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【今週のピックアップデッキ】4色ティーチングコントロール/コスモジャンド/白トロン

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.08.22

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ 4色ティーチングコントロール コスモジャンド 白トロン   4色ティーチングコントロール  スタンダードリーグ : 5-0 By Manuel_Danninger MTGアリーナ用インポートデータ 《神秘の指導》というカードをご存じでしょうか? 『時のらせん』で登場した4マナのサーチ呪文で、インスタントか瞬速を持つカードをサーチすることができるカードです。   当時はこの《神秘の指導》を主軸に据えたティーチングコントロールが『時のらせん』限定構築の環境を席巻していました。   《神秘の指導》で除去かカウンターを拾い、それを使いながら、フラッシュバックで《神秘の指導》をサーチ。《神秘の指導》を1枚引くだけでこれを4回行えるので、非常に再現性の高いコントロールデッキでした。 そんな《神秘の指導》は実は『ファウンデーションズ』で再録されており、スタンダードで使用することができます。そう、ティーチングコントロールがスタンダードに帰ってきたのです!   とはいえ、その枚数は控えめで2枚となっています。今のスタンダードには《神秘の指導》を超えるドロースペルがありますからね。   そう、《星間航路の助言》です。2ターン目に除去を探すために打ったり、ゲーム後半ではキッカーで唱えて10枚以上の中から2枚を探すなど、状況に応じて打ち方を変えられる素晴らしい呪文です。 《失せろ》や《稲妻のらせん》など優秀な単体除去や、《喝破》《三歩先》といった強力な打ち消し呪文で低マナ域は構成されており、コントロール好きなら大満足のラインナップです。 ここまでの顔ぶれはジェスカイですが、このデッキは《神秘の指導》のフラッシュバックのために黒を入れています。それなら黒を使わないともったいないですよね。そこで採用されているのが《不可避の敗北》です。 土地以外のパーマネントを追放し、更に3点ドレインのオマケまでついている4マナのインスタント。さすが3色を使う除去なだけあって破格の性能ですが、色が悪くてこれまでは使われることはありませんでした。   3点ゲインはコントロールには非常に嬉しく、プレイし続けるだけで勝手にこちらが有利になるすごい除去です。世が世なら《包囲サイ》クラスの活躍をしていたかもしれません。それぐらいのポテンシャルを秘めています。 当然このカードも《神秘の指導》で探すことができます。 そして《神秘の指導》で引っ張ってこれる必殺技枠は《ジェスカイの啓示》!ジェスカイの根本原理と言われるほど能力を詰め込んだこのカードもインスタント。しかも本体に飛ばすことができるので、たとえ話でもなんでもなく、除去を打ってるだけで勝手に勝ってしまうのがこのデッキなのです。 《稲妻のらせん》含めて除去の多くにはゲインがついており、ビートダウンに対しては高い耐性を持っています。コントロールにも《神秘の指導》のアドバンテージ量で勝つことができ、理論上は最強のデッキかもしれません。 コントロールフリークの皆様はぜひお試しください。     コスモジャンド パイオニアリーグ : 5-0 By xfile MTGアリーナ用インポートデータ ジャンドカラーと言えば、赤緑黒で構成されたミッドレンジ。ミッドレンジとは除去と質の高いクリーチャーで守る中速のデッキで、その中でも手札破壊を使う黒、質の高いクリーチャーの緑、攻めと守りを兼ね備えたアドバンテージ源《血編み髪のエルフ》を使うジャンドカラーがスタンダードでは定番でした。 このミッドレンジ戦略は大流行し、下環境でも猛威を振るいました。軽いカードだけで構成された中速デッキは序盤からアグロには隙がなく、コントロールにも手札破壊とクリーチャーによるビートダウンで勝つことができ、サイドボード後は不要なカードが有効牌に変わることから、不利マッチがとても少ないデッキとなり、モダンでもジャンドは親しまれていました。   モダンでは《稲妻》《思考囲い》《タルモゴイフ》によってジャンドは成立していました。質の高い除去・手札破壊・クリーチャー。ミッドレンジに必要なものはそれだけです。 そしてパイオニアでもミッドレンジは最強であり続けました。ミッドレンジを1枚で体現したカード《鏡割りの寓話》と最強の手札破壊《思考囲い》、そして環境屈指の除去である《致命的な一押し》を使うラクドスミッドレンジです。そんなラクドスに今回久しぶりに緑が加わりました。   その緑のカードとは『久遠の終端』で注目されていた1枚、《コスモゴイフ》!まさかミッドレンジにゴイフが戻ってくる日が来るとは。懐かしさに目頭が熱くなります。 《コスモゴイフ》は《タルモゴイフ》とは真逆で、墓地ではなく追放領域を参照します。自分がオーナーの追放領域にあるカードの数だけパワーとタフネスが上がるゴイフなので、普通に使うだけではただの2マナ0/1です。   しかしご安心してください。このデッキには実にたくさんの追放手段があります。   まずは《墓地の侵入者》。戦場に出た時と殴るたびにどんどん追放領域にカードを溜めていけます。相手の墓地を追放しても無意味なのは少し残念ポイント。 一方《黄金牙、タシグル》は探査を持つ4/5クリーチャー。かつてはミッドレンジの多くに採用されていたカードですが、今回は探査によって追放領域にカードを送り込めることから再注目されました。1マナで出せば5枚を追放できるので、《コスモゴイフ》は一瞬で5/6に膨れ上がります。 そしてなんといっても《悪魔の取り引き》! ライブラリーの上13枚のカードを追放し、その後好きなカードを手札に加えられる。ちょっと変わったサーチ呪文です。先にライブラリーを13枚を追放するので、コンボデッキで使う場合は少しリスクがあるというデザインになっています。   なんとこのカードを打った瞬間に《コスモゴイフ》は13/14と宇宙のようなサイズに!《悪魔の取り引き》でそのまま《コスモゴイフ》をサーチしても良いですし、《コスモゴイフ》が既に殴れているのなら、瞬殺カードを持ってこれます。   それが《ティムールの激闘》。クリーチャーに二段攻撃とトランプルを付与してくれるので、《コスモゴイフ》が突然13/14二段攻撃トランプルとなって相手に襲い掛かるのです! コンボ時以外は腐りがちな《ティムールの激闘》をデッキに入れることができるのは《悪魔の取り引き》のおかげです。強力なサーチ呪文によってこのプランが成立しています。 それ以外のカードはミッドレンジ然とした除去と手札破壊でまとまっており、《コスモゴイフ》も攻防で活躍するクリーチャーなので、《ティムールの激闘》が入っているとはいえ、戦い方はミッドレンジそのものです。   ミッドレンジが好きな方もコンボ好きにもオススメのコスモジャンド、お試しあれ。   白トロン モダンリーグ : 5-0 By kenon 《ウルザの塔》《ウルザの鉱山》《ウルザの魔力炉》。3種の土地を揃えることで7マナ出るぶっとんだ土地。 これらの土地を揃えて大量のマナを出すデッキ、通称ウルザトロン。《森の占術》がスタンダードにやってきた『ミラディン』で一気に人気が爆発し、《歯と爪》を打つ緑トロンから、ドローでトロンを揃えて大量のマナでコントロールする青トロンなど、様々なトロンがスタンダードから下フォーマットまで誕生しました。 モダンでも緑トロンや無色トロンが今も現役で活躍していますが、今回紹介するのはそんなトロン業界に殴り込みにやってきた新たな色。   それが白トロンです!   さあ白いトロン、君は何をやってくれるんだ?早速見てみると、他のトロンにはないメリットがありますね。   そう、単体除去です。青トロンも無色トロンもクリーチャーを除去するのがとにかく苦手で、《コジレックの命令》に頼っていましたが、白トロンなら《孤独》を4枚採用できます。 《冥途灯りの行進》は1~2ターン目から打てる除去で、トロンが苦手とする序盤をしっかりと制してくれます。 全体除去も白ならお手の物。万能除去である《神の怒り》に加えて《空の怒り》も入っています。エネルギーを溜めて《空の怒り》を2マナで打つのが本来の使い方ですが、このデッキでは大量のマナを支払って《空の怒り》を大きく唱えます。たくさんのマナを出せるトロンならではの荒業ですね。 白いトロンはドローが不足してしまいがち。《一つの指輪》を失ってかなり心配ではあるものの、ラインナップを見てみるとそれが杞憂であることがわかります。 《大いなる創造者、カーン》はサイドボードの好きなカードにアクセスできる万能カード。「サイドボードの数だけ忠誠値があるようなもの」と言われていますがまさにその通り。除去から墓地対策、《三なる宝球》などの妨害カードまでなんでも揃っています。 そして《嵐の目、ウギン》もドローできるプレインズウォーカー。除去も兼ねており、このカードの存在は、リソースが枯れやすい白トロンにとっては本当に大きいはず。オルゾフなど一部のデッキには《嵐の目、ウギン》を出しただけでもゲームに勝ててしまうでしょう。 《コジレックの命令》《嵐の目、ウギン》《大いなる創造者、カーン》の無色3種のおかげで、最早どのカラーのトロンもリソースを稼ぐのは簡単になりましたね。黒トロンが出てきたのも納得です。 白トロンは、トロンが苦手な序盤のカードにアプローチしやすいのが優秀で、しっかり弱点を克服しています。新たな色のトロンを組むなら、まず長所と短所を意識したいですね。トロンは揃った時の爆発力も重要ですが、どう揃えるか、揃わなかった時にどうするかが肝心。   もしかしたら悩みどころをすべて解決する赤トロンが現れたりなんてこともあるのかも?

【週刊メタゲーム通信】イゼット大釜が圧勝した週末!後を追うのはディミーアと…ティムール獰猛!?

週刊 Standard ピックアップ

2025.08.12

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   本日のメタゲーム通信はスタンダード!   先週末はスタンダードの競技性の高いイベントがオンライン上で複数行われました!   最新のスタンダード環境をチェックしていきましょう!   紹介デッキ イゼット大釜 ディミーアミッドレンジ ティムール獰猛   大会結果 アリーナチャンピオンシップ 優勝:イゼット大釜2位:イゼット大釜3位:イゼット大釜4位:イゼット大釜5位:イゼット大釜6位:イゼット大釜7位:ティムール獰猛8位:イゼット大釜(3~4位はトップ4、5~8位はトップ8タイ)   ショーケースチャレンジ 優勝:ディミーアミッドレンジ2位:イゼット大釜3位:イゼット大釜4位:イゼット大釜5位:イゼット大釜6位:イゼット大釜7位:イゼット大釜8位:アゾリウスコントロール   ラストチャンス 5-0:イゼット大釜5-0:ディミーアミッドレンジ4-1:イゼット大釜4-1:イゼット大釜4-1:イゼット大釜4-1:イゼット大釜 ……お分かりいただけただろうか。   とんでもないことになってしまいました。ここ最近、薄々気づいてはいたしましたが、スタンダードはイゼット大釜の海となっています。 すべてのトーナメントで上位のほぼすべてを占めており、ここまでの支配率は過去類を見ないのではないでしょうか。   一強環境として引き合いに出される《王冠泥棒、オーコ》擁するシミックフードも、最近禁止になったばかりのイゼット果敢も、このレベルでは勝っていませんでした。   正直言ってイゼット大釜は今のスタンダードで強すぎるデッキです。   イゼット大釜  アリーナチャンピオンシップ : 1位 By Raffaele Mazza MTGアリーナ用インポートデータ 《アガサの魂の大釜》で追放したクリーチャーの起動型能力を、+1/+1カウンターが乗っている自軍クリーチャーたちがすべて得る。様々なコンボデッキに入っていたこの恐ろしい釜に《迷える黒魔道士、ビビ》を煮込むことで大量のマナを出していくのがイゼット大釜。 +1/+1カウンターが乗っていればどのクリーチャーでも《アガサの魂の大釜》の恩恵を受けられるのがミソで、《略奪するアオザメ》はカードを捨てればカウンターが乗り、《プロフトの映像記憶》を使えば任意のクリーチャーに+1カウンターを置けるので、それらのクリーチャーも《アガサの魂の大釜》で《迷える黒魔道士、ビビ》の能力を獲得します。   《迷える黒魔道士、ビビ》の能力を得たら大量のマナが出るので、《冬夜の物語》を手札から打ったる墓地から調和したりして大量にカードを引きます。1回手札と墓地から打つだけで6ドローするので《プロフトの映像記憶》でカウンターを6個乗せることができ、そのクリーチャーもまたビビになるので大量のマナを生み出します。そこから更なる展開ができてしまうのです。 このデッキは《アガサの魂の大釜》+《迷える黒魔道士、ビビ》のコンボ一辺倒のデッキではありません。むしろこのプランはサブと言っても過言ではなく、メインの戦い方は《プロフトの映像記憶》です。 《プロフトの映像記憶》はデッキのほとんどのカードと噛み合います。《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》《蒸気核の学者》《冬夜の物語》とドロー手段が大量にあるので、どのクリーチャーもすぐにとんでもないサイズとなり、マスト除去となります。 こちらはドローを進めながら相手には除去を打たせる。こうして有利な交換を繰り返していき、最終的には《アガサの魂の大釜》コンボが決まったり、クリーチャーを相手が打ち漏らしてそのまま巨大サイズで圧し潰します。 《逸失への恐怖》と《プロフトの映像記憶》の相性は特筆すべき点。ディスカードで任意のカードを墓地に送れるので《逸失への恐怖》の昂揚は難しくありません。そして昂揚した《逸失への恐怖》は追加の戦闘フェイズを発生させるので、《プロフトの映像記憶》でカウンターが2回乗るのです。 《逸失への恐怖》がアクティブになってターンが帰ってきただけで突然20点を出せる可能性のある恐ろしいデッキです。   前述のように《アガサの魂の大釜》《迷える黒魔道士、ビビ》のコンボを擁しながらもそこに依存しているわけではないので、思っているよりも墓地対策に強く、なんならその対策カードを置いている間に《プロフトの映像記憶》《光砕く者、テルサ》のビートが決まり、あっという間にゲームが終わります。   このようにイゼット大釜はメタりづらく、また大量のドローを重ねるデッキなので、様々なプランを展開できます。除去を大量に入れてミッドレンジのように立ち振る舞えますし、墓地対策を置かれたら《アガサの魂の大釜》を捨ててカードを引いたりと、ゲーム中も器用に立ち回ります。 これがイゼット大釜がこれほどまでに勝っている理由です。高速でコンボを決める展開もじわじわ勝つこともでき、正直かなり隙のないデッキです。   今週末の禁止改訂でメスが入るのではないかと言われていますが、この支配率を見る限り、もしかするともしかするかもしれません。   特に今月末はオーランドでスポットライトシリーズも行われますし、そのことも考えると、スタンダードに環境変化をもたらすことはありえるでしょう。     ディミーアミッドレンジ ラストチャンス : 5-0 By Mogged MTGアリーナ用インポートデータ そんなイゼット大釜天国のスタンダードで密かに勝っているのがディミーアミッドレンジです。 今更紹介するまでもないこのデッキ。《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》の二大巨頭でカードを引いて殴り、除去する。非常にシンプルながら強力なデッキ。ガチャガチャするイゼット大釜とは対極のデッキですね。 軽除去と火力で処理しづらい《分派の説教者》、そしてある程度の速いクロックが揃っているのがディミーアミッドレンジなので、比較的イゼット大釜には強いデッキです。《悲劇の軌跡》という軽い確定除去を手に入れたのはかなり大きいですね。 《切り崩し》がスタンダード落ちする時は大丈夫なのか心配になりましたが、まさかの1マナ除去が強化されるパターン。他のカードを除去した際にもヴォイドは誘発するので、同時に2体のクリーチャーを除去する際に《悲劇の軌跡》は便利です。 ディミーアミッドレンジは当然ながらイゼット大釜を強く意識しています。メインから《戦略的裏切り》を採用しているところからもそれはお判りでしょう。クリーチャーを除去しつつ墓地をすべて追放するこのカードで《冬夜の物語》や《迷える黒魔道士、ビビ》を追放し、イゼット大釜のコンボ成立を妨害します。 メインから採用されている《ティシャーナの潮縛り》は、イゼット大釜の《光砕く者、テルサ》の誘発を消したり、《アガサの魂の大釜》を止めるなど役割が多いカード。アグロ以外の相手には大体強いので、最近はメインに入っていることが多いですね。 ディミーアミラーが減ったことで《永劫の好奇心》の枚数は減っています。イゼット大釜だけを意識するなら《永劫の好奇心》は3枚で良いということなのでしょう。最近では3枚のリストが定番となっていますね。 1マナ域の《暗黒騎士、セシル》もほぼ定着しました。相手の《略奪するアオザメ》《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》の並びに対して《暗黒騎士、セシル》はブロッカーとして強力です。《プロフトの映像記憶》でどれだけサイズが上がっても確実に交換が取れるので、1マナの接死は強力ですね。《分派の説教者》も攻め・守りで便利なカードですが、3マナというわけで枚数は調整されています。 かつての王者デッキが再び玉座に帰還しようとしています。ディミーアミッドレンジはイゼット大釜に強いとされているデッキで、実際に結果を残しているので、今後はディミーアの入賞数が増えてくるのではないでしょうか。   ティムール獰猛 スタンダードチャレンジ : 1位 By sokos13 MTGアリーナ用インポートデータ 近頃姿を現し始め、アリーナチャンピオンシップで多くのプレイヤーがその強さに驚いたデッキ、ティムール獰猛。残念ながらトップ8でイゼット大釜に敗れてしまいましたが、イゼット大釜の海を泳ぎ切った素晴らしいデッキです。   獰猛というのはキーワード能力。パワーが4以上のクリーチャーをコントロールすることが条件で、獰猛によって様々な恩恵が得られます。《頑固な否認》が一番有名でしょうか。 獰猛は現スタンダードにはキーワード能力としてはないものの、パワーが4以上のクリーチャーを参照する能力は獰猛と呼ばれることが多く、それがデッキの由来となっています。このデッキはパワーが4以上のクリーチャーによって構成されているのです。   その最たる理由が《ティムールの戦告者》です。自分のターンに、自分が唱える呪文が、パワー4以上のクリーチャー1体につき1少なくなります。自身を含めるのでとりあえず1マナ軽くなり、横にもう1体のパワー4がいれば2マナ軽くなり、展開力が一気に上がります。 軽くなったパワー4を出せば次のクリーチャーが更に軽くなるので、チェインコンボのように次々とカードが繋がっていきます。   それを可能にしているのが《荒野無頼団の先駆者》。自身はパワー4、かつ戦場に出た時にマナを出し、更にパワーが4以上のクリーチャーが戦場に出ると1ドロー。このデッキの心臓部分といっていいカード。 シングルシンボルなので《ティムールの戦告者》の恩恵を受けやすく、1マナで出てきて1マナを生み出すので実質フリースペル。更に後続のパワー4のクリーチャーで1ドロー。クリーチャーを次々と出しては引きを繰り返せます。   この《荒野無頼団の先駆者》と噛み合うのが《うろつく玉座》です。選んだクリーチャータイプの誘発型能力が2倍になるので、人間かドルイドを指定することで《荒野無頼団の先駆者》が2倍に。マナは倍出ますし、パワー4のクリーチャーが出ると2ドローです。 そして何といっても《うろつく玉座》は無色4マナのカード。《ティムールの戦告者》で0マナで出すことができます。パワー4以上のクリーチャーが4体出たらフリースペルですし、2枚目3枚目と引くと《荒野無頼団の先駆者》によるドローがどんどん増えます。 《荒野無頼団の先駆者》《うろつく玉座》で大量に場にパワー4を並べると、呪文が凄まじい勢いで軽減され、ほとんどのカードが色マナシンボルだけを支払うで済むようになります。   その状態で唱えるのが《絶望的猛攻》。ダブルXの呪文で、アーティファクトやクリーチャーをX体生成できます。これも《ティムールの戦告者》で軽くなるので、パワー4のクリーチャーが4体いれば1マナでX=2。2体のコピーを生成できます。《荒野無頼団の先駆者》をコピーすればマナが出て、《うろつく玉座》でマナとドローが倍になり、更に次の《絶望的猛攻》のコストが軽くなるので、今度はもっと巨大なXで《絶望的猛攻》を唱えられるように。 最終的には全展開したクリーチャーを、《百発百中のカクタスフォーク》で速攻トランプルを付与して殴り切ります。クリーチャー主体のデッキながらチェインコンボとなっており、一度回り出したら止まりません。《アガサの魂の大釜》がどんな場でターンを返してこようと、場が完成していれば一撃で相手を粉砕する破壊力を持っています。 《運命の大嵐、ドラゴンホーク》も面白いクリーチャー。パワー4のクリーチャー分だけライブラリーを追放して使用できるので、出した瞬間に大量のドローが確定しますし、10枚以上追放すればターン終了時に本体に投げつけてそれだけで勝利です。 干渉手段としても使える《跳ね弾き》ですが、主にコンボ用です。戻す対象はもちろん自分の《荒野無頼団の先駆者》。1マナで手札に戻して1マナで出し直すだけで、《うろつく玉座》の分《荒野無頼団の先駆者》で出すマナが増え、チェインが継続します。 《反因果の残留》はさほど能力がデッキと噛み合っているわけではありませんが、無色かつ7/5というサイズ……というかパワー4以上であるのが強力な点です。こちらも《ティムールの戦告者》で0マナになるので、《荒野無頼団の先駆者》でドローするだけのカードとして使えます。 デッキが回り出すと更地の状態からでもゲームが一瞬で終わるほどです。《荒野無頼団の先駆者》が計画されていて、《ティムールの戦告者》が生き残ってターンが帰ってくればほとんど勝ちですし、もう少しマナに余裕があれば更地からでも決まってしまうほど。 イゼット大釜にも高いパフォーマンスを出していますし、今実は大注目のデッキです。   個人的には、ティムール獰猛が流行り、ディミーアミッドレンジが更にイゼット大釜を意識し、イゼット大釜がミラーを見据えた構築をしなければならないという、この新たなスタンダードの状況を見守りたいところです。 果たして今週末の禁止改訂でスタンダードにメスが入るのか?注目ですね。

