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【週刊メタゲーム通信】カナダ地域CSではデーモンが大暴れ!そして突如現れたアサーラックコンボとは!?

週刊 Pioneer ピックアップ

2024.11.20

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今回は先週末に行われた、カナダ地域チャンピオンシップの結果から、最新のパイオニア環境を分析していきます! メタゲーム カナダの地域チャンピオンシップ、トップ8はこれまでとは大きく異なる結果となりました。ラクドスデーモン:2イゼットフェニックス:1アサーラックコンボ:2セレズニアカンパニー:14色エニグマ:1オルゾフデーモン:1ヨーロッパ地域チャンピオンシップで大活躍だったサクリファイスはトップ8から姿を消し、デーモンがトップ8に3人!まずはサクリファイスに対するガードの高さがリストから見て取れますね。ラクドスカラーで採用できる最も強力なサクリファイス対策は《碑出告が全てを貪る》で、優勝者のリストには採用されており、トップ8のもう1人のラクドスデーモンは《虚空の力線》。いずれもサクリファイスに刺さるカードで、《虚空の力線》はイゼットフェニックスの対策も兼ねるカードです。途中で引いても《鏡割りの寓話》や血で捨てることができ、ラクドスデーモンは《虚空の力線》が使いやすいデッキと言えます。そしてなんといっても今回はトップ8にアサーラックコンボが2人!これにはさすがに驚きました。実は各地の地域チャンピオンシップでギリギリトップ8ラインなどまで勝ち進んでいたデッキだったのですが、今回ついに2人をトップ8に送り込む大躍進!更に最近では4cズアーにお株を奪われそうになっていた《奇怪な具現》も、《空を放浪するもの、ヨーリオン》の相棒を引き連れてトップ8入賞。ここからは個別にデッキ解説をしていきます。 ラクドスデーモン カナダ地域チャンピオンシップ :優勝 By Randall Litman カナダ地域チャンピオンシップを制したのはラクドスデーモン!気づけばデーモンと言えばこのラクドスが主流となってきました。デーモンと名はついていますが、その実態はラクドスミッドレンジ。手札破壊と除去で脅威を取り除き、《税血の収穫者》《止められぬ斬鬼》《鏡割りの寓話》で殴りながら、《不浄な別室》でアドバンテージを取っていくデッキです。《鬼の刃》などが入ったリストもある中、この優勝者の75枚はとてもすっきりしている印象を受けます。クリーチャーは12体のみで、手札破壊は定番の6枚、除去も環境に合わせたチョイスとお手本のようなリスト。最近では2マナの確定除去枠として《無情な行動》が採用されていますが、これはミラーにおける《ドロスの魔神》を意識したものです。《ドロスの魔神》の油カウンターを《無情な行動》で全部取り除くことで相手を敗北させることができるので、特にミラーでは重要となります。一方、《心火の英雄》をほぼ倒せなくなってしまうので、その辺りは一長一短といったところ。《心火の英雄》には他の除去を当てて、《無情な行動》は《精鋭射手団の目立ちたがり》などに打てば良いという考えでしょう。《塔の点火》はラクドス果敢の《心火の英雄》を意識したものです。サイドボードもオーソドックスな作り。《碑出告が全てを貪る》はジャンドサクリファイスに強い1枚。《清掃人の才能》をとても触りづらいカラーですが、《碑出告が全てを貪る》なら《魔女のかまど》や食物ごと《清掃人の才能》を吹っ飛ばせます。《未認可霊柩車》が3枚と多いのは対イゼットフェニックスを見据えてのことでしょう。見事決勝ではそのイゼットフェニックスにストレートで勝利を収めています。もし今週ラクドスデーモンを使うならこのリストをオススメしたい!それぐらい完成度の高い75枚だと思います。 アサーラックコンボ カナダ地域チャンピオンシップ:3位 By Dustyn Nogueira さあ、皆さんお待ちかねのアサーラックコンボです。このデッキは《アーチリッチ、アサーラック》を使用した無限ダメージデッキ。まず《アーチリッチ、アサーラック》について簡単におさらいしましょう。3マナ5/5の伝説のクリーチャーで、攻撃するたびに相手がクリーチャーを生け贄に捧げないとゾンビを生成する……ってめちゃくちゃ強いことが書いてありますが、当然そんな彼にはデメリットがあります。戦場に出た時に、自分が《魂を喰らう墓》を踏破していないと、《アーチリッチ、アサーラック》は手札に戻り、ダンジョン探索を行う。つまり《アーチリッチ、アサーラック》を何度も出して《魂を喰らう墓》を踏破し、ようやくこのクリーチャーが戦場にきちんと着地するというカード。しかし、逆に言えば《魂を喰らう墓》を踏破しない限り、《アーチリッチ、アサーラック》は何度も手札に戻り、そのたびにダンジョンを進み、踏破し、またダンジョンに入れるカード、ということになります。もしもこのカードを0マナで出し入れできたら、《魂を喰らう墓》以外の2つのダンジョンを無限回潜れるのです。それを実現したのがこのアサーラックコンボ。まずは《ガイアの眼、グウェナ》。クリーチャー呪文か起動型能力限定で2マナを生み出す強力なマナクリーチャーですが、パワーが5以上のクリーチャー呪文を唱えると自身が成長し、しかもアンタップします。《アーチリッチ、アサーラック》のパワーは5なのでアンタップし、再び2マナを生み出せるので、実質《アーチリッチ、アサーラック》が1マナで唱え放題になります。そしてここに《正直者のラトスタイン》が加わることで、正真正銘0マナの《アーチリッチ、アサーラック》が無事爆誕。後は無限に《ファンデルヴァーの失われた鉱山》を走り続けて相手のライフが0になって勝利。《正直者のラトスタイン》はコンボパーツを墓地から拾いつつ、自身もコンボパーツとなる素晴らしいカードですね。最後の1枚は《正直者のラトスタイン》の代わりに《伝説の秘宝》でも達成できます。《アーチリッチ、アサーラック》は戦場に出た時に手札に戻る能力が誘発するので、能力にスタックして《伝説の秘宝》からマナを出せば、そこで出た1マナと《ガイアの眼、グウェナ》の2マナで《アーチリッチ、アサーラック》を出し、また《伝説の秘宝》で《アーチリッチ、アサーラック》をタップしてマナを出し……これでもループが完成。《眷者の神童、キナン》も生み出すマナを1つ増やせるので、《ガイアの眼、グウェナ》1枚から3マナを出すことができ、《アーチリッチ、アサーラック》の無限が決まります。《伝説の秘宝》を用いた他の無限パターンもあります。《侵攻の伝令、ローナ》《正直者のラトスタイン》《伝説の秘宝》と揃っていれば、《アーチリッチ、アサーラック》ループが行えます。《伝説の秘宝》で《侵攻の伝令、ローナ》をタップし、《伝説の秘宝》からもマナを出して、《正直者のラトスタイン》で1マナ軽くなった《アーチリッチ、アサーラック》をプレイ。 またさっきのように能力にスタックで《アーチリッチ、アサーラック》をタップして《伝説の秘宝》からマナを出しておき、《アーチリッチ、アサーラック》のキャスト時にアンタップした《侵攻の伝令、ローナ》を再度《伝説の秘宝》で寝かせてマナを出すと2マナが発生するので、これにて無事《アーチリッチ、アサーラック》が無限鉱山の旅に出ることになります。《ガイアの眼、グウェナ》を使わないこちらのパターンは《伝説の秘宝》しか起動型能力を使用しないため、すべてのクリーチャーがこのターンに戦場に出てもよく、更地から勝つこともあります。コンボパーツが3マナに偏っているのでマナクリーチャーを7枚採用し、更に2マナ域にはこれらのマナクリーチャーから追加で1マナを生み出す《眷者の神童、キナン》まで入っています。《眷者の神童、キナン》は起動型能力も強力で、《アーチリッチ、アサーラック》か《偉大なる統一者、アトラクサ》をライブラリーから場に出してくれます。ちなみに《ガイアの眼、グウェナ》から出るマナはクリーチャーにしか使用できませんが、《眷者の神童、キナン》がいる時に追加で新たに出るマナについては、クリーチャー以外にも使用できます。《眷者の神童、キナン》は《伝説の秘宝》で伝説のクリーチャーを寝かせた際のマナは増やしてくれないので注意しましょう。こうしてよく見ると、アサーラックコンボはコンボパーツが個々でそこそこ強いものばかりです。《侵攻の伝令、ローナ》は起動型能力で必要なパーツを集めてくれますし、《正直者のラトスタイン》はクリーチャーを拾ってコンボ達成を助けます。《ガイアの眼、グウェナ》も《偉大なる統一者、アトラクサ》の高速召喚に役立つので、コンボ成立時以外で引いて困るカードは《アーチリッチ、アサーラック》自身しかありません。最速3ターンキルもあり、長期戦も《湧き出る源、ジェガンサ》《偉大なる統一者、アトラクサ》でドンと来い。今後の活躍にも注目していきたい、とても良いデッキですね!

【今週のピックアップデッキ】アゾリウス眼魔キオーラ/レイラインコロッサス/ネオブランド

Modern Pioneer Standard ピックアップ

2024.11.15

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 アゾリウス眼魔キオーラ(スタンダード) スタンダードリーグ:5-0 By HelpfulHobo 『ファウンデーションズ』がついに本日発売!既にテーブルトップでは使用可能でしたが、マジックオンライン・MTGアリーナでも解禁され、早速各種フォーマットで使われ始めています。スタンダードでは、あのアゾリウス眼魔にアップデートが入りました!アゾリウス眼魔は、その名の通り《忌まわしき眼魔》に特化したアゾリウスカラーのアグロ。《錠前破りのいたずら屋》や《第三の道の創設》で《忌まわしき眼魔》《傲慢なジン》を墓地に落とし、《救いの手》で釣り上げるリアニメイト要素を搭載しています。墓地が肥えていくので手札から《忌まわしき眼魔》も出しやすく、ブン回った時には2ターン目に《忌まわしき眼魔》が墓地から出てくる、スタンダードらしからぬ動きもできるデッキです。そんなアゾリウス眼魔に新たに加わったのが《上げ潮、キオーラ》。まずはテキストからおさらいしましょう。《上げ潮、キオーラ》は戦場に出た時にカードを2枚引き、2枚捨てます。不要牌を捨ててもよし、これからリアニメイトするクリーチャーを墓地に送りこむのも良いでしょう。そしてスレッショルドを達成している状態で《上げ潮、キオーラ》が攻撃すると、8/8のトークンが場に出てきます!地味ながら有用な能力と、派手で強力な能力を併せ持つ3マナ3/2、それが《上げ潮、キオーラ》です。前述のようにアゾリウス眼魔は墓地を肥やせるので、スレッショルド達成は容易。生き残ればすぐに8/8を生成してくれるでしょう。相手からしてみればすさまじいプレッシャーです。《錠前破りのいたずら屋》と《第三の道の創設》は共にカードを4枚切削しますし、《上げ潮、キオーラ》は出た時に墓地にカードを2枚送れるので、《上げ潮、キオーラ》が最も相性が良いデッキと言えます。吊り上げるクリーチャーが《忌まわしき眼魔》と《傲慢なジン》しかいなかったため、これまでのリストでは《救いの手》が4枚、《再稼働》は1枚から多くて2枚といったところでしたが、このリストには大量の3枚採用。《上げ潮、キオーラ》が新たに釣りあげる対象となり、更にその《上げ潮、キオーラ》によって手札のクリーチャーを捨てたり、余ったリアニメイトスペルを捨てても良いため、《再稼働》を大量に採用しやすくなりました。元々スタンダードで活躍していたアゾリウス眼魔、《上げ潮、キオーラ》の登場で更なる強化を果たしたのか?この後の活躍に注目したいですね。 レイラインコロッサス(パイオニア) パイオニアリーグ:5-0 By Franticore 以前に紹介した《金属製の巨像》デッキを覚えているでしょうか?《身代わり合成機》を最大限に活用したデッキで、特に《真鍮の拳》が《身代わり合成機》と《金属製の巨像》と相性抜群で、4ターン目に圧倒的な場を作り出すことが可能となっています。このデッキがなんと今回大きな強化を受けました!『ファウンデーションズ』から加わった新人がこちら!4マナの装備品で、二段攻撃とトランプルを付与する装備品。ここまで書くとリミテッドで強そうな装備品という印象ですが、最初に大きな一文があります。「このカードがあなたのゲーム開始時の手札にあるなら、これが戦場に出ている状態でゲームを開始してもよい。」そう、《力線の斧》は史上初めてとなる装備品の力線。ゲーム開始時に出すことができるのです。これによってどうなるか、もうお分かりですね?そうです。《力線の斧》は実質タダで置ける4マナのアーティファクト。《金属製の巨像》と相性抜群なのです。0ターン目に《力線の斧》、1ターン目に《ポータブル・ホール》で除去。2ターン目に《アイレンクラッグ》か《加工鋳造所》。3ターン目に《身代わり合成機》を出すと、場の合計のアーティファクトのマナ総量は4+1+2+3の10。余った1マナで《金属製の巨像》が出て、《身代わり合成機》から6/6!3ターン目に圧倒的な場が出来上がります。そして《力線の斧》が付与する二段攻撃とトランプルも非常に嬉しい。《金属製の巨像》は高速召喚できたとはいえ、ただのバニラクリーチャー。しかしこれに《力線の斧》がつくだけで11/11、二段攻撃、トランプルの化け物へと生まれ変わります。《金属製の巨像》のキャストを早めるだけでなく、フィニッシャー性能も格段に引き上げてくれる《力線の斧》はこのデッキのために生まれたといっても過言ではないカード!以前紹介した時より確実にパワーアップしてると思いますので、ぜひお試しください!! ネオブランド(モダン) モダンリーグ:5-0 By wefald 全カードゲームプレイヤーの憧れと言えば、それはやはり「1ターンキル」でしょう。先手1ターン目に相手がまだセットランドすらしてないのに勝利する。レガシーでは1ターンキルができるデッキもありますが、モダンではこのネオブランドのみです。手順はこうです。まずゲーム開始時に《絡み森の大長》を公開。そして青マナをセットランドして、《アロサウルス乗り》を0マナでキャスト。 《絡み森の大長》の緑マナと青マナから《新生化》で《アロサウルス乗り》を生け贄にし、《グリセルブランド》をデッキから場に。《グリセルブランド》で14枚ドローし、その中から《滋養の群れ》をピッチでキャスト。追放するのは《土着のワーム》。これで15点のライフを得るので、更に14枚ドロー。こうして《滋養の群れ》を使いながら《グリセルブランド》でライブラリーのほとんどのカードを引き、最終的に《モックス・アンバー》を2回出して黒マナを2つ作り、《マルコフ家のソリン》を召喚。このターンに《滋養の群れ》で大量のライフを得ているので変身し、そのままマイナス1能力で勝利!ネオブランド自体はそこそこ昔からあるアーキタイプでしたが、『モダンホライゾン3』が出るまではフィニッシャーにとにかく困っていました。この手のデッキでは《タッサの神託者》が定番ですが、《グリセルブランド》は7枚ドローしかできないので、たとえば初手7枚+《グリセルブランド》7回起動だとライブラリーが4枚余り、《タッサの神託者》では勝てません。更に《モックス・アンバー》では《グリセルブランド》から黒マナしか出せないので、《タッサの神託者》を出す手段も大変です。色マナを変換するためだけのカードを採用する必要がありました。それが『モダンホライゾン3』で《マルコフ家のソリン》が加入したことで、一気に楽になりました。《モックス・アンバー》2枚と《マルコフ家のソリン》さえ引けばライブラリーを掘り進める必要がなくなり、更に色マナ問題も一発で解決。無駄なカードを入れるスロットを削り、更に安定して勝てるように!ネオブランドにとって夢のようなカード。《フレイアリーズの信奉者》も地味な強化です。《アロサウルス乗り》を出すためになるべく緑のカードをたくさんデッキに入れたいので、アンタップインで緑マナが出せる緑のカードは貴重です。6マナとそこそこ重いので、《滋養の群れ》で追放するカードとしても最低限の働きをしてくれます。エネルギーやベルチャーに飽きて刺激を求めている方、1ターンキルを味わってみませんか?

コンボデッキのススメ!

ピックアップ

2024.11.14

mtg Yuyan

突然ですが、皆さんはコンボデッキがお好きですか?多分8割の人が「No」と答えるのではないでしょうか。アグロやコントロールが好きな人に比べてコンボ好きは少し少ない気がします。その理由はいくつかありますが、大きいのは2つ。1つは「難しい」というイメージです。コンボデッキは上手く回すのが難しく、自信がない。そしてもう1つが脆さ。対策された時の弱さだったり、手札がちぐはぐでどうしようもない展開がどうしてもあります。負ける時までは完膚なきまでに負けてしまい、「やっぱりコンボは向いていない」とそのまま折れて使用を諦めた経験、ありませんか?本日の記事では、コンボデッキを僕がオススメする理由、上手くなり方、そして練習方法などをご紹介していきます!これを読んでコンボデッカーが一人でも増えれば嬉しいです! コンボのススメ まずはやはりコンボデッキの魅力について語らなければならないですね。もうズバリ、一番は何といっても楽しさです。1ターン目に手札破壊を打って、2ターン目に《税血の収穫者》を出して、3ターン目に《鏡割りの寓話》を出して……そんなまるで「朝起きて歯を磨いて朝食を食べて電車に乗って会社に行く」みたいなマジック、もう飽き飽きしていませんか?コンボデッキは自分のコンボさえ揃えてしまえばそれまでの道のりは関係ありません。ただ特定のカードを揃えた瞬間、相手の手札が何枚だろうと、場に何体のクリーチャーがいようと、ライフがいくつであろうと関係ありません。無条件で勝利です。突然宝くじに当選して一発逆転するようなもの。これだけ書くと怪しい勧誘に思えますが、実際のところ、コンボはこの爽快感こそが最も魅力的です。コンボの中でもストームのようにたくさんの呪文を唱えていくコンボデッキは、1つ目の呪文の時点でバラバラだったパズルのピースが、最後は一気に完成していくかのようで、美しさすらあります。戦略的な部分で言えば、コンボデッキは第一ゲームの勝率が高いという点も挙げられるでしょう。普通のミッドレンジなら《致命的な一押し》はキープ基準になりますが、クリーチャーを介さないコンボならそのカードは完全な無駄牌。コンボ側は手札破壊か速いクロック以外のすべてを無視できます。そしてコンボを熟知していない相手を簡単に倒してしまう、いわゆるわからん殺しが発生しやすいのもコンボデッキ。どのカードがコンボに重要なのかを熟知してしなければ、手札破壊の選択を誤るかもしれませんし、そもそもコンボ成立ターンをある程度把握していなければ、サイドボード後に展開力に乏しいが対策カードのある手札をキープし、悠々とそのカードを対処されて負けてしまうでしょう。相手がビートダウンならとりあえず除去しておけば良いですし、コントロールには殴っていけば良い。しかし、コンボデッキ相手にはそのデッキに対する知識が求められます。ちょっとコンボデッキが使いたくなってきたのではないでしょうか? コンボのやり方を覚える というわけでコンボマスターを目指していきましょう!その第一歩は当たり前ですが、コンボのやり方を覚えることです。詳しくは後述する練習方法に書きますが、何と何が揃ったらコンボになって勝てるのかを頭に叩き込む。たったこれだけです。双子コンボのように《詐欺師の総督》と《欠片の双子》が揃った瞬間に勝つ場合は特に再確認する必要はない……と思うのも激アマです。当然ですが、このコンボは《詐欺師の総督》を出したターンだと成立しません。《欠片の双子》を付けて起動型能力を使用できないですからね。しかし、《欠片の双子》が《鏡割りのキキジキ》なら《詐欺師の総督》を出したターンにコンボを決めることができます。パイオニアのロータスコンボのようにマナ計算やカード選択が複雑なデッキならば、コンボのやり方を覚えるのは必須。というより完璧にマスターするまでは大会に出ないでひたすら練習をした方が良いレベルです。《出現の根本原理》を打つための色マナ、黒黒青青緑緑緑をどう出すか。《睡蓮の原野》2枚から《砂時計の侍臣》を打つ時にどうやってマナを出せば《出現の根本原理》が打てるのか?《見えざる糸》を打つ時は《睡蓮の原野》2枚を使ってどんなマナを生み出せば良いか。《出現の根本原理》で持ってくる3枚、どの組み合わせなら確実に勝利できるのか。これをきちんと把握しましょう。ミッドレンジやアグロではとりあえず出したクリーチャーでライフを削り切れば良いですし、コントロールならひたすら全体除去を打ってフィニッシャーを出せば勝てます。しかし、コンボデッキではそれはありえません。ここにハードルの高さを感じるのかもしれません。いわばコンボデッキは予習の時間が必須です。ぶっつけ本番で大会に持っていくことはできません。しかし、事前に対戦相手を殺す方法さえ完璧にマスターすれば何も心配いりません。別に完璧に回せるようになる必要はないのです。サイドボード後の対策に何もできず負けてしまうのが情けないなんてことはありません。ただ、相手を殺す方法さえわかっていればそれでOKです。コンボが手札で揃った時に手順ミスせずに相手を倒せるように、デッキのことをしっかり勉強しておきましょう。 練習方法 具体的な練習方法は、ずばり一人回し(ソリティア)です。最近ではMTGアリーナの普及などで一人回しをしたことがないプレイヤーもいると聞き、驚きを隠せませんでした。僕がマジックを始めた頃はマジックオンラインしかなく、学生時代の僕は金銭的理由で手が出せませんでした。しかし、マジック熱は10時間友達と遊んだ後も冷めなかったので、家でやっていたのが一人回しでした。やり方は簡単。目の前に《島》60枚のデッキを持っている対戦相手がいるつもりで、自分のデッキをひたすら回すのです。「こんなの意味あるのか?」と思うかもしれませんね。はっきり言います!効果は絶大です!既にお話したコンボのやり方を覚えるなら一人回しで十分ですし、初手でどんな手札をキープすれば良いかも、一人回しの回数を重ねることでわかってきます。2枚コンボならその片方がなければマリガンなのか、それともドロースペルが多いから両方なくてもキープできるのか、などなど。イゼット天啓のようなコントロール要素を持つコンボなら《アールンドの天啓》は初手に必要ないですが、ロータスコンボなら《睡蓮の原野》は初手に絶対必要です。何回までならマリガンできるかの、いわば耐久テストのようなものも一人回しで行えます。僕がよくやるのは、常にダブルマリガンで戦ってみるとかですね。ダブルマリガンも意に介さず4~5キルが安定するデッキなら、マリガンは厳しめにできますからね。パイオニアのロータスコンボがこれに当たります。《睡蓮の原野》なしの手札がキープできない代わりに、初手は少なくても勝てます。これを実際に体感すれば、本番でも自信を持ってマリガンできるでしょう。本番は練習のように、練習は本番のように。こんな言葉はありますが、一人回しの段階ではゆるふわでOKです。コンボデッキを手足のように自在に使うための訓練のようなものですから、最初の内はマリガン後も7枚のハンドでキープしてみたり、決まるかわからないぎりぎりのハンドで仕掛けて決まらなかったら全部巻き戻し、なんてこともよくやります。とにかく自由に何でも試せて誰にも迷惑をかけないのが一人回しの良さですからね。変なプレッシャーもないのでミスも起きません。一人回しでプレイに迷っているようでは、実際に対戦相手がいた時はもっと迷うことになります。確実に一人回しよりパフォーマンスは落ちるので、できれば一人回しは100%の力を引き出したいものです。少しデッキを回すのに慣れてきたら、徐々に応用編に突入していきましょう。たとえば「もし対戦相手が打ち消しを持っていたら?」や「次の次のターンに殺される可能性が高い。どうする?」など、自分で勝手にシチュエーションを作って一人回しを行うのです。ロータスコンボで例を挙げると、「相手は《全知》を割れる。《出現の根本原理》のサーチは?」「浮きマナなしの状態で打つ《出現の根本原理》のサーチは?」「《黙示録、シェオルドレッド》が出てきました。コンボを決めてください」この辺りですね。これを後手4ターンキルされるなど複合パターンでどんどん自分を追い込んで、その状態で勝てるかを試してみます。実践では大体の場合でこれより余裕がありますから、対戦相手のプレッシャーを差し引いて、一人回しと対人戦でさほど変わらぬ緊張感でプレイできるのではないでしょうか。コンボデッキは一人回しで学べるものが他のデッキよりも多いのも、魅力の1つです。ミッドレンジで一人回しをしてもさほど上手くなりませんが、コンボデッキを一人回しすれば上手くなります!大会で鍛錬を積まなくても、MTGアリーナで対人戦を重ねなくても、かなりの経験値を一人回しで得ることができるのです。これはコンボならではのメリットと言って良いでしょう。対戦時間のない社会人プレイヤーには特におすすめです。月に400時間働いていた頃があったのですが、対人戦はほとんどしていませんでした。それでも会社で考え事をしながら一人回しをしていて、それだけで上位入賞したこともあったぐらいです。一人回しだけである程度戦える可能性のあるコンボデッキは、対人戦があまりできない人に特にオススメ! 自分の中で完璧に一人回しができたと思ったら、MTGアリーナや紙の大会に持ち込むと良いでしょう!当たり前ですが、対人戦も非常に練習になりますからね。 ターン数の意識 ここからは実践的な話になります。一人回しもして、ある程度大会に出て、そこそこ勝てるようになりました。この段階まではすごい勢いで成長を実感すると思いますが、急な停滞時期です。どうやって上手くなれば良いかがなかなかわからないのですよね。コンボデッキってどうしても「引いて勝ち」「引かないで負け」「サイド後に対策喰らって負け」この3つが圧倒的に多く、普通のデッキを使った時よりも反省点が少なくなってしまいます。だからこそ成長を感じにくいのでしょう。 次のステップに進むなら、意識するのはターン数です。・何ターン目にコンボを決めることができるか・目の前の対戦相手が何ターン目にこちらを倒してくるか?・このフォーマットは何ターン目にゲームが決まるかこれらを正しく理解することが、コンボを上手くなるコツです。例えばラクドス果敢は何ターン目にロータスコンボを倒してくるでしょうか?ロータス側に妨害がほぼなかったとしたら3ターンキルでしょう。《心火の英雄》に《巨怪の怒り》などを打たれて3ターン目に負ける。よくあります一方のロータスコンボは早くて4ターン、平均は5ターンキル、本当に回れば《樹上の草食獣》経由から3ターン目に勝つこともあるでしょうが、あまり現実的ではありません。となればラクドス果敢対ロータスコンボは不利であることがわかり、《魂の仕切り》や《一時的封鎖》を使って減速させて5ターンキルを決めるという指針を立てられます。環境の平均キルターンを把握するのは非常に大事です。モダンなら今はどのデッキも4ターン目に大体こちらを倒してきます。エネルギーは普通に4ターンキルしてきますし、《一つの指輪》が出てくるのもこのターン。つまり3ターンキルデッキはそれだけでモダンで価値があり、4ターンキルするコンボは先手なら間に合うが後手なら遅いため、1ターン生き残る工夫が求められることになります。パイオニアならラクドス果敢を覗けば平均ターンは5と言ったところでしょうか。パイオニアのあらゆるデッキが5ターン目にどんな場になっているかを想像すれば簡単だと思います。イゼットフェニックスなら3ターン目に1枚、4ターン目にもう1枚が落ちていてこの時点で9点喰らうので、5ターン目には大体負けるでしょう。《異形化》なら《偉大なる統一者、アトラクサ》が出てくる次のターン。《全てを喰らうもの、イグラ》が手札から出てくるのもこのターンですね。《清掃人の才能》次第で4ターン目に出てきますが、平均で言えば4~5ターンといったところ。つまりロータスコンボはキルターンで言えば、ラクドス果敢を除けば大体のデッキに対して間に合っていて、速度では追いついているということです。速度で追いついているならば、今のパイオニアにおいてロータスコンボを選択する理由にもなります。ターン数を把握することで、「今このコンボを使うに値するか?」のバロメーターにもなるのです。対戦相手が何ターン目にこちらを倒してくるか。この意識を持っているだけで、まずはマリガンが変わってきます。リスト非公開だとしてもゲーム2以降では相手のデッキがわかるため、確実な5ターンキルハンドをキープするか、リスクを取るか、その判断が可能です。意識していなければただ《睡蓮の原野》があるだけでキープをして負けてしまうでしょう。プレイ中もキルターンへの意識を持つことで、適切なタイミングでカードを使用できます。《鏡割りの寓話》を置かれた次のターンに確実に死なないのなら、トークンに《天上都市、大田原》を打たずに《演劇の舞台》で《睡蓮の原野》をコピーしますよね。このプレイは当たり前ですが、より複雑な状況において、「何ターンで倒してくるデッキなのか。このままいけば何ターンで負けるのか」「この手札なら何ターン目に勝てる」これらを常に意識しておくだけで、二択をミスしなくなります。コンボデッキは勝つターンのみに意識を集中させれば良いので、自分に残り何ターンあるかを把握するのが重要です。残りのターン数がライフと言って良いでしょう。相手のデッキと動きを見て勝つターンを設定し、そのターンに向けて準備を進めていくのです。そのために必要なのがターン数の意識というわけです。 サイドボード後の戦い コンボデッキで戦う上で最も悩みなのがサイドボード後のゲーム。マジックはサイドボード後の方が戦う回数が多いので、メインだけ取ってサイドを2本取られることが、コンボではよくあります。メイン勝ち、サイド後をどちらも落とす。これはコンボデッキ使いが一番恥じるべき結果です。これならまだメインも負けてストレート負けの方が良かったと思うぐらいです。これは僕だけかもしれませんが。サイドボード後の勝率が50%になれば、コンボデッキ使いとして一人前です。まずはこれを目指していくことです。さて、サイドボードをする上で最も考えなければならないことはなんでしょうか?それはもちろん、相手がどんな対策をしてくるかです。ロータスコンボに対して《減衰球》なのか《強迫》か、あるいは《神秘の論争》か、はたまた《石の脳》か。それぞれ違う対処法があり、こちらがサイドから入れるカードも変わってきます。《減衰球》は一番置かれる可能性があるサイドカードです。無色で2マナで最も劇的。かといってすべてのデッキが採用してくるわけではありません。たとえばイゼットフェニックスやラクドス果敢は1ターンでたくさんの呪文を唱えるため、《減衰球》によって自分も被害を受けます。そのためまず《減衰球》は採用されていないでしょう。それならば置物対策をあまりたくさんサイドインする必要はありません。一方、《奇怪な具現》のように《減衰球》の影響をほとんど受けず、更にロータスコンボとの相性が絶望的な相手は、高確率で《減衰球》などの1枚で勝てる致命的な置物を置いてくるでしょう。《耳の痛い静寂》や《エメリアのアルコン》もありえますね。こういった相手には全力で《洪水の大口へ》を入れておきます。《洪水の大口へ》のようなバウンスカードは、リスト非公開トーナメントにおいては保険としてサイドインすることが多く、とりあえずゲーム2では、よっぽど置物対策を置いてこないという確信がない限りは、少しだけサイドインするようにします。注意しなければならないのは、相性の悪いマッチで大量のサイドカードを用意する状況です。たとえばラクドス果敢に弱いからといってサイドを10枚用意したとしましょう。ロータスコンボのメインからカードを10枚抜けるでしょうか?サイドボード後のデッキがしっかりコンボを決められる形でなければ意味がありません。《出現の根本原理》が重いからといって、サーチ先含めてすべてを抜いて除去にしてしまったら、《睡蓮の原野》と《演劇の舞台》が揃って盤面も一掃したのに、そこから勝てなくなってしまうでしょう。コンボデッキはコンボパーツ・コンボを集めるカード・除去や妨害の3種で構成されることが多く、相手がアグロデッキの場合は除去や妨害を抜きづらいので、コンボを集めるカードに手をかけるケースが多いです。ここで抜きすぎると失敗してしまいます。どうやって勝つかを明確にしておくのが重要です。コンボデッキはどんなに多くともサイドアウト枚数を6枚程度にとどめておくのが良いでしょう。どのような形でサイド後を戦うかは、サイドボードを組む段階で細かく考えておいてください。本番でアドリブでサイドインアウトするのは、コンボデッキに慣れてからにしましょう。サイドボード後にコンボパーツそのものを減らすケースとしては、そのコンボがコントロールやビートダウンを兼ねていたり、サイド後にコンボ以外の勝ち筋を用意している場合、もしくは極端にそのコンボパーツがメタられやすい時です。最初の例はイゼット天啓です。白単アグロなどのビートダウンには《アールンドの天啓》+《感電の反復》を決める必要がなく、ただ重いだけなので、この重い部分を抜いて除去などを減らします。コンボ以外の勝ち筋は、たとえばストーム系デッキのサイドボードに入る《若き紅蓮術士》などでしょうか。この場合は重いコンボパーツを減らすことも肯定されます。逆にコンボを探すパーツは《若き紅蓮術士》と噛み合いますから、ほとんど抜かないですね。これならコンボパーツを抜いたとしてもコンボはそこそこ揃います。コンボパーツが極端にメタられやすい例はルビーストームです。《ドラニスの判事》はすべてのデッキに入っているわけではないですが、墓地対策はほぼすべてのデッキに入っています。そのため、《炎の中の過去》はサイドアウト候補になります。どの相手も最も入れてくる可能性が高いのが墓地対策で、《炎の中の過去》は墓地対策をされると何もしないカード。たくさん引くリスクがあるのでサイドアウト候補となるのです。サイドボードをする時は「しっかりサイド後も勝てるデッキになっているか」が大事です。これはコンボデッキ以外のすべてのデッキでも言えることですが。サイドボーディング後の60枚があなたのゲーム2、3のデッキになるんです!メインボードの60枚はバランスを意識して組みますよね?サイド後も同じです! これからコンボデッカーを目指す皆さんへ 簡単ですが、今回の記事は以上となります。とっつきにくい印象のあるコンボデッキですが、実はそんなことはありません!コンボデッキは誰でもウェルカム。大歓迎です。一人回しだけでも十分に強くなれますし、クリーチャー同士の戦闘やカードの交換が苦手な人も、戦闘を介さないコンボデッキなら上手く回せるかもしれません。皆さん、コンボデッキを手に取ってみませんか?

