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【今週のピックアップデッキ】ボロスモニュメント/ディミーアドラゴン/森林ギフト

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.05.30

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ ボロスモニュメント ディミーアドラゴン 森林ギフト   ボロスモニュメント  Standard RC Qualifier : 2位 By canepis16 MTGアリーナ用インポートデータ 実は少し前から各国の地域CSに現れ始めていたデッキ、ボロスモニュメント。今回マジックオンライン上での地域CS予選にて見事2位という快挙を成し遂げ、今注目を集めています。   その名の通り、このデッキは《忍耐の記念碑》を主軸に据えたミッドレンジ。とはいえ、その速度は中々のもの。 《忍耐の記念碑》はカードを捨てるたびにドロー、宝物生成、3点ルーズから好きなものを選べるアーティファクト。1ターンに各能力を1回ずつしか選べませんが、自分と相手のターンそれぞれで誘発させることができるので、3点ルーズの能力を使い続けるとあっという間に相手のライフは0になります。   とはいえ、カードを捨てるという行為は基本的にリソースを失うもの。そこでこのデッキの多くのディスカード手段は、カードが引けるものとなっています。   スタンダードから下環境まで大活躍の《逸失への恐怖》は、カードを捨てて引くクリーチャー。同じく《光砕く者、テルサ》も捨てた枚数分だけ引くカードなので、いずれも《忍耐の記念碑》でドローモードを選択することで、手札を減らすことはありません。 《光砕く者、テルサ》は一気に2枚捨てられるので、ドローと宝物を選択すれば、宝物分得をしたことになります。 《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》は墓地から戦場に出ると、手札を捨てて3ドローします。もちろん手札が3枚あれば《忍耐の記念碑》でそれぞれの能力を誘発させつつ3ドローでき、このデッキでは非常に輝くことになります。 面白いのが《再稼働》との組み合わせです。《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》は蘇生能力を持っており、通常この3ドロー能力は、蘇生時に誘発するものです。しかし、《再稼働》で墓地から吊り上げた際にも《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》の3ドローが誘発してくれるのです。 《再稼働》はデッキのキーカードである《忍耐の記念碑》を出す手段としても便利ですね。もちろん、《光砕く者、テルサ》などの各種ディスカード手段を吊り上げても良しです。 捨てる手段に特化したクリーチャーである《新ベナリアの守護者》はカードを引くこそできませんが、ディスカードすることで自身に破壊不能を付与できます。最近は追放除去である《苦痛ある選定》はほとんど採用されていないので、非常に場持ちの良いカードです。 更に条件なくいつでも手札を捨てられるので、相手のターンでも気軽に《忍耐の記念碑》を誘発させることができます。とりあえず不要牌を1ドローに変えられますし、ライフを詰める状況なら3点ルーズを自分と相手のターンで使い続けられるので、あっという間に射程圏内までライフを落とせます。 このようにディスカード手段の多くが高品質なクリーチャーで構成されているので、ボロスモニュメントは分類上はビートダウンとなります。《忍耐の記念碑》を置いて各種クリーチャーを展開しながらカードを捨て、ライフを速やかに詰めていきます。   そしてこのデッキでもメインから4枚採用されているのが《魔道士封じのトカゲ》。デッキと噛み合うわけではありませんが、イゼット果敢を意識してのメイン4枚採用です。 《忍耐の記念碑》を置いた後はディスカードがメインになるので、あまり《魔道士封じのトカゲ》からダメージを受けないのは、ちょっとしたポイントです。   《幽霊による庇護》とは一応コンボにはなりますね。《魔道士封じのトカゲ》に《幽霊による庇護》をつけることで、能力によるダメージでもライフを得られるようになります。《幽霊による庇護》の付け先としては破壊不能を付与できる《新ベナリアの守護者》もいるので、このデッキは除去環境にもかかわらず、メインから気兼ねなく《幽霊による庇護》を4枚採用できるのです。 《洪水の大口へ》がなければ《幽霊による庇護》+《新ベナリアの守護者》の組み合わせはもっと鉄壁だったのですが、こればかりは仕方ありません。 《忍耐の記念碑》が面白いぐらいにチェインするデッキなので、少し変わった攻め方をするビートダウンがお好きな方なら、きっとボロスモニュメントを気に入ることでしょう!     ディミーアドラゴン パイオニアリーグ : 5-0 By Desert_24 MTGアリーナ用インポートデータ ドラゴンが活躍する次元、タルキール。久しぶりの再訪となったわけですが、以前のタルキール環境で活躍していたドラゴン、皆さんは最初に何が思い浮かびますか?   ランプの相棒だった《龍王アタルカ》でしょうか。 それとも《黄金牙、タシグル》のネックレスも衝撃的だった《龍王シルムガル》? 僕はまず《龍王オジュタイ》を思い出します。 アンタップ状態で呪禁を持ち、相手に戦闘ダメージを与えると《予期》。フルタップで出したターンは除去耐性があり、打ち消しを構えながら《龍王オジュタイ》で攻撃できるのがこのカードの強みでした。   《龍王オジュタイ》を主軸に据えたエスパードラゴンはスタンダードで大活躍していましたが、その一因としては、やはり《龍王オジュタイ》を守る打ち消し呪文が強力だったのもあるでしょう。   それが《シルムガルの嘲笑》です。 手札からドラゴンを公開することで《対抗呪文》になるこのインスタントは、龍王オジュタイ》とセットで使われ続けました。そしてこの《シルムガルの嘲笑》が、パイオニアで使われる日がついにやってきたのです。 そう、『タルキール:龍嵐録』で登場した2枚のコントロール向きのドラゴンたちと共に。   《マラング川の執政》はスタンダードの青いコントロールに欠かせないカード。前兆モードの3ドロー、1ディスカードと6/7で2枚バウンス、両方のモードが強力です。 そしてこのデッキに4枚採用されているドラゴンが《ゴミあさりの執政》。ドラゴン以外のすべてのクリーチャーに-X/-Xを与えるカードで、こちらもコントロール向きのカードです。本体も4マナ4/4飛行に、護法能力までついています。 この護法がディスカードというのも曲者。相手に護法を要求し、いざカードを捨てたら打ち消してしまえば、たまったものではありません。   《マラング川の執政》《ゴミあさりの執政》の2種類のドラゴンは、言うなればドローと全体除去。無理にフィニッシャーのドラゴンをデッキに入れることなく、《シルムガルの嘲笑》を4枚採用できるのです。 デッキ構築に制限のかからない《シルムガルの嘲笑》は《対抗呪文》そのもの。モダンでも一線級の活躍をしている《対抗呪文》をパイオニアで使えるのですから、一人だけズルをしているのと同じです。 相方の黒もモダン級のカード満載です。《致命的な一押し》《思考囲い》はパイオニアの黒を代表する2枚ですが、いずれもモダン級のカード。要するにこのデッキは実質モダンのコントロールデッキと言っても過言ではないのです! しかもモダンでは使えない《時を越えた探索》も使用できます。墓地を能動的に溜める手段がないので2枚しか採用されていませんが、それでも2マナで7枚を見て、ドロースペルと打ち消しを探し、その2枚を同ターン中に打つのは、《時を越えた探索》にしかできない芸当です。 まるで一つ下の環境のような動きができてしまうディミーアドラゴン。コントロール好きな方、特に《対抗呪文》がお好きならば使ってみましょう!   森林ギフト モダンリーグ : 5-0 By Jeppebc 全世界100万人はいると言われている(?)《王神の贈り物》ファンの皆様、モダンでまた《王神の贈り物》が活躍しています。 スタンダードでは墓地から吊り上げられたり、《来世への門》でデッキから突然出てきたりと、7マナを支払って戦場に出ることがさほどない《王神の贈り物》。このデッキではそもそも戦場にすら出ません。 それならどうやって《王神の贈り物》は活躍するのか?墓地にある《王神の贈り物》に《変容する森林》がなります。 《変容する森林》は昂揚状態の時に起動して墓地のパーマネントをコピーするカード。コピー先である《王神の贈り物》がアーティファクトなので、昂揚しやすいのが嬉しいですね。   その《変容する森林》を引くために入っているのが《邪悪鳴らし》《ウィザーブルームの命令》。いずれも切削しながら《変容する森林》を拾えるカードでありながら、昂揚を満たしつつ《王神の贈り物》を墓地に送れる、一石三鳥のカードです。 《王神の贈り物》によって追放するクリーチャーは定番の《残虐の執政官》と《穢すもの、ウラモグ》。 《残虐の執政官》は説明不要の強カード。本体のサイズはあまり関係ないので、《王神の贈り物》によって4/4に縮んでも問題ありません。速攻がつくので、戦場に出た時と攻撃時の能力が誘発し、《不屈の独創力》で出すよりも相手に壊滅的なダメージを与えられます。   《王神の贈り物》と実は相性の良いカードが《穢すもの、ウラモグ》。追放領域にある一番重いカード分のカウンターが乗るので、《王神の贈り物》で自身を追放すると、カウンターが10個乗ります。滅殺10は《引き裂かれし永劫、エムラクール》も裸足で逃げ出すレベル。 《変容する森林》《王神の贈り物》プランが防がれた時も安心。リアニメイトでお馴染みの《骨の皇帝》も採用されています。《血染めの月》などで《変容する森林》が対処されても安心というわけです。 とはいえ、《骨の皇帝》も《変容する森林》も墓地に依存するカード。墓地対策に弱いのはご愛嬌。サイド後の対策に対して強い《鏡割りの寓話》を採用したりするのも面白いかもしれませんね。 《頑強》を採用してリアニメイト色を更に強くすることもできますし、フェア・アンフェアどちらの方向にも調整できますし、これからが楽しみなデッキですね。 《変容する森林》を使うデッキも色々と増えてきており、《死の国からの脱出》のようにいつか爆発してくる予感がしています!

【週刊メタゲーム通信】現環境もいよいよ大詰め!今週も絶好調のイゼット果敢!忍び寄るかつての王者

週刊 Standard ピックアップ

2025.05.28

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   先週末はカナダで地域チャンピオンシップが開催されました。   参加者447名による『タルキール龍嵐録』環境末期のスタンダードを分析していきます!   カナダ地域CS 優勝:アゾリウス全知2位:イゼット果敢3位:イゼット果敢4位:ディミーアミッドレンジ5位:ジェスカイ眼魔6位:イゼット果敢7位:イゼット果敢8位:赤単アグロ   『タルキール龍嵐録』で《コーリ鋼の短刀》が登場してからスタンダード環境を暴れ続けているイゼット果敢は、最後までその玉座から降りることはありませんでした。   最多勢力で最もメタられる立場にあり続けながら、常にトップ8に複数人が残り、今回も優勝こそ逃したものの、トップ8の半数を占める結果となっています。   準優勝したのはティムールカワウソや4色スローグルクなど、数々の名デッキを手掛けたことで知られるcftsoc選手。最近でも独創的なコントロール型のエスパーピクシーを構築して話題となっていた、稀代のデッキビルダーです。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   そんなcftsoc選手のイゼット果敢は、クリーチャーの選択に一癖あります。   最近のイゼット果敢の一番の調整所がクリーチャーであることは先週もお話しましたね。《精鋭射手団の目立ちたがり》と《ドレイクの孵卵者》のいずれか、または両方を採用したり、《僧院の速槍》を抜いたりと、デッキリストから、使用者がどんな相手を意識しているのかをある程度読み取ることができます。 cftsoc選手は《僧院の速槍》4枚、《ドレイクの孵卵者》3枚で《精鋭射手団の目立ちたがり》0。つまるところミラーマッチを強く意識した構成です。《塔の点火》《噴出の稲妻》で焼かれてしまう《精鋭射手団の目立ちたがり》は同型では少し心もとなく、《ドレイクの孵卵者》は火力に耐えて、生み出すトークンが《精鋭射手団の目立ちたがり》をブロックできるので、《精鋭射手団の目立ちたがり》型のイゼット果敢に比較的強くなります。 《ドレイクの孵卵者》はミラーにおける防御面だけが注目されがちですが、《巨怪の怒り》とのコンボでドレイクを1ターンに複数体生み出す動きも強く、攻撃面においてもそれなりに優秀です。 《僧院の速槍》《ドレイクの孵卵者》の上から入っているクリーチャーが《稲妻罠の教練者》。こちらは果敢を持たない2マナ1/2なので、明らかに攻撃的なカードではありません。 《稲妻罠の教練者》は《選択》《手練》に比べると重いドローカードですが、その分上4枚からカードをピックできるので、質の高いドローが期待できます。具体的には《コーリ鋼の短刀》《食糧補充》など、強力なカードを探しにいけます。 特に《コーリ鋼の短刀》を引けるかどうかはミラーマッチにおいて最も重要で、その《コーリ鋼の短刀》を引く確率を上げられる《稲妻罠の教練者》は、ミラーでそれなりに強いカードと言えるでしょう。   《コーリ鋼の短刀》の誘発に困りそうなぐらいマナフラッドに陥った時は《食糧補充》を探しにいくなど、器用なカードではあるものの、2ターン目に積極的に出したいクリーチャーというわけでもなく、2枚採用には納得できますね。 このリストでもう1つ、忘れてはならないことがあります。それはスペル欄です。お気づきになりましたか?《巨怪の怒り》が2枚しか入っていないことに。 今まで数多のイゼット果敢のリストを見てきました。《稲妻罠の教練者》が入っているリストも中にはありましたが、《巨怪の怒り》が4枚入っていないリストを見たことはありませんでした。少なくとも地域CSを勝っていたリストはすべて4枚だったと思います。   《巨怪の怒り》は暴力的な打点を叩き出すカードですが、一方で除去に弱いカードでもあります。クリーチャーが除去されなくて初めて打点になるカードなので、盤面のクリーチャーをすべて除去されてしまい、手札に複数枚の《巨怪の怒り》を抱えて負け、という展開も多々あります。 そこでcftsoc選手は《巨怪の怒り》を2枚に減らし、しかし《巨怪の怒り》自体にはアクセスできるようにしました。それが《稲妻罠の教練者》です。ゲーム中盤で《巨怪の怒り》が必要になった時に《食糧補充》《稲妻罠の教練者》でライブラリーから探せる構成にし、序盤の《巨怪の怒り》事故を軽減することに成功したのです。 トップメタも進化し続けるのがカードゲームの面白いところ。イゼット果敢を更に進化させ、見事準優勝で世界選手権への権利を獲得しました。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   そしてそんな最強のデッキ、イゼット果敢を下してカナダ地域CSの頂点に立ったのがアゾリウス全知。 墓地に《全知》を落として《アブエロの覚醒》で釣り上げ、そこからすべてのカードを0マナにして勝つ純粋なコンボデッキ。除去が効かないデッキなため、イゼット果敢を意識して多くのデッキが除去をメインから大量に採用している現環境では、メイン戦は非常に戦いやすくなっています。   『タルキール龍嵐録』で《マラング川の執政》が入ったことでデッキが大きくアップデートされたのは以前もお話しした通り。フィニッシャー枠だった《アルケヴィオスへの侵攻》が不要となり、デッキ内に《全知》コンボの専用パーツが《全知》《アブエロの覚醒》の8枚となったため、アゾリウスコントロールのように立ち振る舞うことが、以前よりも簡単になりました。 勝ち手段は《第三の道の創設》による無限切削が最近の流行でしたが、このリストには採用されていません。代わりにこのデッキの勝ち手段となるのが《クチルの側衛》《真夜中の一撃》《悲劇の神託者》です。 《クチルの側衛》は出た時にライフを得たり、墓地を追放するカード。アゾリウスコントロールのサイドボードなんかに入っているのを見かけますね。この《クチルの側衛》を手札に戻して場に出す。これを無限に繰り返すことで無限ライフを得るのが第一の勝ち手段です。 手順は簡単で、《全知》を貼ってすべてのカードが0マナになったら、《クチルの側衛》を出して《マラング川の執政》Aで手札に戻して出し直し、その後《マラング川の執政》Bで《マラング川の執政》Aと《クチルの側衛》を戻す。これを繰り返すだけです。   《真夜中の一撃》は普通に使うと、3マナの除去。しかも相手に人間を献上してしまうため、そこまで優秀というわけではありません。 しかし、この《真夜中の一撃》も《全知》下ではコンボに使えます。自分のクリーチャーを破壊して自分の場にトークンを生成できるのです。   そしてここに《悲劇の神託者》を組み合わせることで無限にトークンを生み出すことができます。 1.《マラング川の執政》2枚と《乱動するドラゴンの嵐》でデッキをすべて引ききる。 2.手札に《マラング川の執政》2枚、《悲劇の神託者》の状態でコンボスタート。 3.《悲劇の神託者》をプレイ。墓地から《真夜中の一撃》《マラング川の執政》《食糧補充》2枚をライブラリーに戻す。 4.《マラング川の執政》を前兆でプレイし、3枚を引く。絶対に《食糧補充》を引くことができるので、プレイ。 5.先ほどの3でライブラリーに戻した4枚の内1枚と、今前兆でライブラリーに戻った《マラング川の執政》をドロー。ライブラリーは0枚に。 6.《マラング川の執政》をプレイし、《悲劇の神託者》を戻す。 7.《真夜中の一撃》で《マラング川の執政》を破壊。トークンを生成する。 8.《悲劇の神託者》をプレイ。《真夜中の一撃》《食糧補充》《マラング川の執政》適当な1枚を選んでライブラリーに戻す。 9.《食糧補充》を打ち、《食糧補充》ともう1枚を取る。もう1度《食糧補充》を打つとライブラリーがまた0枚に。 10.《真夜中の一撃》で《マラング川の執政》を破壊。以降3に戻ることで、無限に《真夜中の一撃》のトークンを生成。 とこのような手順で無限コンボになります。無限ライフ+無限トークンになるので勝利です。   とはいえ、相手をライブラリーアウトにするわけではなく、トークンを出してターンを返すことになるので、勝てないのではないか?と思うかもしれませんが、実は大丈夫です。 たとえば相手が《太陽降下》や《一時的封鎖》などで盤面を流してきたら、無限体のトークンが戦場を離れたことになります。そのため、《クチルの側衛》を無限パワーで出すことができるのです。そのため全体除去も《クチルの側衛》1枚でケアしています。 全知ミラーマッチでは場に《マラング川の執政》4体、手札に《クチルの側衛》、《巻物変容》2枚の状態でターンを返すので、相手がコンボを決めるのは不可能です。《クチルの側衛》で墓地追放するだけで勝ちますからね。   このように、実によく練られたリストです!   コンボに使用する《悲劇の神託者》は、そもそも《全知》コンボを決めるためにも優秀なパーツです。戦場に出た時にカードを引いて捨てる能力を持っていますからね。《決定的瞬間》の方がライブラリーを掘る性能は優秀ですが、こちらは手札に来た《全知》を直接捨てられるので、一長一短です。《食糧補充》で《全知》を引き込んで《悲劇の神託者》で捨てることもできます。 《クチルの側衛》は同型なら相手の墓地を追放して《アブエロの覚醒》を防ぐことができたり、ビートダウン相手にはライフを得ながらブロッカーにもなり、無限パーツではありますが、普段使いもバッチリなのです。 アゾリウス全知はいかに無限パーツ専用カードを減らせるかがテーマで、《第三の道の創設》はかなり美しいリストでした。今回の優勝リストもそれに匹敵する美しさ。《真夜中の一撃》も少し弱いですが一応は万能除去ですからね。 《ファラジの考古学者》《悲劇の神託者》とライブラリーを掘り進めるカードの多くがクリーチャーになったので、特にアグロを意識していると言えるでしょう。《全知》はライフが1でも残っていればコンボが決まるデッキなので、この壁たちが勝利をもたらしてくれることも多々あります。 イゼット果敢たちをなぎ倒したアグロメタのアゾリウス全知がカナダを制したのでした。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   さて、トップ8の中で異彩を放つのが、最近再び息を吹き返してきたデッキ、ディミーアミッドレンジ。   《大洞窟のコウモリ》によるハンデスや除去、《永劫の好奇心》によるドローや各種打ち消しと、黒と青の良いところを取り入れたミッドレンジです。 かつてはトップメタの一角だったディミーアミッドレンジでしたが、『タルキール龍嵐録』以降は少し元気のない印象でした。その理由はもちろん《コーリ鋼の短刀》です。 《コーリ鋼の短刀》は単体除去にはめっぽう強いカードです。2回の呪文を唱えるたびにトークンが出るため、除去を《コーリ鋼の短刀》のトークンに打っているとアドバンテージを失っていきます。 ディミーアカラーはアーティファクトに触る手段が限られるため、《コーリ鋼の短刀》を止めることができず、ダメージレースを挑むことしかできません。そしてリソースを供給するデッキの要である《永劫の好奇心》が《洪水の大口へ》で対処されてしまうため、イゼット果敢に対して上手く攻められません。 これらの理由から、イゼット果敢に少し不利なデッキとされていたディミーアミッドレンジ。実際今回4位に入賞したJayson Babin選手は本大会で対イゼット果敢に3勝3敗と、勝ち越していません。   ディミーアミッドレンジの魅力は、イゼット果敢以外のデッキに強い点です。アゾリウス全知には手札破壊と打ち消しで対処できますし、オルゾフバウンスには《永劫の好奇心》だけで勝てると言っても過言ではありません。 他にもジェスカイ眼魔に強かったりと、トップ8に入賞しているイゼット果敢以外のデッキたちに比較的強いのはデッキの大きなストロングポイントです。 しかも、対イゼット果敢も決して大きく不利がついてしまうというわけではありません。《コーリ鋼の短刀》が最速で出てこない場合は除去と《分派の説教者》のミッドレンジムーブで勝つことも可能ですし、デッキの性質上、大きく不利な相手がいないのも、ディミーアミッドレンジの良い点でしょう。 《群青の獣縛り》を採用して《コーリ鋼の短刀》を意識したリストもあり、ディミーア側もイゼット果敢に対して決して無策というわけではありません。 ほぼ固定パーツなのは《悪夢滅ぼし、魁渡》と《永劫の好奇心》ぐらいで、軽いクリーチャーや除去の選択肢は、意識する相手次第で自在に変えられます。 固定スロットが少なく、メタに合わせてデッキをチューンできるのもディミーアの強みと言えますね。   攻めも守りも自由自在なデッキ。それゆえにプレイも難しいのですが、練習しがいのあるデッキですよ!

【今週のピックアップデッキ】黒単クレリックリアニ/シミック緑甲羅/ダイスファクトリー

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.05.23

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ 黒単クレリックリアニ シミック緑甲羅 ダイスファクトリー   黒単クレリックリアニ SCG CON Hartford RCQ : 6-2 By David Boucher MTGアリーナ用インポートデータ 墓地から巨大なファッティを吊り上げるリアニメイト戦略。最近では最強のリアニメイト先で《偉大なる統一者、アトラクサ》が登場したため、様々なフォーマットでリアニメイトデッキは存在しています。 しかし、今回ご紹介するリアニメイトには《偉大なる統一者、アトラクサ》は入っていません。そもそもこのリアニメイトは黒単色のデッキ。   しかもスタンダードで最も強力なリアニメイト呪文である《ゾンビ化》すら採用していないのです。 《ゾンビ化》の代わりに採用されているのは《ヴァルガヴォスの崇拝者》。1マナで出して4マナ起動で墓地からクリーチャーを吊り上げるため、1+4で5マナの《ゾンビ化》です。 《忘却の虚僧》も《ゾンビ化》を内蔵したクリーチャー。こちらはキッカーで墓地からクリーチャーを吊り上げられるので、6マナの《ゾンビ化》です。 ですが、そもそもこれらの重い《ゾンビ化》を使うぐらいなら、最初から4マナの《ゾンビ化》を使えば良いのでは?そう思った方も多いでしょう。   その疑問に答えてくれるのが《影の儀式の司祭》。他のクレリッククリーチャーを+1/+1するこのクリーチャーですが、実は《ヴァルガヴォスの崇拝者》も《忘却の虚僧》もクレリックなので、ロードの恩恵をしっかりと受けることができます。 そしてなんといっても《影の儀式の司祭》にはもう1つ、狭量な能力があります。他のクレリックを生け贄にすることでライブラリーから直接黒いクリーチャー・カードを戦場に出せるのです。   強いクリーチャーをリアニメイトするには、まず強いクリーチャー。そしてそれを落とす手段。最後に吊り上げる手段が必要となります。リアニメイトは下準備がかなり面倒なコンボです。しかし、《影の儀式の司祭》ならばそれらの準備は必要ありません。クレリックを用意し、マナを支払うだけで良いのです。 デッキから現れる黒いカードは《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》。非常に強い護法能力を持ち、除去するのは非常に困難。しかも生き残れば圧倒的な展開力を見せる、S級クリーチャーです。 この《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を墓地から釣っても良し、《影の儀式の司祭》で直接出しても良しなのがこの黒単クレリックリアニなのです。   《影の儀式の司祭》はこのデッキの主役。リアニメイト、ロード、両方の能力をフル活用します。   上記の2種に加え、黒ミッドレンジでもお馴染みの《分派の説教者》も実はクレリック。3/5になれば更に硬くなりますし、《忘却の虚僧》の3/2絆魂も赤い相手に重宝します。 さて、デッキから《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を出すには《影の儀式の司祭》がありますが、リアニメイトする際は一度墓地に落とさなければなりません。 《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を墓地に落とす手段として、手札からは《ヴェールのリリアナ》や《苦々しい勝利》があります。いずれも除去を兼ねたディスカード手段で、リアニメイトとの相性は良好です。   良く考えられているのが《ベイルマークの大主》の採用です。 ライブラリーから直接《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を落とせるだけでなく、リアニメイト手段である《ヴァルガヴォスの崇拝者》《忘却の虚僧》を墓地から拾うことができるのです。1枚でファッティを落としながら釣り竿を拾える。実質《納墓》+《再活性》なのです。 《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》で気持ちよくなりたい方はぜひこのデッキをお試しください!!     シミック緑甲羅 パイオニアリーグ : 5-0 By  laa11 MTGアリーナ用インポートデータ たびたびパイオニアで話題となる《肥えた緑甲羅》。 パワーよりタフネスの方が高いクリーチャーが戦場に出るたびにライブラリートップを見て、それが土地ならタップ状態で置き、それ以外なら手札に加えるという、シンプルにアドバンテージが取れるカード。《有翼の叡智、ナドゥ》のように土地がアンタップインだったらもっと使われているかもしれませんね。 このシミック緑甲羅は《肥えた緑甲羅》の能力を使い倒すことに特化したデッキ。   入っているクリーチャーのすべてがパワーよりタフネスの方が大きいのです。   《樹上の草食獣》《腹黒茸》は手札から土地を置ける能力。《肥えた緑甲羅》を早いターンに出せる便利なカードです。《腹黒茸》はドローもついていますね。 《金のガチョウ》に《断崖の見張り》まで入っているため、《肥えた緑甲羅》を4ターン目には出すことができるでしょう。とにかく早く《肥えた緑甲羅》を出して、能力を使い始めるのがこのデッキでは最重要です。《肥えた緑甲羅》が土地をめくっていき、次のターンにそれらの土地を使って更なる大量展開というのが勝ちパターンですからね。 少し見慣れないカードである《夢露の幻惑者》は、相手クリーチャーに麻痺を乗せる疑似的な除去としての使い道もあれば、自分のクリーチャーに麻痺を乗せて2ドローもできるので、場の状況や相手によって様々な使い方ができます。自身にも乗せられるため、2ドロー自体は難しくありません。 そして《玻璃池のミミック》。こちらは《肥えた緑甲羅》をコピーするのが主な役割です。《肥えた緑甲羅》が2枚になれば誘発も倍なので、あっという間に土地が増えて全体に修正が入って殴り勝てます。《肥えた緑甲羅》が1回戦場に出たらすぐに《玻璃池のミミック》でコピーしたいですね。 そんな《肥えた緑甲羅》をデッキ外から支えるのが《空を放浪するもの、ヨーリオン》!《肥えた緑甲羅》の誘発条件は、「タフネスがパワーよりも大きいクリーチャーがあなたのコントロール下で戦場に出るたび」なので、《空を放浪するもの、ヨーリオン》自身で誘発するのはもちろん、《空を放浪するもの、ヨーリオン》によって追放したクリーチャーたちでもそれぞれ誘発します。つまり3体のクリーチャーがいたら、《空を放浪するもの、ヨーリオン》+3体の4回、《肥えた緑甲羅》が誘発するのです。 このデッキの《空を放浪するもの、ヨーリオン》は超ハイバリューです。   更に最近はアゾリウス全知やアゾリウスコントロールなど、青系のデッキで活躍している《マラング川の執政》。こちらもタフネスの方が高く、《肥えた緑甲羅》が誘発します。 しかも戦場に出た時にパーマネントを戻す能力は自分のクリーチャーにも使えるので、《肥えた緑甲羅》誘発のためにクリーチャーを戻せます。《空を放浪するもの、ヨーリオン》を戻して《マラング川の執政》をブリンクさせて再利用……なんて使い方もでき、このデッキはとにかく《肥えた緑甲羅》をずっと誘発させ続けることに特化しています! その動きはさながらナドゥ!パイオニアで使える《有翼の叡智、ナドゥ》こと《肥えた緑甲羅》、味わってみませんか?   ダイスファクトリー モダンリーグ : 5-0 By  Zoza 知る人ぞ知るデッキ、ダイスファクトリーが最近密かにモダンで勝ち始めています。   ダイスファクトリーは無色のみで構成されたデッキ。キーカードである《地核搾り》を使って大量のマナを出して戦う、トロンに似た性質を持っています。実際に以前までのダイスファクトリーには《ウルザの塔》などが採用されていました。 どうやってマナを出すのか。それは《地核搾り》の能力を読めばわかります。タップすることでアーティファクトの上に蓄積カウンターを置く能力を使うのです。   蓄積カウンターを乗せることでどうマナが増えるのか?《霊体のヤギ角》と《永遠溢れの杯》がその答えです。これらのアーティファクトは、戦場に出るに際し支払ったX分の蓄積カウンターが置かれて、タップすることで蓄積カウンター分のマナが出ます。 普通に使えば《霊体のヤギ角》は3マナ払って設置して1マナを出し、《永遠溢れの杯》は2マナで1マナ。それぞれ少し弱いマナファクト相当のカードなのですが、《地核搾り》で蓄積カウンターを置けるので、マナの総量を増やせるのです。 《うねりの結節》も《地核搾り》と同じく蓄積カウンターを置くカードで、この2種類で《霊体のヤギ角》《永遠溢れの杯》を超マナアーティファクトにして戦うのがダイスファクトリーの基本戦術となります。 特に《地核搾り》は起動して1個、自身を生け贄に2個と、即座に3個の蓄積カウンターを溜められるので、トロンに近い速度でマナを増やしていくことができます。   以前はトロンランドが採用されていたスロットには《エルドラージの寺院》《ウギンの迷宮》の、エルドラージでもお馴染みの無色土地たちが採用されています。《エルドラージの寺院》を2マナランドとして使うために採用しているエルドラージは、定番の《運命を貪るもの》と、そして《まばゆい肉掻き》です。 無色の呪文を唱えるたびに落とし子を生み出す《まばゆい肉掻き》はこのデッキにはぴったり。《霊体のヤギ角》も《永遠溢れの杯》も蓄積カウンターさえいらなければ0マナで唱えられるので、2ターン目に《まばゆい肉掻き》を出してそのまま2体ほどトークンを作り、次のターンのアクションに備えるなんてことも可能です。   《ミシュラのガラクタ》《オパールのモックス》《永遠溢れの杯》《霊体のヤギ角》と大量に0マナアーティファクトを採用しているので、《まばゆい肉掻き》がとにかく強いデッキなのです。 そして0マナアーティファクトはフィニッシャーである《嵐の目、ウギン》とも嚙み合います。戦場に出たターンに0マナを並べて相手を更地にしつつ、《嵐の目、ウギン》の奥義を目指すのはわかりやすい勝ち手段です。 《嵐の目、ウギン》の加入はこのデッキにとって非常に大きいでしょう。《ウギンの迷宮》を採用するためには7マナ以上の無色のカードが2種必要になりますが、《運命を貪るもの》以外で7マナ以上の無色のカードはあまり選択肢がないのが実情です。《嵐の目、ウギン》は《ウギンの迷宮》で追放できる中で最高のフィニッシャーであり、ダイスファクトリー活躍のキーとなっています。 以前までのダイスファクトリーは大量のマナを使う手段が限られていましたが、このリストは《大いなる創造者、カーン》《嵐の目、ウギン》《コジレックの命令》と大量にあり、《まばゆい肉掻き》《神秘の炉》でライブラリーの上からカードをプレイしていくだけで勝てるイージーウィンも存在します。 ついにダイスファクトリーがモダンのトーナメントを脅かす日がきたのかもしれません!エルドラージがお好きな方はぜひ一度このダイスファクトリーもお試しください。

