【週刊メタゲーム通信】王者イゼット大釜を脅かすディミーアネズミと赤単アグロ

【週刊メタゲーム通信】王者イゼット大釜を脅かすディミーアネズミと赤単アグロ

mtg Yuyan

こんにちは。

 

細川 侑也(@yuyan_mtg)です。

 

先週末はチャンピオンズカップファイナルのスペシャル予選に加え、マジックオンライン上で非常に競技性の高いイベント、スタンダードショーケース予選が行われました。

 

ショーケースチャレンジのトップ8に入賞したプレイヤーと、直前予選で5-0したプレイヤーだけが参加し、優勝者は参加者8人で行われるMOCS本戦に出場でき、同時にプロツアーの権利も獲得できます。

 

そのため、参加者たちは遊びなしの大本命デッキを持ち込んできます。このショーケース予選は現環境をそのまま反映していると言っても良いレベル!

 

というわけで今回はショーケース予選を中心に、最新メタゲームをお届けします!

 

 

 

イゼット大釜

 Standard Showcase Qualifier: 2位 By Lillia

MTGアリーナ用インポートデータ

スタンダードを語る上で欠かせないのがこのイゼット大釜。ローテーション後に大暴れし続け、トップ8に4人は当たり前、6人が入賞するなんて日もあるほど。

 

テーブルトップ・アリーナ・マジックオンラインとあらゆる環境で勝ちまくっており、当然今回のショーケース予選でも大本命中の大本命。トップ8には4人が進出しています。

 

デッキのコアパーツである《略奪するアオザメ》《逸失への恐怖》《迷える黒魔道士、ビビ》《アガサの魂の大釜》《冬夜の物語》《プロフトの映像記憶》は初期から変わっていません。

迷える黒魔道士、ビビ》《アガサの魂の大釜》によるコンボと《プロフトの映像記憶》による攻め、その両方を同時に繰り出し、相手に対応を迫っていく、コンボビートダウンです。

調整ポイントとなっているのはまず《光砕く者、テルサ》《蒸気核の学者》の枠です。


光砕く者、テルサ》は3/3速攻なので、《プロフトの映像記憶》から3ターン目に出した時の打点が特に魅力です。全体除去にも耐性があるので、対コントロールで優秀ですね。

一方の《蒸気核の学者》は2枚引いてから1枚捨てることで、リソースを稼げるのがまず優秀。そして自身が2/2警戒なので《プロフトの映像記憶》で強化した時に攻防で活躍してくれますし、《逸失への恐怖》で追加戦闘が発生した際に、警戒があるので他のアンタップしたクリーチャーと一緒に殴り続けることができます。

どちらも一長一短ですが、《光砕く者、テルサ》の方がやや優先されており、伝説のリスクもあるので3枚採用で《蒸気核の学者》1枚といったリストが多かったのが初期でしたが、現在ではその枚数はやや拮抗しており、この準優勝したリストでは2枚ずつの採用となっています。

 

イゼット大釜は基本的に殴るデッキなので《光砕く者、テルサ》の方がデッキと合っているのは確かですが、手札0枚の状況で《光砕く者、テルサ》をトップデッキした際は、ただ出して殴ることしかできません。

一方の《蒸気核の学者》は手札が0枚の時に引いたらとりあえず2ドローできますし、そこで引いたカードによっては手札を残せますし、当然《プロフトの映像記憶》も誘発します。

光砕く者、テルサ》VS《蒸気核の学者》はこれからも永遠の課題となりそうですが、案外この2枚ずつがちょうどよいバランスなのかもしれませんね。

 

そして《量子の謎かけ屋》はすっかりイゼット大釜の定番となりました。

手札が1枚以下の時にドローすると追加で1ドローが発生するスフィンクス。手札が枯れやすいこのデッキでは追加のドローは非常に嬉しく、《プロフトの映像記憶》のバリューも跳ね上がります。

 

それだけでなく、《量子の謎かけ屋》は調和との相性も抜群。ワープで《量子の謎かけ屋》を唱えて、自身をタップすることで《冬夜の物語》を墓地から調和で唱えられるのです。もちろんこの調和の際に手札が1枚以下なら追加のドローも発生し、一気にリソースが爆発します。

量子の謎かけ屋》が入ったおかげでイゼット大釜はリソース勝負もできるデッキになりました。特にサイド後は墓地対策で《迷える黒魔道士、ビビ》《アガサの魂の大釜》を潰される展開が多く、純粋な《プロフトの映像記憶》ビートになります。

その際はフェアなゲームをする必要があり、《量子の謎かけ屋》は更に活躍してくれるのです。サイド後に真価を発揮するカードですが、そもそもメインに入れても強力だったことが判明したため、最近では多くのデッキにメインから採用されています。

 

イゼット大釜は固定パーツ以外のチューニングを柔軟に行えるのも強みです。ドローも多くそれらを引き込めるため、カウンターを少し多めにすればコントロールに強くなり、除去を増やせばアグロ耐性が上がります。

 

スタンダードの王者はまだまだ玉座を譲りそうにはありません。

 

 

ディミーアネズミミッドレンジ

Standard Showcase Qualifier: 優勝 By Zompatanfo

MTGアリーナ用インポートデータ

そんなイゼット大釜ばかりのスタンダードショーケース予選を見事優勝したのはディミーアミッドレンジ!

