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【週刊メタゲーム通信】ナドゥとネクロを押さえ、ボロスエネルギーが躍動

ピックアップ

2024.07.23

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 毎週、最新のメタゲームをデッキリストと共にお届けするこの記事。今回は8月からチャンピオンズカップファイナルの店舗予選も始まる、モダンの最新メタゲームをお届け! モダンでフェアデッキを使うならこれ! ボロスエネルギー モダンチャレンジ:優勝 By TentacleFan 先週のモダンチャレンジで最もトップ8にその名を連ねたのはボロスエネルギー。『モダンホライゾン3』エネルギー関連のカードがたっぷり入り、そこに《ナカティルの最下層民、アジャニ》と《火の怒りのタイタン、フレージ》が加わったボロスカラーのアグロデッキです。アグロデッキとしてある程度の速度がありながら、ミッドレンジとしても立ち回れる、現代の強いデッキの条件をしっかり満たしたデッキ。プロツアー・モダンホライゾン3から人気のデッキでしたが、最近は《敏捷なこそ泥、ラガバン》が抜けて《オセロットの群れ》が入ったリストが主流となりました。このデッキは極端に不利なマッチアップがあまり存在しないのが特徴。モダンで最強の名を欲しいままにしているバントナドゥに少し不利なのはネガティブな要素ですが、《過酷な指導者》もサイドボードにたっぷり入っていますし、決して必敗マッチではありません。バントナドゥが他のデッキに意識されて勝ち上がってこなければ、ボロスエネルギーの独壇場。《オークの弓使い》をタッチしたマルドゥタイプのエネルギーもあり、まだまだリストも練り込む価値アリ! 圧倒的ドロー量で押し潰す黒単ネクロ 現モダン環境の三強と言えば、ボロスエネルギーの次に名前が上がるのはこの黒単ネクロ。やはり統計でもトップ8に多く入賞しています。 黒単ネクロ モダンチャレンジ:3位 By werhsdnas1414 現代に蘇った《ネクロポーテンス》こと《ネクロドミナンス》を主軸に据えたこのデッキ。《ネクロドミナンス》でたくさんのカードを引いて、溢れる手札から《魂の撃ち込み》をピッチでたくさん唱えるド派手なデッキ。《悲嘆》+《マラキールの再誕》のお馴染みコンボで相手の手札を枯らして《ネクロドミナンス》でカードを補充して勝った時には、「このデッキは最強なのでは?」と思うこと間違いなし。黒単ネクロには大きく分けて2つのタイプがあります。1つがこの比較的にクリーチャーが多めのリストで、《マルコフ家のソリン》が入っています。《マルコフ家のソリン》は《魂の撃ち込み》と非常に噛み合う1枚。即座に《マルコフ家のソリン》を変身させてくれるだけでなく、次に《魂の撃ち込み》を撃つと変身した《マルコフ家のソリン》でもう1度ダメージが入るので、実質《魂の撃ち込み》のダメージが2倍になります。2つ目は《一つの指輪》を採用したタイプ。こちらは《ネクロドミナンス》への依存度が少し下がりますが、《一つの指輪》というカードがバントナドゥに少し弱いのがネック。除去を常に構えたいマッチで4マナを寝かせるのはリスクが高く、プロテクションもナドゥに対して無力なためです。代わりに《一つの指輪》タイプはボロスエネルギーに強いのが魅力。プロテクションが刺さりますし、《ネクロドミナンス》は《天界の粛清》でも触られる一方、《一つの指輪》は《静牢》以外で対処できませんからね。《砕骨の巨人》がボロスに入っているのは《一つの指輪》意識もありますね。ボロスエネルギーとバントナドゥ、黒単ネクロはどちらに寄せるかでリストが大きく変わってくるでしょう。 そして遅れて登場の王者、バントナドゥ バントナドゥ モダンチャレンジ:優勝 By Magicverse さあ、そして三強の最後の一人にして最高のデッキ、バントナドゥ。プロツアーで圧倒的人気アーキタイプになり、そのまま優勝。その後も様々なトーナメントで勝ち続けている、名実ともに最強のデッキです。 最強ゆえに意識されており、入賞数こそ落ち込んでいますが、それでもしっかり勝っています。プロツアーでは《タッサの神託者》不採用型が主流でしたが、マジックオンラインでは無限コンボを省略できないので、《タッサの神託者》が入っています。無限コンボは、《有翼の叡智、ナドゥ》《春心のナントゥーコ》《手甲》のセットが揃った後、最終的に《忍耐》と《森を護る者》を揃えるのですが、《忍耐》か《森を護る者》のいずれかが追放されると無限が成立しなくなるので、意外と紙のマジックでも《タッサの神託者》は役に立ちます。このリストには《邪悪鳴らし》が採用されていますが、これはプロツアーで初めて出てきたテクニック。《有翼の叡智、ナドゥ》《手甲》のどちらにもアクセスでき、トークンが《手甲》のつけ先にもなるので、《有翼の叡智、ナドゥ》コンボが成立しやすくなります。しかも墓地を肥やせるので《変容する森林》の昂揚を満たしやすいという、至れり尽くせりのカード。このリストには《変容する森林》が2枚採用されていますね。《変容する森林》は墓地に落ちた《有翼の叡智、ナドゥ》《手甲》になります。2枚採用していると特に黒単ネクロに強くなりますね。最強のデッキも日々研究が進んでいます。同型が多いと睨むならメインに《荒れ模様のストームドレイク》、エネルギーを意識するなら《陽光浄化者》。今ならメインに《陽光浄化者》かもしれませんね。 総括 モダンの三強、ボロスエネルギー・黒単ネクロ・バントナドゥがそのまま入賞数の上位3トップになりました。とはいえ、モダンはTier2以降のデッキも強力なのが特徴。ブリーチ型のトロンや無色トロン、そしてストームも虎視眈々と上位の座を狙っています。簡単に三強が三強のままでいられないのがモダンの面白いところ。勝ち組だったボロスエネルギーが来週は見る影もない…なんてこともあったりなかったり。三強デッキの中でも、何を意識するかでリストが変わってきます。ボロスエネルギーを使いたいなら、同型対策はとりあえず必須でしょう!《陽光浄化者》をたっぷり入れるのをお忘れなく。

