こんにちは。
細川 侑也(@yuyan_mtg)です。
いよいよ2週間後に迫った、モダンで行われるチャンピオンズカップファイナル。
そのメタゲームに大きな影響を与える大型大会、地域チャンピオンシップが、ヨーロッパとカナダで行われました。
今回は2つの地域チャンピオンシップの結果から、最新のモダン環境を分析していきます!
三強から二強へ
2つの地域チャンピオンシップで圧倒的に勝ち組だったのは、ボロスエネルギーと研磨ブリーチの2つ。事前に最大勢力と予想されていた3つの内、2つのデッキがトップ8にそれぞれ複数入賞し、しかも優勝を収めました。
仮想敵としてしっかり想定されていたにも関わらず優勝。これはボロスエネルギーと研磨ブリーチの自力の高さを証明したことに他なりません。
一方、三強の一角だったディミーア眼魔はトップ8に0……それどころかトップ16にも姿を見かけることはなく、先週の負け組となりました。
ティムールブリーチとボロスエネルギーの両方に負けただけでなく、新たに出てきたオルゾフブリンクにも相性が悪く、ディミーア眼魔は最前線から脱落したと言って良いでしょう。
その代わりに先週の活躍が目立ったのがエルドラージランプ。
トップ8にはヨーロッパに1人のみだったものの、ヨーロッパのトップ16ライン、更にプロツアー権利獲得ラインまで見てみると、研磨ブリーチと並んで最多突破を果たしています。
エルドラージランプは今回あまり意識されておらず、その結果大躍進でした。今週からは青いデッキは《記憶への放逐》4枚から始まることになりそうですが、その上でまだ生き残れるようなら、いよいよエルドラージは本物。エネルギー・ブリーチと並んで三強となるかもしれません。
カナダの地域チャンピオンシップではオルゾフブリンクやドメインカスケード、アミュレットに青単ベルチャーと、様々なデッキが活躍しており、エネルギーとブリーチが座る玉座を虎視眈々と狙っています。
トップメタを意識するだけでは決して勝てない。いろいろなデッキが牙を隠し持ち、そして鋭いのがモダンの特徴。千葉ではどのようなメタゲームが展開されるのか、今から楽しみですね。
ボロスエネルギー
カナダ地域チャンピオンシップ : By Simon Piché

カナダの地域チャンピオンシップを制したのはボロスエネルギーでした。
MOCSでは《鏡割りの寓話》を採用したリストが優勝しましたが、こちらは《歴戦の紅蓮術士》。
《鏡割りの寓話》は出すだけで相手に1対2交換を半ば強要させつつ手札を入れ替える、わかりやすい強カード。
一方の《歴戦の紅蓮術士》は、手札を入れ替える能力こそ一緒ですが、クリーチャーそのものは脅威ではないため、相手から除去を引き出すことはできません。その代わり、トークンを生成して横並びさせたり、自身を墓地から追放することでトークンを生み出せるので、《ゴブリンの砲撃》と相性が良いカードです。
更に手札が1枚や0枚の状態でも2ドローはできるので、後半にトップデッキした際にはリソースを稼ぐカードにもなってくれます。遅いターンでは明確に《鏡割りの寓話》より強く、特に消耗戦になりやすいミラーマッチでは重宝します。
除去は《岩への繋ぎ止め》ではなく、《電気放出》と《静牢》のエネルギー絡み除去。
以前の記事では、《色めき立つ猛竜》がいなくなったことで、エネルギーを稼ぐ理由が薄くなったため、逆にエネルギーに依存しない構成も出てきたとお話ししましたが、このリストはエネルギーを全力で活用します。
なんだかんだ《電気放出》はエネルギーさえ余っていれば1マナの万能除去で、《静牢》も同じくどんなカードも対処可能。《魂の導き手》が残りさえすればエネルギーには困らないので、除去がエネルギーに寄ると《魂の導き手》が非常に重要になります。
そんな事情を解決してくれるのが《イーオスのレインジャー長》です。これにより他のリストに比べて《魂の導き手》が出しやすくなっているので、納得のチューンです。研磨ブリーチにも強いですし、《イーオスのレインジャー長》は素晴らしいチョイスですね。
ボロスでは定番だった《血染めの月》が不採用だったり、《スレイベンの魔除け》がしっかりと2枚採用されているなど、メタゲームに合わせてしっかりと作りこまれています。
サイドボードも対エルドラージ用の《黒曜石の焦がし口》に、研磨ブリーチ対策の《石のような静寂》、《オアリムの詠唱》など、2色だけでも十分各デッキに対するサイドボードが揃っており、リストから死角のなさがうかがえます。
千葉でも数多くのエネルギーが生み出されては消費されていく。それは間違いないでしょう。
研磨ブリーチ
ヨーロッパ地域チャンピオンシップ : 優勝 By Alexander Rohan

