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【今週のピックアップデッキ】イゼットアーティファクト/エスパー記念碑パルへリオン/シミック眼魔

週刊 Modern news Pioneer Standard

2025.02.28

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ イゼットアーティファクト エスパー記念碑パルへリオン シミック眼魔 イゼットアーティファクト プロツアー『霊気走破』 : 7-3 By Rémi Roudier 『霊気走破』で登場したアーティファクト版《出産の殻》こと《再利用隔室》。 このカードによってスタンダードで再注目されたカードと言えば《身代わり合成機》。マナ総量3以上のアーティファクトが戦場に出るたびに、アーティファクトの数分のパワータフネスのトークンを生成するという強力な能力を持っていますが、戦場に出た時に何もしないカードを出すことを3マナで出すことはスタンダードでは許されず、これまではほとんど使われませんでした。 パイオニアやモダンでは0~1マナでマナ総量が3以上のアーティファクトを出すことが可能だったため、《身代わり合成機》を出したターンの隙を埋めることが可能で、それゆえに下環境向けのカードだったのです。   しかし、《再利用隔室》の登場で《身代わり合成機》はスタンダードでも日の目を見ることになりました。《身代わり合成機》を置いたターンに《再利用隔室》を起動し、2マナのカードを生け贄にして3マナのアーティファクトに変えれば、《身代わり合成機》のターンを隙なく終えられるのです。 2マナのカードを《身代わり合成機》にもできるため、実質8枚体制で臨むことができるのも大きく、《再利用隔室》と《身代わり合成機》の組み合わせはスタンダードで息の長い活躍をしてくれそうです。   さて、このプロツアー『霊気走破』のスタンダードラウンドを7勝3敗で終えたイゼットアーティファクトは《身代わり合成機》の相方として赤を選んでいます。   赤と言えば《塔の点火》。アグロの多い今の環境では欠かせない除去です。アーティファクトが大量に出るので協約の達成が容易なのも魅力ですね。 《軍団の成形機械》と《チェーンソー》は共に2マナで戦場に出た時にダメージを与えるアーティファクト。どちらも《再利用隔室》で《身代わり合成機》になる除去です。 3マナのアーティファクトは次のターンに除去にもなります。《爆弾車》は《再利用隔室》から出すと非常にお得なアーティファクト。戦場に出た時に4マナが出るので、3点以上はまず飛ぶでしょう。 《記録の守護者》は《再利用隔室》から出すカードというよりは、むしろ手札から連打するもの。1マナで出して《身代わり合成機》が誘発してくれるので、あっという間に戦場が有利になるでしょう。1マナで出せるマナ総量が5のクリーチャーなので、《再利用隔室》によって《光輝の睡蓮》を場に出せます。 《身代わり合成機》を使うデッキとしては《不気味なガラクタ》《税血の刃》を採用したディミーアや、《帰還航路》を使うアゾリウスなどがありますが、やはり《塔の点火》を採用できるイゼットが一番対アグロ耐性があります。 赤アグロのポジションがまた一段と良くなった現環境、イゼットアーティファクトは今がチャンスかもしれませんね!     エスパー記念碑パルへリオン パイオニアチャレンジ : 3位 By  Kaberb 墓地から機体を吊り上げる《大牙勢団の総長、脂牙》で《パルヘリオンⅡ》を3ターン目に出して攻撃する白黒ベースのデッキ。 かつては《忌まわしい回収》などを採用したアブザン、最近では《税血の収穫者》《逸失への恐怖》《鏡割りの寓話》でミッドレンジプランも取れるマルドゥと様々なカラーのパルへリオンデッキが活躍していますが、今回紹介するのはエスパーカラー。 青が入ることで加わるのはドロースペル。引いて捨てることが得意な青の力は大きく、《信仰の繕い》《染みついた耽溺》はいずれも2ドローして《パルヘリオンⅡ》をディスカードできる優秀なドロー。赤いドローは捨てて引くなので、有効牌を捨てて《パルヘリオンⅡ》を引いてしまうこともありますが、引いて捨てる《信仰の繕い》ならその心配はいりません。 《上げ潮、キオーラ》も2ドロー2ディスカードするクリーチャー。しかも墓地を肥やすデッキなので、スレッショルドも目指せます。 そしてなんと言ってもこのデッキの最大の特徴は《忍耐の記念碑》の採用です。 このデッキには実に様々なディスカード手段が用意されているということで、このカードを捨てるたびに恩恵をもたらすアーティファクトが採用されているのです。《上げ潮、キオーラ》を出すだけで2つモードを選べるので、ドロー&3ライフルーズなど、やりたい放題です。   《忍耐の記念碑》はサイドボード後にその真価を発揮します。   《パルヘリオンⅡ》を《大牙勢団の総長、脂牙》で釣るコンボはサイドボードは防がれてしまうことがほとんどです、墓地を対策されるか、《大牙勢団の総長、脂牙》を除去されるか。いずれにせよほとんど成立しません。 《忍耐の記念碑》は墓地対策と除去がどちらも効かない勝ち手段なのです。特にフラッシュバックがあり2回使える《信仰の繕い》は《忍耐の記念碑》との相性抜群。《忍耐の記念碑》の能力もあり、《信仰の繕い》1枚で6枚のカードが引けるので、そこから次のディスカード手段に辿り着くのは容易でしょう。 そうしてドロー・ディスカードするカードをチェインさせていくだけで、気づけば相手のライフは0になります。サイド後は《忍耐の記念碑》で勝つことが多くなるでしょう。 サイドボード後のサブプランが強いコンボデッキは本物であるパターンが多いです!エスパーパルへリオンがこれから活躍するのか注目です。     シミック眼魔 モダンリーグ : 5-0 By singto12 スタンダードからモダンまで色んなフォーマットで暴れる《忌まわしき眼魔》。 先日のプロツアー『霊気走破』でも《救いの手》で《忌まわしき眼魔》を吊り上げるジェスカイ眼魔がトップ8に残り、モダンでも《発掘》で《忌まわしき眼魔》を場に戻すコンボを搭載したディミーアマークタイドはメタデッキの内の1つです。 そんな《忌まわしき眼魔》デッキがまたモダンで登場しました!   《忌まわしき眼魔》を戦場に出す方法は2種。まず1つ目は《新生化》。これを使った《忌まわしき眼魔》デッキはパイオニアにも存在しますね。 クリーチャーを生け贄にしてそれよりマナ総量が1大きいクリーチャーを出す《新生化》。《とぐろ巻きの巫女》や《氷牙のコアトル》が《忌まわしき眼魔》に生まれ変わります。カードを引くクリーチャーたちが《忌まわしき眼魔》になるのはパイオニアと同様。 もう1つの手段、《出産の儀》はモダンでしか使えません。こちらも2マナのクリーチャーを生け贄にすることで《忌まわしき眼魔》が出るエンチャントですが、3マナのクリーチャーからも《忌まわしき眼魔》を出せるのがミソです。 なぜなら《断片無き工作員》を生け贄にするシチュエーションがそこそこ訪れるからです。2マナでリソースを獲得できるクリーチャーがたくさん入ってるこのデッキに《断片無き工作員》はぴったり。《出産の儀》を続唱でめくって、そのまま終了時に《忌まわしき眼魔》に変わるのは美しい展開。 入っているクリーチャーがすべて青いので《拒絶の閃光》を使えるのは素晴らしい。パイオニアでは1マナを構える必要がありましたが、モダンは0マナでOKです。 《出産の儀》や《新生化》で持ってくる《海の先駆け》も奇襲性が高く、特に《出産の儀》は解決を見た後でフェッチランドを起動しようとするプレイヤーも多いはずなので、フェッチランドを《島》に変えるチャンス! 9枚のピッチスペルにフィニッシャーはほぼ《忌まわしき眼魔》のみと思い切った構成!《忌まわしき眼魔》を守り《忌まわしき眼魔》で勝ちたい。そんな方にオススメのデッキです!

プロツアー『霊気走破』のメタゲームブレイクダウンを分析!

Standard ピックアップ

2025.02.21

mtg Yuyan

いよいよ今夜から行われるプロツアー『霊気走破』。   『霊気走破』加入後のスタンダード、そにメタゲームブレイクダウンが公式から発表されました。   今回はそのデータをもとに、プロツアーでのメタゲームを分析していきます!   グルールアグロ(66名/18.9%) 最大勢力となったのは、前環境の王者にして歴代最強の赤アグロとの声も名高いグルールでした。 《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》は早いクロック・継続的なリソースを稼ぎ出す、赤アグロの三種の神器。特に《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》のタッグはパイオニアでも大活躍しています。 早いだけならこれまで同速度の赤アグロは存在しましたが、今のスタンダードのグルールアグロはなんといっても粘り強い。ただ除去を大量に入れるだけでは勝利することはできません。   《多様な鼠》は2ターン目に出しても良し、4ターン目に新生で唱えれば横にトークンが並ぶので、単体除去に耐性があります。 緑を入れる理由でもある《探索するドルイド》も、ライブラリーの上2枚を追放して使用しつつ、自身も馬鹿にならないクロック。2枚のスペルが出来事でめくれれば、1枚で3枚分の活躍を見せてくれます。 《岩面村》《不穏な尾根》というマナフラッド受けも存在し、逆に土地が3枚止まっても《心火の英雄》《多様な鼠》《巨怪の怒り》だけで勝ててしまいます。 最序盤からアクションを起こしつつ、中盤・終盤まで攻め続けられる。そしてマナフラッド・マナスクリューの両方に強い。   夢のようなデッキです。   そんなグルールですが、『霊気走破』加入後のスタンダードでは少しその姿を減らしていました。   『霊気走破』で加入した《不気味なガラクタ》《勢い挫き》によって、2番手だったエスパーピクシーのアグロ耐性が上がったことが、まずは挙げられるでしょう。 グルール対エスパーピクシーは、お互いが特に意識していなければ、五分程度の相性でした。『霊気走破』が入り、グルール側にはアップデートがなかったのに対し、エスパーピクシー側は置物除去を手に入れたことで、エスパーピクシーがグルールに強いリストになっていると考えられます。   しかし、グルールも黒いデッキに強い《脚当ての補充兵》を大量に採用することにより、単体除去耐性を向上させられます。今回グルールを持ち込んだプレイヤーはグルール同型、エスパーピクシー、そしてズアードメインの3つを仮想敵としているでしょうから、ミラーマッチとエスパーピクシーに強い《脚当ての補充兵》をメインボードに採用しているプレイヤーは多いはずです。 もしかしたら『霊気走破』で加入した、知られざる新戦力もあるかもしれませんね。   エスパーピクシー(58名/16.6%) グルールに次いで多かったのがエスパーピクシー。 《養育するピクシー》《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》の3種のバウンスを駆使し、アドバンテージを稼ぎながら相手のライフを速やかに0にするデッキです。 《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》ループを軸にしているデッキの中で最も攻撃的で、2ターン目にパワー3のクリーチャーで攻撃していく、《野生のナカティル》が活躍していたズーを想起させてくれます。 《望み無き悪夢》をバウンスして手札破壊とダメージを稼いだり、《逃げ場なし》を回収して除去を使い回したりと、アグロにも関わらず非常に器用なデッキです。 グルールアグロはリソース勝負はかなり得意なデッキですが、実は守りの面では少し心もとないデッキ。エスパーピクシーはその弱点を突き、グルール相手に短期決戦を挑んでいるのです。《逃げ場なし》などの除去で盤面をコントロールしていくのではなく、ダメージレースに使っているというわけです。 そんなエスパーピクシーに『霊気走破』から加わったのが《不気味なガラクタ》。1マナで-2/-2修正を与える《見栄え損ない》が置物になったことで、グルールへの耐性が上がりました。 これまでは後手で1マナで使える除去は《切り崩し》しかなく、《切り崩し》から入ると2ターン目に《孤立への恐怖》や《この町は狭すぎる》を構えられませんでした。 しかし、1マナの置物除去である《不気味なガラクタ》のおかげで世界は変わりました。1ターン目に除去しつつ、2ターン目に《孤立への恐怖》を立てつつ《不気味なガラクタ》を回収するムーブは、赤アグロにとっては溜まったものではありません。   『霊気走破』後のスタンダードでエスパーピクシーがグルールを圧倒しているのは、ひとえにこの《不気味なガラクタ》のおかげと言っても過言ではないでしょう。 エスパーピクシーが今回負け組になるとしたら、それはグルール側に攻略された時だと思います。グルールを選択したプレイヤーがエスパーピクシーにどんなプランを用意したのかがカギです。   エスパーピクシー側はグルールに対し、除去を増やしてダメージレースを優位に進めて勝利するのが基本戦略で、それはおそらく今回のプロツアーでも同様になると思われます。   一方のグルールは、《不気味なガラクタ》によってこれまでの戦い方ではより勝ちづらくなっています。それならゲームプランをそもそも変えるしかないのですが、単に除去を増やして長期戦を挑むのは、対エスパーピクシーでは得策と言えません。《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》《望み無き悪夢》などでエスパー側もロングゲームができるのです。 だからこそエスパーピクシーは攻略しにくいデッキと言われています。プロプレイヤーたちのグルールが果たしてどのような形でこの難敵を攻略するのか、楽しみですね。     ズアードメイン(53名/15.2%) グルール、エスパーピクシーとアグロデッキが続く中、3番手につけたのはコントロールデッキのズアードメイン。3番手とは言ったものの、エスパーピクシーと使用者はほとんど変わりません。 《永遠の策謀家、ズアー》によって兆候状態の大主たちを起こして攻めるデッキ、ズアードメイン。その名の通り基本はドメインなので、《力線の束縛》《太陽降下》で盤面を掌握しつつ、《豆の木をのぼれ》でリソースを稼いでいきます。 《豆の木をのぼれ》のトリガーとしても優秀なのが《ミストムーアの大主》《ホーントウッドの大主》。兆候で唱えてカードを引き、《永遠の策謀家、ズアー》で無理やり動かす、2つのインチキ要素がデッキに入っています。 『霊気走破』の影響を特別受けたわけではありませんが、グルールアグロとティムールカワウソを苦手とし、その他のデッキには五分以上あることから、近頃頭角を現してきました。   特にティムールカワウソがエスパーピクシーやディミーアバウンスになったことが大きく、これらのデッキに対しては比較的有利に立ち回れるため、事実上敵はグルールアグロ。グルールをしっかりと意識した構築さえできれば、環境のほとんどのデッキに対して有利に立ち回れるでしょう。   先ほど『霊気走破』の影響を受けなかったと言いましたが、それは少し誤りで、実は《全損事故》が加わっています。 タップ状態のパーマネントに対しては2マナになる、クリーチャー・機体を追放するインスタント。そう、本来5マナのカードが2マナになるので、《豆の木をのぼれ》でドローできるのです。しかも追放なので《心火の英雄》も後腐れなく除去することができ、対赤アグロへの耐性が上がりました。 従来のドメインと違い大主からの《永遠の策謀家、ズアー》によるビートダウンが可能なので、不利マッチを無理やり取る力もあり、デッキパワーはかなり高め。   リストの自由度がそれなりに高いことから、緑白青に黒をタッチ(ズアーのみ)したリストから、緑白黒に青(ズアーのみ)を採用するなど、様々なチューンが可能です。グルールアグロ・エスパーピクシーに強いリストに仕上げたプレイヤーが有利なフィールドですが、果たしてどのようなリストが持ち込まれたのか、早く見てみたいですね。   個人的には《フラッドピットの大主》を抜き、青を《永遠の策謀家、ズアー》だけにした緑白黒タッチ青の形がグルールアグロ・エスパーピクシーに強いと思っていますが、果たして。 ズアードメインまでの3デッキのみが使用者10%以上となっており、グルールアグロ・エスパーピクシー・ズアードメインが現スタンダードの三強と言って差し支えないでしょう。   ジェスカイ眼魔(21名/6%) 21名のプレイヤーが選択したデッキは……ジェスカイ眼魔!? 正直驚きました。   リストはまだ上がっていませんが、最近のトーナメントで勝っていたのは、《逸失への恐怖》で《忌まわしき眼魔》を墓地に落とし、《救いの手》《再稼働》で釣り上げるデッキでした。 《忌まわしき眼魔》を捨てる手段として《蒸気核の学者》を採用していることから、相性の良い《プロフトの映像記憶》も入れ、《忌まわしき眼魔》を吊り上げる以外の勝ち手段もしっかりと入っています。 《灯を追う者、チャンドラ》は『霊気走破』で加入した新たなディスカード手段。機体を作る能力は全体除去と墓地対策に強く、ルーター能力以外にも使い道があるのが魅力です。 ジェスカイ眼魔のようにサイドからキラーカードを入れられてしまうデッキにおいて、《灯を追う者、チャンドラ》のようなサイドカードは最も欲しいカードです。単に《安らかなる眠り》や《除霊用掃除機》を割れるだけのカードではなく、《灯を追う者、チャンドラ》のようにコンボに寄与(ルーター能力)しつつ、相手のサイドボードを無視する(墓地対策が刺さらない)カードが望ましいのです。 《安らかなる眠り》や《除霊用掃除機》は多くのデッキに採用されていそうですが、果たして墓地対策の海を泳ぎ切ることはできるのでしょうか。   霊気走破の影響 今回のプロツアーで使用されている『霊気走破』のカード一覧も公開されています。   1位《全損事故》(166枚) メインに161枚、サイドボードに5枚。これは大半がズアードメインだと思いますが、7人が使用しているアゾリウスコントロールにも採用されているかもしれませんね。   《全損事故》はズアードメインのマスターピースとなるのでしょうか。   2位《呪文貫き》(160枚) エスパーピクシーやジェスカイ眼魔、ディミーアミッドレンジなどに採用されているのでしょう。4枚採用されることはほとんどありませんが、メインとサイドに1枚ずつなど、リスト公開制トーナメントでは、少ない枚数を採用して相手にプレイさせにくくする戦術が取れます。   1マナであればグルール相手にも構えやすく、《探索するドルイド》、《亭主の才能》など打ち消したいカードもそれなりに多い。メインに入れてもそれなりに活躍の機会がありそうですね。   3位《ウェイストウッドの境界》(141枚) 対抗色の境界ランドが今回5種収録されましたが、その中で圧倒的な枚数となったのが緑黒。ゴルガリミッドレンジ・ゴルガリ《陰湿な根》は当然として、他にはどのようなデッキに入っているのでしょうか。   2つのゴルガリは合わせて12人。4枚ずつ使ったとして48枚なので、100枚近くが浮いていることになります。ドメインが53人いることを考えると、ここに組み込まれている可能性が高いですね。   ゴルガリミッドレンジはグルール・エスパーピクシーに強く、ズアードメインに弱いデッキ。今回のメタゲームでは優れた選択で、もしズアードメインに対して強いリストになっていれば、トップ8が見えてくるデッキですね。   ゴルガリ《陰湿な根》を持ち込んだ4名はチームデッキでしょうか?今回《脱皮の世話人》で強化されたデッキであり、注目のアーキタイプです。   4・5位《不気味なガラクタ》(130枚)/《勢い挫き》(107枚) 戦場に出た時に除去を行うコンビが4位・5位となりました。トータル枚数は《不気味なガラクタ》の方が多いものの、メインに入っている枚数は《勢い挫き》の方が圧倒的に多いのが面白いところ。   メインから入れる除去としては《勢い挫き》の方が強力なのは言うまでもありません。倒すクリーチャーのサイズに制限はなく、除去できなかったとしても手札破壊が可能ですからね。   ただ、サイドから除去を追加したい時には《勢い挫き》は心もとない。入れたい相手はアグロであり、それならば1ターン目から除去できる《不気味なガラクタ》に軍配が上がります。   ほぼすべてのエスパーピクシー・ディミーアバウンスにこれらのカードは採用されているでしょう。今回トップメタであるグルールがしっかり意識されているのがわかりますね。   6位《輝晶の機械巨人》(58枚) 『霊気走破』の目玉でもある機械巨人サイクルから、緑白の《輝晶の機械巨人》がトップ10入り。   戦場に出た時に1マナ以下のクリーチャー・アーティファクト・エンチャントを2枚サーチするカードで、今回8名が選択しているセレズニア檻、バント檻、そしてバントギアハルクで採用されているのでしょう。   セレズニア・バントの檻デッキは、《収集家の檻》を活用したトークンデッキのことでしょう。クリーチャーにカウンターを置く置物でありながら、秘匿能力を持ち、カードを1枚タダで唱えることができます。 バントの方は《マネドリ》を採用しているのでしょうか。《輝晶の機械巨人》で《マネドリ》をサーチし、《輝晶の機械巨人》をコピーする動きは強烈。 圧倒的な展開量とサイズでクリーチャーデッキ全般に強く、グルールアグロ・エスパーピクシーには優位に立ち回れそうですが、ズアードメインに対しては厳しいデッキです。   とはいえ、それはこれまでの常識。プロツアーで持ち込まれたリスト次第ではズアードメインを圧倒してしまうかもしれません。そうなれば三強すべてに強いということになりますね。   7位《食糧補充》(45枚) レガシーでも話題になっている3マナのドロースペルが7位にランクイン。41枚がメインで使用されています。   3マナのドローと言えば2ドローが普通でしたが、《食糧補充》は5枚見て好きな2枚を選べる破格の性能。コンボデッキはもちろん、コントロールでも採用されそうです。 今回の上位デッキたちのどれにも入っていなそうですが、アゾリウス全知とアゾリウスコントロールあたりでは入るかもしれませんね。アゾリウスコントロールは《全損事故》と《食糧補充》と、『霊気走破』で地味に強化されたアーキタイプですね。 《放浪皇》があった頃のスタンダードではアゾリウスコントロールは環境最強のデッキで意識される側でしたが、今回はメタ外。そういう時に怖いデッキなので、アゾリウスコントロールには少しばかり期待してしまいますね。 終わりに  というわけで今回はプロツアー・シカゴのメタゲームブレイクダウンを元に、スタンダード環境をお届けしました!   ちなみに僕の優勝予想はズアードメインです! プロツアー・シカゴは日本語公式配信もあります。最高峰のプレイヤーたちの戦いを目に焼き付けましょう!日本時間の今日深夜2時からです!(配信ページはこちら)   それではまた!

【今週のピックアップデッキ】ディミーアアーティファクト/4c眼魔パルへリオン/オボシュケトラモーズエネルギー

週刊 Modern Pioneer Standard

2025.02.20

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ ディミーアアーティファクト 4c眼魔パルへリオン オボシュケトラモーズエネルギー ディミーアアーティファクト スタンダードリーグ : 5-0 By Melicard 『サンダー・ジャンクションの無法者』のビッグスコアで登場した《身代わり合成機》というカードは、様々なフォーマットでアーティファクト愛好家に親しまれる一方、スタンダードではこれまでさほど活躍できませんでした。 マナ総量が3以上のアーティファクトが戦場に出るたびに、アーティファクト分の修正を持つトークンを生成。このトークンは《ウルザの物語》などから出るものと同じで、非常に大きなサイズで相手を押し潰します。 《身代わり合成機》がスタンダードで今一つな理由は、なんといっても出したターンの隙です。マナ総量が3以上のカードは、ほとんどの場合で《身代わり合成機》を置いたターンには出すことはできません。そのため、《身代わり合成機》を置いてエンドするターンを作ることになり、この1ターンを丸々無駄にする行動が命取りとなってしまうのです。   モダンでは《身代わり合成機》を出してそのまま《金属ガエル》を唱えるなど、この《身代わり合成機》のターンにもう1アクションする工夫がなされています。パイオニアでも《金属製の巨像》を0マナで出せますからね。 そんな事情でなかなかスタンダードで見かけなかった《身代わり合成機》ですが、『霊気走破』でそのデメリットを補うカードが登場しました。   それが《再利用隔室》です。 アーティファクトを生け贄に捧げ、それよりマナ総量の1大きいアーティファクトを場に出せる、アーティファクト版の《出産の殻》です。これが《身代わり合成機》のポテンシャルを引き出してくれます。 まず、2マナのカードを生け贄にすればデッキから《身代わり合成機》を場に出せますし、《身代わり合成機》を出したターンに2マナがあれば、そのまま3以上のカードをサーチして即座にトークンを生成できます。   起動に2マナがかかってしまいますが、そこで役立つのが《奇怪な宝石》。起動型能力に使える2マナを生み出してくれるので、実質《再利用隔室》を0マナで起動できるようになります。 《再利用隔室》のおかげで《身代わり合成機》を置くターンの隙はかなり少なくなります。2マナのカードを生け贄にして《身代わり合成機》を出しつつ、《税血の刃》で除去。この動きは4マナででき、更にターンが帰ってくれば《税血の刃》を生け贄にして更なる《身代わり合成機》を戦場に出しつつ、とりあえず1体目のトークンが生成できます。 《再利用隔室》を採用するにあたって最も考えなければならないのが、生け贄に捧げるアーティファクトについてです。 まずは1マナの《不気味なガラクタ》。こちらは戦場に出た時に-2/-2修正を与える便利なカードで、置けば役割がなくなるので、《再利用隔室》の生け贄に最適です。 2マナは選択肢が多く、除去が欲しければ《税血の刃》、リソースを稼ぐための《蒐集家の保管庫》、更にドローに特化した《毒気の薬》と用意されています。特に《毒気の薬》は出た時にカードを引き、《再利用隔室》で墓地に送ってもドローできるので、非常に便利です。 主役となる3マナ域は《再利用隔室》《身代わり合成機》の他には《スランの蜘蛛》が1枚採用されるのみです。《スランの蜘蛛》は4マナへの繋ぎになりますが、パワーストーンを生み出してくれるので、それが今度は1マナのアーティファクト、すなわち《不気味なガラクタ》《奇怪な宝石》に変わります。 4マナは《力線の斧》。これは《身代わり合成機》から生成したトークンに装備して一撃必殺を狙います。 そのもう1つの主なつけ先となるのが同じ4マナの《油浸の機械巨人》。相手の手札の最も強いカードを抜いてくれて、《身代わり合成機》も誘発するナイスガイ。《力線の斧》の装備先としても申し分ないですね。 その2つから出てくるのは《解剖道具》と《マイトストーンとウィークストーン》。ライフゲインしたいなら《解剖道具》、リソースか除去なら《マイトストーンとウィークストーン》と状況に応じて使い分けることができます。 面白いのが《悪魔の破砕機》の採用です。戦場に出た時にクリーチャーを破壊する機体ですが、親和がついているため、軽くプレイできます。もちろん《身代わり合成機》も誘発するので、手札に複数枚あるとどんどん軽くなっていきますね。この《悪魔の破砕機》は親和で軽くなってもマナ総量は7なので、《再利用隔室》で生け贄にすることで8マナを場に出せます。 そのために《街並みの地ならし屋》が採用されており、早いターンの《街並みの地ならし屋》はマッチアップによっては相手を詰ませられます。 《身代わり合成機》《再利用隔室》の組み合わせは非常に強力で、これからアーティファクトを主体としたデッキがスタンダードで活躍していくなら、この2種に《奇怪な宝石》を合わせた3種は必須となるでしょう!     4c眼魔パルへリオン パイオニアリーグ : 5-0 By  IofTiger 《大牙勢団の総長、脂牙》で《パルヘリオンⅡ》を墓地から吊り上げて勝利するパルへリオンデッキ。 《大牙勢団の総長、脂牙》が登場してすぐにパイオニアで登場し、日々アップデートが続いているアーキタイプ。 《忌まわしい回収》《サテュロスの道探し》で墓地を肥やし、強力な機体である《エシカの戦車》を入れたアブザン。 《逸失への恐怖》《鏡割りの寓話》で手札から《パルヘリオンⅡ》を落としつつ、ミッドレンジとしても戦えるマルドゥ。 様々なバージョンがトーナメントでは勝ってきましたが、今回は4色。しかもなんと《大牙勢団の総長、脂牙》《パルヘリオンⅡ》以外に強烈なコンボを採用しています。   それが《忌まわしき眼魔》《再稼働》。スタンダードのアゾリウス眼魔でもお馴染みの、2ターン目に《忌まわしき眼魔》を吊り上げるコンボです。 《再稼働》は《忌まわしき眼魔》だけでなく《大牙勢団の総長、脂牙》をリアニメイトすることができ、その《大牙勢団の総長、脂牙》が今度は《パルヘリオンⅡ》を連れてきます。 《再稼働》《大牙勢団の総長、脂牙》《忌まわしき眼魔》ととにかく墓地を利用するデッキなので、墓地肥やしとして様々なカードが採用されています。   《錠前破りのいたずら屋》はアゾリウス眼魔にも採用されているカードで、墓地にカードを送り込みつつ、《再稼働》にアクセスできます。 2ターン目に《再稼働》を打つためには1ターン目から墓地を肥やす必要があります。そこで採用されているのが《異世界の凝視》と《秘本掃き》。《秘本掃き》は枚数だけなら破格の5枚切削。一方の《異世界の凝視》は3枚の内好きな数を残せる上、フラッシュバックもついていて、1枚で2度お得なカード。 《信仰の繕い》と《染みついた耽溺》はいずれもカードを引いて捨てるインスタントで、切削と違って手札のコンボパーツを捨てられます。いずれも2ドローでき、引いてから捨てるカードを選べるので便利ですね。 このデッキには3マナ以下のアーティファクトがないため、一見すると《再稼働》より《救いの手》の方が良いのではないか?と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は僕も最初はそう思っていましたが、よく考えると《救いの手》はタップインでクリーチャーが出てくるので、《大牙勢団の総長、脂牙》を吊り上げた時に《パルヘリオンⅡ》に搭乗できませんでした。絶対に《再稼働》です! 普通のパルへリオンに飽きてしまった方はぜひ一度、眼魔パルへリオンを手に取ってみてください!     オボシュケトラモーズエネルギー モダンリーグ : 5-0 By NicolasGEM カードを戦場や墓地から追放するたびにドローする《新たな夜明け、ケトラモーズ》。既にモダンでは《溌剌の牧羊犬、フィリア》《孤独》でたくさんカードを引くオルゾフブリンク、そして《超能力蛙》との瞬殺コンボを搭載したエスパー眼魔と、様々なデッキで活躍しています。 そんな《新たな夜明け、ケトラモーズ》の新たな活躍場所はなんとエネルギー!『モダンホライゾン3』の問題児が『霊気走破』のトップレアとタッグを組みました。 まずなんといっても《新たな夜明け、ケトラモーズ》と相性の良い《火の怒りのタイタン、フレージ》。脱出するだけで《新たな夜明け、ケトラモーズ》でカードが引けるなんて夢のようですね。そして引いたカードを使っていくだけで墓地が溜まるので、また《火の怒りのタイタン、フレージ》がすぐ脱出できるようになります。 これまでのエネルギーは一度脱出した後に再び脱出するのは大変でしたが、《新たな夜明け、ケトラモーズ》のおかげで比較的容易になりました。   《ボガートの獲物さらい》《虚無の呪文爆弾》は墓地を追放し、《虹色の終焉》《静牢》はパーマネントを追放し、《鋼と油の夢》も手札と墓地のカードを追放してくれるので、すべて《新たな夜明け、ケトラモーズ》によりドローのオマケがついてきます。このデッキは実に簡単にカードが引けるのです。《新たな夜明け、ケトラモーズ》、すごすぎる! エネルギーに《新たな夜明け、ケトラモーズ》が入るだけでもスパイシーですが、このデッキは更に相棒として《獲物貫き、オボシュ》を採用しています。 デッキに奇数のカードを入れられないという強烈な構築制限を課す《獲物貫き、オボシュ》。エネルギーに入っている偶数のカードと言えば……そう、《ナカティルの最下層民、アジャニ》と《ゴブリンの砲撃》です。 この2つを失ったことでエネルギーデッキは速度を失いました。《ナカティルの最下層民、アジャニ》《ゴブリンの砲撃》《火の怒りのタイタン、フレージ》による直接火力でライフを削りきるのが従来のエネルギーでした。 それができない分、このリストは《新たな夜明け、ケトラモーズ》と除去で盤面をさばきながらリソースを取っていく、コントロール的勝ち方が可能となっています。   《獲物貫き、オボシュ》自体は非常に攻撃的な相棒です。奇数のパーマネントが与えるダメージが2倍になるので、《火の怒りのタイタン、フレージ》が6点火力になってくれます。《栄光の闘技場》から《火の怒りのタイタン、フレージ》が走れば6点×2と12点で一撃24点も可能です。 ただでさえ強いエネルギーが、《新たな夜明け、ケトラモーズ》という新たなリソースカードを手に入れたことで更に強くなる予感がしています。 今後《新たな夜明け、ケトラモーズ》はエネルギーの定番となるのでしょうか?

【週刊メタゲーム通信】エスパーピクシーとズアーが新スタンを牽引!ゴブリンにも注目!