【週刊メタゲーム通信】メインからメタカードを採用した赤単が優勝!そして新たな赤アグロキラーが登場

週刊 Standard ピックアップ

2025.05.22

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今回は、参加者929名のアメリカの地域CSから、最新スタンダード環境を分析!   アメリカ地域CS 優勝:赤単アグロ2位:アゾリウスコントロール3位:イゼット果敢4位:オルゾフピクシー5位:オルゾフデーモン6位:赤単アグロ7位:イゼット果敢8位:イゼット果敢   アメリカの地域CSはイゼット果敢の使用率が40%にも上り、トップ8には3位が入賞。   使用率1位でトップ8に最多と、今回もやはり最強であることを証明しました。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   今回トップ4に入賞したリストはなんと《僧院の速槍》0枚!このカードがイゼット果敢から抜けることになるとは思わなかったので、非常に衝撃を受けました。 今ではすっかり定番となった《ドレイクの孵卵者》は主にミラーマッチで輝く1枚。1/3というサイズが《噴出の稲妻》で焼かれないため場持ちがよく、警戒で攻守に渡って活躍。 更に《巨怪の怒り》でパワーが瞬間的に5になるので、プラス1回果敢を誘発させると6点が入り、一気にドレイクを2体生成できます。ドレイクは《精鋭射手団の目立ちたがり》のブロックにも役立ち、《ドレイクの孵卵者》をメインに入れてミラーを意識するリストが最近では増えてきました。 その《ドレイクの孵卵者》を入れるためにこれまで抜けていたのは《精鋭射手団の目立ちたがり》でした。ミラーマッチでは《噴出の稲妻》に焼かれてしまうことから、このスロットが《ドレイクの孵卵者》になっているリストが多かったのですが、《精鋭射手団の目立ちたがり》が抜けることでアゾリウス全知やドメインなどに対する勝率が落ちてしまいます。 その結果、《ドレイクの孵卵者》と《精鋭射手団の目立ちたがり》をどちらも少しずつ採用するのが一般的だったのですが、最初に言ったように、このリストは《僧院の速槍》が抜けています。 《僧院の速槍》は確かに1マナ域としては優秀ですが、《精鋭射手団の目立ちたがり》のように生き残った時に高い打点を叩き出すカードでもなければ、《ドレイクの孵卵者》ほどミラーマッチで攻守に渡って活躍しません。 どのマッチでも最低限の活躍をするカードではあるものの、特定のマッチアップで必ず引きたいというほどでもない。そんな評価を《僧院の速槍》に下し、デッキからすべて抜いてしまったのでしょう。   スペルも独特なカード選択が光ります。《噴出の稲妻》を1枚におさえて《塔の点火》を3枚採用し、赤単や同型を意識しています。 赤単の《心火の英雄》や、ミラーマッチは協約することで《ドレイクの孵卵者》を対処できることから、赤いアグロには《塔の点火》の方が《噴出の稲妻》より強力です。《コーリ鋼の短刀》からもトークンが出るので、イゼット果敢は赤単に比べて協約を達成しやすいデッキでもあります。 《洪水の大口へ》は2枚から3枚が定番でしたが、このリストは4枚採用となりました! イゼット果敢対策として採用されている《一時的封鎖》に対応するために最近では多めに採用されているバウンスですが、ミラーマッチで《ドレイクの孵卵者》を戻す手段としても重宝するので、腐るマッチがほとんどない状態。4枚採用も納得ですね。 クリーチャーとスペルの両方に工夫が凝らされたイゼット果敢が見事にトップ4入賞を果たしました! 【MTGアリーナ用インポートデータ】   イゼット果敢が相変わらず人気の中、優勝を収めたのは赤単アグロでした。 イゼット果敢に比べてサイドボード後にメタられやすかったり、《全知》などに対して耐性が低いなどの欠点はあるものの、それでも長らくアグロ界の王者として君臨していた赤単。 パイオニアでもお馴染みの《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》のハツカネズミコンビたちは、決して《コーリ鋼の短刀》に引けを取っていません。 そんな赤単ですが、今回優勝したリストはなんとメインに《魔道士封じのトカゲ》を3枚採用!非常に思い切った採用となりました。 《魔道士封じのトカゲ》によって苦しめられるデッキはもちろんイゼット果敢。《コーリ鋼の短刀》の誘発はもちろん、各種果敢のためのキャントリップ呪文を重ねていくイゼット果敢は、《魔道士封じのトカゲ》でとにかくダメージを負います。 しかもイゼット果敢はタフネス3までなら《塔の点火》でなんとか対処できますが、4は完全に射程圏外。5マナで《噴出の稲妻》をキッカーするか、もしくは火力を2枚使うしかありません。しかも2枚の火力を使った時点で3点を受けることは確定しているので、ライフレースとアドバンテージ、両方で一気に不利になります。 これまでの赤単とイゼット果敢の戦いは熾烈なダメージレースでした。《コーリ鋼の短刀》を絡めてイゼット果敢が勝利したり、後手番では除去から《食糧補充》だったりと、イゼット果敢側に僅かではありますが分があったのですが、《魔道士封じのトカゲ》をメイン投入されたとなると、揺蕩っていた相性差は一気に赤単側に傾くことになります。 もちろん《魔道士封じのトカゲ》はイゼット果敢以外のすべてのマッチで強くありません。《全知》に一見強いカードですが、実際は大量のバウンスや《一時的封鎖》で対処されてしまうので、おそらくサイドアウトするでしょう。 それでもイゼット果敢が4割のフィールドなら、役に立ったことの方が多いでしょう。《魔道士封じのトカゲ》が役に立たないマッチでは、《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》のラインで勝ててしまうこともあるでしょうし、マリガンした際にはボトムに送れば良いのです。リスト公開で強い構成と言えるかもしれません。 見事な《魔道士封じのトカゲ》メイン構成の赤単がアメリカの地域CSを制したのでした。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   そんな赤単に決勝こそ敗れはしたものの、赤アグロの海を見事に泳ぎ切り、準優勝を収めたのがアゾリウスコントロール。   ドローと除去と打ち消し。誰もがその名前から想像する古典的なコントロールデッキですが、今のアゾリウスはそのどれもが一流です。   まずは青に欠かせないドロー。《食糧補充》は説明不要の、スタンダード最強のドロースペル。《時を越えた探索》とまで言われており、3マナで5枚から好きな2枚を取れる、シンプルかつ最強のドローです。除去や土地など、その時に欲しいカード2種類が揃います。 そして《マラング川の執政》。呪文として唱えた際はインスタントの3枚ドローとまずまずですが、クリーチャーとして出した場合がとにかく強い。戦場に出た時に2体をバウンスしながら6/7が立つので、一気に盤面をひっくり返せます。フィニッシャーとして十分な風格があり、ドロースペルとしても申し分ありません。今の青いコントロールを支える1枚ですね。 全体除去は《審判の日》に《別行動》。《別行動》が3枚と多めに採用されており、《一時的封鎖》と合わせて3マナの全体除去が5枚となっています。メインから2枚採用の《領事の権限》とはコンボで、出したターンのクリーチャーと攻撃クリーチャーが全部タップ状態になるので、まとめて対処できて便利です。 《コーリ鋼の短刀》で出たトークンもタップ状態なので、速攻で殴られる心配がなくなります。   打ち消しも強化版《マナ漏出》の《喝破》に、ドローもできる《三歩先》、そして《否認》とパイオニアクラスのラインナップ。ただし環境が速いことも考慮して、枚数はそれぞれ2枚となっています。 アゾリウスコントロールは赤アグロに対してだけでなく、赤アグロをメタったデッキに強いのも特徴です。除去ばかり入れた大ぶりなコントロールはアドバンテージを取られ続け、長期戦の末、《完成化した精神、ジェイス》に敗れることになりますし、コンボデッキは打ち消し呪文の餌食となります。 打ち消しと除去で理論上どんな相手にも強いのがアゾリウスコントロールですが、現環境でもそれがしっかり証明される形となりました。   今大会でもイゼット果敢を7回、赤単アグロを1回倒しており、圧倒的な赤アグロキラーと言えるでしょう。 《強迫》と《不浄な別室》擁する黒系ミッドレンジに対してのみ、予選ラウンドでは1敗1分となっていますが、決して相性が悪いというわけではないと思われます。手札破壊以上のドロースペルが入っていますし、相手もメイン戦では《不浄な別室》以外でアドバンテージを取る手段がなく、大量の除去を腐らせることになるはずです。 現れては消えていたアゾリウスコントロールですが、今後はメタゲーム上に残ることになるでしょう。意識しなければならない強敵が、またスタンダードに現れました。

【週刊メタゲーム通信】今週はミッドレンジが大活躍!メルボルンではディミーアとラクドスのミッドレンジ対決!

週刊 Standard ピックアップ

2025.05.14

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今回は、メルボルンと中国で行われた地域CSの結果から、最新のメタゲームを分析していきます。   メルボルン 優勝:ディミーアミッドレンジ2位:ラクドスミッドレンジ3位:オルゾフピクシー4位:グルール昂揚5位:イゼット果敢6位:ジェスカイ眼魔7位:イゼット果敢8位:ジェスカイ眼魔   優勝を争ったのはなんとディミーアとラクドスのミッドレンジ対決!   ジェスカイ眼魔とイゼット果敢はトップ8の準々決勝で全員が破れ、ミッドレンジたちが勝ち上がりました。   ミッドレンジ界の頂点に立ったのはやはりディミーアミッドレンジ。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   なぜミッドレンジ対決においてディミーアは強いのか?その答えは何と言っても《永劫の好奇心》です。 自軍クリーチャーの攻撃が通るだけで1ドローという性能を持つ4マナ4/3瞬速。それだけで脅威にもかかわらず、除去してもエンチャントとして戦場に残るので、完璧に処理するには追放か、除去+エンチャント破壊しかありません。   《永劫の好奇心》を放置するには戦場のクリーチャーを根こそぎ処理するしかないのですが、そんなことは到底現実的ではありません。《遠眼鏡のセイレーン》《フラッドピットの溺れさせ》《大洞窟のコウモリ》などの小粒なクリーチャーから、《分派の説教者》《黙示録、シェオルドレッド》《悪夢滅ぼし、魁渡》と、強力な生物まで揃っています。 ミッドレンジ対決はアドバンテージの稼ぎ合いとなるため、《永劫の好奇心》を採用できることこそ、ディミーアミッドレンジがミッドレンジ界の王たるゆえんなのです。 さて、そんなディミーアに決勝で敗れてしまったものの、大健闘を見せたのがラクドスミッドレンジ。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   ミッドレンジの中でも少し攻撃的なミッドレンジといったところでしょうか。2ターン目から《大洞窟のコウモリ》で手札破壊をする他、《逸失への恐怖》《太陽の執事長、インティ》といった2マナでリソースを稼ぐ攻めカードが採用されています。 4枚採用されている《すりのチビボネ》は相手の墓地野パーマネント・カードを唱えられます。《強迫》で《不浄な別室+祭儀室》を落として奪ったり、クリーチャー同士の相打ちで墓地が溜まったところに出すと、1マナ域とは思えないプレッシャーになります。 とはいえ、所詮は1/1のクリーチャー。接死で相打ちを取るのが主な役割なのですが、このデッキではその《すりのチビボネ》を活かすことができます。   《運命を笑う者、アリーシャ》によって。 このターンに攻撃していると誘発する強襲能力で、墓地から《運命を笑う者、アリーシャ》のパワー以下のマナ総量のクリーチャーを墓地から吊り上げることができます。戦場に出したターンは大体パワー2なので、2以下のクリーチャーをリアニメイトできるというわけです。   《逸失への恐怖》《太陽の執事長、インティ》、《大洞窟のコウモリ》に《すりのチビボネ》とよりどりみどりです。 特に《すりのチビボネ》は相手も積極的に止めたいカードなので、墓地に落ちていることが多く、《運命を笑う者、アリーシャ》で何度も釣られるとうっとうしくて仕方がないでしょう。 1~2ターン目からクリーチャーを展開し、除去されたカードを《運命を笑う者、アリーシャ》で釣り上げると、まず《運命を笑う者、アリーシャ》がマスト除去になるので、釣ったクリーチャーは残ってくれます。1対1交換を繰り返して勝利を目指すミッドレンジの動きが攻撃的に行えるというわけですね。 《ギックスに拾われし者、ミシュラ》と《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》のコンビを採用しているのも実に面白い! 《ギックスに拾われし者、ミシュラ》はクリーチャーで攻撃するとライフをドレインできるので、クリーチャーがたっぷり入ったこのデッキではかなりのダメージが期待できます。 一方、リソースを稼ぐのが《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》。蘇生時に手札を捨てて3枚引くのが基本的な使い方なのですが、実は墓地から戦場に出ると能力が誘発するので、《運命を笑う者、アリーシャ》で墓地から戦場に戻しても良いのです。 マナ総量は3なので、《運命を笑う者、アリーシャ》に+1/+1カウンターが1つでも乗っていれば《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》をリアニメイトでき、非常に強力な動きとなります。 もちろんゲームが長引いて合体すれば、戦場に出た瞬間に盤面や相手の手札に干渉するので大体勝利です。 とても革新的なリストで、見事2位にまで上り詰めました!   中国 優勝:アゾリウス全知2位:イゼット果敢3位:オルゾフミッドレンジ4位:イゼット果敢5位:グルールアグロ6位:赤単アグロ7位:アゾリウス全知8位:アブザンピクシー   一方、中国の地域CSではアゾリウス全知が優勝を収め、トップ8にも駒を進めています。   赤アグロはイゼット果敢が2人に赤単・グルールのハツカネズミ軍団たちも残り、大活躍と言ったところ。   単色・2色のデッキたちがトップ8を独占する中、一人息を吐いたのがアブザンピクシー。バウンス軸のデッキとして唯一の入賞です。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》の8枚のバウンスで、《望み無き悪夢》《逃げ場なし》《勢い挫き》を戻して再利用するセルフバウンス系統のデッキ。 《一時的封鎖》まで採用されており、《一時的封鎖》で自分の《養育するピクシー》《望み無き悪夢》などを追放し、《陽光真珠の麒麟》で《一時的封鎖》を回収。すると自分で追放していた《望み無き悪夢》なども戻り、更に《養育するピクシー》で《陽光真珠の麒麟》を回収できるので、《一時的封鎖》を使い回し続け、《望み無き悪夢》《勢い挫き》などを何度もぐるぐる回せるようになります。 ここまではオルゾフピクシーと同じですが、アブザンは緑を足し、強力なクリーチャーたちを採用できます。   手札破壊を行うのが《絶縁の僧侶》。戦場から離れると、追放したカードのマナ総量分のサイズを持つクリーチャーを相手に献上しますが、《難題の予見者》のように相手にカードを引かせないのがポイントです。《絶縁の僧侶》が対処されても失った手札は回復しないのです。 デッキには大量に除去が入っていますし、トークンは《一時的封鎖》でまとめて処理できるのでさほど困りません。特にアゾリウス全知のような除去が効かないデッキに対しては、手札で除去が腐り続けるので、《絶縁の僧侶》から出たトークンを対処するのにぴったりです。 そしてアブザンピクシーを支える強力な4マナ域、《ヤサンの街道見張り》。カードを4枚切削してマナ総量が3以下のクリーチャー・カードを戦場に戻せるので、《絶縁の僧侶》で手札破壊を行ったり、余裕があれば《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》を吊り上げて、《ヤサンの街道見張り》を回収し、更なる展開を望めます。 以前までのアブザンピクシーには《遊撃サイ》が入っていたスロットには、《名もなき都市の歩哨》が採用されています。 3/3/4のスタッツは《遊撃サイ》と同じですが、地図で4/5へサイズを上げたり、ドローの質を向上できるなど、ライフドレインの《遊撃サイ》に比べて、用途が広いのが《名もなき都市の歩哨》です。警戒なので攻守に渡って優れており、赤アグロの多い環境なら非常に強いカードです。 1枚採用の《カルシの帰還者》もセンスが光るチョイス。《名もなき都市の歩哨》の地図、《ヤサンの街道見張り》の切削と、墓地で誘発するカードには価値があります。《名もなき都市の歩哨》が《カルシの帰還者》の相続を受けたらもう勝ったも同然!1枚入れるだけで切削にバリューが生まれるので、アブザンピクシーを使うならぜひ1枚は採用したいですね。 決勝ラウンドでは振るわなかったものの、赤単・イゼット果敢キラーとして本トーナメントで活躍したアブザンピクシーは、これから数が増えてくるかもしれませんね。   先週末はミッドレンジが大活躍!果たしてここからスタンダードのメタゲームはどのように変化していくのでしょうか。

【今週のピックアップデッキ】グルール昂揚/ディミーア忍者ローグ/ハンマータイム

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.05.09

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ グルール昂揚 ディミーア忍者ローグ ハンマータイム   グルール昂揚 チャンピオンズカップファイナル : 11位 By Shintaro Ishimura MTGアリーナ用インポートデータ チャンピオンズカップファイナルではイゼット果敢4人に赤単アグロ2人と、2種の赤アグロがトップ8に入賞しましたが、それらとは異なる形の赤アグロが、プロツアーの権利を獲得できる9勝3敗の成績を収めていました。   それがグルール昂揚です。   4種のカードタイプを墓地に揃えることで達成される昂揚。かなり難しい条件のため、昂揚条件を達成した際は大きなボーナスが用意されています。   《継ぎ接ぎのけだもの》は昂揚すれば1マナ3/3の《野生のナカティル》相当のクリーチャー!アップキープの切削と、自身がアーティファクト・クリーチャーなので、昂揚を助けてくれるナイスな1マナ域です。 様々なフォーマットでお馴染みの《逸失への恐怖》も、ディスカードを持ちつつ、エンチャント・クリーチャーとして墓地でも昂揚に貢献します。 昂揚していると2マナ4/3速攻トランプルと破格の性能を持つのが《野火の木人》。このカードがグルール昂揚のスピードを上げてくれています。やはりアーティファクト・クリーチャーなので昂揚を達成しやすいのも〇。 そして最後の昂揚カードは《暴力的衝動》。こちらはクリーチャーではありませんが、たった1マナでクリーチャーに二段攻撃を付与するすごいインスタントです。トランプルを持つ《野火の木人》と組み合わせた時の破壊力はピカイチ。《逸失への恐怖》で2回攻撃も発生するので、二段攻撃と組み合わせると実質4回攻撃になりますね。 さて、昂揚のバリューが高いことがわかったところで、肝心なのは昂揚の達成手段です。   《野火の木人》に《逸失への恐怖》と質の高いクリーチャーが2種のカードタイプを持っているのはわかりましたが、それをどのように墓地に落とすのか。   ここで最近引っ張りだこの《光砕く者、テルサ》が光ります。 3マナ3/3速攻の優れたスタッツに、カードを2枚捨てて2枚引く能力がついているため、昂揚に必要なカードを墓地に落としつつ、攻撃していけます。以前まではこのスロットが《蓄え放題》《浚渫機の洞察》といった戦場に影響を及ぼさないカードだったので、積極的に攻撃したいグルール昂揚と少し合わなかったのですが、非常に攻撃的な《光砕く者、テルサ》が加入したことで、デッキがグッと締まりました。 グルール昂揚でしか使えない超強力なソーサリーと言えば《脱走》。たった2マナで、ライブラリー上6枚から2マナ以下のクリーチャー・カードを速攻を持った状態で戦場に出せます。非常に強力なカードではあるものの、中々活きるデッキがないのですが、グルール昂揚とはかなり相性が良いのです。特に《逸失への恐怖》を出して速攻で攻撃し始めると、予想外からのリーサルが発生する場合も。ソーサリーカウントとしても優秀です。 《鋭い目の管理者》は昂揚能力は持ちませんが、4種類のカードタイプを追放すると+4/+4トランプルになる2マナ3/3。どちらかと言えばそのパンプ能力よりは、墓地追放がメインの使い方となっています。 ジェスカイ眼魔はもちろん、《嵐追いの才能》が入っているイゼット果敢などにも墓地追放は効きますし、昂揚を満たすことを前提にしたデッキなので、自分の墓地を追放して7/7トランプルを作りやすく、今回の隠れMVPかもしれません。   他の赤アグロと一味も二味も違うグルール昂揚、ぜひお試しください。     ディミーア忍者ローグ パイオニアリーグ : 5-0 By  season_urb MTGアリーナ用インポートデータ かつてスタンダードで最強のデッキだったローグ。 《盗賊ギルドの処罰者》で相手のライブラリーを切削し、《空飛ぶ思考盗み》などと共に殴り勝つも良し、相手をライブラリーアウトさせたり、《物語への没入》と《夢の巣のルールス》でコントロールするなど、様々な勝ちプランを持っている、とてもいやらしいデッキでした。 最近では青黒系のアグロデッキと言えば忍者になっていましたが、今回はならず者が久しぶりにパイオニアで勝利しました!   パイオニアならではのならず者をご紹介しましょう。忍者にも入っている《フェアリーの悪党》ですね。戦場に出た時に他に《フェアリーの悪党》がいれば1ドローできる忍者です。《マネドリ》との相性がバッチリで、《フェアリーの悪党》のコピーとして場に出してカードを引けます。 その《マネドリ》のコピー対象が増えたのがディミーアローグの魅力です。《盗賊ギルドの処罰者》をコピーすると、ならず者を出した時の切削枚数が4枚に増えます。1枚の《盗賊ギルドの処罰者》ではライブラリーの心配は必要ありませんが、倍になれば話は別です。 《空飛ぶ思考盗み》はローグのキーパーツ。《フェアリーの悪党》《マネドリ》など軽いならず者にパワー修正を与えれば一気に脅威になりますし、《マネドリ》でコピーすれば修正値と切削枚数もとんでもないことになります。 そしてこれらのローグ軍団と手を組むのが忍者たち。   《月回路のハッカー》《悪夢滅ぼし、魁渡》の2人の忍者はいずれも忍術でクリーチャーを手札に回収することができます。ならず者を戻して出し直せばそのたびに《盗賊ギルドの処罰者》が誘発しますし、序盤は《フェアリーの悪党》をコピーしていた《マネドリ》を拾い、更に強い別のクリーチャーのコピーに変えられます。 ならず者でも忍者でもありませんが、《フラッドピットの溺れさせ》は忍術と相性の良いクリーチャー。ブロッカーをタップしながら攻撃を通して忍術ができて、しかも能力も再利用できるので、《悪夢滅ぼし、魁渡》を使うデッキなら《フラッドピットの溺れさせ》は必須ですね。 従来のディミーア忍者に比べて、ローグ成分が加わったことで、特に攻撃面が更に強化されました。   《空飛ぶ思考盗み》による全体強化に1マナ3/2の《盗賊ギルドの処罰者》はライフを削る性能が高いだけでなく、ライブラリーアウトという新たな勝ち手段も作れます。ライフをなかなか削れないコントロールなどにはかなり現実的な勝ち筋です。   守りの観点から見ても《盗賊ギルドの処罰者》は決して悪いカードではありません。相手の墓地が溜まれば1マナ3/2接死なので、サイズの小さいこのデッキでは貴重な相打ち要因となります。 忍者から更に攻撃的になったディミーアローグ、忍者がお好きな方はいかがでしょうか。   ハンマータイム モダンリーグ : 5-0 By  aspiringspike 《巨像の鎚》を《シガルダの助け》でつけて殴るコンボ要素のあるアグロ、ハンマータイム。 シンプルな戦略で最速2ターンキルも可能なハンマータイムは、当初はファンデッキでしたが、《ウルザの物語》加入後は様々な戦略を取ることが可能となり、一気にメタデッキの仲間入りを果たしました。 そんなハンマータイムの新たな形が、赤を入れたこのボロスカラーのハンマータイム。加わった赤いカードは……色々なフォーマットで暴れているあの装備品です。   そう、《コーリ鋼の短刀》です。 《コーリ鋼の短刀》でモンクを生成するためには継続的にスペルを2回唱える必要がありますが、当然毎ターンカードを2回使用すると、手札がなくなってしまいます。そのため、キャントリップや《食糧補充》など、カードを引き続けられる青と組み合わせて使われることが多いので、赤白で採用されるのは少し珍しいですね。 0マナのアーティファクトは《オパールのモックス》と《ミシュラのガラクタ》で8枚入っており、2ターン目に《コーリ鋼の短刀》を出してそのままモンクを生み出すことができます。 更にデッキ内のほとんどが1マナ以下なので、手札がある限りはモンクは誘発させ続けられるでしょう。   肝心のカードを引く手段ですが、《純鋼の聖騎士》がハンマータイムにはあります。装備品が戦場に出ると1ドローなので、2つ装備品を出せば、手札を失うことなく、モンクトークンが出てきて、しかもそのモンクに装備品を即つけられます。 このデッキが面白いのは、《コーリ鋼の短刀》の装備品としての性能が噛み合っている点です。《巨像の鎚》をつけたクリーチャーがチャンプブロックされて何もできないことはよくありましたが、《コーリ鋼の短刀》のトークンに《巨像の鎚》をつければ12/12トランプルでブロックを許しません。 速攻で攻撃できるのも大きなメリットで、これまで盤面のクリーチャーをすべて対処された場合、どうしても攻撃するまでに1ターンのラグが発生していましたが、除去で盤面を空にされても《コーリ鋼の短刀》のトークンに様々な装備品をつけて一撃で相手のライフを0にできます。   クリーチャーがいないと意味がない装備品と、クリーチャーを供給しつつ速攻を付与する《コーリ鋼の短刀》の相性はとても良いのです。   《鷹持ち、カサンドラ》はデッキから《レオニダスの槍》を場に出すクリーチャーで、その《レオニダスの槍》の付け先として最適。とはいえ、出して2マナを払って装備するのは中々モダンでは難しい。 その装備コストを《純鋼の聖騎士》で0にしたり、《シガルダの助け》で自動装備できる状態になるとしたら話は別です。《鷹持ち、カサンドラ》を出して《シガルダの助け》で《レオニダスの槍》を装備し、速攻で殴って二段攻撃付与、ダメージを通して《鷹持ち、カサンドラ》の能力で2ドローと、装備コストを踏み倒せるだけで《鷹持ち、カサンドラ》の動きはすさまじくなります。 《龍火の刃》は《ウルザの物語》からサーチすることも可能な装備品。装備コストは重いものの、単色からの呪禁と+2/+2を付与でき、一度装備すれば《孤独》《致命的な一押し》をはじめモダン環境の様々な除去を受けなくなります。 《鷹持ち、カサンドラ》への装備コストは2マナなものの、他のクリーチャーには基本的に3マナ必要ですが、こちらも《純鋼の聖騎士》《シガルダの助け》で踏み倒せるため、ただただデメリットのない超狭量な装備品となります。 《オパールのモックス》解禁によって大幅な強化を受けたものの、いまだトーナメントではさほど活躍できていなかったハンマータイムですが、近頃リーグでの5-0数も増えてきており、これから最前線に復帰していくかもしれませんね!