【ゆうやんのデッキメモリー】ピクルスコンボ

ピックアップ

2024.11.13

mtg Yuyan

皆さんこんにちは。 ゆうやんのデッキメモリーは、今年でマジックを初めて21年目になる僕が、思い出に残っているデッキを紹介していく記事です。 昔を知っている方は一緒に懐かしんで、知らない方は昔話にお付き合いください! ピクルスコンボ 突然だが、僕が一番好きなデッキは、コンボ要素の入っているコントロールデッキだ。除去と打ち消しだけを詰め込んだアゾリウスコントロールも嫌いではないが、かつてスタンダードを席巻したイゼット天啓のように、コントロールとして立ち振る舞いながら突然勝てるようなデッキの方がより好み。その原点となるのが今回紹介するピクルスコンボ。 ピクルスと聞いて一瞬マックのハンバーガーに入っているアレを連想した人がいるかもしれないが、あのピクルスで間違いない。このデッキのフィニッシャーである《塩水の精霊》の能力を毎ターン使用して相手を塩漬け(タップ状態)にさせ続けてしまうことから、その名前がつけられた。ピクルスコンボは基本的には青単、もしくはディミーアカラーのコントロールデッキ……というよりパーミッションデッキ。デッキに入っている打ち消し呪文はなんと16枚と、今では考えられない枚数。ちなみに打ち消しが大量に入っているデッキを、パーミッションデッキと呼ぶのだが、これは打消しがあまりに入りすぎているため、対戦相手が呪文を唱える時に「これは通りますか?」と許可を求めてくることから、その名前がついたらしい。デッキの動きは先述の通りディミーアパーミッション。大量の打ち消しで盤面とライフを守りつつ、打ち消しを構えながら変異をプレイ。 そして相手が呪文を使ってフルタップになった隙に《塩水の精霊》を表返し、相手のアンタップ状態を一度飛ばす。相手が動けずターンを返してきたところで、《ヴェズーヴァの多相の戦士》を変異で出し、《塩水の精霊》として表返す。これで相手は更にもう1ターンアンタップが飛び、アップキープに《ヴェズーヴァの多相の戦士》を裏にして、それをまた《塩水の精霊》として表にしてロックが完成する。この《塩水の精霊》と《ヴェズーヴァの多相の戦士》のピクルスコンビは、このデッキのみならず、様々な青いデッキに採用されていた。赤いトロンは《ボガーダンのヘルカイト》を採用していたが、それ以外の青系トロンのフィニッシャーとして入っていることが多く、当時スタンダードをやっていたプレイヤーなら誰もが知るコンビだ。フィニッシャーでもある《ヴェズーヴァの多相の戦士》がとにかく強力なのがこのデッキの魅力だった。相手のクリーチャーになって相打ちを取っても良し、《意志を曲げる者》が表状態で場にいれば《ヴェズーヴァの多相の戦士》に飛んできた除去を、自身を表返すことで《意志を曲げる者》になって跳ね返せたり、《水深の予見者》がいれば2マナを払って2ドローし、アップキープに再び裏返って無限のドローエンジンが完成した。クリーチャーのほとんどが変異なため、《呪文嵌め》を構えながら4ターン目に、あるいは《差し戻し》などの2マナカウンターを構えながら5ターン目に出す動きが安定し、しかも相手はその変異が何かを読まなければならない。《塩水の精霊》なら7マナが揃うタイミングが要注意。《差し戻し》で重いアクションを戻されて返しで《塩水の精霊》が表になればそのまま負けるからだ。それなら7マナが揃うまでに対処したいのだが、《意志を曲げる者》だったら裏目ってしまうかもしれない。そこに2体目の変異が追加されたらどちらを除去しようか迷ってしまう。この頃非常によく使われていた"貯めラン"こと《戦慄艦の浅瀬》も、ピクルスコンボと非常に相性が良い土地だった。自身をタップすることで、カウンターを乗せていき、好きな数のカウンターを取り除くとその分のマナを生み出せるのが貯めラン。つまり4つのカウンターを取り除けば、1枚の土地から4マナを生み出せるというわけだ。打ち消しを構えてターンを返し、相手が警戒して展開してこなければ《戦慄艦の浅瀬》にカウンターを貯める。それが続くと気づけば大量のカウンターが《戦慄艦の浅瀬》に乗り、《塩水の精霊》を変異→即表返して勝利することも多く、この重いコンボを使いやすくさせてくれていた。青いデッキ対決では1ターンに何回行動できるかが重要なため、マナの総量が決め手となる。となれば貯めランをたくさん引いて貯めた方が勝つのは自明の理。そこでサイドボードには5枚目の貯めランとして《石灰の池》まで採用している。ピクルスは青単、あるいは青黒で組まれることが多いのだが、青単では除去を採用することはできない。そこで活躍していたのが《砂漠》だ。当時は《サバンナ・ライオン》《サルタリーの僧侶》などタフネス1のクリーチャーが多く、《砂漠》がよく効いてくれた。とはいえ《砂漠》だけではさばききるのは難しく、サイドには大量の《最後の喘ぎ》が入っている。 今見ると黒マナが《戦慄艦の浅瀬》合わせて12枚と、アグロ相手にはどう考えても足りない気がするのだが、マナベースの脆さは若さの現れでもある。17歳の細川少年では気づけなかった。ただ、一方で《神秘の指導》からサーチするためのカードはそれなりにしっかり考えられている。4マナしかない状況で《神秘の指導》から持ってきて即打ちできる《殺戮の契約》や、ビートダウン相手に3対1交換が取れる可能性のある《魂の捕縛》など、複数枚入れたくはないが活躍するカードたちがサイドボードに散りばめられている。17歳の細川少年、やるじゃん!このリストは僕が五竜杯という草の根大会で初めてトップ8入賞を果たした時のものだ。当時、強豪プレイヤーが集まる草の根大会の1つだった五竜杯。そこで5勝2敗の成績が最高だった僕にとって、6勝1敗でリストをウェブサイトに乗せるのは夢で、それが叶った瞬間だった。3位入賞で名前を呼ばれた時、ものすごく嬉しくて、その日の帰りの電車はずっとドキドキしていた。その時の成功体験が今も残っていて、コントロールやコンボが好きなのかもしれない余談だが、このデッキリストはウェブ上に今も残っており、サイドボードの《根絶》が記載されていない。どうやら僕の字が汚すぎて、デッキリストを入力する方がわからなかったようで、今も「2《字が汚くて解読不能/ご本人は連絡ください》」と書いてある。字が汚いとこうしてデジタルタトゥーとして残ってしまうので、皆さん気を付けよう!それではまた、次のデッキメモリーで!

【週刊メタゲーム通信】今週はイグラが大活躍!最新のパイオニア環境は黒大活躍!

Pioneer ピックアップ

2024.11.12

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今回はヨーロッパ地域チャンピオンシップの結果から、最新のパイオニア環境を分析していきます! メタゲーム トップ8の内訳は以下のようになりました。ラクドスデーモン:3人ジャンドサクリファイス:2人ゴルガリフード:1人イゼットフェニックス:1人4cズアー:1人まずは黒いデッキ大活躍!というのが第一印象でしょうか。そしてラクドス果敢がトップ8に0!使用率は全体で2位、13.2%だったことを考えると、今回の負け組であることは揺るぎない事実。速度と粘り強さを持ったデッキではありますが、クリーチャーに強化スペルを打って勝つデッキである以上、徹底的に対策されてしまうとさすがに勝てませんね。そして《全てを喰らうもの、イグラ》を使用したデッキにも注目です。《全てを喰らうもの、イグラ》と《大釜の使い魔》の無限コンボを擁したサクリファイスデッキは南米地域チャンピオンシップに続いて、ヨーロッパでもトップ8に3人を送り込みました。しかもサクリファイスデッキは上位トップ9に入っておらず、使用者は少なかったにも関わらずのこの結果。今回の勝ち組デッキと言って良いでしょう!その理由としては、ヨーロッパ地域チャンピオンシップのメタゲームがサクリファイスにとって非常に良いものだったことが挙げられます。 こちらが今回のメタゲーム。イゼットフェニックス・ラクドスデーモン・セレズニアカンパニーに強く、ラクドス果敢とも五分に戦えるデッキで、厳しいマッチであるアゾリウスコントロールやロータスコンボより、それらの数が圧倒的に多かったのです。イゼットフェニックスは《美術家の才能》で大幅に強化され、ラクドスデーモンはラクドスミッドレンジの亜種。パイオニアで長く強力なデッキだったラクドスミッドレンジを使い続けていたプレイヤーは、そのままラクドスデーモンに移行する可能性が高く、この2つのデッキは特に多いであることが予想できました。上手くメタゲームを読んで《全てを喰らうもの、イグラ》を持ち込んだプレイヤーに拍手! ゴルガリフード ヨーロッパ地域チャンピオンシップ:優勝 By Marc Tobiasch 《全てを喰らうもの、イグラ》でトップ8に入賞した中で、唯一ゴルガリカラーを選択したのがMarc Tobiasch。元プロプレイヤーにして稀代のデッキビルダーでもあるMarc Tobiaschが見事栄冠を勝ち取ったゴルガリフードは、従来のゴルガリフードとは一線を画した仕上がりとなっております。まずはこのデッキの動きについて簡単におさらいしましょう。《全てを喰らうもの、イグラ》は自身以外のクリーチャーすべてを食物に変えるクリーチャー。これにより、《大釜の使い魔》が場と墓地にいると、《大釜の使い魔》を食物として食べて墓地の《大釜の使い魔》が戻ってくるので、無限ライフルーズが発生します。2枚の《大釜の使い魔》を集めるのはなかなか大変。そして《全てを喰らうもの、イグラ》も5マナと結構重い。そんなこのデッキの事情をたった1枚で解決してくれるのが《清掃人の才能》です。まず置いておくだけで、クリーチャー死亡時に食物生成。実質《魔女のかまど》のようなエンチャントで既に強いのですが、レベルを上げると、カードを生け贄にした際に切削を行うことができます。《魔女のかまど》で《大釜の使い魔》を生け贄にして食物を出し、食物を生け贄にして《大釜の使い魔》を戻す。これだけでカードを4枚切削できるのです。更に更に、レベルをもう1つあげると、終了ステップ開始時に土地とこれ以外のパーマネントを3つ生け贄に捧げることで、自分の墓地からクリーチャーを戦場に戻せます。これで重い《全てを喰らうもの、イグラ》を場に戻せるのです。しかも最後の生け贄でも当然切削でカードを6枚墓地に送れるので、《大釜の使い魔》がそこで落ちるかもしれません。まさに《全てを喰らうもの、イグラ》コンボのためのカード、それが《清掃人の才能》です。これらを軸にしたデッキがジャンドサクリファイス、そしてこのゴルガリフードなのです。このリストの最大の特徴は《パンくずの道標》が入っていない点です。《魔女のかまど》《大釜の使い魔》と組み合わせて継続的にパーマネントを拾い続ける《パンくずの道標》は、《清掃人の才能》《魔女のかまど》《大釜の使い魔》《全てを喰らうもの、イグラ》を探すカードとして、2~3枚はほぼ採用されていました。しかし今のパイオニアは高速環境。《パンくずの道標》を回している暇がなく、これが「《全てを喰らうもの、イグラ》を使うならジャンドサクリファイス」になる理由の1つ。継続的なリソースではなく、展開しながら手札を調整できる《鏡割りの寓話》や盤面に触れる《波乱の悪魔》になったのです。Marc Tobiaschはこのスロットに《蓄え放題》を採用することにしました。パーマネントを拾いながらカードを墓地に落とせるので、《全てを喰らうもの、イグラ》を落としつつ《清掃人の才能》といった動きができます。《清掃人の才能》と《蓄え放題》で墓地を肥やせることから《ウルヴェンワルド横断》に目を付けたのも素晴らしいの一言。《全てを喰らうもの、イグラ》を手札か墓地に加えなければ始まらないデッキなので、引き込む確率を上げつつ、手札から《全てを喰らうもの、イグラ》を出しやすくもなっています。ここが単純に土地ならばマナフラッドしやすくなり、他のスペルなら《全てを喰らうもの、イグラ》を出すのは難しいでしょうそして《ウルヴェンワルド横断》のバリューはそれだけにとどまりません。《魂の洞窟》を採用して猫を指定し、《全てを喰らうもの、イグラ》を確実に通せるようにしたり、3枚採用されている《耐え抜くもの、母聖樹》にもアクセスできます。「なぜ《耐え抜くもの、母聖樹》がこんなに入っているのか?」その疑問の答えは《全てを喰らうもの、イグラ》を見ればわかります。《全てを喰らうもの、イグラ》は他のすべてのクリーチャーを食物にします。アーティファクト・食物。そう、《全てを喰らうもの、イグラ》がいる時は他のクリーチャーはアーティファクトでもあるので、《耐え抜くもの、母聖樹》で除去することができるのです。《金のガチョウ》によるマナ加速や土地からのダメージがジャンドに比べて低い点など、環境が速いことにしっかり適応したこのゴルガリフード、優勝も納得! ラクドスデーモン ヨーロッパ地域チャンピオンシップ :2位 By Sergio Gimenez ヨーロッパ地域チャンピオンシップでイゼットフェニックスに次いで2番目に人気だったのがこのラクドスデーモン。デッキのコンセプトは黒単デーモンとほとんど同じです。《思考囲い》《致命的な一押し》で手札や場に触り、《不浄な別室》でリソースを稼ぎつつ、《止められぬ斬鬼》や《黙示録、シェオルドレッド》でフィニッシュするミッドレンジデッキ。赤い部分は当然《鏡割りの寓話》が入ります。手札破壊と除去、そしてクリーチャーがバランスよく入っているミッドレンジは当然《鏡割りの寓話》との相性が抜群。相手によって不要なカードを捨てて有効牌に変えていけるためです。黒単デーモンとの大きな違いは2マナ域の強さでしょう。《税血の収穫者》はラクドスだからこそ採用できる超強力な2マナ域。2マナ3/2という攻撃的なスタッツと除去性能、そして血は手札を循環させるのに使えます。このカードが使用できるのは、《鏡割りの寓話》と同じぐらい大きいですね。《税血の収穫者》を採用できるラクドスは、黒単に比べて攻撃的な構成となっています。それがよくわかるのが《鬼の刃》の採用です。黒単では採用されていないカードですが、黒単の場合は《税血の収穫者》クラスの2マナ域がなく、《鬼の刃》だけがポツンと2マナ域のクリーチャーとして浮いてしまいます。ラクドスは複数の2マナ域を採用して2ターン目からしっかり殴っていけるからこそ、《鬼の刃》を採用しているのです。この《鬼の刃》はその名の通り鬼、デーモンなので、《不浄な別室》でしっかり2点ドレインしてくれます。ただの3/1威迫なだけでなく、《鏡割りの寓話》のトークンや《税血の収穫者》に装備してデーモンにさせるのも便利。序盤から終盤までずっと殴れる良クリーチャーです。手札破壊、除去、《鏡割りの寓話》、フィニッシャーとその顔触れはほぼラクドスミッドレンジなので、パイオニアで長きにわたって隆盛していたラクドスミッドレンジの正統後継者と言っても過言ではありません。今後もパイオニア環境に残り続ける強デッキです!長い付き合いになると思うので、皆さん回しておきましょう。 4cズアー ヨーロッパ地域チャンピオンシップ:7位 By Max Penzkofer ここ最近流行の兆しだった《永遠の策謀家、ズアー》入りの《奇怪な具現》……かと思いきや、なんとこのデッキは《奇怪な具現》が採用されていません!4cエニグマレスズアーと言ったところでしょうか。《奇怪な具現》やその周りのサーチ先をデッキから抜いたため、60枚に収まっています。《豆の木をのぼれ》は5マナ以上のカードを唱えた際にカードを引けるエンチャントなので、3種入っている大主すべてで誘発します。兆候で誘発するので《豆の木をのぼれ》と大主は相性抜群ですね。3種の大主はそれぞれクリーチャー展開、マナ加速、ドローと違い、それらの大主を《永遠の策謀家、ズアー》で一足早くクリーチャー化してしまおうというのがこのデッキのコンセプト。《永遠の策謀家、ズアー》の常在型能力で他のクリーチャー・エンチャントに呪禁がつくので、一度起きた大主を倒すのは非常に困難。まず《永遠の策謀家、ズアー》から倒さなければならないので、複数の除去を要求されます。特に《ミストムーアの大主》は出た時と攻撃時に2/1飛行を2体生成と非常に凶悪な性能なので、1ターンでも除去が遅れれば十分致命傷になりえます。《思考囲い》や《マナの合流点》などでライフが減っていくため、アグロデッキは辛そうに見えますが、そこでも《永遠の策謀家、ズアー》が活躍します。クリーチャー・エンチャントは絆魂がつくので、《永遠の策謀家、ズアー》さえ残ればダメージレースを一気に覆せるのです。メインから12枚の除去が入っており、しかもその内8枚は追放なので、《心火の英雄》も後腐れなく対処できますし、《永遠の策謀家、ズアー》と大主によって攻めるのも早いため、ラクドス果敢が除去デッキ相手に行うサイドプランである《ウラブラスクの溶鉱炉》も、この4cズアーには比較的効きづらい。見た目よりラクドス果敢ともしっかり戦えるデッキです。5c白日のようなたくさんリソースを稼げるコントロールが好きな方なら、きっとこの4cズアーも気に入るはず!しっかり強いので、試してみてはいかがでしょうか?

『ファウンデーションズ』注目新規カードトップ10!!

