こんにちは。
細川 侑也(@yuyan_mtg)です。
先週末は日本とアメリカでそれぞれ地域CSが開催!
プロツアー、そして世界選手権の権利がかかった今大会から、メタゲームを分析していきます!
メタゲーム
日本
優勝:ボロスエネルギー
2位:オルゾフブリンク
3位:研磨ブリーチ
4位:青単ベルチャー
5位:研磨ブリーチ
6位:エルドラージランプ
7位:ジェスカイコントロール
8位:オルゾフブリンク
アメリカ
優勝:アミュレットタイタン2位:研磨ブリーチ
3位:エルドラージランプ
4位:ボロスエネルギー
5位:研磨ブリーチ
6位:エルドラージランプ
7位:オルゾフブリンク
8位:研磨ブリーチ
ボロスエネルギーは日本・アメリカのどちらでも人気が高く、また最も意識されているデッキの1つでした。日本では優勝、アメリカでも4位に入賞していますが、共に1つずつのみ。
安定感・速度・サイド後の強度と強さに必要なあらゆる条件を兼ね備えているボロスエネルギーも、意識されれば支配的ではないことが明らかとなったと思います。
一方、そんなボロスエネルギーと同じぐらい意識されていたはずの研磨ブリーチは大暴れ!日本では2人、アメリカでは3人がトップ8に入賞しています。
研磨ブリーチはボロスエネルギーと違い、サイドボード後にあらゆる妨害を受けるデッキ。メイン戦の勝率は高く、サイドボード後は落としがち。しかも今回はトップメタの一角と予想されており、対策は更に苛烈になっているはずでした。
にもかかわらずの今回の圧倒的勝率。研磨ブリーチというデッキが最強のデッキの一つであると言わざるを得ないでしょう。
そして今回もディミーア眼魔は入賞することはありませんでした。《害獣駆除》でボロスエネルギーと研磨ブリーチに強くなったエスパー眼魔は今大会での活躍が期待されましたが、トップ8に駒を進めることはできず。
今のモダンは、ボロスエネルギーと研磨ブリーチにエルドラージランプとオルゾフブリンクを加えた4強となりましたね。
ボロスエネルギー
チャンピオンズカップファイナル : 優勝 By Ma Noah

チャンピオンズカップファイナルを制したのは前述のようにボロスエネルギー。
もう何度説明したかわかりませんが、《魂の導き手》《オセロットの群れ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》の『モダンホライゾン3』が誇る低マナ高スペックのクリーチャーを連打するビートダウンの動き。
こちらも『モダンホライゾン3』の問題児、《火の怒りのタイタン、フレージ》《栄光の闘技場》の必殺を加えた、まさに『モダンホライゾン3』そのものと言って差し支えないデッキ。
《色めき立つ猛竜》が禁止になりましたが、デッキの根幹部分は丸ごと残ったので、前環境からモダンを牽引し続けているデッキです。
1マナ域を普通に引くだけで4ターンキルしてしまう速度を持ちながら、諜報ランドと《火の怒りのタイタン、フレージ》によって中盤戦も強く、クリティカルなサイドボードも存在しない。速い・強い・安定のデッキです。
ボロスエネルギーと言えば3マナ域問題。《歴戦の紅蓮術士》と《鏡割りの寓話》のどちらを採用するか、人によって異なっていましたが、このリストはそのいずれも少しずつ採用し、代わりに別の3マナが入っています。
それが《イーオスのレインジャー長》です。
戦場に出た時に1マナ以下のクリーチャーをサーチし、自身を生け贄にすることで対戦相手がそのターンだけクリーチャーでない呪文を唱えられなくなる。後者の能力は研磨ブリーチに強く、ライフを詰めて《イーオスのレインジャー長》でラストターンを潰すのが基本的な使い方です。
ミラーマッチこそ《歴戦の紅蓮術士》《鏡割りの寓話》に劣りますが、Ma Noah氏は同型よりも研磨ブリーチを意識したのでしょう。サイドボードには大量のカードを用意しているとはいえ、メイン戦を落としてしまうと、残り2戦を必ず勝たなければなりません。研磨ブリーチは時々2種のモックスからとんでもない動きをするデッキなので、どれだけサイド後に相性が良くなったとしても、片方は負けてしまうこともあります。
そこで、メインで勝ちやすいように、《イーオスのレインジャー長》を厚めに採用したのでしょう。
先ほど少し触れましたが、サイドボードには《オアリムの詠唱》《石のような静寂》《空の怒り》《損耗+摩耗》《外科的摘出》と、研磨ブリーチ対策が大量に入っています。
この対策量、そしてメインからの《イーオスのレインジャー長》と、研磨ブリーチに対するリスペクトが、今回の勝利に繋がったのでしょう。
事実、日本では研磨ブリーチはエネルギーに続いて二番手でした。お見事な構築!
