【ゆうやんのデッキメモリー】青黒ネズミ

【ゆうやんのデッキメモリー】青黒ネズミ

mtg Yuyan

皆さんこんにちは。

ゆうやんのデッキメモリーは、今年でマジックを初めて21年目になる僕が、思い出に残っているデッキを紹介していく記事です。

昔を知っている方は一緒に懐かしんで、知らない方は昔話にお付き合いください!

マジックインビテーショナル

『神河物語』が発売された頃、僕にとってはマジックのカードを買うことは最早当たり前になっていた。

3000円で《金属モックス》を4枚揃えたのをきっかけに、バイト代やお小遣いをすべてカードにつぎ込むことになんら違和感がなくなっていた僕は、とあるデッキリストを見つけて衝撃を受けた。

 

それは、インビテーショナル05の大会結果だった。

 

インビテーショナルとは、かつて存在していたマジックのトーナメントの1つ。

 

プロツアーチャンピオンや人気投票で選ばれたプレイヤーなどのみが参加できる大会で、お祭りゆえに変わったフォーマットが採用されている。

 

デッキを初期ライフと手札枚数で競り落とす「デッキオークション」や、まったく同じカードプールでシールド戦を戦う「デュプリケートシールド」など、ユニークなフォーマットで著名プレイヤーたちが戦うのがインビテーショナルだ。

 

そして本大会の優勝者には、カードを1枚デザインする機会が与えられる。かの有名なボブこと《闇の腹心》や、ナドゥで活躍した《森を護る者》、フィンケルこと《影魔道士の浸透者》などはすべてインビテーショナルカードだ。

そのインビテーショナルに招待された構築の天才、ローリーさんこと藤田 剛史さん。日本人初の殿堂プレイヤーであるローリーさんが作り、インビテーショナルのスタンダードラウンドで勝ち越しをあげて準優勝に貢献したのが青黒ネズミ。

青黒ネズミ

このデッキは一言で言えばディミーアカラーのコントロールデッキ。《貪欲なるネズミ》と《騒がしいネズミ》で相手のリソースを奪い、クリーチャーを除去や打ち消しでいなしていく。

8枚のネズミたちを使い回すべく採用されているのが《ヴィダルケンの黒幕》。《騒がしいネズミ》と《ヴィダルケンの黒幕》が揃うとロックコンボが決まる。相手の手札をライブラリーの一番上に戻させて、その後《ヴィダルケンの黒幕》で《騒がしいネズミ》を回収して使い直せるのだ。これによって相手は永遠に新しいカードを引けなくなるので、盤面で勝っていなければ詰みとなる。

もちろん相手が手札を使い切ってしまった場合にはこのハンドロックは成立しない。そのためにカードを相手の手札に返す手段として《上天の呪文爆弾》《残響する真実》などのバウンスも採用されている。

とはいっても、通常このロックは《ヴィダルケンの黒幕》《騒がしいネズミ》だけでは成立しない。相手の最後の1枚が土地ならば置くだけだし、それ以外なら使うだけ。その手札のカードが唱えられない状況のみ決まる、不確実なコンボだ。

しかし、ここに《霊気の薬瓶》が加わることでロックは強固となる。相手のドロー後に《騒がしいネズミ》をインスタントタイミングで出すことで、相手の手札がインスタントでない限りは、ロックが決まるようになるのだ。

コンボパーツの一つにもなる《霊気の薬瓶》も4枚採用されており、更にそれをサーチする手段として《粗石の魔道士》もあり、しっかりとコンボが決まるようになっている。《粗石の魔道士》は《霊気の薬瓶》が不要なタイミングでは《師範の占い独楽》をサーチできるので、この頃はスタンダードのみならず、様々なフォーマットで《粗石の魔道士》は採用されていた。

上天の呪文爆弾》《残響する真実》のバウンスがネズミたちによって実質的に除去のような機能を果たしたり、ネズミを回収して使い回すこともできるのが美しく、シナジーが非常に美しかった。

が、それ以上に衝撃を受けたことがあった。

 

それは、このデッキがコモンとアンコモンだけで構築されているという事実。ローリーさんの作った青黒ネズミにはただ1枚のレアすらも採用されていなかったのだ。

 

マジックに触れて20年。パウパー以外のフォーマットで僕はレアが0枚のデッキを見たことは、この青黒ネズミを除いてただの一度もなかった。

 

どれだけ安いとされているデッキでも、土地かスペルのどちらかにレアは入っている。《嵐追いの才能》が安かった頃はエスパーピクシーがほぼアンコモンだけで構成されて安かったが、それでも《悪意ある呪詛術士》と《嵐追いの才能》、そして土地すべてがレアだ。

レア0枚のデッキなんてありえない。20年以上経った今でも、最初にコモンとアンコモンだけで構成されていると気づいた時の衝撃はまだ記憶に残っている。それも奥底に眠っている記憶ではなく、新鮮なものとして。

 

ローリーさんはどんなことを考えてこのデッキを作ったのだろうか?僕ならば、レア0枚のデッキを組んだら楽しくて仕方がなくなる。本当は一種ぐらい入れたいレアがあったとしても、それがアンコモンで代用できそうなら、少し妥協してしまいそうだ。

 

僕はマジックにおいて勝利至上主義であることは確かだが、同時に遊び心も重視している。自分が楽しいと思えないデッキは回していても楽しくない。楽しくないデッキを使っても僕は勝てない。

だから僕は、楽しさを見出したデッキしかトーナメントに持ち込まない。

 

このマインドを持つようになったのは、ローリーさんがきっかけだ。

マジック公式サイトより引用

常に環境で最も強いデッキを練習して勝つのは、僕にとってはストレスであり、もしそれしかトーナメントに勝つ方法がないのなら、既にマジックをやめていただろう。

 

最前線でプロプレイヤーとして戦いながら、常に遊び心を持っていたローリーさんが「楽しさと強さは両立する」ということを教えてくれた。だから僕はマジックを今も楽しくプレイし続けることができている。

 

青黒ネズミと出会ってちょうど今年で20年。ありがたいことに、今の僕は多くの皆さんに認知してもらっている。

 

競技マジック駆け出しの細川少年のマジック観に影響を与えた憧れのプロプレイヤー、藤田 剛史さん。誰かにとっての僕もそんな存在になれたら嬉しいと思う。今の僕の実力と実績ではおこがましい願望に過ぎないが。

 

僕に楽しさと強さの両立を教えてくれて、今ではマジックの最終目標となっている藤田 剛史さん。その名前を知るきっかけとなった青黒ネズミは、生涯忘れることのないデッキだ。

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