【今週のピックアップデッキ】4色弾薬/エスパースピリット/ナヤスケープシフト

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.08.08

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ 4色弾薬 エスパースピリット ナヤスケープシフト   4色弾薬  スタンダードチャレンジ : 2位 By CuteChandra19 MTGアリーナ用インポートデータ 早速パイオニアでも活躍している《武器製造》がついにスタンダードで暴れ始めました。 トークンでないアーティファクトが戦場に出るたびに弾薬を生成する2マナのエンチャント、《武器製造》。これが主役となるのが4色弾薬です。   弾薬はアーティファクト・トークンで、戦場から離れた時に好きな対象に2点のダメージを与えてくれます。墓地に置かれた時ではないので、たとえば《ピナクルの星檻》などで追放されても2点のダメージを飛ばすことができます。 この弾薬を効率的に生成しつつ、有効活用できるのが《再利用隔室》。アーティファクトを生け贄にし、それよりマナ総量が1大きいアーティファクトをデッキからサーチできます。弾薬を生け贄に捧げれば1マナのカードを探せるので、ダメージを飛ばしつつ、万能除去の《薄暮薔薇の聖遺》や、墓地対策の《除霊用掃除機》、そしてリソースを獲得できる《機械仕掛けの打楽器奏者》と、状況に応じて様々なカードにアクセスします。そしてこれらのカードが出ると、また弾薬が生成されます。 《機械仕掛けの打楽器奏者》は次のターンに《再利用隔室》で生け贄にすれば、ライブラリートップをプレイできつつ、2マナのカードにアクセスできる便利なカード。そしてこの2マナも粒ぞろいです。 アーティファクトを生け贄に成長する《煌く機械ドレイク》は、弾薬トークンなどを生け贄にして戦うこのデッキと相性抜群。自身が大きくなりながら2点を飛ばすので、思わぬ打点を叩き出してゲームを終わらせてくれます。 そして第二の弾薬の使い道である《軍団の成形機械》も2マナのアーティファクト。戦場に出た時に2点を飛ばすアーティファクトで、他のアーティファクトを生け贄にすると3/3のゴーレムを生成します。弾薬を生け贄にしてゴーレム生成と、弾薬を美味しく使えるのです。 『久遠の終端』から加わった注目のコモン、《氷魔法の秘宝》はこのデッキと相性抜群です。《再利用隔室》から出して1枚引きつつ、《再利用隔室》で生け贄にしてもう1枚ドローと、1枚で2度美味しいカード。これまでは1点喰らいながら1ドローしていましたからね。 面白いのは唯一の4マナ域であるアーティファクト、《魔列車》の採用です。このカードが入ったことで一気にこのデッキは引き締まりました。弾薬を能動的に生け贄にできつつ、高いクロックを持つ《魔列車》は、《再利用隔室》から最終的にサーチするカード。スタートが4/4トランプルなので、複数枚の弾薬がある状態で《魔列車》が攻撃すればあっという間にゲームが終わります。 たとえば弾薬が4つある状態なら8/8の《魔列車》に弾薬4つで8点。これだけで16点が確定します。更に他にも使っていないアーティファクトがあるはずなので、それらも生け贄に捧げれば、優に20点を超えるのです。   《武器製造》に《軍団の成形機械》、そして《再利用隔室》からの除去サーチなど、このデッキは自分の動きをして場をウィンコンディションに持っていく過程で相手にしっかり干渉していきます。そのため、アグロに対してある程度耐性があり、かつミッドレンジにも《再利用隔室》のバリューで勝利することができます。 回していてとても面白いデッキなので、ガチャガチャとデッキを回すのが好きな方はぜひお試しください!     エスパースピリット パイオニアリーグ : 5-0 By ViniBuzo MTGアリーナ用インポートデータ 主戦場はパイオニアとなっている種族、スピリット。メインカラーの青白2色で組まれることもあれば、展開力を《集合した中隊》で補うバント型など、3色にもなることのあるスピリットですが、今回ご紹介するのはそんな3色の中でも黒を足したもの。 そう、エスパースピリットです。   とはいってもベースはこれまでのスピリットと変わりません。《霊廟の放浪者》から始まり、名誉スピリット(?)の《マネドリ》、2マナ域には除去を避ける《鎖鳴らし》とロードである《至高の幻影》。3マナは呪文を追放しつつクロックを刻む《呪文捕らえ》。パイオニアの戦場を生き残った優秀なスピリットたちです。(スピリットが生命を持っているかはさておき) そこに加わった黒要素は《策謀の予見者、ラフィーン》!エスパーパルへリオンからミッドレンジなど幅広く使われていた名カードがスピリットに加わりました。 これまでのスピリットでは《執着的探訪》などリソースを取るオーラが採用されていたことがありますが、単体除去に弱すぎました。しかし、《策謀の予見者、ラフィーン》なら話は別です。引きすぎた土地や不要牌を捨ててスピリットを強化する動きは強烈です。 自身に護法がついているのも実にいやらしいですね。除去に多くマナを使わせることで2アクション、つまり除去の二段構えを封じれば、《呪文捕らえ》が突き刺さってくれます。それらの上から《策謀の予見者、ラフィーン》を除去しようとすれば更に1マナがかかるので、対処は困難です。 そしてもう1つの黒いカードが《悪夢滅ぼし、魁渡》です。 そう、実は《悪夢滅ぼし、魁渡》はスピリット…ではありません。忍者です。ですがスピリットと《悪夢滅ぼし、魁渡》の相性は悪くありません。   忍術はクリーチャーがブロックされなかった時に起動できる能力なので、飛行クリーチャーであるスピリットは忍術しやすく、1マナクリーチャーたちは再キャストが容易です。《マネドリ》は《悪夢滅ぼし、魁渡》の忍術で手札に戻して別のクリーチャーのコピーになれるのも強力ですね。 そして《鎖鳴らし》は再利用すれば相手にプレッシャーを与えられますし、場合によっては《呪文捕らえ》を拾うパターンもあります。   《策謀の予見者、ラフィーン》と《悪夢滅ぼし、魁渡》はいずれもドロー能力を持っているのがスピリットとしては実に嬉しいですね。打ち消しや追加のクロックなど、今必要なものを求めにいけるようになりました。   最近では《放浪皇》を入れるなどミッドレンジ風に進化してきたスピリットですが、ここに来てエスパー型が登場したのは面白いですね。 パイオニアの古株でありながら、スピリットはまだ進化を続けているのでした。   ナヤスケープシフト モダンゴールドリーグ : 5-0 By Meltiin 土地を生け贄に捧げてその枚数だけ好きな土地をデッキから場に出す。エクステンデッドの頃から様々なコンボデッキで使われてきた《風景の変容》。 6枚の《山》と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》をサーチすることで《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が6回誘発し、18点ダメージを叩き出す。そのため《風景の変容》は1枚で勝てるコンボカードであり、エクステンデッドやモダンでは《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》とずっと一緒に使われていました。 それから時が経ち、土地を7枚並べるという行為がモダンでは遅すぎるがゆえに《風景の変容》は《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》と別れ、《精力の護符》と出会いました。《精力の護符》と《風景の変容》は4枚の土地で勝利できるので、それも当然のこと。《風景の変容》はアミュレットに組み込まれ、今猛威を振るっています。 そんな《風景の変容》が再び《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》とタッグを組むことになりました。 デッキ自体は古き良きスケープシフトです。6枚の《山》と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を《風景の変容》でサーチして勝つためには、7枚の土地がまず必要です。普通に土地を置いていくとこのコンボを決めるためには7ターンかかってしまうので、それを大幅に短縮するために、大量の土地サーチが入っています。   《カルニの心臓の探検》は3個のカウンターが乗っていると土地を2枚戦場に出せるエンチャント。上陸でカウンターが乗っていくので、フェッチランドを使えばすぐに土地サーチに移れます。 《風景の変容》は7枚の土地が必要ですが、使うマナは4マナで良いのがミソ。つまり4マナある状態で《カルニの心臓の探検》を起動して2枚の土地をタップインし、何らかの手段でもう1枚土地を置けば、その時点でコンボが決まるのです。7マナではなく7枚の土地があれば良いので、想像よりもコンボターンは早め。   《イリーシア木立のドライアド》はこのデッキのためのカードです。追加のセットランドに加えて、土地がすべて《山》になるので、フェッチランドも《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》もすべて《山》になります。これが何を意味するかというと、《イリーシア木立のドライアド》下では《風景の変容》によって即死させるために必要な土地の枚数が1枚減るのです。 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の誘発条件は《山》6枚。《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》自身が《山》なら5枚の土地と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》で18点が叩き出せます。 更に《風景の変容》を引いていない時でも、《イリーシア木立のドライアド》があり、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を素引きしていれば、それだけで勝てます。2枚の《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》がある状態でフェッチランドを置けば6点、サーチして土地を出して6点。追加セットランドでもう1回フェッチランドを置けば更に12点ですからね。 この《イリーシア木立のドライアド》をサーチできる《緑の太陽の頂点》は大きく、《ドライアドの東屋》をサーチしても良し、《エルフの開墾者》を持ってきて《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を先に置いて《イリーシア木立のドライアド》からの即死の準備もできます。 《風景の変容》自体はメインに3枚しか入っていませんが、それは《願い》が採用されているためです。これにより実質このデッキは《風景の変容》6枚体制となっており、かなり安定して《風景の変容》をキャストすることができます。 更にこの布陣に『久遠の終端』から加わったのが《氷耕しの探検家》。 追加セットランド権と墓地から土地を置ける《世界のるつぼ》能力を内蔵したこのクリーチャー。スケープシフトが考える最強のカードのようなものが本当に登場したのです。追加セットランドの権利がいくつあっても、手札に土地がなければ置くことはできません。それが《イリーシア木立のドライアド》が抱える弱点でしたが、《氷耕しの探検家》ならフェッチランドが1枚墓地に落ちているだけで、土地を置き続けることができます。 この《氷耕しの探検家》も《緑の太陽の頂点》でサーチできますし、このデッキはドロースペルこそ入っていませんが、かなり安定した動きが可能です。   《白蘭の幻影》のような土地破壊は効かないので、効果的なのは《血染めの月》《海の先駆け》だけ。しかし、土地をサーチするデッキなので色マナを確保しやすく、それらの月カードを対処するのも難しくありません。 モダンで《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が再び噴火する時が来ました!

【週刊メタゲーム通信】イゼット大釜とディミーアミッドレンジが絶好調!忍び寄るのは《ウロボロイド》!?

週刊 Standard ピックアップ

2025.08.06

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   本日のメタゲーム通信はスタンダード!   『久遠の終端』の加入、そしてローテーションから少し経ち、そろそろ強いデッキが明確になった頃。混沌とした環境初期を経て頭角を現しているデッキたちをご紹介しましょう!   紹介デッキ イゼット大釜 シミックウロボロイド ディミーアミッドレンジ   イゼット大釜  スタンダードチャレンジ : 1位 By Ale_Mtg MTGアリーナ用インポートデータ まずは今スタンダードで最も勝っているデッキ、イゼット大釜。 直近のマジックオンラインのイベントではトップ8に複数入賞は当たり前で、チャンピオンズカップファイナルスペシャル予選でも多くのプレイヤーが突破しているデッキです。   前環境でも一線級だったイゼット大釜は『久遠の終端』でのアップデートこそほとんどないものの、逆にローテーションによって失ったカードが《シヴの浅瀬》だけだったため、ダメージは小さく、他のデッキを圧倒的なパワーでなぎ倒しています。 デッキの勝ち手段は主に2つ。デッキ名にもなっている《アガサの魂の大釜》と《プロフトの映像記憶》です。 《アガサの魂の大釜》で煮込むクリーチャーは《迷える黒魔道士、ビビ》。スペルを唱えて大きくなり、たくさんのマナを出す《迷える黒魔道士、ビビ》ですが、《アガサの魂の大釜》で追放すると、+1/+1カウンターが乗っているクリーチャーたちから大量のマナが出せるようになります。 《略奪するアオザメ》は勝手に成長していくので《アガサの魂の大釜》で乗せなくとも《迷える黒魔道士、ビビ》を追放した瞬間にマナクリーチャーとして運用できるので相性抜群です。 他のクリーチャーは能動的にカウンターは乗りませんが、《プロフトの映像記憶》によってカウンターが乗っていきます。 《アガサの魂の大釜》によって全クリーチャーが《迷える黒魔道士、ビビ》になると、《冬夜の物語》を手札からプレイして墓地から調和で打つなど、デッキが凄まじい勢いで回り始めます。後から出した《略奪するアオザメ》もすぐにルーターでカウンターが乗り、サイズが上がれば《迷える黒魔道士、ビビ》としてマナが出せるので、1ターンでライブラリーを大量に掘りながら全展開していき、最終的には《竜航技師》を出してすべてのクリーチャーに速攻を付けて殴り勝ちます。 このデッキの《プロフトの映像記憶》は強力なエンチャントです。《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》《冬夜の物語》と大量にドローが採用されているので、毎ターンたくさんのカウンターを乗せて攻撃できます。 《アガサの魂の大釜》によるコンボを墓地対策などで封じられてもあまり効果がないのはこの《プロフトの映像記憶》のおかげで、メインプランである《アガサの魂の大釜》コンボに大きく貢献しつつ、サブプランの《プロフトの映像記憶》ビートダウンも完遂してくれるのです。 このデッキはイゼット大釜ではなくイゼットプロフトと言っても過言ではありません。   《逸失への恐怖》は《プロフトの映像記憶》とコンボになります。昂揚によって追加の戦闘フェイズが発生するので、《プロフトの映像記憶》が1ターンに2回誘発するのです。 他のデッキでは昂揚は切削などで達成するため運要素が大きいですが、イゼット大釜はルーター能力で墓地にカードを落としていくので、ある程度昂揚を意識することができ、思ったより早く昂揚を達成します。そのため《逸失への恐怖》は2マナ2/3で手札を整えるだけでなく、相手にとってかなりプレッシャーのあるカードなのです。   《ヴォルダーレンの興奮探し》のローテ落ちによってデッキが回り始めた後の即死プランは《竜航技師》による速攻付与からの攻撃と、少し弱体化してしまいましたが、大抵の相手には全展開するだけで勝てますし、デッキはほとんど弱体化していません。むしろ、『久遠の終端』によって強化されたかもしれません。 一部のプレイヤーはこのイゼット大釜に《量子の謎かけ屋》を採用しているからです。 イゼット大釜はリソース獲得手段があまりなく、《冬夜の物語》で少しずつ手札を増やしていくしかありませんが、《量子の謎かけ屋》が加わることでリソースが稼ぎやすくなります。しかも《量子の謎かけ屋》はワープで唱えて《冬夜の物語》の調和コストにできるなど、相性抜群。 今後このチューンが流行るかにも注目ですね。     シミックウロボロイド スタンダードチャレンジ : 2位 By djbmppwns MTGアリーナ用インポートデータ 《量子の謎かけ屋》や《コスモグランドの頂点》など『久遠の終端』の神話レアが続々活躍している中、最近密かに注目されている神話レアがいます。 それが《ウロボロイド》です。 戦闘開始時に《ウロボロイド》のパワーに等しい+1/+1カウンターを自軍クリーチャーにばらまくこのワーム。自身にもカウンターが乗るため、毎ターン付与する+1/+1カウンターが増えていくというわけです。   この《ウロボロイド》でクリーチャーを全体強化しながら戦うのがこのデッキ。《ウロボロイド》を活かすために様々な工夫が凝らされています。   《ウロボロイド》は自身のパワー分のカウンターを乗せるので、何かしらの手段で《ウロボロイド》を強化することで、付与するカウンターが一気に増えます。   その手段の1つが《棘を播く者、逆棘のビル》。上陸で《ウロボロイド》にカウンターを置き、《ウロボロイド》がそれを全体にばらまいていくので、一気に盤面が強化されます。 そして『久遠の終端』で登場した《遺伝子変異の成虫》も《ウロボロイド》と相性抜群。上陸で《ウロボロイド》のサイズを3/3にすればカウンター3つをばらまきますし、土地が6つ以上なら《ウロボロイド》が6/6になるので、いきなり全体が+6/+6されるのです。 このように上陸カードを多数採用していることから、《地底のスクーナー船》《名もなき都市の歩哨》《遠眼鏡のセイレーン》で得られる地図の価値は高めです。地図で土地を獲得していくことで、毎ターンしっかり上陸を誘発させられます。逆に言えば、地図を他のデッキよりも上手く使えるということです。 マナ加速の《ラノワールのエルフ》に《遠眼鏡のセイレーン》と貧弱なスタッツのクリーチャーは入っていますが、それらのクリーチャーが《ウロボロイド》で暴力的なサイズになるので、このデッキでは序盤のクリーチャーがそのままフィニッシャーに化けてくれます。《ラノワールのエルフ》が後半でも価値があるのは嬉しいですね。 《ラノワールのエルフ》から《ウロボロイド》による攻撃的な面もあれば、《フラッドピットの溺れさせ》《名もなき都市の歩哨》で守り、更に干渉手段も《洪水の大口へ》《薮打ち》としっかり用意されており、攻守のバランスに優れた良いデッキです。 チャレンジでは最近入賞数が増えており、《ウロボロイド》への注目は高まっています。このデッキを組みたいなら早めに《ウロボロイド》は揃えておいた方が良いかもしれませんね!   ディミーアミッドレンジ スタンダードチャレンジ : 1位 By sokos13 MTGアリーナ用インポートデータ さて、最後に紹介するのは『久遠の終端』とローテーション落ちもどこ吹く風。皆さんすっかりお馴染みのディミーアミッドレンジです。 『ダスクモーン:戦慄の館』で《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》の2種を手に入れて完成されたこのデッキは、その後ささやかなアップデートを繰り返しながら、メタゲームの上位に常に鎮座しています。 相手の盤面を除去や打ち消しでいなすコントロール要素を持ちつつ、クリーチャーで速やかに殴る。それこそがミッドレンジですが、《永劫の好奇心》と《悪夢滅ぼし、魁渡》はまさにそのミッドレンジを体現した2枚です。   いずれのカードも攻撃とリソース確保が一つになっているので、攻撃して引いたカードで相手の妨害を繰り返すだけでゲームに勝つことができます。この2枚が存在する限り、ディミーアミッドレンジは不滅と言っても過言ではありません。   その除去がほぼ効かない《コーリ鋼の短刀》が環境に存在していた時は元気がなかったデッキですが、今やこのディミーアミッドレンジのゲームプランを1枚で覆すカードは存在しません。それならこのディミーアミッドレンジが消える理由はないのです。 そんないつまでも変わらない味を提供してくれる老舗のラーメン屋の雰囲気すらあるディミーアミッドレンジですが、メタゲームに合わせてクリーチャーや除去の選択が変わります。今は2マナ域を《フラッドピットの溺れさせ》《大洞窟のコウモリ》にした、最も基本的なリストが流行です。 赤いデッキ全盛期の時はすべてのデッキに1マナ除去が入っていたレベルだったので、《大洞窟のコウモリ》はただ2マナで相手の手札を見るだけのカードでした。そのため、2マナ域を他のカードに譲っていたのですが、現環境ではまたこの《大洞窟のコウモリ》になっています。 ディミーアミッドレンジがローテーションで失ったのは《切り崩し》《喉首狙い》といずれも除去。1マナ除去として採用されているのは《悲劇の軌跡》です。《遠眼鏡のセイレーン》で出した地図を生け贄にしたり、《悪夢滅ぼし、魁渡》で忍術など、ヴォイドを引き起こす手段はそれなりにあるので、1マナの万能除去になりやすいですね。他の除去を使えばヴォイド状態にできますし、《悲劇の軌跡》は非常に使いやすいカードです。《切り崩し》より強いかもしれませんね。 《喉首狙い》は《保安官を撃て》になりましたが、こちらも影響はさほどありません。無法者を倒せない除去ですが、《迷える黒魔道士、ビビ》や《分派の説教者》など、マスト除去の3マナ域にはしっかり当たります。ミラーマッチの《遠眼鏡のセイレーン》やイゼット大釜の《略奪するアオザメ》が倒せなくて困ることはありそうですが、それぐらいです。 ディミーアミッドレンジが環境からいなくなることは中々想像できません。エンチャントに触れないという弱点があるため、《陰湿な根》のように、地上ダメージが通りづらくてかつエンチャントを活用してくるデッキが台頭すると厳しいですが、今のところはその気配はありません。 スタンダードの大会に出るならディミーアミッドレンジとイゼット大釜)に当たることは想定しなければなりません。勝ちたいならこの2つのデッキとみっちり練習しましょう!

【今週のピックアップデッキ】イゼットアーティファクトラクドスサクリファイス/親和

週刊 ピックアップ

2025.08.01

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ イゼットアーティファクト ラクドスサクリファイス 親和   イゼットアーティファクト  スタンダードリーグ : 5-0 By Deathnote1999 MTGアリーナ用インポートデータ スタンダードでたびたび話題になるカードと言えば《身代わり合成機》。マナ総量が3以上のアーティファクトが戦場に出るたびに構築物トークンを生み出すという派手なテキストは、スタンダードらしからぬ性能。 《身代わり合成機》の弱点は設置したターンがパスとなってしまうこと。現代のスタンダードにおいて序盤で何もせずフルタップする瞬間を作るのは死に等しく、それゆえに中々活躍できないのが実状でした。   その弱点を克服したのが《団結の最前線》でした。同時に2枚のカードを戦場に出せるので、《身代わり合成機》を出しつつ《危険な罠》で妨害+トークン生成と、《身代わり合成機》の隙を埋めることができるのです。 そんな《身代わり合成機》がまた新たな形でスタンダードに登場しました。   今回のデッキは青赤。なので当然《団結の最前線》を入れることはできませ。それならどうやって《身代わり合成機》を出したターンの隙を埋めるのか?   まずは《ピナクルの特使》。下環境で《オパールのモックス》と共に大暴れするのでは?と言われていたこのカードがなんとスタンダードでも躍動しています。 アーティファクト呪文を唱えるたびに1/1の飛行トークンを生み出す、《練達飛行機械職人、サイ》を彷彿とさせる能力を持つこのカード。《練達飛行機械職人、サイ》はレガシーでも採用されていたほどのカードですが、更に《ピナクルの特使》にはワープ能力がついています。しかもたった1マナ。とりあえず1マナで出しておき、トークンをばらまきつつ、再び唱え直せるのです。 このワープ能力と相性抜群なのが《身代わり合成機》。誘発条件はマナ総量3以上なので、《ピナクルの特使》を1マナでワープしても誘発してくれます。そのため3ターン目に《身代わり合成機》設置、4ターン目に《ピナクルの特使》ワープ+3マナのアーティファクトと動くと、その瞬間にトークン2体+1/1ドローンの場になるのです。他にアーティファクトが何もなくとも4/4×2と1/1飛行の恐ろしい場が完成します。 《身代わり合成機》のトークンのサイズを上げることにも《ピナクルの特使》は貢献しますが、それだけではありません。   アーティファクトの親和を持つ《記録の守護者》もドローントークンを並べることで1マナになり、1マナで《身代わり合成機》を誘発させることができます。 新カードの《大戦用ガンシップ》はアーティファクト分のダメージを与えるカードなので、アーティファクトの数はとても重要。《身代わり合成機》に依存することなくアーティファクトを増やせるため、アーティファクトの数を参照するカードを大量に入れられるようになっているのです。 『久遠の終端』で登場した《氷魔法の秘宝》は非常に便利な潤滑油。この便利な生け贄用のアーティファクトを手に入れたことで《再利用隔室》を4枚採用できるようになりました。そして《再利用隔室》を3ターン目に置いて即起動するために《奇怪な宝石》まで採用されており、徹底的に《身代わり合成機》の隙を埋めようとしています。 除去枠も《チェーンソー》《軍団の成形機械》《大戦用ガンシップ》《爆弾車》とすべてアーティファクトに統一されており、《ピナクルの特使》はもちろん、後半の2枚は《身代わり合成機》も誘発させてくれて、デッキ全体が強力なアーティファクトシナジーで構成されています。 《身代わり合成機》を使い方はぜひこのイゼットアーティファクトをお試しあれ。     ラクドスサクリファイス パイオニアリーグ : 5-0 By Cdnewlon MTGアリーナ用インポートデータ パイオニアのサクリファイスデッキといえば《大釜の使い魔》《魔女のかまど》《波乱の悪魔》を採用したリストが定番で、最近では《清掃人の才能》《全てを喰らうもの、イグラ》で無限コンボが入っているのが主流です。 が、今回紹介するサクリファイスはそれとはまったく別軸のデッキです。   このデッキの主役となるのは《武器製造》。トークンでないアーティファクトが戦場に出るたびに《弾薬》トークンを生み出します。弾薬は戦場を離れると2点のダメージを好きな対象に与えるので、生け贄にする対象としてぴったり。《武器製造》さえ置けば生け贄には全く困らないばかりか、生け贄の際にダメージが入るようになるのです。除去されない《波乱の悪魔》のようなカード、それが《武器製造》です! このラクドスサクリファイスは《武器製造》を攻撃的に使う、バーンのようなデッキ構成となっています。   《上機嫌の解体》は弾薬を壊しつつトークンを生成します。実は並べたトークンをまとめて別のカードに変換できるので、ただのトークン3体ではありません。 《塔の点火》は除去、《命取りの論争》はドローとどちらも弾薬を生け贄にできるカードたち。 アーティファクトの生け贄をコストに2マナ5点の破格のダメージを出す《爆片破》はこのデッキのためのカード。弾薬を生け贄にして7点で一瞬で相手のライフを詰めていきます。 恒久的に弾薬を生け贄にする手段は《鬼流の金床》。弾薬を生け贄にしつつトークンを生成し、しかもライフドレインと、ラクドスサクリファイスを支えるカードです。弾薬と合わせて毎ターン3点を詰めていくため、あっという間にライフはなくなります。 《実験統合機》《発火器具》は1マナで《武器製造》を誘発させる便利なアーティファクト。《実験統合機》は出た時と離れたときにライブラリートップをプレイでき、《発火器具》は墓地に置かれた時にドローできるので、どちらもデッキの潤滑油として非常に優秀です。どちらも生け贄に捧げるだけで効果を発揮するのも素晴らしいですね。 さあ、そしてラクドスアーティファクトの大ボスについても紹介しなければなりませんね。《腐敗口のバイパー》です! パーマネントを生け贄にした分だけ軽くなるので、5枚のカードを生け贄にすれば1マナで出すことができます。弾薬や各種アーティファクト、そして《上機嫌の解体》のトークンを生け贄にすれば1マナ6/6で出すのは容易です。   そしてその能力も中々強烈。戦場に出るか攻撃時に自身にカウンターが乗り、そのカウンターの分だけ、パーマネントの生け贄かディスカードか4点ルーズを強要します。通常この場合は4点ルーズを選択されますが、このデッキはバーンのように相手のライフを詰めていくデッキなので、気軽に相手はライフを払うことはできません。《武器製造》から弾薬をばらまいて高速召喚される《腐敗口のバイパー》はどのデッキにとっても悪夢です。 《武器製造》で気持ち良くなりましょう!!   親和 モダンゴールドリーグ : 5-0 By joaoclaudioms スタンダードでも紹介した《ピナクルの特使》ですが、やはり真価を発揮するのは下環境。とりわけ0マナアーティファクトを大量に使用できるモダンやレガシーで活躍しそうなカードでしたが、やはり期待通りの輝きを見せてくれています。 この親和はこれまでにも存在していたアーキタイプでしたが、今回《ピナクルの特使》が加わったことで、恐ろしい回りができるようになりました。   1ターン目に《ピナクルの特使》ワープ、《オパールのモックス》でトークン生成しつつ、《モックス・アンバー》、《ミシュラのガラクタ》プレイ。これでトークン3体、《オパールのモックス》、《ピナクルの特使》とあるので1マナで《河童の砲手》、更にトークン生成。 1ターン目にして《河童の砲手》と飛行トークン4体という恐ろしい場が完成します。   これまでの親和は気軽にトークンを生成する手段がなく、《河童の砲手》や《思考の監視者》といったアーティファクトを参照して軽くなるカードたちが動き出すのは3ターン目か4ターン目がほとんど。少しスピードは遅いですが、そこから爆発的な展開量で追いつき、そのまま《河童の砲手》でフィニッシュを決めるデッキでした。。 それが《ピナクルの特使》で大きく変わりました。このカードを1ターン目にワープしつつ展開していくと2ターン目には《思考の監視者》《物読み》がキャストでき、《河童の砲手》に繋がります。もちろんドローが続かなくとも《河童の砲手》が2ターン目に出ればただそれだけで勝ててしまうでしょう。 これまでには中々起こらない、《河童の砲手》を出した後に《ウルザの物語》を起動するという、とんでもないスピード展開が可能になったのです。 《河童の砲手》《思考の監視者》を2ターン目に出せるようになったことで、親和が最も苦手としていた《空の怒り》にも強くなりました。《ウルザの物語》と0マナアーティファクトがまとめて2ターン目に流されてしまうため、《空の怒り》はこのデッキにとって天敵。それを躱す手段は、《空の怒り》を打たれる前にマナ総量の大きいクリーチャー、すなわち《河童の砲手》《思考の監視者》を展開することだったのですが、これらのカードを唱えるためにはアーティファクトを大量に出す必要があり、そこに《空の怒り》を打たれてしまうのです。 《空の怒り》を打たれて、キャストできない《河童の砲手》を抱えて負けるというのがよくある負け方でした。 しかし、《ピナクルの特使》があれば相手が《空の怒り》を打たれる前に展開していくことができます。トークンは《空の怒り》で流されてしまいますが、《河童の砲手》は戦場に残りますし、《ピナクルの特使》から《河童の砲手》を出してその後展開できていれば、ドローンによって《河童の砲手》のサイズが上がるので、ほとんど2ターンでゲームが終わります。《河童の砲手》がとても出しやすくなったことで、天敵に対して耐性がついたのです。 《河童の砲手》以外の打点がほとんどなかった弱点も《ピナクルの特使》は克服しています。《ピナクルの特使》を出して《物読み》《思考の監視者》で大量にカードを引き、引いたカードをばらまいているだけで、勝手に飛行トークンが増え、そのまま勝利できます。これはレガシーの8 Castの《練達飛行機械職人、サイ》でも証明されていますね。 1枚のカードで勝ちパターンが大量に増えた親和、モダンで流行になること間違いなし。《ピナクルの特使》、ホンモノです!

