article

【週刊メタゲーム通信】最新のモダンは眼魔・ブリーチ・エネルギーの三強時代に突入!

週刊 ピックアップ

2025.01.14

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今回は、マジックオンラインの結果やモダンの大型大会から、最新のモダンのデッキをご紹介していきます!         紹介デッキ ディミーア眼魔 ティムールブリーチ マルドゥエネルギー ディミーア眼魔 モダンチャレンジ : 2位 By TSPJendrek 今やエネルギーと並んでモダンにおける二強の一角となったディミーア眼魔。 《致命的な一押し》《対抗呪文》で相手の攻め手を妨害しながら、《超能力蛙》《忌まわしき眼魔》を展開し、速やかに相手のライフを削りきるデッキです。 リソースを稼ぐカードは《超能力蛙》しか入っていないため、コントロールというよりはクロックパーミッションに近いデッキです。 レガシーでは禁止されてしまった《超能力蛙》。当然モダンでもその力は脅威的で、今モダンで一番強いカードと言っても過言ではありません。手札からカードを捨てるだけで強くなり、攻撃が通れば1ドロー。更には飛行を付与するオマケと、《サイカトグ》のリメイクにしてはやりすぎです。 そんな《超能力蛙》と相性の良いクリーチャーが《忌まわしき眼魔》。スタンダードやパイオニア、そしてレガシーでも姿を見かけるカードですが、最初に注目されたのはモダンでした。《忌まわしき眼魔》を墓地に送って《発掘》で釣り上げるのがこのディミーア眼魔の勝ちムーブの1つであり、《超能力蛙》で手札から墓地に送り込むことができます。 《忌まわしき眼魔》を直接ライブラリーから墓地に送る手段として《思考掃き》と《考慮》も採用されています。これらの墓地を肥やすキャントリップ呪文で手札から《忌まわしき眼魔》を出すためのコストを支払うことも可能ですし、《濁浪の執政》のキャストにもつなげられます。 探査で召喚する《濁浪の執政》と《忌まわしき眼魔》、一見すると相性の悪い2枚ですが、実はそんなことはありません。 《忌まわしき眼魔》の戦慄予示で1枚が墓地に送られ、もう1枚が場に出ます。そのカードが除去られれば墓地は増えていきますし、《忌まわしき眼魔》が生き残れば毎ターン墓地が勝手に肥えていきます。《忌まわしき眼魔》で墓地が0枚になっても瞬く間に《濁浪の執政》が出てくるのです。 《濁浪の執政》を出した後に《忌まわしき眼魔》を唱えるのは少し大変ですが。 非常に速いデッキなので、手札を増やす手段が《超能力蛙》しかないにも関わらず、《否定の力》が大量に採用されています。《超能力蛙》《忌まわしき眼魔》《濁浪の執政》は打点が非常に高く、これらを展開して次のターンに勝てるようにしつつ、《否定の力》を構えることが多いためです。 《知りたがりの学徒、タミヨウ》の採用は珍しいですが、これは追加のリソース獲得手段なのでしょう。《思考掃き》《考慮》があるので《知りたがりの学徒、タミヨウ》の変身は比較的容易です。 《発掘》が手札に余る展開もあるので、なるべく釣れる対象は多い方が良いと考えての採用なのかもしれません。《知りたがりの学徒、タミヨウ》は攻める時は強いカードではありませんが、生き残るだけで手がかりを作っていき、変身すれば大きなプレッシャーになるので、単純なパワーカードです。 以前まではエネルギーに少し不利なデッキでしたが、《湧き出る源、ジェガンサ》《一つの指輪》《色めき立つ猛竜》の3種が禁止されたことによる弱体化で、今は良い戦いができるようになりました。その上でコンボデッキにめっぽう強いため、ディミーア眼魔は今モダンで最強のデッキの一角と言われています。 《超能力蛙》から《忌まわしき眼魔》を出して《対抗呪文》を構えたり、2ターン目に《忌まわしき眼魔》を出してそこから妨害連打など、青黒とは思えない速度でゲームに勝利することもあり、回っている時のディミーア眼魔は最強という言葉が実に相応しい。 モダンの大会に出るならば必ず意識しなければならない相手です! ティムールブリーチ モダンチャレンジ : 優勝 By  Slasher21 禁止改訂によって解禁された4枚の中で最も今活躍しているのは《オパールのモックス》でしょう!ティムールブリーチをトップメタまで押し上げてくれました。 ティムールブリーチは《死の国からの脱出》と《研磨基地》を使用したコンボデッキです。 《研磨基地》はアーティファクトを生け贄にすることで、自分か相手どちらかを3枚切削できるカード。これを使って0マナのアーティファクトを生け贄にし、自分に切削3を行います。 その後、《死の国からの脱出》を唱えて、墓地から今生け贄に捧げた0マナのアーティファクトを脱出コストでキャストします。これにより《研磨基地》がアンタップし、再度そのアーティファクトを生け贄に自分に切削し、その切削した3枚を超すとにアーティファクトを再び戦場に戻し……これで自分のライブラリーを0枚にできます。 最終的にはライブラリーが0枚になり、《タッサの神託者》を脱出で唱えて勝利となります。 生け贄にするアーティファクトが《モックス・アンバー》か《オパールのモックス》であればマナがどんどん増えていくので、フルタップで《研磨基地》と《死の国からの脱出》を唱えた場合でも瞬殺コンボに移ることができ、2マナと2マナによるコンボで、《研磨基地》側は事前に先に設置しておけるので、3ターンキル可能な非常に速いコンボデッキとなっています。 3ターンキル可能…どころか3ターンキル自体は割と安定しています。《邪悪鳴らし》は《死の国からの脱出》《研磨基地》にアクセスしつつ、落とし子を用意できるので、3ターン目に4マナの状況を簡単に作ってくれるのです。 それだけでなく、《死の国からの脱出》さえあれば《研磨基地》側は墓地から脱出で唱えても問題ありません。他にも墓地を肥やす手段はあり、《研磨基地》を墓地に送るのはさほど難しくないため、実質《死の国からの脱出》1枚コンボになっているのです。 《オパールのモックス》の登場によってこのデッキは2ターンキルも現実的となりました。1ターン目に《知りたがりの学徒、タミヨウ》をキャストして《モックス・アンバー》、《オパールのモックス》と置いて2ターン目に《知りたがりの学徒、タミヨウ》が殴って手がかりを出せば、《オパールのモックス》が金属術を達成するので4マナが用意でき、《死の国からの脱出》《研磨基地》で2ターンキルです。 ティムールブリーチの軸となっている《知りたがりの学徒、タミヨウ》《湖に潜む者、エムリー》は、《モックス・アンバー》と非常に相性の良いカード。いずれも1マナで唱えられる伝説のクリーチャーなので、早いターンから《モックス・アンバー》が《Mox Sapphire》になってくれるのです。 《知りたがりの学徒、タミヨウ》は攻撃して手がかりを出すため、《オパールのモックス》の金属術も助ける素晴らしいカード。コンボパーツを集めるために手がかりを生み出し続けても良いですし、変身して大マイナスを狙う展開も可能です。サイド後は墓地対策などヘイトカードを喰らうので、変身する機会は非常に多いです。 《湖に潜む者、エムリー》も器用なカード。墓地を4枚肥やしつつ、《ミシュラのガラクタ》などを戻して手札を増やしたり、《仕組まれた爆薬》《魂標ランタン》《上天の呪文爆弾》を使いまわして相手を妨害していきます。 この2種は絶対に放置できないクリーチャーなので、相手は除去を抜くことができません。それがこのデッキと戦いづらいポイント。《死の国からの脱出》《研磨基地》のコンボにクリーチャーは絡まないので、除去を抱えてキープして、始まったコンボを指を咥えてただ見ている…なんてことも。 コンボパーツを探せる《ウルザの物語》から出るトークンがとにかく大きいのもティムールブリーチの魅力。しかも2種のモックスによって2ターン目の起動も可能ですからね。サイド後は墓地対策を無視して構築物トークンで殴っていくことも多いです。 高速コンボにも関わらず複数のゲームプランが取れるティムールブリーチ。対策必須の強デッキです。 マルドゥエネルギー モダン神挑戦者決定戦 : 優勝 By 高橋 太朗 あれ?エネルギーは禁止改訂によって消えたはずでは…? 《湧き出る源、ジェガンサ》《一つの指輪》《色めき立つ猛竜》の3種を失ってもまだ強いエネルギー!そう、展開力とリソース確保、そして相棒を失っても、エネルギーの根幹は生き残っています。『モダンホライゾン3』がいかに恐ろしいセットだったかわかりますね。 エネルギーを稼ぎながらライフを得て、最終的には自軍クリーチャーに飛行と修正を与える《魂の導き手》。 その《魂の導き手》と相性の良い、トークンをどんどん生成していく《オセロットの群れ》。 1枚で2面展開するだけでなく、《ゴブリンの砲撃》との組み合わせで一撃でライフを削り取ることもある《ナカティルの最下層民、アジャニ》。 そして《栄光の闘技場》との組み合わせも強力な《火の怒りのタイタン、フレージ》。 この4種が使える以上、エネルギーというデッキが消えることはありません。 とはいえ、《色めき立つ猛竜》の禁止により、エネルギー要素はかなり減っています。デッキリストをよく見ると《魂の導き手》以外にエネルギーと書かれたカードは1枚も採用されていません。 以前までは4枚確定だった《電気放出》。1ターン目に除去しつつ、エネルギーを少し残せるので、2ターン目に《色めき立つ猛竜》を出した時に、3マナ以上のカードを唱えることが可能でした。 《色めき立つ猛竜》がなくなった今、エネルギーを使うことそのものが減ってしまったため、エネルギーを貯めることのバリューが減ったのです。《電気放出》は1マナで《濁浪の執政》を除去できる可能性のあるカードでしたが、《超能力蛙》を倒しづらい欠点もありました。決して1マナの万能除去というわけではなく、《色めき立つ猛竜》との相性などを加味して採用されていたのです。 《電気放出》が抜けたことで、エネルギーの維持が難しく、《静牢》も自然とデッキから抜けていきました。そこで最近では《岩への繋ぎ止め》の採用率が非常に上がっています。マルドゥでは《致命的な一押し》が使えますが、ボロスでは良い1マナ除去がないので、《岩への繋ぎ止め》が4枚投入されていることも。これによりディミーア眼魔のすべてのクリーチャーに触れるようになりました。 さて、今回モダン神挑戦者決定戦を制したリストで最も特徴的なのが《ベイルマークの大主》です。 大主サイクルの中ではスタンダードで最も姿を見ない《ベイルマークの大主》ですが、このデッキでは凄まじいリソース源となります。切削しながら墓地からカードを拾う2マナのカードと、モダンレベルではないように思えますが、その2マナのカードに5/5のサイズと、攻撃時の誘発のオマケもついてきたら話は別です。 それを可能にしているのが《溌剌の牧羊犬、フィリア》。攻撃時に兆候状態の《ベイルマークの大主》を追放すると、戻ってきた時には兆候が解けています。しかも追放領域から戻ってきた時にも切削と回収を行うので、攻撃もできれば3枚のカードを回収でき、《一つの指輪》級のリソースを獲得できます。 切削が嬉しいのもデッキと噛み合う部分。《火の怒りのタイタン、フレージ》が4枚採用されていますからね。《ベイルマークの大主》でクリーチャーを拾いつつ、《火の怒りのタイタン、フレージ》まで落ちれば、もうその時点で勝ったも同然です。 《ベイルマークの大主》と《溌剌の牧羊犬、フィリア》の組み合わせはマルドゥエネルギー以外でも、オルゾフブリンクなどで活躍しており、今後もよく見かけることになるでしょう。 《一つの指輪》を失ってからのエネルギーは、《スカルドの決戦》や《歴戦の紅蓮術士》など、様々なカードでリソースを稼ぐ努力をしてきましたが、マルドゥでは《ベイルマークの大主》が定番となるかもしれませんね。

【今週のピックアップデッキ】アゾリウス全知/マーフォーク/悟ブリンク

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.01.10

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 アゾリウス全知(スタンダード) MOリーグ:5-0 By KidWar 『ファウンデーションズ』では《ラノワールのエルフ》をはじめ、様々な往年の名カードが再録されていますが、実はレガシーやパイオニアで現在も現役バリバリで稼働しているあのカードも収録され、スタンダードに帰ってきています。 そう、《全知》です。 手札から呪文をタダで唱えられるというエンチャント。そのマナコストは10マナと重いですが、マジックを遊戯王に変えるぐらいの能力なので当然です。 この《全知》を《アブエロの覚醒》で墓地から吊り上げるのがアゾリウス全知。最速4ターンキルも可能なデッキとなっています。 デッキのコンセプトは至って単純。《全知》を墓地に落とし、《アブエロの覚醒》で戦場に戻す。ただこれだけです。 墓地に落とす手段は実に豊富です。《ファラジの考古学者》《錠前破りのいたずら屋》はそれぞれカードを切削して《アブエロの覚醒》を手札に加えられるカードたち。その過程で《全知》を落とせます。 《決定的瞬間》《困惑の謎掛け》も同じく、《全知》を墓地に送りつつ《アブエロの覚醒》を手札に入れられるカード。《困惑の謎掛け》は打ち消し呪文としても運用できるので、相手の動きを見てモードを選択できて嬉しいですね。 手札に《全知》が来た場合も問題はありません。《航路の作成》で手札から直接墓地に落とせます。このデッキではリソースはさほど重要ではないため、強襲を達成してから《航路の作成》を打つと、後で引いてきた《全知》を捨てられずに困る場合があります。 《エファラの分散》はクリーチャーをバウンスしつつ、諜報2で《全知》を切削できるので、デッキと噛み合ったカードです。 これらのカードで《全知》を落とし、《アブエロの覚醒》で戦場に戻し、そこからどうやって勝利するのか。その手順をご紹介します。 1.《アブエロの覚醒》で《全知》を墓地から戦場に戻す。1/1の《全知》が戦場に出る。 2.《アルケヴィオスへの侵攻》を戦場に出してサイドボードから《機織りの季節》をサーチ。 3.《機織りの季節》を、1/1の《全知》をコピーしながら、トークンと土地以外をすべて手札に戻すモードで使用。 4.コピーの《全知》以外のすべての非土地パーマネントが手札に戻るので、先ほど唱えた《アルケヴィオスへの侵攻》を再キャスト。サイドボードから《肝冷やしの手》を手札に加える。 5.《肝冷やしの手》で《アルケヴィオスへの侵攻》を手札に戻して戦慄予示を行い、再び《アルケヴィオスへの侵攻》を出して墓地から《肝冷やしの手》を回収する。 6.《アルケヴィオスへの侵攻》が戦慄予示によって戦場に裏向きで出るまで、5を何度も繰り返す。 7.《肝冷やしの手》で2枚目の《アルケヴィオスへの侵攻》が戦慄予示で戦場に出たら、手札から《アルケヴィオスへの侵攻》を出し、墓地から《機織りの季節》を手札に。 8.《機織りの季節》を唱えて、戦慄予示の2/2をコピーしながら全バウンスモードを使用。コピーの2/2と《全知》以外のすべてのパーマネント(《アルケヴィオスへの侵攻》2枚を含む)が手札に戻る。 9.《機織りの季節》で2/2をコピーしながら全バウンスで《アルケヴィオスへの侵攻》が2枚手札に戻り、1枚目で好きなインスタント・ソーサリーを手札に加えつつ、2枚目で《機織りの季節》を回収して再度8を行うことで、無限に2/2を増やしながら、ライブラリー・墓地・サイドボードから任意のインスタント・ソーサリーを手札に加えられるようになる。 10.最終的に無限体の2/2を出して手札を4枚の《困惑の謎掛け》《否認》《失せろ》《エファラの分散》にしてターンエンド。相手のターンで7回の妨害を行い、無限体のトークンで攻撃して終了。 少し長いですが、このような手順で勝利となります。 《アブエロの覚醒》で釣った《全知》が1/1のクリーチャーになるので、《機織りの季節》でコピーを作り出せるというのがミソですね。最初は僕も全然コンボの方法がわからずに、MTGアリーナで画面と格闘していました。《機織りの季節》のテキストを2回読み直してようやく気付くことができましたが。 《全知》を遊戯王と表現しましたが、実際に《全知》が着地してからの勝利手順はまさに遊戯王と言わんばかり!マジックで遊戯王を楽しんでみたいならこのデッキで決まりです! マーフォーク(パイオニア) パイオニアチャレンジ:優勝 By claudioh マジック界随一の人気を誇る種族、マーフォーク。その歴史は非常に古く、黎明期から《アトランティスの王》は活躍していました。 レガシーではかつて最強と言われていて、モダンにおいても度々強化が入って騒がれているマーフォーク。美しいその容姿とは裏腹に、戦術は肉弾戦を得意としています。このギャップもマーフォークの魅力かもしれませんね。 すべてのマーフォークを+1/+1する《アトランティスの王》《ヴォーデイリアの呪詛抑え》《真珠三叉矛の達人》たちで盤面を強化し続けて相手のライフを一瞬で削りきる。これが下環境におけるマーフォークの戦略でしたが、パイオニアでのマーフォークは一味違います。 カラーリングはシミック。緑のカードは3種で、その内2枚はいずれも1マナ。 1マナ2/2の《クメーナの語り部》と、戦場に出た時に探検を行える《陥没穴の偵察》。いずれも非常に優秀なマーフォークなので納得です。 もう1種となるのが《キオーラの追随者》。他のパーマネントをアンタップできるので、一時的なマナ加速が可能なマーフォークなのですが、殴りに向いたクリーチャーではありません。 それならなぜこのカードが入っているのかというと、答えはクリーチャー以外の部分にあります。そう、《深根の巡礼》です。 トークンでないマーフォークがタップするたびに呪禁を持つマーフォークを生成するエンチャント。攻撃するたびにマーフォークを生成していくデザインのカードですが、これが《キオーラの追随者》と組み合わさることで恐ろしいコンボになります。 《キオーラの追随者》を2体出し、Aの能力でBをアンタップし、次にBでAを起こすと……無限にマーフォークをタップできるので、《深根の巡礼》で無限体のトークンを生成できるのです。 とはいっても《キオーラの追随者》が2体並ぶことなど稀。そこで採用されているのが《アガサの魂の大釜》です。 《アガサの魂の大釜》で《キオーラの追随者》を追放すると、+1/+1カウンターが乗ったすべてのクリーチャーが《キオーラの追随者》になるので、非常に簡単にコンボが決められるようになります。 《陥没穴の偵察》は探検でカウンターが乗れば能力が使えますし、《オラーズカの暴君、クメーナ》はすべてのマーフォークにカウンターを乗せられるので、《アガサの魂の大釜》との相性抜群です。 コンボを揃えるためのカードたちも優秀なメンバー揃いです。かつて禁止カードだった《密輸人の回転翼機》は《キオーラの追随者》を墓地に送りながら《アガサの魂の大釜》を引き込めるカードで、搭乗によってクリーチャーをタップできるので、《深根の巡礼》との相性も単純に良いですね。搭乗コストは1ですが、クリーチャー化した《密輸人の回転翼機》に更に搭乗することができるので、攻撃せずに毎ターン、トークンでないマーフォークの数だけ1/1の呪禁を生成可能です。 そして《上げ潮、キオーラ》。こちらは2枚引いて2枚捨てるので効率よくコンボパーツを揃えられますし、《密輸人の回転翼機》《陥没穴の偵察》の探検と組み合わせてスレッショルドを達成すれば、破格のボーナスも得られます。 《上げ潮、キオーラ》による攻撃や《深根の巡礼》+《密輸人の回転翼機》のトークン生成からの《オラーズカの暴君、クメーナ》全体強化と、決してコンボ一辺倒ではないのがパイオニアのマーフォークの魅力。コンボを揃えるカードが非常に強力なのが頼もしいですね。 美しい魚たちが織り成す無限コンボをぜひ一度体感してみてください。 悟ブリンク(モダン) モダンリーグ:5-0 By DB_DackFayden7 クリーチャーを一時的に追放して戦場に戻す能力のことを、マジックでは「ブリンク」と呼ばれています。 《一瞬の瞬き》の英語名、Momentary Blinkに由来し、同じような能力のカード、たとえばこのデッキに採用されている《儚い存在》がブリンクと呼ばれることもあれば、ブリンクカードを駆使したデッキをブリンクと名付けることもあります。 クリーチャーを一瞬だけ追放して戦場に戻す。この一見意味のない能力は、相手が打ってきた除去を回避する役目もありますが、一番の目的はなんといっても、戦場に出た時の能力をブリンクによって何度も誘発させることです。 この悟ブリンクも、実に様々な方法でブリンクを起こし、活用していきます。 まずデッキ名になっている《潜入者、悟》。自身や他のトークンでないクリーチャーが唱えられずに戦場に出た時にドローできる能力を持っています。クリーチャーがブリンクすると1枚引ける、このデッキにとっては凄まじいドローエンジンなのです。さすがデッキ名を冠するだけあります。 ブリンクする方法は様々ですが、まずは先ほども少し名前の出た《儚い存在》。反復がついているので1枚で2回のブリンクを起こすことができ、《潜入者、悟》でお手軽2ドローです。しかもブリンクするクリーチャーも何かしらのアドバンテージをもたらすので、1枚で4枚分の得ができる、アンリコ超えの性能! 《溌剌の牧羊犬、フィリア》は最近ではボロスエネルギーにも入り始めているブリンク犬。相手のパーマネントを選ぶこともできますが、自分のパーマネントをブリンクすると《溌剌の牧羊犬、フィリア》自身が強くなるオマケつき。一時的に相手のブロッカーを排除して攻撃を通すなど、器用なブリンククリーチャー。 元祖ブリンククリーチャーである《ちらつき鬼火》も採用されています。《溌剌の牧羊犬、フィリア》と違い、戦場に出た時のみなので使い切りではありますが、自身が3/1飛行とまずまずのスタッツ。《溌剌の牧羊犬、フィリア》で《ちらつき鬼火》を追放して、《ちらつき鬼火》で他のカードを追放して……と追放リレーをしていくと、《潜入者、悟》で毎ターン大量のカードをドローできます。 ブリンク先となるカードもどれも強力。《ベイルマークの大主》は兆候で唱えてブリンクすることでただのクリーチャーとして戦場に戻ってくるので、ブリンクとの相性が非常に良いカードです。戦場に出て1枚、ブリンクして1枚なので、2枚を回収しながら次のターンから早速攻撃し、更にクリーチャーを回収します。 想起+ブリンクの恐ろしさは《悲嘆》で皆さんご存じですよね。《孤独》を想起で唱えてブリンクすることで、2体のクリーチャーを除去しながら、《孤独》を戦場に着地させられます。《溌剌の牧羊犬、フィリア》では想起状態の孤独をブリンクできませんが、《儚い存在》か、《霊気の薬瓶》から出す《ちらつき鬼火》であれば、想起で唱えた《孤独》を即ブリンクしてクリーチャーとして戦場に出せます。 面白いのが《骨の皇帝》。エスパー御霊などでもおなじみのリアニメイトクリーチャーですが、このデッキでは順応して釣り上げたクリーチャーをブリンクしたり、順応済みの《骨の皇帝》をブリンクしてもう一度順応し直すなど、いろいろな使い道があります。 《骨の皇帝》で《溌剌の牧羊犬、フィリア》をリアニメイトして即攻撃し、順応した《骨の皇帝》を元に戻す、なんてことも。 本来であればリアニメイトしたクリーチャーは終了ステップに生け贄に捧げなければなりませんが、このデッキには大量のブリンクカードが入っているので、最終カウンターもなくなり、墓地から蘇ったクリーチャーは完全にリフレッシュして戦場に戻ってきます。 墓地を肥やす手段としては《ベイルマークの大主》があるため、吊り上げには困らないでしょう。《ベイルマークの大主》を墓地から吊り上げて即攻撃して2回の切削&回収を行い、そこにブリンククリーチャーを見つければ、無限のリソースとなります。 この手のブリンクデッキは攻撃手段に乏しかったのですが、悟ブリンクは《溌剌の牧羊犬、フィリア》《骨の皇帝》など、それなりの攻撃を仕掛けながら、《潜入者、悟》《ベイルマークの大主》でアドバンテージを取っていくので、ただ手札が肥えていくだけのデッキではありません。悠長に構えているとあっという間にゲームに敗北してしまうでしょう。 《霊気の薬瓶》が1ターン目に出てきた時のスピードと展開力は目を見張るものがあります。ブリンクがお好きな方にピッタリのデッキです!

モダンで解禁された4枚のカードのその後に迫る!禁止解除組たちの現在の居場所

Modern ピックアップ

2025.01.08

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 モダンの衝撃の禁止改訂から20日ほどが経過。激動の環境も少し落ち着きつつあり、ようやく最近のメタがうっすらとではありますが可視化されてきました。 さて、禁止改訂では《一つの指輪》《色めき立つ猛竜》《湧き出る源、ジェガンサ》の3枚が禁止になりましたが、それ以上に4枚のカードが世に放たれました。 今回の記事では、その禁止解除組たちのその後の行方について迫っていきます。 《オパールのモックス》 解禁組の中で最も使われているカードは《オパールのモックス》でしょう。 《死の国からの脱出》《研磨基地》によって自分のライブラリーをすべて削るコンボデッキ、ティムールブリーチでは《モックス・アンバー》と合わせて8枚のモックスで、時にはレガシーとみまごう動きをすることもあります。 ハンマータイムも《オパールのモックス》で復権したデッキの1つ。《純鋼の聖騎士》の金属術の達成に一役買う他、《巨像の鎚》も1マナなので、今までにはできなかった動きが《オパールのモックス》で実現できます。更に《ウルザの物語》を2ターン目に起動してのビートダウンも可能になりました。 そんな《オパールのモックス》を使うデッキの中から今回ご紹介するのがこちらの8cast。   モダンリーグ: 5-0 By Anaip90 8castの名前の由来は《物読み》の英語名、Thoughtcast。その名の通り、《思考の監視者》《物読み》と《思考の監視者》の8枚の2ドロースペルが採用されていることから、そう呼ばれるようになりました。 デッキはアーティファクトを主体としたビートダウンデッキ。《オパールのモックス》《モックス・アンバー》《ミシュラのガラクタ》と0マナアーティファクトを連打し、それらを使って《湖に潜む者、エムリー》《河童の砲手》を出していきます。 そして失った手札を《思考の監視者》《物読み》で回復し、再展開しながら《金属の叱責》《否定の力》で相手の妨害を行い、そのままライフを削り切ります。 《モックス・アンバー》を使うデッキでは《知りたがりの学徒、タミヨウ》《湖に潜む者、エムリー》の伝説8枚体制が定番になってきましたね。どちらも1マナで出せる伝説のクリーチャーなので、《モックス・アンバー》の運用がしやすく便利です。《知りたがりの学徒、タミヨウ》は攻撃することでアーティファクトである手がかりを生成できるので、《オパールのモックス》の金属術も満たしてくれます。 レガシーで大活躍の《河童の砲手》はモダンでも当然猛威を振るいます。アーティファクトをタップすることでマナコストが軽くなるので、1マナ6/6となることもしばしばあり、成長速度もすさまじいので、あっという間に相手のライフを削りきってくれます。 この手のデッキでは《否定の力》は運用しづらいですが、8Castは8枚の2ドロースぺルが入っているので、手札の枯渇もそこまで問題にはなりません。 0~1マナのアーティファクトが多いので、この8 Castも2ターン目に《ウルザの物語》を起動しやすいデッキの1つ。1ターン目に《ウルザの物語》を置いて《影槍》をはじめとした1マナのアーティファクトを出し、《オパールのモックス》と他の0マナのアーティファクト、または《ダークスティールの城塞》を置くだけで2ターン目に構築物を生成できます。しかもそのサイズは4/4ですからね。それだけで勝てるマッチもあるぐらいです。 青単色で構成されているので《ダークスティールの城塞》が使えるのも8Castの魅力。《オパールのモックス》の金属術に《思考の監視者》《物読み》のコスト軽減、《河童の砲手》のパンプアップなど、ただの土地とは思えない性能です。 一見すると《溶融》に弱そうに見えるデッキですが、《思考の監視者》《河童の砲手》は《溶融》で対処することはほぼ不可能ですし、2種のモックス以外のアーティファクトはカードが引けるものばかりなので、さほどクリティカルには刺さりません。 青単ゆえに除去は入っていないので、《オークの弓使い》に泣くのはご愛嬌。あまり使われていないのも、8Castの躍進の要因かもしれませんね。 《緑の太陽の頂点》 レガシーの緑と言えば《緑の太陽の頂点》と《ガイアの揺籃の地》。それぐらいのパワーカードは当然ながらモダンでも存在感を示しています。 《ドライアドの東屋》をX=0でサーチすれば《緑の太陽の頂点》は実質《ラノワールのエルフ》。《ラノワールのエルフ》はゲーム中盤に引けば土地より弱いカードですが、《緑の太陽の頂点》は途中でドローすれば2~3マナ域の緑のクリーチャーになれます。《緑の太陽の頂点》のおかげで緑のデッキたちは確実に強くなりました。 さて、最も《緑の太陽の頂点》の恩恵を受けたデッキはやはりゴルガリヨーグモスでしょう!   モダンリーグ : 5-0 By  triosk クリーチャーを生け贄に捧げることでカードを引きながら-1/-1カウンターを置く強力なクリーチャー、《スランの医師、ヨーグモス》。このカードを中心に構成されたクリーチャーデッキがこのゴルガリヨーグモスです。 不死クリーチャーである《若き狼》は、死亡時に+1/+1カウンターが乗った状態で戦場に戻ってきます。その《若き狼》に《スランの医師、ヨーグモス》の能力を起動すると+1/+1カウンターと-1/-1カウンターが相殺し、その後《若き狼》が死亡すると再び不死で蘇ることができます。 つまり、《若き狼》が2体戦場にいると、ライフの数だけカードを引くことができるようになります。 《スランの医師、ヨーグモス》の能力で《若き狼》Aを生け贄にし、不死で場に戻ってきたAに対して、《若き狼》Bを生け贄に《スランの医師、ヨーグモス》の能力を起動します。すると《若き狼》Aの上にあるカウンターが相殺され、きれいな状態になります。きれいになった《若き狼》Aを生け贄に今度は不死で戻ってきた《若き狼》Bに《スランの医師、ヨーグモス》の能力を起動し……これでループが発生します。 後は大量に引いたカードの中から《召喚の調べ》を見つけて、《血の芸術家》をサーチするだけです。死亡時に《血の芸術家》はライフを1点ドレインできるので、《若き狼》のAとBが墓地と場を行き来している間に、相手のライフは0になります。 このコンボパーツである《若き狼》を《緑の太陽の頂点》でサーチできるようになったのは大きな進化です。以前まではこの《緑の太陽の頂点》のスロットは《下賤の教主》などのただのマナクリーチャーでしたからね。1ターン目に使えば《下賤の教主》相当でありながら、中盤以降は《若き狼》になるのですから、劇的な変化ですよね。 《緑の太陽の頂点》でのサーチ先として《毒物の侍臣、ハパチラ》も優秀です。《毒物の侍臣、ハパチラ》は以前から採用されていたカードで、《スランの医師、ヨーグモス》と強力なシナジーを形成します。 《毒物の侍臣、ハパチラ》はクリーチャーの上に-1/-1カウンターを置くたびに蛇を生成する能力を持つので、《スランの医師、ヨーグモス》の能力で-1/-1カウンターを置く→蛇を生成→その蛇を生け贄にして更に-1/-1カウンターを置くことができ、大量にカードを引けます。相手の場が全滅するまでこのループを続けられるので、相手の戦場のクリーチャーのタフネスの合計分、カードを引けると思ってください。 《若き狼》と《毒物の侍臣、ハパチラ》が揃うだけでも、先ほどの狼ループが発生します。 《若き狼》を生け贄に捧げて適当なクリーチャーに-1/-1カウンターを置き、これにより蛇が生成。《若き狼》は不死で戻り、その蛇を生け贄に《若き狼》の上に-1/-1カウンターを置くと、再び蛇が生成されつつ、《若き狼》がリフレッシュされます。 その蛇を生け贄にリフレッシュした《若き狼》にカウンターを置くと、再び蛇が出ながら《若き狼》が不死で場に戻り……また蛇を生け贄に《若き狼》がきれいな状態になるので、これでループ。ライフの分だけカードが引けるので、《血の芸術家》に繋げてゲームセットです。 《裕福な亭主》も《緑の太陽の頂点》でサーチできる1枚。《若き狼》ループ中に《裕福な亭主》があると、1回の生け贄時に必ずクリーチャーが出るので、ライフを気にせずに好きなだけカードを引けるようになります。 このようにマナ加速とコンボに起因する《緑の太陽の頂点》ですが、使い道はそれだけに留まりません。 《飢餓の潮流、グリスト》はゴルガリヨーグモスのもう1つの勝ち手段と言われるほど強力なプレインズウォーカー。ライブラリーにある時は《飢餓の潮流、グリスト》はクリーチャーなので、《緑の太陽の頂点》で場に出すことができます。ひとたび戦場に出れば、除去やクリーチャーの生成で盤面に大きな影響を与えます。 《アガサの魂の大釜》とのコンボもありますし、毎回《飢餓の潮流、グリスト》が安定して着地させられるようになったのも、《緑の太陽の頂点》を採用する大きなメリットです。 このデッキを使っていると「《スランの医師、ヨーグモス》が緑のクリーチャーだったら……」と思わずにはいられませんが、それは高望みしすぎというものですね。《緑の太陽の頂点》の強さを味わいたいならゴルガリヨーグモスで決まりです! 《信仰無き物あさり》 イゼットフェニックスやドレッジ、ホガークヴァインなどの墓地デッキを強くしすぎてしまうことから禁止されていた《信仰無き物あさり》。 解禁されてから墓地デッキの躍進が期待されていましたが、想像より元気がありません。やはり現代のモダンのデッキパワーの前には、《信仰無き物あさり》が帰ってきたとはいえ他の重要なパーツが禁止された墓地デッキは少し物足りない印象を受けます。 現段階で最も《信仰無き物あさり》が強く使えるデッキはこのジャンド独創力かもしれません。《不屈の独創力》を打ち、ライブラリーに入っている唯一のクリーチャー・カードである《残虐の執政官》を戦場に出すコンボデッキ、それがジャンド独創力です。 $5K RCQ - Modern: 6-2 By  Michael Aquino 《不屈の独創力》の対象にするクリーチャーとしてドワーフを生成する《ドワーフの鉱山》を採用し、その《ドワーフの鉱山》はフェッチランドでサーチできるので、実質《不屈の独創力》1枚コンボです。 そんなジャンド独創力に《信仰無き物あさり》が組み込まれたことで、新たなブン回りパターンが誕生しました。それが1ターン目に《信仰無き物あさり》から2ターン目に《頑強》で《残虐の執政官》を吊り上げる、実質2ターンキルの動きです。 高速リアニメイトに起因するだけではないのが《信仰無き物あさり》の魅力。《レンと六番》で手札に溜まった土地を強い他のカードに変えてしまえば実質《レンと六番》はプラスで手札を増やす強力なプレインズウォーカーになり、墓地に《残虐の執政官》がない時に手札で余っている《頑強》を捨てたり、2枚目以降の《レンと六番》や《不屈の独創力》といった不必要なカードを有効牌に変えられます。 《鏡割りの寓話》と合わせて2枚捨てて2枚引くカードが8枚体制になり、かなり手札を整える力が強くなりましたね。手札破壊と除去をどちらも採用しており、相手によって不要なカードを捨てられるので、安定してどの相手とも戦うことができるようになりました。 《不屈の独創力》《頑強》で《残虐の執政官》を出すという派手なコンセプトのデッキに見えますが、どこかパイオニアのラクドスミッドレンジっぽさもあるジャンド独創力。《信仰無き物あさり》の強さを体感するにはぴったりかもしれませんね。 《欠片の双子》 モダンリーグ : 5-0 By  ForThoseWhoHaveHeart モダンで行われた最初のプロツアーを制し、その後もモダンの顔として環境を牽引し続けていた《欠片の双子》。 『モダンホライゾン』など強力なカードによって激変した現モダン環境では《欠片の双子》は最早時代遅れ……だと筆者は思っていましたが、現代でもその力は通用しています。とはいっても、環境を双子一色に染めるまでには至りませんが。 双子コンボにおいて重要なのは、《欠片の双子》の使い道です。《詐欺師の総督》につけて瞬殺コンボの《欠片の双子》ですが、《詐欺師の総督》を引いていない状態では手札で浮き続けてしまいます。 この《欠片の双子》をコンボ以外でも有効活用できるかどうかは重要です。 まずは《瞬唱の魔道士》。これはかつての双子コンボにも採用されていましたが、《欠片の双子》をつけることで毎ターンタダで墓地のカードをフラッシュバックできるようになります。 《稲妻罠の教練者》は新顔。ライブラリーの上4枚から土地かクリーチャー以外のカードを手札に加えられるようになるので、《瞬唱の魔道士》と同じく、《欠片の双子》がついてしまえば相手は放置することができなくなるでしょう。 そして《瞬唱の魔道士》《稲妻罠の教練者》《知りたがりの学徒、タミヨウ》とウィザードが3種入っているので、相性の良い《アノールの焔》もフル投入。ウィザードをコントロールしていれば5点のダメージ+2ドローの素晴らしいカードです。 この《アノールの焔》を《稲妻罠の教練者》で探し、《瞬唱の魔道士》でフラッシュバックする動きは強力で、イゼットコントロールのように立ち回れるのがこの双子コンボです。以前は《やっかい児》で殴ったり《瞬唱の魔道士》+《稲妻》でライフを詰めるのが双子の定番でしたが、現代の双子はむしろコントロールデッキになっているのです。 《対抗呪文》《呪文貫き》《拒絶の閃光》《否定の力》と大量の打ち消しで相手を妨害しつつ、失ったリソースを《アノールの焔》で回復し、隙を見て《詐欺師の総督》《欠片の双子》コンボを決める。あるいは《欠片の双子》+《稲妻罠の教練者》or《瞬唱の魔道士》で無限のリソースを獲得して勝利。この2つが現代の双子コンボの主なゲームプラン。 コントロールとコンボが一体となったデッキは今のモダンでは珍しいかもしれませんね。筆者の大好物のアーキタイプなので、早く回したくて仕方ありません!

