article

【今週のピックアップデッキ】アゾリウスブリンク/ボロス召集/ティムールスケープシフト

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.08.29

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ アゾリウスブリンク ボロス召集 ティムールスケープシフト   アゾリウスブリンク  スタンダードリーグ : 5-0 By DB_Dykman MTGアリーナ用インポートデータ クリーチャーを一時的に追放して、「戦場に出た時」の能力を何度も使い回す。この戦略を主体とするデッキの総称は、《一瞬の瞬き》の英語名にちなんでブリンクと呼ばれています。 初代《一瞬の瞬き》はフラッシュバック付きの優秀なブリンクで、《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》や《造物の学者、ヴェンセール》で相手の土地を戻し続けたり、《目覚ましヒバリ》をブリンクさせて一気に2体リアニメイトし、スタンダードで大活躍していました。 最近ではモダンでブリンク内蔵クリーチャー《溌剌の牧羊犬、フィリア》で《ベイルマークの大主》を明滅させるオルゾフブリンクが躍動していますね。 そんな歴史あるアーキタイプ、ブリンクがスタンダードに帰ってきました!   まずは肝心のブリンクカードから紹介していきましょう。   いつの間にか採録されていた《魅力的な王子》はブリンク以外にライフゲインと占術を持つ便利なクリーチャー。自身がブリンクカードでありながら、ブリンクを受ける対象としても使えるのが嬉しい。 《忠実な馬、フォーチュン》は騎乗したクリーチャーと自身の2つをブリンクできる乗騎。戦場に出た時に占術2のオマケがあるので、ドローの質を高めながら横のクリーチャーを使い回せます。 『久遠の終端』から入った新しいブリンククリーチャーが《万物の定めを追う者》。戦場を離れるまでクリーチャーを追放するのですが、ワープで唱えるとターン終了時に《万物の定めを追う者》が戦場を離れるので、実質ブリンクです。通常キャストした際は除去としても機能してくれます。さすが暗殺者。 そしてブリンクスペルは《水飛沫の門》!1マナですがソーサリーとそこそこのデメリット。しかし、鳥か蛙かカワウソかネズミをブリンクさせていた場合は1ドローできます。このデッキには1種だけ蛙クリーチャーがいるので、ただの1マナブリンクでない時もあります。 その蛙が《陰気な港魔道士》。他のクリーチャーが死亡せずに戦場を離れていたら1ドローできる蛙で、ブリンクとの相性が最高です。クリーチャーをブリンクするたびに1ドローですからね。《忠実な馬、フォーチュン》などで2体同時に戦場を離れた場合は1ドローしかできませんが、それでも十分。 2マナを支払うと自分のクリーチャーを手札に戻せるので、1ドローしながらそのクリーチャーを戦場に出して再利用できます。   さあ、充実したブリンク陣を見てもらった後は、ブリンク対象となるクリーチャーを見てみましょう。   まずは《量子の謎かけ屋》!今やスタンダードのみならずモダンでも第一線で活躍するスフィンクスですが、戦場に出た時に1ドローできるので、当然ブリンク対象です。手札がなければブリンクで1ドローが2ドローになり……あっという間に手札が回復していきます。 そしてこちらは戦場に出た時ではなく、離れた時に誘発する《反因果の残留》。戦場を離れた時にカードを引いて、その後にコントロールしている土地の数以下のマナ総量のパーマネントをタップ状態で出せます。土地を伸ばして良し、クリーチャーを叩きつけても良しの良質なエルドラージ。 本来はワープで能力が誘発し、その後は死亡時にもう1度誘発する程度のエルドラージなのですが、ブリンクで何度も能力を使い回せるので、このデッキでは一度戦場に出して放置すると大変なことになります。   更に《量子の謎かけ屋》と《反因果の残留》はいずれもワープを持つクリーチャーなので、ブリンクとの相性はぴったりです。ワープはエンド時に追放される代わりに本来よりかなり軽いコストに設定されています。なので、ワープ状態のクリーチャーをブリンクしてそのまま場に定着させる行為は、実質的な踏み倒しとなるのです。   3ターン目に《忠実な馬、フォーチュン》、4ターン目に《反因果の残留》をワープで出して《忠実な馬、フォーチュン》に騎乗して攻撃すると、《反因果の残留》が誘発しながらパーマネントを展開し、最終的に《反因果の残留》が戦場に降り立つことになります。 同じワープ持ちの《星原の歌手》は、戦場に出た時の誘発を倍にします。《魅力的な王子》で4点ゲインしたり、同時に2体をブリンクしたり、《量子の謎かけ屋》で2枚引いたりと、やはり放置すれば大暴れ。《反因果の残留》とは何のシナジーもありませんが贅沢は言えません。 一度動き出すとアドバンテージが止まらなくなるのがブリンクデッキの良いところ。回していてすごく楽しいので、普通のマジックに飽きた方はぜひお試しください。     コスモジャンド パイオニアリーグ : 5-0 By hauterho MTGアリーナ用インポートデータ 小粒なクリーチャーを展開して召集クリーチャーを出して相手をなぎ倒す、横並びビートダウン、ボロス召集。   スタンダードでも活躍したデッキですが、パイオニアの召集は一味違います。   スタンダードではクリーチャーを並べた後の召集カードが《イーオスの遍歴の騎士》でした。クリーチャーを2枚加える強力なカードではありますが、速効性があるわけではありません。 それがパイオニアになると大きく変わります。《イーオスの遍歴の騎士》と同じく、5マナの召集持ちのクリーチャーがもう1種増えるのです。それが《敬慕されるロクソドン》。 しかもその能力は《イーオスの遍歴の騎士》と違い超攻撃的。召集のためにタップしたクリーチャーの上に+1/+1カウンターを1個ずつ置いていくのです。2ターン目に《敬慕されるロクソドン》を出しながら2/2の群れが5体並ぶ恐ろしい場が完成します。   と、ここまでは昔から変わりません。今回なぜボロス召集を紹介したのか?その答えは、『久遠の終端』でとあるカードが入って強化されたからです。   それが《コスモグランドの頂点》! スタンダードでもエスパーピクシーで採用されていたクリーチャー。2回呪文を唱えるとトークンを生成したり、全体強化を行います。このカードがボロス召集と相性が良いことに気が付いたプレイヤーは天才ですね。   まず召集は非常に軽いデッキ。1マナのカードが大半ですし、《羽ばたき飛行機械》に至っては0マナ。3ターン目に《コスモグランドの頂点》を出してそのまま誘発までいけます。 召集クリーチャーたちも場合によっては0マナになるので、やはり3ターン目に《コスモグランドの頂点》を出しながら《イーオスの遍歴の騎士》と繋げて、そこから《コスモグランドの頂点》が誘発します。 そして《コスモグランドの頂点》の能力がどちらも召集と相性が良いのもポイント。横に広げたければトークンを生成すれば良いし、十分にクリーチャーがいるなら全体強化で次のターンの勝利を狙えます。   この3マナのスロットには《イモデーンの徴募兵》が入っていることが多かったと思います。全体強化しつつ速攻を付与するこのカードはフィニッシュの瞬間には効果的ですが、腐る場面もそれなりにありました。クリーチャーが足りなければ中途半端なダメージしか入りません。 しかし、《コスモグランドの頂点》はトークン生成に全体強化と、場面を選ばずに活躍できるカードです。《イーオスの遍歴の騎士》で《コスモグランドの頂点》と1マナクリーチャーをセットで拾われた時の絶望感と言ったらないでしょう。 《ひよっこ捜査員》《スレイベンの検査官》の手がかり8枚体制に《イーオスの遍歴の騎士》なので、《コスモグランドの頂点》は意外と2回以上誘発してくれます。ボロス召集という一撃必殺のデッキが、継続的なトークン生成を手に入れたのはかなりの脅威です。   デッキの性質上、単体除去に非常に強いデッキなので、全除去がメインから大量に入っている環境でなければ、ボロス召集は無双するかもしれません。 《コスモグランドの頂点》の頂点たるゆえん、戦えばわかるはず!   ティムールスケープシフト モダンゴールドリーグ : 5-0 By ilGianB1 土地を7枚置いて《風景の変容》を打つと勝利する。モダンにおける《風景の変容》はずっとそんなカードでした。 7枚の土地を生け贄にするとデッキから6枚の《山》と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が場に出て、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の条件が6枚同時に達成。18点のダメージが飛んで終了。これを《風景の変容》1枚で行えるので、実質スケープシフトは《風景の変容》1枚コンボでした。 《欠片の双子》が《やっかい児》を必要としたり、コンボは基本的には2枚で成立することがほとんど。 その中でたった1枚でゲームに勝利できる《風景の変容》は、人気の土地コンボでした。   しかし現代マジックにおいて、土地をただ7枚並べるという行為は2枚コンボよりもハードルが高い。《風景の変容》と土地7枚を揃えるのは2枚コンボ以上の難易度となってしまい、スケープシフトは現環境からは姿を消しています。   《風景の変容》は《精力の護符》があれば4枚の土地から瞬殺でき、このコンボを擁するアミュレットタイタンは今モダンで最も強いコンボの一つとなっています。2枚コンボに1枚コンボが負けてしまったのです。 《風景の変容》と土地7枚で勝つデッキがモダンで再び脚光を浴びるにはどうすれば良いか?その答えは「速やかに土地を並べる」に他なりません。   そしてそのためのカードが『久遠の終端』で追加されました。その名は《終端探査機》。 1マナ2/2で死亡時にお互いのプレイヤーが着陸船トークンを生成できるというアンコモン。このカードが《風景の変容》に新たな希望を与えました。 着陸船は2マナ起動でライブラリーから基本土地を場に出せるカード。要するに《不屈の自然》を行えるのですが、この着陸船トークンを死亡時に生成するだけの《終端探査機》がなぜ重要なのか?   答えは《耕作の閃光》です。 ライブラリーから基本土地を2枚サーチし、1枚をセットできる3マナのカード。要するに《耕作》なのですが、緑のクリーチャーを生け贄にすることで0マナでキャストできてしまいます。そう、この《耕作の閃光》の生け贄に《終端探査機》はぴったりなのです。 1ターン目に《終端探査機》を出して《耕作の閃光》で生け贄にし、2ターン目に着陸船を起動。これだけで3ターン目に既に5マナが確定するので、1回のマナ加速があればお手軽4ターンキルとなります。 《耕作の閃光》はこれまでもスケープシフトに組み込まれてきましたが、ネックなのは0マナで打つための追加コストでした。緑の軽いクリーチャーは環境にさほど多くなく、マナ加速ができるかもしれない《とぐろ巻きの巫女》やドローできる《氷牙のコアトル》など、不純物となりうるカードを採用せざるを得ませんでした。 その点、《終端探査機》は死亡時に確実に着陸船になるので、まっすぐ《風景の変容》で勝つルートを走ることができます。   《終端探査機》が加わったことで《耕作の閃光》で生け贄にできるクリーチャーが《樹上の草食獣》と合わせて2種となり、1ターン目のキャストがそれなりに安定するようになりました。ようやくモダンで《風景の変容》が《精力の護符》なしでも間に合うようになったのです。 土地を並べて《風景の変容》を打つだけのシンプルなデッキ構成なので、入っているカードも素直なものばかりです。《次元の創世》はマナ加速が必要なら土地を置き、《風景の変容》も探すことができる、まさにこのデッキのためのカード。 《食糧補充》も青いコンボデッキならお馴染みですね。更に土地をたくさん並べるデッキなので、《星間航路の助言》も採用されています。 7枚目の土地を置いて2マナで打ち、7枚の中から《風景の変容》を探してそのまま打って勝つのは美しい流れです。《食糧補充》よりも強い瞬間ですね。   《風景の変容》は4枚しか採用できないため、この手のデッキでは実質《風景の変容》を7枚体制にする《願い》や《白日の下に》などが採用されることがありましたが、ドロースペルが強くなり、《風景の変容》へのアクセスが容易になり、ついにそういった追加の《風景の変容》はすべて抜けました。 《終端探査機》の加入でモダンのスピードに追い付いたティムールスケープシフト!《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を再び噴火させるときが来ました!

【週刊メタゲーム通信】王者イゼット大釜を脅かすディミーアネズミと赤単アグロ

週刊 Standard ピックアップ

2025.08.26

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   先週末はチャンピオンズカップファイナルのスペシャル予選に加え、マジックオンライン上で非常に競技性の高いイベント、スタンダードショーケース予選が行われました。   ショーケースチャレンジのトップ8に入賞したプレイヤーと、直前予選で5-0したプレイヤーだけが参加し、優勝者は参加者8人で行われるMOCS本戦に出場でき、同時にプロツアーの権利も獲得できます。   そのため、参加者たちは遊びなしの大本命デッキを持ち込んできます。このショーケース予選は現環境をそのまま反映していると言っても良いレベル!   というわけで今回はショーケース予選を中心に、最新メタゲームをお届けします!   紹介デッキ イゼット大釜 ディミーアネズミミッドレンジ 赤単アグロ     イゼット大釜  Standard Showcase Qualifier: 2位 By Lillia MTGアリーナ用インポートデータ スタンダードを語る上で欠かせないのがこのイゼット大釜。ローテーション後に大暴れし続け、トップ8に4人は当たり前、6人が入賞するなんて日もあるほど。   テーブルトップ・アリーナ・マジックオンラインとあらゆる環境で勝ちまくっており、当然今回のショーケース予選でも大本命中の大本命。トップ8には4人が進出しています。   デッキのコアパーツである《略奪するアオザメ》《逸失への恐怖》《迷える黒魔道士、ビビ》《アガサの魂の大釜》《冬夜の物語》《プロフトの映像記憶》は初期から変わっていません。 《迷える黒魔道士、ビビ》《アガサの魂の大釜》によるコンボと《プロフトの映像記憶》による攻め、その両方を同時に繰り出し、相手に対応を迫っていく、コンボビートダウンです。 調整ポイントとなっているのはまず《光砕く者、テルサ》《蒸気核の学者》の枠です。 《光砕く者、テルサ》は3/3速攻なので、《プロフトの映像記憶》から3ターン目に出した時の打点が特に魅力です。全体除去にも耐性があるので、対コントロールで優秀ですね。 一方の《蒸気核の学者》は2枚引いてから1枚捨てることで、リソースを稼げるのがまず優秀。そして自身が2/2警戒なので《プロフトの映像記憶》で強化した時に攻防で活躍してくれますし、《逸失への恐怖》で追加戦闘が発生した際に、警戒があるので他のアンタップしたクリーチャーと一緒に殴り続けることができます。 どちらも一長一短ですが、《光砕く者、テルサ》の方がやや優先されており、伝説のリスクもあるので3枚採用で《蒸気核の学者》1枚といったリストが多かったのが初期でしたが、現在ではその枚数はやや拮抗しており、この準優勝したリストでは2枚ずつの採用となっています。   イゼット大釜は基本的に殴るデッキなので《光砕く者、テルサ》の方がデッキと合っているのは確かですが、手札0枚の状況で《光砕く者、テルサ》をトップデッキした際は、ただ出して殴ることしかできません。 一方の《蒸気核の学者》は手札が0枚の時に引いたらとりあえず2ドローできますし、そこで引いたカードによっては手札を残せますし、当然《プロフトの映像記憶》も誘発します。 《光砕く者、テルサ》VS《蒸気核の学者》はこれからも永遠の課題となりそうですが、案外この2枚ずつがちょうどよいバランスなのかもしれませんね。   そして《量子の謎かけ屋》はすっかりイゼット大釜の定番となりました。 手札が1枚以下の時にドローすると追加で1ドローが発生するスフィンクス。手札が枯れやすいこのデッキでは追加のドローは非常に嬉しく、《プロフトの映像記憶》のバリューも跳ね上がります。   それだけでなく、《量子の謎かけ屋》は調和との相性も抜群。ワープで《量子の謎かけ屋》を唱えて、自身をタップすることで《冬夜の物語》を墓地から調和で唱えられるのです。もちろんこの調和の際に手札が1枚以下なら追加のドローも発生し、一気にリソースが爆発します。 《量子の謎かけ屋》が入ったおかげでイゼット大釜はリソース勝負もできるデッキになりました。特にサイド後は墓地対策で《迷える黒魔道士、ビビ》《アガサの魂の大釜》を潰される展開が多く、純粋な《プロフトの映像記憶》ビートになります。 その際はフェアなゲームをする必要があり、《量子の謎かけ屋》は更に活躍してくれるのです。サイド後に真価を発揮するカードですが、そもそもメインに入れても強力だったことが判明したため、最近では多くのデッキにメインから採用されています。   イゼット大釜は固定パーツ以外のチューニングを柔軟に行えるのも強みです。ドローも多くそれらを引き込めるため、カウンターを少し多めにすればコントロールに強くなり、除去を増やせばアグロ耐性が上がります。   スタンダードの王者はまだまだ玉座を譲りそうにはありません。     ディミーアネズミミッドレンジ Standard Showcase Qualifier: 優勝 By Zompatanfo MTGアリーナ用インポートデータ そんなイゼット大釜ばかりのスタンダードショーケース予選を見事優勝したのはディミーアミッドレンジ! 『ダスクモーン:戦慄の館』で今の形が完成してからというもの、ずっとスタンダードで生き残り続けていたデッキが、イゼット大釜を下して見事優勝しました。   ディミーアミッドレンジはトップ8の人数こそイゼット大釜より少ないものの、不思議と優勝回数は多く、単純なトーナメント優勝数だけで見ればディミーアとイゼットは同じぐらいかもしれません。   そしてその注目のリストは、ディミーア・ネズミ・ミッドレンジと名付けられています。そう、このディミーアは通常のリストに比べてネズミ要素が多いのです。   まず2マナ域の定番だった《大洞窟のコウモリ》の枠に入っているのがネズミ、《群青の獣縛り》です。 パワーが2以上のクリーチャーにブロックされない能力で、《悪夢滅ぼし、魁渡》の忍術を達成しやすかったり、《永劫の好奇心》でカードを引く際に便利。攻撃面において優秀なのはもちろん、1/3警戒というスタッツで守りにも貢献してくれます。 クリーチャーやアーティファクトの能力を失わせるので、《アガサの魂の大釜》の起動を防いだり、戦場の《迷える黒魔道士、ビビ》の能力を失わせることも可能です。 《大洞窟のコウモリ》は優秀な手札破壊兼クロックですが、環境の多くのデッキが除去を採用している状況では、ただ相手の手札を見るだけのカードになってしまいます。除去の薄いデッキやコンボデッキが台頭しているなら価値がありますが、イゼット大釜が中心のメタゲームでは除去が飛び交うことは必至。 それなら出してただ除去されるだけの《大洞窟のコウモリ》の意味は薄く、《群青の獣縛り》のように戦闘において優秀なカードを採用したのでしょう。   そしてもう1種のネズミが《下水王、駆け抜け侯》。墓地をけん制しながらネズミを追放し、どんどんクロックを増やしていきます。 《冬夜の物語》や《迷える黒魔道士、ビビ》を追放していくことで相手のコンボを防ぎ、更にクロックも生み出す優秀なクリーチャーです。《永劫の好奇心》が4枚入ったディミーアでは、クリーチャーがとても重要です。除去で何も残らない《分派の説教者》ではなく、とりあえず出したターンに効果のある《下水王、駆け抜け侯》を優先するのも納得です。 このリストはかなりマナカーブが軽くなっています。厚くなりがちな3マナ域を僅か7枚におさえ、序盤からの攻めを徹底しています。1ターン目からテンポよく展開していくことで、《悪夢滅ぼし、魁渡》《永劫の好奇心》は強くなっていきます。   1マナ域が多いことから《始まりの町》を4枚採用しているのもポイント。ディミーアミッドレンジで《始まりの町》4枚のリストは今までに見たことがなかったので驚きましたが、このデッキのコンセプトを考えればその選択も納得です。 サイドボードにはネズミを活かせる《情け知らずのヴレン》も採用しており、このデッキはまさしくディミーアネズミ! イゼット大釜に強いデッキとして注目されており、実績もそれを証明しています。デッキに迷っている方はぜひ試してみるべきですね。   赤単アグロ チャンピオンズカップシーズン4ラウンド2スペシャル予選in吉祥 : 権利獲得 By Hitomi Masaaki MTGアリーナ用インポートデータ イゼット大釜キラーとして先週末に武勲をあげたのは、ディミーアミッドレンジだけではありません。   先週の土曜日の予選で権利を獲得し、その後日本で大流行したイゼット大釜をメタりメタった赤単、それがこちらです。   《剃刀族の棘頭》はイゼット大釜キラーと呼ぶべきカード。対戦相手がカードを引くたびに1点喰らうので、《蒸気核の学者》や《光砕く者、テルサ》は出しにくく、《プロフトの映像記憶》《逸失への恐怖》も1点を受けることになります。 イゼット大釜にとって絶対に除去しなければならないクリーチャーで、序盤に他のクリーチャーに除去を使わされてから出てくる《剃刀族の棘頭》は死を意味します。   《剃刀族の棘頭》の代わりに抜けた2マナ域はなんと《多様な鼠》ですが、考えてみれば《多様な鼠》で対象に取れるクリーチャーは最早《熾火心の挑戦者》と《魂石の聖域》しかありません。1ターン目の《心火の英雄》から《多様な鼠》の流れがなくなった今、このカードは不要と判断したのでしょう。トランプルをつける《巨怪の怒り》が禁止されたのも要因の1つですね。 《焼き切る非行士》もあまり見ることのない珍しいクリーチャー。1マナ1/1威迫でダメージを通しやすく、ひとたび最高速度に達すれば二段攻撃と、1マナ域とは思えない性能です。 1ターン目に引いてよし、2枚目以降を中盤に引いてもそこそこの活躍をしてくれるため、ジェネリック《心火の英雄》と言ったところでしょうか。1マナ域は欲しいけど、弱い1マナ域はいらない。そんな悩みに応えてくれるカードです。 除去の選択も実に独特で、《噴出の稲妻》のキッカーを含めるとすべて4点以上の火力呪文になっています。ディミーアミッドレンジの《分派の説教者》はもちろん、《プロフトの映像記憶》で大きくなった《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》など、3点では処理できない状況が多発することから、4点以上の除去が多く採用されているのでしょう。 火力を本体に打って勝利する展開はほとんどないため、クリーチャーを出して除去でブロッカーを退けてライフを削ることをまっすぐ目指しています。除去の選択も素晴らしいですね。   日曜日の日本の多くの大会ではこの赤単が活躍し、イゼット大釜を完全に駆逐しており、対イゼット大釜に対する回答として巷で話題沸騰中です。   《剃刀族の棘頭》はドラゴン型の赤単にも採用されはじめ、いよいよイゼット大釜は攻略され始めたと言って良いでしょう。 イゼット大釜・ディミーアミッドレンジ・赤単アグロ。スタンダードの新たな三強がはっきりしたところで、今週はどのようなメタゲームになるのか。そして新たなデッキは現れるのか。   今週もスタンダードから目が離せません。

【今週のピックアップデッキ】4色ティーチングコントロール/コスモジャンド/白トロン

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.08.22

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ 4色ティーチングコントロール コスモジャンド 白トロン   4色ティーチングコントロール  スタンダードリーグ : 5-0 By Manuel_Danninger MTGアリーナ用インポートデータ 《神秘の指導》というカードをご存じでしょうか? 『時のらせん』で登場した4マナのサーチ呪文で、インスタントか瞬速を持つカードをサーチすることができるカードです。   当時はこの《神秘の指導》を主軸に据えたティーチングコントロールが『時のらせん』限定構築の環境を席巻していました。   《神秘の指導》で除去かカウンターを拾い、それを使いながら、フラッシュバックで《神秘の指導》をサーチ。《神秘の指導》を1枚引くだけでこれを4回行えるので、非常に再現性の高いコントロールデッキでした。 そんな《神秘の指導》は実は『ファウンデーションズ』で再録されており、スタンダードで使用することができます。そう、ティーチングコントロールがスタンダードに帰ってきたのです!   とはいえ、その枚数は控えめで2枚となっています。今のスタンダードには《神秘の指導》を超えるドロースペルがありますからね。   そう、《星間航路の助言》です。2ターン目に除去を探すために打ったり、ゲーム後半ではキッカーで唱えて10枚以上の中から2枚を探すなど、状況に応じて打ち方を変えられる素晴らしい呪文です。 《失せろ》や《稲妻のらせん》など優秀な単体除去や、《喝破》《三歩先》といった強力な打ち消し呪文で低マナ域は構成されており、コントロール好きなら大満足のラインナップです。 ここまでの顔ぶれはジェスカイですが、このデッキは《神秘の指導》のフラッシュバックのために黒を入れています。それなら黒を使わないともったいないですよね。そこで採用されているのが《不可避の敗北》です。 土地以外のパーマネントを追放し、更に3点ドレインのオマケまでついている4マナのインスタント。さすが3色を使う除去なだけあって破格の性能ですが、色が悪くてこれまでは使われることはありませんでした。   3点ゲインはコントロールには非常に嬉しく、プレイし続けるだけで勝手にこちらが有利になるすごい除去です。世が世なら《包囲サイ》クラスの活躍をしていたかもしれません。それぐらいのポテンシャルを秘めています。 当然このカードも《神秘の指導》で探すことができます。 そして《神秘の指導》で引っ張ってこれる必殺技枠は《ジェスカイの啓示》!ジェスカイの根本原理と言われるほど能力を詰め込んだこのカードもインスタント。しかも本体に飛ばすことができるので、たとえ話でもなんでもなく、除去を打ってるだけで勝手に勝ってしまうのがこのデッキなのです。 《稲妻のらせん》含めて除去の多くにはゲインがついており、ビートダウンに対しては高い耐性を持っています。コントロールにも《神秘の指導》のアドバンテージ量で勝つことができ、理論上は最強のデッキかもしれません。 コントロールフリークの皆様はぜひお試しください。     コスモジャンド パイオニアリーグ : 5-0 By xfile MTGアリーナ用インポートデータ ジャンドカラーと言えば、赤緑黒で構成されたミッドレンジ。ミッドレンジとは除去と質の高いクリーチャーで守る中速のデッキで、その中でも手札破壊を使う黒、質の高いクリーチャーの緑、攻めと守りを兼ね備えたアドバンテージ源《血編み髪のエルフ》を使うジャンドカラーがスタンダードでは定番でした。 このミッドレンジ戦略は大流行し、下環境でも猛威を振るいました。軽いカードだけで構成された中速デッキは序盤からアグロには隙がなく、コントロールにも手札破壊とクリーチャーによるビートダウンで勝つことができ、サイドボード後は不要なカードが有効牌に変わることから、不利マッチがとても少ないデッキとなり、モダンでもジャンドは親しまれていました。   モダンでは《稲妻》《思考囲い》《タルモゴイフ》によってジャンドは成立していました。質の高い除去・手札破壊・クリーチャー。ミッドレンジに必要なものはそれだけです。 そしてパイオニアでもミッドレンジは最強であり続けました。ミッドレンジを1枚で体現したカード《鏡割りの寓話》と最強の手札破壊《思考囲い》、そして環境屈指の除去である《致命的な一押し》を使うラクドスミッドレンジです。そんなラクドスに今回久しぶりに緑が加わりました。   その緑のカードとは『久遠の終端』で注目されていた1枚、《コスモゴイフ》!まさかミッドレンジにゴイフが戻ってくる日が来るとは。懐かしさに目頭が熱くなります。 《コスモゴイフ》は《タルモゴイフ》とは真逆で、墓地ではなく追放領域を参照します。自分がオーナーの追放領域にあるカードの数だけパワーとタフネスが上がるゴイフなので、普通に使うだけではただの2マナ0/1です。   しかしご安心してください。このデッキには実にたくさんの追放手段があります。   まずは《墓地の侵入者》。戦場に出た時と殴るたびにどんどん追放領域にカードを溜めていけます。相手の墓地を追放しても無意味なのは少し残念ポイント。 一方《黄金牙、タシグル》は探査を持つ4/5クリーチャー。かつてはミッドレンジの多くに採用されていたカードですが、今回は探査によって追放領域にカードを送り込めることから再注目されました。1マナで出せば5枚を追放できるので、《コスモゴイフ》は一瞬で5/6に膨れ上がります。 そしてなんといっても《悪魔の取り引き》! ライブラリーの上13枚のカードを追放し、その後好きなカードを手札に加えられる。ちょっと変わったサーチ呪文です。先にライブラリーを13枚を追放するので、コンボデッキで使う場合は少しリスクがあるというデザインになっています。   なんとこのカードを打った瞬間に《コスモゴイフ》は13/14と宇宙のようなサイズに!《悪魔の取り引き》でそのまま《コスモゴイフ》をサーチしても良いですし、《コスモゴイフ》が既に殴れているのなら、瞬殺カードを持ってこれます。   それが《ティムールの激闘》。クリーチャーに二段攻撃とトランプルを付与してくれるので、《コスモゴイフ》が突然13/14二段攻撃トランプルとなって相手に襲い掛かるのです! コンボ時以外は腐りがちな《ティムールの激闘》をデッキに入れることができるのは《悪魔の取り引き》のおかげです。強力なサーチ呪文によってこのプランが成立しています。 それ以外のカードはミッドレンジ然とした除去と手札破壊でまとまっており、《コスモゴイフ》も攻防で活躍するクリーチャーなので、《ティムールの激闘》が入っているとはいえ、戦い方はミッドレンジそのものです。   ミッドレンジが好きな方もコンボ好きにもオススメのコスモジャンド、お試しあれ。   白トロン モダンリーグ : 5-0 By kenon 《ウルザの塔》《ウルザの鉱山》《ウルザの魔力炉》。3種の土地を揃えることで7マナ出るぶっとんだ土地。 これらの土地を揃えて大量のマナを出すデッキ、通称ウルザトロン。《森の占術》がスタンダードにやってきた『ミラディン』で一気に人気が爆発し、《歯と爪》を打つ緑トロンから、ドローでトロンを揃えて大量のマナでコントロールする青トロンなど、様々なトロンがスタンダードから下フォーマットまで誕生しました。 モダンでも緑トロンや無色トロンが今も現役で活躍していますが、今回紹介するのはそんなトロン業界に殴り込みにやってきた新たな色。   それが白トロンです!   さあ白いトロン、君は何をやってくれるんだ?早速見てみると、他のトロンにはないメリットがありますね。   そう、単体除去です。青トロンも無色トロンもクリーチャーを除去するのがとにかく苦手で、《コジレックの命令》に頼っていましたが、白トロンなら《孤独》を4枚採用できます。 《冥途灯りの行進》は1~2ターン目から打てる除去で、トロンが苦手とする序盤をしっかりと制してくれます。 全体除去も白ならお手の物。万能除去である《神の怒り》に加えて《空の怒り》も入っています。エネルギーを溜めて《空の怒り》を2マナで打つのが本来の使い方ですが、このデッキでは大量のマナを支払って《空の怒り》を大きく唱えます。たくさんのマナを出せるトロンならではの荒業ですね。 白いトロンはドローが不足してしまいがち。《一つの指輪》を失ってかなり心配ではあるものの、ラインナップを見てみるとそれが杞憂であることがわかります。 《大いなる創造者、カーン》はサイドボードの好きなカードにアクセスできる万能カード。「サイドボードの数だけ忠誠値があるようなもの」と言われていますがまさにその通り。除去から墓地対策、《三なる宝球》などの妨害カードまでなんでも揃っています。 そして《嵐の目、ウギン》もドローできるプレインズウォーカー。除去も兼ねており、このカードの存在は、リソースが枯れやすい白トロンにとっては本当に大きいはず。オルゾフなど一部のデッキには《嵐の目、ウギン》を出しただけでもゲームに勝ててしまうでしょう。 《コジレックの命令》《嵐の目、ウギン》《大いなる創造者、カーン》の無色3種のおかげで、最早どのカラーのトロンもリソースを稼ぐのは簡単になりましたね。黒トロンが出てきたのも納得です。 白トロンは、トロンが苦手な序盤のカードにアプローチしやすいのが優秀で、しっかり弱点を克服しています。新たな色のトロンを組むなら、まず長所と短所を意識したいですね。トロンは揃った時の爆発力も重要ですが、どう揃えるか、揃わなかった時にどうするかが肝心。   もしかしたら悩みどころをすべて解決する赤トロンが現れたりなんてこともあるのかも?