『久遠の終端』加入&ローテーションで激変した新スタンダードから3デッキを紹介!

週刊 Standard ピックアップ

2025.07.31

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   ついに『久遠の終端』が明日8月1日、発売!!   そしてマジックオンライン・MTGアリーナ上では既に『久遠の終端』が実装され、早速新カードたちが活躍しています。   本日は『久遠の終端』の加入、そしてローテーションと大変革の起きた新スタンダード環境からデッキをご紹介していきます!   紹介デッキ オルゾフサクリファイス エスパーピクシー グルール上陸 ローテーションによるマナベース格差 デッキ紹介の前に。   突然ですが、スタンダードのローテーションにおいて最も大きなものと言えばなんでしょうか。   様々なフォーマットで活躍する《偉大なる統一者、アトラクサ》のスタンダード落ち?黒を支えた《黙示録、シェオルドレッド》でしょうか。はたまた万能除去の《喉首狙い》が消えたこと? いえいえ、それよりももっと重要なことがあります。マジックを支える要素である土地。その中でも重要な2色土地のスタンダード落ちです。   1点のダメージを受ける代わりに2色の内の片方を出せるアンタップイン土地、通称ダメランは『団結のドミナリア』『兄弟戦争』収録のため、スタンダードを去りました。 そして通称ファストランドのうち、《黒割れの崖》《銅線の地溝》《闇滑りの岸》《剃刀境の茂み》《金属海の沿岸》も『ファイレクシア:完全なる統一』のためローテーション落ち。 ファストランドは有効色5種、ダメランはすべて落ちてしまったので、マナベースに格差が生まれることとなりました。   この格差に追い打ちをかけるのが『久遠の終端』。最強の2色土地の1つであるショックランドが再録されましたが、その内容は有効色・対抗色が入り混じっています。対抗色は1種類落ちただけなので、ショックランドによってマナベースはトントン。一方、『久遠の終端』に収録されなかった有効色は大打撃です。 具体的には青白、赤黒、緑白です。この3種は一気に2種の土地を失うこととなってしまいました。諜報ランドと境界ランドは以前として使用できますが、諜報ランドは確定タップインで、境界ランドは序盤は片方の色しか出ない可能性が高い土地。いずれもアグロ用というよりは、コントロール用の土地です。 速いデッキになりやすい赤黒や、《ラノワールのエルフ》からゲームを始めたい緑白にとっては、序盤に必ずアンタップインできるダメラン・ファストのスタンダード落ち、およびショックランドのない現状はかなり痛いでしょう。 2色のマナベースについてまとめてみました。1種落ちて1種入った±0は○、2種落ちて1種加入および1種落ちの-1なら△、2種落ちの-2は×です。   赤白○白黒○青緑○緑黒△青黒△赤緑△青赤△白緑×赤黒×青白×   とこのようになっています。これからデッキを組む際の参考になるかもしれません。   オルゾフサクリファイス  スタンダードリーグ : 5-0 By RCMerriam MTGアリーナ用インポートデータ 最初に紹介するのは、ローテーションによってマナベースが強化された白黒(オルゾフ)カラーのデッキ。   白黒は《コイロスの洞窟》を失って《神無き祭殿》を得ました。境界ランドは土地タイプを参照して色マナを生み出すため、《神無き祭殿》はただただプラスです。 サクリファイス。自身のクリーチャーを生け贄に捧げることで様々な恩恵をもたらすデッキにつけられた相称ですが、現代のサクリファイスは《威名のソルジャー、セフィロス》なしでは語れません。 クリーチャーが死ぬたびに1点ドレインと《血の芸術家》能力を持ち、それが1ターンで4回誘発したら変身し、その能力の紋章を獲得。唯一無二の能力を持つのが《威名のソルジャー、セフィロス》。このデッキはもちろん、《威名のソルジャー、セフィロス》の紋章獲得を目指しています。   クリーチャーを生け贄に捧げるとどんどん戦場は寂しくなってしまうものなのですが、このデッキに入っているクリーチャーたちは死亡時にクリーチャーを産み落とす、1枚で2度美味しいものばかり。   《寄生の賢者》《入れ子ボット》《鎖破りの鼠》はすべて死亡時に1/1のトークンを生成してくれるクリーチャーで、どれも1マナ域。クリーチャーの生け贄には困りません。 《見捨てられた鉱夫》は死亡時にトークンこそ生み出しませんが、代わりに戦場に戻る能力を持っています。《威名のソルジャー、セフィロス》などのドレイン能力は対戦相手1人を対象としているため、これは悪事になります。悪事によって戦場に戻る《見捨てられた鉱夫》との相性はぴったりなのです。 生け贄に捧げる手段とマナさえあれば《見捨てられた鉱夫》1枚で《威名のソルジャー、セフィロス》を変身させられます。《見捨てられた鉱夫》が死亡し、《威名のソルジャー、セフィロス》が誘発。ここで悪事を働くため、今生け贄にした《見捨てられた鉱夫》が墓地で誘発し、マナを支払うことで戦場に戻せるのです。 《うなる大殺犬》は他の4種と違い生け贄には寄与してくれませんが、代わりに諜報で墓地を肥やしたり、ドローの質を上げてくれます。墓地を溜めることが重要なこのデッキでは欠かせない1枚です。 さて、肝心なのが生け贄にする手段です。サクリファイスが台頭する時はこの生け贄手段、通称サクり台が強い時と相場が決まっています。元祖サクリファイスは《ファルケンラスの貴種》《カルテルの貴種》でしたからね。 このデッキのサクり台は《バルトロメ・デル・プレシディオ》と新カードである《影の帯の盲信者》です! 《バルトロメ・デル・プレシディオ》はシンプルで強力なサクり台。クリーチャーかアーティファクトを生け贄にすると自身の上に+1/+1カウンターが乗ります。名カード《ナントゥーコの鞘虫》と比べても遜色ない立派なサクり台です。伝説でなければ4枚間違いなく入りましたね。   そして『久遠の終端』から加わったのが《影の帯の盲信者》。こちらは自身が強化されることはありませんが、生け贄で諜報を行えます。《うなる大殺犬》もそうですが、墓地を肥やす意味のあるこのデッキにとって諜報は大きく、サクり台が持つ能力としてはあまりに十分。伝説でないため4枚採用できるのが素晴らしいです。 なぜ墓地を肥やす必要があるのか?その答えが《過去立たせ》です。 墓地からマナ総量が2以下のクリーチャー・カードをまとめて戻す子のソーサリー。《うなる大殺犬》《影の帯の盲信者》で2マナ以下のクリーチャーをたっぷりと落とせば、《過去立たせ》を打つだけでゲームに勝てる可能性があります。   《復讐に燃えた血術師》が4枚採用されているのは《過去立たせ》が理由です。《威名のソルジャー、セフィロス》は残念ながら3マナなので《過去立たせ》から戻すことができません。更地の盤面からワンショットキルするには、《復讐に燃えた血術師》が必要なのです。 新セットでしっかり強化されたオルゾフサクリファイス、ぜひお試しください!     エスパーピクシー スタンダードリーグ : 5-0 By DB_claudioh MTGアリーナ用インポートデータ 戦場に出た時に能力が誘発する《逃げ場なし》《嵐追いの才能》を《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》などで再利用してアドバンテージを獲得する、いわゆるセルフバウンス系デッキ。 《コーリ鋼の短刀》が登場する前のスタンダードでは環境を席巻し、エスパーカラーにとどまらず、ディミーアでもこのセルフバウンスシステムを採用したり、エスパーの中でも様々な型ができるほどになっていました。 そんなエスパーピクシーは天敵の《コーリ鋼の短刀》によって激減し、最終的にはキーカードである《望み無き悪夢》《この町は狭すぎる》が禁止され、環境から去った……。   と思われていたのですが、新環境で見事に復活を遂げました!   デッキのメインコンセプトは変わりません。各種バウンスクリーチャーたちで《嵐追いの才能》をバウンスしてビートダウンしたり、除去を回収してクリーチャーを死滅させてコントロールしていきます。 ここに『久遠の終端』のカードが加わり、攻守ともに大幅な強化を受けました。   まずは守。《悲劇の軌跡》です。 普通に使えば-2/-2と《死の重み》相当ですが、ヴォイド状態だと-10/-10と、破格の1マナ確定除去。ヴォイドさえ満たせれば非常に強力なカードです。   そしてこのヴォイドを容易に達成できるのがエスパーピクシー。ヴォイドの達成条件は、土地以外のパーマネントが戦場を離れているか、カードがワープされていれば良いので、自分のパーマネントを手札に戻すだけで達成できるのです。《養育するピクシー》で何かを拐取しながら《悲劇の軌跡》というアクションが取れます。 1マナでここまで確実な除去はこれまでのエスパーピクシーにはなく、これはデッキの大きな進化と言えます。たった1マナでほぼすべてのクリーチャーに対処できるようになりました。   そんな軽い確定除去とも相性の良い攻めカードが《コスモグランドの頂点》。1ターンに2回の呪文を唱えるとトークンを2体生成したり、クリーチャーを全体強化するこのカードですが、自身が3マナとそこそこ軽く、4ターン目に《コスモグランドの頂点》から1マナスペルと動けば即座に誘発することができます。 特に強いのは全体強化のモードです。《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》《孤立への恐怖》ととにかく軽い飛行クロックが大量に入ったデッキなので、《コスモグランドの頂点》によるパンプアップが非常に効果的。《望み無き悪夢》を失ってライフを削るスピードが大幅に遅くなるかと思われましたが、《コスモグランドの頂点》のおかげでその心配はなくなりました。 《コスモグランドの頂点》を活かすために《遠眼鏡のセイレーン》まで採用されており、とにかく飛行を並べて強化して勝とうという意思がリストからも伝わってきます。 《遠眼鏡のセイレーン》から出る地図はヴォイドの誘発にも便利です。《遠眼鏡のセイレーン》《悲劇の軌跡》はエスパーピクシーのみならず、今後の青黒系の定番の組み合わせとなりそうですね。 《コスモグランドの頂点》の強さにとにかく驚かされるデッキで、エスパーピクシーは完全に復権したと言って良いかもしれません。エスパーピクシー愛好家の方にはぜひ試してもらいたいデッキです。   グルール上陸 スタンダードリーグ : 5-0 By ComboMAN MTGアリーナ用インポートデータ 最後に紹介するのは『久遠の終端』ではなく『ファイナルファンタジー』が主役のこちらのデッキ!   ファイナルファンタジー限定構築などで人気の上陸デッキがついにスタンダードでも登場しました。   《サッズのヒナチョコボ》《ティファ・ロックハート》《苔生まれのハイドラ》《棘を播く者、逆棘のビル》と、土地を置くことで強化されていくカードが大量に入ったビートダウンです。単純明快なコンセプトで実に緑らしいデッキですが、回った時はただのビートダウンではなく、まるでコンボのよう。 その爆発力を引き起こしているのが《旅するチョコボ》。ライブラリーの上から土地を置いたり鳥をプレイできるだけでなく、土地を置いたことによる誘発が倍になります。つまり上陸と書いてあるすべての能力が2回誘発するのです。 《サッズのヒナチョコボ》は1回の上陸でカウンターが2個乗るので、《寓話の小道》を置くだけでパワーが4上がりますし、1/2のティファは《寓話の小道》を置いて起動するだけでパワーが16に。仮に既に《ティファ・ロックハート》のパワーが3だったなら、48点のパンチをお見舞いします。 ここ最近で急激に姿を見かけるようになったのが《苔生まれのハイドラ》。上陸するたびにカウンターが倍になっていくので、ほぼ3マナの《ティファ・ロックハート》です。《旅するチョコボ》と並べばすぐに人が死ぬサイズに膨れ上がります。こちらも《ティファ・ロックハート》同様トランプルを持っているので、チャンプブロックは許しません。 そんな《ティファ・ロックハート》《苔生まれのハイドラ》と最高の相性なのが《棘を播く者、逆棘のビル》。このカードがトーナメントで使われていたのを最後に見たのはモダンのナドゥの頃だったかもしれません。あの時は《有翼の叡智、ナドゥ》の誘発のためという少々ふがいない役割でしたが、このグルール上陸では本人も納得の仕事をしてくれます。 自身のパワーを倍にする《ティファ・ロックハート》と《苔生まれのハイドラ》は《棘を播く者、逆棘のビル》で強化すると一瞬で20点を削る兵器と化すのです。 そしてこのデッキで最も大事な上陸を達成する手段として、新カードの《氷耕しの探検家》が加わりました。 セットランド権が1回増えるだけでも強力ですが、なんとこのカードは墓地から土地をプレイすることができます。   この手のセットランドを増やすカードは手札の土地がすぐに枯れてしまうのが残念なのですが、《氷耕しの探検家》はこの弱点を克服しているのです。《寓話の小道》《脱出トンネル》《広漠なる変幻地》《進化する未開地》はすべて自身を生け贄に土地をサーチするカードなので、セットランドするたびに墓地に落とすことができます。これらの土地のいずれかが1枚墓地にあるだけで、毎ターンの2回のセットランドが確約されるのです。 更にオマケとしてついている上陸時の諜報能力は、《寓話の小道》などを落とす手段でありながら、《世界魂の憤怒》とも噛み合います。 墓地の土地を戦場に戻しながらダメージを与える《世界魂の憤怒》は、上記の生け贄にする土地と一緒に使うだけで噛み合いますが、《氷耕しの探検家》による墓地肥やしによって、更にバリューが上がっています。上陸クリーチャーたちを並べて《世界魂の憤怒》をX=5ほどでプレイして一撃必殺ということもしばしば発生します。   コンセプトは単純な上陸デッキながら、様々な攻め方があるのが魅力のグルール上陸です!

【週刊メタゲーム通信】ディミーアミッドレンジが玉座に帰還!ナヤユウナとボロス召集にも注目

週刊 Standard ピックアップ

2025.07.09

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   7枚の禁止が発表されたスタンダードは赤アグロ天国から大ミッドレンジ時代に突入!   紹介デッキ ディミーアミッドレンジ ナヤユウナ ボロス召集   ディミーアミッドレンジ  スタンダードチャレンジ : 1位 By TheManLand MTGアリーナ用インポートデータ 前環境で赤単アグロ・イゼット果敢・ドメインオーバーロードなどともバチバチにやりあっていたにも関わらず、なぜか今回の禁止改訂で一切の影響を受けなかったデッキ、ディミーアミッドレンジ。   《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》を一度に『ダスクモーン:戦慄の館』で手に入れ、しばらくは環境の王者として君臨していました。打ち消し、除去、そしてリソースが取れるクリーチャーで構成されており、万能なデッキということもあり、非常に人気がありました。 そんなディミーアミッドレンジでしたが、《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》といったアドバンテージ源を触ってくる、自分よりも早いエスパーピクシーが人気になりだしてから少し人気がなくなり、天敵の《コーリ鋼の短刀》出現後はほとんど見なくなっていました。 しかし、《望み無き悪夢》も《この町は狭すぎる》《コーリ鋼の短刀》はこの世にはもう存在しません!それならば当然ディミーアミッドレンジは王者に返り咲きます。 現に禁止改訂後のスタンダードチャレンジ(マジックオンライン上の大会)ではトップ8のうち7つを占めるほど。いかに《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》が強力かこれだけでわかるでしょう。 さて、そんなディミーアミッドレンジですが、現在のスタンダードは3年ローテーションということでクリーチャーの選択肢が無限にあります。《コーリ鋼の短刀》をメタるために《群青の獣縛り》なんかも使われていましたね。メタゲームに合わせて様々なクリーチャーを採用するディミーアですが、今最も意識するべきなのは当然ミラーマッチです。 そのため、赤全盛期では抜けていた《フェアリーの黒幕》が再びメインで多めに採用されるようになりました。ミラーマッチでは互いにインスタントで動けることも大事ですし、《悪夢滅ぼし、魁渡》《永劫の好奇心》でドローもするので、能力も重宝します。 メインからの《ティシャーナの潮縛り》も同型では《永劫の好奇心》を消したり、《悪夢滅ぼし、魁渡》の忍術に触れたりなど、何かと便利なクリーチャー。環境が遅くなれば必然的に《ティシャーナの潮縛り》が強くなるので、ディミーア以外にも刺さる相手は多いでしょう。 《フェイ花のいたずら》は厳密にはクリーチャーではありませんが、1/1飛行を2体出すインスタント。《永劫の好奇心》のためのクリーチャーを2体生成しつつ、相手のブロッカーを排除できるので、同型で特に強力です。飛行クリーチャーが《遠眼鏡のセイレーン》《大洞窟のコウモリ》《フェアリーの黒幕》とすべてタフネス1なので、《フェイ花のいたずら》は攻防で活躍してくれるのです。 ここまで紹介したクリーチャーはすべてインスタントタイミングでプレイできます。《フラッドピットの溺れさせ》も入っていますし、今のディミーアはとにかくマナを構えてきます。除去や打ち消しを構えながら、相手のアクションが大したものでなければクリーチャーを出せるので、非常に理にかなっています。 相手の動きによってこちらのアクションを決められる、いわゆる後出しじゃんけんが可能なリストは使いやすくて好印象です。《大洞窟のコウモリ》で相手の手札を除いてから動けますしね。 強くて使いやすい。これは強いデッキの条件の1つでもあります。再びスタンダードの頂に上ったディミーアミッドレンジを打ち倒すデッキは現れるのでしょうか。     ナヤユウナ スタンダードチャレンジ : 2位 By McWinSauce MTGアリーナ用インポートデータ 《豆の木をのぼれ》が禁止になり、大きな打撃を受けたのがドメインオーバーロード。 デッキ名になっている大主たちはすべてマナ総量が5以上ですが、兆候で軽く唱えることができる。それを利用して《豆の木をのぼれ》を何度も誘発させてアドバンテージを稼ぎ、大主たちを《永遠の策謀家、ズアー》で起こすコントロールデッキ、それがドメインオーバーロードです。 《豆の木をのぼれ》を失ってリソースが取れなくなったオーバーロードは、より早くゲームを終わらせるデッキになりました。それがこのナヤユウナ。   《スピラの希望、ユウナ》は《永遠の策謀家、ズアー》と同じく、大主と相性の良いカードです。墓地からエンチャントを吊り上げ、自分のターンは絆魂と護法を付与してくれます。墓地に落ちた大主を吊り上げて攻撃しつつ、ライフを回復していきます。 そんな《スピラの希望、ユウナ》と特に良相性なのが《ボイラービルジの大主》。好きな対象に4点を与えるこの大主は絆魂を持つので、一気に大量のライフを得ることができます。 《スピラの希望、ユウナ》は墓地からエンチャントを吊り上げるので、このデッキにはエンチャントを落とす様々な手段が用意されています。   《逸失への恐怖》《フェニックスのドミナント、ジョシュア》は手札を入れ替える便利なカードで、ディスカード手段としてだけでなく、必要なカードを引き込みにいける素晴らしいカード。《逸失への恐怖》は昂揚すれば大量の打点、《フェニックスのドミナント、ジョシュア》は変身してクリーチャーをリアニメイトするなど、どちらもドロー能力以外も強力。 《幻獣との交わり》は諜報2でエンチャントを墓地に落とします。自身もフラッシュバック能力を持っているので、ディスカードや諜報で《幻獣との交わり》自身が落ちるとお得です。 切削しつつ必要なカードを手札に加えられる《浚渫機の洞察》は当然4枚です。《スピラの希望、ユウナ》を手札に加えて大主を落として……なんてことが起きたらそれだけでゲームに勝てる場合があります。1点ゲインのオマケがついてくるので、対アグロにはしみてくるでしょう。 《浚渫機の洞察》より範囲は狭いですが、《魔導戦士、ティナ》も中々優秀です。拾えるエンチャントは《ボイラービルジの大主》に召喚カードたち、そして《浚渫機の洞察》です。切削も5なので結構掘れますし、変身すれば他のエンチャントをコピーでき、《ボイラービルジの大主》で一瞬でゲームが終わります。 このように様々なライフゲイン手段が用意されているので、ビートダウンは得意ですし、ミッドレンジに対してはスケールで勝利できます。《召喚:バハムート》や《召喚:ナイツオブラウンド》が5ターン目にぐらいに戻ってきてしまうと打つ手なしです。   これまでとはまったく違う顔を見せるオーバーロードデッキとなっているユウナオーバーロード。ドメインを使っていた方にオススメ! ファイナルファンタジー好きな方にもぴったりですね!ユウナからバハムートを召喚して気持ち良くなりましょう!   ボロス召集 スタンダードチャレンジ : 1位 By LucasG1ggs MTGアリーナ用インポートデータ 禁止改訂前の赤単やイゼット果敢は、スタンダードのみならずパイオニア級の強さを持っているデッキたちでした。 実際パイオニアで活躍する赤単アグロは《熊野と渇苛斬の対峙》と《変わり谷》以外すべてスタンダードのカードで、イゼット果敢もパーツのほとんどがスタンダードで構成されています。パイオニアで強いデッキがスタンダードで最強になるのは自明の理ですよね。 そしてこのボロス召集も、パイオニア級の強さを持つデッキと言われ、昨年のスタンダードでは恐れられていました。   《ひよっこ捜査員》《入れ子ボット》でアーティファクトを生成し、そこを対象に《上機嫌の解体》を打ち込み、トークンを生成。それらのトークンを召集コストに当てて《イーオスの遍歴の騎士》を高速召喚し、《イモデーンの徴募兵》を見つけて次のターンにトークンたちを強化してフィニッシュする、赤白のトークンデッキです。 回った時の強さは手がつけられません。2ターン目に《イーオスの遍歴の騎士》、3ターン目には《イモデーンの徴募兵》で大量のダメージを飛ばしてくるので、実質3キルのような場を作ってきます。《一時的封鎖》でも《イーオスの遍歴の騎士》が残りますし、2枚のカードを確保できているので、全体除去耐性もしっかりとあるのです。 トークンを並べるデッキなので《見捨てられた人形、アラベラ》と相性が良く、《門道急行の事件》《イモデーンの徴募兵》と共に1/1トークンの群れで殴りきるのが基本戦略です。《画家の仕事場+汚された画廊》はトークンを強化しながらリソースも稼げる、このデッキにぴったりのカード。 ファイナルファンタジーからは《「竜騎士」の両手槍》が加わりました。トークンを生成しつつアーティファクトを生み出せるので、《上機嫌の解体》の対象にぴったり。《「竜騎士」の両手槍》1枚で《上機嫌の解体》から1マナで《イーオスの遍歴の騎士》まで繋がるのが実に美しいですね。 ボロス召集の魅力はなんといってもそのメタりづらさです。アグロにも関わらず単体除去がほとんど効かないので、赤単対策などが無駄になります。《紅蓮地獄》などの全体除去がサイドボードに用意されていない環境なら無双間違いなしです。 しかも全体除去に対しては《イーオスの遍歴の騎士》がとにかく強い!条件なくすべてのクリーチャーを倒すには《審判の日》しかなく、軽い全体除去は《イーオスの遍歴の騎士》が残るので、大きなダメージを返しに受けることになります。最終的には《イモデーンの徴募兵》が控えるので、全体除去の返しに《イモデーンの徴募兵》で勝つこともしばしばあり、唯一の弱点ですらこのデッキは克服できているのです。 以前は除去が多いデッキには《ウラブラスクの溶鉱炉》で対策していました。除去に対しては強い一方、バウンスにめっぽう弱かったこのカードは、《この町は狭すぎる》《洪水の大口へ》の流行によってスタンダードで見なくなりましたが、今の環境でバウンスはほとんど見ないので、もしかしたらサイドボードで復活するかもしれませんね。 《ウラブラスクの溶鉱炉》がサイドに入ったボロス召集はかなり弱点が少ない隙のないデッキだという印象で、個人的にはかなり恐れています。   ブン回りもあり、粘り強さもしっかりあるボロス召集。人気が出てきそうな予感がするので、全体除去はしっかり入れておきましょう。ディミーアミッドレンジ使いの方は《ギックスの命令》をお忘れなく。