【今週のピックアップデッキ】ホロウフェニックス/マルドゥファクト/ディミーアオーメン

2024.07.19

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 ホロウフェニックス(モダン) モダンリーグ:5-0 By CarlosMoreno かつてモダン界を激震させたデッキ、ホロウワン。1ターン目に2体の《虚ろな者》が並び、墓地から《炎跡のフェニックス》が飛び出してくるそのブン回りは、モダンが次のステージに進んでしまったことを体感させられました。そしてそのホロウワンが、新たなフェニックスと共に帰ってきました。基本構造は変わらず。《燃え立つ調査》や《ゴブリンの知識》でカードを3枚捨てて、3回捨てたことで0マナになる《虚ろな者》を高速展開していきます。今回お供となるのは《探偵のフェニックス》。手札から唱えた時は並スペックですが、墓地から証拠収集で授与した時が超強力。僅か1マナで授与でき、エンチャント先に+2/+2と飛行・速攻を付与します。瞬く間に《虚ろな者》が6/6飛行で殴ってくるのです。証拠収集6を満たすのは難しくありません。《通りの悪霊》と《虚ろな者》はいずれも5マナなので、後1マナで達成します。《太陽の執事長、インティ》もホロウワンを強化した1枚。生き残った後に《燃え立つ調査》や《ゴブリンの知識》を打ってしまえば、カードを使いきれなくなってしまうほどでしょう。《虚ろな者》にトランプルを付与できるのも地味に強力ですね。ランダムディスカードの楽しさはこのデッキの醍醐味。《ゴブリンの知識》で《虚ろな者》が手札に残り、《探偵のフェニックス》が落ちた日はあなたがトーナメントの優勝者となるでしょう! マルドゥファクト(モダン) モダンリーグ:5-0 By fayden07 『モダンホライゾン3』の衝撃凄まじく、パイオニアですら見ることのなかったエネルギーを、最早モダンで見ない日はなくなりました。そのエネルギーカードたちの中でもとりわけ注目されているのが《電気放出》。普通に使用してもインスタントの1マナ3点。もしエネルギーが3つ余っている状態で使用すれば1マナ6点と、ほぼ1マナでどんなクリーチャーでも倒せる万能除去です。《剣を鍬に》クラス。しかもエネルギーを使う手段は他にもあるので、そう考えればただの除去である《剣を鍬に》を超えていると言っても過言ではありません。その他の手段として定番なのは《不安定な護符》や《魂の導き手》ですが、このデッキでは《激震の目覚め》を更に採用しています。1マナでアーティファクトやクリーチャーを墓地から吊り上げられるソーサリー。エネルギーを消費することで、どんな重いアーティファクトでも戦場に戻せます。そして重くて強いアーティファクトと言えば?そう、《ボーラスの城塞》です。この《ボーラスの城塞》を墓地に落とす手段として《ゴブリンの技師》も採用されており、釣る気満々です。《ボーラスの城塞》でライブラリートップから呪文を唱えると《不不安定な護符》でダメージが入るため、実はこの2枚は非常に相性が良い!置いたターンにそのまま勝ってしまうかも。《激震の目覚め》は《ボーラスの城塞》を釣るコンボパーツとしての側面もありながら、普通に《オセロットの群れ》や《魂の導き手》など、残れば強力なクリーチャーを復活させながらエネルギーを供給してくれるナイスカード。《ボーラスの城塞》を置く快感は格別です。ぜひ味わってみてはいかがでしょうか? ディミーアオーメン(パイオニア) パイオニアチャレンジ:14位 By CuteChandra19 突然ですが、マジックはマナがとても重要なゲームです。呪文を打つ回数には制限のないこのゲーム。7枚の初手が配られて毎ターン1枚供給されるので、序盤から手札がなくなることはありません。しかし、置ける土地の枚数は1ターンに1度です。だからこそ、マナを生み出すカードの価値は高い。それが最序盤ならなおさら。1マナで唱えることができ、タップでマナを生み出す《ラノワールのエルフ》は古のカードですが、未だパイオニアで現役ですし、今年発売の『ファウンデーション』で再録が決定しましたが、スタンダードでもまず5年使い倒すこと間違いないでしょう。 閑話休題。 今回紹介するデッキでは、《ラノワールのエルフ》を超える1マナで破格の2マナを生み出すことのできるカードをなんと2種類使っています!まずは紹介しましょう!《お告げの行商人》です! そして《奇怪な宝石》です! 1マナで2マナを生み出せるカードといえば《太陽の指輪》。パイオニアどころかモダン、いやレガシーですら使用できない最強のマナアーティファクト。そんなヴィンテージ級のカードをパイオニアで使用できるのです。 「そもそもそんな強いカードがどうして今まで使われていなかったのか?」もっともな疑問です。よく見ると、これらのカードは自由に使える2マナを生み出せるわけではありません。2マナは呪文を唱えるためではなく、能力を起動するためにのみ使用可能です。がっかりしないでください。それならば、能力起動をたくさん行うデッキで使用すれば、実質《太陽の指輪》8枚体制のデッキということになるではありませんか。このデッキには、大量の「能力起動」のカードが採用されています。まずは《群れネズミ》。3マナ起動で手札を捨てると自身のコピーを生み出し、どんどんサイズが上がっていくカード。かつてはリミテッドで「2ターンキルカード」として有名で、スタンダードでも4枚採用されていたカードです。 この《群れネズミ》の起動を実質1マナで行うことで、増やしながら打ち消しや除去を構えることが可能となります。また、その打ち消し呪文にも一工夫が施されています。《鏡殻のカニ》は魂力で呪文や能力を打ち消すカード。そう、魂力も立派な起動型能力なので、ここにも2マナを注ぎ込めます。実質1マナで打てる《マナ漏出》です! 《勢団の銀行破り》のドローにあてたり、《サメ台風》を大きくサイクリングしたりなど、このデッキのマナの使い道は無限大! 他にも相性の良いカードがあるかも?(実質)《太陽の指輪》を使い倒しましょう!

【デッキ解説】アゾリウスファルコン(パイオニア)

