迫》
+1《ベイルマークの大主》
有利です。《食糧補充》でアドバンテージ負けしなくなったので、一方的なゲームになりますね。
《鋼と油の夢》は当たるところが少ないように見えますが、アゾリウスなら《精神迷わせの秘本》か《跳ねる春、ベーザ》、ディミーアは《精神迷わせの秘本》《油浸の機械巨人》に《終末の加虐者》と入っているのでそれなりに当たります。
当然スカることも多いので、打つのは先手なら2ターン目まで待ちましょう。《精神迷わせの秘本》を抜きたいので後手なら1ターン目に打ってOKです。
仮に外れたとしても、コントロール側の手札を見れることはかなり重要なので、サイドアウトしません。
VS アゾリウス全知
+2《悪夢滅ぼし、魁渡》
+1《邪悪を打ち砕く》
+2《安らかなる眠り》
+2《強迫》
メインは当然不利ですね。《望み無き悪夢》で《全知》を捨てられて終了です。ありがとうございました。
コンボが揃っていないことを祈って全力でいくだけです。
サイド後は《安らかなる眠り》が最高のカードで、《強迫》も十分です。《悪夢滅ぼし、魁渡》は早いクロックとしてサイドインしています。
《除霊用掃除機》だと《堂々たる撤廃者》で止まってしまうので、個人的には《安らかなる眠り》推しです。
従来のエスパーピクシーはアドバンテージ獲得手段がなく、《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》コンボが止まってしまう《安らかなる眠り》はデッキに入れられませんでしたが、《食糧補充》でリソースが取れるので、《安らかなる眠り》を入れても問題ありません。
《食糧補充》を入れるなら墓地対策は《安らかなる眠り》をオススメします!
VS ジェスカイ召集
+2《害獣駆除》
+3《不気味なガラクタ》
+1《分派の説教者》
《害獣駆除》に全体重が乗っかってます。《食糧補充》で引けることを祈りましょう。
《鋼と油の夢》で初速を抜くとまあまあ勝ったりします。まあまあですが。
VS オルゾフブリンク
+2《邪悪を打ち砕く》
+2《強迫》
+2《害獣駆除》
+2《悪夢滅ぼし、魁渡》
+1《ベイルマークの大主》
高崎のエリア予選で初めて当たって、不利だと感じたマッチアップ。
《巻物変容》で《ミストムーアの大主》《ベイルマークの大主》をブリンクさせたり、《望み無き悪夢》《養育するピクシー》パッケージが入ってたりします。
エスパーピクシーというデッキ、とにかく《ミストムーアの大主》がきつい。なので《邪悪を打ち砕く》で割ったり、《鋼と油の夢》で事前に落としたりしましょう。
《害獣駆除》は《望み無き悪夢》《養育するピクシー》トークンと結構並ぶので効果的。変装クリーチャーも倒せます。
《萎れ葉のしもべ》が入っているので《望み無き悪夢》はサイドアウトします。全部抜いて《分派の説教者》を入れても良いかもしれません。
上記のサイドボーディングにしてから2回ほど当たりましたが、勝つことができました。
■終わりに
悩みの種だったエリア予選も無事突破でき一安心!
明日には『タルキール:龍嵐録』の全カードが公開されるので、新しいスタンダードについてじっくり妄想していこうと思います!
それではまた!