【週刊メタゲーム通信】エスパーピクシー大活躍!赤単などのアグロ勢の活躍とアゾリウス全知

【週刊メタゲーム通信】エスパーピクシー大活躍!赤単などのアグロ勢の活躍とアゾリウス全知

    こんにちは。

     

    細川 侑也(@yuyan_mtg)です。

     

    今回はマジックオンライン上の競技性の高いイベント、スタンダードショーケースチャレンジの結果から、最新のスタンダード環境を分析していきます。

     

     

     

     


      エスパーピクシー

      スタンダードショーケースチャレンジ : 優勝 By cftsoc3

      MTGアリーナ用インポートデータ

      ショーケースチャレンジの優勝はエスパーピクシー!しかもその使用者はcftsoc3選手。

       

      プロツアー『霊気走破』にもエスパーピクシーを持ち込んだcftsoc3選手が見事マジックオンラインのトーナメントを制しました。

       

      そのリストは他のエスパーピクシーと一線を画すものです。

       

      養育するピクシー》《孤立への恐怖》のセルフバウンス要素以外に採用されているクリーチャーは、《呑気な物漁り》や《悪意ある呪詛術士》が一般的でした。

      特に《呑気な物漁り》は早いターンから大きなダメージを与えるカードで、入っていないリストはほぼないレベル。

       

      しかし、cftsoc3選手はそれらを採用せず、《分派の説教者》と《ベイルマークの大主》を入れています。

       

      分派の説教者》は3マナと重いクリーチャーですが、2/4のサイズがビートダウンに強く、殴るだけでリソースを回復できるのが魅力です。

      ライフが一緒の状態で《分派の説教者》が攻撃すると、トークンとドローをどちらも誘発させることができます。《望み無き悪夢》などで相手のライフを削りつつ、自分のライフは大量に入っているダメージランドで調整可能なので、狙っていけそうです。

      そして《ベイルマークの大主》。モダンでも人気のカードで、もちろんこのデッキでも主な使い方は兆候になります。しかし、ブリンクや《永遠の策謀家、ズアー》で兆候状態の大主を無理やり起こすことはできません。

      その代わりに、各種バウンスカードで《ベイルマークの大主》を使い回すことができます。調候で出して墓地の《養育するピクシー》《孤立への恐怖》を回収し、今度は《ベイルマークの大主》を回収する。またそれらのクリーチャーが死亡したら《ベイルマークの大主》で拾えるので、永久機関が完成します。

      このスロットには《荒らされた地下室+解剖室》が入っていることが多く、こちらも用途は同じですが、《ベイルマークの大主》は5マナで通常キャストもできるのは魅力です。

      エスパーピクシーのミラーマッチでは《ベイルマークの大主》はなかなか倒しにくいですし、攻撃されるたびにクリーチャーを回収され続けたら溜まったものではありません。

       

      呑気な物漁り》《悪意ある呪詛術士》を抜いて《分派の説教者》《ベイルマークの大主》を入れることで、このリストは相手のライフを減らすビートダウンではなくなり、エスパーミッドレンジと呼ぶべきデッキとなりました。

       

      スペル欄を見ればそれがはっきりするかもしれません。そう、《食糧補充》です。

      3マナで5枚から2枚を選んで手札に加える。《予言》を大真面目にプレイしていた時代から考えるとすさまじい強さのソーサリーですが、これがエスパーピクシーに採用されているというのにも驚きです。

      ですが、このエスパーピクシーをミッドレンジとして見てみれば、《食糧補充》の採用も納得できます。《嵐追いの才能》《この町は狭すぎる》のセット、あるいは火力でライフを詰められそうな時は《望み無き悪夢》とバウンスなど、状況次第で様々な組み合わせを拾える《食糧補充》はこのデッキには合っています。

      呑気な物漁り》から2ターン目にクリーチャーを展開して3ターン目に《食糧補充》を打つのは少々気持ち悪いと感じるかもしれません。クリーチャーで攻撃して圧力をかけたいのに3ターン目にドロースペルを打ちたくはありませんからね。

      しかし、ミッドレンジならば序盤にライフを詰める必要はありません。《望み無き悪夢》や各種除去を序盤は使い、3ターン目に《食糧補充》を打って中盤戦に唱える。これならプレイしていてなんら違和感ありません。

      ビートダウンだったエスパーピクシーをミッドレンジにしたcftsoc3選手、その構築力にはいつも舌を巻きますね。

       