懐かしの相棒・ティムールカワウソと共に挑んだチャンピオンズカップファイナル

Standard ピックアップ

2025.05.08

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 こんにちは!   ゴールデンウィークはチャンピオンズカップファイナルに参加していました。   結果から先に報告すると、8勝4敗で27位、賞金100ドルと《ティシャーナの潮縛り》ゲットと、プロツアーまで後1勝足りませんでした。   今回はチャンピオンズカップファイナルで使用したデッキと、スタンダードの調整過程をお話していきます。   目次 スタンダードおさらい イゼット果敢の調整 イゼット果敢の弱点 懐かしの相棒ティムールカワウソとの再会 ティムールカワウソについて 本戦結果 シミックテラーについて 終わりに スタンダードおさらい 『タルキール:龍嵐録』が発売し、スタンダード環境は一変しました。   そう、様々なフォーマットを揺るがす《コーリ鋼の短刀》が現れたためです。下フォーマットでは2ターン目からモンクをもりもり生み出すカードですが、スタンダードでも超強力なカードです。 最も影響を受けたデッキはエスパーピクシーでしょう。僕はエスパーピクシーが大好きで、前環境のエリア予選をエスパーピクシーで突破しました。赤系アグロに強く、ある程度の速度を兼ね備えつつ様々なゲームプランが取れるのが魅力的で、よっぽどのことがない限りはエスパーピクシーを調整する方向で行こうと、半ば決めていました。 しかし、それは起きました。《コーリ鋼の短刀》はエスパーピクシーにとって癌となるカードだったのです。呪文を2回唱えるだけでモンクトークンが出てきてしまう《コーリ鋼の短刀》を、エスパーピクシーでは触ることがほとんどできません。赤アグロに対して除去を回収して使い回すという戦略が、《コーリ鋼の短刀》には通用しないのです。 《コーリ鋼の短刀》の強さに屈服した僕は、すぐにエスパーピクシーを諦め、《コーリ鋼の短刀》を使う側に回ることにしました。モダンでも《コーリ鋼の短刀》を使い倒してその強さはもう既に理解していましたしね。   そしてすぐに、イゼット果敢こそが最も《コーリ鋼の短刀》を強く使えるデッキであることを確信しました。   イゼット果敢は《僧院の速槍》《精鋭射手団の目立ちたがり》《嵐追いの才能》《コーリ鋼の短刀》の果敢軍団を、《選択》《手練》《食糧補充》で強化していくデッキ。このデッキの最大の魅力は、単体除去に強いデッキである点。 《嵐追いの才能》《コーリ鋼の短刀》はいずれも果敢クリーチャーを生み出すカードでありながら、それだけにとどまらないカードです。《嵐追いの才能》はレベルアップで《食糧補充》や除去を回収できますし、《コーリ鋼の短刀》は繰り返しトークンを生成できます。これらのカードに除去を打つことは損です。 しかし、《僧院の速槍》《精鋭射手団の目立ちたがり》にはしっかり除去は当たります。というより除去しなければあっという間に負けてしまいます。そのため、相手はイゼット果敢相手に除去を抜けず、むしろ増やして、しっかり初手にキープしておく必要があります。 そんな除去を構えている相手を尻目に、《食糧補充》で手札を増やしたり、《コーリ鋼の短刀》をキャントリップで誘発させて、相手の除去と交換させることができるのです。 イゼット果敢の調整 イゼット果敢が強いということはわかったので、まずは流行っているリストを回してみました。   クリーチャーが《僧院の速槍》《精鋭射手団の目立ちたがり》だけのオーソドックスなタイプから、《精鋭射手団の目立ちたがり》を抜いて《かまどの精》を入れ、《巨怪の怒り》も抜いたコントロール型など、様々なリストがありました。 結論としては、《精鋭射手団の目立ちたがり》と《巨怪の怒り》はどちらも必要でした。   《精鋭射手団の目立ちたがり》はミラーマッチの《噴出の稲妻》で焼かれてしまう、とても場持ちの悪いクリーチャーです。《潜水》などで《精鋭射手団の目立ちたがり》を守る手段もないので、基本的には除去を避けることはかないません。1マナで除去を喰らうので、《呪文貫き》で除去をカウンターするのもさほど現実的ではないためです。 それでも《精鋭射手団の目立ちたがり》は強力なカードでした。ミラーマッチでも一度《巨怪の怒り》さえつけてしまえばタフネスが3になり除去されにくくなりますし、単体での打点はずば抜けているので、後手番で《コーリ鋼の短刀》に殴られている状況など、不利な状態から差し切る際には必要です。   また、ドメインなどのコントロール系のデッキに対しては、全体除去の返しに《精鋭射手団の目立ちたがり》から一気にダメージを叩く場合もあり、イゼットミラーにおける除去されやすい欠点を補って余りあるメリットがこのカードにはあると思いました。   《巨怪の怒り》は絶対に必要なカードで、これを一瞬でも抜いていたことを悔やみました。特にミラーマッチではサイズが上がるのは優秀ですし、除去を構えてくる相手に対してサイドアウトすることもまずありませんでした。瞬間的な打点が一番上がるカードで、《食糧補充》から《巨怪の怒り》を取って打点を計算する動きは、さながらコンボデッキのようです。 自らの浅さを再認識しつつ、その上でミラーマッチで強いカードを探すことにしました。   そうして辿り着いたのが《ドレイクの孵卵者》。 イゼット果敢のメインボードに採用されている除去は《噴出の稲妻》なので、タフネスが3のクリーチャーを処理するのは大変です。そのため、《ドレイクの孵卵者》は戦場に定着しやすいカードです。 《塔の点火》の協約で焼かれてしまいますが、1マナ構えて果敢を誘発できるようにすればそれもケアできます。   更に《ドレイクの孵卵者》は攻防において優れたクリーチャーです。《巨怪の怒り》を打てばパワーが5になるので、もう1回スペルを唱えるとドレイクを即座に2体生成できるようになります。更に本体が2/4と非常に硬く、警戒をもあるので相手の攻撃をある程度けん制できます。 出てくるドレイクも《精鋭射手団の目立ちたがり》を止められるなど、ミラーでは優秀なカードだと判断しました。   イゼット果敢の弱点 こうしてミラーマッチへの意識もしっかりとし始めたところで、課題となったのが2つ。   1つは《一時的封鎖》でした。《ドレイクの孵卵者》を入れるようになったせいで《一時的封鎖》がとにかく刺さるのです。《精鋭射手団の目立ちたがり》を計画する代わりに2マナ域をポン出ししているのですから、それも仕方ありません。 《コーリ鋼の短刀》はトークンごと奪われ、《嵐追いの才能》もなくなってレベルアップによる回収が使えなくなります。 もう1つは《真昼の決闘》です。 1ターンに1回しか呪文を唱えられなくなるので、当然《コーリ鋼の短刀》は誘発しなくなり、果敢軍団の攻撃力も半分以下に落ちてしまいます。 そして大きな問題点として、これらのカードが同じデッキに採用されていることがあるのです。具体的のはドメインオーバーロードなどです。 更にそれらのデッキは《跳ねる春、ベーザ》などでライフも回復してきます。なので《食糧補充》などでゆっくりとリソースを取っていてもなかなかライフが削れず、《ミストムーアの大主》などですぐに殴ってきます。 《一時的封鎖》《真昼の決闘》は、イゼット果敢を使うならかなり意識しなければならないカード。いかに攻略するかが命題となりました。   懐かしの相棒ティムールカワウソとの再会 《一時的封鎖》《真昼の決闘》は共にエンチャントなので、エンチャントを破壊するのが手っ取り早いのですが、残念ながら青赤にはそんな便利なカードはありません。そこで考えたのが緑タッチ。 緑には《脚当ての陣形》をはじめ優秀なエンチャント破壊がいくつもありますからね。とはいえ、ただイゼットに緑をタッチすることはできません。境界ランドの都合から、青赤に緑を少しだけ入れることはできなかったのです。基本土地が減るとそれだけ境界ランドが2色出づらくなってしまいます。 それなら逆に最初からティムールで考えてしまおうと思いました。ティムールで呪文を何度も使うデッキと言えば、そうティムールカワウソ! そう思い、ティムールカワウソで《コーリ鋼の短刀》を試してみたところ、その相性の良さに驚きました。 元々《渓間の洪水呼び》のコンボ以外では《嵐追いの才能》ビートダウンと《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》ハメ以外の勝ち手段しかなかったティムールカワウソですが、《嵐追いの才能》ビートには当然《嵐追いの才能》が必要で、速やかにライフを削る手段があまりありませんでした。 そこに《コーリ鋼の短刀》が加わったのです。これで《嵐追いの才能》を引かずとも、《コーリ鋼の短刀》でライフを削れるようになりました。   しかも《コーリ鋼の短刀》から出るモンクトークンは《永劫の活力》でマナを出せるので、クリーチャーがどんどん出てくる《コーリ鋼の短刀》自体がティムールカワウソに合っています。 《コーリ鋼の短刀》の継続的な誘発も問題ありません。《手練》《選択》は入っていませんが、《薮打ち》《花粉の分析》の土地サーチカードたちで《コーリ鋼の短刀》を誘発させられますし、《この町は狭すぎる》も4枚採用なので、2回の誘発に困ることはありません。 更に、当時は存在すらしていなかった《食糧補充》もデッキに非常に噛み合います。《この町は狭すぎる》《永劫の活力》のいずれかを求めることが多かったのですが、どちらも探せる《食糧補充》はマスターピース。 《花粉の分析》の証拠収集を稼ぐ手段としても、《食糧補充》は悪くありません。以前までは《この町は狭すぎる》で5マナは稼げても、後の3マナが大変でしたが、《食糧補充》がちょうどそのマナを埋めてくれるので、《この町は狭すぎる》《食糧補充》だけで《花粉の分析》の証拠収集を満たせるようになったのです。   ティムールカワウソについて ティムールカワウソは、イゼット果敢のような果敢ビートダウン要素を持ちながら、《コーリ鋼の短刀》を意識してきたデッキには別の勝ちプランを用意できるデッキです。それが最大の魅力です。 《コーリ鋼の短刀》に強い《一時的封鎖》、ある程度ライフを削った後に出てくる《跳ねる春、ベーザ》。どちらもイゼット果敢に強いカードではありますが、ティムールカワウソにはそれらのカードは効きません。 《コーリ鋼の短刀》を対処できる除去コントロール、要するにオルゾフピクシーのようなデッキをイゼット果敢は苦手としていますが、ティムールカワウソはそういったデッキに対して、《コーリ鋼の短刀》にもクリーチャーにも頼らない勝ちパターンがあります。《食糧補充》で《トーテンタンズの歌》と《渓間の洪水呼び》を集めて一気にバーストダメージを出せます。無限コンボも内蔵されているので、《跳ねる春、ベーザ》で何点回復されようと怖くありません。 イゼット果敢対ティムールカワウソの対決では、色が多い分、ティムールカワウソの方が事故りやすくはなっているものの、入っているカード自体は強力。しっかり回れば十分勝てる相手です。   イゼット果敢と戦えつつ、イゼット果敢キラーのデッキたちを狙い撃ちしたデッキ、それがティムールカワウソです。   メインに《渓間の洪水呼び》は1枚しか入っていませんが、《花粉の分析》《食糧補充》で探せますし、コンボ以外では必要のないカードなので問題ありません。《コーリ鋼の短刀》による果敢ビートダウンがあくまでメインで、そこに絡まないカードは最小限の枚数となっています。 《渓間の洪水呼び》が必要なマッチ=《コーリ鋼の短刀》で勝ちづらい相手(コントロール)なので、そういった戦いは長引き、1枚の《渓間の洪水呼び》と2枚の《トーテンタンズの歌》を揃える余裕が十分にあるのです。   本戦結果 〇×〇 ディミーアミッドレンジ×〇〇 オルゾフピクシー×〇〇 ドメイン×〇× ジェスカイ眼魔〇〇  アゾリウスアーティファクト〇〇  オルゾフピクシー〇×× 赤単×〇× イゼット果敢〇×〇 ディミーアミッドレンジ〇×× イゼット果敢〇×〇 ボロスモニュメント〇〇  赤単アグロ   最初にお伝えした通り、本戦結果は8勝4敗。   結果はまずまずでしたが、イゼット果敢には2回当たって2回負けとふがいない成績。   1回目のイゼット果敢はかなり良い勝負でしたが、色マナ関連の事故で敗北。このデッキの弱いところがモロに出た形となってしまいました。   もう1つのイゼット果敢については、《コーリ鋼の短刀》を2枚並べて誘発できない不ヅキに見舞われて比較的有利だったゲームを落としてしまい、3本目はダブルマリガンによってなすすべなく敗北。展開的には勝てそうだっただけに非常に悔やまれます。 とはいえ、オルゾフピクシーには2回当たって2回勝ちましたし、ドメインにもしっかり勝利でき、イゼット果敢を意識してきた相手には想定通りすべて勝てており、そこに関しては満足しています。   誤算は赤単アグロの《魔道士封じのトカゲ》でした。ただでさえ赤単アグロは相性が悪いのに、その上《魔道士封じのトカゲ》はあまりにクリティカル。75枚の内対処できるのが《この町は狭すぎる》と《薮打ち》のみで、《魔道士封じのトカゲ》入りの赤単には全く勝てる気がしませんでした。 もし次回参加するとしたら、《声も出せない》をサイドボードに何枚か採用すると思います。《叫ぶ宿敵》対策にもなりますし、対赤単には一番良さそうです。 本戦後の反省を踏まえたリストを掲載しておきます。 【MTGアリーナインポートデータ】 シミックテラーについて マジック大戦祭で使用したシミックテラーについても聞かれることが多かったので、軽く触れておきます。   シミックテラーは、ティムールカワウソを組んだ直後にボローニャの地域CSで見かけたデッキでした。   「《コーリ鋼の短刀》の誘発のためにメインで相手が2アクションを取り、モンクを誘発させてくるので、《渦泥の蟹》でテンポを取りやすい」と解説をしていて、なるほどと膝を打ちました。 マジック大戦祭はBO1スタンダードだったので、墓地対策をされることもありませんし、ちょうど良いと思って少し調整をして持ち込んだのですが、このデッキもそれなりに好感触でした。 まず《コーリ鋼の短刀》対策の《一時的封鎖》が全く効きませんし、ライフを削る力もあっという間なので生半可なライフゲインでは対処できません。 肝心の《コーリ鋼の短刀》を使うデッキにもそこまで不利には感じませんでした。サイド後に《石術の連射》を連発されるとさすがに終わってしまいますが、《トレイリアの恐怖》《渦泥の蟹》のサイズ差でイゼット果敢側を圧倒する展開が多かったです。 悩みの種の赤単にもバウンスを大量に入れていることでそこまで不利な印象はなく、デッキパワーは感じました。 《豆の木をのぼれ》に少し依存しているデッキではあるものの、《蓄え放題》《手練》で探せるので、そこまで気になりませんでした。 調整したBO3仕様のリストを掲載しておきますので、気になる方は使ってみてください。   ティムールカワウソが楽しすぎて今回は使用しませんでしたが、本戦で使う候補に挙がるぐらいには強かったです! 【MTGアリーナインポートデータ】 終わりに 実はチャンピオンズカップファイナルで2日目に進出したのは、僕が準優勝した一昨年の常滑以来でした。   今回はプロツアーに後1勝足りず残念な結果となってしまいましたが、久しぶりに2日目を戦えたことには少し安堵しています。次回は目指せトップ8、そして優勝!   来週はモダン神挑戦者決定戦で使用したジェスカイカッターの記事をお届けする予定です。 それではまた!

【週刊メタゲーム通信】日本ではイゼット果敢が大暴れ!一方アメリカではアゾリウス全知が大躍進

週刊 Standard ピックアップ

2025.05.07

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今回は、日本とアメリカで行われた地域CSの結果から、最新のメタゲームを分析していきます。   日本 優勝:オルゾフピクシー2位:イゼット果敢3位:黒単デーモン4位:イゼット果敢5位:イゼット果敢6位:赤単アグロ7位:イゼット果敢8位:赤単アグロ   日本で行われたチャンピオンズカップファイナル(地域CS)、一言で言うなら圧倒的な赤さ!!   トップ8の内6つが赤いデッキで、その内訳はイゼット果敢が4人、赤単が2人です。   今回最大勢力だったイゼット果敢は30%以上のプレイヤーが選択しており、アメリカの地域CSでも同様の結果となっていました。一番人気のデッキがトップ8の半数を占める結果となり、最強のデッキであることは明らかです。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   《僧院の速槍》《精鋭射手団の目立ちたがり》の8枚のクリーチャーに《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》を合わせた事実上の16枚のダメージソースを、《手練》や《選択》で強化し、《食糧補充》で追加リソースを獲得して継続的に打点を稼いでいくのがイゼット果敢。 ですが、この準優勝の芝田選手のリストのように、《ドレイクの孵卵者》を採用したイゼット果敢が本トーナメントでは散見されました。 ご覧のようにイゼット果敢にはメインに3点火力が入っていないことが多く、《ドレイクの孵卵者》を対処できるのは《洪水の大口へ》のみ。そのため非常に場持ちがよく、出てくるドレイクも《精鋭射手団の目立ちたがり》のブロッカーとして最適です。 更に《巨怪の怒り》との組み合わせでドレイクを生み出しやすくなるのも魅力です。一度タフネス4の《ドレイクの孵卵者》を作ってしまえばジェスカイ眼魔なども対処が難しいですし、《ドレイクの孵卵者》は黒以外のアグロデッキに対して強いカードとなっています。 今回は赤単にイゼット果敢と赤が非常に多いフィールドだったので、《ドレイクの孵卵者》は大活躍だったに違いないでしょう。 そんなイゼット果敢と共に今大会で相手のライフを脅かし続けたのが赤単アグロ。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   イゼット果敢登場までは赤アグロと言えばハツカネズミでした。もちろん《コーリ鋼の短刀》が登場してからも、赤単の強さは色あせていません。トップ8にしっかり2人が駒を進めています。 グルール・ボロスなど様々なバリエーションが存在する赤アグロですが、トップ8に残ったのはいずれも赤単。やはりライフレースとなるマッチにおいて色を増やすリスクは大きく、またサイドボードの《陽背骨のオオヤマネコ》を強く使えるのも赤単のメリットです。 《光砕く者、テルサ》は最近の赤単ではすっかり定番となった1枚。これまでドローする手段と言えば《探索するドルイド》程度しかなく、そのために緑をタッチするリストもありましたが、《光砕く者、テルサ》が入ってからは《探索するドルイド》に頼る必要はなくなりました。 《探索するドルイド》と違ってリソースが増えることはありませんが、手札に溜まった土地や除去を捨ててカードを探しにいけますし、墓地が7枚以上あれば墓地からカードを使用できる可能性もあります。   特にサイド後は《陽背骨のオオヤマネコ》を入れることになるのですが、《探索するドルイド》だと中々《陽背骨のオオヤマネコ》を唱えられないのが悩みどころでした。土地が3枚しかない状態で《陽背骨のオオヤマネコ》がめくれてしまい、そのまま追放される……なんて経験をした方も多いはず。 しかし、《光砕く者、テルサ》なら単純にドローなので《陽背骨のオオヤマネコ》が追放される心配はありません。本体性能も3マナ3/3速攻と十分強く、赤単の安定性に一役買ういぶし銀のカードと言えますね。   《魔道士封じのトカゲ》が今回の赤単にはどちらにも採用されていますが、これはイゼット果敢を強く意識したクリーチャーです。1/4というサイズはイゼット果敢は非常に対処しづらく、《抹消する稲妻》などの2マナ4点火力はまず入っていないため、3マナの《焦熱の殲滅》や2点火力2枚などでしか除去できません。 赤単を使うなら《魔道士封じのトカゲ》は4枚固定になりそうですね。   さて、そんな赤アグロの波を泳ぎきり、見事チャンピオンに輝いたのはオルゾフピクシーでした。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》の自分のパーマネントを手札に戻すセルフバウンスカードで、《望み無き悪夢》《逃げ場なし》《勢い挫き》を戻して、手札破壊や除去を行ってアドバンテージを稼ぐコントロールデッキです。 このデッキの最大の長所はなんといっても《一時的封鎖》を非常に強く使える点にあります。 《一時的封鎖》はもともと、イゼット果敢対策として注目されていたカードでした。ただの除去では《コーリ鋼の短刀》にはほとんど意味がなく、それがイゼット果敢対策を難しくさせている要因だったのですが、《一時的封鎖》はトークンごと《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》をすべて追放できるので、非常に強力です。 それをイゼット果敢側も理解し、メインに《洪水の大口へ》を複数枚採用するようになりました。8枚のキャントリップ+《食糧補充》でかなりデッキを掘り進められるため、2~3枚採用の《洪水の大口へ》をゲーム中に引くことはさほど難しくありません。 《洪水の大口へ》をターン終了時に唱えて《一時的封鎖》を手札に戻し、その時に帰ってきたカードで返しのターンで勝利、という流れは再現性が高く、《一時的封鎖》をイゼット果敢は克服していました。   しかし、オルゾフピクシーの使う《一時的封鎖》は事情が違います。   なぜならオルゾフピクシーは、《一時的封鎖》を有効活用するデッキだからです。《望み無き悪夢》《逃げ場なし》などの2マナ以下のパーマネントを出しておき、《一時的封鎖》で巻き込んでおき、《養育するピクシー》で《一時的封鎖》を戻してそれらのカードを使い回す。これがオルゾフピクシーの基本戦略の1つなのです。 《洪水の大口へ》で《一時的封鎖》を戻しても、《逃げ場なし》が帰ってきて亜《精鋭射手団の目立ちたがり》を除去されたり、《望み無き悪夢》で手札を枯らされては、返しで勝つことはできません。オルゾフピクシーの使う《一時的封鎖》は、ジェスカイコントロールや全知が使うそれとはまったく異なるカードだったのです。 かくして、イゼット果敢を《一時的封鎖》で完全に攻略したオルゾフピクシーは、トップ8を圧倒的パフォーマンスで駆け抜けていきました。なんとイゼット果敢3連戦を、全部ストレート勝ち!   イゼット果敢キラー、オルゾフピクシーが見事栄冠に輝いたのでした。   アメリカ 優勝:ジェスカイコントロール2位:ジェスカイ眼魔3位:イゼット果敢4位:アゾリウス全知5位:ジェスカイ眼魔6位:アゾリウス全知7位:イゼット果敢8位:アゾリウス全知   一方のアメリカは、日本と同じくイゼット果敢が最多勢力だったものの、トップ8に1人のみ。   その代わりにアゾリウス全知が3人、名を連ねています。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   最近流行のアゾリウス全知のリストは、ついに《アルケヴィオスへの侵攻》がデッキから抜けました。これまで《全知》を貼ってからの勝ち手段として採用されていた《アルケヴィオスへの侵攻》ですが、《全知》が出ていない状態では5マナのサーチと、今のスタンダードで使用に耐えうるものではなく、手札に溜まってしまうことがそのまま敗北に直結していました。 勝ち手段として今使われているのは《第三の道の創設》。最終的に《全知》によってすべてのカードが無料で唱えられるようになるので、デッキを全部掘り、《第三の道の創設》を出して切削の対象を対戦相手にし、《マラング川の執政》を出して《第三の道の創設》を回収。再び《第三の道の創設》で相手を切削し、《マラング川の執政》Bで《マラング川の執政》Aと《第三の道の創設》を回収。後はこれを繰り返して相手のライブラリーを0枚にすることで勝利となります。 《第三の道の創設》は普通に使用しても、1章で《決定的瞬間》を打ちながら2章で全知を落とし、3章で墓地に落ちた《アブエロの覚醒》をそのままキャストと、《アルケヴィオスへの侵攻》に比べて普段使いが非常に強いのが魅力です。   これまでのアゾリウス全知は《アルケヴィオスへの侵攻》などコンボパーツが多すぎるデッキでした。そのため、サイドから全知以外のゲームプランを用意しても、結局コンボ専用カードがデッキに多すぎるため、ほとんど機能することがなく、結局コンボに特化していました。そのため、《除霊用掃除機》などの墓地対策をクリティカルに喰らうだけで負けてしまう、脆弱なコンボデッキだったのです。 しかし、コンボパーツでもありドロースペルの《マラング川の執政》《乱動するドラゴンの嵐》など、普通のアゾリウスコントロールに入るスペックのカードが入ったことで、サイド後にコンボからアゾリウスコントロールに変わることが可能となりました。 《ミストムーアの大主》《跳ねる春、ベーザ》はそのために採用されており、サイド後は《除霊用掃除機》を出して《全知》をけん制する相手に、《跳ねる春、ベーザ》《マラング川の執政》《ミストムーアの大主》を叩きつけて勝利できます。 日本では残念ながら勝ちきれなかったものの、アゾリウス全知もかなり強化されてきており、非常に強いデッキです。今回の大躍進も頷けますね。   そしてトップ8に緑と黒が1人もいないという、とても偏ったアメリカの地域CSを制したのは、なんとジェスカイコントロール! 【MTGアリーナ用インポートデータ】   赤系アグロに対しては《一時的封鎖》《稲妻のらせん》《審判の日》《跳ねる春、ベーザ》。 ミッドレンジに対しては《三歩先》をはじめとした打ち消し呪文に《マラング川の執政》《食糧補充》のアドバンテージ軍団。 理論上最強のコントロールデッキが、見事アメリカの地域CSを制しました。   デッキの核となっているのが攻防一体の《道の体現者、シィコ》です。アグロ相手には《稲妻のらせん》などを使い回しつつ、飛行警戒4/5のスタッツで鉄壁。 ミッドレンジ・コントロールに対しては《食糧補充》を使い回してアドバンテージを稼ぎます。 親の仇と言わんばかりにアグロ対策を詰め込んだデッキなので、しっかり回ったジェスカイコントロールに勝てるアグロはこの世に存在しないかもしれません。   《稲妻のらせん》は赤いアグロが隆盛する現代においてキーとなるカードと言えますね。《道の体現者、シィコ》で使い回せるのが大きく、アグロ相手のゲームプランはまず《稲妻のらせん》からの《道の体現者、シィコ》になります。 イゼット果敢・赤単アグロを意識しているミッドレンジに対しても強いのがジェスカイコントロールの特徴です。たとえば日本の地域CS優勝のオルゾフピクシーは、ジェスカイコントロールには逆立ちしても勝てません。   《望み無き悪夢》で少し手札を捨てさせても《食糧補充》《マラング川の執政》《道の体現者、シィコ》ですぐリソースを回復され、ライフを削ろうにも《稲妻のらせん》で安全圏へ行き、クリーチャーは根こそぎ除去されてしまいます。 全対面有利。その言葉が過言でないことを、ジェスカイコントロールが優勝によって証明しました。   日本とアメリカ、メタゲームはほとんど同じにもかかわらず全く異なる結果となり、スタンダードの奥深さを実感させられました。