イゼット大釜とディミーアミッドレンジだけじゃない!スタンダードの有力デッキ

Standard ピックアップ

2025.08.21

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   スタンダードは相変わらずイゼット大釜が絶好調!どのトーナメントでも常に複数人が入賞し、最強の名を欲しいままにしています。   ディミーアミッドレンジはそんなイゼット大釜に次ぐ二番手で、この2つのデッキを攻略できるかどうかはカギとなっています。   そして今回はこの二強に続いて最近好成績を上げているデッキたちをご紹介していきます。   紹介デッキ ボロスハツカネズミ 赤単ドラゴン ジャンドコーナ   ボロスハツカネズミ  スタンダードチャレンジ : 3位 By deleon91 MTGアリーナ用インポートデータ 最高の1マナ域である《心火の英雄》と、《多様な鼠》とあわせて20点近いダメージを叩き出していた《巨怪の怒り》。 このキーカードが2種消えてしまったハツカネズミ主体の赤単アグロですが、今はボロスとなって環境に生き残っています。この最強格の2枚を失ってもまだ勝てるのですから、とんでもないオーバーパワーでしたね。   さて、ボロスカラーは実は今のスタンダードで非常に組みやすい2色となっています。《戦場の鍛冶場》が落ちてしまったものの、『久遠の終端』で《聖なる鋳造所》が再録され、これが《サンビロウの境界》のための土地タイプカウントも満たすので、マナベースとしてはむしろ強化されました。 《心火の英雄》を失った1マナ域を埋めるのはその白いカード。《花足の剣豪》は1マナ1/2とスタッツこそ並ですが、新生能力を持っていて、3マナで出すと2体に広がります。 そしてその能力も強烈。自身が呪文や能力の対象になった時に、それが1回目なら、ハツカネズミが+1/+0修正を受けます。つまり《多様な鼠》で二段攻撃を付与すると、ハツカネズミが全体強化されるのです。新生で出した分を含めて2体の《花足の剣豪》が対象になれば全体に+2修正が入り、凄まじい打点を叩き出します。 他の低マナ域にはかつての赤単のエースたちが並んでおり、《雇われ爪》、《熾火心の挑戦者》、《多様な鼠》は腕を組んでいます。《熾火心の挑戦者》と《多様な鼠》が存在する限り、赤いアグロが環境から消えることはないのでしょう。早いクロック、リソース、爆発的な打点、それらをすべて持つのがこのコンビです。 最強の3マナ域、《叫ぶ宿敵》の横にいるのは《岩山炎の後継者、メイブル》。ハツカネズミを全体強化するだけでなく、戦場に出た時に装備品《岩山炎》を生成します。 この装備品は装備クリーチャーに+1/+1、警戒、トランプル、速攻を付与するなかなかの優れもので、伝説ではないため2枚は置けませんが、それでも十分強力。 《岩山炎の後継者、メイブル》自身がロードなため対処しなければならず、倒したとしても装備品によって後続が強くなる、中々厄介なクリーチャーです。そして当然装備品も能力なので、《花足の剣豪》を誘発させてくれます。《岩山炎の後継者、メイブル》と《花足の剣豪》は非常に相性が良いカードです。   4マナ域の《髭谷の先駆け》は初めて見たという方も多いのではないでしょうか? こちらもハツカネズミ。《心火の英雄》たちと同じく雄姿能力を持っており、マナ総量が3以下のクリーチャー・カードをライブラリーの上5枚から戦場に出すことができます。出すクリーチャーはハツカネズミに限らずなんでもOKなので、《叫ぶ宿敵》を呼び出せます。 場に出さない選択もでいるので、全体除去に対して手札に速攻クリーチャーを温存したり、手札に加えて新生で出すことも可能と、ハツカネズミの事情にぴったりなクリーチャーです。低マナ域から高マナ域まで、対処しなければ終わりなクリーチャーが揃っているのがこのボロスハツカネズミ。   白の利点である《幽霊による庇護》も採用しているので対アグロ性能もバッチリ。イゼット大釜ばかりを意識していると、ハツカネズミに蹂躙されることになりますよ。     赤単ドラゴン スタンダードチャレンジ : 6位 By numberonenoob MTGアリーナ用インポートデータ 続いて紹介するのも赤単のアグロデッキ!なのですが、こちらはなんと《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》のハツカネズミの力は借りていません。 その代わりにもっと巨大な者たちの力を借りています。   そう、それがドラゴンです。   ドラゴンと言えば思い浮かぶ人間がタルキールには一人いますよね?ええ、ドラゴンを愛する男、サルカンです。《龍へと昇る者、サルカン》はドラゴンデッキで輝く1枚。 戦場に出た時にドラゴンの後見を受けていると宝物を生成し、ドラゴンが戦場に出るたびに強くなり、ターン終了時まで飛行を得る。ドラゴンを出すためのマナを作りながら、ドラゴンが出ると強くなる。《龍へと昇る者、サルカン》はそんなカードです。   発売直後から注目されていたカードではありましたが、ネックだったのはそのドラゴンによって強くなる部分でした。ドラゴンは基本的にどれも重く、《龍へと昇る者、サルカン》が強くなるのが遅かったので、能力を上手く生かせませんでした。   「《龍へと昇る者、サルカン》を出した次のターンに出せる強いドラゴンがあれば」と言われていました。   そんなプレイヤー、そしてサルカンの望みを『久遠の終端』が実は叶えていました。これまで世界のどこにもなかったサルカンとぴったりの相性のドラゴンは宇宙にいたのです。   その名は《新星のヘルカイト》。5マナ4/5飛行、速攻とドラゴンらしいサイズと能力を持ち、戦場に出た時にクリーチャーに1点を与えてくれます。そして《新星のヘルカイト》が持つ能力がワープ。 3マナで戦場に出て速攻で攻撃し、その後5マナで出し直すことができるのが《新星のヘルカイト》。これが《龍へと昇る者、サルカン》と最高の相性だったのです。   2ターン目に《龍へと昇る者、サルカン》を出して《新星のヘルカイト》を公開して宝物を生成。次のターンにワープで《新星のヘルカイト》を唱えて、サルカンが成長して7点。次のターンに宝物を生け贄に《新星のヘルカイト》をプレイすると8点。ワープの次のターンに宝物のおかげで《新星のヘルカイト》を通常キャストできるのです。   もちろんドラゴンが《新星のヘルカイト》だけでは《龍へと昇る者、サルカン》は真価を発揮しませんが、そこは安心。除去である《双つ口の嵐孵り》、そして『ファウンデーションズ』で再録された《雄牛のやっかいもの》のおかげでドラゴンの枚数は合計で10枚になっています。 《双つ口の嵐孵り》と《雄牛のやっかいもの》だけでもドラゴンの数自体は担保できたかもしれませんが、《新星のヘルカイト》がないと《龍へと昇る者、サルカン》を使う気にはならないでしょう。それぐらいこの2枚の相性は抜群です。 今後《黄金架のドラゴン》クラスのカードが出れば《龍へと昇る者、サルカン》は更に価値が上がるでしょうし、《新星のヘルカイト》は《龍へと昇る者、サルカン》と一緒にずっと使われるはず。このコンビには今後も目が離せません。   ジャンドコーナ スタンダードリーグ : 5-0 By bolov0 MTGアリーナ用インポートデータ パーマネントを手札から踏み倒せる、夢がたっぷり詰まったカード、《救助のけだもの、コーナ》。ただしその条件として、パーマネントを出す能力は生存達成時、つまり第二メインフェイズの開始時に、《救助のけだもの、コーナ》がタップ状態で戦場にいなければなりません。 第二メインフェイズにタップ状態であるということは、通常は《救助のけだもの、コーナ》が攻撃し、無事に生き延びて戦闘が終わることを意味します。4ターン目に《救助のけだもの、コーナ》を出したとすると最速で5ターン目。除去もブロックもされずに能力を持たない4/3が生き延びるのはスタンダードではまず不可能です。   そう、普通ならば。   しかし《救助のけだもの、コーナ》の生存を特殊な方法で満たせるなら話は別です。生存の条件は該当クリーチャーがタップ状態であること。何も攻撃だけが生存を達成する方法ではないのです。   まずは搭乗です。機体を動かすためにはクリーチャーを寝かせる必要があり、これで生存達成となります。採用されている機体は《重厚な世界踏破車》。 戦場に出た時と攻撃した時に土地を伸ばせるので、《救助のけだもの、コーナ》で踏み倒すカードを手札から普通に唱えることもできるようになり、とてもデッキと噛み合っています。生存達成する《救助のけだもの、コーナ》を除去すると《重厚な世界踏破車》に殴られ続け、《救助のけだもの、コーナ》を残せば踏み倒されてしまいます。   そして『久遠の終端』で登場した新たな能力、配備。こちらはクリーチャーをタップすることでカウンターが乗り、一定以上の個数が溜まるとすごい起動型能力が使えるというもの。土地枠で《救助のけだもの、コーナ》をタップして生存能力を起動できるようになったのです。 《目覚めの安息地、エヴェンド》はクリーチャー分だけ緑マナを生む《ガイアの揺籃の地》になり、《記念の星、カヴァーロン》は土地を生け贄にロボットを生成し、その後全クリーチャーにパワー修正と速攻を付与します。どちらも単に《救助のけだもの、コーナ》の生存のためだけでなく、条件達成後の能力も非常に強力です。 さて、これで《救助のけだもの、コーナ》の生存が容易であることがわかりました。肝心の踏み倒すカードはというと、《全知》のような一撃必殺カードは採用されていません。 このデッキは《救助のけだもの、コーナ》の生存を意識はしていますが、決して依存していないのが特徴。《重厚な世界踏破車》からのマナ加速だけで出せるようなクリーチャーばかりです。   4枚採用されているのは《宝物庫生まれの暴君》。《不屈の独創力》でもお馴染みの恐竜で、自身やパワー4以上のクリーチャーが戦場に出た時に3点ゲインと1ドロー。更に死亡時にトークンになり帰ってくるので、除去2枚が必要となる上に2ドローで、1枚でとんでもないリソース差をつけてくれます。 デッキで一番重い《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》はさすがに手札から出すより《救助のけだもの、コーナ》から踏み倒したいカード。《逃げ場なし》が環境から消え気味な今、この護法は輝きます。 面白いのは《早駆ける業火、カラミティ》。騎乗したクリーチャーのコピーを2体生成する乗騎なのですが、《宝物庫生まれの暴君》との相性は抜群です。 《宝物庫生まれの暴君》で騎乗して《早駆ける業火、カラミティ》が攻撃すると、まず最初に《宝物庫生まれの暴君》トークンが生まれて1ドローとゲイン、そして2体目のトークンが出てきてそれぞれが誘発し、2ドローと6ゲインが入ります。 《峰の恐怖》をコピーすれば瞬殺ですし、大型クリーチャー同士のシナジーがとても気持ち良いデッキです。 《救助のけだもの、コーナ》の他にも踏み倒し手段として《密輸人の驚き》が採用されています。手札からクリーチャーを2体出したり、4枚切削した中からクリーチャーを加えるこのインスタントは、クリーチャーを拾う手段、踏み倒しの両方に使えて便利です。 《幻獣との交わり》を採用しているおかげで切削も活きる可能性があります。墓地からフラッシュバックすると4/4の英雄譚になり、次のターンに緑を2つ生成してくれて、5ターン目に7マナを生み出します。 7マナと言えばもちろんこのデッキのエース、《宝物庫生まれの暴君》。実に様々な手段で《宝物庫生まれの暴君》を出し、そこから暴れるこのデッキは、最早ジャンド暴君と呼ぶべきかもしれませんね。 強さと楽しさを兼ね備えたジャンドコーナ、今後数が増えていきそうな予感がしています。とても良いデッキなのでぜひお試しください。

メイン《安らかなる眠り》でイゼット大釜を倒せ!アゾリウスコントロール簡易ガイド

Standard ピックアップ

2025.08.14

mtg Yuyan

前回までのあらすじ。   日曜日のスペシャル予選で4色弾薬を使用し、《無効》のヤバさに気が付いたゆうやんは、月曜日のスペシャル予選の予約をしつつ、新たなデッキについて思案を巡らせるのであった。 というわけで今回は、月曜日のスペシャル予選で使用したデッキの解説記事をお届けします。   目次 イゼット大釜に勝つ2つのカギ デッキリストとカード解説 採用しなかったカード イゼット大釜との戦い方 サイドボーディング 大会結果 イゼット大釜に勝つ2つのカギ イゼット大釜というデッキは《アガサの魂の大釜》《迷える黒魔道士、ビビ》のコンボで勝つデッキ、というわけではありません。それはあくまでゲームプランの1つ。 最も強力なのは《略奪するアオザメ》《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》によるプレッシャーと、それを後押しする《プロフトの映像記憶》。 1ターン目に出てくる《略奪するアオザメ》は《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》でどんどん大きくなっていき、無視できないサイズになります。後続の《逸失への恐怖》は除去しなければすぐに昂揚を達成して爆発的な打点を叩き出してくるので、《略奪するアオザメ》を放置せざるを得ません。 すると今度は《光砕く者、テルサ》が飛んできます。速攻で《光砕く者、テルサ》が殴ってくると、《略奪するアオザメ》は既に4/4。《略奪するアオザメ》を除去らざるを得なくなり、《光砕く者、テルサ》のダメージが通り続けることになります。 ここに《プロフトの映像記憶》が加わると打点は更に上がります。《審判の日》で盤面をリセットした返しに《光砕く者、テルサ》+《プロフトの映像記憶》だけで5点、そこに《冬夜の物語》が加わったりするとあっという間にリーサルに。 昨日の記事でお話したように《無効》が強いのは、この相手の動きに対し、《逸失への恐怖》《プロフトの映像記憶》にたった1マナで触れることができるためです。 《略奪するアオザメ》スタートの相手にも2ターン目の《逸失への恐怖》をカウンターすればかなり楽になりますしね。当然《プロフトの映像記憶》を打ち消せば計算外の打点が飛んでくることもなく安心です。イゼット大釜相手には《無効》はあればあるだけ良いと思いました。   しかし、相手のビートダウンを抑えれば勝てるというわけでもありません。そう、最初にお話ししたゲームプランの1つである《アガサの魂の大釜》《迷える黒魔道士、ビビ》があるためです。 《アガサの魂の大釜》で《迷える黒魔道士、ビビ》を追放して、自軍クリーチャーたちから大量のマナを出し、《冬夜の物語》を連発してリソースを稼ぎ、最終的に見つけた《プロフトの映像記憶》で巨大なクリーチャーを作り、《竜航技師》の速攻でゲームを決める。長期戦も戦えるのがイゼット大釜です。 これに対して有効なのが墓地対策。イゼット大釜に墓地対策が効かないのではなく、単に《プロフトの映像記憶》によるビートダウンがメインプランなだけです。《プロフトの映像記憶》をしっかりと封じれば墓地対策はしっかり効果があります。 《逸失への恐怖》の昂揚、《冬夜の物語》の調和キャスト、そして《アガサの魂の大釜》と墓地を使うカードは多く、それらを封じることには大きな効果があります。とはいえ、《冬夜の物語》を手札からキャストとしてそのまま墓地からの調和を防ぐのは、《除霊用掃除機》や《魂標ランタン》といった生半可な墓地対策では無理です。 それなら墓地対策界隈のナンバーワン、《安らかなる眠り》を使うしかないでしょう!そして《無効》と《安らかなる眠り》を使えて、しかもビートダウンを止められるデッキとなれば。 そう、アゾリウスコントロールです!   アゾリウスコントロールにしようと決めたのが日曜日の夜。家に帰ってゲームをする時間はなかったので、脳内調整を行いました。今回はその脳内調整の結果できたリストです。   デッキリストとカード解説 《ミストムーアの大主》 アゾリウスコントロールがローテーションで失った中で最も痛いと感じたのは《完成化した精神、ジェイス》でした。   《マラング川の執政》《食糧補充》とドローが非常に強い今のアゾリウスコントロール。《マラング川の執政》は前兆で唱えた後にライブラリーに戻るため、後半になればなるほど《マラング川の執政》を引く確率が上がり、最終的には毎ターン《マラング川の執政》を繰り返し前兆することになります。   そうするとライブラリーを全部掘れるので、《完成化した精神、ジェイス》という絶対的なフィニッシャーに最終的にアクセスできます。   そのため、これまでのアゾリウスコントロールではメインに《完成化した精神、ジェイス》を2枚採用することで、クリーチャーで殴る必要がなく、そのためフィニッシャーは最低限で良かったのですが…残念ながらその《完成化した精神、ジェイス》が落ちてしまいました。   というわけでフィニッシャーが求められており、《ミストムーアの大主》はその中で最も攻撃的なカード。   8割ぐらい兆候でプレイします。調候中は除去で触られないのが結構強く、最終的に兆候明けたところに打たれた除去をカウンターしてそのまま殴り勝ちます。   《三歩先》のコピー先としても強く、この動きはよくやるので覚えておきましょう。   《マラング川の執政》 上で早速名前が挙がっていた《マラング川の執政》。前環境では最終的に《完成化した精神、ジェイス》を引き込む手段として強かったので4枚入っていましたが、今回のリストでは2枚です。   正直クリーチャーで出した時の性能が主にサイド後に強いので3枚以上入れたいのですが、後述する新たなドロースペルが強すぎるので、4マナが膨れてしまい、泣く泣く2枚になりました。   《マラング川の執政》として出すと6マナ6/7飛行とあまりにでかすぎる上に、2体バウンスと超強力。一気に盤面をひっくり返し、殴りにいけるようになります。   サイド後はクリーチャーとして出すことも多く、《ミストムーアの大主》と合わせてこのデッキのフィニッシャーとして活躍してくれます。《三歩先》のコピー先にもオススメ。   《跳ねる春、ベーザ》 フィニッシャーとしては少し不安ですが、実はゲームの多くを決めるのは彼(彼女?)。   なんといってもその軽さが魅力で、大体不利な場で出てきてライフを回復しながらチャンプブロッカーを生成します。ドローも先手ならまあまあしますね。   4ターン目はもちろん、《喝破》を構えつつ6ターン目に出すこともまあまああります。環境がイゼット大釜を中心に回っているので4/5というサイズがとても頼もしく、突破されにくい。   サイド後は《否認》を入れられるので《跳ねる春、ベーザ》がやはり通ることが多く、時間を稼いでくれます。   フィニッシャーではないためメインに入れていないリストも多いですが、僕は《跳ねる春、ベーザ》は必須だと思います。ライフゲインがメインに入っていないのはやはり怖いです。   《失せろ》 説明不要の除去。地図2枚をあげてしまうので《喝破》とはアンチシナジーですが仕方ありません。無条件で2マナでクリーチャーやエンチャントに触れるのは破格すぎます。   あげた地図をそのターン中に使われると、次の相手のドローの質がかなりよくなるので、ダメージを喰らってターン終了時に打つのが基本的な使い方です。序盤の2点はどうでも良いです。   《古代魔法「アルテマ」》で地図ごと巻き込むこともあるので覚えておきましょう。   《喝破》 ちょっと強い《マナ漏出》程度のカードでしたが、《アガサの魂の大釜》がここまで流行っている現状では、このオマケの追放がかなり効果的です。《迷える黒魔道士、ビビ》を《喝破》で打ち消せば《アガサの魂の大釜》で追放されませんからね。これが《マナ漏出》だったらえらいことになります。   アゾリウスコントロールは長期戦になりがちなので《喝破》は後半までとっておくと腐ります。あまり強くないカードでもとりあえず《喝破》で打ち消しておいた方が良い場合が多いです。   《星間航路の助言》 今回一番語りたいカードはこの《星間航路の助言》です。   このカードはあまりに強すぎる。《食糧補充》の強さにも衝撃を受けましたが、ことコントロールに限って言えば《星間航路の助言》は《食糧補充》を超えています。   《食糧補充》と比べて4マナで打った時は見る枚数は1枚少なく、追加で1マナと少し弱いですが、これでも《星間航路の助言》の方が強いケースがあるぐらいです。それはもちろん《星間航路の助言》がインスタントだからです。   コントロールデッキの《食糧補充》が難しい理由は、ソーサリーだからでした。《食糧補充》で見た5枚で、次の相手の動きと出てくるカードを想定し、それに構う必要があるか、あるいは放置した時にこちらはどんなアクションを次のターンにしていかなければならないかを予想して、その上で2枚をチョイスする必要がありました。   しかし、《星間航路の助言》を打つのは相手ターンの終了時です。次に迎えるのは自分のターンなので状況はさほど変わりませんし、最も今の状況に適した2枚を手札に加えるだけで良いのです。   例えば盤面に強力なクリーチャーが展開されていれば《失せろ》+何か、何も出てこなければ打ち消し呪文とドローといったように、インスタントだからこそ適切なカードチョイスが行えます。   そして2マナでキャストできるのも魅力です。6ターン目ぐらいにどうしても打ち消しが欲しい場面で6枚を見てそこから1枚を取ることも可能で、これは《食糧補充》にはできません。   更にゲーム後半には10枚から2枚を見るという《時を越えた探索》超えの凄まじいドロースペルになります。《星間航路の助言》を使っていてライブラリーが一巡することが何度もありました。   序盤・中盤・終盤いつ使っても強く、《食糧補充》は減らしたいと思った一方、《星間航路の助言》は強すぎるので絶対に4枚から動かないと確信しました。   コントロールデッキでは《星間航路の助言》が最強です。パイオニアやモダンの青いコントロールでも強いはずなので、スタンダードでは絶対に4枚です。信じてください。   《食糧補充》 というわけでアゾリウスコントロールにおける最強ドローランキングで玉座から陥落してしまった《食糧補充》ですが、まあ当然強いです。   3ターン目に打つのはいささか不安がありますが、5ターン目に唱えて《喝破》か《失せろ》を唱える動きが強力です。これは《星間航路の助言》にはできない《食糧補充》ならではのストロングポイント。   4枚入れていたのですが、少々ドローは過剰に感じました。少し回していればこの辺りは調整が入ったでしょう。もしもう一度このデッキで大会に出るとしたら3枚に減らして除去を増やしますね。   《三歩先》 3マナで打ち消して良し、5マナで打ち消しながらカードを引いても良し、クリーチャーをコピーしても良し。   《ミストムーアの大主》《マラング川の執政》とコピーしがいのあるクリーチャーが多いので、最近では《三歩先》のコピーモードをよく使います。特にマッチアップによってはコピーの方がドローより全然使うこともあるほど。 このリストはドロースペルが多いので、5マナで打ち消してドローするよりも、3マナで消しながら打ち消しを構える展開が結構あります。これはネガティブな意味合いではなくポジティブです。ドローをたくさん入れることにより、《三歩先》で無理して引かなくて済んでいます。   《審判の日》 最近は毎セット全体除去が刷られますが、最もシンプルな全体除去、《審判の日》を多めに入れることにしました。   《静寂のその先へ》の追放はかなり魅力的でした。《アガサの魂の大釜》で墓地のクリーチャーを食われませんし、ユウナデッキ相手にも追放は偉い。しかし、やはり5マナは重く感じました。   イゼット大釜との対戦を考えると4マナと5マナの差はかなり大きく、相手視点でも《審判の日》は割り切ってくることも多いので、刺さる場面はそれなりにありました。   追放に関しては《安らかなる眠り》をメインから入れることで解決し、《審判の日》を一番多くしました。   《安らかなる眠り》 メインに投入した理由は既に説明した通り。イゼット大釜とのメイン戦に勝つために《逸失への恐怖》の弱体化、《アガサの魂の大釜》の無効化、《冬夜の物語》のフラッシュバックを防ぐ《安らかなる眠り》を投入しました。   ユウナデッキや《陰湿な根》など墓地デッキもついでに対策できて便利です。   《星間航路の助言》《食糧補充》とドローが多く、カードを掘れるので、ゲーム中盤までに《安らかなる眠り》が見つかることが多く、それでも十分間に合うと思い、メインに入れることにしました。対ドレッジと違い、イゼット大釜との戦いでは2ターン目の設置がマストでないのが大きいです。   《縫い目破り》 思ったより使っていて便利だったカード。《ポータブル・ホール》より割られにくいのでイゼット相手に安心して置けますね。   イゼット大釜は3マナ以上のクリーチャーも多く、《縫い目破り》が腐る展開が嫌だと思っていましたが、実際負けパターンは序盤の《略奪するアオザメ》と《逸失への恐怖》《プロフトの映像記憶》、すべて2マナ以下なので、《縫い目破り》があればあるほど安定します。   もし次にトーナメントに出るなら《縫い目破り》はメインに3、サイドに4枚目を用意するでしょう。   《プロフトの映像記憶》を追放すると《洪水の大口へ》でドローされるので注意。《略奪するアオザメ》が一番対象として良いです。   《古代魔法「アルテマ」》 1枚ぐらいはアーティファクトもまとめて破壊できるカードを入れようということで投入。《アガサの魂の大釜》を吹っ飛ばすこともあり、ちゃんと強かったです。   フリースロットではあるものの、できれば全体除去を入れたいところです。《ピナクルの星檻》はダメです。理由は後述します。   《沈んだ城塞》 土地部分で一番悩んだのは《沈んだ城塞》の枚数です。   2種類の2色ランドが落ちたアゾリウスコントロールは、これまで2枚ほどの採用にとどめていた《不穏な投錨地》を2色ランドとして大量に入れています。が、この《不穏な投錨地》をとにかく起動しないのが今のアゾリウスコントロール。   なぜなら、大体の場合で《噴水港》を起動した方が強いからです。《噴水港》で魚や宝物を生み出してカードを引いていけば勝てるので、《不穏な投錨地》でライフを詰める必要がありません。   それなら《不穏な投錨地》と同じ2色ランド…よりは弱いですが、それに近い性能の《沈んだ廃墟》をたくさん入れたいと考えました。   1枚引けば《噴水港》の起動が楽になり、2枚あれば土地3枚から宝物生成とかなり便利なので、最終的には3枚採用し、《不穏な投錨地》は1枚のみになりました。   選んだ色しか出ないので2色ランドとしては《不穏な投錨地》より弱く、マナベースのことも考えてこのバランスです。カードの強さとしては《沈んだ城塞》を4にしてもいいほどだと思っています。   《無効》 ここからはサイドボード。   《無効》の強さについてはお話しした通り。イゼット大釜の《逸失への恐怖》《プロフトの映像記憶》《アガサの魂の大釜》に当たるカードで、殴るプランとコンボプランのどちらも咎めます。軽すぎるので後手でも構えられる素晴らしいカード。   4枚目を入れても良いかなと思ったぐらいです。   《勝利の楽士》 今回の最大の失敗は《勝利の楽士》でした。   当初はこのカード、イゼット大釜にサイドインする予定でした。カウンターが大量に入ってきて、《轟く機知、ラル》も出てくるので、盤面にプレッシャーがあるカードかつカウンターを無効化する《勝利の楽士》は強いと思ったのです。   しかし、これが大誤算でした。ラウンド1でイゼット大釜とゲームをしてみて、《勝利の楽士》が活躍する瞬間はまったくないと思いました。   打ち消しを構えなられない相手はタップアウトしてきてますし、その際に腐っているカウンターを《光砕く者、テルサ》などで捨てて有効牌に変えられます。   《勝利の楽士》のサイズは1/3なので、《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》が立たれるだけで殴れません。《轟く機知、ラル》へのプレッシャーも無意味です。   このことに初戦で気づき、かなりがっかりしました。そもそも大会が始まる前に何も疑問に思わなかった自分を呪いたかったですね。   とはいえ、アゾリウスコントロールが増えてくるであろう今後は《勝利の楽士》は結構強いかもしれません。ミラーマッチはさすがにとんでもなく強いです。《失せろ》を持っていなければ大体ゲームセット。   イゼット大釜には入れませんが、青いコントロールには強いです。ディミーアミッドレンジにもサイドインします。   《否認》 ゲームが長引くので《呪文貫き》はダメです。《否認》を必ず入れましょう。   《鳴り渡る龍哮の征服者》 主にイゼット大釜を想定。《迷える黒魔道士、ビビ》《アガサの魂の大釜》が止まり、ついでに地図の起動ができなくなります。《失せろ》が万能除去になるのは意外と大きい。   イゼット大釜は《蒸気核の学者》型でない限り飛行はいないので空から殴り勝てます。   《ティシャーナの潮縛り》 なんだかんだ万能ですね。サイドインする相手はかなり多く、イゼット大釜にも入れます。   打ち消しをかいくぐれる小粒クリーチャーで殴られることが多いので、何か適当なカードを《ティシャーナの潮縛り》で打ち消しつつ盤面に3/2を出し、小粒なクリーチャーと相打ちを取るのが役目です。   《跳ねる春、ベーザ》 ビートダウン全般からイゼット大釜、アゾリウスコントロールミラーなどほとんどの相手にサイドインします。   メインはアグロだけに強いカードですが、サイド後はコントロール相手にも頼もしいカード。アグレッシブプランを取ってくる相手にも《跳ねる春、ベーザ》で粉砕できます。たとえばミラーの《勝利の楽士》などがそれに当たります。   《ミストムーアの大主》 こちらから攻める必要があるマッチやミッドレンジ全般にサイドインします。ディミーアミッドレンジに勝つにはまず《ミストムーアの大主》しかありません。   《別行動》  アグロデッキに追加の全体除去が欲しく、ただ《ピナクルの星檻》は入れたくなかったのでこちらに。《審判の日》を見せると4マナはケアされるので、1ターン速い《別行動》にしました。   アグロ対策であれば何でもよいですね。《縫い目破り》の追加とかでも良さそうです。     採用しなかったカード 《ピナクルの星檻》 《略奪するアオザメ》《逸失への恐怖》《アガサの魂の大釜》と色んなカードに触れるように見えて、アーティファクトなのですぐ割られてしまいます。   しかも割られた時に《逸失への恐怖》でカードを引かれるので、全体除去として不安定なだけでなく、リソースを取られる危険性もあり。   まったく有効活用できる気がしなかったので抜きました。   《嵐の討伐者、エルズペス》 前環境からこのカードは否定派で、いまだにその評価は変わっていません。   フィニッシャーとしては《ミストムーアの大主》に劣り、中盤に出すなら《跳ねる春、ベーザ》の方が強い。帯に短したすきに長し。   イゼットに単純に弱いカードなのもマイナスでした。ミラーマッチのサイド後とかは強そうですが。   イゼット大釜との戦い方 普段の記事ではこのあたりにTIPSとかを書くところなのですが、正直言ってこのアゾリウスコントロールは本当にシンプルな構成!   除去、カウンター、ドローしか基本的には入っていません。なので特別なプレイ指針などはなく、オーソドックスなアゾリウスコントロールです。   ただ、イゼット大釜の戦い方だけはしっかり知っておかないと負けてしまいます。なので今回は特別に対イゼット大釜についてだけ別項目で書くことにしました。 イゼット大釜に負けるパターンをまずは把握しましょう。   1.《略奪するアオザメ》から始まるテンポ展開 《略奪するアオザメ》《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》と先手で回ってきた場合、こちらが対応できるのは相手の《光砕く者、テルサ》が最初です。そのため、2ターン目に2点、3ターン目に4点と喰らってこの時点で14。   ここで《逸失への恐怖》を除去しながら後続を対処できない展開は大体負けてしまいます。サイド後はこの展開を作られないために《無効》をサイドインしています。   2.《プロフトの映像記憶》+クリーチャー 《審判の日》をケアしてクリーチャーを1体ずつ展開し、《プロフトの映像記憶》で成長させてくる展開です。《冬夜の物語》でリソースを獲得しながらクリーチャーのサイズを上げてくるので、すぐに対処しなければならない上に、後続が次々と供給されてきます。   《プロフトの映像記憶》そのものに対処してしまえば除去をある程度は温存できるので、《プロフトの映像記憶》は場に残さないようにします。《失せろ》を使う場合もあります。ただし、手札に《プロフトの映像記憶》が腐っているパターンもあるので難しいところ。   《プロフトの映像記憶》を打ち消せる状態なら《プロフトの映像記憶》を割りにいくのもアリですが、相手から対消滅を気にせず1ドローをしに《プロフトの映像記憶》を出してくることの方が多いです。場と墓地で3枚見えたら割るぐらいの感覚でいましょう。   3.《アガサの魂の大釜》+《迷える黒魔道士、ビビ》 もちろんこれも負け筋の1つです。《迷える黒魔道士、ビビ》や手札から出すと《喝破》で追放されるので、よく《光砕く者、テルサ》や《冬夜の物語》で墓地に置かれます。   《迷える黒魔道士、ビビ》が出てくる→返しで2体ほど巻き込んで《審判の日》→返しで《アガサの魂の大釜》《迷える黒魔道士、ビビ》が決まる、という展開もあるので、《迷える黒魔道士、ビビ》を墓地に落とすのはある程度慎重に。 この3つがイゼット大釜に負けるパターンです。かなり頻発するので、それぞれの対応方法をしっかりと把握しておきましょう。   イゼット大釜との戦いではリソース勝負になると《冬夜の物語》が大暴れします。そのため、一度盤面をリセットして落ち着いたタイミングでほしいのは《安らかなる眠り》です。《星間航路の助言》や《食糧補充》で探しに行きたいのは6ターン目ぐらいということになります。 メインはシンプルですが、サイド後は相手が《呪文貫き》《軽蔑的な一撃》《轟く機知、ラル》とコントロールに強いカードたちを入れてくるので複雑なゲームになります。 特にほぼ100%入っている《呪文貫き》はケアできるので、徹底的に2マナを構えながら動きましょう。 サイド後も《プロフトの映像記憶》を最優先でカウンターしつつ、序盤からダメージを受けなければ良いので、ゲーム展開はさほど変わりません。《無効》が入ってこちらのゲームプランが取りやすくはなっています。 気を付けなければならない打ち消しですが、こちらは《審判の日》など重い全体除去を抜いているため、それなりに腐らせることができます。重いアクションを打ち消されてターンパスとなり、そこで速攻クリーチャー+《プロフトの映像記憶》などがよくある負けパターンです。 こちらのソーサリーアクションを打ち消される→返しのターンでアクションされながら打ち消しを構えられるという展開も敗北に直結します。そうならないためにソーサリーのドローである《食糧補充》を少しサイドアウトするのです。 相手が《光砕く者、テルサ》などを展開してきたらこちらも《跳ねる春、ベーザ》を通しやすくなるなど、相手の動きに合わせてこちらが対応していけば、徐々に相手は困っていきます。 基本的には相手のリソースを刈り取りつつ、ゲームを長引かせていけば、自動的に有利になっていきます。《冬夜の物語》のフラッシュバック、《逸失への恐怖》の昂揚を《安らかなる眠り》などで潰せば、手札は思うように増えず、急な打点も出ません。 《プロフトの映像記憶》はなるべく場に着地させないことを目指します。なんだかんだ一番負けるのはこのカードです。《プロフトの映像記憶》さえなければ相手のクリーチャーは小粒なので《跳ねる春、ベーザ》で止まりますし、そうすれば除去する必要すらありません。 こうやって相手のドローするカードのほとんどを無駄牌にすることで、こちらが有利になり、最終的にはリソース量で圧倒するのが勝ち筋です。相手の攻め手をさばき、リソースを潰し、大量にドローしていく。コントロール然とした立ち回りですね。   《安らかなる眠り》は《プロフトの映像記憶》《光砕く者、テルサ》の軸には無力ですが、《逸失への恐怖》《冬夜の物語》というリソース・勝ち筋にしっかりと刺さります。なので決して効かないわけではありません。 とはいえ、《安らかなる眠り》でデッキが機能不全するわけではないので、その点は注意が必要です。《安らかなる眠り》があるからといって土地が6枚の手札をキープするのはNGです。   インスタントタイミングで動くことを常に意識しつつ、即死を避ける立ち回りを続けてください!   サイドボーディング せっかくなので改良したリストのサイドボーディングを貼ります! VSイゼット大釜 サイドイン サイドアウト 白白のアクションがかなり減るので、色マナカウントでもある《解体爆破場》をサイドアウト。正直他に抜くカードがあれば良いのですが、あまりに抜くものがなさすぎるので仕方なく無色土地を抜いています。   《ミストムーアの大主》は重いだけで強くないので抜きますが、相手がこちらのサイドボーディングを知っていると5点火力をサイドインされるので、その時は1枚ほどあった方が良い場合があります。2本目は上記サイドボードにして、3本目で調整します。《鳴り渡る龍哮の征服者》のために除去を多めに入れてきていたら、逆に《鳴り渡る龍哮の征服者》を抜いてしまいます。   VSディミーアミッドレンジ サイドイン サイドアウト クリーチャーを全部入れてビートダウンするプランを取ります。   相手は《悪夢滅ぼし、魁渡》と《永劫の好奇心》で攻めてくるので受け展開は絶対に無理です。苦肉の策で攻めています。   メインでタップアウトすることが多く、またさほど長期戦を想定していないことから、《食糧補充》よりも《星間航路の助言》を優先して抜いています。   VSエスパーピクシー サイドイン サイドアウト   VSグルールアグロ サイドイン サイドアウト VSユウナオーバーロード サイドイン サイドアウト VSイゼット果敢 サイドイン サイドアウト VSミラーマッチ サイドイン サイドアウト   大会結果 イゼット大釜×○×グルール昂揚×○○イゼット大釜○○アゾリウス合成機○○イゼット大釜○○赤単アグロ××イゼット大釜○○ 5勝2敗で終了…でしたがなんとオポで大まくりして8位滑り込み!超ラッキー!   最終戦前でほぼ無理だったので、プライズのために最後一応やっとくか…からの予選突破でかなりテンションが上がりました。   イゼット大釜ばかりであろう今週の予選にはアゾリウスコントロールがオススメです。イゼット大釜との戦いは難しいですが、適切なプレイをすれば勝てるはずです! それではまた!