2024.07.18

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今日はパイオニアで最近僕が回しているアゾリウスファルコンについて解説していきます! アゾリウスファルコンとは? 《切望の隼》と《九つの命》のコンボをメインの勝ち手段に据えたアゾリウスコントロール、それがアゾリウスファルコンです。 まずはこのコンボについて簡単に説明しましょう。《九つの命》は、受けるダメージを軽減して、その代わりにカウンターを1つ乗せるエンチャント。喰らうダメージが1点でも2点でも3点でも1つのカウンターに代わります。つまり9回ダメージを与えないと勝利することができなくなります。《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》の《霊気貯蔵器》だろうと《血管切り裂き魔》の攻撃だろうとすべてカウンター1個にとどめてしまうので、凄まじい延命手段となるカードです。 そしてその延命手段にコンボ要素を加えたのがこのデッキ。《九つの命》はそれの上に9個目のカウンターが乗ると戦場を離れ、戦場を離れた時に敗北してしまうカード。その《九つの命》を《切望の隼》で相手に渡してしまい、負けてもらおうというのがこのデッキ。デッキ構造は普通のアゾリウスコントロールですが、コンボパーツの片割れである《九つの命》が延命手段として普通に強く、《切望の隼》はリソースを取れるカードなので、どちらも腐りにくいのがポイントです。 デッキリストとカード解説 メインボード このデッキのキーカード。相手に自分のカードを渡すと、渡したカード1枚につきカードを1枚引けます。《九つの命》を渡すのが基本ですが、《海の神のお告げ》や《一時的封鎖》を渡しても良し、土地も渡せます。返しで《切望の隼》のアタックが確定しているなら、土地を渡すこともよくあります。《切望の隼》自身を渡すこともできるので、裏向きで出しておいて相手に除去されそうになった時に渡してしまえば、単純にお得です。キーカードその2。8回分のダメージを吸収してくれるナイスなエンチャント。普通に延命手段として優秀なので、コンボ関係なく強いカード。2枚引くと九つの命は十八の命になります。乗せる先を自分で選べるので、8個溜まった《九つの命》をそのままに、もう1つの《九つの命》を溜めることもできます。引くたびに命が8個増えていくので、何枚でも引きたいカード。9個目が溜まると戦場を離れる能力が誘発するので、そのタイミングで《切望の隼》を押し付ければ、相手にコントロールが移った瞬間に勝利できます。ドロースペルと言えばこれ。4マナで打った時は除去や《九つの命》を取って延命し、フラッシュバックで《切望の隼》を引き込むのが基本パターン。デッキに非常に合っているため、4枚確定のカード。《空を放浪するもの、ヨーリオン》以外のアゾリウスコントロールにはまず入っていないカードですが、主に以下の理由で採用されていません。まず通常のアゾリウスコントロールは特定のカードを引き込みたいデッキではありません。《海の神のお告げ》は手札を増やすカードではなく、デッキ内を掘り進めるカードです。欲しいカードを引きにいくためのカードです。2マナを消費してリソースが稼げない《海の神のお告げ》はテンポ損で、今のパイオニアにはあまり合っていないカードなのです。一方、アゾリウスファルコンはテンポ損を《九つの命》で取り戻すことができ、また《九つの命》を引くかどうかが重要なので、《海の神のお告げ》はデッキに合っています。《切望の隼》で相手に押し付けて1ドローできたり、《一時的封鎖》で追放しておいて、その《一時的封鎖》を《失せろ》や《魂の仕切り》することでもう1度《海の神のお告げ》を誘発させられます。2ターン目のアクションは最低限確保したいので4枚になりました。アゾリウスコントロールと違い、最終的には《切望の隼》+《九つの命》のコンボで勝つので、《喝破》をケアされたロングゲームは中々されづらく、きちんとカウンターとして機能してくれました。2マナ除去の中ではなんだかんだ一番強かったので4枚に。地図トークンは《一時的封鎖》で巻き込めばOK。あんまりそういう余裕はないですが。自分の《海の神のお告げ》を《一時的封鎖》で巻き込んでおいて、《失せろ》で吹っ飛ばしてもう1度誘発したりなど、割と便利なカード。相手のパーマネントを一時的に追放するカード。《失せろ》より範囲は広く、地図も作らせないのが強み。このデッキでは《切望の隼》で押し付けた相手のカードに《魂の仕切り》を使えるので、実質リソース手段にもなります。《切望の隼》を相手に渡して《魂の仕切り》でもう1度使い回すパターンもあります。もちろん《魂の仕切り》で追放した《切望の隼》はもう1度変装できますよ!ただの除去以外にも使い道があるので、使ってるうちにどんどん好きになりました。ドロースペルが比較的多め、環境的に《一時的封鎖》が比較的強い、《切望の隼》で押し付けられるなど、このデッキで使う《一時的封鎖》はかなり強めです。メタ次第ではメインに3枚目を入れることもあります。追加の打ち消しとして入れています。《かき消し》は犠牲コストが払えないのでなしです。3枚目を入れるかどうかはメタゲームで変わりますね。ニヴが多ければ増やします。今回の調整のポイントの1つ。普通ならば《浄化の輝き》が入っているスロットです。なぜ《浄化の輝き》なのかについては、《切望の隼》+《九つの命》で相手に《九つの命》を渡した後に、即エンチャント・アーティファクト破壊モードで相手を敗北させられるからです。しかし、《浄化の輝き》が必要なシチュエーションはそれほど多くありませんでした。後述する《アダーカー荒原》によって《九つの命》のカウンターを調整できるようになったためです。《浄化の輝き》は半分コンボパーツである全体除去として最初は好きでしたが、徐々にカードとしての弱さが気になり始めました。《血管切り裂き魔》に対して《太陽降下》と《浄化の輝き》で違いが大きすぎて、《浄化の輝き》で《九つの命》を吹っ飛ばすことなどどうでもよくなったのです。《血管切り裂き魔》を流した後に残ったライフを《変わり谷》と《目玉の暴君の住処》で削られるのがラクドス相手の負けパターン。《変わり谷》を止める培養トークンを生み出し、追放でダメージも受けない《太陽降下》は、対吸血鬼では重要。《浄化の輝き》を《太陽降下》にしたいというのが最初の発想で、そこから《アダーカー荒原》に辿り着きました。《太陽降下》にはそれだけのバリューがあります。相手に押し付けた《九つの命》を《告別》で流せば即勝利。《浄化の輝き》と同じ特殊勝利カードの1枚ですが、こちらはカードが結構強いので採用することにしました。《浄化の輝き》は劣化《太陽降下》であり、コンボパーツとしてギリギリデッキに採用できるレベルのカードでしたが、《告別》はイゼットフェニックスやアマリア相手に強烈で、重さを除けばその強さはピカイチ。その上コンボにも使えるので2枚採用しています。土地関連ではここだけ。《九つの命》を使っていてとても困ったのが、カウンターを5~6個貯めた状態で放置されることでした。さっさと8まで溜めてくれれば、《切望の隼》を出して渡して、返しで勝てるのに、相手は中々そうはさせてくれません。少ないカウンターの状態で相手に渡すには《浄化の輝き》か《告別》が必要になりますが、そもそも全体除去をそこまで温存できるわけではありません。それに《浄化の輝き》は《太陽降下》と比べて弱すぎるそこで、能動的にダメージを食らって《九つの命》のカウンターを調整できる《アダーカー荒原》を入れてみたところ、これが驚くほどジャストフィット。《切望の隼》と《九つの命》、《アダーカー荒原》が揃うだけで能動的にカウンターを増やしていけるので、3枚コンボが実質2枚コンボになりました。