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パイオニアとモダンで禁止カードがそれぞれ2枚!禁止改訂後の環境を予想!

Modern Pioneer

2024.08.27

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 本日深夜に禁止改訂が実施されました!パイオニアで《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》《傲慢な血王、ソリン》! モダンで《有翼の叡智、ナドゥ》《悲嘆》! レガシーで《悲嘆》! ヴィンテージで《ウルザの物語》《苛立たしいガラクタ》! 今回は、パイオニアとモダンの禁止改訂後の環境予想をしていきたいと思います! パイオニア 《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》と《傲慢な血王、ソリン》の禁止により、アマリアコンボとラクドス吸血鬼は消滅しました。《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》は最速3ターンキルの高速コンボだっただけでなく、アマリアのパワーが20になるのに対応してアマリアのパワーを21以上にしたり、アマリアに破壊不能を付与することで、強制的な引き分けを起こさせることができ、第4ゲームや第5ゲームに突入する場合もあり、トーナメントの進行に影響が出ていました。そしてラクドス吸血鬼。《傲慢な血王、ソリン》から《血管切り裂き魔》を高速召喚するギミックを搭載したラクドスミッドレンジの進化系とも呼ぶデッキですが、こちらは単純に強すぎるがゆえの禁止です。プロツアーを制したラクドス吸血鬼は、そのまま他のすべてのデッキを駆逐し続け、アマリアと共にパイオニア環境の二強として君臨し、消えていくこととなりました。さて、まずこの2つが消えて最も喜ぶのはイゼットフェニックス。 他フォーマットでは禁止されている《宝船の巡航》を使えるデッキであり、攻守に渡って優れ、安定感も抜群。無限ライフされるだけで勝てなくなってしまい、《集合した中隊》や《戦列への復帰》で単体除去の上からコンボを決めてくる《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》、そして《血管切り裂き魔》が癌のラクドス吸血鬼。これらの二大巨頭に少し劣っており、これまではトップメタから陥落していました。しかし、その2つはもう存在しません!そうなればイゼットフェニックス天下間違いなし!そして忘れてはならないのが、ラクドス吸血鬼流行前はパイオニアの顔の1つだったラクドスミッドレンジ。手札破壊と除去を連打して《鏡割りの寓話》で手札を整えつつ圧力をかけ、各種カードで1対1交換を取った後に《勢団の銀行破り》でリソースを回復したり、土地で攻撃するミッドレンジです。必殺技のないラクドス吸血鬼という烙印を押されてしまいましたが、その必殺技は強すぎて禁止に。そうなれば再びラクドスミッドレンジが戻ってくるのは想像に易い。ただ、ラクドスミッドレンジはイゼットフェニックスに弱かったデッキでもあります。イゼットフェニックスを持ち込むプレイヤーが増えるのは明らかなので、そこをいかに意識できるかが鍵となるでしょう。《墓地の侵入者》や《真っ白》程度では止められないイゼットフェニックスですが、果たしてラクドスミッドレンジはそれを止めるデッキとなるのか。はたまた、アマリアと吸血鬼に抑え込まれていた他のデッキが新たにメタゲームを支配するのか。久しぶりに新しくなったパイオニア環境から目が離せませんね。 モダン 《有翼の叡智、ナドゥ》と《悲嘆》が禁止になりました。 《有翼の叡智、ナドゥ》は半ば誰もが諦めていたと思います。