BMO2連戦!チームモダンとスペシャル予選のお話

Modern Standard ピックアップ

2025.08.13

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   先週末はBIG MAGICさん主催のBIG MAGIC OPEN、略してBMOが行われていました!   メインイベントのレガシーには参加しませんでしたが、チームモダン、そして2日目はチャンピオンズカップファイナルスペシャル予選と、併催イベントに参加してきました!   今回はそれぞれの使用デッキのお話を簡単にしていきたいと思います。   チームメンバー  昨年は7-1、7-1、6-2と個人成績はすさまじかったのに、勝ち星が噛み合わずにトップ8に残れなかったチームモダン。   昨年の雪辱を晴らすべく、今回は新たな仲間たちとチームを結成しました。   僕がマジックを始めた頃にもう現役のプレイヤーで、同じ師匠を持つ、いわば兄弟子のような存在であるまんたろうさん。   最近なぜかほぼすべての海外遠征で顔を見ているITTEKIさん。   まんたろうさんは前回のモダン神挑戦者決定戦でサムワイズを使用し、神への挑戦権を獲得したプレイヤー。モダンに精通しており、モダンで行われたプロツアー・バルセロナにも一緒に行きました。今回もサムワイズで良いだろうと1か月以上前から話していました。 ITTEKIさんはというと、マジック復帰直後にエネルギーを使ってモダンの地域CSの直前予選を抜け、その後はなんだかんだ毎回地域CSに出場し続けています。エネルギーを長く使っているので、そのままエネルギーを使ってもらう予定でした。 「また直前になったらデッキの話をしましょう」とチーム結成と同時に話し、そこからちょくちょくモダンの話をしながら、しかしデッキについては全く決めないまま、1週間前を迎えることになりました。   サムワイズについて  サムワイズは《サムワイズ・ギャムジー》《大釜の使い魔》サクり台の3種が揃うことで相手を瞬殺するクリーチャー主体のコンボデッキ。 《出産の儀》《召喚の調べ》で足りないクリーチャーを集めるので、この3枚コンボはよく揃います。 クリーチャー中心のコンボデッキはコンボが決まらなかった際に殴り勝てるのが魅力で、サムワイズも例に漏れずにビート戦略を持っています。《大釜の使い魔》と食物がコントロールに強いカードなので、ビートダウン性能は高めです。 とはいえ、今のモダンではお世辞にも勝っているとは言い難い状況です。   干渉手段が少ないゆえにエネルギーの《オセロットの群れ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》《ゴブリンの砲撃》ラインが厳しかったり、除去から《火の怒りのタイタン、フレージ》の展開でも負けやすく、一番多そうなエネルギーに勝つ見込みが薄いと感じました。 次点で考えなければならないブリンク系デッキも《孤独》を何度も打ってくるのでやはりコンボ成立がしにくく、相手の《ベイルマークの大主》《溌剌の牧羊犬、フィリア》のアドバンテージ源に干渉する術が少ない。 上位2つにそこまで有利になる要素がなかったので、サムワイズの使用には反対でした。   僕が使用する予定だったアミュレットタイタンで《溜め込み屋のアウフ》《耐え抜くもの、母聖樹》を使いたいというのも、サムワイズを諦めてほしい理由でした。 エスパーブリンクを試す 同時に《量子の謎かけ屋》によって強くなったと噂のエスパーブリンクについてもITTEKIさんに試してもらうことに。 オルゾフブリンクと言えば強い2マナアクションが《溌剌の牧羊犬、フィリア》しかないことが問題でしたが、エスパーになって《超能力蛙》が入って解決……と思いきや、その《超能力蛙》が抜けて《量子の謎かけ屋》になったのが今のエスパーブリンク。 《量子の謎かけ屋》はワープで唱えて《儚い存在》《溌剌の牧羊犬、フィリア》で場に定着させられるので、非常に噛み合っているカード。とはいえ、2ターン目に唱えてもただの1ドローなので、実質3ターン目以降のカードです。   個人的には《量子の謎かけ屋》自体は強いと思いつつ、《超能力蛙》も入れるべきだと思いました。同じことをITTEKIさんも考えていたようで、《超能力蛙》《量子の謎かけ屋》両方が入ったエスパーブリンクを試してもらいました。 結論としては、悪くないデッキだったものの、まんたろうさんがもう1つの愛機、ディミーアマークタイドになったことで《超能力蛙》が使えなくなり諦めることに。   ちなみにエスパーブリンク自体はかなり良いデッキに感じました。序盤からの圧力、リソース、干渉手段すべてがしっかりと揃っていて、バランスが良くて好みです。   最近は《超能力蛙》《量子の謎かけ屋》をどちらも採用したエスパーブリンクが勝ってるみたいです。ITTEKIさんの調整は間違っていなかった!     デッキ編成 チームモダンではエネルギーに当たる確率は下がると考えました。普通のモダンの大会では一番多いエネルギーですが、まずチーム戦ということで確率は三分の一ですし、エネルギーがチーム内に確実にいるわけではありませんからね。 エネルギーは《火の怒りのタイタン、フレージ》を使うので、ジェスカイコントロールやドメインなど、他のデッキで使われる可能性もあります。 それならエネルギーに少し弱いデッキも肯定されるのではないかと考えました。そこでまんたろうさんのもう1つの愛機、ディミーアマークタイドを使ってもらうことになりました。 モダンのコンボデッキはそれぞれが専用カードを使うため、コンボ2人にもなりやすいと考え、それならコンボに強く、エネルギーに少し弱いディミーアマークタイドは、かなりチームモダン向きのデッキに思えました。   僕は事前の話し合い通り、アミュレットタイタンを使用することに。《ウルザの物語》を使うデッキの中で現状一番しっくりくるのがアミュレットタイタンでした。実際、モダンの三指に入る強さだと思います。 ITTEKIさんには「ボロスエネルギーで勝ってくれますね?」と聞くと自信を持って「勝ちます」と返事が来たのでエネルギーに。   こうしてボロスエネルギー・ディミーアマークタイド・アミュレットタイタンの王道構成で行くことが決まりました。   本戦結果 ×親和○×(マッチが終わる前にチーム負け)○ジェスカイコントロール○○×スゥルタイ眼魔×○(マッチが終わる前にチーム負け)○ディミーアミル○×○○ディミーアミル○○○青単ベルチャー×○○○4色コントロール○○   というわけで個人5-0-2、チームは5-2でした。順位は2敗の1番下で当然ノープライズ。無念。   今回は座る位置がとにかく悪かったです。ディミーアマークタイドのまんたろうさんを真ん中に置いていましたが、エルドラージに複数回当たるなど、僕が当たりたい相手に当たってしまっていました。一人が相性の悪いマッチを踏むと、必然的に自分の前にも相性の悪い相手が来る確率が高く、実際この日は不利マッチばかり当たり続けました。 スゥルタイ眼魔、ディミーアミル、ベルチャーなど青くてそこそこ速い相手が多く、これらはアミュレットが最も苦手としているところ。とはいえデッキパワーで勝ててしまうのだからアミュレットの恐ろしさも再認識しましたね。 座る位置が逆なら全勝してもおかしくなかったのですが、これもチーム戦あるあるなのでやむなし。浜松町から月島まで行き、もんじゃを食べて帰宅しました。   個人戦は負けても自分だけなのでぼっち飯になることがありますが、チーム戦はメンバー全員が負けるので、一緒にご飯に行けて良いですね。   スペシャル予選:4色弾薬 さて、切り替えて翌日のスペシャル予選です。こちらはイゼット大釜が強すぎると噂のスタンダード。使用したのは……4色弾薬です! 別にイゼット大釜に大きく有利なデッキではありませんが、面白すぎるので使いました。   少し珍しい一部のカードだけ説明します。 《探偵鞄》 《再利用隔室》で3マナを生け贄にして持ってくるカードとして採用しました。使い終わった《編まれた網》などを生け贄にして手がかりを2つ得られて、その手がかりや飛行機械トークンを生け贄に《薄暮薔薇の聖遺》などの1マナのカードをサーチできますし、手がかりで2ドローしても良いです。   生み出す飛行機械トークンも、飛行クロックの厳しいこのデッキでは強く、生け贄には困らないので、ちょうど良いカードだと思い採用しました。実際かなりライフを守ってくれましたね。   《世界歩きの兜》 ほぼ毎回テキストを説明していました。   アーティファクト・トークンが生成されるときに、一緒に地図トークンが出るというアーティファクトです。《武器製造》で弾薬が生成されるときに地図も出るので、一気にアーティファクトが戦場に溢れます。   そのため《魔列車》と相性が良く、通常は勝つために弾薬が4個ほど必要ですが、《世界歩きの兜》で地図が出る状態なら、少ない弾薬だけで勝てます。《魔列車》が10/10を超えるサイズになってくれるからです。   アーティファクトトークンもコピーできるので、ゴーレムや弾薬を追加で作ったり、《探偵鞄》の飛行機械トークンを生み出したりなど、様々な役割があります。   《編まれた網》 2マナ域を生け贄にして3マナのカードを出す際に、《ピナクルの星檻》《危険な罠》と除去は択がある一方、盤面が更地の状態でとりあえず出しておくカードがないことが気になりました。2枚目の《再利用隔室》でも良いのですが、次のターンに場が不利になる可能性もあり、保険のカードをサーチしておきたかったのです。   そこで《編まれた網》を入れることにしました。3ターンの間相手の攻撃を防ぎつつ、最終的にはリソースに代わってくれます。先出しできる除去のようなもので、まさに僕が求めている性能でした。   3枚目の《噴水港》 このデッキの《噴水港》はほぼ《Library of Alexandria》です。弾薬トークンをはじめ大量にトークンが出ますからね。   弾薬を生け贄にする手段は基本的には《再利用隔室》《軍団の成形機械》とそこからサーチする《魔列車》。ですが《武器製造》と生け贄手段の両方を毎ゲーム引けるわけではありません。《武器製造》と適当なアーティファクトだけでキープすることも多く、弾薬を持て余す展開があります。   《噴水港》があれば弾薬を生け贄にして干渉しつつドローも進められるので、《噴水港》は常に置いておきたいカードです。そこで24枚目の土地として3枚目の《噴水港》を採用することにしました。下手なスペルを入れるよりよっぽど強いカードです。   大会結果 ×グルール×○×○アゾリウスアーティファクト×○○○ボロスバーン○○×イゼット大釜××○ジェスカイコントロール○×○○ディミーアミッドレンジ○○○ディミーアミッドレンジ○○ 初戦からグルール相手に大ポカ。そしてイゼット大釜にもかなりミスって負け。ディミーアミッドレンジの2連戦は相性差だけで勝利し、4色弾薬のポテンシャルの高さは感じました。 とはいえ、イゼット大釜との戦いはさほど有利とは言い難く、同時に他の心配材料も増えました。   それがイゼット大釜に有効な《無効》が環境に増えてきていることです。 《逸失への恐怖》《プロフトの映像記憶》《アガサの魂の大釜》と当たる対象の多い《無効》は今イゼット大釜対策として注目され始めており、イゼット大釜でも採用枚数が増えています。その《無効》がとんでもないぐらい効いてしまうのが4色弾薬です。イゼット大釜流行のあおりを4色弾薬も受けているのです。 実際この日、すべての青いデッキから《無効》が飛んできたと思います。僕自身も《無効》を3枚採用していましたし、今後《無効》の枚数は増える一方だと思いました。 イゼット大釜側が《無効》を3枚採用してきたらお世辞にも相性が良いとは言えなくなります。これはかなり不安要素……   そんな思いを抱きつつ、翌日のCard Potで行われるスペシャル予選に空きができていたので、急いで予約を完了させたのでした。   Card Potで使用したデッキについてはデッキガイドを書きますので、乞うご期待!   4色弾薬の記事はまだ書くか迷っています。希望者がいれば書こうと思いますので、良かったら僕のXアカウント(@yuyan_mtg)に記事希望とリプライを飛ばしてください!

【週刊メタゲーム通信】イゼット大釜が圧勝した週末!後を追うのはディミーアと…ティムール獰猛!?

週刊 Standard ピックアップ

2025.08.12

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   本日のメタゲーム通信はスタンダード!   先週末はスタンダードの競技性の高いイベントがオンライン上で複数行われました!   最新のスタンダード環境をチェックしていきましょう!   紹介デッキ イゼット大釜 ディミーアミッドレンジ ティムール獰猛   大会結果 アリーナチャンピオンシップ 優勝:イゼット大釜2位:イゼット大釜3位:イゼット大釜4位:イゼット大釜5位:イゼット大釜6位:イゼット大釜7位:ティムール獰猛8位:イゼット大釜(3~4位はトップ4、5~8位はトップ8タイ)   ショーケースチャレンジ 優勝:ディミーアミッドレンジ2位:イゼット大釜3位:イゼット大釜4位:イゼット大釜5位:イゼット大釜6位:イゼット大釜7位:イゼット大釜8位:アゾリウスコントロール   ラストチャンス 5-0:イゼット大釜5-0:ディミーアミッドレンジ4-1:イゼット大釜4-1:イゼット大釜4-1:イゼット大釜4-1:イゼット大釜 ……お分かりいただけただろうか。   とんでもないことになってしまいました。ここ最近、薄々気づいてはいたしましたが、スタンダードはイゼット大釜の海となっています。 すべてのトーナメントで上位のほぼすべてを占めており、ここまでの支配率は過去類を見ないのではないでしょうか。   一強環境として引き合いに出される《王冠泥棒、オーコ》擁するシミックフードも、最近禁止になったばかりのイゼット果敢も、このレベルでは勝っていませんでした。   正直言ってイゼット大釜は今のスタンダードで強すぎるデッキです。   イゼット大釜  アリーナチャンピオンシップ : 1位 By Raffaele Mazza MTGアリーナ用インポートデータ 《アガサの魂の大釜》で追放したクリーチャーの起動型能力を、+1/+1カウンターが乗っている自軍クリーチャーたちがすべて得る。様々なコンボデッキに入っていたこの恐ろしい釜に《迷える黒魔道士、ビビ》を煮込むことで大量のマナを出していくのがイゼット大釜。 +1/+1カウンターが乗っていればどのクリーチャーでも《アガサの魂の大釜》の恩恵を受けられるのがミソで、《略奪するアオザメ》はカードを捨てればカウンターが乗り、《プロフトの映像記憶》を使えば任意のクリーチャーに+1カウンターを置けるので、それらのクリーチャーも《アガサの魂の大釜》で《迷える黒魔道士、ビビ》の能力を獲得します。   《迷える黒魔道士、ビビ》の能力を得たら大量のマナが出るので、《冬夜の物語》を手札から打ったる墓地から調和したりして大量にカードを引きます。1回手札と墓地から打つだけで6ドローするので《プロフトの映像記憶》でカウンターを6個乗せることができ、そのクリーチャーもまたビビになるので大量のマナを生み出します。そこから更なる展開ができてしまうのです。 このデッキは《アガサの魂の大釜》+《迷える黒魔道士、ビビ》のコンボ一辺倒のデッキではありません。むしろこのプランはサブと言っても過言ではなく、メインの戦い方は《プロフトの映像記憶》です。 《プロフトの映像記憶》はデッキのほとんどのカードと噛み合います。《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》《蒸気核の学者》《冬夜の物語》とドロー手段が大量にあるので、どのクリーチャーもすぐにとんでもないサイズとなり、マスト除去となります。 こちらはドローを進めながら相手には除去を打たせる。こうして有利な交換を繰り返していき、最終的には《アガサの魂の大釜》コンボが決まったり、クリーチャーを相手が打ち漏らしてそのまま巨大サイズで圧し潰します。 《逸失への恐怖》と《プロフトの映像記憶》の相性は特筆すべき点。ディスカードで任意のカードを墓地に送れるので《逸失への恐怖》の昂揚は難しくありません。そして昂揚した《逸失への恐怖》は追加の戦闘フェイズを発生させるので、《プロフトの映像記憶》でカウンターが2回乗るのです。 《逸失への恐怖》がアクティブになってターンが帰ってきただけで突然20点を出せる可能性のある恐ろしいデッキです。   前述のように《アガサの魂の大釜》《迷える黒魔道士、ビビ》のコンボを擁しながらもそこに依存しているわけではないので、思っているよりも墓地対策に強く、なんならその対策カードを置いている間に《プロフトの映像記憶》《光砕く者、テルサ》のビートが決まり、あっという間にゲームが終わります。   このようにイゼット大釜はメタりづらく、また大量のドローを重ねるデッキなので、様々なプランを展開できます。除去を大量に入れてミッドレンジのように立ち振る舞えますし、墓地対策を置かれたら《アガサの魂の大釜》を捨ててカードを引いたりと、ゲーム中も器用に立ち回ります。 これがイゼット大釜がこれほどまでに勝っている理由です。高速でコンボを決める展開もじわじわ勝つこともでき、正直かなり隙のないデッキです。   今週末の禁止改訂でメスが入るのではないかと言われていますが、この支配率を見る限り、もしかするともしかするかもしれません。   特に今月末はオーランドでスポットライトシリーズも行われますし、そのことも考えると、スタンダードに環境変化をもたらすことはありえるでしょう。     ディミーアミッドレンジ ラストチャンス : 5-0 By Mogged MTGアリーナ用インポートデータ そんなイゼット大釜天国のスタンダードで密かに勝っているのがディミーアミッドレンジです。 今更紹介するまでもないこのデッキ。《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》の二大巨頭でカードを引いて殴り、除去する。非常にシンプルながら強力なデッキ。ガチャガチャするイゼット大釜とは対極のデッキですね。 軽除去と火力で処理しづらい《分派の説教者》、そしてある程度の速いクロックが揃っているのがディミーアミッドレンジなので、比較的イゼット大釜には強いデッキです。《悲劇の軌跡》という軽い確定除去を手に入れたのはかなり大きいですね。 《切り崩し》がスタンダード落ちする時は大丈夫なのか心配になりましたが、まさかの1マナ除去が強化されるパターン。他のカードを除去した際にもヴォイドは誘発するので、同時に2体のクリーチャーを除去する際に《悲劇の軌跡》は便利です。 ディミーアミッドレンジは当然ながらイゼット大釜を強く意識しています。メインから《戦略的裏切り》を採用しているところからもそれはお判りでしょう。クリーチャーを除去しつつ墓地をすべて追放するこのカードで《冬夜の物語》や《迷える黒魔道士、ビビ》を追放し、イゼット大釜のコンボ成立を妨害します。 メインから採用されている《ティシャーナの潮縛り》は、イゼット大釜の《光砕く者、テルサ》の誘発を消したり、《アガサの魂の大釜》を止めるなど役割が多いカード。アグロ以外の相手には大体強いので、最近はメインに入っていることが多いですね。 ディミーアミラーが減ったことで《永劫の好奇心》の枚数は減っています。イゼット大釜だけを意識するなら《永劫の好奇心》は3枚で良いということなのでしょう。最近では3枚のリストが定番となっていますね。 1マナ域の《暗黒騎士、セシル》もほぼ定着しました。相手の《略奪するアオザメ》《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》の並びに対して《暗黒騎士、セシル》はブロッカーとして強力です。《プロフトの映像記憶》でどれだけサイズが上がっても確実に交換が取れるので、1マナの接死は強力ですね。《分派の説教者》も攻め・守りで便利なカードですが、3マナというわけで枚数は調整されています。 かつての王者デッキが再び玉座に帰還しようとしています。ディミーアミッドレンジはイゼット大釜に強いとされているデッキで、実際に結果を残しているので、今後はディミーアの入賞数が増えてくるのではないでしょうか。   ティムール獰猛 スタンダードチャレンジ : 1位 By sokos13 MTGアリーナ用インポートデータ 近頃姿を現し始め、アリーナチャンピオンシップで多くのプレイヤーがその強さに驚いたデッキ、ティムール獰猛。残念ながらトップ8でイゼット大釜に敗れてしまいましたが、イゼット大釜の海を泳ぎ切った素晴らしいデッキです。   獰猛というのはキーワード能力。パワーが4以上のクリーチャーをコントロールすることが条件で、獰猛によって様々な恩恵が得られます。《頑固な否認》が一番有名でしょうか。 獰猛は現スタンダードにはキーワード能力としてはないものの、パワーが4以上のクリーチャーを参照する能力は獰猛と呼ばれることが多く、それがデッキの由来となっています。このデッキはパワーが4以上のクリーチャーによって構成されているのです。   その最たる理由が《ティムールの戦告者》です。自分のターンに、自分が唱える呪文が、パワー4以上のクリーチャー1体につき1少なくなります。自身を含めるのでとりあえず1マナ軽くなり、横にもう1体のパワー4がいれば2マナ軽くなり、展開力が一気に上がります。 軽くなったパワー4を出せば次のクリーチャーが更に軽くなるので、チェインコンボのように次々とカードが繋がっていきます。   それを可能にしているのが《荒野無頼団の先駆者》。自身はパワー4、かつ戦場に出た時にマナを出し、更にパワーが4以上のクリーチャーが戦場に出ると1ドロー。このデッキの心臓部分といっていいカード。 シングルシンボルなので《ティムールの戦告者》の恩恵を受けやすく、1マナで出てきて1マナを生み出すので実質フリースペル。更に後続のパワー4のクリーチャーで1ドロー。クリーチャーを次々と出しては引きを繰り返せます。   この《荒野無頼団の先駆者》と噛み合うのが《うろつく玉座》です。選んだクリーチャータイプの誘発型能力が2倍になるので、人間かドルイドを指定することで《荒野無頼団の先駆者》が2倍に。マナは倍出ますし、パワー4のクリーチャーが出ると2ドローです。 そして何といっても《うろつく玉座》は無色4マナのカード。《ティムールの戦告者》で0マナで出すことができます。パワー4以上のクリーチャーが4体出たらフリースペルですし、2枚目3枚目と引くと《荒野無頼団の先駆者》によるドローがどんどん増えます。 《荒野無頼団の先駆者》《うろつく玉座》で大量に場にパワー4を並べると、呪文が凄まじい勢いで軽減され、ほとんどのカードが色マナシンボルだけを支払うで済むようになります。   その状態で唱えるのが《絶望的猛攻》。ダブルXの呪文で、アーティファクトやクリーチャーをX体生成できます。これも《ティムールの戦告者》で軽くなるので、パワー4のクリーチャーが4体いれば1マナでX=2。2体のコピーを生成できます。《荒野無頼団の先駆者》をコピーすればマナが出て、《うろつく玉座》でマナとドローが倍になり、更に次の《絶望的猛攻》のコストが軽くなるので、今度はもっと巨大なXで《絶望的猛攻》を唱えられるように。 最終的には全展開したクリーチャーを、《百発百中のカクタスフォーク》で速攻トランプルを付与して殴り切ります。クリーチャー主体のデッキながらチェインコンボとなっており、一度回り出したら止まりません。《アガサの魂の大釜》がどんな場でターンを返してこようと、場が完成していれば一撃で相手を粉砕する破壊力を持っています。 《運命の大嵐、ドラゴンホーク》も面白いクリーチャー。パワー4のクリーチャー分だけライブラリーを追放して使用できるので、出した瞬間に大量のドローが確定しますし、10枚以上追放すればターン終了時に本体に投げつけてそれだけで勝利です。 干渉手段としても使える《跳ね弾き》ですが、主にコンボ用です。戻す対象はもちろん自分の《荒野無頼団の先駆者》。1マナで手札に戻して1マナで出し直すだけで、《うろつく玉座》の分《荒野無頼団の先駆者》で出すマナが増え、チェインが継続します。 《反因果の残留》はさほど能力がデッキと噛み合っているわけではありませんが、無色かつ7/5というサイズ……というかパワー4以上であるのが強力な点です。こちらも《ティムールの戦告者》で0マナになるので、《荒野無頼団の先駆者》でドローするだけのカードとして使えます。 デッキが回り出すと更地の状態からでもゲームが一瞬で終わるほどです。《荒野無頼団の先駆者》が計画されていて、《ティムールの戦告者》が生き残ってターンが帰ってくればほとんど勝ちですし、もう少しマナに余裕があれば更地からでも決まってしまうほど。 イゼット大釜にも高いパフォーマンスを出していますし、今実は大注目のデッキです。   個人的には、ティムール獰猛が流行り、ディミーアミッドレンジが更にイゼット大釜を意識し、イゼット大釜がミラーを見据えた構築をしなければならないという、この新たなスタンダードの状況を見守りたいところです。 果たして今週末の禁止改訂でスタンダードにメスが入るのか?注目ですね。

