こんにちは。
細川 侑也(@yuyan_mtg)です。
本日のメタゲーム通信はスタンダード!
『久遠の終端』の加入、そしてローテーションから少し経ち、そろそろ強いデッキが明確になった頃。混沌とした環境初期を経て頭角を現しているデッキたちをご紹介しましょう!
紹介デッキ
イゼット大釜
スタンダードチャレンジ : 1位 By Ale_Mtg

まずは今スタンダードで最も勝っているデッキ、イゼット大釜。
直近のマジックオンラインのイベントではトップ8に複数入賞は当たり前で、チャンピオンズカップファイナルスペシャル予選でも多くのプレイヤーが突破しているデッキです。
前環境でも一線級だったイゼット大釜は『久遠の終端』でのアップデートこそほとんどないものの、逆にローテーションによって失ったカードが《シヴの浅瀬》だけだったため、ダメージは小さく、他のデッキを圧倒的なパワーでなぎ倒しています。
デッキの勝ち手段は主に2つ。デッキ名にもなっている《アガサの魂の大釜》と《プロフトの映像記憶》です。
《アガサの魂の大釜》で煮込むクリーチャーは《迷える黒魔道士、ビビ》。スペルを唱えて大きくなり、たくさんのマナを出す《迷える黒魔道士、ビビ》ですが、《アガサの魂の大釜》で追放すると、+1/+1カウンターが乗っているクリーチャーたちから大量のマナが出せるようになります。
《略奪するアオザメ》は勝手に成長していくので《アガサの魂の大釜》で乗せなくとも《迷える黒魔道士、ビビ》を追放した瞬間にマナクリーチャーとして運用できるので相性抜群です。
他のクリーチャーは能動的にカウンターは乗りませんが、《プロフトの映像記憶》によってカウンターが乗っていきます。
《アガサの魂の大釜》によって全クリーチャーが《迷える黒魔道士、ビビ》になると、《冬夜の物語》を手札からプレイして墓地から調和で打つなど、デッキが凄まじい勢いで回り始めます。後から出した《略奪するアオザメ》もすぐにルーターでカウンターが乗り、サイズが上がれば《迷える黒魔道士、ビビ》としてマナが出せるので、1ターンでライブラリーを大量に掘りながら全展開していき、最終的には《竜航技師》を出してすべてのクリーチャーに速攻を付けて殴り勝ちます。
このデッキの《プロフトの映像記憶》は強力なエンチャントです。《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》《冬夜の物語》と大量にドローが採用されているので、毎ターンたくさんのカウンターを乗せて攻撃できます。
《アガサの魂の大釜》によるコンボを墓地対策などで封じられてもあまり効果がないのはこの《プロフトの映像記憶》のおかげで、メインプランである《アガサの魂の大釜》コンボに大きく貢献しつつ、サブプランの《プロフトの映像記憶》ビートダウンも完遂してくれるのです。
このデッキはイゼット大釜ではなくイゼットプロフトと言っても過言ではありません。
《逸失への恐怖》は《プロフトの映像記憶》とコンボになります。昂揚によって追加の戦闘フェイズが発生するので、《プロフトの映像記憶》が1ターンに2回誘発するのです。
他のデッキでは昂揚は切削などで達成するため運要素が大きいですが、イゼット大釜はルーター能力で墓地にカードを落としていくので、ある程度昂揚を意識することができ、思ったより早く昂揚を達成します。そのため《逸失への恐怖》は2マナ2/3で手札を整えるだけでなく、相手にとってかなりプレッシャーのあるカードなのです。
《ヴォルダーレンの興奮探し》のローテ落ちによってデッキが回り始めた後の即死プランは《竜航技師》による速攻付与からの攻撃と、少し弱体化してしまいましたが、大抵の相手には全展開するだけで勝てますし、デッキはほとんど弱体化していません。むしろ、『久遠の終端』によって強化されたかもしれません。
一部のプレイヤーはこのイゼット大釜に《量子の謎かけ屋》を採用しているからです。
イゼット大釜はリソース獲得手段があまりなく、《冬夜の物語》で少しずつ手札を増やしていくしかありませんが、《量子の謎かけ屋》が加わることでリソースが稼ぎやすくなります。しかも《量子の謎かけ屋》はワープで唱えて《冬夜の物語》の調和コストにできるなど、相性抜群。
今後このチューンが流行るかにも注目ですね。
シミックウロボロイド
スタンダードチャレンジ : 2位 By djbmppwns