《切望の隼》と《九つの命》が揃うと、相手は致死量のダメージを与えられなくなってしまいます。9個目が乗った時に《九つの命》を《切望の隼》で相手に押し付けることができるためです。だから何かを引き込むのを基本は待つしかないのですが、《アダーカー荒原》があれば確実に勝利できます。この勝利条件を満たすカードとして《アダーカー荒原》を採用できるようになったので、《太陽降下》を入れられるようになりました。 サイドボード ラクドスに負ける時の7割は手札破壊が絡みます。そして関東には《絶望招来》を採用したラクドスが多く、《九つの命》を貼って《絶望招来》で負けるのが腹立たしすぎたので入れました。手札破壊に対して手札を消費するカードで対策するのは個人的には反対だったのですが、思ったより好感触でした。《血管切り裂き魔》のダメージを防げるのも地味に優秀。ラクドス相手には全力でマリガンして《神聖の力線》を探しに行きます。失った手札はドロースペルで回復する想定です。そのため、《多元宇宙の警告》などと一緒にサイドインしましょう。このデッキの弱点の1つが「普通のアゾリウスコントロールに弱いこと」です。《九つの命》以外に勝てるカードが入っていませんからね。そのため、サイドボードの大半が対コントロール用になってしまっています。《サメ台風》である理由は特にないのですが、コントロール相手にスロットをたくさん割けるなら《サメ台風》が一番強いです。4枚入っていると連打だけで勝てることがありますからね。コントロール対策その2。コントロール対策その3。コントロールと、《神聖の力線》を入れる手札破壊デッキにサイドインします。マリガンしても取り返せますし、どうせ《神聖の力線》のない7枚をキープしても手札破壊で抜かれて5枚ぐらいになるので、最初から5枚でも問題ないです。アグロデッキへの追加として。4枚は過剰ですが、メインサイド合わせて3枚は欲しいカード。アグロは大抵赤か緑が入っているので、《ドビンの拒否権》2枚を入れ替えるのに、《一時的封鎖》+もう1枚欲しくて、ちょうどよい《霊気の疾風》になっています。アグロ全般にサイドインしつつ、独創力のような少し変わった相手にも入れられ、その対応力の高さが好みです。追加のカウンターです。吸血鬼相手にはサイドインしません。 基本的な回し方 このデッキは大前提としてアゾリウスコントロールです。序盤を打ち消しや除去でしのいで、《記憶の氾濫》でリソースを取り、全体除去で一気に盤面を片付け、《記憶の氾濫》のフラッシュバックで勝利します。 その勝利手段が《切望の隼》になっただけです。無理に《九つの命》と《切望の隼》を《記憶の氾濫》で揃えようとするのが一番悪手です。 既にどちらかが片方にある場合は、もう一方を取るのも良いでしょう。しかし、どちらも手札にない状態でとりあえず《切望の隼》だけを《記憶の氾濫》でとっておく意味はさほどありません。リソース手段として《切望の隼》を確保したいなら別ですが、中盤までの攻防で《切望の隼》は役に立ちません。《九つの命》は貼れば大幅な延命になるので、いつでも積極的に確保しておきたいカードですが、《切望の隼》は違います。 《九つの命》で寿命を増やしつつ、ドロースペルを連打して《切望の隼》に辿り着いて逆転というのが基本の流れです。2枚を揃えるのではなく、先に《九つの命》を貼って後から《切望の隼》を引き込むイメージを持ちましょう。あくまでこのデッキはアゾリウスコントロール。コンボデッキではありません。序盤の《海の神のお告げ》や《記憶の氾濫》での選択をお間違いなく! TIPS 勝ち手段まとめ ・《九つの命》が相手の攻撃で具現カウンター9になった時に、追放能力がスタックに乗った状態で《切望の隼》で相手に《九つの命》を渡す。 ・《九つの命》の上に具現カウンターが8個置かれている状態で《アダーカー荒原》で1点を受け、9個目が置かれて追放能力がスタックに乗った状態で《切望の隼》で相手に《九つの命》を渡す。 ・《九つの命》を《切望の隼》で相手に渡して《告別》でエンチャント追放を行う。 《切望の隼》による大量提供 《切望の隼》は自分のコントロールしているパーマネントを好きなだけあげられます。場合によっては自分の土地すべてを相手に渡して10枚ほど引く、なんてことも可能です。たとえば次のターンに負けが確定しているラストターン、《九つの命》を相手に渡して《告別》で吹き飛ばすしかない…といったケースが稀に訪れます。その時は先に土地からマナを出しておき、自分のパーマネントを全部相手にあげれば、大量に引けるドローできるので、《告別》を引ける大チャンスを作れます。 《九つの命》はあくまで軽減 ダメージをカウンター1個分にする《九つの命》はあくまでダメージを軽減するだけ。軽減されなかった場合は普通にライフが減ってしまいます。一番ありがちなのが《砕骨の巨人》です。吸血鬼相手にライフを減らし過ぎると《砕骨の巨人》で負けてしまうので注意しましょう。最近は2枚ぐらい入っているリストが多いです。 《魂の仕切り》関連 《切望の隼》で相手に渡したカードを《魂の仕切り》した場合、オーナーはこちらなので、追放したカードを唱えるコストは重くなりません。《一時的封鎖》を相手に渡して《魂の仕切り》で再利用なんてこともできます。《切望の隼》を追放すれば変装コストで再び唱えられるのは既にお伝えした通り。このデッキでは《魂の仕切り》は色々な使い方ができるので、ぜひ堪能してください。 《切望の隼》を出すタイミング たとえば《九つの命》を具現カウンターが1個の状態で《切望の隼》を出したとします。ここに除去が飛んできた場合、今変身させるしかありません(もちろん、そのまま《切望の隼》だけを相手に渡してドローしても良いですが)。が、これは少しもったいない。 《九つの命》を相手に渡すなら、勝つタイミング、もしくはその寸前が良いです。なぜなら中途半端な状態で渡してしまうと、《九つの命》による延命手段を失ってしまい、《告別》でしか勝利できなくなってしまうためです。勝利手段と延命手段を同時に手放すことになります。たとえば7個ぐらいまで溜めていれば、《切望の隼》と《不穏な投錨地》で9個にできる可能性があるのでOKです。 そこで、相手の盤面に《九つの命》を9個溜めるほどのクロックがあるか、《アダーカー荒原》で9にできるか、《告別》で流せるタイミング、このいずれかの場合でのみ相手に《切望の隼》を唱えましょう。 これはもちろん、コンボを決める際のルールなだけです。《一時的封鎖》や《海の神のお告げ》を渡してドローしたい場合にはその限りではありません。《切望の隼》だけが手札に浮く状態も多々あるので、その際はむしろさっさとドローに使うのを推奨します。   サイドボーディングガイド 対ラクドス吸血鬼 +4《神聖の力線》+1《多元宇宙の警告》 ー2《魂の仕切り》ー2《失せろ》ー1《一時的封鎖》(《腐食の荒馬》型の場合は《ドビンの拒否権》をアウト) 対アマリア +1《一時的封鎖》+1《霊気の疾風》 ー2《ドビンの拒否権》 対イゼットフェニックス +2《ドビンの拒否権》+1《船砕きの怪物》+1《サメ台風》 ー2《一時的封鎖》ー2《魂の仕切り》 対緑単 +1《霊気の疾風》+1《一時的封鎖》 ー2《失せろ》 対アゾリウスコントロール +4《サメ台風》+2《ドビンの拒否権》+1《船砕きの怪物》+1《約束された終末、エムラクール》+1《多元宇宙の警告》 ー2《一時的封鎖》ー2《太陽降下》ー2《告別》ー2《切望の隼》ー1《九つの命》 対5cニヴ +4《サメ台風》+1《船砕きの怪物》+1《約束された終末、エムラクール》+2《ドビンの拒否権》+1《多元宇宙の警告》 ー2《太陽降下》ー2《一時的封鎖》ー4《失せろ》ー1《魂の仕切り》   終わりに というわけで本日はアゾリウスファルコンの紹介でした。デッキに関する質問などは、僕のXアカウント(@yuyan_mtg)まで遠慮なく!それではまた!