禁止改訂後に活躍しているスタンダードのデッキたち

週刊 Standard ピックアップ

2025.07.04

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ 白単トークンコントロール ゴルガリミッドレンジ グルールハツカネズミ   白単トークンコントロール  スタンダードチャレンジ : 1位 By gazmon48 MTGアリーナ用インポートデータ コントロールにとって大事なアドバンテージ源だった《豆の木をのぼれ》が禁止になり、個人的には《食糧補充》と《マラング川の執政》を使える青系コントロールが台頭すると予想していたのですが、そういえば今のスタンダード環境には他にもドローできるカードが存在していました。 そう、《世話人の才能》です。 かつては《ウラブラスクの溶鉱炉》と一緒に自動ドロー装置となっていたり、様々な白系ミッドレンジ・コントロールで活躍していたこのカード。いつしか忘れ去られていましたが、禁止改訂と共にスタンダードに戻ってきました。   白単コントロールはトークンを活用したデッキで、どちらかと言えばミッドレンジぐらいの速度。《勝利の楽士》《ミストムーアの大主》で出したトークンで殴っていくので、アゾリウスコントロールのようなどっしりとしたコントロールデッキではありません。 《世話人の才能》《永劫の無垢》はいずれも様々なトークンにトリガーしてカードが引けるカード。《勝利の楽士》や《ミストムーアの大主》、《人参ケーキ》、《噴水港》とたっぷり入っているので、戦場に出ればドロー装置として機能します。 どちらも1ターンに1度の制限付きではありますが、自分のターン以外でも誘発するのがミソ。自ターンで《勝利の楽士》でカードを引き、相手のターンで《噴水港》を起動してドローもできます。《人参ケーキ》も相手のターンに生け贄にすればカードを引けるので、1枚ですぐに2ドローできる優秀なカードです。 《世話人の才能》は優れたドローカードであるだけでなく、フィニッシャーの役割も兼ねます。レベルを3まで引き上げればトークンが大幅強化されるので、《ミストムーアの大主》が出すトークンが4/3飛行と凶暴なサイズに。蛾というか実質天使です。   白単で構成されていることから優秀な専用カードである《軍備放棄》を4枚採用できるのも魅力です。《失せろ》との8枚体制でビートダウンをシャットアウトしつつ、遅いデッキには圧倒的なドロー量とトークンによる物量で押し込みます。非常にシンプルかつ強力なデッキ。 白単であるもう1つの魅力は土地。ドローに繋がる《噴水港》は当然4枚採用できますし、土地の起動を楽にする《沈んだ城塞》も4枚入れることができます。このデッキは《噴水港》を同時に2枚起動するのも容易く、土地がとにかく強いのが素晴らしいですね。 チャレンジでも早速トップ8に3人が入賞し、今勝ちまくっている白単トークンコントロール。まずはここから新スタンダードを始めてみてはいかがでしょうか。     ゴルガリミッドレンジ スタンダードチャレンジ : 2位 By Desert_24 MTGアリーナ用インポートデータ 赤単アグロ・イゼット果敢と速い2つのデッキが消え、中速殺しのアゾリウス全知も禁止改訂の影響を受け、スタンダードはミッドレンジ天国になると予想されていましたが、やはりそれは間違っていなかったようです。 久しぶりにゴルガリミッドレンジの姿をスタンダードで見かけたような気がします。   ディミーアミッドレンジが1マナクリーチャーから《悪夢滅ぼし、魁渡》に繋げて《永劫の好奇心》で攻めながら引くアグロ気味のミッドレンジなのに対し、ゴルガリはどちらかと言えばマナを伸ばしてどっしりと除去とアドバンテージで勝っていく、王道ミッドレンジです。 とはいえ時にはスピードを出すことができ、それを可能にしているのが《ラノワールのエルフ》です。この唯一無二の3マナへのジャンプアップを可能にするマナクリーチャーは、ゴルガリミッドレンジの最大の魅力と言って良いでしょう。 《ラノワールのエルフ》から繋げる先の3マナ域はどれも強力。アドバンテージエンジンの《不浄な別室》に攻防一体の《名もなき都市の歩哨》、そしてなんといっても《重厚な世界踏破車》です。 《重厚な世界踏破車》は土地を伸ばしつつ攻撃できる強力な機体で、環境にある除去の多くが当たらないのも魅力の1つ。《ラノワールのエルフ》から2ターン目に《重厚な世界踏破車》と回った時のゴルガリは手が付けられません。   面白いのが《不浄な別室》絡みのデーモンシナジーです。デーモンがいることで2点ドレインになる《不浄な別室》のために、これまで様々なデーモンが試されてきましたが、ファイナルファンタジーから《デモンズウォール》が加入しました。2マナ3/3と守りには優秀なサイズで、カウンターさえあれば攻撃もできるため、《カルシの帰還者》や《名もなき都市の歩哨》の地図起動などでカウンターが乗れば、攻撃することも可能です。 《腐れ呪いのラクシャーサ》と合わせて《不浄な別室》のデーモン条件を満たしながら、攻防に渡って活躍してくれます。デーモンは4マナが定番だったので、これが軽くなったのは非常に大きいですね。3ターン目の《不浄な別室》がドレインになってくれるのは思いの外大きいです。 《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》擁するディミーア、《ラノワールのエルフ》から《不浄な別室》《重厚な世界踏破車》に繋げてくるゴルガリ、どちらも同じミッドレンジですが全く戦い方が異なるデッキたちが台頭してきて、スタンダードは難しくなりそうですね。   グルールハツカネズミ スタンダードチャレンジ : 3位 By Grogore MTGアリーナ用インポートデータ 禁止改訂で大きな弱体化を受けることとなってしまった赤系アグロ。それも仕方ありません。デッキに入っているほとんどのカードがスタンダードと同じ赤単がパイオニアでも一線級の活躍をしてしまうほど、カードパワーが飛びぬけていたのですから。 そんなハツカネズミ軍団の先陣を切っていた《心火の英雄》、そして《巨怪の怒り》が禁止になりました。   《心火の英雄》は2ターン目に《多様な鼠》を出してお手軽4点、放置したら次のターンには7点が飛び、除去でもダメージが入る、凄まじい1マナ域のクリーチャーでした。1ターン目にドロップできる赤いハツカネズミというだけで《多様な鼠》と相性が良いのに、その能力が強すぎました。 《巨怪の怒り》も《多様な鼠》と組み合わせることで意味不明なダメージを叩き出すカードでした。《心火の英雄》に2ターン目につけて5点で殴りつつ、次のターンからチャンプブロックを許さないのも、1マナのカードがやってはいけない強さ。 この2枚が禁止となり、正直ハツカネズミは終わったと思っていましたが、このようにまだ生き残っています。   《心火の英雄》がなくなったスロットには《脚当ての補充兵》を採用しています。《多様な鼠》で強くなることはありませんが、1ターン目に出せるパワー2なだけでなく、新生でばらまくこともでき、単体除去に対して非常に強いカードです。 《巨怪の怒り》の代わりは《過剰防衛》。+3/+3トランプルを付与するので《多様な鼠》と合わせての二段攻撃大ダメージは健在……と言いたいところですが、2マナと重く、更にトランプルもこのターンしか付与できません。《巨怪の怒り》の凄まじさがわかりますね。 とはいえ、《過剰防衛》は呪禁を付与するので、《巨怪の怒り》と違い単体除去を避けるために使うことも可能です。黒いデッキには《巨怪の怒り》より便利になる場合もありますね。 もちろん《心火の英雄》《巨怪の怒り》を失ったことでデッキパワーが大幅に低下したのは否めません。しかし、勝てなくなるかというとそれはまた別の話。   なぜなら赤単が当たり前のように意識されていた時代は終わったからです。むしろ今は赤アグロが消え、除去が減ってきているかもしれません。そうなればハツカネズミは大チャンスです。《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》のラインは残っていますし、《雇われ爪》もまだ元気ですからね。《岩面村》《多様な鼠》《熾火心の挑戦者》で粘り強く戦うグルールの持ち味はまだ死んでいません。 週末は赤対策を完全に捨てても良いと思っているなら、甘いですよ!l

【週刊メタゲーム通信】トップ8には赤単とイゼット果敢のみ!圧倒的な強さを見せる赤たち!

週刊 Standard ピックアップ

2025.06.25

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   ラスベガスで行われたプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』!   日本のプロ、行弘 賢選手の赤単アグロさばきに感動し、そして優勝時の嬉し泣きには、見ている側ももらい泣きするなど、様々な感情をプレゼントしてくれたプロツアーサンデーでした。   今回は週末に千葉で行われるマジックスポットライトのフォーマットでもあるスタンダードの結果を、プロツアーから分析していきます!   プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』 優勝:赤単アグロ2位:イゼット果敢3位:赤単アグロ4位:イゼット果敢5位:イゼット果敢6位:赤単アグロ7位:イゼット果敢8位:赤単アグロ   なんとトップ8には赤単アグロ4人、イゼット果敢4人!   アゾリウス全知やゴルガリ陰湿な根などの姿は一切なく、トップ8は2つのデッキタイプだけとなりました。   赤単アグロ 見事優勝を収めた行弘 賢選手の赤単アグロ。特徴的なのはメインから4枚採用されている《双つ口の嵐孵り》でしょうか。 前兆で使用することで飛行を持たないクリーチャーに5点のダメージを与えることができるドラゴン。《焙り焼き》を思い出す方もいるでしょう。 飛行に対して使用できないデメリットを除けば、2マナ5点火力となるので、非常に広い範囲のクリーチャーに対処できます。赤単が処理しづらい《ドレイクの孵卵者》や《迷える黒魔道士、ビビ》、ドメインの《ホーントウッドの大主》、《分派の説教者》に《黙示録、シェオルドレッド》などなど対象は様々です。 しかも前兆で唱えた後はライブラリーに戻ってくれるので、またドローできるチャンスもあります。   同型でもタフネス3以上のクリーチャーは処理しづらいため、相手がフルタップの隙に《心火の英雄》に《巨怪の怒り》を唱えて3/3にしておくのが定番のプレイでしたが、《双つ口の嵐孵り》の前では無力です。 他のトップ8のデッキリストを見ていると《魔女跡追いの激情》がよく採用されています。こちらも5点を与えるカードですが、攻撃クリーチャーの数だけマナが下がるカードなので使いにくいことも多く、より安定して役割を果たせるのは《双つ口の嵐孵り》だと思われます。 この部分は行弘選手のリストの大きなポイントです。今後は《双つ口の嵐孵り》がメインに4枚採用されるのが当たり前となるでしょう。   全赤単に共通しているのは、メインから《魔道士封じのトカゲ》が入っている点でしょう。 今大会ではイゼット果敢の使用率は40%を超えており、《魔道士封じのトカゲ》メインが当たり前になったのも頷けます。これまで五分程度だった相性は、《魔道士封じのトカゲ》のメイン投入で完全に赤単側に傾きました。   トップ8のブラケットが赤単4人とイゼット果敢が綺麗に分かれたため、決勝で初めて赤単とイゼット果敢が相対することとなったのですが、もしイゼット果敢と赤単が準々決勝からマッチングしているトーナメント表だった場合、上位は赤単が総なめしていたかもしれません。   イゼット果敢の人気は相変わらずでしょうが、赤単はイゼット果敢を倒す力を持っています。しかも他のマッチにおいても有利な相手が多く、赤単は非常に今強いデッキです。   本来赤単がきついはずだったミッドレンジたちが、イゼット果敢の使う《コーリ鋼の短刀》に駆逐されてしまっていることが、赤単の立ち位置を良くしているのでしょう。 今週末も赤単はベストデッキです!   イゼット果敢 そんな赤単に負けてしまったものの、メタゲームに40%超えと圧倒的な使用率にしてトップ8に4人を送り込んだデッキ、イゼット果敢。   《迷える黒魔道士、ビビ》によって強化されたと言われたり、ビビ不要論も飛び出すなど、ベストなリストはどんなものになるのか多くのプレイヤーが注目していましたが、今回の結果を見て明らかなことは1つあるでしょう。 ビビはやはりイゼット果敢に必要だったのです。   2位:4枚4位:3枚5位:2枚7位:2枚   と少なくとも2枚のビビをすべてのイゼット果敢が採用しており、イアン・ロブ選手はメインに4枚採用し、デッキの軸としています。 イゼット果敢はビビを採用したことで白系デッキへの耐性、とりわけ《一時的封鎖》に対して非常に強くなりました。 《巻物変容》で《一時的封鎖》を使い回す動きをしてくるアゾリウス全知にはこれまで苦しめられていましたが、ビビの登場により《一時的封鎖》は以前より強力ではありません。《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》を止めても勝てないデッキになったのです。 また、ビビを投入することでイゼット果敢は果敢ビートダウンの一面だけでなく、コンボデッキにもなってくれます。生半可なライフゲインではビビの前では無力です。総じてイゼット果敢のデッキパワー向上の役割を果たしたのです。   《迷える黒魔道士、ビビ》以外のカードはというと、それぞれのプレイヤーは異なるカード選択をしています。《ドレイクの孵卵者》のみから、《僧院の速槍》《迷える黒魔道士、ビビ》のコンビ、更にはビビオンリーのリストも。 《僧院の速槍》を入れれば速度が上がりますし、《ドレイクの孵卵者》はミラーマッチを見据えた選択肢。ビビだけのリストには新たな装備品の《「占星術師」の天球儀》が入っており、こちらも強力。 2ターン目に置いてターンが帰ってくれば、あっという間に5/5にサイズアップしますし、ビビにつければ、呪文を唱えるたびに《「占星術師」の天球儀》とビビ自身の能力でカウンターが2つ乗るので、ビビ自体のバリューがアップします。ビビとセットで採用することになるでしょうが、爆発力はかなりのものでしょう。装備コストが軽いのも強いですね。 イゼット果敢はこれまで勝っているリストも多種多様でした。プロツアーである程度リストが固まると思われたのですが、採用カードはそれぞれバラバラです。流行している最強のデッキのリストがここまで固まっていないのは非常に珍しいですね。   その理由はひとえに《嵐追いの才能》《コーリ鋼の短刀》《食糧補充》のベースラインが強すぎることにあると思われます。これらのカード、そして果敢を引き起こすキャントリップと除去。ここが強すぎてクリーチャーの細かい採択がゲームに影響しないことも多いのです。 とはいえ、前述の通りビビはトップ8のすべてのデッキリストが採用しており、イゼット果敢に必要であることはほぼ確定したと言って良いかもしれません。   《ドレイクの孵卵者》も主にミラーマッチで強く、《巨怪の怒り》によるお手軽ドレイク生成コンボがあり、イゼット果敢がこれだけ多い状況なら3枚以上採用したいカードでしょう。 ただ、それはあくまで今週末のメタが今のままであるなら、です。   イゼット果敢と赤単の使用率はプロツアーとスポットライト千葉で変わると思っています。イゼット果敢が減り、赤単が増え、もしかすると同じぐらいになるかもしれません。それぐらい赤単はイゼット果敢に強いことがプロツアーで証明されましたからね。   そしてスポットライト千葉がオープンイベントであることも特筆すべき点です。誰でも参加することができ、参加者は1000人を超えます。プロツアーのように偏ったメタゲームになることはありません。イゼット果敢、あるいは赤単が40%になることは決してないでしょう。   それならばデッキリストにもいわゆるマイルドさが求められてくるかもしれません。《ドレイクの孵卵者》があまり効かないアゾリウス全知をはじめ、コントロールデッキへの意識を高める必要もありそうです。 そうなると再び採用されるのが《精鋭射手団の目立ちたがり》です。《ドレイクの孵卵者》と《精鋭射手団の目立ちたがり》をスプリットするリストなどは、こういった参加者の多いオープンイベントの大会で向いています。 イゼット果敢のリストを作るだけで無限に悩めてしまいますね!どんなリストが週末に勝ち上がってくるのか楽しみです。   アゾリウス全知   トップ8からは漏れてしまったものの、スタンダードラウンドを9勝1敗の成績で終えたのがハビエル・ドミンゲス選手のアゾリウス全知。   これまでのアゾリウス全知と比べてかなりリストが洗練されており、全知の完成形と言って差し支えないでしょう。   クリーチャー枠にはフィニッシャーにもなる《マラング川の執政》に加えて《フラッドピットの大主》が4枚採用されています。カードを2枚捨てて1枚捨てる能力は《全知》を捨てつつ《アブエロの覚醒》を探すのに便利ですが、3マナの重さが気になる点から、これまでは《決定的瞬間》などが優先して採用されていました。 しかし、《一時的封鎖》との相性の良さから《巻物変容》を複数枚採用するようになったことで、その《巻物変容》の対象としても選べる《フラッドピットの大主》が4枚採用されるようになったのでしょう。 《巻物変容》の強さには目を見張るものがあります。《一時的封鎖》は対イゼット果敢において完璧なカードですが、唯一の欠点は《洪水の大口へ》で手札に戻されてしまうことでした。 それを解決してくれるのが《巻物変容》です。バウンスされそうな《一時的封鎖》を《巻物変容》でちらつかせれば、《洪水の大口へ》を無効にできるのです。もちろん相手が《一時的封鎖》後に再展開してきたところに《巻物変容》を打って更に追放するのも良いでしょう。 インスタントの干渉手段が多く用意されているのも特徴的です。《エファラの分散》4枚程度にとどめるリストが多い中、《魂の仕切り》に、《喝破》《呪文貫き》と打ち消しも多めに採用しています。 《魂の仕切り》は《迷える黒魔道士、ビビ》に対処できる貴重なカードですね。全知相手に2マナ多くビビを唱えるのは死を意味するので、実質ただの確定除去なのです。 フィニッシャーにも言及しておきましょう。全知のフィニッシュ手段と言えば様々なものがありますが、このリストは《不穏な変換》になっています。 2マナの瞬速エンチャントで、そのプレイヤーの墓地の分だけクリーチャーのパワーを下げる、疑似的な除去となるエンチャント。戦場に出た時に各プレイヤーが切削を行うので、これが勝ち手段になります。   《全知》を出して《マラング川の執政》2枚と《乱動するドラゴンの嵐》が揃うと、このデッキは無限ドローになります。《乱動するドラゴンの嵐》を出す→《マラング川の執政》Aを出して《乱動するドラゴンの嵐》を戻して出し直す。《マラング川の執政》Bを出して《マラング川の執政》Aを戻すと無限無限にライブラリーを掘り進められます。 最終的に《不穏な変換》に辿り着いたら、《マラング川の執政》で《不穏な変換》を戻し続ければ相手のライブラリーは0になり、ターンを返せば勝ちというわけです。 フィニッシャー枠として、《アルケヴィオスへの侵攻》から始まり、《第三の道の創設》など段々コンボ以外での使い道があるカードが発見されてきたアゾリウス全知。ついには無限コンボ不採用のリストまで出始めましたが、今回の《不穏な変換》はかなり使いやすくてオススメです。よくこんなカードを見つけてきましたね…!   序盤に引いても除去として機能しますし、ビビのパワーを下げてマナを出させないなんてことも可能です。 《フラッドピットの大主》の採用でコントロールプランもより強固ものとなり、いよいよスタンダード三強の一角となりました。   イゼット果敢と赤単だけを意識すればよいわけではないのがマジックの難しいところですね!   週末は墓地対策もお忘れなく!

【週刊メタゲーム通信】今日はマジックオンラインで行われた地域CSの結果を分析!イゼットビビと赤単が大活躍!)

週刊 Standard ピックアップ

2025.06.19

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   ついに週末はプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』がラスベガスにて行われます。   プロツアーのフォーマットはスタンダードとドラフト!ということで本日もメタゲーム通信をお届けしていきます。   今回はマジックオンライン上で行われた地域CS予選の結果をご紹介!スイスラウンド9回戦+決勝ラウンドと非常に長丁場となった本大会はどのような結果となったのでしょうか。   Standard RC Super Qualifier 優勝:イゼットビビ2位:アゾリウスコントロール3位:イゼットビビ4位:アゾリウス全知5位:ディミーアミッドレンジ6位:赤単アグロ7位:赤単アグロ8位:ディミーアミッドレンジ   イゼットビビ 『ファイナルファンタジー』で最も注目されているカードと言えば、それはもちろん《迷える黒魔道士、ビビ》でしょう。 3マナ0/3で出た時の能力こそないものの、非クリーチャー呪文を唱えるたびに+1/+1カウンターを乗せながら相手にダメージを与える、果敢と非常に相性の良いカード。   しかも自分のターンに毎回、ビビのパワー分のマナを出すことができます。こういったマナは大体が無色なのですが、ビビの場合は青か赤。キャントリップを打ってビビを大きくして青マナを大量に出し、そこからスペルを重ね、ビビを育ててそのままフィニッシュまで持っていけます。 このビビを採用したイゼット果敢が1位・3位と最上位に2人となり、このカードの恐ろしさを誰もが知ることとなりました。   デッキの構造自体はこれまでのイゼット果敢と大差ありませんが、特筆すべきは《僧院の速槍》が抜けたことでしょうか。クリーチャーは《ドレイクの孵卵者》《稲妻罠の教練者》《迷える黒魔道士、ビビ》の3種となっています。 《稲妻罠の教練者》はこれまでも少し採用されていたカード。ライブラリーの上4枚からカードを探せるので、《食糧補充》《コーリ鋼の短刀》などにアクセスしやすく便利です。《迷える黒魔道士、ビビ》のおかげでマナが大量に出るようになったので、マナの注ぎ先として《稲妻罠の教練者》は優秀です。マナの使い先であるドロースペルを探せる他、《稲妻罠の教練者》を新生しても良いですからね。 ビビによって《嵐追いの才能》レベルアップが容易となり、採用されるようになったのが《この町は狭すぎる》。2マナで《この町は狭すぎる》を打ち、《嵐追いの才能》を拾い、キャストしてレベルアップで《この町は狭すぎる》というマナのかかる無限ループは、以前までのマナがカツカツのイゼット果敢ではあまり採用されていませんでしたが、ビビが入るとなると話は別です。 ビビが加入したことでイゼット果敢は《一時的封鎖》を克服したと言えます。これまでは《僧院の速槍》《嵐追いの才能》《コーリ鋼の短刀》と攻め手がすべて《一時的封鎖》で対処されていたため、《洪水の大口へ》でバウンスする必要がありました。 しかし、《一時的封鎖》の効かないビビにより状況は一変。最も強力な攻め札に対処できないカードになってしまいました。   かといって《一時的封鎖》を抜けるかというとそうではないのが難しいところ。《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》自体にはしっかり触りたいので、《一時的封鎖》は必要です。ビビを倒すために単体除去に寄せてしまうと、今度は《コーリ鋼の短刀》が重くなってしまうのです。 コントロールは《一時的封鎖》の信頼性が下がったことでイゼット果敢を止めることが今まで以上に困難となりました。   《古代魔法「アルテマ」》は《コーリ鋼の短刀》《迷える黒魔道士、ビビ》をまとめて吹き飛ばせるため、採用率は上がってくるかもしれません……が5マナと重く《呪文貫き》の餌食になりやすい他、《嵐追いの才能》に無力なのも気になりますね。 ビビがイゼット果敢に入ったことでいよいよこのデッキは本当に最強になったのではないでしょうか。そう思わざるを得ないほど、イゼットビビは恐ろしいデッキです。   ディミーアミッドレンジ 一方、《迷える黒魔道士、ビビ》が入ったことで状況が好転するデッキも存在しています。それがディミーアミッドレンジをはじめとした黒いデッキたちです。 黒いデッキにはメインから《喉首狙い》などを採用しており、ビビの対処には困りません。3マナで除去耐性のないクリーチャーは、黒いミッドレンジにとっては的なのです。 今回もトップ8にディミーアミッドレンジは2人入賞しており、立ち位置の良さを証明しています。 とはいえ、ディミーアが《コーリ鋼の短刀》を苦手としているのは相変わらず。《群青の獣縛り》はそんな《コーリ鋼の短刀》を意識したカードです。 攻撃するたびにクリーチャーかアーティファクトかプレインズウォーカー1体を2/2のクリーチャーに変える能力を持つ《群青の獣縛り》。《コーリ鋼の短刀》をクリーチャー化して除去することができるのです。《切り崩し》が確実に機能しますし、《群青の獣縛り》はディミーアミッドレンジならぜひ採用したい1枚ですね。 新カードとしては《暗黒騎士、セシル》が1枚採用されています。序盤からクリーチャーを展開して除去を挟みつつ《永劫の好奇心》に繋げたいデッキなので、強い1マナ域は大歓迎ですね。変身後のライフゲインもしみますし、いぶし銀の1枚と言えるでしょう。 3マナ域は《分派の説教者》と《カルシの帰還者》がセパレートされています。ディミーアと言えば《分派の説教者》は不動だとばかり思っていたので少し意外でした。《分派の説教者》がドローとトークン生成でどんな相手にも一定のパフォーマンスを見せる一方、自身が絆魂を持ち、それを他のクリーチャーに付与できる《カルシの帰還者》は赤に特化したカードと言えますね。 ディミーアミッドレンジはアゾリウスコントロールやアゾリウス全知など、赤を意識した青白系のデッキに対して高い勝率を誇るデッキ。反面、《コーリ鋼の短刀》擁するデッキ、つまりイゼット果敢に少し不利という立ち位置ではあるのですが、仮にイゼット果敢に対して五分以上になるのだとしたら、メタゲーム上で不利な相手はほとんどいなくなります。 今週末の台風の目となるのでしょうか?注目していきたいですね。   赤単アグロ   最後を飾るのは赤単アグロ。   最近では《コーリ鋼の短刀》《迷える黒魔道士、ビビ》とイゼット果敢のとんでもないカードたちの前に少し影が薄くなっていますが、《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》と序盤・中盤・後半いつでも強いハツカネズミたちを使った、スタンダードでは存在してはならないレベルの赤アグロです。 現にスタンダードとほぼ同じカードを使った赤アグロがパイオニアでも暴れており、世が世ならスタンダードで禁止されていたのではないかと個人的には思います。 さて、そんな赤単アグロがこの大会では大活躍。トップ8に2人入賞だけでなく、トップ16まで見てみると9位、10位、11位、13位にも赤単が入っており、圧倒的パフォーマンスを見せています。   今回は赤単の名手、sandydogmtg選手のリストをピックアップしています。   赤単の魅力はなんといってもハツカネズミ軍団たちによる圧倒的なカードパワー。《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》は1~2ターン目からゲーム後半までいつでも活躍する凄まじいカードです。 《熾火心の挑戦者》は序盤にはただのクロック、中盤以降はリソースを稼いでくれまし、《多様な鼠》は新生で除去耐性があり、生き残ればそれだけで勝ててしまうカード。   そしてそれらのクリーチャーを強化する《岩面村》もあり、マナフラッドに対してかなり強いアグロとなっています。 最近はイゼット果敢を意識してメインから《魔道士封じのトカゲ》が採用されています。イゼット果敢と赤単の戦いはかなり先手ゲーになりがちなのですが、それはあくまで《魔道士封じのトカゲ》がなかった場合の話です。 《魔道士封じのトカゲ》を引けば、仮に《洪水の大口へ》で一時的に対処されたとしても唱え直してダメージを稼げるので、赤単は後手番でもイゼット果敢に勝利することができます。 赤単は新カードの入る余地はなく、完成されたデッキですね。ビビに意識が寄って単体除去が増えることは赤単としては悪くありません。特に白いデッキがビビに全く効果のない《領事の権限》を抜き始めているので、赤単としては願ったりかなったり。 《一時的封鎖》が《古代魔法「アルテマ」》になろうものならこれ以上望ましいことはないでしょう。重い全体除去は速攻の多い赤単にはほとんど無力ですからね。   歴代最強の赤単アグロ。にもかかわらずイゼット果敢というデッキの存在で、そこまで強烈にメタられているわけではない不思議なこの状況。   今週末は赤単旋風が巻き起こってもなんら不思議ではありません。

