こんにちは。
細川 侑也(@yuyan_mtg)です。
今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。
セレズニア上陸(スタンダード)
スタンダードリーグ:5-0 By Oppa
《復活した精霊信者、ニッサ》《事件現場の分析者》タッグがまたスタンダードに現れた!!
土地を置くとマナが出て、2回目のセットランド時にエルフかエレメンタルを手札に加える能力を持つ《復活した精霊信者、ニッサ》は、実質的に1ターンにセットランドを2回行える《寓話の小道》などとの相性が抜群。
そして墓地に落ちた土地をまとめて吊り上げる《事件現場の分析者》はエレメンタルなので《復活した精霊信者、ニッサ》からサーチもでき、大量のマナを生み出せるため、この2枚のコンボはかつてスタンダードでティムールアナリストという名前で暴れ回っていました。
……という話をついこの間パイオニアでした気がしますね。それぐらいこのコンボは人気でファンも多いのです!
ローテーションで《記憶の氾濫》などの墓地から使えるリソースと、《斡旋屋一家の潜伏先》をはじめとした墓地に落ちる土地を失い、デッキは瓦解しましたが、今回は緑白で復活しました。
『ファウンデーションズ』で再録された《フェリダーの撤退》の力で!
久々に再録されたこのカード。というか僕はこのリストを見るまで《フェリダーの撤退》が再録されたことを知りませんでした。
土地を置くたびに2/2の猫を生み出すか、または全クリーチャーに+1/+1カウンターを乗せて警戒を付与するかを選べるこのエンチャントは、最初は猫を出していき、たくさんの猫が出たところで全体強化できるため、自己完結しているカードと言えます。
5回上陸すれば2/2を4体作ってその後に全体強化してすべて3/3……そう考えるとかなり強いカードに思えてきませんか?
今までの《復活した精霊信者、ニッサ》系デッキに比べると、この《フェリダーの撤退》がキーとなるため、かなり攻撃的なのが今回のセレズニア上陸。
とにかく《フェリダーの撤退》を引かなければ始まらないため、集めるためのパーツは多め。《蓄え放題》は《フェリダーの撤退》を拾いつつ、墓地に土地も落とせる良いカード。
再録組の《ビビアン・リード》はプラス能力で《事件現場の分析者》《復活した精霊信者、ニッサ》にアクセスできる他、マイナス能力は《忌まわしき眼魔》や《偉大なる統一者、アトラクサ》、《力線の束縛》などに触れて何かと便利。
もちろん緑でマナを使うデッキなので《ラノワールのエルフ》も入っています。2ターン目《復活した精霊信者、ニッサ》はこれまでの上陸デッキができなかったムーブですし、かなり圧力ありますね。2ターン目《復活した精霊信者、ニッサ》から3ターン目に《進化する未開地》を置いて4マナから《フェリダーの撤退》、《進化する未開地》起動でトークン生成と、すさまじい回りを見せることも。
《事件現場の分析者》と同じ能力を持つ《森の轟き、ルムラ》が1枚のみに押さえられているのは、調整の結果なのでしょうか?気持ちよくなるために3~4枚ほど個人的には入れたくなってしまいますね。
緑白なのでメインから大量に除去が入っており、サイドからは更に《エルズペスの強打》《跳ねる春、ベーザ》が増えます。赤いアグロ対策もバッチリなので、焼かれる前に土地の圧力で潰してやりましょう!!