研磨ブリーチ
Regional Championship SCG CON Portland : 2位 By jackson knorr

優勝こそしなかったものの、週末に圧倒的パフォーマンスを見せつけた研磨ブリーチ。
《死の国からの脱出》《研磨基地》0マナアーティファクトが揃った瞬間に勝利する恐ろしいコンボデッキで、《研磨基地》は《死の国からの脱出》で墓地から唱えられるので、このデッキは実質《死の国からの脱出》1枚コンボです。
前環境から存在していたデッキでしたが、《オパールのモックス》解禁によって速度に磨きがかかり、2ターンキルも可能となりました。
様々な構成が試されてきましたが、環境の成熟に伴い、研磨ブリーチもほとんどのパーツが固定されるようになっています。
除去枠として採用されているのは《邪悪な熱気》《稲妻》。この1マナ除去が散らされているのは、天敵《大いなる創造者、カーン》を意識した結果です。
地域チャンピオンシップはリスト公開性なので、ゲーム開始時に対戦相手はデッキに入っている火力が何かを知ることができます。この時、《邪悪な熱気》しか入っていなかったとしましょう。すると対戦相手はマイナス能力を使い、《トーモッドの墓所》をサーチしてしまえば、昂揚しない《邪悪な熱気》では2点しか入らないため、返しのターンで《大いなる創造者、カーン》が落とされなくなるのです。
《稲妻》だけの場合は、《大いなる創造者、カーン》がプラスから入ればやはり落とされなくなります。
しかし、1枚ずつ採用されていた場合、相手のプレイを難しくさせることができます。プラスして《邪悪な熱気》で落とされたり、マイナスして《稲妻》と、プラスとマイナスに裏目を発生させることができるのです。
《白鳥の歌》もデッキに1枚入れておくのが重要です。このカードがないと、《オアリムの詠唱》をメインに採用しているデッキに対して無力なのです。
たとえば《白鳥の歌》が相手のデッキに入っていないなら、《死の国からの脱出》《研磨基地》が決まっても、こちらは《オアリムの詠唱》を温存できます。ライブラリーをある程度掘られ、《タッサの神託者》や《ぶどう弾》で敗北しないぎりぎりのタイミングを見計って《オアリムの詠唱》を打つことができるのです。
しかし、《白鳥の歌》が入っていた場合は、途中で落ちてしまうと、《オアリムの詠唱》に《白鳥の歌》を(脱出によって)打たれてしまいます。そのため、おとなしく《死の国からの脱出》のキャストのスタックで打つしかないのです。
研磨ブリーチはライブラリーをすべて掘って最終的に勝利し、しかも墓地のカードにアクセスできるため、1枚差しにも深い意味がある場合があります。とりあえず抜いてしまわないように注意しましょう!
フィニッシャー枠として、このリストは《ぶどう弾》を採用しています。正直、個人的には《タッサの神託者》である必要はないと思っているので、《ぶどう弾》で納得です。
以前の《モックス・アンバー》しかない研磨ブリーチでは、コンボが決まった際に増えるマナは青マナだけでした。そのため《タッサの神託者》が採用されていましたが、今は《オパールのモックス》で好きな色マナが出るので、フィニッシュの色はなんでも良いのです。
《ぶどう弾》はサイドボード後の《溜め込み屋のアウフ》《ドラニスの判事》を除去したりと、途中でドローしても強いカードなので、僕が使うなら《ぶどう弾》にするでしょう。
《神秘を操る者、ジェイス》をメインに採用したリストがチャンピオンズカップファイナルのトップ4に入賞していますが、このカードも強く、個人的には《タッサの神託者》よりもオススメです。
《タッサの神託者》は《記憶への放逐》で誘発型能力を打ち消されてしまいますが、《神秘を操る者、ジェイス》には無意味です。また、コンボ途中に落ちてしまった場合に先に場に出しておけるので、たとえば《外科的摘出》を構えられている時でも、切削で落ちた直後に唱えて戦場に逃がしてしまえば、そのままコンボ達成が可能です。これは《タッサの神託者》にはできない大きなメリットです。
最近ではメインから墓地対策が入っていることも多く、《敏捷なこそ泥、ラガバン》など、不慮の事故で1枚のフィニッシャーが追放されてしまうケースがしばしばあります。《ぶどう弾》《神秘を操る者、ジェイス》の2枚採用を僕は推します!