【週刊メタゲーム通信】グルール力線が1453名の頂点に立つ!ディミーアも新たに進化

週刊 Standard ピックアップ

2025.01.07

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 新年、あけましておめでとうございます!今年もGOOD GAME メディアをよろしくお願いいたします。 今回は新年から早速行われたMagic Spotlight: Foundationsの結果から、最新のスタンダードのデッキをご紹介していきます! グルール力線 Magic Spotlight: Foundations : 優勝 By Nicholas Odenheimer 新たに2025年から始まったトーナメント、Magic Spotlight。トップ8進出者にプロツアーの権利が付与される、誰でも参加できる賞金制トーナメントと、かつてのグランプリを彷彿とさせる本大会。その記念すべき第1回目を制したのはグルールアグロ……ですが、ただのグルールではありません。《残響の力線》を採用したタイプのグルールです。《残響の力線》について改めておさらいしましょう。この力線は、1体だけを対象とするインスタントやソーサリーを自分が唱えた時に、それをコピーすることができます。《巨怪の怒り》や《裏の裏まで》が倍になるという、単純明快で強力なカードですね。力線サイクルは《神聖の力線》や《虚空の力線》など、特定のデッキの対策としてサイドボードに入るものが多かったですが、《残響の力線》はデッキの軸となる力線で、しかも複数枚並べた時にしっかりと意味がある優れもの。2枚貼ればコピーも追加で1つ発生するので、初手に2枚あると片方が腐り、実質手札が1枚減ってしまう状態になりがちな他の力線とは一味違います。しかも《残響の力線》はカードをコピーできる能力なので、自分のクリーチャーを対象に取るカードの性能が倍になります。つまり初手に《巨怪の怒り》と《裏の裏まで》を持っていれば、それが《残響の力線》によってカード4枚分の価値となるので、《残響の力線》は"リソースを失わない力線"であり、マリガンで積極的に《残響の力線》を探しにいく行為も肯定されるのです。この強力な《残響の力線》を主軸に据えるのが、グルール力線。クリーチャーのラインナップも通常のグルールと異なっています。まずは《騒音の悪獣》。自身の死亡時にパワー分のダメージを与えられるクリーチャーで、《心火の英雄》と違いプレイヤー以外にも飛ばせます。その代わりに雄姿で成長しないという可愛いヤツなのですが、《残響の力線》で《裏の裏まで》や《巨怪の怒り》をコピーするこのデッキでは恐ろしい1マナ域に変貌します。《残響の力線》を着地させれば最速2ターンキルも狙えるこのデッキにとって《騒音の悪獣》は重要なパーツ。《心火の英雄》と違い能動的に生け贄にできるので、《残響の力線》を置いて1ターン目に《騒音の悪獣》、2ターン目に攻撃して《裏の裏まで》+《巨怪の怒り》で3+3+2+2+1修正が入り、パワー12+死亡時の12点で2ターンキルできます。これは《心火の英雄》にはないメリットです。《無感情の売剣》はパイオニアではお馴染みですが、スタンダードの赤アグロからは抜けたカード。しかし《残響の力線》でクリーチャーを強化するこのデッキではしっかり活躍してくれます。《残響の力線》を置いて《心火の英雄》、2ターン目に《裏の裏まで》+出来事の《合同火葬》で24点ダメージで、《心火の英雄》による2ターンキルに貢献します。グルール力線では《巨怪の怒り》を超えるカードになる《裏の裏まで》。修正値が高いのはもちろんのこと、魅力的なのは死亡時に戦慄予示する能力です。《残響の力線》はここまでしっかりコピーしてくれるので、《心火の英雄》や《騒音の悪獣》をとりあえず突っ込ませて《裏の裏まで》で相打ちを取り、追加のクリーチャーを2体並べられます。珍しい採用カードは《過剰防衛》でしょうか。2マナと他のパンプアップスペルより重いですが、その効果は強力で、+3/+3修正にトランプル・呪禁・破壊不能とほしい能力全盛り!強い《蛇皮のヴェール》としても使えますし、《巨怪の怒り》のようにダメージを通す目的でも打てる、便利なスペルですね。赤アグロ自体はかなり意識されており、どのデッキもメインから大量に除去を採用しているのが現在のスタンダード環境。除去の多いメタゲームではグルール力線は苦戦を強いられることが予想されますが、それでも圧倒的な強さを見せつけて見事Magic Spotlight: Foundationsの初代チャンピオンに輝きました。グルール力線、そのポテンシャルを見誤っていたのかもしれません。アグロが対策されている環境でも回ってしまえばすべてを粉砕する、それほどの強さがこのグルール力線にはあるのでしょうか。そう思わざるを得ないパフォーマンスでした。 ディミーアセルフバウンス Magic Spotlight: Foundations : 2位 By  Scott McNamara 今大会で台風の目となったのはこのディミーアセルフバウンス。最近急激にその勢力を伸ばしてきているエスパーピクシーのようにバウンスシナジーを用いることからこの名前が付きました。《孤立への恐怖》と《この町は狭すぎる》の8枚のバウンスで《嵐追いの才能》《望み無き悪夢》《逃げ場なし》を戻してアドバンテージを稼いでいくこのデッキ。エスパーカラーにすることで《養育するピクシー》《呑気な物漁り》が加わり、更にシナジーが強くなりますが、その分マナベースに大きな負担をかけてしまいます。ディミーアなら《地底の大河》4枚で痛い土地は済みますし、《魂石の聖域》《不穏な浅瀬》とクリーチャーになる土地たちを採用でき、マナフラッドに対して耐性を作れます。色を減らしたからといってデッキパワーが落ちるわけではなありません。エスパーとディミーアの違いでもう1つ特筆すべき点があるとすれば、《永劫の好奇心》の採用です。 エスパーは《金属海の沿岸》《闇滑りの岸》《秘密の中庭》3種のファストランドがフル投入されているため、4ターン目以降にタップインが続きがちです。しかし、ディミーアは《闇滑りの岸》のみなので、4マナ目が4ターン目に出る確率が高い。そこで《永劫の好奇心》を採用できるようになりました。バウンスシナジーが弱くなった代わりに単体のカードパワーが高くなったのがこのディミーアセルフバウンス、という見方もできますね。《悪夢滅ぼし、魁渡》も実はセルフバウンスカード。《孤立への恐怖》《フラッドピットの溺れさせ》《遠眼鏡のセイレーン》はどれを戻しても得をするカードで、実に忍術しがいがあります。《呑気な物漁り》と《養育するピクシー》がないことで、戦場に出た時に効果を発揮するエンチャントのバリューは少し下がっています。そのため、《望み無き悪夢》は3枚採用にとどめられており、今後はもしかするともっと減っていったり、あるいは0枚になるかもしれません。エスパーピクシーは《悪意ある呪詛術士》《呑気な物漁り》《養育するピクシー》によって1ターン目から殴り、《望み無き悪夢》を何度も戻してライフを削りきるビートダウンデッキでした。一方のディミーアセルフバウンスは序盤から大量のライフを削る手段はさほどなく、除去を何度も使いまわして盤面を掌握し、《永劫の好奇心》でアドバンテージを稼いでいく、ミッドレンジ系のデッキです。そのため、《望み無き悪夢》はあまりデッキとは合っていないカードなのです。しかも最近はエスパーピクシーの隆盛で《萎れ葉のしもべ》や《強情なベイロス》が流行り始めています。ちなみに僕も先日《望み無き悪夢》を1ターン目に出したら《萎れ葉のしもべ》を出されて卒倒しました。ディミーアセルフバウンス自体はかなり強いデッキで、今後トーナメントで活躍していくことはほぼ間違いないと思われます。軽いカードで構成されたミッドレンジは難しい傾向にあるので、今の内から練習してみてはいかがでしょうか? アゾリウスアグロ Magic Spotlight: Foundations : 6位 By Zhao Li これまでのアゾリウスアグロの定番は《生命ある象形》を採用したアーティファクト型でしたが、今回のアゾリウスアグロは純粋にクリーチャーで殴るシンプルな構成。ですが、この形が最も赤アグロとディミーアミッドレンジに強いと僕は考えています。デッキの主軸となるのはどのアゾリウスでも共通で《威厳あるバニコーン》。土地でないパーマネントの数だけサイズが上がるので、手がかりや地図でも大きくなり、3ターン目に5/5や6/6で攻撃していくことができます。《ひよっこ捜査員》は手がかりを、《遠眼鏡のセイレーン》は地図をせっせと作り、《マネドリ》がそれらをコピーして更にトークンを生み、《威厳あるバニコーン》を大きくしたり、《内なる空の管理人》の成長にあてていきます。個々で強いカードたちが織り成すシナジーは見ていて美しいものがありますね。このアーティファクトたちに《生命ある象形》をつけていくのがこれまでのアゾリウスアグロでしたが、このリストでは《永劫の好奇心》を4枚採用しており、これがディミーアミッドレンジを食い続けた理由になっています。除去を打ち続けて《永劫の好奇心》でアドバンテージを取って勝利するのがでぃミーアミッドレンジなので、相手の《永劫の好奇心》がとにかく重く、除去を上回る物量を展開されてしまうとなすすべがありません。3マナ域に採用しているクリーチャー群は《永劫の好奇心》と相性の良い、横に並べるクリーチャー。《血滾りの福音者》は自身が攻撃すると全体強化を行い、《フェイ花のいたずら》は妨害しながら飛行を2体並べられるインスタント。いずれも《永劫の好奇心》の前のターンに出すには最高のカードです。《鋼の熾天使》は最近少し評価が落ちたカード。このリストでも2枚に押さえられています。なぜそうなってしまったかというと、現環境の黒除去が《喉首狙い》から《逃げ場なし》になったからです。本来であれば最も強いのは《喉首狙い》で、実際これまでは最も優先されていましたが、エスパーピクシーとディミーアセルフバウンスではエンチャントを使いまわせるため、《逃げ場なし》がまず4枚、その上から《喉首狙い》が少し入るようになりました。《喉首狙い》が当たらないという除去耐性が魅力の1つだった《鋼の熾天使》は黒系に対してその価値を落としてしまったのです。とはいえ、《威厳あるバニコーン》に絆魂をつけて攻撃する動きは対赤アグロでは強力。2枚に減りはしましたが、まだまだ活躍できます。アゾリウスアグロは《威厳あるバニコーン》+《幽霊による庇護》というわかりやすいゴールが対赤アグロにある他、クリーチャーを並べて《永劫の好奇心》でディミーアミッドレンジにも強く、流行のデッキたちに対してある程度有利に立ち回れます。一方、アゾリウス眼魔やジェスカイ召集などのデッキたちには不利なので、フィールドに適していればとことん勝ち、そうでなければトーナメントから早々撤退することになるでしょう。これから数が増えていってもなんら不思議ではない、強力なデッキだと思います!《幽霊による庇護》を一番強く使うならこのデッキですね。

エターナルチャンピオンシップに向けたチームレガシーへの取り組み

Legacy ピックアップ

2024.12.31

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今年も残すところ後数時間!皆さんのマジック納めは何日でしたか?僕のマジック納めは昨日晴れる屋トーナメントセンターで行われたエターナルチャンピオンシップでした!結果はというと……トップ8に残ったものの、準々決勝で敗北でした。 画像はカバレージページより引用 エターナルチャンピオンシップのフォーマットはなんとチームレガシー。ルールは今夏に行われたチームモダンと同じ、同名カードをチームメンバー内で共有できないルールのチーム戦です。というわけで今回は、チームのデッキ選択の経緯と、使用したナドゥの構築のポイントについてお話していきたいと思います。 レガシーの三強 チームを結成したのは11月ごろ。当時最強だったのは《超能力蛙》を擁するディミーアリアニメイトでした。《超能力蛙》は除去されないだけで無限のアドバンテージを生み出すだけでなく、手札から《偉大なる統一者、アトラクサ》や《残虐の執政官》を捨てて《再活性》で釣るのにも役立ち、獅子奮迅の活躍を見せていました。リアニメイトと言えば《暗黒の儀式》でマナ加速をして《納墓》でクリーチャーを落とし、《再活性》で釣り上げるコンボデッキでしたが、ディミーアリアニメイトは青いドロースペルで手札を整えつつ《意志の力》で妨害し、黒の除去で盤面をさばき、《超能力蛙》がゲームを終わらせてくれます。《偉大なる統一者、アトラクサ》を高速でリアニメイトすることもあれば、コントロールとしても立ち振るまえる、非常に器用なデッキなのです。《超能力蛙》と《再活性》を使用したデッキを使うのは確定し、残りの2つのデッキを考えていた時、1000人規模のレガシーイベントのトップ8に3人が入賞するという、モンスターデッキが目に入ってきました。それがカーンフォージです。その名の通り、《大いなる創造者、カーン》と《神秘の炉》でリソースを獲得していくアーティファクトデッキで、以前から存在していたアーキタイプだったのですが、新カードの《次元の結節点》によってマナ加速が更に安定するようになりました。すべての非基本土地タイプを持つ《次元の結節点》により、《ウルザの鉱山》と《ウルザの魔力炉》がなくとも《ウルザの塔》から3マナが出る恐ろしい土地になり、《厳かなモノリス》などを使わずとも、序盤からセットランドだけで《一つの指輪》《大いなる創造者、カーン》《神秘の炉》をキャストできるすごいデッキに生まれ変わったのです。そしてヴィンテージでは制限となった《苛立たしいガラクタ》もカーンフォージの躍進に貢献しました。《意志の力》をはじめとしたピッチスペル(0マナ呪文)を封殺する《苛立たしいガラクタ》を《ウルザの物語》でサーチできるのは大きく、これらの強化によってカーンフォージは飛躍的にデッキパワーが上昇しました。《超能力蛙》《意志の力》《渦まく知識》を使うディミーアリアニメイト。《古えの墳墓》《大いなる創造者、カーン》《一つの指輪》《ウルザの物語》を使うカーンフォージ。この2つのエースデッキをチームに組み込むとなると、サードデッキの選択は自ずと限られます。以前のチームモダンの記事でも話しましたが、チーム戦はいかに強いカードを使えるかが重要。そこで今回も、レガシーで強いカードを上から順番に考えていくことになりました。《超能力蛙》や《意志の力》、《渦まく知識》。《一つの指輪》や《古えの墳墓》。それらと肩を並べるほど強いカードはあまり多くありませんが……『モダンホライゾン3』でなんとそれは登場していまました。そう、悪名高き鳥《有翼の叡智、ナドゥ》です。モダンでは強すぎて禁止されてしまったこの鳥はレガシーでもトーナメントを制するほど。ディミーアともカーンフォージともほとんどかぶることがなく使用できます。こうして、ディミーアリアニメイト・カーンフォージ・ナドゥの3デッキを持ち込むことを決め、細かいリストについては12月に入ってから詰めることになったのです。 衝撃の禁止改訂 ……と非常に早い段階でデッキが決まっていたはずだったのですが、皆さんご存じの通り、レガシーで禁止改訂が実施されました。《超能力蛙》と《苛立たしいガラクタ》が禁止されてしまったのです。これによってディミーアリアニメイトはただ墓地から《偉大なる統一者、アトラクサ》や《残虐の執政官》を吊り上げるだけの昔のコンボデッキに逆戻りしてしまいました。カーンフォージも《苛立たしいガラクタ》を失い、《虚空の杯》を代わりに投入することになりました。《虚空の杯》にも長所はありますが、《ウルザの物語》から《苛立たしいガラクタ》をサーチして《意志の力》を封じることができなくなったのは大きく、弱体化は否めません。こうして11月の話し合いは白紙に。一からデッキを考えることになりました。カーンフォージはともかく、《超能力蛙》はかなりの痛手でした。ディミーアを使用する価値を見出せなくなるほどに。《渦まく知識》と《意志の力》はレガシーの顔とも呼ぶべきカードたち。青は常にエースデッキの位置づけなので、ここを弱いデッキにするわけにはいきません。墓地対策が刺さるだけで負けてしまうようなディミーアリアニメイトにはしたくなかったのです。もちろん《知りたがりの学徒、タミヨウ》でフェアなプランを維持することはできますが、フィニッシャー性能を持ちつつコンボにも寄与していた《超能力蛙》と比べると雲泥の差。これならば新たな青いデッキを模索するべきだと思いました。 突如現れる最強のデッキ と、そんなある日、《苛立たしいガラクタ》の禁止によって強くなったデッキの存在がチーム内で話題となりました。それがスパイです。土地を0枚にすることで《欄干のスパイ》《地底街の密告人》を使って自分のライブラリーを0枚にし、《ナルコメーバ》《ポクスウォーカー》を場に戻し、《戦慄の復活》で《タッサの神託者》を吊り上げて勝利するコンボデッキ、スパイ。フィニッシャーである《戦慄の復活》を打ち消す《苛立たしいガラクタ》は天敵でしたが、禁止改訂によって消えてくれたため、単純に立ち位置がよくなりました。そもそもスパイは『モダンホライゾン3』で大量のアンタップイン両面ランドを獲得し、非常にデッキが強化されています。それに加えて《苛立たしいガラクタ》が禁止になったわけですから、水を得た魚状態です。加茂くんが早速スパイを回したところ、その強さに驚いていました。 いわく「1ターンキルばかりする」「2ターンキルより1ターンキルの方が多い」。そんなことあるのか?と疑問に思いましたが、実際に回っているところを見ると納得します。本当にこのデッキは1キルハンドがよく来ますし、《意志の力》1枚ぐらいなら平気で乗り越えてきます。しかもスパイは墓地対策1枚ですべてを失うデッキと思われがちですが、実際にはそんなことはありません。《ナルコメーバ》しか入っていなかった頃のスパイは、《欄干のスパイ》ですべてのカードが墓地に落ちた後、《ナルコメーバ》の能力の誘発にスタックして墓地対策を使うだけでゲームセットでしたが、今は1マナさえあればケアが可能です。それを可能にしているのが《ポクスウォーカー》。手札以外から呪文を唱えると墓地から帰ってくる《ポクスウォーカー》と《記憶の旅》を使うことで、墓地対策をある程度かいくぐることができます。墓地を追放されるのにスタックして《記憶の旅》を打つと、《ポクスウォーカー》が墓地からすべて場に戻ります。その上で《記憶の旅》でカードを3枚までライブラリーに戻せるので、ゲームに勝利する《タッサの神託者》を戻しつつ、盤面に高いクロックを残せるようになったのです。《記憶の旅》はフラッシュバックに緑マナを必要とする一方、スパイというデッキは緑マナが余るとは限らないのですが、それも《ジャック・オー・ランタン》でケアできています。墓地から《ジャック・オー・ランタン》を追放することで好きな色マナに変えられるので、マナが浮いていれば《記憶の旅》が打てるのです。生半可な墓地対策では止まらず、1キル率も高いスパイ。しかも《意志の力》を使うデッキはチーム戦では3人に1人。これはもう絶対にチームに組み込むべきエースデッキだと確信しました。 ナドゥ選び さて、スパイがまずチームに内定したところで、次に席を確約したのがナドゥでした。元々《超能力蛙》《苛立たしいガラクタ》とバチバチやりあっていたデッキなのですから、その強さは折り紙付きです。レガシーでは《有翼の叡智、ナドゥ》は3つのタイプが存在します。まず、《渦まく知識識》《意志の力》の強い青のカードを採用したタイプ。次に《セファリッドの幻術師》《手甲》とハイブリッドしたセファリッドナドゥ。ヨーリオン型もここに含まれます。最後に、《ガイアの揺籃の地》で爆発的なマナを生み出す緑主体の形。この中でチーム戦に適しているのは《ガイアの揺籃の地》型のナドゥでした。《意志の力》《渦まく知識》は別の強い青いデッキで使いたいですし、セファリッドナドゥはスパイと共存できません。《戦慄の復活》と《タッサの神託者》がかぶってしまいますからね。《ガイアの揺籃の地》型の緑ナドゥは、当初は消極的な選択ではありましたが、回していく内に《渦まく知識》《意志の力》の青型よりも優れたデッキかもしれないと思うようになりました。青型のナドゥは《コーの遊牧民》《有翼の叡智、ナドゥ》と揃えてもなかなかゲームに勝つことはできません。アドバンテージを大量に獲得し、《意志の力》と《剣を鍬に》を手札に抱え続ける実質詰み状態を作ることは可能ですが、簡単にコンボも決まりません。サーチ手段が少ないので、打ち消しや除去で場を凌ぎつつ、隙を見つけてドロー呪文で揃えていくのが青型なのです。一方、緑型は大量のマナクリーチャーと10枚ほどのサーチ呪文からなるデッキ。コンボを揃えるスピードは速いですし、一度《コーの遊牧民》《有翼の叡智、ナドゥ》が揃えばそのままゲームを終わらせてくれます。これは《ガイアの揺籃の地》《春心のナントゥーコ》が使える大きなメリットです。《ガイアの揺籃の地》《春心のナントゥーコ》からトークンを並べつつマナを出して《孔蹄のビヒモス》による一撃が可能だったり、《召喚の調べ》でヘイトベアをサーチするなど、速度面以外でも器用な立ち回りが可能で、非常に好感触でした。直接対決でも緑型に分があり、僕は緑型のナドゥこそがナドゥで最も強いと感じました。 《超能力蛙》、見つかる さあ2つ目のデッキも決まり、残りは最後の一枠。もちろん余った《渦まく知識》《意志の力》を使えるデッキです。とはいえ、デルバー系統はイマイチ。昨年は活躍していた《豆の木をのぼれ》デッキも最近は元気がない。このサードデッキの選択にはかなり時間を使いました。きっかけはマジックオンラインの結果でした。《渦まく知識》を使った殺意のあるデッキがその目に飛び込んできて、木原くんに回してもらうことになったのです。それがスタイフルノートでした。戦場に出た時にパワーが12以上になるようにクリーチャーを生け贄に捧げる必要がある代わりに、1マナ12/12トランプルという破格の性能を持つ《ファイレクシアン・ドレッドノート》。そのデメリットを《もみ消し》で打ち消して相手を圧殺するのがスタイフルノートです。《ファイレクシアン・ドレッドノート》の能力を打ち消す役割も持つ《記憶への放逐》はエルドラージやコンボ系に対してはカウンターとしても機能し、《不毛の大地》とフェッチランドへの《もみ消し》による土地嵌めなど、青白ながら非常に攻撃的な青いデッキとなっています。最初は《門衛のスラル》や《虚構漂い》が入ったリストを回していた木原くんですが、主に《門衛のスラル》の弱さに絶望していました。《門衛のスラル》がいる状態で《ファイレクシアン・ドレッドノート》を出そうとすると、スタックで《門衛のスラル》を除去され、《ファイレクシアン・ドレッドノート》も失っい、簡単に1対2交換を取られてしまうのです。リストの弱さに絶望していた木原くんですが、ここで奇跡の出会いを果たします。そう、禁止になったはずの《超能力蛙》……。を彷彿とさせる性能、《思慮深き人工知能、キュリー》!プレイヤーに戦闘ダメージを与えるたびにカードを引くという能力は《超能力蛙》と同じ。カードを捨ててサイズが上がったり飛行がつかない代わりに、《思慮深き人工知能、キュリー》にはもう1つの能力があります。それがアーティファクト・クリーチャーのコピーになる能力。しかもプレイヤーにダメージを与えた時に基本のパワー分だけドローできる能力は付与されてコピーされるので、《ファイレクシアン・ドレッドノート》をコピーすれば12枚カードが引けてしまうのです。《もみ消し》や《記憶への放逐》がなくとも《ファイレクシアン・ドレッドノート》を出して生け贄にする前に《思慮深き人工知能、キュリー》でコピーしてしまえば、12/12トランプルが爆誕してくれるので、《思慮深き人工知能、キュリー》によって《ファイレクシアン・ドレッドノート》は更に使いやすくなりました。《ファイレクシアン・ドレッドノート》とのコンボがなくとも《思慮深き人工知能、キュリー》は単体で優秀なのが素晴らしく、《門衛のスラル》のような《ファイレクシアン・ドレッドノート》着地専用カードとは使い勝手が段違いでした。これにてスパイ・ナドゥ・スタイフルノートの3デッキに決定! 使用したバントナドゥについて 《ドライアドの東屋》1枚 ほとんどのリストが2枚の中、僕は1枚に抑えました。《ドライアドの東屋》が2枚である理由は、《有翼の叡智、ナドゥ》のコンボ中にフェッチランドから持ってこれるクリーチャーだからです。《コーの遊牧民》と《有翼の叡智、ナドゥ》を揃えた後、《春心のナントゥーコ》が戦場にいないと途中でコンボが途切れてしまいます。それを防ぐための《ドライアドの東屋》……なのですが。そのあまり大きくないメリットに対し、デメリットが目立ちました。《ドライアドの東屋》はクリーチャーなので出したターンにはマナを出せません。実質タップインランドです。このデッキには《ガイアの揺籃の地》が4枚入っており、それに《ドライアドの東屋》が2枚になると、1ターン目の緑マナはたった14枚しかありません。1ターン目から常に動きたいバントナドゥからしてみれば、これは目を瞑れないデメリットです。 《春心のナントゥーコ》4枚 2~3枚のリストが多いものの、個人的には4枚から動かしたくありません。負けパターンの1つとしてよくあるのが、盤面を処理され続けて手札に《召喚の調べ》が溜まるケース。《春心のナントゥーコ》ならばフェッチランドを起動するだけでトークンがわらわら出てくるので、すぐに《召喚の調べ》を打てるようになります。《春心のナントゥーコ》からの《孔蹄のビヒモス》によるイージーウィンもあり、もちろん《有翼の叡智、ナドゥ》のメイン勝ち筋にも絡んでくるカードでした。1ターン目にクリーチャーを出して2ターン目に授与すると数ターン生き残ってくれて、《ガイアの揺籃の地》がクリーチャー不足で機能不全に陥ることもなくなります。サイド後は《溜め込み屋のアウフ》や《疫病を仕組むもの》を増やすことで相手を詰み状態にでき、用途も様々でとにかく便利でした。 《アロサウルス飼い》4枚 青い相手にはとにかく初手に欲しいので4枚。3枚のリストが多かったですが、4枚目を入れて本当に良かったと思いました。《意志の力》はもちろん、《虚空の杯》X=1に対しても強いのが《アロサウルス飼い》。青いデッキと《虚空の杯》デッキに強いなら、環境のほとんどのデッキに対して強いことになりませんか?上記のデッキに対して《緑の太陽の頂点》や《召喚の調べ》で《アロサウルス飼い》をサーチするのは嫌でした。このデッキは8枚のマナクリーチャーが入っているので、マナフラッドも気になります。《緑の太陽の頂点》は《アロサウルス飼い》をサーチするのではなく、《有翼の叡智、ナドゥ》や《棘を播く者、逆棘のビル》などのコンボに関わるカードをなるべくなら探したいのです。青くなく《虚空の杯》も入っていないデッキには《アロサウルス飼い》は当然弱いですが、このデッキの1マナ1/1は能力がなくても最低保証があるのです。《ガイアの揺籃の地》でマナが出ますし、《召喚の調べ》の召集コストにあてられ、《有翼の叡智、ナドゥ》の誘発先にもなり、《孔蹄のビヒモス》の打点も上がります。特定のマッチアップでのみ強いカードではあるものの、リスクが低くリターンが大きく、メインに4枚入れる価値は十分にありました。 メインの《溜め込み屋のアウフ》 ANTやカーンフォージなど、アーティファクト主体のデッキが環境に多く、一部のデッキにはこちらの最速である3ターンキルでは間に合わない場合があるので、ささやかな妨害手段として投入。緑のヘイトベアーは《緑の太陽の頂点》からでも場に出せるので非常に便利です。2ターン目にサーチして少しの間足止めをし、こちらがコンボを決めて勝利します。純粋なスピード勝負ではセファリッドに比べて1ターン遅いのが緑ナドゥですが、こうしてヘイトベアーを採用することで早いコンボに無理やり間に合わせています。 《忍耐》 ほとんどのリストは2枚採用されていましたが、《有翼の叡智、ナドゥ》が決まった後のループには1枚あれば良いので、2枚から削りました。《忍耐》をピッチで唱えて先に生け贄に捧げてから《忍耐》の能力を解決することで、《忍耐》自身がライブラリーに戻ってくれます。もしくは《忍耐》に《春心のナントゥーコ》を授与すれば無限に《忍耐》を回せます。スパイに対しての勝率が少しだけ変わりますが、どうせ1マナ浮いている状態で《欄干のスパイ》を出してきたら《忍耐》では止まりません。それならば、序盤の動きがもたつく可能性のある《忍耐》より、軽いマナ域のカードを充実させたいと思いました。 《疫病を仕組むもの》 ナドゥミラーにおいて最も良いカードを探した結果、《疫病を仕組むもの》に行き着きました。昆虫を指定して《春心のナントゥーコ》を封殺すればコンボは止まる可能性がありますし、コーを指定すれば《有翼の叡智、ナドゥ》自体の誘発を抑えられます。序盤に出せる状況なら、《貴族の教主》や《極楽鳥》が複数枚いる場ならそのどちらかを指定してマナを潰すのも有効です。そして《春心のナントゥーコ》でそれらをコピーすることでゲームを終わらせられます。最初に即死を防ぐべくコーを指定し、次のコピーで植物と順番にコンボを潰していけば、相手を詰み状態にできるのです。《森》を2枚にして《Bayou》を入れても良いかなと思いました。今回は《疫病を仕組むもの》を思いついたのがチーム戦当日だったので、持っていない《Bayou》を入れられませんでした。チーム事情的に僕が《活性の力》を使えなかったので、赤単プリズンに当たった際に《血染めの月》だけで負けてしまうのを防ぐため、《森》は1枚でも多く入れたくはありました。なので《Bayou》が手元にあったところでデッキに入れていたかは微妙なラインですね。 《四肢切断》 チームメイトが《剣を鍬に》を使うので《四肢切断》を大量に入れることになりましたが、個人戦なら2枚2枚でスプリットすると思います。《剣を鍬に》は無条件の除去ではあるものの、《月の大魔術師》を1ターン目に置かれると打てないのがネックに感じました。とはいえ《四肢切断》を入れすぎるとダメージがとんでもないことになるので、2枚ずつぐらいがちょうど良いですね。白マナを2枚サーチするのは7枚のフェッチでは難しいので、《剣を鍬に》を2連打するのは容易ではありませんが、《剣を鍬に》と《四肢切断》なら両方同一ターンに唱えることもできます。ミラーマッチではどちらのカードもほとんど変わらず、この点でもスプリットに価値があると思います。《四肢切断》は想像より使用感がよく、一応痛くせずに打つために《Bayou》を足したくなりました。とはいえ痛さが気になる赤単プリズン相手には《Bayou》はあまりサーチしませんが。 大会結果 The Spy ×〇×(チーム勝ち)エルドラージ ×〇×(チーム負け)グリクシステンポ 〇〇(チーム勝ち)赤単プリズン 〇×〇(チーム勝ち)青ナドゥ 〇〇(チーム勝ち)緑ナドゥ ×〇〇(チーム勝ち)5勝1敗でトップ8に。 The Spy ××(チーム負け)スパイには手も足も出ず負け。初戦の相手がレガシーをよくやっているチームで、横の木原くんが「多分ゆうやんさんの相手は青いですよ!」と言ってきたので意気揚々と《アロサウルス飼い》2枚の初手をキープしたら、1ターン目に《欄干のスパイ》が出てきて1キルされました。これもチーム戦の醍醐味。相性の良いエルドラージにも負けましたが、そこからはサブマリンして勝利に貢献し続けることができました。最後の2戦はしっかりと構成勝ちできて、今回の調整の手応えを感じましたね。とはいえ、リストの反省点もあります。それはもちろんスパイを軽視しすぎていたことです。僕らが最強と結論付けているデッキを他のチームが持ち込んでこないはずがない!もう少しスパイに対してしっかりとしたカードを取るべきでした。具体的には《虚空の力線》です。《フェアリーの忌み者》程度ではスパイは止まりません。《虚空の力線》を4枚取って祈るべきでした。もし明日僕がレガシーの大型大会に出るならこんなリストにするでしょう。 最後に トップ8で負けと悔しいマジック納めでしたが、みっちりレガシーと向き合えて非常に楽しいチーム戦でした。やっぱりチーム戦は楽しいですね。チームならではの構築やデッキ選択ができるので、個人戦とは違った楽しみがあります。もちろんプレイ中に友人からのアドバイスを受けられるのも頼もしいですし、僕はチーム戦の大きなイベントがもっと増えてほしいと思っています。競技マジックを中心に遊んでいるのでレガシーをやる機会はさほどなく、毎年大きなレガシーイベントの際に短期集中でレガシーに向き合うようにしているのですが、そのたびにこのフォーマットの奥深さを体感しています。レガシーはやればやるほど面白い!来年はもっとレガシーも遊んでみようかなと思うほど、今回のチーム戦は楽しかったです。ナドゥも好きですしね。そこまで特筆した成績をあげられなかった2024年でしたが、充実したマジックライフは送れていました。2025年もたくさんマジックを遊んで、そこで得た知見や面白いデッキを記事でお届けして、マジックを満喫していきたいと思いますので、よろしくお願いします!それでは皆様、良いお年を!

統率者:《万物の姿、オルヴァール》紹介!"宝石"をコピーしてリソースの王になれ!!!!