ピックアップ

2024.11.08

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今回は5年間スタンダードで使用できる『ファウンデーションズ』から、新規カードのみをピックアップして、トップ10形式でご紹介していきます! 第10位 特定のクリーチャー・タイプを集めたデッキで活躍した《旗印》の現代版といった性能が《親族旗》。戦場に出る際に指定したクリーチャー・タイプ、たとえばゴブリンが5体いれば、仲間カウンターが5個乗った状態で場に出て、自分のゴブリンは+5/+5の修正を受けます。《旗印》と違って戦場に出る際に修正値が決まるので、除去されるごとにクリーチャーがどんどん弱くなるということはありません。5マナと少し重いカードではありますが、マナを出せるデッキならばもしかしたら活躍できるかもしれません。真っ先に思い付いたのがエルフでした。『ファウンデーションズ』では《ラノワールのエルフ》や《エルフの大ドルイド》など強力なエルフが多数再録されています。エルフはサイズの小ささが悩みでしたが、《親族旗》があれば解決します。スタンダードでエルフが成立するか楽しみですね!もちろん他の種族デッキでも使えるので、お気に入りの種族を強化させましょう!   第9位 マジックのカードパワーが年々上がっていくにつれ、徐々についていけなくなった装備品というカード。装備品はその性質上、戦場に出し、つける必要があるので、マナコスト以上にマナがかかってしまいます。3ターン目に3マナ分のインパクトを残したいのに、3マナの装備品は置くだけでターンを返してしまうので、それがどれだけ強力であろうと、現代では敬遠されがちです。かつて一世を風靡した《火と氷の剣》はモダンで見なくなりましたし、「今《梅澤の十手》が禁止解除されても使われないのでは?」と言われているぐらいです。事実、最近活躍している装備品は《有翼の叡智、ナドゥ》との即死コンボとなる《手甲》や、《シガルダの助け》で即装備することで一撃で相手を屠る《巨像の鎚》など、コンボパーツとなっているのがほとんど。コンボと関係のなく、今も使われている装備品は、《ウルザの物語》からサーチでき、かつ構築物トークンにつけられる《影槍》ぐらいでしょう。さて、スタンダードで最後に活躍した装備品は一体なんでしょうか?《謎めいた外套》……もたまに採用されるぐらいだったのでもっと前になります。『ゼンディカーの夜明け』の《スカイクレイブの大鎚》です。+2/+2と飛行・先制攻撃付与とまずまずの装備性能ですが、戦場に出た時にタダで装備できるため、装備品の欠点であるマナ食い虫が解消されていることから、白いアグロデッキにはよく採用されていました。今回登場した《天界の鎧》もまた、戦場に出た時にマナを支払わずに装備できる装備品。パワーを2つ上げて飛行を付与する点も同じですね。違うのは、タフネスと先制攻撃を犠牲にして持っている能力。《天界の鎧》は瞬速を持ち、更に装備したターンのみ、装備先のクリーチャーに呪禁と破壊不能を付与してくれます。相手の除去から守ってよし、クリーチャー同士の相打ちが発生しそうな時にコンバットトリックで使用も可能です。《心火の英雄》に装備すれば、死亡時のダメージも上がる上に、そもそも《心火の英雄》自体が止まりづらくなるのでかなり魅力的ですね。相手も《心火の英雄》は早めに打ち取りたいはずなので、クリーチャーで積極的に相打ちを取ってくるでしょうし、そこを狙えば大きなアドバンテージとなるでしょう。単純な打点を上げるだけでなく、除去避けやコンバットトリックなどに使える器用な装備品だと思います。 第8位 スゥルタイカラーのコントロールデッキなどで活躍した《星界の大蛇、コーマ》でしたが、こちらの新コーマも似た系統のデッキでフィニッシャーとなりそうな見た目をしています。8/12というふざけたサイズでクリーチャー同士の戦闘ではほぼ倒されませんし、トランプルがあるのでダメージも通りやすい。そしてダメージを与えた際のボーナスが3/3トークンを4体と、非常に強力。《墓所のタイタン》みたいなものです。護法もしっかりついているので除去するのはかなり大変。7ターン目に出てくれば《喉首狙い》を6マナで打つことで対処できますが、マナ加速から先手5ターン目に出てきたら対処しようがありません。大体こういうのは打ち消せば良いのですが、ご丁寧にしっかり「この呪文は打ち消されない」と書いてあります。《ホーントウッドの大主》から《世界を喰らうもの、コーマ》を出すデッキが出てきそうな予感がします。 天敵は《ティシャーナの潮縛り》ですね。勘弁してください。 第7位 追加のセットランドを行える可愛いビースト・貴族のおたからくん。《ホーントウッドの大主》と比べると、手札に土地がないとマナ加速できず、手札の土地を消耗してしまうので、マナを伸ばすカードとしての性能は劣りますが、もう1つ強力な能力がおたからにはついています。ライブラリーの上6枚から、自分のコントロールする土地以下のマナ総量のクリーチャーを場に出すことができるのです。自分でマナ加速を行いながらフィニッシャーをデッキから場に出せる、自己完結したクリーチャーです。《偉大なる統一者、アトラクサ》を出しても良し、先ほど紹介した《世界を喰らうもの、コーマ》も良いでしょう!《ホーントウッドの大主》と《溌剌とした探検家、おたから》からデカブツを連打したくなってきました。 第6位 最初に断っておきますが、このカードはおそらく未来永劫、おじさんマジックプレイヤーたちに《運命の大立者》と呼ばれます。おじさんマジックプレイヤーの一人である僕が先に謝罪いたします。マナを払ってどんどん新しいクリーチャー・タイプを獲得しながら強くなるクリーチャーの元祖、《運命の大立者》はスタンダードの赤単アグロや白単アグロで大活躍しましたが、この《次元の先駆者、ケラン》も、十分にスタンダードの1マナ域に組み込まれるスペックだと思います。まず1マナ2/1です。これだけで《ジャッカルの仔》を意気揚々と出していた赤好きおじさんは号泣することでしょう。最初に2マナを払うと、プレイヤーにダメージを与えた時にトップを追放してプレイできるようになる、いわゆる衝動ドローが発生します。再序盤に使う余裕はありませんが、中盤以降にリソースを稼げるのは優秀。そして次の段階では3/2二段攻撃になり、戦闘能力が格段に上昇します。しかも二段攻撃なので、衝動ドローも2倍!最初の成長段階では与えるダメージは増えないものの、2回目の成長で非常に強力なクリーチャーになります。しかも2回目の成長が3マナと軽いので、成長させる機会もかなり多いでしょう。1マナ域のクリーチャーは中盤以降に引くとカードにならないのが悩みでしたが、《次元の先駆者、ケラン》は1マナ3/2二段攻撃と、十分相手が出してくる3~4マナ圏と戦える性能をしています。そんな強力なカードがそもそも1マナ2/1なのです。今のスタンダードではただでさえ《心火の英雄》《僧院の速槍》と強力な1マナ圏が赤には揃っていますが、そこに名を連ねる性能なのではないでしょうか?また、クリーチャー・タイプがフェアリーである点も注目です。1マナのフェアリーが《眠り呪いのフェアリー》に続いて増えたので、これでモダンでは《呪文づまりのスプライト》が本気を出すのではないでしょうか?「《呪文づまりのスプライト》は2ターン目に2マナのカードを打ち消せれば強い」と昔はよく言われていましたが、プレイアブルな1マナフェアリーがいないのがネックでした。《次元の先駆者、ケラン》はフェアリー界にも新たな風を巻き起こすかもしれませんね! 第5位 突然ですが、僕の使用している「仙豆スリーブ」をご存じでしょうか? 「このスリーブを使うと勝てる!」と言われて手渡され、半信半疑で使い始め、そのシーズンだけでグランプリトップ8に3回、プロツアーでも11勝4敗1分の成績を残し、その年のプロポイントを30点稼いだスリーブ、それが通称仙豆です。 画像は公式サイトより引用   マジック公式カバレージでも僕がこのスリーブを使っている姿は何度も映っていて、その逸話もちょっと紹介されていたりします。その仙豆に描かれている人物こそ、このエレンダなのです。以前のエレンダは統率者で人気のカードですが、新エレンダはスタンダードで活躍してくれそうな性能です。4マナ4/4絆魂と優れた能力に加え、インスタントからの呪禁という強力な除去耐性を擁しています。スタンダードでは《僧院の速槍》や《精鋭射手団の目立ちたがり》で殴ってくる赤系アグロや、《フェアリーの黒幕》《永劫の好奇心》など瞬速クリーチャーで攻めてくる青系ミッドレンジがいるため、まずソーサリー除去が採用されることはありません。インスタントからの呪禁はすさまじい除去耐性です。対処方法が《力線の束縛》か《軍備放棄》ぐらいしか思いつきません。そして能力はそれだけではありません。ライフが20より多いだけで5/5の威迫・絆魂となり、更にライフが30を超えるとサイズが10/10へと大幅アップ。ただこのカードを出して殴っているだけで文字通りゲームに勝ってしまいます。除去しづらく、放置しているだけであっという間に負けてしまうカードはかなりの脅威。色が白黒なのでデッキを選びますが、白黒系のあらゆるデッキに入るぐらい強力だと思います。エスパー(青白黒)やアブザン(緑白黒)など、様々なカラーリングでエレンダを試してみたいですね。 第4位 最初に断っておきますが、このカードはおそらく未来永劫、おじさんマジックプレイヤーたちに《瞬唱の魔道士》と呼ばれます。おじさんマジックプレイヤーの一人である僕が先に謝罪いたします。4マナ3/3で瞬速・飛行。攻撃時に墓地のインスタントかソーサリーにフラッシュバックを付与と、もはや《瞬唱の魔道士》本人と言っても遜色ない性能。攻撃が通った時でなく、攻撃した時なのが嬉しいですね。《瞬唱の魔道士》のように打ち消しを使い回してクロックパーミッションを行うことはできませんが、盤面を除去したりカードを引いたりと、それでも十分に活躍が見込めます。同じマナ域に《永劫の好奇心》がいて、そちらは除去耐性を持っていますが、能力を生かすためにはクリーチャーをそれなりに採用する必要があります。一方、《忘れ去られし伝承のスフィンクス》は単体で機能するので、どちらかと言えばコントロールデッキに入るカードかもしれません。《塔の点火》を使い回すビジョンがまず見えたので、イゼットカラーのデッキでまずは試してみたい1枚。 第3位 戦場に出た時に2ドロー、2ディスカードする新キオーラ。何かとキオーラはカードを引かせてくれますが、貴族だからでしょうか。これだけでも最低限の性能ですが、《上げ潮、キオーラ》が真価を発揮するのはスレッショルド後。墓地に7枚以上のカードがある状態で攻撃すると8/8のタコを召喚してくれます!「え?条件緩すぎない??」って思いましたよね。同意見です。3マナで戦場に出た時にクリーチャーを出しつつ手札を調整……つまりこのカードは実質《鏡割りの寓話》といっても過言ではありません。いや、それは少し言いすぎましたが、非常に便利なクリーチャーであることは間違いないでしょう。伝説クリーチャーは複数枚引くと手札に溜まってしまうリスクがありますが、《上げ潮、キオーラ》は捨ててしまえば問題ないので、4枚投入することをためらう必要ありません。相手視点ではいつスレッショルドを達成されて攻撃されるかわからないので、見たらとりあえず除去するしかありません。3マナにして大きなプレッシャーを与えて除去を強要させつつ、自身は手札入れ替えで質を上げていく。うーん、このカード、やはり《鏡割りの寓話》なのでは? 第2位 久しぶりにとんでもない3マナプレインズウォーカーがやってきた気がします。3ターン目に出て、+能力を起動してルーターするだけで既に忠誠値が5。硬い、硬すぎる!3マナでこの硬さはまるで《王冠泥棒、オーコ》……と言いかけて、《王冠泥棒、オーコ》は何のお膳立てもせずに出すだけで忠誠度6だったのを思い出しました。なんなんだあいつは。まああんなやつのことはおいといて、話を《狡猾な侵入者、魁渡》に戻しましょう。マイナスから入って2/1を生成しつつ、他のクリーチャーでダメージを通せば忠誠度は2になり、次のターンにその2体がダメージを通せば忠誠度は4になり、更にトークンを出して次のターンに殴り……とどんどん忠誠度とトークンが増えていきます。正直、3マナとは思えない性能です。《遠眼鏡のセイレーン》や《フェアリーの黒幕》と一緒にデッキに入る画がもう浮かんできました。+1能力もなかなか強力。すぐに止まりがちな《腐食の荒馬》を通したり、最後の数点を削るのにも重宝しそうです。能力すべてが嚙み合っていてとても強力!すぐに4枚揃えたい。左にいるのはポンポンちゃんですか?可愛いですね。 第1位 《隠れ石》強くなりすぎだろ!!このカードを最初プレビューで見た時の感想でした。昔はこれより起動コストが2マナ重くて警戒もついてなくてただのエレメンタルだったんですよ?それでもいろいろなデッキで使われているすごいカードでした。《隠れ石》の名誉のために《魂石の聖域》は未来永劫、《隠れ石》と呼びます。おじさんを許してください。《不穏な投錨地》などのミシュラランドと違い、一度クリーチャー化したら元に戻らないので、全体除去などのソーサリーにやられてしまうのが欠点ですが、都度マナがかからないのは強力です。起動コストにタップを含まないので、4枚の土地があれば相手のターン終了時にクリーチャー化してすぐに殴りにいけます。《山》しか入っていないスタンダードの赤単アグロには入るのではないでしょうか。すべてのクリーチャー・タイプを持っているので《多様な鼠》で二段攻撃をつけられるのも美味しい。そしてすべてのクリーチャー・タイプを持っているということは、デーモンでもあるということ。今スタンダードやパイオニアで活躍しまくっている《不浄な別室+祭儀室》の恩恵も受けられます。パイオニアでは名誉デーモンの《変わり谷》があることで強力な《不浄な別室》ですが、スタンダードでも《魂石の聖域》が加わったことで、更に使いやすくなりそうです。5年間使いそうな土地です! GOOD GAMEでもシングル販売&プレリ開始! GOOD GAMEでは現在、『ファウンデーションズ』の各種製品を店頭にて販売中! 放浪皇のクリスマスキャンペーンにも対応しておりますので、ぜひブースターパックを購入していってください! 更にシングルカードも店頭では既にご購入いただけ、Webサイトでもご予約を承っております! 今回のレビューで気になったカードや、狙っているカードなど、ございましたらぜひGOOD GAMEにてご購入ください! ご購入はコチラから!

【今週のピックアップデッキ】イゼットヘルレイザー/スゥルタイ上陸/ジャンド森林ギフト

Modern Pioneer Standard ピックアップ

2024.11.07

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 イゼットヘルレイザー(スタンダード) スタンダードリーグ:5-0 By TOPrift 赤の除去と青のドロー・打ち消しを組み合わせたイゼットコントロール。そこにプチコンボ要素を取り入れたのが、このイゼットヘルレイザー。まずはヘルレイザー、《気まぐれな厄介者》のテキストからおさらいしてみましょう。このカードは墓地にカードが9枚以上あるとたった3マナで唱えられる4/4飛行。そして戦場に出た時に、自分の墓地のカードをランダムに3枚追放し、その追放した3枚の中から土地かクリーチャー以外のカード1枚をマナ・コストを支払わずに使用できるというもの。つまり墓地のカードを踏み倒せる能力を持っているのですが、特定のカードを踏み倒したい場合、まずそのカードを追放する必要があります。墓地のカードが3枚なら踏み倒したいものがそこにあれば確実に追放でき、唱えることができますが、3マナで唱えるには墓地が9枚以上なければならないので、その際は希望のカードが追放できるかはわかりません。このちょっと使いにくい《気まぐれな厄介者》が主役となるこのデッキ。まず基本的な動きはイゼットコントロール。《塔の点火》で除去したり、《三歩先》で打ち消したり、《間の悪い爆発》でリソース確保や全体除去を行います。更に《苦々しい再会》《鉄面提督のトンネル掘削機》で不要牌を捨ててカードを引き、墓地を9枚以上溜めたら準備完了。3マナで《気まぐれな厄介者》をキャストし、墓地のカードを踏み倒します。この時の大当たりとなるのが《機織りの季節》!クリーチャーのコピーを2回生成できるので、これで《気まぐれな厄介者》を追加で2体戦場に出すことができます。そうすれば墓地のカードを更に2回追放できるので、ほぼ好きなカードを2度踏み倒せるのです。この《気まぐれな厄介者》をコピーする手段は《三歩先》でもOKです。こちらは追加の3マナを支払う必要がある点に注意。墓地を貯める手段として優秀な《鉄面提督のトンネル掘削機》ですが、変身時の能力も強力。《灼熱の裂け目、テクトラン》から出したマナでパーマネント呪文を唱えると、そのマナ総量に等しい値の発見を行うことができます。《気まぐれな厄介者》や《希望の標、チャンドラ》など、重くて強力なパーマネントが採用されているので、発見の値も大きい!《希望の標、チャンドラ》も《気まぐれな厄介者》でめくれて嬉しいカードですね。一度戦場に出てしまえば、《機織りの季節》が倍になって一気に大量のアドバンテージを獲得できます。《鉄面提督のトンネル掘削機》を変身させるには落魄を達成させる必要があります。クリーチャーの死亡や切削で溜まりがちな落魄ですが、このデッキでは第三の手段として、手札からパーマネントを捨てることで達成を目指します。《苦々しい再会》《美術家の才能》《間の悪い爆発》は落魄に貢献してくれるカードたち。《決定的瞬間》でも落魄を達成できる他、《塔の点火》で《咆哮する焼炉+蒸気サウナ》や《美術家の才能》などを生け贄に捧げても落魄するので、覚えておきたいですね。特に《苦々しい再会》は出してパーマネントを捨てて落魄し、自身を生け贄にしても落魄するので、落魄したいこのデッキにはぴったりです。《気まぐれな厄介者》《希望の標、チャンドラ》《機織りの季節》によるド派手な勝利は普通のコントロールデッキではなかなか味わえません! スゥルタイ上陸(パイオニア) NRG Series:5-2 By Anand Kinra スタンダードで大活躍だった《復活した精霊信者、ニッサ》がパイオニアに新たな風を吹き込みました。このデッキは《復活した精霊信者、ニッサ》《水蓮のコブラ》の「土地を置くとマナを生み出せるクリーチャー」を活用したコンボデッキ。《斡旋屋一家の潜伏先》などの土地は2回上陸を行うので、2マナを生み出せます。ここに《洞窟探検》が絡むと出せるマナが3マナになります。そうして出たマナを使って唱えるのが《肥えた緑甲羅》。パワーよりタフネスが大きいクリーチャーが戦場に出るとライブラリートップをめくり、それが土地ならタップ状態で戦場に出し、それ以外なら手札に入ります。土地なら戦場に出るので、《復活した精霊信者、ニッサ》で更にマナが伸ばせます。パワーよりタフネスが大きいクリーチャーは《肥えた緑甲羅》・《事件現場の分析者》・《森の女人像》・《災厄の占い師、グラルブ》に相棒の《空を放浪するもの、ヨーリオン》を加えた5種とそれなりに誘発の機会はあります。特にマナ総量が4以上のカードや土地をライブラリートップから使用できる《災厄の占い師、グラルブ》は便利ですね。《森の轟き、ルムラ》は《復活した精霊信者、ニッサ》《水蓮のコブラ》下ですさまじいマナを生み出せるクリーチャーで、《災厄の占い師、グラルブ》によってライブラリーから唱えることもでき、フィニッシャーにもなってくれる頼もしい熊。この《肥えた緑甲羅》と《森の轟き、ルムラ》はどちらもエレメンタルなので、《復活した精霊信者、ニッサ》によって手札に加えられるのもポイントです。相棒に指定されている《空を放浪するもの、ヨーリオン》はこのデッキでは膨大なアドバンテージを生み出します。《肥えた緑甲羅》が戦場にいる状態で《空を放浪するもの、ヨーリオン》を出すとまず1回誘発。その後、戦場の《肥えた緑甲羅》や《森の女人像》を追放すると、ターン終了時に戻ってきて《肥えた緑甲羅》がそれぞれ誘発するのです。ちなみに無限コンボも搭載されています。《洞窟探検》がある状態で《森の轟き、ルムラ》が場と墓地にあれば、《カーフェルの港》で墓地の《森の轟き、ルムラ》を吊り上げて生け贄にした《カーフェルの港》を場に戻しつつ、伝説ルールで片方が墓地に落ち、それを再び《カーフェルの港》で釣り上げることで、ループできます。《カーフェルの港》を起動するための6マナは《復活した精霊信者、ニッサ》や《水蓮のコブラ》をコントロールしていれば解決してくれます。《斡旋屋一家の潜伏先》《寓話の小道》などは能動的に墓地に落とせるので、合計で5枚あれば、《森の轟き、ルムラ》を吊り上げ続けられます。このループによってライブラリーが切削されていき、最終的にはライブラリーが0枚になり、デッキ内の土地がすべて落ちるので、《森の轟き、ルムラ》《カーフェルの港》で無限マナが発生し、その過程で落ちた《イプヌの細流》を無限回相手に起動し、ライブラリーアウトで勝利となります。上陸が好きな方や派手なデッキが好きな方にはぴったり!《肥えた緑甲羅》で気持ちよくなりましょう! ジャンド森林ギフト(モダン) モダンリーグ:5-0 By DDMeelow 『モダンホライゾン3』で収録されてからたびたび怪しいコンボデッキのお供になっている《変容する森林》が、また新たな仲間とともにモダンに殴り込んできました。今回《変容する森林》が変身するのは《王神の贈り物》。墓地のクリーチャーを追放して、それの4/4のコピーを生成する7マナのアーティファクトに変わります。《王神の贈り物》で追放するクリーチャー、まずは《残虐の執政官》。トークンは速攻を持つので非常に相性が良く、これだけでも勝てるマッチ多数。しかし、真の主役は《穢すもの、ウラモグ》でしょう。《王神の贈り物》で《穢すもの、ウラモグ》を追放してコピーを生成すると、そのコピーには10個のカウンターが乗ります。そう、《穢すもの、ウラモグ》を追放してコピーが出るので、追放領域にある一番重いカードは《穢すもの、ウラモグ》になるのです。《骨の皇帝》もこれらのクリーチャーを墓地から吊り上げることができるので、決して《王神の贈り物》に頼り切りではありません。面白いのは《逸失への恐怖》。自身がクリーチャー・エンチャントなので墓地に落ちた時の昂揚先として優秀な他、手札に来た《王神の贈り物》を捨ててカードを引く、潤滑油的な役割も果たします。そして《王神の贈り物》で追放する価値があるクリーチャーというのも大きなポイント。攻撃すると追加の戦闘フェイズを加えるため、《王神の贈り物》が更にもう1回誘発するのです。墓地に落ちてよし、引いてよし、釣ってよしと三拍子揃ったパーフェクトカード!《邪悪鳴らし》《ウィザーブルームの命令》で墓地を肥やして《変容する森林》を置くだけでコンボが成立するので、この動きに干渉できないデッキには安定して勝てるのは魅力の一つと言えますね。スタンダードの頃から活躍していた名カード、《王神の贈り物》。ついにモダンでも強力な贈り物を届けてくれるようになりました。

【週刊メタゲーム通信】エネルギーの支配に立ち向かうコントロールデッキたち

週刊 Modern ピックアップ

2024.11.06

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今回は先週末に行われた、モダンショーケースチャレンジの結果から、最新のモダン環境を分析していきます! メタゲーム 通常のチャレンジよりも競技性が高く、参加者も多いモダンショーケースチャレンジ。トップ8の内訳は エネルギー:5黒単ネクロ:1ルビーストーム:1ジェスカイコントロール:1とエネルギー人気は今週も変わらず。ナドゥ禁止後、ずっと強いエネルギーデッキですが、「速度があり」「様々なゲームプランを擁し」「特定のサイドボードでメタれない」と、強いデッキの条件をすべて満たしており、この牙城を打ち崩すのは難しそうです。テーブルトップのトーナメントでは青単ベルチャーの入賞もそこそこ見られますが、ショーケースチャレンジではトップ32に2人のみと寂しい結果に。 ボロスエネルギー モダンショーケースチャレンジ :優勝 By 336767332971 ショーケースチャレンジを制したのはボロスエネルギー。日本では《思考囲い》《オークの弓使い》を入れたマルドゥエネルギーが主流ですが、電脳世界ではボロスエネルギーの方が活躍しています。このリストで特徴的なのはメインからの《スレイベンの魔除け》採用でしょうか。《火の怒りのタイタン、フレージ》を墓地から追放でき、除去としても使え、更に《静牢》も破壊できると、エネルギー同型で特に活躍するこの除去。最近の《忌まわしき眼魔》型のディミーアマークタイドやルビーストームなど、墓地を活用するデッキは他にもいますし、クリーチャー除去としても信頼度は低くありません。 この便利な除去を《稲妻》の枠に採用しつつ、追加の除去として少し珍しい《岩への繋ぎ止め》が。《稲妻》を徹底的に嫌っている理由としては、その用途の狭さでしょう。同型でも《火の怒りのタイタン、フレージ》を倒せませんし、《忌まわしき眼魔》や《超能力蛙》にも今一つ。かといって《静牢》を増やしすぎると維持が大変なのでこちらは2枚が限界。そこで白羽の矢が立ったのが《岩への繋ぎ止め》というわけですね。《山》にエンチャントしなければならないデメリットを持つ1マナの追放除去ですが、フェッチショックランドのモダン環境なら実質デメリットなしの除去です。運用に問題ありません。ボロスエネルギーと言えば《一つの指輪》がメインから3枚以上採用されているのが当たり前でしたが、このリストは2枚にとどめてあります。エネルギー同型における《一つの指輪》は非常に強力なものの、4枚採用した時のリスクも小さくありません。早いターンの《色めき立つ猛竜》から唱えられなかったり、そもそも4枚目の土地がストレートに引けず、手札に《一つの指輪》が溜まってしまうケースもありますからね。とはいえ、エネルギーミラーを制するのはやはり《一つの指輪》ということでサイドボードには2枚入っています。追加の除去と一緒にサイドインし、消耗戦を制する狙いです。リスクには目を瞑っています。《一つの指輪》とは逆にエネルギーにしては採用枚数が多いと感じたのは《ゴブリンの砲撃》。1~2枚採用が定番の中、3枚投入されており、ミラーマッチにおける最重要カードという位置づけなのでしょう。《一つの指輪》と《ゴブリンの砲撃》はいずれもミラーマッチを決める1枚であり、前述のリスクの高さから《一つの指輪》を嫌い、《ゴブリンの砲撃》をチョイスしたのかもしれません。エネルギー同型をしっかり意識した独自の構成での勝利、見事! 黒単ネクロ モダンショーケースチャレンジ :2位 By werhsdnas1414 《悲嘆》禁止以降、しばらく音沙汰のなかったデッキ、黒単ネクロ。《ネクロドミナンス》《一つの指輪》で大量のカードを引き、《魂の撃ち込み》を打ち込んだり、大量の手札破壊から《黙示録、シェオルドレッド》を着地させるという、黒単コントロールです。コントロールにしては早すぎるデッキだと思われるでしょうが、除去・手札破壊・アドバンテージ・フィニッシャーがバランスよく入ったデッキと言われれば、コントロールに見えてきませんか?以前は《悲嘆》+《マラキールの再誕》コンボを搭載して《ダウスィーの虚空歩き》と合わせたビートダウンプランもありましたが、現在の形はよりコントロールっぽい仕上がりとなっています。以前は《思考囲い》のみだった手札破壊ですが、《悲嘆》禁止後は《コジレックの審問》に代わり、現在は7枚体制。《悲嘆》によるピッチコストを払わなくてよくなったので、実は一概に弱体化したとは言えません。除去は本体にも撃ちこめる《魂の撃ち込み》に加え、《不憫な悲哀の行進》。このカードが黒単ネクロの強さを支えている内の1人と言っても過言ではありません。黒いカードを追放するごとに与える修正と回復量が2点増えるので、たとえば10枚追放すれば1マナ20点回復の超強力スペルに。この2種類のピッチスペルを活用するために、黒単ネクロには10枚の両面土地が採用されています。《ネクロドミナンス》でターン終了時に16枚引いて、不要なカードを《不憫な悲哀の行進》で追放して除去しつつライフを回復、返しのターンに手札破壊+《黙示録、シェオルドレッド》、そして保険で《一つの指輪》というのがこのデッキの必勝パターン。《ネクロドミナンス》と《一つの指輪》は共に大量ドロー、2種の手札破壊、そして大量の除去と、黒単ネクロは似た能力を持つカードを複数種採用し、高い再現性をもたらしています。そういえば、サイドボードに採用されている《地底街の密告人》に気が付きましたか?このカードは青単ベルチャー相手に出して起動すると勝利できますので、黒いデッキを使う際は検討の余地アリです。エネルギーがミラーマッチを意識し、エネルギーを倒すために青単ベルチャーなどコンボデッキも台頭してきた今、どちらとも戦える黒単ネクロも今がチャンスなのかもしれません。 ジェスカイコントロール モダンショーケースチャレンジ :8位 By RespectTheCat コントロールと言えば欠かせないのがジェスカイコントロールです。プロツアー『モダンホライゾン3』でもトップ8入賞を果たしたこのデッキ。除去と打ち消し、大量のピッチ呪文で徹底的にコントロールした後、リソースを《一つの指輪》で回復して《火の怒りのタイタン、フレージ》で勝つという、モダンでも随一の強さを誇るコントロールデッキです。『モダンホライゾン3』加入当初は《空の怒り》《電気放出》《語りの調律》を採用したエネルギー型が一般的でしたが、こちらのジェスカイコントロールはエネルギー要素を一切廃した形となっています。エネルギーを使うメリットはやはり除去の強さ。《電気放出》は1マナで4点以上出せる可能性のある除去で、《空の怒り》は《ウルザの物語》などの置物ごと吹き飛ばせる軽い全体除去。 しかし、エネルギーを貯めるために採用する必要のある《語りの調律》の弱さがネックでした。現在のジェスカイコントロールは《力線の束縛》のために3色土地を投入し、諜報土地も3枚ほど入っています。どちらもデッキに必要なタップインランドで、抜くことはまずありえません。モダンにしては珍しくタップインランドが5枚入っており、1ターン目のアクションはほぼタップインからになります。つまり《語りの調律》を1ターン目に打つ余裕がないのです。そして2ターン目もタップインすることが多く、その際は1マナのアクションをしながらやはりタップイン。ここでも《語りの調律》は打てません。結果、3ターン目以降にしか使えないカードなのです。 《語りの調律》を打つ暇がないので採用したくなく、それならエネルギーを貯める手段に乏しく《空の怒り》も軽く運用しづらい。そういった理由からエネルギー要素が抜けています。《電気放出》と《空の怒り》は強いのですがね。 さて、採用カードにも目を向けてみましょう。なんと《対抗呪文》が0枚で《呪文嵌め》が4枚になっています。 後手番における《対抗呪文》は現代のモダン環境、とりわけ対エネルギーでは弱く、一方《呪文嵌め》は2マナが《ナカティルの最下層民、アジャニ》《色めき立つ猛竜》と強力なので非常によく突き刺さります。後手で盤面を掌握するには《呪文嵌め》が必要なので、思い切ってメインからの4枚採用となっています。《虹色の終焉》と《力線の束縛》は共に軽い除去。《対抗呪文》の不採用と投入されている《呪文嵌め》《虹色の終焉》《力線の束縛》から、軽さを意識しているのが伝わってきますね。全体除去枠の《空の怒り》の代わりとなっている《至高の評決》は、エネルギーにはただの全体除去ですが、ディミーア眼魔には効果てきめんの除去。青であり白でもあるので、《孤独》と《緻密》のどちらのピッチコストにも使えて便利です。《記憶への放逐》のメイン採用は、昨今の《一つの指輪》環境を見据えてのことでしょう。エネルギーにはあまり効かないカードなので、これまでジェスカイコントロールには入っていませんでしたが、エネルギーすらメインから《一つの指輪》を置いてくるのであれば、大体のマッチで有効です。《火の怒りのタイタン、フレージ》を手札から出して生け贄に捧げる能力を打ち消すこともできるので、一応完全に腐るカードではありません。便利なカードです。しばらく元気のなかったコントロール、ショーケースチャレンジでは比較的活躍したと言って良いのではないでしょうか。エネルギー側のサイドボードがどのように変化するのかにも注目したいですね。