カワウソ隆盛(パイオニア)
パイオニアリーグ:5-0 By KillerN
《渓間の洪水呼び》を出すと古参のマジックプレイヤーはひとしきりテキストを読んだ後、「《ジェスカイの隆盛》みたいなことするやつね」と言ってきます。体感5割なのでぜひ周りのおじさんで試してみてください。
そんな《渓間の洪水呼び》が本家《ジェスカイの隆盛》とタッグを組みました。
スタンダードの頃からジェスカイトークンや無限コンボなど、数多のプレイヤーに親しまれてきたエンチャント、《ジェスカイの隆盛》。最近のマジックプレイヤーに馴染みがないカードかもしれないので、簡単にコンボと一緒にご紹介しましょう。
非クリーチャー呪文を唱えるたびにクリーチャーがアンタップして+1/+1の修正を受け、更にカードを1枚引いて1枚捨てる。
クリーチャーをたくさん入れないと恩恵を受けられない能力なのに、誘発させるためには非クリーチャーを要求するため、デッキ構築がかなり難しいカードでしたが、クリーチャー生成手段をトークンにすることで、デッキ内のほとんどのカードが《ジェスカイの隆盛》を誘発させ、しかもばらまいた1/1たちが大きくなるので、スタンダード時代のジェスカイトークンは、その見た目と動きの美しさで、人気を博していました。
このデッキでは純粋な無限コンボのキーパーツとなります。《ジェスカイの隆盛》を貼った状態で、クリーチャー・《モックス・アンバー》か《トーモッドの墓所》《撤回のらせん》の3枚が揃うと無限になります。
《撤回のらせん》でクリーチャー(この場合は例として《侵攻の伝令、ローナ》)を対象に取り、その後《侵攻の伝令、ローナ》をタップして《モックス・アンバー》を手札に戻し、それを再び場に出します。すると《ジェスカイの隆盛》の能力で《侵攻の伝令、ローナ》がアンタップするので、再び《モックス・アンバー》をバウンスできます。これにより《侵攻の伝令、ローナ》が無限パワー&無限青マナ&無限ルーティングが完成します。
《トーモッドの墓所》の場合は青マナは出ませんが、ルーティングの途中で《モックス・アンバー》を引き込めばそこからは切り替えて無限に突入します。
最終的には致死量のサイズになった《侵攻の伝令、ローナ》を《トレイリアの抹消者、ローナ》に変身させればトランプルが付くので、チャンプブロックも許さずに勝利となります。
《侵攻の伝令、ローナ》以外のクリーチャーだった場合はトランプルはつきませんが、無限青マナが出せる状態を作れば勝利できます。
たとえば《稲妻罠の教練者》に《撤回のらせん》を打って無限パンプ&無限ルーターを繰り返し、道中で引いた《湖に潜む者、エムリー》か《侵攻の伝令、ローナ》をプレイ。その後《モックス・アンバー》で無限マナになります。
無限マナを作った後は手札の青と無色のカードがすべてフリースペルに変わるので、《稲妻罠の教練者》に付与された《撤回のらせん》のバウンス能力を、手札の青いカード分だけ繰り返し打つことができ、すべてのブロッカーを排除して勝利となります。
この場合は少し手札とマナが必要になる点に注意。
ちなみに《湖に潜む者、エムリー》《ジェスカイの隆盛》《トーモッドの墓所》でも無限パンプ・無限ルーターが決まります。
《湖に潜む者、エムリー》で墓地の《トーモッドの墓所》を唱えると《ジェスカイの隆盛》でアンタップするので、その後《トーモッドの墓所》を相手に使うことで再び《湖に潜む者、エムリー》で唱え……これでもやはり無限パンプ・無限ルーターが完成。《撤回のらせん》を使わない唯一のルートですね。
無限に0マナアーティファクトを墓地から出し入れできればコンボは決まるので、《トーモッドの墓所》の代わりに《モックス・アンバー》が合計2枚あっても決まります。
これまでも存在していたアーキタイプでしたが、《渓間の洪水呼び》と《稲妻罠の教練者》のカワウソたちが入り、コンボとビートダウン、両方の性能が上がりました。
《渓間の洪水呼び》は非クリーチャー呪文を唱えた際にカワウソたちがアンタップする能力を持っているので、自身や《稲妻罠の教練者》を起こすとことができます。つまり疑似的な《ジェスカイの隆盛》として機能するので、《渓間の洪水呼び》に《撤回のらせん》を打ち、《モックス・アンバー》を戻して出し直すことで無限パワーになるのです。
《ジェスカイの隆盛》と違いルーティング能力こそありませんが、もはや《渓間の洪水呼び》は追加の《ジェスカイの隆盛》と言っても過言ではありません!
