こんにちは。
細川 侑也(@yuyan_mtg)です。
プロツアー『霊気走破』が終わり、スタンダードのメタゲームもようやく完璧に固まってきました。
今回はプロツアーの結果から、最新のスタンダード環境を分析していきます。
プロツアー『霊気走破』の勝ち組と負け組
今回一番の勝ち組となったのは、もちろん優勝を収めたズアードメインでしょう。
トップ8に3名が駒を進めただけでなく、優勝、準優勝、トップ4と上位を総ナメ。使用率3位にも関わらず56%近い勝率が出ています。
勝率上は赤単アグロの56.5%が最高に見えますが、赤単の使用者は11名なのに対し、ズアードメインは53名が使用しています。5倍近い使用率にもかかわらずほぼ同等のウィンレートが出ているので、本トーナメント一番の勝ち組はズアードメインで間違いありません。
一番人気だったグルールアグロはトップ8入賞こそ1人でしたが、その勝率は50.8%とそこそこ。赤アグロが意識されていたのは間違いなかったので、これでも健闘した方かもしれません。
一方、使用率トップ3の中で唯一勝率50%を割ってしまったのはエスパーピクシー。トップ8に一人も進むことができず、プロツアー『霊気走破』では負け組となってしまいました。
《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》のコンボを擁するデッキはトップ8に1つも入賞しておらず、これは意外な結果です。
勝率25.9%と悲惨な数字となってしまったディミーアミッドレンジ。スタンダードでは長く存在するアーキタイプでしたが、上位デッキたちのほぼすべてに狩られる存在となってしまっていたのでしょう。
プロツアー前にはそこそこ遭遇率の高いデッキでしたが、今後は淘汰されていくことになるでしょう。プロツアーの前と後では環境はまるで変わるのです。
おそらく今週末には、ズアードメインはトップメタとなるでしょう。そのズアードメインに比較的相性の良いグルールアグロが二番手となり、エスパーピクシーが続く。そのすぐ下にジェスカイ眼魔とこのようなメタゲームが展開されていくのではないでしょうか。
もちろんこのメタはすぐに変動することになります。トップメタのズアードメインを倒すためにどんどん赤アグロが増えていき、やがて赤アグロが最多数となり、その赤アグロを倒すデッキが現れ……生き物のように変化していきます。
ズアードメインは《陽背骨のオオヤマネコ》に対するプランが現状ほぼないに等しく、これからすべての赤アグロが2枚以上採用することになるでしょう。今回トップ8に残った力線以外の2つの赤アグロは《陽背骨のオオヤマネコ》を入れています。
特に赤単は《陽背骨のオオヤマネコ》のダメージをほとんど受けないため、グルールよりもズアードメインに対して強いデッキです。グルールだと自分もダメージを喰らうので、そのせいでダメージレースに負けてしまうこともありますからね。
グルールVS赤単は、緑のメリットよりも、2色ゆえのタップイン・ダメージなどといったデメリットの方が目立ってしまうため、こちらも赤単に分があります。
というわけでズアードメインがトップメタになった後は、赤単アグロが活躍しそうな気がします。もし今週末に大きなスタンダードの大会に出るならば、赤単アグロがオススメですね。
さて、ここからはトップ8に入賞したデッキから、気になるものをピックアップして解説していきます。
ズアードメイン
プロツアー『霊気走破』 : 優勝 By Matt Nass

今大会で最も勝ち組だったズアードメインですが、リストはそれぞれ微妙に異なっています。
見事プロツアーを制したマット・ナス選手のリストはまずマナベースが特徴的です。
ズアードメインは当然《永遠の策謀家、ズアー》を採用するため、白青黒の3色を使います。その上でリソースを稼ぐ《豆の木をのぼれ》と《ホーントウッドの大主》がほぼ必須となるので4色となります。
4色ともなればタップインばかりとなり、引き次第ではまともにカードをプレイできるのが3ターン目以降となってしまい、あっという間に負けてしまうのがドメイン系のあるある。特定の色マナが出ないことも多々あります。
とにかく土地関連のトラブルに見舞われがちなドメインですが、このマット・ナス選手のリストは、ほぼ白緑の2色に《永遠の策謀家、ズアー》のための青と黒が加わった、いわば白緑タッチ青黒です。そのため、10枚の諜報土地以外はすべてがアンタップインとなっています。