禁止になって当然で、なぜこの期間放置されていたのか疑問になるレベルでした。《手甲》との2枚コンボであり、そして《手甲》は《ウルザの物語》から探せるので、実質土地と《有翼の叡智、ナドゥ》の2枚コンボ。それもかかるマナは0+3の合計3マナ。3+4で7マナかかる双子コンボが禁止されているフォーマットでこれが許されるはずがありません。しかもコンボを妨害しようと《有翼の叡智、ナドゥ》を除去したらリソースを取られる始末。モダンを遊んだ誰もが思ったでしょう。バントナドゥはやばすぎると。そしてそれは結果として現れており、『モダンホライゾン3』発売以降の大型トーナメントのほとんどをバントナドゥは優勝し、トップ8に多数入賞しています。更に《悲嘆》が禁止になりました。こちらは『モダンホライゾン2』の問題児。《激情》禁止の要因となったラクドス想起の二大看板の1つで、《激情》は《悲嘆》の身代わりになったとも言われていましたが、後追いする形で禁止になりました。こう考えるとラクドス想起がプロツアーを制するのもむべなるかな、と言ったところですね。2枚の禁止カードを主軸に据えていたのですから。エスパー御霊や黒単ネクロ、リビングエンドに影響が出ました。どちらのデッキも致命的なダメージを受けており、デッキパワーは各段に下がることでしょう。エスパー御霊は《偉大なる統一者、アトラクサ》を《御霊の復讐》で吊り上げて《儚い存在》を打って場に定着させるデッキ。この《儚い存在》の使い道として《悲嘆》は最適でした。打ち消しや序盤の攻防でも《悲嘆》は必須で、《偉大なる統一者、アトラクサ》解決後のダメ押しにも活躍しました。黒単ネクロは《ネクロドミナンス》で大量のカードを引くデッキ。ドローするデッキと《悲嘆》の相性は抜群でした。どれだけ手札を消耗しても、《ネクロドミナンス》と《一つの指輪》で取り返せますからね。《悲嘆》+《マラキールの再誕》の「スキャムコンボ」で手札を奪って《ネクロドミナンス》or《一つの指輪》のメイン勝ち手段がなくなってしまいました。バントナドゥや黒単ネクロ、エスパー御霊にリビングエンドといったモダンの強デッキたちが消えて一番喜んでいるのは…それはもうエネルギーでしょう! 《魂の導き手》《オセロットの群れ》《色めき立つ猛竜》《ナカティルの報復者、アジャニ》と『モダンホライゾン3』のカードをふんだんに取り入れたボロス(+α)のアグロデッキです。バントナドゥ、黒単ネクロ、エネルギーの『モダンホライゾン3』産の三強のうち、ナドゥは消滅、ネクロも大幅な弱体化を余儀なくされました。そうなればエネルギー天下となるのは目に見えています。元々エネルギーはバントナドゥを苦手としており、逆にそれ以外にはほぼ強い、夢のようなデッキ。同型で強い《オークの弓使い》を採用したマルドゥ、《マネドリ》《イーオスのレインジャー長》《記憶への放逐》で相手の呪文へ干渉できるジェスカイなど、その強さゆえにバリエーションも豊か。どの色のエネルギーが勝つのか?次の環境、エネルギーが活躍するのは間違いないでしょう!もう1つ忘れてはならないのがルビーストーム。 こちらも『モダンホライゾン3』で登場した《モンスーンの魔道士、ラル》と《ルビーの大メダル》によって生まれたデッキ。最速2ターンキルもできる高速コンボ。(僕が書いた解説記事がありますので興味がある方はこちら)ストームはエネルギーに強いデッキなので、エネルギーが活躍するのであればストームも上がってくること間違いなし!《悲嘆》が消えたのもストームにとっては大きいですね。汎用性の高い手札破壊が消えたのは、ストームに限らず、コンボデッキ全般にとって喜ばしいことです。新しいモダン環境はエネルギーとルビーストームから始まることでしょう!もちろん、影響を受けなかったデッキは他にもたくさん!ナドゥに3キルされていたデッキたちの逆襲が始まります!