【今週のピックアップデッキ】ディミーア眼魔/4色レジェンズ/赤単ベルチャー

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.05.02

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ ディミーア眼魔 4色レジェンズ 赤単ベルチャー   ディミーア眼魔 スタンダードリーグ(4/29) : 5-0 By ajifly MTGアリーナ用インポートデータ スタンダードからモダン、時にはレガシーでも見かけることのある、超ハイスペッククリーチャー《忌まわしき眼魔》。 墓地を6枚追放するという重いキャスト条件があるものの、ひとたび戦場に出れば毎ターン戦慄予示であっという間に場を支配してくれます。   そして唯一の欠点である重いコストも、あくまでこれは唱える際に必要なものなので、唱えずに戦場に出してしまえば何も問題ありません。   そこで《忌まわしき眼魔》は、主に墓地から直接戦場に出てきます。   墓地からクリーチャーをよみがえらせる、いわゆるリアニメイト呪文は、条件のないものは《ゾンビ化》など4マナ以上である場合がほとんどです。レガシーで一線級の活躍をしている《再活性》はたった1マナでなんでも蘇生できますが、これは例外中の例外。《偉大なる統一者、アトラクサ》をたった1マナで釣り上げるカードは許されていいはずがありません。 しかし、逆に言えば条件付きならば軽いリアニメイト呪文はスタンダードにも存在します。特にマナ総量が3マナ以下のクリーチャーを吊り上げるカードは《救いの手》をはじめ1マナです。これはマナ総量が3以下のクリーチャーは基本的には支配力が低く、1マナで墓地から吊り上げる動きがさほど強力でないためです。 だからこそ《忌まわしき眼魔》を1マナのスペルでリアニメイトする動きは非常に強力です。実質《忌まわしき眼魔》は5~6マナ域の強さのカード。それをマナ総量が3のカードだから《救いの手》で釣り上げるのは完全に非合法の動きです。 モダンでは《発掘》で《忌まわしき眼魔》を吊り上げるディミーア眼魔、スタンダードでも《救いの手》を使ったジェスカイ眼魔が活躍しているわけですが、今回は新たな眼魔デッキをご紹介します。   それがディミーア眼魔。   墓地に《忌まわしき眼魔》を落として吊り上げるという部分は他の眼魔デッキと同じです。ただしスタンダードには《発掘》はないので、《誰も置き去りにしない》でリアニメイトします。 普通に使えば5マナの《ゾンビ化》ですが、マナ総量3以下のクリーチャーを釣る際には2マナになるので《誰も置き去りにしない》は実質《再稼働》。《救いの手》よりは重いですが仕方ありません。   5マナさえ払えば《ゾンビ化》なのでサイド後は《黙示録、シェオルドレッド》を復活させることも可能です。 墓地に落とす手段は《統合の福音者》と《蒸気核の学者》。カードを引いて捨てる、いわゆるルーター能力で墓地へと落としていきます。 そしてドロー・ディスカードによって墓地に《忌まわしき眼魔》を送り込むことから、相性の良いのが《プロフトの映像記憶》。ジェスカイ眼魔でも採用されているこのドローによって強化されているエンチャントを、ディミーア眼魔でも取り入れています。 《冬夜の物語》も《プロフトの映像記憶》と噛み合いながら《忌まわしき眼魔》を墓地に落とせるカードです。 面白いのは《鍾乳石の追跡者》。落魄することでターン終了時に成長していくこのカードは、ルーターによって土地などを捨てた時でもしっかりと誘発してくれます。《プロフトの映像記憶》と合わせてサイズを上げて大型クリーチャーを倒すなど、単純な戦闘以外の使い道があるのも良いですね。 サイドボードには手札破壊に《黙示録、シェオルドレッド》と、ジェスカイ眼魔では採用できないカードたちの姿が多数あります。特に《黙示録、シェオルドレッド》は赤アグロ全盛期の今、かなり注目されています。 青黒なら当然《悪夢滅ぼし、魁渡》も採用できますし、このカードはやはり凄まじい強さ。《誰も置き去りにしない》のために《除霊用掃除機》を出してきた相手に《悪夢滅ぼし、魁渡》忍術を決める動きはあまりにも気持ち良いですね。 《忌まわしき眼魔》を使い倒したい方、ジェスカイばかりではなくたまにはディミーアでいかがですか?     4色レジェンズ パイオニアリーグ(4/28) : 5-0 By  kanara38204 MTGアリーナ用インポートデータ このデッキは一体…?   初見でデッキリストを見て動きがわからないことはよくありますが、じっくり読み込んでもさっぱりわからないのは久しぶりかもしれません。   この4cレジェンズはとにかくその動きが謎に包まれています。   一つはっきりしているのは、《嘘の神、ヴァルキー》と《再覚醒したジェイス》のコンボが搭載されているということです。 《嘘の神、ヴァルキー》を《再覚醒したジェイス》で計画すると、《星界の騙し屋、ティボルト》として唱えることができます。この2枚コンボが採用されています。 このコンボは通常グリクシスコントロールのようなデッキに組み込まれる場合が多いですが、4cレジェンズは4枚の《闇の中の研究者、ナシ》と《策謀の予見者、ラフィーン》で果敢に殴っていくデッキです。 《闇の中の研究者、ナシ》は2マナでリソースを稼ぐクリーチャー。プレイヤーに与えたダメージ分、カードを切削し、そこからエンチャントと伝説のカードを好きなだけ回収できるので、このデッキなら1~2ドロー相当です。   そんな《闇の中の研究者、ナシ》を強化するのが《策謀の予見者、ラフィーン》。《闇の中の研究者、ナシ》はだんだんサイズが上がっていき、切削枚数が増えるカードなのですが、《策謀の予見者、ラフィーン》で強化してしまえば、攻撃していきなり4枚切削なんてことも。切削枚数が増えれば当然手札に加わる数は増えるので、大量のリソースを獲得できます。 《道の体現者、シィコ》は最もデッキ内で重いクリーチャー。墓地のマナ総量3以下のカードをコピーしてタダで唱えられるので、《思考囲い》や《致命的な一押し》などのスペルはもちろん、《策謀の予見者、ラフィーン》を戦場に出すことも可能です。 この伝説軍団たちと一緒に採用されているのが《不浄な別室+祭儀室》。一見するとデーモンがいないデッキに見えますが、実は《策謀の予見者、ラフィーン》がデーモンなので、《不浄な別室+祭儀室》との相性は良好です。 とはいえ、このデッキの《不浄な別室+祭儀室》はただ単に強力なカードとして採用されています。《致命的な一押し》《思考囲い》《不浄な別室+祭儀室》はそれだけで黒いミッドレンジを成立させるほどの強さを持つカードたち。特別なシナジーなど必要としていません。   エンチャントなので《闇の中の研究者、ナシ》で拾うことができるのは美味しいですね。 時にはハンデスと除去から《不浄な別室+祭儀室》を置いて勝ったり、またある時は《闇の中の研究者、ナシ》から《策謀の予見者、ラフィーン》で大量リソースを獲得したり、《道の体現者、シィコ》で粘り強く勝ったりと、同じデッキとは思えない顔を持っているのがこの4色レジェンズ。   すぐに同じデッキに飽きてしまう方にはオススメ!     赤単ベルチャー モダンリーグ : 5-0 By  slowbro1 デッキ内の土地を0枚にして《ゴブリンの放火砲》で一撃必殺を狙うコンボデッキ、ベルチャー。 『モダンホライゾン3』で大量の表面が呪文で裏面が土地の両面ランドが登場してからモダンでメタデッキ入りを果たし、現在は大量の打ち消し呪文を採用した青単ベルチャーが主流となっています。 今回ご紹介するのは、対照的なカラーである赤単ベルチャー。   両面ランドを入れて土地を0枚にして《ゴブリンの放火砲》を打つことは同じですが、それ以外はまったく青単と異なる動きを見せるのがこの赤単ベルチャー。   青単ベルチャーが土地を毎ターン置き、《睡蓮の花》から7マナで《ゴブリンの放火砲》を決めるのに対し、赤単は《発熱の儀式》《捨て身の儀式》でマナ加速して《ゴブリンの放火砲》キャストにこぎつけます。 《ゴブリンの放火砲》と最も相性の良いマナ加速が《アイレンクラッグの妙技》。4マナで7マナを生み出す規格外のマナ加速ができる代わりに、後1回しか呪文が唱えられなくなってしまうカード。《ゴブリンの放火砲》の設置は4マナ、起動は3マナなので、なんと《アイレンクラッグの妙技》1枚で《ゴブリンの放火砲》が打ててしまうのです。 そのため、2ターンキルも現実的です。《捨て身の儀式》《発熱の儀式》《アイレンクラッグの妙技》《ゴブリンの放火砲》、この4枚だけで2ターンキルです!   これらのマナ加速は基本的に2マナで3マナを生み出すので1マナ加速にしかなりませんが、《ルビーの大メダル》があれば1マナで3マナと、2マナ増える呪文になります。2ターン目に《ルビーの大メダル》を設置すれば3ターン目にセットランドから2回儀式を打つだけで7マナになるので、やはり《ゴブリンの放火砲》で勝利。《ゴブリンの放火砲》さえ引ければ3ターンキルは容易なデッキです。 《ゴブリンの放火砲》を引くためのドロースペルは《街道筋の強奪》《苦々しい再会》《不可能の一瞥》。青単ベルチャーが《稲妻罠の教練者》《ファラジの考古学者》《発明品の唸り》を使うことを考えると、少し心もとなく感じますよね。 その点はご安心ください。《ゴブリンの放火砲》は4枚しか採用できませんが、その代わりに追加のフィニッシャーが入っています。それが《嵐鱗の末裔》です。 6マナのストーム付きのドラゴンで、更に他のドラゴンを+1/+1するので、2体並べば5/5×2、3体なら6/6×3と、ストーム2で出しても致死量です。   先ほど紹介した《街道筋の強奪》と《苦々しい再会》はただのドロースペルではなく、《嵐鱗の末裔》を意識しています。《街道筋の強奪》を2ターン目に計画すれば、3ターン目の《嵐鱗の末裔》のストームを増やせますし、《苦々しい再会》で速攻を突ければ《嵐鱗の末裔》を出したターンにゲームを終わらせられます。   《アイレンクラッグの妙技》で赤マナを7つ出し、6マナから《嵐鱗の末裔》をキャスト、余った1マナで《苦々しい再会》を生け贄にして速攻パンチは美しすぎますね。 青単ベルチャーのように妨害を採用できない代わりに、とにかく速さに特化しているのがこの赤単ベルチャーなのです。   青単には効果的な《石のような静寂》は《嵐鱗の末裔》には無力だったりと、微妙に効くサイドカードが違うのも、赤単ベルチャーの魅力です。 その代わりに《嵐鱗の末裔》のストームと《ゴブリンの放火砲》を打ち消せる《記憶への放逐》が青単に比べてかなり効きやすくなっていますが、それをしっかりと理解しており、《防御の光網》を4枚サイドに用意しています。 一度2ターンキルを味わってしまえばもう青単ベルチャーには戻れなくなるかもしれませんよ?

【週刊メタゲーム通信】ヨーロッパ地域CSの結果から最新スタンダードを分析!

週刊 Standard ピックアップ

2025.04.30

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今週はヨーロッパ地域CSの結果を分析していきます! 参考データ メタゲーム ヨーロッパ地域CSで最大勢力となったのはイゼット果敢でした。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   様々なフォーマットで大活躍中の《コーリ鋼の短刀》を最も強く使えるデッキ。《僧院の速槍》《精鋭射手団の目立ちたがり》の単体の速いクロックに、《コーリ鋼の短刀》の横並び戦略は噛み合います。 《僧院の速槍》《精鋭射手団の目立ちたがり》を軸にデッキを組む場合、弱点となるのは当然単体除去となるのですが、一方で《コーリ鋼の短刀》は除去に対して強いカードだからです。 そしてこれらの果敢・疾風を誘発させるために《選択》《手練》《食糧補充》と青いドロースペルが最適で、その結果、イゼットカラーのデッキが最も《コーリ鋼の短刀》を使う上でベターな選択肢となっています。 179名のプレイヤーが選択したイゼット果敢はなんとトップ8に3人を送り込み、すべてが準決勝に駒を進め、そして決勝はイゼット果敢によるミラーマッチとなりました。   勝率を見ても、ジェスカイ眼魔とドメインオーバーロード以外のすべてのデッキに勝ち越しており、あまりに立派な数字です。今回イゼット果敢は事前に最大勢力であることが予想されており、そのため《真昼の決闘》をはじめ数々の対策カードが採用されていました。 にもかかわらずこの圧倒的なパーフォーマンス。スタンダードにおける最強デッキはイゼット果敢であることに、最早異を唱えるものはいないでしょう。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   2番手である赤単アグロもまた、トップ8に2人入賞となりました。赤いアグロデッキは大人気かつしっかりと成果をあげ、赤アグロ包囲網は今回完全に破られました。 とはいえ、赤単アグロは全体を通して見れば、さほど好成績というわけではありません。トップメタのイゼット果敢に負け越していますし、その下のエスパーピクシー・ジェスカイ眼魔にも大きく不利です。   それでもアゾリウス全知やズアーオーバーロードに非常に強く、またその有無を言わさぬスピードで、メタ外のデッキたちに強いのが特徴です。   こういったデッキはトーナメント終盤まで数多く残り、相性差によってその多くは散ってしまうも、一部が凄まじい回りを見せて決勝ラウンドに進むことになります。その結果が今回のようになるわけですね。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   さて、苦戦を強いられたのが、3番手のエスパーピクシーです。 エスパーピクシーはとにかく《コーリ鋼の短刀》が厳しいデッキ。単体除去を繰り返し使用し、《望み無き悪夢》で手札を奪いながらダメージレースを優位にしていくというデッキの構造上、無限にトークンが出てくる《コーリ鋼の短刀》とそのための《食糧補充》が苦手です。 赤単アグロにこそ勝ち越していますが、イゼット果敢には勝率44%ととどまっており、4番人気のジェスカイ眼魔に大きく不利がつき、トーナメント上位には残りませんでした。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   一方、アグロキラーと言われていたジェスカイ眼魔は4番手で、こちらはまずまずの成績。イゼット果敢・赤単アグロにはしっかりそれぞれ54%、61%を叩き出し、上位デッキだけを考えれば選択肢として十分上がるでしょう。 しかし、課題となるのはやはりドメインオーバーロード。《光砕く者、テルサ》によって《審判の日》の返しに《プロフトの映像記憶》込みで打点を出せるようになったとはいえ、根本的な相性改善には至っていません。 更に今回勝ち組だったディミーアミッドレンジとの相性が絶望的だったのも、ジェスカイ眼魔がトップ8に駒を進められなかった理由の1つでしょう。ディミーアはトップ8に2人残っていますし、トーナメント終盤で食われてしまいました。   《プロフトの映像記憶》4枚採用によりジェスカイ眼魔は《フェアリーの黒幕》《黙示録、シェオルドレッド》が非常に厳しく、ディミーアミッドレンジの復権に一役買ってしまう形となりました。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   5番手となったアゾリウス全知ははっきりと今週の負け組だったデッキです。 イゼット果敢・赤単アグロの両翼、その下のエスパーピクシー・ジェスカイ眼魔にしっかりと負け越しており、打ち消しを擁する青いアグロと赤い高速アグロが苦手という欠点がそのまま成績に現れてしまいました。 ただし、逆に今週はチャンスです。イゼット果敢・赤単アグロがここまで勝ったなら、今週は更に苛烈にメタられることが容易に想像できます。環境が遅くなればそれだけアゾリウス全知の勝率は上がってくるので、赤アグロが徹底的にメタられたフィールドになるなら、そこは全知にとっての楽園です。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   そんな遅いデッキの筆頭だったジェスカイコントロールですが、残念ながらイゼット果敢・赤単アグロに対して負け越しています。 対イゼット果敢に対しては47%と五分に等しいと言えば等しいですが、赤単には44%、ジェスカイ眼魔にも負け越しており、大きく勝ち越しているエスパーピクシーがこの後数を増やすとは思えないので、今週も厳しい戦いを強いられることになるでしょう。   しかし、《一時的封鎖》・《稲妻のらせん》とアグロに強いパーツを採用しているのがジェスカイコントロール。リスト次第では赤アグロに耐性がつけられるかもしれません。今は《三歩先》など大量にカウンターにスロットを割いていますが、そこがアグロ対策になれば、世界が変わりそうです。 戦略としてはジェスカイコントロールは今のメタゲームに合致しています。ほとんどのデッキがクリーチャーを出してライフを削ってくるので、《一時的封鎖》《稲妻のらせん》が効果的で、ジェスカイ眼魔に対しても《審判の日》があります。 《マラング川の執政》《道の体現者、シィコ》と攻めるカードもしっかりとあり、構成次第では化ける可能性が十分にあるデッキですね。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   さて、話題に上ったドメインオーバーロードは7番手。イゼット果敢に僅かに勝ち越していますが、ほぼ五分と言ってよく、《陽背骨のオオヤマネコ》が採用されている赤単には33%と悲惨な成績となっています。トップ8に1人が入賞しましたが、大健闘と言って良いでしょう。 アゾリウス全知というド不利マッチも存在しており、イゼット果敢に僅かに強いとはいえ、選択するのはリスクに思えます。   エスパーピクシー・ディミーアミッドレンジ・ジェスカイ眼魔と最上位のデッキ以外にはそれなりに勝率が出ていますが、イゼット果敢・赤単アグロが減ることはまずないでしょう。そういう意味では立ち位置としてはアゾリウス全知に近いと言えますね。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   たびたび話題にのぼるディミーアミッドレンジはというと、今回トップ8に2人を送り込んだ影の勝ち組。 《コーリ鋼の短刀》がとにかく辛く、イゼット果敢には勝率40%と不利ですが、赤単にわずかに勝ち越し、アゾリウス全知にそこそこ、ジェスカイ眼魔に大きく有利と、トップメタ以外のデッキに対しては勝率が出ています。 エスパーピクシーは今週更に数が減っていくことが予想されるため、ディミーアミッドレンジにとってはフィールドは良くなるでしょう。対イゼット果敢を克服するのは難しいでしょうが、イゼット果敢を狙うデッキたちを裏から狙っています。   予想 今週の勝ち組予想は変わらずイゼット果敢!トップ8に2人~3人は入ることになるでしょう。 ジェスカイ眼魔・アゾリウス全知は日本で人気のアーキタイプであることを加味すると、ヨーロッパよりも数が増え、トップ8に1人ずつは入りそう。 3:イゼット果敢1:アゾリウス全知1:ジェスカイ眼魔1:ドメインオーバーロード1:赤単アグロ1:その他デッキ   以上が僕のチャンピオンズカップファイナルのトップ8予想です!   僕も本戦に出場いたしますので、この予想が当たっているか、現地で確認したいと思います。   それではまた!

【今週のピックアップデッキ】アブザンピクシー/セレズニア檻/ブルードレッジ

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.04.25

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ アブザンピクシー セレズニア檻 ブルードレッジ   アブザンピクシー スタンダードチャレンジ(4/24) : 準優勝 By A_Turtle MTGアリーナ用インポートデータ 戦場に出た時に能力が誘発するパーマネントを回収して何度も再利用する、いわゆるセルフバウンス戦略は、今やスタンダードでは大人気のアーキタイプとなりました。 青いデッキなら《この町は狭すぎる》《孤立への恐怖》、白が含まれれば《養育するピクシー》に《陽光真珠の麒麟》と、青と白にそれぞれ複数のセルフバウンス系カードがあるため、すべてを贅沢に使ったエスパーピクシーだけでなく、オルゾフ・ディミーアと2色のセルフバウンス系デッキも活躍しています。 そんなセルフバウンスに、新たなカラーバリエーションが追加されました!   それがなんと白緑黒3色のアブザンピクシーです。   戻すカードはお馴染みの《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》の8枚。『タルキール:龍嵐録』のおかげで青を使わなくても8枚のバウンスカードをメインに採用できるようになりました。 《陽光真珠の麒麟》と相性の良いカードと言えば《悪意ある呪詛術士》。《陽光真珠の麒麟》は実はトークンをバウンスした時に1ドローできるので、《悪意ある呪詛術士》がつける役割をバウンスすることでカードが引けてしまいます。 《悪意ある呪詛術士》は役割をすぐに剥がすことができれば1マナ3/2というハイスペッククリーチャー。そのため、どちらかと言えば相手のライフを速やかに削るアグロデッキで使いたいカードです。   そんな《悪意ある呪詛術士》と一緒に相手のライフを削るのが《遊撃サイ》。戦場に出た時に2点ドレインしつつ、自身が3/4トランプルなので、ダメージレースで優位に立てます。タフネスが4なのでイゼット系デッキに1枚で処理されにくいのも魅力。 《絶縁の僧侶》は相手の手札を攻めるカード。相手の手札を見て好きなカードを追放します。《難題の予見者》のようなカードですが、自身が離れた時に相手にカードを引かせるのではなく、トークンを生成します。どちらかと言えば手札版の《スカイクレイブの亡霊》と言ったところでしょうか。 《スカイクレイブの亡霊》を使った・使われたことがある方ならわかると思いますが、死亡時にトークンを渡すというデメリットは、実は思いの外小さいです。昨今はクリーチャーの質が非常に上がっており、ただの能力を持たないバニラクリーチャーを献上したところでさほど痛手にはなりません。 特に《絶縁の僧侶》は手札を奪っているので、最大の仕事は戦場に出た時に終わっているので、喜んで死亡時にスピリットを渡せます。 そしてなんといっても《ヤサンの街道見張り》。唱えて戦場に出た時に、カードを4枚切削し、その後墓地からマナ総量が3以下のクリーチャーを場に戻せます。4枚切削した中である必要はなく、墓地から好きなカードを選べます。 前述の《遊撃サイ》《絶縁の僧侶》を出すも良し、《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》を拾えば戦場のパーマネントを使い回すことができます。   《養育するピクシー》を墓地から戻して《ヤサンの街道見張り》を回収し、再利用なんてことも可能です。 今紹介したアブザンカラーの3種はいずれも戦場に出た時の能力を持っており、実に《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》で戻しがいのあるクリーチャーです。他のバウンスデッキと違い、クリーチャーを戻すのが最大バリューとなるのがこのアブザンピクシーなのです。   セルフバウンス系デッキは《逃げ場なし》で盤面に干渉し、《望み無き悪夢》で手札破壊しながら殴っていくデッキで、手札への干渉手段は比較的限られています。コンボデッキ、とりわけ全知を苦手としていましたが、《絶縁の僧侶》は相手の手札を見て好きなカードを抜けるので、対全知に強くなっています。 一方でアグロデッキに対しても決して弱くありません。《遊撃サイ》の存在が非常に大きいですね。《コーリ鋼の短刀》の影響で《削剥》が増えていたり、他に倒したい対象が《分派の説教者》しかいない現状では、《抹消する稲妻》などはほとんど採用されていません。そのため、タフネス4の場持ちが非常に良いのです。 しかも《ヤサンの街道見張り》と各種バウンスによって粘り強さも兼ね備えており、《食糧補充》を擁する青系のデッキにもリソースで負けていません。 実は全対面有利の最強デッキなのでは?そう思ってしまうほど良いデッキで、今スタンダードで最も注目のデッキと言って良いでしょう!     セレズニア檻 パイオニアチャレンジ(4/20) : 優勝 By  claudioh MTGアリーナ用インポートデータ パイオニアにおけるセレズニアカラーのビートダウンと言えば、セレズニアエンジェルかセレズニアカンパニーが定番でした。   どちらのデッキも《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》から始まり、エンジェルは《輝かしい天使》《正義の戦乙女》でライフゲインしながら天使を生成し、《集合した中隊》で追加戦力をライブラリーから召集。 カンパニーは《エイヴンの阻む者》《エメリアのアルコン》《スカイクレイブの亡霊》と様々なクリーチャーを展開して、やはり《集合した中隊》によって押し切る。 いずれのデッキもマナクリから2ターン目に3マナ域を展開し、《集合した中隊》を打つデッキです。 しかし、このセレズニア檻は同じ白緑のビートダウンながら、全く動きが異なります。   《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》を使うことだけは同じですが、そこから展開する3マナ域が《砂嵐の回収者》《血滾りの福音者》《脚当ての補充兵》(新生)と独特のラインナップ。 これらの3枚に共通することと言えば1つ。そう、トークンです。   トークンと言えば『タルキール:龍嵐録』で登場した《嵐の討伐者、エルズペス》。出るトークンが倍になる常在型能力を持ち、プラスでトークンを生成し、マイナスすれば全体強化。トークンデッキのためのプレインズウォーカーです。《脚当ての補充兵》のトークンが増えるのはヤバすぎますね。 《ミストムーアの大主》も入っているため、かなりトークンが並ぶこのデッキ。そしてクリーチャーが並べば一撃必殺の《孔蹄のビヒモス》が控えています。 とはいえ、《孔蹄のビヒモス》は8マナとかなり重く、マナクリが大量に入っているとはいえ、唱えるのは容易ではありません。そこで活躍するのがデッキ名にもなっている《収集家の檻》。 1マナでクリーチャーに+1/+1カウンターを置くまずまずの能力を持っていますが、その後パワーが異なるクリーチャーを3体以上コントロールしていたら、秘匿していたカードをタダで唱えられるオマケつき!《孔蹄のビヒモス》をたった1マナで唱えることができるのです。   《ミストムーアの大主》はトークンを生成するだけでなく、《収集家の檻》の秘匿から踏み倒すのにも便利なクリーチャー。更に土地でもある《エメリアの呼び声》も《収集家の檻》から3~4ターン目に唱えれば凄まじいプレッシャーになるため、さほどデッキの形を歪めることなく、秘匿でハイバリューを叩き出すことに成功しています。素晴らしいデッキ構築ですね。 《収集家の檻》の秘匿条件を達成するのはさほど難しくありません。《脚当ての補充兵》《血滾りの福音者》《砂嵐の回収者》はそれぞれ自身とパワーの異なるトークンを生成してくれますからね。この辺りも実によく考えられています。 カンパニーデッキと違い、3マナ以下のクリーチャーの数にこだわる必要がないので、様々なゲームプランを展開できるのも強みです。《跳ねる春、ベーザ》と《ポータブル・ホール》を入れて赤アグロに耐性をつけており、これはカンパニーにはできないサイドプランです。 最近元気のないセレズニアですが、パイオニアで再び輝く時が来たかもしれません!     ブルードレッジ モダンリーグ : 5-0 By  MahfuzVanGogh 『ラヴニカ:ギルドの都』が登場した2005年以降、たびたび世間を賑わせているドレッジというデッキ。   ドローする代わりに墓地から発掘を宣言すると、その枚数だけライブラリーを切削し、該当の発掘カードを回収することができます。これによって大量に墓地にカードを溜めて、墓地から唱えられるカードたちで勝利する。それがドレッジです。 発掘6を持つ《ゴルガリの墓トロール》は下環境で長年大暴れし続け、墓地対策をすべてのデッキに標準装備させました。その凶悪さからモダン制定と同時に禁止され、一度解禁されましたが、その後再投獄となり、唯一の禁止→解禁→禁止を経験したカードでもあります。 当初、ドレッジは発掘を行うデッキのことを指していましたが、その後自分のライブラリーを切削して勝利を目指すデッキがドレッジと呼ばれるようになり、最近でもプロツアー・シカゴでゴルガリドレッジが活躍していました。 今回ご紹介するドレッジはというと、しっかり発掘カードを採用した本家ドレッジです。   実はドレッジは《信仰無き物あさり》の解禁によって復活するのではないか?と一部のマニアたちからは注目されていました。 しかし、このドレッジには《信仰無き物あさり》は採用されていません。なんと青黒の2色でまとめているのです。   まず切削する手段からです。発掘カードは《ゴルガリの凶漢》《臭い草のインプ》《暗黒破》の合計11枚。《暗黒破》は発掘3と控えめですが、《オセロットの群れ》《敏捷なこそ泥、ラガバン》を倒せるため、エネルギーに少し強いのが嬉しい。 ドレッジの定番だった《叫び角笛》は採用せず、スペルは《異世界の凝視》と《秘本掃き》。《異世界の凝視》は1マナで3枚しか削れませんが、フラッシュバックがあるため、合計6枚削れますし、切削のついでに落ちてくれるので、継続してライブラリーを掘り進められます。 従来のドレッジは墓地に発掘カードを落とし、そこからドロースペルを手札から打って発掘を連鎖させていました。《信仰無き物あさり》《安堵の再会》ですね。特に《安堵の再会》は2枚捨てて3枚引くため、発掘と相性抜群です。このカードがあるからこそ、ドレッジに赤を入れないことなど考えられませんでした。 しかし、実は今回『タルキール:龍嵐録』でとあるカードを手に入れて、ドレッジはついに赤と決別を果たすことに成功していました。   それが《冬夜の物語》! このカードは墓地からも唱えられる3枚ドロー。しかもパワー3のクリーチャーがいれば2マナで唱えられるため、《安堵の再会》を墓地からプレイしているようなものなのです。   《安堵の再会》は確かに強力ですが、手札になければ使用できません。ドレッジというデッキは1回発掘を始めたら後は通常ドローを行わずに常に発掘でライブラリーを掘りたいため、《安堵の再会》を引くチャンスは多くありません。   そのため、墓地から使用できる《冬夜の物語》は想像以上にデッキを強化しています。しかも同じ墓地から唱えられる《アゴナスの雄牛》と違って引いてから捨てるので、再び墓地に発掘カードを溜めることができ、次のターンも発掘を再開できます。《アゴナスの雄牛》は発掘カードが手札に来てしまうので、たまに発掘に困ってしまう場合がありました。 《冬夜の物語》によってこのドレッジは全く別の動きをするようになりました。1ターン目に《秘本掃き》を打ち、そこに《臭い草のインプ》が見つかれば、後の手札が全部使い物にならなくても勝ててしまう可能性があります。 1.《秘本掃き》で《臭い草のインプ》が落ちる。2.次のターンの発掘5で《ナルコメーバ》+《秘蔵の縫合体》or《這い寄る恐怖》+《銀打ちのグール》のいずれかの組み合わせ+発掘カード+《冬夜の物語》が落ちる。3.墓地から《冬夜の物語》を唱えて3ドロー分の発掘を行う。4.墓地に《秘蔵の縫合体》や《銀打ちのグール》が落ち、場に戻って勝利。 と発掘の落ち次第では《秘本掃き》1枚からだけでこのような展開が作れます。   《冬夜の物語》が加わり墓地から切削できる手段が増えたことで、デッキの安定性が大幅に向上したのです。 《セファリッドの円形競技場》もドレッジには欠かせないカードです。赤を使った3~5色なら複数枚採用するのは厳しいですが、青黒2色なら4枚採用できます。切削手段がない状態からでも《セファリッドの円形競技場》から発掘を始めて《冬夜の物語》に繋がったりしますし、この土地を4枚入れられるのは本当に大きいですね。 青黒2色のため、サイドボードには《海の先駆け》を採用できるのもポイント。第3章で《魂標ランタン》をサーチされてしまう《ウルザの物語》も安心です。 久しぶりに回してみたくなるような素晴らしいリストで、ドレッジ大好きな僕は心が躍っています!