Commander ピックアップ

2024.12.25

Ryo Hakoda

はじめまして!このたびご縁がありGOOD GAMEメディアで記事を書かせていただくことになりました、箱田 諒(@fritz_xq)です。 普段は関東の競技イベントに出ることが多く、最近はプレミアム予選を突破し、来年のチャンピオンズカップファイナルの権利を獲得しています。ルビーストームがお気に入りなので、いつかはそのことも記事にできたら嬉しいですね。 競技マジックを遊ぶ一方、友人と統率者を遊ぶのも大好きだったりします。 というわけで、僕が今回執筆するのは統率者の記事です! 《万物の姿、オルヴァール》とは 《万物の姿、オルヴァール》は爆発的なリソース増加が魅力のデッキです!《万物の姿、オルヴァール》はざっくり言うと、呪文で対象に取ったパーマネントのコピーを生成できるカード。 《ぐるぐる》をはじめとする、”対象に取る”呪文でどんなパーマネントでもコピーできます。 例えば《リスティックの研究》や《神秘の聖域》、果ては《船砕きの怪物》まで、強力なカードたちがたったの1マナで増えていきます。 ”対象に取る”呪文が軽いため、動き出すと一気に莫大なリソースを稼ぐことが可能です。 こんな方にオススメ! ・大量の手札やマナが好きな方(嫌いな方、いませんよね!)・他ではあまり見かけないユニークなカードを使いたい方・比較的安価にコンボ入り統率者で遊んでみたい方ここからはデッキリストをもとに、より詳しく《万物の姿、オルヴァール》デッキの採用カードやデッキの動きについて解説していきます。 デッキリスト 現在僕が使用しているリストはこちらです。 普段から統率者戦で遊んでいる方でも見慣れないカードが多いのではないでしょうか? 他のデッキでは採用優先度が低いカードも《万物の姿、オルヴァール》がいれば最高のカードに化けます。ここからは採用カードの役割について、類似カードをまとめてご紹介していきます。 採用カードの役割 ■パーマネントを”対象に取る”呪文 マナ加速ができる”対象に取る”呪文です。 例えば《島》を対象に唱えると、《万物の姿、オルヴァール》の効果で《島》のコピーを生成できます。元々対象に取っていた《島》はアンタップするので、1マナがその場で増えます。 「バイバック」能力を持ち、マナさえあれば手札を減らさず何回でも使うことができます。つまり無限コンボのお供です。 《ヴォルラスの気まぐれ》はバイバックコスト込みで3マナなので、3マナを生み出せる《金粉の水蓮》や《切望の宝石》と無限コンボになります。(詳しくは続くコンボ紹介の項目でご説明します。)《ヴォルラスの気まぐれ》や《時計回し》はそれぞれやたら長いテキストを持っていますが、カードの色を変えたりカウンターを増減させる効果を目的に唱えることはあまり多くありません。 このデッキでの本質は”対象に取る”こと。 対象に取れるパーマネントのカードタイプの幅広さや、複数回唱えることができるなどの特徴を優先し、効果は二の次、というカードはこの他にもデッキに採用されています。 回顧やフラッシュバック、暗号などで複数回唱えられることを重視して採用しています。 ゲーム中盤までは《島》などをコピーしてロングゲームを目指しつつ、ゲーム後半に墓地から使えるリソースとして活用する、という使い方ができます。 土地しか対象に取れませんが、1ドローのオマケ付き。 《水大工の意思》の効果には”マーフォークをコントロールしている場合、カードを1枚引く”とありますが、《万物の姿、オルヴァール》は多相なので立派なマーフォークです。 1マナで《島》のコピーを生成し、1枚ドロー。マナも手札も減らない真の無料!すごい! とても珍しい、青のマナ加速カード。 自身のアンタップ状態のクリーチャーをタップし、そのマナ総量に等しい数の無色マナを生成することができます。 よって時には《暗黒の儀式》以上のマナ加速になります。 クリーチャーのコピーを生成するために唱えたり、《万物の姿、オルヴァール》を出すためのマナ加速としても使います。 ■増やしたいパーマネント 本記事のタイトルはここから取った、最も増やしたいパーマネント。 6マナと重たいですが、戦場に出た時に3枚ドローでき、タップすると好きな色のマナが3マナ出ます。 そんな《切望の宝石》を”対象に取る”呪文でコピーすると、たったの1マナで3ドロー+3マナ! これにより都合手札2枚と2マナを増やすことができます。 仮に《ぐるぐる》を唱えると、加えて《切望の宝石》をアンタップできるので、3+3=6マナが出て3枚引けます。 《ぐるぐる》が《Ancestral Recall》+《Black Lotus》を超える瞬間です。とんでもない。デッキには”対象に取る”呪文が多数採用されているので、《切望の宝石》をコピーして大量ドローとマナ加速を行い、その他のアクションにつなげるのが目標です。ただし《切望の宝石》を大量にコピーして、”対象に取る”呪文が尽きてしまった場合は大変。 《切望の宝石》にはデメリットとして下記の効果があります。 ”対戦相手1人がコントロールしているクリーチャー1体以上があなたを攻撃してブロックされないたび、そのプレイヤーはカードを3枚引いて《切望の宝石》のコントロールを得る。これをアンタップする。”途中でストップした場合には次のターンから全員での《切望の宝石》の奪い合いが始まります。皆が切望する宝石、カード名の通りですね。 僕はこれで対戦相手に15ドロー+15マナを渡して負けたことがあります。 《切望の宝石》を出すと、自分か奪った人が概ね勝つほどの影響があるため、プレイする際には細心の注意を払いましょう。戦場に出た際に墓地のインスタント、ソーサリー、アーティファクトから1枚を、マナを払わずに唱えることができます。 《万物の姿、オルヴァール》が戦場にいれば、”対象に取る”呪文を自身を対象に唱えることで自身のコピーを生成。よって墓地の”対象に取る”呪文の数だけ《失われた宝物庫の学者》のコピーを生成できます。 自身が5/5飛行と十分なサイズを持っており、複数体並ぶことで戦闘を有利に進められます。 8体の5/5飛行が出てそのまま殴り勝ったことも。 ゲームが長引いて墓地に呪文が溜まった際には《失われた宝物庫の学者》で強力な盤面を作ることを目指します。また、この手のカードとしては珍しく、墓地のアーティファクトも唱えることができるため、《切望の宝石》も0マナで唱えられます。 インスタントやソーサリー呪文を唱えるたびにカードを1枚引かせてくれるすごいウィザードたち。 1体いるだけでも多くのドローをもたらす彼らですが、コピーして増えようものならすぐに手札が尽きなくなります。 なお、ドロー効果は強制なので、楽しくカードを引きすぎてライブラリーアウトで負けないように気を付けましょう。《ルーンの大魔導師》はインスタントやソーサリー呪文のコストも軽減してくれるため、先に挙げた《ヴォルラスの気まぐれ》《時計回し》《理性のゲーム》のようなバイバック能力を持つカードとの相性もばっちりです。 『ファウンデーションズ』の新規収録カードとして彼を見つけたときは心躍りました。 マナ軽減、ドロー効果と最高の2つの能力を併せ持つ、新加入のエースです。 ■コピー効率を上げるカード 選んだタイプのクリーチャーの誘発型能力を追加で1回誘発させます。 《万物の姿、オルヴァール》は多相の戦士なのでどのクリーチャー・タイプを選んでもいいのですが、デッキの他のカードも考慮してウィザードを選ぶことが多いです。 《両生類の神童》や《呪文探求者》、《大魔導師の名誉教授》など優秀なウィザードたちの誘発もついでに増やしましょう。 《万物の姿、オルヴァール》と《うろつく玉座》がいる場合、コピー能力の誘発回数は《万物の姿、オルヴァール》と《うろつく玉座》の合計数になります。よって《うろつく玉座》のコピーを増やす場合、1→3→7→15体のように2倍+1体に増えていきます。《うろつく玉座》は護法2の除去耐性が頼もしく、場に出しやすいことも強みです。アーティファクトやクリーチャーのうち、自身がコントロールしている1つだけを対象とする呪文を唱えるたび、そのコピーを非伝説で生成するエンチャント。 《万物の姿、オルヴァール》と異なり、コピーできるパーマネントのタイプが限られたり、1つを対象に取る呪文でしか誘発しないですが、生成するコピーが非伝説であるため《万物の姿、オルヴァール》のコピーも生成することができます。《万物の姿、オルヴァール》がいなくてもコピーを作ることができ、エンチャントであるためクリーチャーに比べて除去されづらい点が優秀です。 主なコンボ 1.《切望の宝石》無限ドロー ”対象に取る”呪文として《ヴォルラスの気まぐれ》を使用する無限ドローのルート。 《ヴォルラスの気まぐれ》は1マナでパーマネントをなんでも対象に取ることができ、追加2マナを支払うとバイバックで手札に戻せるため、3マナで何度も唱えることができます。 よって、《切望の宝石》のコピーから生み出す3マナを使って《ヴォルラスの気まぐれ》をバイバックし続けられるので、これで無限に3ドローできます。1.《切望の宝石》を対象に《ヴォルラスの気まぐれ》をバイバックコスト込みの3マナで唱える。2.《万物の姿、オルヴァール》が誘発し、《切望の宝石》のコピーを生成する。3.《切望の宝石》のコピーにより3枚ドローして3マナを出す。1~3の手順を繰り返すとマナがかからず3ドローし続けられるため、無限ドローになります。 なお、これだけだと手札が増えるだけでマナは増えません。 そのため、道中で引いた《ぐるぐる》などで《切望の宝石》をコピーしてマナを増やし、引いた勝ち手段を使えるようにする必要があります。なお、《ヴォルラスの気まぐれ》は《時計回し》や《理性のゲーム》でも代用可能な場合があります。 《時計回し》と《理性のゲーム》はバイバックのコスト込みで4コストですが、《サファイアの大メダル》などで3マナに軽減することで、《切望の宝石》が生み出す3マナで何回でも唱えられるようになります。 ※《時計回し》はカウンターが置かれていないパーマネントでも対象に取ることができます。 2.《流浪のドレイク》無限マナ 戦場に出た際に土地を最大5枚アンタップできる《流浪のドレイク》をバイバック持ち呪文で無限にコピーし、無限マナとするルート。 《流浪のドレイク》でアンタップする土地から5マナ以上が出る場合、4マナ以下でコピーし続ければ無限マナ。その場合には《ヴォルラスの気まぐれ》《時計回し》《理性のゲーム》どれでも無限マナコンボが可能です。無限マナから《歩行バリスタ》で無限ダメージを飛ばして勝つほか、無限マナの過程で無限ストームとし、《思考停止》を対戦相手に唱えて勝つこともできます。 3.《万物の姿、オルヴァール》なし無限ドロー こちらは《万物の姿、オルヴァール》を使用しない無限ドローのコンボ。 《ドラニスの判事》などで《万物の姿、オルヴァール》を出せない場合にはこのルートを目指します。 《幽霊のゆらめき》はアーティファクトやクリーチャーや土地を合わせて2つ対象にし、対象のカードを一度追放した後すぐに戦場に戻す、いわゆる”ブリンク”能力を持っています。 《幽霊のゆらめき》で《切望の宝石》と《古術師》をブリンクすることで、3枚ドローと3マナを得て、墓地の《幽霊のゆらめき》を回収することができます。1.《切望の宝石》と《古術師》を対象に《幽霊のゆらめき》を唱える。2.《切望の宝石》と《古術師》をブリンクし、3枚ドローして墓地の《幽霊のゆらめき》を回収する。3.《切望の宝石》から3マナを出す。1~3の手順を繰り返すと消費マナなしで3枚ドローすることができるため、無限ドローになります。 4.《渦巻く空、開璃》無限 伝説のクリーチャーである《渦巻く空、開璃》をコピーし、レジェンド・ルールによって墓地に送られる際の能力誘発を利用した、無限マナかつ無限呪文回収のコンボです。 《渦巻く空、開璃》は死亡時にカード6枚を切削した後、墓地のインスタントかソーサリー呪文を最大2枚回収することができます。 マナを増やす役割のカードとして《ぐるぐる》を、《渦巻く空、開璃》をコピーする役割のカードとして《時計回し》を使用し、そでぞれを回収して再利用することで、ライブラリーをすべて切削することができます。※《島》を対象に《ぐるぐる》を唱えると、《島》のコピーとアンタップにより2マナが出るので1マナ増えます。その1マナを使って《時計回し》を唱えます。 今回は例として《ぐるぐる》と《時計回し》を用いていますが、《ぐるぐる》は似た効果の《夢の掌握》や《見えざる糸》で代用可能です。 また、《時計回し》も1マナの”対象に取る”呪文であれば何でもOKです。具体的なコンボ手順は下記の通りです。 コンボ途中で回収する呪文が変わるため、やや複雑な手順になっています。1.《島》を対象に《ぐるぐる》を唱える。2.《島》のコピーを生成し、対象にした《島》をアンタップする。(これで青2マナが出ます。)3.《渦巻く空、開璃》を対象に《時計回し》を唱える。4.《渦巻く空、開璃》のコピーを生成し、レジェンドルールにより《渦巻く空、開璃》の死亡時効果が誘発する。5.ライブラリーを6枚切削し、墓地の《ぐるぐる》と《時計回し》を回収する。1~5の手順を繰り返すと消費マナなしでライブラリーをすべて切削することができます。 その後、5で回収する呪文を変更するところから再開します。 6.《ぐるぐる》と《満潮》を回収する。7.《島》を対象に《ぐるぐる》を唱える。8.《島》のコピーを生成し、対象にした《島》をアンタップする。9.《満潮》を唱える。(これで《島》1枚から2マナが出ます。)10.《渦巻く空、開璃》を対象に、墓地から《反重力》をフラッシュバックコストで唱える。11.《渦巻く空、開璃》の死亡時効果で墓地の《ぐるぐる》と《時計回し》を回収する。12.《島》を対象に《ぐるぐる》を唱える。13.《島》のコピーを生成し、対象にした《島》をアンタップする。《満潮》の効果で《島》2枚から青4マナが出るようになるため、1~5の手順で繰り返した《ぐるぐる》と《時計回し》を唱える1ループで2マナずつ浮きます。 これで青無限マナになります。 無限マナにした後は、マナを増やすために使用していた《ぐるぐる》が不要になるため、《渦巻く空、開璃》のコピーを出すための”対象に取る”呪文1枚と自由枠1枚を回収することができます。 よって墓地のすべてのインスタント呪文とソーサリー呪文を回収することができます。無限マナかつ墓地のインスタントもソーサリーも使い放題な状態になったら速やかに勝つだけです。 道中で十分なストームカウントを稼ぎ、《思考停止》ですべての対戦相手のライブラリーを切削します。その後ターンを終了し、対戦相手のドローステップを迎えて勝利となるわけですね。 5.《神秘の聖域》無限コピー 《神秘の聖域》を無限にコピーし、無限マナにするルートです。 《水大工の意思》と《ゆらめく蜃気楼》は土地を対象に取りつつ1枚ドローすることができます。 《神秘の聖域》は墓地の呪文をライブラリートップに置くことができるので、《神秘の聖域》を対象に《水大工の意思》と《ゆらめく蜃気楼》を交互に唱えることで、《神秘の聖域》のコピーを増やしながらそれぞれをライブラリートップに置き、ドローし続けてループします。なお、これだと《水大工の意思》と《ゆらめく蜃気楼》の合計3マナが必要なことに対して、コピーで増える《神秘の聖域》2枚の2マナしか供給されないため、なにかでサポートする必要があります。 この時《満潮》を唱えていれば、コピーで増える《神秘の聖域》2枚から青4マナが出るようになり、《水大工の意思》と《ゆらめく蜃気楼》を交互に唱える1ループにつき青1マナが浮くので青無限マナになります。1.《満潮》を唱える。2.《神秘の聖域》を対象に《水大工の意思》を唱える。3.《万物の姿、オルヴァール》が誘発し、《神秘の聖域》のコピーを生成する。4.《水大工の意思》により1枚ドローする。5.コピーした《神秘の聖域》から青2マナを出し、《神秘の聖域》を対象に《ゆらめく蜃気楼》を唱える。6.《万物の姿、オルヴァール》が誘発し、《神秘の聖域》のコピーを生成する。この時、墓地の《水大工の意思》をライブラリートップに置く。7.《ゆらめく蜃気楼》により1枚ドローする。(これが《水大工の意思》なので、2に戻る。)2~7の手順を無限に繰り返せるので、無限マナとなります。 なお、《満潮》の代わりに《サファイアの大メダル》がある場合には、マナは増えないものの、無限《神秘の聖域》にすることはできます。無限《神秘の聖域》なので要するに次のアンタップを迎えれば無限マナですね。 また、《ルーンの大魔導師》がある場合には追加でドローができるようになるため、無限《神秘の聖域》+無限ドロー。ドローしたカードでさらに《神秘の聖域》をコピーし、《満潮》を回収することでマナも増やせるようになります。※《ルーンの大魔導師》は強制ドローなので、厳密にはコピーできる《神秘の聖域》の数は残りライブラリー枚数です。 プレイガイド+Tips ■《万物の姿、オルヴァール》を守ろう このデッキがやりたい動きには大抵《万物の姿、オルヴァール》が関わってくるため、彼(?)を戦場に維持することには大きな価値があります。 ゆえに対戦相手から見た時の除去の優先度は高いため、様々な手段で彼を守りましょう。除去呪文に対してはカウンター呪文で対処することもできますが、ゲームの展開上、いつも豊富にカウンター呪文が余っているわけではありません。 そこで、呪文の枠を取らない土地で除去から守れるカードを優先して採用しています。まず《群がりの庭》は昆虫などを再生することができるため、多相の戦士であり昆虫の《万物の姿、オルヴァール》を守ることができます。 能力の起動にマナが必要無いのが他4枚と比較して最も優れているポイントです。スタンダードでもお馴染みの《英雄の公有地》は呪禁と破壊不能を付与できるので、以後安全にコンボを進行できます。起動コストは少し重たいのですが、青マナを出せる点が優れています。戦場に出た際にクリーチャーをフェイズアウトできる《マダラの鉤爪門》。4マナ支払うと手札から戦場に出せるため除去をかわせます。 また、相手の《ドラニスの判事》などを一時的に退かす役割としても使える器用なカードでもあります。土地を置くだけで除去となるため、実質0マナの除去として活用できます。《ウルザの洞窟》は、ライブラリーから土地を直接戦場に出すことができます。タップ状態で戦場に出るため《群がりの庭》や《英雄の公有地》は起動できませんが、《マダラの鉤爪門》を出すことで《万物の姿、オルヴァール》を守ることができます。モダンでも大活躍の《水力発電の検体》は、戦場に出た際に単一の対象を取るインスタントやソーサリー呪文の対象を自身に変更することができます。《水力発電の検体》を身代わりに除去を回避しましょう。 ■時には割り切りも大事 ”除去から守る”という前の項目に反してしまいますが、《万物の姿、オルヴァール》が除去されてもOKと考えてプレイする場合もあります。 すぐに除去されたとしても、コピーして残るパーマネントが手札やマナの供給面で優れていればOK。次のターン以降にまた仕掛けなおすことができます。 除去から《万物の姿、オルヴァール》を守るカードがない場合には、除去のスタック上で複数のコピーを生成することを目指しましょう。《万物の姿、オルヴァール》が除去されると次にまた唱えるときに2マナ重くなってしまいますが、例えば《金粉の水蓮》をコピーできる場合だと3マナ増えるため、次のターン以降で実質的に使えるマナは増えます。 このような場合には《万物の姿、オルヴァール》を除去される前提でプレイすることもあります。 ■《大魔導師の名誉教授》《ルーンの大魔導師》のご利用は計画的に 「インスタントやソーサリー呪文を唱えるたびカードを1枚引く」という強力な効果を持つ《大魔導師の名誉教授》と《ルーンの大魔導師》ですが、強制ドローが自分の首を絞めることがあります。 無限コンボに入り、無限ドローだ!と楽しくドローしていると、強制ドローの彼らによりセルフライブラリーアウトとなることも。そんな場合には引いたカードの中から《渦巻く霧の行進》で全員をフェイズアウトさせることで負けを回避できます。 《大魔導師の名誉教授》や《ルーンの大魔導師》をコピーしている場合でも、手札の青のカードをコストとして複数体をたった1マナで退かすことができます。《渦巻く霧の行進》の他にも、《蒸気の連鎖》で全員を手札に戻す場合もあります。 《蒸気の連鎖》は自分の土地を生け贄に捧げることで呪文のコピーが生まれるため、複数体の《大魔導師の名誉教授》や《ルーンの大魔導師》をコピーした場合でも、それが土地の数以下なら手札に戻し切ることができます。なお、《大魔導師の名誉教授》は「魔技」により呪文をコピーすることでもドロー効果が誘発してしまいます。《蒸気の連鎖》のコピーでもドロー効果が誘発してしまうため、残りのライブラリーの枚数に気を付けてプレイする必要があります。 ■実は使い道多数の《水流破》 《水流破》は対赤の呪文とパーマネントに非常に有効なカードですが、このデッキでは対すべての色のカウンターや除去となることがあります。 《ヴォルラスの気まぐれ》や《現実の修正》は対象の呪文やパーマネントの色を変更する効果を持つので、そのカードの色を赤にすることで《水流破》が万能カードに化けます。また、《水流破》は《ヴォルラスの気まぐれ》などが無くても、赤でないパーマネントを”対象に取る”ことができます。よってコピー生成のために使用することもできるため、対戦相手に赤いデッキがいない場合も使い道があります。 ■《時計回し》をうまく使おう 一見地味なカウンターを増減させる効果は、時に自身のパーマネントの強化や相手の妨害を行うことができます。 例えば《両生類の神童》の+1/+1カウンターを増やしてドローしやすくしたり、《神秘的負荷》の経年カウンターを取り除いて次のターンに維持しやすくしたりなど。 相手のパーマネントに対しては逆の増減を行うことで妨害も可能です。 その他にも自分の《一つの指輪》の重荷カウンターを増やしてドローを増やしたり、地味な使い方がたくさん! ”対象に取る”呪文の採用優先度 ”対象に取る”呪文はマジック30年の歴史の中で数えきれないくらい登場しています。 今回ご紹介したリストに採用されている各カードたちには、優先するだけの理由が存在しています。 というわけで、ここでは僕が採用する上で優先していることをまとめました。 今後”対象に取る”呪文が新規収録された際に、採用するかの判断基準にもなりますので、ぜひ参考にしてみてください。 【優先度高】マナを増やせるカード 《ぐるぐる》《夢の掌握》《見えざる糸》など。《万物の姿、オルヴァール》がいれば土地のコピーを増やしながら土地を起こせるため、マナを増やせるのが強みです。 各種コンボルートでも頻出の彼らは”対象に取る”呪文界のエース。 現在はこの3枚しかないので、似たカードがもっと増えてほしい!《魔力のタップ》も無色マナのみですが一時的に大幅なマナ加速が可能です。 【優先度高】コンボルートに含まれるカード 《ヴォルラスの気まぐれ》《時計回し》《理性のゲーム》《反重力》など。 バイバックや1マナのフラッシュバックなど、無限コンボのルートに含まれる呪文です。 これらの呪文はバイバックコストを払わない場合、1マナで唱えられることも優秀です。 【優先度中】複数回使えるカード 《幻色染め》《現実の修正》《特質改竄》など。 回顧・フラッシュバック・暗号など、カード1枚で2回以上使えるカードは、”対象に取る”呪文不足で動けなくなることを防ぎます。 フラッシュバックなどは単純に強力な効果なので、他の”対象に取る”呪文よりもマナ・コストが重たくなりますが、複数回使えるメリットの方が大きいです。 【優先度中】手札が減らないカード 《水大工の意思》《ゆらめく蜃気楼》《熱風の変転》《ひきつり》など。 1枚ドロー付きで”対象に取る”ことができるため、ゲーム中盤に手札を減らさず《島》などをコピーし、盤面のリソースを増やす動きが可能です。 《万物の姿、オルヴァール》がいない場面でも最低限キャントリップ呪文として働きます。 【優先度中】インスタントであること 《万物の姿、オルヴァール》が除去の対象になった際に、スタック上で複数のコピーを生成することができるため、インスタント呪文であることが優先されます。 【優先度低】対象に取れる範囲が狭い 《たなびく紺碧》《ミジウムの外皮》《本質の変転》など。 《万物の姿、オルヴァール》は状況に応じて土地やアーティファクトをコピーしたい場合も多いため、クリーチャーしか対象に取れないカードの優先度はあまり高くありません。 一方で、《ミジウムの外皮》や《本質の変転》など《万物の姿、オルヴァール》や《大魔導師の名誉教授》といった、強力なクリーチャーを守れるカードについては数枚採用することもあります。今回のリストでは《本質の変転》だけを採用しています。 《本質の変転》は《万物の姿、オルヴァール》でコピーできない状況でも《呪文探求者》や《粗石の魔道士》をブリンクし、必要なカードをサーチできるため、優先して採用しています。 採用候補カード 最後に、今回のリストでは採用していないものの、過去に採用していたり、今後環境の変化などで採用する可能性のあるカードをご紹介します。自身に影響が少ない、対戦相手への妨害カードです。 《基本に帰れ》を採用する場合は《アカデミーの廃墟》や《水辺の学舎、水面院》などが影響を受けてしまうため、有効に使えるタイミングが限られており、優先度がやや低い土地は《島》に変更します。 《水辺の学舎、水面院》は《一つの指輪》をアンタップできることが強みですが、現在のリストではそれ以外にアンタップするカードはありません。 ちなみに自身のパーマネント以外もアンタップできるため、ごくまれに対戦相手の《一つの指輪》をアンタップして妨害手段を引いてもらうこともあります。《呪われたトーテム像》や《墓掘りの檻》は自身の《歩行バリスタ》や《失われた宝物庫の学者》に影響するため今回採用していませんが、友人との対戦などで明確に対策が必要な場合には採用することもあります。 インスタントやソーサリー呪文のコスト軽減が優秀なカード。 特に《遵法長、バラル》は呪文を打ち消した際のルーティング能力も高頻度で誘発するため優秀です。 《研究所荒らしの事件》は事件を解明することでドロー効果を持ちますが、この条件達成がなかなか難しい! こちらは事件解明後の効果をはじめから持つ、《ルーンの大魔導師》の登場により席を譲ることになりました。《両生類の豪雨》という一度に複数体の対処が可能な強力な除去を得たため枠を譲っています。 現在は1マナの除去として《蒸気の連鎖》や《渦巻く霧の行進》を採用していますが、対戦環境によって早いターンでの除去が必要な場合には増量する場合もあります。 ライブラリーが無い状態での最も簡単な勝ち手段。 このデッキでは《切望の宝石》や《渦巻く空、開璃》を用いたコンボルートでライブラリーを空にした際には、ドローや回収したカードで無限マナとすることができるため、《歩行バリスタ》や《思考停止》で勝つことができます。《歩行バリスタ》は《流浪のドレイク》などを用いた他の無限マナコンボでも有効です。また、《思考停止》は《渦巻く空、開璃》で回収できる勝ち手段であり、対戦相手が「教示者」カードでライブラリーの上に置いたカードを切削させるなどの妨害としても使用できます。よって《タッサの神託者》に比べて他の場面での使い道が多い《歩行バリスタ》と《思考停止》を優先しています。《万物の姿、オルヴァール》によりコピーすると1マナで呪文や能力をカウンターできるようになります。 《万物の姿、オルヴァール》をプレイする際にも、彼らが既に戦場に出ていれば”対象に取る”呪文がカウンターとして働くため、《万物の姿、オルヴァール》が生き残りやすくなります。 現在のリストでは元のマナ・コストが重たいことを懸念して不採用としています。対戦相手が呪文を唱えるコストが2マナ多くなるため、除去やカウンターが飛んでくる枚数が少なくなりコンボを決めやすくなります。 無限コンボまで行かずとも、《王神の立像》を複数コピーすれば対戦相手が1枚も呪文を唱えられない状況になることもあります。 このように強いカードではあるものの、6マナという重さかつ出したターンの盤面に影響を及ぼさないことが弱点。 このカードはヘイトが高く、場に出すと攻められる展開となり、このデッキは攻撃された際に盤面を止められるクリーチャーが少ないため、不採用としています。 おわりに 《万物の姿、オルヴァール》の統率者デッキをご紹介しました! 「変わった面白いデッキだな~」と少しでも思っていただけていたら幸いです! 無限コンボを抜きにしても、強力なパーマネントのコピーが増えていく楽しさは他のデッキでは味わえません!”対象に取る”呪文は今後の新セットでも高頻度で登場すると思います。 「もしかしたらこれ、《万物の姿、オルヴァール》で使えるかも?」と毎回新セットごとに胸をときめかせられるのも、この統率者の魅力です!

【週刊メタゲーム通信】禁止改訂後の地域CS予選を制したのはまさかのエネルギー!?

週刊 Modern

2024.12.24

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週は禁止改訂後、初となるモダンによる地域チャンピオンシップ予選の結果から、最新のモダン環境のデッキを紹介していきます。 ボロスエネルギー Modern Qualifier : 優勝 By A_Turtle 4枚のカードが解禁され、エネルギーに大きなメスの入った禁止改訂。その後に初めて行われたモダンによるチャンピオンシップ予選を見事制したのは……なんとボロスエネルギーでした!当然、解禁された4種のカードは採用されていません。《色めき立つ猛竜》《一つの指輪》《湧き出る源、ジェガンサ》の3種の必須カードを失っても競技トーナメントで優勝してしまうとは……恐ろしい。《色めき立つ猛竜》を失ったスロットに採用されているのは《溌剌の牧羊犬、フィリア》。攻撃時の能力で相手のブロッカーを排除したり、自分のクリーチャーを追放することで能力を再誘発させるのにも便利です。《ナカティルの最下層民、アジャニ》のトークンが増えるだけでも強力ですね。そしてその《溌剌の牧羊犬、フィリア》と噛み合うのが《歴戦の紅蓮術士》。《一つの指輪》《色めき立つ猛竜》と2種のリソースカードが禁止になったことで、実は今、密かに話題となっているカードです。手札の《火の怒りのタイタン、フレージ》を捨てつつカードを引けるので、脱出に貢献しながらカードを引ける素晴らしいカード。《溌剌の牧羊犬、フィリア》で追放するとかなりお得です。《静牢》が0枚で代わりに《岩への繋ぎ止め》が採用されているのは、《色めき立つ猛竜》が禁止なった影響かもしれません。現在のボロスエネルギーはエネルギーを貯める方法が《魂の導き手》《電気放出》のみとなっており、《静牢》に支払うエネルギーが重く感じる場面も増えるでしょう。先手2ターン目の《超能力蛙》に対して《静牢》を置き、こちらの《魂の導き手》が除去され、エネルギーを支払えない……なんてシチュエーションが目に浮かびます。サイドボードは禁止改訂後をしっかりと見据えて《溶融》が採用されています。《オパールのモックス》を採用したデッキに対して突き刺さるので、赤いデッキのサイドボードの定番になりましたね。ディミーア眼魔が赤をタッチしている場合もあるほどです。《魔道士封じのトカゲ》はストーム対策の定番。これまでティムールブリーチには、《一つの指輪》を置かれてプロテクションで無効化されてコンボを決められたり、《一つの指輪》で引いたカードで除去を喰らい、まともな対策カードとして機能しませんでしたが、《一つの指輪》の禁止により価値が上がりました。ルビーストームとブリーチコンボはどちらもエネルギーが苦手としているデッキなので、4枚採用も納得です。禁止改訂によってエネルギーは大幅な弱体化を強いられましたが、《一つの指輪》の禁止はむしろエネルギーにとっては追い風でした。エネルギーは自分で《一つの指輪》を使ってはいましたが、相手の《一つの指輪》に対してほとんど無抵抗だったのは、大きな弱点でした。《一つの指輪》禁止によって多くのデッキとの相性が改善されたため、むしろ《一つの指輪》の禁止はエネルギーにとってプラスに作用しているのです。禁止改訂ですべてを失ったかのように思われたボロスエネルギーが、見事予選を勝ち抜いたのでした。 ジェスカイコントロール Modern Qualifier : 8位 By  Viatt 《一つの指輪》を失ったデッキはモダンに数多くありますが、その中でも最も致命的だと思われていたのがコントロールデッキ。《孤独》や《否定の力》などのピッチスペルでモダンの理不尽な攻めをさばき、《一つの指輪》で延命しながらリソースを回復するのが最近のコントロールデッキでした。その中核を担う《一つの指輪》の禁止で、最早モダンにおいてコントロールデッキは成立しないのでは?と言われていたほどです。しかし、ジェスカイコントロールが本トーナメントで入賞し、コントロール使いたちを安心させました。《一つの指輪》によって無限のリソースを得ることができなくなったので、ピッチ呪文は《否定の力》のみになりました。ズルいことができなくなったので、まっとうにマナを支払って盤面をコントロールするようになったのです。アドバンテージ源は《アノールの焔》。ウィザードがいることで除去しつつ2ドローできる便利なインスタントで、肝心のウィザードは《瞬唱の魔道士》《知りたがりの学徒、タミヨウ》です。《瞬唱の魔道士》は《アノールの焔》をそのまま使い回すのが強力。もちろん《対抗呪文》になって打ち消すなど、その役割は無限大。このデッキのキーカードと言って良いでしょう。もう1人のウィザードである《知りたがりの学徒、タミヨウ》も《アノールの焔》と抜群の相性。3ターン目に《アノールの焔》を除去+2ドローで打ってそのまま《老練の学匠、タミヨウ》に変身させればウィンコンディションです。どちらのウィザードもアドバンテージを獲得できるので、《アノールの焔》とあわせて、《一つの指輪》を失った穴を埋めています。デッキが非常に軽いので《表現の反復》を採用できるのも面白いですね。コントロールで使う《表現の反復》は、土地を追放しつつ手札にスペルを入れるだけで、実質土地を並べながら手札を1枚増やすことしかできない場合が多く、あまり採用されていませんでした。このデッキならば強いカードを手札に入れながら《知りたがりの学徒、タミヨウ》展開や1マナ除去と動くことができます。これまではアドバンテージ獲得手段を《一つの指輪》に頼り切っていたので、打ち消しが入ったデッキを実は苦手としていました。その筆頭がディミーア眼魔です。除去で1対1交換を繰り返すのですが、最終的にこちらの手札を増やす手段である《一つの指輪》を狙い撃ちされ、《火の怒りのタイタン、フレージ》以外での勝ち目がない状態でした。しかし、現在は《知りたがりの学徒、タミヨウ》《瞬唱の魔道士》《アノールの焔》《表現の反復》と様々な手段で手札を増やせるので、《超能力蛙》《忌まわしき眼魔》を除去しながら、手札をしっかり補充できるようになりました。個人的にはこの形のジェスカイコントロールはディミーア眼魔に有利だと思っています。ディミーア眼魔側がジェスカイを意識し始めて《オークの弓使い》をメインに4枚採用することになったら、また話は変わってきそうですが。細かくアドバンテージを稼ぎながら、最終的に大量に溜まった墓地を喰らって何度も蘇る《火の怒りのタイタン、フレージ》がゲームを終わらせる動きは強力無比。モダンのコントロールはまだ死んでいません。それを結果が証明してくれました。 ティムールブリーチ Modern Qualifier : 7位 By Ale_Mtg ここまで禁止組の躍進を紹介してきたので、最後は解禁組の中で一番勢いのあるティムールブリーチを取り上げましょう。《死の国からの脱出》と《研磨基地》による無限コンボで勝利するティムールブリーチ。《知りたがりの学徒、タミヨウ》《湖に潜む者、エムリー》と強力な伝説クリーチャーを8枚使えるので、《モックス・アンバー》を採用することができ、爆発的な展開が可能でした。当然、《オパールのモックス》もデッキに加わります。《ミシュラのガラクタ》《モックス・アンバー》など0マナのアーティファクトが大量に入っているので、《オパールのモックス》が強く使えるデッキの1つです。《湖に潜む者、エムリー》で墓地から戻したり、《知りたがりの学徒、タミヨウ》で攻撃した際に出る手がかりもアーティファクトなので、金属術には事欠きません。《モックス・アンバー》《オパールのモックス》でモックス8枚体制となっているため、回った時の凄まじさはレガシーやヴィンテージに近いものがあります。1ターン目に《知りたがりの学徒、タミヨウ》から《モックス・アンバー》と《ミシュラのガラクタ》と《オパールのモックス》。2マナで《邪悪鳴らし》を打ち、次のターンに《死の国からの脱出》と《研磨基地》で2ターンキルなんてことも可能です。元々は《一つの指輪》が採用されていたデッキなので、禁止改訂による弱体化はしているのですが、《オパールのモックス》はそれを補って余りあるパフォーマンスを発揮してくれます。さて、コンボについて簡単におさらいしましょう。《研磨基地》はタップすることでカードを3枚切削できるアーティファクト。戦場にアーティファクトが出ることによりアンタップできます。そこに《死の国からの脱出》と0マナのアーティファクトが加わるとどうなるかというと……1.《研磨基地》で0マナアーティファクトを生け贄に捧げる。カードを3枚切削。2.《死の国からの脱出》で0マナアーティファクトを脱出で唱える。3.0マナアーティファクトが場に出たので《研磨基地》がアンタップする。4.再び《研磨基地》で0マナアーティファクトを生け贄に捧げ、1~3がループ。これによって自分のライブラリーが0枚になる。5.最終的にライブラリーが0枚の状態で《タッサの神託者》が出てきて勝利となります。従来のブリーチコンボは、《死の国からの脱出》と《研磨基地》によるコンボを決めた最後のフィニッシャーは《タッサの神託者》でした。これはコンボ時に浮くマナが青マナなため、最終的に青いカードでフィニッシュする必要があったからです。(0マナアーティファクトが《モックス・アンバー》だと、《知りたがりの学徒、タミヨウ》か《湖に潜む者、エムリー》がいる状態で青マナが出るので、1回《モックス・アンバー》を脱出するごとに青マナが浮きます)しかし、《オパールのモックス》が加わったことで、好きな色マナを出せるようになりました。そこでこのリストでは、コンボ以外に役に立たない《タッサの神託者》が抜け、《ぶどう弾》が採用されています。《ぶどう弾》ではストームが足りない可能性がある、と不安になる方もいるかもしれませんが、実際は墓地に落ちた《ぶどう弾》をもう1度脱出して唱えることができるため、相手が無限ライフなどでない限りは《ぶどう弾》で削れます。エネルギーなどに対しては除去としても優秀なので、《タッサの神託者》から《ぶどう弾》への変更は素晴らしいですね。このティムールブリーチコンボは《オパールのモックス》を使うデッキの中でも随一の爆発力を誇るデッキで、それゆえに《溶融》が流行してしまうほど。今後はサイドボード後の《溶融》といかにして戦うかが、ティムールブリーチの課題となりそうですね。

【今週のピックアップデッキ】エスパーピクシー/スゥルタイ眼魔/ディミーアアスモフード

週刊 Modern Pioneer Standard

2024.12.20

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 エスパーピクシー(スタンダード) MOリーグ:5-0 By Trellon 『ダスクモーン:戦慄の館』はエンチャントがメインのセット。そこで生まれたアゾリウスエンチャントは環境初期に活躍し、今でもその姿をトーナメント上位で見かけます。そんなアゾリウスエンチャントとは一線を画した新たなエンチャントデッキが、このエスパーピクシー。デッキ名になっている《養育するピクシー》はもちろんエスパーピクシーの主役。土地かフェアリーでないパーマネントを戻すことで1マナ2/2飛行になるピクシーを活かしたデッキです。どう活かすのか。それはもちろん戦場に出た時に恩恵をもたらすエンチャントとの組み合わせです。《望み無き悪夢》や《嵐追いの才能》、《チビボネの加入》などを使い回し、アドバンテージを得ていきます。エンチャントを出し直すので、違和感を持つカードとの相性は抜群です。《呑気な物漁り》を何度も誘発させることができ、序盤に出していた《養育するピクシー》がどんどん大きくなり、あっという間に対戦相手のライフを削り取ります。《孤立への恐怖》はこのデッキに欠かせない存在です。自身がエンチャントなので違和感を誘発させつつ、先ほど紹介した、戦場に出た時に効果を発揮するカードを戻します。戻すカードと言えばもちろん《この町は狭すぎる》も採用されています。もはや《嵐追いの才能》と《この町は狭すぎる》はセットになりましたね。レベル2で《この町は狭すぎる》を回収して《嵐追いの才能》に打ち、再び唱え直してレベル2にで《この町は狭すぎる》……とこのようにループを形成できます。《この町は狭すぎる》は自分のパーマネントも2枚戻すことができますが、このデッキでは特にその使い方が多そうです。《望み無き悪夢》と《チビボネの加入》を戻して出し直すだけで相手は嫌な顔をすること間違いなし。赤アグロに必殺の《幽霊による庇護》もメインから4枚採用されており、殺意を感じます。普通のエンチャントデッキに飽きてしまった方には特におすすめです! スゥルタイ眼魔(パイオニア) MOリーグ:5-0 By sloth_thopterist 《叫ぶ宿敵》や《悪夢滅ぼし、魁渡》に《ホーントウッドの大主》など、スタンダードやパイオニアで大活躍するカードが多数収録されている『ダスクモーン:戦慄の館』。その中でも最も広い環境で使われているカードと言えば《忌まわしき眼魔》ではないでしょうか。モダンでは《濁浪の執政》より優先して採用されるようになり、ディミーア眼魔というアーキタイプが生まれ、スタンダードでは《僧院の導師》を押しのけてアゾリウスメンターをアゾリウス眼魔に改名させました。そんな《忌まわしき眼魔》が主役となるスゥルタイ眼魔。他のデッキが《忌まわしき眼魔》を《救いの手》や《発掘》でリアニメイトするのに対し、このデッキでは手札から普通に唱えるのが基本です。《忌まわしき眼魔》は6枚の墓地を必要とするので、切削カードが大量に入っています。《サテュロスの道探し》、《アーボーグのルアゴイフ》で墓地を肥やし、《忌まわしき眼魔》へと繋げていきます。《上げ潮、キオーラ》は墓地を肥やしながらスレッショルド達成時には大きな恩恵を受けられるクリーチャー。《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》のマナクリ8枚体制なので、後半これらのカードが不要になり、その際にも《上げ潮、キオーラ》は役に立ちます。もちろん《忌まわしき眼魔》を踏み倒す手段もきちんとあります。まずは《集合した中隊》。デッキに入っているクリーチャーカードはすべて3マナ以下なので32枚のカードがヒットします。《集合した中隊》を強く使うためには「いかに強い3マナクリーチャーをたくさん採用するか」がカギとなりますが、《忌まわしき眼魔》《上げ潮、キオーラ》はいずれも申し分ない性能です。《ホーントウッドの金切り魔》もターン終了時に出てきた際は脅威ですね。そしてもう1つの踏み倒し手段が《異界の進化》。生け贄にしたクリーチャーのマナ総量+2までのクリーチャーをサーチできるソーサリーで、《ラノワールのエルフ》が《忌まわしき眼魔》に進化します。1ターン目に《ラノワールのエルフ》から2ターン目に《異界の進化》で《忌まわしき眼魔》と、2ターン目《忌まわしき眼魔》着地も容易です。かなりの脅威となること間違いなし。墓地を活用するデッキに見えますが、サイドから《安らかなる眠り》などを置かれても特に問題ないのがこのデッキの魅力。《異界の進化》と《集合した中隊》は関係ありませんからね。《墓掘りの檻》はこの2つが止まってヤバいですが、逆に墓地を肥やして手札から《忌まわしき眼魔》を出す分には関係ありません。様々な角度から攻められるデッキで、とても楽しそう!《忌まわしき眼魔》をパイオニアで使い倒したいならスゥルタイ眼魔で決まり! ディミーアアスモフード(モダン) モダンリーグ:5-0 By TBagTom モダンで解禁された4枚の禁止カードたち。その中でも最もインパクトがあるのは、やはり0マナで置けるマナ加速・モックスの1つ、《オパールのモックス》。アーティファクトが3つ戦場にあれば好きな色マナが出せる《オパールのモックス》は、レガシーやヴィンテージでも採用されることがあるほど強力なモックスです。そんな《オパールのモックス》は鱗親和やハンマータイムなど、アーティファクトを主体とするデッキに早速組み込まれ、モダンのトーナメントで活躍し始めています。本日ご紹介するのは《オパールのモックス》を使うデッキの中でも異質な存在、アスモフード。アスモフードの主役となるのは《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》。名前を覚えるのが最も困難なこの伝説のクリーチャーは、戦場に出た時に《地獄料理書》をサーチします。その《地獄料理書》は手札を捨てると食物トークンを生むアーティファクトで、その食物を2つ生け贄に捧げることで、《アスモラノマルディカダイスティナカルダカールル》の能力でクリーチャーに6点のダメージを飛ばすことができます。手札を失って食物を出す《地獄料理書》は単体ではさほど機能しませんが、《楕円競走の無謀者》とすさまじいシナジーを発揮します。《楕円競走の無謀者》はアーティファクトが戦場に出るたびに墓地から手札に戻ってくるカードなので、《地獄料理書》で《楕円競走の無謀者》を捨てると食物が出て、《楕円競走の無謀者》がそのまま手札に戻ってくるのです。つまり、《地獄料理書》で何も失うことなく食物を生成し続けられます。タダで食物を得られるエンジンが出来上がるとアスモフードの本番は始まります。《地獄料理書》が2枚あれば《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》で毎ターンクリーチャーを除去できますし、アーティファクトがたくさんあれば《河童の砲手》を1マナで出しつつ、毎ターン《地獄料理書》を起動するだけで《河童の砲手》が強くなっていきます。《地獄料理書》は《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》と《ウルザの物語》の2枚でサーチできるため、場に複数枚並べるのは難しくありません。《バシム・イブン・イスハーク》もアスモフードを支える1枚。歴史的な呪文、つまりアーティファクトか伝説のクリーチャーか英雄譚を唱えると、1ターンに1回1ドローできるので、デッキ内のほとんどのカードに反応してくれます。というか《バシム・イブン・イスハーク》でカードを引けないのは《楕円競走の無謀者》と《通りの悪霊》だけ。その他のすべてのスペルでドローできてしまうのです。《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》《楕円競走の無謀者》を引かないとリソースが削られていってしまうだけのデッキだったので、《バシム・イブン・イスハーク》の加入は大きく、これでデッキがグッと引き締まっています。先ほどご紹介した《河童の砲手》もアスモフードを強化してくれました。盤面では強いデッキである一方、早いクロックは《ウルザの物語》しかなかったので、それなりにゲームが長引いてしまうのが弱点でした。《河童の砲手》は超強力なアタッカーで、しかも《溶融》に巻き込まれないので、サイド後は特に活躍します。《湖に潜む者、エムリー》と《河童の砲手》は《溶融》に強いですし、《地獄料理書》は壊れてしまうものの、《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》《バシム・イブン・イスハーク》も《溶融》に巻き込まれないので、《オパールのモックス》を使うデッキの中で最も《溶融》耐性があるデッキかもしれません。アスモフードは一度手にすれば病みつきになるデッキ。もちろん僕もアスモフードファンの一人。このディミーアアスモフードも大好物です。ガチャガチャとカードを動かして勝つのが好きならたまらないデッキです。ピンと来た過多はぜひ回してみてください。

赤アグロをやっつけろ!"アグロキラー"の異名を持つ白単コントロールを徹底解説!

