こんにちは。
細川 侑也(@yuyan_mtg)です。
今週は日々成熟しつつあるスタンダード環境から、有力デッキをご紹介!
赤単アグロ
スタンダードチャレンジ(4/13) : 優勝 By Latorretta

先週特に目覚ましい活躍を見せたのは赤単アグロでした。
前環境から圧倒的な強さを見せつけていたビートダウン。
《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》、パイオニアでも止まらないこの3種のハツカネズミたちを活用した赤いアグロデッキは、スタンダードに様々なバリエーションが存在していますが、その中でも2色目を入れていない純正の赤単が勝ち組となっていました。
デッキのベースは変わっていません。3種のハツカネズミに《雇われ爪》、そしてミラーマッチで最も強い《叫ぶ宿敵》もメインから4枚フル投入されています。
最後の1種は『タルキール:龍嵐録』からの新カード、《光砕く者、テルサ》です。
戦場に出た時にカードを2枚まで捨て、その枚数分ドロー。マナフラッドしている状況や、クリーチャーが欲しいのに手札に《巨怪の怒り》が溜まっている状態などで、手札をリフレッシュすることができます。
攻撃時に誘発する能力も強く、墓地にカードが7枚以上あれば、その内1枚をランダムに追放してプレイできます。手札を入れ替えながらリソースも稼げる素晴らしいカードなのです。
しかもそもそもこれらの能力がついている上で3マナ3/3速攻と及第点で、これからの赤単には間違いなく採用されていくカードとなるでしょう。
2種の3マナ域が採用されるようになったことで、赤単はより長期戦を戦えるようになりました。
《熾火心の挑戦者》《心火の英雄》は《岩面村》で強化でき、《多様な鼠》は4マナで新生と、軽いカードが中盤以降もしっかり強いのが赤アグロの強みでした。そこに《光砕く者、テルサ》が加わり、ただ単に除去をしているだけのデッキでは赤単に勝つのは事実上不可能となったと言って良いかもしれません。
《一時的封鎖》のような軽量除去に強くなったのもポイントと言えるでしょう。青黒のバウンス系デッキに対して、3マナ域が《逃げ場なし》されてしまうのはこれまでと変わりないですが、《不気味なガラクタ》は効きづらくなっています。
《光砕く者、テルサ》はサイドボード後も輝くカードです。《陽背骨のオオヤマネコ》を出すために4枚目の土地が欲しいことはよくありましたが、《探索するドルイド》なしでストレートに4枚目に辿り着くのは簡単ではありませんでした。
かといって《探索するドルイド》はそのターンをパスになってしまうアクションですし、2~3ターン目にプレイして《陽背骨のオオヤマネコ》がめくれてしまい、無駄となることも多々ありました。
《光砕く者、テルサ》ならば出して土地を探しにいけて、更に3/3速攻と、4枚目の土地を求めながら相手に圧力もかけられるのです。
ただでさえ強かった赤単は『タルキール:龍嵐録』で完成したと言って良いでしょう。新スタンダードは、この赤単を攻略できるかがカギとなります。
イゼット果敢
スタンダードチャレンジ(4/12) : 準優勝 By Junkmener

モダンでも暴れ回っている《コーリ鋼の短刀》。軽いカードが強い今のスタンダードでも恐ろしいスピードでモンクを生成しています。
1ターンに2回の呪文を唱えなければならない《コーリ鋼の短刀》を使うには、手札を減らさずに呪文を唱えることが重要。そのため、《選択》《手練》などキャントリップを使ってトークンを生成しています。
5枚見て好きなカードを2枚取れる《食糧補充》も《コーリ鋼の短刀》と相性の良いカード。ただ3マナと少し重いため、メインでは2枚採用にとどまっていますね。
そして《コーリ鋼の短刀》と相性の良いカードが《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》。《嵐追いの才能》から出るカワウソも果敢なので、《コーリ鋼の短刀》を誘発させながら巨大なサイズで攻撃できますし、《この町は狭すぎる》で《嵐追いの才能》を出し直すだけで《コーリ鋼の短刀》が誘発し、ループ後は毎ターンその2枚だけで完結してくれるのです。
《嵐追いの才能》は中盤以降に手札がなくなった場合でも《食糧補充》を回収できますし、《コーリ鋼の短刀》を絡めた高速展開で使っても良し、ロングゲームでも大活躍と、このデッキの核となるカードですね。
これまでのイゼット果敢は《稲妻波》や《噴出の稲妻》を採用して相手のライフを速やかに削る方向性でしたが、近頃流行っているタイプは、除去は《塔の点火》、キャントリップがたくさんに、《この町は狭すぎる》と、コントロール色の強いリストとなっています。
このリストの方が赤いアグロに対しては高い勝率が出るでしょう。《心火の英雄》《多様な鼠》の展開に対して《稲妻波》をプレイしている余裕はありませんからね。
《コーリ鋼の短刀》は攻め一辺倒のカードではありません。2体目のトークンを生成した時は、元々いたモンクは3/3になり、新しく出たモンクに装備品がついて2/2になります。3/3のモンクだけで殴り、2/2をブロッカーとして立たせるのも強力です。
特に《呪文貫き》《塔の点火》とインスタントがそこそこ入っているこのデッキでは、相手のターンに《コーリ鋼の短刀》を誘発させることも可能です。
《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》は攻めと守りどちらでも使えるカードなので、それを攻めるためだけに使うのはもったいないと考えており、その点でこのリストには光るものを感じています。
《精鋭射手団の目立ちたがり》《巨怪の怒り》はほぼ攻めるだけのカードですが、これは仕方ないでしょう。逆にこれらのカードがなければ攻めが弱くなりすぎてしまい、本来攻めて勝てるはずのマッチも落としてしまいます。
最低限のブン回り要素は残しつつもしっかりと様々なゲームプランを立てられる、とても素晴らしいデッキだと思います。
《コーリ鋼の短刀》を試してみたい方にはまずイゼット果敢がオススメです。
アゾリウス全知
スタンダードチャレンジ(4/14) : 準優勝 By Dazai