【今週のピックアップデッキ】4色弾薬/エスパースピリット/ナヤスケープシフト

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.08.08

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ 4色弾薬 エスパースピリット ナヤスケープシフト   4色弾薬  スタンダードチャレンジ : 2位 By CuteChandra19 MTGアリーナ用インポートデータ 早速パイオニアでも活躍している《武器製造》がついにスタンダードで暴れ始めました。 トークンでないアーティファクトが戦場に出るたびに弾薬を生成する2マナのエンチャント、《武器製造》。これが主役となるのが4色弾薬です。   弾薬はアーティファクト・トークンで、戦場から離れた時に好きな対象に2点のダメージを与えてくれます。墓地に置かれた時ではないので、たとえば《ピナクルの星檻》などで追放されても2点のダメージを飛ばすことができます。 この弾薬を効率的に生成しつつ、有効活用できるのが《再利用隔室》。アーティファクトを生け贄にし、それよりマナ総量が1大きいアーティファクトをデッキからサーチできます。弾薬を生け贄に捧げれば1マナのカードを探せるので、ダメージを飛ばしつつ、万能除去の《薄暮薔薇の聖遺》や、墓地対策の《除霊用掃除機》、そしてリソースを獲得できる《機械仕掛けの打楽器奏者》と、状況に応じて様々なカードにアクセスします。そしてこれらのカードが出ると、また弾薬が生成されます。 《機械仕掛けの打楽器奏者》は次のターンに《再利用隔室》で生け贄にすれば、ライブラリートップをプレイできつつ、2マナのカードにアクセスできる便利なカード。そしてこの2マナも粒ぞろいです。 アーティファクトを生け贄に成長する《煌く機械ドレイク》は、弾薬トークンなどを生け贄にして戦うこのデッキと相性抜群。自身が大きくなりながら2点を飛ばすので、思わぬ打点を叩き出してゲームを終わらせてくれます。 そして第二の弾薬の使い道である《軍団の成形機械》も2マナのアーティファクト。戦場に出た時に2点を飛ばすアーティファクトで、他のアーティファクトを生け贄にすると3/3のゴーレムを生成します。弾薬を生け贄にしてゴーレム生成と、弾薬を美味しく使えるのです。 『久遠の終端』から加わった注目のコモン、《氷魔法の秘宝》はこのデッキと相性抜群です。《再利用隔室》から出して1枚引きつつ、《再利用隔室》で生け贄にしてもう1枚ドローと、1枚で2度美味しいカード。これまでは1点喰らいながら1ドローしていましたからね。 面白いのは唯一の4マナ域であるアーティファクト、《魔列車》の採用です。このカードが入ったことで一気にこのデッキは引き締まりました。弾薬を能動的に生け贄にできつつ、高いクロックを持つ《魔列車》は、《再利用隔室》から最終的にサーチするカード。スタートが4/4トランプルなので、複数枚の弾薬がある状態で《魔列車》が攻撃すればあっという間にゲームが終わります。 たとえば弾薬が4つある状態なら8/8の《魔列車》に弾薬4つで8点。これだけで16点が確定します。更に他にも使っていないアーティファクトがあるはずなので、それらも生け贄に捧げれば、優に20点を超えるのです。   《武器製造》に《軍団の成形機械》、そして《再利用隔室》からの除去サーチなど、このデッキは自分の動きをして場をウィンコンディションに持っていく過程で相手にしっかり干渉していきます。そのため、アグロに対してある程度耐性があり、かつミッドレンジにも《再利用隔室》のバリューで勝利することができます。 回していてとても面白いデッキなので、ガチャガチャとデッキを回すのが好きな方はぜひお試しください!     エスパースピリット パイオニアリーグ : 5-0 By ViniBuzo MTGアリーナ用インポートデータ 主戦場はパイオニアとなっている種族、スピリット。メインカラーの青白2色で組まれることもあれば、展開力を《集合した中隊》で補うバント型など、3色にもなることのあるスピリットですが、今回ご紹介するのはそんな3色の中でも黒を足したもの。 そう、エスパースピリットです。   とはいってもベースはこれまでのスピリットと変わりません。《霊廟の放浪者》から始まり、名誉スピリット(?)の《マネドリ》、2マナ域には除去を避ける《鎖鳴らし》とロードである《至高の幻影》。3マナは呪文を追放しつつクロックを刻む《呪文捕らえ》。パイオニアの戦場を生き残った優秀なスピリットたちです。(スピリットが生命を持っているかはさておき) そこに加わった黒要素は《策謀の予見者、ラフィーン》!エスパーパルへリオンからミッドレンジなど幅広く使われていた名カードがスピリットに加わりました。 これまでのスピリットでは《執着的探訪》などリソースを取るオーラが採用されていたことがありますが、単体除去に弱すぎました。しかし、《策謀の予見者、ラフィーン》なら話は別です。引きすぎた土地や不要牌を捨ててスピリットを強化する動きは強烈です。 自身に護法がついているのも実にいやらしいですね。除去に多くマナを使わせることで2アクション、つまり除去の二段構えを封じれば、《呪文捕らえ》が突き刺さってくれます。それらの上から《策謀の予見者、ラフィーン》を除去しようとすれば更に1マナがかかるので、対処は困難です。 そしてもう1つの黒いカードが《悪夢滅ぼし、魁渡》です。 そう、実は《悪夢滅ぼし、魁渡》はスピリット…ではありません。忍者です。ですがスピリットと《悪夢滅ぼし、魁渡》の相性は悪くありません。   忍術はクリーチャーがブロックされなかった時に起動できる能力なので、飛行クリーチャーであるスピリットは忍術しやすく、1マナクリーチャーたちは再キャストが容易です。《マネドリ》は《悪夢滅ぼし、魁渡》の忍術で手札に戻して別のクリーチャーのコピーになれるのも強力ですね。 そして《鎖鳴らし》は再利用すれば相手にプレッシャーを与えられますし、場合によっては《呪文捕らえ》を拾うパターンもあります。   《策謀の予見者、ラフィーン》と《悪夢滅ぼし、魁渡》はいずれもドロー能力を持っているのがスピリットとしては実に嬉しいですね。打ち消しや追加のクロックなど、今必要なものを求めにいけるようになりました。   最近では《放浪皇》を入れるなどミッドレンジ風に進化してきたスピリットですが、ここに来てエスパー型が登場したのは面白いですね。 パイオニアの古株でありながら、スピリットはまだ進化を続けているのでした。   ナヤスケープシフト モダンゴールドリーグ : 5-0 By Meltiin 土地を生け贄に捧げてその枚数だけ好きな土地をデッキから場に出す。エクステンデッドの頃から様々なコンボデッキで使われてきた《風景の変容》。 6枚の《山》と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》をサーチすることで《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が6回誘発し、18点ダメージを叩き出す。そのため《風景の変容》は1枚で勝てるコンボカードであり、エクステンデッドやモダンでは《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》とずっと一緒に使われていました。 それから時が経ち、土地を7枚並べるという行為がモダンでは遅すぎるがゆえに《風景の変容》は《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と別れ、《精力の護符》と出会いました。《精力の護符》と《風景の変容》は4枚の土地で勝利できるので、それも当然のこと。《風景の変容》はアミュレットに組み込まれ、今猛威を振るっています。 そんな《風景の変容》が再び《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》とタッグを組むことになりました。 デッキ自体は古き良きスケープシフトです。6枚の《山》と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を《風景の変容》でサーチして勝つためには、7枚の土地がまず必要です。普通に土地を置いていくとこのコンボを決めるためには7ターンかかってしまうので、それを大幅に短縮するために、大量の土地サーチが入っています。   《カルニの心臓の探検》は3個のカウンターが乗っていると土地を2枚戦場に出せるエンチャント。上陸でカウンターが乗っていくので、フェッチランドを使えばすぐに土地サーチに移れます。 《風景の変容》は7枚の土地が必要ですが、使うマナは4マナで良いのがミソ。つまり4マナある状態で《カルニの心臓の探検》を起動して2枚の土地をタップインし、何らかの手段でもう1枚土地を置けば、その時点でコンボが決まるのです。7マナではなく7枚の土地があれば良いので、想像よりもコンボターンは早め。   《イリーシア木立のドライアド》はこのデッキのためのカードです。追加のセットランドに加えて、土地がすべて《山》になるので、フェッチランドも《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》もすべて《山》になります。これが何を意味するかというと、《イリーシア木立のドライアド》下では《風景の変容》によって即死させるために必要な土地の枚数が1枚減るのです。 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の誘発条件は《山》6枚。《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》自身が《山》なら5枚の土地と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》で18点が叩き出せます。 更に《風景の変容》を引いていない時でも、《イリーシア木立のドライアド》があり、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を素引きしていれば、それだけで勝てます。2枚の《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》がある状態でフェッチランドを置けば6点、サーチして土地を出して6点。追加セットランドでもう1回フェッチランドを置けば更に12点ですからね。 この《イリーシア木立のドライアド》をサーチできる《緑の太陽の頂点》は大きく、《ドライアドの東屋》をサーチしても良し、《エルフの開墾者》を持ってきて《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を先に置いて《イリーシア木立のドライアド》からの即死の準備もできます。 《風景の変容》自体はメインに3枚しか入っていませんが、それは《願い》が採用されているためです。これにより実質このデッキは《風景の変容》6枚体制となっており、かなり安定して《風景の変容》をキャストすることができます。 更にこの布陣に『久遠の終端』から加わったのが《氷耕しの探検家》。 追加セットランド権と墓地から土地を置ける《世界のるつぼ》能力を内蔵したこのクリーチャー。スケープシフトが考える最強のカードのようなものが本当に登場したのです。追加セットランドの権利がいくつあっても、手札に土地がなければ置くことはできません。それが《イリーシア木立のドライアド》が抱える弱点でしたが、《氷耕しの探検家》ならフェッチランドが1枚墓地に落ちているだけで、土地を置き続けることができます。 この《氷耕しの探検家》も《緑の太陽の頂点》でサーチできますし、このデッキはドロースペルこそ入っていませんが、かなり安定した動きが可能です。   《白蘭の幻影》のような土地破壊は効かないので、効果的なのは《血染めの月》《海の先駆け》だけ。しかし、土地をサーチするデッキなので色マナを確保しやすく、それらの月カードを対処するのも難しくありません。 モダンで《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が再び噴火する時が来ました!

【週刊メタゲーム通信】イゼット大釜とディミーアミッドレンジが絶好調!忍び寄るのは《ウロボロイド》!?

週刊 Standard ピックアップ

2025.08.06

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   本日のメタゲーム通信はスタンダード!   『久遠の終端』の加入、そしてローテーションから少し経ち、そろそろ強いデッキが明確になった頃。混沌とした環境初期を経て頭角を現しているデッキたちをご紹介しましょう!   紹介デッキ イゼット大釜 シミックウロボロイド ディミーアミッドレンジ   イゼット大釜  スタンダードチャレンジ : 1位 By Ale_Mtg MTGアリーナ用インポートデータ まずは今スタンダードで最も勝っているデッキ、イゼット大釜。 直近のマジックオンラインのイベントではトップ8に複数入賞は当たり前で、チャンピオンズカップファイナルスペシャル予選でも多くのプレイヤーが突破しているデッキです。   前環境でも一線級だったイゼット大釜は『久遠の終端』でのアップデートこそほとんどないものの、逆にローテーションによって失ったカードが《シヴの浅瀬》だけだったため、ダメージは小さく、他のデッキを圧倒的なパワーでなぎ倒しています。 デッキの勝ち手段は主に2つ。デッキ名にもなっている《アガサの魂の大釜》と《プロフトの映像記憶》です。 《アガサの魂の大釜》で煮込むクリーチャーは《迷える黒魔道士、ビビ》。スペルを唱えて大きくなり、たくさんのマナを出す《迷える黒魔道士、ビビ》ですが、《アガサの魂の大釜》で追放すると、+1/+1カウンターが乗っているクリーチャーたちから大量のマナが出せるようになります。 《略奪するアオザメ》は勝手に成長していくので《アガサの魂の大釜》で乗せなくとも《迷える黒魔道士、ビビ》を追放した瞬間にマナクリーチャーとして運用できるので相性抜群です。 他のクリーチャーは能動的にカウンターは乗りませんが、《プロフトの映像記憶》によってカウンターが乗っていきます。 《アガサの魂の大釜》によって全クリーチャーが《迷える黒魔道士、ビビ》になると、《冬夜の物語》を手札からプレイして墓地から調和で打つなど、デッキが凄まじい勢いで回り始めます。後から出した《略奪するアオザメ》もすぐにルーターでカウンターが乗り、サイズが上がれば《迷える黒魔道士、ビビ》としてマナが出せるので、1ターンでライブラリーを大量に掘りながら全展開していき、最終的には《竜航技師》を出してすべてのクリーチャーに速攻を付けて殴り勝ちます。 このデッキの《プロフトの映像記憶》は強力なエンチャントです。《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》《冬夜の物語》と大量にドローが採用されているので、毎ターンたくさんのカウンターを乗せて攻撃できます。 《アガサの魂の大釜》によるコンボを墓地対策などで封じられてもあまり効果がないのはこの《プロフトの映像記憶》のおかげで、メインプランである《アガサの魂の大釜》コンボに大きく貢献しつつ、サブプランの《プロフトの映像記憶》ビートダウンも完遂してくれるのです。 このデッキはイゼット大釜ではなくイゼットプロフトと言っても過言ではありません。   《逸失への恐怖》は《プロフトの映像記憶》とコンボになります。昂揚によって追加の戦闘フェイズが発生するので、《プロフトの映像記憶》が1ターンに2回誘発するのです。 他のデッキでは昂揚は切削などで達成するため運要素が大きいですが、イゼット大釜はルーター能力で墓地にカードを落としていくので、ある程度昂揚を意識することができ、思ったより早く昂揚を達成します。そのため《逸失への恐怖》は2マナ2/3で手札を整えるだけでなく、相手にとってかなりプレッシャーのあるカードなのです。   《ヴォルダーレンの興奮探し》のローテ落ちによってデッキが回り始めた後の即死プランは《竜航技師》による速攻付与からの攻撃と、少し弱体化してしまいましたが、大抵の相手には全展開するだけで勝てますし、デッキはほとんど弱体化していません。むしろ、『久遠の終端』によって強化されたかもしれません。 一部のプレイヤーはこのイゼット大釜に《量子の謎かけ屋》を採用しているからです。 イゼット大釜はリソース獲得手段があまりなく、《冬夜の物語》で少しずつ手札を増やしていくしかありませんが、《量子の謎かけ屋》が加わることでリソースが稼ぎやすくなります。しかも《量子の謎かけ屋》はワープで唱えて《冬夜の物語》の調和コストにできるなど、相性抜群。 今後このチューンが流行るかにも注目ですね。     シミックウロボロイド スタンダードチャレンジ : 2位 By djbmppwns MTGアリーナ用インポートデータ 《量子の謎かけ屋》や《コスモグランドの頂点》など『久遠の終端』の神話レアが続々活躍している中、最近密かに注目されている神話レアがいます。 それが《ウロボロイド》です。 戦闘開始時に《ウロボロイド》のパワーに等しい+1/+1カウンターを自軍クリーチャーにばらまくこのワーム。自身にもカウンターが乗るため、毎ターン付与する+1/+1カウンターが増えていくというわけです。   この《ウロボロイド》でクリーチャーを全体強化しながら戦うのがこのデッキ。《ウロボロイド》を活かすために様々な工夫が凝らされています。   《ウロボロイド》は自身のパワー分のカウンターを乗せるので、何かしらの手段で《ウロボロイド》を強化することで、付与するカウンターが一気に増えます。   その手段の1つが《棘を播く者、逆棘のビル》。上陸で《ウロボロイド》にカウンターを置き、《ウロボロイド》がそれを全体にばらまいていくので、一気に盤面が強化されます。 そして『久遠の終端』で登場した《遺伝子変異の成虫》も《ウロボロイド》と相性抜群。上陸で《ウロボロイド》のサイズを3/3にすればカウンター3つをばらまきますし、土地が6つ以上なら《ウロボロイド》が6/6になるので、いきなり全体が+6/+6されるのです。 このように上陸カードを多数採用していることから、《地底のスクーナー船》《名もなき都市の歩哨》《遠眼鏡のセイレーン》で得られる地図の価値は高めです。地図で土地を獲得していくことで、毎ターンしっかり上陸を誘発させられます。逆に言えば、地図を他のデッキよりも上手く使えるということです。 マナ加速の《ラノワールのエルフ》に《遠眼鏡のセイレーン》と貧弱なスタッツのクリーチャーは入っていますが、それらのクリーチャーが《ウロボロイド》で暴力的なサイズになるので、このデッキでは序盤のクリーチャーがそのままフィニッシャーに化けてくれます。《ラノワールのエルフ》が後半でも価値があるのは嬉しいですね。 《ラノワールのエルフ》から《ウロボロイド》による攻撃的な面もあれば、《フラッドピットの溺れさせ》《名もなき都市の歩哨》で守り、更に干渉手段も《洪水の大口へ》《薮打ち》としっかり用意されており、攻守のバランスに優れた良いデッキです。 チャレンジでは最近入賞数が増えており、《ウロボロイド》への注目は高まっています。このデッキを組みたいなら早めに《ウロボロイド》は揃えておいた方が良いかもしれませんね!   ディミーアミッドレンジ スタンダードチャレンジ : 1位 By sokos13 MTGアリーナ用インポートデータ さて、最後に紹介するのは『久遠の終端』とローテーション落ちもどこ吹く風。皆さんすっかりお馴染みのディミーアミッドレンジです。 『ダスクモーン:戦慄の館』で《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》の2種を手に入れて完成されたこのデッキは、その後ささやかなアップデートを繰り返しながら、メタゲームの上位に常に鎮座しています。 相手の盤面を除去や打ち消しでいなすコントロール要素を持ちつつ、クリーチャーで速やかに殴る。それこそがミッドレンジですが、《永劫の好奇心》と《悪夢滅ぼし、魁渡》はまさにそのミッドレンジを体現した2枚です。   いずれのカードも攻撃とリソース確保が一つになっているので、攻撃して引いたカードで相手の妨害を繰り返すだけでゲームに勝つことができます。この2枚が存在する限り、ディミーアミッドレンジは不滅と言っても過言ではありません。   その除去がほぼ効かない《コーリ鋼の短刀》が環境に存在していた時は元気がなかったデッキですが、今やこのディミーアミッドレンジのゲームプランを1枚で覆すカードは存在しません。それならこのディミーアミッドレンジが消える理由はないのです。 そんないつまでも変わらない味を提供してくれる老舗のラーメン屋の雰囲気すらあるディミーアミッドレンジですが、メタゲームに合わせてクリーチャーや除去の選択が変わります。今は2マナ域を《フラッドピットの溺れさせ》《大洞窟のコウモリ》にした、最も基本的なリストが流行です。 赤いデッキ全盛期の時はすべてのデッキに1マナ除去が入っていたレベルだったので、《大洞窟のコウモリ》はただ2マナで相手の手札を見るだけのカードでした。そのため、2マナ域を他のカードに譲っていたのですが、現環境ではまたこの《大洞窟のコウモリ》になっています。 ディミーアミッドレンジがローテーションで失ったのは《切り崩し》《喉首狙い》といずれも除去。1マナ除去として採用されているのは《悲劇の軌跡》です。《遠眼鏡のセイレーン》で出した地図を生け贄にしたり、《悪夢滅ぼし、魁渡》で忍術など、ヴォイドを引き起こす手段はそれなりにあるので、1マナの万能除去になりやすいですね。他の除去を使えばヴォイド状態にできますし、《悲劇の軌跡》は非常に使いやすいカードです。《切り崩し》より強いかもしれませんね。 《喉首狙い》は《保安官を撃て》になりましたが、こちらも影響はさほどありません。無法者を倒せない除去ですが、《迷える黒魔道士、ビビ》や《分派の説教者》など、マスト除去の3マナ域にはしっかり当たります。ミラーマッチの《遠眼鏡のセイレーン》やイゼット大釜の《略奪するアオザメ》が倒せなくて困ることはありそうですが、それぐらいです。 ディミーアミッドレンジが環境からいなくなることは中々想像できません。エンチャントに触れないという弱点があるため、《陰湿な根》のように、地上ダメージが通りづらくてかつエンチャントを活用してくるデッキが台頭すると厳しいですが、今のところはその気配はありません。 スタンダードの大会に出るならディミーアミッドレンジとイゼット大釜)に当たることは想定しなければなりません。勝ちたいならこの2つのデッキとみっちり練習しましょう!

『久遠の終端』加入&ローテーションで激変した新スタンダードから3デッキを紹介!