週刊 Standard

2025.02.18

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   『霊気走破』がオンライン上でもリリースされ、早速様々な大会が行われている最新スタンダード環境。   今回は現段階で結果を残しているデッキたちを紹介していきます!   目次 エスパーピクシー ズアードメイン ゴブリン エスパーピクシー スタンダードチャレンジ : 優勝  By RubyXillia 《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》コンボは今やパイオニアでも活躍するほど。当然ながらスタンダードでもその力を見せつけています。 ティムールカワウソの必殺技だったこの組み合わせはそのまま他のデッキに派生していき、今ではディミーアバウンス、そしてこのエスパーピクシーと、メタゲームを牽引するようになりました。   《嵐追いの才能》でトークンを生み出し、《この町は狭すぎる》で《嵐追いの才能》を手札に戻しつつ相手の展開を妨害。その後、《嵐追いの才能》のレベルを2に引き上げて《この町は狭すぎる》を回収し、再び《嵐追いの才能》を戻すことで、永久機関を作り上げます。 このコンボをアグロデッキに取り入れたのがエスパーピクシー。《養育するピクシー》《孤立への恐怖》は共にパーマネントを手札に戻せるので、《嵐追いの才能》を再利用して大量のカワウソを並べ、一気にクロックを作っていきます。 《養育するピクシー》《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》の3種のバウンスが入っているので、これを最大限に活かすべく、戦場に出た時に効果を発揮するパーマネントが《嵐追いの才能》の他にも入っています。   《望み無き悪夢》は1枚ハンデスと2点ルーズ。手札とライフを同時に攻めるカードで、エスパーピクシーのブン回りに寄与します。《この町は狭すぎる》で2枚とも戻して4点ダメージを叩き出すのはよくあるリーサルパターン。 《逃げ場なし》を回収すれば除去を2度使えて美味しく、特にアグロデッキ相手には重宝します。 入っているカードは前のめりですが、《逃げ場なし》《不気味なガラクタ》を何度も出し直して盤面を殲滅する動きはコントロールデッキそのもので、アグロ耐性のあるアグロデッキです。   クリーチャーの質も決して低いわけではありません。   《悪意ある呪詛術士》はエスパーピクシーに合った1枚。戦場に出た時に呪われし者の役割をクリーチャーにつける必要がある代わりに1マナ3/2とハイスペック。この役割を《嵐追いの才能》から出るカワウソにつければ、デメリットがなくなり、ただの1マナ3/2になります。 呪われし者の役割はエンチャントなので、《呑気な物漁り》の違和感が誘発してカウンターが乗ったり、《孤立への恐怖》《養育するピクシー》で戻すことも可能です。《望み無き悪夢》などを戻してアドバンテージを獲得することこそできませんが、それでも《悪意ある呪詛術士》が1マナ3/2になるので、悪い展開ではありません。 単にクリーチャー除去を入れても《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》で妨害しながらカワウソを生み出したり、《望み無き悪夢》を出し入れされ続けてダメージと手札を失い続ける。 かといって《否認》などの打ち消しを入れればクリーチャーに殴られる。 このように完璧に対応するのが非常に難しいデッキで、今のスタンダードの最強候補の1つです。   その証拠に、相手に《望み無き悪夢》を出された時に手札から捨ててその場で場に出せる《萎れ葉のしもべ》《強情なベイロス》が、実際に緑のデッキに採用されているのです。《強情なベイロス》は赤いデッキにも入れられますが、《萎れ葉のしもべ》はほぼエスパーピクシー専用カードなので、驚きですよね。 早いターンに墓地から《忌まわしき眼魔》を吊り上げるアゾリウス眼魔もエスパーピクシーは苦手としています。そのため、サイドボードには《安らかなる眠り》を3枚忍ばせています。 自分も《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》ループをできなくなってしまうため、《安らかなる眠り》の採用はアンチシナジーに見えるかもしれませんが、逆に言えばそれだけ警戒しているということでしょう。《アフターバーナーの専門家》の影響で墓地デッキが増えつつあるので、それらをまとめて意識するのならば、《安らかなる眠り》が一番です。 今週末に行われるプロツアーシカゴでも一大勢力となることでしょう!   ズアードメイン スタンダードチャレンジ : 3位 By jps_17 兆候で唱えることで軽く出せる代わりに、クリーチャー化するのに数ターンかかる大主サイクル。 モダンでは兆候した《ベイルマークの大主》を《溌剌の牧羊犬、フィリア》《ちらつき鬼火》で追放してクリーチャーとして場に出すズルをするオルゾフブリンクが活躍していますが、このズアードメインは、スタンダードで大主を使ってズルをするカード。   兆候状態の大主を《永遠の策謀家、ズアー》でクリーチャー化し、兆候のまま攻撃してしまおうというのがこのデッキです。 《ホーントウッドの大主》はドメインには欠かせない1枚。出てくる土地トークンはすべてのクリーチャータイプを持っているので、マナトラブルから解放されるだけでなく、《力線の束縛》が1マナになってくれます。 攻める大主は白の《ミストムーアの大主》。こちらは2/1飛行を2体生成するので、飛行クロックで攻めてくるエスパーピクシーに頼もしく、兆候で攻撃すれば攻防一体です。 これらの大主は兆候コストで出す時もマナ総量は5以上なので、《豆の木をのぼれ》との相性が最高。僕は軽いカードで《豆の木をのぼれ》を誘発させることを脱法豆の木と呼んでいますが、このデッキは脱法手段が《力線の束縛》《ミストムーアの大主》《ホーントウッドの大主》と3種あります。 さて、このズアードメインはご覧のように大主によって完成した『ダスクモーン:戦慄の館』デッキ。決して『霊気走破』で強化されたわけではありません。   にもかかわらず、今ここまで活躍し、注目されているのはなぜか。その理由の1つは、苦手としているグルールアグロの減少にあるでしょう。 『霊気走破』はグルールアグロを強化することがありませんでした。その一方で《不気味なガラクタ》はエスパーピクシーをはじめとしたバウンス系デッキに入り、他にもグルールに勝ちやすいデッキたちが現れ始めたのです。 もう1つは、最も苦手としていたティムールカワウソが環境からいなくなったことです。   《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》を使うデッキの中で最も厳しかったのがティムールカワウソ。大ぶりなアクションのデッキに加え、コンボを妨害する手段も少なかったため、すぐに無限コンボを決められていました。 その後、スタンダードは研究が進み、《嵐追いの才能》はエスパーピクシー・ディミーアバンスに受け継がれました。この2つのデッキは純粋なアグロなので、ズアードメインは決して相性が悪くありません。《望み無き悪夢》連打にも《豆の木をのぼれ》を引いているだけでリソースは追いつきます。 相性の悪かった2つのデッキが減ったことで、ズアードメインは前環境よりも遥かに戦いやすい環境となっています。   エスパーピクシーに対しても《害獣駆除》の枚数を増やすことで更に戦いやすくなりますし、様々な色のカードを使えるので、ガードを上げたいところにしっかり強くなれるのも、このデッキの魅力と言えますね。   ゴブリン スタンダードチャレンジ : 5位 By SaddlebackLagac 最後は『霊気走破』以前には存在していなかったアーキタイプのご紹介です。   そう、ゴブリンです!スタンダードにゴブリンが帰ってきました!   マジック黎明期から存在し、人気の高い種族であるゴブリン。最近のスタンダードではちょくちょく刷られていましたが、これまでは強いカードが少なく、デッキになるには至りませんでした。   まずは《焼き切る非行士》。エンジン始動と威迫を持つので、速度を4にさせやすく、最高速度で二段攻撃を持つので打点も高い優秀なクリーチャー。最高速度に到達するのはこのデッキでは重要なので、貴重な1マナ域です。 同じ1マナ域の《グリスレンチのゴブリン》は脅威の1マナ2/1。消尽能力で+1/+1カウンターを置きつつ、手札を2枚まで入れ替えることができます。1マナとしては十分なスペックで、能力もオマケにしては強力。 グルール昂揚などで活躍する《竜航技師》も実はゴブリン。消尽で他のクリーチャーに速攻を付けられるので、《群衆の親分、クレンコ》で出たトークンたちに速攻を付与させて攻撃できます。《群衆の親分、クレンコ》は『ファウンデーションズ』で帰ってきてくれましたね。 これだけでは少しデッキパワーに難があるように思えますが、最後の『霊気走破』ゴブリンである《咆吼部隊の重量級》を見ればその考えは変わるかもしれません。それぐらいインパクトのあるカードです。 自分のゴブリンすべてが速攻を持ち、戦闘開始時にゴブリンを生成。《軍勢の戦親分》や《ゴブリンの熟練扇動者》と似た能力を持つゴブリンですが、ゴブリン全体が速攻を持つのは非常に強力。《群衆の親分、クレンコ》を出したターンに起動できるのはあまりにも大きい! しかも能力はそれだけではありません。最高速度状態の場合、タップすることでゴブリンの数だけマナを生み出せるのです。《群衆の親分、クレンコ》でトークンを並べて《咆吼部隊の重量級》でマナを出して更に展開と、最高速度状態では凄まじい動きを見せてくれます。   《焼き切る非行士》の時に「最高速度に到達するのは重要」と言ったのはこのためです。 速度を得るために《アモンケット・サーキット》を採用しているのもポイント。2ターン目にセットするだけで速度を持ち、1ターン目に出していた1マナ域で攻撃すれば速度2になります。1ターン目に《焼き切る非行士》を出して2ターン目にダメージが通った時と同じ速度なのです。 最高速度後に《アモンケット・サーキット》を引いた場合は、クリーチャーに速攻を付与できるので、後半引いても十分にバリューを出せる土地です。   ベテランのゴブリンたちも『霊気走破』の新人組たちに負けていません。   《ランドヴェルトの大群率い》は全体強化を行いながら、リソースも稼げる最強のロード。《審判の日》を喰らっても《ランドヴェルトの大群率い》さえいれば怖くありません。《太陽降下》は泣きましょう。 強襲能力でトークンを生成する《焦がし切りのゴブリン》も、とにかく数を並べたいゴブリンにとっては嬉しいカードです。 このゴブリンはただのアグロデッキではなく、《アガサの魂の大釜》によるコンボも内蔵しています。 《群衆の親分、クレンコ》を追放すれば自軍クリーチャーたちが《群衆の親分、クレンコ》になるので、+1/+1カウンターが乗っているクリーチャーが複数体いるだけで一気に致死量になります。《グリスレンチのゴブリン》の消尽能力でカウンターを乗せても《アガサの魂の大釜》で追放したクリーチャーの能力が使えることを忘れないでください。 2つの消尽能力を持つ《竜航技師》も《アガサの魂の大釜》に入れる価値がありますね。クリーチャーに速攻をつけられるので、《群衆の親分、クレンコ》《竜航技師》と追放していれば、トークン生成→速攻まで行えます。こちらも自身の能力で+1/+1カウンターが乗るので、《アガサの魂の大釜》の恩恵を受けやすい1枚です。 《咆吼部隊の重量級》は《アガサの魂の大釜》で追放しても、最高速度時の起動型能力をコピーすることはできませんので、ご注意ください。それでも《アガサの魂の大釜》は十分活躍してくれます。   《群衆の親分、クレンコ》は絶対に残すことのできないカードなので、相手はまず見たら除去してくるでしょう。そこを《アガサの魂の大釜》で追放して自軍クリーチャーが《群衆の親分、クレンコ》になれば勝利目前です。 《狂信的扇動者》を《アガサの魂の大釜》に突っ込むことで、能動的にクリーチャーを墓地に送り込めます。《群衆の親分、クレンコ》で《狂信的扇動者》の能力を使って墓地に落とし、その後《アガサの魂の大釜》に入るという芸当も。 即死の動きを持つゴブリンはかつてのゴブリン召集を見ているようで非常に楽しい!しっかり強いデッキでトーナメントでもじわじわ入賞してきているので、これからの大爆発に期待したいですね!

【今週のピックアップデッキ】オルゾフサクリファイス/ボロスイクイップメント/アスモニュメント

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.02.14

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ オルゾフサクリファイス ボロスイクイップメント アスモニュメント オルゾフサクリファイス スタンダードチャレンジ : 6位 By Folero カードを生け贄にして様々な恩恵を得るデッキ、サクリファイス。   《大釜の使い魔》《魔女のかまど》《波乱の悪魔》によって大量のダメージを与えて勝利するラクドスサクリファイスは今もパイオニアで現役のデッキで、スタンダード時代もこのサクリファイスエンジンは大暴れしていました。 そんなサクリファイスデッキが、今回はオルゾフカラーで登場しました。   まずこのデッキはサクリファイスによって何を起こすのか。それは大量に入っているクリーチャー陣をじっくりと見ればわかります。   《復讐に燃えた血術師》《残忍な巡礼者、コー追われのエラス》は共に自分のコントロールするクリーチャーが死亡した時に相手のライフを失わせるカード。つまり、このデッキはサクリファイスにより相手のライフを削っていくデッキなのです。 サクリファイス手段として採用されているのは《バルトロメ・デル・プレシディオ》。最近あまりいない、起動にマナがかからないサクり台で、能力も自身に+1/+1カウンターを置くという優秀なもの。サクリファイスデッキには、このマナのいらないサクり手段は必須です。 そして肝心なのは生け贄に捧げるものたちです。ただカードを生け贄に捧げてもどんどん損をしていってしまうので、供物には工夫が必要です。   《永劫の無垢》は生け贄にするカードとして最上級。死亡するとエンチャントとして戻ってくるだけでなく、クリーチャーを自分がプレイすればカードを引けるので、後続を供給し続けてくれます。 《寄生の賢者》と《入れ子ボット》は共に死亡時に1/1のクリーチャーを戦場に残していくクリーチャーたち。前述の《永劫の無垢》とも相性が良いですね。自分のターンに《入れ子ボット》を出してカードを引き、相手のターンで生け贄にしてトークンを出せばまたカードを引けます。 環境には赤アグロをはじめ、1ターン目からクリーチャーを展開してくるデッキも多々あるため、《かじりつく害獣》は重宝します。ブロックして死亡時に-1/-1すればタフネス2までのクリーチャーを倒せますし、《バルトロメ・デル・プレシディオ》で生け贄にして能動的にクリーチャーにマイナス修正を与えることも可能です。 《うなる大殺犬》は生け贄に捧げた時のボーナスを持っていませんが、パワー2以下のクリーチャーが戦場に出た時に諜報を行い、クリーチャーを墓地に送り込んだり、引き込みたいカードにアクセスしやすくしてくれます。 墓地にクリーチャーを送る手段として《ベイルマークの大主》も用意されています。こちらは切削と同時に回収も行えるカードですね。 なぜ墓地にカードを送りたいのか?その答えはスペル欄にあります。このデッキに入っている唯一のクリーチャー以外の呪文が《過去立たせ》です。 墓地のパワー2以下のクリーチャー・カードをすべて戦場に戻すので、《ベイルマークの大主》以外のクリーチャーがすべて戦場に戻ってきます。そしてそれらのクリーチャーを生け贄にして、相手のライフを失わせて勝利と、コンボチックな動きができるのです!   更に『霊気走破』からの新人にも注目です。その名は《去りし栄光、ザフール》。 他のクリーチャーを生け贄に捧げることで諜報1が行え、最高速度を持っていると、トークンでないクリーチャーが死亡するたびに2/2のゾンビを生成してくれます。つまり《寄生の賢者》が死亡すると1/1と2/2が出てくるわけですね。そこに《過去立たせ》が絡めば1ターンで20点のライフを奪うことも容易です。 ここで問題となるのが、最高速度に到達できるのかという点ですが、それも解決しています。速度を上げるにはクリーチャーで攻撃するしかないわけではありません。相手のライフを失わせれば速度が上がります。つまり、《復讐に燃えた血術師》などの能力でも構わないのです。 かつてスタンダードで活躍していたラリーコンボを思わせる動きのできるオルゾフサクリファイス、好きな方にはたまらないデッキではないでしょうか?   ボロスイクイップメント パイオニアリーグ : 5-0 By  CrusherBotBG 装備品を主軸に据えたデッキと言えば、モダンのハンマータイムがまず頭に思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか? 今回はパイオニアで装備品主体のデッキが生まれました!   まずこのデッキには装備品が合計18枚!恐ろしい数採用されています。いまだかつてここまで装備品を採用したデッキを見たことがありません。   初手にあると戦場に出した状態からゲームを始められる《力線の斧》、モダンでもよく見る《影槍》。この辺りは構築フォーマットでもよく使われるので、お馴染みでしょう。 モダンで《ウルザの物語》からのサーチ用として採用されることもある《溶岩拍車のブーツ》は、パワー修正の他に速攻と護法も付与できる便利な装備品。キャストと装備コストがどちらも軽いので使いやすいですね。 《スランの魔力鎧》は正直僕も初めて見たレベルのカードです。装備先のクリーチャーについているオーラや装備品の数だけ+1/+1修正を与える装備品なので、1体につければつけるほどサイズが上がっていく、面白い性能です。こちらも護法がつきます。 装備品でありながら3点除去になるのが《チェーンソー》。クリーチャーが死亡するたびにカウンターが乗っていき、そのカウンター分がパワーに乗るので、どんどんうなりを上げて成長していってくれます。たくさん装備品を採用したいデッキなので、除去を兼ねてくれるのは非常に嬉しいですね。 そして《刃砦の戦鞭》はクリーチャーについた状態で出てくる装備品。実質3マナのクリーチャーですね。装備先が二段攻撃を持つ他、これ以外の装備コストを1つ下げてくれます。《溶岩拍車のブーツ》が0マナになり、《スランの魔力鎧》も1マナと、この辺りの装備品は非常に使いやすくなりますね。 そんな装備品たちをサーチするのが《フェイの血筋のケラン》。装備品をサーチするのが主な役割ですが、装備先としても優秀です。自身が二段攻撃を持つだけでなく、ついた装備品の数だけ他のクリーチャーのサイズも上げてくれるので、みんなで強くなれます。 装備品はアーティファクトなので、実は相性が良いのが《継ぎ接ぎ自動機械》。装備品を唱えるだけで成長してくれて、護法2を持っているのでなかなか除去されません。装備先が除去されてしまうのがこの手のデッキの一番の負け筋ですからね。《スランの魔力鎧》や《溶岩拍車のブーツ》で護法が重なれば実質呪禁です。 そろそろこのデッキの主役をご紹介しましょうか。それはもちろん《熱烈な勇者》!赤単で活躍したカードですが、実は《熱烈な勇者》に装備品をつける際、そのコストが3下がるのです。 《力線の斧》も《スランの魔力鎧》も《影槍》も《チェーンソー》も全部つけ放題なのです!まさにこのデッキのためのカード!というか《熱烈な勇者》がいなかったらこのデッキを組もうと思わなかったかもしれませんね。   1体のクリーチャーに装備品をつけまくる!そんなロマン溢れる戦いができるのがこのボロスイクイップメントの魅力。一撃必殺を決めてみませんか?   アスモニュメント モダンリーグ : 5-0 By DB_InspiringTimmy カードを捨てるたびに様々な効果をもたらす《忍耐の記念碑》。カードを引いたり宝物を出したり3点ルーズさせたりとどの能力も強く、発売前から期待されているカードです。 この手のカードを使う上で重要なのは、《忍耐の記念碑》を出したターンの隙をどう埋めるかです。3マナで何も盤面に影響を与えないカードを出してターンをパスするのは、スタンダードすら危険な行為です。   それは、3ターンキルが横行するモダンにおいてはタブーと言って良いでしょう。だからこそ、このカードの使い方は非常に難しい。   今回ご紹介するデッキは、そんな《忍耐の記念碑》を実にうまく使ったデッキです。   《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》をご存じでしょうか?カードを捨てたターンにのみ唱えることができ、戦場に出た時に《地獄料理書》をサーチしてきます。 その《地獄料理書》は、手札を捨てることで食物を生成します。この食物を2つ生け贄に捧げると、《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》がクリーチャーを除去してくれるようになります。 《地獄料理書》はタップするだけでカードを捨てられるので、《忍耐の記念碑》と相性が良いですね。   この《地獄料理書》とセットで採用されるのが《楕円競走の無謀者》。アーティファクトが戦場に出るたびに墓地から手札に戻ってくるこのカードは、《地獄料理書》のコストで手札から捨てると、食物生成にトリガーして手札に帰ってきてくれるので、無から料理を作れるのです。 ここに《忍耐の記念碑》が加わると、手札から《楕円競走の無謀者》を捨てて食物を作りながら1ドローしたりと、凄まじいアドバンテージを生み出します。   《信仰無き物あさり》は2枚のカードを捨てられるので《忍耐の記念碑》を2回誘発させてくれたり、《太陽の執事長、インティ》も手札を捨てながらリソースを稼げるので、マナが不自由な時は《忍耐の記念碑》で宝物を作って《太陽の執事長、インティ》で追放したカードをプレイ、なんてことも。 更に『霊気走破』で登場した《略奪するアオザメ》も、手札を大量に捨てるこのデッキにはぴったり。1ターン目に出して2ターン目には3/3以上となり、あっという間に手をつけられないサイズに成長します。 これまで《地獄料理書》《楕円競走の無謀者》のコンボは、《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》が生き残って食物を投げ続けたり、《太陽の執事長、インティ》を複数回誘発させたり、《ウルザの物語》のトークンのサイズを上げたりなど、活躍の機会自体はあったものの、物足りなさがあったのは否めませんでした。 そこに新たに加わった《忍耐の記念碑》と《略奪するアオザメ》は、どちらも単体でゲームプランとして成立するレベルに強力で、間違いなくこのデッキは『霊気走破』で大幅にアップデートされました。 従来のアスモデッキに比べてかなりデッキが速く、粘り強くなりました。《忍耐の記念碑》を使ってみたいならまずこのデッキです!

『霊気走破』後のスタンダードに迫る!ジャパンスタンダードカップから注目デッキを紹介

Standard ピックアップ

2025.02.13

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 『霊気走破』のプレリリースから僅か2日後に行われたジャパンスタンダードカップ:『霊気走破』! スタンダードの大型トーナメントで『霊気走破』のカードは活躍したのでしょうか? 今回は注目デッキをピックアップしてご紹介していきます!       紹介デッキ アゾリウス眼魔 グルール昂揚 ディミーアミッドレンジ アゾリウス眼魔 ジャパンスタンダードカップ : 優勝 By MatsumotoTatsunori 『霊気走破』環境一発目を制したのはアゾリウス眼魔! スタンダードではすっかりお馴染みのデッキが、新環境を見事に制覇。その名の通り、様々なフォーマットで使われている《忌まわしき眼魔》を主軸に据えたアゾリウスカラーのアグロデッキです。   手札から唱える際に6枚の墓地を要求する《忌まわしき眼魔》。それなら墓地から吊り上げてしまえばいいじゃないというわけで、《救いの手》《再稼働》の6枚のリアニメイトスペルで《忌まわしき眼魔》を吊り上げます。 1ターン目に《行き届いた書庫》などの諜報ランドを置いて《忌まわしき眼魔》を落として2ターン目に《救いの手》で釣り上げてしまうモダン級の動きも可能です。墓地に《忌まわしき眼魔》をとにかく落としたいデッキなので、《行き届いた書庫》に加えて《地底街の下水道》まで採用されています。黒いカードはデッキに入っていないので、本当に目的だけです。 《忌まわしき眼魔》を墓地に落とす手段はいろいろとあります。《航路の作成》《決定的瞬間》《錠前破りのいたずら屋》で、手札を減らすことなく《忌まわしき眼魔》を落としながら《救いの手》にアクセスします。 《第三の道の創設》は切削で《忌まわしき眼魔》を墓地に落としつつ、最終章で墓地の《救いの手》を使えるので、1枚で切削とリアニメイトの両方を行えます。第一章から入って上記のスペルたちを使用したり、切削から入ることもできるなど、とにかく場面によって色々な動きが取れる器用なカードです。 《救いの手》《再稼働》の対象が《忌まわしき眼魔》だけでは、肝心のキーカードが墓地に落ちなかった時に手札で腐ってしまいます。そこで採用されているのが《傲慢なジン》です。 《航路の作成》《決定的瞬間》《錠前破りのいたずら屋》といったカードたちが1マナになるので連打できるようになりますし、そもそも墓地を肥やしていくデッキなので、《傲慢なジン》自体のサイズも馬鹿になりません。《忌まわしき眼魔》の代わりにフィニッシャーを務めることもしばしばあります。 『霊気走破』からの加入は2種類。その内の《跳ね弾き》は、これまでのリストに入っていた《送還》が抜けてそのスロットに採用されています。機体が『霊気走破』で大量に収録されたので、機体を戻す場面もあるでしょう。完全上位互換なので《跳ね弾き》にしない理由がありません。 そしてもう1枚は《呪文貫き》。こちらは再録カードですが、アゾリウス眼魔にとにかく合っています。2ターン目に《忌まわしき眼魔》を《救いの手》で釣る際はもちろん、デッキが軽いのでゲーム中盤で1マナを立ててターンを返すことが多いデッキなので、1マナの妨害である《呪文貫き》はこのデッキが望んでいた打ち消し呪文。《送還》と合わせてクリーチャーとクリーチャー以外のどちらにも対処できるようになりました。 アゾリウス眼魔を意識するなら、赤いデッキは《石術の連射》を採用することになるでしょう。回った時の眼魔はグルールすら凌ぐ速度で盤面を作りながらライフを削ってきます。 新環境、墓地対策や《忌まわしき眼魔》対策はぬかりなく!   グルール昂揚 ジャパンスタンダードカップ : 2位 By  DAISUKE IWABUCHI 4種のカードタイプを墓地に揃えることで達成する昂揚。厳しい条件ゆえに昂揚を達成した時のご褒美は大きく、それを目指すデッキがこのグルール昂揚。 1マナ3/3の《継ぎ接ぎのけだもの》、そしてクリーチャーに2回攻撃を付与する《逸失への恐怖》と強力な昂揚クリーチャーたちが入っており、前環境からもトーナメントで活躍していました。 そんなグルール昂揚が今セットで素晴らしい進化を遂げました!   これまでは墓地にカードを落とす行為が昂揚のためだけでしたが、『霊気走破』で加入したとある1枚が、切削やディスカードに新たなバリューをもたらしました。   《アフターバーナーの専門家》です。 消尽能力を起動するたびに墓地から戻ってくる3マナ4/2。巷では《復讐蔦》と呼ばれているこのカードですが、墓地から帰ってくる条件はむしろ《復讐蔦》より軽いかもしれません。 《復讐蔦》はクリーチャーを2回唱えて墓地から戦場に蘇るカードなので、すぐに手札が枯渇していました。リソースを取れないビートダウンではそう何度も返すのは難しい。   一方、《アフターバーナーの専門家》は消尽能力。手札に消尽を持つクリーチャーを1枚温存していれば良いだけですし、自身が消尽を持っているため、複数体の《アフターバーナーの専門家》が帰ってきた時には、片方が除去されてももう一方が《アフターバーナーの専門家》を墓地から呼び戻すことができます。 肝心の消尽能力を持つクリーチャー、《竜航技師》も単体で非常に強力な1枚。2つの消尽能力を持っているので、これ1枚で《アフターバーナーの専門家》を2回蘇らせられます。 更に1つ目の能力は自身に+1/+1カウンターを置きながら、他のクリーチャーに速攻を付与させるので、《アフターバーナーの専門家》が墓地から帰ってきてそのまま殴れます!まさに《復讐蔦》! その《アフターバーナーの専門家》が相打ちで墓地に落ち、次のターンにもう1つの消尽でドラゴンを生み出しつつ、《アフターバーナーの専門家》を再び戻す。ここまで《竜航技師》は1枚で行えてしまうのです。   切削カードも強力な1枚が『霊気走破』で加入しました。《浚渫機の洞察》です。 《蓄え放題》が好きなパーマネントを拾える一方、こちらはアーティファクト・クリーチャー・土地のみ。しかしこのデッキで拾うのはクリーチャーか土地なので、回収範囲に問題はありません。 《浚渫機の洞察》はエンチャントなので、インスタントに比べて墓地に落ちた時に昂揚しやすい点がまず強く、更に回収や《アフターバーナーの専門家》が墓地から戻った際にライフを得られるのも強力。今のスタンダードは苛烈なダメージレースが多く、ライフゲイン手段は貴重です。他の『霊気走破』組と比べて少し地味に見えますが、しっかりとデッキの強化に寄与しています。   《竜航技師》《アフターバーナーの専門家》が加わったことにより、グルール昂揚は粘り強いタフな攻めが可能な骨太ビートダウンに仕上がりました。 切削次第で時に凄まじい回りを見せてくれるので、とても楽しいデッキです。『霊気走破』のカードを使いたいならこのデッキでしょう!   ディミーアミッドレンジ ジャパンスタンダードカップ : 7位 By Hiroaki Itou 良質な青と黒のクリーチャーで攻めつつ、盤面を除去していく、スタンダードライクなミッドレンジです。 スタンダードではすっかり見慣れたデッキですが……『霊気走破』から新加入した神話レアが目に入ります!そう、《油浸の機械巨人》です。 青黒の機械巨人は戦場に出た時にプレイヤーの手札からカードを捨てさせ、そのプレイヤーがドローするというもの。《ヴェンディリオン三人衆》に似た能力とでも言いましょうか。 手札で最も危険なカードを落としてランダムな1枚に変える能力なので、決して弱いわけではありませんが、青と黒のダブルシンボルを持つのであれば、もう少し派手な能力にしてほしかった。個人的にはそんな思いを抱いていたのですが、間違っていたのかもしれません。   特徴的なのは、《油浸の機械巨人》の手札破壊能力を活かすべく、《大洞窟のコウモリ》を採用している点。 最近では赤いデッキの隆盛、それに伴ってほとんどのデッキが1マナ除去を採用していることから、ただ手札を見るだけで終わるカードになってしまうという理由で採用が見送られていた《大洞窟のコウモリ》。その割に《大洞窟のコウモリ》が生き残った時のバリューも決して高くはありません。   しかし、《油浸の機械巨人》によって手札破壊を8枚体制にできるのなら話は別。 《大洞窟のコウモリ》で最初の脅威を抜き、《油浸の機械巨人》で更に手札破壊を重ねていく、新しい攻めパターンが生まれました。   《油浸の機械巨人》自体は4/4絆魂と非常に優秀な能力で、しかも護法もあり、何よりアーティファクトクリーチャーなのでとても除去するのが大変です。《この町は狭すぎる》を活用したエスパーピクシーやディミーアバウンスは《逃げ場なし》と《この町は狭すぎる》に盤面除去を一任しており、そのどちらにも強いのが《油浸の機械巨人》なのです。 《油浸の機械巨人》をコピーする《マネドリ》を4枚採用しているのも非常に面白く、とにかくこのディミーアミッドレンジは《油浸の機械巨人》に寄せた構築で、それが見事に理にかなっています。 考えてみれば、《油浸の機械巨人》は現環境の多くのデッキに対して強いカードです。   赤アグロには安全確認をしながら4/4絆魂を着地させることができ、《この町は狭すぎる》デッキに対しては対処が難しいカード。《喉首狙い》が当たらないので黒系ミッドレンジ全般にも攻守で頼もしい存在です。 事前評価が決して高いとは言えなかった《油浸の機械巨人》の強さに気付く見事な隻眼とデッキ構築です!

