いよいよ今夜から行われるプロツアー『霊気走破』。
『霊気走破』加入後のスタンダード、そにメタゲームブレイクダウンが公式から発表されました。
今回はそのデータをもとに、プロツアーでのメタゲームを分析していきます!
グルールアグロ(66名/18.9%)
最大勢力となったのは、前環境の王者にして歴代最強の赤アグロとの声も名高いグルールでした。

《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》は早いクロック・継続的なリソースを稼ぎ出す、赤アグロの三種の神器。特に《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》のタッグはパイオニアでも大活躍しています。

早いだけならこれまで同速度の赤アグロは存在しましたが、今のスタンダードのグルールアグロはなんといっても粘り強い。ただ除去を大量に入れるだけでは勝利することはできません。
《多様な鼠》は2ターン目に出しても良し、4ターン目に新生で唱えれば横にトークンが並ぶので、単体除去に耐性があります。

緑を入れる理由でもある《探索するドルイド》も、ライブラリーの上2枚を追放して使用しつつ、自身も馬鹿にならないクロック。2枚のスペルが出来事でめくれれば、1枚で3枚分の活躍を見せてくれます。

《岩面村》《不穏な尾根》というマナフラッド受けも存在し、逆に土地が3枚止まっても《心火の英雄》《多様な鼠》《巨怪の怒り》だけで勝ててしまいます。

最序盤からアクションを起こしつつ、中盤・終盤まで攻め続けられる。そしてマナフラッド・マナスクリューの両方に強い。
夢のようなデッキです。
そんなグルールですが、『霊気走破』加入後のスタンダードでは少しその姿を減らしていました。
『霊気走破』で加入した《不気味なガラクタ》《勢い挫き》によって、2番手だったエスパーピクシーのアグロ耐性が上がったことが、まずは挙げられるでしょう。

グルール対エスパーピクシーは、お互いが特に意識していなければ、五分程度の相性でした。『霊気走破』が入り、グルール側にはアップデートがなかったのに対し、エスパーピクシー側は置物除去を手に入れたことで、エスパーピクシーがグルールに強いリストになっていると考えられます。
しかし、グルールも黒いデッキに強い《脚当ての補充兵》を大量に採用することにより、単体除去耐性を向上させられます。今回グルールを持ち込んだプレイヤーはグルール同型、エスパーピクシー、そしてズアードメインの3つを仮想敵としているでしょうから、ミラーマッチとエスパーピクシーに強い《脚当ての補充兵》をメインボードに採用しているプレイヤーは多いはずです。

もしかしたら『霊気走破』で加入した、知られざる新戦力もあるかもしれませんね。
エスパーピクシー(58名/16.6%)
グルールに次いで多かったのがエスパーピクシー。

《養育するピクシー》《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》の3種のバウンスを駆使し、アドバンテージを稼ぎながら相手のライフを速やかに0にするデッキです。

《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》ループを軸にしているデッキの中で最も攻撃的で、2ターン目にパワー3のクリーチャーで攻撃していく、《野生のナカティル》が活躍していたズーを想起させてくれます。

《望み無き悪夢》をバウンスして手札破壊とダメージを稼いだり、《逃げ場なし》を回収して除去を使い回したりと、アグロにも関わらず非常に器用なデッキです。

グルールアグロはリソース勝負はかなり得意なデッキですが、実は守りの面では少し心もとないデッキ。エスパーピクシーはその弱点を突き、グルール相手に短期決戦を挑んでいるのです。《逃げ場なし》などの除去で盤面をコントロールしていくのではなく、ダメージレースに使っているというわけです。

そんなエスパーピクシーに『霊気走破』から加わったのが《不気味なガラクタ》。1マナで-2/-2修正を与える《見栄え損ない》が置物になったことで、グルールへの耐性が上がりました。

これまでは後手で1マナで使える除去は《切り崩し》しかなく、《切り崩し》から入ると2ターン目に《孤立への恐怖》や《この町は狭すぎる》を構えられませんでした。

しかし、1マナの置物除去である《不気味なガラクタ》のおかげで世界は変わりました。1ターン目に除去しつつ、2ターン目に《孤立への恐怖》を立てつつ《不気味なガラクタ》を回収するムーブは、赤アグロにとっては溜まったものではありません。
『霊気走破』後のスタンダードでエスパーピクシーがグルールを圧倒しているのは、ひとえにこの《不気味なガラクタ》のおかげと言っても過言ではないでしょう。

エスパーピクシーが今回負け組になるとしたら、それはグルール側に攻略された時だと思います。グルールを選択したプレイヤーがエスパーピクシーにどんなプランを用意したのかがカギです。
エスパーピクシー側はグルールに対し、除去を増やしてダメージレースを優位に進めて勝利するのが基本戦略で、それはおそらく今回のプロツアーでも同様になると思われます。
一方のグルールは、《不気味なガラクタ》によってこれまでの戦い方ではより勝ちづらくなっています。それならゲームプランをそもそも変えるしかないのですが、単に除去を増やして長期戦を挑むのは、対エスパーピクシーでは得策と言えません。《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》《望み無き悪夢》などでエスパー側もロングゲームができるのです。