【週刊メタゲーム通信】進化するイゼットとアグロキラーたち

週刊 Standard ピックアップ

2025.04.24

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今週は日々成熟しつつあるスタンダード環境から、有力デッキをご紹介!   目次 イゼットテンポ ジェスカイ眼魔 オルゾフピクシー     イゼットテンポ スタンダードチャレンジ(4/20) : 優勝  By auzzie51 MTGアリーナ用インポートデータ 《コーリ鋼の短刀》というレガシー級のカードが登場したことで突然頭角を現したイゼット系の果敢デッキ。 《僧院の速槍》《精鋭射手団の目立ちたがり》の一時的にサイズが上がり果敢軍団と《コーリ鋼の短刀》の相性が良く、2回の誘発を達成して《コーリ鋼の短刀》で殴りつつ、《僧院の速槍》も強くなり、一瞬で相手のライフを削り取ります。 そこに《巨怪の怒り》《稲妻波》など、相手のライフを速やかに0にするカードたちを投入したイゼット果敢は、環境初期に登場し、今も一線級の活躍を続けています。 そんな中、突如として現れたのがこのイゼットテンポ。デッキは果敢と似た作りで、少しのクリーチャーと大量のスペルの組み合わせですが、入っているクリーチャーがまったく異なります。   スペルを唱えてサイズが上がるカードは一切採用されておらず、墓地にあるスペル分だけコストが下がるカードたちがそこには鎮座しているのです。   まずは《トレイリアの恐怖》。 パウパーなどでもお馴染みの1マナ5/5で、護法を持っているので、早いターンに並べられると中々処理できません。《逃げ場なし》で護法は消えてしまいますが、本体サイズが5/5と頼もしいので、むしろ《逃げ場なし》には強いカードですね。 このデッキには大量のインスタント・ソーサリーが入っているので、1マナ5/5で出すのは難しくありません。序盤は《コーリ鋼の短刀》で殴りつつ、4ターン目に1マナで連打なんて動きが強力です。   そして《かまどの精》。出来事で使うと手札をすべて捨てて2ドロー。手札が4枚ある時は4ディスカード2ドローと弱いですが、逆に手札が0枚ならタダで2ドローできます。手札を使い切って最後に打つにはベストですね。 そして出来事領域に行った《かまどの精》は、墓地のインスタント・ソーサリー・出来事を持つカードの数だけコストが軽くなります。《トレイリアの恐怖》とほぼ同じですね。 出来事で手札にダブった呪文を捨てて2ドローしつつ、1マナで唱えるなんてことも可能です。   出来事と本体、合わせて3マナでプレイできる可能性があるので、《コーリ鋼の短刀》の誘発条件を1枚で満たすことができ、また《コーリ鋼の短刀》を装備して5/6トランプルになるのも実は強力。 《トレイリアの恐怖》よりサイズは小さいですが、出来事が強いので十分です。   従来のイゼット果敢が《僧院の速槍》《精鋭射手団の目立ちたがり》で序盤から攻めていたのに対し、イゼットテンポは序盤からライフを削る手段は《コーリ鋼の短刀》しかありません。とりあえず除去やキャントリップで墓地を貯めながら妨害し、中盤から一気に攻めていくことになります。 そのため、デッキには除去がかなり多めに採用されています。《噴出の稲妻》に《塔の点火》、更に《削剥》。 《削剥》は今のスタンダードでは重要な役割を持っています。そう、《コーリ鋼の短刀》を割れるからです。青赤系のミラーマッチでは《コーリ鋼の短刀》が最重要カードになります。   《削剥》がもっと使われるようになると、例えば《分派の説教者》などといったタフネス4のクリーチャーの価値は上がっていきますね。このリストはタフネス4に触るのがかなり難しくなっています。《セラの模範》なんかは割られた《コーリ鋼の短刀》を場に戻せますし、もしかしたら白いデッキで使われるようになるかもしれません。 とはいえ、全く対処できないというわけではありません。《嵐追いの才能》と《この町は狭すぎる》の組み合わせもきちんと入っているので、対処可能です。 《この町は狭すぎる》はエスパーピクシーのように1マナの拾いたいパーマネントが《嵐追いの才能》以外に入っていないため、2枚のみの採用にとどまっています。序盤は必要なく、ゲーム中に1枚引けば良いので、大量のキャントリップと《食糧補充》で探しにいく想定の枚数です。 キャントリップと言えば、《止まぬ囁き》も最近のイゼットテンポには採用されています。1マナ1ドローと《コーリ鋼の短刀》の誘発を満たしやすいカードなだけでなく、墓地からも唱えられるので2度美味しい。《トレイリアの恐怖》をタップすれば1マナで調和できます。 《コーリ鋼の短刀》を一番強く使えるデッキはおそらくイゼットテンポです!   ジェスカイ眼魔 スタンダードチャレンジ(4/22) : 準優勝 By terlollo04 MTGアリーナ用インポートデータ 《忌まわしき眼魔》を墓地に落として《救いの手》でリアニメイトするコンボを盛り込んだジェスカイカラーのアグロデッキ、ジェスカイ眼魔。 《光砕く者、テルサ》の加入により《忌まわしき眼魔》を吊り上げる以外の勝ち手段が増え、そのため最近では《再稼働》は抜け、リアニメイト呪文は《救いの手》のみとなっています。 《蒸気核の学者》《逸失への恐怖》に加え、『タルキール:龍嵐録』で《氷河の龍狩り》《光砕く者、テルサ》を得て、今のジェスカイ眼魔は引いて捨てる手段が非常に豊富となっています。 そのため、カードを引くことでクリーチャーを強化する《プロフトの映像記憶》が4枚採用されるようになりました。 《プロフトの映像記憶》は特に《光砕く者、テルサ》と相性が良く、戦場に出てカードを2枚引き、その後強化された状態で速攻で攻撃できます。《光砕く者、テルサ》は《忌まわしき眼魔》を落とすだけでなく、単体で非常に強力なクリーチャーなのです。伝説じゃなかったなら間違いなく4枚入ったでしょう。   引いて捨てるカードが増えた影響で《略奪するアオザメ》が入るようになり、ジェスカイ眼魔は更にビートダウン色が強くなりました。速度を求められるアゾリウス全知などとの戦いでは重要で、全体的に厳しめなマッチが改善されています。 そしてジェスカイ眼魔のアグロに強い特性はそのままです。大量の除去から《忌まわしき眼魔》を出すというデッキのコンセプト上、早いデッキ全般に強く、赤単に加えてイゼットも現れた現在のメタにとてもあっており、最近勝ちまくっています。 先ほど紹介したイゼットテンポのように軽除去が効かない構成が出てきたのも頷けますね。《かまどの精》《トレイリアの恐怖》で除去を躱す作戦を取っているというわけです。 とはいえ、除去が効かなくても問題ないのがジェスカイ眼魔。なぜなら《忌まわしき眼魔》を吊り上げてこちらから攻めることも可能だからです。赤系のアグロは《忌まわしき眼魔》がとにかく処理しづらく、2枚を使って除去されて、2回目の《忌まわしき眼魔》でゲームセットという展開になりがちです。 《略奪するアオザメ》《光砕く者、テルサ》《プロフトの映像記憶》による《忌まわしき眼魔》を介さないゲームプランが取れるようになったおかげで、今のジェスカイ眼魔は弱点の1つだった墓地追放カードがあまり効かなくなっています。 殴ってよし、守ってよし、サイドボードも充実と隙のなさそうなジェスカイ眼魔。今後更にその数を増やすことになるかもしれませんね。   オルゾフピクシー スタンダードチャレンジ(4/22) : 優勝 By MJ_23 MTGアリーナ用インポートデータ 《コーリ鋼の短刀》が登場して更に赤いデッキが強くなり、今のスタンダードはアグロまみれとなりました。 そのアグロを倒すために現れたのは、ジェスカイ眼魔だけではありません。『タルキール:龍嵐録』で強化されたオルゾフピクシーもアグロ殺し。   オルゾフピクシーは《養育するピクシー》でパーマネントを使い回すコントロールデッキ。《望み無き悪夢》でハンデスを重ねたり、《逃げ場なし》で除去と、エスパーピクシーと大部分では同じです。 これまでは使い回すカードが《養育するピクシー》のみで、《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》とあるエスパーに比べ、《望み無き悪夢》《逃げ場なし》が少し物足りなく感じていました。『タルキール:龍嵐録』からの新カード《陽光真珠の麒麟》によってバウンスが8枚体制になり、大幅に強化されたのです。 エスパーと異なるのはゲームプランです。《嵐追いの才能》がなくなり、序盤からの圧力をかける手段が減っているので、オルゾフは《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》によるバウンスで、盤面のコントロールを目指します。 そしてコントロールの役割を担う重要なカードが、白黒の2色になったことで採用できるようになりました。マナベースが強くなり、エスパーの時は採用しづらかったダブルシンボルのカードもメインから入れられるようになったのです。そう、《一時的封鎖》です。 《コーリ鋼の短刀》に対して除去は意味がなく、《削剥》でもトークンは残ります。しかし《一時的封鎖》なら完全な回答となります。   イゼットが流行っているのも、《一時的封鎖》が強い要因です。イゼットカラーではエンチャントを割ることができず、《この町は狭すぎる》でバウンスするしかありません。しかしバウンスしても《コーリ鋼の短刀》が戻るだけでトークンは帰ってこないので、完全回答にはならないのです。 そして《一時的封鎖》を単なる除去としてではなく、攻めにも使えるのがオルゾフピクシー。《望み無き悪夢》を《一時的封鎖》で追放し、《養育するピクシー》で自らバウンスし、《望み無き悪夢》を戦場に戻して再度手札破壊もできるのです。 《養育するピクシー》が一緒に追放されていれば一緒に帰ってきて、そのまま《養育するピクシー》の能力で《望み無き悪夢》回収までいけますし、《陽光真珠の麒麟》ならインスタントタイミングで《望み無き悪夢》を戦場に戻せるので、手札が0枚の相手のドロー後に仕掛けることで、次のトップデッキチャンスを潰せます。 《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》と《一時的封鎖》の相性は素晴らしく、一度複数枚のカードを追放した後に相手が再展開してきた場合、《一時的封鎖》を《養育するピクシー》で回収して再び《一時的封鎖》を置き直すことで、再展開したカードたちもまとめて追放できます。   エスパーピクシー、ディミーアバウンスと様々な《逃げ場なし》《望み無き悪夢》デッキが環境にはありますが、その中で最もアグロデッキに強いのはオルゾフピクシーだと思います。《一時的封鎖》がやはり強い! 赤単もイゼットも強すぎる。そんなお悩みを抱えているならオルゾフではないでしょうか。

【今週のピックアップデッキ】ラクドスリアニメイト/白単トークンコントロール/イゼットフェニックス

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.04.18

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ ラクドスリアニメイト 白単トークンコントロール イゼットフェニックス   ラクドスリアニメイト スタンダードリーグ : 5-0 By Apeliotes MTGアリーナ用インポートデータ 巨大なクリーチャーを墓地に落として軽いリアニメイト呪文で戦場に吊り上げるデッキ、リアニメイト。 最強のリアニメイト呪文である1マナの《再活性》は今もレガシーで猛威を振るい続けており、モダンでは《御霊の復讐》が活躍しており、下フォーマットでは今も人気の戦略です。 そんなリアニメイトがスタンダードにも登場しました。   肝心の吊り上げる呪文は最近スタンダードに帰ってきた《ゾンビ化》。4マナで墓地からクリーチャーを戦場に戻すシンプルなソーサリー。以前スタンダードで再録された時もリアニメイトで活躍しており、《ゾンビ化》がある環境ではいつもリアニメイトが成立しますね。 《ヴァルガヴォスの崇拝者》は《ゾンビ化》を内蔵するクリーチャー。出してそのまま生け贄にするには5マナかかりますが、事前に戦場に出ていれば《ゾンビ化》です。《呪文貫き》《否認》などを避けられるリアニメイトスペルなので、青い相手のサイド後は重宝しますね。 さて、デッキの主役となるファッティたちをご紹介しましょう。   まずはスタンダードからヴィンテージまで使われている最強のリアニメイト先、《偉大なる統一者、アトラクサ》。 墓地からクリーチャーを吊り上げるには、カードを捨てて、それを墓地から戦場に戻すという2つの工程が必要で、当然それぞれのためにカードを費やします。そのため、戦場に出てくるクリーチャーが出しただけで勝つほどのサイズや能力を持っているか、失ったリソースを回復できるか、いずれかでなければなりません。   《引き裂かれし永劫、エムラクール》は前者です。戦場に出ても特にカードをもたらしてくれませんが、一撃で相手を投了に追い込む力があります。 かつてこの両方を担っていたのが《グリセルブランド》でしたが、ライフが少ない状態では7枚のカードを引けず、除去されて何も起きずに敗北することもしばしばありました。 その点、《偉大なる統一者、アトラクサ》はリアニメイトされるクリーチャーとしての条件を満たす完璧なクリーチャーです。 7/7で絆魂・警戒と攻守に渡って優れたサイズと能力を持ち、上から10枚を見て各タイプを1枚ずつ手札に加えられる、驚異的なリソース補充量。スタンダードでリアニメイトが成立するのは、《偉大なる統一者、アトラクサ》がまだ残っているからといっても過言ではありません。   第二の釣り先となる《原初の征服者、エターリ》は戦場に出た時はほぼ能力がないようなカードですが、お互いのライブラリートップを土地以外のカードが出るまで追放し、それらのカードをタダでプレイできます。 《ミストムーアの大主》が入っているような相手には強力ですし、自分のライブラリーから《偉大なる統一者、アトラクサ》などがめくれることもあるため、リアニメイトデッキとの相性が良いカードです。   そして《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》。こちらは9/9、飛行・絆魂と凄まじいサイズに、強力な護法能力がついています。パーマネント3つの生け贄はかなり重く、除去するのは非常に難しい。 更に能力も強烈。墓地に送られるカードを追放し、その追放されたカードをマナの代わりにライフで唱えられます。自身が9/9絆魂なので、ライフを支払って相手のカードを使い、攻撃によって失ったライフを補填します。大抵はこのカードが除去できなかった時点でゲームセットとなりますね。   このように、リアニメイト先はどれもが超一流です。   リアニメイトスペルとファッティが揃い、後必要なのは……そう、墓地に落とす手段。このデッキはそれも一流揃いです。   様々なデッキで使われている《逸失への恐怖》は当然ながら、赤単でも活躍中の《光砕く者、テルサ》は非常に面白いチョイス。墓地にクリーチャーを落とす手段でありながら、リソースにもなる可能性があるのです。もちろん釣り先となるカードが追放されてしまう可能性もありますが。 《ベイルマークの大主》はライブラリーから直接クリーチャーを墓地に落とします。《ヴァルガヴォスの崇拝者》を拾えるので、釣り先と釣り竿の両方を《ベイルマークの大主》1枚で揃えることもできますね。 《ヴェールのリリアナ》に《苦々しい勝利》と、手札を捨てられる除去も採用されており、カードを捨てることには困らないでしょう。 ド派手な戦略がお好きな方はぜひお試しあれ。     白単トークンコントロール パイオニアチャレンジ : 優勝 By  McWinSauce MTGアリーナ用インポートデータ かつてスタンダードを賑わせていた《世話人の才能》。 トークンが出るたびに1ターンに1回カードを引き、トークンをコピーし、最終的にはトークンを全体強化する。まさにトークンデッキのためのカード。   白はトークンを出して強化する手段に優れており、《婚礼の発表》は毎ターントークンを作りながら、最終的にはクリーチャーを全体強化する《栄光の頌歌》になります。 『タルキール:龍嵐録』では、トークンデッキのためのカードがまた登場しました。   それが《嵐の討伐者、エルズペス》です。 トークンが2倍生成される常在型能力に、プラスはトークン生成。0で全体強化を行い、マイナスで全除去もついている、トークン使いたちが夢にまで見たカード。   かつてのトークンデッキが《嵐の討伐者、エルズペス》の常在型能力しか持たない《選定された行進》を使っていたことから考えると、凄まじい進化ですね。 《団結の最前線》も『タルキール:龍嵐録』から加入した新カード。 3マナ以下のクリーチャー・土地以外のパーマネントを2枚場に出すこのカード。除去を《ポータブル・ホール》などのパーマネントにしており、トークンを生成するカードの多くはエンチャントなため、非常に当たりが多く、1枚で膨大なアドバンテージを生み出します。 そしてパーマネントが多いということは……そう、《空を放浪するもの、ヨーリオン》のバリューが凄まじいのも魅力。《団結の最前線》でめくれたカードたちが《空を放浪するもの、ヨーリオン》によって更に再利用されるので、各英雄譚は誘発し、《放浪皇》はトークンを生み出し、《世話人の才能》が再び誘発します。 大量のドローと《空を放浪するもの、ヨーリオン》、更にトークン戦略と揃っているこの白単トークンは、パイオニアでずっと最強のデッキとして君臨し続けていた《思考囲い》《鏡割りの寓話》デッキに非常に有利なデッキです。 赤系アグロに対してもそれなりに有利なデッキで、勝てない相手はコンボぐらいでしょうか。ロータスコンボだけはお手上げになりそうですね。   そのためサイドボードには《真昼の決闘》が採用されています。ロータスコンボを見るなら《減衰球》ですが、《ニクスの祭殿、ニクソス》の相性を考慮してのことなのかもしれません。 そもそもロータスコンボは構造上無理だと割り切っている可能性もありますね。《真昼の決闘》はロータスコンボにはイマイチですが、イゼットフェニックスには効果的です。《減衰球》がイゼットフェニックスに微妙なことを考えると、《真昼の決闘》の採用も納得できます。 デッキ相性差が非常に極端な白単コントロール。強い相手にはとことん強く、再現性も高いデッキなので、メタが合った時には無双間違いなしですね。手札破壊に長年苦しめられた方は回してみてください。     イゼットフェニックス モダンリーグ : 5-0 By  Allaire74 今ではすっかりパイオニアの顔となっているデッキ、イゼットフェニックス。 実は《信仰無き物あさり》が禁止されるまでは、モダンで一線級のデッキでした。《信仰無き物あさり》解禁直後に姿を見かけ、最近ではまた消えかかっていましたが、『タルキール:龍嵐録』で1枚のカードを得て今回見事にリーグで5-0を達成しました。 そのカードとは《コーリ鋼の短刀》。 説明不要の『タルキール:龍嵐録』最強カード。呪文を1ターンに2回唱えると果敢を持つモンクを生成するこの装備品。当然、3回の呪文を唱えると墓地から帰ってくる《弧光のフェニックス》との相性は良好です。 《弧光のフェニックス》を復活させるために呪文を3回唱えるということは、モンクが生成されるということで、果敢自体も3回行われます。先に1体でもトークンが出ていれば4/4で、新しいモンクは3/3。そして《弧光のフェニックス》と合わせて一気に10点が入ります。   その《弧光のフェニックス》を墓地に落とす手段は、前述の《信仰無き物あさり》と《ドラゴンの怒りの媒介者》。 非クリーチャー呪文を唱えるたびに諜報し、昂揚後は3/3飛行と破格の1マナ域。デッキ内のほとんどのカードが1マナ以下のスペルなので、ライブラリーを掘り進めて《弧光のフェニックス》を引き当てにいきます。   《弧光のフェニックス》を戦場に戻すために一役買うのは《魔力変》と《溶岩の投げ矢》。いずれも2ターン目に呪文を3回使える可能性のあるカードです。 《コーリ鋼の短刀》の条件を満たすためにこれらのカードはイゼット果敢でも採用されていましたが、1ターンに2回という条件が簡単なので、どうせなら後1回唱えて《弧光のフェニックス》を帰してみようと考えて、イゼットフェニックスを組んでみたのかもしれませんね。 果敢デッキは本来除去が非常に苦手なデッキです。継続して果敢を達成するためにデッキに入っているカードの多くはキャントリップや軽い火力なため、ダメージソースであるクリーチャーを倒されてしまうと、相手のライフを削りきれません。 その弱点を解消したのが《コーリ鋼の短刀》だったのですが、《弧光のフェニックス》が加わり、除去耐性に磨きがかかりました。《ドラゴンの怒りの媒介者》《僧院の速槍》のために除去ハンドをキープしてきた相手に《コーリ鋼の短刀》と《弧光のフェニックス》で殴りかかるのは快感ですね。 このリストには採用されていませんが、《表現の反復》もありますし、リソース面の不安もイゼットカラーは解消できます。 パイオニアでイゼットフェニックスを使っている方は、これを機にモダンに参入してみてはいかがでしょうか?一味も二味も違って楽しいですよ!

【週刊メタゲーム通信】スタンダードは赤いアグロが絶好調!そして密かに強化された全知

週刊 Standard ピックアップ

2025.04.17

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今週は日々成熟しつつあるスタンダード環境から、有力デッキをご紹介!   目次 赤単アグロ イゼット果敢 アゾリウス全知     赤単アグロ スタンダードチャレンジ(4/13) : 優勝  By Latorretta MTGアリーナ用インポートデータ 先週特に目覚ましい活躍を見せたのは赤単アグロでした。   前環境から圧倒的な強さを見せつけていたビートダウン。   《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》、パイオニアでも止まらないこの3種のハツカネズミたちを活用した赤いアグロデッキは、スタンダードに様々なバリエーションが存在していますが、その中でも2色目を入れていない純正の赤単が勝ち組となっていました。 デッキのベースは変わっていません。3種のハツカネズミに《雇われ爪》、そしてミラーマッチで最も強い《叫ぶ宿敵》もメインから4枚フル投入されています。 最後の1種は『タルキール:龍嵐録』からの新カード、《光砕く者、テルサ》です。 戦場に出た時にカードを2枚まで捨て、その枚数分ドロー。マナフラッドしている状況や、クリーチャーが欲しいのに手札に《巨怪の怒り》が溜まっている状態などで、手札をリフレッシュすることができます。 攻撃時に誘発する能力も強く、墓地にカードが7枚以上あれば、その内1枚をランダムに追放してプレイできます。手札を入れ替えながらリソースも稼げる素晴らしいカードなのです。   しかもそもそもこれらの能力がついている上で3マナ3/3速攻と及第点で、これからの赤単には間違いなく採用されていくカードとなるでしょう。   2種の3マナ域が採用されるようになったことで、赤単はより長期戦を戦えるようになりました。   《熾火心の挑戦者》《心火の英雄》は《岩面村》で強化でき、《多様な鼠》は4マナで新生と、軽いカードが中盤以降もしっかり強いのが赤アグロの強みでした。そこに《光砕く者、テルサ》が加わり、ただ単に除去をしているだけのデッキでは赤単に勝つのは事実上不可能となったと言って良いかもしれません。 《一時的封鎖》のような軽量除去に強くなったのもポイントと言えるでしょう。青黒のバウンス系デッキに対して、3マナ域が《逃げ場なし》されてしまうのはこれまでと変わりないですが、《不気味なガラクタ》は効きづらくなっています。 《光砕く者、テルサ》はサイドボード後も輝くカードです。《陽背骨のオオヤマネコ》を出すために4枚目の土地が欲しいことはよくありましたが、《探索するドルイド》なしでストレートに4枚目に辿り着くのは簡単ではありませんでした。 かといって《探索するドルイド》はそのターンをパスになってしまうアクションですし、2~3ターン目にプレイして《陽背骨のオオヤマネコ》がめくれてしまい、無駄となることも多々ありました。 《光砕く者、テルサ》ならば出して土地を探しにいけて、更に3/3速攻と、4枚目の土地を求めながら相手に圧力もかけられるのです。 ただでさえ強かった赤単は『タルキール:龍嵐録』で完成したと言って良いでしょう。新スタンダードは、この赤単を攻略できるかがカギとなります。   イゼット果敢 スタンダードチャレンジ(4/12) : 準優勝 By Junkmener MTGアリーナ用インポートデータ モダンでも暴れ回っている《コーリ鋼の短刀》。軽いカードが強い今のスタンダードでも恐ろしいスピードでモンクを生成しています。 1ターンに2回の呪文を唱えなければならない《コーリ鋼の短刀》を使うには、手札を減らさずに呪文を唱えることが重要。そのため、《選択》《手練》などキャントリップを使ってトークンを生成しています。 5枚見て好きなカードを2枚取れる《食糧補充》も《コーリ鋼の短刀》と相性の良いカード。ただ3マナと少し重いため、メインでは2枚採用にとどまっていますね。 そして《コーリ鋼の短刀》と相性の良いカードが《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》。《嵐追いの才能》から出るカワウソも果敢なので、《コーリ鋼の短刀》を誘発させながら巨大なサイズで攻撃できますし、《この町は狭すぎる》で《嵐追いの才能》を出し直すだけで《コーリ鋼の短刀》が誘発し、ループ後は毎ターンその2枚だけで完結してくれるのです。 《嵐追いの才能》は中盤以降に手札がなくなった場合でも《食糧補充》を回収できますし、《コーリ鋼の短刀》を絡めた高速展開で使っても良し、ロングゲームでも大活躍と、このデッキの核となるカードですね。 これまでのイゼット果敢は《稲妻波》や《噴出の稲妻》を採用して相手のライフを速やかに削る方向性でしたが、近頃流行っているタイプは、除去は《塔の点火》、キャントリップがたくさんに、《この町は狭すぎる》と、コントロール色の強いリストとなっています。 このリストの方が赤いアグロに対しては高い勝率が出るでしょう。《心火の英雄》《多様な鼠》の展開に対して《稲妻波》をプレイしている余裕はありませんからね。 《コーリ鋼の短刀》は攻め一辺倒のカードではありません。2体目のトークンを生成した時は、元々いたモンクは3/3になり、新しく出たモンクに装備品がついて2/2になります。3/3のモンクだけで殴り、2/2をブロッカーとして立たせるのも強力です。 特に《呪文貫き》《塔の点火》とインスタントがそこそこ入っているこのデッキでは、相手のターンに《コーリ鋼の短刀》を誘発させることも可能です。 《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》は攻めと守りどちらでも使えるカードなので、それを攻めるためだけに使うのはもったいないと考えており、その点でこのリストには光るものを感じています。   《精鋭射手団の目立ちたがり》《巨怪の怒り》はほぼ攻めるだけのカードですが、これは仕方ないでしょう。逆にこれらのカードがなければ攻めが弱くなりすぎてしまい、本来攻めて勝てるはずのマッチも落としてしまいます。 最低限のブン回り要素は残しつつもしっかりと様々なゲームプランを立てられる、とても素晴らしいデッキだと思います。   《コーリ鋼の短刀》を試してみたい方にはまずイゼット果敢がオススメです。   アゾリウス全知 スタンダードチャレンジ(4/14) : 準優勝 By Dazai MTGアリーナ用インポートデータ 《アブエロの覚醒》で墓地から《全知》を吊り上げて勝利するアゾリウス全知。 アグロばかりの現スタンダード環境では珍しい純粋なコンボデッキで、基本《全知》以外の勝ち手段を持ちません。 前環境ではズアードメインへのアンチデッキとして活躍していましたが、実は『タルキール:龍嵐録』で強化を受けました。   まずは《マラング川の執政》。前兆側の3枚引いて1枚捨てる能力は、《全知》を落としながら《アブエロの覚醒》を引きにいけるまずまずのスペル。 本体側も決して弱くなく、6マナ6/7に2つバウンスのオマケつき。サイド後に《石の脳》で《全知》を抜かれると勝ち手段がなくなっていましたが、《マラング川の執政》によってコントロールして殴り勝ちが可能となりました。 この2点だけでは《マラング川の執政》は微妙に見えるかもしれませんね。実は《マラング川の執政》には更なるメリットがあります。   それを説明するためには、4枚採用の《乱動するドラゴンの嵐》について話しておく必要があります。戦場に出た時に2枚引いて1枚捨てるエンチャントで、《航路の作成》相当の能力。そして自分がドラゴンを戦場に出した時に、このカードを回収することができます。 つまり、《マラング川の執政》が戦場に出ると《乱動するドラゴンの嵐》を回収してもう1度使用できるのです。 これにより《全知》を貼ってからの勝ち手段である《アルケヴィオスへの侵攻》を減らせるようになりました。 以前までのこのデッキは《アルケヴィオスへの侵攻》が無限コンボの起点でした。ゲームに勝つためには《アルケヴィオスへの侵攻》を1枚必ず引かなければならないので、5マナのほぼ何もしないバトルを4枚採用させられていました。   しかし、《乱動するドラゴンの嵐》の登場で、起点が《アルケヴィオスへの侵攻》である必要がなくなりました。   《全知》が貼ってある状態で《乱動するドラゴンの嵐》と《マラング川の執政》が2枚揃うと、ライブラリーをすべて引ききることができるのです。 《マラング川の執政》は自身を戻すことはできませんが、他のカードであればバウンスできるので、《マラング川の執政》が2体いれば互いをバウンスしあい、好きなだけ《乱動するドラゴンの嵐》を唱えられるのです。これで2枚に減らした《アルケヴィオスへの侵攻》に辿り着けばゲームエンドです。 更に勝ち手段も『タルキール:龍嵐録』で進化しました。   これまでは《機織りの季節》ループから更に《ネットワーク呪詛》など、勝つために複数枚のサイドカードを必要としていましたが、《ジェスカイの啓示》だけでよくなりました。 《アルケヴィオスへの侵攻》を貼って《ジェスカイの啓示》をサーチし、《アルケヴィオスへの侵攻》を戻しながら相手に4点を与える。このシンプルな手順でゲームエンドです。   更にサイドボードには《堂々たる撤廃者》の代わりに《勝利の楽士》が投入されました。 対戦相手がこちらのターンに呪文を唱えられないという能力を持つ2マナクリーチャー2種。《勝利の楽士》のメリットは1/3と2点火力で焼かれないサイズであることと、2マナで3点のダメージソースであること、マナシンボルの薄さです。アゾリウス全知との戦いではクリーチャー除去は抜くため、継続して攻撃できるでしょう。2マナの3点クロックはかなり大きく、コントロール対決ならそのままゲームに勝ててしまうほどです。   一方、《堂々たる撤廃者》のメリットは起動型能力も止まる点です。《除霊用掃除機》や《漁る軟泥》などの墓地を追放する起動型能力が止まるので、自分のターンで《全知》をディスカードして《アブエロの覚醒》で釣り上げれば、墓地対策も効きません。 どちらが優れているかについては難しいところですが、環境のアゾリウス全知対策として《除霊用掃除機》がどれぐらい使われているかによると思います。 《除霊用掃除機》の代わりに、《安らかなる眠り》や青いデッキが《呪文貫き》などのみで全知対策をしているなら、《堂々たる撤廃者》より《勝利の楽士》の方が優れているでしょう。 どのデッキも《除霊用掃除機》を複数枚採用するようになったら、《堂々たる撤廃者》の出番ですね。   『タルキール:龍嵐録』でよりデッキが引き締まったアゾリウス全知、今注目のデッキです。