【今週のピックアップデッキ】ジェスカイ眼魔/オボシュバーン/ラクドスリアニメイト

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.01.31

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ ジェスカイ眼魔 オボシュバーン ラクドスリアニメイト ジェスカイ眼魔 スタンダードリーグ : 5-0 By SaltyXD スタンダードからレガシーまで幅広い環境で使われているクリーチャーと言えば。   そう、《忌まわしき眼魔》。 3マナ5/5飛行脅威的なスペックに加えて、相手のアップキープに戦慄予示を行い、放置しておくとクリーチャーがどんどん横並びになっていく、モダンホライゾン産と言われても疑わないパワーを持っています。 デメリットとして唱える際に墓地を6枚要求するので、モダンでは《発掘》、スタンダードでは《救いの手》など、リアニメイトでデメリットを打ち消す使い方が基本です。 そんな《忌まわしき眼魔》をリアニメイトすることに全力を注ぐデッキがアゾリウス眼魔。昨年の世界選手権から今も活躍を続けています。   本日紹介するジェスカイ眼魔は、《救いの手》《再稼働》で《忌まわしき眼魔》を吊り上げるコンセプトはアゾリウス眼魔と同じなものの、似て非なるデッキ。 最も異なるのは《忌まわしき眼魔》を墓地に落とす手段です。アゾリウス眼魔が《錠前破りのいたずら屋》や《第三の道の創設》でライブラリーから直接《忌忌まわしき眼魔》を落とすのに対し、このデッキでは手札からのディスカードしていきます。 《逸失への恐怖》はパイオニアやモダンでもお馴染みのクリーチャー。カードを捨てて引く能力で損をせず、昂揚した状態で攻撃することで追加の戦闘フェイズを獲得できる、便利な2マナ域。 同じ2マナ域の《太陽の執事長、インティ》もディスカード手段。こちらはリソースを稼ぎつつクリーチャーを強化してくれます。《逸失への恐怖》と相性が良く、昂揚を達成していると2回攻撃できるので、《太陽の執事長、インティ》も2回誘発するのです。 《蒸気核の学者》は面白いチョイスです。2ドローした後にインスタントかソーサリーか飛行を持つクリーチャーを捨てるかカードを2枚捨てるかのいずれかを選ぶので、《忌まわしき眼魔》を捨てれば2ドロー1ディスカードとかなりお得なカード。《遠眼鏡のセイレーン》を捨てても良いのでかなり使いやすいですね。もちろんこのディスカードにも《太陽の執事長、インティ》は反応します。 1枚だけ採用されている《上げ潮、キオーラ》も2枚引いて2枚捨てるクリーチャー。こちらはスレッショルド状態で攻撃するとタコが出るオマケつきなので、墓地が肥えてきた中盤以降は脅威となります。 《忌まわしき眼魔》をライブラリーからではなく手札から墓地に送り込むことで何が変わったのかというと、それはクリーチャーを多く採用できる点です。   従来のアゾリウス眼魔は《錠前破りのいたずら屋》《傲慢なジン》《忌まわしき眼魔》のクリーチャー12枚体制がデフォルトでした。《錠前破りのいたずら屋》はただの1/3警戒なので、戦慄予示による当たりは2種類しかなく、大体の場合はただの2/2クリーチャーです。 しかし、ジェスカイ眼魔は違います。《遠眼鏡のセイレーン》は外れとしても、《太陽の執事長、インティ》《逸失への恐怖》《上げ潮、キオーラ》は当たりの部類に入るので、《忌まわしき眼魔》を合わせて12枚は戦慄予示による当たりがあるのです。《遠眼鏡のセイレーン》《蒸気核の学者》も飛行を持っているので、戦慄予示で場に出す外れというわけでもありません。 また、《逸失への恐怖》《蒸気核の学者》《上げ潮、キオーラ》とドローできるカードがたくさん入っているので、《プロフトの映像記憶》も採用しています。《プロフトの映像記憶》はどんなクリーチャーもフィニッシャークラスに成長させるエンチャントなので、サイド後に《安らかなる眠り》を置かれた際には凄まじい活躍を見せるでしょう。 アゾリウス眼魔はアタッカーである《傲慢なジン》と《忌まわしき眼魔》がいずれも墓地依存のカードなので、墓地対策がとても苦手でしたが、このジェスカイ眼魔は墓地対策にかなり耐性のあるデッキです。 赤を使えるのでサイドには墓地を使わないダメージソースとして《ウラブラスクの溶鉱炉》も採用しており、墓地対策を無視しようとする姿勢が伝わってきます。 スタンダードで《忌まわしき眼魔》を出したい方、選択肢はアゾリウスだけではありませんよ! オボシュバーン パイオニアチャレンジ : 5位 By  KO_Mak パイオニアで長きにわたって親しまれていた相棒、《湧き出る源、ジェガンサ》が禁止され、最近は《空を放浪するもの、ヨーリオン》以外の相棒をすっかり見なくなりました。 そんな中、すい星のごとく現れたのがこのオボシュバーン。   奇数のカードしかデッキに入れられないという強力な制限がある《獲物貫き、オボシュ》。その分ボーナスは破格で、戦場に《獲獲物貫き、オボシュ》がいると、奇数のカードによりダメージがすべて倍になります。 《ギトゥの溶岩走り》は2マナ4点になり、《批判家刺殺》は6点火力になる。そんな夢のような相棒です。 奇数しか採用できない点も、バーンなら難しくありません。火力のほとんどは1マナで、《舞台照らし》《批判家刺殺》は3マナながら、絢爛コストは1マナなので実質1マナ。 そう、よく見るとこのオボシュバーンは、デッキ内に入っているカードがすべて1マナなのです。   それゆえに回った時には凄まじい速度です。《僧院の速槍》《損魂魔道士》の果敢持ちクリーチャーを非常に強く使えるデッキでもあります。何せデッキに入っているカードはすべて1マナですから、3連打してパワー4で殴ることもしばしばあるのです。絢爛と相性が悪いのはご愛嬌。 以前までは火力が弱かったため、《ボロスの魔除け》など2マナの火力呪文に頼る必要があり、《獲物貫き、オボシュ》を採用できませんでした。しかし、『ファウンデーションズ』で登場した《稲妻波》により、赤単でデッキが成立するようになったのです。 面白いのはサイドボードの偶数カードたち。   《解き放たれた狂戦士》はプロテクション白を持つので、天敵である《跳ねる春、ベーザ》を無視して殴り、《力線の束縛》をはじめとした白い除去も受け付けません。 そして4枚採用されている《碑出告の第二の儀式》は、相手のライフがちょうど10なら10点を与えるド派手な火力スペル。 これらの偶数のカードをサイドインする時は《獲物貫き、オボシュ》を相棒に指定できませんが、そのデメリットを補ってあまりある力が、この2種にはあります。   赤単バーンは相手のライフを20点削る設計のデッキです。なぜならデッキには1マナ2点や1マナ3点など、ただダメージを与えることしかできないカードが大量に入っているからです。クリーチャーが多いタイプの赤単は火力を除去として使い、クリーチャーでライフを削っていきます。そのため、ライフゲインを苦にしません。 スタンダードのグルール果敢などはその典型ですね。相手が《跳ねる春、ベーザ》を連打してライフが20になっていようと、《心火の英雄》《多様な鼠》《巨怪の怒り》などが絡めばあっという間にライフは消し飛びます。 そのクリーチャーによるダメージをあまり期待できない赤単にとって、ライフゲインカードは非常に厳しい。《跳ねる春、ベーザ》1枚で《火遊び》2枚分と考えると恐ろしいですよね。   だからこそ、サイド後はライフゲインを意識したカードチョイス。ライフを回復するカードは白が多いので、プロテクション白を持つ《解き放たれた狂戦士》、そして1枚で10点を出す《碑出告の第二の儀式》なのです。 赤好きにはたまらないオボシュバーン、ぜひお試しください。 ラクドスリアニメイト Ultimate Guard Open : 7-1 By Christian Rothen モダンでリアニメイトと言えば《御霊の復讐》。 モダンで《残虐の執政官》を出すなら《不屈の独創力》。 その常識を覆すのが、このラクドスリアニメイト。《御霊の復讐》ではなく《頑強》をリアニメイト手段とし、《残虐の執政官》を吊り上げます。 《頑強》は伝説のクリーチャーを釣れないので、強力なリアニ先の《偉大なる統一者、アトラクサ》《穢すもの、ウラモグ》は採用できません。 しかし、伝説以外でも強力な釣り先は存在します。それが《カザド=ドゥームのトロール》です。 スーパー威迫などと呼ばれている《カザド=ドゥームのトロール》。3体以上でしかブロックできないのでほとんどの場面でダメージを通すことができ、非常に早くクロックを刻んでいきます。1ターン目にサイクリングして土地をサーチして2ターン目に《頑強》で場に戻す動きは強力。   《カザド=ドゥームのトロール》はリアニメイトパーツでありながら、1マナで土地に変えられるので、腐ることがほぼないカード。実はリアニメイト要素はこのデッキには《残虐の執政官》と《頑強》しか入っていません。 残るパーツは殴るカードで構成されています。   《ドラゴンの怒りの媒介者》《ネザーゴイフ》は墓地が豪華になると強くなるカードたち。リアニメイトするためには墓地にカードを送る必要があるので、相性が良いですね。 《逸失への恐怖》は自身が墓地にある時は昂揚達成を助け、戦場に出てもカードを捨てて引くので、2つの意味で昂揚に貢献してくれます。もちろん昂揚達成時の2回攻撃のボーナスも強力。 《残虐の執政官》《カザド=ドゥームのトロール》と重いクリーチャーたちを採用しているので、《探偵のフェニックス》は非常に相性が良いカード。証拠収集6は非常に重いコストですが、このデッキなら達成は容易です。 そして《探偵のフェニックス》のバリューも非常に高いのがストロングポイント。《カザド=ドゥームのトロール》につけば《頑強》のパワーマイナス修正を受けても7点あり、しかも飛行3体を用意するのは現実的に不可能なので、事実上のアンブロッカブル。しかも《頑強》で釣り上げたターンに速攻をつけて攻撃もできます。 もちろん、《残虐の執政官》に《探偵のフェニックス》を授与して攻撃すれば大体勝ちですね。   《カザド=ドゥームのトロール》と《残虐の執政官》による一撃の打点が高いので、《逸失への恐怖》による2回攻撃も活きやすく、かなり早いデッキです。 《信仰無き物あさり》でリアニメイトが強化されたとは言われていたものの、これまでは良いデッキがまだ見つかっていませんでした。 このラクドスリアニメイトは《信仰無き物あさり》を再び輝かせるのか、今後の活躍に注目したいですね。

【今週のピックアップデッキ】ラクドスサクリファイス/ディミーアバウンス/ライフネクロ

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.01.24

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ ラクドスサクリファイス ディミーアバウンス ライフネクロ ラクドスサクリファイス スタンダードリーグ : 5-0 By Tomemoc 最近のスタンダードでは《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》のバウンスギミックが大流行していますが、サクリファイスもスタンダードでは定番のギミックでした。 その名の通り、生け贄(サクリファイス)を有効活用するのがラクドスサクリファイス。まずは生け贄にする手段からご紹介しましょう。   《塔の点火》《最後の復讐》は生け贄にして対象を除去するカードたち。《塔の点火》は生け贄にせずとも2点火力なのでそもそも及第点で、今のスタンダードでは引っ張りだこのカードですね。 《最後の復讐》はサクリファイス専用の除去。クリーチャーかエンチャントを生け贄に捧げることで使える1マナの除去で、好きなクリーチャーを追放できます。生け贄という大きな追加コストな分、強力な除去です。 この2種類はいずれも追放除去なので《心火の英雄》を後腐れなく除去できます。 近頃のサクリファイスで欠かせないのが《不穏な笑い》。他のエンチャントかクリーチャーを生け贄に捧げることで2ドローでき、更にこの《不穏な笑い》が生け贄に捧げられた時に戦慄予示を行えます。能動的な生け贄手段になるだけでなく、自身も生け贄時にボーナスがある、まさにサクリファイスのためのカード。 そして忘れてはならないのが《甦りし悪夢、ブレイズ》。終了ステップにカードを生け贄にし、それと同じタイプのパーマネントを生け贄に捧げさせます。その生け贄を拒否すると2点のライフルーズをさせながら自分が1ドロー。基本は相手がコントロールしていないカードタイプを生け贄にするので、ライフを失わせつつリソースを稼ぐスーパーカードです。 強力な生け贄軍団の次は、その供物たちをご紹介しましょう。   《機械仕掛けの打楽器奏者》は1ターン目から攻撃しつつ、生け贄にするとライブラリーのトップをプレイできるカード。生け贄はリソースを失う行為ですが、《機械仕掛けの打楽器奏者》はカードを失うことのない生け贄素材なので、非常に使い勝手が良いですね。 最近ではバウンスギミックのデッキでも大活躍中の《悪意ある呪詛術士》もサクリファイスで活躍します。戦場に出た時に生成される呪われし者の役割はエンチャントなので、実は《最後の復讐》や《塔の点火》で生け贄にできます。本来デメリットであるはずの呪われし者がサクリファイスではメリットに働くというわけですね。 《望み無き悪夢》もバウンスデッキで活躍するエンチャント。バウンスでは何度も使いまわして手札とライフを奪いますが、サクリファイスでは生け贄先として使います。墓地に置かれた時に占術2ができるのはかなり便利です。 サクリファイスは戦場のパーマネントを生け贄に捧げることが多いので、落魄しやすいデッキです。というわけで強力な落魄カードも採用されています。   《鍾乳石の追跡者》は落魄でどんどん成長していくクリーチャー。威迫があるのでブロックされず、生け贄にすることで除去も行える便利な1マナ域です。1ターン目に出した《鍾乳石の追跡者》を毎ターン《甦りし悪夢、ブレイズ》なので強化していくのが理想の流れとなっています。 落魄カードでもあり、エンチャントなので生け贄にもできるのが《迷いし者の骸》。落魄すれば何度も使い回せるので、こちらがライフを詰めにいく展開ではどんどん手札に戻していくことになります。 落魄手段は決して戦場から墓地に送るだけではありません。《逸失への恐怖》のディスカードで墓地にパーマネント・カードを送っても落魄してくれるのは覚えておいて損はないです。 説明不要の強カード、《ウラブラスクの溶鉱炉》は出たトークンを生け贄に捧げてもよし、ターンが経てばフィニッシャーとしてもよしですが、あくまで生成されるのはトークンなので、落魄しない点には注意。それでも十二分に活躍できます。 様々なシナジー満載のラクドスサクリファイス、この手のデッキがお好きな方にはたまらないはず! ディミーアバウンス パイオニアチャレンジ : 4位 By  rasvd スタンダードですっかり一大勢力となっているバウンス系デッキ。先ほども話にあがりましたが、今のスタンダード環境を語るなら欠かせないギミックです。 《嵐追いの才能》を出し、その《嵐追いの才能》と相手のパーマネントを《この町は狭すぎる》で戻し、《嵐追いの才能》を再びキャスト。レベル2になった時の能力で《この町は狭すぎる》を回収することで、マナはかかりますが無限に《この町は狭すぎる》で妨害を行いつつ、カワウソを生成できるようになります。 そんなバウンスタッグがなんとパイオニアでも活躍しています!   パイオニアでも動きに大きな違いはありません。《逃げ場なし》を戻して除去の使い回しを行ったり、《望み無き悪夢》で相手の手札とライフを同時に攻めていきます。 《食肉鉤虐殺事件》は使い回せる全体除去で、置いておくと相手のクリーチャーを除去するだけでライフを得られるので、コントロールにとって嬉しい1枚。 実は《覆いを割く者、ナーセット》もバウンスカードと相性が良いプレインズウォーカー。『灯争大戦』の一部のプレインズウォーカーは強力な常在能力がある代わりにプラス能力が存在しないため、忠誠度がなくなった後は常在型能力を持った置物になってしまいます。《覆いを割く者、ナーセット》もその内の1枚。 しかし、《孤立への恐怖》《この町は狭すぎる》で手札に戻せば《覆いを割く者、ナーセット》を再び再利用できるのです。 手札に戻すことでリソースを獲得できるカードとして《稲妻罠の教練者》も採用されており、《逃げ場なし》を戻す必要のない対コントロールなどでは、《稲妻罠の教練者》と《覆いを割く者、ナーセット》を何度も使い回していきます。 そしてなんといってもスタンダードとの一番の違いはライブラリーの枚数です!ご覧の通り、このディミーアバウンスはメインが80枚。   そう、《空を放浪するもの、ヨーリオン》が相棒なのです。 ディミーアバウンスは、戦場に出た時に効果を発揮するパーマネントをバウンスで何度も出し直して勝利するデッキ。それならば、戦場のパーマネントを一斉に明滅させてくれる《空を放浪するもの、ヨーリオン》との相性は抜群です。   《稲妻罠の教練者》《望み無き悪夢》《嵐追いの才能》《チビボネの加入》《逃げ場なし》は《空を放浪するもの、ヨーリオン》で一時追放するだけで恩恵がありますし、《覆いを割く者、ナーセット》もリフレッシュできます。 更にこの《空を放浪するもの、ヨーリオン》を《この町は狭すぎる》で回収してもう一度使用することができるので、相棒を徹底的に使い倒すことができるのです。今存在しているデッキの中で最も相棒と相性の良いデッキがこのディミーアバウンスなのです。 相棒は必ず手札に加えられるカードなので、戦略に組み込んだ時の強さは恐ろしいものです。ランダム要素の強いマジックというゲームにおいて非常に高い再現性を生み出すのが相棒システムです。   相棒界の王、《夢の巣のルールス》が入ったデッキは、軽いアクションで相手の除去と交換を続け、除去が尽きたところで《夢の巣のルールス》を出して勝利という動きが定番でした。必ずゲーム中に引けるカードは戦略として実に組み込みやすいのです。 パイオニアのディミーアバウンスは《空を放浪するもの、ヨーリオン》によって非常にデッキパワーが高く、これからどんどん活躍していくデッキになると個人的には思っています。 ライフネクロ モダンリーグ : 5-0 By PeanutBrittle ライフをドローに置換することのできる《ネクロポーテンス》。そのリメイク版として『モダンホライゾン3』で登場したのが《ネクロドミナンス》です。 元祖よろしく1点のライフを支払ってカードを引けるエンチャントで、手札の上限枚数が5枚になるなど、デメリットこそありますが、その性能は基本的には《ネクロポーテンス》です。 この《ネクロドミナンス》を活用したデッキが黒単ネクロ。《一つの指輪》《ネクロドミナンス》で大量の手札を確保し、《魂の撃ち込み》を相手に打ち続けて勝利します。 《一つの指輪》の禁止によってリソース確保手段は減ってしまいましたが、それでも《ネクロドミナンス》の強さは健在。今回は形を大きく変えた《ネクロドミナンス》デッキとして、このライフネクロを紹介します。 《ネクロドミナンス》で大量ドローするためにはライフが必要になりますが、その回復手段として黒単でも定番だった《魂の撃ち込み》と《不憫な悲哀の行進》に加えて、《滋養の群れ》も採用されています。 《滋養の群れ》は手札から緑のカードを追放することで、その追放したカードのマナ総量分のライフを獲得できます。《土着のワーム》を追放して15点ゲインできるので、《ネクロドミナンス》15ドロー分を0マナで確保できるのです。 《滋養の群れ》で回復するために《土着のワーム》の上から採用されているのが《一なる否命》です。手札からプレイした際にライブラリーからスピリットを場に出し、死亡時に墓地からスピリットを吊り上げる……なんて能力を使うことは一度もありません。 このカードの価値はそのマナ総量と色にあります。   《滋養の群れ》のコストに使えば12点のライフを得られる他、黒なので《魂の撃ち込み》でも追放できます。要するに黒でもあり緑でもあるカードの中で最も重いカードだから採用されているのです。 ライフゲインカードを大量にデッキに入れたことで《マルコフ家のソリン》を活用できるようになったのもポイント。3点以上のライフを得ることで変身でき、プレインズウォーカーになると、このターンに得たライフの分だけ好きな対象にダメージを与えられるので、《滋養の群れ》で《土着のワーム》を追放すると15点ダメージになります。 《薄暮薔薇の棘、ヴィト》も回復したライフ分、相手のライフを失わせるカードなので、このデッキの《滋養の群れ》は0マナ15点火力となる瞬間が多々あります。 そして《オルサンクのパランティール》。終了ステップの開始時にカードを引くか、切削を相手が選び、切削したカードの中のマナ総量分だけ相手にダメージが入ります。 通常は切削を選ばれますが、このデッキは《滋養の群れ》のために6枚の超高コスト呪文を採用できるようになったので、《オルサンクのパランティール》による切削は時に一撃必殺となるのです。 ギミック満載のアブザンネクロ、その破壊力をぜひ味わってみてください。

【今週のピックアップデッキ】グルール昂揚/シミック眼魔/焼却者バーン

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.01.18

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。         紹介デッキ グルール昂揚 シミック眼魔 焼却者バーン グルール昂揚 スタンダードリーグ : 5-0 By Edel スタンダードでグルールと言えば《心火の英雄》《多様な鼠》《熾火心の挑戦者》の強力な赤のハツカネズミたちを主軸に据えた赤アグロ。 このグルールもアグロデッキではありますが、《心火の英雄》《多様な鼠》《熾火心の挑戦者》の3種のハツカネズミはいずれも採用されていません。 このグルールは、その名の通り"昂揚"によって戦うデッキです。 マジックオンライン以外でも、関西でのリアルトーナメントでも活躍しており、プレミアム予選も突破している、今ホットなデッキ。 昂揚は、4種のカードタイプを墓地に揃えることで達成できます。条件が非常に厳しいため、昂揚になった際のボーナスは強力な場合が多く、このデッキには多くの昂揚ボーナスを持つカードたちが採用されています。 まずは1マナ3/3と破格のスタッツを持つ《継ぎ接ぎのけだもの》。昂揚状態でしか戦闘に参加できませんが、アップキープに切削を行えるので、昂揚を助けてくれます。自身がアーティファクトクリーチャーなので墓地に落ちた際の昂揚カウントにも便利。 下フォーマットでもお馴染みの《逸失への恐怖》は、昂揚で追加の戦闘フェイズを発生させる凄まじいカード。戦場に出た時にカードを捨てて引き、更にクリーチャー・エンチャントなので、昂揚の達成にも貢献します。 《野火の木人》は普通に出しても2マナ3/2速攻で、昂揚時は4/3トランプル。2マナ4/3速攻トランプルは下環境でも通用するスペックです。カカシなのでアーティファクトクリーチャーです。 そして《雑食性ハエトリグサ》。昂揚していると、戦場に出た時や攻撃時に+1/+1カウンターを2個割り振り、更に6種のカードタイプがある状態では乗せている+1/+1カウンターが倍になる、非常に攻撃的な植物です。 昂揚達成時の恐ろしさについてわかってもらえたところで、肝心の昂揚の満たし方についてもお話しましょう。   前述のようにエンチャントやアーティファクトでもあるクリーチャーたちがデッキには大量に入っているので、それらのクリーチャーを《陥没穴の偵察》の探検や《瓦礫帯の異端者》の諜報、《逸失への恐怖》のディスカードで墓地に落としていきます。 《脱走》はこのデッキだからこそ使える強力なスペル。2マナ以下の強力なクリーチャーが多いので、《脱走》で状況に応じて上6枚から選択して戦場に出すことができます。速攻のオマケがつくので、昂揚達成時に《逸失への恐怖》を出して、速攻を付けて他のクリーチャーをアンタップして再アタック、なんてことも。 昂揚さえ満たせればスタンダードとは思えない性能のクリーチャーたちで襲い掛かるこのグルール昂揚。普通のグルールに食傷気味の方はぜひお試しください。 シミック眼魔 パイオニアチャレンジ : 優勝 By  Tunaktunak 原根 健太さんが配信で開発し、直後にパイオニアチャレンジで入賞したのを皮切りに優勝・準優勝ととにかく勝ちまくっている、今激アツなデッキ。   その名の通り、このデッキは《忌まわしき眼魔》に特化している、眼魔による眼魔のための眼魔デッキです。《忌まわしき眼魔》を出す手段と《忌まわしき眼魔》を守るカードばかりでデッキは構成されています。 《忌まわしき眼魔》を出す手段は大きく2つ。1つは墓地を肥やして手札から出す。《ファラジの考古学者》《サテュロスの道探し》で墓地を肥やせますが、それ以外の切削カードは採用されていません。あくまで合法的に《忌まわしき眼魔》を召喚するのはサブプランです。 メインとなるのは、《新生化》によってデッキから直接場に出す方法です。   《新生化》は生け贄に捧げたクリーチャーよりマナ総量が1高いクリーチャーをデッキから場に出すことができます。 これにより、2マナクリーチャーを生け贄に捧げることで《忌まわしき眼魔》を場に出せるのです。 生け贄に捧げる2マナクリーチャーは《新生化》を手札に加える手段が3種採用されています。《ボーラスの占い師》《ファラジの考古学者》《稲妻罠の教練者》はすべて2マナでライブラリーの上3~4枚からインスタント・ソーサリーを1枚手札に加えられます。 2ターン目に《ボーラスの占い師》《ファラジの考古学者》《稲妻罠の教練者》で《新生化》を手札に加え、3ターン目に《新生化》で《忌まわしき眼魔》を呼び出しつつ、1マナを構えるのがシミック眼魔の勝ちパターンです。 《新生化》を防ぐために相手が2マナクリーチャーを除去してきても、2マナクリーチャーは14体も入っているので、次の2マナクリーチャーを用意すればいいだけです。こちらとしてはさほど痛手にはなりません。   《新生化》で《忌まわしき眼魔》を呼び出した後は、今度はこの《忌まわしき眼魔》を守るフェイズに突入します。   パワー4以上のクリーチャーをコントロールしていると《否認》になる強力な打ち消し、《頑固な否認》。《忌まわしき眼魔》を出す前提なら《否認》の上位互換です。 《タイヴァーの抵抗》は1マナで使えば呪禁と破壊不能を付与するインスタント。マナをつぎ込むことでパワーとタフネスにも修正を加えるので、フィニッシュ手段としても優秀です。 モダンの御霊でも採用実績のある《本質の変転》も《忌まわしき眼魔》を逃がせる1枚です。クリーチャーを追放して戦場に戻すので、たとえば戦慄予示で伏せてある《ファラジの考古学者》に《本質の変転》を打つと、表のまま戦場に出るので《ファラジの考古学者》の能力を誘発させられます。 このように3種の《忌まわしき眼魔》を守る手段はそれぞれ違うメリットを持っています。   《消えゆく希望》は優秀なバウンス呪文です。シミックカラーでは除去手段がほとんどないため、《消えゆく希望》による妨害は必須です。 バウンスを自分のクリーチャーに使えるのは《忌まわしき眼魔》のメリットです。戦慄予示で伏せた裏向きクリーチャーにバウンスを打つと自分の手札に戻るので、たとえば《頑固な否認》や《タイヴァーの抵抗》、必要であれば《新生化》を手札に戻せば、使用できるようになります。 戦慄予示で昂揚を達成すれば《ウルヴェンワルド横断》で《忌まわしき眼魔》をサーチしたりなど、様々な手段で《忌まわしき眼魔》を呼び出す、極限まで《忌まわしき眼魔》に特化したデッキ。《忌まわしき眼魔》をとにかく使い倒したいならこのデッキに決まりです! 焼却者バーン モダンリーグ : 5-0 By antonSN5 『ファウンデーションズ』で登場した《稲妻波》により、ついに《溶岩の撃ち込み》8枚体制となったバーン。 しかし、《火の怒りのタイタン、フレージ》《魂の導き手》の強力なライフゲインカードの存在でどうしても活躍できていないのが現状です。 そんなバーンファンの皆様に朗報!今回は新たな形のバーンがモダンリーグで5-0しました!! モダンの定番だったボロスカラーではなくなったのが今回の新たなバーン。2マナ4点の《ボロスの魔除け》すら排除し、デッキ内に入っている本体火力はすべて1マナになっています。 《稲妻波》《溶岩の撃ち込み》《稲妻》《裂け目の稲妻》《批判家刺殺》はすべて1マナの3点火力呪文で、ダメージ効率で言えば最高です。 唯一1マナ2点の《炎の印章》が入っている理由は……この後明らかになります。 2マナの火力は厳選されており、《焼尽の猛火》のみとなっています。上陸しているとクリーチャーとプレイヤーに3点ずつを与えられる火力なので、2マナ6点相当とすさまじい性能です。クリーチャーとのダメージレースになりやすいバーンデッキでは、クリーチャーを焼きつつプレイヤーにもダメージを与えられる《焼尽の猛火》は貴重で、2マナを支払う価値があります。 《乱動する渦》は直接火力ではありませんが、アップキープにプレイヤーに1点のダメージを与えるエンチャント。それだけでなく、呪文を唱える際にマナが支払われていなかった場合に、そのプレイヤーに5点を与えます。《モックス・アンバー》や《ミシュラのガラクタ》のような0マナのカードを唱えても5点を与えられますし、《否定の力》などのピッチ呪文、続唱でめくれた呪文、《孤独》などにも反応して5点のダメージを与えてくれます。 さて、クリーチャーたちも見ていきましょう。まずは《玉虫色の蔦打ち》です。 上陸するたびに対戦相手に1点のダメージを与えるトカゲ。フェッチランドで2点のダメージを与えられ、新生していると2体になるのでフェッチランドが4点火力になってくれます。   これだけでは《ゴブリンの先達》《僧院の速槍》といったバーン定番の1マナ域より弱そうですが、もう1体のクリーチャーがこの《玉虫色の蔦打ち》と噛み合うカード。 それこそが焼却者バーンの主役、《チャンドラの焼却者》です! 6マナ6/6とバーンにとても入るとは思えない重さのクリーチャーですが、安心してください。このクリーチャーは実質1マナ6/6です!   このターンに対戦相手が受けた戦闘以外のダメージ1点につきコストが(1)軽くなるので、たとえば相手が《稲妻》で3点を受けていた場合は3マナになります。 ここで《炎の印章》がなぜデッキに入っているかが明らかとなりましたね。《炎の印章》を1ターン目に置き、2ターン目に《稲妻》を本体に打ち、その後《炎の印章》を生け贄にすると、このターンに相手が5点のダメージを受けているので、《チャンドラの焼却者》が1マナになります。《チャンドラの焼却者》のコストを軽くするには1ターンで相手がたくさんのダメージを受けなければならないので、《炎の印章》は相性が良いのです。 《裂け目の稲妻》もマナを払った次のターンに待機が明けてダメージが入るので、《チャンドラの焼却者》と相性が良いカードです。 先ほど紹介した《玉虫色の蔦打ち》もまた、《チャンドラの焼却者》の2ターン目キャストに貢献します。1ターン目に出しておき、2ターン目にフェッチランドを起動すれば2点が入るので、後3点を与えれば2ターン目に6/6を出せるというわけです。 しかも《チャンドラの焼却者》はただサイズが大きいだけではありません。《チャンドラの焼却者》が戦場にいると、プレイヤーに非戦闘ダメージが入った時に、そのプレイヤーがコントロールしているクリーチャーやプレインズウォーカーに同じ点数のダメージを与えられます。《稲妻》はもちろん、クリーチャーに打てない《溶岩の撃ち込み》なども《焼尽の猛火》になってくれるのです。 2ターン目《チャンドラの焼却者》のブン回りは病みつきになるかもしれませんよ。

【今週のピックアップデッキ】アゾリウス全知/マーフォーク/悟ブリンク

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.01.10

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 アゾリウス全知(スタンダード) MOリーグ:5-0 By KidWar 『ファウンデーションズ』では《ラノワールのエルフ》をはじめ、様々な往年の名カードが再録されていますが、実はレガシーやパイオニアで現在も現役バリバリで稼働しているあのカードも収録され、スタンダードに帰ってきています。 そう、《全知》です。 手札から呪文をタダで唱えられるというエンチャント。そのマナコストは10マナと重いですが、マジックを遊戯王に変えるぐらいの能力なので当然です。 この《全知》を《アブエロの覚醒》で墓地から吊り上げるのがアゾリウス全知。最速4ターンキルも可能なデッキとなっています。 デッキのコンセプトは至って単純。《全知》を墓地に落とし、《アブエロの覚醒》で戦場に戻す。ただこれだけです。 墓地に落とす手段は実に豊富です。《ファラジの考古学者》《錠前破りのいたずら屋》はそれぞれカードを切削して《アブエロの覚醒》を手札に加えられるカードたち。その過程で《全知》を落とせます。 《決定的瞬間》《困惑の謎掛け》も同じく、《全知》を墓地に送りつつ《アブエロの覚醒》を手札に入れられるカード。《困惑の謎掛け》は打ち消し呪文としても運用できるので、相手の動きを見てモードを選択できて嬉しいですね。 手札に《全知》が来た場合も問題はありません。《航路の作成》で手札から直接墓地に落とせます。このデッキではリソースはさほど重要ではないため、強襲を達成してから《航路の作成》を打つと、後で引いてきた《全知》を捨てられずに困る場合があります。 《エファラの分散》はクリーチャーをバウンスしつつ、諜報2で《全知》を切削できるので、デッキと噛み合ったカードです。 これらのカードで《全知》を落とし、《アブエロの覚醒》で戦場に戻し、そこからどうやって勝利するのか。その手順をご紹介します。 1.《アブエロの覚醒》で《全知》を墓地から戦場に戻す。1/1の《全知》が戦場に出る。 2.《アルケヴィオスへの侵攻》を戦場に出してサイドボードから《機織りの季節》をサーチ。 3.《機織りの季節》を、1/1の《全知》をコピーしながら、トークンと土地以外をすべて手札に戻すモードで使用。 4.コピーの《全知》以外のすべての非土地パーマネントが手札に戻るので、先ほど唱えた《アルケヴィオスへの侵攻》を再キャスト。サイドボードから《肝冷やしの手》を手札に加える。 5.《肝冷やしの手》で《アルケヴィオスへの侵攻》を手札に戻して戦慄予示を行い、再び《アルケヴィオスへの侵攻》を出して墓地から《肝冷やしの手》を回収する。 6.《アルケヴィオスへの侵攻》が戦慄予示によって戦場に裏向きで出るまで、5を何度も繰り返す。 7.《肝冷やしの手》で2枚目の《アルケヴィオスへの侵攻》が戦慄予示で戦場に出たら、手札から《アルケヴィオスへの侵攻》を出し、墓地から《機織りの季節》を手札に。 8.《機織りの季節》を唱えて、戦慄予示の2/2をコピーしながら全バウンスモードを使用。コピーの2/2と《全知》以外のすべてのパーマネント(《アルケヴィオスへの侵攻》2枚を含む)が手札に戻る。 9.《機織りの季節》で2/2をコピーしながら全バウンスで《アルケヴィオスへの侵攻》が2枚手札に戻り、1枚目で好きなインスタント・ソーサリーを手札に加えつつ、2枚目で《機織りの季節》を回収して再度8を行うことで、無限に2/2を増やしながら、ライブラリー・墓地・サイドボードから任意のインスタント・ソーサリーを手札に加えられるようになる。 10.最終的に無限体の2/2を出して手札を4枚の《困惑の謎掛け》《否認》《失せろ》《エファラの分散》にしてターンエンド。相手のターンで7回の妨害を行い、無限体のトークンで攻撃して終了。 少し長いですが、このような手順で勝利となります。 《アブエロの覚醒》で釣った《全知》が1/1のクリーチャーになるので、《機織りの季節》でコピーを作り出せるというのがミソですね。最初は僕も全然コンボの方法がわからずに、MTGアリーナで画面と格闘していました。《機織りの季節》のテキストを2回読み直してようやく気付くことができましたが。 《全知》を遊戯王と表現しましたが、実際に《全知》が着地してからの勝利手順はまさに遊戯王と言わんばかり!マジックで遊戯王を楽しんでみたいならこのデッキで決まりです! マーフォーク(パイオニア) パイオニアチャレンジ:優勝 By claudioh マジック界随一の人気を誇る種族、マーフォーク。その歴史は非常に古く、黎明期から《アトランティスの王》は活躍していました。 レガシーではかつて最強と言われていて、モダンにおいても度々強化が入って騒がれているマーフォーク。美しいその容姿とは裏腹に、戦術は肉弾戦を得意としています。このギャップもマーフォークの魅力かもしれませんね。 すべてのマーフォークを+1/+1する《アトランティスの王》《ヴォーデイリアの呪詛抑え》《真珠三叉矛の達人》たちで盤面を強化し続けて相手のライフを一瞬で削りきる。これが下環境におけるマーフォークの戦略でしたが、パイオニアでのマーフォークは一味違います。 カラーリングはシミック。緑のカードは3種で、その内2枚はいずれも1マナ。 1マナ2/2の《クメーナの語り部》と、戦場に出た時に探検を行える《陥没穴の偵察》。いずれも非常に優秀なマーフォークなので納得です。 もう1種となるのが《キオーラの追随者》。他のパーマネントをアンタップできるので、一時的なマナ加速が可能なマーフォークなのですが、殴りに向いたクリーチャーではありません。 それならなぜこのカードが入っているのかというと、答えはクリーチャー以外の部分にあります。そう、《深根の巡礼》です。 トークンでないマーフォークがタップするたびに呪禁を持つマーフォークを生成するエンチャント。攻撃するたびにマーフォークを生成していくデザインのカードですが、これが《キオーラの追随者》と組み合わさることで恐ろしいコンボになります。 《キオーラの追随者》を2体出し、Aの能力でBをアンタップし、次にBでAを起こすと……無限にマーフォークをタップできるので、《深根の巡礼》で無限体のトークンを生成できるのです。 とはいっても《キオーラの追随者》が2体並ぶことなど稀。そこで採用されているのが《アガサの魂の大釜》です。 《アガサの魂の大釜》で《キオーラの追随者》を追放すると、+1/+1カウンターが乗ったすべてのクリーチャーが《キオーラの追随者》になるので、非常に簡単にコンボが決められるようになります。 《陥没穴の偵察》は探検でカウンターが乗れば能力が使えますし、《オラーズカの暴君、クメーナ》はすべてのマーフォークにカウンターを乗せられるので、《アガサの魂の大釜》との相性抜群です。 コンボを揃えるためのカードたちも優秀なメンバー揃いです。かつて禁止カードだった《密輸人の回転翼機》は《キオーラの追随者》を墓地に送りながら《アガサの魂の大釜》を引き込めるカードで、搭乗によってクリーチャーをタップできるので、《深根の巡礼》との相性も単純に良いですね。搭乗コストは1ですが、クリーチャー化した《密輸人の回転翼機》に更に搭乗することができるので、攻撃せずに毎ターン、トークンでないマーフォークの数だけ1/1の呪禁を生成可能です。 そして《上げ潮、キオーラ》。こちらは2枚引いて2枚捨てるので効率よくコンボパーツを揃えられますし、《密輸人の回転翼機》《陥没穴の偵察》の探検と組み合わせてスレッショルドを達成すれば、破格のボーナスも得られます。 《上げ潮、キオーラ》による攻撃や《深根の巡礼》+《密輸人の回転翼機》のトークン生成からの《オラーズカの暴君、クメーナ》全体強化と、決してコンボ一辺倒ではないのがパイオニアのマーフォークの魅力。コンボを揃えるカードが非常に強力なのが頼もしいですね。 美しい魚たちが織り成す無限コンボをぜひ一度体感してみてください。 悟ブリンク(モダン) モダンリーグ:5-0 By DB_DackFayden7 クリーチャーを一時的に追放して戦場に戻す能力のことを、マジックでは「ブリンク」と呼ばれています。 《一瞬の瞬き》の英語名、Momentary Blinkに由来し、同じような能力のカード、たとえばこのデッキに採用されている《儚い存在》がブリンクと呼ばれることもあれば、ブリンクカードを駆使したデッキをブリンクと名付けることもあります。 クリーチャーを一瞬だけ追放して戦場に戻す。この一見意味のない能力は、相手が打ってきた除去を回避する役目もありますが、一番の目的はなんといっても、戦場に出た時の能力をブリンクによって何度も誘発させることです。 この悟ブリンクも、実に様々な方法でブリンクを起こし、活用していきます。 まずデッキ名になっている《潜入者、悟》。自身や他のトークンでないクリーチャーが唱えられずに戦場に出た時にドローできる能力を持っています。クリーチャーがブリンクすると1枚引ける、このデッキにとっては凄まじいドローエンジンなのです。さすがデッキ名を冠するだけあります。 ブリンクする方法は様々ですが、まずは先ほども少し名前の出た《儚い存在》。反復がついているので1枚で2回のブリンクを起こすことができ、《潜入者、悟》でお手軽2ドローです。しかもブリンクするクリーチャーも何かしらのアドバンテージをもたらすので、1枚で4枚分の得ができる、アンリコ超えの性能! 《溌剌の牧羊犬、フィリア》は最近ではボロスエネルギーにも入り始めているブリンク犬。相手のパーマネントを選ぶこともできますが、自分のパーマネントをブリンクすると《溌剌の牧羊犬、フィリア》自身が強くなるオマケつき。一時的に相手のブロッカーを排除して攻撃を通すなど、器用なブリンククリーチャー。 元祖ブリンククリーチャーである《ちらつき鬼火》も採用されています。《溌剌の牧羊犬、フィリア》と違い、戦場に出た時のみなので使い切りではありますが、自身が3/1飛行とまずまずのスタッツ。《溌剌の牧羊犬、フィリア》で《ちらつき鬼火》を追放して、《ちらつき鬼火》で他のカードを追放して……と追放リレーをしていくと、《潜入者、悟》で毎ターン大量のカードをドローできます。 ブリンク先となるカードもどれも強力。《ベイルマークの大主》は兆候で唱えてブリンクすることでただのクリーチャーとして戦場に戻ってくるので、ブリンクとの相性が非常に良いカードです。戦場に出て1枚、ブリンクして1枚なので、2枚を回収しながら次のターンから早速攻撃し、更にクリーチャーを回収します。 想起+ブリンクの恐ろしさは《悲嘆》で皆さんご存じですよね。《孤独》を想起で唱えてブリンクすることで、2体のクリーチャーを除去しながら、《孤独》を戦場に着地させられます。《溌剌の牧羊犬、フィリア》では想起状態の孤独をブリンクできませんが、《儚い存在》か、《霊気の薬瓶》から出す《ちらつき鬼火》であれば、想起で唱えた《孤独》を即ブリンクしてクリーチャーとして戦場に出せます。 面白いのが《骨の皇帝》。エスパー御霊などでもおなじみのリアニメイトクリーチャーですが、このデッキでは順応して釣り上げたクリーチャーをブリンクしたり、順応済みの《骨の皇帝》をブリンクしてもう一度順応し直すなど、いろいろな使い道があります。 《骨の皇帝》で《溌剌の牧羊犬、フィリア》をリアニメイトして即攻撃し、順応した《骨の皇帝》を元に戻す、なんてことも。 本来であればリアニメイトしたクリーチャーは終了ステップに生け贄に捧げなければなりませんが、このデッキには大量のブリンクカードが入っているので、最終カウンターもなくなり、墓地から蘇ったクリーチャーは完全にリフレッシュして戦場に戻ってきます。 墓地を肥やす手段としては《ベイルマークの大主》があるため、吊り上げには困らないでしょう。《ベイルマークの大主》を墓地から吊り上げて即攻撃して2回の切削&回収を行い、そこにブリンククリーチャーを見つければ、無限のリソースとなります。 この手のブリンクデッキは攻撃手段に乏しかったのですが、悟ブリンクは《溌剌の牧羊犬、フィリア》《骨の皇帝》など、それなりの攻撃を仕掛けながら、《潜入者、悟》《ベイルマークの大主》でアドバンテージを取っていくので、ただ手札が肥えていくだけのデッキではありません。悠長に構えているとあっという間にゲームに敗北してしまうでしょう。 《霊気の薬瓶》が1ターン目に出てきた時のスピードと展開力は目を見張るものがあります。ブリンクがお好きな方にピッタリのデッキです!

