こんにちは。
細川 侑也(@yuyan_mtg)です。
新年、あけましておめでとうございます!
今年もGOOD GAME メディアをよろしくお願いいたします。
今回は新年から早速行われたMagic Spotlight: Foundationsの結果から、最新のスタンダードのデッキをご紹介していきます!
グルール力線
Magic Spotlight: Foundations : 優勝 By Nicholas Odenheimer
新たに2025年から始まったトーナメント、Magic Spotlight。トップ8進出者にプロツアーの権利が付与される、誰でも参加できる賞金制トーナメントと、かつてのグランプリを彷彿とさせる本大会。
その記念すべき第1回目を制したのはグルールアグロ……ですが、ただのグルールではありません。《残響の力線》を採用したタイプのグルールです。
《残響の力線》について改めておさらいしましょう。この力線は、1体だけを対象とするインスタントやソーサリーを自分が唱えた時に、それをコピーすることができます。《巨怪の怒り》や《裏の裏まで》が倍になるという、単純明快で強力なカードですね。
力線サイクルは《神聖の力線》や《虚空の力線》など、特定のデッキの対策としてサイドボードに入るものが多かったですが、《残響の力線》はデッキの軸となる力線で、しかも複数枚並べた時にしっかりと意味がある優れもの。2枚貼ればコピーも追加で1つ発生するので、初手に2枚あると片方が腐り、実質手札が1枚減ってしまう状態になりがちな他の力線とは一味違います。
しかも《残響の力線》はカードをコピーできる能力なので、自分のクリーチャーを対象に取るカードの性能が倍になります。つまり初手に《巨怪の怒り》と《裏の裏まで》を持っていれば、それが《残響の力線》によってカード4枚分の価値となるので、《残響の力線》は"リソースを失わない力線"であり、マリガンで積極的に《残響の力線》を探しにいく行為も肯定されるのです。
この強力な《残響の力線》を主軸に据えるのが、グルール力線。クリーチャーのラインナップも通常のグルールと異なっています。
まずは《騒音の悪獣》。自身の死亡時にパワー分のダメージを与えられるクリーチャーで、《心火の英雄》と違いプレイヤー以外にも飛ばせます。その代わりに雄姿で成長しないという可愛いヤツなのですが、《残響の力線》で《裏の裏まで》や《巨怪の怒り》をコピーするこのデッキでは恐ろしい1マナ域に変貌します。
《残響の力線》を着地させれば最速2ターンキルも狙えるこのデッキにとって《騒音の悪獣》は重要なパーツ。《心火の英雄》と違い能動的に生け贄にできるので、《残響の力線》を置いて1ターン目に《騒音の悪獣》、2ターン目に攻撃して《裏の裏まで》+《巨怪の怒り》で3+3+2+2+1修正が入り、パワー12+死亡時の12点で2ターンキルできます。これは《心火の英雄》にはないメリットです。
《無感情の売剣》はパイオニアではお馴染みですが、スタンダードの赤アグロからは抜けたカード。しかし《残響の力線》でクリーチャーを強化するこのデッキではしっかり活躍してくれます。《残響の力線》を置いて《心火の英雄》、2ターン目に《裏の裏まで》+出来事の《合同火葬》で24点ダメージで、《心火の英雄》による2ターンキルに貢献します。
グルール力線では《巨怪の怒り》を超えるカードになる《裏の裏まで》。修正値が高いのはもちろんのこと、魅力的なのは死亡時に戦慄予示する能力です。《残響の力線》はここまでしっかりコピーしてくれるので、《心火の英雄》や《騒音の悪獣》をとりあえず突っ込ませて《裏の裏まで》で相打ちを取り、追加のクリーチャーを2体並べられます。
珍しい採用カードは《過剰防衛》でしょうか。2マナと他のパンプアップスペルより重いですが、その効果は強力で、+3/+3修正にトランプル・呪禁・破壊不能とほしい能力全盛り!強い《蛇皮のヴェール》としても使えますし、《巨怪の怒り》のようにダメージを通す目的でも打てる、便利なスペルですね。
赤アグロ自体はかなり意識されており、どのデッキもメインから大量に除去を採用しているのが現在のスタンダード環境。除去の多いメタゲームではグルール力線は苦戦を強いられることが予想されますが、それでも圧倒的な強さを見せつけて見事Magic Spotlight: Foundationsの初代チャンピオンに輝きました。
グルール力線、そのポテンシャルを見誤っていたのかもしれません。アグロが対策されている環境でも回ってしまえばすべてを粉砕する、それほどの強さがこのグルール力線にはあるのでしょうか。そう思わざるを得ないパフォーマンスでした。
ディミーアセルフバウンス
Magic Spotlight: Foundations : 2位 By Scott McNamara
今大会で台風の目となったのはこのディミーアセルフバウンス。最近急激にその勢力を伸ばしてきているエスパーピクシーのようにバウンスシナジーを用いることからこの名前が付きました。
《孤立への恐怖》と《この町は狭すぎる》の8枚のバウンスで《嵐追いの才能》《望み無き悪夢》《逃げ場なし》を戻してアドバンテージを稼いでいくこのデッキ。エスパーカラーにすることで《養育するピクシー》《呑気な物漁り》が加わり、更にシナジーが強くなりますが、その分マナベースに大きな負担をかけてしまいます。