だからこそエスパーピクシーは攻略しにくいデッキと言われています。プロプレイヤーたちのグルールが果たしてどのような形でこの難敵を攻略するのか、楽しみですね。
ズアードメイン(53名/15.2%)
グルール、エスパーピクシーとアグロデッキが続く中、3番手につけたのはコントロールデッキのズアードメイン。3番手とは言ったものの、エスパーピクシーと使用者はほとんど変わりません。

《永遠の策謀家、ズアー》によって兆候状態の大主たちを起こして攻めるデッキ、ズアードメイン。その名の通り基本はドメインなので、《力線の束縛》《太陽降下》で盤面を掌握しつつ、《豆の木をのぼれ》でリソースを稼いでいきます。

《豆の木をのぼれ》のトリガーとしても優秀なのが《ミストムーアの大主》《ホーントウッドの大主》。兆候で唱えてカードを引き、《永遠の策謀家、ズアー》で無理やり動かす、2つのインチキ要素がデッキに入っています。

『霊気走破』の影響を特別受けたわけではありませんが、グルールアグロとティムールカワウソを苦手とし、その他のデッキには五分以上あることから、近頃頭角を現してきました。
特にティムールカワウソがエスパーピクシーやディミーアバウンスになったことが大きく、これらのデッキに対しては比較的有利に立ち回れるため、事実上敵はグルールアグロ。グルールをしっかりと意識した構築さえできれば、環境のほとんどのデッキに対して有利に立ち回れるでしょう。
先ほど『霊気走破』の影響を受けなかったと言いましたが、それは少し誤りで、実は《全損事故》が加わっています。

タップ状態のパーマネントに対しては2マナになる、クリーチャー・機体を追放するインスタント。そう、本来5マナのカードが2マナになるので、《豆の木をのぼれ》でドローできるのです。しかも追放なので《心火の英雄》も後腐れなく除去することができ、対赤アグロへの耐性が上がりました。

従来のドメインと違い大主からの《永遠の策謀家、ズアー》によるビートダウンが可能なので、不利マッチを無理やり取る力もあり、デッキパワーはかなり高め。
リストの自由度がそれなりに高いことから、緑白青に黒をタッチ(ズアーのみ)したリストから、緑白黒に青(ズアーのみ)を採用するなど、様々なチューンが可能です。グルールアグロ・エスパーピクシーに強いリストに仕上げたプレイヤーが有利なフィールドですが、果たしてどのようなリストが持ち込まれたのか、早く見てみたいですね。
個人的には《フラッドピットの大主》を抜き、青を《永遠の策謀家、ズアー》だけにした緑白黒タッチ青の形がグルールアグロ・エスパーピクシーに強いと思っていますが、果たして。

ズアードメインまでの3デッキのみが使用者10%以上となっており、グルールアグロ・エスパーピクシー・ズアードメインが現スタンダードの三強と言って差し支えないでしょう。
ジェスカイ眼魔(21名/6%)
21名のプレイヤーが選択したデッキは……ジェスカイ眼魔!?

正直驚きました。
リストはまだ上がっていませんが、最近のトーナメントで勝っていたのは、《逸失への恐怖》で《忌まわしき眼魔》を墓地に落とし、《救いの手》《再稼働》で釣り上げるデッキでした。

《忌まわしき眼魔》を捨てる手段として《蒸気核の学者》を採用していることから、相性の良い《プロフトの映像記憶》も入れ、《忌まわしき眼魔》を吊り上げる以外の勝ち手段もしっかりと入っています。

《灯を追う者、チャンドラ》は『霊気走破』で加入した新たなディスカード手段。機体を作る能力は全体除去と墓地対策に強く、ルーター能力以外にも使い道があるのが魅力です。

ジェスカイ眼魔のようにサイドからキラーカードを入れられてしまうデッキにおいて、《灯を追う者、チャンドラ》のようなサイドカードは最も欲しいカードです。単に《安らかなる眠り》や《除霊用掃除機》を割れるだけのカードではなく、《灯を追う者、チャンドラ》のようにコンボに寄与(ルーター能力)しつつ、相手のサイドボードを無視する(墓地対策が刺さらない)カードが望ましいのです。

《安らかなる眠り》や《除霊用掃除機》は多くのデッキに採用されていそうですが、果たして墓地対策の海を泳ぎ切ることはできるのでしょうか。
霊気走破の影響
今回のプロツアーで使用されている『霊気走破』のカード一覧も公開されています。
1位《全損事故》(166枚)