【週刊メタゲーム通信】グルール力線が1453名の頂点に立つ!ディミーアも新たに進化

週刊 Standard ピックアップ

2025.01.07

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 新年、あけましておめでとうございます!今年もGOOD GAME メディアをよろしくお願いいたします。 今回は新年から早速行われたMagic Spotlight: Foundationsの結果から、最新のスタンダードのデッキをご紹介していきます! グルール力線 Magic Spotlight: Foundations : 優勝 By Nicholas Odenheimer 新たに2025年から始まったトーナメント、Magic Spotlight。トップ8進出者にプロツアーの権利が付与される、誰でも参加できる賞金制トーナメントと、かつてのグランプリを彷彿とさせる本大会。その記念すべき第1回目を制したのはグルールアグロ……ですが、ただのグルールではありません。《残響の力線》を採用したタイプのグルールです。《残響の力線》について改めておさらいしましょう。この力線は、1体だけを対象とするインスタントやソーサリーを自分が唱えた時に、それをコピーすることができます。《巨怪の怒り》や《裏の裏まで》が倍になるという、単純明快で強力なカードですね。力線サイクルは《神聖の力線》や《虚空の力線》など、特定のデッキの対策としてサイドボードに入るものが多かったですが、《残響の力線》はデッキの軸となる力線で、しかも複数枚並べた時にしっかりと意味がある優れもの。2枚貼ればコピーも追加で1つ発生するので、初手に2枚あると片方が腐り、実質手札が1枚減ってしまう状態になりがちな他の力線とは一味違います。しかも《残響の力線》はカードをコピーできる能力なので、自分のクリーチャーを対象に取るカードの性能が倍になります。つまり初手に《巨怪の怒り》と《裏の裏まで》を持っていれば、それが《残響の力線》によってカード4枚分の価値となるので、《残響の力線》は"リソースを失わない力線"であり、マリガンで積極的に《残響の力線》を探しにいく行為も肯定されるのです。この強力な《残響の力線》を主軸に据えるのが、グルール力線。クリーチャーのラインナップも通常のグルールと異なっています。まずは《騒音の悪獣》。自身の死亡時にパワー分のダメージを与えられるクリーチャーで、《心火の英雄》と違いプレイヤー以外にも飛ばせます。その代わりに雄姿で成長しないという可愛いヤツなのですが、《残響の力線》で《裏の裏まで》や《巨怪の怒り》をコピーするこのデッキでは恐ろしい1マナ域に変貌します。《残響の力線》を着地させれば最速2ターンキルも狙えるこのデッキにとって《騒音の悪獣》は重要なパーツ。《心火の英雄》と違い能動的に生け贄にできるので、《残響の力線》を置いて1ターン目に《騒音の悪獣》、2ターン目に攻撃して《裏の裏まで》+《巨怪の怒り》で3+3+2+2+1修正が入り、パワー12+死亡時の12点で2ターンキルできます。これは《心火の英雄》にはないメリットです。《無感情の売剣》はパイオニアではお馴染みですが、スタンダードの赤アグロからは抜けたカード。しかし《残響の力線》でクリーチャーを強化するこのデッキではしっかり活躍してくれます。《残響の力線》を置いて《心火の英雄》、2ターン目に《裏の裏まで》+出来事の《合同火葬》で24点ダメージで、《心火の英雄》による2ターンキルに貢献します。グルール力線では《巨怪の怒り》を超えるカードになる《裏の裏まで》。修正値が高いのはもちろんのこと、魅力的なのは死亡時に戦慄予示する能力です。《残響の力線》はここまでしっかりコピーしてくれるので、《心火の英雄》や《騒音の悪獣》をとりあえず突っ込ませて《裏の裏まで》で相打ちを取り、追加のクリーチャーを2体並べられます。珍しい採用カードは《過剰防衛》でしょうか。2マナと他のパンプアップスペルより重いですが、その効果は強力で、+3/+3修正にトランプル・呪禁・破壊不能とほしい能力全盛り!強い《蛇皮のヴェール》としても使えますし、《巨怪の怒り》のようにダメージを通す目的でも打てる、便利なスペルですね。赤アグロ自体はかなり意識されており、どのデッキもメインから大量に除去を採用しているのが現在のスタンダード環境。除去の多いメタゲームではグルール力線は苦戦を強いられることが予想されますが、それでも圧倒的な強さを見せつけて見事Magic Spotlight: Foundationsの初代チャンピオンに輝きました。グルール力線、そのポテンシャルを見誤っていたのかもしれません。アグロが対策されている環境でも回ってしまえばすべてを粉砕する、それほどの強さがこのグルール力線にはあるのでしょうか。そう思わざるを得ないパフォーマンスでした。 ディミーアセルフバウンス Magic Spotlight: Foundations : 2位 By  Scott McNamara 今大会で台風の目となったのはこのディミーアセルフバウンス。最近急激にその勢力を伸ばしてきているエスパーピクシーのようにバウンスシナジーを用いることからこの名前が付きました。《孤立への恐怖》と《この町は狭すぎる》の8枚のバウンスで《嵐追いの才能》《望み無き悪夢》《逃げ場なし》を戻してアドバンテージを稼いでいくこのデッキ。エスパーカラーにすることで《養育するピクシー》《呑気な物漁り》が加わり、更にシナジーが強くなりますが、その分マナベースに大きな負担をかけてしまいます。ディミーアなら《地底の大河》4枚で痛い土地は済みますし、《魂石の聖域》《不穏な浅瀬》とクリーチャーになる土地たちを採用でき、マナフラッドに対して耐性を作れます。色を減らしたからといってデッキパワーが落ちるわけではなありません。エスパーとディミーアの違いでもう1つ特筆すべき点があるとすれば、《永劫の好奇心》の採用です。 エスパーは《金属海の沿岸》《闇滑りの岸》《秘密の中庭》3種のファストランドがフル投入されているため、4ターン目以降にタップインが続きがちです。しかし、ディミーアは《闇滑りの岸》のみなので、4マナ目が4ターン目に出る確率が高い。そこで《永劫の好奇心》を採用できるようになりました。バウンスシナジーが弱くなった代わりに単体のカードパワーが高くなったのがこのディミーアセルフバウンス、という見方もできますね。《悪夢滅ぼし、魁渡》も実はセルフバウンスカード。《孤立への恐怖》《フラッドピットの溺れさせ》《遠眼鏡のセイレーン》はどれを戻しても得をするカードで、実に忍術しがいがあります。《呑気な物漁り》と《養育するピクシー》がないことで、戦場に出た時に効果を発揮するエンチャントのバリューは少し下がっています。そのため、《望み無き悪夢》は3枚採用にとどめられており、今後はもしかするともっと減っていったり、あるいは0枚になるかもしれません。エスパーピクシーは《悪意ある呪詛術士》《呑気な物漁り》《養育するピクシー》によって1ターン目から殴り、《望み無き悪夢》を何度も戻してライフを削りきるビートダウンデッキでした。一方のディミーアセルフバウンスは序盤から大量のライフを削る手段はさほどなく、除去を何度も使いまわして盤面を掌握し、《永劫の好奇心》でアドバンテージを稼いでいく、ミッドレンジ系のデッキです。そのため、《望み無き悪夢》はあまりデッキとは合っていないカードなのです。しかも最近はエスパーピクシーの隆盛で《萎れ葉のしもべ》や《強情なベイロス》が流行り始めています。ちなみに僕も先日《望み無き悪夢》を1ターン目に出したら《萎れ葉のしもべ》を出されて卒倒しました。ディミーアセルフバウンス自体はかなり強いデッキで、今後トーナメントで活躍していくことはほぼ間違いないと思われます。軽いカードで構成されたミッドレンジは難しい傾向にあるので、今の内から練習してみてはいかがでしょうか? アゾリウスアグロ Magic Spotlight: Foundations : 6位 By Zhao Li これまでのアゾリウスアグロの定番は《生命ある象形》を採用したアーティファクト型でしたが、今回のアゾリウスアグロは純粋にクリーチャーで殴るシンプルな構成。ですが、この形が最も赤アグロとディミーアミッドレンジに強いと僕は考えています。デッキの主軸となるのはどのアゾリウスでも共通で《威厳あるバニコーン》。土地でないパーマネントの数だけサイズが上がるので、手がかりや地図でも大きくなり、3ターン目に5/5や6/6で攻撃していくことができます。《ひよっこ捜査員》は手がかりを、《遠眼鏡のセイレーン》は地図をせっせと作り、《マネドリ》がそれらをコピーして更にトークンを生み、《威厳あるバニコーン》を大きくしたり、《内なる空の管理人》の成長にあてていきます。個々で強いカードたちが織り成すシナジーは見ていて美しいものがありますね。このアーティファクトたちに《生命ある象形》をつけていくのがこれまでのアゾリウスアグロでしたが、このリストでは《永劫の好奇心》を4枚採用しており、これがディミーアミッドレンジを食い続けた理由になっています。除去を打ち続けて《永劫の好奇心》でアドバンテージを取って勝利するのがでぃミーアミッドレンジなので、相手の《永劫の好奇心》がとにかく重く、除去を上回る物量を展開されてしまうとなすすべがありません。3マナ域に採用しているクリーチャー群は《永劫の好奇心》と相性の良い、横に並べるクリーチャー。《血滾りの福音者》は自身が攻撃すると全体強化を行い、《フェイ花のいたずら》は妨害しながら飛行を2体並べられるインスタント。いずれも《永劫の好奇心》の前のターンに出すには最高のカードです。《鋼の熾天使》は最近少し評価が落ちたカード。このリストでも2枚に押さえられています。なぜそうなってしまったかというと、現環境の黒除去が《喉首狙い》から《逃げ場なし》になったからです。本来であれば最も強いのは《喉首狙い》で、実際これまでは最も優先されていましたが、エスパーピクシーとディミーアセルフバウンスではエンチャントを使いまわせるため、《逃げ場なし》がまず4枚、その上から《喉首狙い》が少し入るようになりました。《喉首狙い》が当たらないという除去耐性が魅力の1つだった《鋼の熾天使》は黒系に対してその価値を落としてしまったのです。とはいえ、《威厳あるバニコーン》に絆魂をつけて攻撃する動きは対赤アグロでは強力。2枚に減りはしましたが、まだまだ活躍できます。アゾリウスアグロは《威厳あるバニコーン》+《幽霊による庇護》というわかりやすいゴールが対赤アグロにある他、クリーチャーを並べて《永劫の好奇心》でディミーアミッドレンジにも強く、流行のデッキたちに対してある程度有利に立ち回れます。一方、アゾリウス眼魔やジェスカイ召集などのデッキたちには不利なので、フィールドに適していればとことん勝ち、そうでなければトーナメントから早々撤退することになるでしょう。これから数が増えていってもなんら不思議ではない、強力なデッキだと思います!《幽霊による庇護》を一番強く使うならこのデッキですね。

【今週のピックアップデッキ】エスパーピクシー/スゥルタイ眼魔/ディミーアアスモフード

週刊 Modern Pioneer Standard

2024.12.20

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 エスパーピクシー(スタンダード) MOリーグ:5-0 By Trellon 『ダスクモーン:戦慄の館』はエンチャントがメインのセット。そこで生まれたアゾリウスエンチャントは環境初期に活躍し、今でもその姿をトーナメント上位で見かけます。そんなアゾリウスエンチャントとは一線を画した新たなエンチャントデッキが、このエスパーピクシー。デッキ名になっている《養育するピクシー》はもちろんエスパーピクシーの主役。土地かフェアリーでないパーマネントを戻すことで1マナ2/2飛行になるピクシーを活かしたデッキです。どう活かすのか。それはもちろん戦場に出た時に恩恵をもたらすエンチャントとの組み合わせです。《望み無き悪夢》や《嵐追いの才能》、《チビボネの加入》などを使い回し、アドバンテージを得ていきます。エンチャントを出し直すので、違和感を持つカードとの相性は抜群です。《呑気な物漁り》を何度も誘発させることができ、序盤に出していた《養育するピクシー》がどんどん大きくなり、あっという間に対戦相手のライフを削り取ります。《孤立への恐怖》はこのデッキに欠かせない存在です。自身がエンチャントなので違和感を誘発させつつ、先ほど紹介した、戦場に出た時に効果を発揮するカードを戻します。戻すカードと言えばもちろん《この町は狭すぎる》も採用されています。もはや《嵐追いの才能》と《この町は狭すぎる》はセットになりましたね。レベル2で《この町は狭すぎる》を回収して《嵐追いの才能》に打ち、再び唱え直してレベル2にで《この町は狭すぎる》……とこのようにループを形成できます。《この町は狭すぎる》は自分のパーマネントも2枚戻すことができますが、このデッキでは特にその使い方が多そうです。《望み無き悪夢》と《チビボネの加入》を戻して出し直すだけで相手は嫌な顔をすること間違いなし。赤アグロに必殺の《幽霊による庇護》もメインから4枚採用されており、殺意を感じます。普通のエンチャントデッキに飽きてしまった方には特におすすめです! スゥルタイ眼魔(パイオニア) MOリーグ:5-0 By sloth_thopterist 《叫ぶ宿敵》や《悪夢滅ぼし、魁渡》に《ホーントウッドの大主》など、スタンダードやパイオニアで大活躍するカードが多数収録されている『ダスクモーン:戦慄の館』。その中でも最も広い環境で使われているカードと言えば《忌まわしき眼魔》ではないでしょうか。モダンでは《濁浪の執政》より優先して採用されるようになり、ディミーア眼魔というアーキタイプが生まれ、スタンダードでは《僧院の導師》を押しのけてアゾリウスメンターをアゾリウス眼魔に改名させました。そんな《忌まわしき眼魔》が主役となるスゥルタイ眼魔。他のデッキが《忌まわしき眼魔》を《救いの手》や《発掘》でリアニメイトするのに対し、このデッキでは手札から普通に唱えるのが基本です。《忌まわしき眼魔》は6枚の墓地を必要とするので、切削カードが大量に入っています。《サテュロスの道探し》、《アーボーグのルアゴイフ》で墓地を肥やし、《忌まわしき眼魔》へと繋げていきます。《上げ潮、キオーラ》は墓地を肥やしながらスレッショルド達成時には大きな恩恵を受けられるクリーチャー。《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》のマナクリ8枚体制なので、後半これらのカードが不要になり、その際にも《上げ潮、キオーラ》は役に立ちます。もちろん《忌まわしき眼魔》を踏み倒す手段もきちんとあります。まずは《集合した中隊》。デッキに入っているクリーチャーカードはすべて3マナ以下なので32枚のカードがヒットします。《集合した中隊》を強く使うためには「いかに強い3マナクリーチャーをたくさん採用するか」がカギとなりますが、《忌まわしき眼魔》《上げ潮、キオーラ》はいずれも申し分ない性能です。《ホーントウッドの金切り魔》もターン終了時に出てきた際は脅威ですね。そしてもう1つの踏み倒し手段が《異界の進化》。生け贄にしたクリーチャーのマナ総量+2までのクリーチャーをサーチできるソーサリーで、《ラノワールのエルフ》が《忌まわしき眼魔》に進化します。1ターン目に《ラノワールのエルフ》から2ターン目に《異界の進化》で《忌まわしき眼魔》と、2ターン目《忌まわしき眼魔》着地も容易です。かなりの脅威となること間違いなし。墓地を活用するデッキに見えますが、サイドから《安らかなる眠り》などを置かれても特に問題ないのがこのデッキの魅力。《異界の進化》と《集合した中隊》は関係ありませんからね。《墓掘りの檻》はこの2つが止まってヤバいですが、逆に墓地を肥やして手札から《忌まわしき眼魔》を出す分には関係ありません。様々な角度から攻められるデッキで、とても楽しそう!《忌まわしき眼魔》をパイオニアで使い倒したいならスゥルタイ眼魔で決まり! ディミーアアスモフード(モダン) モダンリーグ:5-0 By TBagTom モダンで解禁された4枚の禁止カードたち。その中でも最もインパクトがあるのは、やはり0マナで置けるマナ加速・モックスの1つ、《オパールのモックス》。アーティファクトが3つ戦場にあれば好きな色マナが出せる《オパールのモックス》は、レガシーやヴィンテージでも採用されることがあるほど強力なモックスです。そんな《オパールのモックス》は鱗親和やハンマータイムなど、アーティファクトを主体とするデッキに早速組み込まれ、モダンのトーナメントで活躍し始めています。本日ご紹介するのは《オパールのモックス》を使うデッキの中でも異質な存在、アスモフード。アスモフードの主役となるのは《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》。名前を覚えるのが最も困難なこの伝説のクリーチャーは、戦場に出た時に《地獄料理書》をサーチします。その《地獄料理書》は手札を捨てると食物トークンを生むアーティファクトで、その食物を2つ生け贄に捧げることで、《アスモラノマルディカダイスティナカルダカールル》の能力でクリーチャーに6点のダメージを飛ばすことができます。手札を失って食物を出す《地獄料理書》は単体ではさほど機能しませんが、《楕円競走の無謀者》とすさまじいシナジーを発揮します。《楕円競走の無謀者》はアーティファクトが戦場に出るたびに墓地から手札に戻ってくるカードなので、《地獄料理書》で《楕円競走の無謀者》を捨てると食物が出て、《楕円競走の無謀者》がそのまま手札に戻ってくるのです。つまり、《地獄料理書》で何も失うことなく食物を生成し続けられます。タダで食物を得られるエンジンが出来上がるとアスモフードの本番は始まります。《地獄料理書》が2枚あれば《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》で毎ターンクリーチャーを除去できますし、アーティファクトがたくさんあれば《河童の砲手》を1マナで出しつつ、毎ターン《地獄料理書》を起動するだけで《河童の砲手》が強くなっていきます。《地獄料理書》は《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》と《ウルザの物語》の2枚でサーチできるため、場に複数枚並べるのは難しくありません。《バシム・イブン・イスハーク》もアスモフードを支える1枚。歴史的な呪文、つまりアーティファクトか伝説のクリーチャーか英雄譚を唱えると、1ターンに1回1ドローできるので、デッキ内のほとんどのカードに反応してくれます。というか《バシム・イブン・イスハーク》でカードを引けないのは《楕円競走の無謀者》と《通りの悪霊》だけ。その他のすべてのスペルでドローできてしまうのです。《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》《楕円競走の無謀者》を引かないとリソースが削られていってしまうだけのデッキだったので、《バシム・イブン・イスハーク》の加入は大きく、これでデッキがグッと引き締まっています。先ほどご紹介した《河童の砲手》もアスモフードを強化してくれました。盤面では強いデッキである一方、早いクロックは《ウルザの物語》しかなかったので、それなりにゲームが長引いてしまうのが弱点でした。《河童の砲手》は超強力なアタッカーで、しかも《溶融》に巻き込まれないので、サイド後は特に活躍します。《湖に潜む者、エムリー》と《河童の砲手》は《溶融》に強いですし、《地獄料理書》は壊れてしまうものの、《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》《バシム・イブン・イスハーク》も《溶融》に巻き込まれないので、《オパールのモックス》を使うデッキの中で最も《溶融》耐性があるデッキかもしれません。アスモフードは一度手にすれば病みつきになるデッキ。もちろん僕もアスモフードファンの一人。このディミーアアスモフードも大好物です。ガチャガチャとカードを動かして勝つのが好きならたまらないデッキです。ピンと来た過多はぜひ回してみてください。

赤アグロをやっつけろ!"アグロキラー"の異名を持つ白単コントロールを徹底解説!