Standard ピックアップ

2024.12.19

Akira Kobayashi

 皆さん、こんにちは! 「へいか」こと 小林 輝(@enzyutuheika)です。 記念すべき第一弾であるパイオニアのイゼットフェニックス記事についてご好評いただきありがとうございました。 今回はスタンダードのプレミアム予選で使用してきた白単トークンについて解説していきます! 白単トークンってどんなデッキ?  まずこの白単トークンについて簡単に紹介します。 ソーサリーの《剣を鍬に》こと《軍備放棄》を筆頭に、《失せろ》《魂の仕切り》《太陽降下》といった優秀な各種除去で相手の脅威に対して対応。  ついでに《人参ケーキ》《跳ねる春、ベーザ》でライフもゲインしてゲームをとにかく引き延ばします。  そして《人参ケーキ》《噴水港》などの各種トークン生成手段で《永劫の無垢》《世話人の才能》のドローエンジンを動かし、引き込んだ除去で相手の脅威を延々と対処し続けます。  そのまま相手が息切れしたところにアドバンテージ差をつけて圧し潰す……というボードコントロールデッキですね。 利点としては、やはり白単色で色事故とは無縁なところ、そして現在スタンダード環境で大きな存在感を示している赤アグロデッキに強い点が挙げられます。 特に4枚積みされている《跳ねる春、ベーザ》は1枚で4/5、1/1、1/1が並ぶだけでなく4点もゲインすることから、赤アグロには一つのゴールになり得る一枚です。 一方で欠点は、固定枠が多すぎることと、白単色による幅の狭さによってゲームプランが固定されてしまっているところ。そして物理的に時間が足りない点です。 デッキとしてのゲームレンジは非常に低速で、クリーチャーも1/1のトークンや2/1の《永劫の無垢》などの低パワーが中心のため、速やかに終わらせるようなプランを取ることもほとんどできません。 《世話人の才能》レベル3による+2/+2もトークンがある程度数揃っている必要があり、レベル3まで5マナかかるなど相応にお膳立てが必要です。《血滾りの福音者》やタッチ赤で《イモデーンの徴募兵》を入れ、ゲームを畳みに行くプランを取ったリストも考えられますが、中核となる「耐え忍んで後から勝つ」というプランとマッチしておらずデッキ全体の完成度が落ちてしまいます。 このように軸をずらすという器用なことがしづらい不器用なデッキです。大変かわいいですね。  そのため不利な相手にはとことん不利で、具体的にはスケール負けする4cズアーや、コンボを止めづらいティムールカワウソなどを苦手としています。 メインボードのリストおよび解説  プレミアム予選で使用したリストは下記の通りになります。  メインに《エルズペスの強打》2枚、《別行動》1枚で赤アグロおよびディミーアミッドレンジへのガードを上げている形です。 採用しているカードを一つ一つ解説していきましょう。 《エルズペスの強打》  1マナで3点かつ追放するいわゆるレンジストライク。 《心火の英雄》《永劫の好奇心》を1マナで追放できるのは素晴らしいの一言です。 一般的に白単トークンのメインボードでは1マナインスタント除去を採用していないため、赤アグロが《巨怪の怒り》をリスクなく唱えられてしまう点がどうしても気になりました。  特に後手を取ってしまうといかに有利と言えども1マナ除去がない時にブン回られてしまうと押し切られてしまう事もしばしば。 そこでサイドボードから2枚メインボードに移しました。同じく最多勢力の一角であるディミーアミッドレンジに対しても強い一枚ですしね。(《永劫の好奇心》を追放できるのがえらい!) 競合先としてはファウンデージョンズで追加された1点ゲインのおまけがついている《突き通し》ですが、先述した通り、追放できる点を考えるとやはりこちらの方に軍配が上がりそうです。 《軍備放棄》  白単にする最大の理由です。このデッキでは《噴水港》《沈んだ城塞》以外は全て平地であるため、ほぼ1マナの追放除去として機能します。  育ってしまった《心火の英雄》に対する最高の回答と言えます。 3点を回復させるデメリットも、ボードをコントロールしてから捲り返すこのデッキではほとんど気になりません。 動きがもっさりしがちなこのデッキにおいて、3ターン目に《軍備放棄》で対処しつつ《失せろ》《魂の仕切り》《人参ケーキ》などのダブルアクションに繋げられるのも高評価点です。  赤アグロはもちろん、勝ち手段をクリーチャーに依存しているミッドレンジ系にも有効な一枚。これが4枚から動くことはほぼないでしょう。 《失せろ》  アーティファクトがほとんど採用されない現環境においてはほぼ万能除去として機能します。(厳密に言えば《除霊用掃除機》などは存在しますが、白単トークンには入れてこないので考慮しないものとしています)  対処できなくて困るのは《ウラブラスクの溶鉱炉》ぐらいいでしょうか。 地図トークンを与えるデメリットはあれど、サイズに関係なく対処できる除去ばかりなのでそこまで気にならない……と言いたいのですが…… 赤アグロには《心火の英雄》と《熾火心の挑戦者》の雄姿を誘発させてしまいます!! これは小さくないマイナス点です。 とはいえこれより強い除去もないですし、《叫ぶ宿敵》や《悪夢滅ぼし、魁渡》などに対する貴重な対処手段でもあるので、これも同じようにほぼ4枚固定と言ってもよいです。 《魂の仕切り》  追加の《失せろ》として2枚ほど入っています。  赤アグロの《ウラブラスクの溶鉱炉》を対処できる数少ないカードでもあります。  2マナ多くなる代わりに再度唱えられてしまうのですが、白単トークンとマッチしていることから採用されています。 というのも、この白単トークンは序盤さえ乗り切ってしまえば後から《永劫の無垢》《世話人の才能》でいくらでもアドバンテージを稼ぐことができます。  2マナインスタントでテンポも取れる《失せろ》《魂の仕切り》は序盤を凌ぐのにうってつけな一枚であるため、この部分が評価されているというわけですね。 自分のパーマネントも対象に取れるため《跳ねる春、ベーザ》を対象にして再利用したり、相手の除去に合わせて実質バウンスのような用途としても利用できます。 《人参ケーキ》  ブルームバロウのリミテッドではトップコモンの一つとして数えられており、構築でもこの白単トークンで重宝されています。《世話人の才能》および《永劫の無垢》との相性が最高によく、1/1兎トークンは先述した2枚とも誘発のトリガーにもなり、占術でこの2枚や除去などその時に欲しいカードを探し出すことができます。※トークン生成と占術は一連の流れであるため、《世話人の才能》《永劫の無垢》がいる時は先に占術で確認してからドローすることになります。 起動能力ではインスタントで同じ効果を誘発させつつ、序盤を乗り切るための3点ゲインも行います。  このようにデッキとしての方向性・シナジー共に全て噛み合っている一枚です。デッキの基幹となるため、4枚から動きません。 《世話人の才能》  白系トークンというアーキタイプを成立させたカード。もちろん4枚です。 1ターンに1回の制限があるとはいえ、トークンを出す全ての効果に「1枚ドローする」という一文がつく強さは皆さんもおわかりでしょう。  これらに加えてレベル3の+2/+2によってフィニッシャーとしての役割も兼ね備えています。 ただし、3ターン目に出すと盤面に影響を与えることなくターンが終わってしまうため、4ターン目でレベル2も解決してトークンをコピーしつつ、1ドローまでするという形が望ましいです。  そのため3ターン目のアクションとしては《沈んだ城塞》のタップイン処理or《軍備放棄》+《人参ケーキ》、もしくは《永劫の無垢》などでお膳立てするとよいでしょう。 ちなみにレベル3にするとトークンが3/3になってしまい、パワー2以下が条件である《永劫の無垢》でドローできなくなる点は留意したいところです。 《永劫の無垢》  出すトークンがいずれもパワー2以下であるため、《世話人の才能》と合わせて8枚のドローソースになります。  《世話人の才能》と異なるのは本体が2/1絆魂のスタッツを持つところで、壁にもなりつつ除去耐性を持ち合わせているため3ターン目のアクションとしても最適です。 ティムールカワウソには追放除去である《塔の点火》があるため、エンチャント破壊がないメインボードではチャンプブロックになってでもエンチャントにしておくことをお勧めします。 《別行動》  主に赤アグロを見て《太陽降下》1枚をサイドボードに移して投入。  赤アグロには《太陽降下》が間に合っていないのが最大の理由で、《一時的封鎖》ではこちらのトークンごと巻き添えになってしまったり《叫ぶ宿敵》が倒せなかったりしたのでこちらを採用しました。 ディミーアミッドレンジに対して《幻影の干渉》をケアしつつ唱えられる点も評価しています。 《大天使エルズペス》 《世話人の才能》《永劫の無垢》の下で継続的にトークンを出せる手段として採用しています。  +1からスタートすれば忠誠度が5とそこそこ硬く、出てくるトークンも絆魂を持つためゲームを長引かせるという目的にフィットしています。 ただ《世話人の才能》《永劫の無垢》ありきであり、この2枚が絡まないと弱いと感じることが多く、元々は2枚だったのですが1枚に減らしました。 ディミーアミッドレンジに対してブロッカーとして機能する2/1飛行を二体出せる《ミストムーアの大主》に枠を譲った方がいいかなと感じています。 《跳ねる春、ベーザ》  赤アグロに対する一つのゴールであり、ゲームプランの中核として働きます。  4点ゲインする上に4/5のサイズは《巨怪の怒り》込みでないと突破できず、何らかの手段がない限りは相打ちに持って行くことができるためアクションを強要させることが出来ます。 手札に《跳ねる春、ベーザ》がある場合、《人参ケーキ》から出る兎トークンをチャンプブロックさせるなどクリーチャーの数を調整することを常に考えていく必要があります。 また《軍備放棄》で相手をゲインできるため、先に《軍備放棄》でライフやハンドを調整するなどで最大限バリューを取っていく動きを心掛けていきましょう。 土地が相手より少ない時に出る宝物トークンを忘れやすいので、まず土地の枚数を確認する癖を身につけておくと良いです(戒め) ミッドレンジに対しても強いため4枚採用としていますが、最近は《跳ねる春、ベーザ》が強いマッチが赤アグロとゴルガリミッドレンジぐらいになっているため、サイドに1枚散らしているリストも散見されます。 《ミストムーアの大主》  2/1飛行トークンを二体出す効果はシンプルながら強力。壁役として活用してもよし、《世話人の才能》レベル2でコピーしてもよし、レベル3で4/3飛行にしてもよし。  兆候4もとにかく長引かせるこのデッキにはフィットしており、《太陽降下》で荒地にした後に顕現させるとほぼゲームが終わります。 上記のリストでは採用枚数が1枚となっていますが、飛行が多いディミーアミッドレンジに対して強く、このデッキがトップメタになりつつある現在では2-3枚に増量すべきでしょう。 《太陽降下》  スタンダード最強の全体除去。  追放と同時に「培養トークン」を出すため、なんと《世話人の才能》でドローします!  盤面除去とアドバンテージを両取りできるためミッドレンジ系に対して非常に強いカードです。培養トークンはアーティファクトなので《喉首狙い》が刺さらないのも嬉しい点。 その一方で赤アグロには5マナの重さで間に合っていないため、私がプレミアム予選に参加した際は、赤アグロが多いと読んでメインに3枚・サイド1枚としています。 追放のため《永劫の無垢》との相性がやや悪く、《太陽降下》を打ちそうな時はチャンプブロックしてでもエンチャント化させるなどの工夫が必要になります。 《忠義の徳目》 《アーデンベイルの忠義》で出てくる2/2騎士トークンは《世話人の才能》でコピーしても嬉しいですし、インスタントタイミングでトークンを出せるのも他にない価値があります。《世話人の才能》は相手のターンでも誘発するので美味しいです。 また、マナフラ受けおよび蓋としても機能する《忠義の徳目》はトークンを並べるこのデッキにとってもマッチしており、ゲームを畳む役割も担います。 が、クリーチャーを並べられないと+1/+1を乗せる効果も薄く、その点では《世話人の才能》のレベル3と被ります。  よって、これを採用していないリストも多々あります。フリースロットの一つですね。 《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》  個人的なイチオシです! 2マナの《人形作家の店》では攻撃すると1/1の玩具・アーティファクトトークンを生成し、《永劫の無垢》《世話人の才能》とシナジーがあります。実質0マナでトークンを生成できる手段はかなり貴重。 《人参ケーキ》《噴水港》などで生成した1/1トークンを無視して殴ってくるのがほとんどで、それに対して裏目を作らせることができます。  それ以降もアタックするならどんどん生成していくぞ、と圧を作り出すことも出来ますし、ドローに変換できる《噴水港》との相性も非常によいです。 6マナの《陶磁器ギャラリー》はこちらのクリーチャーが《穴ぐら守りの導師》のようにパワー・タフネスがクリーチャーの数と等しくなります。  例えば1/1が4体いる時に《陶磁器ギャラリー》を解放すると4/4が4体になり、そのままアタックすると《人形作家の店》が誘発し玩具トークンが生成。5/5が5体……と、雪だるま式に膨れ上がっていきます。 もちろん欠点もあります。《人形作家の店》は「玩具でない」クリーチャーであるため、これで生成した玩具トークンで攻撃しても誘発しません。  攻撃誘発も《陶磁器ギャラリー》もクリーチャーがいる事が前提であるため、これ単体では仕事しない点もマイナス点ですね。 よって入れたとしても2枚までで、1枚ぐらいが適正ではないかと感じています。《陶磁器ギャラリー》による奇襲性は高いので私は好きです。 ちなみに《陶磁器ギャラリー》を解放している状態で《跳ねる春、ベーザ》を出した際、盤面に《永劫の無垢》しかいなければ2/2として出るためドローが誘発します。覚えておきましょう。 《噴水港》  白単トークンを大きく支える土地です。  トークン生成手段が豊富なため、《世話人の才能》《永劫の無垢》や除去などを求めてトークンを生贄に捧げてドローが容易ですし、1点ダメージを受けるとはいえ3マナの軽さで1/1のトークンを出せるのも素晴らしい。 《世話人の才能》《永劫の無垢》のドローはターンに1回の制限がありますが、この《噴水港》によって相手のターンにも引くことができます。 4マナで宝物トークンを出せるのも《世話人の才能》とフィットしていますし、ダブルアクションがしやすくなる点も◎。 無色土地と言えども文句なしの4枚です。 《沈んだ城塞》  確定タップインであり平地を参照する《軍備放棄》とも相性が悪いのですが、それ以上に土地の起動能力限定で2マナ出る唯一無二の能力のメリットは大きい。 《噴水港》をひたすら酷使させるこのデッキにとって1枚で2マナが出る《沈んだ城塞》はかなり相性がよく、これによって余った1マナで《軍備放棄》《失せろ》などとダブルアクションを可能としています。 が、序盤で重ね引きしてしまうと先述した通りタップインかつ《軍備放棄》が強く使えなくなるデメリットがメリットより上回ってしまうため、採用枚数は3枚になっています。 サイドボード解説 《エルズペスの強打》  上でも解説した通り、主にアグロ系およびディミーアミッドレンジへのサイドボードになります。 サイドボード後では1マナ除去が《軍備放棄》と合わせて8枚体制になることでより有利になる認識です。 《領事の権限》  赤アグロ狙い撃ちのサイドカードです。 白単トークンは除去が多いものの、《軍備放棄》《別行動》を筆頭に《永劫の無垢》《人参ケーキ》などソーサリータイミングカードばかりなのが短所です。  その隙を狙ってくる《熾火心の挑戦者》といった速攻クリーチャーを無効化できることに大きな価値があります。《別行動》とも相性がよく、この《領事の権限》によってタップ状態で出てくる《多様な鼠》を攻撃してきたクリーチャーもろとも《別行動》でまとめて除去することができます。 また、対処しづらい《ウラブラスクの溶鉱炉》もこれ1枚で完封できるのも◎。一生1点ゲインしてくれるかわいい置物になります。 《救済の波濤》 《エルズペスの強打》をメインボードに2枚移動したことで空いた枠ですが、赤アグロへのアウトに対してイン枚数が足りなかったので試験的に入れた枠です。《噴出の稲妻》および《叫ぶ宿敵》のダメージ無効化・《跳ねる春、ベーザ》絡みのコンバットなどを補助する1枚で、奇襲性は非常に高いですがその分使い処がかなり限定されます。《叫ぶ宿敵》でゲインを禁止されるのが赤アグロへの大きな敗着になり得るので採用する価値は感じつつも、今後入れ続けたいかと言われるとそうでもないかな……というのが所見です。  ボロスアグロ・アゾリウスアーティファクトのようにクリーチャーを呪禁で守る用途で効果的な場面がこのデッキではあまり起こらないというのもあります。 ここは素直に追加の《領事の権限》でよさそうです。 《悪魔祓い》  ゴルガリミッドレンジの《不浄な別室》、カワウソの《豆の木をのぼれ》《永劫の活力》、ミラーマッチでの《世話人の才能》《永劫の無垢》など幅広く当たる対策です。  アゾリウス眼魔の《忌まわしき眼魔》やスペルカウント4以上の《傲慢なジン》にも当たったりします。 ソーサリータイミングと言えども範囲の広さおよび追放は魅力。 白単色なのでこういったいわゆる「丸い」カードを入れざるを得ない、とも言えてしまいますが…… 《やらせはしない》  追加の《エルズペスの強打》枠。《突き通し》との選択になりますが、こちらは2マナの代わりにどんなにサイズが大きくても関係なく追放します。 《永劫の好奇心》《叫ぶ宿敵》にも効果的であることからこちらにしました。 アグロ系、各種ミッドレンジに加えてアゾリウス眼魔、シミックテラーなどにも。  《安らかなる眠り》  スタンダードの白が誇る屈指の墓地対策。  シミックテラー、アゾリウス眼魔、もがく出現など墓地を利用するデッキ全般に対して完全にシャットアウトします。ティムールカワウソにも効果は薄いですが一応……  とはいえ《世話人の才能》と同じエンチャントで、この対策カードがまとめて刺さってしまうため過信は禁物です。 《石の脳》  不利マッチであるティムールカワウソへの対応策として採用しました。  対戦してて一番嫌だったのがエンジンの中核およびこちらの《失せろ》などをかわされる《この町は狭すぎる》で、これを抜くと結構楽になったことから採用しました。 テンポおよびアドバンテージ損をしてしまうデメリットはあれど、もともとアドバンテージを獲得するのが得意なデッキですのである程度補えると考えています。 ティムールカワウソ以外だとミラーマッチやシミックテラー等の特定のカードに体重が乗っているデッキに対して入れます。  ミラーマッチでは基本的に《世話人の才能》指定ですが、タッチ青であればどうしょうもない負け筋である《完成化した精神、ジェイス》を指定します。 シミックテラーの場合、ティムールカワウソと同じくエンジンである《この町は狭すぎる》を指定します。  このカードがあるだけで《世話人の才能》レベル3で攻めようとしてもバウンスで大きくテンポロスしますし、《太陽降下》も《渦泥の蟹》《トレイリアの恐怖》を戻されてされてしまうからです。 《別行動》  メインボード解説でも先述した通り、赤アグロに対して間に合っていない《太陽降下》の代わりに入れる軽量の全体除去枠です。  ディミーアミッドレンジやシミックテラーなどのクリーチャーでのビートダウンをメインとするデッキにも入れますが、ティムールカワウソには入れないようにしましょう。 なぜならば《永劫の活力》によってタップされてしまい、アンタップ指定が絶対通らないからです。入れて痛い目を合うのは私だけで十分です。 《ウルザの酒杯》  ティムールカワウソに対してまとめて吹き飛ばせる《告別》がとても欲しく、何かないかな……と探したら見つけたのがこれです。こちらの《世話人の才能》もまとめて吹き飛ぶ諸刃の剣ですが。 しかもこれも《この町は狭すぎる》でかわされる危険性があるため、《失せろ》などで打たせておく必要もあります。 X=2を指定することでこちらの《世話人の才能》を残したまま一掃できる《カーンの酒杯》も選択肢として上がりましたが、こちらはタップインによるラグが難点。 このようにティムールカワウソへのろくな有効策がなく、こうして頭を悩ませています。  いっそ元々不利なティムールカワウソのことは割り切ってしまうという選択肢もありなのかもしれませんね…… 《太陽降下》  上記でも記載した通り、《別行動》と入れ替えた4枚目の枠ですね。  各種ミッドレンジなどにサイドインします。 検討したカード群 《一時的封鎖》  《心火の英雄》の死亡誘発をさせない点は優秀なものの、サイドインされる《脚当ての陣形》に《世話人の才能》と一緒に刺さってしまうので不採用としています。 とはいえメインボードであればエンチャント破壊は少ないため、1-2枚ほど採用する価値はあるのかもしれません。 直近だとアゾリウスアーティファクトがスタンダード神決定戦を優勝されており、これに対して非常に効果的な一枚なのでこちらを入れる理由にもなります。 《加護をもたらす戦乙女》  飛行・先制攻撃・絆魂とコンバットに全振りしたカードですが、入れたい赤アグロに対してはやはり《脚当ての陣形》が刺さってしまうため《一時的封鎖》と同じような理由で入れていません。 ディミーアミッドレンジに対しても《フラッドピットの溺れさせ》《悪夢滅ぼし、魁渡》の麻痺カウンターで寝かされてしまいますし、《跳ねる春、ベーザ》に対して《喉首狙い》をある程度残すでしょうから定着もしません。 総じて一番入れたい赤アグロに対しては回答をしっかり用意されており、他のデッキにはあまり入らないことで候補から外れました。 《完成化した精神、ジェイス》 《行き届いた書庫》4枚をタッチし、《沈んだ城塞》と《噴水港》の宝物トークンで青を用意して《完成化した精神、ジェイス》を連打して勝つという別角度の勝ち筋を用意できるのが利点です。 白単トークンvs白単t青トークンのミラーマッチはこの《完成化した精神、ジェイス》を入れているタッチ青の方が冗談抜きで9割勝ちます。 が、テーブルトップでは後述する様々な理由によって白単トークンを使う方はあまりおらず、ミラーマッチは考慮しなくて良いと考えたため、不採用としています。 《行き届いた書庫》のタップインもかなり痛く、これによって有利である赤アグロに落としてしまうマッチがいくつかあったのも一つの理由です。 キープ基準 《人参ケーキ》は2回の占術によってその都度欲しいカードを探し出しつつ、壁役としての1/1を出してくれるので即キープ。  また、この環境において赤アグロとディミーアミッドレンジに対する軽量除去は欠かせません。《軍備放棄》《失せろ》といった除去も同様にキープに繋がるカードです。 《跳ねる春、ベーザ》もクリーチャーデッキに対して強いため、これも同様にキープ判断で大きな助けになるでしょう。  土地3枚ほどで《人参ケーキ》+各種除去であればまずキープと考えて差し支えありません。これに加えて《永劫の無垢》《世話人の才能》などがあれば100%キープです。 キーカードである《世話人の才能》が絶対的なキープ基準になるかと言えばそうでなく、トークン生成手段がないとただ何もしない置物になってしまいがちです。  先述した《人参ケーキ》、もしくは《噴水港》《跳ねる春、ベーザ》などのトークン生成手段があれば是非キープしたい一枚です。 とはいえ《軍備放棄》《失せろ》《世話人の才能》《太陽降下》《平地》×3といった、干渉手段が多い初手であれば、除去で対応できつつ、合計14枚あるトークン生成手段か《太陽降下》のための土地2枚を引ければ良いのでキープに値します。 その一方で《永劫の無垢》は単体でも2/1絆魂という最低限のスペックを持ち合わせているため、《世話人の才能》とは異なり単体でもキープする要因になります。   実は《太陽降下》はキープ基準になり得ません。  今のスタンダード環境において序盤に干渉できるかどうかが大事で、5マナのソーサリーである《太陽降下》はその要件に満たさないためです。  よってこの《太陽降下》が複数枚ある初手は大体マリガンしてしまいます。《別行動》は3マナの軽さもあり逆にキープしやすい一枚であるため、この面も含めて1枚《別行動》と《太陽降下》をメイン・サイドで入れ替えているというわけですね。 最大の欠点  さて、ここまで白単トークンのカードなどを解説してきましたが、ここからが本題です。  赤アグロに対して強いという明確な利点を持っているにも関わらず、テーブルトップで使う方が少ない最大の理由が……時間が足りないからです!! なぜ時間が足りないのかというと、既に何度も説明のように、このデッキが相手の脅威を全て除去し続けることによる勝利を目指すだからです。  除去、ドロー、ライフゲイン。この三点が白単トークンの主な内訳で、ゲームを終わらせるフィニッシャーがほとんど入っていない状態です。 つまり……物理的にゲームが終わりません。  相手の心が折れて投了してくれるならまだしも、粘り強いミッドレンジやティムールカワウソなどとの戦いはひたすら泥沼のような戦いを繰り広げることになります。 これは紛れもない事実で、アゾリウスコントロールで慣れているはずなのに最初に参加したプレミアム予選では3-1からそのまま3-1-3というおぞましい結果を残してしまいました。(引き分けの内訳は4cズアー、ティムールカワウソ×2) 最後はジャッジの方が20分ほど横に座ってご見学されていましたが、そこでも引き分けに終わってしまいました。  その時にジャッジの方に確認した際、「プレイ速度はまったく問題なかったですね……」とやや悲しげな顔をされていたのがとても印象的でした。 が、さすがに3回の引き分けはいただけません。同じことを繰り返さないためにも対策を講じることにしました。 時間切れにならないために  これは白単コントロールに限った話ではありませんが、自分のターンにかける時間を出来る限り短くすることに尽きます。 これまで説明してきた通り、このデッキはひたすらゲームを引き延ばす性質上、物理的に時間がかかります。そうすると必然的にターン数も多くなりますね。  これらのターンにかかる時間を少しでも短くしていくことで、トータルで短縮した時間も多くなるという考え方です。いわゆる「塵も積もれば山となる」ですね。 このかかる時間を短くする工夫についてまとめていきます。 トークン関連  まず着手したのはトークン関連。  デッキ名を冠するだけあり、トークンの種類は非常に多様です。 ・《噴水港》《跳ねる春、ベーザ》の魚トークン ・《噴水港》《跳ねる春、ベーザ》の宝物トークン ・《人参ケーキ》の兎トークン ・《忠義の徳目》の騎士トークン ・《太陽降下》の培養トークン ・《失せろ》の地図トークン ・《大天使エルズペス》の兵士トークン ・《ミストムーアの大主》の昆虫トークン ・《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》の玩具トークン  ……なんと9種類!!  同じくトークンを多用するジェスカイ召集ですら7種類ほどなので、これがどれだけ多いかおわかりでしょう。トークンを探すだけでも一苦労です。  たださえトークンを出す機会が多いデッキなのに、トークンを出す際に時間を取られてしまっては時間も切れてしまうもの。 そこでこのトークンに関する時間を以下に短縮できるかを検討し、色つきスリーブで分けることを思いつきました。  当初は各トークンごとに透明スリーブにまとめていましたが、これを色付きスリーブで分けることにしました。(培養トークンは両面のため従来通りの透明スリーブ) 手持ちスリーブの関係で昆虫トークン・騎士トークン・宝物トークンは同じ赤色ですが、この3種は比較的使用頻度が低いためひとまとめにしています。 この効果はてきめんで、出す際に色がついていることで目的のトークンをすぐ探し出すことができ、除去されて片付ける際にもすぐまとめられるようになりました。  試合終了後にまとめ直す時も非常にやりやすくなり、ストレスが大きく軽減されました。 何よりスリーブがついていることで裸のカードよりも取り扱いやすくなるメリットもあり、今後も他のデッキでもトークンをスリーブに入れていこうと思えるほどでした。 優先権を先に渡してからトークンを出す  例えば《跳ねる春、ベーザ》で魚トークンを出す際、 1.トークンカードから魚トークンを探す2.盤面に魚トークンを出す  という動作が発生します。 《太陽降下》でも 1.培養トークンを探す2.盤面に培養トークンを出す3.除去した枚数を数えてサイコロを乗せる の動作がありますね。 丁寧にやるならば全ての効果を解決してから優先権を渡すわけですが、フルタップもしくは他にすることが無い場合、カードの効果を解決した時点で先に相手へ優先権を渡し、その間にトークンを出すように心掛けています。 相手が考える・アクションをするまでの間にトークンを出すことで、その分だけ時間短縮になります。 もちろん何らかのスタックで介入することが考えられる盤面であったり、《世話人の才能》《永劫の無垢》のドロー誘発が絡む場合はトークンをしっかり出してから優先権を渡すなど、臨機応変に対応する必要もあります。 《世話人の才能》《永劫の無垢》のドローを一連の流れにする  スタンダード環境でこれらの誘発効果に対してスタックで動くカードとしては打ち消せる《ティシャーナの潮縛り》、ドローを咎める《フェアリーの黒幕》ぐらいでしょうか。 これらが入らないデッキではトークンが出た時点でドローは確定するため、トークンを生成した時点で「《世話人の才能》《永劫の無垢》が誘発します」という確認を省略することが出来ると考えられます。 ただし、このドローによって回答を引かれる前に誘発スタックで動いてくるケースがあるため、相手がフルタップなどで介入手段がない時に限り省略するようにしています。 この動作の省略を行う際は対戦相手としっかり確認を取り、合意を取るようにしましょう。ちゃんと解決までやってほしい、と言われたらそれに従いましょう。  マジック:ザ・ギャザリングは対戦相手とのコミュニケーションによって成り立つカードゲームですからね。 上記の工夫をしてきたことで、これ以降のプレミアム予選ではなんと引き分けが0回と改善しました! 大成功です!!  1回の動作がたかが数秒でも、これらの積み重ねでトータルの短縮した時間は数分以上にもなります。 コントロールデッキは己との戦いの一面もあります。少しずつこれらの精度を上げていくのも楽しみ方の一つですね。 サイドボーディング解説 VS赤アグロ  メイン・サイド共に有利なマッチアップです。  ただしメインでは後手かつキープした初手によってはブン回られると負けてしまうこともしばしばあり、油断できない相手です。 有利と言えどもライフを詰められたところに《叫ぶ宿敵》に《噴出の稲妻》を合わせられてゲインを禁止されると、そのまま挽回する前に削り切られてしまうことも。  場合によっては1マナが浮いている《叫ぶ宿敵》に対して《軍備放棄》で《噴出の稲妻》を誘い、その上から《失せろ》《魂の仕切り》を合わせることを意識しましょう。 ▼キーカード - 《軍備放棄》《跳ねる春、ベーザ》  とにかくライフを高く保つように除去しつつ、《失せろ》《魂の仕切り》を構えて《巨怪の怒り》を効果的に打たせないように立ち回っていくのが大事なのですが、これを後押しするのが1マナの《軍備放棄》。  先述してきた通り《心火の英雄》に対する最高の回答であり、3点受けてしまうとはいえ3ターン目に唱えてきた《叫ぶ宿敵》にも有効な除去でもあります。 こうして序盤を凌いだ後は《巨怪の怒り》でないと突破できない《跳ねる春、ベーザ》でライフゲインしつつ突き放すのが赤アグロに対するゲームプランとなります。 ▼サイドアウト -3《太陽降下》-3《世話人の才能》-1《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》 ▼サイドイン +2《領事の権限》+2《エルズペスの強打》+1《救済の波濤》+1《やらせはしない》+1《別行動》  間に合っていない《太陽降下》、攻撃しないといけない《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》を抜きます。  単体では何もしない《世話人の才能》も同様に抜きますが、除去した後に捲っていく手段として1枚だけ残す形としています。 サイド後では不要牌が全て効果的なカードになるため、元々有利な相性がさらに有利へ傾きます。 《救済の波濤》はダメージ軽減のみならずパーマネントにも呪禁を付与するため、《領事の権限》への《脚当ての陣形》を回避できる点を覚えておきましょう。 VSディミーアミッドレンジ  メイン微有利、サイドでは微不利という印象です。 メインでは打ち消しの枚数が少なく、こちらのアクションの通りがよい点と除去で攻め手を捌ける点などから微有利としています。 《フェアリーの黒幕》で《永劫の無垢》《世話人の才能》のドローをただ乗りされてしまうため、マスト除去の一つとなっています。  とはいえ除去手段も限られるため、割り切って《フェアリーの黒幕》を出させてから《軍備放棄》で対処するなど後手に回ってでも対処していきます。 《悪夢滅ぼし、魁渡》は定着してしまうと非常に危険。《失せろ》《魂の仕切り》は絶対これに合わせたいところです。 ▼キーカード - 《世話人の才能》  エンチャントである《世話人の才能》は一度定着してしまえば対処不可であるため、じっくりと除去しつつアドバンテージ差をつけていくプランの中核になります。 最近は同型意識で《ティシャーナの潮縛り》がメインから採用されているケースが多いため、《世話人の才能》レベル3を打ち消されて大きくテンポロスをさせられないように気を付けましょう。   ▼サイドアウト -1《太陽降下》-1《大天使エルズペス》-2《跳ねる春、ベーザ》 ▼サイドイン +2《エルズペスの強打》+1《やらせはしない》+1《別行動》  一方でサイドでは相手が《否認》《ティシャーナの潮縛り》《強迫》など効果的なカードが入ってきてクロックパーミッションとしての完成度が上がったのに対し、こちらは特にこれといったカードが入りません。  白単色の弱みであり、このデッキそのものの弱みでもありますね。もちろんゲームプランも変わっていません。 インスタントタイミングでの仕掛けおよびハンデス・カウンターでの撹乱アグロが通りやすくなってしまい、こちらはより窮屈な動きを強要されてしまいます。 的確に脅威に対して除去を合わせつつ、どこか隙を見て《世話人の才能》を通してアドバンテージを地道に取っていくしかありません。 ただ《人形作家の店+陶磁器ギャラリー》はディミーアミッドレンジに対して有効な一枚で、2マナの軽さからカウンターを掻い潜って着地させやすいです。 《陶磁器ギャラリー》の解放は《祭儀室》などとは異なり誘発が発生しないため《ティシャーナの潮縛り》すらも無視します。 地道にトークンを産み出しながら《陶磁器ギャラリー》で一気に決着をつけるという動きが再現性の高い勝ち方でしたので、このデッキを意識するなら2枚採用するとよいかもしれません。 VSティムールカワウソ  はっきり言って不利です。 《嵐追いの才能》《豆の木をのぼれ》《この町は狭すぎる》の組み合わせて延々とアドバンテージ・テンポ両方を取ってくる上、《永劫の活力》《渓間の洪水呼び》による無限コンボもあるためこちらは攻める側にならねばなりません。  しかし白単トークンはこれまでに何回も言及してきた通り、ゲームレンジを後半に寄せており攻めていく手段に乏しいデッキです。 悠々とコンボパーツを集められ、こちらの《世話人の才能》レベル3による攻めは《この町は狭すぎる》でかわされてしまい、《永劫の無垢》も《塔の点火》で追放……と、最悪のマッチの一つと言ってもよいでしょう。 ▼キーカード - 《失せろ》 《失せろ》は《嵐追いの才能》《渓間の洪水呼び》をインスタントタイミングで対処できる貴重な手段。 《この町は狭すぎる》を回収するための《嵐追いの才能》レベル2に合わせて《失せろ》でテンポロスさせるなどを狙っていきましょう。 相手の勝ち手段を的確に潰しつつ、アドバンテージを獲得しながらチャンスを伺っていきましょう。 ▼サイドアウト -1《軍備放棄》-2《跳ねる春、ベーザ》-2《エルズペスの強打》-1《大天使エルズペス》-1《太陽降下》 ▼サイドイン +2《石の脳》+2《悪魔祓い》+1《ウルザの酒杯》+2《安らかなる眠り》  サイド後も依然として不利の認識です。  どうにかして《石の脳》を通し、《この町は狭すぎる》を抜いてしまえば《世話人の才能》《永劫の無垢》によるスケール勝負に持ち込むことができます。 《安らかなる眠り》は正直言って効果があまりないものの、敗着の一つである《嵐追いの才能》レベル2を無効化できるだけでも《エルズペスの強打》よりはマシです。  この際、《永劫の無垢》も追放されてしまうため戦場から戻らない点は注意です。《悪魔祓い》は《永劫の活力》《豆の木をのぼれ》《嵐追いの才能》《蒸気サウナ》などターゲットが多いものの、《この町は狭すぎる》によってかわされるリスクは念頭に置くべきでしょう。 VSアゾリウス眼魔  メイン・サイド共に有利と認識しています。 ただ飛行クリーチャーが《ミストムーアの大主》によって出てくる昆虫トークンしか存在しないため、得意とするトークンによるチャンプブロックができません。  そのため早期に《傲慢なジン》《忌まわしき眼魔》が出てきた場合、捌き切れずに殴り切られてしまうパターンも存在しますが、やはりここは1マナの追放除去である《軍備放棄》が非常に効果的です。 ▼キーカード - 《軍備放棄》《太陽降下》 《救いの手》《再稼働》による再利用を許さない追放除去は的確に当てたいところです。  あちらも《魂の仕切り》《送還》でかわすことを意識しますが、総枚数としてはこちらの方が上です。 2マナ重くさせる《魂の仕切り》もアゾリウス眼魔は土地を切り詰めており、5マナ出すにも一苦労なのでほぼ追放除去として機能します。  再度唱えてきたところに《軍備放棄》《太陽降下》をお見舞いしてやりましょう。 このようにクリティカルな対応手段が多いため、構造的に有利と言えるでしょう。 ▼サイドアウト -3《跳ねる春、ベーザ》-2《エルズペスの強打》-1《大天使エルズペス》 ▼サイドイン +2《悪魔祓い》+1《やらせはしない》+2《安らかなる眠り》+1《別行動》  このアゾリウス眼魔には《安らかなる眠り》が強烈に突き刺さる上、《悪魔祓い》《やらせはしない》など追放除去が増えることでより有利になります。 サイドでは《僧院の導師》が入ってきますが、これもやはり《軍備放棄》で対応可能。 《否認》《軽蔑的な一撃》のカウンターが入ってくるとはいえ、こちらの追放除去の量を乗り越えるほどではありません。 どんどん追放してあげましょう。 最後に  白単トークンについて紹介させていただきました。  白が誇る除去、ドロー、ゲイン。これらを余すことなく堪能できるよいデッキです。ただ何度も言及してきた通り、時間が最大の敵です……  時間短縮のコツをいろいろと書きましたが、それでもやはり引き分けは発生してしまうでしょう。当たり前ですが、引き分けないために最も必要なのはデッキに慣れることですね! 持ち時間制であるアリーナやMOであればこの時間はそこまで気にならなくなるので、是非デジタルで一度回してみてはいかがでしょうか?  そして目指せ《時間の名人》!  ここまで読んでいただきありがとうございました。  またお会いしましょう!

禁止改訂で大激変!!エネルギー・《一つの指輪》禁止と4枚の解禁

Modern ピックアップ

2024.12.17

mtg Yuyan

日本時間の 12月17日深夜、禁止改定が行われました。モダンで暴れ回っていた《一つの指輪》とエネルギーにメスが入るのは誰の目にも明らかで、そのエネルギーから何が禁止されるのかを全員が焦点にしていました。結果は、《湧き出る源、ジェガンサ》《一つの指輪》《色めき立つ猛竜》の3枚の禁止。 エネルギーは《湧き出る源、ジェガンサ》と《色めき立つ猛竜》を失いましたが、《魂の導き手》《オセロットの群れ》《ナカティルの最下層民、アジャニ》《火の怒りのタイタン、フレージ》は残り、デッキの形はかろうじて保つこととなりました。《一つの指輪》の禁止も仕方のないことでしょう。アグロ・ミッドレンジ・コントロール・コンボのすべてのデッキに採用された奇跡のカードであり、昨年印刷されて以降、何度も禁止が検討されていました。《一つの指輪》が使われない環境は、すなわち《有翼の叡智、ナドゥ》のような強すぎるコンボデッキが隆盛しているということで、それもまた規制対象なのです。しかも強いコンボデッキに《一つの指輪》が組み込まれることもあり、どう考えても禁止にする以外の手立てはありませんでした。《湧き出る源、ジェガンサ》はエネルギーで活躍していたのも要因の1つですが、大きかったのは構築の幅を狭める点でした。 相棒に指定するためにはダブルシンボルのデッキを採用できなくなるため、必然的にシングルシンボルのカードばかりが使われることになり、それが構築の自由を奪うことになってしまっていました。 「構築に制限をかける代わりにデッキ外のリソースを確保できる」のが相棒なので、それを言ってしまうと「相棒を全否定しているのと変わらないのでは?」と思いましたが、《湧き出る源、ジェガンサ》はちょっと使われすぎましたね。 そして、ニュースはそれだけにはとどまりませんでした。《欠片の双子》《緑の太陽の頂点》《オパールのモックス》《信仰無き物あさり》解禁!!!!!!!!!!正直、今回解禁が行われるとは思わなかったのでびっくりしました。 僕はモダンの禁止改訂でカードをどんどん解禁していく動きがすごく大好きです。《定業》はしっかりとディミーア眼魔やイゼットマークタイドなどを強化しましたし、《弱者の剣》や《精神を刻む者、ジェイス》《血編み髪のエルフ》も今のモダンでは適正な強さです。『モダンホライゾン』などの特殊セットの加入でモダンのカードパワーは飛躍的に上昇しており、モダンで今禁止されているカードの大半は解禁しても問題ないと思っています。とはいえ、今回はその中でもまあまあギリギリなラインのカードたちが帰ってきました。「もしかしたらこのカードは再び禁止になるのでは?」と思うほど強いカードが戻ってきて驚いています。というわけで今回は、禁止解除された4枚のカードを早速使用して結果を残したデッキたちをご紹介していきましょう! 欠片の双子 モダンが制定されて最初に行われたモダンプロツアー。《ギタクシア派の調査》を打ちながら《猛火の群れ》で2ターンキルしてくる感染や《雲上の座》と《ヴェズーヴァ》で大量のマナを出す12ポスト、《炎の儀式》から《紅蓮術士の昇天》を1ターン目に置いてくるイゼット昇天など、右も左も現代では禁止されているカードばかりのプロツアー・フィラデルフィアを制したのが《欠片の双子》でした。 モダンと言えば《欠片の双子》。それぐらいこのカードはモダンのコンボの代名詞でした。《詐欺師の総督》と《欠片の双子》の2枚が揃うと瞬殺とわかりやすく、そのコンボパーツ以外を自由にチューンできることから、非常に構築力が問われるデッキでした。青のドロー・打ち消し、赤の火力を使えるイゼットカラーでコントロールしながらのらりくらりとコンボを決める構成が基本でしたが、緑を加えて《タルモゴイフ》を採用したタルモツインなども後に登場し、活躍しました。メタゲームに応じて様々な構成で5年間モダンで活躍し続け、2016年の1月22日に禁止。そして8年ぶりに本日、モダンに帰ってきました。「現代のモダンのパワーではもはや《欠片の双子》は通用しないのでは?」そんな声も聞こえていましたが、早速モダンリーグで5-0を収めました! デッキのベースはイゼットコントロール。《対抗呪文》《瞬唱の魔道士》《アノールの焔》《稲妻》と少し前のモダンで見たことのあるイゼットウィザードの構成です。そこに《詐欺師の総督》と《欠片の双子》の2枚コンボを採用し、瞬殺を可能としました。双子デッキで重要なのは《欠片の双子》を腐らせないことです。《詐欺師の総督》はエンド前に相手のアタッカーを寝かせて1/4で場を固めたり、《欠片の双子》のプレッシャーを相手にかけることができるカードである一方、《欠片の双子》は手札に残り続けることになります。そのため、《欠片の双子》のつけ先が重要です。以前までは《詐欺師の総督》と同じく無限コンボになる《やっかい児》が採用されていましたが、このリストでは《瞬唱の魔道士》に加えて《稲妻罠の教練者》が採用されており、《欠片の双子》のエンチャント先が12枚に増えています。《瞬唱の魔道士》に《欠片の双子》がつくと毎ターン墓地から無料でカードを1枚フラッシュバックできるようになりますし、《稲妻罠の教練者》もリソースを供給し続けてくれるので、このリストなら《欠片の双子》の処理に困ることはなさそうですね。《拒絶の閃光》は《詐欺師の総督》が余った時に生け贄に捧げて0マナで打てて便利です。『モダンホライゾン3』の《知りたがりの学徒、タミヨウ》はデッキと噛み合うカードではありませんが、タダ強枠として採用されています。《アノールの焔》との相性は抜群。3ターン目に5点と2ドローで打てば変身しながら相手のクリーチャーを除去し、カードまで引けてしまうのです。《欠片の双子》が1ターン目から脅威を展開してくる時代になりました。今から戦うのが恐ろしい。モダン黎明期から活躍し続けたコンボ、果たして令和に生き抜くことはできるのか?今後に注目ですね。 信仰無き物あさり カードを2枚引いて2枚捨てる1マナのソーサリー。元祖となる《入念な研究》はリアニメイトやマッドネスなど様々なデッキで暴れ回りました。 その赤バージョンが登場した時には驚きました。フラッシュバックというおまけにしては強すぎる能力も手に入れましたからね。 そして《信仰無き物あさり》はしっかりモダンでも暴れます。特に好きなカードを墓地に送りこめる点を評価され、イゼットフェニックスやドレッジ、ブリッジヴァインなどのアンフェアな墓地デッキを支えました。結果、すべてのデッキに4枚以上の墓地対策が必須となってしまい、2019年に禁止。5年ぶりにモダンに戻ってきました。 今回は最新型のホロウワンに組み込まれました。カードを1枚捨てるごとに2マナ軽くなる4/4クリーチャー、《虚ろな者》。その英語名のホロウワンがそのままデッキ名になったのがこちらのホロウワン。その名の通り、《虚ろな者》が主役です。《燃え立つ調査》《信仰無き物あさり》でカードを捨てて《虚ろな者》を1マナや0マナで召喚して殴るビートダウンデッキ。以前は《燃え立つ調査》しかなく、3枚ディスカードで《虚ろな者》が捨てられてしまうこともありましたが、《信仰無き物あさり》は自分で選んで2枚を捨てられるのでその心配はありません。《虚ろな者》と相性の良いカードが《探偵のフェニックス》です。証拠収集6で授与することができ、装備先に飛行と+2/+2速攻を付与してくれるので、《虚ろな者》を強化して殴るも良し、墓地に落ちた《虚ろな者》が証拠収集6のうち5を満たすので、《虚ろな者》が場と墓地どちらにいても活躍するのです。1マナ圏も優秀なカード揃い。墓地を貯めつつ3/3飛行になる《ドラゴンの怒りの媒介者》に加え、《ネザーゴイフ》も強力です。アーティファクト・エンチャントが採用されているため、早いターンから4/5になりやすく、《虚ろな者》と並んであっという間に相手のライフを消し飛ばしてくれます。《信仰無き物あさり》の解禁で墓地デッキがまた生き生きし始めました。僕も個人的に思い入れのあるカードなので、また使い倒していきたいと思います。 緑の太陽の頂点 ライブラリーから緑のクリーチャーカードを直接場に出す1マナのソーサリー。レガシーの緑を支えるカードであり、1ターン目に《ドライアドの東屋》をサーチできるため、実質《ラノワールのエルフ》としても機能します。序盤に引けば《ラノワールのエルフ》、中盤に引けば3~4マナの最も強いクリーチャー、後半はフィニッシャーと、状況に応じてなんでもできるすさまじいカード。緑のすべてのデッキに入ってしまうことから、2011年に禁止されました。なんとモダンでは13年ぶりの解禁!このカードをモダンで再び使えるようになる日が来るとは思いませんでした。前述のように、どのターンに引いても強いのが《緑の太陽の頂点》。《ラノワールのエルフ》は1ターン目には引きたいが後半引いたら腐るカードですし、《孔蹄のビヒモス》は初手には必要ありませんが、最終的には引き込みたいフィニッシャー。《緑の太陽の頂点》は、そんなワガママを叶えてしまうカードです。《ラノワールのエルフ》と《飢餓の潮流、グリスト》と《孔蹄のビヒモス》の3つのモードから選べるカードだと考えるとその凄さがわかるでしょう。実際はそれよりも強く、《緑の太陽の頂点》にはデッキ内のすべての緑のクリーチャーのテキストがついているようなものなのです。さて、ここまで強い《緑の太陽の頂点》。入賞数も非常に多く、早速このカードがモダンでも現役であることを示しましたね。その中からピックアップするのがこちら。 ゴルガリヨーグモスです。《スランの医師、ヨーグモス》自身は残念ながらサーチできませんが、逆に言えばそれ以外のすべてをサーチできる《緑の太陽の頂点》。1ターン目のマナ加速として《喜ぶハーフリング》の追加で採用されていた《極楽鳥》《下賤の教主》は抜け、《緑の太陽の頂点》に統一されました。中盤に引いた際は《飢餓の潮流、グリスト》にまずなります。除去とトークン生成を兼ねるプレインズウォーカーにアクセスする手段が大幅に増えましたし、《召喚の調べ》でのサーチを《スランの医師、ヨーグモス》に絞ることができますね。《スランの医師、ヨーグモス》と揃うことでコンボになる《毒物の侍臣、ハパチラ》も《緑の太陽の頂点》でアクセスできるカード。相手のクリーチャーに《スランの医師、ヨーグモス》でマイナスカウンターを乗せると蛇が出てきて、その蛇を《スランの医師、ヨーグモス》で生け贄にできるため、ライフが続く限り、相手のクリーチャーにマイナスを置き続けてドローできます。大体の場合は盤面を全部除去して7ドローぐらいできるので、実質勝ちです。元々強力なデッキだったヨーグモスが1ターン目のマナ加速を安定させるだけでなく、中盤・終盤にも腐らないカードを手に入れてしまいました。マナ加速から《飢餓の潮流、グリスト》の流れも前より安定するようになり、再現性が更に上がることに。《緑の太陽の頂点》、その名の通り頂点を取ってしまうのでは? オパールのモックス 最後にご紹介するのが今回の解禁組の中でも一番の問題児。というか僕はこのカードだけは絶対に解禁されないと思いました。アーティファクトを3枚コントロールしていると好きなマナを出せるモックス。自身がアーティファクトなので、他に2枚あれば達成と、一見難しそうに見える条件ですが、アーティファクトにデッキを寄せれば、このカードはパワー9級の性能を発揮してくれます。あらゆるアーティファクトデッキに4枚採用され、《最高工匠卿、ウルザ》《クラーク族の鉄工所》などと組み合わせて暴れ回ったり、黎明期から親和にも重宝され続けていましたが、2020年にモダンで禁止となりました。《信仰無き物あさり》もそうですが、近年モダンで禁止になったカードが解禁されるのは意外でした。ある程度カードパワーが高くなったモダンで禁止になったカードなので、解禁するにはまだ早いと考えるのが普通だからです。《オパールのモックス》はかなり危険なカードです。これまではほとんどのデッキで不可能だった《ウルザの物語》の2ターン目起動を簡単に行えるようになってしまったのです。1ターン目に《ウルザの物語》から1マナのアーティファクト、2ターン目に《ダークスティールの城塞》と《オパールのモックス》、これだけで2・3ターン目に《ウルザの物語》を起動できてしまえます。レガシーやヴィンテージをプレイされている方なら、この恐ろしさがわかるのではないでしょうか。単純にゲームスピードも変わることになります。モダンでは《金属モックス》《炎の儀式》と、軽いマナ加速カードは禁止傾向にありました。一瞬だけ2マナを3マナに増やす《捨て身の儀式》がギリギリで、3マナを5マナに増やす《煮えたぎる歌》すら今は禁止されていますからね。特に0マナで1マナを増やせるモックスは、早いターンにはマナを出せないように調整されており、デッキ構築を大幅に伝説に寄せた《モックス・アンバー》ですら、使えるデッキでは獅子奮迅の活躍をしています。《オパールのモックス》はただアーティファクトを大量にデッキに入れるだけでよく、《モックス・アンバー》ほどデッキ構築段階で意識する必要はありません。早速リーグの結果を見てみると、《オパールのモックス》は2種のデッキに組み込まれていました。まず1つ目は《硬化した鱗》を使用したコンボアグロ、鱗親和です。《電結の荒廃者》と《硬化した鱗》の組み合わせで瞬殺するデッキで、2マナのカードがとにかく多いので、3ターン目に《オパールのモックス》を絡めた2アクションが非常に強力で、デッキはすさまじく強化されました。そしてもう1つ、リーグで複数入賞しているのがこちらのデッキ。 そう、装備コストの重い《巨像の鎚》を《シガルダの助け》で無理やり装備するハンマータイムです。 《巨像の鎚》《シガルダの助け》とキーパーツがどちらも1マナ、しかもアーティファクトを大量に採用しているので、ハンマータイムと《オパールのモックス》の相性は最高です!基本が白単のビートダウンなので2ターン目の《ウルザの物語》起動だけでも十分です。というかこの動きだけで勝てるマッチ、結構ありませんか?おそろしい。《メムナイト》《羽ばたき飛行機械》と0マナのアーティファクトが大量に入っているので、《オパールのモックス》さえ引けば2ターン目の《ウルザの物語》起動はそう難しくありません。《メムナイト》《羽ばたき飛行機械》は《オパールのモックス》と相性が良い反面、少しカードパワー面で不安のあるカード。しかしハンマータイムならこれらのクリーチャーが《巨像の鎚》の装備先となるので、採用しても問題ないというわけです。ハンマータイムが《オパールのモックス》を一番強く使えるかもしれませんね。《オパールのモックス》は先ほどご紹介した鱗親和以外にも、アーティファクトを並べて《思考の監視者》《河童の砲手》で暴れ回る8 Castなどにも採用されており、モダンでアーティファクト旋風が吹き荒れつつあります。《溶融》がモダンに標準搭載される日も近いかもしれませんね!

