こんにちは。
細川 侑也(@yuyan_mtg)です。
今回は、参加者929名のアメリカの地域CSから、最新スタンダード環境を分析!
アメリカ地域CS
優勝:赤単アグロ
2位:アゾリウスコントロール
3位:イゼット果敢
4位:オルゾフピクシー
5位:オルゾフデーモン
6位:赤単アグロ
7位:イゼット果敢
8位:イゼット果敢
アメリカの地域CSはイゼット果敢の使用率が40%にも上り、トップ8には3位が入賞。
使用率1位でトップ8に最多と、今回もやはり最強であることを証明しました。
今回トップ4に入賞したリストはなんと《僧院の速槍》0枚!このカードがイゼット果敢から抜けることになるとは思わなかったので、非常に衝撃を受けました。
今ではすっかり定番となった《ドレイクの孵卵者》は主にミラーマッチで輝く1枚。1/3というサイズが《噴出の稲妻》で焼かれないため場持ちがよく、警戒で攻守に渡って活躍。
更に《巨怪の怒り》でパワーが瞬間的に5になるので、プラス1回果敢を誘発させると6点が入り、一気にドレイクを2体生成できます。ドレイクは《精鋭射手団の目立ちたがり》のブロックにも役立ち、《ドレイクの孵卵者》をメインに入れてミラーを意識するリストが最近では増えてきました。
その《ドレイクの孵卵者》を入れるためにこれまで抜けていたのは《精鋭射手団の目立ちたがり》でした。ミラーマッチでは《噴出の稲妻》に焼かれてしまうことから、このスロットが《ドレイクの孵卵者》になっているリストが多かったのですが、《精鋭射手団の目立ちたがり》が抜けることでアゾリウス全知やドメインなどに対する勝率が落ちてしまいます。
その結果、《ドレイクの孵卵者》と《精鋭射手団の目立ちたがり》をどちらも少しずつ採用するのが一般的だったのですが、最初に言ったように、このリストは《僧院の速槍》が抜けています。
《僧院の速槍》は確かに1マナ域としては優秀ですが、《精鋭射手団の目立ちたがり》のように生き残った時に高い打点を叩き出すカードでもなければ、《ドレイクの孵卵者》ほどミラーマッチで攻守に渡って活躍しません。
どのマッチでも最低限の活躍をするカードではあるものの、特定のマッチアップで必ず引きたいというほどでもない。そんな評価を《僧院の速槍》に下し、デッキからすべて抜いてしまったのでしょう。
スペルも独特なカード選択が光ります。《噴出の稲妻》を1枚におさえて《塔の点火》を3枚採用し、赤単や同型を意識しています。
赤単の《心火の英雄》や、ミラーマッチは協約することで《ドレイクの孵卵者》を対処できることから、赤いアグロには《塔の点火》の方が《噴出の稲妻》より強力です。《コーリ鋼の短刀》からもトークンが出るので、イゼット果敢は赤単に比べて協約を達成しやすいデッキでもあります。
《洪水の大口へ》は2枚から3枚が定番でしたが、このリストは4枚採用となりました!
イゼット果敢対策として採用されている《一時的封鎖》に対応するために最近では多めに採用されているバウンスですが、ミラーマッチで《ドレイクの孵卵者》を戻す手段としても重宝するので、腐るマッチがほとんどない状態。4枚採用も納得ですね。
クリーチャーとスペルの両方に工夫が凝らされたイゼット果敢が見事にトップ4入賞を果たしました!
