こんにちは。
細川 侑也(@yuyan_mtg)です。
毎週、最新のメタゲームをデッキリストと共にお届けするこの記事。
本日はエリア予選期間真っ最中で盛り上がっている、パイオニアを解説!
大会説明
初回の記事なので、今回のメタゲームを語る上で参照した大会について今回は説明していきます。
チャンピオンズカップエリア予選
プレイヤーズコンベンションで行われる競技大会「チャンピオンズカップファイナル」の参加権利を賭けて戦う大会です。
店舗予選を突破したプレイヤーしか出場することのできない、競技性の高いトーナメント。
今回は以下の3大会を参照。
パイオニアチャレンジ
パソコンでマジックが楽しめるマジックオンライン上で行われる大会。人数に応じたスイスラウンドを行い、その後シングルエリミネーションとなっています。
参加費のみで誰でも出られる大会。
今回は以下の4大会を参照。
- PIONEER CHALLENGE 32 (7月6日開催)
- PIONEER CHALLENGE 32 (7月7日開催)
- PIONEER CHALLENGE 64 (7月6日開催)
- PIONEER CHALLENGE 64 (7月7日開催)
ラストチャンス予選
マジックオンラインチャンピオンシップ(通称MOCS)という、マジックオンラインの中で最も賞金・賞品が豪華な大会があり、優勝することでそれに出場することのできる予選大会…の予選大会です。
5回戦を5勝0敗することで予選大会の権利を獲得できます。
今回は以下の2大会を参照。
進化し続けるTier1、ラクドス吸血鬼
エリア予選での権利獲得者、各チャレンジのトップ8、そしてラストチャンス予選で4勝1敗以上の成績を収めたデッキをすべて集計すると、最も使用者がが多かったのはラクドス吸血鬼でした。
その数は26。合計75人のうち、26人がこのラクドス吸血鬼で好成績を収めました。
特に晴れる屋トーナメントセンター東京では15人のうち8名がラクドス吸血鬼で予選を突破しています。
ラクドス吸血鬼
エリア予選(晴れる屋TC東京):突破 By 矢田 和樹
ラクドス吸血鬼はプロツアー『カルロフ邸殺人事件』を優勝して鮮烈なデビューを飾ったデッキ。
ベースとなるのは《思考囲い》と《鏡割りの寓話》という、もはやパイオニアでは見慣れたラクドスの2枚看板によるミッドレンジ戦術。ここに加わったのが《傲慢な血王、ソリン》から《血管切り裂き魔》を出すコンボ要素。
《血管切り裂き魔》は凄まじい性能で、ひとたび戦場に出ればそもそも護法で除去をするのが困難。倒そうとすればダメージを最低でも4点喰らい、倒し損ねれば攻撃の6点+《傲慢な血王、ソリン》の生け贄3点+2点で11点と、一瞬でライフを削りきられてしまいます。
近頃のラクドス吸血鬼は《腐食の荒馬》を採用したリストが増えています。騎乗して攻撃すると《血管切り裂き魔》がめくれて6点だったり、《傲慢な血王、ソリン》と《血管切り裂き魔》を揃うのに寄与するなど、デッキと噛み合っています。
そして、2ターン目のプレッシャーのあるアクションが《税血の収穫者》しかなかったのはラクドス吸血鬼の弱点でした。《腐食の荒馬》によって相手は2ターン目から対応を迫られることとなり、3ターン目の《鏡割りの寓話》や《傲慢な血王、ソリン》が二の矢として機能するのです。
プロツアーではこのスロットは《薄暮軍団の盲信者》でした。こちらは3ターン目の強いアクションである《鏡割りの寓話》か《傲慢な血王、ソリン》を引き込みにいくカードでしたが、クリーチャースペックは1/1と貧弱でした。
ラクドス吸血鬼が攻撃的なデッキであるにもかかわらず、2ターン目のアクションが弱いのは問題でしたが、《腐食の荒馬》はそれを見事に解消しました。
また、《腐食の荒馬》が標準装備になったことで見直されたのが《砕骨の巨人》。ラクドスミラーで《腐食の荒馬》を除去できるだけでなく、《腐食の荒馬》に騎乗できるので、再評価を受けています。
ラクドス吸血鬼の進化はそれだけではありません。近頃は更なるコンボを搭載したラクドス地獄の樹も現れ始めました。
ラクドス地獄の樹
パイオニアチャレンジ:2位 By CHICHICHI
通常のラクドス吸血鬼に《地獄の樹》と《アガサの魂の大釜》を加えたのがこのラクドス地獄の樹。
《地獄の樹》は自身のタフネスと対戦相手のライフを交換できる起動型能力を持っています。普通に使えば相手のライフが13になり、ライフがタフネスになる。そんな微妙なカード。
しかし、《アガサの魂の大釜》で追放することで《地獄の樹》は真価を発揮します。クリーチャーに《地獄の樹》の能力を付与できるので、たとえば《ヴォルダーレンの美食家》も《地獄の樹》になるのです。一瞬で相手のライフは20から2に!