【週刊メタゲーム通信】王者吸血鬼を狙うフェニックス。そして新たな刺客、グルール

2024.07.17

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 毎週、最新のメタゲームをデッキリストと共にお届けするこの記事。エリア予選もそろそろ佳境!本日もパイオニアのメタゲームを追っていきます。 絶対王者、ラクドス吸血鬼はミラーマッチを意識 今週もマジックオンライン上では吸血鬼とアマリアが大人気!その中でも最多数を誇ったのはやはりラクドス吸血鬼。国内で行われているエリア予選では《腐食の荒馬》型が流行ですが、オンライン上では《薄暮軍団の盲信者》型が主流です。 ラクドス吸血鬼 ショーケース予選:優勝 By PATXI ミラーマッチでは《腐食の荒馬》はただ除去されるだけの2マナ域で、《砕骨の巨人》も相手に《腐食の荒馬》が入っていなければ大した仕事をしません。少なくともミラーでは活躍しないこのカードは、オンライン上では使われない傾向にあります。 《薄暮軍団の盲信者》は単体では弱いカードですが、《傲慢な血王、ソリン》+《血管切り裂き魔》を揃えるための潤滑油としては優秀です。出た時に仕事を終えるので、除去されても何も問題ありませんし、むしろ相手は放置したいぐらいでしょう。 衝撃的だったのは、パイオニアショーケース予選を優勝したリストの《死の飢えのタイタン、クロクサ》です。《変わり谷》が4枚入っているデッキに《死の飢えのタイタン、クロクサ》を入れて脱出できるのかいささか不安ですが、実際に脱出できた時の強さは折り紙付き。 特にミラーマッチは消耗戦になるので、お互いのクリーチャーを手札破壊しあい、除去してしまった後、墓地に残った《死の飢えのタイタン、クロクサ》がゲームを決めることになりそうです。《墓地の侵入者》のような、同型でサイド後も残る墓地追放カードが今のラクドスにはまったく入っていないので、《死の飢えのタイタン、クロクサ》はミラーマッチで非常に輝くことでしょう。 吸血鬼のガード下げを見逃さないイゼフェニ さて、吸血鬼・アマリアに続いて入賞回数が多いのがイゼットフェニックス。 イゼットフェニックス ショーケース予選:4位 By JUJUBEAN__2004   パイオニアで最強のドロー呪文、《宝船の巡航》を使えるデッキで、これまで常に意識されていたデッキでした。吸血鬼の《ドロスの魔神》はまさにイゼットフェニックスを強く意識した1枚で、これに加えて《分派の説教者》が入っていたこともあり、最近では鳴りを潜めていました。 しかし、吸血鬼がミラーを意識し、サイドボードの墓地対策も減少傾向なため、イゼットフェニックスは見事復活。特徴的なのは《毒を選べ》の採用。これにより「3ターン目に《血管切り裂き魔》さえ出てこなければ有利」だった対吸血鬼の相性が大幅に改善されました。 たった1マナで後腐れなく《血管切り裂き魔》を処理できるので、後は《宝船の巡航》で大量にカードを引けば勝利です。 《ヴァラクートの涙》がサイドボードに入っていることもありましたが、イゼットフェニックスにとって1マナと2マナには大きな差があります。1マナのドロー呪文がたくさん入っているので、たった1マナ違うだけで更に2枚掘り進めることができ、《毒を選べ》を引ける確率が上がるのです。 吸血鬼がイゼットフェニックスへのガードを落とし、イゼットフェニックスが吸血鬼を意識しているなら、その相性差は歴然。《毒を選べ》型が今後主流になっていくかにも注目ですね。 徐々に入賞回数が増えてきたグルールアグロ グルールアグロと言えば、《損魂魔道士》《僧院の速槍》《精鋭射手団の目立ちたがり》をスペルでバックアップするグルール果敢が一般的でしたが、近頃勝っているリストは、どちらかと言えばグルールブリッツのようなデッキ。 グルールアグロ ショーケース予選:4位 By JUJUBEAN__2004 ブリッツとは、クリーチャーを並べて《無謀な奇襲隊》で速攻強化して攻撃するデッキの総称で、特に《炎樹族の使者》と組み合わせて使うアグロにその名前がよくつけられていました。 《炎樹族の使者》はもちろん、《アロエの錬金術師》とも相性が良い《無謀な奇襲隊》。《狡猾なコヨーテ》まで採用されており、とにかく速攻に重きを置いた構成です。 イゼットフェニックスと同じく、赤系アグロも現代は軽視されている傾向にあります。どのデッキもラクドス吸血鬼を強く意識していることから、除去が軽いものから、多少デメリットはあっても《血管切り裂き魔》に触れるものに変わっています。(《苦々しい勝利》など) 除去が質重視になればなるほど、どのクリーチャーも大差ないグルールアグロのようなデッキは光ります。全部2/2ですが、その代わりに殴ってくる速度と数が多いこと多いこと。《致命的な一押し》を複数枚引かれなければ、あっという間にライフを削りきってしまうことでしょう。 環境がミッドレンジを意識してきたらチャンス!今週は使い時かもしれませんね!   総括 ラクドス吸血鬼とアマリアの二大巨頭は顕在!しかし、3番手としてイゼットフェニックスが迫ってきています。 ラクドス側もこれを無視することはできないでしょう。《ドロスの魔神》を再び入れる時が来たかもしれません。そしてそこに対しても刺さる《毒を選べ》は、今後イゼットフェニックスの標準装備になるのでしょうか。 そしてアグロデッキの期待の星、グルールの今後の活躍にも注目です。エリア予選もいよいよ佳境。国内でもオンラインと同様に吸血鬼祭りではありますが、果たしてこのメタゲームで勝ち上がるのはどのデッキか。個人的な予想では、今週はイゼットフェニックスが更に数を増やすことになるのではないかと思っています。 ラクドス吸血鬼側がガードを上げようとして《ドロスの魔神》をたくさん入れても、対イゼットフェニックス以外ではイマイチ。今の流行からすると中々この思い切ったデッキ構成にはしづらい。 一方で《死の飢えのタイタン、クロクサ》はミラーマッチで強いカードなので、入れるプレイヤーも多いでしょう。そしてこの《死の飢えのタイタン、クロクサ》はイゼットフェニックスに全く強くないため、今週もラクドス吸血鬼は対イゼフェニのガードを下げざるを得ません。 ラクドス吸血鬼を使う方は、《未認可霊柩車》や《真っ白》をお忘れなく!