プラハの地で優勝を収めたのは研磨ブリーチ。カナダでは白を加えた4色の研磨ブリーチがトップ8に2人残りましたが、こちらは純正のティムールカラーのブリーチです。
《邪悪な熱気》を1枚まで減らし、相手への干渉手段を様々なカードに代えた独特な構成です。
《呪文嵌め》はミラーマッチやディミーア眼魔に強く、《白鳥の歌》もコンボデッキ全般に強く、全体的に同型を意識していると言えます。
サイドボードと合わせて合計で3枚入っている《アノールの焔》は、ウィザードが8枚入っているティムールブリーチと相性の良い1枚。特に《知りたがりの学徒、タミヨウ》は相性抜群で、《アノールの焔》で5点と2ドローしつつ、即変身と美しい流れ。
サイド後は《ドラニスの判事》《減衰球》などを対処しながらカードを引けるので、サイドボードに2枚採用されています。
《アノールの焔》は今後ブリーチのサイドボードに増えそうなので、ブリーチ対策の際にはクリーチャーかアーティファクト以外を採用したいところですね。《石のような静寂》の枚数が増えそうです。
4色であれば《損耗+摩耗》が使えたり、メインでも《ポータブル・ホール》があるなど、相手の対策カードに触りやすいのですが、ティムールカラーにも大きな利点があります。
それは《変容する森林》を使える点です。
以前までは《一つの指輪》が入った上でマナソースが25枚ほどだったこのティムールブリーチは、禁止改訂で《一つの指輪》を失い、2種のモックスを合わせて26枚のマナソースになりました。どう考えても以前のブリーチよりもマナフラッドしやすくなっています。
そこでこの《変容する森林》です。昂揚することで墓地のパーマネントに変容できるので、《湖に潜む者、エムリー》や《研磨基地》で《死の国からの脱出》を墓地に落とし、《変容する森林》でコピーすることが可能です。
4色は相手への干渉手段が豊富で、3色では《変容する森林》が使える。どちらにもメリットがあり、一概に一方が優れているとは言えません。
3色と4色、これから活躍していくのは果たしてどちらになるのでしょうか。ブリーチが流行るのならば、ミラーマッチでより多くのキラーカードを使えて、かつ増えるであろう対策カードを割れる4色が優れていると、個人的には思います。
ただ、《変容する森林》を使えるメリットは大きく、マナベースの安定も長丁場では重要です。どちらを使うべきか迷ってしまいますね。
エルドラージランプ
ヨーロッパ地域チャンピオンシップ : 2位 By FerMTG

惜しくも準優勝だったものの、世界選手権の権利を勝ち取るに至ったエルドラージランプ。
モダンでは掟破りの2マナランド《ウギンの迷宮》《エルドラージの寺院》によって2ターン目に《まき散らす菌糸生物》を唱えて更にマナ加速。
3ターン目には更なる《まき散らす菌糸生物》を今度はキッカーで唱え、相手の土地を割りながら更なるマナ加速をしたり、《世界を壊すもの》や《大いなる創造者、カーン》に繋げてゲームに勝利するデッキです。
《一つの指輪》を失って大打撃を受けたのは間違いありませんが、《コジレックの命令》というエルドラージ専用の超強力なスペルはまだ健在。適当に大量のマナから《コジレックの命令》を打ち、落とし子を生成しながら《約束された終末、エムラクール》を探して次のターンに唱えるだけで勝利できるすごいインスタントです。
相手の墓地に触れたり、クリーチャーを除去したりなど、《コジレックの命令》はすべてのモードが超強力。さすが『モダンホライゾン3』産といったところでしょうか。
《約束された終末、エムラクール》はこのデッキのフィニッシャー。《邪悪鳴らし》で墓地が肥え、《コジレックの命令》がインスタントと同族で2カウントとなるので、8~9マナほどで唱えることができます。更に《エルドラージの寺院》《ウギンの迷宮》が並べば1枚の土地から2マナが出るので、驚くほど早く戦場に出てきます。
序盤は《ウギンの迷宮》で刻印し、マナが揃ったら回収して唱えます。そのため、3枚と多めに採用されています。
そしてこのリストの最大の特徴はなんといっても《のたうつ蛹》でしょう!『モダンホライゾン3』リミテッドではコモンなのにレア級と言われ、パウパーでも大活躍するカードですが、ついにモダンでも採用されました。
落とし子を2つ生成するのでマナ加速になるだけでなく、その落とし子を生け贄にすれば4/5になるので、エネルギーに対しても強力なブロッカーになってくれます。到達もあるので《魂の導き手》で飛ばれても心配ありません。同じ4マナの《まき散らす菌糸生物》は《火の怒りのタイタン、フレージ》で焼かれたり、飛行に対して無力なことを考えると、《のたうつ蛹》の強さがわかりますね。
《のたうつ蛹》によってボロスエネルギー耐性は確実に上がっていることでしょう。実際、今大会ではボロスエネルギーに5回当たり、4回勝利しています。
このエルドラージランプは2色にまとめられていますが、ネックとなるのが《記憶への放逐》を使えない点。そこでミラーマッチ最強の《記憶への放逐》の代わりに採用しているのが《石の雨》です。
《楽園の拡散》と《ウギンの迷宮》があるので2ターン目から《石の雨》を打てるのがエルドラージランプの魅力。ティムールエルドラージも青マナを安定して供給できるわけではないので、1枚割ってしまえば《記憶への放逐》をそのまま腐らせられる場合も。
《記憶への放逐》が強力であることに異論はありませんが、《石の雨》にも利点があります。2色にまとめて《のたうつ蛹》を採用してボロスエネルギーに強くなっているのも大きく、これまでエルドラージランプと言えばティムール一択でしたが、今はグルールとティムール、どちらも素晴らしいデッキだと思うようになりました。
特にこのグルール型はすごく理にかなっており、今後流行のリストになっていくかもしれません。