このコンボは特に、ラクドス吸血鬼は現環境の対抗馬であるアブザンアマリアに対して有効です。通常は一度コンボを決められて90近いライフになったアマリアに勝つのは至難の業ですが、いくつライフがあろうと《地獄の樹》と《アガサの魂の大釜》が揃えば関係ありません。
新たな2枚コンボの投入ができてしまうというのは、《思考囲い》や《鏡割りの寓話》、そして《傲慢な血王、ソリン》からの《血管切り裂き魔》、このラクドス吸血鬼の根幹部分が強いことの証明ともいえますね。
王者・吸血鬼を狙うは、3ターンキルのアマリア
ラクドス吸血鬼に続いて先週成功を収めたのは、アブザンアマリア。各地のエリア予選でも突破者が多く、MOのラストチャンス予選で権利を獲得した4つのうち、2つがアブザンアマリアでした。
アブザンアマリア
ラストチャンス予選:5-0 By OPPA
《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》と《野茂み歩き》を場に揃え、30回ほどの探検によって90近いライフを獲得しながら、《霊気貯蔵器》をライブラリートップに積み込んで勝利するクリーチャー・コンボ。なんと最速3ターン目にこのコンボが成立します。
固定となる2体のクリーチャー+ライフゲイン手段が必要なコンボで、除去1枚で妨害されてしまうため、「コンボ自体は成立するけど実用的かどうか…」と思われていたのは遥か昔。
蓋を開けてみれば、クリーチャー側をサーチする手段が豊富かつインスタントだったり、除去しても複数の手段で場に戻すなど、除去に対して強い構成にすることができ、今や環境最強の一角となっています。
特にラクドス吸血鬼の最強ムーブである3ターン目《血管切り裂き魔》に対しても、3ターン目にコンボを決めてしまえば勝利できるので、お互いが最も強い動きをした際はアマリア側に軍配が上がります。
アブザンアマリアのリストもすっかり洗礼されています。《救出専門家》が多めに採用されるようになり、ラクドス吸血鬼の除去の雨にも耐性がついています。
《救出専門家》をたくさん採用することで3マナ以下の強力なクリーチャーが増えたので、今まで2枚程度だった《集合した中隊》は4枚に。《救出専門家》と同じ役割だった《戦列への復帰》がそのまま《集合した中隊》になっていますね。
《スカイクレイブの亡霊》は段々と採用枚数が増えてきた1枚。これまではメインサイド合わせて1~2枚という印象でしたが、今ではメインから2枚。サイドにも2枚。ミラーマッチで《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》を追放できるだけでなく、ラクドスがサイドから投入してくるキラーカード、《暮影の騎士》に触れる数少ないカードです。
《スカイクレイブの亡霊》の枚数が増えている現状では、ラクドスがサイドから採用すべきは《暮影の騎士》ではなく《揺れ招き》なのかもしれませんね。
総括
今週の勝ち組はラクドス吸血鬼、次いでアブザンアマリアという結果でした。
ラクドス吸血鬼は《腐食の荒馬》と《砕骨の巨人》を採用したリストが目立ちました。《砕骨の巨人》は《腐食の荒馬》が使われれば使われるほど強いカードなので、もしかしたら今週は枚数が増えるかもしれません。
アブザンアマリアは特にマジックオンラインでの活躍が目立ちます。ラストチャンス予選を突破した4つのうち、2つがアブザンアマリアなのです!
4勝1敗にもアブザンアマリアは多く入賞していますし、今週はラクドス吸血鬼との立場を逆転させていてもおかしくありません。
そしてこの2つが互いのデッキやミラーを意識し始めると、またその間隙を突くデッキが現れることでしょう。
墓地を利用するデッキが減っており、墓地対策は今減少傾向にあります。もしかしたら今はイゼットフェニックスあたりにチャンスかも?《腐食の荒馬》も《砕骨の巨人》も苦にしないので、今のラクドス吸血鬼には比較的強いはずです。
来週はどうなっているのでしょうか。今から楽しみですね。
それではまた!