【今週のピックアップデッキ】イゼット果敢/ウモーリソーサリー/ジェスカイスペル

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.04.11

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ イゼット果敢 ウモーリソーサリーコントロール ジェスカイスペル   イゼット果敢 スタンダードリーグ : 5-0 By DB_YungDingo MTGアリーナ用インポートデータ スタンダードの赤いアグロと言えば、パイオニアすら席巻している《心火の英雄》《多様な鼠》《熾火心の挑戦者》の3種のハツカネズミを使うのが定番。いや、それどころか使わないデッキなど存在しないレベルです。 が、今回紹介するイゼット果敢は赤青でありながら、ハツカネズミを1枚も採用していません!このデッキのコンセプトは、その名前の通り、果敢です。   今更説明するまでもないですが、果敢はクリーチャー以外の呪文を唱えた時に、一時的にサイズが上がる能力。そのためデッキ内の非クリーチャー呪文は多ければ多いほどいいのです。   入っているクリーチャーはたった2種類。果敢クリーチャーの代名詞とも呼ぶべき《僧院の速槍》と《精鋭射手団の目立ちたがり》のみです。 《精鋭射手団の目立ちたがり》は果敢は持たないものの、持っている能力は果敢より強力。1回の呪文でパワーが2上がり、更に自身を計画しておくことで、フルで呪文を使って《精鋭射手団の目立ちたがり》のサイズを引き上げられます。 この果敢2種に加わるのが、クリーチャーではない果敢持ち。《嵐追いの才能》。 《この町は狭すぎる》とのコンボでスタンダードで大活躍するクラスエンチャントですが、今回は単体で採用。非クリーチャー呪文でありながらしっかり1マナの果敢クリーチャーが場に出るので、果敢と相性が良いのがグッドですね。   レベルアップした際には火力や《食糧補充》を拾うことができ、《僧院の速槍》より強い場面も多々あります。   そして最後のクリーチャー枠は新カード。こちらはなんと装備品の《コーリ鋼の短刀》です。 装備クリーチャーに+1/+1速攻とトランプルを付与する装備品……というのはオマケ能力。重要なのはその下の長いテキストです。   1ターンに呪文を2回唱えた時に果敢を持つトークンを生成し、それにこの装備品をつけることができる。とんでもないことが書いてあります。   3ターン目に《コーリ鋼の短刀》から《稲妻波》を本体に打つと果敢トークンが出てきて2点の速攻アタック。次のターンに呪文を2回唱えれば、先に出ていた果敢トークンのサイズが上がりつつ、新しいトークンと一緒に攻撃します。   毎ターントークンを生成する2マナのカードは《苦花》と呼ばれることが多いですが、《苦花》を余裕で超えてくる性能です。 問題は1ターンに2回の呪文を唱えられるかどうかですが、その点を解決するのが青。《嵐追いの才能》のためだけに青が入っているわけではないのです。   《手練》は呪文カウントを稼ぎながら次の火力を探しにいく呪文ですし、なんといっても4枚採用の《食糧補充》が、継続的に《コーリ鋼の短刀》を誘発させてくれます。 相手のライフが少なければ《稲妻波》などの火力呪文、盤面に触りたければ除去、更にリソースを稼ぎたければ《嵐追いの才能》(を出してレベルアップで《食糧補充》を回収)などなど、臨機応変に勝利への道を示してくれます。 これまでの果敢デッキはクリーチャー除去に非常に弱かったのですが、《コーリ鋼の短刀》は除去を構えている相手を嘲笑うような能力です。   果敢軍団による気持ちの良いビートダウン、一度試せば病みつき間違いなし!     ウモーリソーサリーコントロール パイオニアリーグ : 5-0 By  DB_BFG MTGアリーナ用インポートデータ 『イコリア:巨獣の棲処』で登場した超問題児、相棒。   特定の条件でデッキを組むことで、相棒カードを相棒に指定することができ、各ゲーム中に3マナを支払うことで手札に加えられるカードです。   つまり、指定した相棒は確実に手札に加えることができるので、その相棒を前提にしてデッキを組めるというわけです。   最強の相棒、《夢の巣のルールス》はビートダウンのフィニッシャーとして使われました。除去をすべて使わせて、最終的に《夢の巣のルールス》を着地させてそのリソースだけで勝利。このゲームプランを1枚で、そして確実に作れるのが《夢の巣のルールス》が最強と言われる所以。 一方能力をほぼ使うことはないのが《湧き出る源、ジェガンサ》。単に確実に手札に加えられる5マナ5/5としてビートダウンを中心に多くのデッキに採用されていました。《夢の巣のルールス》と比べるとかなり弱いですが、それでもパイオニア・モダンで禁止されるほど。 モダンでのみ禁止されている相棒、《空を放浪するもの、ヨーリオン》は能力を使用することを前提に採用されている相棒。《夢の巣のルールス》に近いカードですね。戦場に出た時に能力を誘発させるパーマネントを多数採用したり、《豆の木をのぼれ》を《空を放浪するもの、ヨーリオン》で誘発させるなど、デッキ外のカード1枚から大量のアドバンテージを獲得して勝利することをコンセプトにしています。 今回ご紹介する相棒も、デッキコンセプトとなる1枚。   《集めるもの、ウモーリ》です! 初めてこの相棒を見たという方も多いのではないでしょうか?その相棒条件は、デッキ内に入っている土地以外のカードが、共通のカード・タイプを持っていることです。   たとえばクリーチャーがデッキに入っていたら、ソーサリーやインスタントをデッキに入れることはできません。インスタントがデッキに入っていたら、ソーサリーもクリーチャーも使えません。   そんな超強烈な制限をデッキにつけてくる可愛い相棒です。   その肝心の《集めるもの、ウモーリ》の能力は、戦場に出るに際し、カード・タイプを1つ選び、そのタイプの呪文がすべて1マナ軽くなるというもの。クリーチャーだけのデッキに入れれば、《集めるもの、ウモーリ》が戦場にいる間はデッキ内のすべてのカードがコスト軽減されることになります。 そして《集めるもの、ウモーリ》で指定するタイプは……ソーサリー!このデッキにはソーサリー以外のカードが1枚も入っていません。   パイオニアで最強のソーサリー《思考囲い》は当然入ります。《集めるもの、ウモーリ》で軽くなることはありませんが、そもそも1マナなので問題ありません。 ソーサリーは全体除去も得意なので、《絶滅の契機》《死人に口無し》とたっぷり採用されています。《絶滅の契機》は奇数を宣言すれば《集めるもの、ウモーリ》を戦場に残せますね。 面白いのが《中止+停止》。分割カードの片方がソーサリーなので、《集めるもの、ウモーリ》の相棒条件を満たしながらインスタントを採用できます。《集めるもの、ウモーリ》下なら1マナで墓地を追放しながらゲイン&ドローと中々の性能。 ソーサリーはインスタントより派手な能力が多いので、フィニッシャークラスも多数あります。《絶望招来》はその中でも苦い思い出がある人も多いでしょう。《絶望招来》を打つと《絶望招来》を引くので、連鎖して一瞬でゲームが終わります。これも《集めるもの、ウモーリ》で4マナに。 《詰め込み期間》は派手さこそありませんが、良い仕事をするいぶし銀カード。 《集めるもの、ウモーリ》が出ていれば1マナで4点ゲインしつつ、サイドボードから《マスコット展示会》をサーチしてフィニッシュに向かったり、除去やエンチャント・アーティファクト破壊など、状況に応じてカードを引っ張ってきます。 ソーサリーのみの厳しい条件下ながら、このウモーリコントロールはしっかりとコントロールとして成立しており、何よりデッキリストが非常に美しい!   昔《集めるもの、ウモーリ》を相棒に指定してインスタントだけでコントロールデッキを組んでいた僕としては、仲の良かった小学校時代の同級生と再会したような気持ちになりましたね。   少し変わったコントロールがお好きな方はぜひ《集めるもの、ウモーリ》を買ってみてください。     ジェスカイスペル By Aspiringspike 《死の国からの脱出》がモダンで禁止となりましたが、元々《死の国からの脱出》《研磨基地》のコンボ自体は2020年から使えました。 脱出基地がモダンで禁止級の強さと言われ始めたのは今年なので、5年間はモダンで鳴りを潜めていたということになります。   それがなぜ急にここまで暴れたのか?その原因はやはり《オパールのモックス》にあるでしょう。 《モックス・アンバー》と合わせてモックス8枚体制となり、1ターン目から《湖に潜む者、エムリー》+《知りたがりの学徒、タミヨウ》のようなめちゃくちゃな動きを可能にしてしまったことで、《死の国からの脱出》はモダンで許されないカードとなったのです。 そんな《オパールのモックス》《モックス・アンバー》をフル活用した新たなデッキがこのジェスカイナーセット!   《ジェスカイの道師、ナーセット》はこのデッキの主役。終了ステップの開始時に、手札をすべて捨てることで、このターンに唱えたカードの枚数分、ドローできます。 《オパールのモックス》《モックス・アンバー》《ミシュラのガラクタ》と0マナ満載のこのデッキでは、とりあえず気軽に3~4枚引けます。1ターンの間に呪文をたくさん唱えたいなら、モックス以上に相性が良いカードはありませんね。   同じ『タルキール:龍嵐録』から加入したジェスカイの3マナ域《担炎の闘士》も中々の性能。3マナと少し重いですが、次に唱える呪文をコピーしてくれます。パーマネントならコピーが戦場に出るので、《コーリ鋼の短刀》のコピーが現れたり、《ミシュラのガラクタ》が増えてリソースを獲得することも。 この2種のクリーチャーがどちらも3マナ域なので、相性の良い《救いの手》が採用されています。2種の3マナ域を1マナで釣り上げた時のバリューは計り知れません。 特に墓地から《担炎の闘士》を吊り上げる→手札から《担炎の闘士》を唱えると、《担炎の闘士》がコピーされるため、その次に唱える呪文が2つコピーされ、わけのわからないことになります。手札から《担炎の闘士》を2回唱えるのは難しいですが、1枚が《救いの手》なら合計4マナなのでさほど難しくはありません。 そしてスタンダードでもご紹介した《コーリ鋼の短刀》はこのデッキでも獅子奮迅の活躍を見せます。2種のモックスに《ミシュラのガラクタ》と果敢を満たすカードは大量にありますし、2ターン目に《コーリ鋼の短刀》から0マナアーティファクトで即座に攻撃も仕掛けられます。 アーティファクトなので《湖に潜む者、エムリー》から出せますし、《オパールのモックス》《感電破》の金属術も満たせるなど、能力だけでなくカード・タイプもデッキと噛み合っています。このカード、本当にすごい! 《ジェスカイの道師、ナーセット》によって毎ターン大量にカードを引いて、それらのカードで《コーリ鋼の短刀》を誘発させ続けて殴りきる。単純明快ながら、その動きはとても面白く、回しているところを見ただけでこのデッキの虜になってしまいました。   非常に面白いデッキですし、《コーリ鋼の短刀》はもちろん、《ジェスカイの道師、ナーセット》にもかなりの可能性を感じました。 この2枚の組み合わせは今後も見ることになるのではないでしょうか。そう思わせてくれるほど美しいデッキです!

『タルキール龍嵐録』がオンライン上でリリース!最新スタンダードデッキ紹介

Standard ピックアップ

2025.04.10

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   『タルキール龍嵐録』がついにマジックオンライン・MTGアリーナで実装されました!   最新セットが最も影響を与える環境はもちろんスタンダード!   というわけで今回は、『タルキール龍嵐録』の新カードを使って好成績を収めたデッキたちをご紹介していきます。   紹介デッキ ジェスカイ眼魔 ジェスカイコントロール オルゾフピクシー   ジェスカイ眼魔 スタンダードリーグ : 5-0 By GodOfSlaughter MTGアリーナ用インポートデータ スタンダードからモダンまで大活躍している超強力クリーチャー《忌まわしき眼魔》。 3マナという軽さで毎ターン戦慄予示を行うため、その制圧力はピカイチ。戦慄予示で《忌まわしき眼魔》がめくれれば次のターンにはあっという間に人が死ぬ盤面になりますし、過言でもなんでもなく1枚で勝ててしまうカードです。   6枚の墓地を追放しなければならない《忌まわしき眼魔》ですが、それはあくまで唱える時のみ。墓地から戦場に出す際は条件はありません。そこでモダンでは《発掘》、スタンダードでは《救いの手》《再稼働》でこの《忌まわしき眼魔》を吊り上げるのが、最早基本の使い方となっています。 このジェスカイ眼魔はもちろん《救いの手》《再稼働》で《忌まわしき眼魔》を吊り上げるデッキ。手札に来た《忌まわしき眼魔》を《逸失への恐怖》や《蒸気核の学者》で墓地に送り込み、リアニメイトします。 プロツアーでも大活躍したこのデッキは、『タルキール龍嵐録』で3種類のカードを手に入れました。   まずは《光砕く者、テルサ》。 戦場に出た時にカードを2枚まで捨て、捨てた枚数分だけドロー。《鏡割りの寓話》の第二章などでもお馴染みの能力があり、《忌まわしき眼魔》を墓地に送り込むことができます。   更に《光砕く者、テルサ》には速攻と、攻撃時に誘発する能力があります。攻撃時に墓地が7枚以上あったなら、その内の1枚をランダムに追放し、ターン終了時までプレイできます。3マナ3/3でリソースまで稼げちゃうすごいクリーチャーというわけですね。   ジェスカイ眼魔は《蒸気核の学者》《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》で墓地を貯められるので、7枚以上の条件も難しくないでしょう。 《光砕く者、テルサ》は《プロフトの映像記憶》との相性の良さも注目です。2ドローなのでカウンター2つ分になりますし、速攻によって出したターンに自身にカウンターを乗せて攻撃もできます。 ここからはスペルです。   《氷河の龍狩り》は便利な除去カード。2マナで1ドローと少しコスパは悪いですが、土地でないカードを捨てることができ、捨てると対象に3点を与えます。墓地に《忌まわしき眼魔》を送り込みつつクリーチャーを除去できるので噛み合っていますね。 更にこのカードは調和を持っており、墓地からもう1度唱えることができます。調和コストは(4)(青)(赤)なのでパワーが4のクリーチャーを寝かせれば僅か2マナで唱えられます。《忌まわしき眼魔》を吊り上げてそのまま寝かせて調和でキャスト、なんて使い方ができるわけです。   同じく新加入の《冬夜の物語》も調和持ち。こちらは3枚引いて2枚捨てるソーサリー。クリーチャーであれば捨てるのは1枚でOKと、こちらも《忌まわしき眼魔》を墓地に送るのにぴったりなカード。3ドロー1ディスカードのソーサリーなのでそれだけでもそこそこな性能。 そして前述のように《冬夜の物語》にも調和がついています。1度目は手札から打ち、《忌まわしき眼魔》などをタップして1マナで調和コストで唱えて二の矢を探しにいける強力なカード。 ジェスカイ眼魔はこれまでリソースを取る手段がありませんでしたが、2種の調和ソーサリーによって手札を増やせるようになりました。いずれもカードを引いて捨てる手段なので、《忌まわしき眼魔》を墓地から吊り上げる動きが更に安定し、デッキが単純に強化されましたね。   新カード満載のジェスカイ眼魔、まずはお試しください。     ジェスカイコントロール スタンダードリーグ : 5-0 By SPyromancer MTGアリーナ用インポートデータ 続いてご紹介するのも赤白青のジェスカイカラーのデッキ。しかしこちらは盤面のクリーチャーを除去し、カードを引くコントロールデッキです。   コントロールに必要なのは当たり前ですが除去。盤面を掌握するためには除去は必須ですからね。《稲妻のらせん》に《審判の日》など、単体・全体除去が多数採用されています。 もう1つのコントロール手段は打ち消し。《三歩先》は3マナで使えばただの打ち消しですが、5マナで使うと打ち消しつつ2ドロー1ディスカードと、コントロール好きならたまらない1枚です。 そしてもう1種類の打ち消しとして採用されているのが新カードの《払拭の吐息》です。 普通に使えば相手に2マナの支払いを要求するカウンター、まあ《かき消し》ですね。しかしドラゴンの後見を受けていると相手が払うマナが4マナに増えます。   ドラゴンの後見とは、自分がドラゴンをコントロールしているか、手札からドラゴンカードを公開する必要があります。このデッキには8枚のドラゴンしか採用されていないので、いつでも後見できるとは限りませんが、常に後見している必要があるわけではないのがミソです。   序盤は相手も2マナを支払うことが難しいので、後見は必要ありません。ゲームが伸びて2マナを支払う余裕が出てきたタイミングで後見は必要となるのです。その時ならば手札か場にはドラゴンがある可能性が高く、《払拭の吐息》は多くの状況で《対抗呪文》となるでしょう。 除去と打ち消しで相手と交換を繰り返した後に必要なのは……そう、ドローです。相手より多くのリソースを獲得すれば、盤面をコントロールし続けることができます。   青いドローの定番となった《食糧補充》以外、このデッキのリソース獲得手段はすべてクリーチャーです。更にそのクリーチャーたちはなんとすべて新カード!   《マラング川の執政》はモード選択のあるクリーチャー。4マナのインスタントとして使った場合は3ドローして1枚捨てる、シンプルながらアドバンテージの取れる良スペル。唱えた後にライブラリーに戻る前兆スペルなので、何度も引くチャンスがあります。 クリーチャーとして唱えた場合は6マナ6/7飛行の巨大サイズ。出た時に土地でないパーマネントを2枚まで手札に戻すことができるので、不利な盤面を一発でひっくり返します。   中盤はドローとして使い、後半はフィニッシャーになる、コントロールが求めていた性能です。ドラゴンなのでドラゴンの後見にも寄与してくれます。   もう1匹の《道の体現者、シィコ》もフィニッシャーながらリソースを獲得できるドラゴン。こちらは戦場に出た時に、マナ総量が3以下の呪文をと唱えることができます。《失せろ》《稲妻のらせん》を唱えるもよし、《食糧補充》を唱えてリソース確保も可能。状況に応じて様々な使い方ができる便利なドラゴンです。 サイズも4/5飛行・警戒と頼もしく、攻守において優れています。   従来のコントロールデッキは絶対的なフィニッシャーと呼べるカードが少なく、《完成化した精神、ジェイス》の起動でライブラリーアウトに追い込む戦略を取っていました。が、ビートダウン相手の《完成化した精神、ジェイス》は序盤に引くと非常に弱く、複数枚を抱えて負けるケースが多々ありました。 しかし、『タルキール:龍嵐録』によってこの2種類のフィニッシャーを手に入れ、コントロールは生まれ変わりました。リソース獲得手段を兼ねるクリーチャーがいずれもビートダウン相手にはフィニッシュ手段となるため、以前の形よりも引きムラが少なくなったのです。   優秀な除去、打ち消し、フィニッシャーとすべて揃ったジェスカイコントロールは、どこを取っても強いカードだらけで、かつてのエスパードラゴンを彷彿とさせます。 今後スタンダードで活躍していきそうで、コントロールがお好きな方は早速組んでみてはいかがでしょうか?     オルゾフピクシー スタンダードリーグ : 5-0 By elvin7 MTGアリーナ用インポートデータ 戦場に出た時に能力が誘発する《望み無き悪夢》《逃げ場なし》を《養育するピクシー》で回収して何度も使い回す。そのバウンス戦略の強さは、スタンダードを遊んでいるプレイヤーなら嫌というほど体感しているでしょう。 そこに《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》を加えてバウンス戦略に更に重きを置いたのがエスパーピクシーですが、今回紹介するのは青を入れずに白黒の2色だけでまとめたオルゾフピクシー。 青を使わないことで《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》の強力なバウンスカードを採用できなくなりましたが、今回『タルキール:龍嵐録』で《孤立への恐怖》に代わるカードが登場しました。   それが《陽光真珠の麒麟》です。 戦場に出た時に自分のコントロールしているパーマネントを戦場に戻し、それがトークンだったら1ドローと、基本的な性能は《孤立への恐怖》とさほど変わりません。タフネスが2/1と、《孤立への恐怖》と比べて2少ないのは、対赤を考えれば大きな弱みですが、《陽光真珠の麒麟》のストロングポイントもたくさんあります。   なんといっても瞬速持ちな点は大きく、《養育するピクシー》を除去から守ったり、《逃げ場なし》を回収してすぐに出し直すなど、《陽光真珠の麒麟》にしかできない仕事もあります。《孤立への恐怖》でも《逃げ場なし》は拾えますが、たとえば次のターンに相手がクリーチャーを展開してこないなら《望み無き悪夢》を、クリーチャーを出してきたら《逃げ場なし》を戻したいといった状況で、《陽光真珠の麒麟》ならば最善手を選べます。 《孤立への恐怖》が土地であろうと絶対に戻さなければならないのに対し、《陽光真珠の麒麟》は戻す条件が土地でないパーマネントなので、戦場に何もない状態なら、ただの2/1としてプレイすることができます。これも地味ですがメリットですね。 トークンを戻せばカードを引けるので、《ひよっこ捜査員》の手がかりを手札に戻せば1ドローも一応できますね。まあ手がかりならそのまま生け贄にすれば良いのですが。   面白いのは《ドロスの魔神》の採用です。4マナ6/6と良スタッツで赤アグロに特に強い1枚ですが、《悪夢滅ぼし、魁渡》に非常に弱いのが特徴。麻痺を乗せられてタップしてしまうと、そのまま油がなくなって自滅してしまうためです。 しかし、《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》と入っているこのデッキなら、油がなくなって次に負けてしまいそうな時は手札に回収することができます。   《ドロスの魔神》を採用するということは当然《不浄な別室+祭儀室》も入ります。この《不浄な別室+祭儀室》も使い回せるので、デーモンを生成した後は回収して再びデーモンを作り続けられます。 オルゾフの2色にまとめているので、それぞれのマナシンボルの濃いカードをたっぷり採用できるメリットもあります。黒は《ヴェールのリリアナ》、白は《一時的封鎖》です。 特に《一時的封鎖》は、自分にも被害のある全体除去だと思ってしまいますが、《一時的封鎖》が戦場を離れると、追放しているカードは再び戻ってきます。これは相手に割られるリスクがある一方、自分のカードたちも戻ってくるので、《望み無き悪夢》や《ひよっこ捜査員》が再度誘発してくれるのです。 《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》の戦場に出た時の能力も誘発するので、《望み無き悪夢》が帰ってきてダメージを与え、その後《養育するピクシー》で回収し、再び《望み無き悪夢》を出し直して一気にライフを削るといった使い方も可能です。 オルゾフピクシー。ただエスパーから色を減らしただけではない、全く違った味わいのある素晴らしいデッキです!