【今週のピックアップデッキ】セレズニアアーティファクト/セレズニアオーラ/4cエレメンタル

週刊 Modern Pioneer Standard

2024.12.13

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 セレズニアアーティファクト(スタンダード) MOリーグ:5-0 By AgrusKos93 スタンダード神挑戦者決定戦で驚くべきパフォーマンスを見せたアゾリウスアーティファクトアグロ。特にデッキのキーカードの1つだった《威厳あるバニコーン》は、その巨大なサイズで攻守に渡って戦場を支配する存在で、今の赤アグロの多いスタンダード環境における回答とも言えるカードでした。そんな《威厳あるバニコーン》が主役となるのが、こちらのセレズニアアーティファクトアグロ。デッキコンセプトはアゾリウスに近く、《ひよっこ捜査員》《内なる空の管理人》《威厳あるバニコーン》と、パーマネントを戦場に出し、それらをタップして強化し、サイズの大きいクリーチャーたちで殴る構成です。緑によって強化されたのはパーマネントの生成能力。《堅いクッキー》はその名の通り(?)非常に手堅いクリーチャー。戦場に出た時に食物を生成するので、パーマネント2枚分になり、更に3マナ支払うとアーティファクトを4/4のクリーチャーにできます。後半引いても4/4のクリーチャーを生成して殴れる、便利なカードですね。《名もなき都市の歩哨》は様々なミッドレンジで採用実績のある強カード。戦場に出るか攻撃するたびに地図を生成するので、出して地図を起動して攻撃するだけで、サイズを上げつつライブラリートップの質を上げられます。警戒もついているので赤アグロにも強いですね。3マナ3/4とそもそものスタッツも優秀。リソースを稼ぐ手段として《勇敢な旅人、ケラン》も優秀です。出来事として唱えれば地図を1つか2つ生成し、クリーチャー面では手札を増やしてくれる可能性があり、両方が活きるセレズニアアーティファクトにぴったりです。もう1つの緑のメリットが《生歯の子ワーム》。アーティファクトが戦場に出るたびに成長していくので、このデッキなら毎ターン大きくなっていきます。《ひよっこ捜査員》《勇敢な旅人、ケラン》《堅いクッキー》《名もなき都市の歩哨》《鋼の熾天使》《薄暮薔薇の聖遺》《未確認浮遊船》とアーティファクトはたっぷり入っています。《鋼の熾天使》は《威厳あるバニコーン》に飛行を付与するもよし、絆魂で赤アグロに悪夢を見せるもよしと、このデッキに噛み合った1枚。《幽霊による庇護》と合わせて《威厳あるバニコーン》に絆魂を付ける手段が6枚もあります。今スタンダードで激熱の《威厳あるバニコーン》を使い倒したい方、このセレズニアもおすすめですよ! セレズニアオーラ(パイオニア) MOリーグ:5-0 By T1_Tinker 《幽霊による庇護》《天上の鎧》と強力なオーラカードが登場したことでスタンダードでもオーラデッキは活躍していますが、元々オーラと言えばパイオニアやモダンのデッキでした。スタンダードと最も違う点はやはりそのクリーチャーたち。 まずは《上級建設官、スラム》。オーラデッキの弱点である「オーラを唱えて手札がなくなる」を克服する能力を持っており、オーラを唱えてオーラを引くオーラ連鎖が発生すると一瞬でゲームが壊れます。特に《天上の鎧》はオーラをつけるほど強化値が上がっていくので、《上級建設官、スラム》が生き残ってターンが帰ってくればあっという間に手をつけられないサイズのクリーチャーが爆誕します。《皇の声、軽脚》も、《上級建設官、スラム》とは違った形でオーラを供給し続けるクリーチャー。こちらはオーラを唱えて戦場に出した時に、そのマナ総量以下の、戦場に同名カードがないオーラをデッキからサーチして《皇の声、軽脚》につけることができます。たとえば《幽霊による庇護》を手札から唱えると、戦場に《天上の鎧》がある場合、《幽霊による庇護》と《天上の鎧》以外の2マナ以下のオーラをデッキから場に出して《皇の声、軽脚》につけられます。好きな1マナオーラからそのまま《天上の鎧》につなげたり、《幽霊による庇護》から《きらきらするすべて》をサーチしたりと、《皇の声、軽脚》が出てオーラを唱えることさえできれば、《皇の声、軽脚》のサイズがすぐに上がっていく寸法です。サイズを上げた後は、トランプルを付与する《無鉄砲》や飛行をつける《グリフの加護》だったり、《ケイヤ式幽体化》を持ってきて《皇の声、軽脚》を除去から守るも良し、《歩哨の目》を持ってくれば、後に墓地に落ちた時に《上級建設官、スラム》や次の《皇の声、軽脚》に再利用できて便利です。こういった「修正値は並だが回避能力を付与するエンチャント」は4枚採用しづらいカードですが、《皇の声、軽脚》のおかげで好きな時にサーチできます。以前までは相手への干渉手段が少なかったオーラですが、《幽霊による庇護》の登場で一気にデッキパワーが上昇しました。《幽霊による庇護》を引かなくとも《皇の声、軽脚》によってサーチできるため、しっかりと相手の盤面に触れるようになったのです。《破片魔道士の救出》はこれまでになかったインスタントのオーラ。《皇の声、軽脚》でもちろんサーチできるので、インスタントタイミングで《天上の鎧》が降ってきたり、《ケイヤ式幽体化》で《皇の声、軽脚》の定着を大きく安定させられるようになりました。除去を一度《破片魔道士の救出》で避けた上で《ケイヤ式幽体化》がつくので、《皇の声、軽脚》を除去するのは至難の業です。《離反ダニ、スクレルヴ》《皇の声、軽脚》《上級建設官、スラム》と12枚の伝説のクリーチャーを採用しているので《モックス・アンバー》を4枚使えるのもポイント。1マナで《破片魔道士の救出》を構えられるので、2ターン目に《上級建設官、スラム》か《皇の声、軽脚》+《モックス・アンバー》で《破片魔道士の救出》を構える動きは強烈。以前はここが《ケイラメトラの恩恵》だったので、デッキはすさまじく強化されていますね。《皇の声、軽脚》に《きらきらするすべて》をつけてデッキから《幽霊による庇護》をサーチする動きは非常に強力!アグロデッキにはこの動きだけで勝ててしまうほどです。正直「オーラデッキは過小評価されているのでは?」と感じています!それぐらいこのデッキは強そう! 4cエレメンタル(モダン) モダンリーグ:5-0 By Traumatismes モダンでも息の長く人気のある種族、エレメンタル。《創造の座、オムナス》や《孤独》など、モダン級のカードはエレメンタルであることが多いので、よくアップデートされるのも魅力ですね。そんなエレメンタルの最新事情を今回はご紹介していきましょう。まずエレメンタルの心臓ともいえる部分を担う《発現する浅瀬》。エレメンタルが戦場に出るたびにライブラリーの上を見て、それが土地ならタップインで場に出て、それ以外なら手札に加わる。要するにエレメンタルを出すとリソースを供給する恐ろしいカードです。《孤独》を想起で唱えても1枚めくれるのであまり損をしません。そしてデッキのカードすべてと噛み合う《発現する浅瀬》と最も相性が良いエレメンタルが《雷族の呼び覚まし》。攻撃するたびに、墓地から《雷族の呼び覚まし》のタフネスよりタフネスが小さいクリーチャー、つまりタフネス1のクリーチャーを攻撃状態で釣り上げます。終了ステップにそのクリーチャーは生け贄になりますが、釣った時点で《発現する浅瀬》が誘発してくれます。そんな《雷族の呼び覚まし》は他にもシナジー盛りだくさん。エレメンタルをデッキからサーチしてライブラリーの上に積む《炎族の先触れ》を釣って常にエレメンタルを積み込み続けたり、《ちらつき鬼火》を釣れば他のクリーチャーを明滅させてアドバンテージを稼げます。ちなみに相棒の《孤児護り、カヒーラ》でタフネスが上がるとタフネス2以下のクリーチャーも場に戻せるので、《孤独》も墓地から場に戻せます。《雷族の呼び覚まし》との相性なら《夕暮れヒバリ》が最高かもしれません。場を離れた時にパワーが1以下のクリーチャーを戦場に戻してくれるので、墓地から《発現する浅瀬》や《炎族の先触れ》を復活できるのです。《炎族の先触れ》によってエレメンタルをライブラリーに積めるので、1枚差しも大量に入っています。置物に触れたければ《仮面の蛮人》か《基盤砕き》。土地が欲しいなら《絡みつく花面晶体》。除去耐性が欲しかったら《不確定な船乗り》。《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》も特定のマッチでは非常に効果的です。フェッチランドがとりあえず使えなくなったり、宝物を生け贄にできなくなります。そうそう、『モダンホライゾン3』で登場した《出産の儀》についても触れなければなりませんね!終了ステップの開始時に、ライブラリーの上7枚を見て、その後にクリーチャーを生け贄にできます。その生け贄に捧げたクリーチャーのマナ総量+1以下のカードを、7枚の中から場に出せます。つまり《復活の声》を生け贄に捧げた場合、マナ総量3以下のカードを場に出せるのです。《雷族の呼び覚まし》で釣ったカードや《復活の声》など、《出産の儀》で生け贄に捧げたいクリーチャーはたくさんいますし、3マナ以下のカードが多いので当たりも比較的多い。更に《炎族の先触れ》でエレメンタルを積めるので、あらかじめ積み込みしておき、《出産の儀》でめくるなんて荒業も可能です。《炎族の先触れ》以外にデッキ内のエレメンタルにアクセスしやすくなるため、この《出産の儀》でデッキがかなり強化されたのではないかと思います。アドバンテージ獲得手段の《発現する浅瀬》《雷族の呼び覚まし》とそれをサーチする《炎族の先触れ》《出産の儀》。攻守に渡って優れる《復活の声》に、持っているだけで安心の《孤独》と、その派手な見た目に反して非常に堅実的な動きができるデッキです。エレメンタルが並べば場も手札もすごいことになるので、面白さ間違いなし!ぜひ回してみてください。

【リアニメイトディガー!】《もがく出現》反省記&マリガンノート

週刊 Standard

2024.12.12

Kyle Hitachi

皆さんこんにちは!Kyle Hitachiです。 今週も「リアニメイトディガー!」も、スタンダードの『もがく出現』をディグしていきます! 先週末はプレミアム予選がお休みということで『第29期スタンダード神挑戦者決定戦』に参加してきました。 優勝は岡井さん謹製の青白アグロ。オリジナルなデッキが勝っていく様子はいつ見てもワクワクしますね!神との対戦も見ていて非常に面白かったです。 スタンダード神挑戦者決定戦に向けた調整 さて、私が『スタンダード神決定戦』に挑むに当たって意識した点は以下の三点です。 1.アグロデッキ対策 Magic Online上でジェスカイ召集が好成績をあげていることを踏まえて《苦難の収穫者》を増量。 アグロ対策を重く見るという方針は今まで通りで、そこに召集が加わりました。 2.デッキの安定性の上昇 《ゾンビ化》を2枚採用してデッキの安定性向上を目指しました。 追加のリアニメイトスペルを用意することにより、今までよりも安定して《偉大なる統一者、アトラクサ》《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を着地させられます。 3.青黒ミッドレンジ攻略の糸口を模索 そろそろ紙のメタゲーム上でも青黒ミッドレンジが大流行するはずだと考え、サイドボードプランを準備しました。 《忌まわしき眼魔》《好奇心の神童、ケラン》による飛行ブロッカーの増量です。 サイドボード後、相手が《除霊用掃除機》など墓地対策ハンドをキープした際にイニシアチブを取れるようなプランを意識しました。  『スタンダード神挑戦者決定戦』デッキリスト 今回使用したデッキリストはこちら。 大会結果 ボロスバーン〇白単コントロール〇白単コントロール〇グルールアグロ×セレズニアオーラ×ティムールカワウソ   成績は3-0から0-3してしまい、3-3でドロップ。悔しい結果になってしまいました。 1〜3戦目は比較的簡単なゲームでした。ボロスバーンは《脚当ての陣形》がないため、《偉大なる統一者、アトラクサ》《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》が対処されず、リアニメイトさえ決めれば試合がだいぶ有利になります。 白単コントロールは《完成化した精神、ジェイス》を相手が採用していなければ、サイドボード後に《安らかなる眠り》を貼られることを前提に考えても、負ける要素がありません。 そして問題のグルールアグロです。《多様な鼠》《叫ぶ宿敵》《巨怪の怒り》が絡んだブン回りを2回連続で食らってしまい、あえなく敗北してしまいました。トーナメント中一度は受け入れなければならない負け方ですが、ここでティルト状態に入ってしまいます。セレズニアオーラ、ティムールカワウソ相手はある程度こちらも好き勝手に動くことができ、その時間を与えてくれるので、キーカードさえ揃っていれば怖くない相手なのですが、日和って微妙なハンドをキープし続けてしまい敗北。 「運がなかった」と言えばそこまでですが、パフォーマンスは良くなかったです。 反省 さて、負けたときこそ成長のチャンス、ということで反省したいポイントを纏めてみます。 まずメタゲームを読み違えていました。 《苦難の収穫者》はジェスカイ召集にも強い除去である反面、《叫ぶ宿敵》を除去できない欠点がありました。 赤アグロミラーのミラーでは絶対的な《叫ぶ宿敵》は、黒いデッキやシミックテラーなどにはさほど強くなく、それらのデッキの流行に伴い、採用数が減少すると予想していましたが、その読みが外れてしまいました。 もう一つは厳しいマリガンを徹底することができなかったことです。 グルールアグロに理不尽な負け方をしたのは事実ですが、そのメンタルを次の試合に持ち込んでいいわけがありません。マリガンを恐れてはいけないアーキタイプを使っていることもあり、ここは妥協してはいけないポイントでしたね。とはいえ、妥協キープなどのマリガン失敗は改善できるポイントでもあります。 このデッキを使って勝率が出ない人の中にはマリガンで躓いてる人も多いのではないでしょうか。 自戒の意味を込めて、マリガンについて掘り下げていきます。 マリガンについて考える マリガンを嫌がるプレイヤーは多いです。 手札が対戦相手よりも少ない状態でゲームをスタートするのには勇気が必要ですからね。 ですが、マリガンは明確にプレイングの一部です。 初手でゲーム展開の8割が決まると思って、時には積極的に6枚の手札を選びましょう。 キープ基準となるカードはあるにはあるのですが、サイドボーディングの仕方やゲームプランによってカードの価値は変化してしまうので、一概には言えません。 それではいくつか例題を挙げて解説していきましょう。   1.VSグルールアグロ     私の答えはマリガンです。 とてもキープしたくなるハンドですね! ですが黒マナが見当たらず、《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》がこちらを見守っています。今後の展開がどうなるか、3枚引いてみましょう。 黒マナを引くことができませんでしたね。16枚入っているので引いても良さそうなものですが、仕方ありません。 2枚目の《錠前破りのいたずら屋》《完成化した精神、ジェイス》は引きこめましたが、グルールアグロ相手ではとても間に合わなそうです。 また《第三の道の創設》がないので、仮に黒マナを引けたとしても墓地が足りず、《もがく出現》を上手く使えないかもしれません。 対グルールアグロではリソースは必要ないので、厳しくマリガンしていくことになります。 というわけでマリガンしてみて配られた6枚です。これはキープ。 またしても難しいハンドが来てしまいました…が、今度はキープしても良さそうですね。このデッキ、緑マナを要求するカードが《もがく出現》《森の轟き、ルムラ》のみなので、青マナと黒マナさえあればとりあえず動き続けることができます。 戻すカードとしては《島》《ゾンビ化》のどちらかでしょうか。 《島》を戻すとマナスクリューの恐怖に怯えることになります。一方《ゾンビ化》を戻すと、《もがく出現》と緑マナの両方を引かなければゲームに勝つことができません。私は《切り崩し》でゲームが長引くことも考えて《島》を戻しそうです。   2.VSディミーアミッドレンジ マリガンです。惜しい、グルール戦でこの初手が来ていれば…! グルールアグロにならこれでキープしてしまいそうですが、相手はディミーアミッドレンジです。このマッチでは土地を伸ばしたいので2枚は少なく感じてしまいます。《完成化した精神、ジェイス》も、アグロには良いカードですが、ディミーアには使い勝手が悪いです。 このデッキはこういった「アクションはできるけれどゴールがない」ハンドがたくさん来るのが問題ですね。 これはキープします! 一度マリガンした、ということを考慮すれば良いハンドでしょう。諜報ランドで《錠前破りのいたずら屋》《蓄え放題》が見つかれば最高のハンドかもしれません。 1ターン目に諜報ランドをセットランドしたいので、同じくタップインである《不穏な浅瀬》を戻す……と思ってしまいそうになりますが、相手は青黒ミッドレンジで、手札には《切り崩し》があります。闇雲に動いてもしょうがないので、最初のターンは《不穏な浅瀬》をセットランド、2ターン目は《切り崩し》を構えながら諜報、そして3ターン目から《第三の道の創設》で動き始められそうです。 というわけで《ハッシュウッドの境界》か《沼》を戻すのが良いでしょう。 3.VS白単コントロール   マリガンです。 非常に有利なマッチアップですが、流石にリアニメイト先が2枚のハンドはまずいです。もしも《執念の徳目》あたりが《第三の道の創設》であれば、《忘れられた者たちの嘆き》で土地も探せそうなのでキープできますが、この手札は無理せずにマリガンという判断になります。    これはキープできます。 《苦々しい勝利》、もしくは《偉大なる統一者、アトラクサ》を戻してキープとなりそうなハンドです。ポイントとしては《第三の道の創設》があること、《忘れられた者たちの嘆き》で3枚目の土地を探せること。相手が白単コントロールなので《苦々しい勝利》を戻して問題ないでしょう。 4.VSティムールカワウソ     パーフェクトハンド。キープです。 非常に理想的なハンドです!色マナがすべて揃っており、《第三の道の創設》で素早く墓地を肥やすことができ、3ターン目までの行動が見えています。後は《偉大なる統一者、アトラクサ》《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》《もがく出現》がめくれるかどうかの勝負になりますね。  さて、今度は少し応用編で、サイドボード後のマリガンについても触れましょう。 インアウトは ー2《執念の徳目》ー2《忘れられた者たちの嘆き》ー2《切り崩し》+2《除霊用掃除機》+2《羅利骨灰》+2《強迫》 です。 マリガンです。 出ましたね、こういうハンドをキープすると負けてしまいます。 特にティムールカワウソのような準備をコツコツと整えていくデッキに対して、こういったハンドで始めてしまうことはかなりリスキー。最低限ゴールが見える手札をキープしましょう。 キープです。 黒マナこそないですが諜報ランドが複数枚あり、リアニメイトというゴールも見えている手札です。 なおかつ《羅利骨灰》もあることから《永劫の活力》などに対処することができます。この程度のハンドならばキープしてもよいでしょう。 5.VSディミーアミッドレンジ ディミーアミッドレンジとのサイドボード後について。 インアウトは以下の通り。 ー2《森の轟き、ルムラ》ー2《執念の徳目》ー2《忘れられた者たちの嘆き》+3《強迫》+2《温厚な襞背》+1《忌まわしき眼魔》+1《好奇心の神童、ケラン》 キープ。 土地に少し不自由がありますが、《強迫》を《第三の道の創設》で使い回す展開が見えているのは非常に良いことです。 一見邪魔に見える《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》も《苦々しい勝利》で墓地に落とすことができますし、《切り崩し》で早期のクロックに対処することもできます。 ただしこちが後手で、相手が1ターン目に《除霊用掃除機》をプレイしてきたときは非常に辛そうです。 キープ。 初手としては《好奇心の神童、ケラン》で土地を伸ばしつつ飛行ブロッカーを立て、《第三の道の創設》でライブラリーを掘り進められるなど、悪くない手札。《迷路庭園》の諜報と《不穏な浅瀬》2枚も頼もしいですね。土地は初手に5枚もありますが問題ありません。 《除霊用掃除機》を置かれても《好奇心の神童、ケラン》で割れるので安心です。 6.VS不明 《切り崩し》があるので早い相手には対応できそうですし、遅い相手に対しては《ゾンビ化》という仕掛けが2枚ある上に《第三の道の創設》での上振れも期待できます。どんな相手にでもキープしても良いでしょう。 このように除去・切削・リアニメイトなど、序盤を遅らせるカードからゴールまですべて揃っている手札は、どんな相手でも文句なくキープできる初手です。 このデッキにとってはゴールが重要なので、切削とリアニメイトを兼ねる《第三の道の創設》は非常に大事なカードで、いつでも初手に欲しいですね。 今後の課題 今週はマリガンに焦点を当ててみました。私が普段どのように考えて初手をキープしているか、少しでも伝わったのなら幸いです。 もちろん初手だけではなく「これから何を引きたいか」を考えることも重要です。麻雀で言うところの面子を揃えるようなものなので、受けが広くなるようプレイしていきましょう。 今後の課題ですが、まだ「マナベースの最大化」という地味ながらも大事な作業が残っています。 現在のマナベースはファストランドを抑えて《グルームレイクの境界》にフィーチャーした形を取っていますが、このマナベースがベストとは限りません。だいぶ長いこと使ってしまったのでそろそろ計算し直そうと思います。 また果敢クリーチャーに対してブレやすくて嫌いだった《切り崩し》を再評価し、4枚まで採用することを検討しそうです。やはり初手にあるとタップインランドを処理しやすいですからね。それに合わせて本当に諜報ランドが《迷路庭園》で良いのか、検討し直します。「それではまた来週……!」と言いたいところですが、今週末は特にイベントがありません。 店舗予選に出ることができればその様子をレポート、もしくは「The Last Sun」用モダンデッキの叩き台を作る様子を記事にしようと思います!禁止改定も12/16に控えていますからね。 それではまた次回、お楽しみに。

【週刊メタゲーム通信】世はまさに大アグロ時代!最新のアグロは赤アグロメタに!

週刊 Standard

2024.12.10

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週はマジックオンライン上で行われた大会、Birds of Paradise Standard Spectacularから、最新スタンダード環境のデッキを紹介していきます。 ボロス果敢 Birds of Paradise Standard Spectacular : 優勝 By MicroPago 今のスタンダードはなんといっても赤天国!赤単、赤単タッチ緑、グルール、そしてボロスと様々な赤いアグロデッキが活躍しています。それを可能にしているのが《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》の3種の赤いカードたち。早い打点とリソース、除去耐性とアグロデッキが欲しいすべてを持つのが今の赤アグロです。当然、これだけ赤いデッキが強ければ、あちこちでミラーマッチが発生します。そんな赤ミラーを制するのがこのボロス果敢です。デッキのベースは赤単。前述のように《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》の組み合わせがしっかり採用されています。そこに加わる白要素が《呑気な物漁り》と《呪文書売り》。エンチャントが戦場に出るたびにクリーチャーを強化できる《呑気な物漁り》と、役割を生成する《呪文書売り》は相性抜群です。《呪文書売り》は《多様な鼠》を新生した次のターンなどに出しても非常に強く、占術で不要牌をライブラリーの下に戻せるため、序盤・中盤いつ引いても強いカードです。これだけでは白い要素が赤ミラーを制するようには見えないかもしれませんね。スペル枠を見ればその答えは一目瞭然です。そう、赤対策と言えばこれ!《幽霊による庇護》です。赤アグロは小粒なクリーチャーばかりなので《幽霊による庇護》の恩恵は受けにくいように思えますが、《多様な鼠》の二段攻撃や《呪文書売り》の強化を駆使することで、《巨怪の怒り》なども合わせてかなりのライフゲインが見込めます。もちろん《幽霊による庇護》はエンチャントなので、《呑気な物漁り》でしっかり強くなってくれます。《呑気な物漁り》でクリーチャーを強化できるので、他の赤いデッキに比べて《幽霊による庇護》を強く運用しやすいですね。《破片魔道士の救出》はグルールの《蛇皮のヴェール》のような使い方ができるカード。《呑気な物漁り》との相性は言うまでもありません。《悪魔の大騒動》まで採用されており、かなりエンチャントシナジーに寄せたリストと言えますね。除去しあうだけが赤ミラーではありません!《幽霊による庇護》で赤ミラーに強いボロス果敢、これから更に数が増えていくことになるかもしれませんね。   ジェスカイ召集 Birds of Paradise Standard Spectacular : 3位 By TheManLand ここ1~2週間ほどマジックオンラインで大流行しているのがジェスカイ召集。スタンダードでは長いこと存在しているアーキタイプですが、特に最近結果を残してきています。《ひよっこ捜査員》《遠眼鏡のセイレーン》で出した手がかりや地図に《上機嫌の解体》を打ち、クリーチャーを並べて《イーオスの遍歴の騎士》を出し、《イモデーンの徴募兵》を手札に加えて次のターンに一気に襲い掛かる。回った時にはどのデッキも手がつけられない、パイオニア級のアグロデッキです。攻防一体の《内なる空の管理人》《威厳あるバニコーン》、そして《幽霊による庇護》と対赤アグロもしっかり勝ち筋があります。ここに来て召集が勝ち上がっている背景には、今のスタンダードで最も意識しなければならない相手が赤アグロだからでしょう。「アグロ対策が増えるならジェスカイ召集もそのあおりを受けるのでは?」と思いますが、実はそれは違います。召集には《切り崩し》や《喉首狙い》などのただの除去はほとんど効きません。クリーチャーを横並びさせて《イーオスの遍歴の騎士》や《イモデーンの徴募兵》で勝つデッキだからです。そのため、《紅蓮地獄》をはじめとした全体除去の方が効果があります。一方、赤アグロには《紅蓮地獄》などの全体除去はあまり効果がありません。《紅蓮地獄》は2/3になった《僧院の速槍》すら倒せませんし、《審判の日》などのしっかりした全体除去はマナコストが重く、速攻が多数入っている赤アグロにはやはり効果が薄い。打った返しに速攻クリーチャーに《巨怪の怒り》を撃たれて負けるのは想像に容易いですね。以前は召集は意識される側だったので、対アグロ対策としては全体除去が多く採用されていました。その全体除去スロットが単体除去に代わっており、実質召集相手のサイドボードが用意できないというのが現状なのです。「サイドボードさえなければ召集は最強のデッキだ」と以前は言われていましたが、今まさにその最強の状況になっています。ジェスカイ召集の流行を見てどのデッキも最近は2枚ほど全体除去を採用するようになりましたが、それでもそこから枚数が増えることはあまりないでしょう。その分だけ赤アグロに入れるカードが減ってしまいますからね。メインから《太陽降下》をたくさん採用しているようなドメインコントロールや白単コントロール以外に強いのが召集です。メタを見て使いどころを見極めましょう! ディミーアミッドレンジ Birds of Paradise Standard Spectacular : 6位 By PierrePoilievre2025 スタンダードで赤アグロと並んで二大巨頭のデッキ、ディミーアミッドレンジ。青の打ち消しと黒の除去、そして《悪夢滅ぼし、魁渡》によって攻めるデッキです。このリストはインスタントタイミングでのアクションを徹底したデッキ。対赤アグロで攻守で活躍する《分派の説教者》をサイドボードに落とし、《ティシャーナの潮縛り》をメイン採用しています。《分派の説教者》メイン、《ティシャーナの潮縛り》サイドが定番だったので、思い切った構成です。1マナ域の《遠眼鏡のセイレーン》を除いたすべてのクリーチャーが瞬速となっており、打ち消しや除去を構えながら常に展開していくことが可能となっています。《巨怪の怒り》などで無理やり突破されないためには、除去を常に構える必要がありますからね。《フラッドピットの溺れさせ》はすっかりディミーアミッドレンジの2マナ域として定着しました。元々2マナ域で不動の立場を確立していた《大洞窟のコウモリ》は赤いデッキがこれだけ多い環境ではなかなか活躍できません。赤いデッキには《ショック》で対処されますし、それ以外のデッキは赤を意識して大量の軽量除去を採用しています。赤だけでなく、赤を意識したデッキにも《大洞窟のコウモリ》は弱いので、この変更は納得です。一方の《フラッドピットの溺れさせ》はクリーチャーを寝かせつつブロッカーにもなりますし、《悪夢滅ぼし、魁渡》で戻して再利用しても良しと非常に便利なクリーチャー。《フラッドピットの溺れさせ》で攻撃して相手がダメージを通すタイミングで起動型能力を使い、そのスタックで《悪夢滅ぼし、魁渡》を忍術することで、麻痺カウンターが置かれたクリーチャーを除去しつつ、《フラッドピットの溺れさせ》を手札に戻せます。面白いのが《サイバの暗号術師》の採用です。戦場に出た時にクリーチャーに+1/+1カウンターを乗せつつ呪禁を付与できる、《蛇皮のヴェール》系のクリーチャー。生き残ってハイバリューなクリーチャーがいないこのデッキでは少し違和感があるかもしれませんが、デッキを瞬速で固めるなら、一番良い選択肢に見えます。また、《悪夢滅ぼし、魁渡》との相性も見過ごせません。《悪夢滅ぼし、魁渡》の忍術で再利用してクリーチャーを強化しても良いですし、何より《サイバの暗号術師》は忍者なので、《悪夢滅ぼし、魁渡》のプラス能力での紋章で強化できます。《永劫の好奇心》を《塔の点火》圏外にするのも強く、何より全く警戒されていないのは大きいでしょう。赤アグロが《抹消する稲妻》を採用するようになったのも、《サイバの暗号術師》としては好都合。しっかりとメインからミラーマッチの《悪夢滅ぼし、魁渡》を除去できる《シェオルドレッドの勅令》を採用するなど、今のスタンダードのメタを意識した作りになっているので、ディミーアミッドレンジがお好きな方は試してみてください。

ティムールカワウソ徹底解説!

