こんにちは。
細川 侑也(@yuyan_mtg)です。
モダンの衝撃の禁止改訂から20日ほどが経過。激動の環境も少し落ち着きつつあり、ようやく最近のメタがうっすらとではありますが可視化されてきました。
さて、禁止改訂では《一つの指輪》《色めき立つ猛竜》《湧き出る源、ジェガンサ》の3枚が禁止になりましたが、それ以上に4枚のカードが世に放たれました。
今回の記事では、その禁止解除組たちのその後の行方について迫っていきます。
《オパールのモックス》
解禁組の中で最も使われているカードは《オパールのモックス》でしょう。
《死の国からの脱出》《研磨基地》によって自分のライブラリーをすべて削るコンボデッキ、ティムールブリーチでは《モックス・アンバー》と合わせて8枚のモックスで、時にはレガシーとみまごう動きをすることもあります。
ハンマータイムも《オパールのモックス》で復権したデッキの1つ。《純鋼の聖騎士》の金属術の達成に一役買う他、《巨像の鎚》も1マナなので、今までにはできなかった動きが《オパールのモックス》で実現できます。更に《ウルザの物語》を2ターン目に起動してのビートダウンも可能になりました。
そんな《オパールのモックス》を使うデッキの中から今回ご紹介するのがこちらの8cast。
モダンリーグ: 5-0 By Anaip90
8castの名前の由来は《物読み》の英語名、Thoughtcast。その名の通り、《思考の監視者》《物読み》と《思考の監視者》の8枚の2ドロースペルが採用されていることから、そう呼ばれるようになりました。
デッキはアーティファクトを主体としたビートダウンデッキ。《オパールのモックス》《モックス・アンバー》《ミシュラのガラクタ》と0マナアーティファクトを連打し、それらを使って《湖に潜む者、エムリー》《河童の砲手》を出していきます。
そして失った手札を《思考の監視者》《物読み》で回復し、再展開しながら《金属の叱責》《否定の力》で相手の妨害を行い、そのままライフを削り切ります。
《モックス・アンバー》を使うデッキでは《知りたがりの学徒、タミヨウ》《湖に潜む者、エムリー》の伝説8枚体制が定番になってきましたね。どちらも1マナで出せる伝説のクリーチャーなので、《モックス・アンバー》の運用がしやすく便利です。《知りたがりの学徒、タミヨウ》は攻撃することでアーティファクトである手がかりを生成できるので、《オパールのモックス》の金属術も満たしてくれます。
レガシーで大活躍の《河童の砲手》はモダンでも当然猛威を振るいます。アーティファクトをタップすることでマナコストが軽くなるので、1マナ6/6となることもしばしばあり、成長速度もすさまじいので、あっという間に相手のライフを削りきってくれます。
この手のデッキでは《否定の力》は運用しづらいですが、8Castは8枚の2ドロースぺルが入っているので、手札の枯渇もそこまで問題にはなりません。
0~1マナのアーティファクトが多いので、この8 Castも2ターン目に《ウルザの物語》を起動しやすいデッキの1つ。1ターン目に《ウルザの物語》を置いて《影槍》をはじめとした1マナのアーティファクトを出し、《オパールのモックス》と他の0マナのアーティファクト、または《ダークスティールの城塞》を置くだけで2ターン目に構築物を生成できます。しかもそのサイズは4/4ですからね。それだけで勝てるマッチもあるぐらいです。
青単色で構成されているので《ダークスティールの城塞》が使えるのも8Castの魅力。《オパールのモックス》の金属術に《思考の監視者》《物読み》のコスト軽減、《河童の砲手》のパンプアップなど、ただの土地とは思えない性能です。
一見すると《溶融》に弱そうに見えるデッキですが、《思考の監視者》《河童の砲手》は《溶融》で対処することはほぼ不可能ですし、2種のモックス以外のアーティファクトはカードが引けるものばかりなので、さほどクリティカルには刺さりません。
青単ゆえに除去は入っていないので、《オークの弓使い》に泣くのはご愛嬌。あまり使われていないのも、8Castの躍進の要因かもしれませんね。
《緑の太陽の頂点》
レガシーの緑と言えば《緑の太陽の頂点》と《ガイアの揺籃の地》。それぐらいのパワーカードは当然ながらモダンでも存在感を示しています。
《ドライアドの東屋》をX=0でサーチすれば《緑の太陽の頂点》は実質《ラノワールのエルフ》。《ラノワールのエルフ》はゲーム中盤に引けば土地より弱いカードですが、《緑の太陽の頂点》は途中でドローすれば2~3マナ域の緑のクリーチャーになれます。《緑の太陽の頂点》のおかげで緑のデッキたちは確実に強くなりました。
さて、最も《緑の太陽の頂点》の恩恵を受けたデッキはやはりゴルガリヨーグモスでしょう!
