皆さんこんにちは。
チャンピオンズカップファイナルの参加権利を獲得できるエリア予選で日本が盛り上がっていた頃、僕はオランダのユトレヒトに行っていました。
そう、スポットライトシリーズに参加するためです!
スポットライトシリーズとは、世界各地で年に数回行われる大型トーナメント。トップ8入賞者には次回のプロツアーの権利が付与される他、賞金や賞品も豪華で、かつてあったグランプリを彷彿とさせるようなイベントです。
日本でも今年開催が決定していますね。
そんなスポットライトシリーズ・ユトレヒトのフォーマットはモダン。しかもトップ8に入ればラスベガスで行われるプロツアー・ファイナルファンタジーに出場できるとのことで、日本から参加してきました!
今回はそのユトレヒトの旅行記と、モダンのデッキ選択のお話になります。
水曜日
旅の始まりは水曜日。
今回は往復7万5000円の超格安便を取ったのですが、その代わりに飛行機の乗り継ぎ時間が20時間、つまり実質1日滞在となる旅券。
なので本戦は土曜日なのですが、日本を出発するのは水曜日です。
まずは羽田空港から北京の北京大興国際空港まで4時間のフライト。
北京大興国際空港は最近できた新しい空港らしく、僕も初めて降りたのですが、非常にきれいな空港で驚きました。
面白かったのは空港の喫煙所。
他の空港では見たことのない、火をつける場所のある喫煙所でした。ちなみに火はつかなかったそうです。
空港のWi-Fiが一切繋がらないことを除けば快適で、空港から迎えのリムジンバスにより10分程度でホテルへ到着。
そこから少し歩いたところに見つけた定食屋に入ります。
久しぶりに来た北京ですが、物価は非常に安く、食べきれないほどの量が来ましたがお会計は1人2000円ほど。
ちなみに何度こちらが訴えても水とお酒の料金を請求してくれなかったので、実質0円飲み放題つき。意味がわかりませんでした。
翌日のフライトが13時からなので早めに就寝。
木曜日
北京からアムステルダム空港までは10時間と長いフライト。
しかし、あまり行く人がいないのか機内はガラガラで、僕の隣にも人がいなかったので、非常に快適に過ごしていました。
機内ではアイパッドで漫画を読んだり、携帯ゲーム機で時間を潰していましたが、スウィッチの充電が切れてしまい、残り3時間ほど手持ち無沙汰に。
そこで座席についている機械に入っているゲームを遊んでみることに。
動物を3つ並べて消すだけのゲームだったのですが、これに大ハマりし、結局気づいたらオランダに上陸していました。
入国審査で、英語を全く知らない同行者の友人が「Where?」と聞かれているにもかかわらず「サイトシーイング!」を繰り返したため、助けに入りましたが、それ以外は特に問題なく、アムステルダムに到着!
実は昨年もアムステルダムに来ているので、感動というよりは懐かしいに近かったです。
アムステルダムからユトレヒトまでは電車移動。30分ほどで到着するので、あっさりと目的地に到着。ちなみに電車の中では女性の方に「日本人ですか?」と声を掛けられました。おそらくオランダの方のはずなのに日本語が喋れてびっくりしました。
ホテルに到着すると、前日に既にユトレヒト入りしていたBIG MAGICのくーやんさんと合流し、オランダでの最初の食事へ。
前回来た時も思いましたが、オランダのご飯は全体的にヘルシー志向が強いように思えます。大体の食事にサラダがしっかりついてくるんですよね。アメリカだとセットでサラダを選ぶとデカいジャガイモがついてくるだけなこともあります。
海外名物の「よくわからないものを食べているけど美味しいからいいか」もしっかりありながら、木曜日は終了。
金曜日
本戦は土曜日からですが、会場自体は金曜日から空いています。
ヨーロッパの地域CSの予選が行われたり、ショップがオープンしていたり、まるでMagic Conのような盛り上がり。平日昼間からマジックが盛り上がっている様子に懐かしさすら覚えました。
ショップでは日本で見たことのないドラゴンシールドのロックマンスリーブが売っていました。買いました!