《量子の謎かけ屋》や《コスモグランドの頂点》など『久遠の終端』の神話レアが続々活躍している中、最近密かに注目されている神話レアがいます。
それが《ウロボロイド》です。
戦闘開始時に《ウロボロイド》のパワーに等しい+1/+1カウンターを自軍クリーチャーにばらまくこのワーム。自身にもカウンターが乗るため、毎ターン付与する+1/+1カウンターが増えていくというわけです。
この《ウロボロイド》でクリーチャーを全体強化しながら戦うのがこのデッキ。《ウロボロイド》を活かすために様々な工夫が凝らされています。
《ウロボロイド》は自身のパワー分のカウンターを乗せるので、何かしらの手段で《ウロボロイド》を強化することで、付与するカウンターが一気に増えます。
その手段の1つが《棘を播く者、逆棘のビル》。上陸で《ウロボロイド》にカウンターを置き、《ウロボロイド》がそれを全体にばらまいていくので、一気に盤面が強化されます。
そして『久遠の終端』で登場した《遺伝子変異の成虫》も《ウロボロイド》と相性抜群。上陸で《ウロボロイド》のサイズを3/3にすればカウンター3つをばらまきますし、土地が6つ以上なら《ウロボロイド》が6/6になるので、いきなり全体が+6/+6されるのです。
このように上陸カードを多数採用していることから、《地底のスクーナー船》《名もなき都市の歩哨》《遠眼鏡のセイレーン》で得られる地図の価値は高めです。地図で土地を獲得していくことで、毎ターンしっかり上陸を誘発させられます。逆に言えば、地図を他のデッキよりも上手く使えるということです。
マナ加速の《ラノワールのエルフ》に《遠眼鏡のセイレーン》と貧弱なスタッツのクリーチャーは入っていますが、それらのクリーチャーが《ウロボロイド》で暴力的なサイズになるので、このデッキでは序盤のクリーチャーがそのままフィニッシャーに化けてくれます。《ラノワールのエルフ》が後半でも価値があるのは嬉しいですね。
《ラノワールのエルフ》から《ウロボロイド》による攻撃的な面もあれば、《フラッドピットの溺れさせ》《名もなき都市の歩哨》で守り、更に干渉手段も《洪水の大口へ》《薮打ち》としっかり用意されており、攻守のバランスに優れた良いデッキです。
チャレンジでは最近入賞数が増えており、《ウロボロイド》への注目は高まっています。このデッキを組みたいなら早めに《ウロボロイド》は揃えておいた方が良いかもしれませんね!
ディミーアミッドレンジ
スタンダードチャレンジ : 1位 By sokos13

さて、最後に紹介するのは『久遠の終端』とローテーション落ちもどこ吹く風。皆さんすっかりお馴染みのディミーアミッドレンジです。
『ダスクモーン:戦慄の館』で《永劫の好奇心》《悪夢滅ぼし、魁渡》の2種を手に入れて完成されたこのデッキは、その後ささやかなアップデートを繰り返しながら、メタゲームの上位に常に鎮座しています。
相手の盤面を除去や打ち消しでいなすコントロール要素を持ちつつ、クリーチャーで速やかに殴る。それこそがミッドレンジですが、《永劫の好奇心》と《悪夢滅ぼし、魁渡》はまさにそのミッドレンジを体現した2枚です。
いずれのカードも攻撃とリソース確保が一つになっているので、攻撃して引いたカードで相手の妨害を繰り返すだけでゲームに勝つことができます。この2枚が存在する限り、ディミーアミッドレンジは不滅と言っても過言ではありません。
その除去がほぼ効かない《コーリ鋼の短刀》が環境に存在していた時は元気がなかったデッキですが、今やこのディミーアミッドレンジのゲームプランを1枚で覆すカードは存在しません。それならこのディミーアミッドレンジが消える理由はないのです。
そんないつまでも変わらない味を提供してくれる老舗のラーメン屋の雰囲気すらあるディミーアミッドレンジですが、メタゲームに合わせてクリーチャーや除去の選択が変わります。今は2マナ域を《フラッドピットの溺れさせ》《大洞窟のコウモリ》にした、最も基本的なリストが流行です。
赤いデッキ全盛期の時はすべてのデッキに1マナ除去が入っていたレベルだったので、《大洞窟のコウモリ》はただ2マナで相手の手札を見るだけのカードでした。そのため、2マナ域を他のカードに譲っていたのですが、現環境ではまたこの《大洞窟のコウモリ》になっています。
ディミーアミッドレンジがローテーションで失ったのは《切り崩し》《喉首狙い》といずれも除去。1マナ除去として採用されているのは《悲劇の軌跡》です。《遠眼鏡のセイレーン》で出した地図を生け贄にしたり、《悪夢滅ぼし、魁渡》で忍術など、ヴォイドを引き起こす手段はそれなりにあるので、1マナの万能除去になりやすいですね。他の除去を使えばヴォイド状態にできますし、《悲劇の軌跡》は非常に使いやすいカードです。《切り崩し》より強いかもしれませんね。
《喉首狙い》は《保安官を撃て》になりましたが、こちらも影響はさほどありません。無法者を倒せない除去ですが、《迷える黒魔道士、ビビ》や《分派の説教者》など、マスト除去の3マナ域にはしっかり当たります。ミラーマッチの《遠眼鏡のセイレーン》やイゼット大釜の《略奪するアオザメ》が倒せなくて困ることはありそうですが、それぐらいです。
ディミーアミッドレンジが環境からいなくなることは中々想像できません。エンチャントに触れないという弱点があるため、《陰湿な根》のように、地上ダメージが通りづらくてかつエンチャントを活用してくるデッキが台頭すると厳しいですが、今のところはその気配はありません。
スタンダードの大会に出るならディミーアミッドレンジとイゼット大釜)に当たることは想定しなければなりません。勝ちたいならこの2つのデッキとみっちり練習しましょう!