メインに161枚、サイドボードに5枚。これは大半がズアードメインだと思いますが、7人が使用しているアゾリウスコントロールにも採用されているかもしれませんね。
《全損事故》はズアードメインのマスターピースとなるのでしょうか。
2位《呪文貫き》(160枚)

エスパーピクシーやジェスカイ眼魔、ディミーアミッドレンジなどに採用されているのでしょう。4枚採用されることはほとんどありませんが、メインとサイドに1枚ずつなど、リスト公開制トーナメントでは、少ない枚数を採用して相手にプレイさせにくくする戦術が取れます。
1マナであればグルール相手にも構えやすく、《探索するドルイド》、《亭主の才能》など打ち消したいカードもそれなりに多い。メインに入れてもそれなりに活躍の機会がありそうですね。
3位《ウェイストウッドの境界》(141枚)

対抗色の境界ランドが今回5種収録されましたが、その中で圧倒的な枚数となったのが緑黒。ゴルガリミッドレンジ・ゴルガリ《陰湿な根》は当然として、他にはどのようなデッキに入っているのでしょうか。
2つのゴルガリは合わせて12人。4枚ずつ使ったとして48枚なので、100枚近くが浮いていることになります。ドメインが53人いることを考えると、ここに組み込まれている可能性が高いですね。
ゴルガリミッドレンジはグルール・エスパーピクシーに強く、ズアードメインに弱いデッキ。今回のメタゲームでは優れた選択で、もしズアードメインに対して強いリストになっていれば、トップ8が見えてくるデッキですね。
ゴルガリ《陰湿な根》を持ち込んだ4名はチームデッキでしょうか?今回《脱皮の世話人》で強化されたデッキであり、注目のアーキタイプです。
4・5位《不気味なガラクタ》(130枚)/《勢い挫き》(107枚)

戦場に出た時に除去を行うコンビが4位・5位となりました。トータル枚数は《不気味なガラクタ》の方が多いものの、メインに入っている枚数は《勢い挫き》の方が圧倒的に多いのが面白いところ。
メインから入れる除去としては《勢い挫き》の方が強力なのは言うまでもありません。倒すクリーチャーのサイズに制限はなく、除去できなかったとしても手札破壊が可能ですからね。
ただ、サイドから除去を追加したい時には《勢い挫き》は心もとない。入れたい相手はアグロであり、それならば1ターン目から除去できる《不気味なガラクタ》に軍配が上がります。
ほぼすべてのエスパーピクシー・ディミーアバウンスにこれらのカードは採用されているでしょう。今回トップメタであるグルールがしっかり意識されているのがわかりますね。
6位《輝晶の機械巨人》(58枚)

『霊気走破』の目玉でもある機械巨人サイクルから、緑白の《輝晶の機械巨人》がトップ10入り。
戦場に出た時に1マナ以下のクリーチャー・アーティファクト・エンチャントを2枚サーチするカードで、今回8名が選択しているセレズニア檻、バント檻、そしてバントギアハルクで採用されているのでしょう。
セレズニア・バントの檻デッキは、《収集家の檻》を活用したトークンデッキのことでしょう。クリーチャーにカウンターを置く置物でありながら、秘匿能力を持ち、カードを1枚タダで唱えることができます。

バントの方は《マネドリ》を採用しているのでしょうか。《輝晶の機械巨人》で《マネドリ》をサーチし、《輝晶の機械巨人》をコピーする動きは強烈。

圧倒的な展開量とサイズでクリーチャーデッキ全般に強く、グルールアグロ・エスパーピクシーには優位に立ち回れそうですが、ズアードメインに対しては厳しいデッキです。
とはいえ、それはこれまでの常識。プロツアーで持ち込まれたリスト次第ではズアードメインを圧倒してしまうかもしれません。そうなれば三強すべてに強いということになりますね。
7位《食糧補充》(45枚)

レガシーでも話題になっている3マナのドロースペルが7位にランクイン。41枚がメインで使用されています。
3マナのドローと言えば2ドローが普通でしたが、《食糧補充》は5枚見て好きな2枚を選べる破格の性能。コンボデッキはもちろん、コントロールでも採用されそうです。

今回の上位デッキたちのどれにも入っていなそうですが、アゾリウス全知とアゾリウスコントロールあたりでは入るかもしれませんね。アゾリウスコントロールは《全損事故》と《食糧補充》と、『霊気走破』で地味に強化されたアーキタイプですね。

《放浪皇》があった頃のスタンダードではアゾリウスコントロールは環境最強のデッキで意識される側でしたが、今回はメタ外。そういう時に怖いデッキなので、アゾリウスコントロールには少しばかり期待してしまいますね。
終わりに
というわけで今回はプロツアー・シカゴのメタゲームブレイクダウンを元に、スタンダード環境をお届けしました!
ちなみに僕の優勝予想はズアードメインです!

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それではまた!