アミュレットタイタン
Regional Championship SCG CON Portland : 優勝 By Peter Husisian

アメリカ地域CSを制したのはまさかのアミュレットタイタン!
アミュレットタイタンの歴史は非常に古く、今年でなんと10年目。当時は《花盛りの夏》から2ターン目に《原始のタイタン》を出すデッキでした。
10年間も2ターン目に《原始のタイタン》を出し続けながら、禁止改定の影響を受けたのはたった2回という奇跡のデッキ。それがアミュレットタイタンです。ちなみに1度目は《花盛りの夏》で、2度目は《一つの指輪》です。
《一つの指輪》が禁止されてしまったアミュレットタイタンですが、この時に解禁された《緑の太陽の頂点》が組み込まれています。
序盤は土地や《樹上の草食獣》などマナ加速になりつつ、マナが余った状態では《原始のタイタン》をサーチできるため、《緑の太陽の頂点》はデッキ内の実を増やしつつ、序盤のアクションにも寄与する便利なカードです。
デッキについて簡単に説明しましょう。キーカードはそのデッキ名の通り、アミュレット=《精力の護符》です。
このアーティファクトがあるとタップ状態で戦場に出るパーマネントがアンタップで出るので、《シミックの成長室》などの2マナが出る土地がアンタップ状態となります。《精力の護符》が2枚あればアンタップが2回誘発するので、《シミックの成長室》を置くと4マナが生まれます。
《原始のタイタン》から出てくる土地もアンタップ状態となり、そこから様々なコンボに繋がっていきます。
以前までは《原始のタイタン》から《ハンウィアーの要塞》を出して攻撃するデッキでしたが、近頃は攻撃せずとも勝利できるようになりました。
《事件現場の分析者》と《鏡の池》や《変容する森林》によって無限切削や無限マナが可能となり、最終的には《イリーシア木立のドライアド》《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が揃うのです。
そのため、以前までは4枚採用されていた《イリーシア木立のドライアド》は最近では1枚のみに押さえられ、よりデッキが安定するようになっています。
特徴的なのは《邪悪鳴らし》でしょうか。《精力の護符》《洞窟探検》《原始のタイタン》とコンボの肝となる部分にアクセスできます。一度《原始のタイタン》が出ればそこからコンボが始まるので、一時的なマナ加速も絶大な効果を持ちます。
今回の勝利の要因としては、苦手な対策カードが環境的に少なかったことが挙げられるでしょう。
《ウルザの物語》が割られるだけでなく土地から色マナも出なくなり、能力すらなくなってしまうため、この特殊地形対策たちがとにかく苦手でした。
以前までの環境トップはボロスエネルギーとディミーア眼魔で、そのどちらもが《血染めの月》《海の先駆け》を採用していました。そのため、トップメタにとにかく弱いデッキだったのです。
しかし、昨今のメタゲームを鑑みてボロスエネルギーから《血染めの月》は抜けていきました。入っていてもメインは1枚、サイドに2枚目があるか程度です。研磨ブリーチに対して効果が薄く、エルドラージにも実はあまり効かない《血染めの月》は、最近では《溶鉄の雨》になっている場合もあります。
《溶鉄の雨》は逆にアミュレットにはあまり効果のないカードです。するとボロスエネルギーにもある程度強いデッキとなり、元々持っていた「回れば2ターンキル」という特性も生き、アメリカの地域CSで優勝を果たしたのでした。
研磨ブリーチに対してもサイドボードの《溜め込み屋のアウフ》を《緑の太陽の頂点》でサーチできるのが魅力です。他の《緑の太陽の頂点》デッキは少し悠長なため、《溜め込み屋のアウフ》を除去するカードを引くチャンスがありますが、アミュレットは妨害がなければ3~4ターンキルしてくるデッキ。そんなデッキが置いてくる対策カードは、研磨ブリーチ視点では溜まったものではありません。
更に流行のエルドラージランプにはそもそも相性が良く、環境的にキラーカードがアンプレイアブル気味になったこともあって、今非常に立ち位置が良いデッキと言えるでしょう。
アミュレットタイタンは動きがとにかく複雑で、相手をしていて難しいデッキでもあります。何をどこで止めれば良いのか?それを勉強するために、一度デッキを回しておくのもオススメです。