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2024.12.19

Akira Kobayashi

 皆さん、こんにちは! 「へいか」こと 小林 輝(@enzyutuheika)です。 記念すべき第一弾であるパイオニアのイゼットフェニックス記事についてご好評いただきありがとうございました。 今回はスタンダードのプレミアム予選で使用してきた白単トークンについて解説していきます! 白単トークンってどんなデッキ?  まずこの白単トークンについて簡単に紹介します。 ソーサリーの《剣を鍬に》こと《軍備放棄》を筆頭に、《失せろ》《魂の仕切り》《太陽降下》といった優秀な各種除去で相手の脅威に対して対応。  ついでに《人参ケーキ》《跳ねる春、ベーザ》でライフもゲインしてゲームをとにかく引き延ばします。  そして《人参ケーキ》《噴水港》などの各種トークン生成手段で《永劫の無垢》《世話人の才能》のドローエンジンを動かし、引き込んだ除去で相手の脅威を延々と対処し続けます。  そのまま相手が息切れしたところにアドバンテージ差をつけて圧し潰す……というボードコントロールデッキですね。 利点としては、やはり白単色で色事故とは無縁なところ、そして現在スタンダード環境で大きな存在感を示している赤アグロデッキに強い点が挙げられます。 特に4枚積みされている《跳ねる春、ベーザ》は1枚で4/5、1/1、1/1が並ぶだけでなく4点もゲインすることから、赤アグロには一つのゴールになり得る一枚です。 一方で欠点は、固定枠が多すぎることと、白単色による幅の狭さによってゲームプランが固定されてしまっているところ。そして物理的に時間が足りない点です。 デッキとしてのゲームレンジは非常に低速で、クリーチャーも1/1のトークンや2/1の《永劫の無垢》などの低パワーが中心のため、速やかに終わらせるようなプランを取ることもほとんどできません。 《世話人の才能》レベル3による+2/+2もトークンがある程度数揃っている必要があり、レベル3まで5マナかかるなど相応にお膳立てが必要です。《血滾りの福音者》やタッチ赤で《イモデーンの徴募兵》を入れ、ゲームを畳みに行くプランを取ったリストも考えられますが、中核となる「耐え忍んで後から勝つ」というプランとマッチしておらずデッキ全体の完成度が落ちてしまいます。 このように軸をずらすという器用なことがしづらい不器用なデッキです。大変かわいいですね。  そのため不利な相手にはとことん不利で、具体的にはスケール負けする4cズアーや、コンボを止めづらいティムールカワウソなどを苦手としています。 メインボードのリストおよび解説  プレミアム予選で使用したリストは下記の通りになります。  メインに《エルズペスの強打》2枚、《別行動》1枚で赤アグロおよびディミーアミッドレンジへのガードを上げている形です。 採用しているカードを一つ一つ解説していきましょう。 《エルズペスの強打》  1マナで3点かつ追放するいわゆるレンジストライク。 《心火の英雄》《永劫の好奇心》を1マナで追放できるのは素晴らしいの一言です。 一般的に白単トークンのメインボードでは1マナインスタント除去を採用していないため、赤アグロが《巨怪の怒り》をリスクなく唱えられてしまう点がどうしても気になりました。  特に後手を取ってしまうといかに有利と言えども1マナ除去がない時にブン回られてしまうと押し切られてしまう事もしばしば。 そこでサイドボードから2枚メインボードに移しました。同じく最多勢力の一角であるディミーアミッドレンジに対しても強い一枚ですしね。(《永劫の好奇心》を追放できるのがえらい!) 競合先としてはファウンデージョンズで追加された1点ゲインのおまけがついている《突き通し》ですが、先述した通り、追放できる点を考えるとやはりこちらの方に軍配が上がりそうです。 《軍備放棄》  白単にする最大の理由です。このデッキでは《噴水港》《沈んだ城塞》以外は全て平地であるため、ほぼ1マナの追放除去として機能します。  育ってしまった《心火の英雄》に対する最高の回答と言えます。 3点を回復させるデメリットも、ボードをコントロールしてから捲り返すこのデッキではほとんど気になりません。 動きがもっさりしがちなこのデッキにおいて、3ターン目に《軍備放棄》で対処しつつ《失せろ》《魂の仕切り》《人参ケーキ》などのダブルアクションに繋げられるのも高評価点です。  赤アグロはもちろん、勝ち手段をクリーチャーに依存しているミッドレンジ系にも有効な一枚。これが4枚から動くことはほぼないでしょう。 《失せろ》  アーティファクトがほとんど採用されない現環境においてはほぼ万能除去として機能します。(厳密に言えば《除霊用掃除機》などは存在しますが、白単トークンには入れてこないので考慮しないものとしています)  対処できなくて困るのは《ウラブラスクの溶鉱炉》ぐらいいでしょうか。 地図トークンを与えるデメリットはあれど、サイズに関係なく対処できる除去ばかりなのでそこまで気にならない……と言いたいのですが…… 赤アグロには《心火の英雄》と《熾火心の挑戦者》の雄姿を誘発させてしまいます!! これは小さくないマイナス点です。 とはいえこれより強い除去もないですし、《叫ぶ宿敵》や《悪夢滅ぼし、魁渡》などに対する貴重な対処手段でもあるので、これも同じようにほぼ4枚固定と言ってもよいです。 《魂の仕切り》  追加の《失せろ》として2枚ほど入っています。  赤アグロの《ウラブラスクの溶鉱炉》を対処できる数少ないカードでもあります。  2マナ多くなる代わりに再度唱えられてしまうのですが、白単トークンとマッチしていることから採用されています。 というのも、この白単トークンは序盤さえ乗り切ってしまえば後から《永劫の無垢》《世話人の才能》でいくらでもアドバンテージを稼ぐことができます。  2マナインスタントでテンポも取れる《失せろ》《魂の仕切り》は序盤を凌ぐのにうってつけな一枚であるため、この部分が評価されているというわけですね。 自分のパーマネントも対象に取れるため《跳ねる春、ベーザ》を対象にして再利用したり、相手の除去に合わせて実質バウンスのような用途としても利用できます。 《人参ケーキ》  ブルームバロウのリミテッドではトップコモンの一つとして数えられており、構築でもこの白単トークンで重宝されています。《世話人の才能》および《永劫の無垢》との相性が最高によく、1/1兎トークンは先述した2枚とも誘発のトリガーにもなり、占術でこの2枚や除去などその時に欲しいカードを探し出すことができます。※トークン生成と占術は一連の流れであるため、《世話人の才能》《永劫の無垢》がいる時は先に占術で確認してからドローすることになります。 起動能力ではインスタントで同じ効果を誘発させつつ、序盤を乗り切るための3点ゲインも行います。  このようにデッキとしての方向性・シナジー共に全て噛み合っている一枚です。デッキの基幹となるため、4枚から動きません。 《世話人の才能》  白系トークンというアーキタイプを成立させたカード。もちろん4枚です。 1ターンに1回の制限があるとはいえ、トークンを出す全ての効果に「1枚ドローする」という一文がつく強さは皆さんもおわかりでしょう。  これらに加えてレベル3の+2/+2によってフィニッシャーとしての役割も兼ね備えています。 ただし、3ターン目に出すと盤面に影響を与えることなくターンが終わってしまうため、4ターン目でレベル2も解決してトークンをコピーしつつ、1ドローまでするという形が望ましいです。  そのため3ターン目のアクションとしては《沈んだ城塞》のタップイン処理or《軍備放棄》+《人参ケーキ》、もしくは《永劫の無垢》などでお膳立てするとよいでしょう。 ちなみにレベル3にするとトークンが3/3になってしまい、パワー2以下が条件である《永劫の無垢》でドローできなくなる点は留意したいところです。 《永劫の無垢》  出すトークンがいずれもパワー2以下であるため、《世話人の才能》と合わせて8枚のドローソースになります。  《世話人の才能》と異なるのは本体が2/1絆魂のスタッツを持つところで、壁にもなりつつ除去耐性を持ち合わせているため3ターン目のアクションとしても最適です。 ティムールカワウソには追放除去である《塔の点火》があるため、エンチャント破壊がないメインボードではチャンプブロックになってでもエンチャントにしておくことをお勧めします。 《別行動》  主に赤アグロを見て《太陽降下》1枚をサイドボードに移して投入。  赤アグロには《太陽降下》が間に合っていないのが最大の理由で、《一時的封鎖》ではこちらのトークンごと巻き添えになってしまったり《叫ぶ宿敵》が倒せなかったりしたのでこちらを採用しました。 ディミーアミッドレンジに対して《幻影の干渉》をケアしつつ唱えられる点も評価しています。 《大天使エルズペス》 《世話人の才能》《永劫の無垢》の下で継続的にトークンを出せる手段として採用しています。  +1からスタートすれば忠誠度が5とそこそこ硬く、出てくるトークンも絆魂を持つためゲームを長引かせるという目的にフィットしています。 ただ《世話人の才能》《永劫の無垢》ありきであり、この2枚が絡まないと弱いと感じることが多く、元々は2枚だったのですが1枚に減らしました。 ディミーアミッドレンジに対してブロッカーとして機能する2/1飛行を二体出せる《ミストムーアの大主》に枠を譲った方がいいかなと感じています。 《跳ねる春、ベーザ》  赤アグロに対する一つのゴールであり、ゲームプランの中核として働きます。  4点ゲインする上に4/5のサイズは《巨怪の怒り》込みでないと突破できず、何らかの手段がない限りは相打ちに持って行くことができるためアクションを強要させることが出来ます。 手札に《跳ねる春、ベーザ》がある場合、《人参ケーキ》から出る兎トークンをチャンプブロックさせるなどクリーチャーの数を調整することを常に考えていく必要があります。 また《軍備放棄》で相手をゲインできるため、先に《軍備放棄》でライフやハンドを調整するなどで最大限バリューを取っていく動きを心掛けていきましょう。 土地が相手より少ない時に出る宝物トークンを忘れやすいので、まず土地の枚数を確認する癖を身につけておくと良いです(戒め) ミッドレンジに対しても強いため4枚採用としていますが、最近は《跳ねる春、ベーザ》が強いマッチが赤アグロとゴルガリミッドレンジぐらいになっているため、サイドに1枚散らしているリストも散見されます。 《ミストムーアの大主》  2/1飛行トークンを二体出す効果はシンプルながら強力。壁役として活用してもよし、《世話人の才能》レベル2でコピーしてもよし、レベル3で4/3飛行にしてもよし。  兆候4もとにかく長引かせるこのデッキにはフィットしており、《太陽降下》で荒地にした後に顕現させるとほぼゲームが終わります。 上記のリストでは採用枚数が1枚となっていますが、飛行が多いディミーアミッドレンジに対して強く、このデッキがトップメタになりつつある現在では2-3枚に増量すべきでしょう。 《太陽降下》  スタンダード最強の全体除去。  追放と同時に「培養トークン」を出すため、なんと《世話人の才能》でドローします!  盤面除去とアドバンテージを両取りできるためミッドレンジ系に対して非常に強いカードです。培養トークンはアーティファクトなので《喉首狙い》が刺さらないのも嬉しい点。 その一方で赤アグロには5マナの重さで間に合っていないため、私がプレミアム予選に参加した際は、赤アグロが多いと読んでメインに3枚・サイド1枚としています。 追放のため《永劫の無垢》との相性がやや悪く、《太陽降下》を打ちそうな時はチャンプブロックしてでもエンチャント化させるなどの工夫が必要になります。 《忠義の徳目》 《アーデンベイルの忠義》で出てくる2/2騎士トークンは《世話人の才能》でコピーしても嬉しいですし、インスタントタイミングでトークンを出せるのも他にない価値があります。《世話人の才能》は相手のターンでも誘発するので美味しいです。 また、マナフラ受けおよび蓋としても機能する《忠義の徳目》はトークンを並べるこのデッキにとってもマッチしており、ゲームを畳む役割も担います。 が、クリーチャーを並べられないと+1/+1を乗せる効果も薄く、その点では《世話人の才能》のレベル3と被ります。  よって、これを採用していないリストも多々あります。フリースロットの一つですね。 《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》  個人的なイチオシです! 2マナの《人形作家の店》では攻撃すると1/1の玩具・アーティファクトトークンを生成し、《永劫の無垢》《世話人の才能》とシナジーがあります。実質0マナでトークンを生成できる手段はかなり貴重。 《人参ケーキ》《噴水港》などで生成した1/1トークンを無視して殴ってくるのがほとんどで、それに対して裏目を作らせることができます。  それ以降もアタックするならどんどん生成していくぞ、と圧を作り出すことも出来ますし、ドローに変換できる《噴水港》との相性も非常によいです。 6マナの《陶磁器ギャラリー》はこちらのクリーチャーが《穴ぐら守りの導師》のようにパワー・タフネスがクリーチャーの数と等しくなります。  例えば1/1が4体いる時に《陶磁器ギャラリー》を解放すると4/4が4体になり、そのままアタックすると《人形作家の店》が誘発し玩具トークンが生成。5/5が5体……と、雪だるま式に膨れ上がっていきます。 もちろん欠点もあります。《人形作家の店》は「玩具でない」クリーチャーであるため、これで生成した玩具トークンで攻撃しても誘発しません。  攻撃誘発も《陶磁器ギャラリー》もクリーチャーがいる事が前提であるため、これ単体では仕事しない点もマイナス点ですね。 よって入れたとしても2枚までで、1枚ぐらいが適正ではないかと感じています。《陶磁器ギャラリー》による奇襲性は高いので私は好きです。 ちなみに《陶磁器ギャラリー》を解放している状態で《跳ねる春、ベーザ》を出した際、盤面に《永劫の無垢》しかいなければ2/2として出るためドローが誘発します。覚えておきましょう。 《噴水港》  白単トークンを大きく支える土地です。  トークン生成手段が豊富なため、《世話人の才能》《永劫の無垢》や除去などを求めてトークンを生贄に捧げてドローが容易ですし、1点ダメージを受けるとはいえ3マナの軽さで1/1のトークンを出せるのも素晴らしい。 《世話人の才能》《永劫の無垢》のドローはターンに1回の制限がありますが、この《噴水港》によって相手のターンにも引くことができます。 4マナで宝物トークンを出せるのも《世話人の才能》とフィットしていますし、ダブルアクションがしやすくなる点も◎。 無色土地と言えども文句なしの4枚です。 《沈んだ城塞》  確定タップインであり平地を参照する《軍備放棄》とも相性が悪いのですが、それ以上に土地の起動能力限定で2マナ出る唯一無二の能力のメリットは大きい。 《噴水港》をひたすら酷使させるこのデッキにとって1枚で2マナが出る《沈んだ城塞》はかなり相性がよく、これによって余った1マナで《軍備放棄》《失せろ》などとダブルアクションを可能としています。 が、序盤で重ね引きしてしまうと先述した通りタップインかつ《軍備放棄》が強く使えなくなるデメリットがメリットより上回ってしまうため、採用枚数は3枚になっています。 サイドボード解説 《エルズペスの強打》  上でも解説した通り、主にアグロ系およびディミーアミッドレンジへのサイドボードになります。 サイドボード後では1マナ除去が《軍備放棄》と合わせて8枚体制になることでより有利になる認識です。 《領事の権限》  赤アグロ狙い撃ちのサイドカードです。 白単トークンは除去が多いものの、《軍備放棄》《別行動》を筆頭に《永劫の無垢》《人参ケーキ》などソーサリータイミングカードばかりなのが短所です。  その隙を狙ってくる《熾火心の挑戦者》といった速攻クリーチャーを無効化できることに大きな価値があります。《別行動》とも相性がよく、この《領事の権限》によってタップ状態で出てくる《多様な鼠》を攻撃してきたクリーチャーもろとも《別行動》でまとめて除去することができます。 また、対処しづらい《ウラブラスクの溶鉱炉》もこれ1枚で完封できるのも◎。一生1点ゲインしてくれるかわいい置物になります。 《救済の波濤》 《エルズペスの強打》をメインボードに2枚移動したことで空いた枠ですが、赤アグロへのアウトに対してイン枚数が足りなかったので試験的に入れた枠です。《噴出の稲妻》および《叫ぶ宿敵》のダメージ無効化・《跳ねる春、ベーザ》絡みのコンバットなどを補助する1枚で、奇襲性は非常に高いですがその分使い処がかなり限定されます。《叫ぶ宿敵》でゲインを禁止されるのが赤アグロへの大きな敗着になり得るので採用する価値は感じつつも、今後入れ続けたいかと言われるとそうでもないかな……というのが所見です。  ボロスアグロ・アゾリウスアーティファクトのようにクリーチャーを呪禁で守る用途で効果的な場面がこのデッキではあまり起こらないというのもあります。 ここは素直に追加の《領事の権限》でよさそうです。 《悪魔祓い》  ゴルガリミッドレンジの《不浄な別室》、カワウソの《豆の木をのぼれ》《永劫の活力》、ミラーマッチでの《世話人の才能》《永劫の無垢》など幅広く当たる対策です。  アゾリウス眼魔の《忌まわしき眼魔》やスペルカウント4以上の《傲慢なジン》にも当たったりします。 ソーサリータイミングと言えども範囲の広さおよび追放は魅力。 白単色なのでこういったいわゆる「丸い」カードを入れざるを得ない、とも言えてしまいますが…… 《やらせはしない》  追加の《エルズペスの強打》枠。《突き通し》との選択になりますが、こちらは2マナの代わりにどんなにサイズが大きくても関係なく追放します。 《永劫の好奇心》《叫ぶ宿敵》にも効果的であることからこちらにしました。 アグロ系、各種ミッドレンジに加えてアゾリウス眼魔、シミックテラーなどにも。  《安らかなる眠り》  スタンダードの白が誇る屈指の墓地対策。  シミックテラー、アゾリウス眼魔、もがく出現など墓地を利用するデッキ全般に対して完全にシャットアウトします。ティムールカワウソにも効果は薄いですが一応……  とはいえ《世話人の才能》と同じエンチャントで、この対策カードがまとめて刺さってしまうため過信は禁物です。 《石の脳》  不利マッチであるティムールカワウソへの対応策として採用しました。  対戦してて一番嫌だったのがエンジンの中核およびこちらの《失せろ》などをかわされる《この町は狭すぎる》で、これを抜くと結構楽になったことから採用しました。 テンポおよびアドバンテージ損をしてしまうデメリットはあれど、もともとアドバンテージを獲得するのが得意なデッキですのである程度補えると考えています。 ティムールカワウソ以外だとミラーマッチやシミックテラー等の特定のカードに体重が乗っているデッキに対して入れます。  ミラーマッチでは基本的に《世話人の才能》指定ですが、タッチ青であればどうしょうもない負け筋である《完成化した精神、ジェイス》を指定します。 シミックテラーの場合、ティムールカワウソと同じくエンジンである《この町は狭すぎる》を指定します。  このカードがあるだけで《世話人の才能》レベル3で攻めようとしてもバウンスで大きくテンポロスしますし、《太陽降下》も《渦泥の蟹》《トレイリアの恐怖》を戻されてされてしまうからです。 《別行動》  メインボード解説でも先述した通り、赤アグロに対して間に合っていない《太陽降下》の代わりに入れる軽量の全体除去枠です。  ディミーアミッドレンジやシミックテラーなどのクリーチャーでのビートダウンをメインとするデッキにも入れますが、ティムールカワウソには入れないようにしましょう。 なぜならば《永劫の活力》によってタップされてしまい、アンタップ指定が絶対通らないからです。入れて痛い目を合うのは私だけで十分です。 《ウルザの酒杯》  ティムールカワウソに対してまとめて吹き飛ばせる《告別》がとても欲しく、何かないかな……と探したら見つけたのがこれです。こちらの《世話人の才能》もまとめて吹き飛ぶ諸刃の剣ですが。 しかもこれも《この町は狭すぎる》でかわされる危険性があるため、《失せろ》などで打たせておく必要もあります。 X=2を指定することでこちらの《世話人の才能》を残したまま一掃できる《カーンの酒杯》も選択肢として上がりましたが、こちらはタップインによるラグが難点。 このようにティムールカワウソへのろくな有効策がなく、こうして頭を悩ませています。  いっそ元々不利なティムールカワウソのことは割り切ってしまうという選択肢もありなのかもしれませんね…… 《太陽降下》  上記でも記載した通り、《別行動》と入れ替えた4枚目の枠ですね。  各種ミッドレンジなどにサイドインします。 検討したカード群 《一時的封鎖》  《心火の英雄》の死亡誘発をさせない点は優秀なものの、サイドインされる《脚当ての陣形》に《世話人の才能》と一緒に刺さってしまうので不採用としています。 とはいえメインボードであればエンチャント破壊は少ないため、1-2枚ほど採用する価値はあるのかもしれません。 直近だとアゾリウスアーティファクトがスタンダード神決定戦を優勝されており、これに対して非常に効果的な一枚なのでこちらを入れる理由にもなります。 《加護をもたらす戦乙女》  飛行・先制攻撃・絆魂とコンバットに全振りしたカードですが、入れたい赤アグロに対してはやはり《脚当ての陣形》が刺さってしまうため《一時的封鎖》と同じような理由で入れていません。 ディミーアミッドレンジに対しても《フラッドピットの溺れさせ》《悪夢滅ぼし、魁渡》の麻痺カウンターで寝かされてしまいますし、《跳ねる春、ベーザ》に対して《喉首狙い》をある程度残すでしょうから定着もしません。 総じて一番入れたい赤アグロに対しては回答をしっかり用意されており、他のデッキにはあまり入らないことで候補から外れました。 《完成化した精神、ジェイス》 《行き届いた書庫》4枚をタッチし、《沈んだ城塞》と《噴水港》の宝物トークンで青を用意して《完成化した精神、ジェイス》を連打して勝つという別角度の勝ち筋を用意できるのが利点です。 白単トークンvs白単t青トークンのミラーマッチはこの《完成化した精神、ジェイス》を入れているタッチ青の方が冗談抜きで9割勝ちます。 が、テーブルトップでは後述する様々な理由によって白単トークンを使う方はあまりおらず、ミラーマッチは考慮しなくて良いと考えたため、不採用としています。 《行き届いた書庫》のタップインもかなり痛く、これによって有利である赤アグロに落としてしまうマッチがいくつかあったのも一つの理由です。 キープ基準 《人参ケーキ》は2回の占術によってその都度欲しいカードを探し出しつつ、壁役としての1/1を出してくれるので即キープ。  また、この環境において赤アグロとディミーアミッドレンジに対する軽量除去は欠かせません。《軍備放棄》《失せろ》といった除去も同様にキープに繋がるカードです。 《跳ねる春、ベーザ》もクリーチャーデッキに対して強いため、これも同様にキープ判断で大きな助けになるでしょう。  土地3枚ほどで《人参ケーキ》+各種除去であればまずキープと考えて差し支えありません。これに加えて《永劫の無垢》《世話人の才能》などがあれば100%キープです。 キーカードである《世話人の才能》が絶対的なキープ基準になるかと言えばそうでなく、トークン生成手段がないとただ何もしない置物になってしまいがちです。  先述した《人参ケーキ》、もしくは《噴水港》《跳ねる春、ベーザ》などのトークン生成手段があれば是非キープしたい一枚です。 とはいえ《軍備放棄》《失せろ》《世話人の才能》《太陽降下》《平地》×3といった、干渉手段が多い初手であれば、除去で対応できつつ、合計14枚あるトークン生成手段か《太陽降下》のための土地2枚を引ければ良いのでキープに値します。 その一方で《永劫の無垢》は単体でも2/1絆魂という最低限のスペックを持ち合わせているため、《世話人の才能》とは異なり単体でもキープする要因になります。   実は《太陽降下》はキープ基準になり得ません。  今のスタンダード環境において序盤に干渉できるかどうかが大事で、5マナのソーサリーである《太陽降下》はその要件に満たさないためです。  よってこの《太陽降下》が複数枚ある初手は大体マリガンしてしまいます。《別行動》は3マナの軽さもあり逆にキープしやすい一枚であるため、この面も含めて1枚《別行動》と《太陽降下》をメイン・サイドで入れ替えているというわけですね。 最大の欠点  さて、ここまで白単トークンのカードなどを解説してきましたが、ここからが本題です。  赤アグロに対して強いという明確な利点を持っているにも関わらず、テーブルトップで使う方が少ない最大の理由が……時間が足りないからです!! なぜ時間が足りないのかというと、既に何度も説明のように、このデッキが相手の脅威を全て除去し続けることによる勝利を目指すだからです。  除去、ドロー、ライフゲイン。この三点が白単トークンの主な内訳で、ゲームを終わらせるフィニッシャーがほとんど入っていない状態です。 つまり……物理的にゲームが終わりません。  相手の心が折れて投了してくれるならまだしも、粘り強いミッドレンジやティムールカワウソなどとの戦いはひたすら泥沼のような戦いを繰り広げることになります。 これは紛れもない事実で、アゾリウスコントロールで慣れているはずなのに最初に参加したプレミアム予選では3-1からそのまま3-1-3というおぞましい結果を残してしまいました。(引き分けの内訳は4cズアー、ティムールカワウソ×2) 最後はジャッジの方が20分ほど横に座ってご見学されていましたが、そこでも引き分けに終わってしまいました。  その時にジャッジの方に確認した際、「プレイ速度はまったく問題なかったですね……」とやや悲しげな顔をされていたのがとても印象的でした。 が、さすがに3回の引き分けはいただけません。同じことを繰り返さないためにも対策を講じることにしました。 時間切れにならないために  これは白単コントロールに限った話ではありませんが、自分のターンにかける時間を出来る限り短くすることに尽きます。 これまで説明してきた通り、このデッキはひたすらゲームを引き延ばす性質上、物理的に時間がかかります。そうすると必然的にターン数も多くなりますね。  これらのターンにかかる時間を少しでも短くしていくことで、トータルで短縮した時間も多くなるという考え方です。いわゆる「塵も積もれば山となる」ですね。 このかかる時間を短くする工夫についてまとめていきます。 トークン関連  まず着手したのはトークン関連。  デッキ名を冠するだけあり、トークンの種類は非常に多様です。 ・《噴水港》《跳ねる春、ベーザ》の魚トークン ・《噴水港》《跳ねる春、ベーザ》の宝物トークン ・《人参ケーキ》の兎トークン ・《忠義の徳目》の騎士トークン ・《太陽降下》の培養トークン ・《失せろ》の地図トークン ・《大天使エルズペス》の兵士トークン ・《ミストムーアの大主》の昆虫トークン ・《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》の玩具トークン  ……なんと9種類!!  同じくトークンを多用するジェスカイ召集ですら7種類ほどなので、これがどれだけ多いかおわかりでしょう。トークンを探すだけでも一苦労です。  たださえトークンを出す機会が多いデッキなのに、トークンを出す際に時間を取られてしまっては時間も切れてしまうもの。 そこでこのトークンに関する時間を以下に短縮できるかを検討し、色つきスリーブで分けることを思いつきました。  当初は各トークンごとに透明スリーブにまとめていましたが、これを色付きスリーブで分けることにしました。(培養トークンは両面のため従来通りの透明スリーブ) 手持ちスリーブの関係で昆虫トークン・騎士トークン・宝物トークンは同じ赤色ですが、この3種は比較的使用頻度が低いためひとまとめにしています。 この効果はてきめんで、出す際に色がついていることで目的のトークンをすぐ探し出すことができ、除去されて片付ける際にもすぐまとめられるようになりました。  試合終了後にまとめ直す時も非常にやりやすくなり、ストレスが大きく軽減されました。 何よりスリーブがついていることで裸のカードよりも取り扱いやすくなるメリットもあり、今後も他のデッキでもトークンをスリーブに入れていこうと思えるほどでした。 優先権を先に渡してからトークンを出す  例えば《跳ねる春、ベーザ》で魚トークンを出す際、 1.トークンカードから魚トークンを探す2.盤面に魚トークンを出す  という動作が発生します。 《太陽降下》でも 1.培養トークンを探す2.盤面に培養トークンを出す3.除去した枚数を数えてサイコロを乗せる の動作がありますね。 丁寧にやるならば全ての効果を解決してから優先権を渡すわけですが、フルタップもしくは他にすることが無い場合、カードの効果を解決した時点で先に相手へ優先権を渡し、その間にトークンを出すように心掛けています。 相手が考える・アクションをするまでの間にトークンを出すことで、その分だけ時間短縮になります。 もちろん何らかのスタックで介入することが考えられる盤面であったり、《世話人の才能》《永劫の無垢》のドロー誘発が絡む場合はトークンをしっかり出してから優先権を渡すなど、臨機応変に対応する必要もあります。 《世話人の才能》《永劫の無垢》のドローを一連の流れにする  スタンダード環境でこれらの誘発効果に対してスタックで動くカードとしては打ち消せる《ティシャーナの潮縛り》、ドローを咎める《フェアリーの黒幕》ぐらいでしょうか。 これらが入らないデッキではトークンが出た時点でドローは確定するため、トークンを生成した時点で「《世話人の才能》《永劫の無垢》が誘発します」という確認を省略することが出来ると考えられます。 ただし、このドローによって回答を引かれる前に誘発スタックで動いてくるケースがあるため、相手がフルタップなどで介入手段がない時に限り省略するようにしています。 この動作の省略を行う際は対戦相手としっかり確認を取り、合意を取るようにしましょう。ちゃんと解決までやってほしい、と言われたらそれに従いましょう。  マジック:ザ・ギャザリングは対戦相手とのコミュニケーションによって成り立つカードゲームですからね。 上記の工夫をしてきたことで、これ以降のプレミアム予選ではなんと引き分けが0回と改善しました! 大成功です!!  1回の動作がたかが数秒でも、これらの積み重ねでトータルの短縮した時間は数分以上にもなります。 コントロールデッキは己との戦いの一面もあります。少しずつこれらの精度を上げていくのも楽しみ方の一つですね。 サイドボーディング解説 VS赤アグロ  メイン・サイド共に有利なマッチアップです。  ただしメインでは後手かつキープした初手によってはブン回られると負けてしまうこともしばしばあり、油断できない相手です。 有利と言えどもライフを詰められたところに《叫ぶ宿敵》に《噴出の稲妻》を合わせられてゲインを禁止されると、そのまま挽回する前に削り切られてしまうことも。  場合によっては1マナが浮いている《叫ぶ宿敵》に対して《軍備放棄》で《噴出の稲妻》を誘い、その上から《失せろ》《魂の仕切り》を合わせることを意識しましょう。 ▼キーカード - 《軍備放棄》《跳ねる春、ベーザ》  とにかくライフを高く保つように除去しつつ、《失せろ》《魂の仕切り》を構えて《巨怪の怒り》を効果的に打たせないように立ち回っていくのが大事なのですが、これを後押しするのが1マナの《軍備放棄》。  先述してきた通り《心火の英雄》に対する最高の回答であり、3点受けてしまうとはいえ3ターン目に唱えてきた《叫ぶ宿敵》にも有効な除去でもあります。 こうして序盤を凌いだ後は《巨怪の怒り》でないと突破できない《跳ねる春、ベーザ》でライフゲインしつつ突き放すのが赤アグロに対するゲームプランとなります。 ▼サイドアウト -3《太陽降下》-3《世話人の才能》-1《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》 ▼サイドイン +2《領事の権限》+2《エルズペスの強打》+1《救済の波濤》+1《やらせはしない》+1《別行動》  間に合っていない《太陽降下》、攻撃しないといけない《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》を抜きます。  単体では何もしない《世話人の才能》も同様に抜きますが、除去した後に捲っていく手段として1枚だけ残す形としています。 サイド後では不要牌が全て効果的なカードになるため、元々有利な相性がさらに有利へ傾きます。 《救済の波濤》はダメージ軽減のみならずパーマネントにも呪禁を付与するため、《領事の権限》への《脚当ての陣形》を回避できる点を覚えておきましょう。 VSディミーアミッドレンジ  メイン微有利、サイドでは微不利という印象です。 メインでは打ち消しの枚数が少なく、こちらのアクションの通りがよい点と除去で攻め手を捌ける点などから微有利としています。 《フェアリーの黒幕》で《永劫の無垢》《世話人の才能》のドローをただ乗りされてしまうため、マスト除去の一つとなっています。  とはいえ除去手段も限られるため、割り切って《フェアリーの黒幕》を出させてから《軍備放棄》で対処するなど後手に回ってでも対処していきます。 《悪夢滅ぼし、魁渡》は定着してしまうと非常に危険。《失せろ》《魂の仕切り》は絶対これに合わせたいところです。 ▼キーカード - 《世話人の才能》  エンチャントである《世話人の才能》は一度定着してしまえば対処不可であるため、じっくりと除去しつつアドバンテージ差をつけていくプランの中核になります。 最近は同型意識で《ティシャーナの潮縛り》がメインから採用されているケースが多いため、《世話人の才能》レベル3を打ち消されて大きくテンポロスをさせられないように気を付けましょう。   ▼サイドアウト -1《太陽降下》-1《大天使エルズペス》-2《跳ねる春、ベーザ》 ▼サイドイン +2《エルズペスの強打》+1《やらせはしない》+1《別行動》  一方でサイドでは相手が《否認》《ティシャーナの潮縛り》《強迫》など効果的なカードが入ってきてクロックパーミッションとしての完成度が上がったのに対し、こちらは特にこれといったカードが入りません。  白単色の弱みであり、このデッキそのものの弱みでもありますね。もちろんゲームプランも変わっていません。 インスタントタイミングでの仕掛けおよびハンデス・カウンターでの撹乱アグロが通りやすくなってしまい、こちらはより窮屈な動きを強要されてしまいます。 的確に脅威に対して除去を合わせつつ、どこか隙を見て《世話人の才能》を通してアドバンテージを地道に取っていくしかありません。 ただ《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》はディミーアミッドレンジに対して有効な一枚で、2マナの軽さからカウンターを掻い潜って着地させやすいです。 《陶磁器ギャラリー》の解放は《祭儀室》などとは異なり誘発が発生しないため《ティシャーナの潮縛り》すらも無視します。 地道にトークンを産み出しながら《陶磁器ギャラリー》で一気に決着をつけるという動きが再現性の高い勝ち方でしたので、このデッキを意識するなら2枚採用するとよいかもしれません。 VSティムールカワウソ  はっきり言って不利です。 《嵐追いの才能》《豆の木をのぼれ》《この町は狭すぎる》の組み合わせて延々とアドバンテージ・テンポ両方を取ってくる上、《永劫の活力》《渓間の洪水呼び》による無限コンボもあるためこちらは攻める側にならねばなりません。  しかし白単トークンはこれまでに何回も言及してきた通り、ゲームレンジを後半に寄せており攻めていく手段に乏しいデッキです。 悠々とコンボパーツを集められ、こちらの《世話人の才能》レベル3による攻めは《この町は狭すぎる》でかわされてしまい、《永劫の無垢》も《塔の点火》で追放……と、最悪のマッチの一つと言ってもよいでしょう。 ▼キーカード - 《失せろ》 《失せろ》は《嵐追いの才能》《渓間の洪水呼び》をインスタントタイミングで対処できる貴重な手段。 《この町は狭すぎる》を回収するための《嵐追いの才能》レベル2に合わせて《失せろ》でテンポロスさせるなどを狙っていきましょう。 相手の勝ち手段を的確に潰しつつ、アドバンテージを獲得しながらチャンスを伺っていきましょう。 ▼サイドアウト -1《軍備放棄》-2《跳ねる春、ベーザ》-2《エルズペスの強打》-1《大天使エルズペス》-1《太陽降下》 ▼サイドイン +2《石の脳》+2《悪魔祓い》+1《ウルザの酒杯》+2《安らかなる眠り》  サイド後も依然として不利の認識です。  どうにかして《石の脳》を通し、《この町は狭すぎる》を抜いてしまえば《世話人の才能》《永劫の無垢》によるスケール勝負に持ち込むことができます。 《安らかなる眠り》は正直言って効果があまりないものの、敗着の一つである《嵐追いの才能》レベル2を無効化できるだけでも《エルズペスの強打》よりはマシです。  この際、《永劫の無垢》も追放されてしまうため戦場から戻らない点は注意です。《悪魔祓い》は《永劫の活力》《豆の木をのぼれ》《嵐追いの才能》《蒸気サウナ》などターゲットが多いものの、《この町は狭すぎる》によってかわされるリスクは念頭に置くべきでしょう。 VSアゾリウス眼魔  メイン・サイド共に有利と認識しています。 ただ飛行クリーチャーが《ミストムーアの大主》によって出てくる昆虫トークンしか存在しないため、得意とするトークンによるチャンプブロックができません。  そのため早期に《傲慢なジン》《忌まわしき眼魔》が出てきた場合、捌き切れずに殴り切られてしまうパターンも存在しますが、やはりここは1マナの追放除去である《軍備放棄》が非常に効果的です。 ▼キーカード - 《軍備放棄》《太陽降下》 《救いの手》《再稼働》による再利用を許さない追放除去は的確に当てたいところです。  あちらも《魂の仕切り》《送還》でかわすことを意識しますが、総枚数としてはこちらの方が上です。 2マナ重くさせる《魂の仕切り》もアゾリウス眼魔は土地を切り詰めており、5マナ出すにも一苦労なのでほぼ追放除去として機能します。  再度唱えてきたところに《軍備放棄》《太陽降下》をお見舞いしてやりましょう。 このようにクリティカルな対応手段が多いため、構造的に有利と言えるでしょう。 ▼サイドアウト -3《跳ねる春、ベーザ》-2《エルズペスの強打》-1《大天使エルズペス》 ▼サイドイン +2《悪魔祓い》+1《やらせはしない》+2《安らかなる眠り》+1《別行動》  このアゾリウス眼魔には《安らかなる眠り》が強烈に突き刺さる上、《悪魔祓い》《やらせはしない》など追放除去が増えることでより有利になります。 サイドでは《僧院の導師》が入ってきますが、これもやはり《軍備放棄》で対応可能。 《否認》《軽蔑的な一撃》のカウンターが入ってくるとはいえ、こちらの追放除去の量を乗り越えるほどではありません。 どんどん追放してあげましょう。 最後に  白単トークンについて紹介させていただきました。  白が誇る除去、ドロー、ゲイン。これらを余すことなく堪能できるよいデッキです。ただ何度も言及してきた通り、時間が最大の敵です……  時間短縮のコツをいろいろと書きましたが、それでもやはり引き分けは発生してしまうでしょう。当たり前ですが、引き分けないために最も必要なのはデッキに慣れることですね! 持ち時間制であるアリーナやMOであればこの時間はそこまで気にならなくなるので、是非デジタルで一度回してみてはいかがでしょうか?  そして目指せ《時間の名人》!  ここまで読んでいただきありがとうございました。  またお会いしましょう!