【今週のピックアップデッキ】バード・クラス/5c Bring to Scape/ネクロバーン

2024.07.12

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 バード・クラス(パイオニア) エリア予選(晴れる屋TC東京):突破 By Takeda Ryotaro 文字通り《バード・クラス》1枚でゲームに勝利できてしまうというすごいデッキ。動き方は単純明快。《バード・クラス》を設置し、レベル3に引き上げるだけ。そうすることですべての伝説の呪文のコストが(赤)(緑)軽くなります。つまり、《忠実な護衛、ハジャール》のようなコストが(赤)(緑)のカードは0マナでキャストできるように。更に、レベル3の能力で、伝説の呪文を唱えるたびにライブラリーの上2枚を追放して使用できるので、その中に(赤)(緑)のカードがあれば、0マナで唱えて、更に2枚を追放して…とどんどん連鎖していきます。この過程で《モックス・アンバー》や《勇敢な追跡者、ルビー》が追放されるとマナが増えていき、最終的にはすべてのクリーチャーが速攻を得て1ターンでゲームを終わらせます。途中で連鎖が止まったとしても、盤面にはたくさんのクリーチャーが並ぶので、たとえ《血管切り裂き魔》を出したとしても焼け石に水でしょう。《バード・クラス》デッキ自体は以前からたびたび注目されていましたが、今回はついに、晴れる屋トーナメントセンター東京で行われた、チャンピオンズカップファイナルのエリア予選を見事に突破!ご本人のnoteもございますので、詳しくデッキについて知りたい方はぜひお読みください。(記事はこちら) 5c Bring to Scape(パイオニア) パイオニアリーグ:5-0 By Fleetwheels スタンダードで活躍したシステムを下環境で取り入れる、というのはよくあること。《鏡割りの寓話》と《勢団の銀行破り》の組み合わせはすぐにパイオニアでも流用され、今でも大活躍していますし、その昔はスタンダードで大暴れした親和が、エクステンデッドのプロツアーを制したこともありました。そして今回ご紹介する5c Bring to Scapeも、スタンダードでよく見るシステムを活用しています。《斡旋屋一家の潜伏先》などの、生け贄に捧げてデッキから土地をサーチするカードと《復活した精霊信者、ニッサ》、そして《事件現場の分析者》を組み合わせて大量のマナを生み出す。プロツアーでも活躍したティムールランプのシステムです。これを取り入れたのがこのデッキ。《復活した精霊信者、ニッサ》のマナを生み出す能力を持つ《水蓮のコブラ》を入れて8枚体制にして、《事件現場の分析者》から出るマナを更に出せるようにしつつ、スタンダードでは《記憶の氾濫》だった、コンボを決める手段として、《白日の下に》を採用しています。コンボ方法は以下。1.戦場に土地5枚と《洞窟探検》がある状態で《白日の下に》をキャスト。デッキから《風景の変容》を唱え、《睡蓮の原野》2枚と《神秘の聖域》《狩猟迷宮》《山》をサーチ。2.《神秘の聖域》で《白日の下に》をライブラリ―トップに積み、《睡蓮の原野》2枚で緑マナと白マナを3つずつ、《神秘の聖域》で青マナ、《山》から赤マナを出す。この4枚を《睡蓮の原野》で生け贄に。3.緑2マナで《狩猟迷宮》を起動して《白日の下に》をドロー。(この時点で残ったマナは緑,白3,青、赤。4.ドローした《白日の下に》を収斂4で唱え、《見事な再生》をサーチ。残りは白マナ。5.《見事な再生》を打つと、先ほど生け贄に捧げた4枚がそのまま帰ってくる。《神秘の聖域》で再び《見事な再生》を積んで、《狩猟迷宮》でドロー。6.この5の過程を繰り返すことで無限マナが生まれる。7.最終的に無限マナから、《神秘の聖域》でライブラリートップに《風景の変容》を積み、《睡蓮の原野》で生け贄に捧げた後にキャスト。《残響する深淵》(神秘の聖域をコピー》と《カーフェルの港》をサーチ。8.コピーした《神秘の聖域》で《見事な再生》を積み、《カーフェルの港》を生け贄にして発見でキャスト。9.《神秘の聖域》、《睡蓮の原野》2枚、《カーフェルの港》、《狩猟迷宮》が帰ってきて、《神神秘の聖域》で《見事な再生》を積み込む。10.先ほどまでの無限マナを生み出す行為に《カーフェルの港》の発見のおまけがつくので、ライブラリーを全部掘り進めることができ、《世界魂の憤怒》に辿り着いて終了。これはあくまで基本のコンボパターンで、実際は《水蓮のコブラ》と《復活した精霊信者、ニッサ》から《僻境への脱出》を唱えて大量のアドバンテージで勝利したり、《白日の下に》から《星界の騙し屋、ティボルト》と、ニヴでお馴染みのムーブも可能です。何より回していてとても楽しいことこの上なし!スタンダードでティムールランプを使っていた方にはたまらないデッキだと思いますよ! ネクロバーン(モダン) モダンリーグ:5-0 By jontih 『モダンホライゾン3』で登場した《ネクロドミナンス》。《ネクロポーテンス》の調整版となったこのカードは、その先祖の名に恥じぬ活躍を見せ、プロツアーでもトップ8に2人を送り込みました。そんな《ネクロドミナンス》を使用した新しい形がこのネクロバーン。《ネクロドミナンス》と相性の良い《魂の撃ち込み》を本体に投げ続ける動きに特化するため、このデッキには大量のバーンスペルが採用されています。《夜の衝突》《稲妻》《ゴンティの策謀》《ドロスの大長》はすべて3点火力。《集団的蛮行》《ウィザーブルームの命令》《望み無き悪夢》も火力呪文として使用できます。そしてこのデッキに多くのライフゲインが入っていることから採用されているのが《マルコフ家のソリン》。《夜の衝突》1枚で変身し、変身したらそのままもう一度3点を与えられるので、実質追加の火力として機能します。《魂の撃ち込み》などが合わされば凄まじいダメージに。最も衝撃的な採用カードが《潜伏工作員》。僕は20年マジックをプレイしていますが、このカードが採用されたデッキが結果を残しているのを初めて見ました。2点火力として機能する他、相手のデッキからクリーチャーが出てこない場合にも、《魂の刈り取り》が腐ることがありません。「…いや、今さらっと出た《魂の刈り取り》ってなんですか?最近マジックを始めたのでわかりません」そう思った読者の皆さん、安心してください。20年マジックをやっている僕も、今日初めてこのカードのテキストを知りました。要するに他の黒いカードをこのターンに先にプレイしていると、3点ダメージのおまけがついてくる除去ですね。バーンの《焼尽の猛火》に近い性能…そう考えるとものすごく強いカードに思えてきました。 このデッキは1マナの黒いカードが10枚入っていますし、《魂の撃ち込み》のピッチの後に唱えても3点が入るので、非常に相性が良いですね。20点のライフを削るために全力を出すボロスバーンは、《火の怒りのタイタン、フレージ》の登場で苦しめられていますが、このネクロバーンなら、《ネクロドミナンス》の圧倒的なリソースが《火の怒りのタイタン、フレージ》のゲイン量を上回るダメージを叩き出してくれるはず。一度は心が折れかけたバーン使いの皆様、ぜひお試しあれ。