《魂の洞窟》が0枚のリストは、プロツアー参加者でマット・ナス選手ただ一人だったようです。徹底的にマナベースの安定に努めた結果の優勝なのです。
さて、『霊気走破』でズアードメインが得たカードは《全損事故》。ただのコモンと侮るなかれ。このカードによってズアードメインは確実に強化されました。
対象がタップ状態だと2マナになる追放除去、《全損事故》。元のマナ総量は5なので、なんと2マナで唱えて《豆の木をのぼれ》で1ドローできるのです。脱法豆の木がまた増えました。
しかも《力線の束縛》と違い、使った後は墓地に落ちてくれるので、《花粉の分析》の証拠収集を達成するのにも役立ちます。このデッキには大主をたくさん並べた後の《永遠の策謀家、ズアー》か、もしくはフィニッシャーの《ミストムーアの大主》が欲しい瞬間が多々あります。
従来のズアードメインは《花粉の分析》の証拠収集のために《群れの渡り》などを入れていましたが、《全損事故》によって無駄なスロットを割く必要がなくなりました。
《全損事故》は追放除去なので、苦手なマッチアップだった赤系アグロに対して強力です。《心火の英雄》を除去した時にダメージを受けなくて済みますからね。《エルズペスの強打》は3点で《熾火心の挑戦者》や《心火の英雄》を倒せないケースもあり、安定した除去札とは言えません。その点も《全損事故》は完璧なのです。
白緑の2色におさめることで序盤からの動きを安定させ、苦手な赤アグロとの相性を改善させたのは、さすがの一言!
ジェスカイ眼魔
プロツアー『霊気走破』 : 6位 By 原根 健太

日本勢で唯一トップ8に駒を進めた原根選手が使用していたのがジェスカイ眼魔。75枚同じリストを使用していた行弘選手も10位入賞を果たしており、そのデッキの強さは折り紙つきです。
様々なフォーマットで活躍する《忌まわしき眼魔》を墓地に落とし、《救いの手》《再稼働》で釣り上げるのがこのデッキ。アゾリウス眼魔とコンセプトは似ていますが、大きく違うのは墓地に落とす手段です。
アゾリウスが《錠前破りのいたずら屋》や《航路の作成》などの呪文で《忌まわしき眼魔》を墓地に送り込むのに対し、ジェスカイ眼魔は《逸失への恐怖》《太陽の執事長、インティ》《蒸気核の学者》などのクリーチャーたちで《忌まわしき眼魔》を落とします。
これが何を意味するかというと、ジェスカイ眼魔の方がより攻撃的なデッキなのです。墓地に落とす手段のカードたちも対戦相手視点では放置できませんからね。《忌まわしき眼魔》を出す前からプレッシャーを与えられるのです。
しかもデッキにクリーチャーが大量に入っていることで、戦慄予示の当たりが多いのも魅力。《逸失への恐怖》を突然表にして想定外のダメージを与えられることも。
また、《救いの手》《再稼働》の対象が単純に増えているので、手札で腐ることがなくなりました。
《蒸気核の学者》《逸失への恐怖》はカードを引く能力を持っているので、相性の良い《プロフトの映像記憶》も採用されています。
特に《逸失への恐怖》との組み合わせはすさまじく、昂揚時は《プロフトの映像記憶》が2回誘発するので、一気に致死量級のダメージを与えることも可能です。
サイドボードには『霊気走破』からの新戦力、《灯を追う者、チャンドラ》を採用。
機体を生み出す能力は全体除去に強く、プラス能力でのドローとディスカードも、《忌まわしき眼魔》を捨てる手段として活用できます。
ジェスカイ眼魔はどこまで行ってもクリーチャーデッキ。後続を供給しやすいデッキとはいえ、全体除去が厳しくないわけではありません。《灯を追う者、チャンドラ》は全体除去の返しに攻撃しながら、最終的には大マイナスで勝利を目指せる、このデッキにとってぴったりの攻めるプレインズウォーカーです。
こうしてリストを見ているだけで、ジェスカイ眼魔はとても多角的な攻めを持っているデッキであることが伝わってきます。アゾリウス眼魔は墓地対策を非常に苦手としていましたが、このデッキはリアニメイトスペルの6枚以外が墓地となんら関わりがありません。《安らかなる眠り》を置かれても涼しい顔をして《プロフトの映像記憶》と《蒸気核の学者》で巨大クロックを作ってしまえるのです。
かといって墓地対策されなければ、3ターン目に《忌まわしき眼魔》+《逸失への恐怖》など、圧倒的な盤面を作られることになります。相手には対策を強要しつつ、こちらは様々なプランで戦っていけるので、サイドボード後も強いのが素晴らしいですね。
これから確実にトーナメントで見る機会が増えるデッキでしょう!