Standard ピックアップ

2024.12.06

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 本日は、スタンダードで最も難解なデッキと言われている、ティムールカワウソの記事になります。世界選手権の最終戦でティムールカワウソの製作者に負けてからというもの、このデッキの動きに惚れ込み、店舗予選を6勝1敗で突破、その後プレミアム予選も突破……出来たらよかったのですが、権利を賭けた決勝で敗れてしまいました。さほど結果を残してこれたわけではないのですが、ようやく自信を持った75枚が出来上がったので、こうして記事にすることにしました。 ティムールカワウソとは? 《嵐追いの才能》(から出るトークン)、《稲妻罠の教練者》、《渓間の洪水呼び》の3種のカワウソを活用したコンボデッキです。 《渓間の洪水呼び》は非クリーチャー呪文を唱えるたびに、カワウソやネズミなどに修正を与えてアンタップする能力を持っています。通常はこのアンタップ能力にほとんど意味はありませんが、《永劫の活力》がここに加わることでコンボになります。《永劫の活力》の能力でカワウソたちから好きなマナを出し、そのマナから軽い呪文を唱えると、すべてのカワウソが《渓間の洪水呼び》によってアンタップします。カワウソが3体いる状態で1マナのカードを使えば2マナが浮く計算になり、同時にパワータフネスに修正が入っていきます。無限の手順は後述しますが、最終的には無限に相手のパーマネントをバウンスしながらパワーが上がっていって勝利となります。よく聞かれる「ティムールカワウソはコンボなの?ビートダウンなの?」についてもお答えしましょう。ティムールカワウソはそのどちらでもなく、コントロールデッキだと認識しています。《嵐追いの才能》が初手に2枚ある時はビートダウンに変貌しますが、基本的にはライフを削るのは二の次です。そしてコンボを第一にも考えません。 このデッキは《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》の2枚を駆使して盤面を掌握し続け、やがてコンボを決めるデッキです。ティムールカワウソが難しいと感じる人は、このデッキをコントロールだと思ってプレイしてみてください。もしかしたら上手くいくかもしれません。 デッキリストとカード解説 《嵐追いの才能》 このデッキで最も重要となるカード。ビート・コンボ・コントロールのすべてのプランに絡んでくるので、いつでも初手に欲しいです。戦場に出た時に生成するカワウソは毎ターン2/2や3/3ほどのサイズで相手に殴りかかりますし、《薮打ち》で格闘する際も便利。《塔の点火》の協約にも使用したりします。レベル2ではインスタント・ソーサリーを拾えるので、ここで《この町は狭すぎる》を拾っておくと、永久機関が完成します。レベル2になった《嵐追いの才能》と相手の致命的なカードを《この町は狭すぎる》で戻し、《嵐追いの才能》をこちらは出し直し、またレベル2で《この町は狭すぎる》を回収。こうやって妨害しながらカワウソを増やしていくのがこのデッキの基本戦略。《永劫の活力》《渓間の洪水呼び》が揃うとこの《嵐追いの才能》レベル2→《この町は狭すぎる》を無限に行えるようになるので、一撃必殺のコンボになります。レベル3まで行くことはメイン戦ではありませんが、サイド後に墓地対策をされた際には到達することもしばしば。当然ながらかなり強いのでゲームに勝てます。 《この町は狭すぎる》 デッキ内で2番目に強いカード。ティムールカワウソこの町に名前を変えたいぐらいにはデッキの顔として役立ちます。相手の最も強いカードに触りながら、自分は《嵐追いの才能》《豆の木をのぼれ》を戻して得をし、更に《嵐追いの才能》の2章でループになる素晴らしいスペル。必ずゲーム中に1枚は引きたいカード。2マナにも関わらず5マナの呪文なので《豆の木をのぼれ》がトリガーします。僕はこれを脱法豆の木と呼んでいます。 《稲妻罠の教練者》 モダンでも大活躍のカワウソ。新生コストは少し重いですが、マナフラッドがそれなりに多いので新生で出すこともしばしばあります。《渓間の洪水呼び》+《永劫の活力》を揃えた後はカワウソの頭数が重要になるので、《稲妻罠の教練者》は積極的に序盤からドロップしておきたいカードです。引けば引くだけ《渓間の洪水呼び》のバリューが上がるので嬉しいです。 ちなみに通常版とショーケース版に加えてバンドルプロモ版があるのですが、個人的にはバンドルプロモ版が圧倒的に可愛いです。なぜフォイルしかないんだ……! 《永劫の活力》 クリーチャーをすべて《極楽鳥》に変える強力なクリーチャー。同じ能力を持つ《謎の石の儀式》もかつてコンボデッキで採用実績がありましたが、まさかそれがたった1マナ重くなっただけでクリーチャーになり、しかも除去耐性もつくとは。《永劫の活力》を出したターンにもう1アクションを取りたいので、なるべくならフルタップで出してエンドせず、事前にクリーチャーを出しておいてから《永劫の活力》を出し、構えたいところです。《苦痛ある選定》などの追放除去に弱いので、《塔の点火》を構えておきたいですね。協約コストで《永劫の活力》を生け贄にすれば追放されずにエンチャントとして場に残ります。戦場に《永劫の活力》しかクリーチャーがいない場合でも《塔の点火》で《永劫の活力》自身を対象に取り、その上で協約すればOKです。赤マナさえ構えておけば追放除去はかわせます。《嵐追いの才能》《この町は狭すぎるる》のループには非常にマナがかかるので、《永劫の活力》は必須です。逆に一度でもループが始まると、《渓間の洪水呼び》がなくて無限にならなかったとしても、カワウソが勝手に増えていくので、使えるマナや打点が増えていき、一瞬で勝利します。デッキの核です。 《塔の点火》 赤アグロが環境に多い以上、4枚必須なカード。もしマジックの4枚ルールがなくなったのなら、6枚はメインに入れると思います。それぐらい《塔の点火》は強いカードです。《嵐追いの才能》とそのトークン、《咆哮する焼炉+蒸気サウナ》、《永劫の活力》ととにかく協約の種に困らないのがティムールカワウソで使う《塔の点火》の強いところ。《永劫の活力》との相性は前述の通り。環境の9割がコントロールにならないので限り、4枚から動くことは決してないですね。 《渓間の洪水呼び》 非クリーチャー呪文がすべて瞬速を持ち、非クリーチャー呪文を唱えるとカエル・カワウソ・鳥・ネズミをアンタップして+1/+1修正を与えるという、《ジェスカイの隆盛》のような能力を持つカワウソ。このデッキにはカワウソとネズミしか入っていませんが、強い鳥やカエルがこれから登場すればデッキに入る可能性は十分あります。《永劫の活力》と揃った時には、1マナの非クリーチャー呪文はすべてフリースペルになります。《嵐追いの才能》のカワウソトークンは自身も果敢を持っているので、スペル1枚につき+2/+2。複数体のトークンがいれば突然相手を倒すことも可能です。とはいえ、基本的にはただの3マナ2/2。除去耐性もないので狙われます。《切り崩し》や《噴出の稲妻》で焼かれるのはもったいないので、1マナのカードを構えた状態で出したいです。非クリーチャー呪文を瞬速で唱えられるので《花粉の分析》《薮打ち》を構えるだけで良いので、ケアは比較的簡単です。3マナという重さで除去と交換されてしまうだけのクリーチャーなので、コンボに関わるカードですが3枚しか入っていません。よくある負けパターンの《渓間の洪水呼び》が手札に溜まって負けは、カワウソ使いなら共感してもらえるはず! 《薮打ち》 基本土地をサーチしたり格闘ができる便利な呪文。いや、そんな言葉ではこいつは言い表せません。便利すぎるカードです。3色を無理やり回しているので、色マナはカツカツ。こういった土地サーチはデッキに必須です。《渓間の洪水呼び》のトリガーや《稲妻罠の教練者》で拾えることなどから、《薮打ち》は非常に相性の良いカードです。土地サーチで使う機会がほとんどだと思いきや、実はかなり格闘として打ちます。《嵐追いの才能》は《薮打ち》でも大きくなるので《心火の英雄》や《僧院の速槍》を打ち取れますし、《稲妻罠の教練者》が《大洞窟のコウモリ》を殴り倒してくれることもしばしば。《永劫の活力》の追放が怖くて《塔の点火》がない時は、相手のパワー3クリーチャーと格闘して自らエンチャントとして蘇らせる、なんて使い方もあります。冗談でもなんでもなく、10回打って6回は土地サーチ、4回は格闘で打つ。それぐらい格闘で打つ機会は多いです。格闘が強すぎるので《花粉の分析》を押さえて4枚採用しています。 《花粉の分析》 こちらも《薮打ち》と同じ土地サーチ。もう1つのモードが証拠収集8を達成していると、好きなクリーチャーをサーチできるというもの。このデッキは非常に軽く構築されているため、証拠収集8を満たすのは難しい。《この町は狭すぎる》は後々《嵐追いの才能》で拾いたいのでできれば追放したくありません。それならほぼ証拠収集できないのかというと、そういうわけではありません。《咆哮する焼炉+蒸気サウナ》が証拠収集の種となってくれます。《咆哮する焼炉》を開けておき、《塔の点火》の協約で生け贄にするだけで《花粉の分析》を達成できるので、積極的にこのプレイを狙いましょう。 《豆の木をのぼれ》 5マナ以上のカードを唱えると1ドローのおまけがついてくる《豆の木をのぼれ》。しかしデッキ内で誘発するのは《この町は狭すぎる》(と《トーテンタンズの歌》X=4以上)のみと非常に少ない。そのため、2枚に押さえているリストが多い中、僕は一貫して3枚採用しています。それは結局他のどのリソースカードを入れるよりもゲームの勝利に貢献してくれるからです。勝つゲームの大半は《この町は狭すぎる》が絡んできますし、ゲーム序盤に攻められている場で打つ《この町は狭すぎる》に《豆の木をのぼれ》の1ドローがついてくるかは非常に重要でした。ティムールカワウソは手札を増やす手段がほとんどありません。除去を打ち続けていくと自然に手札は枯渇してしまいます。しかもバウンスは1対1交換にはならず、単なる延命措置です。《この町は狭すぎる》で戻したカードが《稲妻罠の教練者》や《嵐追いの才能》なら損はしませんが、得もしていません。しっかりとこちらが手札を増やして盤面をコントロールしていくには、《豆の木をのぼれ》が一番なのです。 《咆哮する焼炉+蒸気サウナ》 最初は「ソーサリータイミングの除去って……」とか「不確定なダメージだし不安」と思っていましたが、使っていく内にどんどん味がしてきて気づけば3枚固定になったカード。ソーサリータイミングだとしても除去できれば十分で、《この町は狭すぎる》で再利用できるのがとても好感触。《蒸気サウナ》を開けてリソース確保も、マナフラッドしやすいこのデッキでは嬉しい。このデッキで処理の難しい《分派の説教者》を倒せるのもありがたい。《蒸気サウナ》を開ける機会はそこまで多くないので、《塔の点火》の協約で生け贄にしやすく、《花粉の分析》の証拠収集を稼ぐのにも便利。かなりいぶし銀的な活躍を見せてくれました。3枚は入れるべきです。ちなみに《蒸気サウナ》から出すとマナ総量が5以上の呪文なので《豆の木をのぼれ》で1枚引けます。 《トーテンタンズの歌》 ブロックできないネズミを出して、ターン終了時までクリーチャーが速攻を持つソーサリー。ただテキストを読んだだけではあまり強さがわからないかもしれませんが、このデッキでは重要な役割を果たします。まずネズミを生成できる点。ただのブロックに参加できないネズミは、《渓間の洪水呼び》によってアンタップして修正を受けます。つまり《永劫の活力》が揃うと簡単に大量のマナを生み出せるようになります。そしてクリーチャーに速攻を付与する能力も重要です。《永劫の活力》《渓間の洪水呼び》が揃っても、カワウソが少なければ無限コンボは始まりません。《渓間の洪水呼び》でアンタップできるクリーチャーが複数体必要なのです。それを相手も理解しているからこそ、《稲妻罠の教練者》やカワウソトークンなどはしっかり処理されてしまいます。なかなか頭数を揃えておくことはできませんし、更地の状態から突然コンボを決めることは基本的にはできません。しかし、《トーテンタンズの歌》なら《永劫の活力》さえ出ていれば、更地の状態からでもコンボを開始できます。X=4で唱えて4体を生成し、その内3体を寝かせて《渓間の洪水呼び》を出し、1マナの呪文を唱えると4体が起きるので、そこから無限に入ることもできるのです。ディミーアミッドレンジやティムールカワウソミラーでは、《渓間の洪水呼び》でアンタップできるクリーチャーをどれだけ場に出しておけるかが重要なので、《トーテンタンズの歌》はキーと言っても良いです。 《焦熱の竜火》 特筆すべき点はないただの除去です。 《塔の点火》の追加のようなイメージですが、準備せずに3点追放を行えるので、《永劫の活力》《永劫の好奇心》を処理するのに便利です。《咆哮する焼炉+蒸気サウナ》の4枚目よりは《焦熱の竜火》を1枚入れておく方が好みですね。 《探索するドルイド》 グルールが多ければ《焦熱の竜火》の方が良いですが、最近ではそれ以外のデッキにもよく当たるので、追加のリソースカードとして採用することにしました。4枚目の《豆の木をのぼれ》と比べると、《花粉の分析》でサーチできるのがメリットです。《稲妻罠の教練者》をサーチすれば良い場合もありますが、2枚めくりつつ《探索するドルイド》をクリーチャーとしても運用したい場面もあるので、1枚入れる意味はそれなりにあります。 マナベース 基本は3ターン目までのアンタップインを徹底的に意識しています。《薮打ち》《花粉の分析》を駆使して土地を伸ばしていく関係上、実質それらのアクションに1マナかかる(=タップインになるようなもの)ので、土地そのものでタップインはしたくありません。そこで《寓話の小道》は入れずに組んでいます。緑マナは絶対に欲しいので16確保しており、青は12+7枚(土地サーチ)の19、赤は7+7の14です。《破滅の眺望》はデッキ内唯一のタップインですが、かなり強力なので採用しました。単色のパーマネント1つにつきその色のマナが出るので、《豆の木をのぼれ》《咆哮する焼炉》なら赤緑、ここに《嵐追いの才能》があると赤緑青の3マナが出ます。1マナ増えるというわけです。青緑など2色しか出ない場合でも、セットランド時に赤を指定しておけば実質3色土地ですし、《ヤヴィマヤの沿岸》の無色マナを《破滅の眺望》の起動に当てて青緑を出せば実質フィルターランドなので、思いのほか便利でした。 《神盾の海亀》 ここからサイドボードのお話です。そして早速問題の亀くんから。なぜこのカードを採用するに至ったのか?その経緯からお話しましょう。赤アグロと対戦していてとにかく負けるパターンが《叫ぶ宿敵》でした。序盤にしっかりとライフを守れていれば《叫ぶ宿敵》を火力で除去しても問題ないのですが、序盤のクリーチャーを打ち漏らしてライフを削られていると、《叫ぶ宿敵》に打つ《焦熱の竜火》が致命的なダメージになります。かといってティムールカラーで《叫ぶ宿敵》に対処するのは困難です。《声も出せない》は《巨怪の怒り》で大きくなったり、《亭主の才能》で突破されるのでイマイチ。そもそも《叫ぶ宿敵》に1回攻撃されてしまいますからね。そこで1ターン目に出して序盤の《心火の英雄》や《熾火心の挑戦者》を受け止めてもらいつつ、《叫ぶ宿敵》もブロックできる《神盾の海亀》に白羽の矢が立ちました。実際かなりこのカードの感触はよく、採用してから対赤アグロの勝率はかなり良いです。1マナなので出しながら《塔の点火》を構えられますし、《雇われ爪》なら《巨怪の怒り》でも突破されず、《僧院の速槍》《心火の英雄》は《巨怪の怒り》以外ならガッチリガード。《叫ぶ宿敵》も出したターンは完全ガードなので実質速攻を無効化しているようなものです。 《フラッドピットの溺れさせ》 こちらも対赤アグロ用です。《神盾の海亀》を突破する手段として《巨怪の怒り》が最も簡単で、こちらは《塔の点火》を構えていれば万全なのですが、中々上手くはいきません。そこで《フラッドピットの溺れさせ》で《巨怪の怒り》が付いたクリーチャーを寝かせるのが非常に効果的。《この町は狭すぎる》で回収して再利用できるのも良いポイント。ちなみに《フラッドピットの溺れさせ》を起動して能力スタックで《この町は狭すぎる》で《フラッドピットの溺れさせ》を手札に戻すと、相手のクリーチャーだけライブラリーに戻ります。 《脚当ての陣形》 《力線の束縛》《世話人の才能》《ドロスの魔神》《不浄な別室》などなど、エンチャントや飛行が今のスタンダードにはたくさん。それらすべてに対処しつつ、手札で腐っていればドローに変えられるので、とにかく便利なカードです。どのマッチでもベストなサイドカードではないかもしれませんが、ベターあるいはグッドなサイドカード。 《軽蔑的な一撃》 打ち消しはこの2枚だけです。《否認》との選択ですが、《否認》の方が優れているのは《豆の木をのぼれ》と《世話人の才能》を消した瞬間だけだと思っています。ズアードメインの各種大主には《軽蔑的な一撃》しか当たりませんし、《太陽降下》は《軽蔑的な一撃》でも触れます。《終末の加虐者》を消せるのもちょっと嬉しいですね。どちらか採用するなら《軽蔑的な一撃》推奨です。ミラーマッチでは《否認》が欲しいですが。 《轟く機知、ラル》 黒いミッドレンジやコントロール全般にサイドインします。見た目以上にとにかく固く、プラスでトークンを出して《塔の点火》を構えるだけで鉄壁。ディミーアやゴルガリに対しては難攻不落のフィニッシャーとなります。使っていて非常に感触が良く、2枚にしてからは1度も減らしたいと思いませんでした。コンボを決められないように《稲妻罠の教練者》やカワウソトークンを狙われがちなので、《轟く機知、ラル》を出すとかなり嫌な顔をされます。 採用しなかったカード 《手練》 《薮打ち》《手練》型のリストも多いですし、僕も実際試しました。現在のリストは土地27に土地サーチ7とかなりマナフラッドしやすいので、《手練》を入れることでそれをある程度解消できます。それでもいくつかの理由により、僕は《手練》ではなく《花粉の分析》を採用しています。最も大きいのはこのデッキがマナを無限に欲している点です。《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》のレベルアップだけで6マナかかり、そこから《嵐追いの才能》の出し直しなども含めると、とにかくこのデッキはマナを非常に使います。そのためセットランドできることなら毎ターンし続けたいのです。マナフラッドは嫌ですが、土地を置くメリット自体はかなりあるのです。《花粉の分析》が《咆哮する焼炉+蒸気サウナ》を証拠収集することでしっかりリソースに代わってくれるのも、《花粉の分析》にポジティブな要素です。《永劫の活力》か《渓間の洪水呼び》の足らない方をサーチしてコンボを決めたり、マナフラッドしていれば《稲妻罠の教練者》《探索するドルイド》にアクセスできます。もう1つ重要なポイントは、《薮打ち》《花粉の分析》がどちらも緑のカードであることです。緑マナ1枚さえ初手にあれば、この7枚を引くだけでゲームを開始できるのです。《手練》は青いので《銅線の地溝》や《森》でキープすることはできません。初手に土地が1枚の手札はそれなりに来ますし、当然土地が少ない初手はブン回る確率が高い。それをキープできるかどうかは大きな違いがあります。以上の理由で、僕は《薮打ち》《花粉の分析》が好みです。 《手練》が欲しい瞬間もあります。やはりフラッドしやすい構成にはなっていますからね。 《叫ぶ宿敵》 対赤アグロにおける《フラッドピットの溺れさせ》との選択でしたが、《神盾の海亀》と相性を考えて《フラッドピットの溺れさせ》を優先しました。既にお話したように《巨怪の怒り》で《神盾の海亀》を突破させて《フラッドピットの溺れさせ》で寝かせて《この町は狭すぎる》の動きが非常に強かったためです。 《叫ぶ宿敵》はダメージレースで強く、また3ターン目に出した際はブロッカーとしてかなり優秀です。1マナ域をブロックしつつ、横のクリーチャーも破壊できる可能性があるので、1対2交換が取りやすいのです。 《神盾の海亀》ではダメージが稼げないため、使うなら《フラッドピットの溺れさせ》と《叫ぶ宿敵》の組み合わせでしっかり殴れるプランを取った方が良いですね。 《解剖道具》 5ターン目に出ればかなり強いカードなのですが、《叫ぶ宿敵》の能力でライフゲインできなくなった瞬間に引きたくないカード筆頭になるので、リスクが高いと感じました。《稲妻波》《ボロスの魔除け》で本体を狙うボロスバーンが流行すれば《解剖道具》を採用するかもしれませんが、現状はライフを回復するカードはサイドボードに採用しない方向にしています。《神盾の海亀》で《叫ぶ宿敵》を止める以上、《叫ぶ宿敵》が場に残りやすいというのもマイナスでした。 回し方 《嵐追いの才能》が初手にあれば展開して、相手の盤面の脅威を除去しつつ攻撃し、ライフを削っていきます。《永劫の活力》を出しつつ除去や《この町は狭すぎる》で干渉すると、そこから行動回数が増えるので、徐々に戦場を支配できるようになります。《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》レベル2がループし始めると、相手の動きは制限され、こちらはカワウソが増えていくので、相手のライフがなくなっていきます。 そのまま脅威を取り除いてカワウソビートダウンを完遂するもよし、どこかで《渓間の洪水呼び》を引けばコンボが決まってゲームセットです。冒頭でお話しした通り、このデッキは基本的にはボードコントロールです。《塔の点火》《咆哮する焼炉》《この町は狭すぎる》を使って盤面を鎮静化させ、そこから《嵐追いの才能》+《この町は狭すぎる》でループで相手の攻め手を完全に潰し、最終的にコンボで勝つのです。だから僕はティムールカワウソをコントロールデッキと呼んでいます。《渓間の洪水呼び》《永劫の活力》《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》の無限コンボについてはしっかりとまずは頭に入れておきましょう。カワウソ(とネズミ)が3体いる場合は、《嵐追いの才能》と2マナ以下のパーマネントカード(《渓間の洪水呼び》を誘発させられればなんでもOK)があればコンボが決まります。 3体をタップして青を3つ出し、その内2マナで《この町は狭すぎる》を唱えて《嵐追いの才能》と《咆哮する焼炉》を回収。カワウソたちからマナを出して4マナになり、《嵐追いの才能》を出し直して3マナ+カワウソたちの3マナ。そこから2マナを使って《咆哮する焼炉》を唱えると4マナ+カワウソたちから3マナが出るので、浮いた4マナでレベルアップし、カワウソたちを寝かせて《この町は狭すぎる》で《嵐追いの才能》と《咆哮する焼炉》を戻せるので無限ループです。戻せるカードが《嵐追いの才能》しかなければカワウソたちは4体必要になります。一見ハードルが高そうに見えますが、実際無限パンプが必要な場面はそう多くありません。たとえばカワウソ3体と《嵐追いの才能》1枚しかない状態では、1マナずつ減っていく簡易ループになってしまいます。が、実際はそれでも十分です。ループ1回で《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》で2回スペルを唱えているので、《渓間の洪水呼び》で全体が+2修正されつつ、相手のブロッカーも排除できます。3ループすれば3体のカワウソが+6/+6修正を受けますから、それだけで致死量のダメージを叩き出せるはずです。今最大で何点出せるのか?この計算を素早くできるようにするために、カワウソ算をいくつか覚えておきましょう。 カワウソ算 マナを出せるカワウソとネズミの数ー呪文のマナ=余るマナ まずは《渓間の洪水呼び》《永劫の活力》が揃った時にどれだけマナが出るかを俊二に見極めましょう。カワウソトークンと《渓間の洪水呼び》だけの状態でも、《嵐追いの才能》が2枚、《この町は狭すぎる》、土地が4枚戦場にあれば、《渓間の洪水呼び》を合計で9回誘発させることができるので、カワウソトークンのパワーが19になります。カワウソ2体-2マナ《この町は狭すぎる》=0。カワウソ2体-1マナ《嵐追いの才能》=1。《嵐追いの才能》は2回キャストされるので2マナ浮き、そこから《嵐追いの才能》をレベルアップさせるとループが開始。このレベルアップには4マナが必要なので、実質2マナでレベルアップできるようになります。この例ならば2体のカワウソと土地4枚で6マナあるので、3回のレベルアップで合計9回のスペルを唱えられることができ、果敢と《渓間の洪水呼び》により18回修正を受けてトークンのパワーは19になります。 《嵐追いの才能》レベルアップ+《この町は狭すぎる》 4+2+1=7マナ。《嵐追いの才能》のレベルアップで《この町は狭すぎる》を回収し、《この町は狭すぎる》を打って《嵐追いの才能》を再キャストするのにかかるマナです。この7マナが揃うと毎ターンカワウソが増えながら相手のパーマネントに触れるようになります。カワウソが増えていくのでどんどん使えるマナが増えてきて、やがてループしながらカワウソが殴り始めてゲームが終わります。 《渓間の洪水呼び》2体 これは単純に《渓間の洪水呼び》が2回誘発するだけなので簡単です。2体の《渓間の洪水呼び》だけで2×2の4マナで、実質カワウソ4体扱いになるのでほぼ勝ちです。 計算の応用 ここまでの計算を応用することで、今無限が決まる状態なのかが簡単にわかります。マナが出るカワウソ・ネズミの数ー呪文これから唱える呪文のマナ=余るマナを使い、手札と場にあるカードで何マナ増えるのかを計算します。その増えるマナが4マナ以上ならば、《この町は狭すぎる》《嵐追いの才能》によるループが確定します。例:カワウソの数が3体、《この町は狭すぎる》、《嵐追いの才能》、《咆哮する焼炉》 3-2=1(《この町は狭すぎる》で増えるマナ)3-1=2(《嵐追いの才能》で増えるマナ)3-2=1(《咆哮する焼炉》で増えるマナ)合計で4マナ増えるので、これは無限ループです。実際にやってみましょう。1.カワウソ3体を寝かせて3マナ、《この町は狭すぎる》で《嵐追いの才能》と《咆哮する焼炉》をバウンス。残りは1マナ(カワウソ3体がアンタップ)。2.カワウソ3体からマナを出して4マナから《嵐追いの才能》。残りは3マナ(カワウソ3体がアンタップ)。3.カワウソ3体からマナを出して6マナから《咆哮する焼炉》。残りは4マナ(カワウソ3体がアンタップ)。4.残った4マナで《嵐追いの才能》をレベルアップ。1に戻って無限ループ。非常に簡単に無限が決まるかわかりますね。 マリガン 絶対的なキープ基準となるカードは《稲妻罠の教練者》《嵐追いの才能》の2種。他のカードが全部土地などでない限りはまずキープ。土地が2枚以上(《薮打ち》《花粉の分析》を含む)あって《稲妻罠の教練者》か《嵐追いの才能》があればまず始めるべきです。 《この町は狭すぎる》《豆の木をのぼれ》《永劫の活力》《咆哮する焼炉》《塔の点火》《焦熱の竜火》は準キープカード。《この町は狭すぎる》は単品でキープした場合、早いターンに使用できない可能性があります。3ターン目に2マナで打てる算段があるならキープできます。《咆哮する焼炉》や《豆の木をのぼれ》など、2ターン目に置けるパーマネントカードがあるかが重要です。一度引いて墓地に落としておけば後引きの《嵐追いの才能》で拾えるので、最初の1枚目を引いておくことは大事です。比較的キープしたいカードではあります。《豆の木をのぼれ》《咆哮する焼炉》の2種は、他のカードによりますね。《豆の木をのぼれ》の場合、《咆哮する焼炉》《塔の点火》《焦熱の竜火》《この町は狭すぎる》などの干渉手段と一緒ならキープしたいところです。《渓間の洪水呼び》《トーテンタンズの歌》など干渉手段に乏しい場合はマリガンも検討します。《永劫の活力》はクリーチャーがいないと3ターン目をただパスするだけになってしまいますが、逆に手札にクリーチャーがいる場合は積極的にキープしたいカードです。除去と《永劫の活力》だけの初手をキープするのはそれなりにリスクがありますが、その除去が《咆哮する焼炉》であればキープできます。《咆哮する焼炉》→《永劫の活力》→《蒸気サウナ》とゲームを進められますからね。悩ましいのは《塔の点火》《この町は狭すぎる》《永劫の活力》土地4といった初手が来た場合です。この土地が《花粉の分析》か《薮打ち》ならばキープ、土地ならばマリガンぐらいです。土地サーチカードをスペルとして使うことを前提にすればギリギリOKです。《この町は狭すぎる》が《焦熱の竜火》ならマリガンですね。《トーテンタンズの歌》は初手にあまり必要ないカードですが、《永劫の活力》とセットの時は強力です。X=2か3の《トーテンタンズの歌》から次のターンに《永劫の活力》で一気に展開したり、《渓間の洪水呼び》も展開して無限もあります。単体では非常に弱いですが、《永劫の活力》とセットの時だけは点数アップ。2枚が揃っていればキープしたくなります。キープに全く関わらないのは《渓間の洪水呼び》です。初手にあっても基本何もしないので、むしろ引きたくありません。《渓間の洪水呼び》が複数枚ある初手は《嵐追いの才能》《塔の点火》《この町は狭すぎる》など他の手札がかなり良くない限りはマリガンすることになります。《薮打ち》《花粉の分析》は初手にあれば土地換算なので、土地としてキープorマリガンに関わってきます。ただし上記のような絶妙な手札の時に4枚目の土地が《薮打ち》ならキープできる可能性もあります。《花粉の分析》は《咆哮する焼炉》を《塔の点火》で生け贄にした時は証拠収集できるので、その2枚が一緒にあるのであれば点数アップ。 TIPS 《トーテンタンズの歌》の速攻はターン終了時まで 《トーテンタンズの歌》で付与される速攻はターン終了時までです。そのため、このターンに出したクリーチャーは相手のターンになると《永劫の活力》でマナを出せなくなります。 そのため、何かを構えたい場合は、とりあえず全力で《トーテンタンズの歌》を打つのはやめましょう。最低限のマナを残して《トーテンタンズの歌》をキャストし、そのネズミで追加アクションを取ることをオススメします。 《永劫の活力》の能力でマナを出す際は一考する 《永劫の活力》が出ている時はクリーチャーからもマナが出ますが、まずは土地を使ってスペルを唱えると思います。クリーチャーで攻撃する可能性がありますからね。しかし、ターン終了時にクリーチャーだけを立たせてマナを構えたら、除去を喰らってマナが使えなくなり、相手に致命的なダメージを与えられる……なんてケースも考えられます。確実に《この町は狭すぎる》を打ちたいのなら土地を2枚立ててターンを返すことをオススメします。そのクリーチャーたちでブロックする予定がないなら尚更です。 《花粉の分析》と《薮打ち》の優先順位 初手に《花粉の分析》と《薮打ち》がある時、どっちで土地サーチを行うか。基本は証拠収集達成が難しい《花粉の分析》から使います。相手が赤単アグロなどの場合、《薮打ち》は除去として使い道がありますからね。ただし、《咆哮する焼炉》《塔の点火》のセットが揃っている場合は、《薮打ち》から使います。この組み合わせなら証拠収集できますし、そもそも除去が2枚あるので、《薮打ち》を格闘として使用する必要がないからです。 《渓間の洪水呼び》を出すのは1マナを構えている時 赤い相手は《噴出の稲妻》、黒には《切り崩し》があります。どちらもティムールカワウソ相手には腐りがちなカードなので、《渓間の洪水呼び》には絶対打たせたくありません。《渓間の洪水呼び》は非クリーチャー呪文が瞬速を持つので、《花粉の分析》などもインスタントでキャストできます。しっかり除去はかわせるようにしましょう。 協約で残す最優先カードは《嵐追いの才能》 《塔の点火》の協約に困ることも多々ありますが、とにかく一番協約したくないのは《嵐追いの才能》です。最終的に《この町は狭すぎる》でループを決めるために必要ですからね。《豆の木をのぼれ》やカワウソトークンから生け贄にしましょう。逆に既に複数枚の《嵐追いの才能》が置いてあるなら、1枚は気軽に協約してしまいます。2枚目以降はさほど必要ありません。 サイドボーディングガイド 対赤アグロ(赤単、グルール、ボロスなど) +4《神盾の海亀》ー3《フラッドピットの溺れさせ》 ー1《探索するドルイド》ー2《トーテンタンズの歌》ー3《豆の木をのぼれ》ー1《渓間の洪水呼び》メイン・サイドいずれもいかに《この町は狭すぎる》ループに持ち込めるかにかかっています。《叫ぶ宿敵》は強力ですが、《この町は狭すぎる》の前では無力なので、一度ハメる準備ができれば脅威ではなくなります。火力以外の方法でライフが削られなければOKなので、《噴出の稲妻》圏外になるようにライフを守りましょう。《渓間の洪水呼び》を相手は処理しづらいので、1マナだけ構えてターンを終了してきた時は特にチャンスです。協約の《塔の点火》以外で処理されないので、《巨怪の怒り》の役割トークンがついてなければ安心して出せます。適当なタイミングで出して焼かれるのは損です。貴重なまくりカードなので大事にしてください。2枚かぶった時に敗北の要因となりやすいので1枚はサイドアウトします。《神盾の海亀》を出すと相手のクリーチャーはかなり止まります。突破するには《巨怪の怒り》などが必要になりますが、《塔の点火》を構えているとなかなか相手も突破できないので、少しのマナを立てながらゲームを進めましょう。突破されたとしても、そのクリーチャーを《フラッドピットの溺れさせ》で寝かせて、《この町は狭すぎる》で拾って再度唱えることで無効化+更なる時間稼ぎができます。《神盾の海亀》で序盤のライフを守り、《叫ぶ宿敵》に殴られ続けないようにし、マナを貯めて《この町は狭すぎる》ループ。これを心掛けてプレイします。《豆の木をのぼれ》は抜いていますが《蒸気サウナ》でしっかりリソースを取れるのでさほど問題にはなりません。 対ディミーアミッドレンジ/ゴルガリミッドレンジ +2《轟く機知、ラル》ー1《渓間の洪水呼び》ー1《探索するドルイド》   有利なマッチアップです。《悪夢滅ぼし、魁渡》を出されても《この町は狭すぎる》でバウンスするだけで良いですし、こちらの《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》ループにほとんど干渉できません。このマッチでもコントロールとして立ち振る舞うことが多く、序盤の相手の攻め手をしっかりさばきつつ、《永劫の好奇心》辺りに《この町は狭すぎる》を当ててテンポを取り、徐々にイニシアチブを握っていきます。《トーテンタンズの歌》はかなり強力です。相手には全体除去がないのでネズミが残りやすく、《永劫の活力》のバリューが高くなります。注意しなければならないのは《フェアリーの黒幕》。後手2ターン目に《豆の木をのぼれ》を出さない方が良いですね。1ターン遅らせて《塔の点火》を構えましょう。《分派の説教者》を焼けるカードが《咆哮する焼炉》しかないので、序盤のクリーチャーを焼く際は一考の余地があります。 たとえば後手2ターン目に相手の《遠眼鏡のセイレーン》を焼くかどうかは検討しましょう。手札に《この町は狭すぎる》がある場合はバウンスの種を作れる上に《咆哮する焼炉》が手札に戻るので焼いてしまいますが、《塔の点火》がある場合はそちらを優先した方が良いかもしれません。クリーチャーがいるならまずそちらから展開しましょう。 対白単コントロール +4《脚当ての陣形》+2《轟く機知、ラル》 ー3《咆哮する焼炉》ー2《塔の点火》ー1《焦熱の竜火》   非常に有利なマッチアップ。相手のデッキは遅く、除去を連打してくるだけなので、こちらはゆっくりとコンボパーツを集めていけばOKです。《稲妻罠の教練者》も新生で出してどんどんリソースを稼いでいきましょう。《永劫の活力》が《軍備放棄》で追放されやすいので、《塔の点火》などで除去できない時に気軽に出すのはNGです。出したら必ずエンチャントになれるようにしましょう。エンチャントになった《永劫の活力》を《失せろ》される分にはOKです。インスタントタイミングの全体除去は飛んでこないので、大きい《トーテンタンズの歌》+《渓間の洪水呼び》などで一撃で決まるパターンもあります。サイド後もほとんどゲームは変わりません。《轟く機知、ラル》という勝ち手段が増えて更にゲームは楽になります。《塔の点火》は《永劫の無垢》に触れて《永劫の活力》を逃がせるカードなので少し残します。 対ズアードメイン +4《脚当ての陣形》+2《軽蔑的な一撃》 ー4《塔の点火》ー1《焦熱の竜火》ー1《渓間の洪水呼び》   有利なマッチアップですが、《豆の木をのぼれ》を設置されるとリソースが尽きずに《永遠の策謀家、ズアー》で大主をクリーチャー化しつつ《力線の束縛》連打のような動きをされるので、白単よりは厳しい印象。《豆の木をのぼれ》は設置されたら《脚当ての陣形》で対処してOKです。1枚アドバンテージを取られるのは癪ですが、放置したら1000枚引かれます。 《永遠の策謀家、ズアー》は5ターン目に出てくることが多く、大主を即クリーチャー化してきます。クリーチャーになった大主は呪禁がつきますが、その前ならバウンスは効くので、そのタイミングで《この町は狭すぎる》で戻し、返しのターンの《咆哮する焼炉》で倒すのが理想的な動きです。 対アゾリウス眼魔 +4《脚当ての陣形》+2《轟く機知、ラル》 ー1《焦熱の竜火》ー3《咆哮する焼炉》ー2《塔の点火》   そこそこ有利なマッチアップです。《永劫の活力》《渓間の洪水呼び》がとにかく触られにくいので、好き勝手に動くことができるためです。負け筋である速いターンの《忌まわしき眼魔》にも《この町は狭すぎる》が効果的。有利なので墓地対策を抜いたほどです。《一時的封鎖》が入ってくる他、《傲慢なジン》と《忌まわしき眼魔》に触れるので《脚当ての陣形》は非常に強力です。 《僧院の導師》をサイドインしてくるなら《塔の点火》を後1枚ほど残したいところです。その場合は《トーテンタンズの歌》を減らしましょう。 対ティムールカワウソ +2《轟く機知、ラル》+2《軽蔑的な一撃》 ー3《咆哮する焼炉》   《永劫の活力》を着地させた方が勝ちやすいマッチアップ。《塔の点火》で処理されないようにこちらもしっかり《塔の点火》を構えましょう。ありがちなのが、3ターン目に《稲妻罠の教練者》かカワウソトークンがいて手札に《塔の点火》もある状態で《永劫の活力》。これに対してスタックで場のクリーチャーを焼かれ、その後相手のターンにもう1枚の追放除去を喰らうパターンです。これはできれば回避したいので、他のクリーチャーを出せるならもう1ターン回し打ちしたいところです。《トーテンタンズの歌》もミラーマッチではかなり重要なカード。このデッキは《永劫の活力》を打ち消せないですし、追放除去も《塔の点火》でかわされるので、《トーテンタンズの歌》でネズミを並べられて次のターンに《永劫の活力》を展開されると、相手だけアクション数が倍になります。ミラーマッチが増えるなら3枚目を検討しても良いレベル。サイド後は最も弱いソーサリー除去を抜き、硬くて場持ちが良い《轟く機知、ラル》と、X=3以上の《トーテンタンズの歌》と《この町は狭すぎる》を消せる《軽蔑的な一撃》をサイドイン。《轟く機知、ラル》は最初半信半疑だったものの、《この町は狭すぎる》以外ではなかなか対処が難しく、カワウソを延々と増やす動きが強かったので、入れることをオススメします。 最後に 本日はティムールカワウソの紹介でした!回していてとても楽しいデッキで、しかも強いので、興味のある方はぜひこの記事を参考にして回してみてください。それではまた!

【今週のピックアップデッキ】キャプテンスカベンジャー/セレズニアキャット/エターナルチャント

週刊 Modern Pioneer Standard

2024.12.05

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 キャプテンスカベンジャー(スタンダード) スタンダードリーグ:5-0 By Villard_00 墓地のカードを追放してそれのキーワード能力を得るクリーチャー、《魂剥ぎ》。 パイオニアでは活躍の実績もあるこの《魂剥ぎ》と似た性能を持つのが《アーボーグの掃除屋》です。 《魂剥ぎ》が探査によって追放したクリーチャー・カードの能力を得るのに対し、《アーボーグの掃除屋》は戦場に出たり攻撃する際にカードを追放し、それの能力を獲得していきます。スタンダードではなかなか活躍できなかった《アーボーグの掃除屋》。これまではキーワード能力をたくさん持つクリーチャーに恵まれず、せいぜい《偉大なる統一者、アトラクサ》を追放する程度でした。サイズの大きい《偉大なる統一者、アトラクサ》が持つ絆魂は強力ですが、《アーボーグの掃除屋》ではその効果は微々たるものです。しかし、『ファウンデーションズ』で《魂剥ぎ》の心の友と呼ぶべき相棒が帰ってきたことで、《アーボーグの掃除屋》に確変が起きました!《原初の夜明け、ゼタルパ》によって!飛行・二段攻撃・警戒・トランプル・破壊不能とヤサイマシマシニンニクアブラカラメぐらい盛りに盛った能力の数々はさすが8マナ!二段攻撃とトランプルの2つの攻撃性能に加えて破壊不能がつくので、《アーボーグの掃除屋》が欲しかった除去耐性もしっかり付与してくれます。同じく『ファウンデーションズ』からの新カード、《薄暮の聖人、エレンダ》も除去耐性を付与してくれるカード。絆魂は《原初の夜明け、ゼタルパ》にはないので同時に追放しても無駄がなく、インスタントからの呪禁は破壊不能で防げない《苦痛ある選定》のような追放除去からも耐性が付きます。《薄暮の聖人、エレンダ》は4マナと軽く手札から出しやすいのもポイント。問題はいかにして《アーボーグの掃除屋》で《原初の夜明け、ゼタルパ》や《薄暮の聖人、エレンダ》を追放するかですが、そこもクリーチャーが役立ちます。《上げ潮、キオーラ》は2枚引いて2枚捨てるので、《アーボーグの掃除屋》を引き込みながら追放したいカードを墓地に送りこめます。《逸失への恐怖》などの捨てて引くカードと違うので嬉しいですね。同じく引いて捨てるカードの《魅惑の悪漢、マルコム》も入っており、伝説のクリーチャーが大量に入っているデッキながら、手札調整が容易なので、余った2枚目の伝説を捨てられるようになっています。そして伝説のクリーチャーが大量に入っているということは、《英雄の公有地》をの出番です。青白黒の3色デッキなのですべての色マナが出る土地は非常に助かります。……ところでお気づきでしょうか?今ご紹介したカードたちに、伝説以外の共通点があることを。ヒントを出します。《原初の夜明け、ゼタルパ》は恐竜。《上げ潮、キオーラ》はマーフォーク。《魅惑の悪漢、マルコム》は海賊。《薄暮の聖人、エレンダ》は吸血鬼です。まだわかりませんか?デッキ名を見てください。キャプテンスカベンジャー。スカベンジャーは《アーボーグの掃除屋》。それではキャプテンは?その答えは《不気味な船長の玉座》です!タップするとカードを2枚切削するこの伝説のアーティファクト。《アーボーグの掃除屋》のために墓地を肥やせる置物ですが、真の力はその下に書いてある作製です。墓地やパーマネントから該当するカードを追放することで変身できる作製。恐竜とマーフォークと海賊と吸血鬼を要求する、作製カードの中でも随一の難易度を誇るのが《不気味な船長の玉座》。そもそもこの4種のカードをデッキに入れること自体が難しいと思われていました。しかし、このデッキはその作製条件を満たせます。それではほとんどの人が見たことすらないであろう《不気味な船長の玉座》の変身後の姿を見てみましょう。あまりに強すぎる!初見で見た時は僕もびっくりしました。さすが難易度Sの作製カードなだけあり、とんでもない能力を持っています。呪禁の7/7なので対処は難しいですし、攻撃するだけで相手は土地以外のパーマネントを生け贄。更に作製で追放したクリーチャーを攻撃している状態で戦場に出せるので、《原初の夜明け、ゼタルパ》が突然殴りかかることになります!変身したら勝利と言っても過言ではないでしょう。 《アーボーグの掃除屋》だけでも面白いのにそこに更にもう1ギミックが追加されたキャプテンスカベンジャー、味わってみてください! セレズニアキャット(パイオニア) パイオニアリーグ:5-0 By Tulio_Jaudy 近年最も推されている部族の1つと言えば猫。どうやらウィザーズにも猫ファンがいるようで、可愛らしい猫や可愛くないほど強い猫がバンバン収録されています。そしてとうとうパイオニアで猫デッキが組めるほどになりました!しんがりを務めるのは《聖なる猫》と《サバンナ・ライオン》。パウパーでも実績のある《聖なる猫》は墓地に落ちても一度トークンとして蘇る、除去耐性のある猫。一方の《サバンナ・ライオン》といえば、黎明期から白アグロを支えた功労者。学生の頃に1枚2000円で買ったのは良い思い出。2マナ域からレアリティが上がります。『ファウンデーションズ』で再録された《フェリダーの仔》はこの中で唯一のコモンではあるものの、生け贄でエンチャントを割れる優れた猫。《不浄な別室》などを割る場面もあるでしょう。レアの2種は、こちらは懐かしの《羊毛鬣のライオン》。アブザンミッドレンジなどでスタンダードでも活躍していた猫で、2マナ3/3といわゆる《番狼》なだけでなく、怪物化するとサイズが上がって呪禁・破壊不能を持ちます。新カードの《空騎士の従者》は他のクリーチャーが出るたびにサイズが上がり、3つ以上のカウンターが乗ると飛行を持つ、とても攻撃的なクリーチャー。すぐに《羊毛鬣のライオン》のサイズを超えていくでしょう。3マナ圏は主役揃い!なにせここには猫を強化するロードが2匹もいるのですから。まず1匹目は《初祖牙、アラーボ》。他の猫を+1/+1しつつ、自身や他のトークンでない猫が出るたびに1/1の猫を生成するという、展開と全体強化を兼ね備えた強力な猫です。続く《猫の君主》も猫に全体強化を与え、プロテクション犬も付与します。パイオニアで使われている犬は《無私の救助犬》ぐらいしか思い浮かびませんが、《変わり谷》にブロックされないのはメリットになるかもしれませんね。《猫の君主》にはもう1つ能力があり、自分の猫がプレイヤーに戦闘ダメージを与えた時に、そのプレイヤーのアーティファクトかエンチャントを破壊することができます。どれだけたくさんの猫で殴っても1枚しか破壊できませんが、全体強化のオマケとしては悪くありません。更にこれらの猫クリーチャーはすべて3マナ以下なので《集合した中隊》を採用できます。《威厳あるカラカル》を除くすべてのクリーチャーが該当するので、32枚が当たりになります。《集合した中隊》で2枚めくるには十分な数でしょう。最後に忘れてはならないのが相棒。そう、最近ではクリーチャーが《孤独》のみのアゾリウスコントロールなどにしか入らず、文字通り孤独だった《孤児護り、カヒーラ》が使えるのです。これは猫デッキの最大の魅力と言っても良いでしょう。全体強化と警戒を付与する相棒は、デッキ外のリソースとしては破格の性能です。いつも更地に出てくる《孤児護り、カヒーラ》も、たくさんの猫に囲まれてニッコリでしょう。猫まみれになりたい方は一度お試しあれ! エターナルチャント(モダン) モダンリーグ:5-0 By Sence17 かつてセプターチャントというデッキが一世を風靡していたのをご存じでしょうか?《等時の王笏》に《オアリムの詠唱》を刻印して相手のアップキープに起動し続けるだけで、相手はインスタント以外のカードを唱えられなくなり、攻撃もできない。一部のデッキはこれだけで完封でした。エクステンデッドで大流行したこのセプターチャント。実は今のモダンでも再現可能なのですが、今回は同じコンセプトを持った別のデッキをご紹介します。このエターナルチャントもセプターチャントと同じく、無限に《オアリムの詠唱》を打つデッキ。しかし、《等時の王笏》に刻印するのではなく、毎ターン手札から唱えます。それを可能にしてくれるのが《永遠の証人》と《儚い存在》のコンボ。《永遠の証人》で《オアリムの詠唱》を拾い、相手のアップキープに唱えます。その後、《儚い存在》を《永遠の証人》を対象にキャスト。明滅した《永遠の証人》で《オアリムの詠唱》を拾いつつ、アップキープの《儚い存在》の反復で《永遠の証人》を再び明滅させ、反復後に墓地に落ちた《儚い存在》を拾えば、これで永遠に《オアリムの詠唱》を打ち続けられます。もちろんこれだけで勝てるデッキはほとんどありません。インスタント除去1枚でこのコンボは止まってしまいますからね。そこで採用されているのが《時を解す者、テフェリー》です。《時を解す者、テフェリー》がこの場に加わることで対戦相手は呪文での妨害ができなくなります。戦場に既にあるカードで対処できないなら、《天上都市、大田原》によるバウンスぐらいしか防ぎようがないでしょう。そして《時を解す者、テフェリー》《永遠の証人》とキーカードが3マナのパーマネントなので、《星界の再誕》は非常にデッキに合っています。インスタントタイミングで墓地から蘇る《時を解す者、テフェリー》は相手の想定外でしょうし、思わぬ角度からコンボが決まることがありますね。コンボが決まるまでの間の延命手段として採用されているのは《空の怒り》。しかしバントカラーでは定番の《電気放出》は使えません。そこで採用されているのが懐かしの《霊気との調和》。かつてエネルギーデッキを支えていた土地サーチがモダンでも採用されることとなりました。《ファラジの考古学者》と《稲妻罠の教練者》は共に《儚い存在》《オアリムの詠唱》などのキーカードを手札に加えつつ、《儚い存在》の対象にもできる素晴らしいカード。《孤独》も想起で唱えて《儚い存在》で一時追放して場に定着させることができますし、このデッキに入っているすべてのクリーチャーは《儚い存在》と相性抜群です。コンボが決まればあのエネルギーすらも封殺!エターナル、この名前にピンと来る方はまず使ってみましょう!

【リアニメイトディガー!】《もがく出現》で挑むプレミアム予選2連戦!

