こんにちは。
細川 侑也(@yuyan_mtg)です。
ついに週末はプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』がラスベガスにて行われます。
プロツアーのフォーマットはスタンダードとドラフト!ということで本日もメタゲーム通信をお届けしていきます。
今回はマジックオンライン上で行われた地域CS予選の結果をご紹介!スイスラウンド9回戦+決勝ラウンドと非常に長丁場となった本大会はどのような結果となったのでしょうか。
Standard RC Super Qualifier
優勝:イゼットビビ
2位:アゾリウスコントロール
3位:イゼットビビ
4位:アゾリウス全知
5位:ディミーアミッドレンジ
6位:赤単アグロ
7位:赤単アグロ
8位:ディミーアミッドレンジ
イゼットビビ
『ファイナルファンタジー』で最も注目されているカードと言えば、それはもちろん《迷える黒魔道士、ビビ》でしょう。
3マナ0/3で出た時の能力こそないものの、非クリーチャー呪文を唱えるたびに+1/+1カウンターを乗せながら相手にダメージを与える、果敢と非常に相性の良いカード。
しかも自分のターンに毎回、ビビのパワー分のマナを出すことができます。こういったマナは大体が無色なのですが、ビビの場合は青か赤。キャントリップを打ってビビを大きくして青マナを大量に出し、そこからスペルを重ね、ビビを育ててそのままフィニッシュまで持っていけます。
このビビを採用したイゼット果敢が1位・3位と最上位に2人となり、このカードの恐ろしさを誰もが知ることとなりました。
デッキの構造自体はこれまでのイゼット果敢と大差ありませんが、特筆すべきは《僧院の速槍》が抜けたことでしょうか。クリーチャーは《ドレイクの孵卵者》《稲妻罠の教練者》《迷える黒魔道士、ビビ》の3種となっています。
《稲妻罠の教練者》はこれまでも少し採用されていたカード。ライブラリーの上4枚からカードを探せるので、《食糧補充》《コーリ鋼の短刀》などにアクセスしやすく便利です。《迷える黒魔道士、ビビ》のおかげでマナが大量に出るようになったので、マナの注ぎ先として《稲妻罠の教練者》は優秀です。マナの使い先であるドロースペルを探せる他、《稲妻罠の教練者》を新生しても良いですからね。
ビビによって《嵐追いの才能》レベルアップが容易となり、採用されるようになったのが《この町は狭すぎる》。2マナで《この町は狭すぎる》を打ち、《嵐追いの才能》を拾い、キャストしてレベルアップで《この町は狭すぎる》というマナのかかる無限ループは、以前までのマナがカツカツのイゼット果敢ではあまり採用されていませんでしたが、ビビが入るとなると話は別です。
ビビが加入したことでイゼット果敢は《一時的封鎖》を克服したと言えます。これまでは《僧院の速槍》《嵐追いの才能》《コーリ鋼の短刀》と攻め手がすべて《一時的封鎖》で対処されていたため、《洪水の大口へ》でバウンスする必要がありました。
しかし、《一時的封鎖》の効かないビビにより状況は一変。最も強力な攻め札に対処できないカードになってしまいました。
かといって《一時的封鎖》を抜けるかというとそうではないのが難しいところ。《コーリ鋼の短刀》《嵐追いの才能》自体にはしっかり触りたいので、《一時的封鎖》は必要です。ビビを倒すために単体除去に寄せてしまうと、今度は《コーリ鋼の短刀》が重くなってしまうのです。
コントロールは《一時的封鎖》の信頼性が下がったことでイゼット果敢を止めることが今まで以上に困難となりました。
《古代魔法「アルテマ」》は《コーリ鋼の短刀》《迷える黒魔道士、ビビ》をまとめて吹き飛ばせるため、採用率は上がってくるかもしれません……が5マナと重く《呪文貫き》の餌食になりやすい他、《嵐追いの才能》に無力なのも気になりますね。
ビビがイゼット果敢に入ったことでいよいよこのデッキは本当に最強になったのではないでしょうか。そう思わざるを得ないほど、イゼットビビは恐ろしいデッキです。
ディミーアミッドレンジ
一方、《迷える黒魔道士、ビビ》が入ったことで状況が好転するデッキも存在しています。それがディミーアミッドレンジをはじめとした黒いデッキたちです。
黒いデッキにはメインから《喉首狙い》などを採用しており、ビビの対処には困りません。3マナで除去耐性のないクリーチャーは、黒いミッドレンジにとっては的なのです。