【今週のピックアップデッキ】ゴルガリ上陸/白単ミッドレンジ/変容全知

Modern Pioneer Standard

2024.08.22

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 ゴルガリ上陸(スタンダード) スタンダードリーグ:5-0 By Squirtle19 現スタンダード環境におけるコンボデッキといえば、《亭主の才能》と《裏切りの棘、ヴラスカ》の即死コンボを取り入れたゴルガリミッドレンジ。奇しくもそれと同じカラー、かつコンボ要素を持つミッドレンジが、このゴルガリ上陸です。そのキーとなるのは《玉虫色の蔦打ち》。上陸するたびに対戦相手にダメージを与え、新生を持つこのカード。当然相性が良いのは追加で土地を置く手段なのですが、それにうってつけの1枚がスタンダードにはあります。《自由放浪団の見張り》です。悪事を働くたびにライブラリーの上5枚から土地を置けるこのカードは、《玉虫色の蔦打ち》と相性抜群!《玉虫色の蔦打ち》で悪事を働いて《自由放浪団の見張り》が誘発してダメージ、相手ターンでも除去を撃てば悪事を働いたことになるので、そこから土地を伸ばして更にダメージを稼げます。土地が伸びれば《玉虫色の蔦打ち》を新生していくのも容易く、バリューランドである《噴水港》や《眠らずの小屋》を動かしながら、どんどん相手にプレッシャーを与えていきます。コンボパーツである《玉虫色の蔦打ち》と《自由放浪団の見張り》がどちらもビートダウン向けのカードなため、このデッキはちぐはぐな動きをせずに、安定して相手を攻めていくことができるデッキです。コンボが入ったビートダウンが好きな方にはぴったりかもしれません。 白単ミッドレンジ(パイオニア) パイオニアチャレンジ:6位 By Hemsley 『ブルームバロウ』加入直後のパイオニアチャレンジを優勝して一躍話題となった白単ミッドレンジ。リストが徐々に調整されていき、しっかりとパイオニアのメタの一角になりました。デッキの構造はコントロールに近いです。《冥途灯りの行進》と《失せろ》などの単体除去、《残骸の漂着》と《太陽降下》による全体除去、これらで盤面を整えながら、《世話人の才能》でリソースを取り、ゲームに勝利します。《世話人の才能》と相性の良い《婚礼の発表》は攻めと守りを同時に行える優れたカード。《世話人の才能》のレベル3と合わせて、最終的にはトークンが巨大なサイズになって相手を襲います。《空を放浪するもの、ヨーリオン》が使えるのも魅力の1つ。これで《世話人の才能》や《婚礼の発表》、《人参ケーキ》などを使い回せるので、リソース切れがなかなかおきません。これは《思考囲い》を打ってくるデッキの多いパイオニアではとても重要なことです。《跳ねる春、ベーザ》も白系コントロールが『ブルームバロウ』で得た貴重な戦力。出た時にライフを得てクリーチャーを生成して本体は4/5と頼れるボディ。以前にも紹介したカードですが、さすがにパイオニア級ですね。《廃墟の地》《解体爆破場》の土地破壊に加えて、もはや定番の《噴水港》と、マナフラッド対策もばっちり。単色デッキであることも考えると、かなり安定した動きができますね。アグロやミッドレンジにはめっぽう強い白単ミッドレンジ、ぜひお試しください。 変容全知(モダン) モダンショーケースチャレンジ:6位 By aspiringspike 新しいデッキを作らせたら右に出るものはいない。そんな生粋のデッキビルダー、aspiringspikeの最新作がこちら。クリーチャーは《歴戦の紅蓮術士》に《グリセルブランド》。プレインズウォーカーは《大いなる創造者、カーン》。そして《一つの指輪》に…《全知》?一体このデッキはなんなんだ。わけわからん。そう思った方は、土地をよくご覧ください。《変容する森林》。これこそが、この謎デッキの主役です。各種カードで墓地を肥やしながらキーカードを集め、昂揚を達成。《変容する森林》で《全知》になります。後は《大いなる創造者、カーン》や《グリセルブランド》を0マナで唱えて勝利するというシンプルなデッキ。昂揚のために墓地を肥やしつつ、キーカードである《変容する森林》を集めるための手段として、《邪悪鳴らし》《蓄え放題》《希望の種子》はぴったり。《変容する森林》が既にある場合は、《全知》着地後に欲しい《大いなる創造者、カーン》なども探せます。《ウルヴェンワルド横断》も《変容する森林》をサーチできるカード。昂揚を満たせるデッキなら強力ですね。昂揚は《邪悪鳴らし》などで偶発的にも達成できますが、より確実なのは自分で選んで4種を墓地に送ること。《歴戦の紅蓮術士》と《鏡割りの寓話》はそのために入っています。見た目は意味不明ですが、回してみるとその安定感に驚くことでしょう。普通のコンボに飽きた方は、今週は《変容する森林》で決まり!

