こんにちは。
細川 侑也(@yuyan_mtg)です。
昨夜、スタンダードに大激震が走りました。
《コーリ鋼の短刀》
《アブエロの覚醒》
《巨怪の怒り》
《心火の英雄》
《豆の木をのぼれ》
《望み無き悪夢》
《この町は狭すぎる》
以上7枚がスタンダードで禁止となりました。
近年のスタンダードでは赤単アグロとイゼット果敢があまりにも強すぎました。
赤単アグロは『ブルームバロウ』産のハツカネズミたちが暴れ回るデッキで、《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》の3匹が、序盤から終盤まで常に強く、速やかに相手を倒し、かつリソースを稼ぐという、ビートダウンが持つべきすべてを兼ね備えた完璧な布陣でした。
そんな超パイオニア級の赤単と肩を並べる存在として君臨していたのがイゼット果敢。令和最強の装備品である《コーリ鋼の短刀》の登場により一気にスタンダードの頂点に君臨。1マナのキャントリップ呪文などで《コーリ鋼の短刀》を毎ターン誘発させ、《嵐追いの才能》のカワウソと一緒に速やかに相手のライフを削ります。
失ったリソースを回復する《食糧補充》、それを回収する《嵐追いの才能》2章と、こちらも長期戦に強いアグロデッキで、《迷える黒魔道士、ビビ》が加入してからはコンボデッキのような立ち回りも可能となりました。
これらの赤いデッキは圧倒的な支配率を誇り、またいずれのデッキも非常に速いことから、スタンダードの多くのカードを環境から締め出すこととなってしまいました。
《アブエロの覚醒》はアゾリウス全知のキーパーツ。
4ターンキルも可能な純粋なコンボデッキも今回の禁止改訂の影響を受けることとなりました。赤アグロとイゼット果敢の禁止によって環境は以前より遅くなることは確かで、全知が最速となる可能性があります。4ターン目にフルタップできない状況は、スタンダードでは好ましくないのでしょう。
様々なフォーマットやデッキで活躍した《豆の木をのぼれ》が、ついにモダンに続いてスタンダードでも禁止となりました。
マナ総量が5以上の呪文を唱えることで1ドローできる2マナのエンチャント。普通に使えば重い呪文にドローがついてくる並のカードですが、今のスタンダードにはコストが軽くなる5マナ以上の呪文が多すぎました。
《力線の束縛》はもちろん、各種大主の兆候にも1ドローがついてくる《豆の木をのぼれ》は、禁止改訂後のスタンダードを支配する恐れがあります。そしてその状況はおそらく『エルドレインの森』がローテーション落ちする時まで続くと危惧したのでしょう。
個人的にはゴルガリ切削やシミックテラーなど、マイナーな豆の木デッキたちが可哀想に思いましたが、まあやむなしと言ったところです。《ホーントウッドの大主》を禁止にするよりはマシという判断だったのかもしれません。
《望み無き悪夢》は昨年から急激に使われ出したカード。自分のパーマネントを戻す《養育するピクシー》や《孤立への恐怖》で何度も再利用するセルフバウンス系デッキで活躍しました。
《望み無き悪夢》はライフと手札を同時に刈り取り、《逃げ場なし》は除去。これらのカードを何度も使い回せるので、時にはビートダウン、またある時はコントロールになるなど、様々なゲームプランが取れるデッキでした。一時は赤単アグロを駆逐し、環境最強のデッキとなっていました。
しかし、天敵である《コーリ鋼の短刀》が出現してからはセルフバウンス系デッキはほぼ消滅し、唯一残ったのがコントロール要素の強いオルゾフピクシーでした。
禁止にするほど環境を支配したデッキではないものの、今回の禁止改訂で多くのデッキが消滅すると、必然的にセルフバウンス系デッキが最強になってしまいますので、未来を見据えた禁止ですね。
そして《この町は狭すぎる》。こちらもセルフバウンス系デッキの要で、特に《嵐追いの才能》とのコンボが強力でした。
相手の盤面に触りながら自分の《嵐追いの才能》を戻してカワウソを生み出し、レベルアップ時に《この町は狭すぎる》を回収。再び《嵐追いの才能》を戻すことで、何度も《この町は狭すぎる》を使いながらカワウソを増やすことができます。
疑似的なロックに加えてカワウソがどんどん沸いてくるこのコンボはスタンダードのほとんどのデッキを駆逐してしまう可能性があります。加えて《この町は狭すぎる》がスタンダードにある限り、戦場に出た時に何も影響を及ぼさないクリーチャーはすべて価値がなくなってしまいます。色々なカードに可能性を見出してもらうためにも、必要な禁止だったのでしょう。
さて、今回の禁止改訂で環境の多くのデッキは姿を消すこととなりました。その中で無傷で生き残っているデッキたちがあるので、簡単に紹介していきましょう。
ディミーアミッドレンジ
《遠眼鏡のセイレーン》から始まり、《大洞窟のコウモリ》による手札破壊、《フラッドピットの溺れさせ》による盤面干渉を経て、3ターン目には《悪夢滅ぼし、魁渡》で忍術。そして《永劫の好奇心》による大量ドローで勝利します。
これらの動きを、優秀な黒い除去と打ち消しでバックアップしていきます。
特に《悪夢滅ぼし、魁渡》と《永劫の好奇心》はこのディミーアミッドレンジのキーパーツ。素早いクロックとドローを兼ね備えたこの2枚は、様々なパワーカードが禁止になった新環境においてはとんでもないパワーカードです。これらを一緒に使えるディミーアミッドレンジは、最強のデッキである可能性が高い。
しかもこのディミーアミッドレンジは、スタンダードのローテーションを迎えた後もその大部分が残ります。