【週刊メタゲーム通信】セレズニアトークンが優勝!ドメインにはユウナ、グルール昂揚にはティナとFFのカードも活躍

週刊 Standard ピックアップ

2025.06.18

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今週のメタゲーム通信はスタンダード!   本日はMTGアリーナで開催されていた蒼紅杯 ~FINAL FANTASY~ Izzet Explosive Experiment Eventの結果から最新環境を分析!   蒼紅杯は新環境のスタンダード大会としてすっかり定着しました。勝ち上がるデッキもその後のトーナメントで見ることが多く、毎回僕個人としても楽しみにしています。   蒼紅杯 優勝:セレズニアトークン2位:ドメインオーバーロード3位:イゼットビビ4位:ジャンドミッドレンジ5位:ボロスアグロ6位:グルール昂揚7位:ドメインオーバーロード8位:アゾリウス全知   本大会を制したのはセレズニアトークンでした。   セレズニアトークン 本大会を制したのはセレズニアトークンでした。   アーキタイプとしては以前から存在していたもので、《収集家の檻》を使ったプチコンボが搭載されているトークンデッキです。 3体以上の異なるパワーを持つクリーチャーがいると《収集家の檻》に秘匿したカードが使えるので、本来4マナで兆候する《ミストムーアの大主》や、重い《孔蹄のビヒモス》を最速3ターン目に着地させることができます。 秘匿カードは単にリソースとしても使えますが、このように重いカードを踏み倒すのにも使えます。ただしその際にネックなのが、秘匿の当たりを増やそうとすると手札に引いた時のハズレが増えるという点。それを《ミストムーアの大主》はバッチリクリアしています。   異なるパワーを持つ3体以上のクリーチャーを用意するのはトークンデッキならば容易なことです。《砂嵐の回収者》は自身が1/1、トークンが3/3なので、もう1体クリーチャーが出ていれば、《収集家の檻》でパワーを上げて秘匿を達成できます。 グルールでもお馴染みの《脚当ての補充兵》も新生トークンを生み出すので採用されています。1ターン目に1マナ2/1として出しても強いカードです。 『タルキール龍嵐録』から加入したトークンデッキの相棒、《嵐の討伐者、エルズペス》。トークンを生み出すことに長けるこのデッキなら、生き残ればすさまじいアドバンテージを生み出します。単にトークンを生成するだけでなく、全体強化を行えるのが素晴らしいです。 トークンデッキという性質上、単体除去に非常に強いのが強みで、またクリーチャーの並べ合いに対しても優位性があり、秘匿からの《孔蹄のビヒモス》《ミストムーアの大主》と必殺技もあります。 反面、コントロール系には少し厳しそうに見えたのですが、決勝ではドメインオーバーロードを見事打ち破って優勝しており、そのデッキパワーの高さがうかがえますね。   ドメインオーバーロード そんなセレズニアトークンと決勝を戦ったのがドメインオーバーロード。前環境からスタンダードで活躍するデッキで、トップ8に2人が入賞しています。 大主たちを兆候コストで唱え、《永遠の策謀家、ズアー》によって無理やり起こして攻撃するコンボが搭載されたコントロールデッキで、《豆の木をのぼれ》を引くと手札が減らなくなります。ドメインオーバーロードは豆の木デッキと呼ばれるほどで、各種大主と《力線の束縛》がすべて《豆の木をのぼれ》を誘発させる軽いカードになっているので、脱法豆の木し放題となっているのです。 そんなドメインオーバーロードに今回入ったのは《スピラの希望、ユウナ》。召喚士らしく墓地からエンチャントを吊り上げる能力を持っている彼女は、大主たちをリアニメイトすることができます。もちろん兆候状態ではなくクリーチャーとして蘇らせるので、《ミストムーアの大主》が突然現れます。 しかもクリーチャー・エンチャントに絆魂を付与するので生き残ってしまえばライフレースは一気に壊れることになります。実質《永遠の策謀家、ズアー》が増えたようなものです。 しかも《永遠の策謀家、ズアー》と違い戦場に大主が出ている必要がありません。打ち消しなどを喰らって墓地に落ちた大主を戦場に戻せるので、決して《スピラの希望、ユウナ》は《永遠の策謀家、ズアー》の劣化ではないのです。   面白いのが《ベイルマークの大主》の採用です。これまで大主と言えば《ミストムーアの大主》《ホーントウッドの大主》の定番2種が4枚、そして入っていたとしても《フラッドピットの大主》が少し程度でしたが、墓地を活用できるようになったので、切削でエンチャントを墓地に落とす《ベイルマークの大主》が採用されました。 前述のように《豆の木をのぼれ》を引けば手札が溢れるドメインオーバーロードですが、それ以外のドロースペルは入っていません。《ベイルマークの大主》は攻撃するとクリーチャーを継続的に供給してくれるので、リソース面も担ってくれますね。デッキの安定性を高める手段としても一役買ってくれるナイスな大主です。   《スピラの希望、ユウナ》は打ち消されたり破壊された《豆の木をのぼれ》を戻したり、《力線の束縛》を墓地から戻すなど、大主を動かす以外にも様々な用途がありますね。 特に《豆の木をのぼれ》はデッキのキーカードで、対コントロールでは重要なカードでした。今までは打ち消されてしまっていましたが、《魂の洞窟》から《スピラの希望、ユウナ》を通して《豆の木をのぼれ》を戻す動きができるので、青い相手には《豆の木をのぼれ》を着地させやすくなっています。   グルール昂揚   ファイナルファンタジーと言えば召喚。仲間が召喚を行って敵を攻撃したり、召喚獣のボスと対峙するなど、ファイナルファンタジーを語るなら欠かせない存在ですね。   召喚カードは英雄譚・クリーチャーとしてマジックで表現されることとなりました。伝承カウンターが乗っている間、つまり最初から数ターン後に退場することが決まっているクリーチャーは、フレイバー的には素晴らしいものですが、カードパワー的にはちょっと寂しいところ。 そんな召喚を上手く使うデッキが現れました!グルール昂揚です。   墓地にカードを4種揃えることで爆発的な力を得るグルール昂揚。採用されたのは《召喚:ブリュンヒルデ》です。 第1章でライブラリーの上を追放し、このターンに伝承カウンターをブリュンヒルデに乗せていたら使用できます。つまり、ブリュンヒルデを唱えたターンにも使えますし、次のターンに生き残って第2章を迎えた時にも追放したカードは使用できます。   2章と3章は後続のクリーチャーに速攻を付けてくれるので、《雑食性ハエトリグサ》との相性がバッチリです。1章でリソースを稼ぎながら相手視点では放置できないのですぐに除去される。そんな展開で1対2交換を取りやすいカードです。 このカードがグルール昂揚に採用される一番の理由はやはりそのカードタイプでしょう。エンチャントとクリーチャーの2タイプを満たす第二の《逸失への恐怖》です。《逸失への恐怖》《継ぎ接ぎのけだもの》《野火の木人》《召喚:ブリュンヒルデ》と、このデッキに入っている4種のクリーチャーが2タイプを持っているのです。 昂揚を達成することが命題のグルール昂揚にとって、《召喚:ブリュンヒルデ》の加入は非常に大きいと言えます。追加の《逸失への恐怖》と言ったところでしょう。 そしてもう1つの新カード、《魔導戦士、ティナ》も忘れてはなりません。 戦場に出た時に5枚を切削し、そこからエンチャントを回収と、昂揚の達成とエンチャントの確保を1枚で担える素晴らしい性能。《召喚:ブリュンヒルデ》《逸失への恐怖》を拾いつつ昂揚を達成したら宇宙です。 マナフラッドした際には変身能力もあり、英雄譚となります。召喚獣となったティナは1~3章でエンチャントのコピーを生成します。《逸失への恐怖》をコピーすればダブル《逸失への恐怖》で一気に相手のライフを削れますし、相手としてはティナを放置することはできません。 エンチャントを拾いながら、墓地を肥やし、しかも相手に除去を要求する。さすがはティナ、恐るべし力の持ち主。   今回加入した《召喚:ブリュンヒルデ》《魔導戦士、ティナ》はデッキの潤滑油のようなカードで、昂揚という難しい条件を達成しなければ真価を発揮できないグルール昂揚にとっては、喉から手が出るほど欲しかったカードでしょう。   昂揚が安定するようになり、いよいよグルール昂揚が本格的にメタゲームに食い込んできそうな予感がします。

【週刊メタゲーム通信】王者エネルギーがついにトップ8から姿を消す!繁殖鱗コンボが見事優勝

週刊 Modern ピックアップ

2025.06.03

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   先週末はインディアナポリスでスポットライトシリーズが開催されました。   フォーマットはモダン!地域CSの予選フォーマットでもあるモダンの最新に迫りましょう!   カナダ地域CS 優勝:繁殖鱗コンボ2位:エスパー御霊3位:エスパーブリンク4位:イゼット果敢5位:親和6位:オルゾフブリンク7位:オルゾフブリンク8位:ドメインズー   インディアナポリスで行われたスポットライトシリーズ、トップ8にはなんとボロスエネルギーの姿はなし! 本大会で一番人気となったボロスエネルギーでしたが、トップ8からは姿を消し、トップ16まで見てもマルドゥエネルギーは1枚のみと、エネルギーは本大会では勝ち切ることはできませんでした。   トップ32(4敗ライン)まで見てみるとボロスエネルギーの姿が多く、デッキパワーは高くともフェアデッキであることが、今回は悪い方に作用してしまいました。   ボロスエネルギーは上質なクリーチャーと除去、そして中盤戦を《歴戦の紅蓮術士》《鏡割りの寓話》で戦い、最終的には《火の怒りのタイタン、フレージ》でゲームセットという、非常に安定したデッキです。 どのデッキ相手にも戦えるミッドレンジに近いですが、殴るクリーチャーがすべて軽いため、ブン回りが存在するアグロがミッドレンジとしても戦えるといった表現の方が近いかもしれません。   今回はその安定感、いわゆる丸さが、4敗目を喫してしまった要因と言えます。モダンはどのデッキも圧倒的なブン回りや嵌めパターンが存在し、ボロスエネルギーは打ち消しも2~3ターンキルも存在しないため、そこに抗うことはできないのです。   さて、そんなエネルギー不在のトップ8から見事勝ち上がったのは繁殖鱗コンボ。   《日を浴びる繁殖鱗》に《血の長の刃》を装備すると、クリーチャーが死亡するたびに《日を浴びる繁殖鱗》の上にカウンターが乗ります。 《日を浴びる繁殖鱗》の上にカウンターが乗ると0/1の落とし子トークンが出るので、それを生け贄に捧げると《日を浴びる繁殖鱗》にカウンターが乗り……無限マナ&無限パワータフネスの《日を浴びる繁殖鱗》が出来上がります。 無限マナになった後は《コジレックの命令》でライブラリーを全部掘り、《歩行バリスタ》で勝つも良し。《のたうつ蛹》が既に戦場にいて攻撃できるなら、無限ループ中にこちらも無限のパワーを獲得しているので、殴って終了となります。 コンボパーツの片割れである《血の長の刃》を《ウルザの物語》でサーチでき、どちらも《古きものの活性》で探せるため、意外とこの2枚コンボは成立しやすく、またエルドラージアグロとしての側面を持っているため、コンボ以外の勝ち筋もあるのが魅力です。 コンボパーツを探せる《邪悪鳴らし》が入っているので墓地も超えやすく、エルドラージランプでもお馴染みの《約束された終末、エムラクール》も採用されています。コンボに対して除去を抜けないサイド後は、むしろ除去を腐らせて《約束された終末、エムラクール》勝ちが本線になりそうです。 エルドラージは前述の《古きものの活性》に加えて《コジレックの命令》があり、ライブラリーから特定のカードを引き込むことに長けています。そのため、繁殖鱗のような瞬殺コンボとの相性は良好なのです。 繁殖鱗コンボは緑単であることがほとんどですが、優勝したリストはサイドに《紅蓮地獄》を採用しています。除去の薄いデッキなのでボロスエネルギーの《オセロットの群れ》《魂の導き手》に触れづらく、これらを無視しているとあっという間に《ゴブリンの砲撃》で負けてしまいます。そこで、横並びされたクリーチャーを一層できる《紅蓮地獄》を採用しているというわけです。 《大いなる創造者、カーン》《石のような静寂》などがあると止まってしまう《血の長の刃》コンボですが、《オパールのモックス》を採用しているわけではないため、アーティファクトに対しての依存度はそこまで高くありません。 《日を浴びる繁殖鱗》自体が止まってしまう《鳴り渡る龍哮の征服者》はかなり厳しいでしょうが、アーティファクト対策がさほど刺さらないのは嬉しいですね。 繁殖鱗コンボは数が決して多いとは言えないデッキですが、9位にも入賞しており、本大会一番の勝ち組でした! さて、今回トップ8の内最多勢力となったのはオルゾフブリンク。《ベイルマークの大主》《溌剌の牧羊犬、フィリア》を活用しはクリーチャー主体のミッドレンジで、対クリーチャーデッキに対して圧倒的な相性を誇ります。 トップ4のエスパーブリンクの同タイプのアーキタイプとなっており、苦手なエルドラージ系に対して《記憶への放逐》だけをタッチするのがこれまでは一般的でしたが、先週あたりから登場したエスパーブリンクはメインから青いカードが採用されています。 それが《超能力蛙》です。これまでの2マナ域は《ベイルマークの大主》《溌剌の牧羊犬、フィリア》《骨の皇帝》と、どれも2ターン目のカードとしてはインパクトは弱めでした。 《ベイルマークの大主》は墓地からクリーチャーを拾うため、できれば自分のクリーチャーが除去された後に回収する目的で兆候したいカード。 《骨の皇帝》も墓地のクリーチャーを追放してリアニメイトするので2ターン目のカードではありません。 唯一2ターン目に出してもそこそこ強いのは《溌剌の牧羊犬、フィリア》ですが、ちらつかせるカードが大したことはなく、2マナ域の弱さはオルゾフブリンクの課題でした。 それを解決したのが《超能力蛙》。モダンでも屈指の2マナ域である《超能力蛙》を採用したことで、従来のオルゾフブリンクに比べて圧倒的にプレッシャーが増しました。   《超能力蛙》を採用したことで使いやすくなったのが《新たな夜明け、ケトラモーズ》。《大祖始の遺産》で大量のカードを引ける《新たな夜明け、ケトラモーズ》ですが、盤面に影響を与えない《大祖始の遺産》以外では《溌剌の牧羊犬、フィリア》《孤独》《儚い存在》でしかカードが引けず、《新たな夜明け、ケトラモーズ》を持て余す展開もありました。 そこで《超能力蛙》が活きます。墓地からカードを追放して飛行を付与するとカードを引けるので、《新たな夜明け、ケトラモーズ》がかなり運用しやすくなったのです。   絶対に場に残せないクリーチャーである《超能力蛙》ですが、除去されてもこのデッキでは《ベイルマークの大主》で拾えるので、他のデッキから出てくる《超能力蛙》よりうっとうしいでしょう。 速度が必要なマッチでは《思考囲い》《超能力蛙》で妨害しながら素早く殴りきることもでき、従来のオルゾフブリンクにはない勝ち筋もあります。 オルゾフブリンク自体はエネルギーなどのクリーチャーデッキに強い一方、アミュレットをはじめコンボには苦戦を強いられます。これからもクリーチャーデッキはモダンで活躍するでしょうから、オルゾフブリンクがメタの上位から落ちることはないでしょう。 エスパーブリンクと同様、先週あたりから急に流行の兆しを見せているのがこのアゾリウス親和。本大会でもトップ8入賞を果たし、その実力が本物であることを示しました。   アーティファクト1つにつきコストが軽くなる親和能力を持つのは《思考の監視者》《物読み》の2ドロー組。レガシーでは8castと呼ばれているデッキで、このアゾリウス親和はさしずめモダン版8castと言ったところです。 1ドローになる《ミシュラのガラクタ》、マナ加速の《オパールのモックス》、便利な除去である《ポータブル・ホール》と様々なアーティファクトを出して親和コストに当てつつ、《思考の監視者》《物読み》で引いたカードを連打して物量で押し切るのが親和の戦い方です。 《ミシュラのガラクタ》《オパールのモックス》と入っていれば当然《湖に潜む者、エムリー》は入ります。生き残れば《ミシュラのガラクタ》を使い回してリソースを供給し続け、《モックス・アンバー》からもマナが出せるようになります。 《オパールのモックス》《モックス・アンバー》の並びを見れば次に思い浮かぶのは《知りたがりの学徒、タミヨウ》。当然4枚採用されています。こちらも攻撃で手がかりを生み出すリソース獲得手段でありながら、手がかりはアーティファクトなので親和も稼げて、様々な役割がある素晴らしいクリーチャーです。 攻めを担うのは《ウルザの物語》。このデッキはアーティファクト主体なのでとにかく《ウルザの物語》のサイズが凄まじい!《影槍》と《ウルザの物語》だけで勝ててしまうこともあるほど。 《ウルザの物語》3章で《溶岩拍車のブーツ》をサーチして、速攻で2体の構築物で殴ることもあります。土地なのに1枚で勝ててしまう《ウルザの物語》を最も活用できるのがこのアゾリウス親和です。 《河童の砲手》も忘れてはならないカード。アーティファクトをタップしてコストが軽くなり、ひとたび戦場に出ればあっという間に成長します。アーティファクトが戦場に出るとサイズが上がると共にブロックされなくなるため、実質ブロック不可のクリーチャーで、大体《河童の砲手》が出て2回殴れば勝利です。 しかも護法(4)という凄まじい除去耐性があり、ほぼ呪禁のようなものです。頑張って《孤独》をピッチで唱えて4マナ支払うこともできますが、《金属の叱責》もあるので、中々《河童の砲手》を倒すのは厳しいでしょう。 《思考の監視者》《物読み》で手札を肥やし、展開しながら打ち消しを構えるアゾリウス親和は、回っている時はどんな相手にも強いのではないかと思ってしまうほど、圧倒的な強さです。アグロやコンボに対しても大きく不利がつくことなく、どの相手ともしっかり戦えるのは魅力ですね。 《大いなる創造者、カーン》《石のような静寂》《溶融》などのアーティファクトヘイトは非常に苦手ですが、《河童の砲手》はこのどれも引っかからないカードです。サイド後に対策カードを入れられるのは厳しいですが、決して相性が明確に不利になるというほどではないのです。 アーティファクト主体でありながら《記憶への放逐》が全くと言っていいほど効かないのもポイント。アーティファクト破壊程度ではアゾリウス親和は止まらないので、対策しようとするとしっかり専用カードを取ることになります。 今後は意識しなければならない相手となるでしょう。《大いなる創造者、カーン》を使えない方は《石のような静寂》《溜め込み屋のアウフ》をお忘れなく!

【今週のピックアップデッキ】ボロスモニュメント/ディミーアドラゴン/森林ギフト

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.05.30

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ ボロスモニュメント ディミーアドラゴン 森林ギフト   ボロスモニュメント  Standard RC Qualifier : 2位 By canepis16 MTGアリーナ用インポートデータ 実は少し前から各国の地域CSに現れ始めていたデッキ、ボロスモニュメント。今回マジックオンライン上での地域CS予選にて見事2位という快挙を成し遂げ、今注目を集めています。   その名の通り、このデッキは《忍耐の記念碑》を主軸に据えたミッドレンジ。とはいえ、その速度は中々のもの。 《忍耐の記念碑》はカードを捨てるたびにドロー、宝物生成、3点ルーズから好きなものを選べるアーティファクト。1ターンに各能力を1回ずつしか選べませんが、自分と相手のターンそれぞれで誘発させることができるので、3点ルーズの能力を使い続けるとあっという間に相手のライフは0になります。   とはいえ、カードを捨てるという行為は基本的にリソースを失うもの。そこでこのデッキの多くのディスカード手段は、カードが引けるものとなっています。   スタンダードから下環境まで大活躍の《逸失への恐怖》は、カードを捨てて引くクリーチャー。同じく《光砕く者、テルサ》も捨てた枚数分だけ引くカードなので、いずれも《忍耐の記念碑》でドローモードを選択することで、手札を減らすことはありません。 《光砕く者、テルサ》は一気に2枚捨てられるので、ドローと宝物を選択すれば、宝物分得をしたことになります。 《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》は墓地から戦場に出ると、手札を捨てて3ドローします。もちろん手札が3枚あれば《忍耐の記念碑》でそれぞれの能力を誘発させつつ3ドローでき、このデッキでは非常に輝くことになります。 面白いのが《再稼働》との組み合わせです。《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》は蘇生能力を持っており、通常この3ドロー能力は、蘇生時に誘発するものです。しかし、《再稼働》で墓地から吊り上げた際にも《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》の3ドローが誘発してくれるのです。 《再稼働》はデッキのキーカードである《忍耐の記念碑》を出す手段としても便利ですね。もちろん、《光砕く者、テルサ》などの各種ディスカード手段を吊り上げても良しです。 捨てる手段に特化したクリーチャーである《新ベナリアの守護者》はカードを引くこそできませんが、ディスカードすることで自身に破壊不能を付与できます。最近は追放除去である《苦痛ある選定》はほとんど採用されていないので、非常に場持ちの良いカードです。 更に条件なくいつでも手札を捨てられるので、相手のターンでも気軽に《忍耐の記念碑》を誘発させることができます。とりあえず不要牌を1ドローに変えられますし、ライフを詰める状況なら3点ルーズを自分と相手のターンで使い続けられるので、あっという間に射程圏内までライフを落とせます。 このようにディスカード手段の多くが高品質なクリーチャーで構成されているので、ボロスモニュメントは分類上はビートダウンとなります。《忍耐の記念碑》を置いて各種クリーチャーを展開しながらカードを捨て、ライフを速やかに詰めていきます。   そしてこのデッキでもメインから4枚採用されているのが《魔道士封じのトカゲ》。デッキと噛み合うわけではありませんが、イゼット果敢を意識してのメイン4枚採用です。 《忍耐の記念碑》を置いた後はディスカードがメインになるので、あまり《魔道士封じのトカゲ》からダメージを受けないのは、ちょっとしたポイントです。   《幽霊による庇護》とは一応コンボにはなりますね。《魔道士封じのトカゲ》に《幽霊による庇護》をつけることで、能力によるダメージでもライフを得られるようになります。《幽霊による庇護》の付け先としては破壊不能を付与できる《新ベナリアの守護者》もいるので、このデッキは除去環境にもかかわらず、メインから気兼ねなく《幽霊による庇護》を4枚採用できるのです。 《洪水の大口へ》がなければ《幽霊による庇護》+《新ベナリアの守護者》の組み合わせはもっと鉄壁だったのですが、こればかりは仕方ありません。 《忍耐の記念碑》が面白いぐらいにチェインするデッキなので、少し変わった攻め方をするビートダウンがお好きな方なら、きっとボロスモニュメントを気に入ることでしょう!     ディミーアドラゴン パイオニアリーグ : 5-0 By Desert_24 MTGアリーナ用インポートデータ ドラゴンが活躍する次元、タルキール。久しぶりの再訪となったわけですが、以前のタルキール環境で活躍していたドラゴン、皆さんは最初に何が思い浮かびますか?   ランプの相棒だった《龍王アタルカ》でしょうか。 それとも《黄金牙、タシグル》のネックレスも衝撃的だった《龍王シルムガル》? 僕はまず《龍王オジュタイ》を思い出します。 アンタップ状態で呪禁を持ち、相手に戦闘ダメージを与えると《予期》。フルタップで出したターンは除去耐性があり、打ち消しを構えながら《龍王オジュタイ》で攻撃できるのがこのカードの強みでした。   《龍王オジュタイ》を主軸に据えたエスパードラゴンはスタンダードで大活躍していましたが、その一因としては、やはり《龍王オジュタイ》を守る打ち消し呪文が強力だったのもあるでしょう。   それが《シルムガルの嘲笑》です。 手札からドラゴンを公開することで《対抗呪文》になるこのインスタントは、龍王オジュタイ》とセットで使われ続けました。そしてこの《シルムガルの嘲笑》が、パイオニアで使われる日がついにやってきたのです。 そう、『タルキール:龍嵐録』で登場した2枚のコントロール向きのドラゴンたちと共に。   《マラング川の執政》はスタンダードの青いコントロールに欠かせないカード。前兆モードの3ドロー、1ディスカードと6/7で2枚バウンス、両方のモードが強力です。 そしてこのデッキに4枚採用されているドラゴンが《ゴミあさりの執政》。ドラゴン以外のすべてのクリーチャーに-X/-Xを与えるカードで、こちらもコントロール向きのカードです。本体も4マナ4/4飛行に、護法能力までついています。 この護法がディスカードというのも曲者。相手に護法を要求し、いざカードを捨てたら打ち消してしまえば、たまったものではありません。   《マラング川の執政》《ゴミあさりの執政》の2種類のドラゴンは、言うなればドローと全体除去。無理にフィニッシャーのドラゴンをデッキに入れることなく、《シルムガルの嘲笑》を4枚採用できるのです。 デッキ構築に制限のかからない《シルムガルの嘲笑》は《対抗呪文》そのもの。モダンでも一線級の活躍をしている《対抗呪文》をパイオニアで使えるのですから、一人だけズルをしているのと同じです。 相方の黒もモダン級のカード満載です。《致命的な一押し》《思考囲い》はパイオニアの黒を代表する2枚ですが、いずれもモダン級のカード。要するにこのデッキは実質モダンのコントロールデッキと言っても過言ではないのです! しかもモダンでは使えない《時を越えた探索》も使用できます。墓地を能動的に溜める手段がないので2枚しか採用されていませんが、それでも2マナで7枚を見て、ドロースペルと打ち消しを探し、その2枚を同ターン中に打つのは、《時を越えた探索》にしかできない芸当です。 まるで一つ下の環境のような動きができてしまうディミーアドラゴン。コントロール好きな方、特に《対抗呪文》がお好きならば使ってみましょう!   森林ギフト モダンリーグ : 5-0 By Jeppebc 全世界100万人はいると言われている(?)《王神の贈り物》ファンの皆様、モダンでまた《王神の贈り物》が活躍しています。 スタンダードでは墓地から吊り上げられたり、《来世への門》でデッキから突然出てきたりと、7マナを支払って戦場に出ることがさほどない《王神の贈り物》。このデッキではそもそも戦場にすら出ません。 それならどうやって《王神の贈り物》は活躍するのか?墓地にある《王神の贈り物》に《変容する森林》がなります。 《変容する森林》は昂揚状態の時に起動して墓地のパーマネントをコピーするカード。コピー先である《王神の贈り物》がアーティファクトなので、昂揚しやすいのが嬉しいですね。   その《変容する森林》を引くために入っているのが《邪悪鳴らし》《ウィザーブルームの命令》。いずれも切削しながら《変容する森林》を拾えるカードでありながら、昂揚を満たしつつ《王神の贈り物》を墓地に送れる、一石三鳥のカードです。 《王神の贈り物》によって追放するクリーチャーは定番の《残虐の執政官》と《穢すもの、ウラモグ》。 《残虐の執政官》は説明不要の強カード。本体のサイズはあまり関係ないので、《王神の贈り物》によって4/4に縮んでも問題ありません。速攻がつくので、戦場に出た時と攻撃時の能力が誘発し、《不屈の独創力》で出すよりも相手に壊滅的なダメージを与えられます。   《王神の贈り物》と実は相性の良いカードが《穢すもの、ウラモグ》。追放領域にある一番重いカード分のカウンターが乗るので、《王神の贈り物》で自身を追放すると、カウンターが10個乗ります。滅殺10は《引き裂かれし永劫、エムラクール》も裸足で逃げ出すレベル。 《変容する森林》《王神の贈り物》プランが防がれた時も安心。リアニメイトでお馴染みの《骨の皇帝》も採用されています。《血染めの月》などで《変容する森林》が対処されても安心というわけです。 とはいえ、《骨の皇帝》も《変容する森林》も墓地に依存するカード。墓地対策に弱いのはご愛嬌。サイド後の対策に対して強い《鏡割りの寓話》を採用したりするのも面白いかもしれませんね。 《頑強》を採用してリアニメイト色を更に強くすることもできますし、フェア・アンフェアどちらの方向にも調整できますし、これからが楽しみなデッキですね。 《変容する森林》を使うデッキも色々と増えてきており、《死の国からの脱出》のようにいつか爆発してくる予感がしています!