【今週のピックアップデッキ】セレズニアアーティファクト/5色人間/青単ウルザ

Modern Pioneer Standard ピックアップ

2024.08.16

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 今週のピックアップデッキでは、ちょっと珍しいデッキを、軽い解説を交えて紹介していきます。 セレズニアアーティファクト(スタンダード) スタンダードリーグ:5-0 By _Cygnus スタンダードには、様々なカラーのアーティファクト・アグロが存在しています。強力なアタッカーを生み出しつつ、除去された時に発見も行う《生命ある象形》は青いアーティファクトアグロの定番で、シミックアグロやアゾリウスアグロなどが結果を残しています。そして今回、そのアーティファクトアグロにセレズニアが加わりました!白の利点は言わずもがなの、手がかりを生み出す《ひよっこ捜査員》。そして手がかりなどをタップして成長する《内なる空の管理人》に、巨大なサイズの《威厳あるバニコーン》などなど。アーティファクトアグロの定番カラー。一方の緑はというと、地図を生み出せる《名もなき都市の歩哨》に《勇敢な旅人、ケラン》の出来事モード、そして何より1マナ域としては申し分ない《生歯の子ワーム》を使えます。ライフゲインと《名もなき都市の歩哨》によって、セレズニアはアグロ同型においては最も強い形と言えます。白緑は不器用なカラー…というのは過去の話。除去は《失せろ》、回避性能をつける《鋼の熾天使》もいるため、一筋縄では攻略できません。特に《威厳あるバニコーン》と《鋼の熾天使》の組み合わせは強力で、アーティファクトアグロの今の定番の組み合わせとなっています。突然凄まじい打点で殴る。そんな爽快感を味わいたい方にオススメ! 5色人間(パイオニア) パイオニアリーグ:5-0 By Econ_Neal マジック界でも有数の強力部族、人間。かつてはモダンのプロツアーを優勝するほどの力を持ち、その多くのカードがパイオニアで使用可能です。パイオニアにおける不安要素はマナベースでしたが、《魂の洞窟》が使用可能になってからは、5色土地が12枚体制になり、いよいよ本格的に人間が暴れられるようになりました。《スレイベンの守護者、サリア》《サリアの副官》《カマキリの乗り手》などお馴染みの人間たちに、白系アグロでは欠かせない《輝かしい聖戦士、エーデリン》と、精鋭が揃っています。そしてなんといっても《銅纏いの先兵》です。人間を強化するだけでなく、護法もつけてしまうすごいロード。これまでは4枚確定だった《サリアの副官》が3枚に減っているのも納得です。また、「キミ人間だったの!?」と思わず叫んでしまいそうになる《群れ率いの人狼》。緑単ではお馴染みのこの人狼も実は人間なので、このデッキに居場所があります。《サリアの副官》や《銅纏いの先兵》があれば《群れ率いの人狼》ともう1体の人間だけで簡単にカードが引けます。更にその人間たちをまとめて呼び出す《集合した中隊》ももちろん入っています。回った時の理不尽さはモダンそのまま!モダンで人間を使っていた方、パイオニアで暴れ回ってみてはいかがでしょうか?   青単ウルザ(モダン) モダンリーグ:5-0 By Heir_of_Elendil15 モダンでウルザと言えば、最早《ウルザの物語》が最初に浮かんでしまうかもしれませんが、かつて《最高工匠卿、ウルザ》もモダンで一世を風靡していました。その《最高工匠卿、ウルザ》が再び輝く時が来ました!《最高工匠卿、ウルザ》はアーティファクトから青マナを出せる強力なカード。そのため、必然的にデッキには大量のアーティファクトが入ることになります。このデッキはとにかく《最高工匠卿、ウルザ》を着地させたいデッキ。そのために大量のマナアーティファクトが入っています。そう、《月罠の試作品》に加えて《モックス・アンバー》が3枚採用されているのです。伝説のクリーチャーをコントロールしていなければマナが出ないこのモックス。これまでは《敏捷なこそ泥、ラガバン》と《湖に潜む者、エムリー》が入っているデッキでギリギリ採用できるというレベルでしたが、『モダンホライゾン3』で《知りたがりの学徒、タミヨウ》を手に入れたことで、青単でも使いやすくなりました。1マナの伝説クリーチャーは《モックス・アンバー》と相性バッチリ。もちろん、《知りたがりの学徒、タミヨウ》は《モックス・アンバー》からただマナを生み出すためだけのカードではありません。《ミシュラのガラクタ》や《一つの指輪》が入っているので変身は容易。しかも攻撃時に生み出す手がかりが《月罠の試作品》や《最高工匠卿、ウルザ》のマナに使用できると、至れり尽くせり!ウルザと言えば《最高工匠卿、ウルザ》!再びそうなる日も近いかもしれません。…まあ、《ウルザの物語》も入っているんですが。