1マナ除去である《切り崩し》と《闇滑りの岸》以外は残るので、《悪夢滅ぼし、魁渡》《永劫の好奇心》の並びはローテーション後も健在です。
これからのスタンダード、長い付き合いとなること間違いなしです。
ジェスカイ眼魔
墓地に《忌まわしき眼魔》を落として《救いの手》で釣り上げるコンボを搭載したジェスカイ眼魔もまた、今回の禁止改訂の影響を受けなかったデッキ。
かつては赤アグロキラーとして人気を博していたジェスカイ眼魔ですが、イゼット果敢が《一時的封鎖》を意識して《洪水の大口へ》を3枚以上採用するのがデフォルトとなり、ビートダウン相手のプランである高速眼魔リアニメイトをナチュラルに対策されてしまったため、環境から去っていました。
ジェスカイ眼魔は単に《忌まわしき眼魔》をリアニメイトするだけのデッキではありません。《逸失への恐怖》《蒸気核の学者》《光砕く者、テルサ》は《忌まわしき眼魔》を墓地に送り込みつつ、カードを引ける便利なクリーチャーたち。そのドロー軍団と《プロフトの映像記憶》を組み合わせて高い打点を作り続けることができます。
むしろ眼魔はオマケで《プロフトの映像記憶》デッキと言われていたほど。《忌まわしき眼魔》を使ったデッキは墓地対策に弱いのが大きな欠点でしたが、ジェスカイ眼魔は《プロフトの映像記憶》と各種ドロークリーチャーによって墓地を追放されてもさほど痛くはありません。
意外と対策のしづらいデッキであるジェスカイ眼魔は再びスタンダードを脅かす存在となるでしょう。しかも《フェニックスのドミナント、ジョシュア》によって強化されたという噂もあります。
《忌まわしき眼魔》を再び使いたい方、その機会がやってきました。
イゼット大釜
イゼット果敢のために《迷える黒魔道士、ビビ》を購入して泣いているプレイヤーの皆様にオススメなのがこのイゼット大釜。
デッキの構造はジェスカイ眼魔と少し似ていて、《光砕く者、テルサ》や《逸失への恐怖》といったルータークリーチャーでデッキを回し、《プロフトの映像記憶》で巨大クリーチャーを作ったり、《略奪するアオザメ》を育てていきます。
大きく違うのは《忌まわしき眼魔》を吊り上げる代わりに、《アガサの魂の大釜》を使っている点です。
この《アガサの魂の大釜》で煮込むクリーチャーこそが《迷える黒魔道士、ビビ》。イゼット果敢では戦場で暴れていたビビは、イゼット大釜においては追放領域で真価を発揮します。
《アガサの魂の大釜》でビビを追放することにより、+1/+1カウンターが置かれている各クリーチャーは、自身のパワー分のマナを生み出すことができます。これで大量のマナを生み出して《冬夜の物語》を連打し、大量ドローの後に《プロフトの映像記憶》が誘発。クリーチャー1体を超強化し、更にそのクリーチャーでビビの能力を使い、再び大量のマナを作り、更にデッキを回し、最終的には《ヴォルダーレンの興奮探し》でフィニッシュというデッキ。
ジェスカイ眼魔と比べてコンボ要素が強く、初見でこのデッキの正体を見破ることは困難。いわゆるわからん殺しデッキですね。
《プロフトの映像記憶》《光砕く者、テルサ》《逸失への恐怖》の並びはやはり強力で、これだけでデッキを回転させる動きとビートダウンを兼ね備えており、コンボ一辺倒の脆さを解消しています。相手がアグロ展開をさばいている間に《アガサの魂の大釜》《迷える黒魔道士、ビビ》のコンボを仕込んでいき、2つの軸で攻められます。
とても回していて楽しいデッキなので、新環境の勉強がてら、触ってみてはいかがでしょうか。
ゴルガリ《陰湿な根》
墓地からクリーチャー・カードが離れるたびに植物を生成しつつ植物全体を強化していくエンチャント、《陰湿な根》。以前僕もパイオニアの《陰湿な根》デッキを紹介したことがありましたが、最近ではスタンダードでも活躍していました。
《陰湿な根》はどのフォーマットでも《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》とズッ友です。《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》のマイナスで墓地からクリーチャーをリアニメイトする際に《陰湿な根》が誘発するのはもちろん、《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》の常在型能力によって、《陰湿な根》から生まれる植物トークンが、出たターンにマナを生み出せるようになるからです。
この2枚が揃うと《陰湿な根》は爆発的な展開を作ります。たとえば《漁る軟泥》がいれば、自分の墓地のクリーチャーを追放すると植物が出て、その植物が《漁る軟泥》の起動マナを捻出するので、自分の墓地のクリーチャーの数だけ《漁る軟泥》を起動し続けることができ、その数だけ植物が出て強化されていきます。
《骨術師の達人》が加われば一気にフィニッシュまで到達します。墓地のクリーチャーが給餌によって戦場に戻れるようになるこのカード。給餌、つまり食物の生け贄か墓地の追放が必要となるわけですが、その際の墓地追放にも《陰湿な根》が反応するので、給餌+墓地からクリーチャーが帰ってくる際の、計2回《陰湿な根》が誘発してくれます。要するに1回墓地からクリーチャーが戻るごとに2マナが帰ってくるというわけですね。
どんな劣勢な場でも墓地が大量に肥えていれば、《骨術師の達人》1枚で一気に盤面をまくり返せますし、《陰湿な根》への依存度こそやや高いものの、決して無視できないデッキです。特に《陰湿な根》に直接触る手段のないディミーアミッドレンジに対しては相性が良く、ディミーアの猛攻に待ったをかけるデッキとなるかもしれません。