世界選手権参加レポート&Magic Con ラスベガス旅行記

Standard ピックアップ

2024.10.31

mtg Yuyan

みなさんこんにちは!先週末はラスベガスで行われた第30回世界選手権に出場してきました。 昨年末のチャンピオンズカップファイナルで準優勝を果たし手に入れた夢の舞台!今回はその参加レポートと、Magic Con、そしてラスベガス観光を少しだけお届けします! 水曜日 乗るはずだったシアトル行きの便が3時間の遅延、それによりラスベガスへの乗り継ぎが間に合わないため、急遽便を変更することに。ロサンゼルス経由に切り替え、その結果空港で4時間弱待ち、日本を発って16時間、ようやくラスベガスに到着しました。 宿泊先のヒルトンホテルは写真通り、いやそれ以上に綺麗かつ広くて、36階なので景色も最高で大満足。 なぜかベッドの真横に湯舟があり、その扉の先にトイレがあるという「ベッドから7歩でトイレに辿り着ける謎の部屋」ではあるものの、便利だったので気になりません。ラスベガスに来るたびに通っていたお気に入りのステーキ屋さんに行くことに。ホテルから3キロ。徒歩で40分かかる距離ですが、なぜか同行者と二人で歩くを選択。いつもなら秒でUberを呼ぶところなのですが、16時間の旅でおかしくなったのかもしれません。途中で有名なスフィアを見たりしつつ、しっかり40分歩いてステーキ屋さんに到着! そう、これが食べたかったんだ!エリスアイランドステーキ!大満足で店を出て、その後は2秒でUberを呼んでホテルに戻り、泥のように眠りにつきました。   木曜日 今日は世界選手権に選手登録をしにいく日。とはいっても昼間は特にやることはないので、ラスベガスを軽く探索しました。これまで2回ラスベガスに来た時はいずれもカジノとビュッフェを往復するだけで、観光らしい観光はしていなかったので、なぜか新鮮な気持ちに。ホテルから近い東京タワーよりも高いストラトスフィアタワーに歩いていきました。ここはバンジージャンプや絶叫アトラクションなどが楽しめるホテル付きのタワー。ちなみに僕は高いところが本当に苦手なのでバンジージャンプは絶対にできません。エレベーターで上がっている最中に揺れまくって心臓が飛び出しそうになるも、最上階からの景色は圧巻!ラスベガスのいろいろな顔を覗ける良い場所でした。ホテルからだと煌びやかな部分しか見れませんからね。その後はカニとエビの美味しい有名なビュッフェに移動して食べ放題を満喫。80歳ぐらいのおばあちゃんが山盛りのカニをもりもり食べているのがとても印象的でした。夜は世界選手権の会場に。会場まで徒歩で行ける距離のホテルを取ったつもりだったので、何も考えずに歩き始めたのですが、これが愚かでした。ホテルから近い建物はWest Hall。一方の会場はSouth Hall。そしてこの間……なんと徒歩20分ほど。West Hallまで10分ぐらいかかるので、今日も30分以上歩くことになってしまいました。なんやかんやあって迷子になりつつ会場に着くと既に19時。前日のパーティーは既にお開き気味なので、特に何かを食べたりはせず、軽く日本人プレイヤーたちと話す程度。その時にヤソさんから「会場からモノレール乗れるよ」との耳寄り情報を聞き、帰りはモノレールに乗り、木曜日は終了。 スタンダードのデッキ選択 さて、本選に進む前に今回の世界選手権のフォーマット、スタンダードとドラフトに関してのお話。 スタンダードで最も強いデッキは赤系アグロ、とりわけ赤タッチ緑のグルール果敢であることは明白でした。 (こちらは世界選手権でトップ8入賞を果たした井川さんのリスト。おめでとうございます!) 『ダスクモーン:戦慄の館』加入前からその強さは圧倒的でしたが、《ソーンスパイアの境界》を手に入れて緑マナが出やすくなり、いよいよ怖いものなし。とはいえ、そこまで抜きん出た存在になってしまうと意識されてしまうもの。グルール果敢を倒すべく、様々なデッキが研究されてきました。まず流行したのは白単コントロールでした。僅か1マナでキャストできる追放除去、《軍備放棄》がグルール果敢の《心火の英雄》に強く、《人参ケーキ》などのライフゲインもあり、赤いアグロに強い要素満載です。僕はグルール果敢を使用するよりは、それをメタる側に回りたいと思っていたので、白単や青をタッチしたアゾリウスコントロールを試してみました。感想としては……意外とグルール果敢に負けます。というのも、ソーサリー追放除去ばかりであることが相手にバレてしまうと《精鋭射手団の目立ちたがり》を計画されますし、白単側が勝つのに時間がかかりすぎてしまうため、《蛇皮のヴェール》を構えるなど、ある程度相手の準備が整うのをこちらが咎める術がありません。そしてコントロールキラーの《ウラブラスクの溶鉱炉》も当然厳しかったのです。更に、白系コントロールはとにかく試合が終わらない。MTGアリーナやマジックオンラインでは勝てるものの、リアルトーナメントなら引き分けになっていそうなゲームが何度かありました。《軍備放棄》が使えつつ、フィニッシャーが複数入っているドメインコントロールも試しましたが、こちらも欠陥があり断念。主に《力線の束縛》が軽くキャストできない問題でしたが、それが何よりもグルール果敢に対して致命的でした。こうしてコントロールたちが消えていき困り果てていたところで、アゾリウス眼魔をこすりにこすっている僕の師匠、ユン・スハンさんに声をかけ、最新のリストを教えてもらうことに。 とはいえ、対グルールの勝率はあまり芳しくなく。逆にグルール果敢を使っていてもアゾリウス眼魔にはかなり勝ちました。アゾリウス眼魔は墓地対策がどれだけ入ってくるかで大きく勝率が変わる不安定なデッキで、世界選手権ではそれなりに意識されると思いました。グルール果敢にかなり強いのであればそのリスクも負えますが、現状のリストではそちらも安定せず、できれば使用したくないといったところ。とはいえ、ユンさんがリストを仕上げてはくれているので、デッキに息詰まった時にはお願いしようと思っていました。師匠、いつもお世話になっています。 さて、一通り気になるデッキは触りましたが、どれもグルール果敢にイマイチ。こんな時はどうするのかというと、ひたすらグルール果敢を回すに限ります。敵を知る方法は自分で使うこと。きついと感じるデッキやカード、プランが出てきた時に、今度はそれを自分が使ってグルール果敢をメタる側に回れば良いのです。この方法なら、グルール果敢攻略の糸口がつかめなかった時に自分がグルール果敢を使えますしね。そしてしばらく回している内に、グルール果敢に強いデッキがついに現れました。それがアゾリウスエンチャントです。エンチャントが戦場に出ることで効果を発揮するカードと強化エンチャントたちで構成されたこのデッキ。とにかく《幽霊による庇護》がグルールに強すぎる!《天上の鎧》と合わせて一瞬でライフレースを逆転されてしまいます。このアゾリウスエンチャントにはとにかく時間をかけました。《グレムリンを手懐ける者》、《永劫の無垢》の枚数や非クリーチャー呪文の選択肢や枚数はとても大事で、特に僕はメインボードに《喝破》を入れたいと思っていました。世界選手権という場ですから、どんなデッキが持ち込まれるかわかりません。2マナの打ち消しは新しいデッキに対して有効なことが多いですし、ある程度カードを引けるデッキなので、《太陽降下》など一発逆転カードを打ち消せる《喝破》は、引き込みがいのあるカードです。ただ、《喝破》は強いものの、構えられなければ意味がありません。そのため、3ターン目の構えたいターンに出さなければならない《永劫の無垢》を抜き、同じドローソースカードである《永劫の好奇心》を試してみました。これが大正解。《永劫の好奇心》は《永劫の無垢》と違って複数枚引けますし、《グレムリンを手懐ける者》と組み合わせたら大量のドロー。言うまでもなく《喝破》は構えやすく、この組み合わせは特に強力に感じました。エンチャントを出すとボーナスがあるデッキなので《安らかなる眠り》を採用しやすく、アゾリウス眼魔に強いのもポイント。「これはいよいよ決まったか……」と思っていましたが、グルール果敢とダイレクトマッチをやっていく内に、《幽霊による庇護》を引かない時に勝てないという現実に直面しました。そして《切り崩し》が強すぎて黒系のミッドレンジに負けまくり、徐々に綻びが見えてきてしまい、あえなく断念。しかし、アゾリウスエンチャントに費やした時間は決して無駄ではありませんでした。《永劫の好奇心》と軽い打ち消しの組み合わせは天地魔闘の構え!《永劫の好奇心》を使いつつ、赤に強くしたいなら、相方は黒しかいません。《切り崩し》《苦痛ある選定》はグルール果敢に勝つには必須のカードで、特に《苦痛ある選定》はアゾリウス眼魔のクリーチャーたちを追放したり、《止められぬ斬鬼》も完全に処理できるなど、環境的に今強力。実際に回してみても想定通りの相性。グルール果敢に対してもしっかり戦え、サイド後を含めても不利はつかなかったので、ディミーアミッドレンジに決まったのでした。 ディミーアミッドレンジに関しては、ジャパンオープンでもトップ8に残った元MPLの佐藤 啓輔くんにも色々と助けてもらいました!この場を借りてお礼を言います!本当にありがとう! 『ダスクモーン:戦慄の館』ドラフト プロツアーのドラフト勝率33%という異次元の低さを誇る僕。いつもはある程度ドラフトを諦めて構築に専念するのですが、世界選手権は特にドラフトが重要な大会です。それはなぜか。プロツアーは構築5ラウンド、ドラフト3ラウンドなのに対して、世界選手権は構築が4ラウンドと1ラウンド減り、ドラフトはそのままなのです。しかも2日目も最初はドラフトから始まるため、初日に6勝1敗などの好成績で駆け抜け、2日目のドラフトを2勝1敗などで終えた場合、トータルは8勝2敗。後スタンダードを2勝した時点でトップ8入りが決定するので、実質スタンダードを6回しかプレイしない場合もあります。もう《逃げ場なし》!やるしかありません。 今回はいつもの3倍ほどドラフトに時間を費やし、更に僕の最も信頼するリミテッダーにも協力を仰ぎました。『ダスクモーン:戦慄の館』のドラフトを一言で語るなら「難しい」。初見の印象では「生存が先手有利すぎてばからしい」などと思っていましたが、そんな単純なものではありませんでした。難しい、そして面白い。それがダスクモーン。難しくしている要因は、カードの強さが使用するデッキによって大きく変わること。同じカードでも青赤と赤白で全く違う強さになる、と言えばわかりやすいでしょうか。まあ《焦熱の竜火》はいつでも最強なのですが。《殺害》が《焦熱の竜火》より弱いのも『ダスクモーン:戦慄の館』ドラフトの特徴と言えるかもしれません。2~3マナ圏のとんでもないマスト除去のシステムクリーチャーが多く、逆に高マナ域にはさほどヤバいやつがいない。低マナ域のシステムクリーチャーが暴れれば、重いカードでは対処できないのですよね。例を挙げると《グレムリンを手懐ける者》。そういった特性上、《殺害》より《焦熱の竜火》の方が強い環境です。つまり除去は必須の環境です。リミテッドでは除去は常に正義ですが、今回は特に除去の重要性が高い。除去が取れなかった時はほぼ勝てないと言ってよく、そのためピック方針は「とにかく除去を優先」となりました。今回はアンプレイアブルなクリーチャーが比較的少なく、後半拾ったクリーチャーたちで勝つことも可能です。また、前述のようにカラーリングによって強さが異なるカードが多く、自分のデッキにあったそれなりにまともなクリーチャーが後半流れてくることもあります。一部の最上級のシステムクリーチャーや《すべてを疑う者、ジモーン》クラスの爆弾レア以外は除去から優先して取る。これをとにかく意識しました。もう1つ、今回成功した戦略は緑多色。《広漠なる変幻地》や各種2色土地を早い巡目で確保し、2~3パック目で流れてきたレアをピックするというもの。MTGアリーナでは卓内プレイヤーとまず当たらないため、どんな爆弾レアであろうと平気で流してしまいます。なので緑多色は成功しやすいのですが、リアルのドラフトでもかなり勝ちやすかった印象がありました。《ヴァルガヴォスの猛攻》クラスの、タッチも容易の最強カードはまず流れてきませんが、《すべてを疑う者、ジモーン》ぐらいなら流れてきてくれますし、緑と何かのカラーリングの多色カードは、どれも緑多色なら簡単にタッチ可能です。 金曜日:世界選手権初日 というわけで世界選手権初日。まずはドラフトからです。同卓にはプロツアーチャンプのジム・デイビスやマット・スパーリング、そしてカール・サラップなど、さすが世界選手権といった面々。初手は《ひきつる人形》。緑多色をやりたい僕にとっては嬉しいレア。 2手目は弱めのパックでげんなりしていましたが、よく見ると《焦熱の竜火》の姿があり一安心。3手目で《焼殺への恐怖》を取り、更に《焦熱の竜火》をもう1枚拾えて、赤はさすがに確定。緑の流れはイマイチだったものの、特にこれといったカードは流れてくることはなく、デッキに必要になってくる2マナ域をピックする程度で終了。赤はやれそうな感じ。といったところで2パック目の初手は《生垣裁断機》。既に《広漠なる変幻地》が2枚取れていたので単純に相性が良いカード。 そこから《木人の打破者》、《果敢な生存者》、《ひと皮剥けば》と強力なアンコモンのカードが続きます。昂揚するかどうかが不安だったため、強い戦慄予示たちが取れたのはかなり嬉しかったです。そして2パック目で緑が大量に流れてきたので、2色目も緑で決定。一瞬、《見捨てられた人形、アラベラ》に心が揺れそうになりましたが、それまで白いカードが1枚も取れていなかったので、鉄の意志で放流。1パック目の時点で《広漠なる変幻地》が2枚取れており、2色土地も赤緑2枚と黒緑2枚。どんな強力なレアもタッチする気概です。が、3パック目で出たレアは《尻込みする優等生》。タッチして使いたいカードではない……強いが残念。 そして2手目にはなんと《見捨てられた人形、アラベラ》! すべてを忘れて横にある《最優秀殺害者》をピック。ボロスの夢はしっかり断ち切ろう。後は強力なレアが流れてくることを祈るのみ!……が、ダメ!そこから多色の強力なカードどころかレアすらも流れてこなくて、ドラフトは終了。デッキはこちら。 結果、レアの全然ない多色のパーツだけ余った赤緑タッチ黒に。見た目は悪いですが、デッキはそんなに悪くありません。低マナ域も十分取れて、《最優秀殺害者》が2枚あるので継続して打点を入れ続けられます。赤のコモンの一番は言うまでもなく《焦熱の竜火》ですが、《最優秀殺害者》も同じぐらい大好きなカードです。その名前通り《最優秀殺害者》すぎますね。緑黒 ○○青白 ○×○青白 ××結果は2勝からフィーチャーテーブルでジム・デイビスの青白に叩きのめされ、2勝1敗で終了。デッキも強いし相性も悪く、プレイヤーも強かった。完敗。悔しいですが、ついにプロツアードラフトの成績、ついに勝率33%を超えました!!ピックの反省点としてはやはり白に参入するタイミングでしょうか。《見捨てられた人形、アラベラ》が流れてきた時点で白いカードが2枚ほど取れていれば白も視野でした。 1パック目で緑の悪い流れは察していたので、8手目辺りで白も候補に入れるべきでした。あの8手目で《鍛えられた随伴者》さえピックしていれば、《見捨てられた人形、アラベラ》を拾えたので、すべてが変わっていたかもしれません。まだまだ未熟でしたが、方針を決めて、きっちりと勝ち筋を意識してピックすることはでき、それが結果に繋がったのかなと思います。ここからスタンダードラウンド。2勝2敗で初日を突破できるのですが……アゾリウス眼魔 ×○アゾリウス眼魔 ××ティムール果敢 ○○ティムール果敢 ×○×1-2-1。トータル3勝3敗1分で残念ながら初日落ちとなってしまいました。ドラフトと違ってスタンダードはツきに恵まれない日でした。《永劫の好奇心》で7枚引いて《忌まわしき眼魔》を倒せるカードを引かずに負けたのは落ち込みましたね。最後はあのcftsoc本人とマッチ。ティムール果敢にやられてしまい、早く僕もその面白そうなデッキが使いたい……と内心ずっと思っていました。引きには恵まれなかったものの、当たったプレイヤーは皆とてもプレイが上手でした。ライフ1点勝負で勝ったり負けたり、ワンミスの許されないデッドオアアライブの連続。プロツアーでもなかなか味わえない感覚だったかなと。またこの舞台に戻ってきたいと思いました。来年の世界選手権はリベンジしたい。そのためにはまずプロツアーの権利を獲得するところからですね。世界選手権で競技マジックの熱は一旦落ち着くと思いましたが、そんなことはなく。むしろ燃え滾ってきました! 土曜日 プロツアーや世界選手権は3日制なので、初日落ちしてもまだまだ遊べます。とりあえず11時からのSecret Showdownに参加することに。この大会はシングルエリミネーション5回戦を戦い、全勝した8名のプレイヤーが日曜日のイベントの参加権利を獲得します。金土で合計4回行われ、その32名のプレイヤーで日曜日に再度シングルエリミネーション5回戦を戦い、優勝者に世界に数枚しかない《暗黒の儀式》が進呈されます。この土曜日の大会でトップ8に残るだけでも、Secret Lairプロモの《濁浪の執政》がもらえる激熱イベント。Magic Conでは毎回開催されています。参加費125ドルのシングルエリミ。恐ろしいイベントですが、リターンも大きい!しかもなんといってもフォーマットはモダン。もちろんラスベガスにぐるぐるロータスを持ってきています!愛機を携え、いざ第一回戦へ。 ……のはずが、11時になってもイベントは始まらず。トラブルが続いて結局1回戦が始まったのは1時間以上経過した後。しかも初戦は不戦勝でした。不戦勝明けの2回戦、目の前にはプロツアーチャンプのArne!2回戦で当たるとかある!?結果は0-2のストレート負け。ダブルマリガンで負けて、2本目は《一つの指輪》を通して相手のハンドが0枚のところから、《海の先駆け》トップデッキ&《忌まわしき眼魔》の戦慄予示で《海の先駆け》2体目が出てきて負け!最後、戦慄予示でめちゃくちゃ悩んだ末に《オークの弓使い》を墓地に置いてきて、そんな強いカードを選ばない理由は《海の先駆け》以外にないので、「それ絶対《海の先駆け》じゃん!!」って笑っちゃいました。Arneも笑ってました。朝から125ドルと2時間を失いましたが、まだ目は死んでません。18時から最後のSecret Showdownがあります。時間が空いた時は……そう、アーティストにサインをもらいに行く時間です!Magic Conの魅力と言えばアーティストサイン。20人近くのアーティストのブースが並ぶ様は圧巻です。今回は《止められぬ斬鬼》《オアリムの詠唱》《神秘の論争》のサインをもらいました!!特に《止められぬ斬鬼》は虹サイン! そんなこんなであっという間に時間は過ぎ、18時からのSecret Showdownへ。そして……このSecret Showdownを突破!《濁浪の執政》をゲットし、明日の本戦参加権利を手に入れました。最終戦、周りが《湧き出る源、ジェガンサ》を公開しあい、僕の相手も《湧き出る源、ジェガンサ》を見せてきて、《オセロットの群れ》《色めき立つ猛竜》から《ナカティルの最下層民、アジャニ》を出し、その返しに3ターンキルを決めた時の快感はすさまじかったです。 日曜日 Secret Showdown本戦。結果は……ボロスエネルギー ×○○ボロスエネルギー ○○ボロスエネルギー ○×○マルドゥエネルギー ○××というわけで3勝で終了となってしまいました。最後のマルドゥエネルギーは、1ゲーム目で絶体絶命のところから《一つの指輪》をトップして勝利し、流れが来ていると確信したのですが、2ゲーム目で《色めき立つ猛竜》から《思考囲い》をめくられ、手札の残り1枚が《オアリムの詠唱》で負け。3ゲーム目は上15枚に《睡蓮の原野》が見つからずに敗北と、一歩届かず。もう少しで《暗黒の儀式》が取れたのでとても悔しかったです。でもやはりぐるぐるロータス、面白すぎる!!!最高のデッキをもう少し競技イベントでプレイしたいので、海外のモダンの大会に参加しようか検討中です。情報によるとイタリアで大会があるとか。負けた後はヘルズキッチンで有名なシェフのハンバーガー屋に。7500円のハンバーガーを食べました。 おわりに そして今、羽田空港に向かう飛行機の中でこの記事を執筆しています。世界選手権本戦、Secret Showdownともに僅かに勝ち星が足らず、今年もなんだかんだ勝負弱さが課題であることをひしひしと感じています。ですが、マジックのモチベーションは世界選手権で爆上がりしました。まずはドラフト。これまでも練習してきたつもりでしたが、今回は明らかに練習時間も良く質も高く、本番中も様々な択が見えていました。次にプロツアーの権利を得る時は同じぐらい練習して臨み、今回の結果が運でないことを証明したくなりました。そして上手いプレイヤーとの戦いは面白い。相手のプレイから手札や考えが読み取れて、それを元にこちらもゲームプランを組み立てる。これは普段から起きることですが、世界選手権では相手も全く同じことを、高い精度でやっているのです。この高度なぶつかり合いをゲーム中に実感できることも多く、もっとたくさん戦いたくなりました!世界選手権で燃え尽きるどころか、闘争本能が沸き立っています。世界選手権への第一歩は地域CS。来年2月の千葉ですね。あの舞台に戻るため、頑張ります!それではまた!

【デッキ解説】ぐるぐるロータスのススメ!