【週刊メタゲーム通信】現環境もいよいよ大詰め!今週も絶好調のイゼット果敢!忍び寄るかつての王者

週刊 Standard ピックアップ

2025.05.28

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   先週末はカナダで地域チャンピオンシップが開催されました。   参加者447名による『タルキール龍嵐録』環境末期のスタンダードを分析していきます!   カナダ地域CS 優勝:アゾリウス全知2位:イゼット果敢3位:イゼット果敢4位:ディミーアミッドレンジ5位:ジェスカイ眼魔6位:イゼット果敢7位:イゼット果敢8位:赤単アグロ   『タルキール龍嵐録』で《コーリ鋼の短刀》が登場してからスタンダード環境を暴れ続けているイゼット果敢は、最後までその玉座から降りることはありませんでした。   最多勢力で最もメタられる立場にあり続けながら、常にトップ8に複数人が残り、今回も優勝こそ逃したものの、トップ8の半数を占める結果となっています。   準優勝したのはティムールカワウソや4色スローグルクなど、数々の名デッキを手掛けたことで知られるcftsoc選手。最近でも独創的なコントロール型のエスパーピクシーを構築して話題となっていた、稀代のデッキビルダーです。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   そんなcftsoc選手のイゼット果敢は、クリーチャーの選択に一癖あります。   最近のイゼット果敢の一番の調整所がクリーチャーであることは先週もお話しましたね。《精鋭射手団の目立ちたがり》と《ドレイクの孵卵者》のいずれか、または両方を採用したり、《僧院の速槍》を抜いたりと、デッキリストから、使用者がどんな相手を意識しているのかをある程度読み取ることができます。 cftsoc選手は《僧院の速槍》4枚、《ドレイクの孵卵者》3枚で《精鋭射手団の目立ちたがり》0。つまるところミラーマッチを強く意識した構成です。《塔の点火》《噴出の稲妻》で焼かれてしまう《精鋭射手団の目立ちたがり》は同型では少し心もとなく、《ドレイクの孵卵者》は火力に耐えて、生み出すトークンが《精鋭射手団の目立ちたがり》をブロックできるので、《精鋭射手団の目立ちたがり》型のイゼット果敢に比較的強くなります。 《ドレイクの孵卵者》はミラーにおける防御面だけが注目されがちですが、《巨怪の怒り》とのコンボでドレイクを1ターンに複数体生み出す動きも強く、攻撃面においてもそれなりに優秀です。 《僧院の速槍》《ドレイクの孵卵者》の上から入っているクリーチャーが《稲妻罠の教練者》。こちらは果敢を持たない2マナ1/2なので、明らかに攻撃的なカードではありません。 《稲妻罠の教練者》は《選択》《手練》に比べると重いドローカードですが、その分上4枚からカードをピックできるので、質の高いドローが期待できます。具体的には《コーリ鋼の短刀》《食糧補充》など、強力なカードを探しにいけます。 特に《コーリ鋼の短刀》を引けるかどうかはミラーマッチにおいて最も重要で、その《コーリ鋼の短刀》を引く確率を上げられる《稲妻罠の教練者》は、ミラーでそれなりに強いカードと言えるでしょう。   《コーリ鋼の短刀》の誘発に困りそうなぐらいマナフラッドに陥った時は《食糧補充》を探しにいくなど、器用なカードではあるものの、2ターン目に積極的に出したいクリーチャーというわけでもなく、2枚採用には納得できますね。 このリストでもう1つ、忘れてはならないことがあります。それはスペル欄です。お気づきになりましたか?《巨怪の怒り》が2枚しか入っていないことに。 今まで数多のイゼット果敢のリストを見てきました。《稲妻罠の教練者》が入っているリストも中にはありましたが、《巨怪の怒り》が4枚入っていないリストを見たことはありませんでした。少なくとも地域CSを勝っていたリストはすべて4枚だったと思います。   《巨怪の怒り》は暴力的な打点を叩き出すカードですが、一方で除去に弱いカードでもあります。クリーチャーが除去されなくて初めて打点になるカードなので、盤面のクリーチャーをすべて除去されてしまい、手札に複数枚の《巨怪の怒り》を抱えて負け、という展開も多々あります。 そこでcftsoc選手は《巨怪の怒り》を2枚に減らし、しかし《巨怪の怒り》自体にはアクセスできるようにしました。それが《稲妻罠の教練者》です。ゲーム中盤で《巨怪の怒り》が必要になった時に《食糧補充》《稲妻罠の教練者》でライブラリーから探せる構成にし、序盤の《巨怪の怒り》事故を軽減することに成功したのです。 トップメタも進化し続けるのがカードゲームの面白いところ。イゼット果敢を更に進化させ、見事準優勝で世界選手権への権利を獲得しました。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   そしてそんな最強のデッキ、イゼット果敢を下してカナダ地域CSの頂点に立ったのがアゾリウス全知。 墓地に《全知》を落として《アブエロの覚醒》で釣り上げ、そこからすべてのカードを0マナにして勝つ純粋なコンボデッキ。除去が効かないデッキなため、イゼット果敢を意識して多くのデッキが除去をメインから大量に採用している現環境では、メイン戦は非常に戦いやすくなっています。   『タルキール龍嵐録』で《マラング川の執政》が入ったことでデッキが大きくアップデートされたのは以前もお話しした通り。フィニッシャー枠だった《アルケヴィオスへの侵攻》が不要となり、デッキ内に《全知》コンボの専用パーツが《全知》《アブエロの覚醒》の8枚となったため、アゾリウスコントロールのように立ち振る舞うことが、以前よりも簡単になりました。 勝ち手段は《第三の道の創設》による無限切削が最近の流行でしたが、このリストには採用されていません。代わりにこのデッキの勝ち手段となるのが《クチルの側衛》《真夜中の一撃》《悲劇の神託者》です。 《クチルの側衛》は出た時にライフを得たり、墓地を追放するカード。アゾリウスコントロールのサイドボードなんかに入っているのを見かけますね。この《クチルの側衛》を手札に戻して場に出す。これを無限に繰り返すことで無限ライフを得るのが第一の勝ち手段です。 手順は簡単で、《全知》を貼ってすべてのカードが0マナになったら、《クチルの側衛》を出して《マラング川の執政》Aで手札に戻して出し直し、その後《マラング川の執政》Bで《マラング川の執政》Aと《クチルの側衛》を戻す。これを繰り返すだけです。   《真夜中の一撃》は普通に使うと、3マナの除去。しかも相手に人間を献上してしまうため、そこまで優秀というわけではありません。 しかし、この《真夜中の一撃》も《全知》下ではコンボに使えます。自分のクリーチャーを破壊して自分の場にトークンを生成できるのです。   そしてここに《悲劇の神託者》を組み合わせることで無限にトークンを生み出すことができます。 1.《マラング川の執政》2枚と《乱動するドラゴンの嵐》でデッキをすべて引ききる。 2.手札に《マラング川の執政》2枚、《悲劇の神託者》の状態でコンボスタート。 3.《悲劇の神託者》をプレイ。墓地から《真夜中の一撃》《マラング川の執政》《食糧補充》2枚をライブラリーに戻す。 4.《マラング川の執政》を前兆でプレイし、3枚を引く。絶対に《食糧補充》を引くことができるので、プレイ。 5.先ほどの3でライブラリーに戻した4枚の内1枚と、今前兆でライブラリーに戻った《マラング川の執政》をドロー。ライブラリーは0枚に。 6.《マラング川の執政》をプレイし、《悲劇の神託者》を戻す。 7.《真夜中の一撃》で《マラング川の執政》を破壊。トークンを生成する。 8.《悲劇の神託者》をプレイ。《真夜中の一撃》《食糧補充》《マラング川の執政》適当な1枚を選んでライブラリーに戻す。 9.《食糧補充》を打ち、《食糧補充》ともう1枚を取る。もう1度《食糧補充》を打つとライブラリーがまた0枚に。 10.《真夜中の一撃》で《マラング川の執政》を破壊。以降3に戻ることで、無限に《真夜中の一撃》のトークンを生成。 とこのような手順で無限コンボになります。無限ライフ+無限トークンになるので勝利です。   とはいえ、相手をライブラリーアウトにするわけではなく、トークンを出してターンを返すことになるので、勝てないのではないか?と思うかもしれませんが、実は大丈夫です。 たとえば相手が《太陽降下》や《一時的封鎖》などで盤面を流してきたら、無限体のトークンが戦場を離れたことになります。そのため、《クチルの側衛》を無限パワーで出すことができるのです。そのため全体除去も《クチルの側衛》1枚でケアしています。 全知ミラーマッチでは場に《マラング川の執政》4体、手札に《クチルの側衛》、《巻物変容》2枚の状態でターンを返すので、相手がコンボを決めるのは不可能です。《クチルの側衛》で墓地追放するだけで勝ちますからね。   このように、実によく練られたリストです!   コンボに使用する《悲劇の神託者》は、そもそも《全知》コンボを決めるためにも優秀なパーツです。戦場に出た時にカードを引いて捨てる能力を持っていますからね。《決定的瞬間》の方がライブラリーを掘る性能は優秀ですが、こちらは手札に来た《全知》を直接捨てられるので、一長一短です。《食糧補充》で《全知》を引き込んで《悲劇の神託者》で捨てることもできます。 《クチルの側衛》は同型なら相手の墓地を追放して《アブエロの覚醒》を防ぐことができたり、ビートダウン相手にはライフを得ながらブロッカーにもなり、無限パーツではありますが、普段使いもバッチリなのです。 アゾリウス全知はいかに無限パーツ専用カードを減らせるかがテーマで、《第三の道の創設》はかなり美しいリストでした。今回の優勝リストもそれに匹敵する美しさ。《真夜中の一撃》も少し弱いですが一応は万能除去ですからね。 《ファラジの考古学者》《悲劇の神託者》とライブラリーを掘り進めるカードの多くがクリーチャーになったので、特にアグロを意識していると言えるでしょう。《全知》はライフが1でも残っていればコンボが決まるデッキなので、この壁たちが勝利をもたらしてくれることも多々あります。 イゼット果敢たちをなぎ倒したアグロメタのアゾリウス全知がカナダを制したのでした。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   さて、トップ8の中で異彩を放つのが、最近再び息を吹き返してきたデッキ、ディミーアミッドレンジ。   《大洞窟のコウモリ》によるハンデスや除去、《永劫の好奇心》によるドローや各種打ち消しと、黒と青の良いところを取り入れたミッドレンジです。 かつてはトップメタの一角だったディミーアミッドレンジでしたが、『タルキール龍嵐録』以降は少し元気のない印象でした。その理由はもちろん《コーリ鋼の短刀》です。 《コーリ鋼の短刀》は単体除去にはめっぽう強いカードです。2回の呪文を唱えるたびにトークンが出るため、除去を《コーリ鋼の短刀》のトークンに打っているとアドバンテージを失っていきます。 ディミーアカラーはアーティファクトに触る手段が限られるため、《コーリ鋼の短刀》を止めることができず、ダメージレースを挑むことしかできません。そしてリソースを供給するデッキの要である《永劫の好奇心》が《洪水の大口へ》で対処されてしまうため、イゼット果敢に対して上手く攻められません。 これらの理由から、イゼット果敢に少し不利なデッキとされていたディミーアミッドレンジ。実際今回4位に入賞したJayson Babin選手は本大会で対イゼット果敢に3勝3敗と、勝ち越していません。   ディミーアミッドレンジの魅力は、イゼット果敢以外のデッキに強い点です。アゾリウス全知には手札破壊と打ち消しで対処できますし、オルゾフバウンスには《永劫の好奇心》だけで勝てると言っても過言ではありません。 他にもジェスカイ眼魔に強かったりと、トップ8に入賞しているイゼット果敢以外のデッキたちに比較的強いのはデッキの大きなストロングポイントです。 しかも、対イゼット果敢も決して大きく不利がついてしまうというわけではありません。《コーリ鋼の短刀》が最速で出てこない場合は除去と《分派の説教者》のミッドレンジムーブで勝つことも可能ですし、デッキの性質上、大きく不利な相手がいないのも、ディミーアミッドレンジの良い点でしょう。 《群青の獣縛り》を採用して《コーリ鋼の短刀》を意識したリストもあり、ディミーア側もイゼット果敢に対して決して無策というわけではありません。 ほぼ固定パーツなのは《悪夢滅ぼし、魁渡》と《永劫の好奇心》ぐらいで、軽いクリーチャーや除去の選択肢は、意識する相手次第で自在に変えられます。 固定スロットが少なく、メタに合わせてデッキをチューンできるのもディミーアの強みと言えますね。   攻めも守りも自由自在なデッキ。それゆえにプレイも難しいのですが、練習しがいのあるデッキですよ!

【今週のピックアップデッキ】黒単クレリックリアニ/シミック緑甲羅/ダイスファクトリー

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.05.23

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ 黒単クレリックリアニ シミック緑甲羅 ダイスファクトリー   黒単クレリックリアニ SCG CON Hartford RCQ : 6-2 By David Boucher MTGアリーナ用インポートデータ 墓地から巨大なファッティを吊り上げるリアニメイト戦略。最近では最強のリアニメイト先で《偉大なる統一者、アトラクサ》が登場したため、様々なフォーマットでリアニメイトデッキは存在しています。 しかし、今回ご紹介するリアニメイトには《偉大なる統一者、アトラクサ》は入っていません。そもそもこのリアニメイトは黒単色のデッキ。   しかもスタンダードで最も強力なリアニメイト呪文である《ゾンビ化》すら採用していないのです。 《ゾンビ化》の代わりに採用されているのは《ヴァルガヴォスの崇拝者》。1マナで出して4マナ起動で墓地からクリーチャーを吊り上げるため、1+4で5マナの《ゾンビ化》です。 《忘却の虚僧》も《ゾンビ化》を内蔵したクリーチャー。こちらはキッカーで墓地からクリーチャーを吊り上げられるので、6マナの《ゾンビ化》です。 ですが、そもそもこれらの重い《ゾンビ化》を使うぐらいなら、最初から4マナの《ゾンビ化》を使えば良いのでは?そう思った方も多いでしょう。   その疑問に答えてくれるのが《影の儀式の司祭》。他のクレリッククリーチャーを+1/+1するこのクリーチャーですが、実は《ヴァルガヴォスの崇拝者》も《忘却の虚僧》もクレリックなので、ロードの恩恵をしっかりと受けることができます。 そしてなんといっても《影の儀式の司祭》にはもう1つ、狭量な能力があります。他のクレリックを生け贄にすることでライブラリーから直接黒いクリーチャー・カードを戦場に出せるのです。   強いクリーチャーをリアニメイトするには、まず強いクリーチャー。そしてそれを落とす手段。最後に吊り上げる手段が必要となります。リアニメイトは下準備がかなり面倒なコンボです。しかし、《影の儀式の司祭》ならばそれらの準備は必要ありません。クレリックを用意し、マナを支払うだけで良いのです。 デッキから現れる黒いカードは《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》。非常に強い護法能力を持ち、除去するのは非常に困難。しかも生き残れば圧倒的な展開力を見せる、S級クリーチャーです。 この《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を墓地から釣っても良し、《影の儀式の司祭》で直接出しても良しなのがこの黒単クレリックリアニなのです。   《影の儀式の司祭》はこのデッキの主役。リアニメイト、ロード、両方の能力をフル活用します。   上記の2種に加え、黒ミッドレンジでもお馴染みの《分派の説教者》も実はクレリック。3/5になれば更に硬くなりますし、《忘却の虚僧》の3/2絆魂も赤い相手に重宝します。 さて、デッキから《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を出すには《影の儀式の司祭》がありますが、リアニメイトする際は一度墓地に落とさなければなりません。 《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を墓地に落とす手段として、手札からは《ヴェールのリリアナ》や《苦々しい勝利》があります。いずれも除去を兼ねたディスカード手段で、リアニメイトとの相性は良好です。   良く考えられているのが《ベイルマークの大主》の採用です。 ライブラリーから直接《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》を落とせるだけでなく、リアニメイト手段である《ヴァルガヴォスの崇拝者》《忘却の虚僧》を墓地から拾うことができるのです。1枚でファッティを落としながら釣り竿を拾える。実質《納墓》+《再活性》なのです。 《恐怖を喰うもの、ヴァルガヴォス》で気持ちよくなりたい方はぜひこのデッキをお試しください!!     シミック緑甲羅 パイオニアリーグ : 5-0 By  laa11 MTGアリーナ用インポートデータ たびたびパイオニアで話題となる《肥えた緑甲羅》。 パワーよりタフネスの方が高いクリーチャーが戦場に出るたびにライブラリートップを見て、それが土地ならタップ状態で置き、それ以外なら手札に加えるという、シンプルにアドバンテージが取れるカード。《有翼の叡智、ナドゥ》のように土地がアンタップインだったらもっと使われているかもしれませんね。 このシミック緑甲羅は《肥えた緑甲羅》の能力を使い倒すことに特化したデッキ。   入っているクリーチャーのすべてがパワーよりタフネスの方が大きいのです。   《樹上の草食獣》《腹黒茸》は手札から土地を置ける能力。《肥えた緑甲羅》を早いターンに出せる便利なカードです。《腹黒茸》はドローもついていますね。 《金のガチョウ》に《断崖の見張り》まで入っているため、《肥えた緑甲羅》を4ターン目には出すことができるでしょう。とにかく早く《肥えた緑甲羅》を出して、能力を使い始めるのがこのデッキでは最重要です。《肥えた緑甲羅》が土地をめくっていき、次のターンにそれらの土地を使って更なる大量展開というのが勝ちパターンですからね。 少し見慣れないカードである《夢露の幻惑者》は、相手クリーチャーに麻痺を乗せる疑似的な除去としての使い道もあれば、自分のクリーチャーに麻痺を乗せて2ドローもできるので、場の状況や相手によって様々な使い方ができます。自身にも乗せられるため、2ドロー自体は難しくありません。 そして《玻璃池のミミック》。こちらは《肥えた緑甲羅》をコピーするのが主な役割です。《肥えた緑甲羅》が2枚になれば誘発も倍なので、あっという間に土地が増えて全体に修正が入って殴り勝てます。《肥えた緑甲羅》が1回戦場に出たらすぐに《玻璃池のミミック》でコピーしたいですね。 そんな《肥えた緑甲羅》をデッキ外から支えるのが《空を放浪するもの、ヨーリオン》!《肥えた緑甲羅》の誘発条件は、「タフネスがパワーよりも大きいクリーチャーがあなたのコントロール下で戦場に出るたび」なので、《空を放浪するもの、ヨーリオン》自身で誘発するのはもちろん、《空を放浪するもの、ヨーリオン》によって追放したクリーチャーたちでもそれぞれ誘発します。つまり3体のクリーチャーがいたら、《空を放浪するもの、ヨーリオン》+3体の4回、《肥えた緑甲羅》が誘発するのです。 このデッキの《空を放浪するもの、ヨーリオン》は超ハイバリューです。   更に最近はアゾリウス全知やアゾリウスコントロールなど、青系のデッキで活躍している《マラング川の執政》。こちらもタフネスの方が高く、《肥えた緑甲羅》が誘発します。 しかも戦場に出た時にパーマネントを戻す能力は自分のクリーチャーにも使えるので、《肥えた緑甲羅》誘発のためにクリーチャーを戻せます。《空を放浪するもの、ヨーリオン》を戻して《マラング川の執政》をブリンクさせて再利用……なんて使い方もでき、このデッキはとにかく《肥えた緑甲羅》をずっと誘発させ続けることに特化しています! その動きはさながらナドゥ!パイオニアで使える《有翼の叡智、ナドゥ》こと《肥えた緑甲羅》、味わってみませんか?   ダイスファクトリー モダンリーグ : 5-0 By  Zoza 知る人ぞ知るデッキ、ダイスファクトリーが最近密かにモダンで勝ち始めています。   ダイスファクトリーは無色のみで構成されたデッキ。キーカードである《地核搾り》を使って大量のマナを出して戦う、トロンに似た性質を持っています。実際に以前までのダイスファクトリーには《ウルザの塔》などが採用されていました。 どうやってマナを出すのか。それは《地核搾り》の能力を読めばわかります。タップすることでアーティファクトの上に蓄積カウンターを置く能力を使うのです。   蓄積カウンターを乗せることでどうマナが増えるのか?《霊体のヤギ角》と《永遠溢れの杯》がその答えです。これらのアーティファクトは、戦場に出るに際し支払ったX分の蓄積カウンターが置かれて、タップすることで蓄積カウンター分のマナが出ます。 普通に使えば《霊体のヤギ角》は3マナ払って設置して1マナを出し、《永遠溢れの杯》は2マナで1マナ。それぞれ少し弱いマナファクト相当のカードなのですが、《地核搾り》で蓄積カウンターを置けるので、マナの総量を増やせるのです。 《うねりの結節》も《地核搾り》と同じく蓄積カウンターを置くカードで、この2種類で《霊体のヤギ角》《永遠溢れの杯》を超マナアーティファクトにして戦うのがダイスファクトリーの基本戦術となります。 特に《地核搾り》は起動して1個、自身を生け贄に2個と、即座に3個の蓄積カウンターを溜められるので、トロンに近い速度でマナを増やしていくことができます。   以前はトロンランドが採用されていたスロットには《エルドラージの寺院》《ウギンの迷宮》の、エルドラージでもお馴染みの無色土地たちが採用されています。《エルドラージの寺院》を2マナランドとして使うために採用しているエルドラージは、定番の《運命を貪るもの》と、そして《まばゆい肉掻き》です。 無色の呪文を唱えるたびに落とし子を生み出す《まばゆい肉掻き》はこのデッキにはぴったり。《霊体のヤギ角》も《永遠溢れの杯》も蓄積カウンターさえいらなければ0マナで唱えられるので、2ターン目に《まばゆい肉掻き》を出してそのまま2体ほどトークンを作り、次のターンのアクションに備えるなんてことも可能です。   《ミシュラのガラクタ》《オパールのモックス》《永遠溢れの杯》《霊体のヤギ角》と大量に0マナアーティファクトを採用しているので、《まばゆい肉掻き》がとにかく強いデッキなのです。 そして0マナアーティファクトはフィニッシャーである《嵐の目、ウギン》とも嚙み合います。戦場に出たターンに0マナを並べて相手を更地にしつつ、《嵐の目、ウギン》の奥義を目指すのはわかりやすい勝ち手段です。 《嵐の目、ウギン》の加入はこのデッキにとって非常に大きいでしょう。《ウギンの迷宮》を採用するためには7マナ以上の無色のカードが2種必要になりますが、《運命を貪るもの》以外で7マナ以上の無色のカードはあまり選択肢がないのが実情です。《嵐の目、ウギン》は《ウギンの迷宮》で追放できる中で最高のフィニッシャーであり、ダイスファクトリー活躍のキーとなっています。 以前までのダイスファクトリーは大量のマナを使う手段が限られていましたが、このリストは《大いなる創造者、カーン》《嵐の目、ウギン》《コジレックの命令》と大量にあり、《まばゆい肉掻き》《神秘の炉》でライブラリーの上からカードをプレイしていくだけで勝てるイージーウィンも存在します。 ついにダイスファクトリーがモダンのトーナメントを脅かす日がきたのかもしれません!エルドラージがお好きな方はぜひ一度このダイスファクトリーもお試しください。