       

      赤単アグロ

      スタンダードショーケースチャレンジ : 2位 By  megavenusaur

      MTGアリーナ用インポートデータ

      歴代でも最強と言われている今の赤アグロ。

       

      サイズがどんどん上がっていくだけでなく、死亡時にもダメージを与えるパイオニア級の1マナ域、《心火の英雄》。

      果敢で瞬間的な打点を上げつつ、リソースを獲得する《熾火心の挑戦者》。

      そしてハツカネズミたちに二段攻撃やトランプルを付与する攻撃性と、4マナで唱えてトークンを生成することでリソース勝負にも強い《多様な鼠》。

      この3種のハツカネズミパッケージはパイオニアにそのまま出張するほどの強さで、これがすべて赤のカードなので、スタンダード環境にも様々なカラーリングの赤アグロが存在しています。

       

      亭主の才能》と《探索するドルイド》を入れたグルールは定番で、プロツアー『霊気走破』では一番人気のアーキタイプになりました。

      クリーチャーが1体でも生き残れば致死量のサイズまで育てられる《亭主の才能》、リソース確保の《探索するドルイド》、そして除去に強い《脚当ての補充兵》で、特に黒いデッキに強いのがこのカラー。

      花足の剣豪》《岩山炎の後継者、メイブル》を採用するボロスも存在します。こちらは最早ボロスハツカネズミと言えるほど、大量のハツカネズミが入ったデッキ。そのため《多様な鼠》のバリューが他の赤アグロよりも高く、どのクリーチャーにも二段攻撃を付与できます。

      このように赤アグロの中で更に選択肢が生まれているのが今のスタンダードの赤事情。今回ショーケースチャレンジで結果を残したのは、赤単色でした。

       

      赤単の良い点はもちろんその土地事情。《銅線の地溝》は4ターン目以降にタップインして《多様な鼠》の新生を遅らせてしまう可能性があり、《カープルーザンの森》はダメージが痛い。今のスタンダードの2色アグロは確定タップインがなく、ストレスフリーではあるものの、決して2色がデメリット0というわけではありません。

      そもそも緑のカードが手札にあって緑マナが出ない色事故もありますからね。

       

      岩面村》を4枚採用できる点も赤単の魅力です。《心火の英雄》《熾火心の挑戦者》を強化して雄姿を誘発させたり、《雇われ爪》《多様な鼠》に速攻を付与するなど、アンタップインで赤マナが出る土地とは思えない強さのこの土地。ただ、2色デッキではあまり4枚採用されていません。

      ソーンスパイアの境界》などの境界土地から2色を出すためには《》がそれなりに必要だからです。赤単ならば2色土地がすべて《》になるので、問題なく《岩面村》を4枚採用できるのです。

      赤単は特に赤アグロのミラーマッチとドメインに強いデッキです。対赤アグロでは2色目の差はほとんどなく、赤い部分の勝負。そうなると必然的にタップインもなく、土地からダメージも受けず、《岩面村》を4枚入れている赤単に軍配が上がります。

       

      ドメインに対してはグルールのサイドから採用されている《脚当ての陣形》は強力ではあるものの、サイド後は必殺の《陽背骨のオオヤマネコ》が4枚あるので、さほど差はありません。メインでは《亭主の才能》のような不純物が入っておらず、クリーチャーと火力だけである赤単の方がドメインに勝ちやすく、結果として赤単の方が勝率が出るのです。

      このリストはサイドボードに《探索するドルイド》を入れていますが、クリーチャーとして唱えるための緑マナは《ソーンスパイアの境界》しか入っていません。

      ソーンスパイアの境界》はダメージも受けず、タップインにもならない土地で、基本的には《》です。デッキの動きを一切阻害することなく、たまに緑マナも出せるので入れ得カード。その4枚からしか《探索するドルイド》は出ませんが、このカードを入れるマッチはリソースが欲しい相手であり、そういったゲームは大体の場合、長引きます。

      ゲームが長くなればそれだけ《ソーンスパイアの境界》を引く確率は上がるため、実際は4枚しか入っていない緑マナをそれなりに引けているでしょう。仮にクリーチャーとして出せなかったとしても、出来事で2枚のカードを追放して使用できるだけで仕事はしっかりしています。

       

      赤単には《探索するドルイド》は採用できないという固定観念を打ち破った素晴らしいリスト!