僕の金曜日の目的は……そう、サインです。
今回はボーダーレス諜報ランドと《空の怒り》のアーティストが来ているということで、楽しみにしていました。
特に諜報ランドはスタンダードからヴィンテージまで使わないフォーマットはないレベルのカード。サインしてもらわない手はないでしょう!
見てください!この美しいサインたちを!!
いや~。もうこの瞬間にユトレヒトに来てよかったと思いましたね。
そしてここで、僕より先に会場入りした友人から言われた言葉を思い出しました。
「木のテーブルでやらされるから、今回はプレイマットを敷いた方が良い」とのこと。プレイマットを使わない主義の僕なので、当然この旅には持ち込んでいなかったのですが、会場でそのテーブルを見て、プレイマットが必須であることを理解。
一通り会場を散策して、最も良いプレイマットを探した結果……
見つけたのは愛しの《大釜の使い魔》プレイマット!しかもアーティストブースで購入したので、サイン入りです!
これにて金曜日に会場でやることはすべて終了。大会に出ていた二人の同行者と共に夕飯へ。
夜はアップルボウルなるデザートが有名なお店へ。ユトレヒトの名物とかで、アップルパイとは一線を画すものでした。
アップルパイがパイ生地にリンゴを練り込んでいるのに対して、アップルボウルはりんごの中身だけをパイに直接投入し、それを焼いたような印象。味わいもただ甘いだけではなく、かなり好み。日本に同じ店ができたら流行るんじゃないかな?と思いました。
土曜日……の前にモダンのデッキ選択の話
▽最強のデッキと向き合う
もうすぐ禁止改訂で《死の国からの脱出》が禁止になると思うので、今回のデッキのお話は軽めです。
最強のデッキが《死の国からの脱出》《研磨基地》のコンボ、ティムールブリーチなのは最早疑いようがなくなりました。使用率1位で勝率も1位。これは最強のデッキであることの証明に他なりません。
最速2ターンキルや1ターン目《湖に潜む者、エムリー》《知りたがりの学徒、タミヨウ》などのプレッシャー連打、そしてコンボ自体は実質《死の国からの脱出》1枚コンボ。モダンでも随一の速度・安定性を誇るコンボデッキです。
ユトレヒトでも確実に使用率1位になるでしょうし、勝ち進めばどんどん当たる可能性があがってきます。そこで、ティムールブリーチに強いデッキを模索することにしました。
まずはディミーアライブラリーアウト。フィニッシャーの《死の国からの脱出》を《根絶》か《外科的摘出》して後は相手のライブラリーを削ってしまえる、いわばコンボキラーです。
エネルギーがとても苦手なデッキですが、現在は減少傾向にあり、トップメタのブリーチ、そして二番手と目されるオルゾフブリンクに強いと言われている、立ち位置の良いデッキなのです。
……と思っていたのですが、これが大誤算。そもそもメイン戦もほぼ必勝というわけではありませんでした。切削で《死の国からの脱出》が墓地に落ちてそれを《外科的摘出》すれば勝てますが、現実はそんなに甘くありません。逆に切削によって《死の国からの脱出》が落ちなければ、切削が相手の助けになってしまい、《死の国からの脱出》で一瞬でコンボを決められてしまいます。
サイド後は相手がカウンターを増やしつつ《ウルザの物語》で勝とうとしてくるので、《根絶》《外科的摘出》を増やしても意味がありません。メイン勝率こそまだマシですが、サイド後は決して相性が良いとは言えませんでした。
デッキパワー自体も高くはないので、使用は断念。
次の候補はアゾリウスコントロール。中国の地域CSで上位入賞していたリストで、こちらは《死の国からの脱出》を実質無効化できる《オアリムの詠唱》が4枚採用されています。
高い勝率を期待しましたが……やはりブリーチにはダメでした。