Modern ピックアップ

2024.10.24

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今回は以前予告した通り、最近僕がハマっているモダンのコンボデッキ、ぐるぐるロータスについて書いていきます! このデッキを使用してモダンオープン優勝をはじめ、現在21勝3敗と絶好調! とても強くて楽しいデッキなので、一人でも多くの方にぐるぐるロータスの魅力を届けていきたいと思います! ぐるぐるロータスとは? その名前の通り、《ぐるぐる》と《睡蓮の原野》を使用したコンボデッキ、それがぐるぐるロータスです。《ぐるぐる》は土地などをタップ・アンタップすることのできるインスタント呪文。このカードで《睡蓮の原野》をアンタップすると、3マナを生み出すことができるので、《ぐるぐる》は1マナで3マナを生み出す呪文となります。それを利用して大量のマナを出し、《死の国からの脱出》+《秘本掃き》のコンボを決める……というのが昔のぐるぐるロータスでした。それがたった1つのカードによってデッキを凶悪なものへと変化させました。その名は《一つの指輪》。アグロ・コンボ・コントロールのすべてに採用されているこの恐ろしいカードですが、このぐるぐるロータスでは唯一無二の性能を発揮します。なぜか?その答えは簡単。《ぐるぐる》で《一つの指輪》をアンタップできるからです。つまり《一つの指輪》を出してカードを引き、《ぐるぐる》で《一つの指輪》をアンタップすると次は2枚。もう1回アンタップすると3枚と、《ぐるぐる》を起こすごとに引けるカードの枚数が増えるのです。《見えざる糸》なら《一つの指輪》と《睡蓮の原野》を同時にアンタップできるので、実質「1マナ増やしながら指輪を起動できる」恐ろしいカードに変貌します。このデッキは《睡蓮の原野》や《一つの指輪》を《ぐるぐる》でアンタップさせて、マナや手札を大量に増やすデッキ。デッキのキーとなるのは《ぐるぐる》なのです。 ぐるぐるロータスの魅力 現モダン環境におけるコンボデッキと言えば、まず頭に浮かぶのはルビーストーム。最近では青単ベルチャーなんかもありますが、前者は《モンスーンの魔道士、ラル》《ルビーの大メダル》、後者は4ターンキルには《睡蓮の花》が必須と、それぞれパーマネントに依存しています。特に《モンスーンの魔道士、ラル》は、エネルギー跋扈する今のモダンにおいては生き残るのが困難。一方、ぐるぐるロータスは勝つための事前準備がほとんど必要ありません。コンボルートはこの後詳しく説明しますが、《睡蓮の原野》さえ着地させてしまえば、そこから必要な準備が非常に少ないので、相手にとっては干渉手段が限られます。メイン戦においては、ほぼ妨害されることなくぐるぐるロータスはコンボに入ることができるのです。《一つの指輪》に対して《静牢》という回答こそあれど、《一つの指輪》を置いたターンに勝利できることもあったり、そもそも《一つの指輪》を必要としないコンボパターンもあり、干渉は困難です。その上で更に速度も持っているのがぐるぐるロータス。 青単ベルチャーは《睡蓮の花》が絡めば4ターンキルですが、基本は打ち消し呪文などによる妨害を駆使した5ターンキル。 一方、ぐるぐるロータスは3ターン目に勝利、もしくは実質勝利(3ターン目に《一つの指輪》設置から4ターン目勝利)と、キルターンも早めです。相手に干渉されづらく、かつ比較的速度のあるコンボであることが、ぐるぐるロータスの魅力!そして回していてめちゃくちゃ楽しい!! デッキリスト 《一つの指輪》 このデッキの核となるカード。《一つの指輪》がなければぐるぐるロータスがトーナメントで勝つことは難しいでしょう。《睡蓮の原野》をアンタップすることしかできない《ぐるぐる》はただの《暗黒の儀式》ですが、《一つの指輪》が存在することで、《Ancestral Recall》にもなります。《一つの指輪》によって《ぐるぐる》は《Ancestral Recall》と《暗黒の儀式》を兼ねるカードになり、カードの強さが何倍にもなりました。その性能は今更言うまでもありませんね。出たターンにプロテクションを得るので多くのデッキに対して無敵になり、帰ってきたターンと合わせて3ドローが確定。ここに《ぐるぐる》が絡んで勝利となります。モダンで最強のカードと名高い《一つの指輪》を最も強く使えるのがぐるぐるロータス! 《ぐるぐる》《夢の掌握》 ここまで《ぐるぐる》の名前が何度も出てきましたが、実はこのデッキには《ぐるぐる》は2枚しか採用されていません。というのも、《夢の掌握》は《ぐるぐる》のほぼ上位互換だからです。能力は同じですが、《夢の掌握》は追加で1マナを支払うことでタップとアンタップを同時に行えます。相手の土地を寝かせながら《睡蓮の原野》を起こせたりするので、ちょっと《ぐるぐる》より強いのです。とはいえ、ほとんど変わりはありません。これらのカードは先ほど説明した通り、《暗黒の儀式》であり《Ancestral Recall》。1マナで唱えて《睡蓮の原野》を起こすと実質2マナが増えることになるので、これは《暗黒の儀式》であり、カウンターが2つ乗った《一つの指輪》を起こせば1マナ3ドローなので《Ancestral Recall》。褒めちぎりましたが、《見えざる糸》も含めて10枚入っていれば十分です。《一つの指輪》が戦場にあれば何枚でも欲しいカードですが、ただ《ぐるぐる》だけあっても仕方ないですからね。 《見えざる糸》 《ぐるぐる》《夢の掌握》と違い、2マナかかる点とソーサリーであることが弱点。逆に言えばそれ以外、特に《睡蓮の原野》と《一つの指輪》を同時にアンタップできる唯一無二のカードなので、多くの場合で、デッキ内最強のアンタップ呪文です。2マナかかってしまう点も、戦場に《睡蓮の原野》と他の土地があれば解決します。これなら2マナ払って4マナが使えるので増えるのは2マナ。《ぐるぐる》と同じマナの増え方です。この2マナが気になるのは《睡蓮の原野》1枚しか戦場にない場合。「それならほとんど弱点とは呼べないのでは?」と思うかもしれませんが、それはぐるぐるロータスのことを知らない証拠です。結構頻発するんですよね、これが。とはいえ、常に引きたいカードなので4枚以外はありえません。 《砂時計の侍臣》 2マナでサイクリングしてパーマネントをアンタップできるナイスガイ。《ぐるぐる》と比べてマナ効率は悪いですが、ドローできるのがポイント。《一つの指輪》《願い》《死の国からの脱出》などのフィニッシャーが既にあれば《ぐるぐる》で良いですが、引き込みにいきたい場合は《砂時計の侍臣》に軍配が上がります。それでいてマナ加速自体も一応行えるので、何かと使い勝手が良いカード。特に3ターン目に《睡蓮の原野》を起こしてターンエンドして《朦朧への没入》を構える動きが強力で、それを無理なく行えるのが良いポイントですね。特に減らす理由もなく4枚です。 《定業》《考慮》 便利なキャントリップ呪文たち。《睡蓮の原野》設置後は《ぐるぐる》かフィニッシャーのいずれかが必要になるので、それを探してきてくれます。どんどん連打して墓地を貯められるので、後述する《死の国からの脱出》との相性も良好。デッキの必須パーツと言って良いカードたちです。 《願い》 フィニッシャー枠となるカード。 持ってくるカードの9割は《死の国からの脱出》です。マナと墓地に余裕があれば、そのまま《死の国からの脱出》設置→《願い》を脱出で再キャスト→《秘本掃き》をサーチして勝利。まさしくフィニッシャー。マナが足りない時は仕方なく《一時的封鎖》を持ってきたりしますが、これが決まり手でエネルギーに勝つこともしばしばあります。 このデッキでは《願い》を打つだけでゲームに勝てるので当然4枚! 《死の国からの脱出》 《願い》《一つの指輪》と合わせてフィニッシュ手段となるカード。というか勝つ時の6割は《死の国からの脱出》が絡むので、このデッキはぐるぐるブリーチと呼ばれていたりもするほど。《秘本掃き》《ぐるぐる》《睡蓮の原野》《死の国からの脱出》が揃うと、自分のライブラリーを0枚にすることができ、最終的に《タッサの神託者》で勝利できます。詳細な解説はこの後に。《一つの指輪》と《死の国からの脱出》だけで勝つことも多く、《見えざる糸》を脱出して《一つの指輪》と《睡蓮の原野》を起こし続けるだけで一瞬で勝利します。当然メインに4枚……と言いたいところなのですが、《願い》でサーチしたいので泣く泣く3枚です。 《記憶への放逐》 エルドラージ対策としてサイドボードに4枚入ることの多いカウンターですが、このデッキではメインです。なぜなら実質マナ加速として機能するからです!MTGアリーナでヒストリックをプレイしていた方ならご存じかもしれませんね。《睡蓮の原野》の戦場に出た時の誘発型能力を《記憶への放逐》で打ち消すことができるのです。2枚の土地を生け贄にしなくて済むので、実質マナ加速。2ターン目に《睡蓮の原野》を置いて《記憶への放逐》で打ち消して3ターン目に5マナからコンボを決める場合もあり、3ターンキルの際には重要なカード。もちろん、干渉手段としても機能します。エルドラージ相手はもちろん、《忍耐》《力線の束縛》《静牢》など打ち消したい誘発型能力はたくさんあり、《睡蓮の原野》とセットで持っていてもあえて使わずに構えることもあるほど。サイド後は《減衰球》などの致命的なスペルも打ち消せますし、入ってくるかもしれない相手のサイドカードに対処しつつ、能動的に有効活用できるという素晴らしいカードです。コンボの始動には絡まないので3枚にとどめていますが、特にエルドラージ相手には何枚でもほしいので、サイドに追加を入れています。 《探検の地図》 《睡蓮の原野》をサーチするカード。先手ならとりあえず1ターン目に置いて無事に2ターン目に起動にこぎつけますが、後手では触られる可能性もあるのでいささか不安です。《睡蓮の原野》が既に手札にある場合は《さびれた寺院》をサーチしますが、不要な場面も多く、《ぐるぐる》系と土地関連だけを引いて負けてしまうのが嫌なので、適正枚数は3枚程度。4枚目を入れていましたが、抜きたいカードが《記憶への放逐》か《考慮》ぐらいしかなく、そのどちらも《探検の地図》より好感触でした。 《朦朧への没入》 相手の呪文やパーマネントをバウンスできる便利なスペルにも関わらず、アンタップインで置ける青マナ。そんなのあり?って思うぐらい強いです。さすがモダホラ3。3マナがちょうどよく、《睡蓮の原野》1枚で構えられるのが素晴らしい。3ターン目に《さびれた寺院》か《砂時計の侍臣》で《睡蓮の原野》を立ててターンを返し、相手のアクションを《朦朧への没入》で防ぎ、返しのターンでコンボを決める流れは美しさすらあります。かなり強いので4枚目を検討しましたが、諜報ランドと色マナの価値も高く、フェッチランドを優先しました。 《さびれた寺院》 《睡蓮の原野》を1マナで起こせるので、ほぼコピーいらずの《演劇の舞台》。出る総マナは1つ減りますが、準備がいらないのですごい。《見えざる糸》があるとマナが大フィーバーします。パイオニアのロータスコンボを彷彿とさせますね。《睡蓮の原野》と同時にあれば大量のマナが出ますが、先置きでも意味があります。3ターン目に《睡蓮の原野》を置いた時に、生け贄に捧げる前に《睡蓮の原野》をアンタップすることで、そのターンに《睡蓮の原野》を動かせるのです。そこから《砂時計の侍臣》で1マナを増やして《一つの指輪》を設置するもよし、ターンを返して《朦朧への没入》を構えても良いでしょう。かなり強い土地ですが、無色マナなので《定業》《考慮》が打てない点、そしてコンボに必ず必要なわけではないため、3枚にとどめています。先述のように、フェッチランドは白マナと諜報ランド、双方の事情から枚数をある程度確保しておきたいのです。 《沈黙》 このターン、相手の呪文を封じるすごいカード。打ち消しと対峙する際にはほぼ必須。まずはこのカードから仕掛けて、相手にカウンターを引き出させることになります。コンボミラーでは相手のターンを飛ばす役割もあるので、青いデッキとコンボどちらにもサイドインできます。キッカーで攻撃されなくなるおまけつきの《オアリムの詠唱》もありますが、個人的には《沈黙》推しです。《一つの指輪》を張られてしまうと《オアリムの詠唱》は唱えられなくなりますが、《沈黙》はキャスト可能だからです。これがどんなシチュエーションで起きるか考えてみましょう。ジェスカイコントロールが手札に《否定の力》を構えながら4ターン目に《一つの指輪》。この返しにこちらもコンボを仕掛けたいと思いませんか?次のターンに相手にもう2枚カードを引かれて、5マナフルオープンで帰ってきたら、全部打ち消されてしまいそうな気がしますからね。攻撃不可も対リビングエンドなど強い場面があること自体は否定しませんが、《一つの指輪》を置かれて使えなくなる方が個人的には嫌だと感じました。 《洪水の大口へ》 万能バウンス。《減衰球》《魔道士封じのトカゲ》《ドラニスの判事》《耳の痛い静寂》どんなカードが相手から飛び出してくるかわかりませんが、これ1枚で全部解決。あまりに強すぎるバウンスです。とりあえず困ったらゲーム2で入れてみて様子を見ます。単に延命するだけでも十分なので、クリーチャーデッキにはまずすべて入れています。《海の先駆け》を出されて《睡蓮の原野》を《島》として置いた後に《洪水の大口へ》で戻すと良い顔をされます。 《一時的封鎖》 エネルギーに対して最も強い1枚。《減衰球》《魔道士封じのトカゲ》《ドラニスの判事》など定番のサイドカードすべてを吹っ飛ばしてくれるだけでなく、相手の速度を大幅に落とせます。エネルギーはぐるぐるロータスに対して基本は余力を残して展開してくることはありませんから、手札と場を一瞬ですっからかんにできます。《願い》からサーチ用に残したいところですが、経由すると6マナかかりますし、3ターン目にプレイするとほぼゲームに勝てるので、全部サイドインしてます。 《ドラニスの判事》 主にルビーストームとリビングエンドを意識しています。サイドインせずに《願い》からのサーチ用とするのがおすすめ。瞬間的にマナを伸ばせるので、《願い》から直接唱えるのは比較的早いターンでも行えます。それならサイドインする必要はありません。 《死の国からの脱出》《タッサの神託者》 《願い》からの勝ち手段要因です。 《秘本掃き》 こちらも《願い》から持ってくる勝ち手段要因ですが、一応コンボについて説明しておきましょう。《死の国からの脱出》下で《秘本掃き》を自分に唱えて5枚を切削し、その切削した内の3枚を脱出コストに《秘本掃き》をもう1度自分に。これで合計7枚のカードが墓地に落ちます。その後、《ぐるぐる》を脱出して墓地を3枚追放して《睡蓮の原野》をアンタップ。この状態で《秘本掃き》を脱出で唱えると、最初と同じ状態に戻りますが、墓地が1枚だけ増えています。つまり、ライブラリーが0枚になるまで《秘本掃き》を打ち続けることができるのです。最後は《願い》から《タッサの神託者》をサーチしてゲームエンド。これが《死の国からの脱出》《秘本掃き》のコンボです。お手軽コンボですが、《一つの指輪》でプロテクションを得ていると《秘本掃き》を自分に打てません!注意しましょう。 《前駆軟泥、エーヴ》 サイド後は《死の国からの脱出》を意識した墓地対策がよく置かれます。こうなってしまうと《願い》が勝ち手段ではなくなってしまうので、しっかりとサイド後も《願い》を強く使えるように、サイドボードに採用しています。《ぐるぐる》でマナを伸ばして《願い》を打てばストームが勝手に溜まるので、致死量の《前駆軟泥、エーヴ》を並べるのは容易いこと。青い相手も《願い》は通してその次のスペルを打ち消してくるので、《前駆軟泥、エーヴ》で相手の目玉を飛び出させましょう。 回し方 《睡蓮の原野》を置いて、《ぐるぐる》でマナを増やして《一つの指輪》。 もしくは《願い》から《死の国からの脱出》と《秘本掃き》でコンボを決める。 過程はともかく、最終的な着地点はとてもシンプルです。まず覚えるべきは、それぞれのコンボにどれだけのコストがかかるかです。《一つの指輪》を唱えた後に《睡蓮の原野》を《ぐるぐる》で起こして次のアクションを取りたいなら、5マナ以上必要になります。《願い》から最終的に《死の国からの脱出》《秘本掃き》ルートなら、まず《願い》の3マナ。サーチする《死の国からの脱出》で2マナ。設置して《願い》を脱出するのに3マナと墓地3枚。《秘本掃き》を打つ1マナ。最後に《ぐるぐる》でもう1マナ。合計で10マナが必要になります。この《願い》ルートの場合、《死の国からの脱出》を設置した後は墓地に落ちているであろう《ぐるぐる》を使えるので、合計こそ10マナですがハードルは意外と高くありません。 6マナあれば《願い》→《死の国からの脱出》→《ぐるぐる》までこぎつけて、そこからもう1回《ぐるぐる》を脱出すれば5マナ出せます。5マナなら《願い》から《秘本掃き》→《ぐるぐる》でデッキをすべて掘れるので、最初の6マナと、2回の《ぐるぐる》と《願い》の脱出コストである9枚の墓地(もちろん《願い》と《ぐるぐる》を除いて)さえ用意すれば、《願い》1枚で勝利できるというわけです。このように、勝つために必要なマナさえ覚えておけば、後は手札のカードで何マナ作れるかを計算するだけでOKです。 《睡蓮の原野》下でそれぞれがどれだけのマナを生み出せるか暗記してしまいましょう! 《ぐるぐる》《夢の掌握》=2マナ 《見えざる糸》=1マナor2マナor3マナ 《睡蓮の原野》だけなら1マナ、横に土地があれば2マナ、《さびれた寺院》があれば3マナ増えます。 《砂時計の侍臣》=1マナ   《さびれた寺院》=2マナ これらを覚えて足し算すればOK! 手札に《ぐるぐる》《夢の掌握》《見えざる糸》があって場に《睡蓮の原野》《島》なら、合計で10マナ!つまり《願い》を引けば即勝ちというわけです。(正確には、《願い》の脱出コストが必要になるので、後1枚墓地にカードが必要です) マリガン 《睡蓮の原野》・《探検の地図》がない手札はほとんどマリガンします。《ぐるぐる》系の10枚、《砂時計の侍臣》、《死の国からの脱出》、《願い》、《記憶への放逐》は《睡蓮の原野》がないと何もしないカードです。つまりデッキの大半のカードが、《睡蓮の原野》ありきなのです。 《睡蓮の原野》がない手札をキープする時は、《睡蓮の原野》を探せるキャントリップの枚数、そして途中で《睡蓮の原野》を引いた時に即コンボに移行できるかで考えます。《定業》《考慮》は《睡蓮の原野》を探せるカードたち。これらが合計で3枚あって、土地に《さびれた寺院》フェッチランド(or諜報ランド)とある場合は、それなりにキープできる手札です。ここに《一つの指輪》が加われば悩まずキープします。道中でどうせ《ぐるぐる》を拾えているはずなので、何度目かのキャントリップで《睡蓮の原野》を見つけて即設置→アンタップして《一つの指輪》まで見えてますからね。逆に《睡蓮の原野》がある初手はある程度ゆるふわなキープが許容されます。このデッキは一度《睡蓮の原野》を着地させれば、受け入れが広いデッキです。 《一つの指輪》と《願い》は大体の場合で勝利し、《死の国からの脱出》もキャントリップをある程度回せば《願い》か《一つの指輪》に辿り着けるので、実質11枚のカードが受けになるのです。《睡蓮の原野》を設置できるが《ぐるぐる》系しかない初手は悩まずキープしましょう。《睡蓮の原野》のないキャントリップと指輪だけの手札よりよっぽど強いですよ! TIPS 《ぐるぐる》をうまく使おう! 《暗黒の儀式》であり《Ancestral Recall》でもある《ぐるぐる》ですが、実は他の使い道もあります。そう、このカードはアンタップだけではなくタップもできるのです。相手の土地をアップキープに寝かせてそのターンを実質パスさせてもよし、クリーチャーを寝かせてダメージを防ぐこともできますし、打ち消しを構えている相手の青マナをターン終了時にタップしたりなんかも。コンボだけでなく相手の妨害にも使えてしまう。《ぐるぐる》はすごいカードなのです。だからこそ、手札の総マナ量を計算することは重要です。勝つためのマナが十分なら《ぐるぐる》を妨害で使う択が取れますからね。盲目的に《ぐるぐる》を「《睡蓮の原野》か《一つの指輪》をアンタップするもの」とは思わないでおきましょう。ちなみに《三なる宝球》はタップ状態になると能力が消えます。《ぐるぐる》でタップすると無効化できるので覚えておきましょう。タップ状態にするカードを普段あまり使わないと思うので見逃しがちですが、《虚無の呪文爆弾》や《トーモッドの墓所》などのアーティファクトは、タップが必要な起動型能力です。つまりこれも《ぐるぐる》で寝かせることで起動できなくなります。スタックで起動されても今唱えた《ぐるぐる》は墓地に残りますし、《死の国からの脱出》《秘本掃き》コンボを決める際には大量の墓地が必要なわけではないので大丈夫です。 青い相手にうまく立ち回ろう! ぐるぐるロータスは1ターンでたくさんのマナを使えるデッキです。青い相手に毎ターン《一つの指輪》《願い》を投げつけて《対抗呪文》で打ち消され続けては、デッキの強みを生かせません。勝負のターンまで座して待ちましょう。手札が6~7枚ほどあるコントロールに対しての理想は、妨害2回を受けられる、つまり3枚のフィニッシュ手段。後はすべてマナ加速です。相手がマナをフルオープンし続けているなら、《見えざる糸》を使って相手の土地をタップしましょう。スタックでマナを出されるので、やる時は必ず第一メインフェイズかつ自分がマナを使いきれる状態です。これで《対抗呪文》1枚分を封じます。そこから2回妨害を投げ続け、これらが《対抗呪文》《否定の力》されると想定しているので、3枚のフィニッシュ手段が必要なのです。《願い》《一つの指輪》《死の国からの脱出》が全部あるなら、《死の国からの脱出》を最後にしましょう。そのまま打ち消されたカードを脱出できますからね。《否定の力》で打ち消された方は脱出できないので、最初に《願い》から投げて《対抗呪文》で打ち消してもらいましょう。これらの3枚のフィニッシュ手段は3+4+2。それに加えて《ぐるぐる》で起こしたりする必要もあるのでプラス2マナほど。合計で11マナほどかかります。先に《見えざる糸》を相手に打つなら更にプラス2マナ必要です。かなりマナが必要になりますが、青相手はじっくりと土地を並べられるので問題ありません。《記憶への放逐》で《睡蓮の原野》を着地させて《さびれた寺院》を置けば、4ターン目にして場の土地だけで7マナありますからね。これは相手がカウンターをたくさん持っていて、かつ構え続けてきた場合に限ります。実際は《否定の力》と除去だらけと《一つの指輪》で、仕方なく2マナを立てて《一つの指輪》。エンド前に《ぐるぐる》で青マナのうち1つを寝かせて《対抗呪文》を念のためケアしつつ、返しで《否定の力》を乗り越えて勝利なんてこともよく起きます。 もちろんこれは一例であって、必ずしも絶対にこうすべきということではありません。手札に《一つの指輪》が溜まっているなら順番にカウンターを使わせるために連打する場合もありますからね。ぐるぐるロータスは1ターンでたくさんのマナを使えるのが強い!あくまでデッキのストロングポイントの一つとして頭に入れておいてください。 ・セットランドを考える 3ターン目は《睡蓮の原野》を置きたくなるターンですが、少し考えてみましょう。たとえば場に《島》と《さびれた寺院》があって迎える3ターン目。ここで《睡蓮の原野》を置くと《さびれた寺院》がなくなってしまい、次のターンのセットランドで使える合計マナは4マナ。ここで違う土地を置いて《朦朧への没入》を構え、4ターン目に《睡蓮の原野》をセットしましょう。青マナ2つを出してそれらが生け贄になり、《さびれた寺院》で《睡蓮の原野》がアンタップするので合計4マナ。実はどっちの順番で置いても3、4ターン目に使えるマナは共に同じなのです。それなら《さびれた寺院》が戦場にあった方が良いのは明白です。《見えざる糸》で増えるマナの量が違いますからね。《島》《島》から3ターン目に《さびれた寺院》か《睡蓮の原野》を置く時は、このセットランド方法を知っているかで大きな差があります。《睡蓮の原野》から置けば次のターンに5マナを使えますが、その代わりに3ターン目はフルタップになってしまいます。次のターンに5マナがどうしても必要なら《睡蓮の原野》からいっても良いですが、何かしらの妨害手段を持っていて、次のターンに出るのが4マナでも良いのなら、《さびれた寺院》から置きましょう。 ぐるぐるロータス対策カード 《減衰球》★★★★★ ※★は危険度です。 最も効くのはなんだかんだ《減衰球》です。《睡蓮の原野》を置いた返しに貼れば一気にマナが無色1つだけになりますし、《減衰球》を《洪水の大口へ》でバウンスしようにも青マナが必要になります。なので、ぐるぐるロータス側としては《減衰球》を気を付けた立ち回りをする必要があります。《減衰球》はなるべく《睡蓮の原野》の返しに置きたいと相手も思っているので、こちらは《睡蓮の原野》を置いたターンで一気にコンボを決めにいくか、もしくは《減衰球》を対処できるカードを構えてターンを終了しましょう。この時、《睡蓮の原野》から出る青マナで《洪水の大口へ》を構えるのは得策ではありません。《減衰球》のスタックでマナを出さなければならないため、相手がそのターンにもう1度キャストできてしまうからです。島など普通の青マナを立ててターンを返しましょう。 《徴用》★★★★★ 最近気づいたのですが、このカードがぐるぐるロータス側はめちゃくちゃキツいです。《一つの指輪》を奪われるのが最悪ですが、他にも《オアリムの詠唱》を奪われてこのターンにコンボにいけなくなるのも非常に悪い。《減衰球》クラスに効くカードです。しかもこのカードはぐるぐるロータス側がケアできません。どう考えてもケア不可能なカードでした。青単ベルチャーにも入っていますし、今後このカードが増えそうならサイドボードに2枚ほど対策カードを入れる必要がありそうです。《神秘の論争》か《苛立たしいガラクタ》、もしくは《防御の光網》のどれかにします。 《虚空の杯》★★★★★ 最近ほとんど見なくなりましたが、ぐるぐるロータスにはかなり効きます。X=1で置くとキャントリップ2種、《ぐるぐる》、《夢の掌握》が止まる上、《洪水の大口へ》も使えなくなるので、デッキの大半のカードが死んでしまいます。キャントリップ2種が打ち消されるのが致命的で、《一つの指輪》や《願い》からの対策カード、《朦朧への没入》にアクセスするのが難しくなってしまいます。速いデッキが置いてくる分には《一時的封鎖》で巻き込めますが、そうでない相手が使い始めたら恐ろしいですね。ちなみに《虚空の杯》の打ち消す能力は誘発型能力なので、《記憶への放逐》を複製で唱えて、本体は消えますが複製側でその能力を打ち消すことができます。《洪水の大口へ》でバウンスできるので、一応覚えておきましょう。 《血染めの月》★★★★☆ ボロスエネルギーなど、アグロデッキが置いてくる分には結構効きます。《洪水の大口へ》でバウンスできるので劇的ではありませんが、《島》もさほど枚数が入ってるわけではないので、《定業》などが連打しづらく、探しにいってる間に殴られて負けます。《一時的封鎖》で巻き込まれない対策なのも良いですね。速いデッキ以外が使う《血染めの月》はあまり効きません。とにかく速いクロックが目の前にないと、バウンス自体は結構入っているので、その内引かれてしまいますからね。 《オアリムの詠唱》★★★☆☆ それなりにうざい対策カードです。《ぐるぐる》などでマナ加速したところを狙われたり、《死の国からの脱出》に合わせられると非常に厄介です。入っているデッキがミラーとエネルギーぐらいで、ミラーはほぼケア不可能ですが、エネルギーの場合は起きているマナが少ないので、エンド時に《ぐるぐる》で寝かせるなどして、《オアリムの詠唱》を唱えられないようにしたいです。構えているのがわかりやすいカードではあるので、相手の動きが変だと思ったら頭の片隅に入れましょう。突然負けるカードではあるので注意は必要です。 《外科的摘出》★★☆☆☆ 《願い》を抜かれてフィニッシャーがなくなって一発負けがあるカード。ケアは簡単で、《タッサの神託者》をサイドインすれば良いだけなのですが、どのデッキから飛んでくるかがわからないのが難しい。盲目的に全マッチでサイドインするわけにはいかないですからね。《瞬唱の魔道士》が入っているデッキには《外科的摘出》が入りやすかったり、ディミーアなら1枚入ってるかもしれませんが、ゲーム2ではひとまずサイドインしないようにしています。《願い》以外のカードを抜かれた時は比較的どうでも良いですし、《願い》が墓地になければそもそも狙われないので、《一つの指輪》からデッキを全部掘って勝ったり、《沈黙》から入ることもできます。意外と《タッサの神託者》をサイドインしなくても、《願い》を墓地に落とさないプレイをすればケア可能です。 《ドラニスの判事》★★☆☆☆ ルビーストームにはかなり効く対策カードですが、ぐるぐるロータスとしてはどうでもいいカード。出されてもあまり効果ありません。《死の国からの脱出》と《願い》は止まりますが、《一つの指輪》には無力ですし、《一時的封鎖》を入れるマッチアップでは他のクリーチャーやパーマネントに巻き込まれてついでにいなくなります。《一時的封鎖》をサイドインしない相手が出してくる《ドラニスの判事》は対処が少し面倒ですが、とはいえ《洪水の大口へ》《朦朧への没入》《天上都市、大田原》(+それをサーチできる《探検の地図》)とかなりの枚数が入っているので、効き目としては弱めです。 《未認可霊柩車》《虚無の呪文爆弾》★★☆☆☆ 墓地対策は《死の国からの脱出》に効果はあるものの、それだけのカード。《ドラニスの判事》とほとんど変わらないですね。《ぐるぐる》で寝かせて機能不全にしてから《死の国からの脱出》《秘本掃き》ルートにいけますし、《一時的封鎖》でも巻き込めます。墓地対策は他のデッキにも効果的ですし、サイドボードに入っていればインするとは思いますが、ぐるぐるロータス相手には期待しない方が良いでしょう。 《魔道士封じのトカゲ》★☆☆☆☆ 《ドラニスの判事》より更に意味のない対策カード。《死の国からの脱出》も《願い》も止まりません。《一つの指輪》でプロテクションをつけてそのターン無効化もできますし、もちろん《ドラニスの判事》と同じで《一時的封鎖》で巻き込めます。このカードが出てくると安心します。 《海の先駆け》★☆☆☆☆ 《睡蓮の原野》が《島》に変わるカードですが、《血染めの月》と違い効果はかなり弱め。 《洪水の大口へ》《朦朧への没入》《天上都市、大田原》(+それをサーチできる《探検の地図》)と触るカードがたくさんあるので、生け贄にする誘発が消えた《睡蓮の原野》を並べて、マナが十分出たところでバウンスされるのがオチです。 《三なる宝球》★☆☆☆☆ 《ぐるぐる》で寝かされて機能不全になっちゃいます。このカードはダメです。下手したらサイドインしない方が良いまであるかもしれません。いや、さすがにもっと不要牌を抜いているはずなので、そんなことはないですね。とにかく全然効かないのでご注意ください。 サイドボーディングガイド 全体的に《砂時計の侍臣》を抜くマッチが多めです。マナ加速としては弱めでカードを引ける点を評価してメイン採用しているので、役割としては少しふわっとしており、サイドアウト候補の筆頭となっています。《考慮》も1枚抜く場合が多く、《砂時計の侍臣》を4枚抜くなら《考慮》1:《砂時計の侍臣》3のバランスにするといった程度。《砂時計の侍臣》は《一つの指輪》をアンタップできるので《考慮》より強い場合も多く、かといって《砂時計の侍臣》は掘る枚数が《考慮》より少ない。要するに一長一短なので、軽いカードである《考慮》を優先しつつ、どちらも少しずつ抜きます。妨害手段の少ない相手には《願い》《死の国からの脱出》《一つの指輪》だとフィニッシュ手段が過剰になるので、《願い》を抜くことがあります。こういったマッチでは《願い》・《考慮》を抜いた後に、残りを《砂時計の侍臣》で調整しています。 対エネルギー +3《一時的封鎖》+3《洪水の大口へ》 ー4《砂時計の侍臣》ー1《記憶への放逐》ー1《考慮》※ボロスエネルギーには《オアリムの詠唱》が入っている場合が多いので、エンド前に《ぐるぐる》で白マナを寝かせるのが効果的。 対青単ベルチャー +3《沈黙》+2《洪水の大口へ》+1《記憶への放逐》 ー4《砂時計の侍臣》ー1《考慮》ー1《ぐるぐる》 対ジェスカイコントロール +3《沈黙》 ー3《砂時計の侍臣》 対ディミーアマークタイド +3《沈黙》+2《洪水の大口へ》 ー3《記憶への放逐》ー2《砂時計の侍臣》 ※《海の先駆け》を相手がサイドインしていないなら《洪水の大口へ》は不要。《砂時計の侍臣》を残しましょう。 《海の先駆け》をサイドインしているかどうかは相手のフェッチランドのサーチの仕方で想像できます。フェッチから沼を積極的に持ってきているならサイドインしています。 対エルドラージ +3《洪水の大口へ》+1《記憶への放逐》 ー2《砂時計の侍臣》ー1《考慮》ー1《願い》 対リビングエンド +3《沈黙》+1《記憶への放逐》 ー4《砂時計の侍臣》 対ドメインズー +3《洪水の大口へ》+2《沈黙》 ー4《砂時計の侍臣》ー1《考慮》 対ルビーストーム +3《沈黙》+1《記憶への放逐》 ー3《砂時計の侍臣》ー1《考慮》※《ドラニスの判事》はサイドボードにおいて《願い》からのサーチに。 対アミュレットタイタン +3《沈黙》+1《記憶への放逐》 ー2《砂時計の侍臣》ー1《考慮》ー1《願い》 対エスパー御霊 +3《沈黙》+1《記憶への放逐》 ー4《砂時計の侍臣》 対ティムールブリーチ +3《沈黙》+1《記憶への放逐》 ー2《砂時計の侍臣》ー1《考慮》ー1《願い》 最後に 今回はぐるぐるロータスの解説をお届けしました! とても楽しくてやりこみがいのあるデッキなので、気になった方はぜひ使ってみてください! 現在ラスベガスは深夜3時。これから寝る……前にぐるぐるロータスを一人回ししようと思います! それでは!