モダンリーグ : 5-0 By triosk
クリーチャーを生け贄に捧げることでカードを引きながら-1/-1カウンターを置く強力なクリーチャー、《スランの医師、ヨーグモス》。このカードを中心に構成されたクリーチャーデッキがこのゴルガリヨーグモスです。
不死クリーチャーである《若き狼》は、死亡時に+1/+1カウンターが乗った状態で戦場に戻ってきます。その《若き狼》に《スランの医師、ヨーグモス》の能力を起動すると+1/+1カウンターと-1/-1カウンターが相殺し、その後《若き狼》が死亡すると再び不死で蘇ることができます。
つまり、《若き狼》が2体戦場にいると、ライフの数だけカードを引くことができるようになります。
《スランの医師、ヨーグモス》の能力で《若き狼》Aを生け贄にし、不死で場に戻ってきたAに対して、《若き狼》Bを生け贄に《スランの医師、ヨーグモス》の能力を起動します。すると《若き狼》Aの上にあるカウンターが相殺され、きれいな状態になります。きれいになった《若き狼》Aを生け贄に今度は不死で戻ってきた《若き狼》Bに《スランの医師、ヨーグモス》の能力を起動し……これでループが発生します。
後は大量に引いたカードの中から《召喚の調べ》を見つけて、《血の芸術家》をサーチするだけです。死亡時に《血の芸術家》はライフを1点ドレインできるので、《若き狼》のAとBが墓地と場を行き来している間に、相手のライフは0になります。
このコンボパーツである《若き狼》を《緑の太陽の頂点》でサーチできるようになったのは大きな進化です。以前まではこの《緑の太陽の頂点》のスロットは《下賤の教主》などのただのマナクリーチャーでしたからね。1ターン目に使えば《下賤の教主》相当でありながら、中盤以降は《若き狼》になるのですから、劇的な変化ですよね。
《緑の太陽の頂点》でのサーチ先として《毒物の侍臣、ハパチラ》も優秀です。《毒物の侍臣、ハパチラ》は以前から採用されていたカードで、《スランの医師、ヨーグモス》と強力なシナジーを形成します。
《毒物の侍臣、ハパチラ》はクリーチャーの上に-1/-1カウンターを置くたびに蛇を生成する能力を持つので、《スランの医師、ヨーグモス》の能力で-1/-1カウンターを置く→蛇を生成→その蛇を生け贄にして更に-1/-1カウンターを置くことができ、大量にカードを引けます。相手の場が全滅するまでこのループを続けられるので、相手の戦場のクリーチャーのタフネスの合計分、カードを引けると思ってください。
《若き狼》と《毒物の侍臣、ハパチラ》が揃うだけでも、先ほどの狼ループが発生します。
《若き狼》を生け贄に捧げて適当なクリーチャーに-1/-1カウンターを置き、これにより蛇が生成。《若き狼》は不死で戻り、その蛇を生け贄に《若き狼》の上に-1/-1カウンターを置くと、再び蛇が生成されつつ、《若き狼》がリフレッシュされます。
その蛇を生け贄にリフレッシュした《若き狼》にカウンターを置くと、再び蛇が出ながら《若き狼》が不死で場に戻り……また蛇を生け贄に《若き狼》がきれいな状態になるので、これでループ。ライフの分だけカードが引けるので、《血の芸術家》に繋げてゲームセットです。
《裕福な亭主》も《緑の太陽の頂点》でサーチできる1枚。《若き狼》ループ中に《裕福な亭主》があると、1回の生け贄時に必ずクリーチャーが出るので、ライフを気にせずに好きなだけカードを引けるようになります。
このようにマナ加速とコンボに起因する《緑の太陽の頂点》ですが、使い道はそれだけに留まりません。
《飢餓の潮流、グリスト》はゴルガリヨーグモスのもう1つの勝ち手段と言われるほど強力なプレインズウォーカー。ライブラリーにある時は《飢餓の潮流、グリスト》はクリーチャーなので、《緑の太陽の頂点》で場に出すことができます。ひとたび戦場に出れば、除去やクリーチャーの生成で盤面に大きな影響を与えます。
《アガサの魂の大釜》とのコンボもありますし、毎回《飢餓の潮流、グリスト》が安定して着地させられるようになったのも、《緑の太陽の頂点》を採用する大きなメリットです。
このデッキを使っていると「《スランの医師、ヨーグモス》が緑のクリーチャーだったら……」と思わずにはいられませんが、それは高望みしすぎというものですね。《緑の太陽の頂点》の強さを味わいたいならゴルガリヨーグモスで決まりです!