今回もトップ8にディミーアミッドレンジは2人入賞しており、立ち位置の良さを証明しています。
とはいえ、ディミーアが《コーリ鋼の短刀》を苦手としているのは相変わらず。《群青の獣縛り》はそんな《コーリ鋼の短刀》を意識したカードです。
攻撃するたびにクリーチャーかアーティファクトかプレインズウォーカー1体を2/2のクリーチャーに変える能力を持つ《群青の獣縛り》。《コーリ鋼の短刀》をクリーチャー化して除去することができるのです。《切り崩し》が確実に機能しますし、《群青の獣縛り》はディミーアミッドレンジならぜひ採用したい1枚ですね。
新カードとしては《暗黒騎士、セシル》が1枚採用されています。序盤からクリーチャーを展開して除去を挟みつつ《永劫の好奇心》に繋げたいデッキなので、強い1マナ域は大歓迎ですね。変身後のライフゲインもしみますし、いぶし銀の1枚と言えるでしょう。
3マナ域は《分派の説教者》と《カルシの帰還者》がセパレートされています。ディミーアと言えば《分派の説教者》は不動だとばかり思っていたので少し意外でした。《分派の説教者》がドローとトークン生成でどんな相手にも一定のパフォーマンスを見せる一方、自身が絆魂を持ち、それを他のクリーチャーに付与できる《カルシの帰還者》は赤に特化したカードと言えますね。
ディミーアミッドレンジはアゾリウスコントロールやアゾリウス全知など、赤を意識した青白系のデッキに対して高い勝率を誇るデッキ。反面、《コーリ鋼の短刀》擁するデッキ、つまりイゼット果敢に少し不利という立ち位置ではあるのですが、仮にイゼット果敢に対して五分以上になるのだとしたら、メタゲーム上で不利な相手はほとんどいなくなります。
今週末の台風の目となるのでしょうか?注目していきたいですね。
赤単アグロ
最後を飾るのは赤単アグロ。
最近では《コーリ鋼の短刀》《迷える黒魔道士、ビビ》とイゼット果敢のとんでもないカードたちの前に少し影が薄くなっていますが、《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》と序盤・中盤・後半いつでも強いハツカネズミたちを使った、スタンダードでは存在してはならないレベルの赤アグロです。
現にスタンダードとほぼ同じカードを使った赤アグロがパイオニアでも暴れており、世が世ならスタンダードで禁止されていたのではないかと個人的には思います。
さて、そんな赤単アグロがこの大会では大活躍。トップ8に2人入賞だけでなく、トップ16まで見てみると9位、10位、11位、13位にも赤単が入っており、圧倒的パフォーマンスを見せています。
今回は赤単の名手、sandydogmtg選手のリストをピックアップしています。
赤単の魅力はなんといってもハツカネズミ軍団たちによる圧倒的なカードパワー。《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》《多様な鼠》は1~2ターン目からゲーム後半までいつでも活躍する凄まじいカードです。
《熾火心の挑戦者》は序盤にはただのクロック、中盤以降はリソースを稼いでくれまし、《多様な鼠》は新生で除去耐性があり、生き残ればそれだけで勝ててしまうカード。
そしてそれらのクリーチャーを強化する《岩面村》もあり、マナフラッドに対してかなり強いアグロとなっています。
最近はイゼット果敢を意識してメインから《魔道士封じのトカゲ》が採用されています。イゼット果敢と赤単の戦いはかなり先手ゲーになりがちなのですが、それはあくまで《魔道士封じのトカゲ》がなかった場合の話です。
《魔道士封じのトカゲ》を引けば、仮に《洪水の大口へ》で一時的に対処されたとしても唱え直してダメージを稼げるので、赤単は後手番でもイゼット果敢に勝利することができます。
赤単は新カードの入る余地はなく、完成されたデッキですね。ビビに意識が寄って単体除去が増えることは赤単としては悪くありません。特に白いデッキがビビに全く効果のない《領事の権限》を抜き始めているので、赤単としては願ったりかなったり。
《一時的封鎖》が《古代魔法「アルテマ」》になろうものならこれ以上望ましいことはないでしょう。重い全体除去は速攻の多い赤単にはほとんど無力ですからね。
歴代最強の赤単アグロ。にもかかわらずイゼット果敢というデッキの存在で、そこまで強烈にメタられているわけではない不思議なこの状況。
今週末は赤単旋風が巻き起こってもなんら不思議ではありません。