【週刊メタゲーム通信】吸血鬼とアマリアの仁義なき二強環境

Pioneer

2024.07.11

mtg Yuyan

こんにちは。 細川 侑也(@yuyan_mtg)です。 毎週、最新のメタゲームをデッキリストと共にお届けするこの記事。本日はエリア予選期間真っ最中で盛り上がっている、パイオニアを解説! 大会説明 初回の記事なので、今回のメタゲームを語る上で参照した大会について今回は説明していきます。 チャンピオンズカップエリア予選 プレイヤーズコンベンションで行われる競技大会「チャンピオンズカップファイナル」の参加権利を賭けて戦う大会です。店舗予選を突破したプレイヤーしか出場することのできない、競技性の高いトーナメント。今回は以下の3大会を参照。 エリア予選(ドラゴンスターオタロード中央店) エリア予選(晴れる屋トーナメントセンター東京) エリア予選(シーガル泉中央店) パイオニアチャレンジ パソコンでマジックが楽しめるマジックオンライン上で行われる大会。人数に応じたスイスラウンドを行い、その後シングルエリミネーションとなっています。参加費のみで誰でも出られる大会。今回は以下の4大会を参照。 PIONEER CHALLENGE 32 (7月6日開催) PIONEER CHALLENGE 32 (7月7日開催) PIONEER CHALLENGE 64 (7月6日開催) PIONEER CHALLENGE 64 (7月7日開催) ラストチャンス予選 マジックオンラインチャンピオンシップ(通称MOCS)という、マジックオンラインの中で最も賞金・賞品が豪華な大会があり、優勝することでそれに出場することのできる予選大会…の予選大会です。5回戦を5勝0敗することで予選大会の権利を獲得できます。今回は以下の2大会を参照。 PIONEER LAST CHANCE (7月7日開催) PIONEER LAST CHANCE (7月8日開催) 進化し続けるTier1、ラクドス吸血鬼 エリア予選での権利獲得者、各チャレンジのトップ8、そしてラストチャンス予選で4勝1敗以上の成績を収めたデッキをすべて集計すると、最も使用者がが多かったのはラクドス吸血鬼でした。その数は26。合計75人のうち、26人がこのラクドス吸血鬼で好成績を収めました。特に晴れる屋トーナメントセンター東京では15人のうち8名がラクドス吸血鬼で予選を突破しています。 ラクドス吸血鬼 エリア予選(晴れる屋TC東京):突破 By 矢田 和樹   ラクドス吸血鬼はプロツアー『カルロフ邸殺人事件』を優勝して鮮烈なデビューを飾ったデッキ。ベースとなるのは《思考囲い》と《鏡割りの寓話》という、もはやパイオニアでは見慣れたラクドスの2枚看板によるミッドレンジ戦術。ここに加わったのが《傲慢な血王、ソリン》から《血管切り裂き魔》を出すコンボ要素。 《血管切り裂き魔》は凄まじい性能で、ひとたび戦場に出ればそもそも護法で除去をするのが困難。倒そうとすればダメージを最低でも4点喰らい、倒し損ねれば攻撃の6点+《傲慢な血王、ソリン》の生け贄3点+2点で11点と、一瞬でライフを削りきられてしまいます。 近頃のラクドス吸血鬼は《腐食の荒馬》を採用したリストが増えています。騎乗して攻撃すると《血管切り裂き魔》がめくれて6点だったり、《傲慢な血王、ソリン》と《血管切り裂き魔》を揃うのに寄与するなど、デッキと噛み合っています。そして、2ターン目のプレッシャーのあるアクションが《税血の収穫者》しかなかったのはラクドス吸血鬼の弱点でした。《腐食の荒馬》によって相手は2ターン目から対応を迫られることとなり、3ターン目の《鏡割りの寓話》や《傲慢な血王、ソリン》が二の矢として機能するのです。プロツアーではこのスロットは《薄暮軍団の盲信者》でした。こちらは3ターン目の強いアクションである《鏡割りの寓話》か《傲慢な血王、ソリン》を引き込みにいくカードでしたが、クリーチャースペックは1/1と貧弱でした。 ラクドス吸血鬼が攻撃的なデッキであるにもかかわらず、2ターン目のアクションが弱いのは問題でしたが、《腐食の荒馬》はそれを見事に解消しました。また、《腐食の荒馬》が標準装備になったことで見直されたのが《砕骨の巨人》。ラクドスミラーで《腐食の荒馬》を除去できるだけでなく、《腐食の荒馬》に騎乗できるので、再評価を受けています。 ラクドス吸血鬼の進化はそれだけではありません。近頃は更なるコンボを搭載したラクドス地獄の樹も現れ始めました。 