《オアリムの詠唱》は確かに強いですが、それはあくまで《死の国からの脱出》を止められるだけ。ブリーチは《死の国からの脱出》でコンボを決める際に全力を出してくるわけではありません。ただ《死の国からの脱出》を唱えて、それが解決すれば勝ててしまうのです。失敗した時のリスクがほとんどありません。
《オアリムの詠唱》で1ターンを稼いでも、その返しのターンでこちらがビッグアクションを取れるわけではないのです。ただ相手のコンボを防いでそれで終わりです。
ブリーチ側のリソース確保手段をアゾリウスコントロールが止めづらいのもマイナスでした。青白2色では軽い除去は《虹色の終焉》しか採用できず、とにかく1ターン目に出てきた《湖に潜む者、エムリー》が厳しい。
《湖に潜む者、エムリー》を処理できずにアドバンテージを取られ続け、《ウルザの物語》で殴られ、《オアリムの詠唱》がなければ即負け。
アゾリウスコントロール、ダメでした。
▽《オアリムの詠唱》の使い方を変える
しかし、《オアリムの詠唱》自体には可能性を感じていました。
アゾリウスコントロールの《オアリムの詠唱》が弱いのは、相手のコンボを防いだターンの返しに特に何もしないからです。要するに《オアリムの詠唱》は、ティムールブリーチ相手に弱いカードではないものの、1マナの《対抗呪文》ぐらいの強さであり、1枚で勝てるスーパーカードではなかったのです。
逆に言えば、1マナの《対抗呪文》ではあるということで、「このカードをコンボデッキで使えば良いのでは?」と考えました。
《オアリムの詠唱》を無理なく採用できるコンボデッキ、それがルビーストームです!

解説記事は以前にも書きましたので、基本的な動きが知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。
ルビーストームは2ターン目に《モンスーンの魔道士、ラル》《ルビーの大メダル》を設置して3ターンキルを目指すデッキで、ブリーチと同速度のデッキです。そしてこちらだけ《オアリムの詠唱》をメインから採用することで、後手での勝率を少しでも上げようと考えました。
リストはアメリカの地域CSのものを参考にしましたが、特に感銘を受けたのは《美術家の才能》です。
《無謀なる衝動》《レンの決意》でめくれたカードをどんどん置いていくこのデッキは、手札に不要な土地が溜まりやすいのですが、《美術家の才能》はその土地を捨ててドローできます。3マナ払えば《モンスーンの魔道士、ラル》にもなり、2つの役割をこなせる素晴らしいカードでした。
《美術家の才能》のおかげで墓地が以前よりも溜まりやすくなったので、《死の国からの脱出》も運用しやすくなりました。運悪く儀式系スペルを1枚しか引けなかった時は、《炎の中の過去》ではなく《死の国からの脱出》をサーチします。
諜報ランドの枚数は3枚になりました。基本的には2枚の諜報ランドを2ターン連続で置いて3ターン目に仕掛けていくか、あるいは諜報ランドから入って2ターン目に《レンの決意》でトップをめくっていくことになります。
そのため、3枚目は不要だと考えていましたが、サイド後は相手が《モンスーンの魔道士、ラル》《ルビーの大メダル》に対して打ち消しや除去を構えるケースが多く、ほとんどの状況で3枚目の諜報ランドをサーチしたかったのです。
3枚目の諜報ランドとして入っている《轟音の滝》は他の赤い諜報ランドならどれでも構わないです。あえて色を散らしているのは《虹色の終焉》用です。
オルゾフブリンクの出してくる《エイヴンの阻む者》があまりにネックだったので、《虹色の終焉》で対処できるよう、3色目を入れることをオススメします。
土曜日
スポットライトシリーズは6勝3敗で2日目に進出することができます。が、トップ8はおそらく2敗しか難しいので、目指すは7勝2敗、もしくは8勝1敗!