【今週のピックアップデッキ】セレズニアアーティファクト/セレズニアオーラ/4cエレメンタル

週刊 Modern Pioneer Standard

2024.12.13

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 セレズニアアーティファクト(スタンダード) MOリーグ:5-0 By AgrusKos93 スタンダード神挑戦者決定戦で驚くべきパフォーマンスを見せたアゾリウスアーティファクトアグロ。特にデッキのキーカードの1つだった《威厳あるバニコーン》は、その巨大なサイズで攻守に渡って戦場を支配する存在で、今の赤アグロの多いスタンダード環境における回答とも言えるカードでした。そんな《威厳あるバニコーン》が主役となるのが、こちらのセレズニアアーティファクトアグロ。デッキコンセプトはアゾリウスに近く、《ひよっこ捜査員》《内なる空の管理人》《威厳あるバニコーン》と、パーマネントを戦場に出し、それらをタップして強化し、サイズの大きいクリーチャーたちで殴る構成です。緑によって強化されたのはパーマネントの生成能力。《堅いクッキー》はその名の通り(?)非常に手堅いクリーチャー。戦場に出た時に食物を生成するので、パーマネント2枚分になり、更に3マナ支払うとアーティファクトを4/4のクリーチャーにできます。後半引いても4/4のクリーチャーを生成して殴れる、便利なカードですね。《名もなき都市の歩哨》は様々なミッドレンジで採用実績のある強カード。戦場に出るか攻撃するたびに地図を生成するので、出して地図を起動して攻撃するだけで、サイズを上げつつライブラリートップの質を上げられます。警戒もついているので赤アグロにも強いですね。3マナ3/4とそもそものスタッツも優秀。リソースを稼ぐ手段として《勇敢な旅人、ケラン》も優秀です。出来事として唱えれば地図を1つか2つ生成し、クリーチャー面では手札を増やしてくれる可能性があり、両方が活きるセレズニアアーティファクトにぴったりです。もう1つの緑のメリットが《生歯の子ワーム》。アーティファクトが戦場に出るたびに成長していくので、このデッキなら毎ターン大きくなっていきます。《ひよっこ捜査員》《勇敢な旅人、ケラン》《堅いクッキー》《名もなき都市の歩哨》《鋼の熾天使》《薄暮薔薇の聖遺》《未確認浮遊船》とアーティファクトはたっぷり入っています。《鋼の熾天使》は《威厳あるバニコーン》に飛行を付与するもよし、絆魂で赤アグロに悪夢を見せるもよしと、このデッキに噛み合った1枚。《幽霊による庇護》と合わせて《威厳あるバニコーン》に絆魂を付ける手段が6枚もあります。今スタンダードで激熱の《威厳あるバニコーン》を使い倒したい方、このセレズニアもおすすめですよ! セレズニアオーラ(パイオニア) MOリーグ:5-0 By T1_Tinker 《幽霊による庇護》《天上の鎧》と強力なオーラカードが登場したことでスタンダードでもオーラデッキは活躍していますが、元々オーラと言えばパイオニアやモダンのデッキでした。スタンダードと最も違う点はやはりそのクリーチャーたち。 まずは《上級建設官、スラム》。オーラデッキの弱点である「オーラを唱えて手札がなくなる」を克服する能力を持っており、オーラを唱えてオーラを引くオーラ連鎖が発生すると一瞬でゲームが壊れます。特に《天上の鎧》はオーラをつけるほど強化値が上がっていくので、《上級建設官、スラム》が生き残ってターンが帰ってくればあっという間に手をつけられないサイズのクリーチャーが爆誕します。《皇の声、軽脚》も、《上級建設官、スラム》とは違った形でオーラを供給し続けるクリーチャー。こちらはオーラを唱えて戦場に出した時に、そのマナ総量以下の、戦場に同名カードがないオーラをデッキからサーチして《皇の声、軽脚》につけることができます。たとえば《幽霊による庇護》を手札から唱えると、戦場に《天上の鎧》がある場合、《幽霊による庇護》と《天上の鎧》以外の2マナ以下のオーラをデッキから場に出して《皇の声、軽脚》につけられます。好きな1マナオーラからそのまま《天上の鎧》につなげたり、《幽霊による庇護》から《きらきらするすべて》をサーチしたりと、《皇の声、軽脚》が出てオーラを唱えることさえできれば、《皇の声、軽脚》のサイズがすぐに上がっていく寸法です。サイズを上げた後は、トランプルを付与する《無鉄砲》や飛行をつける《グリフの加護》だったり、《ケイヤ式幽体化》を持ってきて《皇の声、軽脚》を除去から守るも良し、《歩哨の目》を持ってくれば、後に墓地に落ちた時に《上級建設官、スラム》や次の《皇の声、軽脚》に再利用できて便利です。こういった「修正値は並だが回避能力を付与するエンチャント」は4枚採用しづらいカードですが、《皇の声、軽脚》のおかげで好きな時にサーチできます。以前までは相手への干渉手段が少なかったオーラですが、《幽霊による庇護》の登場で一気にデッキパワーが上昇しました。《幽霊による庇護》を引かなくとも《皇の声、軽脚》によってサーチできるため、しっかりと相手の盤面に触れるようになったのです。《破片魔道士の救出》はこれまでになかったインスタントのオーラ。《皇の声、軽脚》でもちろんサーチできるので、インスタントタイミングで《天上の鎧》が降ってきたり、《ケイヤ式幽体化》で《皇の声、軽脚》の定着を大きく安定させられるようになりました。除去を一度《破片魔道士の救出》で避けた上で《ケイヤ式幽体化》がつくので、《皇の声、軽脚》を除去するのは至難の業です。《離反ダニ、スクレルヴ》《皇の声、軽脚》《上級建設官、スラム》と12枚の伝説のクリーチャーを採用しているので《モックス・アンバー》を4枚使えるのもポイント。1マナで《破片魔道士の救出》を構えられるので、2ターン目に《上級建設官、スラム》か《皇の声、軽脚》+《モックス・アンバー》で《破片魔道士の救出》を構える動きは強烈。以前はここが《ケイラメトラの恩恵》だったので、デッキはすさまじく強化されていますね。《皇の声、軽脚》に《きらきらするすべて》をつけてデッキから《幽霊による庇護》をサーチする動きは非常に強力!アグロデッキにはこの動きだけで勝ててしまうほどです。正直「オーラデッキは過小評価されているのでは?」と感じています!それぐらいこのデッキは強そう! 4cエレメンタル(モダン) モダンリーグ:5-0 By Traumatismes モダンでも息の長く人気のある種族、エレメンタル。《創造の座、オムナス》や《孤独》など、モダン級のカードはエレメンタルであることが多いので、よくアップデートされるのも魅力ですね。そんなエレメンタルの最新事情を今回はご紹介していきましょう。まずエレメンタルの心臓ともいえる部分を担う《発現する浅瀬》。エレメンタルが戦場に出るたびにライブラリーの上を見て、それが土地ならタップインで場に出て、それ以外なら手札に加わる。要するにエレメンタルを出すとリソースを供給する恐ろしいカードです。《孤独》を想起で唱えても1枚めくれるのであまり損をしません。そしてデッキのカードすべてと噛み合う《発現する浅瀬》と最も相性が良いエレメンタルが《雷族の呼び覚まし》。攻撃するたびに、墓地から《雷族の呼び覚まし》のタフネスよりタフネスが小さいクリーチャー、つまりタフネス1のクリーチャーを攻撃状態で釣り上げます。終了ステップにそのクリーチャーは生け贄になりますが、釣った時点で《発現する浅瀬》が誘発してくれます。そんな《雷族の呼び覚まし》は他にもシナジー盛りだくさん。エレメンタルをデッキからサーチしてライブラリーの上に積む《炎族の先触れ》を釣って常にエレメンタルを積み込み続けたり、《ちらつき鬼火》を釣れば他のクリーチャーを明滅させてアドバンテージを稼げます。ちなみに相棒の《孤児護り、カヒーラ》でタフネスが上がるとタフネス2以下のクリーチャーも場に戻せるので、《孤独》も墓地から場に戻せます。《雷族の呼び覚まし》との相性なら《夕暮れヒバリ》が最高かもしれません。場を離れた時にパワーが1以下のクリーチャーを戦場に戻してくれるので、墓地から《発現する浅瀬》や《炎族の先触れ》を復活できるのです。《炎族の先触れ》によってエレメンタルをライブラリーに積めるので、1枚差しも大量に入っています。置物に触れたければ《仮面の蛮人》か《基盤砕き》。土地が欲しいなら《絡みつく花面晶体》。除去耐性が欲しかったら《不確定な船乗り》。《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》も特定のマッチでは非常に効果的です。フェッチランドがとりあえず使えなくなったり、宝物を生け贄にできなくなります。そうそう、『モダンホライゾン3』で登場した《出産の儀》についても触れなければなりませんね!終了ステップの開始時に、ライブラリーの上7枚を見て、その後にクリーチャーを生け贄にできます。その生け贄に捧げたクリーチャーのマナ総量+1以下のカードを、7枚の中から場に出せます。つまり《復活の声》を生け贄に捧げた場合、マナ総量3以下のカードを場に出せるのです。《雷族の呼び覚まし》で釣ったカードや《復活の声》など、《出産の儀》で生け贄に捧げたいクリーチャーはたくさんいますし、3マナ以下のカードが多いので当たりも比較的多い。更に《炎族の先触れ》でエレメンタルを積めるので、あらかじめ積み込みしておき、《出産の儀》でめくるなんて荒業も可能です。《炎族の先触れ》以外にデッキ内のエレメンタルにアクセスしやすくなるため、この《出産の儀》でデッキがかなり強化されたのではないかと思います。アドバンテージ獲得手段の《発現する浅瀬》《雷族の呼び覚まし》とそれをサーチする《炎族の先触れ》《出産の儀》。攻守に渡って優れる《復活の声》に、持っているだけで安心の《孤独》と、その派手な見た目に反して非常に堅実的な動きができるデッキです。エレメンタルが並べば場も手札もすごいことになるので、面白さ間違いなし!ぜひ回してみてください。

【リアニメイトディガー!】《もがく出現》反省記&マリガンノート

週刊 Standard

2024.12.12

Kyle Hitachi

皆さんこんにちは!Kyle Hitachiです。 今週も「リアニメイトディガー!」も、スタンダードの『もがく出現』をディグしていきます! 先週末はプレミアム予選がお休みということで『第29期スタンダード神挑戦者決定戦』に参加してきました。 優勝は岡井さん謹製の青白アグロ。オリジナルなデッキが勝っていく様子はいつ見てもワクワクしますね!神との対戦も見ていて非常に面白かったです。 スタンダード神挑戦者決定戦に向けた調整 さて、私が『スタンダード神決定戦』に挑むに当たって意識した点は以下の三点です。 1.アグロデッキ対策 Magic Online上でジェスカイ召集が好成績をあげていることを踏まえて《苦難の収穫者》を増量。 アグロ対策を重く見るという方針は今まで通りで、そこに召集が加わりました。 2.デッキの安定性の上昇 《ゾンビ化》を2枚採用してデッキの安定性向上を目指しました。 追加のリアニメイトスペルを用意することにより、今までよりも安定して《偉大なる統一者、アトラクサ》《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を着地させられます。 3.青黒ミッドレンジ攻略の糸口を模索 そろそろ紙のメタゲーム上でも青黒ミッドレンジが大流行するはずだと考え、サイドボードプランを準備しました。 《忌まわしき眼魔》《好奇心の神童、ケラン》による飛行ブロッカーの増量です。 サイドボード後、相手が《除霊用掃除機》など墓地対策ハンドをキープした際にイニシアチブを取れるようなプランを意識しました。  『スタンダード神挑戦者決定戦』デッキリスト 今回使用したデッキリストはこちら。 大会結果 ボロスバーン〇白単コントロール〇白単コントロール〇グルールアグロ×セレズニアオーラ×ティムールカワウソ   成績は3-0から0-3してしまい、3-3でドロップ。悔しい結果になってしまいました。 1〜3戦目は比較的簡単なゲームでした。ボロスバーンは《脚当ての陣形》がないため、《偉大なる統一者、アトラクサ》《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》が対処されず、リアニメイトさえ決めれば試合がだいぶ有利になります。 白単コントロールは《完成化した精神、ジェイス》を相手が採用していなければ、サイドボード後に《安らかなる眠り》を貼られることを前提に考えても、負ける要素がありません。 そして問題のグルールアグロです。《多様な鼠》《叫ぶ宿敵》《巨怪の怒り》が絡んだブン回りを2回連続で食らってしまい、あえなく敗北してしまいました。トーナメント中一度は受け入れなければならない負け方ですが、ここでティルト状態に入ってしまいます。セレズニアオーラ、ティムールカワウソ相手はある程度こちらも好き勝手に動くことができ、その時間を与えてくれるので、キーカードさえ揃っていれば怖くない相手なのですが、日和って微妙なハンドをキープし続けてしまい敗北。 「運がなかった」と言えばそこまでですが、パフォーマンスは良くなかったです。 反省 さて、負けたときこそ成長のチャンス、ということで反省したいポイントを纏めてみます。 まずメタゲームを読み違えていました。 《苦難の収穫者》はジェスカイ召集にも強い除去である反面、《叫ぶ宿敵》を除去できない欠点がありました。 赤アグロミラーのミラーでは絶対的な《叫ぶ宿敵》は、黒いデッキやシミックテラーなどにはさほど強くなく、それらのデッキの流行に伴い、採用数が減少すると予想していましたが、その読みが外れてしまいました。 もう一つは厳しいマリガンを徹底することができなかったことです。 グルールアグロに理不尽な負け方をしたのは事実ですが、そのメンタルを次の試合に持ち込んでいいわけがありません。マリガンを恐れてはいけないアーキタイプを使っていることもあり、ここは妥協してはいけないポイントでしたね。とはいえ、妥協キープなどのマリガン失敗は改善できるポイントでもあります。 このデッキを使って勝率が出ない人の中にはマリガンで躓いてる人も多いのではないでしょうか。 自戒の意味を込めて、マリガンについて掘り下げていきます。 マリガンについて考える マリガンを嫌がるプレイヤーは多いです。 手札が対戦相手よりも少ない状態でゲームをスタートするのには勇気が必要ですからね。 ですが、マリガンは明確にプレイングの一部です。 初手でゲーム展開の8割が決まると思って、時には積極的に6枚の手札を選びましょう。 キープ基準となるカードはあるにはあるのですが、サイドボーディングの仕方やゲームプランによってカードの価値は変化してしまうので、一概には言えません。 それではいくつか例題を挙げて解説していきましょう。   1.VSグルールアグロ     私の答えはマリガンです。 とてもキープしたくなるハンドですね! ですが黒マナが見当たらず、《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》がこちらを見守っています。今後の展開がどうなるか、3枚引いてみましょう。 黒マナを引くことができませんでしたね。16枚入っているので引いても良さそうなものですが、仕方ありません。 2枚目の《錠前破りのいたずら屋》《完成化した精神、ジェイス》は引きこめましたが、グルールアグロ相手ではとても間に合わなそうです。 また《第三の道の創設》がないので、仮に黒マナを引けたとしても墓地が足りず、《もがく出現》を上手く使えないかもしれません。 対グルールアグロではリソースは必要ないので、厳しくマリガンしていくことになります。 というわけでマリガンしてみて配られた6枚です。これはキープ。 またしても難しいハンドが来てしまいました…が、今度はキープしても良さそうですね。このデッキ、緑マナを要求するカードが《もがく出現》《森の轟き、ルムラ》のみなので、青マナと黒マナさえあればとりあえず動き続けることができます。 戻すカードとしては《島》《ゾンビ化》のどちらかでしょうか。 《島》を戻すとマナスクリューの恐怖に怯えることになります。一方《ゾンビ化》を戻すと、《もがく出現》と緑マナの両方を引かなければゲームに勝つことができません。私は《切り崩し》でゲームが長引くことも考えて《島》を戻しそうです。   2.VSディミーアミッドレンジ マリガンです。惜しい、グルール戦でこの初手が来ていれば…! グルールアグロにならこれでキープしてしまいそうですが、相手はディミーアミッドレンジです。このマッチでは土地を伸ばしたいので2枚は少なく感じてしまいます。《完成化した精神、ジェイス》も、アグロには良いカードですが、ディミーアには使い勝手が悪いです。 このデッキはこういった「アクションはできるけれどゴールがない」ハンドがたくさん来るのが問題ですね。 これはキープします! 一度マリガンした、ということを考慮すれば良いハンドでしょう。諜報ランドで《錠前破りのいたずら屋》《蓄え放題》が見つかれば最高のハンドかもしれません。 1ターン目に諜報ランドをセットランドしたいので、同じくタップインである《不穏な浅瀬》を戻す……と思ってしまいそうになりますが、相手は青黒ミッドレンジで、手札には《切り崩し》があります。闇雲に動いてもしょうがないので、最初のターンは《不穏な浅瀬》をセットランド、2ターン目は《切り崩し》を構えながら諜報、そして3ターン目から《第三の道の創設》で動き始められそうです。 というわけで《ハッシュウッドの境界》か《沼》を戻すのが良いでしょう。 3.VS白単コントロール   マリガンです。 非常に有利なマッチアップですが、流石にリアニメイト先が2枚のハンドはまずいです。もしも《執念の徳目》あたりが《第三の道の創設》であれば、《忘れられた者たちの嘆き》で土地も探せそうなのでキープできますが、この手札は無理せずにマリガンという判断になります。    これはキープできます。 《苦々しい勝利》、もしくは《偉大なる統一者、アトラクサ》を戻してキープとなりそうなハンドです。ポイントとしては《第三の道の創設》があること、《忘れられた者たちの嘆き》で3枚目の土地を探せること。相手が白単コントロールなので《苦々しい勝利》を戻して問題ないでしょう。 4.VSティムールカワウソ     パーフェクトハンド。キープです。 非常に理想的なハンドです!色マナがすべて揃っており、《第三の道の創設》で素早く墓地を肥やすことができ、3ターン目までの行動が見えています。後は《偉大なる統一者、アトラクサ》《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》《もがく出現》がめくれるかどうかの勝負になりますね。  さて、今度は少し応用編で、サイドボード後のマリガンについても触れましょう。 インアウトは ー2《執念の徳目》ー2《忘れられた者たちの嘆き》ー2《切り崩し》+2《除霊用掃除機》+2《羅利骨灰》+2《強迫》 です。 マリガンです。 出ましたね、こういうハンドをキープすると負けてしまいます。 特にティムールカワウソのような準備をコツコツと整えていくデッキに対して、こういったハンドで始めてしまうことはかなりリスキー。最低限ゴールが見える手札をキープしましょう。 キープです。 黒マナこそないですが諜報ランドが複数枚あり、リアニメイトというゴールも見えている手札です。 なおかつ《羅利骨灰》もあることから《永劫の活力》などに対処することができます。この程度のハンドならばキープしてもよいでしょう。 5.VSディミーアミッドレンジ ディミーアミッドレンジとのサイドボード後について。 インアウトは以下の通り。 ー2《森の轟き、ルムラ》ー2《執念の徳目》ー2《忘れられた者たちの嘆き》+3《強迫》+2《温厚な襞背》+1《忌まわしき眼魔》+1《好奇心の神童、ケラン》 キープ。 土地に少し不自由がありますが、《強迫》を《第三の道の創設》で使い回す展開が見えているのは非常に良いことです。 一見邪魔に見える《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》も《苦々しい勝利》で墓地に落とすことができますし、《切り崩し》で早期のクロックに対処することもできます。 ただしこちが後手で、相手が1ターン目に《除霊用掃除機》をプレイしてきたときは非常に辛そうです。 キープ。 初手としては《好奇心の神童、ケラン》で土地を伸ばしつつ飛行ブロッカーを立て、《第三の道の創設》でライブラリーを掘り進められるなど、悪くない手札。《迷路庭園》の諜報と《不穏な浅瀬》2枚も頼もしいですね。土地は初手に5枚もありますが問題ありません。 《除霊用掃除機》を置かれても《好奇心の神童、ケラン》で割れるので安心です。 6.VS不明 《切り崩し》があるので早い相手には対応できそうですし、遅い相手に対しては《ゾンビ化》という仕掛けが2枚ある上に《第三の道の創設》での上振れも期待できます。どんな相手にでもキープしても良いでしょう。 このように除去・切削・リアニメイトなど、序盤を遅らせるカードからゴールまですべて揃っている手札は、どんな相手でも文句なくキープできる初手です。 このデッキにとってはゴールが重要なので、切削とリアニメイトを兼ねる《第三の道の創設》は非常に大事なカードで、いつでも初手に欲しいですね。 今後の課題 今週はマリガンに焦点を当ててみました。私が普段どのように考えて初手をキープしているか、少しでも伝わったのなら幸いです。 もちろん初手だけではなく「これから何を引きたいか」を考えることも重要です。麻雀で言うところの面子を揃えるようなものなので、受けが広くなるようプレイしていきましょう。 今後の課題ですが、まだ「マナベースの最大化」という地味ながらも大事な作業が残っています。 現在のマナベースはファストランドを抑えて《グルームレイクの境界》にフィーチャーした形を取っていますが、このマナベースがベストとは限りません。だいぶ長いこと使ってしまったのでそろそろ計算し直そうと思います。 また果敢クリーチャーに対してブレやすくて嫌いだった《切り崩し》を再評価し、4枚まで採用することを検討しそうです。やはり初手にあるとタップインランドを処理しやすいですからね。それに合わせて本当に諜報ランドが《迷路庭園》で良いのか、検討し直します。「それではまた来週……!」と言いたいところですが、今週末は特にイベントがありません。 店舗予選に出ることができればその様子をレポート、もしくは「The Last Sun」用モダンデッキの叩き台を作る様子を記事にしようと思います!禁止改定も12/16に控えていますからね。 それではまた次回、お楽しみに。

【週刊メタゲーム通信】世はまさに大アグロ時代!最新のアグロは赤アグロメタに!

週刊 Standard

2024.12.10

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週はマジックオンライン上で行われた大会、Birds of Paradise Standard Spectacularから、最新スタンダード環境のデッキを紹介していきます。 ボロス果敢 Birds of Paradise Standard Spectacular : 優勝 By MicroPago 今のスタンダードはなんといっても赤天国!赤単、赤単タッチ緑、グルール、そしてボロスと様々な赤いアグロデッキが活躍しています。それを可能にしているのが《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》の3種の赤いカードたち。早い打点とリソース、除去耐性とアグロデッキが欲しいすべてを持つのが今の赤アグロです。当然、これだけ赤いデッキが強ければ、あちこちでミラーマッチが発生します。そんな赤ミラーを制するのがこのボロス果敢です。デッキのベースは赤単。前述のように《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》の組み合わせがしっかり採用されています。そこに加わる白要素が《呑気な物漁り》と《呪文書売り》。エンチャントが戦場に出るたびにクリーチャーを強化できる《呑気な物漁り》と、役割を生成する《呪文書売り》は相性抜群です。《呪文書売り》は《多様な鼠》を新生した次のターンなどに出しても非常に強く、占術で不要牌をライブラリーの下に戻せるため、序盤・中盤いつ引いても強いカードです。これだけでは白い要素が赤ミラーを制するようには見えないかもしれませんね。スペル枠を見ればその答えは一目瞭然です。そう、赤対策と言えばこれ!《幽霊による庇護》です。赤アグロは小粒なクリーチャーばかりなので《幽霊による庇護》の恩恵は受けにくいように思えますが、《多様な鼠》の二段攻撃や《呪文書売り》の強化を駆使することで、《巨怪の怒り》なども合わせてかなりのライフゲインが見込めます。もちろん《幽霊による庇護》はエンチャントなので、《呑気な物漁り》でしっかり強くなってくれます。《呑気な物漁り》でクリーチャーを強化できるので、他の赤いデッキに比べて《幽霊による庇護》を強く運用しやすいですね。《破片魔道士の救出》はグルールの《蛇皮のヴェール》のような使い方ができるカード。《呑気な物漁り》との相性は言うまでもありません。《悪魔の大騒動》まで採用されており、かなりエンチャントシナジーに寄せたリストと言えますね。除去しあうだけが赤ミラーではありません!《幽霊による庇護》で赤ミラーに強いボロス果敢、これから更に数が増えていくことになるかもしれませんね。   ジェスカイ召集 Birds of Paradise Standard Spectacular : 3位 By TheManLand ここ1~2週間ほどマジックオンラインで大流行しているのがジェスカイ召集。スタンダードでは長いこと存在しているアーキタイプですが、特に最近結果を残してきています。《ひよっこ捜査員》《遠眼鏡のセイレーン》で出した手がかりや地図に《上機嫌の解体》を打ち、クリーチャーを並べて《イーオスの遍歴の騎士》を出し、《イモデーンの徴募兵》を手札に加えて次のターンに一気に襲い掛かる。回った時にはどのデッキも手がつけられない、パイオニア級のアグロデッキです。攻防一体の《内なる空の管理人》《威厳あるバニコーン》、そして《幽霊による庇護》と対赤アグロもしっかり勝ち筋があります。ここに来て召集が勝ち上がっている背景には、今のスタンダードで最も意識しなければならない相手が赤アグロだからでしょう。「アグロ対策が増えるならジェスカイ召集もそのあおりを受けるのでは?」と思いますが、実はそれは違います。召集には《切り崩し》や《喉首狙い》などのただの除去はほとんど効きません。クリーチャーを横並びさせて《イーオスの遍歴の騎士》や《イモデーンの徴募兵》で勝つデッキだからです。そのため、《紅蓮地獄》をはじめとした全体除去の方が効果があります。一方、赤アグロには《紅蓮地獄》などの全体除去はあまり効果がありません。《紅蓮地獄》は2/3になった《僧院の速槍》すら倒せませんし、《審判の日》などのしっかりした全体除去はマナコストが重く、速攻が多数入っている赤アグロにはやはり効果が薄い。打った返しに速攻クリーチャーに《巨怪の怒り》を撃たれて負けるのは想像に容易いですね。以前は召集は意識される側だったので、対アグロ対策としては全体除去が多く採用されていました。その全体除去スロットが単体除去に代わっており、実質召集相手のサイドボードが用意できないというのが現状なのです。「サイドボードさえなければ召集は最強のデッキだ」と以前は言われていましたが、今まさにその最強の状況になっています。ジェスカイ召集の流行を見てどのデッキも最近は2枚ほど全体除去を採用するようになりましたが、それでもそこから枚数が増えることはあまりないでしょう。その分だけ赤アグロに入れるカードが減ってしまいますからね。メインから《太陽降下》をたくさん採用しているようなドメインコントロールや白単コントロール以外に強いのが召集です。メタを見て使いどころを見極めましょう! ディミーアミッドレンジ Birds of Paradise Standard Spectacular : 6位 By PierrePoilievre2025 スタンダードで赤アグロと並んで二大巨頭のデッキ、ディミーアミッドレンジ。青の打ち消しと黒の除去、そして《悪夢滅ぼし、魁渡》によって攻めるデッキです。このリストはインスタントタイミングでのアクションを徹底したデッキ。対赤アグロで攻守で活躍する《分派の説教者》をサイドボードに落とし、《ティシャーナの潮縛り》をメイン採用しています。《分派の説教者》メイン、《ティシャーナの潮縛り》サイドが定番だったので、思い切った構成です。1マナ域の《遠眼鏡のセイレーン》を除いたすべてのクリーチャーが瞬速となっており、打ち消しや除去を構えながら常に展開していくことが可能となっています。《巨怪の怒り》などで無理やり突破されないためには、除去を常に構える必要がありますからね。《フラッドピットの溺れさせ》はすっかりディミーアミッドレンジの2マナ域として定着しました。元々2マナ域で不動の立場を確立していた《大洞窟のコウモリ》は赤いデッキがこれだけ多い環境ではなかなか活躍できません。赤いデッキには《ショック》で対処されますし、それ以外のデッキは赤を意識して大量の軽量除去を採用しています。赤だけでなく、赤を意識したデッキにも《大洞窟のコウモリ》は弱いので、この変更は納得です。一方の《フラッドピットの溺れさせ》はクリーチャーを寝かせつつブロッカーにもなりますし、《悪夢滅ぼし、魁渡》で戻して再利用しても良しと非常に便利なクリーチャー。《フラッドピットの溺れさせ》で攻撃して相手がダメージを通すタイミングで起動型能力を使い、そのスタックで《悪夢滅ぼし、魁渡》を忍術することで、麻痺カウンターが置かれたクリーチャーを除去しつつ、《フラッドピットの溺れさせ》を手札に戻せます。面白いのが《サイバの暗号術師》の採用です。戦場に出た時にクリーチャーに+1/+1カウンターを乗せつつ呪禁を付与できる、《蛇皮のヴェール》系のクリーチャー。生き残ってハイバリューなクリーチャーがいないこのデッキでは少し違和感があるかもしれませんが、デッキを瞬速で固めるなら、一番良い選択肢に見えます。また、《悪夢滅ぼし、魁渡》との相性も見過ごせません。《悪夢滅ぼし、魁渡》の忍術で再利用してクリーチャーを強化しても良いですし、何より《サイバの暗号術師》は忍者なので、《悪夢滅ぼし、魁渡》のプラス能力での紋章で強化できます。《永劫の好奇心》を《塔の点火》圏外にするのも強く、何より全く警戒されていないのは大きいでしょう。赤アグロが《抹消する稲妻》を採用するようになったのも、《サイバの暗号術師》としては好都合。しっかりとメインからミラーマッチの《悪夢滅ぼし、魁渡》を除去できる《シェオルドレッドの勅令》を採用するなど、今のスタンダードのメタを意識した作りになっているので、ディミーアミッドレンジがお好きな方は試してみてください。

ティムールカワウソ徹底解説!