イゼット果敢が相変わらず人気の中、優勝を収めたのは赤単アグロでした。
イゼット果敢に比べてサイドボード後にメタられやすかったり、《全知》などに対して耐性が低いなどの欠点はあるものの、それでも長らくアグロ界の王者として君臨していた赤単。
パイオニアでもお馴染みの《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》のハツカネズミコンビたちは、決して《コーリ鋼の短刀》に引けを取っていません。
そんな赤単ですが、今回優勝したリストはなんとメインに《魔道士封じのトカゲ》を3枚採用!非常に思い切った採用となりました。
《魔道士封じのトカゲ》によって苦しめられるデッキはもちろんイゼット果敢。《コーリ鋼の短刀》の誘発はもちろん、各種果敢のためのキャントリップ呪文を重ねていくイゼット果敢は、《魔道士封じのトカゲ》でとにかくダメージを負います。
しかもイゼット果敢はタフネス3までなら《塔の点火》でなんとか対処できますが、4は完全に射程圏外。5マナで《噴出の稲妻》をキッカーするか、もしくは火力を2枚使うしかありません。しかも2枚の火力を使った時点で3点を受けることは確定しているので、ライフレースとアドバンテージ、両方で一気に不利になります。
これまでの赤単とイゼット果敢の戦いは熾烈なダメージレースでした。《コーリ鋼の短刀》を絡めてイゼット果敢が勝利したり、後手番では除去から《食糧補充》だったりと、イゼット果敢側に僅かではありますが分があったのですが、《魔道士封じのトカゲ》をメイン投入されたとなると、揺蕩っていた相性差は一気に赤単側に傾くことになります。
もちろん《魔道士封じのトカゲ》はイゼット果敢以外のすべてのマッチで強くありません。《全知》に一見強いカードですが、実際は大量のバウンスや《一時的封鎖》で対処されてしまうので、おそらくサイドアウトするでしょう。
それでもイゼット果敢が4割のフィールドなら、役に立ったことの方が多いでしょう。《魔道士封じのトカゲ》が役に立たないマッチでは、《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》のラインで勝ててしまうこともあるでしょうし、マリガンした際にはボトムに送れば良いのです。リスト公開で強い構成と言えるかもしれません。
見事な《魔道士封じのトカゲ》メイン構成の赤単がアメリカの地域CSを制したのでした。
そんな赤単に決勝こそ敗れはしたものの、赤アグロの海を見事に泳ぎ切り、準優勝を収めたのがアゾリウスコントロール。
ドローと除去と打ち消し。誰もがその名前から想像する古典的なコントロールデッキですが、今のアゾリウスはそのどれもが一流です。
まずは青に欠かせないドロー。《食糧補充》は説明不要の、スタンダード最強のドロースペル。《時を越えた探索》とまで言われており、3マナで5枚から好きな2枚を取れる、シンプルかつ最強のドローです。除去や土地など、その時に欲しいカード2種類が揃います。
そして《マラング川の執政》。呪文として唱えた際はインスタントの3枚ドローとまずまずですが、クリーチャーとして出した場合がとにかく強い。戦場に出た時に2体をバウンスしながら6/7が立つので、一気に盤面をひっくり返せます。フィニッシャーとして十分な風格があり、ドロースペルとしても申し分ありません。今の青いコントロールを支える1枚ですね。
全体除去は《審判の日》に《別行動》。《別行動》が3枚と多めに採用されており、《一時的封鎖》と合わせて3マナの全体除去が5枚となっています。メインから2枚採用の《領事の権限》とはコンボで、出したターンのクリーチャーと攻撃クリーチャーが全部タップ状態になるので、まとめて対処できて便利です。
《コーリ鋼の短刀》で出たトークンもタップ状態なので、速攻で殴られる心配がなくなります。
打ち消しも強化版《マナ漏出》の《喝破》に、ドローもできる《三歩先》、そして《否認》とパイオニアクラスのラインナップ。ただし環境が速いことも考慮して、枚数はそれぞれ2枚となっています。
アゾリウスコントロールは赤アグロに対してだけでなく、赤アグロをメタったデッキに強いのも特徴です。除去ばかり入れた大ぶりなコントロールはアドバンテージを取られ続け、長期戦の末、《完成化した精神、ジェイス》に敗れることになりますし、コンボデッキは打ち消し呪文の餌食となります。
打ち消しと除去で理論上どんな相手にも強いのがアゾリウスコントロールですが、現環境でもそれがしっかり証明される形となりました。
今大会でもイゼット果敢を7回、赤単アグロを1回倒しており、圧倒的な赤アグロキラーと言えるでしょう。
《強迫》と《不浄な別室》擁する黒系ミッドレンジに対してのみ、予選ラウンドでは1敗1分となっていますが、決して相性が悪いというわけではないと思われます。手札破壊以上のドロースペルが入っていますし、相手もメイン戦では《不浄な別室》以外でアドバンテージを取る手段がなく、大量の除去を腐らせることになるはずです。
現れては消えていたアゾリウスコントロールですが、今後はメタゲーム上に残ることになるでしょう。意識しなければならない強敵が、またスタンダードに現れました。