週刊 Standard

2024.12.04

Kyle Hitachi

皆さんこんにちは! 今週も「リアニメイトディガー!」も、スタンダードの『もがく出現』をディグしていきます! プレミアム予選に向けてどんな準備をしてきたかご紹介していきます! 赤アグロを克服するために 2024年11月24日に晴れる屋TC東京で行われたプレミアム予選では、ティムールカワウソと赤単アグロが権利を獲得しました。 1週間が経過しても環境に大きな変化はなく、赤アグロが多めの環境でした。サイドボードでの器用さから、緑を加えたグルールが現在最も強いデッキと言えそうです。 さて、先週私が取り組んだことは「どうやって赤単への勝率を上げるか?」です。 アプローチとしては、除去の増量とライフゲイン要素の追加が簡単だと考えました。注目したのは《執念の徳目》。墓地ではパーマネントでありながら、アドベンチャー面では2点回復しつつ、タフネス3を対処できるカードです。 最初は『ファンデーションズ』で《渇望の時》が再録されているのを見つけて興奮しましたが、実際には《叫ぶ宿敵》を対処できる上位互換《執念の徳目》が既に存在していました。悲しいです…。 これを釣り先兼除去として使い、赤単に有利に立ち回ろう!と考えました。 また、デッキ全体のテンポを良くするために、《切り崩し》をメインボードに移し、サイドボードの《強迫》を増量しました。理由は浮きがちな1マナを埋めることで動きに隙をなくしたかったからです。特に《強迫》は苦手なクロックパーミッションに対して効果的なカードなので期待。 その代わりに抜けたカードはまず《蓄え放題》。先週の記事にもあったように、キープ基準ではあるものの、《もがく出現》を拾えない点が少しイマイチ。 《苦痛ある選定》は追放能力が非常に環境にマッチしているものの、《永劫の好奇心》に触れないのが地味なマイナスポイント。赤アグロには《執念の徳目》の方が強いはずですからね。 また、活躍の機会が少なかった《戦慄衆の将軍、リリアナ》を解雇し、《脚当ての陣形》にも耐性がある《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を増量しました。   2連戦のデッキリストと結果 2024年11月30日、晴れる屋吉祥寺店で行われたプレミアム予選で使用したデッキリストと結果は以下の通りです。  グルール〇 赤単〇青白エンチャント×青白眼魔〇グルール〇版図ランプ〇ID 青白エンチャント×   5-1-1で5位通過し、SEに進出しましたが、スイスラウンドと同じ対戦相手に敗北。赤単、グルールには3-0で相性の改善を感じることができました。 グルール側に理想的な動きをされると負けてしまいますが、かなり戦えるようになっています。 続いて2024年12月1日の晴れる屋川崎店! 版図ランプ 〇版図ランプ 〇グルール ×青白エンチャント ×グルール〇青黒ギャンビット 〇   トーナメント序盤では、大きく有利のつく版図ランプを2連続で踏むという幸運に恵まれましたが、現モダン神である内藤さんのグルールに残念ながら敗北。 そして今季のプレミアム予選で4回もマッチしている青白エンチャントに昨日に続けて負けてしまい、あえなく目無し。最後までやって4-2で11位という結果でした。 権利という結果こそついてこなかったものの、戦績のアベレージは高く保てているのは評価したいポイントです。また晴れる屋川崎店ではもがく出現を使っているほかプレイヤーの姿も目撃できました。なんとTOP8に二人もいます。 皆、構築に工夫があって非常に面白かったです。 さて、日曜日のデッキリストのお話です。 吉祥寺店での負け方に引きずられてはいますが、《恐怖の潮流》が手札で浮きがちな点が気になったので思い切って全て解雇しました。《執念の徳目》を拾える点を評価して《蓄え放題》を再びメインボードへ。 またサイドボードでは《深淵の収穫者》をお試し枠で採用してみました。直前までは《忌まわしき眼魔》にしていたのですが、急に天啓が浮かんできたので電撃的に採用です。 《忌まわしき眼魔》は、青黒ミッドレンジなどに対して除去やカウンターを要求する軽いフィニッシャーとして採用しており、《深淵の収穫者》はその役割を果たせるのでは?と考えました。 結果としては普通に弱かったです。《ショック》で焼かれるスタッツには哀愁すら感じますね。 他に条件に合致するカードしては《フラッドピットの大主》などでしょうか。《フェアリーの黒幕》が誘発してしまう点以外は強そうです。また《除霊用掃除機》にスムーズに対処できる、《好奇心の神童、ケラン》も再度検討したいところです。 サイドボーディングガイド VS赤アグロ 赤単、赤単タッチ緑、グルール、ボロス。全てアグロに分類されるデッキタイプなのでまとめます。 +1《深淵の裏切り、アクロゾズ》+1《解剖器具》+2《温厚な襞背》+1《強迫》 -2《森の轟き、ルムラ》-3《忘れられた者たちの嘆き》   優秀な果敢能力持ちクリーチャーでこちらを責め立ててきます。赤単は4枚の《岩面村》を、グルールは《探索するドルイド》《脚当ての陣形》を、ボロスは《ボロスの魔除け》《幽霊による庇護》をそれぞれ強みとしています。 戦略としては相手のクリーチャーを除去しつつ出来るだけ早く《偉大なる統一者、アトラクサ》《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を戦場に着地させることになります。 負け筋は《巨怪な怒り》で急激に打点が伸びるパターン。特にこれに絡みやすい二段攻撃を付与する《多様な鼠》は必ず除去しなければなりません。 また絆魂クリーチャーを着地させても安心しないでください。《叫ぶ宿敵》《陽背骨のオオヤマネコ》でライフゲインを封じられるパターンがあります。 こちらはライフゲインできるカードを中心にサイドインします。除去が沢山ある手札が肯定されるマッチアップですが、ライフゲインなしにゲームを長引かせることはできません。 2枚引いた試合は余りにも負けますが、軽いアクションとしては悪くないので一枚だけ《強迫》をサイドインしています。《蛇皮のヴェール》やバーンスペルなどを抜くことが期待できるグルールやボロス相手には、2枚目以降のサイドインも検討して良いですね。 また、こういった相手にはとにかく早期に絆魂クリーチャーが着地することが重要です。《ゾンビ化》などのリアニメイトスペルの採用の検討や《第三の道の創設》でキープをするなど、工夫が求められます。 VSディミーアミッドレンジ 生物が主体ではあるのですが、青なのでカウンターが入っており、こちらも非常に動きにくい。 パーマネント自体は並びにくいので《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》が定着した際の勝利率は非常に高いです。《強迫》で無理やり道をこじ開けて通しましょう。 +3《強迫》+2《羅利骨灰》+2 軽量フィニッシャー -2《森の轟き、ルムラ》-3《執念の徳目》-1《苦難の収穫者》-1《忘れられた者たちの嘆き》 インスタントでクリーチャーが出てくるため、ソーサリータイミングの除去は弱めです。《ティシャーナの潮縛り》がクリティカルになる《森の轟き、ルムラ》も抜いてしまいます。 3マナ程度の軽いフィニッシャーも欲しいところです。《強迫》とくっつかせることで相手のプランをずらしたい。《除霊用掃除機》のことも考えると《忌まわしき眼魔》が最適な気はしますね。1枚ずつしか追放されないので《忌まわしき眼魔》は比較的出しやすいです。 VSティムールカワウソ 上の2つのデッキと比べるとかなり対処するのが難しいコンボデッキです。 基本的には《渓間の洪水呼び》《永劫の活力》を対処していくことになります。場合によってはビートダウンプランを取られるので、競り負けないようにこちらも《もがく出現》をキャストできる状況を作っていきましょう。 《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》が効果的なマッチではありますが、《嵐追いの才能》など複数のパーマネントを展開して護法を支払いながら《この町は狭すぎる》でバウンスされてしまいます。 +2《強迫》+2《除霊用掃除機》+2《温厚な襞背》 -3《執念の徳目》-3《忘れられた者たちの嘆き》   サイド後は墓地対策や置物対策を入れて容易にコンボを走らせないよう立ち回りましょう。 《花粉の分析》《嵐追いの才能》《永劫の活力》など墓地を使用するカードが多いので、墓地対策は効果的です。 《豆の木を登れ》《咆哮する焼炉》《嵐追いの才能》《永劫の活力》に対応できる置物破壊も欲しいところです。《羅利骨灰》《温厚な襞背》を比較した結果、今は墓地に触れる《温厚な襞背》をサイドインしています。ですがゲーム感によってはより軽い《羅利骨灰》のほうが良い可能性もあります。 VS版図ランプ 非常に有利なマッチアップですが《永遠の策謀家、ズアー》が絡んだ高速クロックを決められる展開があるので注意が必要です。あくまで相手はこちらを削り切るしかゴールがないのでライフを高く保ちつつ相手をライブラリーアウトさせる戦略を取りましょう。 +3《強迫》+3《羅利骨灰》+2《温厚な襞背》+1《向上した精霊信者、ニッサ》 -2《切り崩し》-3《執念の徳目》-2《苦々しい勝利》-1《苦難の収穫者》-1《忘れられた者たちの嘆き》   サイドボード後は相手が《安らかなる眠り》を置いてくる前提で立ち回ります。版図ランプはエンチャントを主体にしたコントロールデッキなので、置物破壊系のサイドカードが腐りにくいのが良いですね。 相手が入れてくるカードとして可能性が高いのは《ティシャーナの潮縛り》や《クチルの側衛》でしょうか。《鋼と油の夢》などで対策できますが、他のマッチで弱いので採用しづらいです。 現在の構成では、手札にあることがわかったら一度喰らいにいくしかないでしょう。   今週改善したこと 対赤アグロを改善 《執念の徳目》や《切り崩し》などでしっかり赤アグロを意識した結果、先週は4勝1敗としっかり勝ち越すことができました。 デッキ全体のバランスを調整 デッキを軽くしたり、釣るカードのクオリティを意識した結果、デッキがバランス良くなりました。 《蓄え放題》も入れ直して好感触でした。 マリガン基準 先週お話ししたキープ基準である《蓄え放題》を抜いてしまったので、単純に考えればマリガン率が高くなります。 デッキリストはいじるだけではダメです。しっかりとプレイにも反映させなければなりません。 結局《蓄え放題》を入れ直したり、切削カード以外でのキープについて考えることで、ある程度今のリストでのマリガン基準が定まりました。 今後の課題 クロックパーミッションの攻略 赤アグロは改善できたものの、アゾリウスエンチャントやアゾリウスメンターなどの打ち消しが入ったアグロデッキには負け続けており、ここの改善は必須。 マナベース やはり4色デッキゆえに事故だけで負けてしまうこともあります。 マナベースの改善は、ただ単に土地だけと睨めっこをすれば良いわけではありません。たとえば《蓄え放題》を抜けば序盤に必要な緑マナは《もがく出現》だけなので、少し緑を削れます。 サイドボードの最適化 まず取り組みたいのがこちらから。そのためにはカードプールの把握が必須! 特に『ファウンデーションズ』は「こんなカードが使えるの?」といったことも多いですからね。晴れる屋川崎店で権利を獲得したセレズニアオーラに《ひるまぬ勇気》が採用されているのを見たときは目を疑いました。 《ゾンビ化》の検討 これまでは釣ってインパクトのあるクリーチャーが《偉大なる統一者、アトラクサ》《森の轟き、ルムラ》ぐらいしかいなかったのですが、釣り先として《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》が加わったので、《ゾンビ化》を試して良いかもしれません。 前述のように赤単に強いですしね。   検討してきたカードたち これから《もがく出現》を使おうと考えている方や、既に回している方のために、これまで自分が採用を検討したカードたちを10枚ほど紹介しようと思います。 《全知》 墓地から土地を吊り上げて手札の重いカードをすべて使用できるようになる《森の轟き、ルムラ》と使用感は近いです。そのため、採用するなら《全知》か《森の轟き、ルムラ》いずれかとなるでしょう。 手札からの呪文を自由に唱えることができるようになるので、《偉大なる統一者、アトラクサ》を《忘れられた者たちの嘆き》などで使い回すことによってデッキをほとんど掘り切ることができます。つまり相手をライブラリーアウトさせるのに十分な回数の《完成された精神、ジェイス》を集めることができるのです。ですがいくつか欠点があります。 1.重すぎる 切削がかなり上手くいかなければ4ターン目までに戦場に出すことができません。また《森の轟き、ルムラ》と違って素出しをすることがほとんど不可能。 2.インスタントの対処札に弱い 《羅利骨灰》や《脚当ての陣形》、《失せろ》《力戦の束縛》などインスタントタイミングで《全知》を破壊できるカードが環境には非常に多いです。一回スペルを唱えられることは保証されていますが、少し気になる点です。 3.《森の轟き、ルムラ》の方が便利 《森の轟き、ルムラ》は軽いだけでなく、墓地から土地を出してくれるので、《不穏な浅瀬》との相性が抜群です。 《不穏な浅瀬》でライブラリーを削って《森の轟き、ルムラ》で土地を吊り上げ、たくさんの土地がある状態なら複数の《不穏な浅瀬》を起動したり、《不穏な浅瀬》を起動しながらもう1アクションなどが容易です。 ちなみに、僕は以前《死人に口無し》4枚、《石の脳》4枚を採用しているようなデッキに《不穏な浅瀬》だけで殴りきったことがあります。 《不穏な浅瀬》と相性が良い点も、《森の轟き、ルムラ》に軍配が上がりますね。 《ベイルマークの大主》 非常に優秀な切削能力に加えて5ターン後には本人が戦場に現れます! 素出しもさほど重くない良いカードなのですが、回収できるのがクリーチャーに限定されているところが歯がゆい。やはり切削しながら探したいのは《もがく出現》、もしくは土地ですからね。 《上げ潮、キオーラ》 ほとんど効果が同じ《蒸気学の学者》の頃から試していますがあまり感触はよくありません。せっかく《切り崩し》を躱せるデッキなのに当たってしまう点が微妙です。 もちろんルーティング効果はデッキに合っているので採用するならば1~2枚のカードという評価です。 《墓場波、ムルドローサ》 《溺神の信奉者、リーア》がいた頃は、1枚採用することで使えるスペルの数を飛躍的に水増しできました。《事件現場の分析者》や《見事な再生》で土地を爆発的に伸ばして、《溺神の信奉者、リーア》から《もがく出現》を連打するデッキでプレミアム予選を抜けたのは良い思い出。 そんな私が目をつけたのがこのカードです。なんと墓地のパーマネントをそれぞれの種類につきターン一回制限で使えるようになっちゃいます!さながら《ヨーグモスの意思》ですね。 ですが赤単のせいで環境のキルターンが短く、《偉大なる統一者、アトラクサ》でリソース面は確保できるためお蔵入りに… 最近のカードのインフレを感じてしまいました。 《ファラジの考古学者》 モダンの御霊シュートでも採用されている優秀な切削カードです。《もがく出現》を拾うこともできるナイスカードなのですが、《第三の道の創設》で踏み倒せないことだけが惜しいところです。 ただし、赤単相手に壁になるところは評価できます。今の環境であれば《忘れられた者たちの嘆き》《蓄え放題》を押しのけて採用する意味があるかもしれません。 僕としては《第三の道の創設》のバリューを重く見ているので採用には至りませんでした。 《洞窟探検》 《森の轟き、ルムラ》のバリューを大きく加速させるカードとして、以前のリストには採用していました。タップインが多いデッキでもあるのでマナブーストも純粋に嬉しいです。 ただし手札で浮くことが多いカードであることもあり解雇してしまいました。 採用するならば土地の枚数を26枚にして、安定して土地を伸ばせるようにしたいですね。 《緊急の検死》 証拠収集を容易く達成できるデッキなので重宝していました。 しかしサイドボードでの使いにくさから、デッキのスロットを一枠使っていることに疑念を感じてしまい、あえなく解雇。 比較的ターゲットにする頻度が高いであろう《永劫の活力》《永劫の好奇心》《永劫の無垢》を完全に対処できないのも気になってしまいますね。 《好奇心の神童、ケラン》 以前はサイドボードでゲームプランになるカードとして非常に重宝していたのですが…… 1.土地を1枚ブーストすることに価値がない2.黒系ミッドレンジへの適切なブロッカーにならない3.出来事で出す手がかり以外にドローに変えることのできるアーティファクトがない などから、採用の機会が減っていました。 ですが現在は《除霊用掃除機》という明確なヘイトカードが存在するため、採用する意義がありそうです。 《その名を言え》《三度呼ばれ、アルタナク》 《その名を言え》は土地を回収できるものの、《蓄え放題》と比べると《第三の道の創設》が拾えないことが気になってしまいます。後は単純に3枚追放して出てくる《三度呼ばれ、アルタナク》が弱すぎました。墓地対策にも弱く、スロットも圧迫するため解雇です。 《神盾の海亀》 赤単に対するキラーカード。採用して一試合目で普通に黒い除去のほうが良いことがわかりました。「このカードがあれだったら…」という思考を持っておくと試行回数を節約できます。 《否認》《軽蔑的な一撃》 サイドボードに定番の打ち消し。が、あまりおすすめはしません。 毎ターン、ソーサリータイミングでマナを使い切ることに価値があるデッキであり、インスタントタイミングで打てるカードが《錠前破りのいたずら屋》しか存在しないからです。《否認》を構えて相手が何もしてこなかった時にこちらもインスタントタイミングでカードを使えないとターンがもったいないですよね。 軽い妨害である《強迫》の方が《第三の道の創設》の第一章・第三章と噛み合うのでおすすめです。 まとめ 今週の『リアニメイトディガー!』はいかがだったでしょうか? 赤アグロが多いこの環境で勝つのは厳しいと思っていましたが、意外と勝てていて嬉しいです。 とはいえ、プレミアム予選ではまだマッチしていないディミーアミッドレンジはどう考えても鬼門。 良いサイドプランを見つけたいところです。 今週末からチャンピオンズカッププレミアム予選はお休みシーズンに入ります。が、晴れる屋様主催の『スタンダード神挑戦者決定戦』に参加する予定です。 それに向けて調整も重ねるので、来週はそれについて記事にする予定です! それではまた次回!

【今週のピックアップデッキ】アゾリウスレイライン/イゼットロータス/シミック鱗親和

週刊 Modern Pioneer Standard

2024.11.29

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 アゾリウスレイライン(スタンダード) MOショーケースラストチャンス:5-0 By D00mwake 『ギルドパクト』で初めて登場した力線サイクル。ゲーム開始時に初手にあると手札から出した状態でゲームを始められるこのエンチャントのサイクルは、墓地対策の《虚空の力線》、手札破壊や火力に耐性がつく《神聖の力線》など、サイドボード後に活躍するものがほとんどでしたが、近年では《ドラコの末裔》とコンボになる《ギルドパクトの力線》と、デッキコンセプトになる力線までもが現れました。そして『ファウンデーションズ』で新しく刷られた力線も、デッキコンセプトになりうる1枚!《力線の斧》です。以前パイオニアのアゾリウスコロッサスで紹介したこの《力線の斧》。初手にあると手札からタダで出せる力線カードで、初めての装備品です。装備先に+1/+1二段攻撃トランプルを付与する装備品は本来唱えるのに4マナ、装備に3マナの合計7マナがかかるので、それが初手にあるだけで3マナで済んでしまうのはかなりお得……というより価格破壊レベル。この装備品のつけ先はなるべくサイズが大きいクリーチャーが良い!そこで選ばれたのが《威厳あるバニコーン》。可愛らしい兎さんは、その見た目とは裏腹に暴力的なサイズを持ちます。土地以外のパーマネントの数だけ大きくなるので、手がかりや地図などがあればあっという間に2マナ5/5。令和の《タルモゴイフ》と言っても過言ではありません。だが残念ながら《威厳あるバニコーン》は能力を持たないバニラ。トークンなどにチャンプブロックされてダメージが通せないのが弱点でしたが、《力線の斧》のおかげで一撃で敵を屠る兎に変貌します。《威厳あるバニコーン》と相性の良いカードが《マネドリ》。クリーチャーを飛行を持った状態でコピーしてしまうので、飛行を持つ《威厳あるバニコーン》として戦場に出ることも可能ですし、手がかりや地図を生み出して《威厳あるバニコーン》のサイズを上げる《ひよっこ捜査員》《遠眼鏡のセイレーン》にもなれます。《鋼の熾天使》も《威厳あるバニコーン》と組み合わせて強いカード。飛行を付与して《威厳あるバニコーン》のダメージを通しても良し、絆魂をつければ一気に大量のライフを回復できます。赤系アグロからしてみたらこの動きはたまらないでしょう。赤系アグロにとって天敵である《幽霊による庇護》ももちろん4枚採用です。これを《威厳あるバニコーン》につけてしまえば、《力線の斧》や《鋼の熾天使》でイージーウィンです。《幽霊による庇護》《鋼の熾天使》+《威厳あるバニコーン》は対赤アグロにおいて必勝ともいえるムーブ!赤いデッキに強いというだけでも、このデッキを選ぶ理由になりそうですね。 イゼットロータス(パイオニア) MOショーケースラストチャンス:5-0 By RNAPBP1 『ファウンデーションズ』では新カードだけでなく、これまで活躍してきた歴戦のカードたちも再録され、スタンダードで使用可能となりました。スタンダードで使えるということは、当然パイオニアでもそれらのカードが使用できるようになったのです!その中でも最もパイオニアへ影響を与えるのではないかと目されていたカード、それが《探検の地図》。ウルザ地形3種を揃えて膨大なマナを出すウルザトロンや、神座をたくさん集めてやはり大量のマナで勝利するクラウドポストなど、様々な土地コンボで採用実績のあるカードが、パイオニアにやってきました。その居場所はもちろん、パイオニアで土地を使うデッキ、ロータスコンボです!これまでのロータスコンボは《大ドルイドの魔除け》《森の占術》を採用した青緑、あるいはそこに《厳しい試験官》を加えたバントが定番でした。《睡蓮の原野》を置かなければ始まらないコンボなので、土地サーチはあればあるだけ良く、その役目を担えるのが緑しかなかったのです。しかし、《探検の地図》の登場でロータスコンボ界にも変革が訪れました。無色で使える土地サーチが出たことで、緑を使わない選択肢も出てきたのです。実は緑を使わないロータスコンボも実は少数存在していましたが、その比率は9:1ほどで、一般的なのは緑型でした。それが《探検の地図》のおかげで飛躍的に安定性が上がり、いよいよ緑の立場を脅かそうとしています。イゼットロータスの特徴はなんといっても不純物が非常に少ないことが挙げられます。通常のロータスコンボは《出現の根本原理》とそのサーチ先などで、およそ6~7枚ほど、重いカードが採用されていました。《出現の根本原理》を打って《全知》を置くことが勝ち手段だったので仕方ありませんが。これらの要素をすべて廃し、《考慮》や《手練》などのキャントリップ呪文、そして《時を越えた探索》を採用し、とにかくドロースペルを連打する構成となっています。《見えざる糸》から《出現の根本原理》を打つのではなく、ドロースペルを連打し、《見えざる糸》でマナを起こし、そのマナで更にドロースペルを打っていく。これがイゼットロータスです。とはいってもドロースペルがいつまでも連鎖するわけではありません。キャントリップ呪文もいつか土地になり、連鎖は終わります。それを防いでくれるのがイゼットフェニックスでも大活躍中の《美術家の才能》です。《美術家の才能》とキャントリップ呪文で不要なカードを弾きつつ、キャントリップを連打していき、最終的に《溺神の信奉者、リーア》に辿り着いてデッキすべてを掘り、《願い》から《タッサの神託者》で勝利。従来のロータスコンボというよりは、ストームに近い感覚のデッキですね。ロータスコンボでは《見えざる糸》を手札破壊で狙い撃ちされて《出現の根本原理》だけが手札に浮いてゲームに負けたり、《全知》や《闇の誓願》だけを引いて負ける。そんなこともありましたが、イゼットロータスではそんなことは起きません。ロータスを飽きるほど回した人でも、このイゼットロータスは新鮮な気持ちで回せるのではないでしょうか。《美術家の才能》とキャントリップと《見えざる糸》でデッキが回る様は美しく、在りし日のピットサイクルを思わせます!ぜひご堪能あれ! シミック鱗親和(モダン) モダンリーグ:5-0 By CarlosZ モダンの数あるガチャガチャデッキの1つである鱗親和。その歴史は2018年にまで遡ります。当時マジックオンライン上でマニアだけが使うマイナーデッキだった鱗親和は、その年のモダンで行われたグランプリ・プラハで優勝を果たし、人気のアーキタイプとなりました。《硬化した鱗》と《電結の荒廃者》による爆発力に魅了されるプレイヤーも多く、今もファンがとても多いデッキです。ちなみに僕も鱗親和を愛するプレイヤーの1人。そんな鱗親和の最新事情はというと、なんと青が足されています。青というスパイスが加わってどんな動きが可能になったかを、デッキの簡単な動きと共に解説していきます。このデッキは《硬化した鱗》にフィーチャーしたコンボ要素の強いアグロデッキ。《硬化した鱗》はカウンターが1つ乗る効果を2つにするので、《微光蜂、ザーバス》《歩行バリスタ》《電結の荒廃者》など、+1/+1カウンターが乗った状態で出てくるクリーチャーがすべて倍のカウンターで戦場に降り立ちます。これだけだと大したことはありませんが、《電結の荒廃者》はアーティファクトを1つ生け贄に捧げると+1/+1カウンターが1個乗るので、これも2個に。場のアーティファクトを3つ生け贄にすれば6個のカウンターが乗り、元のカウンターと合わせて8個。この《電結の荒廃者》を接合して《墨蛾の生息地》にカウンターを移せば、その際にも《硬化した鱗》でカウンターが増え、合計9個が乗り、一撃で10毒を相手に与えられるようになります。《継ぎ接ぎ自動機械》も《硬化した鱗》下ではカウンターが倍になり、恐ろしいサイズの護法クリーチャーが突然爆誕します。勝ちパターンもいろいろとあります。先ほど紹介した《電結の荒廃者》《墨蛾の生息地》による一撃必殺の他に、《歩行バリスタ》もフィニッシャーになります。《オゾリス》がある状態で《電結の荒廃者》の上に乗ったカウンターを《歩行バリスタ》に接合すると、《オゾリス》にも大量のカウンターが乗るので、たとえば8個カウンターが乗ってる《電結の荒廃者》が《歩行バリスタ》に接合することで、もともとのカウンター2+接合で乗るカウンターが8(+1)、そして《オゾリス》の上からまた8(+1)の9個が乗り、ちょうど20点を飛ばせます。そして《電結の荒廃者》《歩行バリスタ》などの強力な起動型能力を持つクリーチャーと相性の良いカードが《アガサの魂の大釜》。《電結の荒廃者》は非常に狙われやすいカードですが、《アガサの魂の大釜》があればすべてのクリーチャーが《電結の荒廃者》になるので安心。もちろん《硬化した鱗》カウンターもしっかり2つ乗ります。ここでようやくタッチ青の話が出てきます。この《アガサの魂の大釜》のバリューを更に引き上げてくれるのが《湖に潜む者、エムリー》です。戦場に出た時に切削4をするので、その中に落ちたクリーチャーを《アアガサの魂の大釜》で追放できますし、《アガサの魂の大釜》で《湖に潜む者、エムリー》を追放すれば、自分のクリーチャーがすべて《湖に潜む者、エムリー》の能力を使えるようになります。《電結の荒廃者》の能力で戦場のアーティファクトを墓地に送りこめるので、《湖に潜む者、エムリー》の能力を5体が使えたとして、それを全部使いきれるのが素晴らしい噛み合いポイント。《溶接の壺》を5回《電結の荒廃者》の能力で食べるもよし、マナがあれば《微光蜂、ザーバス》を何回も墓地から唱え、大量の+1/+1カウンターをばらまけます。これまでの鱗親和に入っていなかったのが不思議なぐらい、デッキと噛み合う1枚、それが《湖に潜む者、エムリー》です。サイドボードを見てもタッチ青はしっかりと活かされており、《記憶への放逐》と《呪文貫き》が採用されています。フェアデッキに強い一方、アンフェアはめっぽう苦手なのが鱗親和。緑単では解決できなかった対アンフェアも、青の力を借りれば攻略可能です。一度回せば虜になる魔力が鱗親和にはあります!ぜひ《湖に潜む者、エムリー》を加えて更に楽しくなったシミック鱗親和を回してみてください。