《信仰無き物あさり》
イゼットフェニックスやドレッジ、ホガークヴァインなどの墓地デッキを強くしすぎてしまうことから禁止されていた《信仰無き物あさり》。
解禁されてから墓地デッキの躍進が期待されていましたが、想像より元気がありません。やはり現代のモダンのデッキパワーの前には、《信仰無き物あさり》が帰ってきたとはいえ他の重要なパーツが禁止された墓地デッキは少し物足りない印象を受けます。
現段階で最も《信仰無き物あさり》が強く使えるデッキはこのジャンド独創力かもしれません。《不屈の独創力》を打ち、ライブラリーに入っている唯一のクリーチャー・カードである《残虐の執政官》を戦場に出すコンボデッキ、それがジャンド独創力です。
$5K RCQ - Modern: 6-2 By Michael Aquino
《不屈の独創力》の対象にするクリーチャーとしてドワーフを生成する《ドワーフの鉱山》を採用し、その《ドワーフの鉱山》はフェッチランドでサーチできるので、実質《不屈の独創力》1枚コンボです。
そんなジャンド独創力に《信仰無き物あさり》が組み込まれたことで、新たなブン回りパターンが誕生しました。それが1ターン目に《信仰無き物あさり》から2ターン目に《頑強》で《残虐の執政官》を吊り上げる、実質2ターンキルの動きです。
高速リアニメイトに起因するだけではないのが《信仰無き物あさり》の魅力。《レンと六番》で手札に溜まった土地を強い他のカードに変えてしまえば実質《レンと六番》はプラスで手札を増やす強力なプレインズウォーカーになり、墓地に《残虐の執政官》がない時に手札で余っている《頑強》を捨てたり、2枚目以降の《レンと六番》や《不屈の独創力》といった不必要なカードを有効牌に変えられます。
《鏡割りの寓話》と合わせて2枚捨てて2枚引くカードが8枚体制になり、かなり手札を整える力が強くなりましたね。手札破壊と除去をどちらも採用しており、相手によって不要なカードを捨てられるので、安定してどの相手とも戦うことができるようになりました。
《不屈の独創力》《頑強》で《残虐の執政官》を出すという派手なコンセプトのデッキに見えますが、どこかパイオニアのラクドスミッドレンジっぽさもあるジャンド独創力。《信仰無き物あさり》の強さを体感するにはぴったりかもしれませんね。
《欠片の双子》
モダンリーグ : 5-0 By ForThoseWhoHaveHeart
モダンで行われた最初のプロツアーを制し、その後もモダンの顔として環境を牽引し続けていた《欠片の双子》。
『モダンホライゾン』など強力なカードによって激変した現モダン環境では《欠片の双子》は最早時代遅れ……だと筆者は思っていましたが、現代でもその力は通用しています。とはいっても、環境を双子一色に染めるまでには至りませんが。
双子コンボにおいて重要なのは、《欠片の双子》の使い道です。《詐欺師の総督》につけて瞬殺コンボの《欠片の双子》ですが、《詐欺師の総督》を引いていない状態では手札で浮き続けてしまいます。
この《欠片の双子》をコンボ以外でも有効活用できるかどうかは重要です。
まずは《瞬唱の魔道士》。これはかつての双子コンボにも採用されていましたが、《欠片の双子》をつけることで毎ターンタダで墓地のカードをフラッシュバックできるようになります。
《稲妻罠の教練者》は新顔。ライブラリーの上4枚から土地かクリーチャー以外のカードを手札に加えられるようになるので、《瞬唱の魔道士》と同じく、《欠片の双子》がついてしまえば相手は放置することができなくなるでしょう。
そして《瞬唱の魔道士》《稲妻罠の教練者》《知りたがりの学徒、タミヨウ》とウィザードが3種入っているので、相性の良い《アノールの焔》もフル投入。ウィザードをコントロールしていれば5点のダメージ+2ドローの素晴らしいカードです。
この《アノールの焔》を《稲妻罠の教練者》で探し、《瞬唱の魔道士》でフラッシュバックする動きは強力で、イゼットコントロールのように立ち回れるのがこの双子コンボです。以前は《やっかい児》で殴ったり《瞬唱の魔道士》+《稲妻》でライフを詰めるのが双子の定番でしたが、現代の双子はむしろコントロールデッキになっているのです。
《対抗呪文》《呪文貫き》《拒絶の閃光》《否定の力》と大量の打ち消しで相手を妨害しつつ、失ったリソースを《アノールの焔》で回復し、隙を見て《詐欺師の総督》《欠片の双子》コンボを決める。あるいは《欠片の双子》+《稲妻罠の教練者》or《瞬唱の魔道士》で無限のリソースを獲得して勝利。この2つが現代の双子コンボの主なゲームプラン。
コントロールとコンボが一体となったデッキは今のモダンでは珍しいかもしれませんね。筆者の大好物のアーキタイプなので、早く回したくて仕方ありません!