【週刊メタゲーム通信】メインからメタカードを採用した赤単が優勝!そして新たな赤アグロキラーが登場

週刊 Standard ピックアップ

2025.05.22

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今回は、参加者929名のアメリカの地域CSから、最新スタンダード環境を分析!   アメリカ地域CS 優勝:赤単アグロ2位:アゾリウスコントロール3位:イゼット果敢4位:オルゾフピクシー5位:オルゾフデーモン6位:赤単アグロ7位:イゼット果敢8位:イゼット果敢   アメリカの地域CSはイゼット果敢の使用率が40%にも上り、トップ8には3位が入賞。   使用率1位でトップ8に最多と、今回もやはり最強であることを証明しました。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   今回トップ4に入賞したリストはなんと《僧院の速槍》0枚!このカードがイゼット果敢から抜けることになるとは思わなかったので、非常に衝撃を受けました。 今ではすっかり定番となった《ドレイクの孵卵者》は主にミラーマッチで輝く1枚。1/3というサイズが《噴出の稲妻》で焼かれないため場持ちがよく、警戒で攻守に渡って活躍。 更に《巨怪の怒り》でパワーが瞬間的に5になるので、プラス1回果敢を誘発させると6点が入り、一気にドレイクを2体生成できます。ドレイクは《精鋭射手団の目立ちたがり》のブロックにも役立ち、《ドレイクの孵卵者》をメインに入れてミラーを意識するリストが最近では増えてきました。 その《ドレイクの孵卵者》を入れるためにこれまで抜けていたのは《精鋭射手団の目立ちたがり》でした。ミラーマッチでは《噴出の稲妻》に焼かれてしまうことから、このスロットが《ドレイクの孵卵者》になっているリストが多かったのですが、《精鋭射手団の目立ちたがり》が抜けることでアゾリウス全知やドメインなどに対する勝率が落ちてしまいます。 その結果、《ドレイクの孵卵者》と《精鋭射手団の目立ちたがり》をどちらも少しずつ採用するのが一般的だったのですが、最初に言ったように、このリストは《僧院の速槍》が抜けています。 《僧院の速槍》は確かに1マナ域としては優秀ですが、《精鋭射手団の目立ちたがり》のように生き残った時に高い打点を叩き出すカードでもなければ、《ドレイクの孵卵者》ほどミラーマッチで攻守に渡って活躍しません。 どのマッチでも最低限の活躍をするカードではあるものの、特定のマッチアップで必ず引きたいというほどでもない。そんな評価を《僧院の速槍》に下し、デッキからすべて抜いてしまったのでしょう。   スペルも独特なカード選択が光ります。《噴出の稲妻》を1枚におさえて《塔の点火》を3枚採用し、赤単や同型を意識しています。 赤単の《心火の英雄》や、ミラーマッチは協約することで《ドレイクの孵卵者》を対処できることから、赤いアグロには《塔の点火》の方が《噴出の稲妻》より強力です。《コーリ鋼の短刀》からもトークンが出るので、イゼット果敢は赤単に比べて協約を達成しやすいデッキでもあります。 《洪水の大口へ》は2枚から3枚が定番でしたが、このリストは4枚採用となりました! イゼット果敢対策として採用されている《一時的封鎖》に対応するために最近では多めに採用されているバウンスですが、ミラーマッチで《ドレイクの孵卵者》を戻す手段としても重宝するので、腐るマッチがほとんどない状態。4枚採用も納得ですね。 クリーチャーとスペルの両方に工夫が凝らされたイゼット果敢が見事にトップ4入賞を果たしました! 【MTGアリーナ用インポートデータ】   イゼット果敢が相変わらず人気の中、優勝を収めたのは赤単アグロでした。 イゼット果敢に比べてサイドボード後にメタられやすかったり、《全知》などに対して耐性が低いなどの欠点はあるものの、それでも長らくアグロ界の王者として君臨していた赤単。 パイオニアでもお馴染みの《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》のハツカネズミコンビたちは、決して《コーリ鋼の短刀》に引けを取っていません。 そんな赤単ですが、今回優勝したリストはなんとメインに《魔道士封じのトカゲ》を3枚採用!非常に思い切った採用となりました。 《魔道士封じのトカゲ》によって苦しめられるデッキはもちろんイゼット果敢。《コーリ鋼の短刀》の誘発はもちろん、各種果敢のためのキャントリップ呪文を重ねていくイゼット果敢は、《魔道士封じのトカゲ》でとにかくダメージを負います。 しかもイゼット果敢はタフネス3までなら《塔の点火》でなんとか対処できますが、4は完全に射程圏外。5マナで《噴出の稲妻》をキッカーするか、もしくは火力を2枚使うしかありません。しかも2枚の火力を使った時点で3点を受けることは確定しているので、ライフレースとアドバンテージ、両方で一気に不利になります。 これまでの赤単とイゼット果敢の戦いは熾烈なダメージレースでした。《コーリ鋼の短刀》を絡めてイゼット果敢が勝利したり、後手番では除去から《食糧補充》だったりと、イゼット果敢側に僅かではありますが分があったのですが、《魔道士封じのトカゲ》をメイン投入されたとなると、揺蕩っていた相性差は一気に赤単側に傾くことになります。 もちろん《魔道士封じのトカゲ》はイゼット果敢以外のすべてのマッチで強くありません。《全知》に一見強いカードですが、実際は大量のバウンスや《一時的封鎖》で対処されてしまうので、おそらくサイドアウトするでしょう。 それでもイゼット果敢が4割のフィールドなら、役に立ったことの方が多いでしょう。《魔道士封じのトカゲ》が役に立たないマッチでは、《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》のラインで勝ててしまうこともあるでしょうし、マリガンした際にはボトムに送れば良いのです。リスト公開で強い構成と言えるかもしれません。 見事な《魔道士封じのトカゲ》メイン構成の赤単がアメリカの地域CSを制したのでした。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   そんな赤単に決勝こそ敗れはしたものの、赤アグロの海を見事に泳ぎ切り、準優勝を収めたのがアゾリウスコントロール。   ドローと除去と打ち消し。誰もがその名前から想像する古典的なコントロールデッキですが、今のアゾリウスはそのどれもが一流です。   まずは青に欠かせないドロー。《食糧補充》は説明不要の、スタンダード最強のドロースペル。《時を越えた探索》とまで言われており、3マナで5枚から好きな2枚を取れる、シンプルかつ最強のドローです。除去や土地など、その時に欲しいカード2種類が揃います。 そして《マラング川の執政》。呪文として唱えた際はインスタントの3枚ドローとまずまずですが、クリーチャーとして出した場合がとにかく強い。戦場に出た時に2体をバウンスしながら6/7が立つので、一気に盤面をひっくり返せます。フィニッシャーとして十分な風格があり、ドロースペルとしても申し分ありません。今の青いコントロールを支える1枚ですね。 全体除去は《審判の日》に《別行動》。《別行動》が3枚と多めに採用されており、《一時的封鎖》と合わせて3マナの全体除去が5枚となっています。メインから2枚採用の《領事の権限》とはコンボで、出したターンのクリーチャーと攻撃クリーチャーが全部タップ状態になるので、まとめて対処できて便利です。 《コーリ鋼の短刀》で出たトークンもタップ状態なので、速攻で殴られる心配がなくなります。   打ち消しも強化版《マナ漏出》の《喝破》に、ドローもできる《三歩先》、そして《否認》とパイオニアクラスのラインナップ。ただし環境が速いことも考慮して、枚数はそれぞれ2枚となっています。 アゾリウスコントロールは赤アグロに対してだけでなく、赤アグロをメタったデッキに強いのも特徴です。除去ばかり入れた大ぶりなコントロールはアドバンテージを取られ続け、長期戦の末、《完成化した精神、ジェイス》に敗れることになりますし、コンボデッキは打ち消し呪文の餌食となります。 打ち消しと除去で理論上どんな相手にも強いのがアゾリウスコントロールですが、現環境でもそれがしっかり証明される形となりました。   今大会でもイゼット果敢を7回、赤単アグロを1回倒しており、圧倒的な赤アグロキラーと言えるでしょう。 《強迫》と《不浄な別室》擁する黒系ミッドレンジに対してのみ、予選ラウンドでは1敗1分となっていますが、決して相性が悪いというわけではないと思われます。手札破壊以上のドロースペルが入っていますし、相手もメイン戦では《不浄な別室》以外でアドバンテージを取る手段がなく、大量の除去を腐らせることになるはずです。 現れては消えていたアゾリウスコントロールですが、今後はメタゲーム上に残ることになるでしょう。意識しなければならない強敵が、またスタンダードに現れました。

【週刊メタゲーム通信】今週はミッドレンジが大活躍!メルボルンではディミーアとラクドスのミッドレンジ対決!

週刊 Standard ピックアップ

2025.05.14

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今回は、メルボルンと中国で行われた地域CSの結果から、最新のメタゲームを分析していきます。   メルボルン 優勝:ディミーアミッドレンジ2位:ラクドスミッドレンジ3位:オルゾフピクシー4位:グルール昂揚5位:イゼット果敢6位:ジェスカイ眼魔7位:イゼット果敢8位:ジェスカイ眼魔   優勝を争ったのはなんとディミーアとラクドスのミッドレンジ対決!   ジェスカイ眼魔とイゼット果敢はトップ8の準々決勝で全員が破れ、ミッドレンジたちが勝ち上がりました。   ミッドレンジ界の頂点に立ったのはやはりディミーアミッドレンジ。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   なぜミッドレンジ対決においてディミーアは強いのか?その答えは何と言っても《永劫の好奇心》です。 自軍クリーチャーの攻撃が通るだけで1ドローという性能を持つ4マナ4/3瞬速。それだけで脅威にもかかわらず、除去してもエンチャントとして戦場に残るので、完璧に処理するには追放か、除去+エンチャント破壊しかありません。   《永劫の好奇心》を放置するには戦場のクリーチャーを根こそぎ処理するしかないのですが、そんなことは到底現実的ではありません。《遠眼鏡のセイレーン》《フラッドピットの溺れさせ》《大洞窟のコウモリ》などの小粒なクリーチャーから、《分派の説教者》《黙示録、シェオルドレッド》《悪夢滅ぼし、魁渡》と、強力な生物まで揃っています。 ミッドレンジ対決はアドバンテージの稼ぎ合いとなるため、《永劫の好奇心》を採用できることこそ、ディミーアミッドレンジがミッドレンジ界の王たるゆえんなのです。 さて、そんなディミーアに決勝で敗れてしまったものの、大健闘を見せたのがラクドスミッドレンジ。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   ミッドレンジの中でも少し攻撃的なミッドレンジといったところでしょうか。2ターン目から《大洞窟のコウモリ》で手札破壊をする他、《逸失への恐怖》《太陽の執事長、インティ》といった2マナでリソースを稼ぐ攻めカードが採用されています。 4枚採用されている《すりのチビボネ》は相手の墓地野パーマネント・カードを唱えられます。《強迫》で《不浄な別室+祭儀室》を落として奪ったり、クリーチャー同士の相打ちで墓地が溜まったところに出すと、1マナ域とは思えないプレッシャーになります。 とはいえ、所詮は1/1のクリーチャー。接死で相打ちを取るのが主な役割なのですが、このデッキではその《すりのチビボネ》を活かすことができます。   《運命を笑う者、アリーシャ》によって。 このターンに攻撃していると誘発する強襲能力で、墓地から《運命を笑う者、アリーシャ》のパワー以下のマナ総量のクリーチャーを墓地から吊り上げることができます。戦場に出したターンは大体パワー2なので、2以下のクリーチャーをリアニメイトできるというわけです。   《逸失への恐怖》《太陽の執事長、インティ》、《大洞窟のコウモリ》に《すりのチビボネ》とよりどりみどりです。 特に《すりのチビボネ》は相手も積極的に止めたいカードなので、墓地に落ちていることが多く、《運命を笑う者、アリーシャ》で何度も釣られるとうっとうしくて仕方がないでしょう。 1~2ターン目からクリーチャーを展開し、除去されたカードを《運命を笑う者、アリーシャ》で釣り上げると、まず《運命を笑う者、アリーシャ》がマスト除去になるので、釣ったクリーチャーは残ってくれます。1対1交換を繰り返して勝利を目指すミッドレンジの動きが攻撃的に行えるというわけですね。 《ギックスに拾われし者、ミシュラ》と《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》のコンビを採用しているのも実に面白い! 《ギックスに拾われし者、ミシュラ》はクリーチャーで攻撃するとライフをドレインできるので、クリーチャーがたっぷり入ったこのデッキではかなりのダメージが期待できます。 一方、リソースを稼ぐのが《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》。蘇生時に手札を捨てて3枚引くのが基本的な使い方なのですが、実は墓地から戦場に出ると能力が誘発するので、《運命を笑う者、アリーシャ》で墓地から戦場に戻しても良いのです。 マナ総量は3なので、《運命を笑う者、アリーシャ》に+1/+1カウンターが1つでも乗っていれば《ファイレクシアのドラゴン・エンジン》をリアニメイトでき、非常に強力な動きとなります。 もちろんゲームが長引いて合体すれば、戦場に出た瞬間に盤面や相手の手札に干渉するので大体勝利です。 とても革新的なリストで、見事2位にまで上り詰めました!   中国 優勝:アゾリウス全知2位:イゼット果敢3位:オルゾフミッドレンジ4位:イゼット果敢5位:グルールアグロ6位:赤単アグロ7位:アゾリウス全知8位:アブザンピクシー   一方、中国の地域CSではアゾリウス全知が優勝を収め、トップ8にも駒を進めています。   赤アグロはイゼット果敢が2人に赤単・グルールのハツカネズミ軍団たちも残り、大活躍と言ったところ。   単色・2色のデッキたちがトップ8を独占する中、一人息を吐いたのがアブザンピクシー。バウンス軸のデッキとして唯一の入賞です。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》の8枚のバウンスで、《望み無き悪夢》《逃げ場なし》《勢い挫き》を戻して再利用するセルフバウンス系統のデッキ。 《一時的封鎖》まで採用されており、《一時的封鎖》で自分の《養育するピクシー》《望み無き悪夢》などを追放し、《陽光真珠の麒麟》で《一時的封鎖》を回収。すると自分で追放していた《望み無き悪夢》なども戻り、更に《養育するピクシー》で《陽光真珠の麒麟》を回収できるので、《一時的封鎖》を使い回し続け、《望み無き悪夢》《勢い挫き》などを何度もぐるぐる回せるようになります。 ここまではオルゾフピクシーと同じですが、アブザンは緑を足し、強力なクリーチャーたちを採用できます。   手札破壊を行うのが《絶縁の僧侶》。戦場から離れると、追放したカードのマナ総量分のサイズを持つクリーチャーを相手に献上しますが、《難題の予見者》のように相手にカードを引かせないのがポイントです。《絶縁の僧侶》が対処されても失った手札は回復しないのです。 デッキには大量に除去が入っていますし、トークンは《一時的封鎖》でまとめて処理できるのでさほど困りません。特にアゾリウス全知のような除去が効かないデッキに対しては、手札で除去が腐り続けるので、《絶縁の僧侶》から出たトークンを対処するのにぴったりです。 そしてアブザンピクシーを支える強力な4マナ域、《ヤサンの街道見張り》。カードを4枚切削してマナ総量が3以下のクリーチャー・カードを戦場に戻せるので、《絶縁の僧侶》で手札破壊を行ったり、余裕があれば《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》を吊り上げて、《ヤサンの街道見張り》を回収し、更なる展開を望めます。 以前までのアブザンピクシーには《遊撃サイ》が入っていたスロットには、《名もなき都市の歩哨》が採用されています。 3/3/4のスタッツは《遊撃サイ》と同じですが、地図で4/5へサイズを上げたり、ドローの質を向上できるなど、ライフドレインの《遊撃サイ》に比べて、用途が広いのが《名もなき都市の歩哨》です。警戒なので攻守に渡って優れており、赤アグロの多い環境なら非常に強いカードです。 1枚採用の《カルシの帰還者》もセンスが光るチョイス。《名もなき都市の歩哨》の地図、《ヤサンの街道見張り》の切削と、墓地で誘発するカードには価値があります。《名もなき都市の歩哨》が《カルシの帰還者》の相続を受けたらもう勝ったも同然!1枚入れるだけで切削にバリューが生まれるので、アブザンピクシーを使うならぜひ1枚は採用したいですね。 決勝ラウンドでは振るわなかったものの、赤単・イゼット果敢キラーとして本トーナメントで活躍したアブザンピクシーは、これから数が増えてくるかもしれませんね。   先週末はミッドレンジが大活躍!果たしてここからスタンダードのメタゲームはどのように変化していくのでしょうか。

【今週のピックアップデッキ】グルール昂揚/ディミーア忍者ローグ/ハンマータイム

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.05.09

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ グルール昂揚 ディミーア忍者ローグ ハンマータイム   グルール昂揚 チャンピオンズカップファイナル : 11位 By Shintaro Ishimura MTGアリーナ用インポートデータ チャンピオンズカップファイナルではイゼット果敢4人に赤単アグロ2人と、2種の赤アグロがトップ8に入賞しましたが、それらとは異なる形の赤アグロが、プロツアーの権利を獲得できる9勝3敗の成績を収めていました。   それがグルール昂揚です。   4種のカードタイプを墓地に揃えることで達成される昂揚。かなり難しい条件のため、昂揚条件を達成した際は大きなボーナスが用意されています。   《継ぎ接ぎのけだもの》は昂揚すれば1マナ3/3の《野生のナカティル》相当のクリーチャー!アップキープの切削と、自身がアーティファクト・クリーチャーなので、昂揚を助けてくれるナイスな1マナ域です。 様々なフォーマットでお馴染みの《逸失への恐怖》も、ディスカードを持ちつつ、エンチャント・クリーチャーとして墓地でも昂揚に貢献します。 昂揚していると2マナ4/3速攻トランプルと破格の性能を持つのが《野火の木人》。このカードがグルール昂揚のスピードを上げてくれています。やはりアーティファクト・クリーチャーなので昂揚を達成しやすいのも〇。 そして最後の昂揚カードは《暴力的衝動》。こちらはクリーチャーではありませんが、たった1マナでクリーチャーに二段攻撃を付与するすごいインスタントです。トランプルを持つ《野火の木人》と組み合わせた時の破壊力はピカイチ。《逸失への恐怖》で2回攻撃も発生するので、二段攻撃と組み合わせると実質4回攻撃になりますね。 さて、昂揚のバリューが高いことがわかったところで、肝心なのは昂揚の達成手段です。   《野火の木人》に《逸失への恐怖》と質の高いクリーチャーが2種のカードタイプを持っているのはわかりましたが、それをどのように墓地に落とすのか。   ここで最近引っ張りだこの《光砕く者、テルサ》が光ります。 3マナ3/3速攻の優れたスタッツに、カードを2枚捨てて2枚引く能力がついているため、昂揚に必要なカードを墓地に落としつつ、攻撃していけます。以前まではこのスロットが《蓄え放題》《浚渫機の洞察》といった戦場に影響を及ぼさないカードだったので、積極的に攻撃したいグルール昂揚と少し合わなかったのですが、非常に攻撃的な《光砕く者、テルサ》が加入したことで、デッキがグッと締まりました。 グルール昂揚でしか使えない超強力なソーサリーと言えば《脱走》。たった2マナで、ライブラリー上6枚から2マナ以下のクリーチャー・カードを速攻を持った状態で戦場に出せます。非常に強力なカードではあるものの、中々活きるデッキがないのですが、グルール昂揚とはかなり相性が良いのです。特に《逸失への恐怖》を出して速攻で攻撃し始めると、予想外からのリーサルが発生する場合も。ソーサリーカウントとしても優秀です。 《鋭い目の管理者》は昂揚能力は持ちませんが、4種類のカードタイプを追放すると+4/+4トランプルになる2マナ3/3。どちらかと言えばそのパンプ能力よりは、墓地追放がメインの使い方となっています。 ジェスカイ眼魔はもちろん、《嵐追いの才能》が入っているイゼット果敢などにも墓地追放は効きますし、昂揚を満たすことを前提にしたデッキなので、自分の墓地を追放して7/7トランプルを作りやすく、今回の隠れMVPかもしれません。   他の赤アグロと一味も二味も違うグルール昂揚、ぜひお試しください。     ディミーア忍者ローグ パイオニアリーグ : 5-0 By  season_urb MTGアリーナ用インポートデータ かつてスタンダードで最強のデッキだったローグ。 《盗賊ギルドの処罰者》で相手のライブラリーを切削し、《空飛ぶ思考盗み》などと共に殴り勝つも良し、相手をライブラリーアウトさせたり、《物語への没入》と《夢の巣のルールス》でコントロールするなど、様々な勝ちプランを持っている、とてもいやらしいデッキでした。 最近では青黒系のアグロデッキと言えば忍者になっていましたが、今回はならず者が久しぶりにパイオニアで勝利しました!   パイオニアならではのならず者をご紹介しましょう。忍者にも入っている《フェアリーの悪党》ですね。戦場に出た時に他に《フェアリーの悪党》がいれば1ドローできる忍者です。《マネドリ》との相性がバッチリで、《フェアリーの悪党》のコピーとして場に出してカードを引けます。 その《マネドリ》のコピー対象が増えたのがディミーアローグの魅力です。《盗賊ギルドの処罰者》をコピーすると、ならず者を出した時の切削枚数が4枚に増えます。1枚の《盗賊ギルドの処罰者》ではライブラリーの心配は必要ありませんが、倍になれば話は別です。 《空飛ぶ思考盗み》はローグのキーパーツ。《フェアリーの悪党》《マネドリ》など軽いならず者にパワー修正を与えれば一気に脅威になりますし、《マネドリ》でコピーすれば修正値と切削枚数もとんでもないことになります。 そしてこれらのローグ軍団と手を組むのが忍者たち。   《月回路のハッカー》《悪夢滅ぼし、魁渡》の2人の忍者はいずれも忍術でクリーチャーを手札に回収することができます。ならず者を戻して出し直せばそのたびに《盗賊ギルドの処罰者》が誘発しますし、序盤は《フェアリーの悪党》をコピーしていた《マネドリ》を拾い、更に強い別のクリーチャーのコピーに変えられます。 ならず者でも忍者でもありませんが、《フラッドピットの溺れさせ》は忍術と相性の良いクリーチャー。ブロッカーをタップしながら攻撃を通して忍術ができて、しかも能力も再利用できるので、《悪夢滅ぼし、魁渡》を使うデッキなら《フラッドピットの溺れさせ》は必須ですね。 従来のディミーア忍者に比べて、ローグ成分が加わったことで、特に攻撃面が更に強化されました。   《空飛ぶ思考盗み》による全体強化に1マナ3/2の《盗賊ギルドの処罰者》はライフを削る性能が高いだけでなく、ライブラリーアウトという新たな勝ち手段も作れます。ライフをなかなか削れないコントロールなどにはかなり現実的な勝ち筋です。   守りの観点から見ても《盗賊ギルドの処罰者》は決して悪いカードではありません。相手の墓地が溜まれば1マナ3/2接死なので、サイズの小さいこのデッキでは貴重な相打ち要因となります。 忍者から更に攻撃的になったディミーアローグ、忍者がお好きな方はいかがでしょうか。   ハンマータイム モダンリーグ : 5-0 By  aspiringspike 《巨像の鎚》を《シガルダの助け》でつけて殴るコンボ要素のあるアグロ、ハンマータイム。 シンプルな戦略で最速2ターンキルも可能なハンマータイムは、当初はファンデッキでしたが、《ウルザの物語》加入後は様々な戦略を取ることが可能となり、一気にメタデッキの仲間入りを果たしました。 そんなハンマータイムの新たな形が、赤を入れたこのボロスカラーのハンマータイム。加わった赤いカードは……色々なフォーマットで暴れているあの装備品です。   そう、《コーリ鋼の短刀》です。 《コーリ鋼の短刀》でモンクを生成するためには継続的にスペルを2回唱える必要がありますが、当然毎ターンカードを2回使用すると、手札がなくなってしまいます。そのため、キャントリップや《食糧補充》など、カードを引き続けられる青と組み合わせて使われることが多いので、赤白で採用されるのは少し珍しいですね。 0マナのアーティファクトは《オパールのモックス》と《ミシュラのガラクタ》で8枚入っており、2ターン目に《コーリ鋼の短刀》を出してそのままモンクを生み出すことができます。 更にデッキ内のほとんどが1マナ以下なので、手札がある限りはモンクは誘発させ続けられるでしょう。   肝心のカードを引く手段ですが、《純鋼の聖騎士》がハンマータイムにはあります。装備品が戦場に出ると1ドローなので、2つ装備品を出せば、手札を失うことなく、モンクトークンが出てきて、しかもそのモンクに装備品を即つけられます。 このデッキが面白いのは、《コーリ鋼の短刀》の装備品としての性能が噛み合っている点です。《巨像の鎚》をつけたクリーチャーがチャンプブロックされて何もできないことはよくありましたが、《コーリ鋼の短刀》のトークンに《巨像の鎚》をつければ12/12トランプルでブロックを許しません。 速攻で攻撃できるのも大きなメリットで、これまで盤面のクリーチャーをすべて対処された場合、どうしても攻撃するまでに1ターンのラグが発生していましたが、除去で盤面を空にされても《コーリ鋼の短刀》のトークンに様々な装備品をつけて一撃で相手のライフを0にできます。   クリーチャーがいないと意味がない装備品と、クリーチャーを供給しつつ速攻を付与する《コーリ鋼の短刀》の相性はとても良いのです。   《鷹持ち、カサンドラ》はデッキから《レオニダスの槍》を場に出すクリーチャーで、その《レオニダスの槍》の付け先として最適。とはいえ、出して2マナを払って装備するのは中々モダンでは難しい。 その装備コストを《純鋼の聖騎士》で0にしたり、《シガルダの助け》で自動装備できる状態になるとしたら話は別です。《鷹持ち、カサンドラ》を出して《シガルダの助け》で《レオニダスの槍》を装備し、速攻で殴って二段攻撃付与、ダメージを通して《鷹持ち、カサンドラ》の能力で2ドローと、装備コストを踏み倒せるだけで《鷹持ち、カサンドラ》の動きはすさまじくなります。 《龍火の刃》は《ウルザの物語》からサーチすることも可能な装備品。装備コストは重いものの、単色からの呪禁と+2/+2を付与でき、一度装備すれば《孤独》《致命的な一押し》をはじめモダン環境の様々な除去を受けなくなります。 《鷹持ち、カサンドラ》への装備コストは2マナなものの、他のクリーチャーには基本的に3マナ必要ですが、こちらも《純鋼の聖騎士》《シガルダの助け》で踏み倒せるため、ただただデメリットのない超狭量な装備品となります。 《オパールのモックス》解禁によって大幅な強化を受けたものの、いまだトーナメントではさほど活躍できていなかったハンマータイムですが、近頃リーグでの5-0数も増えてきており、これから最前線に復帰していくかもしれませんね!