ゴルガリ切削
プロツアー『霊気走破』 : 5位 By Zevin Faust

今回のトップ8で唯一"その他"のデッキだったのがこちらのゴルガリ切削。
その名の通り、《ベイルマークの大主》《かじりつく害獣》《脱皮の世話人》でライブラリーを切削していき、墓地にカードを貯めていきます。
墓地にカードを貯めるとどんなボーナスがあるのか。その答えはクリーチャー陣にあります。
《鞘破りの群れ》《虚ろなる匪賊》《キチン質の墓地歩き》の3種はすべて、墓地にあるクリーチャー・カード1枚につきコストが1軽くなるクリーチャーたち。これらを1~2マナで展開し続けて勝利を目指します。
《やり場のない悔恨》はクリーチャーではなく除去ですが、これも同じく墓地のクリーチャーの数だけマナが軽くなり、最終的には1マナに。
そしてマナコストが軽くなるカードと相性の良いカードと言えば?もうお分かりですね、《豆の木をのぼれ》です。
《豆の木をのぼれ》がある状態でこれらの重いカードを連打していき、圧倒的な物量で相手を圧し潰すのがこのデッキなのです。
一度墓地が肥えだすとこのデッキは止まりません。1マナ6/6や1マナ5/4がドローしながら出てくるので、あの《忌まわしき眼魔》すら無視して盤面を有利にしてしまうこともあるほど。
《迷いし者の魂》はゴルガリ切削のもう一人の主役となるカード。墓地のパーマネントの数だけサイズが上がるので、このデッキでは2マナ10/11ぐらいのサイズになります。まさにぶっ壊れカード。
手札のクリーチャーを捨てて墓地を肥やしたり、兆候した《ベイルマークの大主》を生け贄にしたりなど、墓地肥やしを兼ねて出てくることが多く、序盤から活躍してくれます。《かじりつく害獣》を生け贄にして相手の《心火の英雄》を倒す、なんて場合も。
全体除去以外ではほとんど止まらないため、《審判の日》などが使える白以外のデッキにはゴルガリ切削を止めることはまずできません。墓地対策も《除霊用掃除機》のような生半可なものでは止まらない場合もあり、《安らかなる眠り》が求められます。
《審判の日》擁するズアードメインだけは少し苦手ですが、その他のデッキに対しては比較的強く、メタゲーム次第では今後暴れ回ることもありそうです。
特にエスパーピクシーなどの《この町は狭すぎる》に強いのが大きいですね。戻す対象はすべて軽いですし、フィニッシャーたちは1マナですからね。しかも《豆の木をのぼれ》でまたカードを引かれるので、本当に一瞬の足止めにしかなりません。
「グルールに対して間に合うのか?」と疑問に思う方もいるでしょうが、とにかく速いターンからサイズの大きいクリーチャーを展開してくるので、二段攻撃+《巨怪の怒り》ですら突破できなくなってしまうのです。《迷いし者の魂》の前ではトランプル・二段攻撃を付与した《心火の英雄》でも本体にほとんどダメージが入りません。
回していてとても楽しいですし、しっかり強いので、面白いデッキがお好きな方はぜひ一度試してみてください。ちなみに僕はハマりました。