『ダスクモーン:戦慄の館』で今の形が完成してからというもの、ずっとスタンダードで生き残り続けていたデッキが、イゼット大釜を下して見事優勝しました。

 

ディミーアミッドレンジはトップ8の人数こそイゼット大釜より少ないものの、不思議と優勝回数は多く、単純なトーナメント優勝数だけで見ればディミーアとイゼットは同じぐらいかもしれません。

 

そしてその注目のリストは、ディミーア・ネズミ・ミッドレンジと名付けられています。そう、このディミーアは通常のリストに比べてネズミ要素が多いのです。

 

まず2マナ域の定番だった《大洞窟のコウモリ》の枠に入っているのがネズミ、《群青の獣縛り》です。

パワーが2以上のクリーチャーにブロックされない能力で、《悪夢滅ぼし、魁渡》の忍術を達成しやすかったり、《永劫の好奇心》でカードを引く際に便利。攻撃面において優秀なのはもちろん、1/3警戒というスタッツで守りにも貢献してくれます。

クリーチャーやアーティファクトの能力を失わせるので、《アガサの魂の大釜》の起動を防いだり、戦場の《迷える黒魔道士、ビビ》の能力を失わせることも可能です。

大洞窟のコウモリ》は優秀な手札破壊兼クロックですが、環境の多くのデッキが除去を採用している状況では、ただ相手の手札を見るだけのカードになってしまいます。除去の薄いデッキやコンボデッキが台頭しているなら価値がありますが、イゼット大釜が中心のメタゲームでは除去が飛び交うことは必至。

それなら出してただ除去されるだけの《大洞窟のコウモリ》の意味は薄く、《群青の獣縛り》のように戦闘において優秀なカードを採用したのでしょう。

 

そしてもう1種のネズミが《下水王、駆け抜け侯》。墓地をけん制しながらネズミを追放し、どんどんクロックを増やしていきます。

冬夜の物語》や《迷える黒魔道士、ビビ》を追放していくことで相手のコンボを防ぎ、更にクロックも生み出す優秀なクリーチャーです。《永劫の好奇心》が4枚入ったディミーアでは、クリーチャーがとても重要です。除去で何も残らない《分派の説教者》ではなく、とりあえず出したターンに効果のある《下水王、駆け抜け侯》を優先するのも納得です。

このリストはかなりマナカーブが軽くなっています。厚くなりがちな3マナ域を僅か7枚におさえ、序盤からの攻めを徹底しています。1ターン目からテンポよく展開していくことで、《悪夢滅ぼし、魁渡》《永劫の好奇心》は強くなっていきます。

 

1マナ域が多いことから《始まりの町》を4枚採用しているのもポイント。ディミーアミッドレンジで《始まりの町》4枚のリストは今までに見たことがなかったので驚きましたが、このデッキのコンセプトを考えればその選択も納得です。

サイドボードにはネズミを活かせる《情け知らずのヴレン》も採用しており、このデッキはまさしくディミーアネズミ!

イゼット大釜に強いデッキとして注目されており、実績もそれを証明しています。デッキに迷っている方はぜひ試してみるべきですね。

 

赤単アグロ

チャンピオンズカップシーズン4ラウンド2スペシャル予選in吉祥 : 権利獲得 By Hitomi Masaaki

MTGアリーナ用インポートデータ

イゼット大釜キラーとして先週末に武勲をあげたのは、ディミーアミッドレンジだけではありません。

 

先週の土曜日の予選で権利を獲得し、その後日本で大流行したイゼット大釜をメタりメタった赤単、それがこちらです。

 

剃刀族の棘頭》はイゼット大釜キラーと呼ぶべきカード。対戦相手がカードを引くたびに1点喰らうので、《蒸気核の学者》や《光砕く者、テルサ》は出しにくく、《プロフトの映像記憶》《逸失への恐怖》も1点を受けることになります。

イゼット大釜にとって絶対に除去しなければならないクリーチャーで、序盤に他のクリーチャーに除去を使わされてから出てくる《剃刀族の棘頭》は死を意味します。

 

剃刀族の棘頭》の代わりに抜けた2マナ域はなんと《多様な鼠》ですが、考えてみれば《多様な鼠》で対象に取れるクリーチャーは最早《熾火心の挑戦者》と《魂石の聖域》しかありません。1ターン目の《心火の英雄》から《多様な鼠》の流れがなくなった今、このカードは不要と判断したのでしょう。トランプルをつける《巨怪の怒り》が禁止されたのも要因の1つですね。

焼き切る非行士》もあまり見ることのない珍しいクリーチャー。1マナ1/1威迫でダメージを通しやすく、ひとたび最高速度に達すれば二段攻撃と、1マナ域とは思えない性能です。

1ターン目に引いてよし、2枚目以降を中盤に引いてもそこそこの活躍をしてくれるため、ジェネリック《心火の英雄》と言ったところでしょうか。1マナ域は欲しいけど、弱い1マナ域はいらない。そんな悩みに応えてくれるカードです。

除去の選択も実に独特で、《噴出の稲妻》のキッカーを含めるとすべて4点以上の火力呪文になっています。ディミーアミッドレンジの《分派の説教者》はもちろん、《プロフトの映像記憶》で大きくなった《逸失への恐怖》《光砕く者、テルサ》など、3点では処理できない状況が多発することから、4点以上の除去が多く採用されているのでしょう。

火力を本体に打って勝利する展開はほとんどないため、クリーチャーを出して除去でブロッカーを退けてライフを削ることをまっすぐ目指しています。除去の選択も素晴らしいですね。

 

日曜日の日本の多くの大会ではこの赤単が活躍し、イゼット大釜を完全に駆逐しており、対イゼット大釜に対する回答として巷で話題沸騰中です。

 

剃刀族の棘頭》はドラゴン型の赤単にも採用されはじめ、いよいよイゼット大釜は攻略され始めたと言って良いでしょう。

イゼット大釜・ディミーアミッドレンジ・赤単アグロ。スタンダードの新たな三強がはっきりしたところで、今週はどのようなメタゲームになるのか。そして新たなデッキは現れるのか。

 

今週もスタンダードから目が離せません。

最新記事はこちら

他の記事を見る