【週刊メタゲーム通信】日本ではイゼット果敢が大暴れ!一方アメリカではアゾリウス全知が大躍進

週刊 Standard ピックアップ

2025.05.07

mtg Yuyan

こんにちは。   細川 侑也(@yuyan_mtg)です。   今回は、日本とアメリカで行われた地域CSの結果から、最新のメタゲームを分析していきます。   日本 優勝:オルゾフピクシー2位:イゼット果敢3位:黒単デーモン4位:イゼット果敢5位:イゼット果敢6位:赤単アグロ7位:イゼット果敢8位:赤単アグロ   日本で行われたチャンピオンズカップファイナル(地域CS)、一言で言うなら圧倒的な赤さ!!   トップ8の内6つが赤いデッキで、その内訳はイゼット果敢が4人、赤単が2人です。   今回最大勢力だったイゼット果敢は30%以上のプレイヤーが選択しており、アメリカの地域CSでも同様の結果となっていました。一番人気のデッキがトップ8の半数を占める結果となり、最強のデッキであることは明らかです。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   《僧院の速槍》《精鋭射手団の目立ちたがり》の8枚のクリーチャーに《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》を合わせた事実上の16枚のダメージソースを、《手練》や《選択》で強化し、《食糧補充》で追加リソースを獲得して継続的に打点を稼いでいくのがイゼット果敢。 ですが、この準優勝の芝田選手のリストのように、《ドレイクの孵卵者》を採用したイゼット果敢が本トーナメントでは散見されました。 ご覧のようにイゼット果敢にはメインに3点火力が入っていないことが多く、《ドレイクの孵卵者》を対処できるのは《洪水の大口へ》のみ。そのため非常に場持ちがよく、出てくるドレイクも《精鋭射手団の目立ちたがり》のブロッカーとして最適です。 更に《巨怪の怒り》との組み合わせでドレイクを生み出しやすくなるのも魅力です。一度タフネス4の《ドレイクの孵卵者》を作ってしまえばジェスカイ眼魔なども対処が難しいですし、《ドレイクの孵卵者》は黒以外のアグロデッキに対して強いカードとなっています。 今回は赤単にイゼット果敢と赤が非常に多いフィールドだったので、《ドレイクの孵卵者》は大活躍だったに違いないでしょう。 そんなイゼット果敢と共に今大会で相手のライフを脅かし続けたのが赤単アグロ。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   イゼット果敢登場までは赤アグロと言えばハツカネズミでした。もちろん《コーリ鋼の短刀》が登場してからも、赤単の強さは色あせていません。トップ8にしっかり2人が駒を進めています。 グルール・ボロスなど様々なバリエーションが存在する赤アグロですが、トップ8に残ったのはいずれも赤単。やはりライフレースとなるマッチにおいて色を増やすリスクは大きく、またサイドボードの《陽背骨のオオヤマネコ》を強く使えるのも赤単のメリットです。 《光砕く者、テルサ》は最近の赤単ではすっかり定番となった1枚。これまでドローする手段と言えば《探索するドルイド》程度しかなく、そのために緑をタッチするリストもありましたが、《光砕く者、テルサ》が入ってからは《探索するドルイド》に頼る必要はなくなりました。 《探索するドルイド》と違ってリソースが増えることはありませんが、手札に溜まった土地や除去を捨ててカードを探しにいけますし、墓地が7枚以上あれば墓地からカードを使用できる可能性もあります。   特にサイド後は《陽背骨のオオヤマネコ》を入れることになるのですが、《探索するドルイド》だと中々《陽背骨のオオヤマネコ》を唱えられないのが悩みどころでした。土地が3枚しかない状態で《陽背骨のオオヤマネコ》がめくれてしまい、そのまま追放される……なんて経験をした方も多いはず。 しかし、《光砕く者、テルサ》なら単純にドローなので《陽背骨のオオヤマネコ》が追放される心配はありません。本体性能も3マナ3/3速攻と十分強く、赤単の安定性に一役買ういぶし銀のカードと言えますね。   《魔道士封じのトカゲ》が今回の赤単にはどちらにも採用されていますが、これはイゼット果敢を強く意識したクリーチャーです。1/4というサイズはイゼット果敢は非常に対処しづらく、《抹消する稲妻》などの2マナ4点火力はまず入っていないため、3マナの《焦熱の殲滅》や2点火力2枚などでしか除去できません。 赤単を使うなら《魔道士封じのトカゲ》は4枚固定になりそうですね。   さて、そんな赤アグロの波を泳ぎきり、見事チャンピオンに輝いたのはオルゾフピクシーでした。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   《養育するピクシー》《陽光真珠の麒麟》の自分のパーマネントを手札に戻すセルフバウンスカードで、《望み無き悪夢》《逃げ場なし》《勢い挫き》を戻して、手札破壊や除去を行ってアドバンテージを稼ぐコントロールデッキです。 このデッキの最大の長所はなんといっても《一時的封鎖》を非常に強く使える点にあります。 《一時的封鎖》はもともと、イゼット果敢対策として注目されていたカードでした。ただの除去では《コーリ鋼の短刀》にはほとんど意味がなく、それがイゼット果敢対策を難しくさせている要因だったのですが、《一時的封鎖》はトークンごと《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》をすべて追放できるので、非常に強力です。 それをイゼット果敢側も理解し、メインに《洪水の大口へ》を複数枚採用するようになりました。8枚のキャントリップ+《食糧補充》でかなりデッキを掘り進められるため、2~3枚採用の《洪水の大口へ》をゲーム中に引くことはさほど難しくありません。 《洪水の大口へ》をターン終了時に唱えて《一時的封鎖》を手札に戻し、その時に帰ってきたカードで返しのターンで勝利、という流れは再現性が高く、《一時的封鎖》をイゼット果敢は克服していました。   しかし、オルゾフピクシーの使う《一時的封鎖》は事情が違います。   なぜならオルゾフピクシーは、《一時的封鎖》を有効活用するデッキだからです。《望み無き悪夢》《逃げ場なし》などの2マナ以下のパーマネントを出しておき、《一時的封鎖》で巻き込んでおき、《養育するピクシー》で《一時的封鎖》を戻してそれらのカードを使い回す。これがオルゾフピクシーの基本戦略の1つなのです。 《洪水の大口へ》で《一時的封鎖》を戻しても、《逃げ場なし》が帰ってきて亜《精鋭射手団の目立ちたがり》を除去されたり、《望み無き悪夢》で手札を枯らされては、返しで勝つことはできません。オルゾフピクシーの使う《一時的封鎖》は、ジェスカイコントロールや全知が使うそれとはまったく異なるカードだったのです。 かくして、イゼット果敢を《一時的封鎖》で完全に攻略したオルゾフピクシーは、トップ8を圧倒的パフォーマンスで駆け抜けていきました。なんとイゼット果敢3連戦を、全部ストレート勝ち!   イゼット果敢キラー、オルゾフピクシーが見事栄冠に輝いたのでした。   アメリカ 優勝:ジェスカイコントロール2位:ジェスカイ眼魔3位:イゼット果敢4位:アゾリウス全知5位:ジェスカイ眼魔6位:アゾリウス全知7位:イゼット果敢8位:アゾリウス全知   一方のアメリカは、日本と同じくイゼット果敢が最多勢力だったものの、トップ8に1人のみ。   その代わりにアゾリウス全知が3人、名を連ねています。 【MTGアリーナ用インポートデータ】   最近流行のアゾリウス全知のリストは、ついに《アルケヴィオスへの侵攻》がデッキから抜けました。これまで《全知》を貼ってからの勝ち手段として採用されていた《アルケヴィオスへの侵攻》ですが、《全知》が出ていない状態では5マナのサーチと、今のスタンダードで使用に耐えうるものではなく、手札に溜まってしまうことがそのまま敗北に直結していました。 勝ち手段として今使われているのは《第三の道の創設》。最終的に《全知》によってすべてのカードが無料で唱えられるようになるので、デッキを全部掘り、《第三の道の創設》を出して切削の対象を対戦相手にし、《マラング川の執政》を出して《第三の道の創設》を回収。再び《第三の道の創設》で相手を切削し、《マラング川の執政》Bで《マラング川の執政》Aと《第三の道の創設》を回収。後はこれを繰り返して相手のライブラリーを0枚にすることで勝利となります。 《第三の道の創設》は普通に使用しても、1章で《決定的瞬間》を打ちながら2章で全知を落とし、3章で墓地に落ちた《アブエロの覚醒》をそのままキャストと、《アルケヴィオスへの侵攻》に比べて普段使いが非常に強いのが魅力です。   これまでのアゾリウス全知は《アルケヴィオスへの侵攻》などコンボパーツが多すぎるデッキでした。そのため、サイドから全知以外のゲームプランを用意しても、結局コンボ専用カードがデッキに多すぎるため、ほとんど機能することがなく、結局コンボに特化していました。そのため、《除霊用掃除機》などの墓地対策をクリティカルに喰らうだけで負けてしまう、脆弱なコンボデッキだったのです。 しかし、コンボパーツでもありドロースペルの《マラング川の執政》《乱動するドラゴンの嵐》など、普通のアゾリウスコントロールに入るスペックのカードが入ったことで、サイド後にコンボからアゾリウスコントロールに変わることが可能となりました。 《ミストムーアの大主》《跳ねる春、ベーザ》はそのために採用されており、サイド後は《除霊用掃除機》を出して《全知》をけん制する相手に、《跳ねる春、ベーザ》《マラング川の執政》《ミストムーアの大主》を叩きつけて勝利できます。 日本では残念ながら勝ちきれなかったものの、アゾリウス全知もかなり強化されてきており、非常に強いデッキです。今回の大躍進も頷けますね。   そしてトップ8に緑と黒が1人もいないという、とても偏ったアメリカの地域CSを制したのは、なんとジェスカイコントロール! 【MTGアリーナ用インポートデータ】   赤系アグロに対しては《一時的封鎖》《稲妻のらせん》《審判の日》《跳ねる春、ベーザ》。 ミッドレンジに対しては《三歩先》をはじめとした打ち消し呪文に《マラング川の執政》《食糧補充》のアドバンテージ軍団。 理論上最強のコントロールデッキが、見事アメリカの地域CSを制しました。   デッキの核となっているのが攻防一体の《道の体現者、シィコ》です。アグロ相手には《稲妻のらせん》などを使い回しつつ、飛行警戒4/5のスタッツで鉄壁。 ミッドレンジ・コントロールに対しては《食糧補充》を使い回してアドバンテージを稼ぎます。 親の仇と言わんばかりにアグロ対策を詰め込んだデッキなので、しっかり回ったジェスカイコントロールに勝てるアグロはこの世に存在しないかもしれません。   《稲妻のらせん》は赤いアグロが隆盛する現代においてキーとなるカードと言えますね。《道の体現者、シィコ》で使い回せるのが大きく、アグロ相手のゲームプランはまず《稲妻のらせん》からの《道の体現者、シィコ》になります。 イゼット果敢・赤単アグロを意識しているミッドレンジに対しても強いのがジェスカイコントロールの特徴です。たとえば日本の地域CS優勝のオルゾフピクシーは、ジェスカイコントロールには逆立ちしても勝てません。   《望み無き悪夢》で少し手札を捨てさせても《食糧補充》《マラング川の執政》《道の体現者、シィコ》ですぐリソースを回復され、ライフを削ろうにも《稲妻のらせん》で安全圏へ行き、クリーチャーは根こそぎ除去されてしまいます。 全対面有利。その言葉が過言でないことを、ジェスカイコントロールが優勝によって証明しました。   日本とアメリカ、メタゲームはほとんど同じにもかかわらず全く異なる結果となり、スタンダードの奥深さを実感させられました。

【今週のピックアップデッキ】ディミーア眼魔/4色レジェンズ/赤単ベルチャー

週刊 Modern Pioneer Standard ピックアップ

2025.05.02

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。   紹介デッキ ディミーア眼魔 4色レジェンズ 赤単ベルチャー   ディミーア眼魔 スタンダードリーグ(4/29) : 5-0 By ajifly MTGアリーナ用インポートデータ スタンダードからモダン、時にはレガシーでも見かけることのある、超ハイスペッククリーチャー《忌まわしき眼魔》。 墓地を6枚追放するという重いキャスト条件があるものの、ひとたび戦場に出れば毎ターン戦慄予示であっという間に場を支配してくれます。   そして唯一の欠点である重いコストも、あくまでこれは唱える際に必要なものなので、唱えずに戦場に出してしまえば何も問題ありません。   そこで《忌まわしき眼魔》は、主に墓地から直接戦場に出てきます。   墓地からクリーチャーをよみがえらせる、いわゆるリアニメイト呪文は、条件のないものは《ゾンビ化》など4マナ以上である場合がほとんどです。レガシーで一線級の活躍をしている《再活性》はたった1マナでなんでも蘇生できますが、これは例外中の例外。《偉大なる統一者、アトラクサ》をたった1マナで釣り上げるカードは許されていいはずがありません。 しかし、逆に言えば条件付きならば軽いリアニメイト呪文はスタンダードにも存在します。特にマナ総量が3マナ以下のクリーチャーを吊り上げるカードは《救いの手》をはじめ1マナです。これはマナ総量が3以下のクリーチャーは基本的には支配力が低く、1マナで墓地から吊り上げる動きがさほど強力でないためです。 だからこそ《忌まわしき眼魔》を1マナのスペルでリアニメイトする動きは非常に強力です。実質《忌まわしき眼魔》は5~6マナ域の強さのカード。それをマナ総量が3のカードだから《救いの手》で釣り上げるのは完全に非合法の動きです。 モダンでは《発掘》で《忌まわしき眼魔》を吊り上げるディミーア眼魔、スタンダードでも《救いの手》を使ったジェスカイ眼魔が活躍しているわけですが、今回は新たな眼魔デッキをご紹介します。   それがディミーア眼魔。   墓地に《忌まわしき眼魔》を落として吊り上げるという部分は他の眼魔デッキと同じです。ただしスタンダードには《発掘》はないので、《誰も置き去りにしない》でリアニメイトします。 普通に使えば5マナの《ゾンビ化》ですが、マナ総量3以下のクリーチャーを釣る際には2マナになるので《誰も置き去りにしない》は実質《再稼働》。《救いの手》よりは重いですが仕方ありません。   5マナさえ払えば《ゾンビ化》なのでサイド後は《黙示録、シェオルドレッド》を復活させることも可能です。 墓地に落とす手段は《統合の福音者》と《蒸気核の学者》。カードを引いて捨てる、いわゆるルーター能力で墓地へと落としていきます。 そしてドロー・ディスカードによって墓地に《忌まわしき眼魔》を送り込むことから、相性の良いのが《プロフトの映像記憶》。ジェスカイ眼魔でも採用されているこのドローによって強化されているエンチャントを、ディミーア眼魔でも取り入れています。 《冬夜の物語》も《プロフトの映像記憶》と噛み合いながら《忌まわしき眼魔》を墓地に落とせるカードです。 面白いのは《鍾乳石の追跡者》。落魄することでターン終了時に成長していくこのカードは、ルーターによって土地などを捨てた時でもしっかりと誘発してくれます。《プロフトの映像記憶》と合わせてサイズを上げて大型クリーチャーを倒すなど、単純な戦闘以外の使い道があるのも良いですね。 サイドボードには手札破壊に《黙示録、シェオルドレッド》と、ジェスカイ眼魔では採用できないカードたちの姿が多数あります。特に《黙示録、シェオルドレッド》は赤アグロ全盛期の今、かなり注目されています。 青黒なら当然《悪夢滅ぼし、魁渡》も採用できますし、このカードはやはり凄まじい強さ。《誰も置き去りにしない》のために《除霊用掃除機》を出してきた相手に《悪夢滅ぼし、魁渡》忍術を決める動きはあまりにも気持ち良いですね。 《忌まわしき眼魔》を使い倒したい方、ジェスカイばかりではなくたまにはディミーアでいかがですか?     4色レジェンズ パイオニアリーグ(4/28) : 5-0 By  kanara38204 MTGアリーナ用インポートデータ このデッキは一体…?   初見でデッキリストを見て動きがわからないことはよくありますが、じっくり読み込んでもさっぱりわからないのは久しぶりかもしれません。   この4cレジェンズはとにかくその動きが謎に包まれています。   一つはっきりしているのは、《嘘の神、ヴァルキー》と《再覚醒したジェイス》のコンボが搭載されているということです。 《嘘の神、ヴァルキー》を《再覚醒したジェイス》で計画すると、《星界の騙し屋、ティボルト》として唱えることができます。この2枚コンボが採用されています。 このコンボは通常グリクシスコントロールのようなデッキに組み込まれる場合が多いですが、4cレジェンズは4枚の《闇の中の研究者、ナシ》と《策謀の予見者、ラフィーン》で果敢に殴っていくデッキです。 《闇の中の研究者、ナシ》は2マナでリソースを稼ぐクリーチャー。プレイヤーに与えたダメージ分、カードを切削し、そこからエンチャントと伝説のカードを好きなだけ回収できるので、このデッキなら1~2ドロー相当です。   そんな《闇の中の研究者、ナシ》を強化するのが《策謀の予見者、ラフィーン》。《闇の中の研究者、ナシ》はだんだんサイズが上がっていき、切削枚数が増えるカードなのですが、《策謀の予見者、ラフィーン》で強化してしまえば、攻撃していきなり4枚切削なんてことも。切削枚数が増えれば当然手札に加わる数は増えるので、大量のリソースを獲得できます。 《道の体現者、シィコ》は最もデッキ内で重いクリーチャー。墓地のマナ総量3以下のカードをコピーしてタダで唱えられるので、《思考囲い》や《致命的な一押し》などのスペルはもちろん、《策謀の予見者、ラフィーン》を戦場に出すことも可能です。 この伝説軍団たちと一緒に採用されているのが《不浄な別室+祭儀室》。一見するとデーモンがいないデッキに見えますが、実は《策謀の予見者、ラフィーン》がデーモンなので、《不浄な別室+祭儀室》との相性は良好です。 とはいえ、このデッキの《不浄な別室+祭儀室》はただ単に強力なカードとして採用されています。《致命的な一押し》《思考囲い》《不浄な別室+祭儀室》はそれだけで黒いミッドレンジを成立させるほどの強さを持つカードたち。特別なシナジーなど必要としていません。   エンチャントなので《闇の中の研究者、ナシ》で拾うことができるのは美味しいですね。 時にはハンデスと除去から《不浄な別室+祭儀室》を置いて勝ったり、またある時は《闇の中の研究者、ナシ》から《策謀の予見者、ラフィーン》で大量リソースを獲得したり、《道の体現者、シィコ》で粘り強く勝ったりと、同じデッキとは思えない顔を持っているのがこの4色レジェンズ。   すぐに同じデッキに飽きてしまう方にはオススメ!     赤単ベルチャー モダンリーグ : 5-0 By  slowbro1 デッキ内の土地を0枚にして《ゴブリンの放火砲》で一撃必殺を狙うコンボデッキ、ベルチャー。 『モダンホライゾン3』で大量の表面が呪文で裏面が土地の両面ランドが登場してからモダンでメタデッキ入りを果たし、現在は大量の打ち消し呪文を採用した青単ベルチャーが主流となっています。 今回ご紹介するのは、対照的なカラーである赤単ベルチャー。   両面ランドを入れて土地を0枚にして《ゴブリンの放火砲》を打つことは同じですが、それ以外はまったく青単と異なる動きを見せるのがこの赤単ベルチャー。   青単ベルチャーが土地を毎ターン置き、《睡蓮の花》から7マナで《ゴブリンの放火砲》を決めるのに対し、赤単は《発熱の儀式》《捨て身の儀式》でマナ加速して《ゴブリンの放火砲》キャストにこぎつけます。 《ゴブリンの放火砲》と最も相性の良いマナ加速が《アイレンクラッグの妙技》。4マナで7マナを生み出す規格外のマナ加速ができる代わりに、後1回しか呪文が唱えられなくなってしまうカード。《ゴブリンの放火砲》の設置は4マナ、起動は3マナなので、なんと《アイレンクラッグの妙技》1枚で《ゴブリンの放火砲》が打ててしまうのです。 そのため、2ターンキルも現実的です。《捨て身の儀式》《発熱の儀式》《アイレンクラッグの妙技》《ゴブリンの放火砲》、この4枚だけで2ターンキルです!   これらのマナ加速は基本的に2マナで3マナを生み出すので1マナ加速にしかなりませんが、《ルビーの大メダル》があれば1マナで3マナと、2マナ増える呪文になります。2ターン目に《ルビーの大メダル》を設置すれば3ターン目にセットランドから2回儀式を打つだけで7マナになるので、やはり《ゴブリンの放火砲》で勝利。《ゴブリンの放火砲》さえ引ければ3ターンキルは容易なデッキです。 《ゴブリンの放火砲》を引くためのドロースペルは《街道筋の強奪》《苦々しい再会》《不可能の一瞥》。青単ベルチャーが《稲妻罠の教練者》《ファラジの考古学者》《発明品の唸り》を使うことを考えると、少し心もとなく感じますよね。 その点はご安心ください。《ゴブリンの放火砲》は4枚しか採用できませんが、その代わりに追加のフィニッシャーが入っています。それが《嵐鱗の末裔》です。 6マナのストーム付きのドラゴンで、更に他のドラゴンを+1/+1するので、2体並べば5/5×2、3体なら6/6×3と、ストーム2で出しても致死量です。   先ほど紹介した《街道筋の強奪》と《苦々しい再会》はただのドロースペルではなく、《嵐鱗の末裔》を意識しています。《街道筋の強奪》を2ターン目に計画すれば、3ターン目の《嵐鱗の末裔》のストームを増やせますし、《苦々しい再会》で速攻を突ければ《嵐鱗の末裔》を出したターンにゲームを終わらせられます。   《アイレンクラッグの妙技》で赤マナを7つ出し、6マナから《嵐鱗の末裔》をキャスト、余った1マナで《苦々しい再会》を生け贄にして速攻パンチは美しすぎますね。 青単ベルチャーのように妨害を採用できない代わりに、とにかく速さに特化しているのがこの赤単ベルチャーなのです。   青単には効果的な《石のような静寂》は《嵐鱗の末裔》には無力だったりと、微妙に効くサイドカードが違うのも、赤単ベルチャーの魅力です。 その代わりに《嵐鱗の末裔》のストームと《ゴブリンの放火砲》を打ち消せる《記憶への放逐》が青単に比べてかなり効きやすくなっていますが、それをしっかりと理解しており、《防御の光網》を4枚サイドに用意しています。 一度2ターンキルを味わってしまえばもう青単ベルチャーには戻れなくなるかもしれませんよ?