週刊 Standard ピックアップ

2025.07.31

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   ついに『久遠の終端』が明日8月1日、発売!!   そしてマジックオンライン・MTGアリーナ上では既に『久遠の終端』が実装され、早速新カードたちが活躍しています。   本日は『久遠の終端』の加入、そしてローテーションと大変革の起きた新スタンダード環境からデッキをご紹介していきます!   紹介デッキ オルゾフサクリファイス エスパーピクシー グルール上陸 ローテーションによるマナベース格差 デッキ紹介の前に。   突然ですが、スタンダードのローテーションにおいて最も大きなものと言えばなんでしょうか。   様々なフォーマットで活躍する《偉大なる統一者、アトラクサ》のスタンダード落ち?黒を支えた《黙示録、シェオルドレッド》でしょうか。はたまた万能除去の《喉首狙い》が消えたこと? いえいえ、それよりももっと重要なことがあります。マジックを支える要素である土地。その中でも重要な2色土地のスタンダード落ちです。   1点のダメージを受ける代わりに2色の内の片方を出せるアンタップイン土地、通称ダメランは『団結のドミナリア』『兄弟戦争』収録のため、スタンダードを去りました。 そして通称ファストランドのうち、《黒割れの崖》《銅線の地溝》《闇滑りの岸》《剃刀境の茂み》《金属海の沿岸》も『ファイレクシア:完全なる統一』のためローテーション落ち。 ファストランドは有効色5種、ダメランはすべて落ちてしまったので、マナベースに格差が生まれることとなりました。   この格差に追い打ちをかけるのが『久遠の終端』。最強の2色土地の1つであるショックランドが再録されましたが、その内容は有効色・対抗色が入り混じっています。対抗色は1種類落ちただけなので、ショックランドによってマナベースはトントン。一方、『久遠の終端』に収録されなかった有効色は大打撃です。 具体的には青白、赤黒、緑白です。この3種は一気に2種の土地を失うこととなってしまいました。諜報ランドと境界ランドは以前として使用できますが、諜報ランドは確定タップインで、境界ランドは序盤は片方の色しか出ない可能性が高い土地。いずれもアグロ用というよりは、コントロール用の土地です。 速いデッキになりやすい赤黒や、《ラノワールのエルフ》からゲームを始めたい緑白にとっては、序盤に必ずアンタップインできるダメラン・ファストのスタンダード落ち、およびショックランドのない現状はかなり痛いでしょう。 2色のマナベースについてまとめてみました。1種落ちて1種入った±0は○、2種落ちて1種加入および1種落ちの-1なら△、2種落ちの-2は×です。   赤白○白黒○青緑○緑黒△青黒△赤緑△青赤△白緑×赤黒×青白×   とこのようになっています。これからデッキを組む際の参考になるかもしれません。   オルゾフサクリファイス  スタンダードリーグ : 5-0 By RCMerriam MTGアリーナ用インポートデータ 最初に紹介するのは、ローテーションによってマナベースが強化された白黒(オルゾフ)カラーのデッキ。   白黒は《コイロスの洞窟》を失って《神無き祭殿》を得ました。境界ランドは土地タイプを参照して色マナを生み出すため、《神無き祭殿》はただただプラスです。 サクリファイス。自身のクリーチャーを生け贄に捧げることで様々な恩恵をもたらすデッキにつけられた相称ですが、現代のサクリファイスは《威名のソルジャー、セフィロス》なしでは語れません。 クリーチャーが死ぬたびに1点ドレインと《血の芸術家》能力を持ち、それが1ターンで4回誘発したら変身し、その能力の紋章を獲得。唯一無二の能力を持つのが《威名のソルジャー、セフィロス》。このデッキはもちろん、《威名のソルジャー、セフィロス》の紋章獲得を目指しています。   クリーチャーを生け贄に捧げるとどんどん戦場は寂しくなってしまうものなのですが、このデッキに入っているクリーチャーたちは死亡時にクリーチャーを産み落とす、1枚で2度美味しいものばかり。   《寄生の賢者》《入れ子ボット》《鎖破りの鼠》はすべて死亡時に1/1のトークンを生成してくれるクリーチャーで、どれも1マナ域。クリーチャーの生け贄には困りません。 《見捨てられた鉱夫》は死亡時にトークンこそ生み出しませんが、代わりに戦場に戻る能力を持っています。《威名のソルジャー、セフィロス》などのドレイン能力は対戦相手1人を対象としているため、これは悪事になります。悪事によって戦場に戻る《見捨てられた鉱夫》との相性はぴったりなのです。 生け贄に捧げる手段とマナさえあれば《見捨てられた鉱夫》1枚で《威名のソルジャー、セフィロス》を変身させられます。《見捨てられた鉱夫》が死亡し、《威名のソルジャー、セフィロス》が誘発。ここで悪事を働くため、今生け贄にした《見捨てられた鉱夫》が墓地で誘発し、マナを支払うことで戦場に戻せるのです。 《うなる大殺犬》は他の4種と違い生け贄には寄与してくれませんが、代わりに諜報で墓地を肥やしたり、ドローの質を上げてくれます。墓地を溜めることが重要なこのデッキでは欠かせない1枚です。 さて、肝心なのが生け贄にする手段です。サクリファイスが台頭する時はこの生け贄手段、通称サクり台が強い時と相場が決まっています。元祖サクリファイスは《ファルケンラスの貴種》《カルテルの貴種》でしたからね。 このデッキのサクり台は《バルトロメ・デル・プレシディオ》と新カードである《影の帯の盲信者》です! 《バルトロメ・デル・プレシディオ》はシンプルで強力なサクり台。クリーチャーかアーティファクトを生け贄にすると自身の上に+1/+1カウンターが乗ります。名カード《ナントゥーコの鞘虫》と比べても遜色ない立派なサクり台です。伝説でなければ4枚間違いなく入りましたね。   そして『久遠の終端』から加わったのが《影の帯の盲信者》。こちらは自身が強化されることはありませんが、生け贄で諜報を行えます。《うなる大殺犬》もそうですが、墓地を肥やす意味のあるこのデッキにとって諜報は大きく、サクり台が持つ能力としてはあまりに十分。伝説でないため4枚採用できるのが素晴らしいです。 なぜ墓地を肥やす必要があるのか?その答えが《過去立たせ》です。 墓地からマナ総量が2以下のクリーチャー・カードをまとめて戻す子のソーサリー。《うなる大殺犬》《影の帯の盲信者》で2マナ以下のクリーチャーをたっぷりと落とせば、《過去立たせ》を打つだけでゲームに勝てる可能性があります。   《復讐に燃えた血術師》が4枚採用されているのは《過去立たせ》が理由です。《威名のソルジャー、セフィロス》は残念ながら3マナなので《過去立たせ》から戻すことができません。更地の盤面からワンショットキルするには、《復讐に燃えた血術師》が必要なのです。 新セットでしっかり強化されたオルゾフサクリファイス、ぜひお試しください!     エスパーピクシー スタンダードリーグ : 5-0 By DB_claudioh MTGアリーナ用インポートデータ 戦場に出た時に能力が誘発する《逃げ場なし》《嵐追いの才能》を《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》などで再利用してアドバンテージを獲得する、いわゆるセルフバウンス系デッキ。 《コーリ鋼の短刀》が登場する前のスタンダードでは環境を席巻し、エスパーカラーにとどまらず、ディミーアでもこのセルフバウンスシステムを採用したり、エスパーの中でも様々な型ができるほどになっていました。 そんなエスパーピクシーは天敵の《コーリ鋼の短刀》によって激減し、最終的にはキーカードである《望み無き悪夢》《この町は狭すぎる》が禁止され、環境から去った……。   と思われていたのですが、新環境で見事に復活を遂げました!   デッキのメインコンセプトは変わりません。各種バウンスクリーチャーたちで《嵐追いの才能》をバウンスしてビートダウンしたり、除去を回収してクリーチャーを死滅させてコントロールしていきます。 ここに『久遠の終端』のカードが加わり、攻守ともに大幅な強化を受けました。   まずは守。《悲劇の軌跡》です。 普通に使えば-2/-2と《死の重み》相当ですが、ヴォイド状態だと-10/-10と、破格の1マナ確定除去。ヴォイドさえ満たせれば非常に強力なカードです。   そしてこのヴォイドを容易に達成できるのがエスパーピクシー。ヴォイドの達成条件は、土地以外のパーマネントが戦場を離れているか、カードがワープされていれば良いので、自分のパーマネントを手札に戻すだけで達成できるのです。《養育するピクシー》で何かを拐取しながら《悲劇の軌跡》というアクションが取れます。 1マナでここまで確実な除去はこれまでのエスパーピクシーにはなく、これはデッキの大きな進化と言えます。たった1マナでほぼすべてのクリーチャーに対処できるようになりました。   そんな軽い確定除去とも相性の良い攻めカードが《コスモグランドの頂点》。1ターンに2回の呪文を唱えるとトークンを2体生成したり、クリーチャーを全体強化するこのカードですが、自身が3マナとそこそこ軽く、4ターン目に《コスモグランドの頂点》から1マナスペルと動けば即座に誘発することができます。 特に強いのは全体強化のモードです。《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》《孤立への恐怖》ととにかく軽い飛行クロックが大量に入ったデッキなので、《コスモグランドの頂点》によるパンプアップが非常に効果的。《望み無き悪夢》を失ってライフを削るスピードが大幅に遅くなるかと思われましたが、《コスモグランドの頂点》のおかげでその心配はなくなりました。 《コスモグランドの頂点》を活かすために《遠眼鏡のセイレーン》まで採用されており、とにかく飛行を並べて強化して勝とうという意思がリストからも伝わってきます。 《遠眼鏡のセイレーン》から出る地図はヴォイドの誘発にも便利です。《遠眼鏡のセイレーン》《悲劇の軌跡》はエスパーピクシーのみならず、今後の青黒系の定番の組み合わせとなりそうですね。 《コスモグランドの頂点》の強さにとにかく驚かされるデッキで、エスパーピクシーは完全に復権したと言って良いかもしれません。エスパーピクシー愛好家の方にはぜひ試してもらいたいデッキです。   グルール上陸 スタンダードリーグ : 5-0 By ComboMAN MTGアリーナ用インポートデータ 最後に紹介するのは『久遠の終端』ではなく『ファイナルファンタジー』が主役のこちらのデッキ!   ファイナルファンタジー限定構築などで人気の上陸デッキがついにスタンダードでも登場しました。   《サッズのヒナチョコボ》《ティファ・ロックハート》《苔生まれのハイドラ》《棘を播く者、逆棘のビル》と、土地を置くことで強化されていくカードが大量に入ったビートダウンです。単純明快なコンセプトで実に緑らしいデッキですが、回った時はただのビートダウンではなく、まるでコンボのよう。 その爆発力を引き起こしているのが《旅するチョコボ》。ライブラリーの上から土地を置いたり鳥をプレイできるだけでなく、土地を置いたことによる誘発が倍になります。つまり上陸と書いてあるすべての能力が2回誘発するのです。 《サッズのヒナチョコボ》は1回の上陸でカウンターが2個乗るので、《寓話の小道》を置くだけでパワーが4上がりますし、1/2のティファは《寓話の小道》を置いて起動するだけでパワーが16に。仮に既に《ティファ・ロックハート》のパワーが3だったなら、48点のパンチをお見舞いします。 ここ最近で急激に姿を見かけるようになったのが《苔生まれのハイドラ》。上陸するたびにカウンターが倍になっていくので、ほぼ3マナの《ティファ・ロックハート》です。《旅するチョコボ》と並べばすぐに人が死ぬサイズに膨れ上がります。こちらも《ティファ・ロックハート》同様トランプルを持っているので、チャンプブロックは許しません。 そんな《ティファ・ロックハート》《苔生まれのハイドラ》と最高の相性なのが《棘を播く者、逆棘のビル》。このカードがトーナメントで使われていたのを最後に見たのはモダンのナドゥの頃だったかもしれません。あの時は《有翼の叡智、ナドゥ》の誘発のためという少々ふがいない役割でしたが、このグルール上陸では本人も納得の仕事をしてくれます。 自身のパワーを倍にする《ティファ・ロックハート》と《苔生まれのハイドラ》は《棘を播く者、逆棘のビル》で強化すると一瞬で20点を削る兵器と化すのです。 そしてこのデッキで最も大事な上陸を達成する手段として、新カードの《氷耕しの探検家》が加わりました。 セットランド権が1回増えるだけでも強力ですが、なんとこのカードは墓地から土地をプレイすることができます。   この手のセットランドを増やすカードは手札の土地がすぐに枯れてしまうのが残念なのですが、《氷耕しの探検家》はこの弱点を克服しているのです。《寓話の小道》《脱出トンネル》《広漠なる変幻地》《進化する未開地》はすべて自身を生け贄に土地をサーチするカードなので、セットランドするたびに墓地に落とすことができます。これらの土地のいずれかが1枚墓地にあるだけで、毎ターンの2回のセットランドが確約されるのです。 更にオマケとしてついている上陸時の諜報能力は、《寓話の小道》などを落とす手段でありながら、《世界魂の憤怒》とも噛み合います。 墓地の土地を戦場に戻しながらダメージを与える《世界魂の憤怒》は、上記の生け贄にする土地と一緒に使うだけで噛み合いますが、《氷耕しの探検家》による墓地肥やしによって、更にバリューが上がっています。上陸クリーチャーたちを並べて《世界魂の憤怒》をX=5ほどでプレイして一撃必殺ということもしばしば発生します。   コンセプトは単純な上陸デッキながら、様々な攻め方があるのが魅力のグルール上陸です!

スタンダードのちょっと珍しいデッキたちをご紹介!

Standard ピックアップ

2025.07.15

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今回はスタンダードの全く新しいデッキを3つご紹介!   紹介デッキ バントチョコボ ボロスピアナラー 5色レジェンズ   バントチョコボ  スタンダードリーグ : 5-0 By Solidsnake408 MTGアリーナ用インポートデータ ファイナルファンタジーの乗り物と言えばチョコボ!その愛くるしい外見も相まってFFのマスコットキャラ的な役割を担い、チョコボの不思議なダンジョンなど、スピンオフのゲームも登場するほどの人気キャラクターです。 そんなチョコボが、スタンダードを走り回っています。   《サッズのヒナチョコボ》はモダンで採用実績があるほどのカード。上陸するたびに強化されていくので、1ターン目に出ればかなりの脅威となります。 ただ、モダンと違い2回の上陸を1枚で達成するフェッチランドはスタンダードには《寓話の小道》しかありません。しかも《寓話の小道》はタップインかつサーチ先が基本土地なので、枚数をあまり入れることも難しい。 それだと《サッズのヒナチョコボ》のサイズは寂しいのでは?と思うかもしれませんが、ご安心ください。《サッズのヒナチョコボ》の相方となるチョコボがいます。   そう、《旅するチョコボ》です。ライブラリーの上から鳥呪文を唱えたり、土地を置くなど、手札の枯れやすいこのデッキではそれだけで嬉しいカードなのですが、土地を置くことにより誘発する能力が倍になるので、《サッズのヒナチョコボ》はセットランドするだけでカウンターが2つ乗り、あっという間にとんでもないサイズに膨れ上がります。 更に《サッズのヒナチョコボ》と相性抜群なのが《マネドリ》。《威厳あるバニコーン》をコピーしたりなどこれまでも採用実績のあったカードですが、このデッキにおいてはテキストすべてが重要です。 何を隠そう《マネドリ》は鳥なのです!《旅するチョコボ》によってライブラリーの上から唱えられます。   そしてその《マネドリ》がコピーするのが《サッズのヒナチョコボ》。1ターン目に《サッズのヒナチョコボ》、2ターン目に《マネドリ》で《サッズのヒナチョコボ》をコピーして上陸して強化していくのがこのデッキ一番のブン回り。しかも《マネドリ》は飛行を持っているので、飛行の《サッズのヒナチョコボ》が爆誕するのです。 もちろん《旅するチョコボ》をコピーすれば、誘発は更に増えるので、《マネドリ》はデッキの様々なカードと相性が良いのです。   《旅するチョコボ》と同じくリソースを稼ぐのが《桃源郷の探求者、チョコ》。鳥が攻撃した時の能力が誘発し、土地を置いたり、カードを手札に加えたりできます。3体の鳥で攻撃した場合は3枚のカードを見て、その中から1枚を手札に加えて、残りが土地なら場に置けます。土地は望む枚数置けるので、3枚とも土地なら3枚すべてを置き、上陸をたくさん誘発させてくれます。 《桃源郷の探求者、チョコ》はチョコボトークンと同じく上陸で+1/+0の修正を受けるので、戦場に出したターンはリソースを供給するのみですが、次のターンにはとんでもないサイズのアタッカーとなります。   《サブクエスト:チョコボ育成》は残念ながら《旅するチョコボ》から唱えることはできませんが、それでもかなりのパワーカード。鳥4体をコントロールしている状態で第一メインフェイズを迎えることで変身します。 条件がそれなりに厳しいだけに変身後は圧巻!まずは変身した時に土地を探し、上陸するたびに自身……ではなく鳥クリーチャーすべてがターン終了時まで+1/+0修正!《旅するチョコボ》がいれば上陸2回になるのでほぼ《踏み荒らし》状態! しかも好きな土地をサーチできるので《立藤村》を引っ張ることも可能です。攻め手がなくなっても《立藤村》から《旅するチョコボ》や《桃源郷の探求者、チョコ》など鳥を呼び出すチョコボたちをライブラリーから探せます。 チョコボデッキ専用の《バッツとボコ》は超優秀な除去カード。2マナ4/3で出た時に相手のクリーチャーを1体破壊と、《ネクラタル》も真っ青な性能。しかも《旅するチョコボ》でライブラリーの上から唱えられます。 チョコボ以外の鳥も、1マナ域の《癒し手の鷹》や、除去をかわす《羽信隊の随員》など、優秀なカード揃い! FFのデッキでスタンダードを戦いたいという方にバントチョコボはオススメです!     ボロスピアナラー スタンダードリーグ : 5-0 By DB_Dykman MTGアリーナ用インポートデータ 追放領域から土地をプレイするか呪文を唱えると1/1の飛行機械を生み出す、ちょっとユニークな能力を持った《復興の領事、ピア・ナラー》。 それを主軸に据えたミッドレンジがこのボロスピアナラーです。   もちろんこのデッキは《復興の領事、ピア・ナラー》を絶えず誘発させることを目指しているため、デッキには追放領域から呪文を唱える手段がたっぷりあります。   《探索するドルイド》は赤いデッキではお馴染みの衝動的ドロー。自身をクリーチャーとして唱えることもでき、スペルを唱えて成長していきます。軽い除去をめくっておいて、クリーチャーで出しながら成長させていく動きは、対アグロでは重要です。ちなみに出来事領域から《探索するドルイド》を唱える際にも《復興の領事、ピア・ナラー》は誘発してくれるので、1枚で3度美味しい。 《放浪する牧場主、ブルース・タール》は初めて見たという方もいらっしゃるかもしれませんね。サンダージャンクションのリミテッドを遊んでいた方は悪夢が蘇るでしょうか。 戦場に出るか攻撃するたびにライブラリートップを追放し、それが土地なら2/2の雄牛が出て、それ以外ならプレイすることができます。《復興の領事、ピア・ナラー》のトークンに繋がるか、2/2の雄牛が出てきます。残念ながら土地がめくれた場合はプレイすることはできません。雄牛は《放浪する牧場主、ブルース・タール》の能力で二段攻撃を持つので強烈な一撃をお見舞いできます。 更に《復興の領事、ピア・ナラー》を活用すべく、《運任せ》も4枚採用!アップキープにライブラリートップを追放して使用できるという、シンプルかつ強力な能力。毎ターンタダで追加のドローができると考えれば破格です。 《復興の領事、ピア・ナラー》はこれまでアグロ系のデッキに採用されていましたが、ボロスピアナラーはコントロール要素の強いデッキです。メインから7枚の単体除去に加えて、《一時的封鎖》《審判の日》と全体除去も採用しています。《復興の領事、ピア・ナラー》でトークンを出す能力ともちろん噛み合いませんが、それでも問題ありません。 《運任せ》も《探索するドルイド》を手札をほとんど減らすことなく《復興の領事、ピア・ナラー》を誘発できるカードだからです。時には《復興の領事、ピア・ナラー》を防御的に使うこともあるでしょう。出るトークンで攻め手をさばきながら、全体除去を探しにいく。そんな展開もありそうです。 《復興の領事、ピア・ナラー》《探索するドルイド》《運任せ》の並びが非常にいやらしく、攻守に渡って粘り強いデッキです。 攻めも守りも自由自在のボロスピアナラー、お好きな方にはたまらないでしょう!   5色レジェンズ スタンダードリーグ : 5-0 By claudioh MTGアリーナ用インポートデータ 最近急に勝ち始めたデッキ、5色レジェンズ。   その名の通り5色の伝説のクリーチャーを詰め込んだデッキで、《大スライム、スローグルク》と《見捨てられたぬかるみ、竹沼》などの魂力土地があった頃は、メタゲームの一角にまで上り詰めていました。 今のスタンダードで5色は中々厳しいのですが、それは普通のデッキの話。5色レジェンズならば専用の土地を使えるので5色が可能となります。   それが《英雄の公有地》。伝説に対しては好きな色マナが出る5色ランド。これだけで既に強いのに、生け贄にすることで伝説クリーチャーを除去から守ることができます。伝説好きが作ったオリカでしょうか? 更に伝説のクリーチャーの大半が人間なので《魂の洞窟》も4枚使えます。そして《魂の洞窟》から打ち消されない能力だけがなくなった《閑静な中庭》も5色土地。ここに更にファイナルファンタジーで加わった5色土地《始まりの町》で、好きな色を出せる土地が16枚体制となりました。5色デッキが成立するのも頷けますね。 さて、マナベースについて納得してもらえたところで、肝心の伝説のクリーチャーのラインナップをご紹介しましょう!   まずはデッキの主役となるのが《統べるもの、ジョダー》。5色の5/5とそれだけで強そうなカードですが、能力を読めば更にとんでもないカードであることがわかります。 まず自分の伝説のクリーチャーたちがすべて、伝説のクリーチャーの数だけ+修正を受けます。3体の伝説がいれば+3/+3です。   更に伝説の呪文を唱えると、ライブラリーの上からそれよりマナ総量の小さい伝説のカードが場に出てきます。伝説限定の続唱ということですね。伝説のクリーチャーが伝説のクリーチャーを呼ぶので、全体の修正も+2されます。小粒なクリーチャーたちのサイズが凄まじいことになります。 生き残ればとんでもないクリーチャーであると同時に、出たターンにも戦場に多大なインパクトを与える、まさしくこのデッキの顔と呼ぶべきクリーチャーです。   《統べるもの、ジョダー》によってクリーチャーが強化されるとなると、俄然気になるのが軽い伝説たちです。せっかくなら《統べるもの、ジョダー》を出すまでにクリーチャーを大量に展開しておきたいですからね。   実は軽い伝説クリーチャーはファイナルファンタジーから大量に追加されました。   《暗黒騎士、セシル》は1マナ2/3接死と単体でもオーバースペック。攻守に渡って活躍しますし、《統べるもの、ジョダー》で強化されて突然変身!なんてことも。大量のダメージを喰らう点にはお気を付けください。 逆に《ザックス・フェア》は防御的なクリーチャー。1マナ払うとクリーチャーに破壊不能をつけるので、《統べるもの、ジョダー》を出して1マナを構えて守る展開もありそうです。1マナの伝説のクリーチャーが持つ能力としては破格ですね。2マナですが《不屈の将軍、ジリーナ》はマナを使わずに守ることができるので、《統べるもの、ジョダー》を中々除去らせてもらえません。 クリーチャーばかりが入っていますが、相手への干渉手段もきちんとあります。《シヴァのドミナント、ジル》は土地でないパーマネントを手札に戻せる優秀なクリーチャー。 リソース面を担うのは《太陽の執事長、インティ》《侵攻の伝令、ローナ》。《太陽の執事長、インティ》は手札を捨ててトップを追放し、《侵攻の伝令、ローナ》はカードを引いて捨てるなので、単体ではそれぞれリソースを稼いでくれませんが、この2枚が揃うとカードが増えます。《侵攻の伝令、ローナ》の能力でカードを捨てると《太陽の執事長、インティ》が誘発してくれるためです。 このデッキに入っている唯一の非クリーチャー呪文である《伝説の秘宝》は、その名の通り伝説のためのカード。3マナで好きな色マナを出すちょっと弱いマナアーティファクトですが、なんと伝説のクリーチャーをタップした際にもマナを生み出せます。つまり、《ザックス・フェア》のマナを残さずとも《統べるもの、ジョダー》を守ることができます。 《伝説の秘宝》さえあれば4ターン目に《統べるもの、ジョダー》を出しながら《ザックス・フェア》で守れる、凄まじい展開を作れます!このデッキのキーカードと言っても良いでしょう。   伝説のクリーチャーは派手ですし、《統べるもの、ジョダー》からクリーチャーが次々と沸いてくるのも面白く、回していてとても幸福感の高いデッキです。 《統べるもの、ジョダー》にビビっときた方はぜひ組んでみてください!

【週刊メタゲーム通信】ディミーアミッドレンジが玉座に帰還!ナヤユウナとボロス召集にも注目

週刊 Standard ピックアップ

2025.07.09

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   7枚の禁止が発表されたスタンダードは赤アグロ天国から大ミッドレンジ時代に突入!   紹介デッキ ディミーアミッドレンジ ナヤユウナ ボロス召集   ディミーアミッドレンジ  スタンダードチャレンジ : 1位 By TheManLand MTGアリーナ用インポートデータ 前環境で赤単アグロ・イゼット果敢・ドメインオーバーロードなどともバチバチにやりあっていたにも関わらず、なぜか今回の禁止改訂で一切の影響を受けなかったデッキ、ディミーアミッドレンジ。   《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》を一度に『ダスクモーン:戦慄の館』で手に入れ、しばらくは環境の王者として君臨していました。打ち消し、除去、そしてリソースが取れるクリーチャーで構成されており、万能なデッキということもあり、非常に人気がありました。 そんなディミーアミッドレンジでしたが、《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》といったアドバンテージ源を触ってくる、自分よりも早いエスパーピクシーが人気になりだしてから少し人気がなくなり、天敵の《コーリ鋼の短刀》出現後はほとんど見なくなっていました。 しかし、《望み無き悪夢》も《この町は狭すぎる》《コーリ鋼の短刀》はこの世にはもう存在しません!それならば当然ディミーアミッドレンジは王者に返り咲きます。 現に禁止改訂後のスタンダードチャレンジ(マジックオンライン上の大会)ではトップ8のうち7つを占めるほど。いかに《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》が強力かこれだけでわかるでしょう。 さて、そんなディミーアミッドレンジですが、現在のスタンダードは3年ローテーションということでクリーチャーの選択肢が無限にあります。《コーリ鋼の短刀》をメタるために《群青の獣縛り》なんかも使われていましたね。メタゲームに合わせて様々なクリーチャーを採用するディミーアですが、今最も意識するべきなのは当然ミラーマッチです。 そのため、赤全盛期では抜けていた《フェアリーの黒幕》が再びメインで多めに採用されるようになりました。ミラーマッチでは互いにインスタントで動けることも大事ですし、《悪夢滅ぼし、魁渡》《永劫の好奇心》でドローもするので、能力も重宝します。 メインからの《ティシャーナの潮縛り》も同型では《永劫の好奇心》を消したり、《悪夢滅ぼし、魁渡》の忍術に触れたりなど、何かと便利なクリーチャー。環境が遅くなれば必然的に《ティシャーナの潮縛り》が強くなるので、ディミーア以外にも刺さる相手は多いでしょう。 《フェイ花のいたずら》は厳密にはクリーチャーではありませんが、1/1飛行を2体出すインスタント。《永劫の好奇心》のためのクリーチャーを2体生成しつつ、相手のブロッカーを排除できるので、同型で特に強力です。飛行クリーチャーが《遠眼鏡のセイレーン》《大洞窟のコウモリ》《フェアリーの黒幕》とすべてタフネス1なので、《フェイ花のいたずら》は攻防で活躍してくれるのです。 ここまで紹介したクリーチャーはすべてインスタントタイミングでプレイできます。《フラッドピットの溺れさせ》も入っていますし、今のディミーアはとにかくマナを構えてきます。除去や打ち消しを構えながら、相手のアクションが大したものでなければクリーチャーを出せるので、非常に理にかなっています。 相手の動きによってこちらのアクションを決められる、いわゆる後出しじゃんけんが可能なリストは使いやすくて好印象です。《大洞窟のコウモリ》で相手の手札を除いてから動けますしね。 強くて使いやすい。これは強いデッキの条件の1つでもあります。再びスタンダードの頂に上ったディミーアミッドレンジを打ち倒すデッキは現れるのでしょうか。     ナヤユウナ スタンダードチャレンジ : 2位 By McWinSauce MTGアリーナ用インポートデータ 《豆の木をのぼれ》が禁止になり、大きな打撃を受けたのがドメインオーバーロード。 デッキ名になっている大主たちはすべてマナ総量が5以上ですが、兆候で軽く唱えることができる。それを利用して《豆の木をのぼれ》を何度も誘発させてアドバンテージを稼ぎ、大主たちを《永遠の策謀家、ズアー》で起こすコントロールデッキ、それがドメインオーバーロードです。 《豆の木をのぼれ》を失ってリソースが取れなくなったオーバーロードは、より早くゲームを終わらせるデッキになりました。それがこのナヤユウナ。   《スピラの希望、ユウナ》は《永遠の策謀家、ズアー》と同じく、大主と相性の良いカードです。墓地からエンチャントを吊り上げ、自分のターンは絆魂と護法を付与してくれます。墓地に落ちた大主を吊り上げて攻撃しつつ、ライフを回復していきます。 そんな《スピラの希望、ユウナ》と特に良相性なのが《ボイラービルジの大主》。好きな対象に4点を与えるこの大主は絆魂を持つので、一気に大量のライフを得ることができます。 《スピラの希望、ユウナ》は墓地からエンチャントを吊り上げるので、このデッキにはエンチャントを落とす様々な手段が用意されています。   《逸失への恐怖》《フェニックスのドミナント、ジョシュア》は手札を入れ替える便利なカードで、ディスカード手段としてだけでなく、必要なカードを引き込みにいける素晴らしいカード。《逸失への恐怖》は昂揚すれば大量の打点、《フェニックスのドミナント、ジョシュア》は変身してクリーチャーをリアニメイトするなど、どちらもドロー能力以外も強力。 《幻獣との交わり》は諜報2でエンチャントを墓地に落とします。自身もフラッシュバック能力を持っているので、ディスカードや諜報で《幻獣との交わり》自身が落ちるとお得です。 切削しつつ必要なカードを手札に加えられる《浚渫機の洞察》は当然4枚です。《スピラの希望、ユウナ》を手札に加えて大主を落として……なんてことが起きたらそれだけでゲームに勝てる場合があります。1点ゲインのオマケがついてくるので、対アグロにはしみてくるでしょう。 《浚渫機の洞察》より範囲は狭いですが、《魔導戦士、ティナ》も中々優秀です。拾えるエンチャントは《ボイラービルジの大主》に召喚カードたち、そして《浚渫機の洞察》です。切削も5なので結構掘れますし、変身すれば他のエンチャントをコピーでき、《ボイラービルジの大主》で一瞬でゲームが終わります。 このように様々なライフゲイン手段が用意されているので、ビートダウンは得意ですし、ミッドレンジに対してはスケールで勝利できます。《召喚:バハムート》や《召喚:ナイツオブラウンド》が5ターン目にぐらいに戻ってきてしまうと打つ手なしです。   これまでとはまったく違う顔を見せるオーバーロードデッキとなっているユウナオーバーロード。ドメインを使っていた方にオススメ! ファイナルファンタジー好きな方にもぴったりですね!ユウナからバハムートを召喚して気持ち良くなりましょう!   ボロス召集 スタンダードチャレンジ : 1位 By LucasG1ggs MTGアリーナ用インポートデータ 禁止改訂前の赤単やイゼット果敢は、スタンダードのみならずパイオニア級の強さを持っているデッキたちでした。 実際パイオニアで活躍する赤単アグロは《熊野と渇苛斬の対峙》と《変わり谷》以外すべてスタンダードのカードで、イゼット果敢もパーツのほとんどがスタンダードで構成されています。パイオニアで強いデッキがスタンダードで最強になるのは自明の理ですよね。 そしてこのボロス召集も、パイオニア級の強さを持つデッキと言われ、昨年のスタンダードでは恐れられていました。   《ひよっこ捜査員》《入れ子ボット》でアーティファクトを生成し、そこを対象に《上機嫌の解体》を打ち込み、トークンを生成。それらのトークンを召集コストに当てて《イーオスの遍歴の騎士》を高速召喚し、《イモデーンの徴募兵》を見つけて次のターンにトークンたちを強化してフィニッシュする、赤白のトークンデッキです。 回った時の強さは手がつけられません。2ターン目に《イーオスの遍歴の騎士》、3ターン目には《イモデーンの徴募兵》で大量のダメージを飛ばしてくるので、実質3キルのような場を作ってきます。《一時的封鎖》でも《イーオスの遍歴の騎士》が残りますし、2枚のカードを確保できているので、全体除去耐性もしっかりとあるのです。 トークンを並べるデッキなので《見捨てられた人形、アラベラ》と相性が良く、《門道急行の事件》《イモデーンの徴募兵》と共に1/1トークンの群れで殴りきるのが基本戦略です。《画家の仕事場+汚された画廊》はトークンを強化しながらリソースも稼げる、このデッキにぴったりのカード。 ファイナルファンタジーからは《「竜騎士」の両手槍》が加わりました。トークンを生成しつつアーティファクトを生み出せるので、《上機嫌の解体》の対象にぴったり。《「竜騎士」の両手槍》1枚で《上機嫌の解体》から1マナで《イーオスの遍歴の騎士》まで繋がるのが実に美しいですね。 ボロス召集の魅力はなんといってもそのメタりづらさです。アグロにも関わらず単体除去がほとんど効かないので、赤単対策などが無駄になります。《紅蓮地獄》などの全体除去がサイドボードに用意されていない環境なら無双間違いなしです。 しかも全体除去に対しては《イーオスの遍歴の騎士》がとにかく強い!条件なくすべてのクリーチャーを倒すには《審判の日》しかなく、軽い全体除去は《イーオスの遍歴の騎士》が残るので、大きなダメージを返しに受けることになります。最終的には《イモデーンの徴募兵》が控えるので、全体除去の返しに《イモデーンの徴募兵》で勝つこともしばしばあり、唯一の弱点ですらこのデッキは克服できているのです。 以前は除去が多いデッキには《ウラブラスクの溶鉱炉》で対策していました。除去に対しては強い一方、バウンスにめっぽう弱かったこのカードは、《この町は狭すぎる》《洪水の大口へ》の流行によってスタンダードで見なくなりましたが、今の環境でバウンスはほとんど見ないので、もしかしたらサイドボードで復活するかもしれませんね。 《ウラブラスクの溶鉱炉》がサイドに入ったボロス召集はかなり弱点が少ない隙のないデッキだという印象で、個人的にはかなり恐れています。   ブン回りもあり、粘り強さもしっかりあるボロス召集。人気が出てきそうな予感がするので、全体除去はしっかり入れておきましょう。ディミーアミッドレンジ使いの方は《ギックスの命令》をお忘れなく。