そしてコンボパーツを探す目的で採用されている《稲妻罠の教練者》も当然カワウソ。《渓間の洪水呼び》によって強化されるので、このカワウソたちが少し並んだ状態で《ジェスカイの隆盛》を置くと、1回のスペルを唱えるごとに+2/+2が発生し、あっという間に致死量の打点を叩き出してくれます。
《稲妻罠の教練者》が入ったことで、これまで腐りがちだった《撤回のらせん》の運用方法が増えたのも地味に素晴らしい点です。クリーチャーがいないと使えず、しかも使用先もコンボ以外では相手のクリーチャーを戻す時間稼ぎしかできませんでしたが、《稲妻罠の教練者》でクリーチャーの数が増えただけでなく、《稲妻罠の教練者》を戻すことで再び再利用し、コンボパーツを探しにいけるようになりました。
個人的に思い入れもあり大好きなデッキなので回してみたい!
赤単エルドラージ(モダン)
モダンリーグ:5-0 By Zoza
最近のエルドラージは《まき散らす菌糸生物》でマナを伸ばして《約束された終末、エムラクール》などに繋げるグルールランプ型が主流ですが、このエルドラージは古き良き殴るタイプのエルドラージです。
トップ8に6人がエルドラージだった通称「エルドラージの冬」。《ウギンの目》が禁止となる原因を作った本トーナメントで活躍していたエルドラージに近い見た目とコンセプトなのが、今回ご紹介する赤単エルドラージ。
と言っても当時から活躍していたエルドラージは最早このデッキには2種類しか入っていません。今でも現役バリバリで働いている《難題の予見者》に、最近ではあまり見なくなった《現実を砕くもの》。この2種類が登場したのが『ゲートウォッチの誓い』で、「すごいエルドラージがやってきた!」とプレイヤーたちが沸いていたのははるか昔。彼らも今ではすっかりベテラン。
他の20枚はすべて新人です。
《運命を貪るもの》はエルドラージに欠かせないキーカード。《エルドラージの寺院》《ウギンの迷宮》でマナ加速できるかが重要なエルドラージデッキにとって、ゲーム開始時のライブラリートップ4枚を操作できるのはあまりに大きい。そのまま《ウギンの迷宮》に刻印できるので非常に嚙み合っています。
無色のクリーチャーを強化しつつ、マナ総量7以上の無色呪文のコストを軽減してくれる《終わりを告げるもの》は、《エルドラージの寺院》《ウギンの迷宮》で1ターン目から出せる強力なクリーチャー。X=5以上の《コジレックの命令》や《全ては塵》も軽くなります。
そしてレガシーではすっかりお馴染みの《まばゆい肉掻き》も殴るエルドラージなら当然4枚採用。あっという間にトークンが沸いてきてライフを削ってくるので、見た目以上に速度を出してくれます。出てくる落とし子は《終わりを告げるもの》で強化されます。
これらのエルドラージが《エルドラージの戦線破り》によって速攻で殴ってくるのも恐ろしいところ。《まばゆい肉掻き》でトークンが並べば《エルドラージの戦線破り》の修正値も上がるので、このコンビが揃うと非常に危険ですね。
この『モダンホライゾン3』産エルドラージたちと共にデッキに入った新人が《七つの死の種父》。7マナ7/7に能力を7つ持ち、護法も7点のライフを要求と、徹底した7攻めのエルドラージ。とにかくライフを削るデッキなのでこの護法は非常に重く、問答無用に対戦相手を叩き潰します。
エルドラージは《記憶への放逐》に苦しめられるデッキですが、この赤単エルドラージは《魂の洞窟》を4枚採用しているので、完全に腐らせる展開もあります。これは既存のエルドラージランプにはない魅力ですね。
エルドラージ好きには、《引き裂かれし永劫、エムラクール》や《絶え間ない飢餓、ウラモグ》などの巨大エルドラージを叩きつけるのが好きな方もいれば、《現実を砕くもの》でビートするのがたまらないというプレイヤーもいるはず!
このデッキは後者の皆様に超おすすめ!『モダンホライゾン3』でバッチリ強化された赤単エルドラージで《現実を砕くもの》をもう一度走らせてみましょう!