【週刊メタゲーム通信】吸血鬼とアマリアの仁義なき二強環境

Pioneer

2024.07.11

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こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 毎週、最新のメタゲームをデッキリストと共にお届けするこの記事。本日はエリア予選期間真っ最中で盛り上がっている、パイオニアを解説! 大会説明 初回の記事なので、今回のメタゲームを語る上で参照した大会について今回は説明していきます。 チャンピオンズカップエリア予選 プレイヤーズコンベンションで行われる競技大会「チャンピオンズカップファイナル」の参加権利を賭けて戦う大会です。店舗予選を突破したプレイヤーしか出場することのできない、競技性の高いトーナメント。今回は以下の3大会を参照。 エリア予選(ドラゴンスターオタロード中央店) エリア予選(晴れる屋トーナメントセンター東京) エリア予選(シーガル泉中央店) パイオニアチャレンジ パソコンでマジックが楽しめるマジックオンライン上で行われる大会。人数に応じたスイスラウンドを行い、その後シングルエリミネーションとなっています。参加費のみで誰でも出られる大会。今回は以下の4大会を参照。 PIONEER CHALLENGE 32 (7月6日開催) PIONEER CHALLENGE 32 (7月7日開催) PIONEER CHALLENGE 64 (7月6日開催) PIONEER CHALLENGE 64 (7月7日開催) ラストチャンス予選 マジックオンラインチャンピオンシップ(通称MOCS)という、マジックオンラインの中で最も賞金・賞品が豪華な大会があり、優勝することでそれに出場することのできる予選大会…の予選大会です。5回戦を5勝0敗することで予選大会の権利を獲得できます。今回は以下の2大会を参照。 PIONEER LAST CHANCE (7月7日開催) PIONEER LAST CHANCE (7月8日開催) 進化し続けるTier1、ラクドス吸血鬼 エリア予選での権利獲得者、各チャレンジのトップ8、そしてラストチャンス予選で4勝1敗以上の成績を収めたデッキをすべて集計すると、最も使用者がが多かったのはラクドス吸血鬼でした。その数は26。合計75人のうち、26人がこのラクドス吸血鬼で好成績を収めました。特に晴れる屋トーナメントセンター東京では15人のうち8名がラクドス吸血鬼で予選を突破しています。 ラクドス吸血鬼 エリア予選(晴れる屋TC東京):突破 By 矢田 和樹   ラクドス吸血鬼はプロツアー『カルロフ邸殺人事件』を優勝して鮮烈なデビューを飾ったデッキ。ベースとなるのは《思考囲い》と《鏡割りの寓話》という、もはやパイオニアでは見慣れたラクドスの2枚看板によるミッドレンジ戦術。ここに加わったのが《傲慢な血王、ソリン》から《血管切り裂き魔》を出すコンボ要素。 《血管切り裂き魔》は凄まじい性能で、ひとたび戦場に出ればそもそも護法で除去をするのが困難。倒そうとすればダメージを最低でも4点喰らい、倒し損ねれば攻撃の6点+《傲慢な血王、ソリン》の生け贄3点+2点で11点と、一瞬でライフを削りきられてしまいます。 近頃のラクドス吸血鬼は《腐食の荒馬》を採用したリストが増えています。騎乗して攻撃すると《血管切り裂き魔》がめくれて6点だったり、《傲慢な血王、ソリン》と《血管切り裂き魔》を揃うのに寄与するなど、デッキと噛み合っています。そして、2ターン目のプレッシャーのあるアクションが《税血の収穫者》しかなかったのはラクドス吸血鬼の弱点でした。《腐食の荒馬》によって相手は2ターン目から対応を迫られることとなり、3ターン目の《鏡割りの寓話》や《傲慢な血王、ソリン》が二の矢として機能するのです。プロツアーではこのスロットは《薄暮軍団の盲信者》でした。こちらは3ターン目の強いアクションである《鏡割りの寓話》か《傲慢な血王、ソリン》を引き込みにいくカードでしたが、クリーチャースペックは1/1と貧弱でした。 ラクドス吸血鬼が攻撃的なデッキであるにもかかわらず、2ターン目のアクションが弱いのは問題でしたが、《腐食の荒馬》はそれを見事に解消しました。また、《腐食の荒馬》が標準装備になったことで見直されたのが《砕骨の巨人》。ラクドスミラーで《腐食の荒馬》を除去できるだけでなく、《腐食の荒馬》に騎乗できるので、再評価を受けています。 ラクドス吸血鬼の進化はそれだけではありません。近頃は更なるコンボを搭載したラクドス地獄の樹も現れ始めました。 ラクドス地獄の樹 パイオニアチャレンジ:2位 By CHICHICHI 通常のラクドス吸血鬼に《地獄の樹》と《アガサの魂の大釜》を加えたのがこのラクドス地獄の樹。 《地獄の樹》は自身のタフネスと対戦相手のライフを交換できる起動型能力を持っています。普通に使えば相手のライフが13になり、ライフがタフネスになる。そんな微妙なカード。しかし、《アガサの魂の大釜》で追放することで《地獄の樹》は真価を発揮します。クリーチャーに《地獄の樹》の能力を付与できるので、たとえば《ヴォルダーレンの美食家》も《地獄の樹》になるのです。一瞬で相手のライフは20から2に! このコンボは特に、ラクドス吸血鬼は現環境の対抗馬であるアブザンアマリアに対して有効です。通常は一度コンボを決められて90近いライフになったアマリアに勝つのは至難の業ですが、いくつライフがあろうと《地獄の樹》と《アガサの魂の大釜》が揃えば関係ありません。新たな2枚コンボの投入ができてしまうというのは、《思考囲い》や《鏡割りの寓話》、そして《傲慢な血王、ソリン》からの《血管切り裂き魔》、このラクドス吸血鬼の根幹部分が強いことの証明ともいえますね。 王者・吸血鬼を狙うは、3ターンキルのアマリア ラクドス吸血鬼に続いて先週成功を収めたのは、アブザンアマリア。各地のエリア予選でも突破者が多く、MOのラストチャンス予選で権利を獲得した4つのうち、2つがアブザンアマリアでした。 アブザンアマリア ラストチャンス予選:5-0 By OPPA 《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》と《野茂み歩き》を場に揃え、30回ほどの探検によって90近いライフを獲得しながら、《霊気貯蔵器》をライブラリートップに積み込んで勝利するクリーチャー・コンボ。なんと最速3ターン目にこのコンボが成立します。 固定となる2体のクリーチャー+ライフゲイン手段が必要なコンボで、除去1枚で妨害されてしまうため、「コンボ自体は成立するけど実用的かどうか…」と思われていたのは遥か昔。蓋を開けてみれば、クリーチャー側をサーチする手段が豊富かつインスタントだったり、除去しても複数の手段で場に戻すなど、除去に対して強い構成にすることができ、今や環境最強の一角となっています。特にラクドス吸血鬼の最強ムーブである3ターン目《血管切り裂き魔》に対しても、3ターン目にコンボを決めてしまえば勝利できるので、お互いが最も強い動きをした際はアマリア側に軍配が上がります。 アブザンアマリアのリストもすっかり洗礼されています。《救出専門家》が多めに採用されるようになり、ラクドス吸血鬼の除去の雨にも耐性がついています。 《救出専門家》をたくさん採用することで3マナ以下の強力なクリーチャーが増えたので、今まで2枚程度だった《集合した中隊》は4枚に。《救出専門家》と同じ役割だった《戦列への復帰》がそのまま《集合した中隊》になっていますね。《スカイクレイブの亡霊》は段々と採用枚数が増えてきた1枚。これまではメインサイド合わせて1~2枚という印象でしたが、今ではメインから2枚。サイドにも2枚。ミラーマッチで《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》を追放できるだけでなく、ラクドスがサイドから投入してくるキラーカード、《暮影の騎士》に触れる数少ないカードです。 《スカイクレイブの亡霊》の枚数が増えている現状では、ラクドスがサイドから採用すべきは《暮影の騎士》ではなく《揺れ招き》なのかもしれませんね。 総括 今週の勝ち組はラクドス吸血鬼、次いでアブザンアマリアという結果でした。ラクドス吸血鬼は《腐食の荒馬》と《砕骨の巨人》を採用したリストが目立ちました。《砕骨の巨人》は《腐食の荒馬》が使われれば使われるほど強いカードなので、もしかしたら今週は枚数が増えるかもしれません。 アブザンアマリアは特にマジックオンラインでの活躍が目立ちます。ラストチャンス予選を突破した4つのうち、2つがアブザンアマリアなのです!4勝1敗にもアブザンアマリアは多く入賞していますし、今週はラクドス吸血鬼との立場を逆転させていてもおかしくありません。 そしてこの2つが互いのデッキやミラーを意識し始めると、またその間隙を突くデッキが現れることでしょう。墓地を利用するデッキが減っており、墓地対策は今減少傾向にあります。もしかしたら今はイゼットフェニックスあたりにチャンスかも?《腐食の荒馬》も《砕骨の巨人》も苦にしないので、今のラクドス吸血鬼には比較的強いはずです。 来週はどうなっているのでしょうか。今から楽しみですね。それではまた!