チャンピオンズカップファイナル参加&モダンオープン優勝レポート

Modern Pioneer ピックアップ

2024.10.18

mtg Yuyan

先週末は、先週末は静岡で行われたチャンピオンズカップファイナルとモダンオープンに参加してきました!今回の旅も前日から前乗りしていたので、1日ごとに写真で振り返ります。 金曜日:沼津 今回の旅は車だったので、東京から静岡駅に向かう途中の沼津に寄ることに。バーン使いのリュウジことBIG MAGICの村栄 龍司が第二の故郷と呼んでいる沼津。東京から新幹線で近くて漁港なのでとにかく海鮮が美味しく、リュウジに誘われて行ったのがきっかけで、僕自身もハマってしまい、今では観光案内がそれなりにできるほどになりました。というわけで沼津港を練り歩きながらひたすら食べ尽くし… 中央亭の餃子 マグロステーキ ラストはグランマのシュークリームを食べつつ、ケーキをテイクアウト。 その後はいろいろとありながら夜に静岡駅近くの宿に辿り着き、就寝。 土曜日:CCF本戦 はい、というわけで本戦です。フォーマットはパイオニア。使用デッキはアゾリウスロータスでした。 アゾリウスロータス アゾリウスロータスについては以前の記事をご覧ください。 ぶっちゃけると、世界選手権まで時間がなく、ほとんどの時間をドラフトとスタンダードに費やしていたので、パイオニアはプレイしていませんでした。なので半ばロータスコンボに決め打ちしていて、何か良いデッキがあれば直前に乗り換えようとしていました。それがチャンピオンズカップファイナルから更に一週間前の話。その夜、ダイレクトメッセージが飛んできます。送ってきたのは、アメリカ地域CSでアゾリウスロータスを使い、トップ8に入賞したパトリック・ウーさん。この方、地域CSで4回アゾリウスコントロールでプロツアーの権利を獲得した超アゾリウスマスター。今年の世界選手権の権利もアゾリウスコントロールで獲得しています。 画像は公式サイトより。一番右の方がパトリック・ウーさん。 パトリック・ウーさんと僕はアゾリウスコントロールの絆で結ばれており、たびたび地域CSやプロツアーのたびにダイレクトメッセージをやり取りする仲でした。そのパトリック・ウーさんがアメリカ地域CSの初日が終わった時にメッセージを送ってきてくれたのです。その内容は…「日本の地域CSはいつだい?」でした。来週であることを告げると、パトリック・ウーさんは「俺のアゾリウスロータスがおすすめだよ!」と言い切ってくれました。これはもう乗るしかないと思い、アゾリウスロータスに決定。事前に僕が予想したメタゲームでもアゾリウスロータスは良いと感じていたので、最強のアゾリウスロータス使いが信じるそのデッキに全ベットすることに決めました。(僕の想定ではラクドス果敢、アゾリウスコントロール、ラクドス異形化の順に多く、すべてにアゾリウスロータスは有利だったのです)ちなみに今回は村栄 龍司率いる村栄塾で意見交換をしており、僕以外の全員が《美術家の才能》入りのイゼットフェニックスに決定。ロータスが無理なメタゲームなら僕もイゼットフェニックスに乗ろうとしていました。 イゼットフェニックスに自信のない僕ですら使いたくなるほど、《美術家の才能》入りのイゼフェニは良い!さて、アゾリウスロータスに決めたらそこからは微調整。 パトリック・ウーさんのフィードバックを受けて、《アーデンベイル城》を抜いて《噴水港》へ。元々白マナは過多だったので、単純にカードパワーの比較となりますが、トークンを生け贄にしてカードを引けるのは素晴らしく、一方で《アーデンベイル城》でトークンを生み出したいタイミングはあまりなかったので、《噴水港》の方が良いと思いました。 《記憶の氾濫》の4枚目は欲しいと思うことは多々あったものの、《記憶の氾濫》が必要なマッチは主にミラーマッチやエニグマなど遅い相手や、黒系ミッドレンジ。ミラーマッチやエニグマには元々強く、黒系ミッドレンジは少ない想定だったので、3枚にとどめました。 そこから直前でイゼットフェニックスが想像よりずっと良いことを受け、墓地対策をサイドに取ることに。スロットがないため《ドビンの拒否権》をメインボードに1枚移動し、デッキは完成。 本戦結果 ○×× ボロス果敢○○ イゼットフェニックス×○× ラクドス果敢×○○ ラクドス果敢×○○ ラクドス果敢○○ アゾリウスコントロール×× セレズニアカンパニー4勝2敗からバブルマッチで世界最強の一人、熊谷 陸に負けて初日落ち。相性かなり良いマッチだったが、ワールドプレイヤーには勝てず。 画像は公式サイトより引用 フルボッコにされているカバレージが残っていますので、興味のある方はどうぞ。余談ですが、僕はこのカバレージライターの大久保くん(もう数年来の友人でありかつての仕事仲間)が担当するフィーチャーマッチで勝ったことがありません。まあ最後のセレズニアカンパニー戦はツかなかったですが、ここで勝って初日を抜けても、今回は良い成績でトーナメントを終えることはなかったでしょう。苦手寄りのラクドスミッドレンジ・黒単デーモンが非常に多く、アゾリウスコントロールがその分少なかったので、アゾリウスロータスはあまり良い選択ではありませんでした。先週のアメリカ地域CSは最高のメタゲームだったのですが。「デッキをシェアしてくれた上に、様々な意見をくれたパトリック・ウーさんには申し訳ないことをしてしまったなぁ……」と思いつつ、翌日のモダンオープンの登録を行いました。 この日の夜はアリーナオープン初日でしたが、力線2枚引いた後に力線3枚のゴミプールを掴んで2回とも即死。ちなみに同じ部屋に泊まった友人は《粉砕コースター》を引いて一発抜けしていました。 ちなみに、黒単デーモンとラクドスミッドレンジがここまで多かったなら、使うべきデッキはゴルガリ陰湿な根だったかもしれません。 僕がエリア予選を突破したデッキで、とにかく回すのが楽しくて大好きな愛機だったのですが、前述のようにパイオニアの練習ができていなかったので完成させられませんでした。 《ベイルマークの大主》が入ってデッキパワーも上がっていたので、少し試せばよかったですね。今回一番後悔しているポイントです。 日曜日:モダンオープン 最終日はモダンオープンです。 初日落ちをケアして複数のフォーマットのデッキを持ってきています。というか僕はモダンがとにかくやりたかったのです。スタンダードやドラフトの練習をしなきゃいけないわけですが、細かいことには目をつむりましょう。使用デッキはぐるぐるロータスです。 ぐるぐるロータス ぐるぐるロータスの詳しい解説はまた来週書きますが、簡単に言えば《睡蓮の原野》を《ぐるぐる》でアンタップしてマナを増やしたり、《一つの指輪》をアンタップして大量にカードを引くデッキです。なぜこのデッキを使ったか。簡単です。ぐるぐるロータスが最高だからです。それ以上に言葉は必要ありません。 最高すぎて一人回しをずっとしたかったのですが、パイオニアで《睡蓮の原野》を使っているので回すことすらできず、欲求不満状態でした。 本戦結果 ○○ ジャンド昂揚○○ ジェスカイコントロール○○ ディミーアマークタイド○○ エルドラージ○○ マルドゥエネルギー○×○ エルドラージ○×○ ボロスエネルギーIDID7-0-2でトップ8に。○○ 青単ベルチャー○×○ マルドゥエネルギー○○ ボロスエネルギー優勝! 公式より引用 しっかり《睡蓮の原野》を引き込めたり、負けるギリギリ前のターンでトップデッキをしたりと、「今日は優勝しそうだな~」となんとなく思っていたら、そのまま優勝! 最高に面白いデッキで最高の結果が出せて嬉しい!2年前のパイオニアオープンでは準優勝だったので、雪辱を果たしました! この日がぐるぐるロータスの初回しだったのですが、メインボードはほぼ完成されていて、特にいじりたいところは見つかりませんでした。 一方、サイドボードにはそれなりに不満がありました。 《オアリムの詠唱》VS《沈黙》 まず《オアリムの詠唱》より《沈黙》の方が優れていると感じました。《オアリムの詠唱》はキッカーすると相手の攻撃を止めることができますが、対戦相手を対象に取る必要があるので、《一つの指輪》を置かれると打てなくなります。 これは対ジェスカイコントロール戦で致命的になりうると思いました。《否定の力》のバックアップ込みで《一つの指輪》を出してきた返しは大きな隙で、そのタイミングでコンボを決めるために《オアリムの詠唱》を打ちたいのに打てない。これは致命的。 入れるマッチアップはルビーストーム・ディミーアマークタイド・ジェスカイコントロールなどであり、これらのうちディミーア以外には攻撃を止める能力はほぼ使いません。 それなら、《一つの指輪》のプロテクションを無視できる《沈黙》の方が良い! 《大梟の小夜曲》より《記憶への放逐》 それなりに万能な打ち消し……かと思いきや、入れる相手は大体エルドラージ。クリーチャーとアーティファクト同時に触れますからね。でも同じことが《記憶への放逐》でもできます。というか誘発を打ち消せる分、《記憶への放逐》の方が強い。 《大梟の小夜曲》が優れたマッチアップはルビーストームで、《モンスーンの魔道士、ラル》と《ルビーの大メダル》の両方を打ち消せるからなのですが、対ストームを過剰に意識する必要はないと思いました。 《記憶への放逐》はエルドラージにサイドインするには最適。カウンターとして万能な他、《睡蓮の原野》を2ターン目に設置できる(誘発型能力を打ち消すことで)ので、妨害とコンボのどちらにも貢献してくれます。 エネルギーに一番強いのは《一時的封鎖》! エネルギーと戦っていてとにかく強かったのが《一時的封鎖》。《願い》からサーチしてメイン戦を制すことはもちろん、サイドインして引いて勝ったりもしました。 正直1枚じゃ全然足りず、2枚は欲しい。3枚目すら検討しました! 《外科的摘出》が気になる 現状のリストだと《願い》を《外科的摘出》で抜かれた瞬間、勝ち手段がなくなります。 《タッサの神託者》をサイドインすればそれは防げますが、それだと《願い》から勝ち手段にアクセスしたい時に困るので、何かしら1枚入れておきたいと思いました。 以上を踏まえた最新リスト   次は世界選手権……の前に 週末はモダン神挑戦者決定戦に出場します。 モダンオープン翌日のモダン神挑戦者決定戦トライアルでもぐるぐるロータスで優勝して不戦勝をゲットできましたからね!ぐるぐるロータス解説記事に優勝報告を入れられたらいいのですが、そんなに上手くいかないのがマジックというもの。肩の力を抜いて楽しんできます!ぐるぐるロータスの記事、お楽しみに!

【今週のピックアップデッキ】ドゥームズデイコントロール/アゾリウスアーティファクト/5色人間

Modern Pioneer Standard ピックアップ

2024.10.17

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 ドゥームズデイコントロール(スタンダード) スタンダードリーグ:5-0 By andrw1232 ライブラリーと墓地から好きな5枚を選び、それ以外のカードをすべて追放する《最後の審判》。レガシーやヴィンテージでは息の長い活躍をしており、つい先日もレガシー神挑戦者決定戦を制していました。《最後の審判》の英語名であるDoomsday。この名を持つデーモンが『ダスクモーン:戦慄の館』で登場したことを皆さんはご存知でしょうか?その名は《終末の加虐者》。まずは衝撃のマナコスト。(黒)(黒)(黒)(黒)(黒)(黒)なんていうマナコストのクリーチャーはマジック史上初めてです。一応『アングルード』に《B.F.M.》という黒15を持つクリーチャーがいますが、あれは例外でしょう。《最後の審判》2枚分のマナコストを持つ《終末の加虐者》は、唱えて戦場に出ると、各プレイヤーのライブラリーの下6枚を除くすべてのカードを裏向きで追放します。お互いに《最後の審判》を下している、といったフレイバーなのでしょうか。本家と違い、好きなカードを選んで残りを追放するわけではないので、カードを積み込んで勝つような使い方はできません。しかし、本家《最後の審判》にない利点が《終末の加虐者》にはあります。それは相手のライブラリ―も6枚にしてしまえるという点です。これにより、《終末の加虐者》を出して相手に《完成化した精神、ジェイス》のマイナス能力を起動するだけでゲームに勝利できてしまうのです!このコンボを取り入れたのがディミーアコントロール。基本的には除去と打ち消しで生き延び、隙を見て《完成化した精神、ジェイス》を着地。《終末の加虐者》を唱えてゲームセットという流れ。除去が大量に入っており、《完成化した精神、ジェイス》自体も生き残りやすい性能なので、このコンボが意外と決まります。いつも《完成化した精神、ジェイス》が生き残るわけではありませんが、そこは安心してください。《終末の加虐者》を出してライブラリーの下6枚のどこかに《完成化した精神、ジェイス》があれば良いです。こればかりは運ですが、たとえばマリガンで《完成化した精神、ジェイス》を下に送っていれば、確実にライブラリーのボトムにあるので、勝利は保証されています。《完成化した精神、ジェイス》以外でも《不穏な浅瀬》のアタックで4枚削っても良いですし、《終末の加虐者》さえ出してしまえばゲーム勝利は目前。コントロールはある程度優勢になってから、ゲームに勝つまでの時間が長いのが課題。その間に相手にトップデッキをされてしまいますし、そのカードが《世話人の才能》のように大量のリソースを獲得するものだった場合、逆転されてしまいます。このドゥームズデイコントロールは《終末の加虐者》さえ引けばすぐに勝利できるのが魅力ですね。コントロールとして立ち振る舞い、突然の勝利。パイオニアを支配したディミーアインバーターっぽさもあるこのデッキ、試してみたいですね。 アゾリウスアーティファクト(パイオニア) パイオニアリーグ:5-0 By Saporon 『ビッグスコア』の中でも一際注目を集めたカードと言えば《身代わり合成機》。マナ総量3以上のアーティファクトが戦場に出るたびにトークンを生成するこのカードは、特に下環境では使われることはあったものの、パイオニアでは全くと言って良いほど見かけないカードでした。《身代わり合成機》は戦場に出た時は盤面に影響を及ぼさないため、高速化しているパイオニアでは出す暇がありません。モダンやレガシーでは、「マナ総量は3以上だが0マナや1マナで唱えられる」《金属ガエル》や《思考の監視者》と組み合わせることにより、《身代わり合成機》を出したターンにもトークンを生成できますが、パイオニアには親和を持つカードはないので、どうしても上手く活用できませんでした。しかし、今回ご紹介するアゾリウスアーティファクトは、この《身代わり合成機》を最大限までしゃぶり尽くすデッキです!まず紹介しなければならないのは《金属製の巨像》!11マナ10/10というマナコストもサイズも巨大なクリーチャー。当然11マナなんて支払えるわけありませんので、軽減する能力がしっかりついています。自分がコントロールしているクリーチャー以外のアーティファクトのマナ総量の合計分だけ、コストが軽くなります。つまり《身代わり合成機》が1枚あれば8マナになるというわけですね。この《金属製の巨像》《身代わり合成機》と最高の相性なのが《真鍮の拳》。戦場に出た時に《真鍮の拳》のコピーを生成するので、即座にマナ総量4のアーティファクトが2つ出ます。当然《身代わり合成機》は2回誘発して2体のトークンが出てきて、更に《身代わり合成機》の3+《真鍮の拳》4×2で合計コストは11.《金属製の巨像》が0マナで出て、更に《身代わり合成機》が誘発。これだけで7/7のトークンが3体と《金属製の巨像》が場に出る、すさまじい場になります。さて、爆発力がわかったところで、足場を固めるカードたちも紹介しましょう。まずは安定の除去、《ポータブル・ホール》。アーティファクトなのでしっかり《金属製の巨像》のカウントや《身代わり合成機》のトークンのサイズアップに寄与してくれます。《月罠の試作品》はアーティファクトかクリーチャーをタップすることで無色マナを生み出せるアーティファクト。《ポータブル・ホール》なんかを寝かせるとちょっとお得な気分になります。相手への干渉手段があまり多くないデッキなので、魂力で使うこともしばしば。デッキ内のほとんどがアーティファクトなので、《加工鋳造所》も素晴らしいカードになります。《アイレンクラッグ》もそうですが、マナを生み出すアーティファクトは《金属製の巨像》のキャストをかなり助けてくれます。他にも《金色の両翼》や《結婚式への招待状》など、他のデッキでは見ないカードたちが盛りだくさん!ド派手なアーティファクト戦略がお好きな方はこのデッキに決まり! 5色人間(モダン) モダンリーグ:5-0 By RowdyGainz かつてモダンを代表するアグロデッキの1つだった5色人間。それぞれの色やマルチから最強の人間たちが集まって完成した5色人間は、主にヘイトベアーたちの集まりでした。非クリーチャー呪文のコストを重くする《スレイベンの守護者、サリア》。手札から有効なカードを抜き去る《帆凧の掠め盗り》。《稲妻》を指定して除去を禁止したり、コンボデッキのキーパーツを封殺する《翻弄する魔道士》。しかし、なんと今回ご紹介する5色人間にはそれらの定番だった人間たちが1枚も入っていません!早速、新生5色人間に選ばれた新メンバーを紹介していきましょう。まずは『モダンホライゾン3』の問題児の一人、《魂の導き手》。エネルギーデッキで活躍するカードですが、この人間は単体でもエネルギーを生成し、それを利用できるので、デッキ内のエネルギーがこのカードだけでも十分に活躍できます。続いて《マネドリ》。こちらは前までは《幻影の像》が入っていたので、同じ役割。《サリアの副官》《銅纏いの先兵》をコピーすれば全体強化で、2ターン目ならば2枚目の《教区の勇者》になって速やかに成長して相手を殴り倒すことも。飛行がついているので《教区の勇者》になった時の恩恵が地味に大きい。パイオニアの人間でも活躍する《銅纏いの先兵》は、《サリアの副官》より少し強化の面では劣りますが、護法を付与して除去に耐性をつけてくれます。これも《マネドリ》でコピーしたらおいしい人間。面白いのは《二の足踏みのノリン》の3枚採用。一見何をするかわからないこのカードですが、《教区の勇者》・《サリアの副官》のサイズを上げてくれるだけでなく、《魂の導き手》でエネルギー生成とライフ回復、更に《潜入者、悟》でドローもできちゃいます。その《潜入者、悟》はこのデッキのアドバンテージ源。先に挙げた《二の足踏みのノリン》以外でも《霊気の薬瓶》からクリーチャーを出しても誘発しますし、《イーオスのレインジャー長》で《二の足踏みのノリン》をサーチできるので、《潜入者、悟》が残ればそれなりにドローする機会は多いはず。これまでの人間がヘイトベアーを展開しながら速やかに殴りきる構成だったのに対し、この人間デッキは速度を意識しつつ、アドバンテージを重視した構成と言えますね。なかなか戦いづらいアグロデッキに見えます。5色人間、モダンで復権なるか?

【週刊メタゲーム通信】黒単デーモンがワンツーフィニッシュ!静岡のメタゲームをお届け!

Pioneer ピックアップ

2024.10.16

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今回は先週末に静岡で行われたチャンピオンズカップファイナル静岡の結果をお届けしていきます! メタゲーム チャンピオンズカップファイナル静岡のメタゲームをまずはご紹介していきます。 ラクドス果敢(11.3%) アメリカではアゾリウスコントロールにトップを譲りましたが、今大会ではトップメタに。 除去がないデッキに対しては3ターンキル。かと思えばサイドからは手札破壊や《ウラブラスクの溶鉱炉》で様々な攻め方も可能。すさまじい強さのアグロデッキです。 ただ、このメタゲームを想定していたプレイヤーも多かったので、軽い除去が飛び交うトーナメントとなりました。 ラクドスミッドレンジ(10.9%) アメリカと大きく異なる結果となったのが、ラクドスミッドレンジの人数。 ラクドス果敢とほぼ同数の使用者を誇り、日本ならではのメタゲームといえるでしょう。 リストについては本記事で紹介します。 黒単デーモン(8.6%) 今大会で優勝・準優勝と圧倒的な勝ち組だった黒単デーモンは3番人気でした。 《不浄な別室》+《止められぬ斬鬼》を使うのはラクドスミッドレンジも同じなので、実質この2種のカードを採用した黒系ミッドレンジが50人。20%近くとなりました。 イゼットフェニックス(8.2%) 日本では使用者が少ないと思われていたイゼットフェニックスでしたが、今回は比較的多い21人のプレイヤーが選択。 前週の活躍、そして新たに加入した《美術家の才能》の強さに惚れ込んだプレイヤーが多かったのかもしれません。 当日は僕もプレイヤーとして参加していましたが、イゼットフェニックスに自信がありそうなプレイヤーはみんなイゼットフェニックスをプレイしている印象でした(高橋 優太さんを除く)   メタゲームブレイクダウンは公式の記事に詳細がございますので、こちらからどうぞ。 黒単デーモン チャンピオンズカップファイナル静岡 :優勝 By Tomoaki Ogasawara 静岡の決勝戦は共に同タイプのデッキ、しかも同じ調整チームのメンバー同士の戦いとなりました。既に何度かご紹介しているデッキですが、まずは簡単にデッキの動きを振り返りましょう。黒単デーモンは《止められぬ斬鬼》《アクロゾズの放血者》による一撃必殺コンボを搭載したミッドレンジ。黒を使う最大のメリットである《思考囲い》《強迫》の8枚の手札破壊や《致命的な一押し》《シェオルドレッドの勅令》といった除去で、アグロ・ミッドレンジ・コントロールすべてのデッキに対応できます。使った手札を回復する手段としてこれまでは《勢団の銀行破り》が定番でしたが、このデッキがデーモンと呼ばれる理由、《不浄な別室》がメインのアドバンテージ源となっています。今のパイオニア環境は早く、《勢団の銀行破り》に費やす2マナすら惜しい場合が多々あります。一方の《不浄な別室》はただ3マナを支払うだけで毎ターンカードを引くことができ、デーモンをコントロールしていれば2点ドレインと、あまりに強いカード。この《不浄な別室》の加入により、《勢団の銀行破り》は2枚までその枚数を減らすことになりました。ここまではこれまでの黒単デーモンと変わりない部分ですが、今回世界選手権の権利を獲得した2人のリストで大きな特徴が、《ドロスの魔神》を0枚にしたところです。《ドロスの魔神》は従来の黒単には必ず4枚採用されていたカードでした。デーモンかつ相手に除去されにくいので《不浄な別室》のドレインを安定させてくれて、速やかにライフを削りきってくれます。このデッキで不動のパーツと思われた《ドロスの魔神》を抜いたのです。そのスロットには《墓地の侵入者》や《絶望招来》が入っています。《ドロスの魔神》は赤い相手には生き残りやすい一方、黒ミラーにおいては弱いカードであり、今回のメタ的に黒いデッキが勝ち上がることを予想していたのでしょう。《ドロスの魔神》は4マナと重く、戦場に出た時に何かするカードではないので、除去されるとただテンポをロスします。《アクロゾズの放血者》ほど除去されなかった時のバリューは高くありません。一方、代わりに入った《墓地の侵入者》は、除去する際に手札を要求するクリーチャーであり、ミッドレンジ対決では優秀です。《絶望招来》も黒ミラーやコントロールに対して強力な1枚です。《ドロスの魔神》を抜いてこれらのカードに変更したことにより、黒系ミッドレンジとアゾリウスコントロールに明確に強くなっていますね。見事なデッキ調整でワンツーフィニッシュを決めた黒単デーモン、素晴らしいの一言です! ラクドスミッドレンジ チャンピオンズカップファイナル静岡 :4位 By Hiroki Nakahara 今大会のメタゲームの大きな特徴はラクドスミッドレンジの増加です。ラクドス果敢に続く二番手となっており、そのリストの詳細はというと、黒単デーモンに赤を足したような形です。赤が入っているので《アクロゾズの放血者》を出すのが厳しくなっており、4マナ圏には《ドロスの魔神》が採用されているだけ。これと《不浄な別室》のデーモンシナジー、そして《止められぬ斬鬼》はただ強すぎる3マナ域として採用。《アクロゾズの放血者》とのコンボがなくとも、普通に強すぎるカードなのです。よく考えてみれば、ダメージが通ると相手のライフを半分にするわけですから、3マナでパワー11相当。しかも追放以外の除去なら戦場に戻ってくるのですから、すさまじい性能を持つクリーチャーですよね。この新たな黒の強力な2種のカードを取り入れた以外は、従来のラクドスミッドレンジとさほど変わりありません。《税血の収穫者》《鏡割りの寓話》といった、手札を入れ替えられるクリーチャーたちと手札破壊、除去の組み合わせです。 黒単デーモンと非常に似た構造となっており、《鏡割りの寓話》を使いたいならラクドス、土地周りの強さを取るなら黒単デーモンといったところでしょうか。黒単の場合は色事故は当然ありませんし、土地によるダメージも痛くありません。そして《ロークスワイン城》という超強力な土地を採用することができます。メリットたっぷりの黒単デーモンですが、それでも赤を足したい理由もわかります。何せこちらはレガシーでも一線級のカード、《鏡割りの寓話》を使えるのですから。 当然この《鏡割りの寓話》はミッドレンジ対決で最強の1枚で、黒単とラクドスが戦った場合は、ラクドスが有利だと思っています。それほど《鏡割りの寓話》はすごいカードです。黒単デーモンとラクドスミッドレンジ、共通しているのは軽い手札破壊・除去から強力な3マナ域を投げ、そこから脅威を連打し続けるというもの。 このデッキを攻略するのは非常に難しいように思えるので、今後各国で行われる地域チャンピオンシップの結果には注目していきたいところですね。 セレズニアカンパニー チャンピオンズカップファイナル静岡 :4位 By Taichi Morikawa さて、そんな黒いデッキの隆盛に真っ向から立ち向かうのがこのセレズニアカンパニー。ラクドス果敢に強いデッキとして、前週のアメリカ地域チャンピオンシップでトップ8に入賞し、話題となっていました。デッキの構造は非常にシンプルなのが、もうそのリストから伝わってきますね。21枚の土地に35枚のクリーチャー、そしてデッキ内唯一の非クリーチャー呪文は《集合した中隊》です!これまでのカンパニーデッキ史上、最も《集合した中隊》が当たりやすいデッキではないでしょうか。このデッキで《集合した中隊》が1枚しかめくれなかった日は、早めのドロップを検討したくなるレベルです。《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》の2種のマナクリーチャーから3マナ域を連打していくこのデッキ。《集合した中隊》で強いカードをめくるためにデッキには大量の3マナが入っているので、これらのマナクリーチャーは必須ですね。《エメリアのアルコン》《選定された平和の番人》といった制限をかけるカードたちに、万能除去の《スカイクレイブの亡霊》。そして疑似的な打ち消し呪文である《エイヴンの阻む者》。これらのカードを展開していくだけでは手札が減ってきてしまいますが、それを補うのが《永劫の無垢》。 従来、この役割を果たすクリーチャーは、除去されてしまったらそれまでだったので、なかなかゲームプランに組み込むことができなかったのですが、《永劫の無垢》は死亡するとエンチャントとして戻ってくるので、ほとんどのマッチでしっかりと機能してくれます。このセレズニアカンパニーを成立させているカードと言っても過言ではありません。《トカシアの歓待》と違って《集合した中隊》でめくれてくれるのも、カンパニーデッキとしては素晴らしい、《トカシアの歓待》を2枚引いてもカードは引けませんが、《永劫の無垢》を2枚引いた場合はドローできるので、重ね引きも美味しい。ちょっと《永劫の無垢》、強すぎるかもしれません。ラクドス果敢に強い他、《永劫の無垢》が定着しやすい(=追放除去が少ない)黒系ミッドレンジ・コントロール全般にもそれなりに強いのがセレズニアカンパニーの魅力。ラクドスには《塔の点火》は必須になるかもしれませんね。黒と赤の活躍が目立つパイオニア環境ですが、そこに一石を投じるセレズニアカンパニー。優勝を収める日もそう遠くはない!?

【週末のススメ】ジャパンスタンダードカップ直前!オススメのデッキ3選

Standard ピックアップ

2024.10.09

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週末はプレイヤーズコンベンション静岡!その中のメインイベントの1つでもあるジャパンスタンダードカップに向けて、オススメのデッキを紹介していきます! 白単コントロール スタンダードチャレンジ :優勝 By Graciasportanto まずご紹介するのは白単色のコントロールデッキ。全体除去と言えば白ですが、近年ではドローの質も上がっており、白単だけでも十分にコントロールが可能となっています。クリーチャー群の中で目に付くのはやはり4枚の《跳ねる春、ベーザ》。グルール力線をはじめ、アグロデッキが多い環境なので、このカードは絶対に4ターン目にプレイしたいのでしょう。『ダスクモーン:戦慄の館』から加入した《永劫の無垢》は強力なリソース手段。《大天使エルズペス》や《人参ケーキ》などからトークンを生み出しつつ、相手ターンでも《噴水港》でカードが引けるので、追加の《世話人の才能》のように機能してくれます。クリーチャーは少ないですが、トークン自体は並んでくれるので、《血滾りの福音者》は高い打点を稼いでくれるでしょう。インスタント・ソーサリーはすべて除去。《軍備放棄》は白単を使う理由になるソーサリー。僅か1マナでほぼ好きなカードを除去できるので、序盤から後半まで常に強いカードです。《軍備放棄》を使いながら展開や更なる除去は1マナだからこそ為せる業。《失せろ》は万能除去である一方、《魂の仕切り》には疑問が残るかもしれません。長いゲームを想定したデッキなので、「2マナ重くした程度では出し直されて、アドバンテージを失うのではないか?」と思いますよね。しかし、一度《世話人の才能》や《永劫の無垢》と《噴水港》などで準備が整ってしまえば、手札の枚数に困らないのが白単コントロール。序盤さえ凌いでしまえば、後から出てきたクリーチャーは《太陽降下》できますからね。更に自分のカードを追放して逃がすこともあります。《永劫の無垢》を追放すれば再びクリーチャーとして唱えられますし、《跳ねる春、ベーザ》や《人参ケーキ》、《世話人の才能》なんかも使い回せます。このようにいつ引いてもある程度使えるカードである点も加味して、採用されているのでしょう。ただの除去にしてしまうと、これだけたくさん入っているので、手札に除去だけ溜まってしまう場合も多々ありますからね。アグロデッキには圧倒的な相性を誇る一方、どうしてもコントロールデッキは苦手。サイドボードに入っている《イモデーンの徴募兵》はコントロールやミラーマッチなど、全体除去を打ちあってゲームが決まらない相手への対策です。エンド前に複数の《噴水港》からトークンを出しつつ、メインで《血滾りの福音者》を追加して《イモデーンの徴募兵》で全部殴って一撃でライフを0にしてしまおうという狙いですね。《世話人の才能》でトークンのサイズも上がっているので、それなりに完遂します。単色なので色事故もせず、カードもたくさん引けてとても楽しいデッキです。とにかくビートダウンに負けたくないなら、白単コントロールがオススメです。 アゾリウス眼魔 スタンダードチャレンジ:準優勝 By DuduDeNunu 『ダスクモーン:戦慄の館』で今最も話題の神話レア、《忌まわしき眼魔》。3マナ5/5飛行というすさまじいスペックに、対戦相手のターンになると戦慄予示を行う能力。一瞬で盤面が強固になるクリーチャーです。ただし、唱えるためには墓地を6枚追放しなければならないので、使えるデッキはある程度限られてきます。このアゾリウス眼魔は、元々はアゾリウスメンターと呼ばれているデッキでした。"メンター"《僧院の導師》と《傲慢なジン》を《錠前破りのいたずら屋》で墓地に落とし、《救いの手》で吊り上げて殴っていくコンボ内蔵のクロックパーミッション、それがアゾリウスメンターです。墓地を大量に溜めることができ、墓地から3マナ以下のクリーチャー・カードを吊り上げるのがデッキコンセプト。そう、《忌まわしき眼魔》との相性が非常に良いデッキなのです。そして抜けていったのは悲しいかな、デッキ名を冠していた《僧院の導師》でした。同じ3マナ域ですが、《忌まわしき眼魔》は何もせずに相手のターンになるだけで勝手に盤面にクリーチャーを出してくれて、しかも自身のサイズも大きいので、ほぼ上位互換なのです。このデッキの動きは単純です。《航路の作成》《決定的瞬間》で《忌まわしき眼魔》や《傲慢なジン》を落とし、《救いの手》《再稼働》で墓地から吊り上げる。後は相手の呪文を《幻影の干渉》《三歩先》で打ち消して殴り切ります。除去や打ち消しで序盤を凌いで《忌まわしき眼魔》《傲慢なジン》を展開。除去されたら《救いの手》《再稼働》でしつこく場に吊り上げ続けて、相手の除去を尽きさせる場合も。《忌まわしき眼魔》は手札から唱える場合は墓地を大量に要求されますが、自身の戦慄予示能力で墓地が肥えていくので、意外と2枚目を唱えるのも容易く、吊り上げる以外の方法でも十分に運用が可能です。特に赤系アグロは《忌まわしき眼魔》を倒すのがそもそも困難な上、倒したとしてもまたすぐ吊り上げて盤面を作ってしまえるので、見た目よりも赤いデッキとしっかり戦えます。サイドボードには《エルズペスの強打》ももちろん入っています。弱点はなんといっても墓地対策。《忌まわしき眼魔》《傲慢なジン》《救いの手》《再稼働》とクリーチャーに関連する部分がすべて墓地に依存してしまっているため、アゾリウスメンターだった頃から更に厳しくなっています。このリストのサイドボードに《僧院の導師》が入っているのも、墓地対策を避けるためです。とはいえ、手札から《僧院の導師》を唱えてトークンを作っていくには、3マナで出した《僧院の導師》が生き残って帰ってくる必要がありますから、苦肉の策ではありますね。逆に言えば、それ以外の弱点はさほどなく、スピードと干渉手段を兼ね備えているので、対策がない場合は中々倒すのが困難なデッキでもあります。アゾリウスメンター、墓地対策が薄いと感じたならオススメです! グルール果敢  スタンダードチャレンジ:3位 By Boucha さあさあそしてこのデッキを紹介しないわけにはいかないでしょう!スタンダードで2キルが楽しめるエキサイティングなデッキ、グルールアグロです。《残響の力線》はただの2ターンキルパーツだと思われがちですが、そもそも《巨怪の怒り》や《裏の裏まで》が倍になってくれるので、カードとして強力です。《残響の力線》は置くとカードを1枚損しますが、自分のクリーチャーを対象に取るスペルを1回打つだけでチャラになり、2回以上使えばお釣りがくるのです。そして《残響の力線》は他の力線と違い、2枚目を出すことに大きな意味があります。2枚初手に来て置いても、《裏の裏まで》が2回コピーされてしまえば、それだけで元は取れちゃいますからね。当然、2ターンキルの確率も上がります。要するに《残響の力線》というカードがただただ強すぎるのです。とはいえ《残響の力線》を強く使うためにはデッキをそれ専用に構築する必要があります。パイオニアのラクドス果敢に《残響の力線》が採用されていないのは、自分のクリーチャーを対象に取るスペルが少ないためです。このデッキは《残響の力線》を活かすべく、17枚のインスタント・ソーサリーすべてが対象に取れるものとなっています。《巨怪の怒り》は+3/+1にトランプルを付与する最強のインスタントで、《裏の裏まで》は死亡時に戦慄予示を行えます。《残響の力線》で同じクリーチャーに《裏の裏まで》を使い、それが死亡すれば、戦慄予示が2回行えてかなりお得。 《弱者の力》は修正こそ低いですがドローできるので、《残響の力線》分のリソースを回復できます。《残響の力線》下では何枚でも引きたいですね。最近のリストで感銘を受けたのが《魔女の印》です。カードを捨てて2枚引く、いわゆる《苦しめる声》の亜種ですが、オマケで自分のクリーチャーにひねくれ者・役割をつけることができます。そう、自分のクリーチャーを対象に取っているので、これも《残響の力線》でコピーできるのです!1枚捨てて2ドローを2回行いながら、ひねくれ者を2回つけることができます。《残響の力線》下でリソースを獲得できることはもちろん、手札に腐ってしまった《残響の力線》を捨てられる点や、4枚目の土地を引いて《残響の力線》を出したい時に、不要なカードを捨てるなど、とにかくデッキに合っています。《残響の力線》を使うなら《魔女の印》を常にセットで使いたいと思わされるほどです。ちなみに同じクリーチャーにひねくれ者をつけると、1枚目が剥がれるので相手に1点飛びます。リーサル計算の際に必要になるので覚えておきましょう。どれだけ意識されてもしっかり強く、大会で結果を残し続けているグルール果敢。もちろん今週末もオススメのデッキです!