禁止改訂後に活躍しているスタンダードのデッキたち

週刊 Standard ピックアップ

2025.07.04

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ 白単トークンコントロール ゴルガリミッドレンジ グルールハツカネズミ   白単トークンコントロール  スタンダードチャレンジ : 1位 By gazmon48 MTGアリーナ用インポートデータ コントロールにとって大事なアドバンテージ源だった《豆の木をのぼれ》が禁止になり、個人的には《食糧補充》と《マラング川の執政》を使える青系コントロールが台頭すると予想していたのですが、そういえば今のスタンダード環境には他にもドローできるカードが存在していました。 そう、《世話人の才能》です。 かつては《ウラブラスクの溶鉱炉》と一緒に自動ドロー装置となっていたり、様々な白系ミッドレンジ・コントロールで活躍していたこのカード。いつしか忘れ去られていましたが、禁止改訂と共にスタンダードに戻ってきました。   白単コントロールはトークンを活用したデッキで、どちらかと言えばミッドレンジぐらいの速度。《勝利の楽士》《ミストムーアの大主》で出したトークンで殴っていくので、アゾリウスコントロールのようなどっしりとしたコントロールデッキではありません。 《世話人の才能》《永劫の無垢》はいずれも様々なトークンにトリガーしてカードが引けるカード。《勝利の楽士》や《ミストムーアの大主》、《人参ケーキ》、《噴水港》とたっぷり入っているので、戦場に出ればドロー装置として機能します。 どちらも1ターンに1度の制限付きではありますが、自分のターン以外でも誘発するのがミソ。自ターンで《勝利の楽士》でカードを引き、相手のターンで《噴水港》を起動してドローもできます。《人参ケーキ》も相手のターンに生け贄にすればカードを引けるので、1枚ですぐに2ドローできる優秀なカードです。 《世話人の才能》は優れたドローカードであるだけでなく、フィニッシャーの役割も兼ねます。レベルを3まで引き上げればトークンが大幅強化されるので、《ミストムーアの大主》が出すトークンが4/3飛行と凶暴なサイズに。蛾というか実質天使です。   白単で構成されていることから優秀な専用カードである《軍備放棄》を4枚採用できるのも魅力です。《失せろ》との8枚体制でビートダウンをシャットアウトしつつ、遅いデッキには圧倒的なドロー量とトークンによる物量で押し込みます。非常にシンプルかつ強力なデッキ。 白単であるもう1つの魅力は土地。ドローに繋がる《噴水港》は当然4枚採用できますし、土地の起動を楽にする《沈んだ城塞》も4枚入れることができます。このデッキは《噴水港》を同時に2枚起動するのも容易く、土地がとにかく強いのが素晴らしいですね。 チャレンジでも早速トップ8に3人が入賞し、今勝ちまくっている白単トークンコントロール。まずはここから新スタンダードを始めてみてはいかがでしょうか。     ゴルガリミッドレンジ スタンダードチャレンジ : 2位 By Desert_24 MTGアリーナ用インポートデータ 赤単アグロ・イゼット果敢と速い2つのデッキが消え、中速殺しのアゾリウス全知も禁止改訂の影響を受け、スタンダードはミッドレンジ天国になると予想されていましたが、やはりそれは間違っていなかったようです。 久しぶりにゴルガリミッドレンジの姿をスタンダードで見かけたような気がします。   ディミーアミッドレンジが1マナクリーチャーから《悪夢滅ぼし、魁渡》に繋げて《永劫の好奇心》で攻めながら引くアグロ気味のミッドレンジなのに対し、ゴルガリはどちらかと言えばマナを伸ばしてどっしりと除去とアドバンテージで勝っていく、王道ミッドレンジです。 とはいえ時にはスピードを出すことができ、それを可能にしているのが《ラノワールのエルフ》です。この唯一無二の3マナへのジャンプアップを可能にするマナクリーチャーは、ゴルガリミッドレンジの最大の魅力と言って良いでしょう。 《ラノワールのエルフ》から繋げる先の3マナ域はどれも強力。アドバンテージエンジンの《不浄な別室》に攻防一体の《名もなき都市の歩哨》、そしてなんといっても《重厚な世界踏破車》です。 《重厚な世界踏破車》は土地を伸ばしつつ攻撃できる強力な機体で、環境にある除去の多くが当たらないのも魅力の1つ。《ラノワールのエルフ》から2ターン目に《重厚な世界踏破車》と回った時のゴルガリは手が付けられません。   面白いのが《不浄な別室》絡みのデーモンシナジーです。デーモンがいることで2点ドレインになる《不浄な別室》のために、これまで様々なデーモンが試されてきましたが、ファイナルファンタジーから《デモンズウォール》が加入しました。2マナ3/3と守りには優秀なサイズで、カウンターさえあれば攻撃もできるため、《カルシの帰還者》や《名もなき都市の歩哨》の地図起動などでカウンターが乗れば、攻撃することも可能です。 《腐れ呪いのラクシャーサ》と合わせて《不浄な別室》のデーモン条件を満たしながら、攻防に渡って活躍してくれます。デーモンは4マナが定番だったので、これが軽くなったのは非常に大きいですね。3ターン目の《不浄な別室》がドレインになってくれるのは思いの外大きいです。 《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》擁するディミーア、《ラノワールのエルフ》から《不浄な別室》《重厚な世界踏破車》に繋げてくるゴルガリ、どちらも同じミッドレンジですが全く戦い方が異なるデッキたちが台頭してきて、スタンダードは難しくなりそうですね。   グルールハツカネズミ スタンダードチャレンジ : 3位 By Grogore MTGアリーナ用インポートデータ 禁止改訂で大きな弱体化を受けることとなってしまった赤系アグロ。それも仕方ありません。デッキに入っているほとんどのカードがスタンダードと同じ赤単がパイオニアでも一線級の活躍をしてしまうほど、カードパワーが飛びぬけていたのですから。 そんなハツカネズミ軍団の先陣を切っていた《心火の英雄》、そして《巨怪の怒り》が禁止になりました。   《心火の英雄》は2ターン目に《多様な鼠》を出してお手軽4点、放置したら次のターンには7点が飛び、除去でもダメージが入る、凄まじい1マナ域のクリーチャーでした。1ターン目にドロップできる赤いハツカネズミというだけで《多様な鼠》と相性が良いのに、その能力が強すぎました。 《巨怪の怒り》も《多様な鼠》と組み合わせることで意味不明なダメージを叩き出すカードでした。《心火の英雄》に2ターン目につけて5点で殴りつつ、次のターンからチャンプブロックを許さないのも、1マナのカードがやってはいけない強さ。 この2枚が禁止となり、正直ハツカネズミは終わったと思っていましたが、このようにまだ生き残っています。   《心火の英雄》がなくなったスロットには《脚当ての補充兵》を採用しています。《多様な鼠》で強くなることはありませんが、1ターン目に出せるパワー2なだけでなく、新生でばらまくこともでき、単体除去に対して非常に強いカードです。 《巨怪の怒り》の代わりは《過剰防衛》。+3/+3トランプルを付与するので《多様な鼠》と合わせての二段攻撃大ダメージは健在……と言いたいところですが、2マナと重く、更にトランプルもこのターンしか付与できません。《巨怪の怒り》の凄まじさがわかりますね。 とはいえ、《過剰防衛》は呪禁を付与するので、《巨怪の怒り》と違い単体除去を避けるために使うことも可能です。黒いデッキには《巨怪の怒り》より便利になる場合もありますね。 もちろん《心火の英雄》《巨怪の怒り》を失ったことでデッキパワーが大幅に低下したのは否めません。しかし、勝てなくなるかというとそれはまた別の話。   なぜなら赤単が当たり前のように意識されていた時代は終わったからです。むしろ今は赤アグロが消え、除去が減ってきているかもしれません。そうなればハツカネズミは大チャンスです。《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》のラインは残っていますし、《雇われ爪》もまだ元気ですからね。《岩面村》《多様な鼠》《熾火心の挑戦者》で粘り強く戦うグルールの持ち味はまだ死んでいません。 週末は赤対策を完全に捨てても良いと思っているなら、甘いですよ!l

スポットライトシリーズで使用したアゾリウスコントロールができるまで

Standard ピックアップ

2025.07.03

mtg Yuyan

こんにちは! ゆうやん(@yuyan_mtg)です。 先週末はスポットライトシリーズ千葉に参加してきました!   結果は11勝4敗で、上位プロモの《ミッドガルの傭兵、クラウド》フォイルを獲得。トップ8入賞こそ果たせなかったものの、プロツアー・アトランタの権利を幸運にもラスベガスで得ていた僕としては、この結果でも万々歳です。   本当はこの時使用したアゾリウスコントロールの詳細な解説を書こうと思っていたのですが、皆さんご存じの通り、7月1日の禁止改訂で大量にカードが禁止になってしまいました。 そこで今回はアゾリウスコントロールの使用に至った経緯とデッキリストについて簡単な解説をした後、禁止改訂後のスタンダード環境におけるアゾリウスコントロールについてご紹介していきたいと思います。   アゾリウスコントロールは今回の禁止改訂で無傷だったデッキですからね。これからも使えるデッキなので、まあ一応この記事にも意味はあるだろうと自分を慰めながら、今タイピングをしています。   目次 赤まみれのスタンダード 赤に強いのは白 全知死すともアゾリウスは死せず 使用したリストについて 本戦結果 新環境のアゾリウスコントロール     赤まみれのスタンダード スタンダードは《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》の『ブルームバロウ』が誇るハツカネズミ軍団を主軸に据えた赤単アグロ、そして《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》《迷える黒魔道士、ビビ》《食糧補充》で様々なプランによって相手を粉砕するイゼット果敢、この2種のデッキがとにかく強力でした。 赤単とイゼット果敢の次はアゾリウス全知でしたが、その数は赤単の半分程度。イゼット果敢と赤単を合わせればフィールドの60%近くになるレベルだと予想していました。   実際はスポットライトシリーズはオープンイベントかつ2000人を超えるため、ここまで偏ったメタゲームにはならない予想でしたが、それでも50%近くに上ると読んでいました。   ただ、どちらのデッキも個人的に使用したくない理由が何点かありました。   まずイゼット果敢は、当たり前のようにメインから3~4枚採用されている《魔道士封じのトカゲ》があまりにも厳しい。前週の行弘プロの《自爆》による劇的な幕引きを見て、赤単に決めたプレイヤーも多いでしょう。赤単を使うプレイヤーは全員《魔道士封じのトカゲ》をメインに入れてくるはずです。 赤単はというと、個人的に僕が苦手というのもあるのですが、その《魔道士封じのトカゲ》が曲者でした。イゼット果敢に強い一方、ミラーマッチやその他の相手、たとえば全知にすら弱く、ほぼ対イゼット専用カードです。   そんな専用カードが入っている状態で、リスト非公開性のトーナメントを戦うのは非常にリスクが高いと判断しました。相手がイゼット果敢なら《魔道士封じのトカゲ》を探しにいくマリガンもできますが、相手がわからない状態ではそれもできません。逆に除去と《魔道士封じのトカゲ》だけの手札をキープできるでしょうか? 《光砕く者、テルサ》や《フェニックスのドミナント、ジョシュア》など、不要牌を捨てられるカードが採用されていれば良いですが、赤単には入っていても《光砕く者、テルサ》1枚。こうしたデッキではマッチによって不要となるカードを、リスト非公開のトーナメントで採用したくありません。 上位2つは使いたくない。というわけで今回は、いや……今回もこの上位2つに強いデッキを選ぶことにしたのです。   赤に強いのは白 イゼット果敢と赤単。この2つに、とりわけイゼット果敢に強いカードが《一時的封鎖》です。 イゼット果敢が除去に強いのは繰り返しトークンが沸く《コーリ鋼の短刀》とリソースを回復する《食糧補充》です。《コーリ鋼の短刀》そのものが触られてしまうとクロックが出てこないので、イゼット果敢の攻め手をシャットアウトできます。キャントリップのついでにトークンが出てくるのが厳しいのであって、ただドローされ続けるだけではコントロール側には何もダメージがありません。 《一時的封鎖》は出ているトークンや《ドレイクの孵卵者》、《嵐追いの才能》に《コーリ鋼の短刀》とほとんどのカードをシャットアウトでき、イゼット果敢と戦うなら欠かせない1枚となっているのです。これが赤に対して白が強い理由です。   その《一時的封鎖》を使うデッキとしてメタゲームの三番手に位置しているのがアゾリウス全知。しかも《魔道士封じのトカゲ》でイゼット果敢を攻略した赤単には全知は強いという触れ込みなので、これはいけると思い、早速全知を使い始めました。 その感触は……想像よりかなり悪い!   まず赤単に思ったより勝てませんでした。《一時的封鎖》《エファラの分散》で盤面に触りつつ6ターンキルぐらいすれば余裕かと思っていましたが、そもそも《アブエロの覚醒》《全知》の2枚コンボが揃っていなければ負けなので、メイン戦をまあまあ落とします。 かといってサイド後に大きく有利になるわけでもありません。赤単相手に全知側はミッドレンジプランで勝利することはできないので、除去を追加して減速を狙うだけ。一方相手はクリティカルなサイドカードとして《除霊用掃除機》を入れてきますし、《陽背骨のオオヤマネコ》もそれなりに厳しい。 トータルで五分以上の勝率が出せる気がしませんでした。   イゼット果敢は《迷える黒魔道士、ビビ》が入ったことで相性が明確に悪くなりました。これまでは《一時的封鎖》でクロックをすべてシャットアウトできました。そのためサイド後は《ミストムーアの大主》などを入れてミッドレンジ戦略が取れたのですが、《迷える黒魔道士、ビビ》のせいで多少の盤面の不利なら余裕で覆してくるようになってしまいました。 そのため、対イゼット果敢でも《全知》をサイドアウトできなくなり、コンボによる勝利を目指すのが基本のゲームプランとなってしまいました。当然相手の墓地対策は効きますし、《呪文貫き》は刺さります。 トップ2に対してあまりに不安要素が大きく、アゾリウス全知は脱落。   全知死すともアゾリウスは死せず イゼット果敢・赤単の両者に《一時的封鎖》が強いのは間違いありません。しかし《全知》によるコンボ部分が足を引っ張っていると感じた僕は、それならばアゾリウスコントロールで良いのでは?と考えました。 メインから《跳ねる春、ベーザ》を大量に採用して対赤単への意識を高めつつ、《迷える黒魔道士、ビビ》にも4枚の《失せろ》に加えて大量の打ち消しがあるので、対応札としては申し分ありません。 特に《一時的封鎖》が効かないビビはアゾリウスコントロールとしてはさほどきついカードではありません。3マナのソーサリーアクションカードは強いものの、そのインパクトは《轟く機知、ラル》よりは少し低い程度。《轟く機知、ラル》と違って《失せろ》で除去した際にカワウソが出てこない分マシと言えるでしょう。 3マナ域が増えたことで打ち消し呪文も以前よりイゼット果敢に効くようになりました。そこでアゾリウスコントロールの強みである打ち消し呪文の枚数を増やしつつ、イゼット果敢に勝率が出るようなリストを作ることに成功したのです。 本来、アゾリウスコントロールがアグロに強くなるためには、除去を大量に入れなければなりません。そうなると打ち消し呪文を減らさざるを得なくなり、「せっかく青いコントロールにも関わらずカウンターをほとんど入れられなくなり、アグロ以外にメイン戦を落とす」といった状況が多発してしまいます。 イゼット果敢の《精鋭射手団の目立ちたがり》《僧院の速槍》が《迷える黒魔道士、ビビ》になり、打ち消しが効きやすくなったことが、アゾリウスコントロール側としてはあまりにも大きいのです。心置きなく打ち消しを増やせるようになりましたからね。今なら《喝破》を4枚入れられると確信しました。   リストの調整 というわけでアゾリウスコントロールの具体的な構築に。今回はイゼット果敢・赤単に重点を置くことになります。 ■単体除去 単体除去は《失せろ》以外に選択肢がほぼありません。   《魂の仕切り》も《エルズペスの強打》も5枚目以降の除去としては入りますが、《失せろ》を押しのけることはありません。対赤単では雄姿を誘発させてしまう地図を相手には渡したくないですが、それでも《魂の仕切り》は根本的解決にならず、《エルズペスの強打》は除去として弱いので、《失せろ》を使う他ありません。 ■全体除去 《一時的封鎖》は3枚採用にとどめました。赤単が《叫ぶ宿敵》と1~2マナを並べて《一時的封鎖》をケアしてきますし、イゼット果敢も《迷える黒魔道士、ビビ》があるためです。 そこで追加の除去として入ったのが《古代魔法「アルテマ」》。ボーダーレス版のイラストがあまりにもかっこよかったわけではなく、非常に強い全体除去なので採用しました。 これまでの全体除去《別行動》や《審判の日》は《コーリ鋼の短刀》に触れませんでしたが、《古代魔法「アルテマ」》はその点もバッチリ。《心火の英雄》の死亡誘発もありませんし、5マナと少し重いですが、《一時的封鎖》をケアする盤面を破壊しつつ、《コーリ鋼の短刀》に対処できる素晴らしいカードです。 ■ライフ回復 《跳ねる春、ベーザ》《領事の権限》は赤単を強く意識したカード。 特に《領事の権限》は赤単に勝つなら必須と思い、メインに2枚、サイドに1枚入れることにしました。《フラッドファームの境界》が単体で白を出せるため、1ターン目に置きやすいのも嬉しい。《叫ぶ宿敵》《栄光荒野のオオヤマネコ》でライフゲインが封じられても、速攻を消せるので《岩面村》や各種速攻クリーチャーをシャットアウトできて便利です。 イゼット果敢に対しても《コーリ鋼の短刀》の威力を半減できますし、非常に強いカードでした。   《一時的封鎖》と《領事の権限》は一見相性が悪いカードですが、対イゼット果敢においては実は重要です。《領事の権限》を《一時的封鎖》で巻き込んで追放しておくと、相手が《洪水の大口へ》で《一時的封鎖》を戻した時に、一緒に戦場に戻ってきてくれます。 そうすれば《コーリ鋼の短刀》によるダメージを抑えられるので、返しのターンでバウンスされた《一時的封鎖》を再び使えば良いのです。《洪水の大口へ》をケアするためにあえて《領事の権限》を《一時的封鎖》で巻き込んでおくのが、対イゼット果敢では重要となる場合もあります。 赤単に対しては当然《領事の権限》は場に残ってほしいですが、たまに《マラング川の執政》で《一時的封鎖》を回収し、《領事の権限》を出し直すことがあります。同時に帰ってきてライフゲインできるので、《失せろ》で《一時的封鎖》を割ることもありますね。手札に《一時的封鎖》が余った場合によくやるプレイです。   ■打ち消し呪文 前述のようにイゼット果敢に打ち消しが腐りにくくなったので、《喝破》は4枚投入することにしました。先手ならば赤単に対してもしっかり機能しますし、初手に持っている状態でゲームを始めたいので、この枚数に納得しています。以前までのイゼット果敢には《僧院の速槍》《精鋭射手団の目立ちたがり》が入っていたので、《喝破》は中々4枚採用できませんでした。それが歯がゆかったのです。 追加の打ち消しとして採用している《方程式の改変》。これはイゼット果敢・赤単の二大巨頭を倒すためにはサイド合わせて4枚にすべきだと思いました。 イゼット果敢は《迷える黒魔道士、ビビ》と《嵐の伝導者、ラル》でサイド後に重いカードが増えてきますし、赤単側も《陽背骨のオオヤマネコ》が4枚入ります。《叫ぶ宿敵》もそうですが、できる限りこれらのカードを除去ではなく打ち消しで対処したいところ。しかし、《三歩先》は重すぎてどちらのデッキに対してもサイドアウトします。 相手は打ち消しに弱いが重くて強いカードを入れているのに、こちらは打ち消しを抜かなければならない。そこでサイドボードには軽い万能カウンターを入れるべきだと考えました。そこで《方程式の改変》4枚体制となったのです。   イゼット果敢に対しては《食糧補充》を打ち消せない以外はほぼ完ぺきなカードで、最終的に《一時的封鎖》に向けられた《洪水の大口へ》を打ち消してゲームセットとなります。 《三歩先》と《否認》は上位2つ以外の相手を意識した結果です。特に《三歩先》はサイド後はクリーチャーをコピーすることも多く、イゼット果敢・赤単以外の相手にはかなり強いカードです。   ■ドロースペル 《食糧補充》はもう当然4枚入りますし、ここに文字数を使うのももったいないレベル。 僕が声を大にして言いたいのは、《マラング川の執政》は絶対に4枚にしてくださいということです!! 《マラング川の執政》はアゾリウスコントロールの要になるカードです。ある程度盤面をコントロールした後は、《マラング川の執政》を連打して速やかにライブラリーを掘りきってフィニッシャーである《完成化した精神、ジェイス》を2枚見つけにいくことになります。 《マラング川の執政》は3枚引いてデッキに戻っていくので、必然的に段々とライブラリーが《マラング川の執政》で濃くなります。毎ターン、《マラング川の執政》で3枚引きながら相手の場に対応していくのが理想の流れです。   そして対イゼット果敢・赤単では戦場でも活躍します。《領事の権限》を貼った状態で《マラング川の執政》でクリーチャーをバウンスすると、一気に攻守が入れ替わります。ライフが7~8ぐらいある状態で《マラング川の執政》を出してバウンス、返しで相手は《領事の権限》が置いてあるので速攻で殴れず、返しで《マラング川の執政》の2体目で勝利となるのです。 ドローとしてもクリーチャーとしても超一流で、どのマッチでも4枚欲しいし、サイドアウトもしません。これからどんな環境になり、アゾリウスコントロールのリストが変化していこうとも、《マラング川の執政》と《食糧補充》だけは絶対に4枚採用します。   ■フィニッシャー 今回はメインに《完成化した精神、ジェイス》を入れました。対アグロに腐ってしまうことから最近では《完成化した精神、ジェイス》は抜ける傾向にありましたが、アグロ以外の相手を見るのであれば、《完成化した精神、ジェイス》は必要だと思いました。 いくら盤面をコントロールしきっても相手の除去は余っているので、《ミストムーアの大主》を入れたところでゲームに勝てませんし、《跳ねる春、ベーザ》と《マラング川の執政》だけではあまりに心もとない。《嵐の討伐者、エルズペス》はそもそもカードが強いと思えませんでした。《世話人の才能》と一緒に使って初めて強いカードだと思っています。 そこでスロットを最小限に抑えつつ、確実にフィニッシャーになってくれる《完成化した精神、ジェイス》をチョイスしました。《マラング川の執政》でライブラリーを全部掘れるので2枚の《完成化した精神、ジェイス》はしっかり見つかります。 ドメインオーバーロードやジェスカイコントロール相手には《完成化した精神、ジェイス》を入れているかどうかでメイン勝率が大きく変わる一方、イゼット果敢・赤単に対して《完成化した精神、ジェイス》を引いたせいで負けるかと言えばそうではありません。   2枚しか入っていない《完成化した精神、ジェイス》は当然引かずにゲームが終わることもありますし、引いたとしても軽い妨害やドローにはなります。決して赤い相手に腐るわけではないのです。   一方、コントロール相手には非常に長期戦となるため、《完成化した精神、ジェイス》は高確率でドローしますし、ゲームにも絡んでいます。なので《完成化した精神、ジェイス》のメイン投入はローリスクハイリターンと言えるでしょう。 ■サイドボード 今回のサイドで特筆すべきはなんといっても《永劫の好奇心》です。 元々は対ミラーマッチを想定して《冷静なスフィンクス》を入れようとしていました。 今の青いコントロールミラーは、実は相手のデッキに打ち消したいカードがほとんどありません。《ミストムーアの大主》も《完成化した精神、ジェイス》もすべて《失せろ》で対処できますし、通すことで致命的になってしまうスペルが存在していないのです。   《ドミナリアの英雄、テフェリー》を通されて2マナでカウンターを構えられたら負ける。こういった状況が今のスタンダードのコントロールには存在しないので、青対決ではお互いにタップアウトが肯定されます。だからこそ《喝破》をケアした6マナからの《食糧補充》など、相手の次の展開に対する打ち消しを構えるのではなく、《食糧補充》自体が打ち消されないためにマナを立たせるだけにとどめて、どんどんメインで動き合います。 最もタップアウトの隙を突けるのは《ミストムーアの大主》でしょうが、それでも劇的とは言い難い。 この状況を逆手に取れないかと僕は考えました。タップアウトの隙をなんとか突きたいと思い、導き出した答えが前述の《冷静なスフィンクス》でした。   一度戦場に出てそのターンさえ無事に終えれば、《冷静なスフィンクス》は決して対処されない飛行クリーチャーです。ミラーマッチはもちろん、全知相手にカウンターを構えながら相手のエンドに出す動きも強力なはず。 そう思ってデッキについて話し合っていたユンさんに《冷静なスフィンクス》を提案したところ、思いのほか渋い返事。   「《ミストムーアの大主》のトークンで止まるのが許せない」   ぐうの音も出ませんでした。そして《冷静なスフィンクス》ではなく、《永劫の好奇心》ではどうだろうか?と代案が来たのです。 この《永劫の好奇心》がとんでもなく素晴らしいカードでした。全知に対しては仕掛けやすく、《失せろ》されてもエンチャントとして場に残るので、《噴水港》などのトークンが脅威になります。サイド後に《ティシャーナの潮縛り》とセットで入れることも多く、全くケアされずに無双する展開が何度もありました。 特に《不浄な別室》を使う黒系ミッドレンジには《永劫の好奇心》1枚で勝ってしまうほどで、当初は1枚だったのですが、強すぎて2枚に増えました。最終的には赤単アグロにも《永劫の好奇心》をサイドインすることになり、ほぼ全マッチで投入していたと思います。 禁止改訂後の新環境では黒系ミッドレンジが復権していますし、今後も確実にサイドボードに椅子を用意しますね。スポットライトでのMVPは《永劫の好奇心》でした。   本戦結果 ■初日 〇赤単アグロ×アゾリウス眼魔×イゼット果敢(フィーチャー)〇赤単アグロ〇赤単アグロ〇赤単アグロ〇赤単アグロ×赤単アグロ〇赤単アグロ〇ユウナオーバーロード   初日の2回戦で3ゲーム目、相手の先手2ターン目《忌まわしき眼魔》で負け、続くフィーチャーはメインで3枚目の土地を引けば《一時的封鎖》で勝てる状況で2ターン引かず負け。完全にツキに見放されていましたが、そこからは赤単に勝ち続けました。 途中でパーフェクトな赤単に負けるものの、最後は相性の良いオーバーロードに当たり、《永劫の好奇心》で無事勝利。 7勝3敗で2日目へ。   ■2日目 ×ドメインオーバーロード〇ラクドスアグロ〇イゼット果敢〇赤単アグロ〇赤単アグロ 初戦のドメインオーバーロードは1ゲーム目を土地引きまくって落とし、3ゲーム目で《豆の木をのぼれ》→《ホーントウッドの大主》→《ミストムーアの大主》を先手でやられ、手札に《否認》しかなかったので即投了。   その後はアグロデッキ4連戦で、気づけばトータル4敗で《ミッドガルの傭兵、クラウド》フォイルゲット! 予想よりも赤単に当たりすぎましたが、このいくつかがディミーアミッドレンジだったらおそらく4敗にはおさめられなかったと思うので、当たり運は少しツいていましたね。 新環境のアゾリウスコントロール 最後に、禁止改訂後にまず試したいアゾリウスコントロールのリストを貼って、本記事の締めといたします。 赤単が消えたことで《領事の権限》が不要になったり、環境が遅くなったので《三歩先》を増やしてみました。 コントロール好きな方はぜひ参考にしてみてください。 それではまた!