《アブエロの覚醒》で墓地から《全知》を吊り上げて勝利するアゾリウス全知。
アグロばかりの現スタンダード環境では珍しい純粋なコンボデッキで、基本《全知》以外の勝ち手段を持ちません。
前環境ではズアードメインへのアンチデッキとして活躍していましたが、実は『タルキール:龍嵐録』で強化を受けました。
まずは《マラング川の執政》。前兆側の3枚引いて1枚捨てる能力は、《全知》を落としながら《アブエロの覚醒》を引きにいけるまずまずのスペル。
本体側も決して弱くなく、6マナ6/7に2つバウンスのオマケつき。サイド後に《石の脳》で《全知》を抜かれると勝ち手段がなくなっていましたが、《マラング川の執政》によってコントロールして殴り勝ちが可能となりました。
この2点だけでは《マラング川の執政》は微妙に見えるかもしれませんね。実は《マラング川の執政》には更なるメリットがあります。
それを説明するためには、4枚採用の《乱動するドラゴンの嵐》について話しておく必要があります。戦場に出た時に2枚引いて1枚捨てるエンチャントで、《航路の作成》相当の能力。そして自分がドラゴンを戦場に出した時に、このカードを回収することができます。
つまり、《マラング川の執政》が戦場に出ると《乱動するドラゴンの嵐》を回収してもう1度使用できるのです。
これにより《全知》を貼ってからの勝ち手段である《アルケヴィオスへの侵攻》を減らせるようになりました。
以前までのこのデッキは《アルケヴィオスへの侵攻》が無限コンボの起点でした。ゲームに勝つためには《アルケヴィオスへの侵攻》を1枚必ず引かなければならないので、5マナのほぼ何もしないバトルを4枚採用させられていました。
しかし、《乱動するドラゴンの嵐》の登場で、起点が《アルケヴィオスへの侵攻》である必要がなくなりました。
《全知》が貼ってある状態で《乱動するドラゴンの嵐》と《マラング川の執政》が2枚揃うと、ライブラリーをすべて引ききることができるのです。
《マラング川の執政》は自身を戻すことはできませんが、他のカードであればバウンスできるので、《マラング川の執政》が2体いれば互いをバウンスしあい、好きなだけ《乱動するドラゴンの嵐》を唱えられるのです。これで2枚に減らした《アルケヴィオスへの侵攻》に辿り着けばゲームエンドです。
更に勝ち手段も『タルキール:龍嵐録』で進化しました。
これまでは《機織りの季節》ループから更に《ネットワーク呪詛》など、勝つために複数枚のサイドカードを必要としていましたが、《ジェスカイの啓示》だけでよくなりました。
《アルケヴィオスへの侵攻》を貼って《ジェスカイの啓示》をサーチし、《アルケヴィオスへの侵攻》を戻しながら相手に4点を与える。このシンプルな手順でゲームエンドです。
更にサイドボードには《堂々たる撤廃者》の代わりに《勝利の楽士》が投入されました。
対戦相手がこちらのターンに呪文を唱えられないという能力を持つ2マナクリーチャー2種。《勝利の楽士》のメリットは1/3と2点火力で焼かれないサイズであることと、2マナで3点のダメージソースであること、マナシンボルの薄さです。アゾリウス全知との戦いではクリーチャー除去は抜くため、継続して攻撃できるでしょう。2マナの3点クロックはかなり大きく、コントロール対決ならそのままゲームに勝ててしまうほどです。
一方、《堂々たる撤廃者》のメリットは起動型能力も止まる点です。《除霊用掃除機》や《漁る軟泥》などの墓地を追放する起動型能力が止まるので、自分のターンで《全知》をディスカードして《アブエロの覚醒》で釣り上げれば、墓地対策も効きません。
どちらが優れているかについては難しいところですが、環境のアゾリウス全知対策として《除霊用掃除機》がどれぐらい使われているかによると思います。
《除霊用掃除機》の代わりに、《安らかなる眠り》や青いデッキが《呪文貫き》などのみで全知対策をしているなら、《堂々たる撤廃者》より《勝利の楽士》の方が優れているでしょう。
どのデッキも《除霊用掃除機》を複数枚採用するようになったら、《堂々たる撤廃者》の出番ですね。
『タルキール:龍嵐録』でよりデッキが引き締まったアゾリウス全知、今注目のデッキです。