【週刊メタゲーム通信】アメリカ地域CSの結果を分析!

Pioneer ピックアップ

2024.10.08

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のメタゲーム通信は、アメリカ地域チャンピオンシップの結果からお届け!週末のチャンピオンズカップファイナルに出場予定の方は要チェック!! 最後にメタゲーム予想のオマケつきです! メタゲーム アメリカ地域チャンピオンシップのメタゲームをまずはご紹介していきます。 アゾリウスコントロール(12.9%) アゾリウスコントロールがラクドス果敢を抑えてトップの使用率を誇ることになりました。ラクドス果敢を意識した構成にすることで有利に立ち回れて、不利マッチだったラクドスミッドレンジはほぼ消滅し、大きく不利な相手がロータスコンボしかいなくなったことが、このアゾリウスコントロール大増殖の要因でしょう。 ラクドス果敢(12.7%) そのアゾリウスコントロールに続くのはラクドス果敢。現パイオニア環境で絶対に意識しない相手であり、1マナの除去をほとんどのデッキに標準搭載させた元凶です。このデッキを倒せるかどうかはパイオニアの基準となります。 イゼットフェニックス(10.9%) そしてイゼットフェニックス。日本で少ない傾向にあるのか、アメリカに使用者が多いのか。そのどちらもな気もしますが、とにかく3番手にイゼットフェニックスが上がってくるのは意外でした。マジックオンラインでは少し元気がなかった印象でしたが、著名プレイヤーも多数このデッキを持ち込んでいます。 奇怪な具現(7%) 4位は《奇怪な具現》。『ダスクモーン:戦慄の館』で得た《ホーントウッドの大主》と境界土地によっていよいよメタゲームの上位にまで上り詰めたこのデッキ。ラクドス果敢とアゾリウスコントロール、その両方が厳しいデッキではありましたが、実はこのアメリカ地域予選で初日全勝を果たしており、そのポテンシャルは計り知れません。 ラクドス異形化(6.2%) 近頃台頭してきているラクドス異形化がトップ5の最後の席を埋めることに。《異形化》から《偉大なる統一者、アトラクサ》を出すデッキですが、手札破壊から《謎の骸骨の事件》《鏡割りの寓話》によるトークンの圧力や、《勢団の銀行破り》でリソースを回復しながら除去を連打。そして《湧き出る源、ジェガンサ》からの《偉大なる統一者、アトラクサ》手出し。など、色々な戦い方ができるコンボ・ミッドレンジ。今大会でも準優勝を果たしており、今後更に増えてきそうなデッキです。ここからはトップ8に入賞したデッキを紹介していきます。 ラクドス地獄の樹 アメリカ地域チャンピオンシップ :優勝 By Cory Lack 1800人を超えるアメリカの地域チャンピオンシップを見事制したのは、ラクドス地獄の樹。《アガサの魂の大釜》に《地獄の樹》を追放すると、自軍の+1カウンターの乗ったクリーチャーすべてが《地獄の樹》になるので、《税血の収穫者》をタップするだけで相手のライフが3になります。《ヴォルダーレンの興奮探し》に乗せれば、《地獄の樹》の能力を使った後に自身を生け贄にすれば確実に勝利できますし、《アガサの魂の大釜》で《地獄の樹》と《ヴォルダーレンの興奮探し》を追放していれば、カウンターが乗ったクリーチャーが《地獄の樹》の能力を使った瞬間にゲームセットとなります。つまり、コンボを内蔵したラクドスアグロ、それがラクドス地獄の樹です。このデッキはラクドス吸血鬼がパイオニアを支配していた頃に生まれたデッキでしたが、その頃から大きく進化している点が1つあります。それが『ダスクモーン:戦慄の館』から追加された《逸失への恐怖》です。2マナ2/3で出た時にカードを捨てて引ける能力は非常に優秀。《税血の収穫者》に近い、潤滑油の役割を果たせます。そして除去能力を持つ《税血の収穫者》より攻撃的な能力があり、各ターンに最初に《逸失への恐怖》が攻撃した時に、昂揚していればクリーチャー1体をアンタップして追加の戦闘フェイズが発生するというもの。《逸失への恐怖》が攻撃する必要がありますが、除去や《アガサの魂の大釜》で《逸失への恐怖》を強化していれば、この能力を誘発させることは難しくないですし、最悪《逸失への恐怖》が除去されても追加の戦闘フェイズは発生するので、無理矢理致死量のダメージを与えにいくことも可能です。強力な能力ではありますが、やはり昂揚はオマケ。メインとなるのはカードを捨てて引く能力を持つ2マナ2/3というスペックの高さです。ちなみに手札が0枚の時はただ1ドローできちゃいます。特にこのデッキは《地獄の樹》のディスカード手段にかなり困っていたので、《鏡割りの寓話》《税血の収穫者》に続く第三のディスカード手段として採用されることとなりました。非常に便利なカードで、ラクドス地獄の樹に限らず、ラクドス系のミッドレンジに新たにレギュラー入りを果たすかもしれません。それぐらいの高スペッククリーチャーです。ラクドス地獄の樹がここまで好成績だった要因の1つは、ラクドス果敢より少し遅い程度のアグロデッキでありながら、クリティカルヒットするサイドカードがあまり飛んでこなかったからでしょう。たとえばラクドス異形化がラクドス果敢対策として用意している《碑出告が全てを貪る》は、ラクドス地獄の樹には全く効きません。そうすれば当然サイドイン枚数は少なくなるので、ラクドス地獄の樹は戦いやすくなります。アグロ対策として採用されている《一時的封鎖》《ポータブル・ホール》は《鏡割りの寓話》や《ヴォルダーレンの興奮探し》に触れず、ラクドス果敢ほどは劇的なカードではありません。サイド後は《敵対するもの、オブ・ニクシリス》を入れて、更にこれらのカードを避けられる構成になっています。黒除去などは墓地にクリーチャーが落ちて《アガサの魂の大釜》が機能するので、これも大きな効果はなし。このように、ラクドス果敢対策として入ってくるカードを機能させない戦い方をして勝利を収めてきたのでしょう。相手がアグロ対策をしてくるならこちらは速度を少し落としてミッドレンジにように振る舞い、スピード勝負には《アガサの魂の大釜》《地獄の樹》で挑むという、異なる強力なゲームプランを併せ持つデッキが、見事アメリカの頂点に立ったのでした。 アゾリウスロータス アメリカ地域チャンピオンシップ  :8位 By Patrick Wu 今大会のトップメタだったアゾリウスコントロールでしたが、トップ8にその名を連ねたのはPatrick Wu選手ただ1人。ちなみにこのプレイヤーはカナダの強豪で、今大会を含めて4度の地域チャンピオンシップでアゾリウスコントロールを使いプロツアーの権利を獲得している、アゾリウスコントロールマスターです。そしてそのリストは通常のアゾリウスコントロールではなく、《睡蓮の原野》を採用した、いわゆるアゾリウスロータスです。《厳しい試験官》と《睡蓮の原野》が揃うと、《睡蓮の原野》の戦場に出た時の土地を生け贄に捧げる能力が誘発しなくなります。このコンボを採用したのがアゾリウスロータス。ロータスコンボと違い、《見えざる糸》や《熟読》から《出現の根本原理》に繋げるわけではなく、《睡蓮の原野》《演劇の舞台》による大量のマナで、盤面をコントロールしたりカードを引いていきます。特に《ドミナリアの英雄、テフェリー》との相性は目を見張るものがあり、《睡蓮の原野》2枚をタップして《ドミナリアの英雄、テフェリー》を出し、ターン終了時にそれをアンタップすると、実質《ドミナリアの英雄、テフェリー》がタダで唱えられます。次のターンに《ドミナリアの英雄、テフェリー》が場に残っていれば、使う6マナと起きる6マナの計12マナを使用できるので、《サメ台風》を素出ししてターンを終了し、相手のターンに《記憶の氾濫》を撃ったり、《告別》で盤面を一掃しつつ相手ターンに《放浪皇》など、通常のアゾリウスコントロールではできないメチャクチャな動きが実現できます。《睡蓮の原野》と《厳しい試験官》のコンボがなくとも、《演劇の舞台》が《睡蓮の原野》をコピーするだけでも十分マナ加速ができるので、特にアゾリウスコントロールミラーでは圧倒的な勝率を誇るデッキです。最終的には《演劇の舞台》が《噴水港》や《アーデンベイル城》に変わり、大量のトークンで殴り勝ちます。その代わりに打ち消し呪文が採用されていないのと、《厳しい試験官》を相手に悪用されてしまうので、ロータスコンボを大の苦手としています。アゾリウスコントロールを支える《喝破》すら未採用なので序盤の干渉手段は少ないですが、ラクドス果敢を意識して大量の除去に加え、《有角の湖鯨》が採用されています。《有角の湖鯨》はアグロデッキの足を止める1枚。マナが一気に加速するアゾリウスロータスではクリーチャーとして出すターンが速いので、デッキに非常に合った1枚です。2ターン目に相手を減速させ、3ターン目に《厳しい試験官》+《睡蓮の原野》、次のターンに《有角の湖鯨》と回れば、アグロはひとたまりもないでしょう。アゾリウスロータスは特に《厳しい試験官》が活躍するメタゲームで、かつアゾリウスコントロールが多ければ、勝ち組になりやすいデッキ。 《厳しい試験官》が入っているせいで《一時的封鎖》《ポータブル・ホール》を採用できないため、ラクドス果敢には通常のアゾリウスコントロールに比べて厳しくなっている印象。しかし、そのデメリットを補ってあまりあるほど、一部のデッキに対しては圧倒的に優位に立てます。今回は《厳しい試験官》が突き刺さる《奇怪な具現》の流行やアゾリウスコントロールトップメタなど、アゾリウスロータスにとっては非常に良い条件が整っていました。週末、静岡で行われるチャンピオンズカップファイナルを戦う上で、このアゾリウスロータスは意識に入れたいデッキですね。 イゼットフェニックス   アメリカ地域チャンピオンシップ:7位 By Omri Goldenberg 実は今大会の勝ち組だったイゼットフェニックス。アメリカは特にイゼットフェニックスが多い傾向にあり、今回も多くのプレイヤーが選択しましたが、しっかりとトップ8にも残っています。大量のキャントリップ呪文と除去でデッキを掘りながら墓地を肥やし、ヴィンテージ級のドロースペルである《宝船の巡航》でリソースを回復。その過程で墓地に落ちた《弧光のフェニックス》で攻撃しつつ、再びキャントリップと除去から《宝船の巡航》を打つというのが、イゼットフェニックスの戦い方。デッキを支えるのはもちろん《宝船の巡航》で、このカードにアクセスしつつ墓地を肥やせる《錠前破りのいたずら屋》が登場したことで、一段階上の強さのデッキとなりました。除去が大量に入っていて、そこから《宝船の巡航》でリソースを回復できるので、アグロデッキに比較的強く、デッキを大量に掘り進めることで特定のカードにアクセスしやすく、それによりデッキリスト次第ではコントロールにも強くできるなど、なんでもできる器用なデッキ。1マナのカードが非常に多いので手札事故が少なく、安定して回るのも魅力の1つ。何でもできる器用さがあり、1マナが多い。これは裏を返せば、各ゲームプランを理解しながら立ち回らなければならなく、1マナのカードばかりなのでマナカーブ順にただカードをプレイするのは許されない、ということでもあります。非常に難しい玄人好みのデッキというわけですね。さて、今回は《美術家の才能》を採用したリストを一部のプロプレイヤーたちは持ち込んでいましたが、トップ8に残ったリストは比較的オーソドックスです。《プロフトの映像記憶》はすっかり入っているのがデフォルトとなりました。《宝船の巡航》を打つだけで戦闘開始時にカウンターを3つ置けますし、《帳簿裂き》と組み合わせることで凄まじい打点を叩き出します。地味に強力なのが《錠前破りのいたずら屋》の強化。警戒を持った1/3にうっとうしい思いをした方も多いでしょうが、これにカウンターが4つ乗ると急に戦闘が一方的なものになります。《宝船の巡航》を集めて墓地を肥やすだけだった《錠前破りのいたずら屋》がフィニッシャーになるのは、《プロフトの映像記憶》の大きな利点の1つ。主にサイド後の墓地対策や《死人に口無し》でメインとなる打点を抜かれた際に便利なカードだったのですが、そもそも強力なので、最近では1~2枚はほぼすべてのリストに入っていますね。ちなみに先ほど話した《美術家の才能》との相性もかなり良いです。墓地から戻ってきた《弧光のフェニックス》にカウンターを乗せることはできないのですが、これができたら3枚入っていたかもしれませんね。メタゲーム的な立ち位置で言えば、ラクドス果敢には少し不利か五分程度、アゾリウスコントロールに有利と、トップメタの2つにはまずまずと言ったところで、これだけでは今一つに思えるかもしれませんが、それ以外のデッキに比較的有利なのは大きな魅力。特にキャントリップと除去で構成されており、そのすべてが軽いので、デッキが回りやすく安定していて、有利マッチをしっかりと勝ち切ることができます。しかも時には《弧光のフェニックス》が複数枚落ちるブン回りもありますからね。今回はラクドス果敢・アゾリウスコントロール・奇怪な具現あたりが多いという予想を立てたプレイヤーは多かったでしょう。この3つは墓地を使わないデッキなので、サイドボードの最後の1~2枠を決めるにあたり、《未認可霊柩車》や《夢を引き裂く者、アショク》を諦めた人は少なからずいたはずです。墓地対策が薄くなれば当然墓地デッキは元気になります。イゼットフェニックスが勝ち組になるのは当然かもしれませんね。 どうなる?チャンピオンズカップファイナル 今回のアメリカ地域チャンピオンシップをふまえて、チャンピオンズカップファイナル静岡のメタゲームを予想してみます! 1位:ラクドス果敢(15%)2位:アゾリウスコントロール(14%)3位:ラクドス異形化(10%)4位:黒単デーモン(8%)5位:奇怪な具現&イゼットフェニックス(5%)   僕はチャンピオンズカップファイナル静岡に出場しますが、上記のメタゲームになることを想定してデッキを考えています!答え合わせが楽しみですね!それではまた!

【今週のピックアップデッキ】ドメインズアー/黒単デーモン/ディミーア眼魔

Modern ピックアップ

2024.10.04

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 ドメインズアー(スタンダード) スタンダードリーグ:5-0 By LukasDusek2 ドメインと言えば、スタンダードでずっと活躍している5色のコントロールデッキ。アドバンテージ獲得手段の《豆の木をのぼれ》、それと相性の良い《力線の束縛》、マナ加速には《山積みの収穫》、そしてフィニッシャーの《偉大なる統一者、アトラクサ》。しかし、この新しいドメインには、《偉大なる統一者、アトラクサ》以外のカードが入っていません。新しいタイプのドメインデッキなのです。アドバンテージを《豆の木をのぼれ》でとらないので、《力線の束縛》は採用されていません。除去枠には《失せろ》や《シェオルドレッドの勅令》、《執念の徳目》など2マナが中心です。このデッキの核となるのは《永遠の策謀家、ズアー》。エンチャントをクリーチャー化する能力を持つこのカードは、《力線の束縛》と相性が良いことで知られています。1マナで出して除去して、《永遠の策謀家、ズアー》でクリーチャー化すると6/6になりますからね。でもこのリストには《力線の束縛》の姿はありません。それならクリーチャー化するエンチャントはどこに?その答えはクリーチャー欄にあります。そう、『ダスクモーン:戦慄の館』の大主サイクルです!兆候で唱えることで軽く戦場に出せる代わりに数ターンはクリーチャーではなくなる大主たち。クリーチャーではないエンチャント……そう、兆候状態の大主を《永遠の策謀家、ズアー》で無理やり起こすことができるのです!しかも《永遠の策謀家、ズアー》の能力で大主たちは接死・絆魂・呪禁を得るので、ダメージレースは一方的なものになりますし、攻撃時の能力も除去で邪魔されません。《トルヴァダへの侵攻》も面白い1枚。《偉大なる統一者、アトラクサ》や《ミストムーアの大主》、《無形の処刑者、ケイヤ》などの重いカードをリアニメイトできるのはもちろん、裏面はトークンを強化するので、《ミストムーアの大主》との相性抜群です。 このデッキの《花粉の分析》は素晴らしいカードですね。証拠収集8を達成するのは通常のデッキではなかなか厳しいですが、《群れの渡り》を捨てるだけで7なのですぐに満たせます。《永遠の策謀家、ズアー》があれば大主たちを、大主が兆候してあれば《永遠の策謀家、ズアー》を、手札がなければ《偉大なる統一者、アトラクサ》と、状況に応じて必要なカードを持ってこれます。《花粉の分析》のおかげで、マナ加速できる《ホーントウッドの大主》を除いたクリーチャーは2枚以下に抑えられていますね。重いクリーチャーが手札でかさばることがないようになっています。《永遠の策謀家、ズアー》が攻撃的なカードなので、このドメインズアーは従来のドメインに比べて早くゲームを終わらせられるデッキとなっています。普通のドメインに飽きた方は一度試してみてはいかがでしょうか? 黒単デーモン(パイオニア) パイオニアにまたまた新しいコンボデッキがやってきました。『ダスクモーン:戦慄の館』のプレビュー当時に騒がれた1枚、《止められぬ斬鬼》を使ったコンボデッキです。 パイオニアリーグ:5-0 By Saporon 《止められぬ斬鬼》がプレイヤーに戦闘ダメージを与えると、そのプレイヤーのライフを半分失わせるという恐ろしいクリーチャー。しかも僅か3マナで接死を持ち、死亡すると麻痺カウンターが2個乗った状態で戦場に戻ってくるので、まさしくその名の通り止められぬゾンビです。このライフを半分失わせる能力と噛み合うクリーチャーといえば《アクロゾズの放血者》。自分のターンに対戦相手がライフを失うなら、その倍失わせるデーモン。つまり《止められぬ斬鬼》のダメージが通ると、ライフの半分を失わせて、その半分が倍になるので……つまりライフが0になるということになります。この2枚が揃って《止められぬ斬鬼》の攻撃が通ると勝ちです。とはいえ、クリーチャー2枚による、かつ回避能力のないクリーチャーのダメージを通して初めて成立となる即死コンボ、毎度成功するわけではありません。このデッキはあくまで即死のサブプランを搭載した黒単ミッドレンジです。《思考囲い》《強迫》の8枚の手札破壊は除去を抜いて《止められぬ斬鬼》のダメージを通すのにぴったりなカード。大量の除去も、果敢アグロがここまで暴れる環境なら必須でしょう。『ダスクモーン:戦慄の館』で登場した《不浄な別室+祭儀室》は、黒単デーモンを支える1枚。 自分の終了ステップの開始時にカードを引き、デーモンをコントロールしているなら対戦相手が、そうでないなら自分がライフを失うというこのカード。ただ置くだけで毎ターンカードが引けるだけでなく、デーモンがいれば相手のライフも削れる素晴らしいカード。しかもオマケとして巨大なデーモンも出せるのですから、《ファイレクシアの闘技場》世代の人間としてはその強さに驚きを隠せません。この《不浄な別室》の能力も、デーモンである《アクロゾズの放血者》で倍になるので、エンドに4点を入れつつドローできます。《不浄な別室》と《アクロゾズの放血者》の相性、すごすぎる!そして《不浄な別室》でライフ回復するためのデーモンとして、《ドロスの魔神》も採用されています。こちらも相手のクリーチャーが死亡すると2点が入るので、《アクロゾズの放血者》で4点に。この2体のデーモンが揃うと一瞬でゲームが終わりますね。従来の黒単系のミッドレンジと違い、《止められぬ斬鬼》と《アクロゾズの放血者》の即死コンボを搭載していることで、ロータスコンボのようなデッキにしっかりスピード勝負できるのも、このデッキの魅力です。スピードだけでなく、《不浄な別室》《勢団の銀行破り》《ロークスワイン城》でアドバンテージも取れるので、除去を連打するコントロールプランも取れるなど、単色デッキとは思えない器用さ。単色デッキなので色事故もなく、能力のある土地も多いのでマナフラッドにもなりにくいと、回していてとにかく不快感が少ないのも個人的にはプラス。日々の多色疲れを癒せること間違いなし! ディミーア眼魔(モダン) モダンリーグ:5-0 By RowdyGainz 近頃その名前をよく目にする、今最もホットなクリーチャー《忌まわしき眼魔》。スタンダードでは《救いの手》でリアニメイトされているそうですが、モダンでも実は同じような使われ方をしています。モダンでは《考慮》《思考掃き》で《忌まわしき眼魔》を墓地に落とし、《発掘》で吊り上げるというのがトレンド。2ターン目に突然5/5飛行と戦慄予示が並ぶことになるので、あのエネルギーすらも凌駕する動きです。《忌まわしき眼魔》を墓地に落とすために1マナのスペルが大量に入っているので、吊り上げられなかった場合も安心。墓地を6枚追放して手札から出せます。一度出すと2枚目の《忌まわしき眼魔》を唱えるのは厳しいかのように思えますが、戦慄予示を行えるので実は1枚目さえ場に出れば勝手に墓地が溜まり、2枚目もすぐに場に出せます。青黒と言えば《濁浪の執政》でしたが、《忌まわしき眼魔》との相性はさすがに悪く、今は0枚に。これもエネルギーとの戦いを考えれば仕方がないのかもしれません。ディミーアはエネルギーを大の苦手としていましたが、それはエネルギー側の盤面の制圧力が高いだけでなく、《一つの指輪》という別軸の勝ち手段が生まれてしまったためでした。ディミーア側は《超能力蛙》以外の攻め手はなく、基本は防戦一方。序盤のエネルギーのカードをさばいている内に、ライフに余裕のある状態で《一つの指輪》を置かれてしまいます。《濁浪の執政》は最速でも4ターン目。圧はあるカードですが、速度という点では優秀ではありません。その点、《忌まわしき眼魔》は2ターン目に出ればあっという間にライフを削ってくれますし、盤面に並んだカードと戦慄予示が相打ちを取ってくれるので、ある程度打ち消しを構える余裕も生まれます。余計な除去を使わなくて済み、《一つの指輪》に当てる《対抗呪文》を手札に温存することができるのです。果たして《忌まわしき眼魔》は《濁浪の執政》を超える逸材なのでしょうか?このディミーア眼魔は今後活躍し続けるのか?目が離せません!