スタンダード大激震!衝撃の7枚禁止の雑感と禁止改訂の影響を受けなかったデッキたちの紹介

Standard ピックアップ

2025.07.01

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   昨夜、スタンダードに大激震が走りました。   《コーリ鋼の短刀》《アブエロの覚醒》《巨怪の怒り》《心火の英雄》《豆の木をのぼれ》《望み無き悪夢》《この町は狭すぎる》   以上7枚がスタンダードで禁止となりました。   近年のスタンダードでは赤単アグロとイゼット果敢があまりにも強すぎました。 赤単アグロは『ブルームバロウ』産のハツカネズミたちが暴れ回るデッキで、《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》の3匹が、序盤から終盤まで常に強く、速やかに相手を倒し、かつリソースを稼ぐという、ビートダウンが持つべきすべてを兼ね備えた完璧な布陣でした。 そんな超パイオニア級の赤単と肩を並べる存在として君臨していたのがイゼット果敢。令和最強の装備品である《コーリ鋼の短刀》の登場により一気にスタンダードの頂点に君臨。1マナのキャントリップ呪文などで《コーリ鋼の短刀》を毎ターン誘発させ、《嵐追いの才能》のカワウソと一緒に速やかに相手のライフを削ります。 失ったリソースを回復する《食糧補充》、それを回収する《嵐追いの才能》2章と、こちらも長期戦に強いアグロデッキで、《迷える黒魔道士、ビビ》が加入してからはコンボデッキのような立ち回りも可能となりました。 これらの赤いデッキは圧倒的な支配率を誇り、またいずれのデッキも非常に速いことから、スタンダードの多くのカードを環境から締め出すこととなってしまいました。   《アブエロの覚醒》はアゾリウス全知のキーパーツ。 4ターンキルも可能な純粋なコンボデッキも今回の禁止改訂の影響を受けることとなりました。赤アグロとイゼット果敢の禁止によって環境は以前より遅くなることは確かで、全知が最速となる可能性があります。4ターン目にフルタップできない状況は、スタンダードでは好ましくないのでしょう。   様々なフォーマットやデッキで活躍した《豆の木をのぼれ》が、ついにモダンに続いてスタンダードでも禁止となりました。 マナ総量が5以上の呪文を唱えることで1ドローできる2マナのエンチャント。普通に使えば重い呪文にドローがついてくる並のカードですが、今のスタンダードにはコストが軽くなる5マナ以上の呪文が多すぎました。   《力線の束縛》はもちろん、各種大主の兆候にも1ドローがついてくる《豆の木をのぼれ》は、禁止改訂後のスタンダードを支配する恐れがあります。そしてその状況はおそらく『エルドレインの森』がローテーション落ちする時まで続くと危惧したのでしょう。 個人的にはゴルガリ切削やシミックテラーなど、マイナーな豆の木デッキたちが可哀想に思いましたが、まあやむなしと言ったところです。《ホーントウッドの大主》を禁止にするよりはマシという判断だったのかもしれません。   《望み無き悪夢》は昨年から急激に使われ出したカード。自分のパーマネントを戻す《養育するピクシー》や《孤立への恐怖》で何度も再利用するセルフバウンス系デッキで活躍しました。 《望み無き悪夢》はライフと手札を同時に刈り取り、《逃げ場なし》は除去。これらのカードを何度も使い回せるので、時にはビートダウン、またある時はコントロールになるなど、様々なゲームプランが取れるデッキでした。一時は赤単アグロを駆逐し、環境最強のデッキとなっていました。 しかし、天敵である《コーリ鋼の短刀》が出現してからはセルフバウンス系デッキはほぼ消滅し、唯一残ったのがコントロール要素の強いオルゾフピクシーでした。   禁止にするほど環境を支配したデッキではないものの、今回の禁止改訂で多くのデッキが消滅すると、必然的にセルフバウンス系デッキが最強になってしまいますので、未来を見据えた禁止ですね。   そして《この町は狭すぎる》。こちらもセルフバウンス系デッキの要で、特に《嵐追いの才能》とのコンボが強力でした。 相手の盤面に触りながら自分の《嵐追いの才能》を戻してカワウソを生み出し、レベルアップ時に《この町は狭すぎる》を回収。再び《嵐追いの才能》を戻すことで、何度も《この町は狭すぎる》を使いながらカワウソを増やすことができます。 疑似的なロックに加えてカワウソがどんどん沸いてくるこのコンボはスタンダードのほとんどのデッキを駆逐してしまう可能性があります。加えて《この町は狭すぎる》がスタンダードにある限り、戦場に出た時に何も影響を及ぼさないクリーチャーはすべて価値がなくなってしまいます。色々なカードに可能性を見出してもらうためにも、必要な禁止だったのでしょう。   さて、今回の禁止改訂で環境の多くのデッキは姿を消すこととなりました。その中で無傷で生き残っているデッキたちがあるので、簡単に紹介していきましょう。   ディミーアミッドレンジ 《遠眼鏡のセイレーン》から始まり、《大洞窟のコウモリ》による手札破壊、《フラッドピットの溺れさせ》による盤面干渉を経て、3ターン目には《悪夢滅ぼし、魁渡》で忍術。そして《永劫の好奇心》による大量ドローで勝利します。 これらの動きを、優秀な黒い除去と打ち消しでバックアップしていきます。   特に《悪夢滅ぼし、魁渡》と《永劫の好奇心》はこのディミーアミッドレンジのキーパーツ。素早いクロックとドローを兼ね備えたこの2枚は、様々なパワーカードが禁止になった新環境においてはとんでもないパワーカードです。これらを一緒に使えるディミーアミッドレンジは、最強のデッキである可能性が高い。   しかもこのディミーアミッドレンジは、スタンダードのローテーションを迎えた後もその大部分が残ります。 1マナ除去である《切り崩し》と《闇滑りの岸》以外は残るので、《悪夢滅ぼし、魁渡》《永劫の好奇心》の並びはローテーション後も健在です。   これからのスタンダード、長い付き合いとなること間違いなしです。   ジェスカイ眼魔 墓地に《忌まわしき眼魔》を落として《救いの手》で釣り上げるコンボを搭載したジェスカイ眼魔もまた、今回の禁止改訂の影響を受けなかったデッキ。 かつては赤アグロキラーとして人気を博していたジェスカイ眼魔ですが、イゼット果敢が《一時的封鎖》を意識して《洪水の大口へ》を3枚以上採用するのがデフォルトとなり、ビートダウン相手のプランである高速眼魔リアニメイトをナチュラルに対策されてしまったため、環境から去っていました。 ジェスカイ眼魔は単に《忌まわしき眼魔》をリアニメイトするだけのデッキではありません。《逸失への恐怖》《蒸気核の学者》《光砕く者、テルサ》は《忌まわしき眼魔》を墓地に送り込みつつ、カードを引ける便利なクリーチャーたち。そのドロー軍団と《プロフトの映像記憶》を組み合わせて高い打点を作り続けることができます。 むしろ眼魔はオマケで《プロフトの映像記憶》デッキと言われていたほど。《忌まわしき眼魔》を使ったデッキは墓地対策に弱いのが大きな欠点でしたが、ジェスカイ眼魔は《プロフトの映像記憶》と各種ドロークリーチャーによって墓地を追放されてもさほど痛くはありません。   意外と対策のしづらいデッキであるジェスカイ眼魔は再びスタンダードを脅かす存在となるでしょう。しかも《フェニックスのドミナント、ジョシュア》によって強化されたという噂もあります。 《忌まわしき眼魔》を再び使いたい方、その機会がやってきました。   イゼット大釜   イゼット果敢のために《迷える黒魔道士、ビビ》を購入して泣いているプレイヤーの皆様にオススメなのがこのイゼット大釜。 デッキの構造はジェスカイ眼魔と少し似ていて、《光砕く者、テルサ》や《逸失への恐怖》といったルータークリーチャーでデッキを回し、《プロフトの映像記憶》で巨大クリーチャーを作ったり、《略奪するアオザメ》を育てていきます。 大きく違うのは《忌まわしき眼魔》を吊り上げる代わりに、《アガサの魂の大釜》を使っている点です。 この《アガサの魂の大釜》で煮込むクリーチャーこそが《迷える黒魔道士、ビビ》。イゼット果敢では戦場で暴れていたビビは、イゼット大釜においては追放領域で真価を発揮します。 《アガサの魂の大釜》でビビを追放することにより、+1/+1カウンターが置かれている各クリーチャーは、自身のパワー分のマナを生み出すことができます。これで大量のマナを生み出して《冬夜の物語》を連打し、大量ドローの後に《プロフトの映像記憶》が誘発。クリーチャー1体を超強化し、更にそのクリーチャーでビビの能力を使い、再び大量のマナを作り、更にデッキを回し、最終的には《ヴォルダーレンの興奮探し》でフィニッシュというデッキ。 ジェスカイ眼魔と比べてコンボ要素が強く、初見でこのデッキの正体を見破ることは困難。いわゆるわからん殺しデッキですね。   《プロフトの映像記憶》《光砕く者、テルサ》《逸失への恐怖》の並びはやはり強力で、これだけでデッキを回転させる動きとビートダウンを兼ね備えており、コンボ一辺倒の脆さを解消しています。相手がアグロ展開をさばいている間に《アガサの魂の大釜》《迷える黒魔道士、ビビ》のコンボを仕込んでいき、2つの軸で攻められます。 とても回していて楽しいデッキなので、新環境の勉強がてら、触ってみてはいかがでしょうか。   ゴルガリ《陰湿な根》   墓地からクリーチャー・カードが離れるたびに植物を生成しつつ植物全体を強化していくエンチャント、《陰湿な根》。以前僕もパイオニアの《陰湿な根》デッキを紹介したことがありましたが、最近ではスタンダードでも活躍していました。 《陰湿な根》はどのフォーマットでも《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》とズッ友です。《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》のマイナスで墓地からクリーチャーをリアニメイトする際に《陰湿な根》が誘発するのはもちろん、《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》の常在型能力によって、《陰湿な根》から生まれる植物トークンが、出たターンにマナを生み出せるようになるからです。 この2枚が揃うと《陰湿な根》は爆発的な展開を作ります。たとえば《漁る軟泥》がいれば、自分の墓地のクリーチャーを追放すると植物が出て、その植物が《漁る軟泥》の起動マナを捻出するので、自分の墓地のクリーチャーの数だけ《漁る軟泥》を起動し続けることができ、その数だけ植物が出て強化されていきます。 《骨術師の達人》が加われば一気にフィニッシュまで到達します。墓地のクリーチャーが給餌によって戦場に戻れるようになるこのカード。給餌、つまり食物の生け贄か墓地の追放が必要となるわけですが、その際の墓地追放にも《陰湿な根》が反応するので、給餌+墓地からクリーチャーが帰ってくる際の、計2回《陰湿な根》が誘発してくれます。要するに1回墓地からクリーチャーが戻るごとに2マナが帰ってくるというわけですね。 どんな劣勢な場でも墓地が大量に肥えていれば、《骨術師の達人》1枚で一気に盤面をまくり返せますし、《陰湿な根》への依存度こそやや高いものの、決して無視できないデッキです。特に《陰湿な根》に直接触る手段のないディミーアミッドレンジに対しては相性が良く、ディミーアの猛攻に待ったをかけるデッキとなるかもしれません。

【週刊メタゲーム通信】トップ8には赤単とイゼット果敢のみ!圧倒的な強さを見せる赤たち!

週刊 Standard ピックアップ

2025.06.25

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   ラスベガスで行われたプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』!   日本のプロ、行弘 賢選手の赤単アグロさばきに感動し、そして優勝時の嬉し泣きには、見ている側ももらい泣きするなど、様々な感情をプレゼントしてくれたプロツアーサンデーでした。   今回は週末に千葉で行われるマジックスポットライトのフォーマットでもあるスタンダードの結果を、プロツアーから分析していきます!   プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』 優勝:赤単アグロ2位:イゼット果敢3位:赤単アグロ4位:イゼット果敢5位:イゼット果敢6位:赤単アグロ7位:イゼット果敢8位:赤単アグロ   なんとトップ8には赤単アグロ4人、イゼット果敢4人!   アゾリウス全知やゴルガリ陰湿な根などの姿は一切なく、トップ8は2つのデッキタイプだけとなりました。   赤単アグロ 見事優勝を収めた行弘 賢選手の赤単アグロ。特徴的なのはメインから4枚採用されている《双つ口の嵐孵り》でしょうか。 前兆で使用することで飛行を持たないクリーチャーに5点のダメージを与えることができるドラゴン。《焙り焼き》を思い出す方もいるでしょう。 飛行に対して使用できないデメリットを除けば、2マナ5点火力となるので、非常に広い範囲のクリーチャーに対処できます。赤単が処理しづらい《ドレイクの孵卵者》や《迷える黒魔道士、ビビ》、ドメインの《ホーントウッドの大主》、《分派の説教者》に《黙示録、シェオルドレッド》などなど対象は様々です。 しかも前兆で唱えた後はライブラリーに戻ってくれるので、またドローできるチャンスもあります。   同型でもタフネス3以上のクリーチャーは処理しづらいため、相手がフルタップの隙に《心火の英雄》に《巨怪の怒り》を唱えて3/3にしておくのが定番のプレイでしたが、《双つ口の嵐孵り》の前では無力です。 他のトップ8のデッキリストを見ていると《魔女跡追いの激情》がよく採用されています。こちらも5点を与えるカードですが、攻撃クリーチャーの数だけマナが下がるカードなので使いにくいことも多く、より安定して役割を果たせるのは《双つ口の嵐孵り》だと思われます。 この部分は行弘選手のリストの大きなポイントです。今後は《双つ口の嵐孵り》がメインに4枚採用されるのが当たり前となるでしょう。   全赤単に共通しているのは、メインから《魔道士封じのトカゲ》が入っている点でしょう。 今大会ではイゼット果敢の使用率は40%を超えており、《魔道士封じのトカゲ》メインが当たり前になったのも頷けます。これまで五分程度だった相性は、《魔道士封じのトカゲ》のメイン投入で完全に赤単側に傾きました。   トップ8のブラケットが赤単4人とイゼット果敢が綺麗に分かれたため、決勝で初めて赤単とイゼット果敢が相対することとなったのですが、もしイゼット果敢と赤単が準々決勝からマッチングしているトーナメント表だった場合、上位は赤単が総なめしていたかもしれません。   イゼット果敢の人気は相変わらずでしょうが、赤単はイゼット果敢を倒す力を持っています。しかも他のマッチにおいても有利な相手が多く、赤単は非常に今強いデッキです。   本来赤単がきついはずだったミッドレンジたちが、イゼット果敢の使う《コーリ鋼の短刀》に駆逐されてしまっていることが、赤単の立ち位置を良くしているのでしょう。 今週末も赤単はベストデッキです!   イゼット果敢 そんな赤単に負けてしまったものの、メタゲームに40%超えと圧倒的な使用率にしてトップ8に4人を送り込んだデッキ、イゼット果敢。   《迷える黒魔道士、ビビ》によって強化されたと言われたり、ビビ不要論も飛び出すなど、ベストなリストはどんなものになるのか多くのプレイヤーが注目していましたが、今回の結果を見て明らかなことは1つあるでしょう。 ビビはやはりイゼット果敢に必要だったのです。   2位:4枚4位:3枚5位:2枚7位:2枚   と少なくとも2枚のビビをすべてのイゼット果敢が採用しており、イアン・ロブ選手はメインに4枚採用し、デッキの軸としています。 イゼット果敢はビビを採用したことで白系デッキへの耐性、とりわけ《一時的封鎖》に対して非常に強くなりました。 《巻物変容》で《一時的封鎖》を使い回す動きをしてくるアゾリウス全知にはこれまで苦しめられていましたが、ビビの登場により《一時的封鎖》は以前より強力ではありません。《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》を止めても勝てないデッキになったのです。 また、ビビを投入することでイゼット果敢は果敢ビートダウンの一面だけでなく、コンボデッキにもなってくれます。生半可なライフゲインではビビの前では無力です。総じてイゼット果敢のデッキパワー向上の役割を果たしたのです。   《迷える黒魔道士、ビビ》以外のカードはというと、それぞれのプレイヤーは異なるカード選択をしています。《ドレイクの孵卵者》のみから、《僧院の速槍》《迷える黒魔道士、ビビ》のコンビ、更にはビビオンリーのリストも。 《僧院の速槍》を入れれば速度が上がりますし、《ドレイクの孵卵者》はミラーマッチを見据えた選択肢。ビビだけのリストには新たな装備品の《「占星術師」の天球儀》が入っており、こちらも強力。 2ターン目に置いてターンが帰ってくれば、あっという間に5/5にサイズアップしますし、ビビにつければ、呪文を唱えるたびに《「占星術師」の天球儀》とビビ自身の能力でカウンターが2つ乗るので、ビビ自体のバリューがアップします。ビビとセットで採用することになるでしょうが、爆発力はかなりのものでしょう。装備コストが軽いのも強いですね。 イゼット果敢はこれまで勝っているリストも多種多様でした。プロツアーである程度リストが固まると思われたのですが、採用カードはそれぞれバラバラです。流行している最強のデッキのリストがここまで固まっていないのは非常に珍しいですね。   その理由はひとえに《嵐追いの才能》《コーリ鋼の短刀》《食糧補充》のベースラインが強すぎることにあると思われます。これらのカード、そして果敢を引き起こすキャントリップと除去。ここが強すぎてクリーチャーの細かい採択がゲームに影響しないことも多いのです。 とはいえ、前述の通りビビはトップ8のすべてのデッキリストが採用しており、イゼット果敢に必要であることはほぼ確定したと言って良いかもしれません。   《ドレイクの孵卵者》も主にミラーマッチで強く、《巨怪の怒り》によるお手軽ドレイク生成コンボがあり、イゼット果敢がこれだけ多い状況なら3枚以上採用したいカードでしょう。 ただ、それはあくまで今週末のメタが今のままであるなら、です。   イゼット果敢と赤単の使用率はプロツアーとスポットライト千葉で変わると思っています。イゼット果敢が減り、赤単が増え、もしかすると同じぐらいになるかもしれません。それぐらい赤単はイゼット果敢に強いことがプロツアーで証明されましたからね。   そしてスポットライト千葉がオープンイベントであることも特筆すべき点です。誰でも参加することができ、参加者は1000人を超えます。プロツアーのように偏ったメタゲームになることはありません。イゼット果敢、あるいは赤単が40%になることは決してないでしょう。   それならばデッキリストにもいわゆるマイルドさが求められてくるかもしれません。《ドレイクの孵卵者》があまり効かないアゾリウス全知をはじめ、コントロールデッキへの意識を高める必要もありそうです。 そうなると再び採用されるのが《精鋭射手団の目立ちたがり》です。《ドレイクの孵卵者》と《精鋭射手団の目立ちたがり》をスプリットするリストなどは、こういった参加者の多いオープンイベントの大会で向いています。 イゼット果敢のリストを作るだけで無限に悩めてしまいますね!どんなリストが週末に勝ち上がってくるのか楽しみです。   アゾリウス全知   トップ8からは漏れてしまったものの、スタンダードラウンドを9勝1敗の成績で終えたのがハビエル・ドミンゲス選手のアゾリウス全知。   これまでのアゾリウス全知と比べてかなりリストが洗練されており、全知の完成形と言って差し支えないでしょう。   クリーチャー枠にはフィニッシャーにもなる《マラング川の執政》に加えて《フラッドピットの大主》が4枚採用されています。カードを2枚捨てて1枚捨てる能力は《全知》を捨てつつ《アブエロの覚醒》を探すのに便利ですが、3マナの重さが気になる点から、これまでは《決定的瞬間》などが優先して採用されていました。 しかし、《一時的封鎖》との相性の良さから《巻物変容》を複数枚採用するようになったことで、その《巻物変容》の対象としても選べる《フラッドピットの大主》が4枚採用されるようになったのでしょう。 《巻物変容》の強さには目を見張るものがあります。《一時的封鎖》は対イゼット果敢において完璧なカードですが、唯一の欠点は《洪水の大口へ》で手札に戻されてしまうことでした。 それを解決してくれるのが《巻物変容》です。バウンスされそうな《一時的封鎖》を《巻物変容》でちらつかせれば、《洪水の大口へ》を無効にできるのです。もちろん相手が《一時的封鎖》後に再展開してきたところに《巻物変容》を打って更に追放するのも良いでしょう。 インスタントの干渉手段が多く用意されているのも特徴的です。《エファラの分散》4枚程度にとどめるリストが多い中、《魂の仕切り》に、《喝破》《呪文貫き》と打ち消しも多めに採用しています。 《魂の仕切り》は《迷える黒魔道士、ビビ》に対処できる貴重なカードですね。全知相手に2マナ多くビビを唱えるのは死を意味するので、実質ただの確定除去なのです。 フィニッシャーにも言及しておきましょう。全知のフィニッシュ手段と言えば様々なものがありますが、このリストは《不穏な変換》になっています。 2マナの瞬速エンチャントで、そのプレイヤーの墓地の分だけクリーチャーのパワーを下げる、疑似的な除去となるエンチャント。戦場に出た時に各プレイヤーが切削を行うので、これが勝ち手段になります。   《全知》を出して《マラング川の執政》2枚と《乱動するドラゴンの嵐》が揃うと、このデッキは無限ドローになります。《乱動するドラゴンの嵐》を出す→《マラング川の執政》Aを出して《乱動するドラゴンの嵐》を戻して出し直す。《マラング川の執政》Bを出して《マラング川の執政》Aを戻すと無限無限にライブラリーを掘り進められます。 最終的に《不穏な変換》に辿り着いたら、《マラング川の執政》で《不穏な変換》を戻し続ければ相手のライブラリーは0になり、ターンを返せば勝ちというわけです。 フィニッシャー枠として、《アルケヴィオスへの侵攻》から始まり、《第三の道の創設》など段々コンボ以外での使い道があるカードが発見されてきたアゾリウス全知。ついには無限コンボ不採用のリストまで出始めましたが、今回の《不穏な変換》はかなり使いやすくてオススメです。よくこんなカードを見つけてきましたね…!   序盤に引いても除去として機能しますし、ビビのパワーを下げてマナを出させないなんてことも可能です。 《フラッドピットの大主》の採用でコントロールプランもより強固ものとなり、いよいよスタンダード三強の一角となりました。   イゼット果敢と赤単だけを意識すればよいわけではないのがマジックの難しいところですね!   週末は墓地対策もお忘れなく!

【週刊メタゲーム通信】今日はマジックオンラインで行われた地域CSの結果を分析!イゼットビビと赤単が大活躍!)

週刊 Standard ピックアップ

2025.06.19

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   ついに週末はプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』がラスベガスにて行われます。   プロツアーのフォーマットはスタンダードとドラフト!ということで本日もメタゲーム通信をお届けしていきます。   今回はマジックオンライン上で行われた地域CS予選の結果をご紹介!スイスラウンド9回戦+決勝ラウンドと非常に長丁場となった本大会はどのような結果となったのでしょうか。   Standard RC Super Qualifier 優勝:イゼットビビ2位:アゾリウスコントロール3位:イゼットビビ4位:アゾリウス全知5位:ディミーアミッドレンジ6位:赤単アグロ7位:赤単アグロ8位:ディミーアミッドレンジ   イゼットビビ 『ファイナルファンタジー』で最も注目されているカードと言えば、それはもちろん《迷える黒魔道士、ビビ》でしょう。 3マナ0/3で出た時の能力こそないものの、非クリーチャー呪文を唱えるたびに+1/+1カウンターを乗せながら相手にダメージを与える、果敢と非常に相性の良いカード。   しかも自分のターンに毎回、ビビのパワー分のマナを出すことができます。こういったマナは大体が無色なのですが、ビビの場合は青か赤。キャントリップを打ってビビを大きくして青マナを大量に出し、そこからスペルを重ね、ビビを育ててそのままフィニッシュまで持っていけます。 このビビを採用したイゼット果敢が1位・3位と最上位に2人となり、このカードの恐ろしさを誰もが知ることとなりました。   デッキの構造自体はこれまでのイゼット果敢と大差ありませんが、特筆すべきは《僧院の速槍》が抜けたことでしょうか。クリーチャーは《ドレイクの孵卵者》《稲妻罠の教練者》《迷える黒魔道士、ビビ》の3種となっています。 《稲妻罠の教練者》はこれまでも少し採用されていたカード。ライブラリーの上4枚からカードを探せるので、《食糧補充》《コーリ鋼の短刀》などにアクセスしやすく便利です。《迷える黒魔道士、ビビ》のおかげでマナが大量に出るようになったので、マナの注ぎ先として《稲妻罠の教練者》は優秀です。マナの使い先であるドロースペルを探せる他、《稲妻罠の教練者》を新生しても良いですからね。 ビビによって《嵐追いの才能》レベルアップが容易となり、採用されるようになったのが《この町は狭すぎる》。2マナで《この町は狭すぎる》を打ち、《嵐追いの才能》を拾い、キャストしてレベルアップで《この町は狭すぎる》というマナのかかる無限ループは、以前までのマナがカツカツのイゼット果敢ではあまり採用されていませんでしたが、ビビが入るとなると話は別です。 ビビが加入したことでイゼット果敢は《一時的封鎖》を克服したと言えます。これまでは《僧院の速槍》《嵐追いの才能》《コーリ鋼の短刀》と攻め手がすべて《一時的封鎖》で対処されていたため、《洪水の大口へ》でバウンスする必要がありました。 しかし、《一時的封鎖》の効かないビビにより状況は一変。最も強力な攻め札に対処できないカードになってしまいました。   かといって《一時的封鎖》を抜けるかというとそうではないのが難しいところ。《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》自体にはしっかり触りたいので、《一時的封鎖》は必要です。ビビを倒すために単体除去に寄せてしまうと、今度は《コーリ鋼の短刀》が重くなってしまうのです。 コントロールは《一時的封鎖》の信頼性が下がったことでイゼット果敢を止めることが今まで以上に困難となりました。   《古代魔法「アルテマ」》は《コーリ鋼の短刀》《迷える黒魔道士、ビビ》をまとめて吹き飛ばせるため、採用率は上がってくるかもしれません……が5マナと重く《呪文貫き》の餌食になりやすい他、《嵐追いの才能》に無力なのも気になりますね。 ビビがイゼット果敢に入ったことでいよいよこのデッキは本当に最強になったのではないでしょうか。そう思わざるを得ないほど、イゼットビビは恐ろしいデッキです。   ディミーアミッドレンジ 一方、《迷える黒魔道士、ビビ》が入ったことで状況が好転するデッキも存在しています。それがディミーアミッドレンジをはじめとした黒いデッキたちです。 黒いデッキにはメインから《喉首狙い》などを採用しており、ビビの対処には困りません。3マナで除去耐性のないクリーチャーは、黒いミッドレンジにとっては的なのです。 今回もトップ8にディミーアミッドレンジは2人入賞しており、立ち位置の良さを証明しています。 とはいえ、ディミーアが《コーリ鋼の短刀》を苦手としているのは相変わらず。《群青の獣縛り》はそんな《コーリ鋼の短刀》を意識したカードです。 攻撃するたびにクリーチャーかアーティファクトかプレインズウォーカー1体を2/2のクリーチャーに変える能力を持つ《群青の獣縛り》。《コーリ鋼の短刀》をクリーチャー化して除去することができるのです。《切り崩し》が確実に機能しますし、《群青の獣縛り》はディミーアミッドレンジならぜひ採用したい1枚ですね。 新カードとしては《暗黒騎士、セシル》が1枚採用されています。序盤からクリーチャーを展開して除去を挟みつつ《永劫の好奇心》に繋げたいデッキなので、強い1マナ域は大歓迎ですね。変身後のライフゲインもしみますし、いぶし銀の1枚と言えるでしょう。 3マナ域は《分派の説教者》と《カルシの帰還者》がセパレートされています。ディミーアと言えば《分派の説教者》は不動だとばかり思っていたので少し意外でした。《分派の説教者》がドローとトークン生成でどんな相手にも一定のパフォーマンスを見せる一方、自身が絆魂を持ち、それを他のクリーチャーに付与できる《カルシの帰還者》は赤に特化したカードと言えますね。 ディミーアミッドレンジはアゾリウスコントロールやアゾリウス全知など、赤を意識した青白系のデッキに対して高い勝率を誇るデッキ。反面、《コーリ鋼の短刀》擁するデッキ、つまりイゼット果敢に少し不利という立ち位置ではあるのですが、仮にイゼット果敢に対して五分以上になるのだとしたら、メタゲーム上で不利な相手はほとんどいなくなります。 今週末の台風の目となるのでしょうか?注目していきたいですね。   赤単アグロ   最後を飾るのは赤単アグロ。   最近では《コーリ鋼の短刀》《迷える黒魔道士、ビビ》とイゼット果敢のとんでもないカードたちの前に少し影が薄くなっていますが、《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》と序盤・中盤・後半いつでも強いハツカネズミたちを使った、スタンダードでは存在してはならないレベルの赤アグロです。 現にスタンダードとほぼ同じカードを使った赤アグロがパイオニアでも暴れており、世が世ならスタンダードで禁止されていたのではないかと個人的には思います。 さて、そんな赤単アグロがこの大会では大活躍。トップ8に2人入賞だけでなく、トップ16まで見てみると9位、10位、11位、13位にも赤単が入っており、圧倒的パフォーマンスを見せています。   今回は赤単の名手、sandydogmtg選手のリストをピックアップしています。   赤単の魅力はなんといってもハツカネズミ軍団たちによる圧倒的なカードパワー。《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》は1~2ターン目からゲーム後半までいつでも活躍する凄まじいカードです。 《熾火心の挑戦者》は序盤にはただのクロック、中盤以降はリソースを稼いでくれまし、《多様な鼠》は新生で除去耐性があり、生き残ればそれだけで勝ててしまうカード。   そしてそれらのクリーチャーを強化する《岩面村》もあり、マナフラッドに対してかなり強いアグロとなっています。 最近はイゼット果敢を意識してメインから《魔道士封じのトカゲ》が採用されています。イゼット果敢と赤単の戦いはかなり先手ゲーになりがちなのですが、それはあくまで《魔道士封じのトカゲ》がなかった場合の話です。 《魔道士封じのトカゲ》を引けば、仮に《洪水の大口へ》で一時的に対処されたとしても唱え直してダメージを稼げるので、赤単は後手番でもイゼット果敢に勝利することができます。 赤単は新カードの入る余地はなく、完成されたデッキですね。ビビに意識が寄って単体除去が増えることは赤単としては悪くありません。特に白いデッキがビビに全く効果のない《領事の権限》を抜き始めているので、赤単としては願ったりかなったり。 《一時的封鎖》が《古代魔法「アルテマ」》になろうものならこれ以上望ましいことはないでしょう。重い全体除去は速攻の多い赤単にはほとんど無力ですからね。   歴代最強の赤単アグロ。にもかかわらずイゼット果敢というデッキの存在で、そこまで強烈にメタられているわけではない不思議なこの状況。   今週末は赤単旋風が巻き起こってもなんら不思議ではありません。