ゴルガリエルフ ×〇〇
エルドラージ 〇×〇
ティムールブリーチ 〇××
ティムールブリーチ ×○〇
ボロスエネルギー 〇〇
ドメインカスケード ××
オルゾフブリンク 〇××
オルゾフブリンク 〇〇
ティムールブリーチ ×〇×
最終成績5勝4敗で初日落ち。
バブルマッチ、ティムールブリーチに《オアリムの詠唱》で先手3キルを防ぎ、返しに3キル……で不発。その返しに2枚目の《死の国からの脱出》で負けてしまいました。
《モンスーンの魔道士、ラル》の変身後の奥義が不発だったり、《レンの決意》で何枚めくっても土地だったりと、全体的にツキに見放されていましたね。
ほぼ毎ラウンド30分ほど延長していたのが印象的でした。延長卓を見るとブリーチミラーが多く、強さとは別にトーナメント進行上の理由からも「このデッキは禁止になりそうだな」と感じました。
毎回30分押すと当然9ラウンド終了時は夜なので、この日はレストランに行かずに帰宅。
オランダに無限にあるスーパー、アルバート・ハインでハムとパテをしこたま買い込み、ホテルで爆食いして就寝。
日曜日
優勝するとアルティメットガードのスリーブが300個もらえるという面白そうなトーナメントに参加。
ドメインズー 〇〇
ボロスエネルギー ××
アゾリウスコントロール 〇××
オルゾフブリンク 〇〇
青単ベルチャー ××
鱗コンボ 〇×〇
アスモフード 〇〇
ティムールブリーチ 〇〇
5勝3敗でプライズチケットを少し獲得して終了。
2日通して負けまくってしまい、正直結構落ち込みましたね。
一方で、ヨーロッパは素晴らしいプレイヤーが多かったです。勝っても負けてもニコニコしてグッドラックと言ってくれますし、モダンのデッキもこだわりがすごくて、フルフォイルのプレイヤーもたくさんいました。
僕もイラスト違いが大好きなのですが、「君のストーム、良いアートたくさんだね」と言ってもらいました。
テキストを聞かれた三銃士がこちら。
ヨーロッパはモダンやレガシーなど、下フォーマットがとにかく人気!海外で下環境を遊びたいならヨーロッパがオススメですよ。優しいプレイヤーばかりなので、初めて海外でマジックをするのにもぴったりです!
月曜日
ユトレヒトはあのミッフィーちゃんの出身地!当然ながらお土産もたっぷりあります。
というわけで最終日はミッフィーちゃんのお土産を買いに散策。
ちなみに世界に1つだけしかない、ミッフィーちゃんの信号機もありました。
お土産コーナーには定番のぬいぐるみやクッキーなどの他、トートバッグやリュックサックなどいろいろ!
どれも可愛くてついつい散財してしまいました。
そしてランチはパンケーキの有名なお店にいきました。食べたのはこちら。
一見チヂミに見えますが、パンケーキです。日本で食べるホットケーキっぽいものを想像していたのでびっくりしましたが、味にはもっと驚かされました!美味しい!
戦いは続く
月曜日の夜の便で帰国……ではなく、そこから再び北京に向かい、火曜日は北京ダックを食べつつ、日本に帰国したのは水曜日でした。
北京ダックは動画しか残していなかったので、絶品だった水煮を貼っておきます。
安いだけで選んだ北京経由の航空券でしたが、北京はホテルもご飯も安く快適で、Wi-Fiが一切使えないことを除けば、何も不満がありませんでした。1回の旅行で2カ国を観光できてお得な気分になりました。
さて、ユトレヒトが終わっても休みはありません!僕がヨーロッパにいた週、既に日本ではエリア予選が行われていました。
1週遅く、僕もエリア予選に出始めなければならないのです。しかもフォーマットはスタンダード!プロツアーが終わった後のスタンダードは相手のデッキもプレイも強く、中々勝つのが難しい。
というわけで、次回はエリア予選のデッキ選択とその経緯に関するお話となります。
それではまた!