Standard ピックアップ

2024.12.06

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 本日は、スタンダードで最も難解なデッキと言われている、ティムールカワウソの記事になります。世界選手権の最終戦でティムールカワウソの製作者に負けてからというもの、このデッキの動きに惚れ込み、店舗予選を6勝1敗で突破、その後プレミアム予選も突破……出来たらよかったのですが、権利を賭けた決勝で敗れてしまいました。さほど結果を残してこれたわけではないのですが、ようやく自信を持った75枚が出来上がったので、こうして記事にすることにしました。 ティムールカワウソとは? 《嵐追いの才能》(から出るトークン)、《稲妻罠の教練者》、《渓間の洪水呼び》の3種のカワウソを活用したコンボデッキです。 《渓間の洪水呼び》は非クリーチャー呪文を唱えるたびに、カワウソやネズミなどに修正を与えてアンタップする能力を持っています。通常はこのアンタップ能力にほとんど意味はありませんが、《永劫の活力》がここに加わることでコンボになります。《永劫の活力》の能力でカワウソたちから好きなマナを出し、そのマナから軽い呪文を唱えると、すべてのカワウソが《渓間の洪水呼び》によってアンタップします。カワウソが3体いる状態で1マナのカードを使えば2マナが浮く計算になり、同時にパワータフネスに修正が入っていきます。無限の手順は後述しますが、最終的には無限に相手のパーマネントをバウンスしながらパワーが上がっていって勝利となります。よく聞かれる「ティムールカワウソはコンボなの?ビートダウンなの?」についてもお答えしましょう。ティムールカワウソはそのどちらでもなく、コントロールデッキだと認識しています。《嵐追いの才能》が初手に2枚ある時はビートダウンに変貌しますが、基本的にはライフを削るのは二の次です。そしてコンボを第一にも考えません。 このデッキは《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》の2枚を駆使して盤面を掌握し続け、やがてコンボを決めるデッキです。ティムールカワウソが難しいと感じる人は、このデッキをコントロールだと思ってプレイしてみてください。もしかしたら上手くいくかもしれません。 デッキリストとカード解説 《嵐追いの才能》 このデッキで最も重要となるカード。ビート・コンボ・コントロールのすべてのプランに絡んでくるので、いつでも初手に欲しいです。戦場に出た時に生成するカワウソは毎ターン2/2や3/3ほどのサイズで相手に殴りかかりますし、《薮打ち》で格闘する際も便利。《塔の点火》の協約にも使用したりします。レベル2ではインスタント・ソーサリーを拾えるので、ここで《この町は狭すぎる》を拾っておくと、永久機関が完成します。レベル2になった《嵐追いの才能》と相手の致命的なカードを《この町は狭すぎる》で戻し、《嵐追いの才能》をこちらは出し直し、またレベル2で《この町は狭すぎる》を回収。こうやって妨害しながらカワウソを増やしていくのがこのデッキの基本戦略。《永劫の活力》《渓間の洪水呼び》が揃うとこの《嵐追いの才能》レベル2→《この町は狭すぎる》を無限に行えるようになるので、一撃必殺のコンボになります。レベル3まで行くことはメイン戦ではありませんが、サイド後に墓地対策をされた際には到達することもしばしば。当然ながらかなり強いのでゲームに勝てます。 《この町は狭すぎる》 デッキ内で2番目に強いカード。ティムールカワウソこの町に名前を変えたいぐらいにはデッキの顔として役立ちます。相手の最も強いカードに触りながら、自分は《嵐追いの才能》《豆の木をのぼれ》を戻して得をし、更に《嵐追いの才能》の2章でループになる素晴らしいスペル。必ずゲーム中に1枚は引きたいカード。2マナにも関わらず5マナの呪文なので《豆の木をのぼれ》がトリガーします。僕はこれを脱法豆の木と呼んでいます。 《稲妻罠の教練者》 モダンでも大活躍のカワウソ。新生コストは少し重いですが、マナフラッドがそれなりに多いので新生で出すこともしばしばあります。《渓間の洪水呼び》+《永劫の活力》を揃えた後はカワウソの頭数が重要になるので、《稲妻罠の教練者》は積極的に序盤からドロップしておきたいカードです。引けば引くだけ《渓間の洪水呼び》のバリューが上がるので嬉しいです。 ちなみに通常版とショーケース版に加えてバンドルプロモ版があるのですが、個人的にはバンドルプロモ版が圧倒的に可愛いです。なぜフォイルしかないんだ……! 《永劫の活力》 クリーチャーをすべて《極楽鳥》に変える強力なクリーチャー。同じ能力を持つ《謎の石の儀式》もかつてコンボデッキで採用実績がありましたが、まさかそれがたった1マナ重くなっただけでクリーチャーになり、しかも除去耐性もつくとは。《永劫の活力》を出したターンにもう1アクションを取りたいので、なるべくならフルタップで出してエンドせず、事前にクリーチャーを出しておいてから《永劫の活力》を出し、構えたいところです。《苦痛ある選定》などの追放除去に弱いので、《塔の点火》を構えておきたいですね。協約コストで《永劫の活力》を生け贄にすれば追放されずにエンチャントとして場に残ります。戦場に《永劫の活力》しかクリーチャーがいない場合でも《塔の点火》で《永劫の活力》自身を対象に取り、その上で協約すればOKです。赤マナさえ構えておけば追放除去はかわせます。《嵐追いの才能》《この町は狭すぎるる》のループには非常にマナがかかるので、《永劫の活力》は必須です。逆に一度でもループが始まると、《渓間の洪水呼び》がなくて無限にならなかったとしても、カワウソが勝手に増えていくので、使えるマナや打点が増えていき、一瞬で勝利します。デッキの核です。 《塔の点火》 赤アグロが環境に多い以上、4枚必須なカード。もしマジックの4枚ルールがなくなったのなら、6枚はメインに入れると思います。それぐらい《塔の点火》は強いカードです。《嵐追いの才能》とそのトークン、《咆哮する焼炉+蒸気サウナ》、《永劫の活力》ととにかく協約の種に困らないのがティムールカワウソで使う《塔の点火》の強いところ。《永劫の活力》との相性は前述の通り。環境の9割がコントロールにならないので限り、4枚から動くことは決してないですね。 《渓間の洪水呼び》 非クリーチャー呪文がすべて瞬速を持ち、非クリーチャー呪文を唱えるとカエル・カワウソ・鳥・ネズミをアンタップして+1/+1修正を与えるという、《ジェスカイの隆盛》のような能力を持つカワウソ。このデッキにはカワウソとネズミしか入っていませんが、強い鳥やカエルがこれから登場すればデッキに入る可能性は十分あります。《永劫の活力》と揃った時には、1マナの非クリーチャー呪文はすべてフリースペルになります。《嵐追いの才能》のカワウソトークンは自身も果敢を持っているので、スペル1枚につき+2/+2。複数体のトークンがいれば突然相手を倒すことも可能です。とはいえ、基本的にはただの3マナ2/2。除去耐性もないので狙われます。《切り崩し》や《噴出の稲妻》で焼かれるのはもったいないので、1マナのカードを構えた状態で出したいです。非クリーチャー呪文を瞬速で唱えられるので《花粉の分析》《薮打ち》を構えるだけで良いので、ケアは比較的簡単です。3マナという重さで除去と交換されてしまうだけのクリーチャーなので、コンボに関わるカードですが3枚しか入っていません。よくある負けパターンの《渓間の洪水呼び》が手札に溜まって負けは、カワウソ使いなら共感してもらえるはず! 《薮打ち》 基本土地をサーチしたり格闘ができる便利な呪文。いや、そんな言葉ではこいつは言い表せません。便利すぎるカードです。3色を無理やり回しているので、色マナはカツカツ。こういった土地サーチはデッキに必須です。《渓間の洪水呼び》のトリガーや《稲妻罠の教練者》で拾えることなどから、《薮打ち》は非常に相性の良いカードです。土地サーチで使う機会がほとんどだと思いきや、実はかなり格闘として打ちます。《嵐追いの才能》は《薮打ち》でも大きくなるので《心火の英雄》や《僧院の速槍》を打ち取れますし、《稲妻罠の教練者》が《大洞窟のコウモリ》を殴り倒してくれることもしばしば。《永劫の活力》の追放が怖くて《塔の点火》がない時は、相手のパワー3クリーチャーと格闘して自らエンチャントとして蘇らせる、なんて使い方もあります。冗談でもなんでもなく、10回打って6回は土地サーチ、4回は格闘で打つ。それぐらい格闘で打つ機会は多いです。格闘が強すぎるので《花粉の分析》を押さえて4枚採用しています。 《花粉の分析》 こちらも《薮打ち》と同じ土地サーチ。もう1つのモードが証拠収集8を達成していると、好きなクリーチャーをサーチできるというもの。このデッキは非常に軽く構築されているため、証拠収集8を満たすのは難しい。《この町は狭すぎる》は後々《嵐追いの才能》で拾いたいのでできれば追放したくありません。それならほぼ証拠収集できないのかというと、そういうわけではありません。《咆哮する焼炉+蒸気サウナ》が証拠収集の種となってくれます。《咆哮する焼炉》を開けておき、《塔の点火》の協約で生け贄にするだけで《花粉の分析》を達成できるので、積極的にこのプレイを狙いましょう。 《豆の木をのぼれ》 5マナ以上のカードを唱えると1ドローのおまけがついてくる《豆の木をのぼれ》。しかしデッキ内で誘発するのは《この町は狭すぎる》(と《トーテンタンズの歌》X=4以上)のみと非常に少ない。そのため、2枚に押さえているリストが多い中、僕は一貫して3枚採用しています。それは結局他のどのリソースカードを入れるよりもゲームの勝利に貢献してくれるからです。勝つゲームの大半は《この町は狭すぎる》が絡んできますし、ゲーム序盤に攻められている場で打つ《この町は狭すぎる》に《豆の木をのぼれ》の1ドローがついてくるかは非常に重要でした。ティムールカワウソは手札を増やす手段がほとんどありません。除去を打ち続けていくと自然に手札は枯渇してしまいます。しかもバウンスは1対1交換にはならず、単なる延命措置です。《この町は狭すぎる》で戻したカードが《稲妻罠の教練者》や《嵐追いの才能》なら損はしませんが、得もしていません。しっかりとこちらが手札を増やして盤面をコントロールしていくには、《豆の木をのぼれ》が一番なのです。 《咆哮する焼炉+蒸気サウナ》 最初は「ソーサリータイミングの除去って……」とか「不確定なダメージだし不安」と思っていましたが、使っていく内にどんどん味がしてきて気づけば3枚固定になったカード。ソーサリータイミングだとしても除去できれば十分で、《この町は狭すぎる》で再利用できるのがとても好感触。《蒸気サウナ》を開けてリソース確保も、マナフラッドしやすいこのデッキでは嬉しい。このデッキで処理の難しい《分派の説教者》を倒せるのもありがたい。《蒸気サウナ》を開ける機会はそこまで多くないので、《塔の点火》の協約で生け贄にしやすく、《花粉の分析》の証拠収集を稼ぐのにも便利。かなりいぶし銀的な活躍を見せてくれました。3枚は入れるべきです。ちなみに《蒸気サウナ》から出すとマナ総量が5以上の呪文なので《豆の木をのぼれ》で1枚引けます。 《トーテンタンズの歌》 ブロックできないネズミを出して、ターン終了時までクリーチャーが速攻を持つソーサリー。ただテキストを読んだだけではあまり強さがわからないかもしれませんが、このデッキでは重要な役割を果たします。まずネズミを生成できる点。ただのブロックに参加できないネズミは、《渓間の洪水呼び》によってアンタップして修正を受けます。つまり《永劫の活力》が揃うと簡単に大量のマナを生み出せるようになります。そしてクリーチャーに速攻を付与する能力も重要です。《永劫の活力》《渓間の洪水呼び》が揃っても、カワウソが少なければ無限コンボは始まりません。《渓間の洪水呼び》でアンタップできるクリーチャーが複数体必要なのです。それを相手も理解しているからこそ、《稲妻罠の教練者》やカワウソトークンなどはしっかり処理されてしまいます。なかなか頭数を揃えておくことはできませんし、更地の状態から突然コンボを決めることは基本的にはできません。しかし、《トーテンタンズの歌》なら《永劫の活力》さえ出ていれば、更地の状態からでもコンボを開始できます。X=4で唱えて4体を生成し、その内3体を寝かせて《渓間の洪水呼び》を出し、1マナの呪文を唱えると4体が起きるので、そこから無限に入ることもできるのです。ディミーアミッドレンジやティムールカワウソミラーでは、《渓間の洪水呼び》でアンタップできるクリーチャーをどれだけ場に出しておけるかが重要なので、《トーテンタンズの歌》はキーと言っても良いです。 《焦熱の竜火》 特筆すべき点はないただの除去です。 《塔の点火》の追加のようなイメージですが、準備せずに3点追放を行えるので、《永劫の活力》《永劫の好奇心》を処理するのに便利です。《咆哮する焼炉+蒸気サウナ》の4枚目よりは《焦熱の竜火》を1枚入れておく方が好みですね。 《探索するドルイド》 グルールが多ければ《焦熱の竜火》の方が良いですが、最近ではそれ以外のデッキにもよく当たるので、追加のリソースカードとして採用することにしました。4枚目の《豆の木をのぼれ》と比べると、《花粉の分析》でサーチできるのがメリットです。《稲妻罠の教練者》をサーチすれば良い場合もありますが、2枚めくりつつ《探索するドルイド》をクリーチャーとしても運用したい場面もあるので、1枚入れる意味はそれなりにあります。 マナベース 基本は3ターン目までのアンタップインを徹底的に意識しています。《薮打ち》《花粉の分析》を駆使して土地を伸ばしていく関係上、実質それらのアクションに1マナかかる(=タップインになるようなもの)ので、土地そのものでタップインはしたくありません。そこで《寓話の小道》は入れずに組んでいます。緑マナは絶対に欲しいので16確保しており、青は12+7枚(土地サーチ)の19、赤は7+7の14です。《破滅の眺望》はデッキ内唯一のタップインですが、かなり強力なので採用しました。単色のパーマネント1つにつきその色のマナが出るので、《豆の木をのぼれ》《咆哮する焼炉》なら赤緑、ここに《嵐追いの才能》があると赤緑青の3マナが出ます。1マナ増えるというわけです。青緑など2色しか出ない場合でも、セットランド時に赤を指定しておけば実質3色土地ですし、《ヤヴィマヤの沿岸》の無色マナを《破滅の眺望》の起動に当てて青緑を出せば実質フィルターランドなので、思いのほか便利でした。 《神盾の海亀》 ここからサイドボードのお話です。そして早速問題の亀くんから。なぜこのカードを採用するに至ったのか?その経緯からお話しましょう。赤アグロと対戦していてとにかく負けるパターンが《叫ぶ宿敵》でした。序盤にしっかりとライフを守れていれば《叫ぶ宿敵》を火力で除去しても問題ないのですが、序盤のクリーチャーを打ち漏らしてライフを削られていると、《叫ぶ宿敵》に打つ《焦熱の竜火》が致命的なダメージになります。かといってティムールカラーで《叫ぶ宿敵》に対処するのは困難です。《声も出せない》は《巨怪の怒り》で大きくなったり、《亭主の才能》で突破されるのでイマイチ。そもそも《叫ぶ宿敵》に1回攻撃されてしまいますからね。そこで1ターン目に出して序盤の《心火の英雄》や《熾火心の挑戦者》を受け止めてもらいつつ、《叫ぶ宿敵》もブロックできる《神盾の海亀》に白羽の矢が立ちました。実際かなりこのカードの感触はよく、採用してから対赤アグロの勝率はかなり良いです。1マナなので出しながら《塔の点火》を構えられますし、《雇われ爪》なら《巨怪の怒り》でも突破されず、《僧院の速槍》《心火の英雄》は《巨怪の怒り》以外ならガッチリガード。《叫ぶ宿敵》も出したターンは完全ガードなので実質速攻を無効化しているようなものです。 《フラッドピットの溺れさせ》 こちらも対赤アグロ用です。《神盾の海亀》を突破する手段として《巨怪の怒り》が最も簡単で、こちらは《塔の点火》を構えていれば万全なのですが、中々上手くはいきません。そこで《フラッドピットの溺れさせ》で《巨怪の怒り》が付いたクリーチャーを寝かせるのが非常に効果的。《この町は狭すぎる》で回収して再利用できるのも良いポイント。ちなみに《フラッドピットの溺れさせ》を起動して能力スタックで《この町は狭すぎる》で《フラッドピットの溺れさせ》を手札に戻すと、相手のクリーチャーだけライブラリーに戻ります。 《脚当ての陣形》 《力線の束縛》《世話人の才能》《ドロスの魔神》《不浄な別室》などなど、エンチャントや飛行が今のスタンダードにはたくさん。それらすべてに対処しつつ、手札で腐っていればドローに変えられるので、とにかく便利なカードです。どのマッチでもベストなサイドカードではないかもしれませんが、ベターあるいはグッドなサイドカード。 《軽蔑的な一撃》 打ち消しはこの2枚だけです。《否認》との選択ですが、《否認》の方が優れているのは《豆の木をのぼれ》と《世話人の才能》を消した瞬間だけだと思っています。ズアードメインの各種大主には《軽蔑的な一撃》しか当たりませんし、《太陽降下》は《軽蔑的な一撃》でも触れます。《終末の加虐者》を消せるのもちょっと嬉しいですね。どちらか採用するなら《軽蔑的な一撃》推奨です。ミラーマッチでは《否認》が欲しいですが。 《轟く機知、ラル》 黒いミッドレンジやコントロール全般にサイドインします。見た目以上にとにかく固く、プラスでトークンを出して《塔の点火》を構えるだけで鉄壁。ディミーアやゴルガリに対しては難攻不落のフィニッシャーとなります。使っていて非常に感触が良く、2枚にしてからは1度も減らしたいと思いませんでした。コンボを決められないように《稲妻罠の教練者》やカワウソトークンを狙われがちなので、《轟く機知、ラル》を出すとかなり嫌な顔をされます。 採用しなかったカード 《手練》 《薮打ち》《手練》型のリストも多いですし、僕も実際試しました。現在のリストは土地27に土地サーチ7とかなりマナフラッドしやすいので、《手練》を入れることでそれをある程度解消できます。それでもいくつかの理由により、僕は《手練》ではなく《花粉の分析》を採用しています。最も大きいのはこのデッキがマナを無限に欲している点です。《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》のレベルアップだけで6マナかかり、そこから《嵐追いの才能》の出し直しなども含めると、とにかくこのデッキはマナを非常に使います。そのためセットランドできることなら毎ターンし続けたいのです。マナフラッドは嫌ですが、土地を置くメリット自体はかなりあるのです。《花粉の分析》が《咆哮する焼炉+蒸気サウナ》を証拠収集することでしっかりリソースに代わってくれるのも、《花粉の分析》にポジティブな要素です。《永劫の活力》か《渓間の洪水呼び》の足らない方をサーチしてコンボを決めたり、マナフラッドしていれば《稲妻罠の教練者》《探索するドルイド》にアクセスできます。もう1つ重要なポイントは、《薮打ち》《花粉の分析》がどちらも緑のカードであることです。緑マナ1枚さえ初手にあれば、この7枚を引くだけでゲームを開始できるのです。《手練》は青いので《銅線の地溝》や《森》でキープすることはできません。初手に土地が1枚の手札はそれなりに来ますし、当然土地が少ない初手はブン回る確率が高い。それをキープできるかどうかは大きな違いがあります。以上の理由で、僕は《薮打ち》《花粉の分析》が好みです。 《手練》が欲しい瞬間もあります。やはりフラッドしやすい構成にはなっていますからね。 《叫ぶ宿敵》 対赤アグロにおける《フラッドピットの溺れさせ》との選択でしたが、《神盾の海亀》と相性を考えて《フラッドピットの溺れさせ》を優先しました。既にお話したように《巨怪の怒り》で《神盾の海亀》を突破させて《フラッドピットの溺れさせ》で寝かせて《この町は狭すぎる》の動きが非常に強かったためです。 《叫ぶ宿敵》はダメージレースで強く、また3ターン目に出した際はブロッカーとしてかなり優秀です。1マナ域をブロックしつつ、横のクリーチャーも破壊できる可能性があるので、1対2交換が取りやすいのです。 《神盾の海亀》ではダメージが稼げないため、使うなら《フラッドピットの溺れさせ》と《叫ぶ宿敵》の組み合わせでしっかり殴れるプランを取った方が良いですね。 《解剖道具》 5ターン目に出ればかなり強いカードなのですが、《叫ぶ宿敵》の能力でライフゲインできなくなった瞬間に引きたくないカード筆頭になるので、リスクが高いと感じました。《稲妻波》《ボロスの魔除け》で本体を狙うボロスバーンが流行すれば《解剖道具》を採用するかもしれませんが、現状はライフを回復するカードはサイドボードに採用しない方向にしています。《神盾の海亀》で《叫ぶ宿敵》を止める以上、《叫ぶ宿敵》が場に残りやすいというのもマイナスでした。 回し方 《嵐追いの才能》が初手にあれば展開して、相手の盤面の脅威を除去しつつ攻撃し、ライフを削っていきます。《永劫の活力》を出しつつ除去や《この町は狭すぎる》で干渉すると、そこから行動回数が増えるので、徐々に戦場を支配できるようになります。《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》レベル2がループし始めると、相手の動きは制限され、こちらはカワウソが増えていくので、相手のライフがなくなっていきます。 そのまま脅威を取り除いてカワウソビートダウンを完遂するもよし、どこかで《渓間の洪水呼び》を引けばコンボが決まってゲームセットです。冒頭でお話しした通り、このデッキは基本的にはボードコントロールです。《塔の点火》《咆哮する焼炉》《この町は狭すぎる》を使って盤面を鎮静化させ、そこから《嵐追いの才能》+《この町は狭すぎる》でループで相手の攻め手を完全に潰し、最終的にコンボで勝つのです。だから僕はティムールカワウソをコントロールデッキと呼んでいます。《渓間の洪水呼び》《永劫の活力》《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》の無限コンボについてはしっかりとまずは頭に入れておきましょう。カワウソ(とネズミ)が3体いる場合は、《嵐追いの才能》と2マナ以下のパーマネントカード(《渓間の洪水呼び》を誘発させられればなんでもOK)があればコンボが決まります。 3体をタップして青を3つ出し、その内2マナで《この町は狭すぎる》を唱えて《嵐追いの才能》と《咆哮する焼炉》を回収。カワウソたちからマナを出して4マナになり、《嵐追いの才能》を出し直して3マナ+カワウソたちの3マナ。そこから2マナを使って《咆哮する焼炉》を唱えると4マナ+カワウソたちから3マナが出るので、浮いた4マナでレベルアップし、カワウソたちを寝かせて《この町は狭すぎる》で《嵐追いの才能》と《咆哮する焼炉》を戻せるので無限ループです。戻せるカードが《嵐追いの才能》しかなければカワウソたちは4体必要になります。一見ハードルが高そうに見えますが、実際無限パンプが必要な場面はそう多くありません。たとえばカワウソ3体と《嵐追いの才能》1枚しかない状態では、1マナずつ減っていく簡易ループになってしまいます。が、実際はそれでも十分です。ループ1回で《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》で2回スペルを唱えているので、《渓間の洪水呼び》で全体が+2修正されつつ、相手のブロッカーも排除できます。3ループすれば3体のカワウソが+6/+6修正を受けますから、それだけで致死量のダメージを叩き出せるはずです。今最大で何点出せるのか?この計算を素早くできるようにするために、カワウソ算をいくつか覚えておきましょう。 カワウソ算 マナを出せるカワウソとネズミの数ー呪文のマナ=余るマナ まずは《渓間の洪水呼び》《永劫の活力》が揃った時にどれだけマナが出るかを俊二に見極めましょう。カワウソトークンと《渓間の洪水呼び》だけの状態でも、《嵐追いの才能》が2枚、《この町は狭すぎる》、土地が4枚戦場にあれば、《渓間の洪水呼び》を合計で9回誘発させることができるので、カワウソトークンのパワーが19になります。カワウソ2体-2マナ《この町は狭すぎる》=0。カワウソ2体-1マナ《嵐追いの才能》=1。《嵐追いの才能》は2回キャストされるので2マナ浮き、そこから《嵐追いの才能》をレベルアップさせるとループが開始。このレベルアップには4マナが必要なので、実質2マナでレベルアップできるようになります。この例ならば2体のカワウソと土地4枚で6マナあるので、3回のレベルアップで合計9回のスペルを唱えられることができ、果敢と《渓間の洪水呼び》により18回修正を受けてトークンのパワーは19になります。 《嵐追いの才能》レベルアップ+《この町は狭すぎる》 4+2+1=7マナ。《嵐追いの才能》のレベルアップで《この町は狭すぎる》を回収し、《この町は狭すぎる》を打って《嵐追いの才能》を再キャストするのにかかるマナです。この7マナが揃うと毎ターンカワウソが増えながら相手のパーマネントに触れるようになります。カワウソが増えていくのでどんどん使えるマナが増えてきて、やがてループしながらカワウソが殴り始めてゲームが終わります。 《渓間の洪水呼び》2体 これは単純に《渓間の洪水呼び》が2回誘発するだけなので簡単です。2体の《渓間の洪水呼び》だけで2×2の4マナで、実質カワウソ4体扱いになるのでほぼ勝ちです。 計算の応用 ここまでの計算を応用することで、今無限が決まる状態なのかが簡単にわかります。マナが出るカワウソ・ネズミの数ー呪文これから唱える呪文のマナ=余るマナを使い、手札と場にあるカードで何マナ増えるのかを計算します。その増えるマナが4マナ以上ならば、《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》によるループが確定します。例:カワウソの数が3体、《この町は狭すぎる》、《嵐追いの才能》、《咆哮する焼炉》 3-2=1(《この町は狭すぎる》で増えるマナ)3-1=2(《嵐追いの才能》で増えるマナ)3-2=1(《咆哮する焼炉》で増えるマナ)合計で4マナ増えるので、これは無限ループです。実際にやってみましょう。1.カワウソ3体を寝かせて3マナ、《この町は狭すぎる》で《嵐追いの才能》と《咆哮する焼炉》をバウンス。残りは1マナ(カワウソ3体がアンタップ)。2.カワウソ3体からマナを出して4マナから《嵐追いの才能》。残りは3マナ(カワウソ3体がアンタップ)。3.カワウソ3体からマナを出して6マナから《咆哮する焼炉》。残りは4マナ(カワウソ3体がアンタップ)。4.残った4マナで《嵐追いの才能》をレベルアップ。1に戻って無限ループ。非常に簡単に無限が決まるかわかりますね。 マリガン 絶対的なキープ基準となるカードは《稲妻罠の教練者》《嵐追いの才能》の2種。他のカードが全部土地などでない限りはまずキープ。土地が2枚以上(《薮打ち》《花粉の分析》を含む)あって《稲妻罠の教練者》か《嵐追いの才能》があればまず始めるべきです。 《この町は狭すぎる》《豆の木をのぼれ》《永劫の活力》《咆哮する焼炉》《塔の点火》《焦熱の竜火》は準キープカード。《この町は狭すぎる》は単品でキープした場合、早いターンに使用できない可能性があります。3ターン目に2マナで打てる算段があるならキープできます。《咆哮する焼炉》や《豆の木をのぼれ》など、2ターン目に置けるパーマネントカードがあるかが重要です。一度引いて墓地に落としておけば後引きの《嵐追いの才能》で拾えるので、最初の1枚目を引いておくことは大事です。比較的キープしたいカードではあります。《豆の木をのぼれ》《咆哮する焼炉》の2種は、他のカードによりますね。《豆の木をのぼれ》の場合、《咆哮する焼炉》《塔の点火》《焦熱の竜火》《この町は狭すぎる》などの干渉手段と一緒ならキープしたいところです。《渓間の洪水呼び》《トーテンタンズの歌》など干渉手段に乏しい場合はマリガンも検討します。《永劫の活力》はクリーチャーがいないと3ターン目をただパスするだけになってしまいますが、逆に手札にクリーチャーがいる場合は積極的にキープしたいカードです。除去と《永劫の活力》だけの初手をキープするのはそれなりにリスクがありますが、その除去が《咆哮する焼炉》であればキープできます。《咆哮する焼炉》→《永劫の活力》→《蒸気サウナ》とゲームを進められますからね。悩ましいのは《塔の点火》《この町は狭すぎる》《永劫の活力》土地4といった初手が来た場合です。この土地が《花粉の分析》か《薮打ち》ならばキープ、土地ならばマリガンぐらいです。土地サーチカードをスペルとして使うことを前提にすればギリギリOKです。《この町は狭すぎる》が《焦熱の竜火》ならマリガンですね。《トーテンタンズの歌》は初手にあまり必要ないカードですが、《永劫の活力》とセットの時は強力です。X=2か3の《トーテンタンズの歌》から次のターンに《永劫の活力》で一気に展開したり、《渓間の洪水呼び》も展開して無限もあります。単体では非常に弱いですが、《永劫の活力》とセットの時だけは点数アップ。2枚が揃っていればキープしたくなります。キープに全く関わらないのは《渓間の洪水呼び》です。初手にあっても基本何もしないので、むしろ引きたくありません。《渓間の洪水呼び》が複数枚ある初手は《嵐追いの才能》《塔の点火》《この町は狭すぎる》など他の手札がかなり良くない限りはマリガンすることになります。《薮打ち》《花粉の分析》は初手にあれば土地換算なので、土地としてキープorマリガンに関わってきます。ただし上記のような絶妙な手札の時に4枚目の土地が《薮打ち》ならキープできる可能性もあります。《花粉の分析》は《咆哮する焼炉》を《塔の点火》で生け贄にした時は証拠収集できるので、その2枚が一緒にあるのであれば点数アップ。 TIPS 《トーテンタンズの歌》の速攻はターン終了時まで 《トーテンタンズの歌》で付与される速攻はターン終了時までです。そのため、このターンに出したクリーチャーは相手のターンになると《永劫の活力》でマナを出せなくなります。 そのため、何かを構えたい場合は、とりあえず全力で《トーテンタンズの歌》を打つのはやめましょう。最低限のマナを残して《トーテンタンズの歌》をキャストし、そのネズミで追加アクションを取ることをオススメします。 《永劫の活力》の能力でマナを出す際は一考する 《永劫の活力》が出ている時はクリーチャーからもマナが出ますが、まずは土地を使ってスペルを唱えると思います。クリーチャーで攻撃する可能性がありますからね。しかし、ターン終了時にクリーチャーだけを立たせてマナを構えたら、除去を喰らってマナが使えなくなり、相手に致命的なダメージを与えられる……なんてケースも考えられます。確実に《この町は狭すぎる》を打ちたいのなら土地を2枚立ててターンを返すことをオススメします。そのクリーチャーたちでブロックする予定がないなら尚更です。 《花粉の分析》と《薮打ち》の優先順位 初手に《花粉の分析》と《薮打ち》がある時、どっちで土地サーチを行うか。基本は証拠収集達成が難しい《花粉の分析》から使います。相手が赤単アグロなどの場合、《薮打ち》は除去として使い道がありますからね。ただし、《咆哮する焼炉》《塔の点火》のセットが揃っている場合は、《薮打ち》から使います。この組み合わせなら証拠収集できますし、そもそも除去が2枚あるので、《薮打ち》を格闘として使用する必要がないからです。 《渓間の洪水呼び》を出すのは1マナを構えている時 赤い相手は《噴出の稲妻》、黒には《切り崩し》があります。どちらもティムールカワウソ相手には腐りがちなカードなので、《渓間の洪水呼び》には絶対打たせたくありません。《渓間の洪水呼び》は非クリーチャー呪文が瞬速を持つので、《花粉の分析》などもインスタントでキャストできます。しっかり除去はかわせるようにしましょう。 協約で残す最優先カードは《嵐追いの才能》 《塔の点火》の協約に困ることも多々ありますが、とにかく一番協約したくないのは《嵐追いの才能》です。最終的に《この町は狭すぎる》でループを決めるために必要ですからね。《豆の木をのぼれ》やカワウソトークンから生け贄にしましょう。逆に既に複数枚の《嵐追いの才能》が置いてあるなら、1枚は気軽に協約してしまいます。2枚目以降はさほど必要ありません。 サイドボーディングガイド 対赤アグロ(赤単、グルール、ボロスなど) +4《神盾の海亀》ー3《フラッドピットの溺れさせ》 ー1《探索するドルイド》ー2《トーテンタンズの歌》ー3《豆の木をのぼれ》ー1《渓間の洪水呼び》メイン・サイドいずれもいかに《この町は狭すぎる》ループに持ち込めるかにかかっています。《叫ぶ宿敵》は強力ですが、《この町は狭すぎる》の前では無力なので、一度ハメる準備ができれば脅威ではなくなります。火力以外の方法でライフが削られなければOKなので、《噴出の稲妻》圏外になるようにライフを守りましょう。《渓間の洪水呼び》を相手は処理しづらいので、1マナだけ構えてターンを終了してきた時は特にチャンスです。協約の《塔の点火》以外で処理されないので、《巨怪の怒り》の役割トークンがついてなければ安心して出せます。適当なタイミングで出して焼かれるのは損です。貴重なまくりカードなので大事にしてください。2枚かぶった時に敗北の要因となりやすいので1枚はサイドアウトします。《神盾の海亀》を出すと相手のクリーチャーはかなり止まります。突破するには《巨怪の怒り》などが必要になりますが、《塔の点火》を構えているとなかなか相手も突破できないので、少しのマナを立てながらゲームを進めましょう。突破されたとしても、そのクリーチャーを《フラッドピットの溺れさせ》で寝かせて、《この町は狭すぎる》で拾って再度唱えることで無効化+更なる時間稼ぎができます。《神盾の海亀》で序盤のライフを守り、《叫ぶ宿敵》に殴られ続けないようにし、マナを貯めて《この町は狭すぎる》ループ。これを心掛けてプレイします。《豆の木をのぼれ》は抜いていますが《蒸気サウナ》でしっかりリソースを取れるのでさほど問題にはなりません。 対ディミーアミッドレンジ/ゴルガリミッドレンジ +2《轟く機知、ラル》ー1《渓間の洪水呼び》ー1《探索するドルイド》   有利なマッチアップです。《悪夢滅ぼし、魁渡》を出されても《この町は狭すぎる》でバウンスするだけで良いですし、こちらの《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》ループにほとんど干渉できません。このマッチでもコントロールとして立ち振る舞うことが多く、序盤の相手の攻め手をしっかりさばきつつ、《永劫の好奇心》辺りに《この町は狭すぎる》を当ててテンポを取り、徐々にイニシアチブを握っていきます。《トーテンタンズの歌》はかなり強力です。相手には全体除去がないのでネズミが残りやすく、《永劫の活力》のバリューが高くなります。注意しなければならないのは《フェアリーの黒幕》。後手2ターン目に《豆の木をのぼれ》を出さない方が良いですね。1ターン遅らせて《塔の点火》を構えましょう。《分派の説教者》を焼けるカードが《咆哮する焼炉》しかないので、序盤のクリーチャーを焼く際は一考の余地があります。 たとえば後手2ターン目に相手の《遠眼鏡のセイレーン》を焼くかどうかは検討しましょう。手札に《この町は狭すぎる》がある場合はバウンスの種を作れる上に《咆哮する焼炉》が手札に戻るので焼いてしまいますが、《塔の点火》がある場合はそちらを優先した方が良いかもしれません。クリーチャーがいるならまずそちらから展開しましょう。 対白単コントロール +4《脚当ての陣形》+2《轟く機知、ラル》 ー3《咆哮する焼炉》ー2《塔の点火》ー1《焦熱の竜火》   非常に有利なマッチアップ。相手のデッキは遅く、除去を連打してくるだけなので、こちらはゆっくりとコンボパーツを集めていけばOKです。《稲妻罠の教練者》も新生で出してどんどんリソースを稼いでいきましょう。《永劫の活力》が《軍備放棄》で追放されやすいので、《塔の点火》などで除去できない時に気軽に出すのはNGです。出したら必ずエンチャントになれるようにしましょう。エンチャントになった《永劫の活力》を《失せろ》される分にはOKです。インスタントタイミングの全体除去は飛んでこないので、大きい《トーテンタンズの歌》+《渓間の洪水呼び》などで一撃で決まるパターンもあります。サイド後もほとんどゲームは変わりません。《轟く機知、ラル》という勝ち手段が増えて更にゲームは楽になります。《塔の点火》は《永劫の無垢》に触れて《永劫の活力》を逃がせるカードなので少し残します。 対ズアードメイン +4《脚当ての陣形》+2《軽蔑的な一撃》 ー4《塔の点火》ー1《焦熱の竜火》ー1《渓間の洪水呼び》   有利なマッチアップですが、《豆の木をのぼれ》を設置されるとリソースが尽きずに《永遠の策謀家、ズアー》で大主をクリーチャー化しつつ《力線の束縛》連打のような動きをされるので、白単よりは厳しい印象。《豆の木をのぼれ》は設置されたら《脚当ての陣形》で対処してOKです。1枚アドバンテージを取られるのは癪ですが、放置したら1000枚引かれます。 《永遠の策謀家、ズアー》は5ターン目に出てくることが多く、大主を即クリーチャー化してきます。クリーチャーになった大主は呪禁がつきますが、その前ならバウンスは効くので、そのタイミングで《この町は狭すぎる》で戻し、返しのターンの《咆哮する焼炉》で倒すのが理想的な動きです。 対アゾリウス眼魔 +4《脚当ての陣形》+2《轟く機知、ラル》 ー1《焦熱の竜火》ー3《咆哮する焼炉》ー2《塔の点火》   そこそこ有利なマッチアップです。《永劫の活力》《渓間の洪水呼び》がとにかく触られにくいので、好き勝手に動くことができるためです。負け筋である速いターンの《忌まわしき眼魔》にも《この町は狭すぎる》が効果的。有利なので墓地対策を抜いたほどです。《一時的封鎖》が入ってくる他、《傲慢なジン》と《忌まわしき眼魔》に触れるので《脚当ての陣形》は非常に強力です。 《僧院の導師》をサイドインしてくるなら《塔の点火》を後1枚ほど残したいところです。その場合は《トーテンタンズの歌》を減らしましょう。 対ティムールカワウソ +2《轟く機知、ラル》+2《軽蔑的な一撃》 ー3《咆哮する焼炉》   《永劫の活力》を着地させた方が勝ちやすいマッチアップ。《塔の点火》で処理されないようにこちらもしっかり《塔の点火》を構えましょう。ありがちなのが、3ターン目に《稲妻罠の教練者》かカワウソトークンがいて手札に《塔の点火》もある状態で《永劫の活力》。これに対してスタックで場のクリーチャーを焼かれ、その後相手のターンにもう1枚の追放除去を喰らうパターンです。これはできれば回避したいので、他のクリーチャーを出せるならもう1ターン回し打ちしたいところです。《トーテンタンズの歌》もミラーマッチではかなり重要なカード。このデッキは《永劫の活力》を打ち消せないですし、追放除去も《塔の点火》でかわされるので、《トーテンタンズの歌》でネズミを並べられて次のターンに《永劫の活力》を展開されると、相手だけアクション数が倍になります。ミラーマッチが増えるなら3枚目を検討しても良いレベル。サイド後は最も弱いソーサリー除去を抜き、硬くて場持ちが良い《轟く機知、ラル》と、X=3以上の《トーテンタンズの歌》と《この町は狭すぎる》を消せる《軽蔑的な一撃》をサイドイン。《轟く機知、ラル》は最初半信半疑だったものの、《この町は狭すぎる》以外ではなかなか対処が難しく、カワウソを延々と増やす動きが強かったので、入れることをオススメします。 最後に 本日はティムールカワウソの紹介でした!回していてとても楽しいデッキで、しかも強いので、興味のある方はぜひこの記事を参考にして回してみてください。それではまた!