【週刊メタゲーム通信】セレズニアトークンが優勝!ドメインにはユウナ、グルール昂揚にはティナとFFのカードも活躍

週刊 Standard ピックアップ

2025.06.18

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今週のメタゲーム通信はスタンダード!   本日はMTGアリーナで開催されていた蒼紅杯 ~FINAL FANTASY~ Izzet Explosive Experiment Eventの結果から最新環境を分析!   蒼紅杯は新環境のスタンダード大会としてすっかり定着しました。勝ち上がるデッキもその後のトーナメントで見ることが多く、毎回僕個人としても楽しみにしています。   蒼紅杯 優勝:セレズニアトークン2位:ドメインオーバーロード3位:イゼットビビ4位:ジャンドミッドレンジ5位:ボロスアグロ6位:グルール昂揚7位:ドメインオーバーロード8位:アゾリウス全知   本大会を制したのはセレズニアトークンでした。   セレズニアトークン 本大会を制したのはセレズニアトークンでした。   アーキタイプとしては以前から存在していたもので、《収集家の檻》を使ったプチコンボが搭載されているトークンデッキです。 3体以上の異なるパワーを持つクリーチャーがいると《収集家の檻》に秘匿したカードが使えるので、本来4マナで兆候する《ミストムーアの大主》や、重い《孔蹄のビヒモス》を最速3ターン目に着地させることができます。 秘匿カードは単にリソースとしても使えますが、このように重いカードを踏み倒すのにも使えます。ただしその際にネックなのが、秘匿の当たりを増やそうとすると手札に引いた時のハズレが増えるという点。それを《ミストムーアの大主》はバッチリクリアしています。   異なるパワーを持つ3体以上のクリーチャーを用意するのはトークンデッキならば容易なことです。《砂嵐の回収者》は自身が1/1、トークンが3/3なので、もう1体クリーチャーが出ていれば、《収集家の檻》でパワーを上げて秘匿を達成できます。 グルールでもお馴染みの《脚当ての補充兵》も新生トークンを生み出すので採用されています。1ターン目に1マナ2/1として出しても強いカードです。 『タルキール龍嵐録』から加入したトークンデッキの相棒、《嵐の討伐者、エルズペス》。トークンを生み出すことに長けるこのデッキなら、生き残ればすさまじいアドバンテージを生み出します。単にトークンを生成するだけでなく、全体強化を行えるのが素晴らしいです。 トークンデッキという性質上、単体除去に非常に強いのが強みで、またクリーチャーの並べ合いに対しても優位性があり、秘匿からの《孔蹄のビヒモス》《ミストムーアの大主》と必殺技もあります。 反面、コントロール系には少し厳しそうに見えたのですが、決勝ではドメインオーバーロードを見事打ち破って優勝しており、そのデッキパワーの高さがうかがえますね。   ドメインオーバーロード そんなセレズニアトークンと決勝を戦ったのがドメインオーバーロード。前環境からスタンダードで活躍するデッキで、トップ8に2人が入賞しています。 大主たちを兆候コストで唱え、《永遠の策謀家、ズアー》によって無理やり起こして攻撃するコンボが搭載されたコントロールデッキで、《豆の木をのぼれ》を引くと手札が減らなくなります。ドメインオーバーロードは豆の木デッキと呼ばれるほどで、各種大主と《力線の束縛》がすべて《豆の木をのぼれ》を誘発させる軽いカードになっているので、脱法豆の木し放題となっているのです。 そんなドメインオーバーロードに今回入ったのは《スピラの希望、ユウナ》。召喚士らしく墓地からエンチャントを吊り上げる能力を持っている彼女は、大主たちをリアニメイトすることができます。もちろん兆候状態ではなくクリーチャーとして蘇らせるので、《ミストムーアの大主》が突然現れます。 しかもクリーチャー・エンチャントに絆魂を付与するので生き残ってしまえばライフレースは一気に壊れることになります。実質《永遠の策謀家、ズアー》が増えたようなものです。 しかも《永遠の策謀家、ズアー》と違い戦場に大主が出ている必要がありません。打ち消しなどを喰らって墓地に落ちた大主を戦場に戻せるので、決して《スピラの希望、ユウナ》は《永遠の策謀家、ズアー》の劣化ではないのです。   面白いのが《ベイルマークの大主》の採用です。これまで大主と言えば《ミストムーアの大主》《ホーントウッドの大主》の定番2種が4枚、そして入っていたとしても《フラッドピットの大主》が少し程度でしたが、墓地を活用できるようになったので、切削でエンチャントを墓地に落とす《ベイルマークの大主》が採用されました。 前述のように《豆の木をのぼれ》を引けば手札が溢れるドメインオーバーロードですが、それ以外のドロースペルは入っていません。《ベイルマークの大主》は攻撃するとクリーチャーを継続的に供給してくれるので、リソース面も担ってくれますね。デッキの安定性を高める手段としても一役買ってくれるナイスな大主です。   《スピラの希望、ユウナ》は打ち消されたり破壊された《豆の木をのぼれ》を戻したり、《力線の束縛》を墓地から戻すなど、大主を動かす以外にも様々な用途がありますね。 特に《豆の木をのぼれ》はデッキのキーカードで、対コントロールでは重要なカードでした。今までは打ち消されてしまっていましたが、《魂の洞窟》から《スピラの希望、ユウナ》を通して《豆の木をのぼれ》を戻す動きができるので、青い相手には《豆の木をのぼれ》を着地させやすくなっています。   グルール昂揚   ファイナルファンタジーと言えば召喚。仲間が召喚を行って敵を攻撃したり、召喚獣のボスと対峙するなど、ファイナルファンタジーを語るなら欠かせない存在ですね。   召喚カードは英雄譚・クリーチャーとしてマジックで表現されることとなりました。伝承カウンターが乗っている間、つまり最初から数ターン後に退場することが決まっているクリーチャーは、フレイバー的には素晴らしいものですが、カードパワー的にはちょっと寂しいところ。 そんな召喚を上手く使うデッキが現れました!グルール昂揚です。   墓地にカードを4種揃えることで爆発的な力を得るグルール昂揚。採用されたのは《召喚:ブリュンヒルデ》です。 第1章でライブラリーの上を追放し、このターンに伝承カウンターをブリュンヒルデに乗せていたら使用できます。つまり、ブリュンヒルデを唱えたターンにも使えますし、次のターンに生き残って第2章を迎えた時にも追放したカードは使用できます。   2章と3章は後続のクリーチャーに速攻を付けてくれるので、《雑食性ハエトリグサ》との相性がバッチリです。1章でリソースを稼ぎながら相手視点では放置できないのですぐに除去される。そんな展開で1対2交換を取りやすいカードです。 このカードがグルール昂揚に採用される一番の理由はやはりそのカードタイプでしょう。エンチャントとクリーチャーの2タイプを満たす第二の《逸失への恐怖》です。《逸失への恐怖》《継ぎ接ぎのけだもの》《野火の木人》《召喚:ブリュンヒルデ》と、このデッキに入っている4種のクリーチャーが2タイプを持っているのです。 昂揚を達成することが命題のグルール昂揚にとって、《召喚:ブリュンヒルデ》の加入は非常に大きいと言えます。追加の《逸失への恐怖》と言ったところでしょう。 そしてもう1つの新カード、《魔導戦士、ティナ》も忘れてはなりません。 戦場に出た時に5枚を切削し、そこからエンチャントを回収と、昂揚の達成とエンチャントの確保を1枚で担える素晴らしい性能。《召喚:ブリュンヒルデ》《逸失への恐怖》を拾いつつ昂揚を達成したら宇宙です。 マナフラッドした際には変身能力もあり、英雄譚となります。召喚獣となったティナは1~3章でエンチャントのコピーを生成します。《逸失への恐怖》をコピーすればダブル《逸失への恐怖》で一気に相手のライフを削れますし、相手としてはティナを放置することはできません。 エンチャントを拾いながら、墓地を肥やし、しかも相手に除去を要求する。さすがはティナ、恐るべし力の持ち主。   今回加入した《召喚:ブリュンヒルデ》《魔導戦士、ティナ》はデッキの潤滑油のようなカードで、昂揚という難しい条件を達成しなければ真価を発揮できないグルール昂揚にとっては、喉から手が出るほど欲しかったカードでしょう。   昂揚が安定するようになり、いよいよグルール昂揚が本格的にメタゲームに食い込んできそうな予感がします。

今夜もFFのデッキを紹介!ゴルガリドレッジ/イゼットビビ/マルドゥセフィロスエネルギー

Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.06.13

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   昨日に続いて本日も、ジックオンラインで結果を残したファイナルファンタジー入りのデッキたちをご紹介していきます!   紹介デッキ ゴルガリドレッジ(スタンダード) イゼットビビ(パイオニア) マルドゥセフィロスエネルギー(モダン)   ゴルガリドレッジ(スタンダード)  スタンダードリーグ : 5-0 By Atagomax MTGアリーナ用インポートデータ プロツアーで突然メタ外からトップ8に入賞し、話題をかっさらったゴルガリドレッジ。   自分のライブラリーを切削して墓地にカードを貯めていくデッキタイプのことを「ドレッジ」と呼ぶのですが、このゴルガリドレッジは切削によって、重いクリーチャーたちを軽くして唱えます。 《虚ろなる匪賊》《鞘破りの群れ》は墓地にあるクリーチャー・カードの数だけマナコストが軽くなるクリーチャーで、それぞれ最大で1マナで唱えることができます。《虚ろなる匪賊》は手札破壊のオマケ付きのため、連打するだけで相手は苦しくなっていきます。 そしてマナコストが軽くなるカードと噛み合うのが《豆の木をのぼれ》。《この町は狭すぎる》や《力線の束縛》などで不当に《豆の木をのぼれ》を誘発させることを脱法豆の木と僕は呼んでいるのですが、このデッキも脱法豆の木を行います。《虚ろなる匪賊》《鞘破りの群れ》を1マナで唱えて《豆の木をのぼれ》を誘発させ、盤面にクリーチャーをオーバーキル気味に叩きつけるのがこのデッキ。 そんな脱法豆の木カードが新たにファイナルファンタジーで加わりました!その名は《ダイヤウェポン》!! 《虚ろなる匪賊》《鞘破りの群れ》と違い2マナまでしか軽くなりませんが、その代わりにクリーチャー・カードだけでなくパーマネントの枚数だけ軽くなります。 切削で何が落ちるかは運次第。クリーチャーではなく土地が大量に落ちる場合も多々あるので、《ダイヤウェポン》の方が《虚ろなる匪賊》よりも軽く唱えられるケースも多々あります。   しかもなんと言っても強力なのはその能力!到達に加えて、戦闘によって《ダイヤウェポン》が受けるダメージを0にします。本体サイズも8/8で戦闘ダメージを受けないので、《心火の英雄》《多様な鼠》による二段攻撃も大半をシャットアウトしてくれます。 更にゴルガリドレッジはその足回りも強化されています。コストを踏み倒すために必須の切削手段として《町の歓迎者》が加わりました。 これまで1枚で大量に切削できるカードは《ベイルマークの大主》のみでした。デッキに《蓄え放題》を採用すると《虚ろなる匪賊》のマナコスト軽減確率が下がってしまいます。なるべくデッキにはクリーチャーだけを入れたいのです。 その点《町の歓迎者》はうってつけです。以前このデッキを使った時は「《サテュロスの道探し》がスタンダードに来てくれれば…」なんて思っていたのですが、まさか本当に来てくれるとは。   これにより2マナ域が4枚切削8枚体制となり、デッキは非常に安定しました。そして切削した後のフィニッシャーとしてもブロッカーとして頼もしい《ダイヤウェポン》が加わり、赤耐性も大幅に上昇。デッキパワーが非常に上がりました。 墓地への意識が薄くなったタイミングはゴルガリドレッジがチャンス!赤アグロ全盛期に《ダイヤウェポン》を叩きつけましょう!     イゼットビビ(パイオニア) パイオニアチャレンジ : 10位 By _Falcon_ MTGアリーナ用インポートデータ 「このデッキ、既視感あるな」   そう思った方が多いのではないでしょうか?いや、僕もです。   このデッキ、ほとんどスタンダードなんですよね。昨日紹介した占星ビビから《「占星術師」の天球儀》を抜いたようなデッキです。 パイオニアでも《迷える黒魔道士、ビビ》の強さは変わりません。というより、スタンダードよりキャントリップ呪文が1種類多いため、ビビの破壊力はむしろ増します。 《考慮》はカードを墓地に落とせるので、《選択》よりも強力ですね。《嵐追いの才能》の2章でカードを拾う際に、墓地に落ちるかライブラリーの下に行くかには大きな違いがあります。 他に異なるのはマナベース。《蒸気孔》が入っているのはやはり大きく、スタンダードのイゼット果敢が色事故を起こしやすいことから考えると、やはりショックランドを使えるのは大きすぎますね。 ただ、逆に言ってしまえば1種類のキャントリップとマナベース以外はこのデッキはスタンダード。このスタンダードライクなデッキがパイオニアチャレンジで4勝2敗できることがいかに恐ろしいか。   ビビの強さについては昨日も言及した通りです。キャントリップ呪文を打っていくことで大きくなり、ダメージが入り、カウンターが乗るので、1マナの呪文を唱えると使えるマナが1マナ増えます。4マナある状態でビビがいるなら、1マナのキャントリップを4回使用した後に4マナが生み出せて、更に1マナのカードを4連打できます。 つまり、理論上はビビとキャントリップ1枚だけで4ターンキルできる可能性があるということです。キャントリップでキャントリップを見つけ続ければ8回キャントリップを使用でき、本体に8点、ビビのパワーも8になりますからね。 もちろん実際にはこんなに都合よくキャントリップを引き込み続けることはできませんが、複数枚のキャントリップがある状態なら連鎖も現実的です。そういう意味では3種類目のキャントリップである《考慮》が使えるのはパイオニアバージョンの大きなメリットですね。 パイオニアでもこのデッキが出てきたことで、スタンダードのイゼットでもビビは採用するのが当たり前になってくるかもしれません。パイオニアで強いデッキがスタンダードで弱いはずがありませんからね。というかビビが除去される可能性のより高いパイオニアでビビが強いなら、スタンダードでもビビはとんでもない性能のはずです。   昨日も今日も紹介したリストは《迷える黒魔道士、ビビ》は3枚でしたが、生き残れば1枚で勝てる《迷える黒魔道士、ビビ》は4枚採用したいと個人的には思いました。手札に2枚目が腐っても場にビビが残っているならゲームに勝利しているのではないでしょうか?それぐらいビビは強力無比なクリーチャーに見えます。 ほぼスタンダードでもパイオニアで勝てるほど強いビビ、今度はどんなデッキで躍動するのでしょうか?今から楽しみです。   マルドゥセフィロスエネルギー(モダン) モダンリーグ : 5-0 By EL_Zanetti 『モダンホライゾン3』発売後ずっと人気のアーキタイプ、エネルギーアグロ。そこにファイナルファンタジーきっての人気キャラ、《威名のソルジャー、セフィロス》が採用されました。 《威名のソルジャー、セフィロス》は簡単に言えば《血の芸術家》を内蔵したクリーチャー。自分か相手のクリーチャーが死亡するたびに1点ドレインするので、攻守に渡って活躍します。《血の芸術家》が0/1だったことを考えると、たった1マナ増えるだけで3/3のボディになるのは、その時点で強力ですね。 しかも《威名のソルジャー、セフィロス》はただの《血の芸術家》ではありません。このターンに4体以上のクリーチャーが死亡していると《片翼の天使、セフィロス》に変身します。 4体のクリーチャー死亡は一見難しいように思えますが、死亡するクリーチャーが限定されていないのがミソ。自分と相手のクリーチャーが2体ずつ死亡しても変身するのです。   《ゴブリンの砲撃》を使えば自分のクリーチャー2体で相手のクリーチャー2体を除去し、即変身です。 そして変身後の《片翼の天使、セフィロス》も実に強力。本体サイズが5/5に加え、変身した際に紋章を獲得します。得る紋章は《威名のソルジャー、セフィロス》が持っていたドレイン能力なので、《片翼の天使、セフィロス》が死亡しても相手は1点ドレインを受け続けることになります。   サクリファイスに非常に長けているのがエネルギーデッキ。《オセロットの群れ》は大量のトークンを生み出し、《勝利の楽士》のトークンはエンド時に2体死亡。更に《ゴブリンの砲撃》と《ナカティルの最下層民、アジャニ》も《威名のソルジャー、セフィロス》の誘発を助けてくれます。 《黄泉帰る悪夢》も面白いカードです。《威名のソルジャー、セフィロス》を墓地から蘇生させつつ死亡誘発を1回満たせるので、《片翼の天使、セフィロス》への変身に一役買います。 これまで負け筋の1つだった全体除去の連打に対して《片翼の天使、セフィロス》の紋章は非常に大きく、全体除去連打+《火の怒りのタイタン、フレージ》対処によって落としていたコントロールに対して、新たな勝ちパターンが生まれました。 ボロスエネルギーの《勝利の楽士》には懐疑的でしたが、《威名のソルジャー、セフィロス》が採用されたこのリストであれば納得です。というよりマルドゥエネルギーの《勝利の楽士》はかなり強そうで、これからもセットで採用されるのではないでしょうか。 《威名のソルジャー、セフィロス》によってライフゲインができるため、《オセロットの群れ》の誘発を達成しやすいのもポイント。《オセロットの群れ》には《魂の導き手》が必須で、それゆえにエネルギーという形を保っていましたが、《威名のソルジャー、セフィロス》があるならばもしかしたらエネルギーである必要は最早ないのかもしれません。 白黒系の新たなサクリファイスデッキが誕生するのでは?そんな予感すらさせてくれるのが《勝利の楽士》と《威名のソルジャー、セフィロス》です。

MTG×FFがついにオンラインで実装!スタンダードとモダンからFFを使ったデッキをピックアップ!

Modern Standard ピックアップ

2025.06.12

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 ついに「マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY」がMTGアリーナ、そしてマジックオンラインでも実装されました!! というわけで本日は、早速マジックオンラインで結果を残したファイナルファンタジー入りのデッキたちをご紹介していきます!   紹介デッキ 占星ビビ(スタンダード) アゾリウスコントロール(スタンダード) ジャンドリディアサーガ(モダン)   占星ビビ(スタンダード)  スタンダードリーグ : 5-0 By MJ_23 MTGアリーナ用インポートデータ 今セットで最強と言われているトップレア、《迷える黒魔道士、ビビ》。クリーチャーでない呪文を唱えるたびにプレイヤーにダメージを飛ばしながら自身が強化され、ビビのパワー分のマナを生み出すという、とんでもないクリーチャー。 既にスタンダードでは呪文を連発して打点を稼ぐイゼット果敢が最強のデッキとして君臨しており、そこにすんなり入る性能で、このリストはなんと《迷える黒魔道士、ビビ》以外のクリーチャーが1枚も採用されていません。   ビビによってイゼット果敢は手数を圧倒的に増やせるようになりました。これまでは《食糧補充》を打ったターンは1マナの追加アクションが関の山で、《嵐追いの才能》のレベルアップはターンパス、レベル3に到達することは稀でした。 しかし、ビビのおかげでその常識が覆ることとなりました。   ビビを出して生き残れば、返しのターンで4マナ+ビビ。《食糧補充》+1マナのアクションの後に更に2マナを使えますし、《コーリ鋼の短刀》+《食糧補充》なんて展開も。 ビビと《巨怪の怒り》のコンボも強烈です。0/4のビビが《巨怪の怒り》を打つだけでパワー4になるので、なんとあの《暗黒の儀式》を超えるマナ加速が可能となるのです。 《嵐追いの才能》のレベルアップもスムーズになりました。ビビが少し育てばレベルアップしたターンに《食糧補充》も打てるので、これまでゲーム中盤以降にしか機能しなかった《嵐追いの才能》が本格的にリソースカードになり始めたのです。   ビビのおかげでマナがたくさん使えるようになったので、個人的には《この町は狭すぎる》を入れて《嵐追いの才能》を出し直せる構成にしてみるのも面白そうだと思いました。 そしてビビともう1枚、忘れてはならないファイナルファンタジーの新カードがあります。   それが《「占星術師」の天球儀》です。 FFXIVの《「占星術師」の天球儀》は味方にバフを振りまきながらヒールもする、そんな器用なジョブの占星術師ですが、マジックではひたすら相手をブン殴るDPSになります。   クリーチャー以外の呪文を唱えるたびに+1/+1カウンターが乗る、いわゆるスーパー果敢を持つ装備品で、2ターン目に出した時のインパクトは《コーリ鋼の短刀》級です。クリーチャー以外の呪文によってさまざまなボーナスを得られるこのデッキには、《「占星術師」の天球儀》《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》と、実質クリーチャーのスペルが大量に入っており、引きムラが起きづらくなっています。 《「占星術師」の天球儀》がビビについた日にはもう大変なことになります。呪文を唱えるごとにカウンターが2つ乗っていくので、使い切れないマナを手に入れてしまいます。こうなったら《嵐追いの才能》のレベル3+スペル連打も現実的なものとなり、これまでのイゼット果敢にはない勝ち手段がこのデッキにはありますね。   日々進化を続けていくイゼット果敢ですが、《迷える黒魔道士、ビビ》と《「占星術師」の天球儀》によってまた一つ、新たなステージに上がったかもしれません。     アゾリウスコントロール(スタンダード) スタンダードリーグ : 5-0 By claudioh MTGアリーナ用インポートデータ 前環境でも地域CS準優勝を収め、イゼット果敢キラーとして活躍していたアゾリウスコントロールが、ファイナルファンタジーで大きく強化されました!   そう、《古代魔法「アルテマ」》によって。 現環境は《審判の日》や《別行動》など多種多様な全体除去がありますが、それらを押しのけて入るほど、《古代魔法「アルテマ」》は強力です。 まず全体除去を行ってターンを終了してしまうため、死亡時の能力は誘発しません。スタックに積まれた能力は《古代魔法「アルテマ」》のターンを終了する能力によって消えてしまうからです。   そして瞬速でクリーチャーを唱えることも許しません。全体除去を打ったらターン終了時に《永劫の好奇心》や《フェアリーの黒幕》が出てきて殴られ続けた、なんて経験があるでしょう。ターン終了時に動いてくる不届き者も《古代魔法「アルテマ」》は許しません。ターンを終了するので、打った後に相手は何もできませんし、《古代魔法「アルテマ」》にスタックして《フェアリーの黒幕》を出したら《古代魔法「アルテマ」》に巻き込まれてしまいますからね。 特に《永劫の好奇心》はアゾリウスコントロールが最も苦手とするカードでしたが、《古代魔法「アルテマ」》によってある程度克服されたと言って良いでしょう。   ターン終了時にクリーチャー化してくる《魂石の聖域》も防げるため、総じて《古代魔法「アルテマ」》はディミーアミッドレンジに強くなりました。 更に《古代魔法「アルテマ」》には他の全体除去にはないメリットがあります。そう、アーティファクトを壊せるという点です。   今のスタンダードで暴れているアーティファクトと言えば《コーリ鋼の短刀》です。 《審判の日》や《別行動》といった優秀な全体除去が控えめなのは、この《コーリ鋼の短刀》のためです。相手がキャントリップを連打して手札を維持しながらトークンを出してくるのに、そのトークンをこちらが除去するなんてばからしいですからね。 これまでは《別行動》でトークンを流しつつ、リソース減を打ち消すか、《一時的封鎖》で《コーリ鋼の短刀》を追放するのが基本となっていました。 しかし、《古代魔法「アルテマ」》のおかげで《コーリ鋼の短刀》対策は増えました。ただ打つだけで《コーリ鋼の短刀》を解決できるようになったのです。   《一時的封鎖》と異なり《古代魔法「アルテマ」》は《洪水の大口へ》も効きませんし、安心して打てる全体除去です。もちろん5マナと重いので、このリストには《一時的封鎖》も追加で採用されていますが、《古代魔法「アルテマ」》はやはり4枚です。 今後下フォーマット、特にパイオニアでは《古代魔法「アルテマ」》は活躍してくれそうです。アゾリウスコントロールがお好きな方は今の内に揃えておきましょう。   新環境はイゼットで決まりと思っていたら、アゾリウスコントロールが《古代魔法「アルテマ」》で支配していた……なんて未来もありそうです。   ジャンドリディアサーガ(モダン) モダンリーグ : 5-0 By Sanitoeter 最後はモダンから、新カードと新ルールで強くなったジャンドサーガをピックアップ!   新ルールですが、「マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY」によって英雄譚のルールが変わりました。今回新たに登場した召喚が、英雄譚でもありクリーチャーでもあるという性質で、それに配慮するためにルール変更が行われたのです。 具体的に説明すると、これまでは英雄譚が伝承カウンターを持った状態で英雄譚能力を失った場合に、墓地に置かれていました。それが今回の変更で、墓地に置かれず戦場に残るようになったのです。   たとえば《血染めの月》や《広がりゆく海》によって《ウルザの物語》英雄譚ではなくなると、これまでは墓地に置かれましたが、今のルールでは戦場に残って《山》や《島》になります。 しかも、第1章で無色を生み出す能力、第2章のトークン生成能力を持っている《ウルザの物語》が《血染めの月》で《山》になると、無色を生み出し、トークン生成ができる《山》になります。 これは《ウルザの物語》を主軸に据えていたデッキにとっては非常に大きな変更で、1種類強力なカードが追加されたぐらいのインパクトがあります。   そんなルール上の恩恵を受けたのがジャンドサーガ。黒の手札破壊・除去を《レンと六番》と組み合わせ、《ウルザの物語》を何度も使って戦う、少しアグロ気味のミッドレンジです。 このジャンドサーガに新たに入ったのが《ミストの召喚士、リディア》。早速能力を見てみましょう。 《ミストの召喚士、リディア》には2つの能力があります。まず上陸するたびにカードを捨てて引くルーター能力。《レンと六番》で土地を手札に回収するため、ルーター能力とジャンドサーガは非常に相性が良く、それは《鏡割りの寓話》が証明しています。 もちろん《ミストの召喚士、リディア》が持つのはそれだけではありません。召喚士が行うことと言えば?そう、召喚です。 自身をタップして墓地から英雄譚を吊り上げる能力を持っています。本来であれば英雄譚クリーチャーである召喚を墓地から復活させるカードなのですが、モダンには最強の英雄譚カードがあります。   ええ、《ウルザの物語》です。 《ミストの召喚士、リディア》の能力は本来、吊り上げる英雄譚のマナ総量を支払う必要がありますが、《ウルザの物語》は土地なので、当然0マナです。タップするだけで墓地から《ウルザの物語》を再利用できてしまうのです。   最終カウンターが置かれるので《レンと六番》で再利用することこそできませんが、《レンと六番》と違い、手札ではなく直接場に戻すので、疑似的なマナ加速にもなりますし、単純に《ウルザの物語》を再利用する手段が4枚増えました。 前述のようにルーター能力も非常に便利で、《ミストの召喚士、リディア》はジャンドサーガにとても合ったカードだと思います。不要な土地を捨てて有効牌に変える手段が増えたので、《レンと六番》もより使いやすくなりました。   もちろん英雄譚を戻せるので、《鏡割りの寓話》も戻すことができます。しかも《鏡割りの寓話》は3章になった時に追放した後に変身して戦場に戻るので、最終カウンターが取り除かれて墓地に置かれます。無限《鏡割りの寓話》というわけです。 強くなった《ウルザの物語》に《鏡割りの寓話》と英雄譚たちを使い倒したいなら《ミストの召喚士、リディア》で決まりです!