パイオニア神挑戦者決定戦参戦記~イゼットフェニックス解説~

Pioneer ピックアップ

2024.11.28

Akira Kobayashi

自己紹介  皆様、初めまして。小林 輝(コバヤシ アキラ)です。  XやNoteなどでは「へいか(@enzyutuheika)」という名前で活動させていただいております。  周りからはXのハンドルネームである「へいか」もしくは「陛下」などとよく呼ばれています。 マジック公式の写真館より引用  機会に恵まれ、GOOD GAMEメディアにて記事を書かせていただくことになりました。  どうぞよろしくお願いいたします。  マジック:ザ・ギャザリングを始めたのは2019年の『ラヴニカの献身』。新参です。  初めて組んだデッキは青単テンポ、初めて3-0したデッキは《荒野の再生》のティムールネクサスです!  始めた当時に幸運にもマジック:ザ・ギャザリング公式からインタビューをいただいた経験もあったりします。 マジック公式カバレージより引用    この記事の通り耳が聞こえませんが、ステップカードや対戦相手のご厚意などによって楽しくプレイをさせていただいております。  コロナ禍で休止後に2021年末で復帰し、2022年の日本選手権予選をきっかけに競技の沼に入り込みました。  大きな大会で優勝などはしていませんが、主な実績としては下記のような形になっています。  第9期パイオニア神挑戦者決定戦:トップ4 第25期スタンダード神挑戦者決定戦:準優勝 プレイヤーズコンベンション千葉2023パイオニアオープン:トップ4 チャンピオンズカップファイナル シーズン2ラウンド3:PT権利獲得  2月に行われるプロツアー・シカゴに参加予定なので、そこでも何らかの形で記事を書きたいと思います!  パイオニアでは青白が板botとして、アゾリウスコントロールやアゾリウスロータスなどのコントロールデッキを好みますが、アグロもミッドレンジも結構好きだったりします。  その一方でコンボデッキはあまり触ってこなかったので、これから勉強していこうと思います。  好きなカードは《荒野の再生》です!! 禁止改訂の時期になる度に《荒野の再生》をストレージから解放する再生解禁botとしても活動しております。  そのうち《荒野の再生》の記事も書くかもしれません。ご期待ください。 パイオニア神挑戦者決定戦の参戦デッキ  さて、今回の記事としては11月23日にパイオニア神挑戦者決定戦で使用したデッキに関する解説になります。  デッキはやはりアゾリウスコントロール……ではなく、イゼットフェニックスです!  青白が板botとして最初に書かせていただく記事がイゼットフェニックスになってしまい大変申し訳ございません。腹を切って詫びます。 なぜイゼットフェニックスなの?  まずパイオニア神挑戦者決定戦に挑むにあたり、アゾリウスコントロールのポジションがかなり悪くなっていたことが始まりでした。  《思考囲い》のみならず《強迫》も複数枚入れ、《不浄な別室》によるとんでもないドローエンジンが強力なラクドスデーモン。  細かく動いてくる上にスペルを唱えるだけで墓地から《弧光のフェニックス》が飛んでくるなど、構造的に不利なイゼットフェニックス。  怨敵たる《スレイベンの守護者、サリア》を擁し、《至高の評決》などを《エイヴンの阻む者》《選定された平和の番人》でズラされてしまうセレズニアカンパニー……  このように、アゾリウスコントロールにとって辛いデッキが環境上位を占めています。とてもつらい。  これに限らずアゾリウスコントロールは以前から苦難の時期が続いており、他のデッキを模索しているところでした。  友人からイゼットフェニックスを借り、回したところ……ものすごく楽しい!!  全てのカードが美しく絡み合っていく感覚、そして何よりドロー、ドロー、ドロー!! 「マジックはドロー」という格言をこれ以上なく体感でき、正直今まで触ってこなかった事を後悔しました。それほど楽しいデッキです。  気が付けば延々と一人回しをしてしまう毎日を過ごしてしまいました。  しかし、イゼットフェニックスに触れてからパイオニア神挑戦者決定戦まで間もない状態。  練度も精度も何もかもが足りない状態です。  そこでヨーロッパのUltra Proのスポンサードプレイヤーであり、各地のRCやPTで好成績を残し続けているチームWorldly Counsel Heavy Playの一員で精力的に活動されているMyra00(@Myra00_mtg)さんからイゼットフェニックスの何たるかをコーチングしていただきました。  正直言って、本記事のかなり深い部分についてはMyra00さんの受け売りです。  こうして記事にすることを快くご許諾いただき、この場を借りて感謝申し上げます。  コーチングなども条件付きで実施されているそうなので、本記事で興味が出てきましたら是非見に行ってください!(ディスコードID:myra00)    Myra00さんからご教授いただく中でイゼットフェニックスというデッキの奥深さを知り、ますます使いたくなってきました。  マジックをしていく上で一番重要な事は「楽しむ事」なのが私の信条。楽しめるデッキを使わない選択肢はありませんでした。  当日は楽しむつもりで友人から借りたイゼットフェニックスを手にいざ出陣!  結果はというと、1-3ドロップ……現実は非情でした。  負けはいずれも悩んだ選択の中で裏目を引いてしまった形になり、イゼットフェニックスの難しさを身をもって知る形となりました。  が、ここで得られた知見なども含めてこれからイゼットフェニックスというデッキを深掘りしていきます。  イゼットフェニックスに興味がある方々には私の屍を乗り越えていっていただければと思います。 イゼットフェニックスについて  さて、改めてイゼットフェニックスについて基本的なことを紹介していきます。  《考慮》《選択》《手練》の1マナキャントリップ、1マナ3点火力の《焦熱の衝動》や《弧光のフェニックス》を墓地に送る手段でもある《稲妻の斧》。  これらインスタント・ソーサリー呪文を3回唱え、墓地からデッキ名にもなっている《弧光のフェニックス》を戦場に戻らせる事を主目的としたデッキです。  このように1マナのスペルが非常に多く、墓地も肥えやすいことから"パイオニアにおける聖域"と謳われるパワーカードである《宝船の巡航》を最も強く使えるのも他にない強みですね。  禁断の1マナ3ドローを味わってしまったらもう戻れません。モダン・レガシーで禁止されているカードは格が違います。 『エルドレインの森』で得た新戦力《錠前破りのいたずら屋》で大きな存在感を発揮していたイゼットフェニックスですが、『ブルームバロウ』で《美術家の才能》を獲得したことでデッキとしての強さが一段階上がったと言っても過言ではありません。  とにかく《弧光のフェニックス》を求めてデッキを掘る必要があるイゼットフェニックスにおいて、「全てのノンクリーチャースペルにルーティングのオマケがつく」効果は強力無比です。  これも2マナと非常に軽く、ラクドスなどの特定カラーは対処しづらいエンチャントである点も強みの一つになっています。  この《美術家の才能》のルーティングによるデッキ掘り能力は凄まじく、探査コストを7枚要求する《宝船の巡航》を1ターンで2回唱えることすら可能としています。  また、どんどんデッキを掘っていく特性上、1枚差しの価値が大きく上がっているのもポイントの一つになります。  メインボードの1枚差しとしては《プロフトの映像記憶》がその筆頭ですね。  これもまたルーティングを繰り返す《美術家の才能》やキャントリップの《考慮》《選択》。(※《手練》は手札に加えるため、ドローにならない点に注意です。)  そして1マナ3ドローである《宝船の巡航》との相性も非常によく、《錠前破りのいたずら屋》にカウンターを乗せることで優秀なサブプランとして機能します。  また、先述した通り「特定のカードへのアクセスのしやすさ」は各マッチアップに対して効果的なサイドボードを引き込みやすい事にも繋がります。  これもイゼットフェニックスの大きな強みの一つであり、総じて「75枚全体で戦う」という感覚が強く感じられるデッキです。 今回使用したデッキリスト 今回はMyra00さんからご提供いただいたリストを使用しました。 メインボード解説(フリースロット)  様々なリストを見ていきましたが、メインボードでは56枚ほど固まっているように見受けられます。残りの4枚がフリースロットですね。  ここではフリースロット部分について言及していこうと思います。    ここは《反逆のるつぼ、霜剣山》《ジュワー島の錯乱》などとの選択ですね。  Myra00さんからいただいたリストでは《島》4枚で、それをリスペクトした形です。  理由もあり、《考慮》《手練》《選択》などのキャントリップを能動的に唱えるにあたって赤しか出ない《反逆のるつぼ、霜剣山》はややリスクがあるように感じました。  サイド後の《無効》《神秘の論争》などが構えられないのも厳しいものがあります。 《ジュワー島の錯乱》も土地として運用するとタップインなのが大きなマイナス点。  追加の1マナ火力であり、セレズニアカンパニーの《永劫の無垢》やラクドス雄姿の《心火の英雄》などに対して追放が有効に働きます。  ミラーマッチでも《弧光のフェニックス》を追放したりと、結構働いてくれる1枚です。  最悪《美術家の才能》《プロフトの映像記憶》で協約が可能な点は忘れないでおきたいところです。  この二枚はセットでの運用ですね。  追加ターンを2回得て複数の《弧光のフェニックス》で一気に削りきるコンボデッキのような立ち回りを可能としています。  この2枚を採用する理由として、《美術家の才能》によって墓地肥やし及びパッケージを探す速度が大きく上がり、このコンボで殴り切るというプランがこれまでより容易になった点が挙げられます。  また、4cズアーなどには長期戦になってしまうと必敗の中、このコンボという明確なゴールが存在することも一つのポイント。  《感電の反復》も1枚の価値が高くなるラクドスデーモン戦で《焦熱の衝動》をコピーして《ドロスの魔神》を対処したり、あるいは《厚かましい借り手》をコピーすることで一気にテンポを取ったり……というように器用な働きをします。 Tips集 《手練》《選択》《考慮》どれから使う?  基本的にソーサリーの《手練》から使っていきます。 《プロフトの映像記憶》に影響がないですし、《選択》《考慮》はインスタントタイミングであるため相手の動きを見て、必要なカードかどうかを判断できるからですね。  ただし、「手札を加える」という特性上、《黙示録、シェオルドレッド》《覆いを割く者、ナーセット》などがいる時は《手練》の価値が大きく上がります。  また、同時に2枚見れるという効果の特性上、欲しいものが明確であれば《手練》を温存するという手もあります。  では《考慮》と《選択》はどうか、と言われれば一般的には《宝船の巡航》の探査、《弧光のフェニックス》が落ちる可能性のある《考慮》の方を優先して使います。  受け入れが狭い(不要なカードが多い)ほど諜報で落としやすくなるのもあり、序盤から使っていきたい1枚でもあります。  基本的には《考慮》でカードを墓地に落とした方が得ですからね。  ただし、《選択》から先に打つパターンも存在します。  土地が欲しい時は《考慮》より《選択》を打つのがベターです。前述の「《考慮》を打つならカードは墓地に落としたい」を前提に考えてみればわかりやすいです。  土地が欲しい=土地は《考慮》で墓地に落としたくないということになるので、(2枚目の土地であれば)ライブラリー内の18枚は引きたいカードですから、そこそこの確率で諜報できずに(諜報によって土地が見えて)ドローしてしまう場合があります。そのままにしてドローするなら《選択》でも《考慮》でも同じ。《考慮》の方が強いカードなのにもったいないですよね。  他には、《真っ白》などの墓地対策をケアするパターンでも《選択》から打ちます。テキストを読み上げるようですが、《考慮》は諜報によって1枚で最大墓地を2枚肥やすことが出来ますからね。  《選択》を先に使い、墓地対策をされた後から《考慮》で1枚多く墓地を肥やすことで《宝船の巡航》に繋がるようにするわけですね。 土地1枚のハンドはキープ可能?  キャントリップ2枚以上であればキープを検討します。  他に《美術家の才能》もあれば2枚目の土地を引いた時のバリューが非常に高いため、まずキープしますね。  また、キャントリップ1枚でも《美術家の才能》に加え、《錠前破りのいたずら屋》などがある強い手札であればキープします。  ただしラクドス雄姿などの序盤の干渉が必要なマッチアップであればマリガンです。  マッチアップによってキープ基準は変わるというわけですね。 《宝船の巡航》の探査  基本的に《焦熱の衝動》の魔巧達成のために土地・エンチャント・クリーチャーから優先的に追放します。  《焦熱の衝動》が関係ないマッチアップではあまり気にしなくても大丈夫です。  《思考のひずみ》が入ってきそうな相手であれば、逆に土地やクリーチャーを残し、打たれても探査コストが残るようにする小テクもありますね。 《美術家の才能》加入の影響 《稲妻の斧》の枚数減少  《弧光のフェニックス》を捨てる貴重な手段であり、1マナ5点と凄まじいマナ効率の《稲妻の斧》。  これまでのイゼットフェニックスではこれは4枚から動かないとされてきましたが、《美術家の才能》の加入によって2~3枚に減量されているリストが散見されます。  理由としては主に下記の二点であると考えています。 1.《美術家の才能》によって捨てる手段が困らなくなった  従来のイゼットフェニックスでは捨てる主な手段として《帳簿裂き》《稲妻の斧》の2種類でした。  《帳簿裂き》は盤面に関わらず謀議さえ誘発してしまえば捨てられますが、相手の除去によって定着は難しくなっています。除去された後に《弧光のフェニックス》を引いたら目も当てられません。  また、《稲妻の斧》は相手にクリーチャーがいなければディスカードすらできません。  その一方で《美術家の才能》は除去されづらいエンチャントであり、回数制限もなく盤面に関係なく使用できるため、《弧光のフェニックス》を捨てられる機会が非常に多くなっています。 2.《稲妻の斧》自体の価値が下がっている  端的に言えば「《美術家の才能》によってカード1枚の価値が上がっている」事が理由です。  《美術家の才能》のルーティングは「先に捨てる」ことになります。  そうすると、手札は多い方が判断材料として分かりやすくなりますね。  しかし《稲妻の斧》はディスカードが求められるため、手札は減ってしまいます。  そうすると《美術家の才能》のルーティングをする幅が狭まってしまい、強みが少し減ってしまいます。  例えば手札が2枚で片方がキャントリップであれば最低限ルーティングはできますが、1枚だけだとルーティングすら出来なくなります。  結果的に《宝船の巡航》などに辿り着く確率も下がってしまうというわけですね。  また、5点も魅力ではあるのですが、ラクドスデーモンなどはこの《稲妻の斧》を意識して《ドロスの魔神》《祭儀室》といったタフネス6のクリーチャーを繰り出してきます。  《稲妻の斧》の当て先の一つである《帳簿裂き》を巡るはずのイゼットフェニックスミラーにおいても、現在は《美術家の才能》型が主流になっていることも向かい風。  上記の理由から《稲妻の斧》そのものの価値が下がり、4枚が鉄板ではなくなったのだと考えられます。  とはいえ、ラクドス雄姿などに対しては信頼おける火力であるのも事実であり、《稲妻の斧》が4枚のリストも多々ありますので、この辺りはメタに応じてチョイスすることになるでしょう。 《帳簿裂き》の不採用  《美術家の才能》が入った事で抜ける枠は《帳簿裂き》になります。  ただし、一概に《美術家の才能》の方がいいとは言い切れません。《美術家の才能》自体は盤面に影響しないという大きな欠点が存在するからです。  例えばラクドス雄姿に対して《美術家の才能》を出そうにも盤面に触れず、タップアウトしてしまうことで、その隙にライフを一気に詰められてしまうリスクが生じてしまいます。  一方で《帳簿裂き》は手札を循環させる謀議も勿論ですが、この謀議によってどんどんサイズが膨れ上がる事による対アグロ性能が魅力。  2/4、3/5と育ってしまえば生半可なクリーチャーでは突破できません。  また、《帳簿裂き》抜きの《美術家の才能》型だとメインボードでは《弧光のフェニックス》《錠前破りのいたずら屋》の8枚しかクロックが存在しないため、これらを追放もしくは除去されると勝ち筋が消滅してしまうなんてことも。  《弧光のフェニックス》に頼らずとも《帳簿裂き》でのビートダウンというもう一つの勝ち筋を作り出せるのも大きな長所です。  これは墓地対策をしてくることが多くなるサイドボードでの軸をずらすサブプランとしても優秀で、デッキとしての太さにも貢献します。  このように、一概に《美術家の才能》の方が優れているとは言い切れない部分もあります。  しかしながら、当然《帳簿裂き》にも欠点が存在します。  それは《致命的な一押し》を筆頭とした除去が刺さってしまう点です。  そうすると手札に来た《弧光のフェニックス》は《稲妻の斧》ぐらいしか捨てられる手段がなくなってしまい、かさばってしまうなんてことも。  特に今はラクドス雄姿の存在によって軽量除去が多く取られているため、《帳簿裂き》はおおよそ出したターンかその次のターンに除去されると言っても差し支えないでしょう。  また、《帳簿裂き》が存在することでサイドボード後に《致命的な一押し》を減らしてこないため、結果的に《第三の道の偶像破壊者》などの他の勝ち筋にも刺さってしまう点もマイナス。  上記の理由から、現在は《帳簿裂き》はなかなか活躍しづらい環境と言えます。  一方で《美術家の才能》はエンチャントであるため、除去が刺さらない点で優れています。  これによるメインボードでの強さは段違いです。システムクリーチャーが置物になったらそりゃ強い。  また、《帳簿裂き》のターンに1回だけの謀議とは異なり、こちらは回数制限が存在しないことからデッキを回す速度は桁違い。  メインボードで墓地対策はほぼされない点、サイドボードでは《帳簿裂き》がいないことで相手の除去が減る=サイドボードのサブプランが通りやすい点なども含め、《美術家の才能》の方がトータル的に良いのでしょう。 サイドボード解説 《第三の道の偶像破壊者》3枚  墓地に依存しない別軸のプランその1。  1マナのスペルを連打するイゼットフェニックスとの相性が非常によく、1ターンで3~4枚のトークンが出てくることもザラ。  出てくるトークンのサイズは1/1と最低限のものですが、《プロフトの映像記憶》の乗せ先としても優秀。 《帳簿裂き》を採用しないこの型では除去を減らしてくることが多く、それに対してこの《第三の道の偶像破壊者》が突き刺さる構図になります。 《神秘の論争》が当たらない《若き紅蓮術士》を採用したリストもありますが、《美術家の才能》や《プロフトの映像記憶》で誘発する《第三の道の偶像破壊者》の方がオススメです。 《厚かましい借り手》2枚  墓地に依存しない別軸のプランその2。  相手の対策を一時的に対処できる万能バウンスであり、瞬速の3/1飛行。  また、飛行に対するブロッカーにもなります。特にセレズニアカンパニーの《エメリアのアルコン》は是非討ち取りたい1枚ですね。  ターンエンドに出すことで、《プロフトの映像記憶》をより強く使うことが出来る点も◎。 《弾けるドレイク》2枚  墓地に依存しない別軸のプランその3。  4マナとやや重いものの、ETBの1ドローでアドバンテージを取りつつ、追放領域まで参照するため、パワーが二桁になることも多々あります。  相手に対応がなければ速やかに試合を畳めるフィニッシャーです。 《プロフトの映像記憶》1枚  墓地に依存しない別軸のプランその4。  ドローすればするほどクリーチャーがどんどん強化されていきます。  各種キャントリップ、《宝船の巡航》《美術家の才能》などの相性が非常によく、回ると+8/+8というとんでもない数値になったりします。  警戒飛行である《錠前破りのいたずら屋》に載せると攻防共に大活躍。  地味に手札制限が撤廃される効果もあるため、クリンナップステップで《弧光のフェニックス》を捨てることが出来なくなる点については注意です。  墓地から帰ってきたばかりの《弧光のフェニックス》に乗せられないことも覚えておきましょう。 《塔の点火》1枚  追加の1マナ火力。  セレズニアカンパニーの《永劫の無垢》に対する回答であり、《心火の英雄》なども追放で対処可能です。  《第三の道の偶像破壊者》もあるので、メイン戦より協約しやすくなります。  この枠については4枚目の《焦熱の衝動》などに差し替えてもいいと思います。 《削剥》2枚  追加の火力であり《未認可霊柩車》への対応札です。  特に今はイゼットフェニックス意識で《未認可霊柩車》の採用が増えているので、2枚は必要だと感じています。  ここの枠を《プリズマリの命令》にしているリストもありますね。これもアーティファクト(《未認可霊柩車》)破壊の役割を担っています。 《無効》2枚  1マナでエンチャントおよびアーティファクトをカウンターできます。  《耳の痛い静寂》《真昼の決闘》《安らかなる眠り》《未認可霊柩車》などの対策カードの大半が置物であるため、これらに対する対策となっています。  また、現在のパイオニア環境では《不浄な別室》《美術家の才能》《鏡割りの寓話》《豆の木をのぼれ》etc……と、エンチャントが強い環境でもあるため、これらもひっくるめて1枚で見れるカード。   初めて見た時は「ほんとに~?」と思いましたが、使ってみると強さが体感できる1枚です。 《否認》1枚  シンプルなカウンターですね。  主にコントロールデッキやミラーマッチで入れる用途になっています。 《神秘の論争》1枚  こちらは青いデッキ全般に。  青い相手に対して、3ターン目にこれをバックアップに《美術家の才能》を唱える動きが非常に強力です。 サイドボードでの戦い方について 墓地に依存しないサブプラン  トップメタの宿命により、墓地対策もしくは《真昼の決闘》《耳の痛い静寂》などのイゼットフェニックス狙い打ちの対策が間違いなく入ってきます。  それに対して先述した通り《第三の道の偶像破壊者》《弾けるドレイク》《厚かましい借り手》《プロフトの映像記憶》など、軸をずらして墓地に依存しない勝ち筋で対応していくというプランを意識するとよいでしょう。  この場合、墓地に依存する《弧光のフェニックス》《宝船の巡航》を減らす形になりますね。  もちろん相手のサイドプランを見越して逆手に取る方法もありますので、各マッチアップでのインアウトはざっくり記載しつつ、大まかな方針を書いていく形にしたいと思います。 《美術家の才能》レベル2  メインボードでは2マナ以上のノンクリーチャー呪文は《美術家の才能》《錠前破りのいたずら屋》《宝船の巡航》《時間への侵入》《プロフトの映像記憶》があります。  しかし、レベルアップに要する3マナがあればその分だけ自分の動きを優先した方が強いことがほとんどで、レベルアップする暇があまりありません。  その一方でサイドボードでは相手の対策カードによってうまく動けなかったり、あるいは1枚のキャントリップ呪文を、必要なカードを探し出すために大事に温存する必要が生じたりします。  そうすると意識的に《美術家の才能》をレベル2にする機会が増える点は覚えておきたいところです。  レベル2になることでサイドから増えてくる2マナ呪文である《厚かましい借り手》《削剥》《否認》なども1マナになり、予想以上に動きやすくなったりします。 主要マッチアップ解説 現時点でのトップメタである、ラクドスデーモン・ラクドス雄姿・イゼットフェニックスミラーとのマッチアップを解説していきます。 VSラクドスデーモン  メイン有利、サイド微不利の印象です。  毎ターン誘発する《不浄な別室》によって長期戦は避けたいところ。  《不浄な別室》《黙示録、シェオルドレッド》《ドロスの魔神》でライフを詰めてくるため、それまでに《美術家の才能》《宝船の巡航》でいかにデッキを回すかが重要になってきます。 ▼キーカード - 《美術家の才能》  重要なカードとしては《美術家の才能》です。  この《美術家の才能》に対して対処できる手段がメインボードには《思考囲い》《強迫》しかなく、2マナの軽さで後引きしてもすぐ出せるなどでラクドスデーモン側は根本的な対応が不可能です。  《不浄な別室》によるドローエンジンが強いと言えども、《美術家の才能》を絡めた動きの方が速く強く、それを咎める手段もないためメインでは有利と捉えています。  ただし、《不浄な別室》《ドロスの魔神》によってライフを詰め切ってくるため、序盤はあまりライフを削られすぎないように留意する必要があります。  《止められぬ斬鬼》はその筆頭で、整ってしまえば《弧光のフェニックス》の無限ブロック・《焦熱の衝動》などで寝かせることは可能ですが、ハンデスなどで1回でも攻撃を通されると急にゲーム感が変わってきます。 ▼サイドアウト候補 《焦熱の衝動》《稲妻の斧》《塔の点火》《弧光のフェニックス》《時間への侵入》《手練》《宝船の巡航》 ▼サイドイン候補 《削剥》《無効》《プロフトの映像記憶》《厚かましい借り手》《第三の道の偶像破壊者》《弾けるドレイク》《否認》  メインボードでは先述した通り《美術家の才能》を絡めて速やかに自分のしたいことである《弧光のフェニックス》複数戻し、《宝船の巡航》連打ができる点などで有利になっています。  しかし、サイドボードでは《未認可霊柩車》《真っ白》《虚空の力線》といった墓地にクリティカルな対策カードが入ってきます。  これによりこちら側は減速を強いられることになります。  このマッチでは《無効》が、《鏡割りの寓話》《不浄な別室》のみならず、サイドボードから入ってくる《未認可霊柩車》にも刺さる頼もしい一枚となっています。  このようにお互いに牽制し合うカードが増える事から長期戦になりがち。  そうすると……先述したように《不浄な別室》が強いわけですね。  それに対して取れるプランが下記のように複数あります。 1.《第三の道の偶像破壊者》2.《弾けるドレイク》3.《プロフトの映像記憶》  ラクドスデーモン側は《致命的な一押し》は減らしたい一枚ですが、《第三の道の偶像破壊者》の存在によって減らし過ぎると裏目が生じることも。  2ゲーム目で《第三の道の偶像破壊者》を暴れさせた後、3ゲーム目では抜いて相手が増やした《致命的な一押し》を腐らせてしまうという大胆なプランも考えられますね。  このように相手のサイドプランを逆手に取ることもでき、逆に言えばラクドスデーモン側はこれに合わせていく必要があります。  特に《プロフトの映像記憶》によって脅威を増やす動きはラクドスデーモンに効果的なので意識したいところ。  《第三の道の偶像破壊者》で増やしたトークンに載せるのもよし、《弾けるドレイク》に載せてワンパンもよしと、墓地に頼らないプランの中核として働きます。  《ドロスの魔神》や《祭儀室》の6/6飛行デーモンを《厚かましい借り手》《洪水の大口へ》のバウンスでテンポを取り、そのまま差し切るというプランを念頭に置きながら動いていきましょう。 VSラクドス雄姿  軽量除去を多く擁するイゼットフェニックス側が有利であると思われがちですが、実は……辛いのではないか……?と思い始めています。  というのも、最近のラクドス雄姿はイゼットフェニックスを明らかに意識しており、タフネスが+2される《立腹》が採用されています。  これによって《焦熱の衝動》どころか《稲妻の斧》すら裏目になるリスクが生じ、さらに対応するダブルアクションが必要になってきます。  そうすると赤い土地も必要になってくるわけですが、火力を探すためにキャントリップも唱えたいので《河川滑りの小道》を赤で置くと、それはそれで窮屈な展開になります。  そして除去さえしていれば勝つわけではありません。序盤を凌いだところで《宝船の巡航》でリソースを回復し、《弧光のフェニックス》などで殴り切る必要が出てきます。  そのためにマナを寝かせる必要があり、その隙を突いて速攻を持つクリーチャーで殴りかかってくるリスクも生じます。《立身+出世》もありますしね。  このようにイゼットフェニックス側の要求値が高い一方で、ラクドス雄姿側は「イゼットフェニックスの火力をいかにかわすか」ことだけ考えていればよく、押し付けやすい形になっているように思います。  総括すると「ラクドス雄姿側がゲーム自体の主導権を握りやすい」というわけですね。《致命的な一押し》が恋しいです。 ▼キーカード - 《焦熱の衝動》《稲妻の斧》等の除去  初手にこれら除去がなければ負けます。マリガンは厳しめにやらなければなりません。  また、先手・後手で《美術家の才能》の評価が大きく変わる点も注意です。  後手だと相手がクリーチャー2体以上+3マナ使える状態になり、タップアウトしてしまうと大きくライフを削られてしまいます。  このように後手での2ターン目《美術家の才能》は出来る限り避けたい一方で、先手であればまだ脅威の度合いが小さいので即出します。  これは2ターン目で大きくライフを詰められるパターンが《心火の英雄》→《巨怪の怒り》or《立腹》or《裏の裏まで》+《無感情の売剣》の15点しかないためです。  ここで設置し、バリューを最大限引き出すようにします。 ▼意識すべき点 ◇先手1ターン目《熊野と渇苛斬の対峙》  このケースで後手1ターン目に《焦熱の衝動》は構える価値がありません。酷い目に遭ったので共有します。  なぜならこの時点の《焦熱の衝動》は魔巧未達成により2点火力であり、2章によって+1/+1カウンターが載った状態で出てくるクリーチャーたちの前には無力だからです。(《心火の英雄》だけは対応可能ではありますが……)  《手練》があれば手札によって必要な札を探しつつ、魔巧達成のために墓地にスペルを溜めていきましょう。   ◇《弧光のフェニックス》をブロッカーに回す  アグロ・クリーチャーデッキ全般にも言えることですが、3回スペルを唱えてしまえば復活する《弧光のフェニックス》は優秀なブロッカーとして機能します。  ただし、《熊野の食刻》はダメージを受けて死亡すると追放されてしまう置換を持つため、《弧光のフェニックス》をブロッカーにするプランであればマスト除去になります。  このようにゲームプランによって除去の優先順位も変わってくるので、難しいマッチアップと言えるでしょう。 ▼サイドアウト候補 《時間への侵入》《感電の反復》《弧光のフェニックス》《美術家の才能》《手練》《呪文貫き》 ▼サイドイン候補 《削剥》《塔の点火》《厚かましい借り手》《第三の道の偶像破壊者》《弾けるドレイク》  ラクドス雄姿は《熱烈の神ハゾレト》《立身+出世》《ウラブラスクの溶鉱炉》などで中盤以降でもそこまで息切れせず攻めてくるため、序盤を凌いだだけでは勝てません。  盤面に影響しないとはいえ、《美術家の才能》は勝つために必要なカードです。先手では2ターン目に置けるバリューがあるため全て残し、後手では全て抜かずに2枚程度減らすという形になると考えられます。  《弧光のフェニックス》は先手後手ともに手札にかさばると敗着に繋がるため、2枚程度減らします。  《巨怪の怒り》でトランプルを付与しない限りトークンの山を突破できないことから、《第三の道の偶像破壊者》は主な勝ち筋でもありながら火力では対処不可な《熱烈の神ハゾレト》への対抗手段にもなります。  また、《厚かましい借り手》がコンバットトリックにバウンス、《精鋭射手団の目立ちたがり》に対して相打ちを取れる点でも頼もしい1枚になっています。  《弾けるドレイク》は隙が大きいものの、ボードをコントロールした後の速やかに終わらせる手段としては最適。  制圧した後は速やかにゲームを終わらせることを意識していきましょう。 VSイゼットフェニックス  メインボードでは各種火力がほぼ死に札であり、《美術家の才能》を対処できるのが《呪文貫き》《洪水の大口へ》しか存在しません。  よってこのマッチでは《美術家の才能》を先に定着した方に大きく天秤が傾くことになります。 《美術家の才能》の2枚目を先に置けたらほぼ勝ちと言っても過言ではありません。 《感電の反復》《時間への侵入》のコンボが非常に強く、《美術家の才能》《宝船の巡航》でデッキをどんどん掘ってこの2枚を探し当てる別ゲーと化します。  逆に相手だけ《美術家の才能》が定着してしまっているケースでも同様で、おそらく《美術家の才能》が無い状態で勝つ唯一の手段もまた《感電の反復》《時間への侵入》となります。  そのため、相手だけ《美術家の才能》がある劣勢な状況であればこのコンボを狙いに行くことになります。 ▼意識すべき点 ◇《弧光のフェニックス》をあえて戻さない選択肢  墓地に《弧光のフェニックス》が1枚しかない時は、戦場に戻らせること自体リスクが生じることがあります。(火力の打ち先になってしまったり、《塔の点火》を当てられたり)  2回目のスペルを唱えた後、第二メインフェイズまで行ってから3回目のスペル唱えて《弧光のフェニックス》をあえて戻らせない工夫も、時として必要になってきます。 ▼キーカード - 《美術家の才能》  正直《美術家の才能》がない7枚のハンドよりも《美術家の才能》がある5~6枚のハンドの方が強いと感じています。  相手がイゼットフェニックスと分かっているならば、マリガンのリスクを背負ってでも《美術家の才能》を探しに行くリターンは間違いなくあります。(キャントリップが潤沢にあり、探しに行けるハンドであればキープでもよいとは思いますが)  マリガン後、弱い6枚よりも《美術家の才能》がある5枚の方が強いため、最悪《美術家の才能》を求めてダブルマリガンまで検討に値するでしょう。  それほど重要な1枚です。 ▼サイドアウト候補 《焦熱の衝動》《稲妻の斧》(相手が《帳簿裂き》型の場合は残す) ▼サイドイン候補 《無効》《否認》《神秘の論争》《プロフトの映像記憶》《塔の点火》《削剥》(《未認可霊柩車》が見えた場合) 《稲妻の斧》の有無については《帳簿裂き》型かどうかによって変わります 《帳簿裂き》型であればこれを対処できる《稲妻の斧》を残すことになります。  同じ《美術家の才能》型であれば火力は《塔の点火》以外を全て抜き、《美術家の才能》に対応できる《無効》《否認》を入れていきます。  サイド後はお互いに《美術家の才能》を意識することになります。  キープ基準も変わり、メインボードでは《美術家の才能》が重要になってきますが、お互いに対処手段が増えるサイドボードでは《美術家の才能》がなくとも、《無効》などの《美術家の才能》を対処する札および《宝船の巡航》などのリソースカードがあればキープに値します。  下手に《美術家の才能》を唱えてしまうと弾かれた後に返しで《美術家の才能》を通されて最悪ですから、何らかのバックアップと共に唱えることになります。  この辺りはかつて《かき消し》《鏡割りの寓話》があったグリクシスミッドレンジミラーと同じような考え方になりますね。  回答と墓地肥やしの両方を兼ねる《錠前破りのいたずら屋》もまた重要な1枚です。  特に序盤においては《手練》などで下手にタップアウトしてしまうと《錠前破りのいたずら屋》を通されてしまうリスクがあるので、お互いに構え合う展開になりやすい印象があります。  上記のリストでは入っていませんが、ミラーでは《美術家の才能》《宝船の巡航》を完封する《覆いを割く者、ナーセット》が非常に効果的です。  ただし、3マナのソーサリータイミングであるため、《神秘の論争》などのバックアップつきでないと安心して唱えられない点には留意してください。 最後に  ここまでイゼットフェニックスを解説させていただきましたが、魅力が少しでも伝わりましたでしょうか?  このデッキはとにかくスペルを連打、ドローもしまくりと爽快感がとてもあります!  それだけ選択肢も多岐に渡り、この迷路の中で正解に辿り着くパズルのような要素もあって非常に楽しいデッキとなっています。  「トッププロですら80%もポテンシャルを引き出せれば上出来」と言われるほど高難易度のデッキ、極めてみたくありませんか?  このイゼットフェニックスについて様々なことをコーチングいただいたMyra00(@Myra00_mtg)さんに改めて感謝を申し上げます。ありがとうございます。  これからこういった記事をGOOD GAMEメディアで執筆させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします!

【リアニメイトディガー!】最新スタンダード環境を《もがく出現》で攻略

週刊 Standard

2024.11.27

Kyle Hitachi

皆さんこんにちは! 新しくGOOD GAMEメディアで筆を執らせて頂くことになった常陸カイル(Kyle Hitachi)です! X(旧Twitter)上ではEin(@Ein49499674)として活動しています。競技シーンに興味があり、主にスタンダード、パイオニア、モダン、そしてリミテッドをプレイしています。『チャンピオンズカップ』の予選やファイナルでお会いすることもあるかもしれませんね!さて、私が執筆する「リアニメイトディガー!」ではその名の通り、様々なフォーマットの「リアニメイト」デッキをディグしていきます。 「リアニメイト」とは、その名の通り、墓地からクリーチャーを戦場に戻す戦術のことです。墓地からクリーチャーを吊り上げるカードの中でも最強格の《再活性/Reanimate》をご存じの方も多いのではないでしょうか? リアニメイトデッキの歴史を振り返ると、こちらも有名なリアニメイトスペルである《動く死体》と、《納墓》や《生き埋め》といったライブラリーから直接クリーチャーを墓地に落とすカードが組み合わせたデッキが、エクステンデッド時代から長らく活躍してきました。墓地にあるクリーチャーを出す動きは、さながら釣りに例えられます!手札にある「釣り竿」で墓地のクリーチャーを「釣り上げる」なんて表現もよくされます。 リアニメイトデッキの最大の魅力は、強力なクリーチャーやパーマネントを、比較的早いターンに戦場に送り出せることです。最近ではどのフォーマットでも《偉大なる統一者、アトラクサ》がリアニメイト先としてよく使われていますね。 どんな厳しい盤面からでも一発逆転出来るポテンシャルを秘めている、非常にロマンあふれる戦術で、ファンも多く、私もその一人。様々なフォーマットで墓地からクリーチャーを吊り上げるディガーです。 記念すべき第一回ということで、今回はスタンダードの《もがく出現》デッキを紹介していこうと思います。自身のnoteで何度も取り上げているテーマですが、改めてどんなデッキなのか、『ファウンデーションズ』環境での立ち位置はどうなのか、解説していきます。 そして競技も今はスタンダードシーズン真っ最中というわけで、チャンピオンズカッププレミアム予選やThe Last Sun本戦への取り組みも紹介していく予定です! 《もがく出現》デッキとは? 《もがく出現》は『イクサラン:失われし洞窟』に収録されたリアニメイトスペル。コストは3マナと比較的軽く、準備さえ整えばどんなパーマネントでも戦場に送り出すことができます! まず気になるのが「何を釣り上げるのか?」幸いこのスタンダード環境には魅力的なカードがたくさんあります! 強力なスタッツで戦場を支配し、強力なドロー能力で後続を引っ張ってこれる《偉大なる統一者、アトラクサ》は絶対に採用したいカードです。 強力な護法能力とアドバンテージ能力を併せ持つ《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》も中々良いカードですね。 手札のカードを無制限の唱えられるようになる《全知》や、墓地の土地カード全てを場に出せる《森の轟き、ルムラ》なども非常に魅力的。 強力なプレインズウォーカーである《戦慄衆の将軍、リリアナ》やライブラリーを大量に切削出来る《完成した精神、ジェイス》なども是非使いたいですね。私が推奨するカラーは『スゥルタイ』、つまり黒緑青の3色デッキです。 赤や白にも《原初の征服者、エターリ》や《整炎師、チャンドラ》、《無形の処刑者、ケイヤ》など、釣りたいカードがたくさんありますが、青は何と言っても足回りに優れています。 足回りとはつまり「いかにして墓地を肥やすのか」。リアニメイトはこれに尽きます。青いカードには《第三の道の創設》やこれの第一章で唱えることができる《錠前破りのいたずら屋》、高い対応力を持つ《忘れられた者たちの嘆き》など、強力なカードが揃っているのです。 デッキリストと現状の立ち位置 11月24日にに晴れる屋TC東京で開催されたチャンピオンズカッププレミアム予選で使用したリストがこちら。 『ファウンデーションズ』加入後の最新スタンダードは、赤系アグロデッキの隆盛が目につきます。 更にディミーアミッドレンジにゴルガリミッドレンジとスタンダード然としたミッドレンジたち、パイオニアから逆輸入された《永遠の策謀家、ズアー》型の版図ランプ、オンラインでも多大な実績を残している新進気鋭のコンボ・ティムールカワウソ、赤アグロ殺しの白単コントロールなどが仮想敵。 もがく出現の各デッキとの相性は赤アグロ系、そしてクロックパーミッション系のデッキは苦手とするものの、その他のデッキには五分以上に戦える認識です。 これまでは赤アグロに対しては《偉大なる統一者、アトラクサ》を着地させれば一安心だったのですが、《叫ぶ宿敵》がほとんどのリストに採用されるようになってしまったので、現状はお世辞にも有利とは言えませんね。 クロックパーミッション系のデッキには、こちらのアクションが重めかつ、ソーサリーアクションであるという性質な以上、どうしても厳しい印象です。サイドボードの《強迫》を《第三の道の創設》で使い回して打ち消しを落とすなど、勝つ方法はありますが、相手の墓地対策なども考えると、中々厳しい戦いになるのは必至。 そもそも3色なので土地周りのトラブルが起こっただけでも、上記のデッキたちには容易に負けてしまいます。一方、環境が赤アグロに意識を寄せているからこそ、その他のデッキには有利に戦うことができます。メインで相手が引いた《切り崩し》《苦痛ある選定》は腐りますし、ライフゲインとドローがデッキ構築の主体である白単コントロールには《完成した精神、ジェイス》だけで勝ってしまいます。 このようにマッチアップによって有利不利がはっきりしたデッキなので、当たり運次第で勝ち星を伸ばし続けられます。 一部カード解説 シンプルなリアニメイトデッキであるもがく出現ですが、様々な使い道のあるカードがいくつかありますので、抜粋してご紹介します。 強力な切削能力を持ったプレインズウォーカー。 プラス能力のクリーチャーマイナス修正は自身の生存率を高め、ー2のドロー能力は必要なカードを揃える手段などで重宝します。 何と言っても3マナでキャストできるオプションがあるのが強みですね。3ターン目に出してプラス能力で次のターンまで生存、そしてー3かー4で9~12枚のカードを切削して《もがく出現》をキャストする動きはよくやります。 また版図ランプや白単コントロール相手にはフィニッシャーにもなります。 《豆の木を登れ》《世話人の才能》などの継続的なドローでライブラリーが30枚程度になっていることが多く、《偉大なる統一者、アトラクサ》はいくら出しても処理されますからね。《もがく出現》での再利用も考えながらLOさせちゃいましょう。 こちらはリアルでのテクニックの話になりますが、対戦相手をライブラリーアウトさせようと思った時、相手にデッキの枚数を聞くと、ライブラリーアウトを狙っていることがバレてしまいます。 そういう時は自分で数えましょう。相手の手札・戦場・墓地・追放領域にあるカードを数えれば良いのです。ゲーム中盤ならライブラリーを数えるより早く済むので、時間の節約にもなります。頭の片隅においておきましょう。自分のライブラリーを切削する以外にも、《寓話の小道》を積極的に使うことで墓地の土地枚数を増やすことができます。《森の轟き、ルムラ》を出した時に手札に《寓話の小道》が余っていると悲しい気持ちになります。 落魄カウントにもなるので《寓話の小道》はタップインを消化できるタイミングで積極的に切っていきましょう! 紙でプレイする際は《森の轟き、ルムラ》の能力解決後に諜報ランドの誘発が乗ることが多いので、忘れないようにしましょう。 《森の轟き、ルムラ》で出したタップインの《寓話の小道》は自分のアップキープに切ることでスペルを引く可能性を上げてくれるので、こちらもお忘れなく。《第三の道の創設》の第一章で《フェイの開放》としてキャストすることができます。 アグロデッキ相手や《ミストムーアの大主》から出てくるトークンへのブロッカーとしても役に立つことが多いです。 暇なときは積極的に本体を出してライフを守りましょう。除去されて墓地に落ちれば落魄カウントも稼げますからね。 あまりないシチュエーションですが、《忘れられた者たちの嘆き》のバウンス能力で使い回すこともできます。他の切削カードとは違い、3枚の内好きなカードを手札に加えて残りを墓地に落とせるので、土地が欲しい時に特に重宝します。 バウンス能力は対戦相手のパーマネントに限定されていないので、《完成した精神、ジェイス》《錠前破りのいたずら屋》を使い回せます。 例えば対戦相手のライブラリーが27枚のときは追加の《完成した精神、ジェイス》《もがく出現》がなくてもフィニッシュできるようになります。 ちなみに落魄8を達成しているときはすべてのモードを選べますが、その際は上から順番に解決していきます。つまり対戦相手の手札が0枚で場に《黙示録、シェオルドレッド》がいる場合、《黙示録、シェオルドレッド》を戻すとそのままそれをディスカード、その後でライブラリーの上3枚から選ぶ、という手順になります。除去になってちょっとお得。 相手が何を捨てたか見てから山札を見れるのも嬉しいですね。このデッキのブン回りを担保しているカードです。先読みにより実質モードが3つあるカードなので、扱うのが難しいですよね。 私は2ターン目に手札に《第三の道の創設》しかない場合、第一章で出してしまいます。次のターンにスペルを唱え、それを第三章で使い回せば、カード1枚分としての価値が生まれるからです。第二章で出してしまうと3マナない状態で第三章を迎えるため、墓地に落ちた《もがく出現》が使えなくなるのが残念ポイント。 また、第二章の能力でどちらのプレイヤーを対象に取るか、毎回考えたほうが良いです。基本的には自分を対象に取るのですが、十分に墓地がある場合や墓地対策されているとき、またライブラリーアウト勝ちが見えている状況では、相手の墓地を切削します。 第三章は2マナで墓地のスペル1枚にフラッシュバックをつけるようなカード。第二章で切削して《偉大なる統一者、アトラクサ》を落として、第三章で墓地から《もがく出現》を唱えて《偉大なる統一者、アトラクサ》を吊り上げる。美しい動き。 《もがく出現》《第三の道の創設》《完成化した精神、ジェイス》はそれぞれカードタイプが違うので《偉大なる統一者、アトラクサ》で集めやすく、揃えばライブラリーアウト勝ちが現実的になってきます。積極的に狙っていきましょう。 マリガンについて まず墓地を肥やせるカードが必ず初手に必要です。 《第三の道の創設》から《錠前破りのいたずら屋》で《もがく出現》を回収、そして落魄を達成して《偉大なる統一者、アトラクサ》《森の轟き、ルムラ》《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》《ギックスの残虐》を《もがく出現》で墓地から戦場に戻す、これが理想の動きです。 逆に墓地を肥やす算段がつかないままゲームを始めてしまうと、手札に使い道のないカードが溜まっていってしまいます。 《第三の道の創設》《錠前破りのいたずら屋》《忘れられた者たちの嘆き》はもちろん、《完成した精神、ジェイス》《蓄え放題》もキープ基準になります。どれも手札にない場合はまずマリガンですね。 トーナメント結果 予選ウィークエンドDay1 結果は1勝3敗。ゴルガリミッドレンジに勝ち、赤単アグロに2回、アゾリウス眼魔に負け……きっちり相性差が結果に出てしまった形ですね。 サイドボードカードを引かなかったり《完成化した精神、ジェイス》で18枚切削した中に釣り先がないなどの下振れもあったので、この日は私の日ではなかったですね。 チャンピオンズカッププレミアム予選 結果は5勝2敗。成績だけで見ればまずまずですが、実際は早々に2敗してしまっていたので、惜しくもなんともありませんでした。プレミアム予選の初戦で当たったのは、プレミアム予選抜けの常連、Bigsの加茂さん。デッキはイメージと違わずグルールアグロでまんまと0-2してしまいました。細かいミスや不運もあったので当然の結果でした… 次の試合に勝ち、当たったのは元パイオニア神で前回スタンダード神挑戦者決定戦の決勝ラウンドの配信卓でも対戦した松原さん。 お互いにデッキも変わっておらず、相手は5Cレジェンズ。コンボ負けからの下手負けで0-2。自分のライブラリーを削りすぎた結果、《チビボネの加入》などでデッキ枚数が足りなくなってしまいました。デッキの総枚数を増やせば解決する負け方なのですが、ケアもできたので、純粋に下手でしたね。 と振り返ってみるとミスもそれなりにありましたが、収穫もありました。今回のトーナメントでボロスバーンに2勝できたことです。厳しいマッチアップだと思っていたので望外の結果。 とはいえ、その内容まで掘り下げてみると、手放しで喜んで良いかは微妙です。相手にこちらのデッキの勘所がバレていなかったり、運が良かった部分もあるので、再現性がある勝ち方かと言われると疑問符。 それ以外のデッキにはかなり余裕を持って勝てたので、苦手な赤アグロとクロックパーミッション相手をなんとかすれば、まだまだやれそうです。 最後に ということでリアニメイトディガー、初回はスタンダードの《もがく出現》を紹介しました! できるだけ毎週『チャンピオンズカップ』の予選に参加して、そのフィードバックをこの連載で行っていく予定です! 環境がある程度わかったらサイドボードガイドなども追加していきます! 今環境での《もがく出現》の進化をお楽しみに!墓地対策はやめてください! それではまた来週お会いしましょう。

【週刊メタゲーム通信】MTGアリーナの予選を突破したデッキたちをご紹介!

週刊 Standard ピックアップ

2024.11.26

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週の週刊メタゲーム通信は、先週末に行われたMTGアリーナ上の大会、予選ウィークエンドを突破したデッキたちを紹介! グルール果敢 予選ウィークエンド突破 By Seth Manfield ワールドチャンピオンでもあり、2つのプロツアーも制した最強のプロプレイヤーの1人、セス・マンフィールド選手がMTGアリーナの予選を突破!その使用デッキはグルールアグロ。最近では赤いデッキの流行に伴い、グルールは少し減少気味でした。緑を加えることで採用できる《蛇皮のヴェール》などが赤対決ではさほど強くなく、《カープルーザンの森》によるダメージや《銅線の地溝》《不穏な尾根》のタップインが首を絞めてしまう方が多かったからです。しかし、今回予選ウィークエンドを突破したセス・マンフィールド選手と齋藤 慎也選手は共にグルールを使用していました。タッチ緑をすることで最も強くなるのはメインよりむしろサイドボード。《脚当ての陣形》はタッチ緑をする理由になります。 このデッキは《ドロスの魔神》が厳しく、そのために《歪んだ忠義》が採用されていたほどでしたが、《脚当ての陣形》なら後腐れなく除去することができ、《ドロスの魔神》が出てこなければドローでも使用できるため、とにかく腐りづらい便利なカードなのです。 後述しますが《領事の権限》も赤アグロにとっては天敵。白いデッキにはエンチャントが大量に入っており、そこをしっかり狙い打てる《脚当ての陣形》は、最も良いサイドカードなのです。《亭主の才能》も緑を入れる理由になるカード。最初のレベルアップで受けられる護法の恩恵が非常に大きく、相手に除去を構えづらくさせます。ディミーアミッドレンジのような細かいアクションの連続で妨害しながら攻撃してくるような相手にはこの護法が非常に効果的。セス・マンフィールド選手のリストで特徴的なのは、土地の多さでしょうか。通常の赤アグロが土地21枚なのに対し、なんと23枚の土地を採用しています。それも納得で、グルールはマナフラッドにとても強いアグロなのです。《岩面村》は継続的にクリーチャーの打点を上げつつ、トップデッキした《心火の英雄》を速攻にしてくれますし、《不穏な尾根》も起動します。《探索するドルイド》や《熾火心の挑戦者》によるライブラリーの追放も、マナが伸びてこそ活きてくるカードです。そして《多様な鼠》は2ターン目に出して《心火の英雄》を強化して強力なのはもちろん、4ターン目に新生でも出せるカード。この4マナで新生する動きは強力で、それまでの攻防でも除去を使わせ続けるので、1体は生き残ってしまう場合が多いです。そしてそのたった1体で致命的なダメージを叩き出せるのがグルールなのです。意外だったのが《叫ぶ宿敵》が2枚である点。赤いアグロがこれだけいることを考えれば4枚しかありえないと思っていましたが、一方で黒い相手にはただの3/3速攻なのも事実。ディミーアミッドレンジやゴルガリミッドレンジが赤アグロを強く意識していることを考えると、赤アグロ側も意識する必要があるでしょう。《探索するドルイド》が4枚なのも特徴的です。通常10~11枚体制の1マナ域を9枚まで減らして《探索するドルイド》を増やしているのは、アグロ・ミッドレンジ・コントロールすべての相手に対して手札が足りなくなると考えているのでしょう。サイドボードには更に追加の《レンの決意》まで入っています。《稲妻の一撃》が入っておらず、代わりに《抹消する稲妻》がメイン採用なのも黒を意識した結果です。特に狙っている対象は《分派の説教者》。《永劫の無垢》《永劫の好奇心》も処理できるので、この選択には感服。本体に火力を打って勝つのではなく、クリーチャーをしっかり焼いてクリーチャーで押し切るのがグルールアグロ。だからこそ、《稲妻の一撃》ではなく《抹消する稲妻》。「これからの赤アグロの基準がこのリストになるのでは?」と思うほど、完成されたリストに見えます。特に《探索するドルイド》をメインから4枚採用・土地23枚、この2点は革新的で、今後取り入れられることになるでしょう。赤アグロを使う予定の方はぜひこのリストをお試しください! ズアードメイン 予選ウィークエンド突破 By DoomSwitch 《永遠の策謀家、ズアー》の能力で3種の大主を動かす4cズアー。パイオニアでも地域CSトップ8など結果を残しているこのデッキは、実はスタンダードでも組むことができます。ズアードメインにおける《豆の木をのぼれ》は非常に強力!何せ5マナ以上のカードが大主10枚、《太陽降下》、《群れの渡り》、《力線の束縛》で合計18枚ありますからね。普通のデッキでは5マナ以上のカードなど重くてほとんど採用できませんが、大主たちが軽い5マナ以上のカードなので、《豆の木をのぼれ》を誘発させてくれます。兆候で出した《ミストムーアの大主》を《永遠の策謀家、ズアー》で動かして殴るというわかりやすいコンセプトのコントロールデッキですが、《巻物変容》を用いたプチコンボも採用しています。大主に打てば戦場に出た時の能力を再誘発させつつ、兆候が解けた状態でいきなり爆誕。特に《ミストムーアの大主》でやりたいですね。赤アグロに対してもズアードメインはしっかり勝ち筋があります。《永遠の策謀家、ズアー》は絆魂を付与するので、《力線の束縛》や各種大主をクリーチャー化して攻撃し、大量のライフを獲得。《永遠の策謀家、ズアー》は1/4と優れたサイズなので、中々火力では倒しきれないでしょう。 除去もメインから《失せろ》《力線の束縛》の定番2種に加え、《太陽降下》はもちろん、3マナの全体除去である《別行動》も採用。赤単は速攻クリーチャーが多く、すべてのクリーチャーがタップ状態でターンが返ってくることもしばしばあるため、《別行動》が突き刺さります。《叫ぶ宿敵》の返しで打つのが一番ですね。サイドボードにも4枚(!)の《領事の権限》に《エルズペスの強打》と、徹底的に赤を意識。《領事の権限》は《ウラブラスクの溶鉱炉》に最も強いカードであり、速攻クリーチャーすべてに対して耐性もつきます。赤アグロを意識するならばオススメの1枚。4色デッキなのでマナベースに少し不安はあいますが、実はバントに黒をタッチした4色なのがこのデッキ。黒マナは《魂の洞窟》4枚を合わせて7枚+《群れの渡り》+《ホーントウッドの大主》の合計13枚。意外としっかり色マナは確保できています。《力線の束縛》が打ちづらいのはご愛敬。《ゼイゴスのトライオーム》などの3色土地がなき今、1マナで打つのは《ホーントウッドの大主》頼みです。逆に《ホーントウッドの大主》さえ引けていれば《力線の束縛》はモダン級の力を見せてくれます。マナ加速から《偉大なる統一者、アトラクサ》に繋げる従来のドメインとは一味も二味も違ったズアードメイン。赤いデッキをドメインで攻略したいならこの形がベストかもしれません。 ディミーアミッドレンジ 予選ウィークエンド突破 By Beenew 最後にご紹介するのはディミーアミッドレンジ。除去と打ち消しで序盤を凌いでクリーチャーを展開し、《永劫の好奇心》でリソースを確保しながら殴りきる、前環境から強力だったデッキですね。《大洞窟のコウモリ》が入っていない点にはまず驚きましたが、現環境では赤アグロを意識する必要があるため、ほとんどのデッキが軽い除去をたくさん採用しています。その最たる例が《切り崩し》《塔の点火》。これらのカードをテンポよく打たれてしまうと、《大洞窟のコウモリ》はただ相手の手札を見るだけのカードになってしまいます。そんな《大洞窟のコウモリ》の代わりに採用されたのが《フラッドピットの溺れさせ》。《叫ぶ宿敵》を止めて除去したり、2ターン目から相手のクリーチャーに麻痺を置き、攻撃して《悪夢滅ぼし、魁渡》の忍術で手札に戻して後のターンに再利用など、その用途は多数。個人的には《フェアリーの黒幕》よりも《フラッドピットの溺れさせ》の方が強いと思うほどでした。2マナ域で最も優先したいカードは《フラッドピットの溺れさせ》!《悪夢滅ぼし、魁渡》についても改めてご紹介しなければなりませんね。このカードは使えば使うほど強力だと感じました。特に先手で強すぎる!3ターン目に忍術し、相手の盤面が何もなければドローや紋章を得ればいいですし、相手に脅威があればそれを寝かせて麻痺を2つ置くことで実質無効化。起きるまでの間に《悪夢滅ぼし、魁渡》がゲームを終わらせてくれます。最速以外でも《悪夢滅ぼし、魁渡》は強力。4ターン目に《遠眼鏡のセイレーン》を忍術で戻しつつ展開し、余った1マナで再び《遠眼鏡のセイレーン》を唱える動きは攻防一体。麻痺と合わせて《悪夢滅ぼし、魁渡》がほぼ倒されずに戦場に残ります。最初は「忍術しなければ弱い」という認識でしたがそれは誤りでした。《悪夢滅ぼし、魁渡》は忍術せずに4マナで出しても十分強いカード。麻痺カウンターを2つ置く能力が実質除去なので、とりあえず出してマイナスし、次のターンから殴っていけます。盤面が不利な状態以外では、いつ出しても強いカード! 要するに、単純にめちゃくちゃ強いプレインズウォーカーでした。サイドボードの《覆い隠し》は最近ディミーアミッドレンジのミラーで注目されているカード。《永劫の好奇心》に対処できる数少ないカードなだけでなく、《悪夢滅ぼし、魁渡》にも触れるので、今後枚数が増えてくるかもしれません。《悪夢滅ぼし、魁渡》はスタンダードで最高の1枚。それを軽いクリーチャーと軽い除去のバックアップで最も強く使えるディミーアミッドレンジが強いのは当然のこと。今後も赤アグロと共にスタンダードを牽引していくデッキになっていくでしょう。