【デッキガイド】攻めも守りも自由自在!エスパーピクシー

Standard ピックアップ

2025.03.17

Akira Kobayashi

 皆さん、こんにちは! 「へいか」こと 小林 輝(@enzyutuheika)です。    今回はプロツアー『霊気紛争』で使用したエスパーピクシーの記事になります。    サイドボーディングガイドなどもあるので、エスパーピクシーを使用している方はぜひ参考にしてみてください! ▼プロツアーに向けた調整~構築編~  リミテッドについては前回上げた記事に記載されている通りこなしてきましたが、問題となるのはスタンダード。  プロツアーでのリミテッドは1日に3ラウンドですが、スタンダードは5ラウンドと比率が大きいものになっています。    これについては機会に恵まれ、にいはちさんこと小林遼平さんと愛するシュタインズ・ゲートについて6時間ほど語り合った事があります。  その際に同じプロツアーに行くという事で調整を一緒にやらないかという話になり、マスとんのディスコードサーバーにPT調整チャンネルのみという制限付きでご招待いただきました。    まずメタゲームとしてはグルールアグロ・エスパーピクシー・ドメインの三強と読み、その上でグルールアグロが最多勢力であると考えました。  新しいデッキを考える事も考慮しましたが、さすがにリソース不足により断念。この三つのデッキを使っていきながら選んでいくことに。  グルールアグロについては流石の安定感ですが、新戦力がほぼなし。  また、《不気味なガラクタ》《勢い挫き》という新戦力を得たエスパーピクシーに対してより不利になっている点も気になりました。  最多勢力でもありながら、ミラーに対して《叫ぶ宿敵》4枚や《塔の点火》を多めに取るぐらいのアプローチしか取れなかったため断念。  最終的にはグルールアグロに対して新戦力である《不気味なガラクタ》《勢い挫き》でより優位に立てつつ、他のデッキに対しても《呑気な物漁り》が絡んだ100点のブン回りをすれば蹴散らす事もできるエスパーピクシーを選択しました。    もちろん三色デッキ故の土地周りの事故要素などはありますが、それ以上にブン回ってしまえば抗いようのないムーブはそれ以上のメリットがあると判断。  何より調整相手の小林遼平さんがエスパーピクシーを好み、これで行くという話もあり同じ方向性で見ていった方がいいだろうという事情もありました。  ちなみにデッキサブミット期日2日前、夢の中でチャンピオンズカップファイナル覇者のjgさんから「ドメインランプを使え」と迫真顔で言われました。  境界ランドによってマナベースが改善され、《全損事故》によって赤系アグロに対してある程度抗えるようになったこれも感触が非常によく、最後の最後まで悩んだデッキでした。    実際プロツアー優勝も果たし、勝率的にも勝ち組デッキでした。さすがjgさん、天啓に従わず申し訳ありませんでした。  最終的なリストとしては上記の通り。   ▼メインボード  プロツアー前時点でメインボードに関しては個人的に土地含む56枚がほぼ固定枠だと考えていました。  このフリースロット4枚は下記の通りに選択しました。   3枚目の《悪意ある呪詛術士》  《呑気な物漁り》《養育するピクシー》《嵐追いの才能》と組み合わせることで1/3/2かつエンチャントによる誘発トリガーとして機能します。  他にも1ターン目《悪意ある呪詛術士》から《孤立への恐怖》や《養育するピクシー》で呪われし者・役割・トークンを外すパターンもあり、ほぼ3点クロックとして計算できます。    もちろん他に役割トークンのつけ先がなかったり、バウンスパーツがなかったり等で1/1になってしまったり、後手でのアグロ系には弱いなどサイドでは抜けるカードの筆頭である弱さもありますが……  ドメインランプを筆頭に1マナのテンポを押し付ける展開を大いに貢献するため3枚目を採択しました。   《不気味なガラクタ》  《逃げ場なし》に次ぐ《養育するピクシー》《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》で使いまわせる除去。    グルールアグロやミラーで効果的な一枚で、特にグルールアグロの先手《心火の英雄》から《多様な鼠》という黄金のムーブに対して《不気味なガラクタ》から《養育するピクシー》で回収して再度《不気味なガラクタ》で綺麗に返せるようになったのは非常に大きいです。    もともと有利なグルールアグロですが、これを落としたくないという気持ちでメインに1枚入れました。  実際大活躍してくれ、プロツアー本戦でもvsグルールアグロの成績は4-1でした。   《荒らされた地下室/解剖室》  主にエスパーピクシーミラーを見た一枚です。  ミラーにおける《解剖室》は影響度が大きく、《養育するピクシー》《孤立への恐怖》を回収しつつこれをバウンスすることで半永久的に使いまわせることができます。 《荒らされた地下室》も《嵐追いの才能》レベル2で回収しても誘発し、出てくるトークンも実はエンチャントなので《呑気な物漁り》も誘発します。    元々は《不気味なガラクタ》をメインに2枚、《荒らされた地下室/解剖室》はサイドに入れていたのですがミラーも見るためにメインに入れたという経緯があります。  結局ミラーマッチは1回しかなく、これを有効に使えた場面もありませんでした。  《不気味なガラクタ》もミラーである程度有効なのでメイン2枚のままにするべきだったなと感じました。   《保安官を撃て》  《喉首狙い》《逃げ場なし》で対処できない《輝晶の機械巨人》《油浸の機械巨人》《激浪の機械巨人》などのアーティファクトかつタフネス4以上のクリーチャーを見て採用。    ……が、これは《喉首狙い》の方が明らかによかったです。  グルールアグロの《雇われ爪》が傭兵なため、これを対処できないデメリットの方が大きく感じました。   ▼サイドボード   《精体の追跡者》2枚  グルールアグロに対しては除去を使いまわしていくコントロールプランを取っていくわけですが、《脚当ての補充兵》《多様な鼠》の新生・《熾火心の挑戦者》の雄姿や《探検するドルイド》などによってこちらにアドバンテージエンジンがないとリソース負けしてしまいがち。    そこに対して《精体の追跡者》でリソース部分をカバーしていくという戦略を調整相手の小林遼平さんから教えていただき、実際にやってみるとかなり好感触。  《逃げ場なし》との両構えをしつつ、相手が《亭主の才能》や《探検するドルイド》でずらしてきたところに《精体の追跡者》を出すという流れが綺麗でした。  特に《一時的封鎖》は相手だけを一方的に追放し、《精体の追跡者》のみが残るという構図は非常に強力。   《喝破》2枚  主にドメインランプに対する一枚ですが、ディミーアミッドレンジなど様々なデッキにも幅広く入る器用な枠です。  ドメインランプの《永遠の策謀家、ズアー》《ミストムーアの大主》《審判の日》をまとめて見られるだけでなく、既に出てしまったパーマネントにも《この町は狭すぎる》で戻して出し直してきた所に《喝破》でカウンターもできます。   《否認》1枚  《嵐追いの才能》で回収出来る確定カウンターが欲しかったため、《喝破》と散らしました。  ドメインランプの《害獣駆除》が軽く《喝破》ケアが容易であるため、これに対してリスクを負わせたいというのもあります。   《邪悪を打ち砕く》2枚  ドメインランプ、エスパーピクシーミラーだけでなく《分派の説教者》などエスパーピクシーの《逃げ場なし》を意識したタフネス4以上のクリーチャーに対する回答でもあります。    《嵐追いの才能》で回収するシチュエーションもありますので覚えておきたいところです。   《不気味なガラクタ》1枚  主にグルールアグロへの一枚ですが、ミラーでも有効です。  次回があればメインの《荒らされた地下室/解剖室》と入れ替えたいところです。  《養育するピクシー》《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》といったセルフバウンスで使いまわせる除去でもあり、起動能力によってマナフラッド受けにもなります。    特に諜報でスペルを落としておいて《嵐追いの才能》で回収するという動きは占術である《望み無き悪夢》に出来ない部分です。   《一時的封鎖》2枚  グルールアグロおよび召集に対する全体除去。  こちらの《望み無き悪夢》《不気味なガラクタ》《逃げ場なし》ごと閉じ込めておくとセルフバウンスで使いまわせるのは覚えておくべき点ですね。    《脚当ての陣形》《邪悪を打ち砕く》による裏目も強く、ミラーにも入る《害獣駆除》と枠を争う形ですが、《精体の追跡者》との組み合わせがとにかく強いためセットでの採用になりました。   《勢い挫き》1枚  《不気味なガラクタ》と同じく霊気走破での新戦力。使いまわせる布告が最大の魅力。  《名もなき都市の歩哨》《分派の説教者》といったタフネス4以上クリーチャーに対するアンサーでもあります。  エンジン始動も《望み無き悪夢》でのライフロスト、《養育するピクシー》《孤立への恐怖》の飛行クロックによって上昇しやすくライフゲインもダメージランドを多用するこのデッキにおいては沁みます。    主にグルールアグロに入れますが、《分派の説教者》を擁するゴルガリや青黒ミッドレンジなどにも入ります。   《ゴバカーンへの侵攻》2枚  ドメインランプへの対応策を探していたところ、小林遼平さんが発見した一枚。  《魂の洞窟》絡みの《ミストムーアの大主》と《審判の日》に両方対応できつつ、実は裏面がエンチャントにもなります。  《強情なベイロス》に対するアンサーの一つでもあり、これで前方確認した後に《望み無き悪夢》を出していくという動きもできます。    ドメインランプにしか入りませんが、感触の良い一枚でした。   《安らかなる眠り》2枚  各種眼魔、アゾリウス全知など墓地利用全般への対応策。  《嵐追いの才能》で《この町は狭すぎる》を回収するコントロールプランが出来なくなるのが最大の欠点であり、《除霊用掃除機》も検討しましたが消したいカードが複数あっても問答無用で追放するこれに落ち着きました。    地味にエンチャントでもあるので《呑気な物漁り》が誘発するのもポイント。   ▼Tips 適切なアクションを考える  こちらが先手、相手のデッキは不明。初手は1回マリガンした後の6枚としましょう。  ぱっと見ると違和感による誘発を最大限に活かすために《呑気な物漁り》から出したくなりますが、これは《嵐追いの才能》が正解であることが大半です。    なぜならば《呑気な物漁り》スタートだと2ターン目で《孤立への恐怖》は戻すものがないため唱えられないからです。  ファストランドを戻すこともできますが、その場合だと3枚目の土地を引いた時の《嵐追いの才能》《喉首狙い》のダブルアクションができなくなるデメリットの方が大きくなります。    後手の相手が1マナクリーチャーを出して来たら《喉首狙い》で除去はできますが、赤系アグロでない限りは出してこないケースが大半です。  そうすると消去法的に《嵐追いの才能》になるわけですが、そうすると1マナ余ってしまいテンポが悪いですし盤面もやや弱めです。  さらに3枚目の土地を引けなかった場合、《孤立への恐怖》で《嵐追いの才能》を戻してそのままダブルアクションも出来ない恐れがあります。  《嵐追いの才能》からスタートすることで《孤立への恐怖》へと繋がりつつも、3ターン目には《呑気な物漁り》+《嵐追いの才能》のダブルアクションが確定します。  また、3枚目の土地が引けているならば《呑気な物漁り》+《喉首狙い》でブロッカーをどかしつつライフを詰めていくのもよしと選択肢の幅が広がります。    ちゃんとマナを使い切る・ダブルアクションをしていくことを意識するだけでも大きく違うので意識していきましょう。   ファストランドの受け入れを考える    このエスパーピクシーではファストランドが3種4枚ずつの合計12枚が入っています。土地の総数としては23枚であり、半数以上を占めている割合です。  テキストを読み上げるようですが、このファストランドは「4枚目以降の土地」として置くとタップインします。これを意識してあえて3枚目の土地を置かないという行動が肯定される場面があります。    例として、相手はグルールアグロで戦場にはこの4枚があるとしましょう。相手の盤面は更地です。  手札には下記の4枚。  《コイロスの洞窟》を置いてしまいがちですが、私は置きません。  前提として、この手札では《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》の青いカードが2枚浮いており、青マナの土地を引くとダブルアクションが取れる状態です。    《コイロスの洞窟》を置いてしまうと青絡みのファストランドである《闇滑りの岸》《金属海の沿岸》がタップインになってしまうため、《アダーカー荒原》《地底の大河》の2種類のみしかダブルアクションが取れなくなります。  このリストでは《アダーカー荒原》2枚、《地底の大河》3枚の合計5枚で受け入れ枚数が非常に少なくなってしまいます。  一方で置かなかった場合、ファストランドがアンタップインになるため、《闇滑りの岸》《金属海の沿岸》の合計8枚も受け入れとして考えられるようになります。ダメージランドの5枚と合わせると合計13枚ですね。    先述した2+2のダブルアクション、つまり《孤立への恐怖》や《この町は狭すぎる》から《逃げ場なし》は出来なくなりますが、《不気味なガラクタ》はプレイできます。 さらに次のターンでは手札の《コイロスの洞窟》を置くことで2+2のダブルアクションができるようになります。    これらを考え、アンタップインの青マナ土地を置ける確立を大幅に上げるために3枚目の土地として《コイロスの洞窟》は置かない……というわけです。    細かく動けるデッキであるため、このように土地の置き方によって勝率が大きく変わってきます。  土地は毎ターン置かねばならないということはもはや常識ですが、その常識を一旦疑ってみるのも大事です。   ▼マッチアップガイド vsグルールアグロ  《不気味なガラクタ》《逃げ場なし》の除去を使いまわせることから有利マッチですが、《多様な鼠》+《巨怪の怒り》が絡むと一瞬で負けうるので慎重にやらねばなりません。    キープ基準としては当然ながら《不気味なガラクタ》《逃げ場なし》といった除去になりますが、先手で《呑気な物漁り》《悪意ある呪詛術士》《養育するピクシー》《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》というような初手であればダメージレースで勝ちうるためキープできます。  後手だとダメージレースを制するのは難しいためマリガンで考えますが……  ゲームプランとしては基本的に除去を使いまわしてコントロールしていきますが、除去ばかりしていては《脚当ての補充兵》《多様な鼠》の新生によっていずれリソース負けしてしまいます。  ですので、除去しつつも《嵐追いの才能》のカワウソトークンや《養育するピクシー》などでクロックを刻んでいき、ダメージレースしていくという方向性になります。  《巨怪の怒り》だけ気を付けて細かく除去していきながら、盤面有利を作り出して押し切るという流れを作るといいでしょう。   ▼サイドアウト-3《悪意ある呪詛術士》-1《荒らされた地下室/解剖室》-2《悪夢滅ぼし、魁渡》   ▼サイドイン+2《精体の追跡者》+1《不気味なガラクタ》+2《一時的封鎖》+1《勢い挫き》    サイド後でも依然として除去を使いまわすコントロールプランになります。  相手は《脚当ての陣形》《探検するドルイド》を増量してくることから土地を立たせてターンを返し、こちらの除去をかわそうとしてきます。    それを逆手に取って《精体の追跡者》を出し、そのまま《望み無き悪夢》《嵐追いの才能》《孤立への恐怖》などによってリソースを稼いでいけば勝利は目前です。  《一時的封鎖》についても2マナ立っているところには極力出さないようにすることを心掛けておきましょう。    ただし、最近は《陽背骨のオオヤマネコ》プランを取ってくる事が多く、ライフを詰められると明確な時間制限が発生するため以前ほど有利ではなくなってきます。  要所要所でちゃんと相手のライフをコツコツと削り、ライフレースを制していく意識が必要です。   vsドメインランプ  微不利マッチです。  とにかく《呑気な物漁り》《嵐追いの才能》《悪意ある呪詛術士》などの1マナクリーチャーを繰り出し、《望み無き悪夢》も絡めて早期決着を目指していく形となります。    これに対する《害獣駆除》が致命的な敗着になってしまいますが、デッキのマナベース的に2~3ターン目に《害獣駆除》をされる確率は低いため割り切ってしまった方がよいです。    キープ基準については上記にも記載した通り1マナのクリーチャー群。クロックがなければ始まりません。  《呑気な物漁り》+エンチャント類がとにかくキー。どんどんクロックを重ねていきましょう。   ▼サイドアウト-4《逃げ場なし》-1《荒らされた地下室/解剖室》-1《不気味なガラクタ》-1《悪意ある呪詛術士》   ▼サイドイン+2《喝破》+1《否認》+2《邪悪を打ち砕く》+2《ゴバカーンへの侵攻》    サイドではカウンターと《邪悪を打ち砕く》によってある程度ゲームを急がなくても良くなります。  それでも攻める立場である事に変わりはなく、クロックを用意した上でカウンター類と《邪悪を打ち砕く》で相手のアクションに対応していきたいところです。    2マナ浮きで《永遠の策謀家、ズアー》を唱えられた際、《ホーントウッドの大主》等がある場合は解決前に《邪悪を打ち砕く》で先に破壊しておくことを勧めます。  《永遠の策謀家、ズアー》の起動にスタックで《邪悪を打ち砕く》をできればよいのですが、相手もそれは織り込み済であることを忘れてはいけません。    とはいえ先に《永遠の策謀家、ズアー》に対して《邪悪を打ち砕く》で処理してしまうパターンもあるので、ケースバイケースではあるのですが……   vsエスパーピクシー  どの程度ミラーを意識しているかで変わってきます。  相手が《分派の説教者》まで採用しているとやや不利です。    お互いに除去し続けるため、長期戦になりがち。  先に《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》パッケージが揃った方が勝ちになりがちですが、この動きをするためには6マナ必要で大振りなので先に揃われたとしてもこの隙を突く事で勝ちをもぎ取れる時もあります。  《嵐追いの才能》レベル2に合わせて《この町は狭すぎる》で大きくテンポを取れますが、その逆も然りなので覚えておきましょう。    《逃げ場なし》が主な除去になるため、《呑気な物漁り》で《孤立への恐怖》に+1/+1を乗せ、タフネス4を作ることは意識しておきたいポイントです。  《養育するピクシー》《悪意ある呪詛術士》に+2/+2を載せていくのも良いです。もちろん《逃げ場なし》に気を付けながらやっていきましょう。   ▼サイドアウト-2《悪夢滅ぼし、魁渡》-1《保安官を撃て》-1《喉首狙い》-1《悪意ある呪詛術士》 ▼サイドイン+2《邪悪を打ち砕く》+1《不気味なガラクタ》+1《喝破》+1《精体の追跡者》    相手の構成やサイドプランによって変わってきます。  《悪夢滅ぼし、魁渡》については忍術先が定着しづらく、《逃げ場なし》もあり《邪悪を打ち砕く》で対処されがちなため基本的に抜いています。  後手であれば《悪意ある呪詛術士》をもう少し減らしますし、ケースバイケースといったところです。    サイド後でも方針は変わりませんが、お互いに《邪悪を打ち砕く》がある点については留意すべき事項です。  《嵐追いの才能》レベル2に合わせて《邪悪を打ち砕く》をされるのが最悪のパターンなので、ここは必ずケアしましょう。    上記の内容はマスとんの皆様との指名対戦を重ね、調整相手である小林遼平さんと話し合ってゲームの争点やゲームプランなどを確立させていったものです。    その成果もあり、本戦の結果としては5-3の勝ち越し!  特に得意なマッチアップとするグルールアグロで4-1できたのが非常に大きく、練習の成果を感じました。(逆に言えばそれ以外のマッチは1-2ですが……)    この場を借りてマスとんの皆様に感謝を申し上げます。  本当にありがとうございました。   ▼今後のエスパーピクシーについて  ここまではプロツアー前のエスパーピクシーの話。  現在はコンボマスターことcftsoc3さんが3月2日にメイン《食糧補充》《分派の説教者》《ベイルマークの大主》を採用してスタンダードチャレンジで優勝したことをきっかけに変化が訪れています。    大きな相違点としては《呑気な物漁り》および《悪意ある呪詛術士》の不採用ですね。  これによってアグロプランが取りづらくなった代わりにミッドレンジとしての太さが備わり、《嵐追いの才能》+《この町は狭すぎる》による長期戦の強さが際立っています。  抜けたこの2枚もグルールアグロやエスパーピクシーミラーではサイドアウト候補であり、その分これらに対して優位に立てる構成となっています。  ここから発展してオータム・バーチェットさんは《悪夢滅ぼし、魁渡》をサイドボードに移した上でメインから《食糧補充》4枚・《鋼と油の夢》3枚、果てには《ギックスの命令》まで採用したエスパーピクシー・コントロールと呼んでも差し支えない構成を作り上げています。  1マナ域が減り《害獣駆除》や同型に対してより強くなっている一方、ドメインランプに対してライフを詰め切るというプランが取りづらくなっており相性が悪化しているように思います。  その一方で従来の《呑気な物漁り》《悪意ある呪詛術士》を採用した型もスタンダードチャレンジなどで上位につけています。  どの構成にもメリットとデメリットがあり、メタに応じて使い分けていくことになるでしょう。    以上がプロツアー旅行記から始まり4本の記事と長くなってしまいましたが、私が初プロツアーにおいて調整してきた過程になります。  これが皆様のマジック道において一つのご参考にでもなれば幸いです。    これほどまでに真剣に調整をしてきたのは初めてで、体力的にも精神的にも大変でしたがコツは掴めたような気がするので今後の機会に活かしていきたいところです。  こうした調整も含め、プロツアーという大会を通してマジック:ザ・ギャザリングを心の底から楽しめたと思えました。    「Let's Enjoy Magic」を胸にこれからも楽しんでいきます!!

【今週のピックアップデッキ】ディミーアコントロール/エスパーレジェンズ/純鋼ストーム

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.03.14

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ ディミーアコントロール エスパーレジェンズ 純鋼ストーム   ディミーアコントロール スタンダードチャレンジ : 7位 By TheSandwichKing MTGアリーナ用インポートデータ 現在のスタンダード環境は、エスパーピクシーに各種赤アグロとアグロ全盛期。 とはいっても、ミッドレンジとしてはズアーやゴルガリ、コンボならアゾリウス全知と、どのアーキタイプもメタ上位に存在しています。 一方コントロールデッキはというと、一時は死んでいるとまで思われていたのですが、プロツアー『霊気走破』で活躍し、今ではメタの一角にまで上り詰めました。   それがアゾリウスコントロール。リソース源として《食糧補充》を採用し、打ち消しを少し入れ、除去は《審判の日》、フィニッシャーには《完成化した精神、ジェイス》と、古典的なドロー・全体除去・フィニッシャーのアゾリウスコントロールです。 ここまで読んでお気づきになった方もいるのではないでしょうか?   実はこの青で打ち消してドローして、白で全体除去を打ち、フィニッシャーを叩きつける。この動きは青白だけでなく、青黒でもできてしまうのです!   というか、除去に関しては白より黒の方が良質です。白の2マナの除去は《全損事故》と、タップ状態のクリーチャーにしか使用できませんが、黒ならば問答無用で破壊する《喉首狙い》に《悪夢滅ぼし、魁渡》にも触れる《シェオルドレッドの勅令》、更に1マナの《切り崩し》とよりどりみどり。 《全損事故》はやはりタップ状態のクリーチャーにしか打てないのはかなりのデメリットです。構えていることが見え見えなので、相手はケアして攻撃しないことが容易ですし、《逸失への恐怖》などのシステムクリーチャーにも触りづらい。《喉首狙い》なら先手2ターン目に構えて、相手が出してきた2マナクリーチャーを破壊し、自分のターンで安全に《食糧補充》を打てますからね。 《審判の日》こそ青黒にはありませんが、その代わりに《死人に口無し》を採用できるのはむしろ良いことかもしれません。ただの全体除去である《審判の日》と違い、《死人に口無し》は証拠収集で墓地のカードをライブラリーからすべて抜けるので、アゾリウス全知から《全知》をすべて抜くなど、本来全体除去が効かないマッチでも機能する、素晴らしい全体除去なのです。 打ち消しは少し青白には劣ります。何せ青白には《喝破》がありますからね。コントロールフリークが十年以上も再録を待っている《マナ漏出》の上位互換を青白に与えるなんてずるいですよね。 とはいえないものは仕方ないので、《否認》《三歩先》でなんとか打ち消し枠を埋めています。   《強迫》は青黒だけの強み。事前に《豆の木をのぼれ》を抜いてしまえば実質打ち消しのようなものですし、赤アグロに対しても《巨怪の怒り》などを抜きつつ、手札を見ることでプレイがしやすくなるので、使いやすいカードです。 そしてなんといっても《油浸の機械巨人》!このカードはディミーアコントロールを語る上で欠かせません。 コントロールが求めるサイズの大きな絆魂。エスパーピクシーの《逃げ場なし》に耐えつつ、《この町は狭すぎる》で戻されても、出し直して手札破壊として使用できるので、特に青黒バウンス系のデッキに強いカードです。 もちろん、赤アグロに対しても強力です。手札を見て1枚を抜けるので、《巨怪の怒り》などがないかをチェックしつつ、《魔女跡追いの激情》を抜いて安心してブロッカーとして立たせられます。   青白の《激浪の機械巨人》はコントロールに採用しづらい能力ですが、《油浸の機械巨人》はぴったり。4枚目も検討したくなりますね。   《油浸の機械巨人》が入ったとはいえ、フィニッシャーが《完成化した精神、ジェイス》である点は変わりません。青白も青黒もフィニッシャーが《完成化した精神、ジェイス》になったのは、決してズアーを意識した結果ではありません。 現在のスタンダードにはコントロールで採用できる絶対的なフィニッシャーがいないため、《完成化した精神、ジェイス》を大量に採用しているのです。   絶対的なフィニッシャーとは、生き残るだけでゲームに自動的に勝ったり、速やかにゲームを終わらせられる性能を持つ重いカードです。たとえば《ドミナリアの英雄、テフェリー》は、出してカードを引いているだけでゲームに勝利しますし、《船砕きの怪物》は呪文がすべて通らなくなり、ブロッカーはバウンスされ、7/8がすぐにライフを削り切ります。他には《夢さらい》などでしょうか。 今のスタンダードには、このレベルの強さのフィニッシャーはいません。そこで2枚引けば大体の状況でゲームに勝てて、相手の除去も受けることのない《完成化した精神、ジェイス》が採用されることとなったのです。   エスパーピクシーや赤アグロ相手にもコントロール側は《完成化した精神、ジェイス》をフィニッシャーとします。適当に重いフィニッシャーを出して4回殴るより、《完成化した精神、ジェイス》を複数枚出して相手のライブラリーを削りきる方が簡単なのです。   コントロールデッキを調整する時、まず減らしがちなのが《完成化した精神、ジェイス》だと思いますが、少なくともメインでは4枚の《完成化した精神、ジェイス》を使った方が良いと思います! アゾリウスコントロールに続いてディミーアコントロールも登場し、いよいよスタンダードのコントロールにもバリエーションが生まれました。   環境が成熟していくほど強くなるコントロール、ここからの成長に期待です。     エスパーレジェンズ パイオニアリーグ : 5-0 By  Heilagur MTGアリーナ用インポートデータ 長きにわたってスタンダードで活躍し続けた《策謀の予見者、ラフィーン》。パイオニアでその力を見せつける時がついにやってきました。 エスパーパルへリオンなど、ディスカード手段として採用されることはあったものの、《策謀の予見者、ラフィーン》がメインになるデッキはこれまでパイオニアには存在しませんでしたが、このデッキはエスパーレジェンズ!主役はもちろん《策謀の予見者、ラフィーン》です。   さて、このデッキはレジェンズの名の通り、エスパーカラーの伝説のクリーチャーで構成されています。   1マナ域は良質なサイズの《アクロスの英雄、キテオン》と、クリーチャーを守る《離反ダニ、スクレルヴ》。どちらも定番の強力な伝説たち。 2マナ域の2種はどちらも青黒で、少し珍しいカードが並んでいます。   スタンダードでも使用可能な《闇の中の研究者、ナシ》はリソースを獲得するクリーチャー。こちらは攻撃が通った際に伝説のカードやエンチャントを切削した中から加えられます。このデッキには伝説のパーマネントとエンチャントがたっぷり入っているので、攻撃が通るだけで一気に2~3枚のカードを得られることも。 《顔を繕う者、ラザーヴ》は攻撃するたびに墓地を追放して手がかりを生み出す、こちらもリソースが取れるクリーチャーです。更に手がかりを生け贄に捧げることで、《顔を繕う者、ラザーヴ》を追放したクリーチャー・カードのコピーにできるので、墓地に落ちた《策謀の予見者、ラフィーン》などになることができます。 ただ、それだけでは《顔を繕う者、ラザーヴ》の力は半分しか引き出せていません。《老いざるメドマイ》によってその真価を発揮します。 《老いざるメドマイ》は初めて見た方も多いかもしれません。プレイヤーに戦闘ダメージを与えると追加ターンを獲得し、追加ターン中には攻撃できないこのカード。6マナと通常プレイは重いこの伝説のスフィンクスが、《顔を繕う者、ラザーヴ》と組み合わさってコンボになります。   《顔を繕う者、ラザーヴ》で《老いざるメドマイ》を追放し、手がかりを生成してそれを生け贄にして《顔を繕う者、ラザーヴ》が《老いざるメドマイ》になると追加ターンを得ます。   そして追加ターン中は《顔を繕う者、ラザーヴ》は当然攻撃可能となり、再び墓地を追放して手がかりを出し、それを生け贄にして再び《老いざるメドマイ》になり、また追加ターンを獲得。つまり、墓地にカードがある限り、追加ターンがずっと続くことになります。 さて、そもそもエスパーレジェンズで組む意義はなんでしょうか?スタンダードでは3色をすべてアンタップインで出すために《英雄の公有地》を採用する必要があり、そのためにレジェンズでした。しかしパイオニアでは《闇滑りの岸》などのファストランドと《神無き祭殿》をはじめとしたショックランドが使えるため、《英雄の公有地》頼りではありません。 ならばなぜレジェンズにこだわるのか?それは《モックス・アンバー》です。掟破りの0マナファクトによる爆発的な展開が可能になるのが、エスパーレジェンズ最大の魅力!《アクロスの英雄、キテオン》から2ターン目に《策謀の予見者、ラフィーン》なんてことも容易にできてしまうのです。 《戦闘研究》も忘れてはいけません。普通に使うだけで《好奇心》ですが、エンチャント先が伝説なら+1/+1に護法(1)と超破格! 加えて呪禁付与の《破片魔道士の救出》に対赤アグロの最終兵器《幽霊による庇護》と、クリーチャーを守ることに徹底しているのがこのエスパーレジェンズ。《離反ダニ、スクレルヴ》も合わせると《策謀の予見者、ラフィーン》を倒すのは至難の業でしょう。 《策謀の予見者、ラフィーン》を再び輝かせたい方はこのデッキに決まり!     純鋼ストーム モダンリーグ : 5-0 By SoggyCheerios ストーム。コンボの代名詞とも言えるこのアーキタイプは、かつてのスタンダードにも存在し、レガシーやモダンでは黎明期からずっとメタゲームを脅かしています。 現在ストームと呼ばれて真っ先に思い浮かぶのはルビーストームですが、一昔前に一世風靡したストームデッキがモダンにはありました。   それが純鋼ストームです。   今でこそ《死の国からの脱出》《研磨基地》で実現可能な脱出基地がいるため、珍しくなくなってしまった2ターンキルですが、当時は「2ターンキルできるすごいデッキが出てきた!」と世のコンボ好きは純鋼ストームに注目していました。   その後、長い間すっかり名前を見なくなってしまった純鋼ストームでしたが、最大の相棒……というよりコンボパーツである《オパールのモックス》が解禁されたことで、モダンについに帰ってきました。 デッキ名を冠する《純鋼の聖騎士》が当然キーカード。装備品が戦場に出るたびに1ドローするハンマータイムでもお馴染みのクリーチャー。あちらでは《巨像の鎚》を0マナで装備するのがメインの仕事でしたが、純鋼ストームではドローの方が重要となってきます。 このデッキのアーティファクトを見てください。名前も能力も知らない装備品たちがあります。これらの能力は一旦無視して、マナコストだけを見ましょう。   0マナです。《純鋼の聖騎士》がいればタダで1ドローできるのです。こうして0マナ装備品を大量に出してドローしていき、《撤収》《ハーキルの召還術》で手札に戻し、再び出し直す。こうして大量にカードを引いていき、最終的に《ぶどう弾》で相手のライフを一撃で削りきる。これが純鋼ストームの基本の動きです。 《オパールのモックス》解禁前は《撤収》を打つためのマナを捻出するのがとにかく大変でした。《極楽のマントル》を《純鋼の聖騎士》に0マナで装備してマナを出しても1マナしか増えないので、《羽ばたき飛行機械》と合わせて採用する必要があり、不純物が大量に入ってしまっていました。マナの問題を《オパールのモックス》が解決してくれたので、2ターンキルがかなり現実的に可能なラインになっています。 《河童の砲手》の採用は目から鱗でした。0マナのアーティファクトを並べれば《河童の砲手》の着地は用意ですし、《河童の砲手》を出してから0マナ連打で一瞬でゲームも終わります。 《撤収》《ハーキルの召還術》では《河童の砲手》も手札に戻ってしまいますが、《河童の砲手》を唱える→スタックで《撤収》《ハーキルの召還術》で0マナアーティファクトを戻せば、即席で使用した0マナ装備品を回収しつつ、《河童の砲手》を戦場に送り出せます。 以前までの純鋼ストームは一度コンボをスタートさせた後は、《ぶどう弾》で相手のライフを削りきるまでコンボが途切れないのを祈るしかありませんでした。《撤収》《ハーキルの召還術》で装備品を出し直すループは、カードは引けますがマナは増えないので、最終的に《ぶどう弾》とそれを打つマナ(追加の《オパールのモックス》など)をしっかり引き込む必要があり、止まるリスクもそこそこあったのです。 しかし、《河童の砲手》によってその憂いはなくなりました。コンボが止まってしまいそうでも《河童の砲手》さえ途中で出しておけば、コンボが途切れた時には致死量に近いサイズの《河童の砲手》が戦場にいるはずです。《溶岩拍車のブーツ》で速攻をつけて攻撃することもでき、勝利に必要な条件がかなり緩くなったのです。 これまで0マナの装備品たちを活かす手段がなかった純鋼ストームにとって、《河童の砲手》は最高の相棒です。   2ターンキルするデッキが更に環境に増え、モダンはますます恐ろしくなっていきますね。