【メタゲーム通信増刊号】地域CSに向けて最新のパイオニア情報をお届け

Pioneer ピックアップ

2024.10.03

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週と来週はラストチャンス予選2回、そしてチャンピオンズカップファイナルとパイオニアの競技イベントが続きます!というわけで今週はメタゲーム通信をパイオニア編でもお届け!ブラジルの地域チャンピオンシップの結果から、最新のリストをご紹介! 最後にボーナストピックとして、「もし今週末にラストチャンス予選に使うならこれ!」というリストをご紹介します! コントロールがラクドス果敢を制す ブラジルの地域チャンピオンシップを制したのはアゾリウスコントロールでした。 アゾリウスコントロール City Class Games Showdown VII :優勝 By Vinícius Karam 白の除去と青の打ち消し・ドローというマジック黎明期から活躍するこのアーキタイプ。パイオニアでもコントロールと言えばまずアゾリウスカラーが定番です。『ダスクモーン:戦慄の館』で実はアゾリウスコントロールは強化を受けました。一体どのカードか?デッキリストを見てもわからないかもしれませんね。よく見てください……土地の欄を。そう、《フラッドファームの境界》です。今回アゾリウスコントロールが手に入れたのは土地でした。2色ランドはこれまでも《行き届いた書庫》などたびたび加入していましたが、今回の《フラッドファームの境界》ほどの影響はありません。なぜ《フラッドファームの境界》はすごいのか?簡単に2色を生み出せる土地というだけでなく、条件不問でアンタップインかつ白マナが生み出せる土地だからです。アゾリウスコントロールは1ターン目は白マナしか使うことがなく、3~4ターン目に青青を要求してくるデッキです。《フラッドファームの境界》は《平地》か《島》があれば、2色ランドになり、それ以外の状況では白マナが出せるので、1ターン目に白を出し、3~4ターン目の青青にしっかり貢献してくれる、アゾリウスコントロールのためのカードなのです。この強力な土地の加入でデッキリストも進化を遂げています。1ターン目にアンタップインする白マナが12枚になったことで、《ポータブル・ホール》を1ターン目に使いやすくなりました。なのでこのリストにはメインから4枚採用。《騒音の悪獣》と《心火の英雄》はいずれも死亡時にダメージを飛ばすカードなので、《ポータブル・ホール》は完全回答。それを後手1ターン目から使えるのは大きく、《フラッドファームの境界》によりそれが可能となったので、土地のアップデートは思っているよりもずっと大きいのです。《冥途灯りの行進》も手札を追放すれば1ターン目から使用できますし、このデッキは後手番でもしっかり勝てるように構築されています。それを可能にしているのは《フラッドファームの境界》というわけです。除去が多めでドロースペルは少なめなのがこのリストの特徴です。《記憶の氾濫》2枚はこれまでにはあまり見たことがありませんね。この辺りも今のメタゲームを意識した結果でしょう。ラクドス果敢にはどうしても《記憶の氾濫》は打ちづらいですからね。《一時的封鎖》か《ポータブル・ホール》のどちらを採用するかについてですが、個人的には《ポータブル・ホール》を推します。《一時的封鎖》は複数枚のカードを巻き込めたり、召集のようにトークンで殴ってくるデッキには効果的ですが、ラクドス果敢などは1~2体のクリーチャーを強化して殴ってくるので、《一時的封鎖》である必要があまりありません。むしろ3マナという重さが致命的で、後手番で間に合わなかったり、盤面に並べながら《精鋭射手団の目立ちたがり》を計画され、《一時的封鎖》の返しで一撃でライフを削られてしまいます。《ポータブル・ホール》は1マナなので後手1ターン目に盤面に触りにいったり、打ち消しを構えながら3~4ターン目に唱えられるので、隙なく盤面を対処できます。というわけで、1ターン目の白マナがある程度確保できるのであれば、《ポータブル・ホール》がオススメです。オーラなど特殊なデッキが出てきたら変わるでしょうが、もし今週アゾリウスコントロールを使うならば、《ポータブル・ホール》を4枚採用するでしょう。アゾリウスコントロールは今ものすごく立ち位置が良いデッキです。ラクドスミッドレンジとロータスコンボには不利で、それ以外にはあらかた有利。特に最近台頭してきている5色エニグマを得意としており、そのエニグマがラクドスミッドレンジにかなり強いデッキなので、ラクドス自体の数が減りつつあります。天敵を食べてくれて、更にそのデッキを自分は簡単に倒せるのですから、アゾリウスコントロールとしてはエニグマ様様ですね。ロータスも赤系アグロを苦手としているので、数自体が大幅に増えることもないでしょう。今週間違いないデッキの1つはアゾリウスコントロールとなるでしょう。ミラーマッチ対策をお忘れなく。 蘇ったかつての王者 さて、そんなアゾリウスコントロールに強いデッキと言えばラクドスミッドレンジ。一時は《傲慢な血王、ソリン》から《血管切り裂き魔》を出す吸血鬼にお株を奪われていましたが、禁止改訂により、《思考囲い》と《鏡割りの寓話》を使うミッドレンジとしての立場を取り戻しました。 ラクドスミッドレンジ City Class Games Showdown VII :7位 By XandreB このリストは《ドロスの魔神》4枚かつ《変わり谷》が1枚に押さえられており、アゾリウスコントロールを意識した構成にはなっていませんが、それでも有利なのは間違いありません。そしてラクドスミッドレンジは、ただアゾリウスキラーというだけではありません。特に大きいのはラクドス果敢に強い点です。除去と手札破壊もさることながらクロックが速いので、ラクドス果敢側に立て直しの時間を与えません。これはサイドボード後の除去デッキに対するラクドス果敢のプランが機能しにくいことを意味します。たとえば《ウラブラスクの溶鉱炉》ですね。 その他にも、ラクドス果敢が対除去デッキに対して行うサイド後のゲームプランは、ある程度ロングゲームを想定しています。しかし、ラクドスミッドレンジは大量の除去でゲームを遅らせるだけではありません。除去で初速を潰してクロックを展開し、そのままライフを詰めてきます。今のラクドス果敢には、対ラクドスミッドレンジで有効なサイドカードが《熱烈の神ハゾレト》ぐらいしかないのです。ラクドスミッドレンジは、ラクドス果敢とアゾリウスコントロールの上位2つに強いデッキということになります。更に極端に相性が悪いデッキがほとんどない点も魅力です。手札破壊と除去とクロックがまんべんなく入り、サイドボードにそれぞれのマッチアップに更に強くなるので、ほぼ全方位を見れるデッキと言えます。唯一、エニグマだけは本当に苦手としており、当たったら即投了レベル。エニグマが少なければ、ラクドスミッドレンジは段々と増えていたことでしょう。サイドボードに目を向けると、やはりここもエニグマを意識していません。結局どのカードを入れても意味がないと判断したのでしょう。そしてそれはおそらく正しいと思います。《屍呆症》で《奇怪な具現》を抜いたとしても《豆の木をのぼれ》から重いスペルを連打されるだけで負けてしまいます。それならば《思考囲い》《強迫》から《鏡割りの寓話》《ドロスの魔神》で一瞬で勝つ方がまだ勝算があります。《碑出告が全てを貪る》は果敢対策として最近評価されているカード。ラクドス果敢は《戦慄衆の秘儀術師》と《立身+出世》があるので、実は墓地追放も無意味ではありません。《危難の道》、《兄弟仲の終焉》も合わせてかなり全体除去が多めですね。3マナの全体除去が多い中、異彩を放つのが《絶滅の契機》ですが、こちらは《熱烈の神ハゾレト》を触れるカード。果敢は奇数クリーチャーが多いので、《熱烈の神ハゾレト》がいない時は奇数を選択する場合が多いです。エニグマを避け続ければ優勝のポテンシャルが十分あるデッキだと思います。 意識されてもなお強い たびたび話題に挙がっているラクドス果敢。ブラジル地域チャンピオンシップではしっかり意識されていましたが、それでもトップ4に2人を送り込み、このデッキの地力の高さがうかがえますね。 ラクドス果敢 City Class Games Showdown VII :3位 By MARCOSHBF リストには大きな変化はないものの、ミラーを意識してメインに《致命的な一押し》と《無謀な怒り》が採用されています。それ以外に大きなリストの変化はありません。『ダスクモーン:戦慄の館』で《残響の力線》という新たなブン回りカードを手に入れた果敢アグロですが、既存のラクドス果敢には入りにくいと思います。《残響の力線》は初手にある時に2ターンキルパターンが増えるカードではあるものの、初手になかった時は無駄カードとなります。《照光の巨匠》が入ったボロス型ならば謀議で捨てられますが、ラクドスでは引くだけ損なカードです。《残響の力線》は《照光の巨匠》とセットで使うのがパイオニアでは定番になるかと思われます。謀議で捨てられるのはもちろん、《残響の力線》でコピーした呪文でも謀議が誘発するので、《照光の巨匠》と《残響の力線》2枚だけでもゲームに勝てると言っても過言ではありません。ここまで相性が良ければ《残響の力線》を置いた時のバリューも高いので、デッキに入れる価値があります。ラクドス果敢では《残響の力線》を引けなかった時のリスクはもちろん、引いた場合のリターンもさほど高くないと判断しての不採用だったのでしょう。サイドボードには《敵対するもの、オブ・ニクシリス》が採用されており、これは主にコントロール対策。その中でもアゾリウスコントロールに最も効果的な1枚です。能動的にクリーチャーを生け贄に出来るので《心火の英雄》を生け贄にしてダメージを飛ばしつつ、忠誠度の高い《敵対するもの、オブ・ニクシリス》のコピーを作る、という場面もあるかもしれませんね。《大群への給餌》も《一時的封鎖》を割れるカードなので、このラクドス果敢のサイドボードはアゾリウスコントロールを強く意識しているのがうかがえます。どれだけ意識されてもしっかり勝ち切る確かな実力を持つラクドス果敢は、今週もオススメのデッキの1つです。使わない方はしっかり対策しましょう! ボーナストピック もし今週ラストチャンス予選に出るならこの75枚にします! ゆうやんアゾリウス

【週刊メタゲーム通信】グルールアグロでスタンダードが壊れる!?

Standard ピックアップ

2024.10.01

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 毎週、最新のメタゲームをデッキリストと共にお届けするこの記事。今回は新セット発売後、最早恒例となった大会『蒼紅杯 ~ダスクモーン:戦慄の館~ Izzet Explosive Experiment Event』から最新スタンダード環境をご紹介していきます! 【速報】スタンダード、壊れる。 まとめサイトならこんなタイトルがつけられるに違いがありません。長いことマジックをやっていますが、2ターンキルが可能なスタンダード環境は今までなかったと思います。《ティボルトの計略》で2ターン目に《星界の大蛇、コーマ》を出して「2ターンキルだ!!」とはしゃいでいた記憶はありますが、あれも実質2ターン目に勝利するだけでした。このデッキは正真正銘の2ターンキル。相手のライフを0にしてしまいます。 グルールアグロ 蒼紅杯:優勝 By AKINARI Shimokawabe その方法は簡単。まずはゲーム開始時に《残響の力線》を設置。そして1ターン目に《騒音の悪獣》をキャスト。 2ターン目に《巨怪の怒り》を唱えて+2/+0の修正がコピー合わせて2度入り、その後役割で+1。更に《裏の裏まで》を唱えると+3修正が2回入る。これでパワーへの修正は+11になるので12点。《騒音の悪獣》を生け贄にして本体に12点で2ターンキル。《裏の裏まで》を2回打っても+12、《巨怪の怒り》2回なら+9なので、どの組み合わせでも2ターンキルは可能です。 《裏の裏まで》+《無感情の売剣》でもパワー7+《無感情の売剣》7点+死亡時の7点で21点が飛びますね。1ターン目が《心火の英雄》でも2ターンキルできます。こちらは2ターン目に《巨怪の怒り》か《裏の裏まで》の後に《無感情の売剣》が必須となります。 このように、《残響の力線》があると複数のパターンによる2ターンキルが発生します。2ターンキルばかりが目立ちますが、ベースはグルール果敢。前環境から強力と言われていたデッキで、ただでさえ不安要素の1つだったマナベースが《ソーンスパイアの境界》で解消されました。決して《残響の力線》を初手に置けなければ勝てないデッキではなく、元々強いデッキに2ターンキル要素が加わった、と言った方が正しいでしょう。サイド後は2ターンキルを警戒して除去を大量に増やしてきたのに合わせて、《残響の力線》をすべて抜いて《ウラブラスクの溶鉱炉》に入れ替えたりなど、デッキのベースの強さを活かしたサイドプランも可能です。新環境はまずこのグルール果敢を攻略するところから始まりますね!それぐらい完成度の高いデッキです。 生け贄がキーワードのアグロデッキ お次に紹介するのは、最近MTGアリーナでにわかに増え始めているラクドスサクリファイス。 ラクドスサクリファイス 蒼紅杯:7位 By MrCrocodile 《悪意ある呪詛術士》は1マナ3/2と破格のスペックを持つクリーチャーですが、戦場に出た時に呪われし者・役割をつけなければなりません。つまり実質1マナ1/1。このエンチャントを《腐敗口のバイパー》や《甦りし悪夢、ブレイズ》、《不穏な笑い》などで生け贄に捧げてしまおうというのがラクドスサクリファイス。特に新カードの《不穏な笑い》は、エンチャントを生け贄にして2ドローして、自身が生け贄に捧げられた時に戦慄予示と、このデッキにおいてはアドバンテージ源の塊。実質2マナ2ドローに2/2のクリーチャーがついてくる超良カード。《悪意ある呪詛術士》から《不穏な笑い》、3ターン目に《甦りし悪夢、ブレイズ》と回った時は凄まじい速度で相手のライフを攻めつつリソースも獲得していきます。地味ですが、《機械仕掛けの打楽器奏者》も『ダスクモーン:戦慄の館』で登場したサクリファイス向けのカード。パイオニアで採用されていた《不運な目撃者》に近い性能ですが、この可愛い猿の玩具はめくれる枚数が1枚になった代わりに、次の自分のターン終了時までそのカードを使用できるので、2ターン目に《不穏な笑い》で生け贄に捧げた場合でも、追放したカードを使用できる可能性が高いです。このリストには採用されていませんが、《倉庫の虎猫》を入れたバージョンも見かけたことがあります。エンチャントが大量に墓地に落ちるこのデッキと相性が抜群で、生け贄に困らなくなります。ちなみに役割が同じクリーチャーにかぶった時もエンチャントが落ちてトークンが出たりします。最初にやられた時はびっくりしました。サクリファイスのポテンシャルは今大会でのトップ8入賞で証明されました!ここからの活躍に期待したいアーキタイプです。 コントロールの兆候 ジャパンオープンを制して話題となったボロスコントロール。その中核を担うエンジンが《ウラブラスクの溶鉱炉》と《世話人の才能》でした。 一度設置すればクロックを生み出し続ける《ウラブラスクの溶鉱炉》と毎ターンアドバンテージを稼ぐ《世話人の才能》。これらが揃うと、何もせずに毎ターン攻撃しながらカードが引ける。寝ているだけで毎月給料が振り込まれる夢の生活が送れるのです。そんなボロスコントロールは『ダスクモーン:戦慄の館』に住まう大主によって進化を遂げました。 ナヤコントロール 蒼紅杯:6位 By Dengekidaikon 大主たちはいずれも戦場に出た時にトークンを生み出すので、《世話人の才能》のバリューは更にアップ。 特にカードが今まで以上に引きやすくなった上に、トークンを生成する能力で《ホーントウッドの大主》が生み出す土地をコピーできるので、更なるマナ加速が可能となりました。《ミストムーアの大主》は攻める大主。本体が出るまで時間がかかりますが、それを利用できるのがナヤコントロール。最初に出すトークンはブロッカーになり、相手が攻め手を追加したところで《太陽降下》。更地の場に《ミストムーアの大主》が降り立つこととなります。この大主たちと相性抜群なのが《豆の木をのぼれ》。マナ総量が5以上のカードを唱えるとカードが引けるこの能力は、大主を兆候した際にもしっかり誘発してくれます。《力線の束縛》に2種の大主と、このデッキではたくさんの方法で脱法豆の木(※《豆の木をのぼれ》を軽いカードで誘発させること)が行えます。最近は緑の《豆の木をのぼれ》、白の《世話人の才能》でアドバンテージが稼げるので、ドローの色である青を使わないコントロールデッキも増えてきました。青の入っているコントロールは打ち消しを採用しますが、非青の場合はその枠を除去にすることが多く、コントロールミラーでは弱い一方、ビートダウンには強いのが特徴。グルール果敢が増えていくことが予想されるため、それを食うために、このナヤコントロールのようなアプローチのデッキもどんどん出てくるでしょう。《残響の力線》ビートダウンの猛攻を止められるのはコントロールだけかもしれません!

【新環境ピックアップデッキ】マーフォーク/ヨーグモス/イゼットウィザード

Modern ピックアップ

2024.09.27

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 本日は最新セット『ダスクモーン:戦慄の館』の発売日! 昨日に続いて、『ダスクモーン:戦慄の館』の新カードを採用したデッキを紹介していきます!今回はモダン編! マーフォーク モダンリーグ:5-0 By LordMajicus 黎明期から存在し、その美しい容姿も相まって、マジック界でも屈指の人気を誇る海の戦士たち。かつてはレガシーで一線級のデッキで、今もモダンで時たま活躍しています。ドラゴンや人間などと違い、マーフォークは毎セットにほぼいるというわけではないので、新セットで必ずアップデートされるわけではありませんが、最近はたびたび強化が入っています。《マネドリ》は『ブルームバロウ』で入った強力なコピーカード。《アトランティスの王》《真珠三叉矛の達人》を並べて全体を強化していくアグロデッキなので、これらのロードをコピーするのが主な《マネドリ》の役割です。『モダンホライゾン3』から加わった強力なマーフォークの《海の先駆け》も紹介しないわけにはいきませんね。《血染めの月》の《島》版を内蔵するマーフォーク、最初はマーフォーク使いたちの作ったオリカかと思いました。《真珠三叉矛の達人》などのロードはマーフォークに島渡りを付与するので、他のデッキの使う多色土地対策の《海の先駆け》と違い、マーフォークたちがブロックされなくなるおまけつきです。そして『ダスクモーン:戦慄の館』からは《フラッドピットの溺れさせ》が採用されています。2マナ2/1瞬速で、戦場に出た時にクリーチャ―をタップして麻痺カウンターを置く。《マーフォークのペテン師》のようなクリーチャーですね。更に2マナを支払うことでそのクリーチャーをライブラリーに戻せるので、実質除去として機能します。これまでのマーフォークが持っていなかった完全除去クリーチャーがついに登場したのです。ライブラリーに戻してしまうので、エスパー御霊のようなデッキにはただ除去してしまうより強力。死んだら吊り上げられてしまいますからね。マーフォークとしては珍しく警戒がついているので、麻痺カウンターを置く能力と合わせて、ライフレースを先行する上でとても重宝するカードでしょう。マーフォークは《島》を渡ってくる関係上、ノーガードの殴り合いになりがちですからね。ついに確定除去まで手に入れたマーフォーク、エネルギーの海を泳ぐことはできるのでしょうか? ゴルガリヨーグモス 《スランの医師、ヨーグモス》で不死クリーチャーを生け贄にして無限コンボで勝利する、クリーチャーによるコンボデッキ。 モダンリーグ:5-0 By Manas235 《若き狼》2体と《スランの医師、ヨーグモス》が戦場にいる状態で、まず《若き狼》Aを生け贄にし、今度は不死で戻ってきた《若き狼》Aに、《若き狼》Bを生け贄にマイナスカウンターを置く。するとプラスとマイナスのカウンターが相殺され、《若き狼》Aはまっさらな状態に。同じように今度は《若き狼》Bのプラスカウンターを取り除き……これで自分のライフがある限り、《スランの医師、ヨーグモス》でドローし続けることができます。《血の芸術家》がいれば生け贄に捧げるたびにライフを得て相手だけ1点ずつ失うので、そのまま勝利。《スランの医師、ヨーグモス》がコンボパーツでありながら、必要なカードを探しにいけるので、極度に《スランの医師、ヨーグモス》に依存したコンボ。それゆえに《召喚の調べ》とあわせた8枚体制で、絶対に戦場に《スランの医師、ヨーグモス》を出せるようにしています。このデッキは《アガサの魂の大釜》で大幅なアップデートを受けました。今までは《スランの医師、ヨーグモス》が戦場にいる必要がありましたが、《アガサの魂の大釜》で《スランの医師、ヨーグモス》を追放すれば、+1カウンターが乗ったクリーチャーはすべて《スランの医師、ヨーグモス》の能力を持つので、カウンターの乗った不死クリーチャーが《スランの医師、ヨーグモス》になってくれます。更にデッキのもう1つの強みだった「コンボを決めないで勝つゴルガリアグロパターン」も《アガサの魂の大釜》で強化されました。《アガサの魂の大釜》で《飢餓の潮流、グリスト》を追放することにより、プラスカウンターが置かれているクリーチャーがすべて《飢餓の潮流、グリスト》になるので、1ターンで大量のトークンを生み出していき、それだけでも勝てるマッチがあるぐらいでした。そんなヨーグモスに今回入ったのが《永劫の活力》。自軍クリーチャーがすべて好きな色のマナを生み出せるようになるのですが、これによってコンボが更に容易になりました。クリーチャーが大量に入っているので、ただ出すだけでも行動回数が増えますし、《絡み根の霊》は速攻を持っているので、戦場に出たターンでもタップしてマナを生み出せるようになります。これがどういうことかというと、《スランの医師、ヨーグモス》によって生け贄に捧げて、不死で戻ってきた時にマナを出せるので、マナが全くない状態からでも《若き狼》《スランの医師、ヨーグモス》《絡み根の霊》で勝てるようになったのです。《絡み根の霊》でマナを出して生け贄に捧げて不死で蘇り、再びマナを出してから《若き狼》を生け贄にしてカウンターを取り除き、再び《絡み根の霊》を生け贄に捧げる。先ほど説明したこの不死ループ中にマナを増やせるので、大量のドローで《血の芸術家》か《召喚の調べ》を引けばそのまま唱えられるようになりました。これまではマナが一切ない状態では、大量ドローはできるが、その先がなく、手札をパンパンにしてエンドするしかなかったのですが、《永劫の活力》によってターンを返さずに確殺できるようになったのです。《オークの弓使い》や不死クリーチャーなど、クリーチャーが横並びして除去されにくいデッキなので、それらからマナを生み出せる《永劫の活力》はうってつけ。しかも自身は死亡時にエンチャントとして戻ってくるので、とりあえず《スランの医師、ヨーグモス》で生け贄にしてリソースにしてもOKと至れ尽くせり。新たな動きが可能になったヨーグモス、試してみたいですね。 イゼットウィザード 最後に紹介するのはイゼットカラーのコントロールデッキ。 モダンリーグ:5-0 By SvenSveeterSven デッキのベースは打ち消しと除去とキャントリップで構成されたコントロール。それだけ見ればイゼットマークタイドのようですが、《ドラゴンの怒りの媒介者》や《濁浪の執政》は採用されていません。その代わりに入っているのが《瞬唱の魔道士》と《稲妻罠の教練者》。先の2枚のように攻撃性能は皆無な可愛いやつらですが、フラッシュバックで除去やドローを使い回したり、ライブラリーを掘り進めていきます。これらがウィザードなので、《アノールの焔》との相性も良し。そしてここに『ダスクモーン:戦慄の館』からの新戦力、《永劫の好奇心》が加わりました。《永劫の好奇心》は様々なフォーマットで注目されているカード。クリーチャーがプレイヤーにダメージを与えるたびにドローするカードは、《タッサの二叉槍》など、その能力だけでも採用する価値があるほど強力。にも関わらず、《永劫の好奇心》は瞬速と4/3のボディに加えて、死亡してもエンチャントとして戻ってくるのです。さすがに破格の性能すぎますね。クリーチャ―の数こそ少ないこのデッキですが、デッキ内のクリーチャーはすべて戦場に出た時に一旦の仕事を終えているので、相手視点では除去したくありません。しかし、《永劫の好奇心》がある以上は倒さざるを得ない。そうやってカードの交換を繰り返していけば、必然的に手札をどんどん増やしているこちらが有利になるという、古き良きマジックを楽しめる、そんなデッキ。特にサイドボード後は相手はやりづらいでしょう。クリーチャーは数少なく、しかもどれも除去する価値がないのに、除去を抜けば《永劫の好奇心》でカードを引かれてしまいます。このデッキを使用して5-0したプレイヤーは、「《永劫の好奇心》を2枚しか持っていなかったが、3枚目があれば入れたい」と言っていました。それほど《永劫の好奇心心》は強かったのでしょう。スタンダードでも《永劫の好奇心》の姿を見かける機会は多いですし、もしまだお持ちでないなら、早めに揃えておいても損はないかもしれませんね!

【週刊メタゲーム通信】エネルギーに立ち向かうコントロールとエルドラージ

Modern ピックアップ

2024.09.25

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 毎週、最新のメタゲームをデッキリストと共にお届けするこの記事。今週はモダンの最新メタゲームを追っていきます! エネルギー環境にやってきたコントロール 先週末もモダンの大会はエネルギーが勝ち組に。特にこの週は純正2色のボロスエネルギーがチャレンジを4連続で優勝(!)しており、バントナドゥを思わせる勝率の高さです。この要因の1つは、環境的に《血染めの月》《一つの指輪》が強くなってきたことがあげられるかもしれません。エネルギーメタとしてジェスカイなどの多色コントロールが増え、それらに強い《血染めの月》《一つの指輪》をメインから採用できるボロスが勝ち上がったのではないでしょうか。特に《血染めの月》はアミュレットタイタンなどの土地コンボ、《ウルザの物語》が入った3色のティムールブリーチなど、様々な相手に強く、先週最も強い1枚だったかもしれません。 ジェスカイコントロール さて、まず紹介するのは既に名前も挙がったジェスカイコントロール。 モダンチャレンジ:2位 By MarcoBelacca95 ベースとなるのはプロツアー・モダンホライゾン3でハビエル・ドミンゲス選手がトップ8入賞を果たした、ピッチスペルを大量に採用した型。 既に3か月経過して未だにこの時のリストがベースなのですから、完成度の高さがわかりますね。2種類のインカーネーションに《否定の力》の合計11枚のピッチ呪文と《空の怒り》《電気放出》のエネルギー除去で盤面をコントロールし、《一つの指輪》でリソースを回復するというのがこのジェスカイコントロール。アドはンテージを取る手段は《一つの指輪》に頼り切っている……どころか他にドロースペルはほぼ入っていません。ジェスカイエネルギーコントロールの定番だった《語りの調律》すら0枚です。こうなると《一つの指輪》が引けない時が怖いのですが、それを解決する手段は土地にあります。そう、《記念碑的列石》です。ライブラリーの上から5枚を見て歴史的なカードを手札に加えられるので、《一つの指輪》を探しにいけるのです。ちなみに《火の怒りのタイタン、フレージ》や《水辺の学舎、水面院》も拾えます。《呪文嵌め》は今最も強力な打ち消しの1つかもしれません。ボロスエネルギーの強力なアクションは《色めき立つ猛竜》《ナカティルの最下層民、アジャニ》《ゴブリンの砲撃》と2マナに集中しており、特に後手で《呪文嵌め》を持っているかはかなり重要なのです。……2マナのアクションが強いと言いましたが、《魂の導き手》《オセロットの群れ》《敏捷なこそ泥、ラガバン》も十分ですがね。ボロスエネルギー、やはり強さがおかしい。とはいえ、《呪文嵌め》をケアして1マナを並べてきたら《空の怒り》がありますし、ジェスカイコントロールは《オセロットの群れ》を比較的苦にしないデッキではあります。除去、打ち消し、フィニッシャーのすべてが超一流のジェスカイコントロール。メタが完璧に固まった今こそ、手に取る時が来たかもしれません。 エレメンタル軍団、来る さて、お次も分類上はコントロールですが、ジェスカイから1色足しただけでだいぶ見た目の変わったデッキ。 4cエレメンタル モダンチャレンジ:2位 By RespectTheCat いわゆる4cオムナスというものですが、そこに更に《発現する浅瀬》が入り、エレメンタルシナジーが強くなっています。《発現する浅瀬》はエレメンタルが戦場に出るたびにライブラリ―トップを見て、それが土地なら場に、そうでなければ手札に加えられるすごいクリーチャー。《緻密》《孤独》を0マナで唱えると手札を消耗しますが、《発現する浅瀬》が戦場にいればカードを供給してくれるので、実質打ち放題(?)です。アドバンテージ獲得手段として《発現する浅瀬》は優秀なので、《一つの指輪》への依存度が気になる方は、こちらのリストもおすすめです。面白いのは《記憶への放逐》のメイン採用。 流行のエルドラージに対して完全回答なだけでなく、想起で唱えたエレメンタルの誘発型能力を打ち消すことで、そのまま戦場に残すことができます。手札は大量に使いますが、最速1ターン目に《孤独》が着地することも。 手札をかなり消耗するのでまずこのプレイはしませんが、《発現する浅瀬》が戦場にある時はやる場合もあります。 ジェスカイコントロールでも、手札から唱えた《火の怒りのタイタン、フレージ》に《記憶への放逐》を打って場に残す使い方ができますね。 かつてモダンを席巻していた《創造の座、オムナス》は、最近は鳴りを潜めていましたが、今の環境では強いのかもしれません。エネルギーに対して生き残ればまず勝つでしょう。《電気放出》で倒されてしまうのだけは残念ですが、それでもドローとライフゲインを兼ね備えるこのカードは、アグロからしてみれば悪夢そのものです。 先ほどのジェスカイと同様、11枚のピッチスペルが入っている4cエレメンタル。この2つのデッキを見ると、今のモダンがいかに早い環境か伝わってきます。0マナで対応するカードがないと、コントロールは最早成立しないと言っていいかもしれません。同じピッチスペル大量のデッキなら、個人的にはジェスカイより4cエレメンタルの方が好みかもしれません。やはり《一つの指輪》にリソース手段を頼り切ってしまうのは不安ですし、相手もプレイやサイドボードが簡単になってしまいます。ジェスカイと戦う際は多少コントロールされてしまっても、《一つの指輪》にさえ対処すれば段々と手札は枯渇していきます。そのため非常に攻めやすいですが、この4cエレメンタルに対しては除去を何枚残すか、除去を構えてターンを返すかなど、要所でプレイが難しくなります。それになんといっても《発現する浅瀬》はとても気持ちいいカードですからね。スタンダードの時にお世話になった方も多いのではないでしょうか?オムナスの強さを久しぶりに体感するにはぴったりのデッキかもしれませんね。 進化を続けるエルドラージ そして最後を飾るのは、何度か話題に出ていたエルドラージランプ。最近のエルドラージはなんとトロンランドを採用していません。 エルドラージランプ モダンチャレンジ:優勝 By Gerardo94 マナ加速できる土地は《エルドラージの寺院》と《ウギンの迷宮》のみなので、従来のエルドラージに比べて入っている呪文は全体的に軽め。昔あったエルドラージ系アグロとランプの中間といったところでしょうか。とはいえ、エルドラージならではの早いターンからのビッグアクションも健在です。《ウギンの迷宮》から1ターン目にタリスマンでマナ加速、2ターン目に4マナから《まき散らす菌糸生物》というブン回りが特に強力。同じムーブをするために《楽園の拡散》が採用されています。1ターン目に《楽園の拡散》から2ターン目の《エルドラージの寺院》で《まき散らす菌糸生物》が出せるのです。このデッキの良いところはなんと言っても、エルドラージ対策として機能していたサイドカードたちをほとんど無視できることです。《黒曜石の焦がし口》《減衰球》はほとんど効きません。《血染めの月》《海の先駆け》にも多少の耐性があります。普通のトロンと違って全体のマナ総量が低めなので、「《血染めの月》でマナがなくなって手札のカードを満足にプレイできない」事案がそこまで頻繁には発生しません。とはいえ、無色マナを出す手段が限られてしまうので、効かないわけではないのですが。《衝動のタリスマン》や《邪悪鳴らし》で出たトークンなどを有効活用する必要があります。《記憶への放逐》だけは本当に刺さってしまうのですが、それはもうエルドラージである以上仕方ないでしょう。同型において《記憶への放逐》以上のカードは存在しないので、このリストも青をタッチして採用してしまっているぐらいですからね。《エルドラージの寺院》《ウギンの迷宮》《衝動のタリスマン》《楽園の拡散》とこのデッキにはマナジャンプ手段が大量にあり、《邪悪鳴らし》で必要なカードにもアクセスでき、このエルドラージランプは非常に安定した動きができます。《三なる宝球》や《虚空の杯》など特定の相手に効くカードや、ただ土地だけを探す《探検の地図》も入っておらず、一貫性のある動きができるのも魅力の1つ。マナを伸ばして《まき散らす菌糸生物》《世界を壊すもの》で足止めして《一つの指輪》から最終的に《約束された終末、エムラクール》という流れは美しさすらあります。これまで抱いていたエルドラージへのイメージが大きく変わるかもしれませんね。