ディミーアなら《地底の大河》4枚で痛い土地は済みますし、《魂石の聖域》《不穏な浅瀬》とクリーチャーになる土地たちを採用でき、マナフラッドに対して耐性を作れます。色を減らしたからといってデッキパワーが落ちるわけではなありません。
エスパーとディミーアの違いでもう1つ特筆すべき点があるとすれば、《永劫の好奇心》の採用です。
エスパーは《金属海の沿岸》《闇滑りの岸》《秘密の中庭》3種のファストランドがフル投入されているため、4ターン目以降にタップインが続きがちです。しかし、ディミーアは《闇滑りの岸》のみなので、4マナ目が4ターン目に出る確率が高い。そこで《永劫の好奇心》を採用できるようになりました。
バウンスシナジーが弱くなった代わりに単体のカードパワーが高くなったのがこのディミーアセルフバウンス、という見方もできますね。
《悪夢滅ぼし、魁渡》も実はセルフバウンスカード。《孤立への恐怖》《フラッドピットの溺れさせ》《遠眼鏡のセイレーン》はどれを戻しても得をするカードで、実に忍術しがいがあります。
《呑気な物漁り》と《養育するピクシー》がないことで、戦場に出た時に効果を発揮するエンチャントのバリューは少し下がっています。そのため、《望み無き悪夢》は3枚採用にとどめられており、今後はもしかするともっと減っていったり、あるいは0枚になるかもしれません。
エスパーピクシーは《悪意ある呪詛術士》《呑気な物漁り》《養育するピクシー》によって1ターン目から殴り、《望み無き悪夢》を何度も戻してライフを削りきるビートダウンデッキでした。
一方のディミーアセルフバウンスは序盤から大量のライフを削る手段はさほどなく、除去を何度も使いまわして盤面を掌握し、《永劫の好奇心》でアドバンテージを稼いでいく、ミッドレンジ系のデッキです。そのため、《望み無き悪夢》はあまりデッキとは合っていないカードなのです。
しかも最近はエスパーピクシーの隆盛で《萎れ葉のしもべ》や《強情なベイロス》が流行り始めています。ちなみに僕も先日《望み無き悪夢》を1ターン目に出したら《萎れ葉のしもべ》を出されて卒倒しました。
ディミーアセルフバウンス自体はかなり強いデッキで、今後トーナメントで活躍していくことはほぼ間違いないと思われます。軽いカードで構成されたミッドレンジは難しい傾向にあるので、今の内から練習してみてはいかがでしょうか?
アゾリウスアグロ
Magic Spotlight: Foundations : 6位 By Zhao Li
これまでのアゾリウスアグロの定番は《生命ある象形》を採用したアーティファクト型でしたが、今回のアゾリウスアグロは純粋にクリーチャーで殴るシンプルな構成。ですが、この形が最も赤アグロとディミーアミッドレンジに強いと僕は考えています。
デッキの主軸となるのはどのアゾリウスでも共通で《威厳あるバニコーン》。土地でないパーマネントの数だけサイズが上がるので、手がかりや地図でも大きくなり、3ターン目に5/5や6/6で攻撃していくことができます。
《ひよっこ捜査員》は手がかりを、《遠眼鏡のセイレーン》は地図をせっせと作り、《マネドリ》がそれらをコピーして更にトークンを生み、《威厳あるバニコーン》を大きくしたり、《内なる空の管理人》の成長にあてていきます。個々で強いカードたちが織り成すシナジーは見ていて美しいものがありますね。
このアーティファクトたちに《生命ある象形》をつけていくのがこれまでのアゾリウスアグロでしたが、このリストでは《永劫の好奇心》を4枚採用しており、これがディミーアミッドレンジを食い続けた理由になっています。除去を打ち続けて《永劫の好奇心》でアドバンテージを取って勝利するのがでぃミーアミッドレンジなので、相手の《永劫の好奇心》がとにかく重く、除去を上回る物量を展開されてしまうとなすすべがありません。
3マナ域に採用しているクリーチャー群は《永劫の好奇心》と相性の良い、横に並べるクリーチャー。《血滾りの福音者》は自身が攻撃すると全体強化を行い、《フェイ花のいたずら》は妨害しながら飛行を2体並べられるインスタント。いずれも《永劫の好奇心》の前のターンに出すには最高のカードです。
《鋼の熾天使》は最近少し評価が落ちたカード。このリストでも2枚に押さえられています。なぜそうなってしまったかというと、現環境の黒除去が《喉首狙い》から《逃げ場なし》になったからです。
本来であれば最も強いのは《喉首狙い》で、実際これまでは最も優先されていましたが、エスパーピクシーとディミーアセルフバウンスではエンチャントを使いまわせるため、《逃げ場なし》がまず4枚、その上から《喉首狙い》が少し入るようになりました。《喉首狙い》が当たらないという除去耐性が魅力の1つだった《鋼の熾天使》は黒系に対してその価値を落としてしまったのです。
とはいえ、《威厳あるバニコーン》に絆魂をつけて攻撃する動きは対赤アグロでは強力。2枚に減りはしましたが、まだまだ活躍できます。
アゾリウスアグロは《威厳あるバニコーン》+《幽霊による庇護》というわかりやすいゴールが対赤アグロにある他、クリーチャーを並べて《永劫の好奇心》でディミーアミッドレンジにも強く、流行のデッキたちに対してある程度有利に立ち回れます。
一方、アゾリウス眼魔やジェスカイ召集などのデッキたちには不利なので、フィールドに適していればとことん勝ち、そうでなければトーナメントから早々撤退することになるでしょう。
これから数が増えていってもなんら不思議ではない、強力なデッキだと思います!《幽霊による庇護》を一番強く使うならこのデッキですね。