Let's Enjoy Magic! - Pro Tour Aetherdrift in Chicago(プロツアー旅行記前編)

Standard ピックアップ

2025.03.06

Akira Kobayashi

 皆さん、こんにちは! 「へいか」こと 小林 輝(@enzyutuheika)です。    記事タイトルの通り、チャンピオンズカップファイナルシーズン2ラウンド3で9-3の13位という成績を残したことで得たプロツアー権利でシカゴのプロツアー「霊気走破」に出場してきました!    結論から申し上げますとプロツアー本戦では4-4でギリギリ二日目進出し、二日目では9-6で迎えたプロツアーチェインバブルマッチ(10勝以上だと次回のプロツアー権利を獲得できます)でHreruya Prosのマッティ・クイスマさんに敗北し9-7の113位でした。    そして翌日に行われたPT出場者限定の世界一レベル高いPTQことセカンドチャンスPTQでは初戦敗退という結果でした……が、このプロツアーでは本当に何事にも代えがたい経験をさせていただきました。  というわけで、プロツアーの準備から帰国に至るまでの道程を、前後編で書かさせていただこうと思います。長くなってしまいますが、お付き合いいただけると幸いです。    なお、今回はマジックの記事というより、プロツアー旅行記がメインとなります。   ・はじまり~プロツアー「霊気走破」に出場した経緯~  まずは本プロツアー霊気走破に出場するに至った理由であるチャンピオンズカップファイナルシーズン2ラウンド3。  この詳しい内容については私のNoteで恐縮ですがこの記事に記載されています。是非ご覧ください。  このチャンピオンズカップファイナルシーズン2ラウンド3で愛機のアゾリウスコントロールを手に9勝3敗という成績を残し、13位になったことでプロツアーの権利を得ました。  が、この時に得られた権利は翌月の6月末に行われるプロツアー「モダンホライゾン3」。    仕事面やパスポートの問題など様々な理由によって断念し繰り越しをお願いしたところ、世界選手権を挟んだ事もあり権利を獲得した2024年5月からかなり間の置いた2025年2月のプロツアー「霊気走破」出場となりました。 旅行前準備編  これについてははまさん(@ziguyan)主催のはまツアーに参加させていただき、羽田空港~シカゴの直行便およびホテルを確保していただきました。  感謝してもしきれません。ちなみに金額としては合計24万ほど。激痛。    それに伴いGoogleスプレッドシートのToDoテンプレートを使って必要なものをリスト化し、一つずつ潰していきました。  海外でのネット環境についてはソフトバンクユーザーであったため、アメリカ放題というサービスがあり特に手続きの必要もなくできました。  防寒着に関してはこの時期のシカゴはなんとマイナス15度。恐ろしい寒さです。手持ちはコートなどでダウンジャケットのような防寒着がなかったためこれも用意していく必要がありました。  ワークマンに寄ってみたもののよさげなものがなく仕方なくGUに寄ったところ、「ヒートパデッドブルゾン」というよさげなものを発見。かなりモフモフしています。  これが予想以上に暖かく、-15度という地獄のようなシカゴの寒さにも適応できる優れものでした。  今後の冬で愛用していくことになりそうです。値段も4,990円と安価でおすすめです!   ▼あってよかったもの ・延長コード  当然ながらホテルは備え付けのコンセントのみ。今回は5人で1部屋を使う事もあり、延長コードは必要だろうと持ち込みましたがこれが大正解。  1人1部屋であれば不要だとは思いますが、複数人で利用する場合は延長コードは強くお勧めします。     ・アイマスク  とにかく板です。  約14時間の長期フライトにおいてアイマスクの有無で睡眠の質が変わってきますし、同様に複数人で1部屋を利用する際も灯りに影響されず寝られるのは◎。   ・ウェットティッシュ  地味ながらMVP。日本とは異なり海外ではおしぼりのようなものは出てきません。予め手を拭いておくことができるウェットティッシュはかなりストレスが軽減されました。  特にシカゴではピザなどの手づかみのものが多く手が汚れたりするので結構活躍してくれました。   ▼持って行った方がよかったもの ・スリッパ  ホテルの部屋は土足可ですが、靴を履きっぱなしも疲れますのでスリッパは欲しかったです。(アメリカのホテルはスリッパなしが一般的らしい)  飛行機内でも靴からスリッパに履き替えられるとかなり楽そうだったので次回があればスリッパは是非持ち込みたいと感じました。   ・リップクリーム  普段使っているのですが、今回に限って忘れてしまい……  寒さも相まって本当に乾燥します。最終日には唇が切れてしまいちょっと大変でした。必ず用意しておきましょう。   プロツアーシカゴ旅行記  そうして迎えた2月19日、羽田空港へ朝9時前に到着。  はまさんを筆頭にはまツアーに参加される方々と合流し、そのまま10:50のフライトへ。  フライト時間は約14時間。13時頃に機内食を食べると暗くなりそのまま仮眠。そこから約5-6時間後に再度機内食を食べて暗くなり仮眠……の繰り返しでした。  機内食は結構美味しく、味噌汁も出てきたのが◎。さすがJAL。  この時やはりお尻がやや痛くなったりしたので、余裕があれば座布団などを持って行くといいかもしれません。  そうしていよいよ着陸!シカゴの上空から眺める光景は素晴らしく、思わず感動してしまうほどでした。  が、シカゴの気温はマイナス15度。外に出た瞬間凍り付くかと思いました。  よく一緒にMTGをしているいわきさんと記念すべきアメリカでの初マック。ホットチョコレートにしましたが、とんでもない甘さの暴力でザ・アメリカを味わいました。  第3ターミナルから第2ターミナルに電車で移動し、そこからUberで車を呼びホテルまで40分ほど揺られると……  目的地であるヒルトン・ガーデン・イン・シカゴ・マコーミックプレイスに到着。とにかくスケールがデカい!  ホテルの前にはマジックコンの広告もあり、ここでプロツアーに出るんだという実感が今更ながら湧いてきました。  とはいえプロツアーまであと二日、それまではシカゴを堪能することに……と言いたいところですが、さすがに長時間のフライトで疲れたのでUberを利用して部屋でいざシカゴピザ!  で、でかい!! チーズもたっぷり!! 暴力的!!  意気揚々とかぶりつきますが……  あまりにも重すぎてなんと2ピースで満腹、撃沈。即落ち2コマです。  この流れで同室の方とフリプなどをして就寝。  すがすがしい朝を迎え、早速ホテルの前にあるサブウェイへ! 何を選べばいいのか分からなかったため、店員さんにオススメを聞くと「それならビーフね!」とのことだったのでそれを注文。非常に美味でした。  また、ここで行弘さん・松浦さん達と遭遇! ああ、シカゴの地に集結しているんだな~と少し感動してしまいました。  ハーフを頼んだのですが、それでも非常に大きい! これで約8ドル(1,200円)。太さもペットボトル以上で満足感◎。  ちなみに他の部屋の方がフルサイズで頼んだ時の画像はこちら。500mlペットボトルと比較しても分かる通りデカすぎる……  ホテルの中にあるスタバでカフェラテも購入したところ、今度は井川さん・中村さんが!  この際に井川さんから「30回以上来てるけどこの寒さは初めて」「耳当ては特にいいのでオススメ」という言葉をいただきました。プロツアー先輩だ!!    優雅な朝食をとったら……そう、次は昼食ですね!  Il Culaccinoというお店が先ほどのサブウェイの横にあり、Google Mapの評価も高かったためはまツアーの参加組で突撃。  ここでも伝家の宝刀「店員さんのオススメ」を聞き、いただくことに。  このチーズがかかった物体はなんとフライドチキン。デカすぎる。  マジか……という顔をしながら頬張ると美味!! とにかくカロリーの暴力が襲い掛かってきます。  なんとか食べた後はプロツアー参加者たちで卓ドラフトの練習。  1-1《悪魔の破砕機》から1-2に《ロケッティアの技師、ダレッティ》の姿が。普段ならスルーですが、今回は《悪魔の破砕機》使いまわしが見えるためピック。  リアニメイトの《軌道修正》や確定除去の《スピン・アウト》など黒を中心にピックしていったところ、2パック目で《ブルードハート・エンジン》《轟雷のブルードワゴン》が流れてきたため綺麗に緑黒の席に座れた形となりました。    3パック目では《アラクリアの心、カラドーラ》が流れてきたためこれをカットしつつ白黒土地の《磨かれたやせ地》も拾えたためタッチ白で完成度の高いデッキが完成。    結果はマリガンとマナフラッドに屈し2-1となりましたが、除去もありデカブツもありリアニメイトもありと非常によい緑黒に出来上がったと感じました。プロツアーに向けて視界良好!    そして午後5時頃から開催されるプロツアー出場者用の前日パーティに参加すべくマコーミックプレイスへ。  このヒルトン・ガーデン・イン・シカゴ・マコーミックプレイスホテルはマコーミックプレイスに直通となっているためスムーズに行ける……かと思いきや、デカすぎて迷子に!!    プロツアー参加者らしき人を見つけ、パーティ会場はどこ? と拙い英語で筆談すると案内してくれ事なきを得ました。ありがとうございます。  そうして辿り着いたパーティ会場。ここでプロツアー出場者を証明するバッジと参加賞のバッグ・プレイマット・パックなどを受け取りました。    プレイヤー・オブ・ザ・イヤーのハビエル・ドミンゲスさんを筆頭に「錚々たる」という言葉ですら足りないほどの方々がそこら中に歩いています。  衝撃のあまり立ち尽くしてしまいましたがこうしてはいられません! ガンガン突撃を仕掛けていきます。  まずはYellowhatこと殿堂プレイヤーのガブリエル・ナシフさん。コントロールマスターであり、配信でよく勉強させていただいている方の一人です。  この方には持ち込んできた《喝破》《否認》にサインをいただき、ツーショット! 本当に目の前にあのナシフがいるんだ、と感動しきりでした。  そしてプロツアー・ファイレクシアで優勝を果たした殿堂プレイヤーリード・デュークさん! 日本の中でも特にファンの多いお方。  本当に聖人という言葉が似合う方で、溢れ出る色気とにこやかな笑顔に悩殺されてしまいました。サインをいただいている時にスタッフの方が「写真を撮るよ!」と仰っていただき、こうした写真も……  サインを書くリード・デュークさんの美しさのあまりに興奮してしまう私を見事に激写していただきました。  見てください、このリード・デュークの御顔を。これで惚れない男はいません。  そしてアゾリウスコントロールといえばこの方を忘れてはいけません。パイオニアでアゾリウスロータスというデッキを全世界に知らしめたパトリック・ウーさんです!  あなたの大ファンです! と伝えた時の照れくさそうな顔は忘れられません。  同じ2月に行われたチャンピオンズカップファイナルで見事優勝を果たしたマ・ノアさんも。  プロツアー権利を獲得したチャンピオンズカップファイナルシーズン2ラウンド3のフィーチャーマッチでとても楽しい時間を過ごしたということもあり、顔を合わせると声を掛け合う仲になりました。    それは今回でも変わらず、この場でも出会うと「オオ~!」と駆け寄ってくれました。お互いに明日の健闘を祈り肩を組みながらパシャリ!  イタリアのスターことアンドレア・メングッチさんも配信をよく見ており、私が憧れとしている一人です。  配信と変わらないハイテンションで快くツーショットとサインに応えていただきました!  世に大きな衝撃をもたらしたハンドシェイク謹製緑トロンを手にプロツアー・指輪物語で準優勝を果たしたクリスティアン・カルカノさんも!  非常に優しい方で、わざわざスマホのメモ帳に日本語で「ありがとう!頑張って」と書いてくださりました。    そうしているとハビエル・ドミンゲスさんのプレイヤー・オブ・ザ・イヤーの式が始まり、スピーチが始まりました。  英語なので話している内容はわかりませんでしたが、感無量の面持ちをされていたのがとても印象に残りました。おめでとうございます!  式が終わった後は解散したり、プロツアーの参加賞パックでドラフトしたりする中で同じく日本人の大川さんより「南米の人たちとドラフトしない?」というお誘いを受けドラフト! これも醍醐味の一つですね。  3マナ域で見えていないものは4枚目の《溶岩族の砲兵》です。  1パック目の時点でマルチアンコモンの《推進力強化帆船》《舷側砲の一斉射撃》を確保していたこともあり青赤に突撃した形。  とにかく《溶岩族の砲兵》が流れてくる卓で、こうなったら心中してやろう! と青赤一直線に向かうもののディスカードで強化する《たかり空エイ》《略奪するアオザメ》、最強コモンこと《雷頭の砲手》も流れてこない始末……  ただひたすら《溶岩族の砲兵》が流れてくるのでありがたくピックしつつ、迎えた3パック目では。  《灯を追う者、チャンドラ》!! これで報われた形となりました。    1戦目を危なげなく勝利したところで会場が閉まると連絡を受け、最後に記念撮影してから解散。とてもいい時間でした。  そして迎えたプロツアーの朝! 清々しい天気です。  ホテルの22階にあるというレストランに向かい、「Breakfast Sandwich」という文字があり朝だしサンドイッチはいいね! と注文。すると……  どう見てもハンバーガーじゃねえか!!と思わず突っ込んでしまいました。朝から食べるものではない気もしますが、非常に美味で完食。    後から知ったのですが、アメリカでは牛肉100%のパティを挟んだ料理だけがハンバーガーと名乗るのが許されるらしく、これは法律で定められている事なのだそうです。  つまり牛肉100%のパティではなくベーコンなどが挟まれている上記の料理はサンドイッチが正しいということになります。すげえやアメリカ。  同室の友人たちと共にバッジを掲げていざ出陣!  念願のプロツアー、不安よりも楽しみの方が勝っていました。  プロツアーのラウンジブースではベーグルやバナナ、ヨーグルト、各種ドリンクなど豊富で食べるものに困りませんでした。  ウォーターサーバーもあったため、参加賞としていただいたウォーターボトルに入れて飲んでいました。  ハビエル・ドミンゲスさんの姿もあったため、昨日ではお願いできなかったツーショットをパシャリ。見ても分かる通り、非常に大柄な方でした。   プロツアー本戦レポート…は次回  そして9:00、いよいよ運命の卓ドラフトが始まることになるのですが、あまりにプロツアーを前日から満喫してしまったため、記事が長くなりすぎました。    続きは明日の記事後編で!

【今週のピックアップデッキ】ゴルガリ陰湿な根/エスパー人間/アブザンケトラモーズ

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.03.05

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ ゴルガリ陰湿な根 エスパー人間 アブザンケトラモーズ   ゴルガリ陰湿な根 スタンダードリーグ : 5-0 By Depian MTGアリーナ用インポートデータ 『カルロフ邸殺人事件』で登場した《陰湿な根》。 墓地からクリーチャー・カードが離れるたびに植物を生成し、その後植物すべてが強化され、更にクリーチャー・トークンからマナが出せるようになると、様々な能力が付いたエンチャント。   この《陰湿な根》を主軸に据えたデッキはパイオニアでも活躍実績があり、スタンダードでもたびたびチャレンジャーは現れるものの、まださほど活躍は見せていません。   ですが、『霊気走破』で登場したとある1枚のカードが、《陰湿な根》に革命をもたらし、ついにデッキが完成しようとしています。   それが《脱皮の世話人》。カードを切削する能力はもちろん、墓地のカードを追放することでマナを出せるので、クリーチャー・カードを追放して植物を出しつつマナが出せるようになりました。墓地を肥やしつつ、《陰湿な根》も誘発させ、更に自身がクリーチャーと、《陰湿な根》と非常に噛み合った1枚です。 このデッキは墓地を必要とするため、他にも墓地肥やしが多数採用されています。   モダンでもお馴染みの《ベイルマークの大主》はクリーチャーを回収できる優れもの。切削してその中からクリーチャー・カードを回収できるので、《陰湿な根》もしっかり誘発してくれます。《陰湿な根》こそ拾えませんが、後述の《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》も拾えるので、強力な切削カード。 《蓄え放題》は《陰湿な根》を回収できる便利な切削カード。自身がクリーチャーでないため、墓地に落ちた後は役割を持ちませんが、それでもデッキのキーカードである《陰湿な根》にアクセスできれば十分です。 切削はオマケですが、《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》も一応切削を持つカードです。マナ総量が2以下のクリーチャーを吊り上げられるので、デッキ内の多くのクリーチャーをリアニメイトできるのですが、このカードは常在型能力が《陰湿な根》と噛み合うカードで、むしろそっちが目的で採用されていると言っても過言ではありません。 速攻を持つかのように起動型能力を起動できるようになるので、《陰湿な根》から出たトークンから即マナが出せるようになり、1ターンで《陰湿な根》を何回も誘発させられるようになるのです。   《陰湿な根》はトークンが増えた後に各植物を強化するため、5回誘発すれば5/6, 4/5, 3/4, 2/3, 1/2のトークンが場に並ぶことになります。《陰湿な根》をただ誘発させ続けるだけでも勝ててしまうのです。《陰湿な根》、すごいカード! 切削だけがライブラリーを削る手段ではありません。そう、諜報です。必要なカードをライブラリーに置けるので切削の超上位互換とも言えるこの能力をたった1マナで持つ《瓦礫帯の異端者》は、いぶし銀の存在。墓地から追放してクリーチャーを強化すると《陰湿な根》も誘発するので、引いて美味しい、落ちて美味しい1枚。いぶし銀どころではないかもしれません。 そして《うなる大殺犬》はパワーが2以下のクリーチャーが戦場に出るたびに諜報を行います。デッキ内の多くのカードがパワー2以下なのに加え、《陰湿な根》から出る植物でも諜報できるのです。《うなる大殺犬》を用いたコンボもあります。 そのコンボを説明するために先に紹介しておかなければならないのが《骨術師の達人》。このターン、墓地のクリーチャー・カードを給餌コストを追加で支払って唱えることができるようになります。 給餌は、墓地から3枚のカードを追放するか食物を生け贄に捧げることを指すのですが、このデッキではもちろん墓地を3枚追放して使用します。そう、この給餌でも《陰湿な根》が誘発するのです。 この《骨術師の達人》《うなる大殺犬》《陰湿な根》《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》が揃うとゲームに勝てます。   まず《骨術師の達人》の能力を起動。給餌でカードを3枚追放して墓地のクリーチャーを唱え、《陰湿な根》からトークンが出ます。そしてトークンが出たので《うなる大殺犬》の諜報が解決。その後、墓地からクリーチャーが帰ってくる際に、もう1度《陰湿な根》が誘発するので、《うなる大殺犬》で再び諜報。 その後、クリーチャーが戦場に出るので、それがパワー2以下ならまた諜報が発生します。このすべての諜報でカードを墓地に送っていれば、それがそっくりそのまま給餌コストになるので、再び別のクリーチャーを唱えられます。マナは先ほど《陰湿な根》でトークンが2体出たのでそこからまかなえます。 《瓦礫帯の異端者》を墓地から唱えれば更に諜報2のオマケがついてきますし、《脱皮の世話人》でも切削が可能なので、繰り返していくことで、プラスマイナス0ではなく、墓地が増えていきます。   諜報で2枚目の《うなる大殺犬》が落ちれば、そこからは各諜報量が倍になるので、ライブラリーをすべて掘ることができるでしょう。最終的には墓地に落ちた《ヴォルダーレンの興奮探し》で相手の致死量のパワーを持つ植物トークンを投げてゲームエンドというわけです。 もちろんクリーチャーがまったく落ちずに《陰湿な根》の誘発ができなくなり、コンボが止まってしまうことはあります。そのため揃った瞬間に確実に勝利できるというわけではありませんが、仮に止まったとしても全体除去以外では対処できない場になります。   緑黒で墓地も場も使ってガチャガチャやりたい……そんな方には超オススメ!     エスパー人間 パイオニアリーグ : 5-0 By  Catervus MTGアリーナ用インポートデータ 一昔前から強化され続けている種族と言えば人間。   人間が作っているカードゲームだからなのか、単にどのエキスパンションにも出しやすいからなのかは定かではありませんが、人間はやたら強化されています。かつてモダン5色人間が暴れ回っていたほどですからね。 そんな人間がパイオニアでも登場しました。もちろん白単アグロを人間と呼んでいるわけではありません。エスパーカラーの人間デッキです。   デッキ自体は言うまでもなくビートダウンデッキ。人間クリーチャーの1マナ域には高スタッツかつ優秀な能力を持つ人間が集まっています。   《徴兵士官》は1マナ2/1な上にマナフラッドした際にはクリーチャーを供給する《サバンナ・ライオン》が裸足で逃げるレベルのハイスペッククリーチャー。《有望な信徒》と一緒に白単人間でも活躍していますね。 《アクロスの英雄、キテオン》も1マナ2/1で、こちらはプレインズウォーカーに変身できますが、伝説なので1枚のみの採用となっています。 あまり見ないのは《古参の生存者》でしょうか。こちらも当然1マナ2/1でメリット付き。《サバンナ・ライオン》だけでなく、昔《サバンナ・ライオン》をお年玉で買った経験のある僕も泣いています。 生存していると墓地を追放できるオマケ付きで、このデッキでは《古参の生存者》を強化して生き残らせることが可能なので、墓地対策にしっかりなってくれます。面白いチョイスですね。   1マナ域はすべて白でしたが、2マナが急にカラフルになります。   まずは《不屈の将軍、ジリーナ》。戦場に出た時に墓地を追放しつつ、自身を生け贄に自分の全人間に呪禁と破壊不能を付ける能力を持ちます。墓地対策と全体除去対策を兼ねる良将軍。 そして一見するとなぜ入っているか理解できない《潜入者、悟》!もちろんこのカードも人間。なのですが、ドローするためにはクリーチャーを唱えずに戦場から出す必要があります。なぜ入っているのかはクリーチャーを見ていても答えは出ません。 スペル欄を見ましょう。そう、《英雄たちの送り火》です!このカードを使って《潜入者、悟》を誘発させることができるのです。 クリーチャーを生け贄に捧げることで、そのクリーチャーよりマナ総量が1多く、共通のクリーチャータイプを持つクリーチャーをデッキから出す。要するに《出産の殻》ですね。1マナの人間を生け贄に2マナの人間をサーチして場に出せるのです。 《英雄たちの送り火》から出たクリーチャーは当然唱えたわけではないので1ドローでき、《潜入者、悟》との相性抜群です。   特に《サリアの副官》はクリーチャーを強化しつつ、自身を《英雄たちの送り火》で生け贄に3マナ域の人間を呼び出せるので、サーチ先筆頭となることでしょう。 《英雄たちの送り火》によって場に出る3マナ域、《輝かしい聖戦士、エーデリン》は白単人間でも活躍する超強力な人間。生成したトークンも人間なので《英雄たちの送り火》で1マナの人間に代わります。 《救出専門家》は《英雄たちの送り火》との相性が抜群。生け贄に捧げたばかりのクリーチャーをそのまま場に戻すので、《サリアの副官》ならカウンターが更に乗り、《魅力的な王子》なら《救出専門家》をブリンクし、更に他のクリーチャーを墓地から復活させます。 そしてマナカーブの頂点となる4には《刃の歴史家》も控えています。《英雄たちの送り火》がひとたび動き出せば、盤面にクリーチャーを並べ、強化し、時にはカードを引き、最終的には二段攻撃と、1枚で完結してしまいます。 人間は干渉手段に乏しいのが弱点ですが、《英雄たちの送り火》から《反射魔道士》《帆凧の窃盗犯》をサーチでき、非常に器用なデッキとなっています。 ただの人間には興味がない。そんなあなたにはエスパー人間が良いでしょう!     アブザンケトラモーズ モダンリーグ : 5-0 By Gavin5499 『霊気走破』のトップレア《新たな夜明け、ケトラモーズ》! 既にモダンではオルゾフブリンクに組み込まれ、《溌剌の牧羊犬、フィリア》や《ちらつき鬼火》で気軽にカードをもたらしてくれますが、今回はそんな《新たな夜明け、ケトラモーズ》を更にフィーチャーしたデッキ、アブザンケトラモーズを紹介します。 どのぐらいこのデッキが《新たな夜明け、ケトラモーズ》に命を懸けているかというと、《テーロスへの侵攻》を採用しているほどです。 このカードを初めて見たという方も多いでしょう。戦場に出た時にライブラリーからオーラや紙や亜神をサーチできるバトルです。そう、当然ながら主なサーチ先は神、すなわち《新たな夜明け、ケトラモーズ》になります。 ここで《新たな夜明け、ケトラモーズ》の能力についておさらいしましょう。あなたのターンに戦場や墓地から1枚以上のカードが追放されるたびに1ドローできる能力です。   最も相性が良いとされているのが《大祖始の遺産》です。オルゾフブリンクにも採用されるようになりましたが、まず上の能力で自分の墓地を1枚追放して1ドロー、その後《大祖始の遺産》の下の能力を使うと、《大祖始の遺産》が自身の能力で追放されて1ドロー、その後墓地が追放されるので1ドロー、最後に《大祖始の遺産》の効果で1ドローと、《大祖始の遺産》1枚で4枚のカードが引けるのです。 しかも墓地対策を兼ねるため、《火の怒りのタイタン、フレージ》も安心。 また相手のクリーチャーを追放するカードとの相性も良好です。《孤独》は当然として、更にその上から《薄氷の上》《骨化》と大量の追放カードが採用されています。 面白いのが《輝晶の機械巨人》の採用です。マナ総量が1以下のアーティファクト・エンチャント・クリーチャーをサーチできるこの機械巨人は、《大祖始の遺産》《薄氷の上》にアクセスできるので、《新たな夜明け、ケトラモーズ》で大量ドローする準備をしてくれます。 《新たな夜明け、ケトラモーズ》が墓地落ちた場合は《死者の神のお告げ》を持ってくるなど、器用なカードです。 そしてここまでカードを見ていて「戦場に出た時に~」と書かれたものがやたら多いことに気が付いたのではないでしょうか?   そんなカードを更に強化するのが《機械の母、エリシュ・ノーン》。 こちらの戦場に出た時の誘発を倍にしつつ、相手の誘発を止めてしまうので、特に同じ《新たな夜明け、ケトラモーズ》を使うオルゾフブリンクに強く、これ1枚でゲームに勝てるほどです。 もちろん誘発が倍になるだけでも脅威で、《孤独》をはじめとした各種除去が複数回誘発し、個々で《新たな夜明け、ケトラモーズ》で更に引けるので、《機械の母、エリシュ・ノーン》が生き残ればゲームセットでしょう。 《新たな夜明け、ケトラモーズ》でもっと気持ちよくなりたいならこのデッキ!!