       

       

      アゾリウス全知

      スタンダードショーケースチャレンジ : 8位 By J_tekt

      MTGアリーナ用インポートデータ

      プロツアー『霊気走破』でも活躍した《全知》によるコンボデッキ。スタンダードでこの手の純粋なコンボは珍しいですね。

      デッキの動きは非常に単純で、各種カードで《全知》を墓地に落として《アブエロの覚醒》で釣り上げる。これで準備が完了します。

      1.《アブエロの覚醒》で《全知》を戦場に戻す。《全知》は1/1のクリーチャーになる。


      2.《アルケヴィオスへの侵攻》をキャストし、サイドから《機織りの季節》を持ってくる。


      3.《機織りの季節》のクリーチャーコピーモードで、1/1の《全知》をコピーしつつ、バウンスモードを使用。コピーの《全知》以外のすべてのカードが手札に戻る。
      4.《アルケヴィオスへの侵攻》を唱えて墓地から《機織りの季節》を回収して、今度はバウンスと2ドロー。これを、2枚目の《アルケヴィオスへの侵攻》を引くまで繰り返す。


      5.《アルケヴィオスへの侵攻》が2枚揃うと、1枚目の《アルケヴィオスへの侵攻》で好きなカードをデッキやサイドボードからサーチしつつ、2枚目の《アルケヴィオスへの侵攻》で《機織りの季節》を拾って全バウンスを繰り返せるようになり、好きなだけインスタントやソーサリーを手札に加えられるようになる。


      6.サイドボードから《ネットワーク呪詛》をサーチして無限に唱えて勝利。

       

      とこのようなルートで即死になります。

       

      このデッキが登場してすぐの頃は、相手がコンボターンの前にフルタップしてくるケースがよくありましたが、1/1の《全知》をスタックで除去されてしまうとコンボが決まらなくなることがバレた今では、除去を構えられつつ動かれてしまい、コンボが決めづらくなりました。

      そこで、プロツアー『霊気走破』以降のリストでは1/1の《全知》を除去された場合を想定したカードがサイドボードに入っています。

       

      それが《ジョハンの一時凌ぎ》。

      相手が1/1の《全知》を除去できるカードを持っていた場合、手札に2枚目の《全知》を用意しておくことで、除去をケアできるようになります。

      1.《アブエロの覚醒》で1/1の《全知》が戦場に。


      2.手札から《全知》をキャスト。スタックで1/1の《全知》に除去が飛ぶ。


      3.《アルケヴィオスへの侵攻》をキャストし、《ジョハンの一時凌ぎ》をサーチ。


      4.《ジョハンの一時凌ぎ》で《アルケヴィオスへの侵攻》を戻してドロー。


      5.《アルケヴィオスへの侵攻》を出して《ジョハンの一時凌ぎ》を回収し、《アルケヴィオスへの侵攻》を戻してドロー。これを繰り返して好きな枚数だけドロー。

      5で無限ドローが完成するので、後は《全知》を再び墓地に落として《アブエロの覚醒》で釣り上げ、通常の無限ルートに移行となります。

      『霊気走破』からの新カードは《食糧補充》。《アブエロの覚醒》を引かなければ始まらなかったこのデッキにとって、5枚見て好きなカードを2枚加える《食糧補充》は喉から手が出るほど欲しかったカードです。

      3ターン目に《食糧補充》で《アブエロの覚醒》を探す時は、2ターン目に《全知》を墓地に落としておく必要があります。そうでないと4ターン目に《全知》を釣れませんからね。そのため、《アブエロの覚醒》を探しながら《全知》を墓地に落とせる《困惑の謎掛け》と散らして3枚ずつの採用となっていますが、確実に《食糧補充》のおかげでデッキは強くなりました。

      特にサイド後は相手の妨害をくぐり抜けながらコンボを決めるため、《堂々たる撤廃者》と《否認》を探したりなど、《食糧補充》が輝きます。《困惑の謎掛け》は手札が増えませんからね。

      今のスタンダード環境はアグロ全盛期であり、どのデッキも除去を大量に入れています。除去が手札で腐るようなマッチは相性が良く、具体的にはエスパーピクシー・ドメインには有利です。

      アグロとドメインばかりに気を取られていると、アゾリウス全知になすすべなく敗北します。サイドボードでの対策をお忘れなく。