ラクドス地獄の樹 パイオニアチャレンジ:2位 By CHICHICHI 通常のラクドス吸血鬼に《地獄の樹》と《アガサの魂の大釜》を加えたのがこのラクドス地獄の樹。 《地獄の樹》は自身のタフネスと対戦相手のライフを交換できる起動型能力を持っています。普通に使えば相手のライフが13になり、ライフがタフネスになる。そんな微妙なカード。しかし、《アガサの魂の大釜》で追放することで《地獄の樹》は真価を発揮します。クリーチャーに《地獄の樹》の能力を付与できるので、たとえば《ヴォルダーレンの美食家》も《地獄の樹》になるのです。一瞬で相手のライフは20から2に! このコンボは特に、ラクドス吸血鬼は現環境の対抗馬であるアブザンアマリアに対して有効です。通常は一度コンボを決められて90近いライフになったアマリアに勝つのは至難の業ですが、いくつライフがあろうと《地獄の樹》と《アガサの魂の大釜》が揃えば関係ありません。新たな2枚コンボの投入ができてしまうというのは、《思考囲い》や《鏡割りの寓話》、そして《傲慢な血王、ソリン》からの《血管切り裂き魔》、このラクドス吸血鬼の根幹部分が強いことの証明ともいえますね。 王者・吸血鬼を狙うは、3ターンキルのアマリア ラクドス吸血鬼に続いて先週成功を収めたのは、アブザンアマリア。各地のエリア予選でも突破者が多く、MOのラストチャンス予選で権利を獲得した4つのうち、2つがアブザンアマリアでした。 アブザンアマリア ラストチャンス予選:5-0 By OPPA 《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》と《野茂み歩き》を場に揃え、30回ほどの探検によって90近いライフを獲得しながら、《霊気貯蔵器》をライブラリートップに積み込んで勝利するクリーチャー・コンボ。なんと最速3ターン目にこのコンボが成立します。 固定となる2体のクリーチャー+ライフゲイン手段が必要なコンボで、除去1枚で妨害されてしまうため、「コンボ自体は成立するけど実用的かどうか…」と思われていたのは遥か昔。蓋を開けてみれば、クリーチャー側をサーチする手段が豊富かつインスタントだったり、除去しても複数の手段で場に戻すなど、除去に対して強い構成にすることができ、今や環境最強の一角となっています。特にラクドス吸血鬼の最強ムーブである3ターン目《血管切り裂き魔》に対しても、3ターン目にコンボを決めてしまえば勝利できるので、お互いが最も強い動きをした際はアマリア側に軍配が上がります。 アブザンアマリアのリストもすっかり洗礼されています。《救出専門家》が多めに採用されるようになり、ラクドス吸血鬼の除去の雨にも耐性がついています。 《救出専門家》をたくさん採用することで3マナ以下の強力なクリーチャーが増えたので、今まで2枚程度だった《集合した中隊》は4枚に。《救出専門家》と同じ役割だった《戦列への復帰》がそのまま《集合した中隊》になっていますね。《スカイクレイブの亡霊》は段々と採用枚数が増えてきた1枚。これまではメインサイド合わせて1~2枚という印象でしたが、今ではメインから2枚。サイドにも2枚。ミラーマッチで《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》を追放できるだけでなく、ラクドスがサイドから投入してくるキラーカード、《暮影の騎士》に触れる数少ないカードです。 《スカイクレイブの亡霊》の枚数が増えている現状では、ラクドスがサイドから採用すべきは《暮影の騎士》ではなく《揺れ招き》なのかもしれませんね。 総括 今週の勝ち組はラクドス吸血鬼、次いでアブザンアマリアという結果でした。ラクドス吸血鬼は《腐食の荒馬》と《砕骨の巨人》を採用したリストが目立ちました。《砕骨の巨人》は《腐食の荒馬》が使われれば使われるほど強いカードなので、もしかしたら今週は枚数が増えるかもしれません。 アブザンアマリアは特にマジックオンラインでの活躍が目立ちます。ラストチャンス予選を突破した4つのうち、2つがアブザンアマリアなのです!4勝1敗にもアブザンアマリアは多く入賞していますし、今週はラクドス吸血鬼との立場を逆転させていてもおかしくありません。 そしてこの2つが互いのデッキやミラーを意識し始めると、またその間隙を突くデッキが現れることでしょう。墓地を利用するデッキが減っており、墓地対策は今減少傾向にあります。もしかしたら今はイゼットフェニックスあたりにチャンスかも?《腐食の荒馬》も《砕骨の巨人》も苦にしないので、今のラクドス吸血鬼には比較的強いはずです。 来週はどうなっているのでしょうか。今から楽しみですね。それではまた!