【今週のピックアップデッキ】キャプテンスカベンジャー/セレズニアキャット/エターナルチャント

週刊 Modern Pioneer Standard

2024.12.05

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 キャプテンスカベンジャー(スタンダード) スタンダードリーグ:5-0 By Villard_00 墓地のカードを追放してそれのキーワード能力を得るクリーチャー、《魂剥ぎ》。 パイオニアでは活躍の実績もあるこの《魂剥ぎ》と似た性能を持つのが《アーボーグの掃除屋》です。 《魂剥ぎ》が探査によって追放したクリーチャー・カードの能力を得るのに対し、《アーボーグの掃除屋》は戦場に出たり攻撃する際にカードを追放し、それの能力を獲得していきます。スタンダードではなかなか活躍できなかった《アーボーグの掃除屋》。これまではキーワード能力をたくさん持つクリーチャーに恵まれず、せいぜい《偉大なる統一者、アトラクサ》を追放する程度でした。サイズの大きい《偉大なる統一者、アトラクサ》が持つ絆魂は強力ですが、《アーボーグの掃除屋》ではその効果は微々たるものです。しかし、『ファウンデーションズ』で《魂剥ぎ》の心の友と呼ぶべき相棒が帰ってきたことで、《アーボーグの掃除屋》に確変が起きました!《原初の夜明け、ゼタルパ》によって!飛行・二段攻撃・警戒・トランプル・破壊不能とヤサイマシマシニンニクアブラカラメぐらい盛りに盛った能力の数々はさすが8マナ!二段攻撃とトランプルの2つの攻撃性能に加えて破壊不能がつくので、《アーボーグの掃除屋》が欲しかった除去耐性もしっかり付与してくれます。同じく『ファウンデーションズ』からの新カード、《薄暮の聖人、エレンダ》も除去耐性を付与してくれるカード。絆魂は《原初の夜明け、ゼタルパ》にはないので同時に追放しても無駄がなく、インスタントからの呪禁は破壊不能で防げない《苦痛ある選定》のような追放除去からも耐性が付きます。《薄暮の聖人、エレンダ》は4マナと軽く手札から出しやすいのもポイント。問題はいかにして《アーボーグの掃除屋》で《原初の夜明け、ゼタルパ》や《薄暮の聖人、エレンダ》を追放するかですが、そこもクリーチャーが役立ちます。《上げ潮、キオーラ》は2枚引いて2枚捨てるので、《アーボーグの掃除屋》を引き込みながら追放したいカードを墓地に送りこめます。《逸失への恐怖》などの捨てて引くカードと違うので嬉しいですね。同じく引いて捨てるカードの《魅惑の悪漢、マルコム》も入っており、伝説のクリーチャーが大量に入っているデッキながら、手札調整が容易なので、余った2枚目の伝説を捨てられるようになっています。そして伝説のクリーチャーが大量に入っているということは、《英雄の公有地》をの出番です。青白黒の3色デッキなのですべての色マナが出る土地は非常に助かります。……ところでお気づきでしょうか?今ご紹介したカードたちに、伝説以外の共通点があることを。ヒントを出します。《原初の夜明け、ゼタルパ》は恐竜。《上げ潮、キオーラ》はマーフォーク。《魅惑の悪漢、マルコム》は海賊。《薄暮の聖人、エレンダ》は吸血鬼です。まだわかりませんか?デッキ名を見てください。キャプテンスカベンジャー。スカベンジャーは《アーボーグの掃除屋》。それではキャプテンは?その答えは《不気味な船長の玉座》です!タップするとカードを2枚切削するこの伝説のアーティファクト。《アーボーグの掃除屋》のために墓地を肥やせる置物ですが、真の力はその下に書いてある作製です。墓地やパーマネントから該当するカードを追放することで変身できる作製。恐竜とマーフォークと海賊と吸血鬼を要求する、作製カードの中でも随一の難易度を誇るのが《不気味な船長の玉座》。そもそもこの4種のカードをデッキに入れること自体が難しいと思われていました。しかし、このデッキはその作製条件を満たせます。それではほとんどの人が見たことすらないであろう《不気味な船長の玉座》の変身後の姿を見てみましょう。あまりに強すぎる!初見で見た時は僕もびっくりしました。さすが難易度Sの作製カードなだけあり、とんでもない能力を持っています。呪禁の7/7なので対処は難しいですし、攻撃するだけで相手は土地以外のパーマネントを生け贄。更に作製で追放したクリーチャーを攻撃している状態で戦場に出せるので、《原初の夜明け、ゼタルパ》が突然殴りかかることになります!変身したら勝利と言っても過言ではないでしょう。 《アーボーグの掃除屋》だけでも面白いのにそこに更にもう1ギミックが追加されたキャプテンスカベンジャー、味わってみてください! セレズニアキャット(パイオニア) パイオニアリーグ:5-0 By Tulio_Jaudy 近年最も推されている部族の1つと言えば猫。どうやらウィザーズにも猫ファンがいるようで、可愛らしい猫や可愛くないほど強い猫がバンバン収録されています。そしてとうとうパイオニアで猫デッキが組めるほどになりました!しんがりを務めるのは《聖なる猫》と《サバンナ・ライオン》。パウパーでも実績のある《聖なる猫》は墓地に落ちても一度トークンとして蘇る、除去耐性のある猫。一方の《サバンナ・ライオン》といえば、黎明期から白アグロを支えた功労者。学生の頃に1枚2000円で買ったのは良い思い出。2マナ域からレアリティが上がります。『ファウンデーションズ』で再録された《フェリダーの仔》はこの中で唯一のコモンではあるものの、生け贄でエンチャントを割れる優れた猫。《不浄な別室》などを割る場面もあるでしょう。レアの2種は、こちらは懐かしの《羊毛鬣のライオン》。アブザンミッドレンジなどでスタンダードでも活躍していた猫で、2マナ3/3といわゆる《番狼》なだけでなく、怪物化するとサイズが上がって呪禁・破壊不能を持ちます。新カードの《空騎士の従者》は他のクリーチャーが出るたびにサイズが上がり、3つ以上のカウンターが乗ると飛行を持つ、とても攻撃的なクリーチャー。すぐに《羊毛鬣のライオン》のサイズを超えていくでしょう。3マナ圏は主役揃い!なにせここには猫を強化するロードが2匹もいるのですから。まず1匹目は《初祖牙、アラーボ》。他の猫を+1/+1しつつ、自身や他のトークンでない猫が出るたびに1/1の猫を生成するという、展開と全体強化を兼ね備えた強力な猫です。続く《猫の君主》も猫に全体強化を与え、プロテクション犬も付与します。パイオニアで使われている犬は《無私の救助犬》ぐらいしか思い浮かびませんが、《変わり谷》にブロックされないのはメリットになるかもしれませんね。《猫の君主》にはもう1つ能力があり、自分の猫がプレイヤーに戦闘ダメージを与えた時に、そのプレイヤーのアーティファクトかエンチャントを破壊することができます。どれだけたくさんの猫で殴っても1枚しか破壊できませんが、全体強化のオマケとしては悪くありません。更にこれらの猫クリーチャーはすべて3マナ以下なので《集合した中隊》を採用できます。《威厳あるカラカル》を除くすべてのクリーチャーが該当するので、32枚が当たりになります。《集合した中隊》で2枚めくるには十分な数でしょう。最後に忘れてはならないのが相棒。そう、最近ではクリーチャーが《孤独》のみのアゾリウスコントロールなどにしか入らず、文字通り孤独だった《孤児護り、カヒーラ》が使えるのです。これは猫デッキの最大の魅力と言っても良いでしょう。全体強化と警戒を付与する相棒は、デッキ外のリソースとしては破格の性能です。いつも更地に出てくる《孤児護り、カヒーラ》も、たくさんの猫に囲まれてニッコリでしょう。猫まみれになりたい方は一度お試しあれ! エターナルチャント(モダン) モダンリーグ:5-0 By Sence17 かつてセプターチャントというデッキが一世を風靡していたのをご存じでしょうか?《等時の王笏》に《オアリムの詠唱》を刻印して相手のアップキープに起動し続けるだけで、相手はインスタント以外のカードを唱えられなくなり、攻撃もできない。一部のデッキはこれだけで完封でした。エクステンデッドで大流行したこのセプターチャント。実は今のモダンでも再現可能なのですが、今回は同じコンセプトを持った別のデッキをご紹介します。このエターナルチャントもセプターチャントと同じく、無限に《オアリムの詠唱》を打つデッキ。しかし、《等時の王笏》に刻印するのではなく、毎ターン手札から唱えます。それを可能にしてくれるのが《永遠の証人》と《儚い存在》のコンボ。《永遠の証人》で《オアリムの詠唱》を拾い、相手のアップキープに唱えます。その後、《儚い存在》を《永遠の証人》を対象にキャスト。明滅した《永遠の証人》で《オアリムの詠唱》を拾いつつ、アップキープの《儚い存在》の反復で《永遠の証人》を再び明滅させ、反復後に墓地に落ちた《儚い存在》を拾えば、これで永遠に《オアリムの詠唱》を打ち続けられます。もちろんこれだけで勝てるデッキはほとんどありません。インスタント除去1枚でこのコンボは止まってしまいますからね。そこで採用されているのが《時を解す者、テフェリー》です。《時を解す者、テフェリー》がこの場に加わることで対戦相手は呪文での妨害ができなくなります。戦場に既にあるカードで対処できないなら、《天上都市、大田原》によるバウンスぐらいしか防ぎようがないでしょう。そして《時を解す者、テフェリー》《永遠の証人》とキーカードが3マナのパーマネントなので、《星界の再誕》は非常にデッキに合っています。インスタントタイミングで墓地から蘇る《時を解す者、テフェリー》は相手の想定外でしょうし、思わぬ角度からコンボが決まることがありますね。コンボが決まるまでの間の延命手段として採用されているのは《空の怒り》。しかしバントカラーでは定番の《電気放出》は使えません。そこで採用されているのが懐かしの《霊気との調和》。かつてエネルギーデッキを支えていた土地サーチがモダンでも採用されることとなりました。《ファラジの考古学者》と《稲妻罠の教練者》は共に《儚い存在》《オアリムの詠唱》などのキーカードを手札に加えつつ、《儚い存在》の対象にもできる素晴らしいカード。《孤独》も想起で唱えて《儚い存在》で一時追放して場に定着させることができますし、このデッキに入っているすべてのクリーチャーは《儚い存在》と相性抜群です。コンボが決まればあのエネルギーすらも封殺!エターナル、この名前にピンと来る方はまず使ってみましょう!

【リアニメイトディガー!】《もがく出現》で挑むプレミアム予選2連戦!

週刊 Standard

2024.12.04

Kyle Hitachi

皆さんこんにちは! 今週も「リアニメイトディガー!」も、スタンダードの『もがく出現』をディグしていきます! プレミアム予選に向けてどんな準備をしてきたかご紹介していきます! 赤アグロを克服するために 2024年11月24日に晴れる屋TC東京で行われたプレミアム予選では、ティムールカワウソと赤単アグロが権利を獲得しました。 1週間が経過しても環境に大きな変化はなく、赤アグロが多めの環境でした。サイドボードでの器用さから、緑を加えたグルールが現在最も強いデッキと言えそうです。 さて、先週私が取り組んだことは「どうやって赤単への勝率を上げるか?」です。 アプローチとしては、除去の増量とライフゲイン要素の追加が簡単だと考えました。注目したのは《執念の徳目》。墓地ではパーマネントでありながら、アドベンチャー面では2点回復しつつ、タフネス3を対処できるカードです。 最初は『ファンデーションズ』で《渇望の時》が再録されているのを見つけて興奮しましたが、実際には《叫ぶ宿敵》を対処できる上位互換《執念の徳目》が既に存在していました。悲しいです…。 これを釣り先兼除去として使い、赤単に有利に立ち回ろう!と考えました。 また、デッキ全体のテンポを良くするために、《切り崩し》をメインボードに移し、サイドボードの《強迫》を増量しました。理由は浮きがちな1マナを埋めることで動きに隙をなくしたかったからです。特に《強迫》は苦手なクロックパーミッションに対して効果的なカードなので期待。 その代わりに抜けたカードはまず《蓄え放題》。先週の記事にもあったように、キープ基準ではあるものの、《もがく出現》を拾えない点が少しイマイチ。 《苦痛ある選定》は追放能力が非常に環境にマッチしているものの、《永劫の好奇心》に触れないのが地味なマイナスポイント。赤アグロには《執念の徳目》の方が強いはずですからね。 また、活躍の機会が少なかった《戦慄衆の将軍、リリアナ》を解雇し、《脚当ての陣形》にも耐性がある《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を増量しました。   2連戦のデッキリストと結果 2024年11月30日、晴れる屋吉祥寺店で行われたプレミアム予選で使用したデッキリストと結果は以下の通りです。  グルール〇 赤単〇青白エンチャント×青白眼魔〇グルール〇版図ランプ〇ID 青白エンチャント×   5-1-1で5位通過し、SEに進出しましたが、スイスラウンドと同じ対戦相手に敗北。赤単、グルールには3-0で相性の改善を感じることができました。 グルール側に理想的な動きをされると負けてしまいますが、かなり戦えるようになっています。 続いて2024年12月1日の晴れる屋川崎店! 版図ランプ 〇版図ランプ 〇グルール ×青白エンチャント ×グルール〇青黒ギャンビット 〇   トーナメント序盤では、大きく有利のつく版図ランプを2連続で踏むという幸運に恵まれましたが、現モダン神である内藤さんのグルールに残念ながら敗北。 そして今季のプレミアム予選で4回もマッチしている青白エンチャントに昨日に続けて負けてしまい、あえなく目無し。最後までやって4-2で11位という結果でした。 権利という結果こそついてこなかったものの、戦績のアベレージは高く保てているのは評価したいポイントです。また晴れる屋川崎店ではもがく出現を使っているほかプレイヤーの姿も目撃できました。なんとTOP8に二人もいます。 皆、構築に工夫があって非常に面白かったです。 さて、日曜日のデッキリストのお話です。 吉祥寺店での負け方に引きずられてはいますが、《恐怖の潮流》が手札で浮きがちな点が気になったので思い切って全て解雇しました。《執念の徳目》を拾える点を評価して《蓄え放題》を再びメインボードへ。 またサイドボードでは《深淵の収穫者》をお試し枠で採用してみました。直前までは《忌まわしき眼魔》にしていたのですが、急に天啓が浮かんできたので電撃的に採用です。 《忌まわしき眼魔》は、青黒ミッドレンジなどに対して除去やカウンターを要求する軽いフィニッシャーとして採用しており、《深淵の収穫者》はその役割を果たせるのでは?と考えました。 結果としては普通に弱かったです。《ショック》で焼かれるスタッツには哀愁すら感じますね。 他に条件に合致するカードしては《フラッドピットの大主》などでしょうか。《フェアリーの黒幕》が誘発してしまう点以外は強そうです。また《除霊用掃除機》にスムーズに対処できる、《好奇心の神童、ケラン》も再度検討したいところです。 サイドボーディングガイド VS赤アグロ 赤単、赤単タッチ緑、グルール、ボロス。全てアグロに分類されるデッキタイプなのでまとめます。 +1《深淵の裏切り、アクロゾズ》+1《解剖器具》+2《温厚な襞背》+1《強迫》 -2《森の轟き、ルムラ》-3《忘れられた者たちの嘆き》   優秀な果敢能力持ちクリーチャーでこちらを責め立ててきます。赤単は4枚の《岩面村》を、グルールは《探索するドルイド》《脚当ての陣形》を、ボロスは《ボロスの魔除け》《幽霊による庇護》をそれぞれ強みとしています。 戦略としては相手のクリーチャーを除去しつつ出来るだけ早く《偉大なる統一者、アトラクサ》《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を戦場に着地させることになります。 負け筋は《巨怪な怒り》で急激に打点が伸びるパターン。特にこれに絡みやすい二段攻撃を付与する《多様な鼠》は必ず除去しなければなりません。 また絆魂クリーチャーを着地させても安心しないでください。《叫ぶ宿敵》《陽背骨のオオヤマネコ》でライフゲインを封じられるパターンがあります。 こちらはライフゲインできるカードを中心にサイドインします。除去が沢山ある手札が肯定されるマッチアップですが、ライフゲインなしにゲームを長引かせることはできません。 2枚引いた試合は余りにも負けますが、軽いアクションとしては悪くないので一枚だけ《強迫》をサイドインしています。《蛇皮のヴェール》やバーンスペルなどを抜くことが期待できるグルールやボロス相手には、2枚目以降のサイドインも検討して良いですね。 また、こういった相手にはとにかく早期に絆魂クリーチャーが着地することが重要です。《ゾンビ化》などのリアニメイトスペルの採用の検討や《第三の道の創設》でキープをするなど、工夫が求められます。 VSディミーアミッドレンジ 生物が主体ではあるのですが、青なのでカウンターが入っており、こちらも非常に動きにくい。 パーマネント自体は並びにくいので《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》が定着した際の勝利率は非常に高いです。《強迫》で無理やり道をこじ開けて通しましょう。 +3《強迫》+2《羅利骨灰》+2 軽量フィニッシャー -2《森の轟き、ルムラ》-3《執念の徳目》-1《苦難の収穫者》-1《忘れられた者たちの嘆き》 インスタントでクリーチャーが出てくるため、ソーサリータイミングの除去は弱めです。《ティシャーナの潮縛り》がクリティカルになる《森の轟き、ルムラ》も抜いてしまいます。 3マナ程度の軽いフィニッシャーも欲しいところです。《強迫》とくっつかせることで相手のプランをずらしたい。《除霊用掃除機》のことも考えると《忌まわしき眼魔》が最適な気はしますね。1枚ずつしか追放されないので《忌まわしき眼魔》は比較的出しやすいです。 VSティムールカワウソ 上の2つのデッキと比べるとかなり対処するのが難しいコンボデッキです。 基本的には《渓間の洪水呼び》《永劫の活力》を対処していくことになります。場合によってはビートダウンプランを取られるので、競り負けないようにこちらも《もがく出現》をキャストできる状況を作っていきましょう。 《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》が効果的なマッチではありますが、《嵐追いの才能》など複数のパーマネントを展開して護法を支払いながら《この町は狭すぎる》でバウンスされてしまいます。 +2《強迫》+2《除霊用掃除機》+2《温厚な襞背》 -3《執念の徳目》-3《忘れられた者たちの嘆き》   サイド後は墓地対策や置物対策を入れて容易にコンボを走らせないよう立ち回りましょう。 《花粉の分析》《嵐追いの才能》《永劫の活力》など墓地を使用するカードが多いので、墓地対策は効果的です。 《豆の木を登れ》《咆哮する焼炉》《嵐追いの才能》《永劫の活力》に対応できる置物破壊も欲しいところです。《羅利骨灰》《温厚な襞背》を比較した結果、今は墓地に触れる《温厚な襞背》をサイドインしています。ですがゲーム感によってはより軽い《羅利骨灰》のほうが良い可能性もあります。 VS版図ランプ 非常に有利なマッチアップですが《永遠の策謀家、ズアー》が絡んだ高速クロックを決められる展開があるので注意が必要です。あくまで相手はこちらを削り切るしかゴールがないのでライフを高く保ちつつ相手をライブラリーアウトさせる戦略を取りましょう。 +3《強迫》+3《羅利骨灰》+2《温厚な襞背》+1《向上した精霊信者、ニッサ》 -2《切り崩し》-3《執念の徳目》-2《苦々しい勝利》-1《苦難の収穫者》-1《忘れられた者たちの嘆き》   サイドボード後は相手が《安らかなる眠り》を置いてくる前提で立ち回ります。版図ランプはエンチャントを主体にしたコントロールデッキなので、置物破壊系のサイドカードが腐りにくいのが良いですね。 相手が入れてくるカードとして可能性が高いのは《ティシャーナの潮縛り》や《クチルの側衛》でしょうか。《鋼と油の夢》などで対策できますが、他のマッチで弱いので採用しづらいです。 現在の構成では、手札にあることがわかったら一度喰らいにいくしかないでしょう。   今週改善したこと 対赤アグロを改善 《執念の徳目》や《切り崩し》などでしっかり赤アグロを意識した結果、先週は4勝1敗としっかり勝ち越すことができました。 デッキ全体のバランスを調整 デッキを軽くしたり、釣るカードのクオリティを意識した結果、デッキがバランス良くなりました。 《蓄え放題》も入れ直して好感触でした。 マリガン基準 先週お話ししたキープ基準である《蓄え放題》を抜いてしまったので、単純に考えればマリガン率が高くなります。 デッキリストはいじるだけではダメです。しっかりとプレイにも反映させなければなりません。 結局《蓄え放題》を入れ直したり、切削カード以外でのキープについて考えることで、ある程度今のリストでのマリガン基準が定まりました。 今後の課題 クロックパーミッションの攻略 赤アグロは改善できたものの、アゾリウスエンチャントやアゾリウスメンターなどの打ち消しが入ったアグロデッキには負け続けており、ここの改善は必須。 マナベース やはり4色デッキゆえに事故だけで負けてしまうこともあります。 マナベースの改善は、ただ単に土地だけと睨めっこをすれば良いわけではありません。たとえば《蓄え放題》を抜けば序盤に必要な緑マナは《もがく出現》だけなので、少し緑を削れます。 サイドボードの最適化 まず取り組みたいのがこちらから。そのためにはカードプールの把握が必須! 特に『ファウンデーションズ』は「こんなカードが使えるの?」といったことも多いですからね。晴れる屋川崎店で権利を獲得したセレズニアオーラに《ひるまぬ勇気》が採用されているのを見たときは目を疑いました。 《ゾンビ化》の検討 これまでは釣ってインパクトのあるクリーチャーが《偉大なる統一者、アトラクサ》《森の轟き、ルムラ》ぐらいしかいなかったのですが、釣り先として《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》が加わったので、《ゾンビ化》を試して良いかもしれません。 前述のように赤単に強いですしね。   検討してきたカードたち これから《もがく出現》を使おうと考えている方や、既に回している方のために、これまで自分が採用を検討したカードたちを10枚ほど紹介しようと思います。 《全知》 墓地から土地を吊り上げて手札の重いカードをすべて使用できるようになる《森の轟き、ルムラ》と使用感は近いです。そのため、採用するなら《全知》か《森の轟き、ルムラ》いずれかとなるでしょう。 手札からの呪文を自由に唱えることができるようになるので、《偉大なる統一者、アトラクサ》を《忘れられた者たちの嘆き》などで使い回すことによってデッキをほとんど掘り切ることができます。つまり相手をライブラリーアウトさせるのに十分な回数の《完成された精神、ジェイス》を集めることができるのです。ですがいくつか欠点があります。 1.重すぎる 切削がかなり上手くいかなければ4ターン目までに戦場に出すことができません。また《森の轟き、ルムラ》と違って素出しをすることがほとんど不可能。 2.インスタントの対処札に弱い 《羅利骨灰》や《脚当ての陣形》、《失せろ》《力戦の束縛》などインスタントタイミングで《全知》を破壊できるカードが環境には非常に多いです。一回スペルを唱えられることは保証されていますが、少し気になる点です。 3.《森の轟き、ルムラ》の方が便利 《森の轟き、ルムラ》は軽いだけでなく、墓地から土地を出してくれるので、《不穏な浅瀬》との相性が抜群です。 《不穏な浅瀬》でライブラリーを削って《森の轟き、ルムラ》で土地を吊り上げ、たくさんの土地がある状態なら複数の《不穏な浅瀬》を起動したり、《不穏な浅瀬》を起動しながらもう1アクションなどが容易です。 ちなみに、僕は以前《死人に口無し》4枚、《石の脳》4枚を採用しているようなデッキに《不穏な浅瀬》だけで殴りきったことがあります。 《不穏な浅瀬》と相性が良い点も、《森の轟き、ルムラ》に軍配が上がりますね。 《ベイルマークの大主》 非常に優秀な切削能力に加えて5ターン後には本人が戦場に現れます! 素出しもさほど重くない良いカードなのですが、回収できるのがクリーチャーに限定されているところが歯がゆい。やはり切削しながら探したいのは《もがく出現》、もしくは土地ですからね。 《上げ潮、キオーラ》 ほとんど効果が同じ《蒸気学の学者》の頃から試していますがあまり感触はよくありません。せっかく《切り崩し》を躱せるデッキなのに当たってしまう点が微妙です。 もちろんルーティング効果はデッキに合っているので採用するならば1~2枚のカードという評価です。 《墓場波、ムルドローサ》 《溺神の信奉者、リーア》がいた頃は、1枚採用することで使えるスペルの数を飛躍的に水増しできました。《事件現場の分析者》や《見事な再生》で土地を爆発的に伸ばして、《溺神の信奉者、リーア》から《もがく出現》を連打するデッキでプレミアム予選を抜けたのは良い思い出。 そんな私が目をつけたのがこのカードです。なんと墓地のパーマネントをそれぞれの種類につきターン一回制限で使えるようになっちゃいます!さながら《ヨーグモスの意思》ですね。 ですが赤単のせいで環境のキルターンが短く、《偉大なる統一者、アトラクサ》でリソース面は確保できるためお蔵入りに… 最近のカードのインフレを感じてしまいました。 《ファラジの考古学者》 モダンの御霊シュートでも採用されている優秀な切削カードです。《もがく出現》を拾うこともできるナイスカードなのですが、《第三の道の創設》で踏み倒せないことだけが惜しいところです。 ただし、赤単相手に壁になるところは評価できます。今の環境であれば《忘れられた者たちの嘆き》《蓄え放題》を押しのけて採用する意味があるかもしれません。 僕としては《第三の道の創設》のバリューを重く見ているので採用には至りませんでした。 《洞窟探検》 《森の轟き、ルムラ》のバリューを大きく加速させるカードとして、以前のリストには採用していました。タップインが多いデッキでもあるのでマナブーストも純粋に嬉しいです。 ただし手札で浮くことが多いカードであることもあり解雇してしまいました。 採用するならば土地の枚数を26枚にして、安定して土地を伸ばせるようにしたいですね。 《緊急の検死》 証拠収集を容易く達成できるデッキなので重宝していました。 しかしサイドボードでの使いにくさから、デッキのスロットを一枠使っていることに疑念を感じてしまい、あえなく解雇。 比較的ターゲットにする頻度が高いであろう《永劫の活力》《永劫の好奇心》《永劫の無垢》を完全に対処できないのも気になってしまいますね。 《好奇心の神童、ケラン》 以前はサイドボードでゲームプランになるカードとして非常に重宝していたのですが…… 1.土地を1枚ブーストすることに価値がない2.黒系ミッドレンジへの適切なブロッカーにならない3.出来事で出す手がかり以外にドローに変えることのできるアーティファクトがない などから、採用の機会が減っていました。 ですが現在は《除霊用掃除機》という明確なヘイトカードが存在するため、採用する意義がありそうです。 《その名を言え》《三度呼ばれ、アルタナク》 《その名を言え》は土地を回収できるものの、《蓄え放題》と比べると《第三の道の創設》が拾えないことが気になってしまいます。後は単純に3枚追放して出てくる《三度呼ばれ、アルタナク》が弱すぎました。墓地対策にも弱く、スロットも圧迫するため解雇です。 《神盾の海亀》 赤単に対するキラーカード。採用して一試合目で普通に黒い除去のほうが良いことがわかりました。「このカードがあれだったら…」という思考を持っておくと試行回数を節約できます。 《否認》《軽蔑的な一撃》 サイドボードに定番の打ち消し。が、あまりおすすめはしません。 毎ターン、ソーサリータイミングでマナを使い切ることに価値があるデッキであり、インスタントタイミングで打てるカードが《錠前破りのいたずら屋》しか存在しないからです。《否認》を構えて相手が何もしてこなかった時にこちらもインスタントタイミングでカードを使えないとターンがもったいないですよね。 軽い妨害である《強迫》の方が《第三の道の創設》の第一章・第三章と噛み合うのでおすすめです。 まとめ 今週の『リアニメイトディガー!』はいかがだったでしょうか? 赤アグロが多いこの環境で勝つのは厳しいと思っていましたが、意外と勝てていて嬉しいです。 とはいえ、プレミアム予選ではまだマッチしていないディミーアミッドレンジはどう考えても鬼門。 良いサイドプランを見つけたいところです。 今週末からチャンピオンズカッププレミアム予選はお休みシーズンに入ります。が、晴れる屋様主催の『スタンダード神挑戦者決定戦』に参加する予定です。 それに向けて調整も重ねるので、来週はそれについて記事にする予定です! それではまた次回!

【週刊メタゲーム通信】赤単タッチ緑/アゾリウスアーティファクト/セレズニアオーラ

週刊 Standard ピックアップ

2024.12.03

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週は東京で行われた2つのプレミアム予選の結果から、見事権利を獲得したデッキたちを紹介していきます! 赤単タッチ緑 プレミアム予選 in 晴れる屋吉祥寺店:突破 By Yokoyama Shota まずご紹介するのは大本命の赤アグロ。最強と言われ、意識され、それでも勝つデッキは強い。現スタンダード環境で最も強いデッキと言って間違いありません。 そんな赤アグロは今最もバリエーションが豊富です。緑を抜いた純正赤単に、《蛇皮のヴェール》と《亭主の才能》を入れたグルール、更には《稲妻波》《ボロスの魔除け》で本体を狙うボロスバーン。そしてこの赤単に少しだけ緑のカードをタッチした赤単タッチ緑型です。通常の赤単タッチ緑は赤単に《探索するドルイド》と《脚当ての陣形》だけを入れるのが定番。《探索するドルイド》は追加で2枚のリソースを獲得しつつ、盤面にクリーチャーを展開できる、一粒で二度おいしい便利なクリーチャー。緑マナを引かなくても最低限の働きができるので、緑が出なくても問題ないのは魅力ですね。《脚当ての陣形》は便利なサイドボードカード。《一時的封鎖》を割ったり、《ドロスの魔神》を1枚のカードで対処できるなど、赤単ではできなかったことを成し遂げてくれるカードです。《悪夢滅ぼし、魁渡》の影響などもあり《ドロスの魔神》が減りつつある今、緑マナの安定しないこのデッキで使うのはリスクと考えての不採用なのかもしれません。赤単タッチ緑の魅力はなんといっても土地の強さです。赤緑と違い《カープルーザンの森》でダメージを受けることもなければ、《不穏な尾根》《銅線の地溝》で4マナ目がタップインになり《多様な鼠》が遅れることもありません。《山》を大量に採用できるので、《ソーンスパイアの境界》を引けば緑マナが安定して出せますし、本来であれば《山》カウントのために犠牲しがちになる《岩面村》もしっかり4枚採用できます。《岩面村》は赤いデッキにとって貴重なマナフラッド受けとなるカード。というか《岩面村》の強さが赤アグロに更に安定感をもたらしていると言ってもいいぐらいです。《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》《雇われ爪》どれを強化しても強く、土地を多少引きすぎてもまったく問題がありません。そんな強い土地がアンタップインでクリーチャーに使える赤マナを生み出せるのですから、あまりに破格。この土地を4枚採用できるだけでも、赤単、あるいは赤単タッチ緑にする価値があるぐらいです。グルールでもスロットさえ許せばぜひ4枚採用したいカードですね。メインから3枚の《塔の点火》とミラーを強く意識している一方、《魔女跡追いの激情》《抹消する稲妻》といった4点以上出る火力は一切採用しておらず、代わりに《稲妻の一撃》で本体を狙う構成となっています。 火力の選択はどこを見ているかで大きく変わりますが、ディミーア・ゴルガリなどのミッドレンジに強いのは4点以上出る火力で、それ以外に対しては本体に打てる《稲妻の一撃》の方が基本は優秀です。《塔の点火》を採用しているため、本体に当たらない火力はこれ以上入れたくなかったのかもしれません。非常にバランスの良いリストなのでどの赤アグロを使うかで迷っている方にオススメ! アゾリウスアーティファクト プレミアム予選 in 晴れる屋川崎店:突破 By Okai Toshiki 《力線の斧》の加入で近頃注目を集めているアゾリウスアーティファクト……ですが、このリストには《力線の斧》は採用されていません。初手にあれば《威厳あるバニコーン》と組み合わせて強力な装備品ですが、逆に初手になければ引きたくないカード筆頭。このデッキには不要牌を捨てて引くようなカードが入っていないので、《力線の斧》をデッキに入れるのはリスクがあります。不安定な新人に頼らなくとも、このデッキには多くの勝ち手段があります。《威厳あるバニコーン》を《マネドリ》でコピーすることで飛行の《威厳あるバニコーン》を爆誕させるのは最早定番。《ひよっこ捜査員》《遠眼鏡のセイレーン》はいつ引いても強力なリソース源。公判でも活躍する1マナクリーチャーは貴重ですね。手がかりと地図は使う以外にも用途があります。まず《内なる空の管理人》です。1マナを連打して2ターン目から《内なる空の管理人》を起動するのはこのデッキのブン周りの1つ。すぐ飛行がつき、攻防一体のアタッカーになります。地図や手がかりもタップできるので2ターン目から育てるのも実は難しくありません。アーティファクトを5/4クリーチャーに変える《生命ある象形》も地図や手がかりにつけられて便利。しかもこのカードは除去された時に発見できるので、対処されても損をしません。《泥棒隼の事件》でも空を飛ぶクロックになれますし、地図と手がかりをとことんしゃぶりつくすデッキですね。ちょっと珍しいのが《薄暮薔薇の聖遺》の採用。クリーチャーかアーティファクトを追放できる上に護法2と触られづらいアーティファクトですが、追加コストとして自分もクリーチャーかアーティファクトを生け贄に捧げなければなりません。しかし、このデッキには地図、手がかり、そしてそれらを作り出すクリーチャーたちと、生け贄に捧げるカードに窮することはないでしょう。しかも護法2がついているので、この《薄暮薔薇の聖遺》は絶好のクリーチャー化対象。《生命ある象形》《泥棒隼の事件》でクリーチャー化してしまえば、相手としては厄介なアタッカーになるのです。サイドボードからは赤殺しの《幽霊による庇護》もあり、赤単に対して有利に立ち回れそうに見えますね。 アゾリウスアーティファクト、今後本格的にメタゲームに食い込んでくることになってきそうです。 セレズニアオーラ プレミアム予選 in 晴れる屋川崎店:突破 By Iso Toshiharu 先ほど紹介した、赤アグロ殺しの《幽霊による庇護》。更にこれに特化したデッキがセレズニアオーラです。セレズニアオーラはその名の通り、クリーチャーにオーラを貼って強化するビートダウンデッキ。モダンでも同色のオーラデッキはいますが、大きく異なるのはクリーチャーの質。オーラはクリーチャーに貼るというカードの特性上、除去に対してすごく弱い。オーラが付いたクリーチャーを除去されたら、カードを2枚失ってしまいますからね。だからこそ、オーラを付ける対象となるクリーチャーは相手の除去を受けない呪禁を持っています。別名で呪禁オーラとも呼ぶぐらいです。しかし、スタンダードには上等な呪禁クリーチャーはいません。そこで白羽の矢が立ったのが《毒茸の称賛者》。1マナ1/1で、マナを支払うと+1/+1カウンターを乗せられるアウフ。強化には4マナが必要で、コモンらしい性能ですが、大事な能力である護法がついています。護法はたった2なので、3マナ支払えば《塔の点火》で焼けますが、その時にはオーラが既についているはずなので焼けません。そして《幽霊による庇護》をつければ護法は4となるので、いよいよ対処は困難でしょう。《喉首狙い》などの除去が当たる4ターン目まではオーラを付け放題というわけです。そしてサイズ差を無視する黒除去たちもメインから意識しています。そう、採録された《善意の騎士》。黒からの呪禁を持っているので、黒い相手には何も気にせずオーラをぺたぺたと貼り続けられます。《新ベナリアの守護者》は手札を捨てることで破壊不能を持つクリーチャー。オーラさえつけばすぐ火力圏外に逃げるので、除去は困難です。これらの死ににくいクリーチャーたちにつけるオーラはパイオニア級の一流たち。打点が跳ね上がる《天上の鎧》にパワー2修正とトランプルを付与する《無鉄砲》。《幽霊による庇護》の修正値が低い弱点をこの2枚が補っています。《ひるまぬ勇気》は3マナと重い代わりに絆魂・トランプルとほしいもの満載のオーラ。赤からしてみれば悪夢ですね。赤アグロだけは倒すという意思が、メインサイド含めて4枚というデッキリストから伝わってきます。サイドボードを見ていて驚いたのが《装甲アルマジロ》。このカードも護法を持っていますが、選ばれた理由は1マナ0/4という恵まれたサイズからでしょう。《叫ぶ宿敵》までも優しく受け止めてくれるサイズで、防衛はないのでオーラがつけばしっかりと暴れてくれます。サイドアウトする《善意の騎士》と入れ替えるためでしょう。オーラデッキはサイドボード後にオーラを貼る先とオーラ自体のバランスが崩れがちですが、しっかりとサイド後の60枚を意識して構築されていますね。赤アグロが憎い方にオススメのデッキです!