GOOD GAMEメディア、始まります

ピックアップ

2024.07.10

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皆様、初めまして。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 このたび、トレーディングカード専門店「GOOD GAME」は新たにGOOD GAMEメディアを立ち上げることとなりました。 GOOD GAMEメディアでは、当店で取り扱っている製品「マジック:ザ・ギャザリング」の様々な記事を掲載していきますので、ぜひ当サイトに足を運んでいってください! GOOD GAMEとは GOOD GAMEは、流山おおたかの森駅から徒歩1分にあるトレーディングカード専門店です。 マジック・ザ・ギャザリング、ポケモンカード、Flesh and Bloodを取り扱っており、通販サイトではマジック・ザ・ギャザリングをメインに販売しています。 ウェブサイトはこちら あなた、誰ですか? ライターを務める僕の自己紹介も必要ですよね。 僕は細川 侑也。マジック界ではゆうやんと呼ばれることが多いですね。 ※画像は公式サイトより引用   マジックを始めたのは、親和が大暴れした初代『ミラディン』。僕が初めて組んだデッキも親和でした。競技大会での実績は グランプリ名古屋2018:準優勝 グランプリ横浜2019:トップ8 グランプリ千葉2019:トップ8 The Final 2019:トップ8 The Last Sun 2022:準優勝 プレイヤーズコンベンションオープン2022:準優勝 チャンピオンズカップファイナル:準優勝 コンボとコントロールが好きで、ビートダウンが嫌いなプレイヤーです。《ドミナリアの英雄、テフェリー》大好き!《ヴェールのリリアナ》は勘弁してください! 面白いデッキを開発したり使うのが好きで、人気のあるデッキを選ばない傾向にあります。そんな競技シーンに20年近く身を置いている僕が、様々な記事をお届けしていきます。 どんな記事があるの? やっぱり気になるのは記事の内容ですよね。というわけで、今後の記事の更新予定をカレンダーに記載しました! 一つずつ、内容を紹介していきます。 週刊メタゲーム通信 週末に行われた大会結果をまとめ、メタゲームに関する考察を行う記事です。 主にパイオニアやモダンを想定しており、時期によってはスタンダードの記事も上がります。 週刊メタゲーム通信を読んで、その週の大会に備えてみてはいかがでしょうか? デッキ解説記事 僕が普段使用しているデッキを紹介・解説する記事です。軽いデッキ紹介から個々のカード選択、基本的なプレイに関するお話などをしていきます。解説してほしい記事があれば、リクエストしてください!全部にお応えすることはできませんが、リクエストからもデッキをチョイスします! 今週のピックアップデッキ 珍しいデッキや新しいデッキを3つほど紹介する記事です。基本的にはそれぞれ違うフォーマットからチョイスする予定です。様々な大会結果から探すので、もしもあなたが珍しいデッキで平日大会を勝ったら、ご紹介させていただくことになるかもしれません! その他 上記以外にも、様々な企画を立案中です!マジックをプレイする時間があまり取れない人向けの効率的な練習方法や、初心者が上達していく道筋など、単なる攻略情報以外もお届けしていきます! 初回の記事は明日から! 早速GOOD GAMEメディアの最初の記事が明日アップされます。「こんな記事を読みたい」「このデッキを紹介してほしい」などの要望がございましたら、ぜひ僕のX(@yuyan_mtg)までお声がけください!それでは皆様、末永くよろしくお願いいたします!